説明

PTC線状温熱器具

【課題】 線状で可撓性のあるPTC特性を持った発熱体を熱源とし、人体の患部や所望箇所にあてがってその部分を加温する温熱器具を提供する。
【解決手段】 6〜10μmの間にピーク波長をもつ遠赤外線を放出するPTC特性をもった発熱体を熱源とし、この熱源を包む内被、外被からなる被膜体のうち、内被は熱源保護のため可撓性をそこなわずしかも遠赤外線透過能のある布で構成し、その外側の外被には可撓性をそこなわず、起毛があって肌触りの良い布地を用いた温熱器具である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人の身体の患部や所望とする箇所に当てがい、その部分を直接または間接的に温めるPTC特性を持った温熱器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人体を直接温める温熱器具としては、例えば頸椎の圧迫による神経系の損傷や関節痛などで患部を加温治療することが知られている。しかし加温に用いる器具は、ニクロム線熱源では、サーモスタットや温度センサーによって温度維持を行い、使用者の状況や患部の状態に細かく応じるためには温度制御付きの大がかりな装置が必要であった。
【0003】
一方必要とする温度になると急速に電気抵抗が増して電流が流れなくなるというPTC特性を持った熱源は、熱源そのものが温度制御機能を有している。そのために温度を制御するコントローラが不要で、過熱しないという安全性もある。また設定温度で遠赤外線を放射させやすいという特性から、人体を温めるに適した熱源である。しかしこのようなPTC特性のある熱源でもこれを面状発熱体とすると、頻繁な折曲げや極度の鋭角折曲げには弱く、その弱点を補うため堅い材質のもので補強する必要がある。従って微妙な曲面を有する人体部位への密着性を得ることが困難だった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−149399
【特許文献2】特開2001−160477
【特許文献3】特開平10−328223
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のニクロム線を熱源とした温熱器具は、温度を調節するコントローラが必要で、故障による過熱の危険性、電力消費量が大となる問題、および人体に接するにもかかわらず有害性があると云われる電磁波放出が多いという問題がある。また人に優しい遠赤外線を大量に出しやすいPTC特性を持った熱源からなる温熱器具は、発熱体形状が面状では人体の様々な部位への密着が困難で、頻繁な折曲げや極度の鋭角折曲げにも弱く、用途とあてがう部位が限られた温熱器具であった。また線状で自由に曲げやすく可撓性のあるPTC特性を持った発熱体を熱源とした温熱具はこれまで提供されていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、線状でPTC特性を有した熱源(以下、これをPTC線状発熱体という)は、折り曲げたり、必要箇所に巻きつけたりできることに着目したもので、このPTC線状発熱体を被膜体で覆って温熱器具としたものである。被膜体のうち発熱体を直接覆う内被には熱源保護のため可撓性をそこなわない素材、例えば繊維織布や不織布を使い、またこの内被の外側を覆う外被には可撓性をそこなわず、起毛があって肌触りが良く、人の表皮に無害で、通気性のある布、例えば天然繊維織物で構成したものである。加えて首など加温対象となる人体部位の周囲長さに応じて簡単に発熱体長さを調節して固定可能な構造とした温熱器具である。PTC線状発熱体線を、例えばループ状や渦巻き状にして面状体として活用する場合は、上記の内被と外被の両面もしくは片面に覆い温熱器具とするとよい。
【発明の効果】
【0007】
発熱体のうちでも、6〜10μmの間にピーク波長を有する発熱体を熱源とすると、人の赤血球の直径が約8μmである為、遠赤外線との共振効果により、血行の促進、温熱効果が期待できる。またこの波長帯は蛋白質や脂肪など人体を構成する物質の吸収波長帯でもあり、人体を温めるに適している。さらにPTC特性を有した発熱体を熱源とすることは、目的とする遠赤外線波長が得やすく、温度も自動制御し易く省エネルギー効果も得られる。また発熱体を覆う被膜体の内被と外被により、低温火傷防止と、人体部位への良好な触感性をもたせることにより、使用者に応じた血流促進や健康増進効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施例1における線状温熱器具の一部を断面にした正面図である。
【図2】同温熱器具を首に巻く使用例を示した正面図である。
【図3】同使用例の側面図である。
【図4】本発明の実施例2における温熱器具で一部を破断して線状熱源を部分露出させた平面図である。
【図5】同実施例2の温熱器具の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
柔軟な紐状で可撓性のあるPTC線状発熱体を熱源とし、その外側を内被と外被でくるんだものは、人体の温める部位と目的によって、首などに紐状マフラーのように巻き付けやすくしたものの他、いくつかの線状熱源を併用して、各種部位に包帯状で巻き付けやすくしたもの、サポーター状で膝などに当てやすいパット状にしたもの、さらには線状熱源を曲げて例えばループ状や渦巻き状にして面状に拡げ、カーペットや毛布、衣服の一部に組み込んで利用することができる。
【実施例1】
【0010】
以下、本発明の実施例1を説明する。波長6〜10μmの間にピーク波長があるPTC線状発熱体を熱源1とし、これを包む内被2は、遠赤外線の透過を邪魔せず、可撓性をそこなわず、柔軟性があってしかも熱源を保護する、例えば繊維織物や不織布で構成する。その外側を覆う外被3は可撓性をそこなわず、起毛があって肌触りが良く、人の表皮に無害で通気性のある布地、例えば天然及び人造の繊維織物でつくられている。この線状の温熱器具は、首など加温対象となる人体部位の周囲長さに応じて、例えばヒモやマジックテープ(クラレ(株)の登録商標)などで簡単に長さ調節して固定できるようにし、この実施例1ではゴム入りリング4で調節可能な構造とした。電源コードを除く外寸は径40mmで長さは850mm。用いる供給電源は交流100Vもしくは電池とした。5は通電線を示す。実施例の図2は首に巻きつけた使用例の正面図であり、図3はその側面図である。
【実施例2】
【0011】
次に、板状にした本発明の実施例2を説明する。波長6〜10μmの間にピーク波長があるPTC線状発熱体を熱源1とし、この発熱体を蛇行するループ状に拡げる。この熱源1を包む被膜体のうち上側の内被2は、遠赤外線の透過を邪魔せず、可撓性をそこなわず、柔軟性があって熱源の片面を保護する、例えば繊維織物や不織布で構成する。内被2と反対側の熱源1の下側には断熱性のある素材6を配置する。そしてこれら全体の外側を覆う外被3は可撓性をそこなわず、起毛があって肌触りが良く、しかも人の表皮に無害で、通気性のある布地例えば天然及び人造の繊維織物で構成して板状の温熱器具とした。電源部を除く外形寸法は450mm×450mm×20mm。供給電源は交流100Vもしくは電池とした。図中、7は通電を制御するスイッチを示す。図4は本発明温熱器具の実施例2の温熱器具であり、一部を破断して線状熱源を部分露出させた平面図である。図5はその断面図である。
【産業上の利用可能性】
【0012】
この発明の温熱機器を人体の各部位の温熱治療に使うと、首、眼、背中、腰、お尻、膝、肘、ふくらはぎ、足裏などの血行促進が図れ、その結果として疲労回復効果が得られる。
【符号の説明】
【0013】
1 可撓性あるPTC線状発熱体
2 内被
3 外被
4 ゴム入りリング
5 通電線
6 断熱材
7 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
6〜10μmの間にピーク波長があるPTC特性を有した線状発熱体を熱源とし、その外側を内被、外被の2つの被膜体で覆った温熱器具。
【請求項2】
6〜10μmの間にピーク波長があるPTC特性を有した可撓性の線状発熱体を熱源とし、これを覆う被膜体のうち内被は熱源保護のため可撓性をそこなわず柔軟性があってしかも遠赤外線透過能もしくは吸収放射能のある織布もしくは不織布で構成し、外側の外被には可撓性をそこなわず、起毛があって肌触りが良く、人体に無害で通気性を有する遠赤外線透過能のある布地で構成した請求項1記載の温熱器具。
【請求項3】
6〜10μmの間にピーク波長があるPTC特性を有した可撓性の線状発熱体をループ状または渦巻き状として面状に拡げ、これを覆う内被、外被からなる被膜体のうち内被は熱源保護のため可撓性をそこなわず柔軟性があってしかも遠赤外線透過能もしくは吸収放射能のある織布もしくは不織布で片面もしくは両面を構成し、その内被の外側の外被には可撓性をそこなわず、起毛があって肌触りが良く、人体に無害で通気性を有する遠赤外線透過能のある布地を片面もしくは両面を構成した請求項1記載の温熱器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−194194(P2011−194194A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88152(P2010−88152)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(510095639)
【Fターム(参考)】