説明

POSデータ分析装置及び方法及びプログラム

【課題】 POSデータ分析において、大量に存在する相関ルールの中から、あまり知られていないと思われる併売情報を抽出する。
【解決手段】 本発明は、「商品ジャンル−商品」という2階層のデータ構造に着目することで、大量に存在する相関ルールの中から、思いがけない併売情報を抽出する。具体的には、商品ジャンル内の商品の併売傾向のばらつきの大きさを計算し、ばらつきが大きい商品ジャンルを分析対象として推薦する。また、ある商品ジャンルにおいて、商品の併売度合いが高いほど商品間の距離を小さく定義することで商品をクラスタリングし、そのクラスタリングの階層構造をユーザに提示することにより、着目すべき商品の候補を推薦する。さらに、商品レベルの併売状況と商品ジャンルレベルの併売状況を比較することで、特徴的な商品レベルの併売状況を抽出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、POSデータ分析装置及び方法及びプログラムに係り、特に、顧客の購買履歴が管理されるPOS管理(販売時点情報管理)において、特徴的な併売状況(今まで把握していなかった併売状況)の発見を支援するPOSデータ分析装置及び方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
POSシステムが普及し、「どんな顧客が」「どの商品を」「どの店舗で」「いつ」「何個」「いくらで」購入したのかを記録することができるようになっている。これらのPOSシステムにより、発注/在庫管理を効率化することができる。
【0003】
また、計算機およびデータベースの処理能力の向上により、売れ筋商品や併売状況などを分析し、商品間や属性間の相関ルールを発見することが可能になった。得られた相関ルールを考慮し、店舗における商品棚構成の変更・仕入商品の変更などを行い、売上を向上させることができる。
【0004】
しかし、上記の相関ルールの抽出には、以下のような問題がある。
【0005】
(1)抽出される相関ルールは大量である;
(2)既知の相関ルールが存在する;
上記の(1)に対して、Aprioriアルゴリズム(例えば、非特許文献1参照)やFP-growthアルゴリズム(例えば、非特許文献2参照)などが提案されてきた。また、これらのアルゴリズムの利点を組み合わせたことにより計算量を削減するアルゴリズム(例えば、非特許文献3参照)や、並列処理により計算時間を短縮する手法(例えば、非特許文献4参照)なども提案されている。
【0006】
また、面白くない相関ルールを排除する手法(例えば、非特許文献5参照)が提案されている。この手法は、統計的検定により相関ルールを評価しているに過ぎず、課題(2)を解決するのには有効ではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】R. Agrawal and R. Srikant, "Fast Algorithms for Mining Association Rules," In Proceedings of the International Conference on Very Large Data Bases, pp. 487-499, 1994.
【非特許文献2】J. Han, J. Pei, and Y. Yin, "Mining frequent patterns without candidate generation," In Proceedings of the ACM SIGMOD Conference on Management of Data, pp.1-12, 2000.
【非特許文献3】森雅夫, 阿部島 誉幸, "マーケットバスケット分析のためのアルゴリズムの比較と提案",日本オペレーションズ・リサーチ学会, 秋季研究発表会アブストラクト集, pp.308-310, 2003.
【非特許文献4】岩橋永悟, 山名早人, "FP-growth並列化による頻出パターン抽出高速化", 情報処理学会研究報告, データベース・システム研究会報告, pp.327-333, 2003.
【非特許文献5】福田剛志, 森下真一, "相関ルールの可視化について", 電子情報通信学会技術研究報告,データ工学, pp.41-48, 1995.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の非特許文献1〜4の手法は、相関ルールを高速に抽出することを目的としており、上記の課題(2)の既知の相関ルールが存在するという問題は解決しない。
【0009】
本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、POSデータ分析において、大量に存在する相関ルールの中から、あまり知られていないと思われる併売情報を抽出することが可能なPOS分析装置及び方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明(請求項1)は、POSデータ分析装置であって、
POSデータを蓄積するPOSデータ記憶手段と、
前記POSデータ記憶手段からPOSデータを読み込んで、該POSデータから商品ジャンル情報を抽出する商品ジャンル管理手段と、
前記POSデータ記憶手段のPOSデータの各商品の併売特徴を示す併売特徴情報を生成し、商品併売特徴情報記憶手段に格納する商品併売特徴情報生成手段と、
前記商品ジャンル管理手段で抽出された前記商品ジャンル情報に基づいて、前記商品併売特徴情報記憶手段の商品の間の類似度を算出し、該類似度に基づいて商品ジャンル毎に商品をクラスタリングし、該類似度と共にクラスタリング結果を商品クラスタリング結果記憶手段に格納する商品クラスタ分析手段と、を有する。
【0011】
また、本発明(請求項2)は、請求項1に記載のPOSデータ分析装置に、前記商品クラスタリング結果記憶手段を参照し、各クラスタに存在する商品数をカウントし、1クラスタあたりの平均商品数と標準偏差により求められた値が所定の範囲外となる商品数を持つクラスタがある場合は商品のばらつきが大きい商品ジャンルであると判定する特徴的商品ジャンル発見支援手段を更に加えた構成である。
【0012】
また、本発明(請求項3)は、請求項1に記載のPOSデータ分析装置に、前記POSデータ記憶手段の商品間の併売情報を参照し、各商品ジャンルの併売状況の特徴量を含む商品ジャンル併売特徴情報を生成し、商品ジャンル併売特徴情報記憶手段に格納する商品ジャンル併売特徴情報生成手段と、
前記商品併売特徴情報記憶手段から併売情報を取得し、該併売情報に基づいて各商品の商品ジャンルを取得して、該商品ジャンルに基づいて前記商品ジャンル併売特徴情報記憶手段を参照し、2つの商品ジャンル間の特徴量に基づいて計算された値により、併売関係の有無を判定する特徴的商品発見支援手段と、を更に加えた構成である。
【0013】
また、本発明(請求項4)は、請求項1に記載のPOSデータ分析装置に、前記POSデータ記憶手段の商品間の併売情報を参照し、各商品ジャンルの併売状況の特徴量を含む商品ジャンル併売特徴情報を生成し、商品ジャンル併売特徴情報記憶手段に格納する商品ジャンル併売特徴情報生成手段と、
前記商品クラスタリング結果記憶手段を参照し、各クラスタに存在する商品数をカウントし、1クラスタあたりの平均商品数と標準偏差により求められた値が所定の範囲外となる商品数を持つクラスタがある場合は商品のばらつきが大きい商品ジャンルを抽出する特徴的商品ジャンル発見支援手段と、
前記特徴的商品ジャンル発見支援手段で抽出された前記商品ジャンルに対してクラスタから外れた商品を選択し、該商品に基づいて前記POSデータ記憶手段を参照して、該商品の併売情報を取得し、該商品の併売情報に基づいて各商品の商品ジャンルを取得して、該商品ジャンルに基づいて前記商品ジャンル併売特徴情報記憶手段を参照し、2つの商品ジャンル間の特徴量に基づいて計算された値により、併売関係の有無を判定する特徴的商品発見支援手段と、を更に加えた構成である。
【0014】
また、本発明(請求項5)は、POSデータ分析方法であって、
POSデータを蓄積するPOSデータ記憶手段と、商品併売特徴情報記憶手段、商品併売特徴情報生成手段、商品クラスタリング結果記憶手段、商品ジャンル併売特徴情報記憶手段を有する装置において、
商品ジャンル管理手段が、前記POSデータ記憶手段からPOSデータを読み込んで、該POSデータから商品ジャンル情報を抽出する商品ジャンル管理ステップと、
商品併売特徴情報生成手段が、前記POSデータ記憶手段のPOSデータの各商品の併売特徴を示す併売特徴情報を生成し、前記商品併売特徴情報記憶手段に格納する商品併売特徴情報生成ステップと、
商品クラスタ分析手段が、前記商品ジャンル管理ステップで抽出された前記商品ジャンル情報に基づいて、前記商品併売特徴情報記憶手段の商品の間の類似度を算出し、該類似度に基づいて商品ジャンル毎に商品をクラスタリングし、該類似度と共にクラスタリング結果を前記商品クラスタリング結果記憶手段に格納する商品クラスタ分析ステップと、
を行う。
【0015】
また、本発明(請求項6)は、請求項5のPOSデータ分析方法において、
特徴的商品ジャンル発見支援手段が、前記商品クラスタリング結果記憶手段を参照し、各クラスタに存在する商品数をカウントし、1クラスタあたりの平均商品数と標準偏差により求められた値が所定の範囲外となる商品数を持つクラスタがある場合は商品のばらつきが大きい商品ジャンルであると判定する特徴的商品ジャンル発見支援ステップを更に行う。
【0016】
また、本発明(請求項7)は、請求項5のPOSデータ分析方法において、
前記商品ジャンル併売特徴情報生成手段が、前記POSデータ記憶手段の商品間の併売情報を参照し、各商品ジャンルの併売状況の特徴量を含む商品ジャンル併売特徴情報を生成し、商品ジャンル併売特徴情報記憶手段に格納する商品ジャンル併売特徴情報生成ステップと、
前記特徴的商品発見支援手段が、前記商品併売特徴情報記憶手段から併売情報を取得し、該併売情報に基づいて各商品の商品ジャンルを取得して、該商品ジャンルに基づいて前記商品ジャンル併売特徴情報記憶手段を参照し、2つの商品ジャンル間の特徴量に基づいて計算された値により、併売関係の有無を判定する特徴的商品発見支援ステップと、を更に行う。
【0017】
また、本発明(請求項8)は、請求項5のPOSデータ分析方法において、
前記商品ジャンル併売特徴情報生成手段が、前記POSデータ記憶手段の商品間の併売情報を参照し、各商品ジャンルの併売状況の特徴量を含む商品ジャンル併売特徴情報を生成し、商品ジャンル併売特徴情報記憶手段に格納する商品ジャンル併売特徴情報生成ステップと、
前記特徴的商品ジャンル発見支援手段が、前記商品クラスタリング結果記憶手段を参照し、各クラスタに存在する商品数をカウントし、1クラスタあたりの平均商品数と標準偏差により求められた値が所定の範囲外となる商品数を持つクラスタがある場合は商品のばらつきが大きい商品ジャンルを抽出する特徴的商品ジャンル発見支援ステップと、
特徴的商品発見支援手段が、前記特徴的商品ジャンル発見支援ステップで抽出された前記商品ジャンルに対してクラスタから外れた商品を選択し、該商品に基づいて前記POSデータ記憶手段を参照して、該商品の併売情報を取得し、該商品の併売情報に基づいて各商品の商品ジャンルを取得して、該商品ジャンルに基づいて前記商品ジャンル併売特徴情報記憶手段を参照し、2つの商品ジャンル間の特徴量に基づいて計算された値により、併売関係の有無を判定する特徴的商品発見支援ステップと、を更に行う。
【0018】
また、本発明(請求項9)は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のPOSデータ分析装置を構成する各手段としてコンピュータを機能させるためのPOSデータ分析プログラムである。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、商品の併売状況に応じて、併売度合いが高いほど商品間の距離を小さく定義することで、商品をクラスタリングし、そのクラスタリングの階層構造をユーザに提示することにより、大量に存在する相関ルールの中から、あまり知られていないと思われる(思いがけない)併売情報を抽出することが容易になる。
【0020】
また、本発明によれば、分析対象として推奨する商品ジャンルを提示することにより、
大量に存在する相関ルールの中から思いがけない併売情報を抽出することが容易になる。
【0021】
また、本発明によれば、特徴的な併売であると思われる併売情報を提示することで、大量に存在する相関ルールの中から思いがけない併売情報を抽出することが容易になる。
【0022】
さらに、分析対象を併売のバラツキが大きい商品ジャンルに絞り、その中から特徴的な併売情報を見つけることで、大量に存在する相関ルールの中から、高速かつ効率的に思いがけない併売情報を抽出することが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施の形態におけるPOSデータ分析装置の構成図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態におけるPOSデータ分析処理のフローの一例である。
【図3】本発明の第1の実施の形態におけるPOS DBに格納されるPOSデータの一例である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における商品ジャンルDBの例である。
【図5】本発明の第1の実施の形態における商品DBの例である。
【図6】本発明の第1の実施の形態における併売特徴情報の例(その1)である。
【図7】本発明の第1の実施の形態における併売特徴情報の例(その2)である。
【図8】本発明の第1の実施の形態における利用シーンのシーケンスチャートの一例である。
【図9】本発明の第1の実施の形態におけるクラスタリング結果の図(階層構造の図)の例である。
【図10】本発明の第2の実施の形態におけるPOSデータ分析装置の構成図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態におけるPOSデータ分析装置の構成図である。
【図12】本発明の第3の実施の形態における特徴的商品発見支援部の処理の例である。
【図13】本発明の第3の実施の形態における併売情報を計算する方法である。
【図14】本発明の第4の実施の形態におけるPOSデータ分析装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下図面と共に、本発明の実施の形態を説明する。
【0025】
[第1の実施の形態]
本発明は、それぞれの商品ジャンルにおける商品の併売状況をクラスタリングし、その商品ジャンルで特徴的な商品を浮き彫りにすることで、特徴的な併売を発見することを支援するPOSデータ分析装置である。これは「同一商品ジャンルの商品は、似た併売状況になるだろう」という推測に基づき、その併売状況が他商品とは大きく異なる商品を見つけることを特徴とする。
【0026】
図1は、本発明の第1の実施の形態におけるPOSデータ分析装置の構成を示す。
【0027】
POSデータ分析装置100Aは、POSデータ管理部110、商品ジャンル管理部120、商品管理部130、商品併売特徴情報生成部140、商品クラスタ分析部150、商品クラスタ表示部160、併売状況表示部170と、5つのデータベース(POS DB101、商品ジャンルDB102、商品DB103、商品併売特徴情報DB104、商品クラスタDB105)から構成される。
【0028】
併売状況表示部160と商品クラスタ表示部170は、利用者端末10のユーザインタフェース管理部11(以下「UI管理部」と記す)と接続されている。
【0029】
図2は、本発明の第1の実施の形態におけるPOSデータ分析処理のフローの一例を示す。
【0030】
ステップ101) POSデータ管理部110は、各店舗のPOS端末などから入力されるPOSデータを、ネットワーク経由などで受け取り、POS DB101に記録する。図3にPOS DB101に格納されるPOSデータの例を示す。POSデータは、レシート番号、店舗タイプ、販売年月日、曜日、顧客性別、顧客年齢、商品名、商品コード、単価、販売個数、売上金額、製造メーカ、商品ジャンル名、ジャンルコードを含む。
【0031】
ステップ102) 商品ジャンル管理部120は、POSデータに含まれる商品ジャンル情報(売上/併売に関連しない商品ジャンル自身の情報)を抽出し、商品ジャンルDB102に記録する。図4に商品ジャンルDB102の登録例を示す。商品ジャンルDB102には、商品ジャンルID、ジャンルコード、商品ジャンル名が登録される。
【0032】
ステップ103) 商品管理部130は、商品ジャンル管理部120と同様に、POSデータに含まれる商品情報(売上/併売に関連しない商品自身の情報)を抽出し、商品DB103に記録する。図5に商品DB103の登録例を示す。商品DB103には、商品ID,商品コード、商品名、単価、製造メーカ、商品ジャンルIDが登録される。
【0033】
ステップ104) 商品併売特徴情報生成部140は、POSデータを分析することで、各商品の併売状況の特徴を示す併売特徴情報を生成し、その併売特徴情報を商品併売特徴情報DB104に記録する。併売特徴情報の一例として、その商品が購入されたレシート番号の集合情報が考えられる。例えば、図3のPOSデータにおいて、レシート番号の集合を併売特徴情報とした場合の一例を図6に示す。図6より、IDが"3040"の商品は、レシート番号「162747」、「182432」、「192334」の3枚のレシートで購入されたことが分かる。併売特徴情報の別の例としては、どの商品と併売されているかを示すベクトル情報も考えられる。図6と同様の情報をベクトル情報として表現した場合の一例を図7に示す。
【0034】
ステップ105) 商品クラスタ分析部150は、商品DB103と商品併売特徴情報DB104にアクセスして取得した、併売特徴情報により商品間の類似度(併売度)を計算し、それらの情報を用いて、それぞれの商品ジャンルごとに商品をクラスタリングし、そのクラスタリング結果を商品クラスタDB105に記録する。併売特徴情報として図6のような集合を用いる場合は、類似度計算としてはシンプソン係数やジャカード係数などがある。図7のようにベクトル情報を用いる場合は、コサイン類似度やピアソンの相関係数などで類似度を計算することができる。また、このときのクラスタリングの方法として、例えば、凝集型階層的クラスタリング手法を用いることができる。
【0035】
次に、上記の処理が完了した後の利用シーンについて説明する。
【0036】
図8は、本発明の第1の実施の形態における利用シーンのシーケンスチャートの一例である。
【0037】
POSデータ分析の利用者(以下、分析者)は、利用端末10のUI管理部11にアクセスし、ある商品ジャンルのクラスタリング結果の表示をリクエストする。UI管理部11は、POSデータ分析装置100Aの商品クラスタ表示部170に、リクエストされた商品ジャンルを伝える(ステップ201)。
【0038】
商品クラスタ表示部170は、商品クラスタDB105にアクセスし、リクエストされた商品ジャンルのクラスタリング結果である階層構造を図として表現し(ステップ202)、それをUI管理部11に返す。UI管理部11は、受け取った図を分析者画面に表示する(ステップ203)。このとき、分析者は、別の商品ジャンルのクラスタリング結果を、再リクエストすることも可能である。図9にクラスタリング結果の一例を示す。
【0039】
ここで、分析者は、表示されたクラスタリング結果により、クラスタから外れている商品を見つけることができる。例えば、図9においては、商品Iが、クラスタから外れている商品である。クラスタから外れている商品は、他の商品と併売状況が異なることを意味する。つまり、この商品の併売状況が特徴的であり、思いがけない併売状況である可能性がある。
【0040】
クラスタから外れた商品を見つけた分析者は、その商品の併売商品の表示をリクエストする(ステップ204)。リクエストを受け取ったUI管理部11は、POS分析装置100Aの併売状況表示部160に、リクエストされた商品を伝える。併売状況表示部160は、商品併売特徴情報DB104と商品DB103にアクセスし、併売されている商品情報を入手し、それをUI管理部11に返す(ステップ205)。UI管理部11は、受け取った商品情報を分析者画面に表示する(ステップ206)。
【0041】
上記のように、本実施の形態によれば、図9に示すクラスタリング結果の図を見ることにより、ある商品ジャンルにおいて特徴的な併売状況を持つ商品を発見できることができる。発見した商品の併売状況を確認することで、思いがけない併売状況を見つけることができる。
【0042】
[第2の実施の形態]
図10は、本発明の第2の実施の形態におけるPOSデータ分析装置の構成図である。同図において、図1と同一構成部分には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0043】
図10に示すPOSデータ分析装置100Bは、図1に示した第1の実施の形態におけるPOSデータ分析装置100Aにおける既存の部の他に、特徴的商品ジャンル発見支援部210を有する。
【0044】
特徴的商品ジャンル発見支援部210は、商品クラスタDB105にアクセスし、商品のバラツキが大きい商品ジャンルを1つもしくは複数個抽出し、それらをUI管理部11に伝える。UI管理部11は、受け取った商品ジャンルを分析者に提示する。これにより、分析者は分析対象とすべき商品ジャンルを効率的に見つけることができる。
【0045】
なお、ある商品ジャンルが商品のバラツキが大きいか否かを調べる手法の一例としては、以下の手順が考えられる。
【0046】
1)ある商品ジャンルにおけるクラスタリング結果を調べる(予め設定してある類似度をチェックし、その類似度でクラスタリングした結果を調べる)。
【0047】
2)各クラスタに存在する商品の数をカウントし、1クラスタあたりの平均商品数μと標準偏差σを計算する。
【0048】
3)「μ−3σ以下」もしくは「μ+3σ以上」の商品数を持つクラスタの有無を調べる。
【0049】
4)上記の3)の条件に該当するクラスタが存在する場合は、該当商品ジャンルは商品のバラツキが大きいと判断する。
【0050】
これにより、分析者は、自分自身で気になる商品ジャンルをゼロから探すことなく、商品のバラツキが大きいと商品ジャンルの中から、分析する商品ジャンルを選択することができる。
【0051】
本実施の形態によれば、図8に示す第1の実施の形態における利用シーンでは、利用者が分析する商品ジャンルを指定する必要がある。例えば、コンビニエンスストアの商品ジャンルは数百になるが、これらの中から、分析する商品ジャンルを指定することは非常に難しい。この課題を解決するのが、第2の実施の形態における特徴的商品ジャンル発見支援部210による、分析対象として推奨する商品ジャンルの提示である。
【0052】
[第3の実施の形態]
図11は、本発明の第3の実施の形態におけるPOSデータ分析装置の構成図である。
【0053】
同図において、図1と同一構成部分には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0054】
図11に示すPOSデータ分析装置100Cは、図1に示した第1の実施の形態におけるPOSデータ分析装置100Aの既存の構成の他に、商品ジャンル併売特徴情報生成部320と、特徴的商品発見支援部310、商品ジャンル併売特徴情報DB301を有する。
【0055】
商品ジャンル併売特徴情報生成部320は、POS DB101にアクセスし、商品間の併売情報を参照することにより、商品ジャンル間の併売状況を調べ、各商品ジャンルの併売状況の特徴を示す商品ジャンル併売特徴情報を生成する。商品ジャンル併売特徴情報の一例として、その商品ジャンルが購入されたレシート番号の集合情報が考えられる。この場合の商品ジャンル併売特徴情報の例としては、商品併売特徴情報と同様に図6が考えられる。また、別の例としては、併売された商品ジャンルを示すベクトル情報も考えられる。ベクトル情報の例は、商品併売特徴情報と同様に図7である。商品ジャンル併売特徴情報生成部320は、生成した特徴情報を、商品ジャンル併売特徴情報DB301に記録する。
【0056】
特徴的商品発見支援部310は、例えば以下の手順により、特徴的な併売と思われる商品を提示する。処理のイメージを図12に示す。
【0057】
1)商品併売特徴情報DB104にアクセスし、すべての併売情報を抽出する。
【0058】
2)商品ジャンルDB102と商品DB103にアクセスし、併売情報における各商品の商品ジャンルを調べる。
【0059】
3)2)で取得した商品ジャンルに基づいて、商品ジャンル併売特徴情報DB104にアクセスし、2つの商品ジャンル間で、併売関係があるかどうかを調べる。
【0060】
4)併売関係がない場合は、その併売関係は思いがけない併売である可能性があると判断する。
【0061】
5)1)で取得したすべての併売情報に対して、2)〜4)を繰り返す。
【0062】
また、上記の手順1)3)で必要となる商品の併売情報/商品ジャンルの併売情報の抽出方法の一例を以下に示す。なお、ここでは、特徴情報としてレシート集合が記録されているとする。処理のイメージを図13に示す。
【0063】
1)商品併売特徴情報DB104の最初に登録されている商品を選択する。
【0064】
2)予め設定された支持度のしきい値を参照し、該当商品の支持度と比較する。
【0065】
→ しきい値よりも大きい場合は、処理3)へ移行する。
【0066】
→ しきい値よりも小さい場合は、処理1)に戻り次の商品を選択する。
【0067】
3)POS DB101にアクセスし、その商品と併売されているすべての商品を調べる。
【0068】
4)併売商品に対する併売度(確信度)と、該当併売の有意確率を計算する。併売度の計算方法には、集合の類似度計算法ではシンプソン係数やジャカード係数が、その他にもコサイン類似度など様々な手法が考えられる。有意確率の計算方法には、カイ二乗法やフィッシャーの正確確率検定などがある。
【0069】
5)予め設定された併売度と有意確率のしきい値を参照し、該当商品と比較する。
【0070】
→ 両値がしきい値をクリアーする場合は、該当する併売を抽出する。
【0071】
→ どちらかがしきい値をクリアーできない場合は、処理1)に戻り次の商品を選択する。
【0072】
6)処理1)に戻り、次の商品を選択する。
【0073】
図8に示す第1の実施の形態における利用シーンでは、利用者が分析する商品ジャンルを指定する必要がある。例えば、コンビニエンスストアの商品ジャンルは数百になるが、これらの中から、分析する商品ジャンルを指定することは非常に難しい。この課題に対して、本実施の形態によれば、図12に示すとおり、思いがけない併売情報(図12におけるケースbの「ビールA−ケーキF」の併売)を提示することが可能となる。
【0074】
[第4の実施の形態]
図14は、本発明の第4の実施の形態におけるPOSデータ分析装置の構成図である。同図において、図1、図10、図11と同一構成部分には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0075】
図14に示す本実施の形態におけるPOSデータ分析装置100Dは、図1に示した第1の実施の形態のPOSデータ分析装置100Aにおける既存の部の他に、特徴的商品発見支援部310と、商品ジャンル併売特徴情報生成部320、特徴的商品ジャンル発見支援部210、商品ジャンル併売特徴情報DB301を有する。つまり、第2の実施の形態と第3の実施の形態のPOSデータ分析装置100B,100Cの構成を組み合わせた構成である。
【0076】
第3の実施の形態では、商品間のすべての併売情報に対して、該当商品ジャンル間の併売関係の有無を調べている。これは、処理量が多く、処理時間がかかると思われる。そこで、本実施の形態では、第2の実施の形態に示した特徴的商品ジャンル発見支援部210の利用により分析対象となる併売情報を削減することで、処理を高速化しつつ、第3の実施の形態よりも、より特徴的な併売を見つけることを支援することが特徴である。
【0077】
本実施の形態における処理フローを以下に示す。なお、予め、前述の第3の実施の形態の商品ジャンル併売特徴情報生成部320により商品ジャンル併売特徴情報DB301に商品ジャンル併売特徴情報が格納されているものとする。
【0078】
1)特徴的商品ジャンル発見支援部210は、商品クラスタDB105にアクセスし、商品のバラつきが大きい商品ジャンルを1つもしくは複数個ほど抽出する(第2の実施の形態の処理と同様)。
【0079】
2)特徴的商品発見支援部310は、商品クラスタDB105にアクセスし、抽出した商品ジャンルに対して、クラスタから外れた商品を選択する(第4の実施の形態の新しい処理内容)。
【0080】
3)特徴的商品発見支援部310は、POS DB101にアクセスし、選択した商品に関する併売情報を参照する(第4の実施の形態の新しい処理内容)。
【0081】
4)該当する併売情報に対して、それが特徴的か否かを判定する(第3の実施の形態の図12の処理と同様)。
【0082】
なお、上記の第1〜第4の実施の形態における各構成要素の動作をプログラムとして構築し、POSデータ分析装置として利用されるコンピュータにインストールして実行させる、または、ネットワークを介して流通させることが可能である。
【0083】
また、構築したプログラムをハードディスクやフレキシブルディスク、CD−ROM等の可搬記憶媒体に格納し、コンピュータにインストールする、または、配布することが可能である。
【0084】
本発明は、上記の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲内において、種々変更・応用が可能である。
【符号の説明】
【0085】
10 利用者端末
11 ユーザインタフェース管理部
100A,100B,100C POSデータ分析装置
101 POS DB
102 商品ジャンルDB
103 商品DB
104 商品併売特徴情報DB
105 商品クラスタDB
110 POSデータ管理部
120 商品ジャンル管理部
130 商品管理部
140 商品併売特徴情報生成部
150 商品クラスタ分析部
160 併売状況表示部
170 商品クラスタ表示部
210 特徴的商品ジャンル発見支援部
301 商品ジャンル併売特徴情報DB
310 特徴的商品発見支援部
320 商品ジャンル併売特徴情報生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
POSデータ分析装置であって、
POSデータを蓄積するPOSデータ記憶手段と、
前記POSデータ記憶手段からPOSデータを読み込んで、該POSデータから商品ジャンル情報を抽出する商品ジャンル管理手段と、
前記POSデータ記憶手段のPOSデータの各商品の併売特徴を示す併売特徴情報を生成し、商品併売特徴情報記憶手段に格納する商品併売特徴情報生成手段と、
前記商品ジャンル管理手段で抽出された前記商品ジャンル情報に基づいて、前記商品併売特徴情報記憶手段の商品の間の類似度を算出し、該類似度に基づいて商品ジャンル毎に商品をクラスタリングし、該類似度と共にクラスタリング結果を商品クラスタリング結果記憶手段に格納する商品クラスタ分析手段と、
を有することを特徴とするPOSデータ分析装置。
【請求項2】
前記商品クラスタリング結果記憶手段を参照し、各クラスタに存在する商品数をカウントし、1クラスタあたりの平均商品数と標準偏差により求められた値が所定の範囲外となる商品数を持つクラスタがある場合は、商品のばらつきが大きい商品ジャンルであると判定する特徴的商品ジャンル発見支援手段を
更に有する請求項1記載のPOSデータ分析装置。
【請求項3】
前記POSデータ記憶手段の商品間の併売情報を参照し、各商品ジャンルの併売状況の特徴量を含む商品ジャンル併売特徴情報を生成し、商品ジャンル併売特徴情報記憶手段に格納する商品ジャンル併売特徴情報生成手段と、
前記商品併売特徴情報記憶手段から併売情報を取得し、該併売情報に基づいて各商品の商品ジャンルを取得して、該商品ジャンルに基づいて前記商品ジャンル併売特徴情報記憶手段を参照し、2つの商品ジャンル間の特徴量に基づいて計算された値により、併売関係の有無を判定する特徴的商品発見支援手段と、
を更に有する請求項1記載のPOSデータ分析装置。
【請求項4】
前記POSデータ記憶手段の商品間の併売情報を参照し、各商品ジャンルの併売状況の特徴量を含む商品ジャンル併売特徴情報を生成し、商品ジャンル併売特徴情報記憶手段に格納する商品ジャンル併売特徴情報生成手段と、
前記商品クラスタリング結果記憶手段を参照し、各クラスタに存在する商品数をカウントし、1クラスタあたりの平均商品数と標準偏差により求められた値が所定の範囲外となる商品数を持つクラスタがある場合は商品のばらつきが大きい商品ジャンルを抽出する特徴的商品ジャンル発見支援手段と、
前記特徴的商品ジャンル発見支援手段で抽出された前記商品ジャンルに対してクラスタから外れた商品を選択し、該商品に基づいて前記POSデータ記憶手段を参照して、該商品の併売情報を取得し、該商品の併売情報に基づいて各商品の商品ジャンルを取得して、該商品ジャンルに基づいて前記商品ジャンル併売特徴情報記憶手段を参照し、2つの商品ジャンル間の特徴量に基づいて計算された値により、併売関係の有無を判定する特徴的商品発見支援手段と、
を更に有する請求項1記載のPOSデータ分析装置。
【請求項5】
POSデータ分析方法であって、
POSデータを蓄積するPOSデータ記憶手段と、商品併売特徴情報記憶手段、商品併売特徴情報生成手段、商品クラスタリング結果記憶手段、商品ジャンル併売特徴情報記憶手段を有する装置において、
商品ジャンル管理手段が、前記POSデータ記憶手段からPOSデータを読み込んで、該POSデータから商品ジャンル情報を抽出する商品ジャンル管理ステップと、
商品併売特徴情報生成手段が、前記POSデータ記憶手段のPOSデータの各商品の併売特徴を示す併売特徴情報を生成し、前記商品併売特徴情報記憶手段に格納する商品併売特徴情報生成ステップと、
商品クラスタ分析手段が、前記商品ジャンル管理ステップで抽出された前記商品ジャンル情報に基づいて、前記商品併売特徴情報記憶手段の商品の間の類似度を算出し、該類似度に基づいて商品ジャンル毎に商品をクラスタリングし、該類似度と共にクラスタリング結果を前記商品クラスタリング結果記憶手段に格納する商品クラスタ分析ステップと、
を行うことを特徴とするPOSデータ分析方法。
【請求項6】
特徴的商品ジャンル発見支援手段が、前記商品クラスタリング結果記憶手段を参照し、各クラスタに存在する商品数をカウントし、1クラスタあたりの平均商品数と標準偏差により求められた値が所定の範囲外となる商品数を持つクラスタがある場合は、商品のばらつきが大きい商品ジャンルであると判定する特徴的商品ジャンル発見支援ステップを
更に行う請求項5記載のPOSデータ分析方法。
【請求項7】
前記商品ジャンル併売特徴情報生成手段が、前記POSデータ記憶手段の商品間の併売情報を参照し、各商品ジャンルの併売状況の特徴量を含む商品ジャンル併売特徴情報を生成し、商品ジャンル併売特徴情報記憶手段に格納する商品ジャンル併売特徴情報生成ステップと、
前記特徴的商品発見支援手段が、前記商品併売特徴情報記憶手段から併売情報を取得し、該併売情報に基づいて各商品の商品ジャンルを取得して、該商品ジャンルに基づいて前記商品ジャンル併売特徴情報記憶手段を参照し、2つの商品ジャンル間の特徴量に基づいて計算された値により、併売関係の有無を判定する特徴的商品発見支援ステップと、
を更に行う請求項5記載のPOSデータ分析方法。
【請求項8】
前記商品ジャンル併売特徴情報生成手段が、前記POSデータ記憶手段の商品間の併売情報を参照し、各商品ジャンルの併売状況の特徴量を含む商品ジャンル併売特徴情報を生成し、商品ジャンル併売特徴情報記憶手段に格納する商品ジャンル併売特徴情報生成ステップと、
前記特徴的商品ジャンル発見支援手段が、前記商品クラスタリング結果記憶手段を参照し、各クラスタに存在する商品数をカウントし、1クラスタあたりの平均商品数と標準偏差により求められた値が所定の範囲外となる商品数を持つクラスタがある場合は商品のばらつきが大きい商品ジャンルを抽出する特徴的商品ジャンル発見支援ステップと、
特徴的商品発見支援手段が、前記特徴的商品ジャンル発見支援ステップで抽出された前記商品ジャンルに対してクラスタから外れた商品を選択し、該商品に基づいて前記POSデータ記憶手段を参照して、該商品の併売情報を取得し、該商品の併売情報に基づいて各商品の商品ジャンルを取得して、該商品ジャンルに基づいて前記商品ジャンル併売特徴情報記憶手段を参照し、2つの商品ジャンル間の特徴量に基づいて計算された値により、併売関係の有無を判定する特徴的商品発見支援ステップと、
を更に行う請求項5記載のPOSデータ分析方法。
【請求項9】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のPOSデータ分析装置を構成する各手段としてコンピュータを機能させるためのPOSデータ分析プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−258023(P2011−258023A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132401(P2010−132401)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】