説明

PTC素子

【課題】 素体から延出するリード端子を他の端子に接合する際の接合強度を向上させることが可能なPTC素子を提供すること。
【解決手段】 このPTC素子1は、素体10と、素体10を挟んで圧着される一対の端子電極12,14と、素体10を覆う保護膜16a〜16dを更に備え、端子電極12,14はそれぞれ、素体10と重なる重複領域121,141と、素体10と重ならない非重複領域122,142とを有し、端子電極12,14それぞれの重複領域121,141には素体10に食い込むアンカー突起ACが形成されており、素体10に隣接する非重複領域122,142には保護膜16a〜16dの剥離を抑制するための剥離抑制領域が形成されていると共に、少なくとも剥離抑制領域を除いた非重複領域122,142においてはアンカー突起ACが押しつぶされて平坦化され平坦化突起FCとされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PTC(Positive Temperaature Coefficient)素子に関する。
【背景技術】
【0002】
過電流から回路素子を保護するための素子として、PTC素子が知られている。PTC素子は、ある特定の温度領域に達すると抵抗値の正温度係数が急激に増大する素子である。そのようなPTC素子の一つとして、下記特許文献1に記載されたものが知られている。
【特許文献1】特公平5−9921号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に記載のPTC素子は、重合体とその重合体に分散された導電性粉末とからなる正の抵抗温度特性を有する素子の表面に、その素子の表面と接する面を粗面化した金属板を接合し、その金属板を端子電極としている。このように素子の表面と接する面を粗面化するのは、素子と金属板との接合強度を向上させるためである。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載のPTC素子のように素子の表面と接する面全体を粗面化した場合、端子電極となった金属板を外部端子等の接続端子と溶接やはんだで接合すると接合強度が十分に確保できない場合があった。
【0005】
そこで本発明では、素体から延出するリード端子を他の端子に接合する際の接合強度を向上させることが可能なPTC素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上述した課題を解決可能なPTC素子を検討する過程で、次のような新たな課題も見出した。PTC素子を製造してから所定の時間が経過すると、素体に周囲から酸素が入ってくる場合がある。そこで素体を覆うように保護膜を設けることが考えられる。しかしながら、この保護膜が剥がれる場合があり、何らかの対策が必要であることを本発明者らは見出した。本発明はこの視点からなされたものである。
【0007】
本発明に係るPTC素子は、結晶性高分子に導電性フィラーを分散させてなる素体と、当該素体を挟んで圧着される一対のリード端子とを備えるPTC素子であって、素体の一対のリード端子に圧着されていない部分を覆う保護膜を更に備え、一対のリード端子はそれぞれ、素体と重なる重複領域と、素体と重ならない非重複領域とを有し、一対のリード端子それぞれの重複領域には素体に食い込むアンカー突起が形成されており、素体に隣接する非重複領域には保護膜の剥離を抑制するための剥離抑制領域が形成されていると共に、少なくとも剥離抑制領域を除いた非重複領域においてはアンカー突起が押しつぶされて平坦化されている。
【0008】
本発明によれば、リード端子の剥離抑制領域を除いた非重複領域が平坦化されているので、他の端子と接合する際の接合強度を向上させることができる。また、剥離抑制領域が素体に隣接する非重複領域に形成されているので、素体を覆う保護膜の剥離を抑制できる。
【0009】
また本発明では、剥離抑制領域は一対のリード端子が互いに重なりあう領域に形成されていることも好ましい。剥離抑制領域がリード端子が互いに重なりあう領域に形成されているので、保護膜をリード端子が挟み込み、保護膜の剥離をより抑制できる。
【0010】
また本発明では、剥離抑制領域においては保護膜に食い込むアンカー突起が形成されていることも好ましい。剥離抑制領域にアンカー突起が形成されているので、保護膜の剥離をより効果的に抑制できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、素体から延出するリード端子を他の端子に接合する際の接合強度を向上させることが可能となると共に、素体を覆う保護膜の剥離を抑制できる。従って、素体に酸素が接触し、素体が酸化することを抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の知見は、例示のみのために示された添付図面を参照して以下の詳細な記述を考慮することによって容易に理解することができる。引き続いて、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0013】
本発明の実施形態であるPTC素子について図1を参照しながら説明する。図1の(a)は、PTC素子1の平面図であり、図1の(b)は、PTC素子1の中央近傍(図1の(a)のI−I)における断面図である。PTC素子1は、ポリマーPTC素子であり、一対の端子電極12,14(リード端子)と、素体10と、保護膜16a,16b,16c,16dとを備えている。
【0014】
一対の端子電極12,14は、厚みが0.1mm程度のNi又はNi合金である。一対の端子電極12,14は、それぞれの一部が対向するように配置されている。その対向している部分の間には素体10が配置されているので、一対の端子電極12,14はそれぞれの向き合う面で素体10を挟んでいる。従って、一対の端子電極12,14にはそれぞれ、素体10と重なる重複領域121,141と、素体10と重ならない非重複領域122,142とが形成されている。
【0015】
素体10は、端子電極12と端子電極14とが互いに重なりあう部分よりも小さくなるように形成されている。従って、素体10の周囲には、端子電極12と端子電極14とが互いに重なりあうが、素体10とは重ならない非重複領域122,142が形成されている。
【0016】
素体10は、結晶性高分子樹脂に導電性フィラーを分散させて形成されている。導電性フィラーとしてはNi粉が、結晶性高分子樹脂としては熱可塑性樹脂であるポリエチレン樹脂がそれぞれ好適に用いられる。素体10は一対の端子電極12,14に加圧・加熱して圧着されている。
【0017】
保護膜16a,16b,16c,16dは、それぞれ素体10が端子電極12,14に圧着されていない部分を覆うように配置されている。素体10が端子電極12,14に圧着されていない面は4面あり、保護膜16a,16b,16c,16dはそれぞれその4面に沿って配置されている。
【0018】
保護膜16a,16b,16c,16dは、エポキシ樹脂とチオール系硬化剤とが反応して形成された硬化物層中に、その硬化物層よりも酸素透過性の低い材料からなるフィラーが分散されて形成されている。フィラーは無機フィラーであることが好ましい。また、フィラーの少なくとも一部は板状であることが好ましい。また、保護膜16a,16b,16c,16dは、それら保護膜全体の質量を基準としてフィラーを5〜50質量%含んでいることも好ましい。
【0019】
保護膜16a,16b,16c,16dは、例えば、エポキシ樹脂、チオール系硬化剤及びフィラーを含有するエポキシ樹脂組成物を過熱してエポキシ樹脂とチオール系硬化剤との反応を進行させることにより形成される。
【0020】
フィラーとしては、マイカ、シリカ、タルク、粘土(天然若しくは合成スメクタイト又はそれらの混合物等)、ガラス、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム及びセラミック等の無機フィラーや、銀粉、金粉、銅粉及びニッケル粉等の金属フィラー、カーボン及びポリイミド等の有機フィラーが好適に用いられる。
【0021】
端子電極12,14それぞれが素体10を挟む面には、アンカー突起AC及び平坦化突起FCがそれぞれ複数形成されている。
【0022】
アンカー突起ACは、重複領域121,141と、非重複領域122,142であって重複領域121,141に隣接する領域(剥離抑制領域)とにそれぞれ形成されている。別の観点からは、アンカー突起ACは、重複領域121,141と、非重複領域122,142であって端子電極12,14が互いに重なりあっている領域とにそれぞれ形成されている。
【0023】
平坦化突起FCは非重複領域122,142であって、剥離抑制領域を除いた領域に形成されている。別の観点からは、平坦化突起FCは非重複領域122,142であって、端子電極12,14が互いに重なりあっていない領域に形成されている。
【0024】
尚、図1においては、説明のためにアンカー突起AC及び平坦化突起FCを相対的に大きく描いている。実際のアンカー突起AC及び平坦化突起FCは微小突起であって視認することは困難な大きさとなっている。以下の説明に用いる図面においても同様である。
【0025】
アンカー突起ACは、それぞれ大径部及び小径部を有している。大径部は、アンカー突起ACが端子電極12,14から延びる方向において先端側に設けられ、その方向における外周が小径部の外周よりも大きくなるように形成されている。小径部は、大径部よりもアンカー突起ACの根元側に設けられている。各アンカー突起ACにおける大径部及び小径部の形状は不揃いであってもよい。また、大径部及び小径部の外周形状が円形又は楕円形といった整った形状でなく、いびつな形状であってもよい。
【0026】
隣接するアンカー突起ACは、互いに離隔するように配置されている。従って、各アンカー突起AC間に形成される凹部に素体10が入り込み(素体10にアンカー突起ACが食い込み)、端子電極12,14と素体10とが固定されている。また、各アンカー突起AC間に形成される凹部に保護膜16a,16b,16c,16dに入り込み(保護膜16a,16b,16c,16dにアンカー突起ACが食い込み)、端子電極12,14と保護膜16a,16b,16c,16dとが固定されている。
【0027】
平坦化突起FCは、それぞれ大径部及び小径部を有している。大径部は、平坦化突起FCが端子電極12,14から延びる方向において先端側に設けられ、その方向における外周が小径部の外周よりも大きくなるように形成されている。大径部の先端には平坦面が形成されている。小径部は、大径部よりも平坦化突起FCの根元側に設けられている。各平坦化突起FCにおける大径部及び小径部の形状は不揃いであってもよい。また、大径部及び小径部の外周形状が円形又は楕円形といった整った形状でなく、いびつな形状であってもよい。
【0028】
隣接する平坦化突起FCは、互いに接するように配置されている。各平坦化突起FCの平坦面(平坦化突起FCの先端面)が連続し、実質的な平坦面を形成している。従って、各平坦化突起間に形成される凹部に素体10や保護膜16a,16b,16c,16dが入り込むことは実質的にない。もっとも、全面に渡って完全に各平坦化突起FCが接しているわけではなく、端子電極12,14が他の端子と接合する際の接合強度に実質的な影響を与えない範囲で、平坦化突起FC同士が離隔している場合もある。
【0029】
本実施形態においては平坦化突起FCを互いに接するように形成することによって実質的な平坦面を形成したけれども、実質的な平坦面を形成することが可能であれば、実施形態は上述したものに限られない。例えば、切削又は研削するなどして平坦化しても構わない。
【0030】
本実施形態の変形例を図2に示す。図2は、変形例であるPTC素子2の断面図である。PTC素子2は、一対の端子電極22,24(リード端子)と、素体10aと、保護膜26a,26b,26c,26dとを備えている。
【0031】
一対の端子電極22,24は、厚みが0.1mm程度のNi又はNi合金である。一対の端子電極22,24は、それぞれの一部が対向するように配置されている。その対向している部分の間には素体10aが配置されているので、一対の端子電極22,24はそれぞれの向き合う面で素体10aを挟んでいる。従って、一対の端子電極22,24にはそれぞれ、素体10aと重なる重複領域221,241と、素体10aと重ならない非重複領域222,242とが形成されている。
【0032】
素体10aは、端子電極22と端子電極24とが互いに重なりあう部分とほぼ同じ形状に形成されている。素体10aは、素体10と同様の組成であるので、その説明を省略する。素体10aは一対の端子電極22,24に加圧・加熱して圧着されている。
【0033】
保護膜26a,26b,26c,26dは、それぞれ素体10aが端子電極22,24に圧着されていない部分を覆うように配置されている。素体10aが端子電極22,24に圧着されていない面は4面あり、保護膜26a,26b,26c,26dはそれぞれその4面に沿って配置されている。
【0034】
保護膜26a,26b,26c,26dの組成等は、既に説明した保護膜16a,16b,16c,16dと同様であるのでその説明を省略する。
【0035】
端子電極22,24それぞれが素体10aを挟む面には、アンカー突起AC及び平坦化突起FCがそれぞれ複数形成されている。
【0036】
アンカー突起ACは、重複領域221,241と、非重複領域222,242であって重複領域221,241に隣接する領域(剥離抑制領域)とにそれぞれ形成されている。平坦化突起FCは非重複領域222,242であって、剥離抑制領域を除いた領域に形成されている。
【0037】
引き続いて、本実施形態のPTC素子1及びPTC素子2における保護膜16a〜16d及び保護膜26a〜26dの剥離防止効果について説明する。比較の対象としては、図3に示すPTC素子4を用いる。
【0038】
PTC素子4は、一対の端子電極42,44と、素体10aと、保護膜46a,46b,46c,46dとを備えている。
【0039】
一対の端子電極42,44は、厚みが0.1mm程度のNi又はNi合金である。一対の端子電極42,44は、それぞれの一部が対向するように配置されている。その対向している部分の間には素体10aが配置されているので、一対の端子電極42,44はそれぞれの向き合う面で素体10aを挟んでいる。従って、一対の端子電極42,44にはそれぞれ、素体10aと重なる重複領域421,441と、素体10aと重ならない非重複領域422,442とが形成されている。
【0040】
素体10aは、端子電極42と端子電極44とが互いに重なりあう部分とほぼ同じ形状に形成されている。保護膜46a,46cは、それぞれ素体10aが端子電極22,24に圧着されていない部分を覆うように配置されている。尚、図2に示す保護膜26b,26dに相当する保護膜も形成されているが、図3には明示しない。保護膜46a,46cの組成等は、既に説明した保護膜16a,16b,16c,16dと同様であるのでその説明を省略する。
【0041】
端子電極42,44それぞれが素体10aを挟む面には、アンカー突起AC及び平坦化突起FCがそれぞれ複数形成されている。
【0042】
アンカー突起ACは、重複領域421,441のみに形成されている。平坦化突起FCは非重複領域422,442に形成されている。
【0043】
上述したPTC素子1、PTC素子2、PTC素子3について、端子電極の剥離試験を行った結果を図4に示す。図4は、PTC素子1、PTC素子2、及びPTC素子4それぞれの端子電極を素体から垂直に引き離した場合の保護膜の剥離強度を示している。
【0044】
図4に示すように、本実施形態に係るPTC素子1及びPTC素子2は、PTC素子4に比較して剥離強度が高くなっている。特にPTC素子1は剥離強度が極めて高い。具体的には、PTC素子4の剥離強度はサンプル数5で、2.66N〜3.33N、平均値が2.75Nである。PTC素子2の剥離強度はサンプル数5で、4.61N〜7.16N、平均値が5.98Nである。PTC素子1の剥離強度はサンプル数5で、17.46N〜23.37N、平均値が21.26Nである。
【0045】
これは、保護膜16a〜16d,26a〜26dにアンカー突起ACが食い込んでいると、剥離強度が上昇するためである。また、保護膜16a〜16dは、端子電極12と端子電極14とに挟まれているので、更に剥離強度が上昇するためである。
【0046】
引き続いて、上述したPTC素子1,2の製造方法について説明する。PTC素子1,2の製造方法は、素体準備工程と、端子準備工程と、平坦化工程と、熱圧着工程と、保護膜形成工程と、を備えている。
【0047】
素体準備工程では、素体10,10aとなる素体素材を作製して準備する。まず、導電性フィラーとなるNi粉と、母材樹脂となるポリエチレンとを混錬してブロックを形成する。このブロックを円盤状にプレスし、カットして素体素材を得る。
【0048】
続く端子準備工程では、端子電極12,14,22,24となる金属板を作成して準備する。端子電極12,14,22,24が素体10,10aを挟む面には、アンカー突起ACが形成されている。アンカー突起ACは、上述した節瘤状の突起が連続して形成されたものである。
【0049】
平坦化工程では、上述したように必要な領域においてアンカー突起ACを押しつぶして平坦化し、平坦化突起FCとする。この場合のプレス移動量は、10〜35μmであり、より好ましくは10〜15μmである。
【0050】
各平坦化突起FCは、上述したように互いに接触して実質的に平坦化されている。端子電極の厚みからみると、アンカー突起ACが形成されている領域の平均厚みよりも、平坦化突起FCが形成されている領域の平均厚みは薄くなっている。尚、平均厚みは、所定面積を打ち抜いた試料を作り、その質量及び比重から求めることができる。
【0051】
例えば本実施形態の場合、平坦化後の厚みは、重複領域121,141と剥離抑制領域(アンカー突起ACが形成されている領域)を含む非重複領域122,142が60〜140μm、剥離抑制領域(アンカー突起ACが形成されている領域)を除く非重複領域122,142が50〜120μmであることが好ましい。この場合、アンカー突起ACの平均高さは5〜40μmである。また、平坦化後の厚みは、重複領域121,141と剥離抑制領域を含む非重複領域122,142が95〜100μm、剥離抑制領域を除く非重複領域122,142が80〜90μmであることがより好ましい。この場合、アンカー突起ACの平均高さは5〜20μmである。
【0052】
重複領域121,141と剥離抑制領域を含む非重複領域122,142の厚みが140μmよりも厚くなると、端子電極12,14が厚くなり過ぎてしまい、素体10と端子電極12,14との熱圧着が不十分となり、素体10と端子電極12,14との接続強度が弱くなる。従って、剥離抑制領域を除く非重複領域122,142の厚みは、平坦化を考慮して120μm以下とすることが好ましい。
【0053】
また、剥離抑制領域を除く非重複領域122,142の厚みが50μmよりも薄くなると端子電極12,14自体の強度が低下し、剥離抑制領域を除く非重複領域122,142において折れ曲がってしまうなど製造工程時及び製品後の取り扱いが困難になる。従って、重複領域121,141の厚みは、非重複領域122,142の平坦化を考慮して60μm以上とすることが好ましい。
【0054】
また、アンカー突起ACの平均高さが5μmよりも低いと、素体10と端子電極12,14との間におけるアンカー効果を十分に発揮できず、素体10と端子電極12,14との接続強度が弱くなる。また、アンカー突起ACの平均高さが40μmよりも高いと、アンカー突起AC自体の強度が低下し、素体10との熱圧着時にアンカー突起ACが端子電極12,14から脱落する。
【0055】
熱圧着工程では、一対の端子電極12,14それぞれにおける重複領域121,141で素体素材(素体)を挟み込み、熱圧着によって一対の端子電極12,14と素体10とを固定する。
【0056】
保護膜形成工程では、保護膜16a,16b,16c,16dを形成する。保護膜16a,16b,16c,16dは、エポキシ樹脂とチオール系硬化剤とが反応して形成された硬化物層中に、その硬化物層よりも酸素透過性の低い材料からなるフィラーを分散して形成する。
【0057】
本実施形態によれば、端子電極12,14の剥離抑制領域を除いた非重複領域122,142が平坦化されているので、他の端子と接合する際の接合強度を向上させることができる。また、剥離抑制領域が素体に隣接する非重複領域122,142に形成されているので、素体10を覆う保護膜16a〜16dの剥離を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本実施形態におけるPTC素子を示す平面図及び断面図である。
【図2】本実施形態におけるPTC素子の変形例を示す図である。
【図3】本実施形態の比較例のPTC素子を示す図である。
【図4】本実施形態のPTC素子と比較例のPTC素子とを比較した結果を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
1…PTC素子、12,14…端子電極、10…素体、121,141…重複領域、122,142…非重複領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性高分子に導電性フィラーを分散させてなる素体と、当該素体を挟んで圧着される一対のリード端子とを備えるPTC素子であって、
前記素体の前記一対のリード端子に圧着されていない部分を覆う保護膜を更に備え、
前記一対のリード端子はそれぞれ、前記素体と重なる重複領域と、前記素体と重ならない非重複領域とを有し、
前記一対のリード端子それぞれの重複領域には前記素体に食い込むアンカー突起が形成されており、
前記素体に隣接する前記非重複領域には前記保護膜の剥離を抑制するための剥離抑制領域が形成されていると共に、少なくとも前記剥離抑制領域を除いた前記非重複領域においては前記アンカー突起が押しつぶされて平坦化されている、PTC素子。
【請求項2】
前記剥離抑制領域は前記一対のリード端子が互いに重なりあう領域に形成されている、請求項1に記載のPTC素子。
【請求項3】
前記剥離抑制領域においては前記保護膜に食い込むアンカー突起が形成されている、請求項1又は2に記載のPTC素子。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−266216(P2007−266216A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−87912(P2006−87912)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】