説明

PTPシートの検査装置

【課題】明るさのムラを抑えつつPTPシートの網目模様を強調した画像を取得することが可能な検査装置を提供する。
【解決手段】PTPシート2の長辺2aと平行な方向に配列された複数の光源を有し、PTPシート2と直交する方向から見たときに、各光源から長辺2aに対して斜めに傾いた方向の照明光をPTPシート2に照射する照明器10と、照明されたPTPシート2を撮像するカメラ11とを検査装置1に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PTPシートのシール不良等を検査する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
錠剤の包装体等として流通しているPTPシート(Press Through Package)は、樹脂シートに形成された多数のポケットに錠剤等の被包装物を収容し、裏面側から金属箔を溶着してポケットをシールした構成を有している。この種のPTPシートの包装工程では金属箔の溶着不良等の検査が必要とされることがある。その検査方法としては、樹脂シートのポケット以外の平面部に形成される格子状の網目模様に着目し、PTPシートの画像上で網目模様が正しく存在するか否かを検査することにより、欠陥の有無を判別する方法が存在する。その検査方法に使用される装置としては、PTPシートの四隅に配置された照明器からPTPシートに向かって斜め方向に照明光を照射し、照明されたPTPシートを上方から撮影する検査装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−349837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般に、PTPシートの網目模様は、矩形状のシートの各辺に対して斜め方向に形成されている。従って、従来の検査装置によれば、網目模様に対して照明光を平行及び直交する方向に照明することにより、網目模様を強調した画像を取得して検査精度を高めることができる。しかし、照明器がPTPシートの各辺に対して斜めに傾けられているため、照明器からPTPシートの各部までの距離に差が生じる。そのため、照明器から遠いシート中央部は暗く撮影され、照明器から近いシート周縁部は明るく撮影されて画像の明るさにムラが生じることがある。この場合、明るさのムラを低減するために照明角度を調整し、あるいは照明器の台数を増加させるといった対策を施す必要がある。
【0004】
そこで、本発明は明るさのムラを抑えつつPTPシートの網目模様を強調した画像を取得することが可能な検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のPTPシートの検査装置(1)は、PTPシート(2)の一辺(2a)と平行な方向に配列された複数の光源(13)を有し、前記PTPシートと直交する方向から見たときに、各光源から前記一辺に対して斜めに傾いた方向の照明光を前記PTPシートに照射する照明手段(10)と、照明されたPTPシートを撮像する撮像手段(11)とを備えることにより、上述した課題を解決する。
【0006】
本発明の検査装置によれば、照明手段の各光源がPTPシートの一辺と平行な方向に配列されているため、光源からPTPシートの各部までの距離のばらつきを抑え、それにより、PTPシートの画像の明るさのムラを抑制することができる。しかも、PTPシートの一辺に対して斜めに傾いた方向の照明光を各光源からPTPシートに照射しているため、PTPシートの網目模様を強調した画像を取得して検査の精度を高めることができる。
【0007】
本発明の検査装置の一形態において、前記照明手段は、前記一辺と長手方向とを一致させ、かつ発光面(10a)の法線方向を前記PTPシートと直交する方向に一致させて配置される照明ボックス(12)を有し、前記複数の光源のそれぞれは、前記発光面の法線方向を含む直交3軸方向のいずれに対しても一様に傾いた方向に光軸を向けた状態で前記照明ボックス内に取り付けられてもよい。この形態によれば、PTPシートの側方かつ上方の領域にて、照明ボックスをその長手方向がPTPシートの一辺と平行で、かつ発光面の法線方向がPTPシートと直交する方向と一致するように配置することにより、PTPシートをその一辺に対して斜めに傾く方向から照明することができる。従って、照明手段の位置決め調整を容易に行うことができる。また、照明ボックスをPTPシートの一辺と平行に配置しているので、照明ボックスの周辺への張り出しを抑えてその設置スペースを縮小することができる。
【0008】
上記の形態においては、前記複数の光源が、前記照明ボックス内で前記発光面と平行な面に沿って2次元的に配列されてもよい。この形態によれば、照明ボックスを面状に発光させてPTPシートの画像の明るさのムラをさらに抑えることができる。
【0009】
本発明の検査装置において、前記複数の光源は、前記一辺よりも長い範囲に亘って設けられてもよい。この形態によれば、PTPシートの一辺と平行な方向に関する明るさのムラをより確実に排除することができる。
【0010】
本発明の検査装置においては、前記PTPシートの両側のそれぞれに前記照明手段が配置され、前記撮像手段は前記PTPシートを前記直交する方向から撮影するように設けられてもよい。この形態によれば、PTPシートをその両側の照明手段によって照明しつつ、照明手段間の隙間上に撮像手段を配置してPTPシートをその正面から撮影することができる。
【0011】
なお、以上の説明では本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記したが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0012】
以上に説明したように、本発明によれば、
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1〜図3は本発明の一形態に係る検査装置の正面図、図2はその側面図、図3は要部の平面図である。検査装置1は、搬送ラインCによって搬送されるPTPシート2を一対の照明器10で照明し、その照明されたPTPシート2の画像をPTPシート2の直上に配置されたカメラ11にて取得し、得られた画像に基づいてPTPシート2の欠陥の有無を判別する。照明器10が照明手段に、カメラ11が撮像手段にそれぞれ相当する。カメラ11はPTPシート2をこれと直交する方向から撮影するように設けられ、照明器10はカメラ11の両側からPTPシート2を照明する。
【0014】
検査対象のPTPシート2は、樹脂シート3に形成された多数のポケット3aに錠剤等の被包装物4が収容され、樹脂シート3の裏面側からアルミ箔等の金属箔5が溶着されてポケット3aがシールされた構成を有している。樹脂シート3と金属箔5とは、加熱ローラを樹脂シート3のポケット3aを除く平面部に押し付けることにより相互に溶着されている。図3に示したように、PTPシート2には網目模様6が存在する。その網目模様6は、樹脂シート3と金属箔5との溶着過程で加熱ローラに施された網目状の凹凸が転写されることによって形成される。網目模様6は、PTPシート2の長辺2a、短辺2bのいずれに対しても概ね45°の角度で傾いた方向に延びる多数の突条を格子状に組み合わせた構成を有している。搬送ラインC上においては、搬送方向(図3の左右方向)に対して長辺2aが平行となる状態でPTPシート2が搬送される。
【0015】
図1に示したように、照明器10は、搬送ラインCの幅方向(図1の左右方向)の両側でかつ搬送ラインCよりも上方において、その発光面10aの法線方向が鉛直下方に向くように配置されている。図3から明らかなように、照明器10のそれぞれは、搬送ラインCの搬送方向、すなわちPTPシート2の長辺2aと平行な方向とその長手方向とが一致するように配置されている。照明器10の長手方向の全長はPTPシート2の長手方向の全長よりも大きい。図3に矢印で示すように、カメラ11による撮影方向(つまりPTPシート2と直交する方向)から見て、各照明器10はPTPシート2の長辺2aに対して斜めに傾いた方向の照明光をPTPシート2に照射する。搬送方向に関する各照明器10の発光面10aの長さはPTPシート2の全長よりも長い。
【0016】
照明器10を発光面10a(図1及び図2の下面)側から見た状態を図4に示す。なお、以下では、照明器10の長手方向をX軸方向、照明器10の発光面10aと直交する方向をZ軸方向と呼び、X軸方向及びZ軸方向の両者と直交する方向をY軸方向と呼ぶことがある。照明器10は、直方体容器状の照明ボックス12の内部に、発光面10aを埋めるようにして、多数の白色LED13を発光面10aと平行な面、つまりX軸方向及びY軸方向によって定義される面に沿ってマトリクス状に配列した構成を有している。各LED13が光源に相当する。X軸方向に関して、LED13が設けられている範囲はPTPシート2の長辺2aよりも長い。このようにLED光源をマトリクス状に配列した照明器では、一般に、各LEDの光軸が発光面10aの法線方向(図示例ではZ軸方向に相当する。)に向けられている。しかし、本形態の照明器10においては、図5及び図6に示したように、各LED13の光軸OAが、X、Y、Z軸方向のいずれに対しても斜めに傾けられている。なお、図5及び図6においては、光軸OAをZ軸方向に向けたときのLED13′を想像線で示している。各LED13の傾きは互いに等しい。つまり、LED13の光軸OAは直交3軸方向(X軸、Y軸及びZ軸方向)のいずれに対しても一様に傾けられており、それらの光軸OAは互いに平行である。LED13の光軸OAのX軸方向及びY軸方向に対する傾斜角は、PTPシート2の長辺2aに対する網目模様6の傾き角(45°)と同一又はその近傍の値に設定すればよい。光軸OAのZ軸方向に対する傾斜角は、PTPシート2と照明器10との鉛直方向の距離に応じて適宜に定めればよい。
【0017】
上記のように構成された照明器10は、そのX軸方向が搬送方向と一致し、Z軸方向と鉛直方向とが一致するようにして搬送ラインCの両側に対称的に設置される。つまり、照明器10はそれらの長手方向がPTPシート2の長辺2aと平行となるように、かつ、カメラ11の撮影方向から見て、それぞれの照明方向が互いに向かう合うように位置決めされる。これにより、図3に示したように、PTPシート2をその網目模様6と概略平行な方向及び直交する方向から照明することができる。照明器10の照明光にて照射されたPTPシート2の像をカメラ11にて撮影することにより、網目模様6が強調された画像を取得することができる。取得された画像上で網目模様6の像に欠陥が存在するか否かを所定のアルゴリズムに従って検査することにより、金属箔5の接着不良といったPTPシート2の結果を正しく判定することができる。なお、欠陥検出のためのアルゴリズム、画像処理等は従来の検査装置と同様でよい。カメラ11の撮影光学系には、偏向フィルタ等の光学要素を必要に応じて設けてよい。照明器10からの照明光の光路に関しても同様である。
【0018】
本形態の検査装置1によれば、照明器10の光源であるLED13がPTPシート2の長辺2aと平行な方向に配列されているため、PTPシート2の各部の光源からの距離が均一化される。よって、PTPシート2をほぼ全面に亘って等しい明るさで照明して画像の明るさのムラを抑制することができる。また、照明器10のX軸方向、すなわちLED13の配列方向とPTPシート2の長辺2aとを平行に位置決めすれば、その後は照明器10の鉛直方向の位置を調整するだけで適切な照明が得られるので、照明器10の位置調整が容易である。さらに、図5及び図6に想像線で示したLED13′を備えた従来型の照明器にてPTPシート2を網目模様6と概略平行及び直交する方向に照明するためには、図3に想像線で示したように、PTPシート2の隅部に照明器10′を傾けて配置する必要がある。この場合と比較して、照明器10の設置スペースが図中の矩形領域Aへと縮小される利点もある。
【0019】
本発明は上述した形態に限ることなく、適宜の形態にて実施してよい。例えば、光源の配列は、PTPシート2の一辺と平行な方向に配列されている限りにおいて適宜に変更してもよい。例えば、発光面10aと平行な面に沿って多数の光源を2次元的に配列する場合、それらの光源の配列は、マトリクス状に代えて千鳥状であってもよい。PTPシートの一辺と平行な方向に単列で光源が配列されてもよい。光源は白色LEDに限ることなく、適宜の光源を利用してよい。本形態ではPTPシート2の長辺2aと平行な方向に光源を配列しているが、短辺2bと平行な方向に光源が配列されてもよい。単一の照明器をPTPシートの片側に配置し、その照明光で照明されたPTPシートを反対側からカメラで撮像してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一形態に係る検査装置の正面図。
【図2】図1の検査装置の側面図。
【図3】図1の検査装置の要部の平面図。
【図4】照明器を下面側から見た状態を示す図。
【図5】鉛直方向に対するLEDの傾きを示す図。
【図6】水平方向に対するLEDの傾きを示す図。
【符号の説明】
【0021】
1 検査装置
2 PTPシート
2a PTPシートの長辺
6 網目模様
10 照明器(照明手段)
11 カメラ(撮像手段)
12 照明ボックス
13 LED(光源)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PTPシートの一辺と平行な方向に配列された複数の光源を有し、前記PTPシートと直交する方向から見たときに、各光源から前記一辺に対して斜めに傾いた方向の照明光を前記PTPシートに照射する照明手段と、照明されたPTPシートを撮像する撮像手段とを備えたことを特徴とするPTPシートの検査装置。
【請求項2】
前記照明手段は、前記一辺と長手方向とを一致させ、かつ発光面の法線方向を前記PTPシートと直交する方向に一致させて配置される照明ボックスを有し、前記複数の光源のそれぞれは、前記発光面の法線方向を含む直交3軸方向のいずれに対しても一様に傾いた方向に光軸を向けた状態で前記照明ボックス内に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記複数の光源が、前記照明ボックス内で前記発光面と平行な面に沿って2次元的に配列されていることを特徴とする請求項2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記複数の光源が前記一辺よりも長い範囲に亘って設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項5】
前記PTPシートの両側のそれぞれに前記照明手段が配置され、前記撮像手段は前記PTPシートを前記直交する方向から撮影するように設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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