説明

PPARγ発現抑制剤

【課題】安全性に優れ、ニキビ等の皮脂脂質異常を伴う皮膚疾患あるいは皮膚トラブルの予防および改善のための医薬品又は食品等として有用なPPARγ発現抑制剤の提供。
【解決手段】リン脂質を有効成分とするPPARγ発現抑制剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚疾患、皮膚トラブルの予防又は改善に有用なペルオキシソーム増殖剤活性化受容体γ(Peroxisome Proliferator Activated Receptor γ:以下、「PPARγ」という。)発現抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体(PPAR)は、C末端側のリガンド結合領域にリガンドが結合することで活性化される転写因子であり、グルココルチコイド、エストロジェン及びビタミンD等をリガンドとする核内受容体のスーパーファミリーの一つである(非特許文献1)。PPARはリガンドとの結合により活性化されると、PPARはレチノイドXレセプター(retinoid X receptor:RXR)とヘテロダイマーを形成し標的遺伝子の上流に存在する応答配列peroxisome proliferator response element(PPRE)に結合して標的遺伝子の発現を活性化する。
【0003】
PPARα及びPPARδ及びPPARγと呼ばれる3種のアイソフォームが同定されているが、これらは、発現組織が異なっており、それぞれ違った生体機能を有していると報告されている(非特許文献2)。このうち、PPARγは皮脂腺細胞(sebaceous cell)に発現していることが明らかにされ(非特許文献3)、ラット皮脂腺細胞を用いた培養試験においては、PPARγのアゴニストBRL−49653は、皮脂腺細胞の脂質産生細胞への分化を促進することが示されている。
【0004】
また、最近の研究では、B領域の紫外線(UVB)や薬剤誘導性の酸化ストレス刺激により、表皮癌細胞や皮脂腺細胞のPPARγが活性化され、PPARγ活性に依存的なシクロオキシゲナーゼ2の発現亢進が起こり、炎症反応が惹起されることも示されている(非特許文献4)。
これらのことから、PPARγの発現抑制は、皮脂腺における過剰な脂質産生の抑制を介して、ニキビ等の皮膚脂質以上を伴う皮膚疾患あるいは皮膚トラブルの予防あるいは改善に有効であると考えられる。
PPARγのアンタゴニスト、阻害剤又は発現抑制剤については、2,4−チアゾリジンジオン誘導体及び脂肪酸CoAチオエステルについてPPARγのアンタゴニストとしての作用が報告されているものの(非特許文献5、特許文献1)、これらのPPARγアンタゴニストを長期服用する場合においては副作用も懸念されている。
従って、食経験が豊富で安全性が高く副作用の心配のないPPARγ抑制剤が望まれている。
【0005】
一方、リン脂質は、血中コレステロールの低下作用(特許文献2)、抗アレルギー作用(特許文献3)等の作用があることが報告されている。
しかしながら、リン脂質とPPARγの発現との関係については全く知られてはいない。
【特許文献1】国際公開第01/021181号パンフレット
【特許文献2】特開2004−18591号公報
【特許文献3】特開2004−285006号公報
【非特許文献1】Keller, H., Ann. N.Y. Acad. Sci., 684, 157-173 (1993)
【非特許文献2】Braissant, O., Endcrinology, 137, 354-366 (1996)
【非特許文献3】Rosenfield, R. L. Dermatol.,196,43-46,(1998)
【非特許文献4】Zang, Q. J. Invest. Dermatol., 126,42-48,(2006)
【非特許文献5】Oberfield, J.L., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 96, 6102-6106 (1999)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、安全性に優れ、ニキビ等の皮脂脂質異常を伴う皮膚疾患あるいは皮膚トラブルの予防又は改善のための医薬品又は食品等として有用なPPARγ発現抑制剤を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、種々の天然成分について検討した結果、リン脂質にPPARγの発現を抑制する効果があることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、リン脂質を有効成分とするPPARγ発現抑制剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のPPARγ発現抑制剤は、優れたPPARγ発現抑制作用を有し、かつ安全性も高いので、ニキビ等の皮脂脂質異常を伴う皮膚疾患あるいは皮膚トラブルの予防又は改善するための医薬品又は食品等として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のリン脂質としては、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸等のグリセロリン脂質、及び当該リン脂質のリゾ体が好ましく、特に、ホスファチジルエタノールアミン及び/又はリゾホスファチジルエタノールアミン、並びにこれらとホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸等の他のグリセロリン脂質との混合物を用いるのが好ましい。
【0011】
本発明においては、当該リン脂質の単体を単独又は2種以上混合して使用することができるが、当該リン脂質を含む動植物、例えば、大豆、米、とうもろこし、菜種、綿実、小麦、落花生、ひまし、ヒマワリ、大麦、エンバク、紅花、ゴマ等の植物、卵黄、乳、魚介類等の動物の組織から抽出される抽出レシチン、好適には、大豆油を製造する工程で発生する粗レシチンを、アセトン、エタノール等で処理した不溶画分を用いることできる。また、粗レシチンを精製した精製レシチンを使用することもでき、SLP−ホワイト(辻製油)等の市販品を用いることもできる。
【0012】
リゾリン脂質としては、上記リン脂質からホスホリパーゼA2等の酵素処理により生産したもの、またはSLP−ホワイトリゾ(辻製油)等の市販品などを用いることができる。
【0013】
リン脂質を単体で用いる場合は、動植物等の組織から抽出・単離、あるいは化学合成により、入手することが可能である。例えば、ホスファチジルエタノールアミンは、大豆より得られる粗大豆リン脂質から定法に従って抽出・精製することにより得ることができる。例えば、大豆油の製造の際に生成する粗大豆リン脂質を溶媒分画(固液抽出法)、イオン交換クロマトグラフィー、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー等により分離精製することによって得ることができる。また、酵素を用いた塩基交換法によってホスファチジルコリンから合成して得ることもできる。
【0014】
後記実施例に示すように、本発明のリン脂質は、PPARγ遺伝子の発現抑制作用を有することから、PPARγの産生又は活性を抑制できるPPARγ発現抑制剤として使用することができ、また、PPARγ発現抑制剤を製造するために使用することができる。PPARγの発現が抑制できれば、PPARγの過剰発現によって引き起こされる皮脂腺からの過剰な脂質産生を抑制できると考えられ、従って、PPARγ発現抑制剤は、ニキビ等の皮膚脂質異常を伴う皮膚疾患或いは皮膚トラブルの予防又は改善のための、ヒト若しくは動物用の医薬品、医薬部外品又は食品として使用可能である。
また、PPARγ発現抑制剤は、ニキビ等の皮膚脂質異常を伴う皮膚疾患或いは皮膚トラブルの予防又は改善をコンセプトとし、必要に応じてその旨を表示した美容食品、病者用食品若しくは特定保健用食品等の機能性食品として使用することができる。
【0015】
本発明のPPARγ発現抑制剤を医薬品として用いる場合の投与形態としては、例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、腸溶剤、トローチ剤、ドリンク剤等による経口投与又は注射剤、坐剤、経皮吸収剤、外用剤等による非経口投与が挙げられる。また、このような種々の剤型の医薬製剤を調製するには、本発明のリン脂質を単独で、又は他の薬学的に許容される賦形剤(ソルビトール、グルコース、乳糖、デキストリン、澱粉等の糖類、炭酸カルシウム等の無機物、結晶セルロース、蒸留水、ゴマ油、とうもろこし油、オリーブ油、菜種油等)、結合剤、滑沢剤、増量剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、分散剤、懸濁剤、乳化剤、緩衝剤、保存剤、嬌味剤、香料、被膜剤、担体、希釈剤、抗酸化剤、細菌抑制剤等を適宜組み合わせて用いることができる。これらの投与形態のうち、好ましい形態は経口投与であり、経口投与用製剤として用いる場合の該製剤中の本発明のリン脂質の含有量は、一般的に0.01〜95質量%とするのが好ましく、10〜80質量%とするのがより好ましい。
【0016】
本発明のPPARγ発現抑制剤を食品として用いる場合の形態としては、例えば、パン、麺類等に代表される小麦粉加工食品、お粥、炊き込みご飯等の米加工食品、ビスケット、ケーキ、ゼリー、チョコレート、せんべい、アイスクリーム等の菓子類、豆腐、その加工食品等の大豆加工食品、清涼飲料、果汁飲料、乳飲料、炭酸飲料等の飲料類、ヨーグルト、チーズ、バター、牛乳等の乳製品、醤油、ソース、味噌、マヨネーズ、ドレッシング等の調味料、ハム、ベーコン、ソーセージ等の蓄肉、蓄肉加工食品、はんぺん、ちくわ、魚の缶詰等の水産加工食品、調理油ならびにフライ用油等が挙げられる。また、この他、カプセル等の錠剤食、濃厚流動食、自然流動食、半消化態栄養食、成分栄養食、ドリンク栄養食等の経口経腸栄養食品、機能性食品等の形態とすることもできる。
種々の形態の食品を調製するには、本発明のリン脂質を単独で、又は他の食品材料や、溶剤、軟化剤、油、乳化剤、防腐剤、香科、安定剤、着色剤、酸化防止剤、保湿剤、増粘剤等を適宜組み合わせて用いることができる。当該食品中の本発明のリン脂質の含有量は、一般的に0.01〜20質量%とするのが好ましく、0.1〜10質量%とするのがより好ましい。
【0017】
本発明のPPARγ発現抑制剤を医薬品又は食品として使用する場合、成人1人当たりの1日の投与又は摂取量は、本発明のリン脂質として、例えば50〜5000mgとするのが好ましく、更に100〜3000mg、特に500〜2000mgとするのが好ましい。また、当該製剤は、1日1回〜数回に分けて投与することが好ましい。
【実施例】
【0018】
実施例1 大豆由来リン脂質のPPARγ発現抑制作用
実験動物は、オリエンタル酵母より購入した雄性BKS.Cg−+Leprdb/+Leprdb/Jclマウス(db/db、6週齢)を市販固形飼料で1週間予備飼育した後、平均体重が等しくなるように、2群(1群当り6匹)に分け実験に用いた。
試験に用いたトリアシルグリセロール油は、菜種油と紅花油と精製エゴマ油の混合油を使用した。その脂肪酸組成としてC16:0 5.6%、C18:0 2.1%、C18:1 36.7%、C18:2 46.9%、C18:3 6.8%を含有していた。リン脂質は、辻製油より購入した大豆由来リン脂質(SLP−ホワイト)を使用した。試験に用いたSLP−ホワイトは、リン脂質組成として、ホスファチジルコリン 35.2%、ホスファチジルエタノールアミン 28.5%、ホスファチジルイノシトール 18.3%、ホスファチジン酸 8.4%、その他 9.6%を含有しており、脂肪酸組成として、C16:0 19.8%、C18:1 4.8%、C18:2 75.5%を含有していた。
【0019】
対照群には、100gあたり、10gトリアシルグリセロール油、13gスクロース、20gカゼイン、4gセルロールパウダー、3.5gミネラル混合、1gビタミン混合、48.5gポテトスターチを含有する餌を与えて飼育した。試験群には、上記の餌から、3gのトリアシルグリセロール油をリン脂質に置き換えた餌を与え、1ヶ月間飼育した。試験期間中の試験食及び水は自由摂取させた。試験期間中の試験食、水の摂取量に群間差は認められなかった。
【0020】
1ヶ月の飼育後、マウスをエーテル麻酔下で開腹し、腹部大静脈から採血した後、肝臓を摘出した。摘出した肝臓の一部よりRNA抽出試薬を用いてtotal RNAを抽出した。抽出したtotal RNA125ngを用いて、定法に従い、逆転写反応を行った。合成されたcDNAの一部(total RNA 6.25ng相当)に対しABI PRISM7000 Seaquence Detectoin System(アプライドバイオジャパン)を用いて、SYBR Green リアルタイムPCR解析法により、PPARγとその標的遺伝子であるfatty acid binding protein 4(Fabp4)、cell death−inducing DFFA−like effector c(Cidec)、Plasma membrane associated protein,S3−12(S3−12)、cell death−inducing DFFA−like effector a(Cidea)、fatty acid binding protein 5(Fabp5)、monoglyceride lipase(Mgll)、monoacylglycerol O−acyltransferase1(Mogat1)の遺伝子発現の評価に用いた。また、それぞれの遺伝子発現量はハウスキーピング遺伝子の一つであるACIDIC RIBOSOMAL PHOSPHOPROTEIN PO(Arbp)の発現量を基準として補正を行い比較した。
各遺伝子のPCR増幅のために用いたプライマーは以下の通りである。
【0021】
【表1】

【0022】
図1に示すように、リン脂質の摂取により肝臓PPARγの遺伝子発現が有意に減少した。また、PPARγの標的遺伝子であるFabp4CidecS3−12CideaFabp5MgllMogat1の発現も、リン脂質の摂取により有意に減少していた(図1)。このことから、リン脂質はPPARγ発現抑制に有効であることが分る。
【0023】
実施例2 各リン脂質成分のPPARγ発現抑制作用
実験動物は、オリエンタル酵母より購入した雄性BKS.Cg−+Leprdb/+Leprdb/Jclマウス(db/db、6週齢)を市販固形飼料で1週間予備飼育した後、平均体重が等しくなるように、5群(1群当り6匹)に分け実験に用いた。
試験に用いたトリアシルグリセロール油は、実施例1に示した混合油を使用した。ホスファチジルコリンは市販試薬(CALBIOCHEM社製 L−α−Lecithine、大豆由来品)を用いた。ホスファチジルエタノールアミン及びホスファチジルイノシトールは大豆由来リン脂質SLP−ホワイト(辻製油)から、エタノールによる溶媒分画により濃縮画分を得た後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、得たものを使用した。ホスファチジン酸は、上記ホスファチジルコリンよりSteptomyces chromofucus由来ホスホリパーゼDにより加水分解反応を行い、得たものを用いた。精製ホスファチジルコリンは、リン脂質組成として90%以上のホスファチジルコリンを含有しており、脂肪酸組成としてC16:0 12.4%、C18:1 3.8%、C18:2 83.8%を、精製ホスファチジルエタノールアミンはリン脂質組成として、90%以上のホスファチジルエタノールアミンを含有しており、脂肪酸組成として、C16:0 21.0%、C18:1 3.3%、C18:2 75.7%を、精製ホスファチジルイノシトールはリン脂質組成として、90%以上のホスファチジルイノシトールを含有しており、脂肪酸組成として、C16:0 35.0%、C18:1 6.7%、C18:2 58.2%を、精製ホスファチジン酸はリン脂質組成としてホスファチジン酸を90%以上含有しており、脂肪酸組成として、C16:0 12.4%、C18:1 3.8%、C18:2 83.8%含有していた。
【0024】
対照群には、100gあたり、10gトリアシルグリセロール油、13gスクロース、20gカゼイン、4gセルロールパウダー、3.5gミネラル混合、1gビタミン混合、48.5gポテトスターチを含有する餌を与えて飼育した。試験群には、上記の餌から、1gのトリアシルグリセロール油を精製リン脂質に置き換えた餌を与え、1ヶ月間飼育した。試験期間中の試験食及び水は自由摂取させた。試験期間中の試験食、水の摂取量に群間差は認められなかった。
1ヶ月の飼育後、実施例1と同様にして、肝臓におけるPPARγの発現量を測定した。
【0025】
肝臓遺伝子発現変化をリアルタイムPCRにより解析した結果、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸の摂取により、肝臓PPARγの遺伝子発現が減少した(図2)。特に、ホスファチジルエタノールアミンの摂取により最も強く肝臓PPARγの遺伝子発現が減少した(図2)。
図2に示すように、リン脂質の各種成分の単独摂取がPPARγの発現抑制に有効であり、特に、ホスファチジルエタノールアミンが最も有効であることが分る。
【0026】
実施例3 リゾリン脂質のPPARγ発現抑制作用
実験動物は、オリエンタル酵母より購入した雄性BKS.Cg−+Leprdb/+Leprdb/Jclマウス(db/db、6週齢)を市販固形飼料で1週間予備飼育した後、平均体重が等しくなるように、2群(1群当り6匹)に分け実験に用いた。
試験に用いたトリアシルグリセロール油は、実施例1に示した混合油を使用した。リゾリン脂質は、辻製油より購入したリゾリン脂質(SLP−ホワイトリゾ)を使用した。試験に用いたSLP−ホワイトリゾは、リン脂質組成として、リゾリン脂質を18%〜30%含有している。
【0027】
対照群には、100gあたり、10gトリアシルグリセロール油、13gスクロース、20gカゼイン、4gセルロールパウダー、3.5gミネラル混合、1gビタミン混合、48.5gポテトスターチを含有する餌を与えて飼育した。試験群には、上記の餌から、3gのトリアシルグリセロール油をリゾリン脂質に置き換えた餌を与え、1ヶ月間飼育した。試験期間中の試験食及び水は自由摂取させた。試験期間中の試験食、水の摂取量に群間差は認められなかった。
1ヶ月の飼育後、実施例1と同様にして、肝臓におけるPPARγ、Fabp4Cidecの発現量を測定した。
【0028】
肝臓遺伝子発現変化をリアルタイムPCRにより解析した結果、リゾリン脂質の摂取により、肝臓PPARγの遺伝子発現が有意に減少した(図3)。また、PPARγの標的遺伝子である脂肪細胞分化関連遺伝子Fabp4Cidecの発現もリゾリン脂質の摂取により有意に減少した(図3)。
図3に示すように、リゾリン脂質はPPARγ発現抑制に有効であることが分る。
実施例3と4の結果を総合するとリゾリン脂質中のリゾホスファチジルエタノールアミンがリゾリン脂質中でも最も有効であると考えられる。
【0029】
実施例4
SLP−ホワイト(辻製油)をゼラチンカプセルに充填し、1錠300mgの軟カプセル剤を得た。
【0030】
実施例5
SLP−ホワイト(辻製油) 200mg、精製ホスファチジルエタノールアミン 100mgをゼラチンカプセルに充填し、1錠300mgの軟カプセル剤を得た。
【0031】
実施例6
下記成分を用い、定法に従って1錠300mgの錠剤を製造した。
組成(mg); SLP−ホワイト(辻製油) 100、ヒドロキシプロピルセルロース 60、軽質無水ケイ酸 10、乳糖 35、結晶セルロース 35、タルク 30、ジアシルグリセロール 30
【0032】
実施例7
下記成分を用い、定法に従って1錠300mgの錠剤を製造した。
組成(mg); 精製ホスファチジルエタノールアミン 100、デンプン 150、ステアリン酸マグネシウム 10、乳糖 40
【0033】
実施例8
下記成分を用い、定法に従って1錠300mgの錠剤を製造した。
組成(mg); 精製ホスファチジルエタノールアミン 50、SLP−ホワイトリゾ(辻製油) 50、デンプン 150、ステアリン酸マグネシウム 10、乳糖 40
【0034】
実施例9
市販の100gのブラックチョコレートを60℃で1時間保持して溶解した。これに、精製ホスファチジルエタノールアミンを2重量%添加してテンパリングすることによりリン脂質配合チョコレートを得た。
【0035】
実施例10
下記成分を混捏した後、原料を発酵後、ねかし、整形、焙炉の工程を経てリン脂質配合パンを得た。
組成(g); SLP−ホワイトリゾ 1.0、強力粉 100、イースト 2、食塩 2、砂糖 3、ショートニング 3、イーストフード 0.15、水 60
【0036】
実施例11
下記成分を混合した原料を80℃に加熱し、均質機を用いて60kg/cm2 で均質し、5℃の冷蔵庫で12時間保持した。5℃で12時間保持した後、ホイップ用攪拌機を用いて400rpmで4分間ホイップし、リン脂質含有ホイップクリームを得た。
組成(g); SLP−ホワイト 0.5、水 44.35、融点30℃の植物油脂 30、脱脂乳 25、ショ糖脂肪酸エステル 0.4、モノグリセライド 0.1、リン酸三カリウム 0.15
【0037】
実施例12
下記成分を混合した原料を80℃に加温し、均質機を用いて150kg/cm2 で均質し、250ml容のステンレス製缶に250ml充填した後、巻き締め機で蓋をした。これをレトルト釜で120℃、10分間の殺菌を行い、その後10℃に冷却し、リン脂質含有コーヒーを得た。
組成(g); SLP−ホワイト 0.2、水 40、牛乳 8、砂糖 10、インスタントコーヒー粉末 2、モノグリセライド 0.1
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】リン脂質摂取によるPPARγ及びPPARγ標的遺伝子の発現変化を示すグラフ。
【図2】各リン脂質成分摂取によるPPARγ遺伝子の発現変化を示すグラフ。
【図3】リゾリン脂質摂取によるPPARγ及びPPARγ標的遺伝子の遺伝子発現変化を示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン脂質を有効成分とするPPARγ発現抑制剤。
【請求項2】
リン脂質がリゾリン脂質である請求項1記載のPPARγ発現抑制剤。
【請求項3】
リン脂質がホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール及びホスファチジン酸から選ばれる1種以上である請求項1記載のPPARγ発現抑制剤。
【請求項4】
PPARγ発現抑制剤の製造のためのリン脂質の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−74793(P2008−74793A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−257960(P2006−257960)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】