説明

PTP1B発現のアンチセンス調節

【課題】PTP1B(蛋白質ホスファターゼ1B及びPTPN1)の発現を調節する化合物、組成物および方法を提供する。
【解決手段】PTP1Bをコード化する核酸を標的にするアンチセンス化合物、特にアンチセンスオリゴヌクレオチドを含んで成る。本化合物をPTP1B発現の調節で用いる方法そしてPTP1Bの発現に関連した病気の治療で用いる方法。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ホスフェート部分を生物学的分子にキナーゼと呼ばれる酵素の作用で結合させることであるとして定義される燐酸化過程は、細胞内シグナルが伝播される結果として最終的に細胞反応が起こる1つの過程に相当する。細胞内で蛋白質は燐酸化をセリン、トレオニンまたはチロシン残基の所で受け得るが、その燐酸化の度合は、ホスフェート部分を除去するホスファターゼの対抗する作用によって調節される。細胞内で起こる蛋白質燐酸化の大部分はセリンおよびトレオニン残基の所で起こるが、チロシンの燐酸化は発癌性形質転換および増殖因子刺激中に最も高い度合で調節される(非特許文献1)。
【0002】
燐酸化はそのように細胞内のいたる所で起こる過程でありかつそのような経路の活性によって細胞の表現型が大きな影響を受けることから、現在では、いろいろな病気状態および/または障害はキナーゼおよびホスファターゼの異常な活性またはそれらの機能的変異のいずれかの結果であると信じられている。その結果として、最近では、チロシンキナーゼおよびチロシンホスファターゼの特徴づけにかなりの注目が集まっている。
【0003】
PTP1B(また蛋白質ホスファターゼ1BおよびPTPN1としても知られる)は小胞体(ER)関連酵素であり、これは、ヒト胎盤の主要な蛋白質であるチロシンのホスファターゼとして初めて単離された(非特許文献2、3)。
【0004】
インシュリン受容体が媒介するシグナリングでPTP1Bが必須な調節的役割を果たすことが確立された。PTP1Bはインビトロおよび無傷の細胞の両方において活性化されたインシュリン受容体と相互作用して脱燐酸を起こさせ、その結果として、シグナリング経路の下方調節(downregulation)をもたらす(非特許文献4、5)。加うるに、PTP1Bはインシュリンが示す分裂誘発作用も調節する(非特許文献4)。PTP1Bを過剰発現するラット脂肪細胞ではGLUT4グルコース輸送体の転位が抑制され、このことから、PTP1Bは同様にグルコース輸送の負の調節剤として関係付けられている(非特許文献6)。
【0005】
PTP1B遺伝子が欠如しているマウスノックアウトモデルもまたPTP1Bがインシュリンシグナリングの負の調節を行うことを示唆している。破壊されたPTP1B遺伝子を含有するマウスは高いインシュリン感受性を示し、インシュリン受容体の燐酸化が高く、そしてPTP1B−/−マウスはこれを高脂肪食餌下に置いても体重上昇を示さずかつインシュリン感受性を示すままであった(非特許文献7)。このような研究は、糖尿病および肥満症の治療でPTP1Bが治療標的になることを明らかに示している。
【0006】
PTP1Bは細胞周期中に特異的に調節され(非特許文献8)、インシュリン感受性組織の中に異なる2種類のアイソタイプとして発現し、これらはpre−mRNAの選択的スプライシングで生じる(非特許文献9)。その選択的にスプライシングされた生成物の比率は増殖因子、例えばインシュリンなどの影響を受けかつ試験を受けさせたいろいろな組織の中で異なることが最近示された(非特許文献10)。このような研究において、また、そのような変異体の濃度は血漿のインシュリン濃度および体脂肪のパーセントと相互に関係しており、従って、患者が慢性的高インシュリン血症または2型糖尿病にかかっているか否かを示すバイオマーカーとして使用可能であることも確認された。
【0007】
PTP1Bが表皮増殖因子受容体(EGFR)と結合しかつそれの基質として働くことが示された(非特許文献11)。その上、A431ヒト類表皮癌細胞において、PTP1BはEGFの添加で発生するHの存在によって失活することも確認された。このよ
うな研究により、PTP1Bは細胞の酸化状態によって負の調節を受け得ることが示され、それはしばしば腫瘍形成中には調節されなくなる(非特許文献12)。
【0008】
悪性卵巣癌の中でPTP1Bが過剰発現することが示され、そしてこのような相互関係に付随して関連した増殖因子受容体の発現が増加した(非特許文献13)。
【0009】
PTP1Bはneu腫瘍遺伝子によって誘発されるNIH3T3細胞における形質転換(非特許文献14)ばかりでなくv−srk、v−srcおよびv−rasによって誘発されるラット3Y1線維芽細胞における形質転換(非特許文献15)およびbcr−ablによって誘発されるラット−1線維芽細胞における形質転換(非特許文献16)を抑制することが示された。また、PTP1BはK562細胞、即ち慢性的骨髄性白血病細胞系の分化をbcr−abl腫瘍蛋白質の阻害剤のそれと同様な様式で助長することも示された。これらの研究は、慢性的骨髄性白血病の病因を制御する時にPTP1Bがある役割を果たす可能性があることを説明している(非特許文献16)。
【0010】
PTP1Bは、1種以上の接着依存シグナリング成分と相互作用してインテグリン媒介MAPキナーゼ活性を抑制することでインテグリンシグナリングを負に調節する(非特許文献17)。触媒的に不活性な形態のPTP1Bを用いてインテグリンシグナリングを試験するように考案された他の研究により、PTP1Bはカドヘリン媒介細胞接着(非特許文献18)ばかりでなく細胞拡散、接着斑(focal adhesion)および緊張線維生成およびチロシン燐酸化(非特許文献19)を調節することが示された。
【0011】
PTP1Bの合成または作用を抑制するように考案された治療剤には現在のところ小型分子(非特許文献20、21、22、23、24、25、26)およびペプチド(非特許文献27、28、29)が含まれる。加うるに、PTP1Bと活性化されたインシュリン受容体の結合を抑制するホスホペプチドおよび抗体がインシュリン耐性に関連した障害を治療する目的で特許文献1に開示されている。特許文献1にはまたPTP1Bに対するアンチセンスヌクレオチドも一般的に開示されている。
【0012】
PTP1B機能を有効に抑制し得る追加的作用剤が必要であると長年に渡って感じられているままであり、そして特異的遺伝子産物の発現を減少させるに有効な手段としてアンチセンス技術が登場してきている。従って、このような技術がPTP1B発現の調節に関するいろいろな治療、診断および研究用途にユニークに有用であることが分かるであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】PCT公開WO 97/32595
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Zhang、Crit.Rev.Biochem.Mol.Biol.、1998、33、1−52
【非特許文献2】Tonks他、J.Biol.Chem.、1988、263、6731−6737
【非特許文献3】Tonks他、J.Biol.Chem.、1988、263、6722−6730
【非特許文献4】Goldstein他、Mol.Cell.Biochem.、1998、182、91−99
【非特許文献5】Seely他、Diabetes、1996、45、1379−1385
【非特許文献6】Chen他、J.Biol.Chem.、1997、272、8026−8031
【非特許文献7】Elchebly他、Science、1999、283、1544−1548
【非特許文献8】Schievella他、Cell.Growth Differ.、1993、4、239−246
【非特許文献9】ShifrinおよびNeel、J.Biol.Chem.、1993、268、25376−25384
【非特許文献10】SellおよびReese、Mol.Genet.Metab.、1999、66、189−192
【非特許文献11】LiuおよびChernoff、Biochem.J.、1997、327、139−145
【非特許文献12】Lee他、J.Biol.Chem.1998、273、15366−15372
【非特許文献13】Wiener他、Am.J.Obstet.Gynecol.、1994、170、1177−1183
【非特許文献14】Brown−Shimer他、Cancer Res.、1992、52、478−482
【非特許文献15】Liu他、Mol.Cell.Biol.、1998、250−259
【非特許文献16】LaMontagne他、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、1998、95、14094−14099
【非特許文献17】Liu他、Curr.Biol.、1998、8、173−176
【非特許文献18】Balsamo他、J.Cell.Biol.、1998、143、523−532
【非特許文献19】Arregui他、J.Cell.Biol.、1998、143、861−873
【非特許文献20】Ham他、Bioorg.Med.Chem.Lett.、1999、9、185−186
【非特許文献21】Skorey他、J.Biol.Chem.、1997、272、22472−22480
【非特許文献22】Taing他、Biochemistry、1999、38、3793−3803
【非特許文献23】Taylor他、Bioorg.Med.Chem.、1998、6、1457−1468
【非特許文献24】Wang他、Bioorg.Med.Chem.Lett.、1998、8、345−350
【非特許文献25】Wang他、Biochem.Pharmacol.、1997、54、703−711
【非特許文献26】Yao他、Bioorg.Med.Chem.、1998、6、1799−1810
【非特許文献27】Chen他、Biochemistry、1999、38、384−389
【非特許文献28】Desmarais他、Arch.Biochem.Biophys.、1998、354、225−231
【非特許文献29】Roller他、Bioorg.Med.Chem.Lett.、1998、8、2140−2150
【発明の概要】
【0015】
本発明はPTP1Bの発現を調節する組成物および方法を提供する。特に、本発明は、選択的にスプライシングされた形態のPTP1Bを調節する組成物および方法を提供する。本発明は、PTP1Bをコード化する核酸と特異的にハイブリッド形成しかつそれを標的にするアンチセンス化合物、特にアンチセンスオリゴヌクレオチドに関する。そのようなオリゴヌクレオチドはPTP1Bの発現を調節することが分かった。
【0016】
また、本発明のアンチセンス化合物を含んで成る薬剤および他の組成物も提供する。更に、細胞または組織におけるPTP1Bの発現を調節する方法も提供し、この方法は、前記細胞もしくは組織を本発明のアンチセンス化合物もしくは組成物の1種以上と接触させることを含んで成る。
【0017】
更に、PTP1Bの発現に関連した病気または状態を有するか、有すると思われるか或は有する傾向がある動物、特にヒトを治療する方法も提供し、この方法は、本発明のアンチセンス化合物もしくは組成物の1種以上を治療もしくは予防有効量で投与することによる。
【0018】
本発明の他の面および利点を以下に行う本発明の詳細な記述の中に包含させる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(発明の詳細な記述)
本発明では、PTP1Bをコード化する核酸分子が示す機能を調節し、最終的にPTP1Bの産生量を調節する用途でオリゴマー状のアンチセンス化合物、特にオリゴヌクレオチドを用いる。これを、PTP1Bをコード化する1種以上の核酸と特異的にハイブリッドを形成するアンチセンス化合物を提供することで達成する。
【0020】
本明細書で用いる如き用語「標的核酸」および「PTP1Bをコード化する核酸」は、PTP1Bをコード化するDNA、前記DNAから転写されたRNA(pre−mRNAおよびmRNAを包含)およびまた前記RNAから派生するcDNAを包含する。オリゴマー状の化合物とこれの標的核酸が特異的にハイブリッド形成すると前記核酸の正常な機能が妨害される。このように標的核酸と特異的にハイブリッド形成する化合物によってそれの機能が調節されることを一般に「アンチセンス」と呼ぶ。妨害されるDNAの機能には複製および転写が含まれる。妨害されるRNAの機能には、あらゆる生体機能、例えばRNAの蛋白質翻訳部位への転位、RNAからの蛋白質の翻訳、1種以上のmRNA種をもたらすRNAのスプライシング、そしてRNAが関与するか或はRNAによって助長され得る触媒活性などが含まれる。そのように標的核酸の機能を妨害する全体的効果がPTP1B発現の調節である。
【0021】
本発明の文脈において、「調節」は、遺伝子発現の増加(刺激)または減少(抑制)のいずれかを意味する。本発明の文脈では、抑制が遺伝子発現の調節の好適な形態であり、そしてmRNAが好適な標的である。
【0022】
アンチセンスでは特定の核酸を標的にするのが好適である。本発明の文脈において、アンチセンス化合物が特定の核酸を「標的にする」過程は多段階過程である。この過程は通常は核酸配列の識別で始まり、それの機能を調節する。それは、例えば発現が個々の障害または病気の状態に関連している細胞遺伝子(またはこの遺伝子から転写されたmRNA)または感染性作用剤に由来する核酸分子であってもよい。本発明における標的はPTP1Bをコード化する核酸分子である。この標的過程には、また、所望効果、例えば蛋白質発現の検出または調節がもたらされるようにアンチセンス相互作用を起こす前記遺伝子内の部位1種または2種以上を決定することも含まれる。本発明の文脈の範囲内で好適な遺伝子内部位は、遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)の翻訳開始もしくは終
止コドンを包含する領域である。
【0023】
本技術分野で公知のように、翻訳開始コドンは典型的に5’−AUG(転写されたmRNA分子内;相当するDNA分子内の5’−ATG)であることから、翻訳開始コドンはまた「AUGコドン」、「開始コドン」または「AUG開始コドン」とも呼ばれる。RNA配列5’−GUG、5’−UUGまたは5’−CUGを有する翻訳開始コドンを有する遺伝子は少数であり、そして5’−AUA、5’−ACGおよび5’−CUGはインビボで機能することが示されている。このように、開始アミノ酸は各場合とも典型的にメチオニン(真核生物の場合)またはホルミルメチオニン(原核生物の場合)ではあるが、用語「翻訳開始コドン」および「開始コドン」には数多くのコドン配列が含まれ得る。また、真核生物および原核生物の遺伝子は2種以上の代替開始コドンを有していてそれらの中のいずれか1つが個々の細胞型または組織の中でか或は特別な設定の条件下で翻訳開始で優先的に利用され得ることも本技術分野で公知である。本発明の文脈において、「開始コドン」および「翻訳開始コドン」は、そのようなコドンの配列1種または2種以上に関係なく、PTP1Bをコード化する遺伝子から転写されたmRNA分子の翻訳の開始にインビボで用いられるコドン1種または2種以上を指す。
【0024】
また、遺伝子の翻訳終止コドン(または「終止コドン」)は3種類の配列、即ち5’−UAA、5’−UAGおよび5’−UGA(相当するDNA配列はそれぞれ5’−TAA、5’−TAGおよび5’−TGAである)の中の1つであり得ることも本技術分野で公知である。用語「開始コドン領域」および「翻訳開始コドン領域」は、翻訳開始コドンからいずれかの方向(即ち5’または3’)に約25から約50個の連続的ヌクレオチドを包含する前記mRNAもしくは遺伝子の部分を指す。同様に、用語「終止コドン領域」および「翻訳終止コドン領域」は、翻訳終止コドンからいずれかの方向(即ち5’または3’)に約25から約50個の連続的ヌクレオチドを包含する前記mRNAもしくは遺伝子の部分を指す。
【0025】
また、オープンリーディングフレーム(ORF)または「コーディング領域」[これは翻訳開始コドンと翻訳終止コドンの間の領域を指すことが本技術分野で知られている]も有効に標的になり得る領域である。他の標的領域には、翻訳されない5’領域(5’UTR)[翻訳開始コドンから5’の方向のmRNAの部分を指すことが本技術分野で公知であり、従って、これはmRNAの5’キャップ部位と翻訳開始コドンの間のヌクレオチド、または遺伝子上の相当するヌクレオチドを包含する]、または翻訳されない3’領域(3’UTR)[翻訳終止コドンから3’の方向のmRNAの部分を指すことが本技術分野で公知であり、従って、これはmRNAの翻訳終止コドンと3’末端部の間のヌクレオチド、または遺伝子上の相当するヌクレオチドを包含する]も含まれる。mRNAの5’キャップは、5’−5’トリホスフェート結合を通してmRNAの最も5’側の残基と結合しているN7−メチル化グアノシン残基を含んで成る。mRNAの5’キャップ領域は5’キャップ構造自身ばかりでなく前記キャップに隣接する最初の50個のヌクレオチドを包含すると考えられている。この5’キャップ領域もまた好適な標的領域であり得る。
【0026】
ある種の真核生物のmRNA転写産物は直接翻訳されるが、多くは「イントロン」(これは翻訳される前に転写物から切除される)として知られる領域を1個以上含有する。その残り(従って翻訳される)領域は「エキソン」として知られており、一緒にスプライシングされて連続的mRNA配列を生じる。mRNAスプライス部位、即ちイントロン−エキソン連結部もまた好適な標的領域であり得、特に、異所のスプライシングが病気に関係しているか或は個々のmRNAスプライス産物の過剰産生が病気に関係していると推測される場合に有用である。また、転位または欠失が原因で起こる異所の融合連結部も好適な標的である。また、例えばDNAまたはpre−mRNAを標的にするアンチセンス化合物の場合にはイントロンも有効な標的領域であり、従って好適な標的領域であることも確
認した。
【0027】
1種以上の標的部位を識別した後、その標的に充分な相補性を示す、即ち所望効果が得られるに充分なほど良好かつ充分に特異的にハイブリッド形成するオリゴヌクレオチドを選択する。
【0028】
本発明の文脈において、「ハイブリッド形成」は、相補的ヌクレオシドもしくはヌクレオチド塩基の間の水素結合を意味し、これはWatson−Crick、Hoogsteenまたは逆Hoogsteen水素結合であり得る。例えばアデニンとチミンは水素結合の形成を通して対になる相補的核酸塩基である。本明細書で用いる如き「相補的」は、2つのヌクレオチドが正確に対になり得ることを指す。例えばあるオリゴヌクレオチドの特定位置に存在するヌクレオチドがDNAもしくはRNA分子の同じ位置に存在するヌクレオチドと水素結合し得るならば、そのオリゴヌクレオチドと前記DNAもしくはRNAはその位置において互いに相補的であると見なす。前記オリゴヌクレオチドと前記DNAもしくはRNAは、各分子の中の相当する位置が充分な数で互いに水素結合し得るヌクレオチドで占められるならば互いに相補的である。このように、「特異的にハイブリッド形成し得る」および「相補的」は、オリゴヌクレオチドとDNAもしくはRNA標的の間に特定の安定な結合が生じるに充分な度合の相補性があることまたは正確な対が生じることを示す目的で用いる用語である。アンチセンス化合物の配列と特異的にハイブリッド形成し得るそれの標的核酸の配列が100%相補的である必要はないことは本技術分野で理解されている。アンチセンス化合物と標的のDNAもしくはRNA分子が、特異的結合が望まれる条件、即ちインビボ検定または治療処置の場合には生理学的条件およびインビトロ検定の場合には検定を実施する条件下で、結合することによって前記標的DNAもしくはRNAの正常な機能が妨害されて有用性が失われかつ非標的配列に対する相補性の度合が前記アンチセンス化合物が非標的配列と非特異的に結合しないほどであるならば、そのようなアンチセンス化合物は特異的にハイブリッド形成し得る。
【0029】
アンチセンス化合物は研究用試薬および診断薬として通常用いられる。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドが申し分のない特異性を伴って遺伝子発現を抑制し得るならば、通常の技術者は、しばしば、個々の遺伝子の機能を明らかにする目的でそれを使用するであろう。アンチセンス化合物は、また、例えば多種多様な生物学的経路の機能と機能の間の区別を行う目的でも用いられる。従って、アンチセンス調節は研究用途で用いられてきている。
【0030】
本分野の技術者はまたアンチセンスの特異性および感受性を治療目的でも用いる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは動物およびヒトにおける病気状態の治療で治療部分(therapeutic moieties)として用いられてきた。アンチセンスオリゴヌクレオチドはヒトに安全かつ有効に投与されかついろいろな臨床試験が現在進行中である。このように、オリゴヌクレオチドは細胞、組織および動物、特にヒトの治療の治療管理で用いるに有用であるように構成されることができる有効な治療様式であり得ることが確認されている。
【0031】
本発明の文脈において、用語「オリゴヌクレオチド」は、リボ核酸(RNA)またはデオキシリボ核酸(DNA)またはこれらの類似物のオリゴマーまたはポリマーを指す。この用語には、天然に存在する核酸塩基と糖のヌクレオシド間(バックボーン)共有結合で構成されているオリゴヌクレオチドばかりでなく同様な機能を果たす天然に存在しない部分を有するオリゴヌクレオチドも含まれる。そのような修飾もしくは置換されているオリゴヌクレオチドの方がしばしば未変性形態よりも好適である、と言うのは、それらの方が望ましい特性を有し、例えば細胞吸収が向上し、核酸標的への親和性が向上し、かつヌクレアーゼ存在下の安定性が向上するからである。
【0032】
アンチセンスオリゴヌクレオチドが好適な形態のアンチセンス化合物であるが、本発明は、他のオリゴマー状のアンチセンス化合物も包含し、そのような化合物には、これらに限定するものでないが、以下に記述する如きオリゴヌクレオチド類似物が含まれる。本発明に従うアンチセンス化合物は、好適には、核酸塩基を約8から約50個含んで成る(即ち結合したヌクレオシドを約8から約50個含んで成る)。特に好適なアンチセンス化合物はアンチセンスオリゴヌクレオチド、更により好適には核酸塩基を約12から約30個含んで成るアンチセンスオリゴヌクレオチドである。本技術分野で公知なように、ヌクレオシドは塩基−糖の組み合わせである。このヌクレオシドの塩基部分は一般に複素環式塩基である。そのような複素環式塩基の最も一般的な2種類はプリンとピリミジンである。ヌクレオチドは、ヌクレオシドの糖部分に共有結合しているホスフェート基も更に含有するヌクレオシドである。ペントフラノシル糖を含有するヌクレオシドの場合、そのホスフェート基は糖の2’、3’または5’ヒドロキシル部分のいずれかと結合し得る。オリゴヌクレオチドの生成では、ホスフェート基が隣接するヌクレオシドを互いに共有結合させて線状の高分子量化合物を生じさせる。今度は、その線状の高分子量構造物の個々の末端部が更に結合して円形構造物を形成し得るが、しかしながら、一般的には開放された線状構造物の方が好適である。オリゴヌクレオチド構造の中のホスフェート基はオリゴヌクレオチドのヌクレオシド間バックボーンを形成する基であると一般に呼ばれる。RNAおよびDNAの通常の結合またはバックボーンは3’と5’のホスホジエステル結合である。
【0033】
本発明で用いるに有用な好適なアンチセンス化合物の具体例には、修飾を受けたバックボーンまたは天然には存在しないヌクレオシド間結合を含有するオリゴヌクレオチドが含まれる。本明細書で定義するように、修飾を受けたバックボーンを有するオリゴヌクレオチドには、バックボーンの中に燐原子を含有するオリゴヌクレオチドおよびバックボーンの中に燐原子を持たないオリゴヌクレオチドが含まれる。本明細書の目的で、時には本技術分野で言及されているように、ヌクレオシド間バックボーンの中に燐原子を持たないように修飾を受けたオリゴヌクレオチドもまたオリゴヌクレオシドであると見なすことができる。
【0034】
好適な修飾を受けたオリゴヌクレオチドバックボーンには、例えばホスホロチオエート、キラリティーを持つホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロトリエステル、アミノアルキルホスホロトリエステル、メチルおよび他のアルキルホスホネート(3’−アルキレンホスホネートおよびキラリティーを持つホスホネートを包含)、ホスフィネート、ホスホルアミデート(3’−アミノホスホルアミデートおよびアミノアルキルホスホルアミデートを包含)、チオノホスホルアミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、そして通常の3’−5’結合、これの2’−5’結合類似物、および極性が逆の結合(ヌクレオシド単位の隣接する対の結合が3’−5’から5’−3’になっているか或は2’−5’から5’−2’になっている)を有するボラノホスフェートなどが含まれる。また、いろいろな塩、混合塩および遊離酸形態も含まれる。
【0035】
この上に示した燐含有結合を生じさせることを教示している代表的な米国特許には、これらに限定するものでないが、米国特許第3,687,808;4,469,863;4,4
76,301;5,023,243;5,177,196;5,188,897;5,264,4
23;5,276,019;5,278,302;5,286,717;5,321,131;5,399,676;5,405,939;5,453,496;5,455,233;5,466,677;5,476,925;5,519,126;5,536,821;5,541,306;5,550,111;5,563,253;5,571,799;5,587,361;および
5,625,050号が含まれ、それらの中の特定の特許は本出願と共通所有であり、これらの各々は引用することによって本明細書に組み入れられる。
【0036】
燐原子を含有しない好適な修飾を受けたオリゴヌクレオチドバックボーンは、短鎖アルキルまたはシクロアルキルヌクレオシド間結合、混合ヘテロ原子とアルキルもしくはシクロアルキルヌクレオシド間結合、または1種以上の短鎖ヘテロ原子もしくは複素環式ヌクレオシド間結合によって生じたバックボーンを有する。それらには、モルホリノ結合(一部がヌクレオシドの糖部分から形成された)、シロキサンバックボーン、スルフィド、スルホキサイドおよびスルホンバックボーン、ホルムアセチルおよびチオホルムアセチルバックボーン、メチレン、ホルムアセチルおよびチオホルムアセチルバックボーン、アルケン含有バックボーン、スルファメートバックボーン、メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノバックボーン、スルホネートおよびスルホンアミドバックボーン、アミドバックボーン、そして混合N、O、SおよびCH成分部分を有するバックボーンを有するそれらが含まれる。
【0037】
上述したオリゴヌクレオシドの調製を教示している代表的な米国特許には、これらに限定するものでないが、米国特許第5,034,506;5,166,315;5,185,444;5,214,134;5,216,141;5,235,033;5,264,562;5,
264,564;5,405,938;5,434,257;5,466,677;5,470,
967;5,489,677;5,541,307;5,561,225;5,596,086;5,602,240;5,610,289;5,602,240;5,608,046;5,61
0,289;5,618,704;5,623,070;5,663,312;5,633,36
0;5,677,437;および 5,677,439号が含まれ、それらの中の特定の特許
は本出願と共通所有であり、これらの各々は引用することによって本明細書に組み入れられる。
【0038】
他の好適なオリゴヌクレオチド類似物では、糖結合とヌクレオシド間結合、即ちヌクレオチド単位のバックボーンの両方が新規な基に置き換わっている。塩基単位は適切な核酸標的化合物とのハイブリッド形成の目的で保持させる。そのようなある種のオリゴマー状化合物、即ち優れたハイブリッド形成特性を有することを確かめたオリゴヌクレオチド類似物をペプチド核酸(PNA)と呼ぶ。PNA化合物では、オリゴヌクレオチドの糖−バックボーンがアミド含有バックボーン、特にアミノエチルグリシンバックボーンに置き換わっている。その核酸塩基は保持されたままであり、前記バックボーンのアミド部分が有するアザ窒素原子に直接もしくは間接的に結合している。PNA化合物の調製を教示している代表的な米国特許には、これらに限定するものでないが、米国特許第5,539,082号、5,714,331号および5,719,262号が含まれ、これらの各々は引用することによって本明細書に組み入れられる。PNA化合物のさらなる教示をNielsen他、Science、1991、254、1497−1500に見ることができる。
【0039】
本発明の最も好適な態様は、ホスホロチオエートバックボーンを有するオリゴヌクレオチド、およびヘテロ原子バックボーン、特にこの上に示した米国特許第5,489,677号の−CH−NH−O−CH−、−CH−N(CH)−O−CH−[メチレン(メチルイミノ)またはMMIバックボーンとして知られる]、−CH−O−N(CH)−CH−、−CH−N(CH)−N(CH)−CH−および−O−N(CH)−CH−CH−[この場合の天然のホスホジエステルバックボーンは−O−P−O−CH−として表される]、およびこの上に示した米国特許第5,602,240号のアミドバックボーンを有するオリゴヌクレオシドである。また、この上に示した米国特許第5,034,506号のモルホリノバックボーン構造を有するオリゴヌクレオチドも好適である。
【0040】
また、置換されている糖部分を1つ以上含有するようにオリゴヌクレオチドに修飾を受
けさせることも可能である。好適なオリゴヌクレオチドは、2’位に下記の中の1つを含んで成るオリゴヌクレオチドである:OH;F;O−、S−もしくはN−アルキル;O−、S−もしくはN−アルケニル;O−、S−もしくはN−アルキニル;またはO−アルキル−O−アルキル(ここで、アルキル、アルケニルおよびアルキニルは置換されているか或は置換されていないCからC10のアルキルまたはCからC10のアルケニルおよびアルキニルであってもよい)。特にO[(CHO]CH、O(CHOCH、O(CHNH、O(CHCH、O(CHONHおよびO(CHON[(CHCH)](ここで、nおよびmは1から約10である)が好適である。他の好適なオリゴヌクレオチドは2’位に下記の中の1つを含んで成るオリゴヌクレオチドである:CからC10の低級アルキル、置換されている低級アルキル、アルカリール、アラルキル、O−アルカリールもしくはO−アラルキル、SH、SCH、OCN、Cl、Br、CN、CF、OCF、SOCH、SOCH、ONO、NO、N、NH、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリール、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA開裂基(RNA cleaving group)、レポーター基(reporter group)、インターカレーター(intercalator)、オリゴヌクレオチドの薬物速度論的特性を向上させる基、またはオリゴヌクレオチドの薬力学的特性を向上させる基、そして同様な特性を有する他の置換基。好適な修飾には、2’−メトキシエトキシ[2’−O−CHCHOCH、また2’−O−(2−メトキシエチル)または2’−MOEとしても知られる](Martin他、Helv.Chim.Acta、1995、78、486−504)、即ちアルコキシアルコキシ基が含まれる。好適なさらなる修飾には、2’−ジメチルアミノオキシエトキシ、即ちO(CHON(CH基[また2’−DMAOEとしても知られる(本明細書の以下に示す実施例に記述する如き)]、そして2’−ジメチルアミノエトキシエトキシ[本技術分野ではまた2’−O−ジメチルアミノエトキシエチルまたは2’−DMAEOEとしても知られる]、即ち2’−O−CH−O−CH−N(CH(また本明細書の以下に示す実施例にも記述)が含まれる。
【0041】
他の好適な修飾には、2’−メトキシ(2’−O−CH)、2’−アミノプロポキシ(2’−OCHCHCHNH)および2’−フルオロ(2’−F)が含まれる。また、オリゴヌクレオチドの他の位置に同様な修飾を受けさせることも可能であり、特に3’末端ヌクレオチドまたは2’−5’結合したオリゴヌクレオチドの中の糖の3’位、または5’末端ヌクレオチドの5’位に同様な修飾を受けさせることができる。オリゴヌクレオチドにまたペントフラノシル糖の代わりに糖類似物、例えばシクロブチル部分などを持たせることも可能である。そのような修飾を受けさせた糖構造物の調製を教示している代表的な米国特許には、これらに限定するものでないが、米国特許第4,981,957;5,118,800;5,319,080;5,359,044;5,393,878;5,4
46,137;5,466,786;5,514,785;5,519,134;5,567,8
11;5,576,427;5,591,722;5,597,909;5,610,300;5,627,053;5,639,873;5,646,265;5,658,873;5,670,633;および 5,700,920号が含まれ、それらの中の特定の特許は本出願と共通
所有であり、これらの各々は引用することによって全体が本明細書に組み入れられる。
【0042】
また、オリゴヌクレオチドに含まれる核酸塩基(本技術分野ではしばしば簡単に「塩基」とも呼ばれる)に修飾または置換を受けさせることも可能である。本明細書で用いる如き「未修飾」または「天然」の核酸塩基には、プリン塩基であるアデニン(A)およびグアニン(G)、そしてピリミジン塩基であるチミン(T)、シトシン(C)およびウラシル(U)が含まれる。修飾を受けた核酸塩基には、他の合成もしくは天然の核酸塩基、例えば5−メチルシトシン(5−me−C)、5−ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2−アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6−メチルおよび他のアルキル誘導体、アデニンおよびグアニンの2−プロピルおよび他のアルキル誘導体、
2−チオウラシル、2−チオチミンおよび2−チオシトシン、5−ハロウラシルおよびシトシン、5−プロピニルウラシルおよびシトシン、6−アゾウラシル、シトシンおよびチミン、5−ウラシル(疑似ウラシル)、4−チオウラシル、8−ハロ、8−アミノ、8−チオール、8−チオアルキル、8−ヒドロキシルおよび他の8−置換アデニンおよびグアニン、5−ハロ、特に5−ブロモ、5−トリフルオロ−メチルおよび他の5−置換ウラシルおよびシトシン、7−メチルグアニンおよび7−メチルアデニン、8−アザグアニンおよび8−アザアデニン、7−デアザグアニンおよび7−デアザグアニン、そして3−デアザグアニンおよび3−デアザアデニンが含まれる。さらなる核酸塩基には、米国特許第3,687,808号に開示されている核酸塩基、The Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering、858−859頁、Kroschwitz,J.I.編集、John Wiley & Sons、1990に開示されている核酸塩基、Englisch他、Angewandte Chemie、International Edition、1991、30、613に開示されている核酸塩基、そしてSanghvi,Y.S.、15章、Antisense Research and Applications、289−302頁、Crooke,S.T.およびLebleu,B.編集、CRC Press、1993に開示されている核酸塩基が含まれる。これらの核酸塩基の中の特定の核酸塩基は本発明のオリゴマー状化合物が示す結合親和力を向上させるに特に有用である。それらには、5−置換ピリミジン、6−アザピリミジン、そしてN−2、N−6およびO−6置換プリン(2−アミノプロピルアデニンを包含)、5−プロピニルウラシルおよび5−プロピニルシトシンが含まれる。5−メチルシトシン置換は核酸デュプレックス安定性を0.6−1.2℃上昇させることが示されており(Sanghvi,Y.S.、Crooke,S.T.およびLebleu,B.編集、Antisense Researach and Applications、CRC Press、Boca Raton、1993、276−278頁)、現在のところ好適な塩基置換であり、それを2’−O−メトキシエチル糖修飾と組み合わせるのが更により特に好適である。
【0043】
この上に示した修飾を受けた核酸塩基ばかりでなく他の修飾を受けた核酸塩基の中の特定の核酸塩基の調製を教示している代表的な米国特許には、これらに限定するものでないが、この上に示した米国特許第3,687,808号ばかりでなく、米国特許第4,84
5,205;5,130,302;5,134,066;5,175,273;5,367,06
6;5,432,272;5,457,187;5,459,255;5,484,908;5,
502,177;5,525,711;5,552,540;5,587,469;5,594,
121;5,596,091;5,614,617;および 5,681,941号(これらの
中の特定の特許は本出願と共通所有であり、これらの各々は引用することによって本明細書に組み入れられる)、そして米国特許第5,750,692号(これは本出願と共通所有であり、これもまた引用することによって本明細書に組み入れられる)が含まれる。
【0044】
本発明のオリゴヌクレオチドに受けさせる別の修飾には、オリゴヌクレオチドの活性、細胞分布または細胞吸収を向上させる1種以上の部分または接合体をオリゴヌクレオチドに化学的に結合させることが含まれる。そのような部分には、これらに限定するものでないが、脂質部分、例えばコレステロール部分(Letsinger他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1989、86、6553−6556)、コリックアシッド(cholic acid)(Manoharan他、Bioorg.Med.Chem.Let.、1994、4、1053−1060)、チオエーテル、例えばヘキシル−S−トリチルチオール(Manoharan他、Ann.N.Y.Acad.Sci.、1992、660、306−309;Manoharan他、Bioorg.Med.Chem.Let.1993、3、2765−2770)、チオコレステロール(Oberhauser他、Nucl.Acids Res.、1992、20、533−538)、脂肪鎖、例えばドデカンジオールまたはウンデシル残基(Saison−Behmo
aras他、EMBO J.、1991、10、1111−1118;Kabanov他、FEBS Lett.、1990、259、327−330;Svinarchuk他、Biochemie、1993、75、49−54)、燐脂質、例えばジ−ヘキサデシル−rac−グリセロールまたは1,2−ジ−O−ヘキサデシル−rac−グリセロ−3−H−ホスホン酸トリエチルアンモニウム(Manoharan他、Tetrahedron Lett.、1995、36、3651−3654;Shea他、Nucl.Acids.Res.、1990、18、3777−3783)、ポリアミンまたはポリエチレングリコール鎖(Manoharan他、Nucleosides & Nucleotides、1995、14、969−973)、またはアダマンタン酢酸(Manoharan他、Tetrahedron Lett.、1995、36、3651−3654)、パルミチル部分(Mishra他、Biochim.Biophys.Acta、1995、1264、229−237)、またはオクタデシルアミンまたはヘキシルアミノカルボニル−オキシコレステロール部分(Crooke,S.T.、J.Pharmacol.Exp.Ther.、1996、277、923−937)が含まれる。
【0045】
そのようなオリゴヌクレオチド接合体の調製を教示している代表的な米国特許には、これらに限定するものでないが、米国特許第4,828,979;4,948,882;5,2
18,105;5,525,465;5,541,313;5,545,730;5,552,5
38;5,578,717;5,580,731;5,580,731;5,591,584;5,109,124;5,118,802;5,138,045;5,414,077;5,486,603;5,512,439;5,578,718;5,608,046;4,587,044;4,605,735;4,667,025;4,762,779;4,789,737;4,82
4,941;4,835,263;4,876,335;4,904,582;4,958,01
3;5,082,830;5,112,963;5,214,136;5,082,830;5,
112,963;5,214,136;5,245,022;5,254,469;5,258,
506;5,262,536;5,272,250;5,292,873;5,317,098;5,371,241;5,391,723;5,416,203;5,451,463;5,51
0,475;5,512,667;5,514,785;5,565,552;5,567,81
0;5,574,142;5,585,481;5,587,371;5,595,726;5,
597,696;5,599,923;5,599,928 および 5,688,941号(こ
れらの中の特定の特許は本出願と共通所有であり、これらの各々は引用することによって本明細書に組み入れられる)が含まれる。
【0046】
所定化合物の中のあらゆる位置に修飾を均一に受けさせる必要はなく、実際、上述した修飾の2種以上を単一の化合物の中に組み込んでもよいか或はオリゴヌクレオチドの中のただ1つのヌクレオシドの所に修飾を組み込むことさえ可能である。本発明はまたキメラ化合物であるアンチセンス化合物も包含する。本発明の文脈において、「キメラ」アンチセンス化合物または「キメラ」は、化学的に異なる領域を2つ以上含有していて各々が少なくとも1種の単量体単位、即ちオリゴヌクレオチド化合物の場合にはヌクレオチドで構成されているアンチセンス化合物、特にオリゴヌクレオチドである。そのようなオリゴヌクレオチドは、典型的に、オリゴヌクレオチドがヌクレアーゼによる劣化に対して向上した耐性を示し、細胞吸収が向上しそして/または標的核酸への結合親和力が向上するようにオリゴヌクレオチドが修飾を受けている領域を少なくとも1つ含有する。そのようなオリゴヌクレオチドの追加的領域は、RNA:DNAまたはRNA:RNAハイブリッドを開裂させ得る酵素の基質として働き得る領域である。例として、RNアーゼHは、RNA:DNAデュプレックスのRNAストランドを開裂させる細胞エンドヌクレアーゼである。従って、RNアーゼHを活性化させると結果としてRNA標的の開裂がもたらされ、それによって、オリゴヌクレオチドが示す遺伝子発現抑制の効率が大きく向上する。その結果として、キメラオリゴヌクレオチドを用いる時、より短いオリゴヌクレオチドを用いたとしても、同じ標的領域とハイブリッド形成するホスホロチオエートデオキオリゴヌクレ
オチドに比較して相当する結果をしばしば得ることができる。RNA標的の開裂はゲル電気泳動法そして必要ならば本分野で公知の関連した核酸ハイブリッド形成技術を用いて常規通り検出可能である。
【0047】
本発明のキメラアンチセンス化合物は、この上に記述した如き2種以上のオリゴヌクレオチド、修飾オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオシドおよび/またはオリゴヌクレオチド類似物の複合構造物として生成可能である。そのような化合物を本技術分野ではまたハイブリッドまたはギャップマー(gapmers)とも呼んでいる。そのようなハイブリッド構造物の調製を教示している代表的な米国特許には、これらに限定するものでないが、米国特許第5,013,830;5,149,797;5,220,007;5,256,775;5,366,878;5,403,711;5,491,133;5,565,350;5,
623,065;5,652,355;5,652,356;および 5,700,922号(これらの中の特定の特許は本出願と共通所有であり、これらの各々は引用することによって全体が本明細書に組み入れられる)が含まれる。
【0048】
本発明に従って用いるアンチセンス化合物の製造は良く知られている固相合成技術を用いて便利に常規通り実施可能である。そのような合成で用いるに適した装置をいくつかの売り主が販売しており、そのような売り主には、例えばApplied Biosystems(Foster City、CA)が含まれる。そのような合成では本技術分野で公知の他の任意手段を追加的または別法として用いることも可能である。オリゴヌクレオチド、例えばホスホロチオエートおよびアルキル置換誘導体などの調製でも同様な技術が用いられることは良く知られている。
【0049】
本発明のアンチセンス化合物はインビトロで合成した化合物であり、これには、生物学的源のアンチセンス組成物もアンチセンス分子のインビボ合成に向けて考案された遺伝的ベクター構築物も含まれない。本発明の化合物の取り上げ、分布および/または吸収を助長する目的で、これをまた他の分子、分子構造物または化合物の混合物、例えばリポソーム、受容体標的分子(receptor targeted molecules)、経口、直腸、局所または他の調剤と一緒に混合するか、それらでカプセル封じするか、それらと接合させるか、或は他の様式で一緒にしてもよい。そのような取り上げ、分布および/または吸収を補助する調剤の調製を教示している代表的な米国特許には、これらに限定するものでないが、米国特許第5,108,921;5,354,844;5,416,016;5,459,127;5,521,291;5,543,158;5,547,932;5,5
83,020;5,591,721;4,426,330;4,534,899;5,013,5
56;5,108,921;5,213,804;5,227,170;5,264,221;5,356,633;5,395,619;5,416,016;5,417,978;5,462,854;5,469,854;5,512,295;5,527,528;5,534,259;5,543,152;5,556,948;5,580,575;および 5,595,756号
(これらは各々引用することによって本明細書に組み入れられる)が含まれる。
【0050】
本発明のアンチセンス化合物には、如何なる薬学的に受け入れられる塩、エステル、前記エステルの塩、またはヒトを包含する動物に投与された時点で生物学的に活性な代謝産物もしくはこれの残基を生じ(直接または間接的に)得る他の如何なる化合物も含まれる。従って、本開示からまた例えば本発明の化合物のプロドラッグおよび薬学的に受け入れられる塩、前記プロドラッグの薬学的に受け入れられる塩および他の生体内等価物(bioequivalents)も引き出される。
【0051】
用語「プロドラッグ」は、不活性な形態で調製されていて体またはこれの細胞の中で内因性酵素または他の化学品および/または条件の作用によって活性形態(即ち薬剤)に変化する治療剤を指す。本発明のオリゴヌクレオチドのプロドラッグバージョンの調製では
、特に、1993年12月9日付けで公開されたGosselin他のWO 93/24510またはImbach他のWO 94/26764に開示された方法に従って、それをSATE[(S−アセチル−2−チオエチル)ホスフェート]誘導体として生じさせる。
【0052】
用語「薬学的に受け入れられる塩」は、本発明の化合物の生理学的および薬学的に受け入れられる塩、即ち親化合物の所望生物学的活性を保持していて望まれない毒物学的影響を与えない塩を指す。
【0053】
金属またはアミン、例えばアルカリおよびアルカリ土類金属などまたは有機アミンを用いて薬学的に受け入れられる塩基付加塩を生じさせる。カチオンとして用いる金属の例はナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどである。適切なアミンの例はN,N’−ジベンジル−エチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、N−メチルグルカミンおよびプロカインである(例えばBerge他、「Pharmaceutical Salts」、J.of Pharma Sci.、1977、66、1−19を参照)。前記酸性化合物の塩基付加塩の調製では、その遊離酸形態を塩が生じるに充分な量の所望塩基に通常様式で接触させることで調製を行う。その塩形態を酸に接触させそして遊離酸を通常様式で単離することで、その遊離酸形態を再生させてもよい。この遊離酸形態とこれらの個々の塩形態は特定の物性、例えば極性溶媒中の溶解度などの点でいくらか異なるが、他の点では、そのような塩は本発明の目的にとって個々の遊離酸に相当する。本明細書で用いる如き「薬学的付加塩」には、本発明の組成物に含める成分の中の一成分の酸形態の薬学的に受け入れられる塩が含まれる。それらにはアミンの有機もしくは無機酸塩が含まれる。好適な酸塩は塩酸塩、酢酸塩、サリチル酸塩、硝酸塩および燐酸塩である。他の適切な薬学的に受け入れられる塩は本分野の技術者に良く知られており、それには、いろいろな無機および有機酸、例えば無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸または燐酸など、有機カルボン酸、スルホン酸、スルホもしくはホスホアシッド(sulfo or phospho acid)またはN置換スルファミン酸、例えば酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、こはく酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、メチルマレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、しゅう酸、グルコン酸、グルカル酸、グルクロン酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、サリチル酸、4−アミノサリチル酸、2−フェノキシ安息香酸、2−アセトキシ安息香酸、エンボニックアシッド(embonic acid)、ニコチン酸またはイソニコチン酸など、そしてアミノ酸、例えば現実に蛋白質の合成に関与する20種類のアルファ−アミノ酸、例えばグルタミン酸またはアスパラギン酸など、およびまたフェニル酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−メチルベンゼンスルホン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、2−もしくは3−ホスホグリセレート、グルコース−6−ホスフェート、N−シクロヘキシルスルファミン酸(シクラメートの生成を伴う)、または他の酸性有機化合物、例えばアスコルビン酸などの塩基塩が含まれる。化合物の薬学的に受け入れられる塩の調製をまた薬学的に受け入れられるカチオンを用いて行うことも可能である。適切な薬学的に受け入れられるカチオンは本分野の技術者に良く知られており、それにはアルカリ、アルカリ土類、アンモニウムおよび第四級アンモニウムカチオンが含まれる。また、炭酸塩または水素炭酸塩も可能である。
【0054】
オリゴヌクレオチドの場合の薬学的に受け入れられる塩の好適な例には、これらに限定するものでないが、(a)カチオン、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、マグネシウム、カルシウム、ポリアミン、例えばスペルミンおよびスペルミジンなどを用いて生じさせた塩、(b)無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、燐酸、硝酸などを用いて生じさせた酸付加塩、(c)有機酸、例えば酢酸、しゅう酸、酒石酸、こはく酸、マレイ
ン酸、フマル酸、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パルミチン酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンスルホン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ポリガラクツロン酸などを用いて生じさせた塩、そして(d)元素状アニオン、例えば塩素、臭素およびヨウ素などを用いて生じさせた塩が含まれる。
【0055】
本発明のアンチセンス化合物は診断薬、治療薬、予防薬および研究用試薬およびキットとして使用可能である。治療薬の場合、PTP1B発現の調節によって治療可能な病気もしくは障害を有すると思われる動物、好適にはヒトに本発明に従うアンチセンス化合物を投与することで治療を行う。適切な薬学的に受け入れられる希釈剤もしくは担体にアンチセンス化合物を有効量で添加することで本発明の化合物を薬剤組成物の状態で用いてもよい。本発明のアンチセンス化合物の使用および方法はまた予防にも有用であり、例えば感染、炎症または腫瘍の形成などを予防または遅らせる目的などでも使用可能である。
【0056】
本発明のアンチセンス化合物はPTP1Bをコード化する核酸とハイブリッドを形成し、それによって、このことを利用してサンドイッチ(sandwich)および他の検定を容易に構築することができることから、本発明のアンチセンス化合物は研究および診断で用いるに有用である。本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドとPTP1Bをコード化する核酸が起こすハイブリッド形成は本技術分野で公知の手段を用いて検出可能である。そのような手段には、ある酵素を本オリゴヌクレオチドと接合させること、本オリゴヌクレオチドに放射線標識を付けること、または他の適切な如何なる検出手段も含まれ得る。また、あるサンプルに入っているPTP1Bの濃度を検出する目的でそのような検出手段を用いたキットを調製することも可能である。
【0057】
本発明は、また、本発明のアンチセンス化合物を含有させた薬剤組成物および調剤も包含する。本発明の薬剤組成物は、望まれる治療が局所であるか或は全身であるかそして治療を受けさせる領域に応じていろいろな様式で投与可能である。投与は局所[眼および粘膜(膣および直腸搬送を包含)を包含]、肺[例えば粉末またはエーロゾルの吸入もしくは通気(噴霧器によるそれらを包含)による]、気管内、鼻内、表皮および経皮、経口または非経口であってもよい。非経口投与には静脈内、動脈内、皮下、腹腔内または筋肉内注射もしくは注入、または頭蓋内、例えば鞘内または脳室内投与などが含まれる。2’−O−メトキシエチル修飾を少なくとも1つ伴うオリゴヌクレオチドは特に経口投与で用いるに有用であると考えている。
【0058】
局所投与用薬剤組成物および調剤には、経皮パッチ、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、滴、座薬、スプレー、液体および粉末が含まれ得る。通常の薬剤担体、水性、粉末状または油状基材、増粘剤などが必要であり得るか或は望ましい可能性がある。また、被覆を受けさせたコンドーム、グローブなども有用であり得る。
【0059】
経口投与用組成物および調剤には、粉末または顆粒、水または非水性媒体に入っている懸濁液または溶液、カプセル、袋または錠剤が含まれる。増粘剤、風味剤、希釈剤、乳化剤、分散助剤または結合剤が望ましい可能性がある。
【0060】
非経口、鞘内または脳室内投与用の組成物および調剤には、無菌水溶液(これにはまた緩衝剤、希釈剤および他の適切な添加剤、例えば、これらに限定するものでないが、浸透強化剤、担体化合物、そして他の薬学的に受け入れられる担体または賦形剤などが入っていてもよい)が含まれ得る。
【0061】
本発明の製薬学的組成物には、これらに限定するものでないが、溶液、乳液、およびリポソーム含有調剤が含まれる。いろいろな成分を用いてそのような組成物を生じさせるこ
とができ、そのような成分には、これらに限定するものでないが、前以て生じさせておいた液体、自己乳化性固体および自己乳化性半固体が含まれる。
【0062】
本発明の薬剤組成物を便利には単位投薬形態で存在させてもよく、これの調製は薬剤産業で良く知られている通常技術に従って実施可能である。そのような技術は、本活性材料と薬剤担体1種または2種以上または賦形剤1種または2種以上と一緒にする段階を包含する。一般的には、本活性材料と液状担体もしくは微細固体状担体または両方と均一または密に一緒にした後、必要ならば、その生成物の成形を行うことでそのような調剤を生じさせる。
【0063】
本発明の組成物は可能ないろいろな投薬形態、例えばこれらに限定するものでないが、錠剤、カプセル、液状シロップ、軟質ゲル、座薬および浣腸などのいずれに調合されてもよい。本発明の組成物をまた水性、非水性または混合媒体に入っている懸濁液として調合することも可能である。水性懸濁液に更にこの懸濁液の粘度を高くする物質を入れてもよく、そのような物質には、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールおよび/またはデキストランなどが含まれる。このような懸濁液にまた安定剤を入れることも可能である。
【0064】
本発明の1つの態様では、本薬剤組成物を発泡体として調合して用いることができる。製薬学的発泡体(pharmaceutical foams)には、これらに限定するものでないが、エマルジョン、ミクロエマルジョン、クリーム、ゼリーおよびリポソームなどの如き調剤が含まれる。そのような調剤は基本的には現実に同様であるが、成分および最終生成物の粘ちょう度の点で多様である。そのような組成物および調剤の調製は薬剤および調合技術分野の技術者に一般に良く知られており、本発明の組成物の処方に適用可能である。
【0065】
エマルジョン:本発明の組成物はエマルジョンとして調製および調合可能である。エマルジョンは典型的に直径が一般に0.1μm以上の液滴の形態のある液体が別の液体の中に分散している不均一な系である(Idson、「Pharmaceutical Dosage Forms」、Lieberman、RiegerおよびBanker(編集)、1988、Marcel Dekker,Inc.、ニューヨーク、N.Y.、第1巻、199頁;Rosoff、「Pharmaceutical Dosage Forms」、Lieberman、RiegerおよびBanker(編集)、1988、Marcel Dekker,Inc.、ニューヨーク、N.Y.、第1巻、245頁;Block、「Pharmaceutical Dosage Forms」、Lieberman、RiegerおよびBanker(編集)、1988、Marcel Dekker,Inc.、ニューヨーク、N.Y.、第2巻、335頁;Higuchi他、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、Mack Publishing Co.、Easton、PA、1985、301頁)。エマルジョンはしばしば互いに密に混ざり合って分散している2種類の混和しない液相で構成されている2相系である。エマルジョンは一般に油中水(w/o)または水中油(o/w)の種類のいずれかであり得る。水相が微細な液滴としてバルクな(bulk)油相の中に微細分散している時、結果として生じる組成物は油中水(w/o)エマルジョンと呼ばれる。別法として、油相が微細な液滴としてバルクな水相の中に微細分散している時、結果として生じる組成物は水中油(o/w)エマルジョンと呼ばれる。エマルジョンにそのような分散相に加えて追加的成分を入れることも可能であり、かつ水相または油相のいずれかに入っている溶液またはそれ自身として個別相として存在し得る活性薬剤を入れることも可能である。また、製薬学的賦形剤(pharmaceutical excipients)、例えば乳化剤、安定剤、色素および抗酸化剤なども必要に応じてエマルジョンの中に存在させることも可能である。製薬学的エマルジョンは、また、例えば油中水中
油(o/w/o)および水中油中水(w/o/w)エマルジョンの場合のように、3相以上の相で構成されている多相エマルジョン(multiple emulsions)であってもよい。そのような複雑な調剤ではしばしば単に2相のエマルジョンでは得られない特定の利点が得られる。o/wエマルジョンの個々の油滴が小さい水滴を封じ込めている多相エマルジョンはw/o/wエマルジョンを構成する。同様に、連続油の中に安定に存在する水滴の中に油滴が封じ込められている系はo/w/oエマルジョンである。
【0066】
エマルジョンは熱力学安定性をほとんどか或は全く持たないことを特徴とする。しばしば、このエマルジョンに含まれている分散もしくは不連続相は乳化剤または調剤の粘度によって外部もしくは連続相の中に良好に分散していてそのような形態に維持されている。このエマルジョンに含まれている相のどちらかはエマルジョン型の軟膏ベースおよびクリームの場合のように半固体または固体であってもよい。エマルジョンを安定にする他の手段は乳化剤の使用を伴い、それがエマルジョンに含まれているいずれかの相の中に入り込むようにしてもよい。乳化剤は幅広い意味で下記の4種類に分類分け可能である:合成界面活性剤、天然に存在する乳化剤、吸収基材(absorption bases)および微分散固体[Idson、「Pharmaceutical Dosage Forms」、Lieberman、RiegerおよびBanker(編集)、1988、Marcel Dekker,Inc.、ニューヨーク、N.Y.、第1巻、199頁]。
【0067】
合成界面活性剤(また表面活性剤としても知られる)はエマルジョンの処方で幅広く用いられており、文献[Rieger、「Pharmaceutical Dosage Forms」、Lieberman、RiegerおよびBanker(編集)、1988、Marcel Dekker,Inc.、ニューヨーク、N.Y.、第1巻、285頁;Idson、「Pharmaceutical Dosage Forms」、Lieberman、RiegerおよびBanker(編集)、Marcel Dekker,Inc.、ニューヨーク、N.Y.、1988、第1巻、199頁]の中で論評されている。界面活性剤は典型的に両親媒性であり、親水性部分と疎水性部分を含んで成る。界面活性剤が示す疎水性に対する親水性の比率は親水/親油均衡(HLB)と呼ばれており、これは調剤を調製する時に界面活性剤を分類分けして選択する時の価値有る道具である。界面活性剤は親水性基の性質を基にして下記のいろいろな種類に分類分け可能である:非イオン性、アニオン性、カチオン性および両性[Rieger、「Pharmaceutical Dosage Forms」、Lieberman、RiegerおよびBanker(編集)、1988、Marcel Dekker,Inc.、ニューヨーク、N.Y.、第1巻、285頁]。
【0068】
エマルジョン調剤で用いられる天然に存在する乳化剤には、ラノリン、蜜蝋、ホスファチド、レシチンおよびアカシアが含まれる。吸収基材、例えば無水ラノリンおよび親水性ワセリンなどは親水性特性を有し、その結果として、それらは水を吸い込んでw/oエマルジョンを形成し得るが、それらの半固体粘ちょう度を保持している。また、微細固体も特に界面活性剤と組み合わせて良好な乳化剤として粘性のある調剤の中で用いられる。それらには極性のある無機固体、例えば重金属の水酸化物、膨潤しない粘土、例えばベントナイト、アタパルジャイト、ヘクトライト、カオリン、モントモリロナイト、コロイド状ケイ酸アルミニウムおよびコロイド状ケイ酸マグネシウムアルミニウムなど、顔料および非極性固体、例えば炭素またはトリステアリン酸グリセリルなどが含まれる。
【0069】
エマルジョン調剤にはまた多種多様な非乳化性材料も入っており、それらはエマルジョンの特性に寄与する。それらには脂肪、油、蝋、脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪エステル、浸潤薬、親水性コロイド、防腐剤および抗酸化剤が含まれる[Block、「Pharmaceutical Dosage Forms」、Lieberman、RiegerおよびBanker(編集)、1988、Marcel Dekker,Inc.、ニ
ューヨーク、N.Y.、第1巻、335頁;Idson、「Pharmaceutical Dosage Forms」、Lieberman、RiegerおよびBanker(編集)、1988、Marcel Dekker,Inc.、ニューヨーク、N.Y.、第1巻、199頁]。
【0070】
親水性コロイドまたはヒドロコロイドには、天然に存在するゴムおよび合成重合体、例えば多糖類(例えばアカシア、寒天、アルギン酸、カラゲナン、グアーゴム、カラヤゴムおよびトラガカント)、セルロース誘導体(例えばカルボキシメチルセルロースおよびカルボキシプロピルセルロース)および合成重合体[例えばカルボマー(carbomers)、セルロースエーテルおよびカルボキシビニル重合体]が含まれる。それらは水の中に分散または膨潤してコロイド溶液を形成し、これは、分散相液滴の回りに強力な界面膜を形成しかつ外部相の粘度を高くすることでエマルジョンを安定にする。
【0071】
エマルジョンにはしばしばいろいろな材料、例えば炭水化物、蛋白質、ステロールおよびホスファチド(これらは微生物の増殖を容易に支援し得る)が入っていることから、そのような調剤にはしばしば防腐剤が添加される。エマルジョン調剤に入れて通常用いられる防腐剤には、メチルパラベン、プロピルパラベン、第四級アンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム、p−ヒドロキシ安息香酸のエステルおよびホウ酸が含まれる。また、エマルジョン調剤の劣化を防止する目的で一般に抗酸化剤もそのような調剤に添加される。用いられる抗酸化剤はフリーラジカル捕捉剤、例えばトコフェロール、没食子酸アルキル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエンなど、または還元剤、例えばアスコルビン酸および異性重亜硫酸ナトリウムなど、そして抗酸化剤相乗剤、例えばクエン酸、酒石酸およびレシチンなどであり得る。
【0072】
皮膚科学的、経口および非経口経路によるエマルジョン調剤の投与およびそれらの製造方法が文献の中で論評されている[Idson、「Pharmaceutical Dosage Forms」、Lieberman、RiegerおよびBanker(編集)、1988、Marcel Dekker,Inc.、ニューヨーク、N.Y.、第1巻、199頁]。経口搬送用エマルジョン調剤は処方が容易なことと吸収および生利用性の観点の効率が理由で非常に幅広く用いられている[Rosoff、「Pharmaceutical Dosage Forms」、Lieberman、RiegerおよびBanker(編集)、1988、Marcel Dekker,Inc.、ニューヨーク、N.Y.、第1巻、245頁;Idson、「Pharmaceutical Dosage Forms」、Lieberman、RiegerおよびBanker(編集)、1988、Marcel Dekker,Inc.、ニューヨーク、N.Y.、第1巻、199頁]。鉱油が基になった下剤、油溶性ビタミンおよび高脂肪栄養調剤がとりわけo/wエマルジョンとして通常経口投与される材料である。
【0073】
本発明の1つの態様では、オリゴヌクレオチドと核酸の組成物をミクロエマルジョンとして調合する。ミクロエマルジョンは水と油と両親媒剤の系として定義可能であり、これは光学的に等方性で熱力学に安定な単一の液状溶液である[Rosoff、「Pharmaceutical Dosage Forms」、Lieberman、RiegerおよびBanker(編集)、1988、Marcel Dekker,Inc.、ニューヨーク、N.Y.、第1巻、245頁]。ミクロエマルジョンは、典型的に、油を最初に水性界面活性剤溶液の中に分散させた後に4番目の成分、一般的には中間的鎖長のアルコールを透明な系が生じるに充分な量で添加することで生じさせた系である。従って、ミクロエマルジョンは、また、混和しない2種類の液体が表面活性分子の界面膜で安定化を受けている熱力学に安定で等方的に透明な分散液であるとして記述されている[LeungおよびShah、「Controlled Release of Drugs:Polymers and Aggregate Systems、Rosoff,M.編集
、1989、VCH Publishers、ニューヨーク、185−215頁」。ミクロエマルジョンの調製は一般に3種類から5種類の成分(これには油、水、界面活性剤、共界面活性剤および電解質が含まれる)を組み合わせることで行われる。このミクロエマルジョンの種類が油中水(w/o)型であるか或は水中油(o/w)型であるかは用いられた油および界面活性剤の特性および界面活性剤分子が有する極性頭および炭化水素尾の構造および幾何学的パッキングに依存する。[Scott、「Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.、Easton、PA、1985、271頁]。
【0074】
相ダイアグラム(phase diagrams)を用いた現象学的アプローチが広範に研究されてきており、どのようにすればミクロエマルジョンを生じさせることができるかに関する総括的な知識が本分野の技術者にもたらされた[Rosoff、「Pharmaceutical Dosage Forms」、Lieberman、RiegerおよびBanker(編集)、1988、Marcel Dekker,Inc.、ニューヨーク、N.Y.、第1巻、245頁;Block、「Pharmaceutical
Dosage Forms」、Lieberman、RiegerおよびBanker(編集)、1988、Marcel Dekker,Inc.、ニューヨーク、N.Y.、第1巻、335頁]。ミクロエマルジョンは通常のエマルジョンに比較して自然発生的に生じた熱力学的に安定な液滴の構成の中に水に不溶な薬剤を溶解させることができると言った利点を与える。
【0075】
ミクロエマルジョンの調製で用いられる界面活性剤には、これらに限定するものでないが、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、Brij 96、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリグリセロール脂肪酸エステル、テトラグリセロールモノラウレート(ML310)、テトラグリセロールモノオレエート(MO310)、ヘキサグリセロールモノオレエート(PO310)、ヘキサグリセロールペンタオレエート(PO500)、デカグリセロールモノカプレート(MCA750)、デカグリセロールモノオレエート(MO750)、デカグリセロールセスキオレエート(SO750)、デカグリセロールデカオレエート(DAO750)が含まれ、これらは単独または共界面活性剤と一緒に用いられる。共界面活性剤、通常は短鎖のアルコール、例えばエタノール、1−プロパノールおよび1−ブタノールなどは、界面活性剤分子の間に空隙空間部が生じることから界面活性剤膜の中に入り込む結果として無秩序な膜を作り出すことによって界面の流動性を高くする働きをする。しかしながら、共界面活性剤を用いないでミクロエマルジョンを生じさせることも可能であり、かつアルコールを含まない自己乳化性ミクロエマルジョン系も本技術分野で公知である。その水相は、典型的に、これらに限定するものでないが、薬剤、グリセロール、PEG300、PEG400、ポリグリセロール、プロピレングリコールおよびエチレングリコール誘導体の水溶液、水などであり得る。油相には、これらに限定するものでないが、Captex 300、Captex 355、Capmul MCM、脂肪酸エステル、中程度の鎖長(C8−C12)のモノ、ジおよびトリ−グリセリド、ポリオキシエチル化グリセリル脂肪酸エステル、脂肪アルコール、ポリグリコール化グリセリド、飽和ポリグリコール化C8−C10グリセリド、植物油およびシリコンオイルなどの如き材料が含まれ得る。
【0076】
ミクロエマルジョンは特に薬剤を溶解させかつ薬剤の吸収を向上させると言った観点から興味が持たれる。脂質が基になったミクロエマルジョン(o/wおよびw/oの両方)を用いて薬剤(ペプチドを包含)の経口生利用性を向上させることが提案された[Constantinides他、Pharmaceutical Research、1994、11、1385−1390;Ritschel、Meth.Find.Exp.Clin.Pharmacol.、1993、13、205]。ミクロエマルジョンは薬剤の溶解性を向上させ、薬剤を酵素による加水分解から保護し、膜流動性および透過性が界面
活性剤によって誘発されて変化することが理由で薬剤の吸収を向上させる可能性があり、調製が容易であり、固体状投薬形態に比べて経口投与が容易であり、臨床的効力を向上させ、そして毒性を低くすると言った利点を与える[Constantinides他、Pharmaceutical Research、1994、11、1385;Ho他、J.Pharm.Sci.、1996、85、138−143]。ミクロエマルジョンは、しばしば、これらの成分を周囲温度で一緒にすると自然発生的に生じ得る。このことは熱に不安定な薬剤、ペプチドまたはオリゴヌクレオチドを処方する時に特に有利であり得る。ミクロエマルジョンはまた化粧用途および薬剤用途の両方の活性成分を経皮搬送する時にも有効であった。本発明のミクロエマルジョン組成物および調剤はオリゴヌクレオチドおよび核酸が胃腸管から全身に吸収される度合を向上させるに役立つばかりでなくオリゴヌクレオチドおよび核酸が胃腸管、膣、頬空洞部および他の投与領域の中で局所的に細胞によって吸収される度合を向上させることは予想外であった。
【0077】
また、本発明のオリゴヌクレオチドおよび核酸の処方特性を向上させかつそれらの吸収性を向上させる目的で、本発明のミクロエマルジョンに追加的成分および添加剤、例えばソルビタンのモノステアレート(Grill 3)、Labrasol、および浸透向上剤(penetration enhancers)などを含有させることも可能である。本発明のミクロエマルジョンで用いる浸透向上剤は、下記の5種類の幅広い分類:界面活性剤、脂肪酸、胆汁塩、キレート剤、およびキレート剤でも界面活性剤でもないものの中の1つに属するとして分類分け可能である[Lee他、Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems、1991、92頁]。これらの種類の各々はこの上で考察したそれである。
【0078】
リポソーム:薬剤の処方で試験して用いたミクロエマルジョン以外に数多くの組織化された界面活性剤構造物(organized surfactant structures)が存在する。それらには単層、ミセル、2層およびベシクルが含まれる。ベシクル、例えばリポソームなどは薬剤搬送の観点でそれらが与える特異性および作用持続性が理由で多大な興味を集めている。本発明で用いる如き用語「リポソーム」は、球形の2層または2層以上の状態で配列している両親媒性脂質で構成されているベシクルを意味する。
【0079】
リポソームは、親油性材料で構成されている膜と水性内部を有する単層もしくは多層ベシクルである。前記水性部分に搬送すべき組成物を含有させる。カチオン性リポソームは細胞壁に融合し得ると言った利点を有する。非カチオン性のリポソームは、同様な効率で細胞壁と融合する能力は持たないが、インビボでマクロファージによって吸収される。
【0080】
脂質ベシクルが哺乳動物の無傷の皮膚を通り抜けるようにするには、各々が50nm未満の直径を有する一連の微細な孔を適切な経皮勾配(transdermal gradient)の影響下で通り抜けるようにすべきである。従って、非常に変形し易くかつそのような微細な孔を通り抜け得るリポソームの使用が望ましい。
【0081】
リポソームのさらなる利点には下記が含まれる:天然の燐脂質を用いて得たリポソームは生適合性で生分解性であり、リポソームに幅広い範囲の水溶性および脂質溶解性薬剤を取り込ませることができ、リポソームはこれの内部の部屋の中にカプセル封じされている薬剤を代謝および劣化から保護し得る[Rosoff、「Pharmaceutical
Dosage Forms」、Lieberman、RiegerおよびBanker(編集)、1988、Marcel Dekker,Inc.、ニューヨーク、N.Y.、第1巻、245頁]。リポソーム調剤を調製する時の重要な考慮は脂質表面の帯電、ベシクルの大きさおよびリポソームの水性体積である。
【0082】
リポソームは活性材料を作用部位に移送および搬送するに有用である。リポソームの膜
は構造的に生物学的膜に類似していることから、リポソームを組織に付着させると、そのリポソームは細胞膜に併合され始める。このリポソームと細胞の併合が進行するにつれて、リポソームの内容物が出て細胞の中に入って、その細胞の中で活性剤が作用を示すようになり得る。
【0083】
リポソーム調剤はいろいろな薬剤の搬送様式として広範な調査の焦点であった。局所投与に関して、リポソームは他の調剤に比べていくつかの利点を与えると言った証拠が現れてきている。そのような利点には、投薬された薬剤が高い度合で全身に吸収されることに関連して副作用が低いこと、投与された薬剤が所望標的の所に蓄積する度合が高いこと、そして幅広く多様な薬剤(親水性および疎水性の両方)を皮膚に投与することが可能になることが含まれる。
【0084】
リポソームを用いて作用剤(高分子量のDNAを包含)を皮膚に搬送することができることを詳細に示している報告がいくつか存在する。皮膚に投与された化合物には鎮痛薬、抗体、ホルモンおよび高分子量のDNAが含まれる。大部分の用途で結果として行われたのは上表皮を標的にしたものであった。
【0085】
リポソームは幅広く2種類に分類分けされる。カチオン性リポソームは正に帯電しているリポソームであり、これは負に帯電しているDNA分子と相互作用して安定な複合体を形成する。この正に帯電しているDNA/リポソーム複合体は負に帯電している細胞表面と結合して、エンドソームの中に入り込む。そのエンドソームの中のpHは酸性であることから、そのリポソームは崩壊し、その結果として、その内容物が放出されて細胞の細胞質の中に入り込む[Wang他、Biochem.Biophys.Res.Commun.、1987、147、980−985]。
【0086】
pHに敏感であるか或は負に帯電しているリポソームはDNAと複合体を形成しないでDNAを捕捉する。DNAの帯電と脂質の帯電は両方とも類似していることから、複合体の生成が起こるよりも反発が起こる。それにも拘らず、そのようなリポソームの水性内部の中にDNAがいくらか捕捉される。pHに敏感なリポソームを用いてチミジンキナーゼ遺伝子をコード化するDNAを培養物の中の細胞単層に搬送することが行われた。その標的細胞の中で外因性遺伝子が発現することが検出された[Zhou他、Journal of Controlled Release、1992、19、269−274]。
【0087】
1つの主要な種類のリポソーム組成物は、天然由来のホスファチジルコリンではない燐脂質を含有する組成物である。例えば、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)またはジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)を用いると中性のリポソーム組成物が生じ得る。一般に、ジミリストイルホスファチジルコリンを用いるとアニオン性リポソーム組成物が生じるが、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)を用いると主にアニオン性の融合性リポソームが生じる。例えば、大豆のホスファチジルコリン(PC)および卵のPCなどの如きPCを用いると別の種類のリポソーム組成物が生じる。燐脂質および/またはホスファチジルコリンおよび/またはコレステロールの混合物を用いると別の種類が生じる。
【0088】
いくつかの研究でリポソーム型薬剤調剤(liposomal drug formulations)を皮膚に局所搬送することが評価された。インターフェロンを含有させておいたリポソームをモルモットの皮膚に塗布すると結果として皮膚のヘルペスただれの軽減がもたらされたが、インターフェロンを別の手段(例えば溶液または乳液として)で搬送しても有効でなかった[Weiner他、Journal of Drug Targeting、1992、2、405−410]。更に、追加的試験で、インターフェロンをリポソーム調剤の一部として投与した時の効力と水系を用いてインターフェロンを投
与した場合の試験が行われ、その結論は、リポソーム型調剤の方が水系投与よりも優れていると言った結論であった[du Plessis他、Antiviral Resarch、1992、18、259−265]。
【0089】
非イオン性のリポソーム系、特に非イオン性界面活性剤とコレステロールを含んで成る系にもまた薬剤を皮膚に搬送する時の有用性を測定する試験を受けさせた。NovasomeJ I(ジラウリン酸グリセリル/コレステロール/ポリオキシエチレン−10−ステアリルエーテル)およびNovasomeJ II(ジステアリン酸グリセリル/コレステロール/ポリオキシエチレン−10−ステアリルエーテル)を含んで成る非イオン性リポソーム型調剤を用いてシクロスポリン−Aをマウス皮膚の真皮に搬送することも行われた。結果としてそのような非イオン性のリポソーム系はシクロスポリン−Aを皮膚のいろいろな層に付着させるのを容易にするに有効であることが示された[Hu他、S.T.P.Pharma.Sci.、1994、4、6、466]。
【0090】
リポソームにはまた「立体的に安定な」リポソームも含まれ、その用語を本明細書で用いる場合、これは、リポソームの中に取り込まれた時に結果としてそれの循環寿命(circulation lifetimes)を向上させる1種以上の特殊な脂質を含んで成るリポソームを指す(そのような特殊な脂質を含有させていないリポソームに比較して)。立体的に安定なリポソームの例は、(A)リポソームのベシクル形成脂質部分の一部が1種以上の糖脂質、例えばモノシアロガングリオシドGM1などを含んで成るリポソームであるか、或は(B)1種以上の親水性重合体、例えばポリエチレングリコール(PEG)部分などを用いて誘導されたリポソームである。如何なる特別な理論でも範囲を限定することを望むものでないが、本技術分野では、少なくとも、ガングリオシド、スフィンゴミエリンまたはPEG誘導脂質を含有する立体的に安定なリポソームにおいてそのような立体的に安定なリポソームが向上した循環半減期を有するのはそれが網内皮細胞系(RES)の細胞の中に吸収される度合が低いことによると考えられている[Allen他、FEBS Letters、1987、223、42;Wu他、Cancer Research、1993、53、3765]。1種以上の糖脂質を含んで成るいろいろなリポソームが本技術分野で公知である。Papahadjopoulos他[Ann.N.Y.Acad.Sci.、1987、507、64]はモノシアロガングリオシドGM1、硫酸ガラクトセレブロシドおよびホスファチジルイノシトールがリポソームの血液半減期を向上させる能力を有することを報告した。そのような発見をGabizon他[Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、1988、85、6949]が明瞭に詳しく説明した。米国特許第4,837,028号およびWO 88/04924[両方ともAllen他]に、(1)スフィンゴミエリンと(2)ガングリオシドGM1もしくはガラクトセレブロシドの硫酸エステルを含んで成るリポソームが開示されている。米国特許第5,543,152号(Webb他)にスフィンゴミエリンを含んで成るリポソームが開示されている。1,2−sn−ジミリストイルホスファチジルコリンを含んで成るリポソームがWO 97/13499(Lim他)に開示されている。
【0091】
1種以上の親水性重合体を用いて誘導された脂質を含んで成るいろいろなリポソームおよびそれらの製造方法は本技術分野で公知である。Sunamoto他[Bull.Chem.Soc.Jpn.、1980、53、2778]は、PEG部分を含有する非イオン性洗浄剤である2C1215Gを含んで成るリポソームを記述した。Illum他[FEBS Lett.、1984、167、79]は、ポリスチレン粒子を高分子量のグリコールで親水性被覆すると結果としてそれの血液半減期が有意に向上することを示した。合成燐脂質にポリアルキレングリコール(例えばPEG)のカルボキシル基を結合させてそれに修飾を受けさせることをSearsが記述している[米国特許第4,426,330号および4,534,899号]。Klibanov他[FEBS Lett.、1990、268、235]は、PEGもしくはPEGステアレートを用いて誘導されたホス
ファチジルエタノールアミン(PE)を含んで成るリポソームはそれの血液循環半減期が有意に向上することを示す実験を記述した。Blume他[Biochimica et
Biophysica Acta、1990、1029、91]は、そのような観察を他のPEG誘導燐脂質、例えばジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)とPEGを組み合わせることで生じさせたDSPE−PEGなどに拡張した。外側表面に共有結合したPEG部分を有するリポソームがFisher他のヨーロッパ特許番号EP 0 445 131 B1およびWO 90/04384に記述されている。PEGを用いて誘導されたPEを1−20モルパーセント含有するリポソーム組成物およびそれの使用方法をWoodle他[米国特許第5,013,556号および5,356,633号]およびMartin他[米国特許第5,213,804号およびヨーロッパ特許番号EP 0 496 813 B1]が記述している。他のいろいろな脂質−重合体接合体を含んで成るリポソームがWO 91/05545および米国特許第5,225,212[両方ともMartin他]およびWO 94/20073(Zalipsky他)に開示されている。PEG修飾セラミド脂質を含んで成るリポソームがWO 96/10391(Choi他)に記述されている。米国特許第5,540,935号(Miyazaki他)および5,556,948号(Tagawa他)にPEG含有リポソームが記述されており、それの表面に官能部分を用いた誘導化を更に受けさせてもよい。
【0092】
本技術分野で公知の核酸含有リポソームの数は限られている。Thierry他のWO
96/40062には高分子量の核酸をリポソームの中にカプセル封じする方法が開示されている。Tagawa他の米国特許第5,264,221号には、蛋白質と結合したリポソームが開示されており、かつそのようなリポソームの内容物にはアンチセンスRNAが含まれ得ると主張されている。Rahman他の米国特許第5,665,710号には、オリゴデオキシヌクレオチドをリポソームの中にカプセル封じする特定の方法が記述されている。Love他のWO 97/04787にraf遺伝子を標的にするアンチセンスオリゴヌクレオチドを含んで成るリポソームが開示されている。
【0093】
トランスファーソーム(transfersomes)が更に別な種類のリポソームであり、これは非常に変形し得る脂質凝集物であり、これは薬剤搬送用媒体の魅力的な候補品である。トランスファーソームは脂質滴として記述可能であり、これらは非常に変形し得ることから、前記滴より小さい孔の中を容易に通り抜ける。トランスファーソームはこれらが用いられる環境に適合し、例えばこれらは自己最適化を行い(皮膚の中の孔の形状に適合し)、自己修復し、しばしば断片化を起こすことなく標的に到達しかつしばしば自己充填を行う(self−loading)。トランスファーソームを形成させる時、標準的なリポソーム組成物に表面縁活性化剤(surface edge−activators)、通常は界面活性剤を添加することができる。トランスファーソームは血清アルブミンを皮膚に搬送する目的で用いられてきた。トランスファーソームを媒介して血清アルブミンを搬送した時に得られる効果は血清アルブミンを入れた溶液を皮下注射した時の効果と同等であることが示された。
【0094】
界面活性剤はエマルジョン(ミクロエマルジョンを包含)およびリポソームなどの如き調剤で幅広い用途を有する。天然および合成両方の多種多様な界面活性剤を分類分けしそしてそれらの特性に等級を付ける最も一般的な方法は、親水/親油均衡(HLB)を用いる方法である。親水性基(また「頭」としても知られる)の性質を用いると、調剤で用いられるいろいろな界面活性剤を分類分けする最も有効な手段を得ることができる[Rieger、「Pharmaceutical Dosage Forms」、Marcel
Dekker,Inc.、ニューヨーク、N.Y.、1988、285頁]。
【0095】
界面活性剤の分子がイオン化しない場合、これは非イオン性界面活性剤として分類分けされる。非イオン性界面活性剤は薬剤および化粧品で幅広く用いられていて、幅広い範囲
のpH値に渡って使用可能である。それらが示すHLB値は一般にそれらの構造に応じて2から約18の範囲である。非イオン性界面活性剤には、非イオン性エステル、例えばエチレングリコールのエステル、プロピレングリコールのエステル、グリセリルエステル、ポリグリセリルエステル、ソルビタンのエステル、スクロースのエステルおよびエトキシル化エステル(ethoxylated esters)などが含まれる。また、非イオン性アルカノールアミドおよびエーテル、例えば脂肪アルコールのエトキシレート、プロポキシル化アルコールおよびエトキシル化/プロポキシル化ブロック重合体もそのような種類に含まれる。このようなポリオキシエチレン界面活性剤が非イオン性界面活性剤の種類の最も一般的な員である。
【0096】
界面活性剤分子を水に溶解または分散させた時にそれが負の電荷を持つ場合、そのような界面活性剤はアニオン性として分類分けされる。アニオン性界面活性剤には、カルボン酸塩、例えば石鹸など、アシルラクチレート、アミノ酸のアシルアミド、硫酸のエステル、例えば硫酸アルキルおよびエトキシル化硫酸アルキルなど、スルホン酸塩、例えばアルキルベンゼンスルホン酸塩など、アシルイセチオネート、アシルタウレートおよびスルホスクシネート、および燐酸塩が含まれる。アニオン性界面活性剤の種類の最も重要な員は硫酸アルキルおよび石鹸である。
【0097】
界面活性剤分子を水に溶解もしくは分散させた時にそれが正電荷を持つ場合、そのような界面活性剤はカチオン性として分類分けされる。カチオン性界面活性剤には第四級アンモニウム塩およびエトキシル化アミンが含まれる。第四級アンモニウム塩がこの種類の最も用いられる員である。
【0098】
界面活性剤分子が正電荷または負電荷のいずれも持つ能力を有する場合、そのような界面活性剤は両性として分類分けされる。両性界面活性剤にはアクリル酸誘導体、置換アルキルアミド、N−アルキルベタインおよびホスファチドが含まれる。
【0099】
界面活性剤を薬剤製品、調剤およびエマルジョンで用いることは論評されている[Rieger、「Pharmaceutical Dosage Forms」、Marcel Dekker,Inc.、ニューヨーク、N.Y.、1988、285頁]。
【0100】
浸透向上剤:本発明では、1つの態様において、核酸、特にオリゴヌクレオチドを動物の皮膚に効率良く搬送する目的でいろいろな浸透向上剤を用いる。大部分の薬剤はイオン化形態および非イオン化形態の両方で溶液の中に存在する。しかしながら、細胞膜を容易に通り抜けるのは一般に脂質可溶性もしくは親油性薬剤のみである。通り抜けさせるべき膜を浸透向上剤で処理しておくと非親油性薬剤でさえ細胞膜を通り抜けることができることを見いだした。浸透向上剤は非親油性薬剤が細胞膜を通り抜けて拡散するのを補助することに加えて親油性薬剤の透過性も向上させる。
【0101】
浸透向上剤は下記の5種類の幅広い分類、即ち界面活性剤、脂肪酸、胆汁塩、キレート剤、およびキレート剤でも界面活性剤でもないものの中の1つに属するとして分類分け可能である[Lee他、Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems、1991、92頁]。上述した種類の浸透補助剤の各々を以下により詳細に記述する。
【0102】
界面活性剤:本発明に関連して、界面活性剤(または「表面活性剤」)は、水溶液に溶解した時にその溶液の表面張力を低くするか或はその水溶液と別の液体の間の界面張力を低くする結果としてオリゴヌクレオチドが粘膜を通して吸収される度合を向上させる化学構成要素である。そのような浸透向上剤には、胆汁塩および脂肪酸に加えて、例えばラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテルおよびポリオキシエチ
レン−20−セチルエーテル[Lee他、Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems、1991、92頁]およびパーフルオロケミカルエマルジョン(perfluorochemical emulsions)、例えばFC−43など[Takahashi他、J.Pharm.Pharmacol.、1988、40、252]が含まれる。
【0103】
脂肪酸:浸透向上剤として働くいろいろな脂肪酸およびそれらの誘導体には、例えばオレイン酸、ラウリン酸、カプリン酸(n−デカン酸)、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、ジカプレート、トリカプレート、モノオレイン(1−モノオレオイル−rac−グリセロール)、ジラウリン、カプリル酸、アラキドン酸、グリセロールの1−モノカプレート、1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン、アシルカルニチン、アシルコリン、それらのC1−10アルキルエステル(例えばメチル、イソプロピルおよびt−ブチル)、そしてそれらのモノ−およびジグリセリド(即ちオレエート、ラウレート、カプレート、ミリステート、パルミテート、ステアレート、リノレートなど)が含まれる[Lee他、Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems、1991、92頁;Muranishi、Critical Reviews in Therapeutic
Drug Carrier Systems、1990、7、1−33;El Hariri他、J.Pharm.Pharmacol.、1992、44、651−654]。
【0104】
胆汁塩:胆汁の生理学的役割には、脂質および脂肪溶解性ビタミンの分散および吸収の助長が含まれる[Brunton、38章「Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics」、第9版、Hardman他編集、MaGraw−Hill、ニューヨーク、1996、934−935頁]。いろいろな天然の胆汁塩およびこれらの合成誘導体が浸透向上剤として働く。従って、用語「胆汁塩」には、胆汁の天然に存在する成分のいずれも含まれるばかりでなくそれらの合成誘導体のいずれも含まれる。本発明の胆汁塩には、例えばコール酸(またはこれの薬学的に受け入れられるナトリウム塩、即ちコール酸ナトリウム)、デヒドロコール酸(デヒドロコール酸ナトリウム)、デオキシコール酸(デオキシコール酸ナトリウム)、グルコール酸(グルコール酸ナトリウム)、グリコール酸(グリコール酸ナトリウム)、グリコデオキシコール酸(グリコデオキシコール酸ナトリウム)、タウロコール酸(タウロコール酸ナトリウム)、タウロデオキシコール酸(タウロデオキシコール酸ナトリウム)、ケノデオキシコール酸(ケノデオキシコール酸ナトリウム)、ウルソデオキシコール酸(UDCA)、タウロ−24,25−ジヒドロ−フシジン酸ナトリウム(STDHF)、グリコジヒドロフシジン酸ナトリウムおよびポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル(POE)が含まれる[Lee他、Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems、1991、92頁;Swinyard、39章「Remington’s Pharmaceutical Science、18版、Gennaro編集、Mack Publishing Co.、Easton、PA、1990、782−783頁;Muranishi、Critical Reviews in Therapeutic Drug
Carrier Systems、1990、7、1−33;Yamamoto他、J.Pharm.Exp.Ther.、1992、263、25;Yamashita他、J.Pharm.Sci.、1990、79、579−583]。
【0105】
キレート剤:本発明に関連して用いる如きキレート剤は、金属イオンと錯体を形成することでそれを溶液から除去する結果としてオリゴヌクレオチドが粘膜を通して吸収される度合を向上させる化合物であるとして定義可能である。キレート剤を本発明で浸透向上剤として用いることに関して、それらはまたDNアーゼ阻害剤としても働くと言った追加的
利点が得られる、と言うのは、特徴付けが成された大部分のDNAヌクレアーゼは触媒作用で二価の金属を必要とし、従ってキレート剤によって阻害されるからである[Jarrett、J.Chromatogr.、1993、618、315−339]。本発明のキレート剤には、これらに限定するものでないが、エチレンジアミンテトラ酢酸ジナトリウム(EDTA)、クエン酸、サリチル酸塩(例えばサリチル酸ナトリウム、5−メトキシサリチル酸塩およびホモバニレート)、コラーゲンのN−アシル誘導体、ラウレス−9およびベータ−ジケトンのN−アミノアシル誘導体(エナミン)が含まれる[Lee他、Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems、1991、92頁;Muranishi、Critical
Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems、1990、7、1−33;Buur他、J.Control Rel.、1990、14、43−51]。
【0106】
キレート剤でも界面活性剤でもないもの:キレート剤でも界面活性剤でもない浸透向上用化合物を本明細書で用いる場合、これは、キレート剤としても界面活性剤としても有意な活性を示さないがそれにも拘らずオリゴヌクレオチドが消化粘膜(alimentary mucosa)を通して吸収される度合を向上させる化合物であるとして定義可能である[Muranishi、Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems、1990、7、1−33]。この種類の浸透向上剤には、例えば不飽和環状尿素、1−アルキル−および1−アルケニルアザシクロ−アルカノン誘導体[Lee他、Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems、1991、92頁]および非ステロイド系抗炎症剤、例えばジクロフェナックナトリウム、インドメタシンおよびフェニルブタゾン[Yamashita他、J.Pharm.Pharmacol.、1987、39、621−626]が含まれる。
【0107】
また、オリゴヌクレオチドが細胞レベルで吸収される度合を向上させる作用剤を本発明の薬剤および他の組成物に添加することも可能である。また、例えばカチオン性脂質、例えばリポフェクチン[Junichi他、米国特許第5,705,188号]、カチオン性グリセロール誘導体、およびポリカチオン性分子、例えばポリリジン[Lollo他、PCT出願WO 97/30731]などもオリゴヌクレオチドの細胞吸収を向上させることが知られている。
【0108】
投与した核酸の浸透を向上させる他の作用剤を用いることも可能であり、それらにはグリコール、例えばエチレングリコールおよびプロピレングリコールなど、ピロール、例えば2−ピロールなど、アゾン、およびテルペン、例えばリモネンおよびメントンなどが含まれる。
【0109】
担体:本発明の特定の組成物では、また、担体化合物を調剤の中に混合する。本明細書で用いる如き「担体化合物」または「担体」は、例えば生物学的活性のある核酸を劣化させるか或はそれが循環から除去されるのを助長することなどで生物学的活性核酸の生利用性を低下させるインビボ過程で核酸として認識されはするが不活性である(即ち本質的に生物学的活性を持たない)核酸もしくは核酸類似物を指し得る。核酸を担体化合物と一緒に典型的には後者の物質を過剰量で用いて一緒に投与すると、結果として、肝臓、腎臓または他の循環外貯蔵場所(extracirculatory reservoirs)の中で核酸が回収される量が実質的に少なくなる可能性があり、これは、恐らくは、その担体化合物と核酸が共通の受容体に関して競合することによるものであろう。例えば、部分的ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドをポリイノシン酸、硫酸デキストラン、ポリシチジル酸または4−アセトアミド−4’イソチオシアノ−スチルベン−2,2’−ジスルホン酸と一緒に投与すると肝組織の中で回収されるそれの量が少なくなり得る[Miy
ao他、Antisense Res.Dev.、1995、5、115−121;Takakura他、Antisense & Nucl.Acid Drug Dev.、1996、6、177−183]。
【0110】
賦形剤:「製薬学的担体」または「賦形剤」は、担体化合物とは対照的に、薬学的に受け入れられる溶媒、懸濁剤、または1種以上の核酸を動物に搬送するに適した他のいずれかの薬理学的に不活性な媒体である。そのような賦形剤は液体または固体であってもよく、核酸および所定製薬学的組成物の他の成分と一緒にした時に所望のバルク(bulk)、粘ちょう度などを与えるように、思い描いた投与様式に伴って選択される。典型的な製薬学的担体には、これらに限定するものでないが、結合剤(例えば前以てゼラチン状にしておいたトウモロコシ澱粉、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースなど);充填材(例えばラクトースおよび他の糖類、微結晶性セルロース、ペクチン、ゼラチン、硫酸カルシウム、エチルセルロース、ポリアクリレートまたは燐酸水素カルシウムなど);滑剤(例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカ、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸、金属のステアリン酸塩、水添植物油、トウモロコシ澱粉、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなど);崩壊剤(例えば澱粉、澱粉グリコール酸ナトリウムなど);および湿潤剤(例えばラウリル硫酸ナトリウムなど)が含まれる。
【0111】
また、非腸管外投与の場合に用いるに適した薬学的に受け入れられる有機もしくは無機賦形剤(核酸と有害に反応しない)を用いて本発明の組成物を調合することも可能である。適切な薬学的に受け入れられる担体には、これらに限定するものでないが、水、塩溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、ラクトース、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性のあるパラフィン、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが含まれる。
【0112】
核酸の局所投与に適した調剤には、核酸の無菌および非無菌水溶液、普通の溶媒、例えばアルコールなど中の非水性溶液、または液状もしくは固体状の油基材中の溶液が含まれ得る。これらの溶液にまた緩衝剤、希釈剤および他の適切な添加剤を入れることも可能である。非腸管外投与で用いるに適していて核酸と有害に反応しない薬学的に受け入れられる有機もしくは無機賦形剤を用いることができる。
【0113】
適切な薬学的に受け入れられる賦形剤には、これらに限定するものでないが、水、塩溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、ラクトース、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性のあるパラフィン、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが含まれる。
【0114】
他の成分:本発明の組成物に追加的に薬剤組成物に通常見られる他の付随的成分も本技術分野で確立された使用濃度で含有させることも可能である。従って、本組成物に例えば適合し得る薬学的に活性な追加的材料、例えばかゆみ止め、収斂剤、局所麻酔剤または抗炎症剤などを入れてもよく、或は本発明の組成物のいろいろな投薬形態を物理的に調製する時に用いるに有用な追加的材料、例えば色素、風味剤、防腐剤、抗酸化剤、不透明化剤、増粘剤および安定剤などを入れることも可能である。しかしながら、そのような材料を添加する場合には、それらが本発明の組成物に含める成分の生物学的活性を不必要に妨害しないようにすべきである。本調剤に殺菌を受けさせてもよく、望まれるならば、それを本調剤の核酸1種または2種以上と有害に相互作用しない補助剤、例えば滑剤、防腐剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を与える塩類、緩衝剤、着色剤、風味剤および/または芳香族物質などと混合してもよい。
【0115】
水性懸濁液の粘度を高くする物質(例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソ
ルビトールおよび/またはデキストランなど包含)を水性懸濁液に入れてもよい。この懸濁液にまた安定剤を入れることも可能である。
【0116】
本発明の特定態様では、(a)1種以上のアンチセンス化合物と(b)アンチセンス機構でない機構で機能する他の1種以上の化学治療剤を含有させた薬剤組成物を提供する。そのような化学治療剤の例には、これらに限定するものでないが、抗癌薬、例えばダウノルビシン、ダクチノマイシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、ミトマイシン、窒素マスタード、クロラムブシル、メルファラン、シクロホスファミド、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン(CA)、5−フルオロウラシル(5−FU)、フロクスウロジン(5−FUdR)、メトトレキセート(MTX)、コルキシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド、テニポシド、シスプラチンおよびジエチルスチルベストロール(DES)が含まれる。一般的には、The Merck Manual of
Diagnosis and Therapy、15版、Berkow他編集、1987、Rahway、N.J.、1206−1228頁を参照のこと。本発明の組成物にまた抗炎症薬(これらに限定するものでないが、非ステロイド系抗炎症薬およびコルチコステロイドが含まれる)および抗ウイルス薬(これらに限定するものでないが、リビヴィリン、ヴィラダビン、アシクロヴィルおよびガンシクロヴィルが含まれる)を混合することも可能である。一般的には、The Merck Manual of Diagnosis and Therapy、15版、Berkow他編集、1987、Rahway、N.J.のそれぞれ2499−2506および46−49頁を参照のこと。また、アンチセンス化学治療剤でない他の治療剤も本発明の範囲内である。化合物を2種以上組み合わせる時にはそれらを一緒または逐次的に用いてもよい。
【0117】
別の関連態様では、本発明の組成物に1番目の核酸を標的にする1種以上のアンチセンス化合物、特にオリゴヌクレオチドと2番目の核酸標的を標的にする1種以上の追加的アンチセンス化合物を含有させてもよい。本技術分野ではアンチセンス化合物のいろいろな例が知られている。2種以上の化合物を組み合わせる場合にはそれらを一緒または逐次的に用いてもよい。
【0118】
治療用組成物の処方そしてその後のそれらの投与は本技術分野の技術の範囲内であると考えている。投薬は治療を受けさせる病気の状態のひどさおよび反応に依存し、治療期間は数日間から数カ月間であるか、或は治癒されるか或は病気の状態が軽減されるまでである。最適な投薬スケジュールは患者の体の中に蓄積した薬剤を測定することで計算可能である。通常の技術者は最適な投薬量、投薬方法および反復率を容易に決定することができるであろう。最適な投薬量は個々のオリゴヌクレオチドの相対的効力に応じて変わり得るが、一般的には、インビトロおよびインビボ動物モデルで効果があると測定されたEC50を基にして推測可能である。投薬量は一般に体重1kg当たり0.01ugから100gであり、これの投与は日、週、月または年に1回以上、または2から20年毎に1回であってもよい。本技術分野の通常の技術者は、体液または組織の中に当該薬剤が滞留する時間および濃度を測定することを基にして投薬の反復率を容易に推測することができるであろう。治療が成功裏に成された後、その患者が病気状態を再発しないように維持療法を受けさせるのが望ましい可能性があり、その場合には本オリゴヌクレオチドを維持投薬量、即ち体重1kg当たり0.01μgから100gの範囲の量で日に1回以上から20年毎に1回の割合で投与する。
【0119】
本発明を本発明の特定の好適な態様に従って具体的に記述してきたが、以下の実施例は本発明を単に説明する目的で示すものであり、本発明を限定することを意図するものでない。
【0120】
実施例
【実施例1】
【0121】
オリゴヌクレオチド合成用ヌクレオシドホスホルアミダイト デオキシおよび2’−アルコキシアミダイト
2’−デオキシおよび2’−メトキシベータ−シアノエチルジイソプロピルホスホルアミダイトを商業源(例えばChemgenes、Needham、MAまたはGlen Research,Inc.、Sterling、VA)から購入した。他の2’−O−アルコキシ置換ヌクレオシドアミダイト(amidites)を米国特許第5,506,351号(引用することによって本明細書に組み入れられる)に記述されているようにして調製する。2’−アルコキシアミダイトを用いて合成したオリゴヌクレオチドでは、テトラゾールおよび塩基をパルス搬送(pulse delivery)した後の待機段階(wait step)を長くして360秒にすることを除いて未修飾オリゴヌクレオチド用標準的サイクルを利用した。
【0122】
公開された方法(Sanghvi他、Nucleic Acids Research、1993、21、3197−3203)に従い、市販のホスホルアミダイト(Glen
Research、Sterling、VAまたはChemGenes、Needham、MA)を用いて、5−メチル−2’−デオキシシチジン(5−Me−C)ヌクレオチドを含有するオリゴヌクレオチドを合成した。
2’−フルオロアミダイト
(a)2’−フルオロデオキシアデノシンアミダイト
2’−フルオロオリゴヌクレオチドの合成を以前に記述されたようにして行った[Kawasaki他、J.Med.Chem.、1993、36、831−841および米国特許第5,670,633号(引用することによって本明細書に組み入れられる)]。簡単に述べると、市販の9−ベータ−D−アラビノフラノシルアデニンを出発材料として用いそして文献の手順に修飾を受けさせた手順(この手順では、2’−アルファ−フルオロ原子を2’−ベータ−トリチル基のS2−置換で導入する)を用いて、保護されたヌクレオシドであるN6−ベンゾイル−2’−デオキシ−2’−フルオロアデノシンを合成した。このように、N6−ベンゾイル−9−ベータ−D−アラビノフラノシルアデニンに選択的保護を3’,5’−ジテトラヒドロピラニル(THP)中間体として中程度の収率で受けさせた。標準的方法を用いて前記THPおよびN6−ベンゾイル基の脱保護を達成し、そして標準的な方法を用いて5’−ジメトキシトリチル−(DMT)および5’−DMT−3’−ホスホルアミダイト中間体を得た。
(b)2’−フルオロデオキシグアノシン
テトライソプロピルジシロキサニル(TPDS)で保護されている9−ベータ−D−アラビノフラノシルグアニンを出発材料として用いそしてそれを中間体であるジイソブチリルアラビノフラノシルグアノシンに変化させることを通して、2’−デオキシ−2’−フルオログアノシンの合成を達成した。前記TPDS基の脱保護の後にヒドロキシル基をTHPで保護することでジイソブチリルジ−THPで保護されたアラビノフラノシルグアニンを得た。その粗生成物に選択的O−脱アシル化およびトリフレーション(triflation)を受けさせた後、フッ化物による処理を受けさせ、次にTHP基の脱保護を行った。標準的方法を用いて5’−DMT−および5’−DMT−3’−ホスホルアミダイトを得た。
(c)2’−フルオロウリジン
文献の手順に修飾を受けさせた手順を用いて2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの合成を達成したが、この手順では、2,2’−アンヒドロ−1−ベータ−D−アラビノフラノシルウラシルに70%のフッ化水素−ピリジンを用いた処理を受けさせた。標準的手順を用いて5’−DMTおよび5’−DMT−3’ホスホルアミダイトを得た。
(d)2’−フルオロデオキシシチジン
2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンにアミノ化を受けさせた後に選択的保護を受
けさせてN4−ベンゾイル−2’−デオキシ−2’−フルオロシチジンを得ることを通して、2’−デオキシ−2’−フルオロシチジンの合成を行った。標準的手順を用いて5’−DMT−および5’−DMT−3’−ホスホルアミダイトを得た。
2’−O−(2−メトキシエチル)修飾アミダイト
2’−O−メトキシエチル置換ヌクレオシドアミダイトの調製を下記のようにか或は別法としてMartin,P.、Helvetica Chimica Acta、1995、78、486−504の方法に従って行う。
(a)2,2’−アンヒドロ[1−(ベータ−D−アラビノフラノシル)−5−メチルウリジン
5−メチルウリジン(リボシルチミン、Yamasa、銚子、日本から商業的に入手可能)(72.0g、0.279M)、ジフェニルカーボネート(90.0g、0.420M)および重炭酸ナトリウム(2.0g、0.024M)をDMF(300mL)に加えた。この混合物を撹拌しつつ還流にまで加熱しながら発生する二酸化炭素ガスを制御様式で放出させた。1時間後、若干暗色の溶液に濃縮を減圧下で受けさせた。その結果として得たシロップをジエチルエーテル(2.5L)に撹拌しながら注ぎ込んだ。生成物がゴムを形成した。エーテルを傾斜法で除去した後、その残留物を最小量のメタノール(約400mL)に溶解させた。その溶液を新鮮なエーテル(2.5L)に注ぎ込むと堅いゴムが生じた。そのエーテルを傾斜法で除去した後、そのゴムを真空オーブンで乾燥(1mmHg下60℃で24時間)させることで固体を得た後、これを粉砕して明黄褐色の粉末にした(57g、粗収率85%)。そのNMRスペクトルはその構造に一致しており、フェノールがこれのナトリウム塩として混入していた(約5%)。この材料をさらなる反応でそのまま用いた[または、酢酸エチル中のメタノールの勾配(10−25%)を用いたカラムクロマトグラフィーで更に精製することで融点が222−4℃の白色固体を得ることができる]。
(b)2’−O−メトキシエチル−5−メチルウリジン
2Lのステンレス鋼製圧力槽に2,2’−アンヒドロ−5−メチルウリジン(195g、0.81M)、トリス(2−メトキシエチル)ボレート(231g、0.98M)および2−メトキシエタノール(1.2L)を入れた後、それを前以て160℃に加熱しておいたオイルバスの中に入れた。前記槽を155−16℃に48時間加熱した後、それを開けて、溶液を蒸発乾固させた後、MeOH(200mL)と一緒にすり潰した。その残留物を熱アセトン(1L)に入れて懸濁させた。不溶な塩を濾過し、アセトン(150mL)で洗浄した後、その濾液に蒸発を受けさせた。その残留物(280g)をCHCN(600mL)に溶解させた後、蒸発させた。EtNHを0.5%含有させておいたCHCl/アセトン/MeOH(20:5:3)をシリカゲルカラム(3kg)に充填した。前記残留物をCHCl(250mL)に溶解させた後、それを前記カラムに充填する前に、シリカ(150g)に吸着させておいた。前記充填用溶媒(packing solvent)を用いて生成物を溶離させることで生成物を160g(63%)得た。低純度の画分を再処理することで追加的材料を得た。
(c)2’−O−メトキシエチル−5’−O−ジメトキシトリチル−5−メチルウリジン
2’−O−メトキシエチル−5−メチルウリジン(160g、0.506M)をピリジン(250mL)と一緒に蒸発させた後、その乾燥させた残留物をピリジン(1.3L)に溶解させた。最初の一定分量のジメトキシトリチルクロライド(94.3g、0.278M)を加えた後、その混合物を室温で1時間撹拌した。2番目の一定分量のジメトキシトリチルクロライド(94.3g、0.278M)を加えた後、その反応物を更に1時間撹拌した。次に、メタノール(170mL)を添加して反応を停止させた。HPLCは生成物が約70%存在することを示していた。溶媒を蒸発させた後、CHCN(200mL)を用いたすり潰しを行った。その残留物をCHCl(1.5L)に溶解させた後、2x500mLの飽和NaHCOおよび2x500mLの飽和NaClで抽出した。その有機相をNaSOで乾燥させ、濾過した後、蒸発させた。残留物を275g得た。その残留物を3.5kgのシリカゲルカラムにかけて、EtNHを0.5%含有させて
おいたEtOAc/ヘキサン/アセトン(5:5:1)を充填して溶離を起こさせることで精製を行った。高純度を画分に蒸発を受けさせることで生成物を164g得た。低純度の画分から追加的に約20g得ることで全体収量が183g(57%)になった。
(d)3’−O−アセチル−2’−O−メトキシエチル−5’−O−ジメトキシトリチル−5−メチルウリジン
2’−O−メトキシエチル−5’−O−ジメトキシトリチル−5−メチルウリジン(106g、0.167M)、DMF/ピリジン(562mLのDMFと188mLのピリジンから生じさせた3:1の混合物を750mL)および無水酢酸(24.38mL、0.258M)を一緒にして室温で24時間撹拌した。TLC用サンプルに最初にMeOHを添加してクエンチさせ、反応をTLCで監視した。TLCで判断して反応が完了した時点でMeOH(50mL)を加えた後、その混合物に蒸発を35℃で受けさせた。その残留物をCHCl(800mL)に溶解させた後、2x200mLの飽和重炭酸ナトリウムおよび2x200の飽和NaClで抽出した。その水層に逆抽出を200mLのCHClを用いて受けさせた。その有機物を一緒にして硫酸ナトリウムで乾燥させた後、蒸発させることで残留物を122g得た(生成物を約90%)。その残留物を3.5kgのシリカゲルカラムにかけてEtOAc/ヘキサン(4:1)で溶離させることで精製を行った。高純度生成物画分に蒸発を受けさせることで96g(84%)得た。その後の画分から追加的に1.5g回収した。
(e)3’−O−アセチル−2’−O−メトキシエチル−5’−O−ジメトキシトリチル−5−メチル−4−トリアゾールウリジン
3’−O−アセチル−2’−O−メトキシエチル−5’−O−ジメトキシトリチル−5−メチルウリジン(96g、0.144M)をCHCN(700mL)に溶解させることで1番目の溶液を調製してとって置いた。トリアゾール(90g、1.3M)をCHCN(1L)に入れることで生じさせた溶液にトリエチルアミン(189mL、1.44M)を加え、−5℃に冷却しそして塔頂撹拌機を用いて0.5時間撹拌した。この溶液を0−10℃に維持しつつ撹拌しながらこれにPOClを30分かけて滴下した後、その結果として得た混合物を更に2時間撹拌した。この後者の溶液に前記1番目の溶液を45分かけて滴下した。その結果として得た反応混合物を冷室に入れて一晩貯蔵した。この反応混合物から塩を濾過した後、その溶液に蒸発を受けさせた。その残留物をEtOAc(1L)に溶解させた後、不溶固体を濾過で除去した。その濾液を1x300mLのNaHCOそして2x300mLの飽和NaClで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、蒸発させた。その残留物をEtOAcと一緒にすり潰すことで表題の化合物を得た。
(f)2’−O−メトキシエチル−5’−O−ジメトキシトリチル−5−メチルシチジン
3’−O−アセチル−2’−O−メトキシエチル−5’−O−ジメトキシトリチル−5−メチル−4−トリアゾールウリジン(103g、0.141M)をジオキサン(500mL)とNHOH(30mL)に入れることで生じさせた溶液を室温で2時間撹拌した。このジオキサン溶液に蒸発を受けさせた後、その残留物にMeOH(2x200mL)を用いた共沸を受けさせた。その残留物をMeOH(300mL)に溶解させた後、2リットルのステンレス鋼製圧力槽に移した。NHガスで飽和状態にしておいたMeOH(400mL)を加えた後、前記槽を100℃に2時間加熱した(TLCで変換が完了したことが分かった)。前記槽の内容物に蒸発乾固を受けさせた後、その残留物をEtOAc(500mL)に溶解させて飽和NaCl(200mL)で1回洗浄した。その有機物を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、溶媒を蒸発させることで、表題の化合物を85g(95%)得た。
(g)N4−ベンゾイル−2’−O−メトキシエチル−5’−O−ジメトキシトリチル−5−メチルシチジン
2’−O−メトキシエチル−5’−O−ジメトキシトリチル−5−メチルシチジン(85g、0.134M)をDMF(800mL)に溶解させた後、撹拌しながら無水安息香酸(37.2g、0.165M)を加えた。撹拌を3時間行った後、TLCで反応がほぼ95%完了したことが分かった。溶媒を蒸発させた後、その残留物にMeOH(200m
L)を用いた共沸を受けさせた。その残留物をCHCl(700mL)に溶解させて、飽和NaHCO(2x300mL)そして飽和NaCl(2x300mL)で抽出し、MgSOで乾燥させた後、蒸発させることで残留物(96g)を得た。その残留物を1.5kgのシリカカラムを用いたクロマトグラフィーにかけてEtNHを0.5%含有させておいたEtOAc/ヘキサン(1:1)を溶離用溶媒として用いた。高純度の生成物画分に蒸発を受けさせることで表題の化合物を90g(90%)得た。
(h)N4−ベンゾイル−2’−O−メトキシエチル−5’−O−ジメトキシトリチル−5−メチルシチジン−3’−アミダイト
N4−ベンゾイル−2’−O−メトキシエチル−5’−O−ジメトキシトリチル−5−メチルシチジン(74g、0.10M)をCHCl(1L)に溶解させた。撹拌を窒素雰囲気下で行いながらテトラゾールジイソプロピルアミン(7.1g)および2−シアノエトキシ−テトラ(イソプロピル)ホスファイト(40.5mL、0.123M)を加えた。その結果として得た混合物を室温で20時間撹拌した(TLCで反応が95%完了したことが分かった)。この反応混合物を飽和NaHCO(1x300mL)そして飽和NaCl(3x200mL)で抽出した。その水性洗浄液にCHCl(300mL)による逆抽出を受けさせ、その抽出液を一緒にし、MgSOで乾燥させた後、濃縮した。その得た残留物を1.5kgのシリカカラムを用いたクロマトグラフィーにかけてEtOAc/ヘキサン(3:1)を溶離用溶媒として用いた。高純度画分を一緒にすることで表題の化合物を90.6g(87%)得た。
2’−O−(アミノオキシエチル)ヌクレオシドアミダイトおよび2’−O−(ジメチルアミノオキシエチル)ヌクレオシドアミダイト
(a)2’−(ジメチルアミノオキシエトキシ)ヌクレオシドアミダイト
2’−(ジメチルアミノオキシエトキシ)ヌクレオシドアミダイト[本技術分野ではまた2’−O−(ジメチルアミノオキシエチル)ヌクレオシドアミダイトとしても知られる]を下記のパラグラフに記述する如く調製する。環外アミン(exocyclic amines)に保護をアデノシンおよびシチジンの場合にはベンゾイル部分で受けさせそしてグアノシンの場合にはイソブチリルで受けさせることを除いて、アデノシン、シチジンおよびグアノシンヌクレオシドアミダイトの調製をチミジン(5−メチルウリジン)と同様に行う。
(b)5’−O−t−ブチルジフェニルシリル−O−2’−アンヒドロ−5−メチルウリジン
乾燥ピリジン(500ml)をアルゴン雰囲気下周囲温度で機械的に撹拌しながらこれにO−2’−アンヒドロ−5−メチルウリジン(Pro.Bio.Sint.、Varese、イタリア、100.0g、0.416ミリモル)、ジメチルアミノピリジン(0.66g、0.013当量、0.0054ミリモル)を溶解させた。t−ブチルジフェニルクロロシラン(125.8g、119.0mL、1.1当量、0.458ミリモル)を一度に加えた。この反応物を周囲温度で16時間撹拌した。TLC(Rf 0.22、酢酸エチル)で反応が完了したことが分かった。その溶液に濃縮を減圧下で受けさせることで濃密な油を得た。これをジクロロメタン(1L)と飽和重炭酸ナトリウム(2x1 L)と食塩水(1L)の間で分離させた。その有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧下で濃縮することで濃密な油を得た。この油を酢酸エチルとエチルエーテルが1:1の混合物(600mL)に溶解させた後、その溶液を−10℃に冷却した。その結果として生じた結晶性生成物を濾過で集め、エチルエーテル(3x200mL)で洗浄した後、乾燥(40℃、1mmHg、24時間)させることで、白色固体を149g(74.8%)得た。TLCおよびNMRは高純度生成物に一致していた。
(c)5’−O−t−ブチルジフェニルシリル−2’−O−(2−ヒドロキシエチル)−5−メチルウリジン
2Lのステンレス鋼製非撹拌型圧力反応槽にテトラヒドロフラン中のボラン(1.0M、2.0当量、622mL)を入れた。フュームフード(fume hood)内で撹拌を手で行いながら最初にエチレングリコール(350mL、過剰量)を水素ガスの発生が
静まるまで注意深く加えた。撹拌を手で行いながら5’−O−t−ブチルジフェニルシリル−O−2’−アンヒドロ−5−メチルウリジン(149g、0.311モル)および重炭酸ナトリウム(0.074g、0.003当量)を加えた。その反応槽を密封してオイルバスで160℃の内部温度に到達するまで加熱した後、16時間保持した(圧力<100psig)。この反応槽を周囲条件になるまで冷却して開けた。TLC(所望生成物のRfは0.67でありそしてara−T副生成物である酢酸エチルのRfは0.82である)で生成物をもたらす変換率が約70%であることが分かった。副生成物が追加的に生じないようにする目的で反応を停止させ、エチレングリコールを除去する目的でより極端な条件を用いて減圧(10から1mmHg)下の濃縮を温水浴(40−100℃)中で行った[別法として、低沸点の溶媒を出て行かせた後、残存する溶液を酢酸エチルと水の間で分離させてもよい。生成物は有機相の中に入るであろう]。その残留物をカラムクロマトグラフィー(2kgのシリカゲル、酢酸エチル−ヘキサンが1:1から4:1に至る勾配)で精製した。適切な画分を一緒にし、それにストリッピングを受けさせ(stripped)た後、それを乾燥させることで生成物を脆い白色発泡体として得たが(84g、50%)、これには出発材料(17.4g)および再使用可能な高純度の出発材料(20g)が混入していた。回収した低純度の出発材料である出発材料を基にした収率は58%であった。TLCおよびNMRは純度が99%の生成物に一致していた。
(d)2’−O−([2−フタルイミドキシ)エチル]−5’−t−ブチルジフェニルシリル−5−メチルウリジン
5’−O−t−ブチルジフェニルシリル−2’−O−(2−ヒドロキシエチル)−5−メチルウリジン(20g、36.98ミリモル)とトリフェニルホスフィン(11.63g、44.36ミリモル)とN−ヒドロキシフタルイミド(7.24g、44.36ミリモル)を混合した。次に、Pを用いてそれを高真空下40℃で2日間乾燥させた。この反応混合物をアルゴンでフラッシュ洗浄した後、乾燥THF(369.8mL、Aldrich、しっかりと密封されたボトル)を加えることで透明な溶液を得た。この反応混合物にジエチル−アゾジカルボキシレート(6.98mL、44.36ミリモル)を滴下した。この滴下速度を結果として生じる暗赤色の色が次の滴を添加する前にちょうど消失するように維持する。添加終了後の反応物を4時間撹拌した。TLC(酢酸エチル:ヘキサンが60:40)でその時までに反応が完了していたことが分かった。溶媒を真空下で蒸発させた。得た残留物をフラッシュカラムの上に置いて酢酸エチル:ヘキサン(60:40)で溶離させることで、2’−O−([2−フタルイミドキシ)エチル]−5’−t−ブチルジフェニルシリル−5−メチルウリジンを白色発泡体として得た(21.819g、86%)。
(e)5’−O−t−ブチルジフェニルシリル−2’−O−[(2−ホルムアドキシミノオキシ)エチル]−5−メチルウリジン
2’−O−([2−フタルイミドキシ)エチル]−5’−t−ブチルジフェニルシリル−5−メチルウリジン(3.1g、4.5ミリモル)を乾燥CHCl(4.5mL)に溶解させた後、−10℃から0℃でメチルヒドラジン(300mL、4.64ミリモル)を滴下した。1時間後、その混合物を濾過し、その濾液を氷冷CHClで洗浄し、有機相を一緒にして水そして食塩水で洗浄した後、無水NaSOで乾燥させた。その溶液に濃縮を受けさせることで2’−O−(アミノオキシエチル)チミジンを得た後、これをMeOH(67.5mL)に溶解させた。これにホルムアルデヒド(20%水溶液、重量/重量1.1当量)を加えた後、その結果として得た混合物を1時間撹拌した。溶媒を真空下で除去し、残留物をクロマトグラフィーにかけることで5’−O−t−ブチルジフェニルシリル−2’−O−[(2−ホルムアドキシミノオキシ)エチル]−5−メチルウリジンを白色発泡体として得た(1.95g、78%)
(f)5’−O−t−ブチルジフェニルシリル−2’−O−[N,N−ジメチルアミノオキシエチル]−5−メチルウリジン
乾燥MeOH中1Mのp−トルエンスルホン酸ピリジニウム(PPTS)溶液(30.6mL)に5’−O−t−ブチルジフェニルシリル−2’−O−[(2−ホルムアドキシ
ミノオキシ)エチル]−5−メチルウリジン(1.77g、3.12ミリモル)を溶解させた。この溶液に不活性雰囲気下10℃でシアノホウ水素化ナトリウム(0.39g、6.13ミリモル)を加えた。この反応混合物を10℃で10分間撹拌した。その後、反応槽を氷浴から取り出し、撹拌を室温で2時間行いながら反応をTLC(CHCl中の5%のMeOH)で監視した。NaHCO水溶液(5%、10mL)を加えた後、酢酸エチル(2x20mL)で抽出した。酢酸エチル相を無水NaSOで乾燥させた後、蒸発乾固させた。残留物をMeOH中1MのPPTS溶液(30.6mL)に溶解させた。ホルムアルデヒド(20%重量/重量、30mL、3.37ミリモル)を加えた後、この反応混合物を室温で10分間撹拌した。反応混合物を氷浴に入れて10℃に冷却し、シアノホウ水素化ナトリウム(0.39g、6.13ミリモル)を加えた後、この反応混合物を10℃で10分間撹拌した。10分後、この反応混合物を氷浴から取り出して室温で2時間撹拌した。この反応混合物に5%のNaHCO溶液(25mL)を加えた後、酢酸エチル(2x25mL)で抽出した。酢酸エチル層を無水NaSOで乾燥させた後、蒸発乾固させた。得た残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけてCHCl中5%のMeOHで溶離させて精製することで、5’−O−t−ブチルジフェニルシリル−2’−O−[N,N−ジメチルアミノオキシエチル]−5−メチルウリジンを白色発泡体として得た(14.6g、80%)。
(g)2’−O−(ジメチルアミノオキシエチル)−5−メチルウリジン
三フッ化水素酸トリエチルアミン(3.91mL、24.0ミリモル)を乾燥THFとトリエチルアミン(1.67mL、12ミリモル、乾燥、KOH上に保存)に溶解させた。次に、このトリエチルアミン−2HFの混合物に5’−O−t−ブチルジフェニルシリル−2’−O−[N,N−ジメチルアミノオキシエチル]−5−メチルウリジン(1.40g、2.4ミリモル)を加えた後、室温で24時間撹拌した。反応をTLC(CHCl中の5%のMeOH)で監視した。溶媒を真空下で除去した後、その残留物をフラッシュカラムの上に置いてCHCl中10%のMeOHで溶離させることで、2’−O−(ジメチルアミノオキシエチル)−5−メチルウリジンを得た(766mg、92.5%)。
(h)5’−O−DMT−2’−O−(ジメチルアミノオキシエチル)−5−メチルウリジン
を用いて2’−O−(ジメチルアミノオキシエチル)−5−メチルウリジン(750mg、2.17ミリモル)を高真空下40℃で一晩乾燥させた。次に、それを無水ピリジン(20mL)と一緒に蒸発させた。その得た残留物をアルゴン雰囲気下でピリジン(11mL)に溶解させた。この混合物に4−ジメチルアミノピリジン(26.5mg、2.60ミリモル)、4,4’−ジメトキシトリチルクロライド(880mg、2.60ミリモル)を加えた後、この反応混合物を室温で出発材料が全部消失するまで撹拌した。ピリジンを真空下で除去した後、その残留物をカラムクロマトグラフィーにかけてCHCl中10%のMeOH(ピリジンを数滴入れておいた)で溶離させることで、5’−O−DMT−2’−O−(ジメチルアミノオキシエチル)−5−メチルウリジンを得た(1.13g、80%)。
(i)5’−O−DMT−2’−O−(2−N,N−ジメチルアミノオキシエチル)−5−メチルウリジン−3’−[(2−シアノエチル)−N,N−ジイソプロピルホスホルアミダイト]
5’−O−DMT−2’−O−(ジメチルアミノオキシエチル)−5−メチルウリジン(1.08g、1.67ミリモル)をトルエン(20mL)と一緒に蒸発させた。その残留物にN,N−ジイソプロピルアミンテトラゾニド(0.29g、1.67ミリモル)を加えた後、Pを用いて高真空下40℃で一晩乾燥させた。次に、この反応混合物を無水アセトニトリル(8.4mL)に溶解させた後、2−シアノエチル−N,N,N,N−テトライソプロピルホスホルアミダイト(2.12mL、6.08ミリモル)を加えた。この反応混合物を不活性雰囲気下周囲温度で4時間撹拌した。この反応の進行をTLC(ヘキサン:酢酸エチル 1:1)で監視した。溶媒を蒸発させた後、その残留物を
酢酸エチル(70mL)に溶解させて5%のNaHCO水溶液(40mL)で洗浄した。酢酸エチル層を無水NaSOで乾燥させた後、濃縮した。得た残留物をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチルを溶離剤として)にかけることで5’−O−DMT−2’−O−(2−N,N−ジメチルアミノオキシエチル)−5−メチルウリジン−3’−[(2−シアノエチル)−N,N−ジイソプロピルホスホルアミダイト]を発泡体として得た(1.04g、74.9%)。
2’−(アミノオキシエトキシ)ヌクレオシドアミダイト
2’−(アミノオキシエトキシ)ヌクレオシドアミダイト[本技術分野ではまた2’−O−(アミノオキシエチル)ヌクレオシドアミダイトとしても知られる]を下記のパラグラフに記述する如く調製する。アデノシン、シチジンおよびチミジンのヌクレオシドアミダイトも同様に調製する。
N2−イソブチリル−6−O−ジフェニルカルバモイル−2’−O−(2−エチルアセチル)−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)グアノシン−3’−[(2−シアノエチル)−N,N−ジイソプロピルホスホルアミダイト]
ジアミノプリンリボシド(riboside)に選択的2’−O−アルキル置換を受けさせることで2’−O−アミノオキシエチルグアノシン類似物を得ることができる。ジアミノプリンリボシドを数グラムの量でSchering AG(ベルリン)から購入して、2’−O−(2−エチルアセチル)ジアミノプリンリボシドを少量の3’−O−異性体と一緒に生じさせることができる。2’−O−(2−エチルアセチル)ジアミノプリンリボシドを溶解させた後、アデノシンデアミナーゼで処理することで、2’−O−(2−エチルアセチル)グアノシンに変化させることができる(McGee,D.P.C.、Cook,P.D.、Guinosso,C.J.、WO 94/02501 A1 940203)。標準的な保護手順を用いて2’−O−(2−エチルアセチル)−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)グアノシンと2−N−イソブチリル−6−O−ジフェニルカルバモイル−2’−O−(2−エチルアセチル)−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)グアノシンを生じさせるべきであり、それらに還元を受けさせることで、2−N−イソブチリル−6−O−ジフェニルカルバモイル−2’−O−(2−エチルアセチル)−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)グアノシンを生じさせることができる。この上に示したように、ヒドロキシル基をMitsunobu反応によってN−ヒドロキシフタルイミドで置換してもよく、そのようにして保護を受けさせたヌクレオシドに通常通りホスフィチル化を受けさせる(phsphitylated)ことで、N2−イソブチリル−6−O−ジフェニルカルバモイル−2’−O−(2−エチルアセチル)−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)グアノシン−3’−[(2−シアノエチル)−N,N−ジイソプロピルホスホルアミダイト]を生じさせることができる。
2’−ジメチルアミノエトキシエトキシ(2’−DMAEOE)ヌクレオシドアミダイト
2’−ジメチルアミノエトキシエトキシヌクレオシドアミダイト[本技術分野ではまた2’−O−ジメチルアミノエトキシエチル、即ち2’−O−CH−O−CH−N(CHまたは2’−DMAEOEヌクレオシドアミダイトとしても知られる]を下記の如く調製する。他のヌクレオシドアミダイトも同様に調製する。
2’−O−[2−(2−N,N−ジメチルアミノエトキシ)エチル]−5−メチルウリジン
ボランをテトラヒドロフランに入れることで生じさせた溶液(1M、10mL、10ミリモル)を100mLのボンベに入れて撹拌しながらこれに2[2−(ジメチルアミノ)エトキシ]エタノール(Aldrich、6.66g、50ミリモル)をゆっくり加える。固体が溶解するにつれて水素ガスが発生する。O−,2’−アンヒドロ−5−メチルウリジン(1.2g、5ミリモル)および重炭酸ナトリウム(2.5mg)を加えた後、前記ボンベを密封し、オイルバスに入れて155℃に26時間加熱する。このボンベを室温に冷却した後、開けた。その粗溶液に濃縮を受けさせた後、その残留物を水(200mL)とヘキサン(200mL)の間で分離させる。過剰量のフェノールをヘキサン層で抽出する。その水層を酢酸エチル(3x200mL)で抽出した後、その有機層を一緒にし
て水で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、濃縮した。その残留物をシリカゲルカラムにかけて1:20のメタノール/塩化メチレン(トリエチルアミンを2%入れた)を溶離剤として用いる。カラムの画分に濃縮を受けさせると無色の固体が生じ、これを集めることで表題の化合物を白色固体として得た。
5’−O−ジメトキシトリチル−2’−O−[2(2−N,N−ジメチルアミノエトキシ)エチル)]−5−メチルウリジン
0.5g(1.3ミリモル)の2’−O−[2−(2−N,N−ジメチルアミノエトキシ)エチル]−5−メチルウリジンを無水ピリジン(8mL)に入れて、これにトリエチルアミン(0.36mL)およびジメトキシトリチルクロライド(DMT−Cl、0.87g、2当量)を加えた後、1時間撹拌した。この反応混合物を水(200mL)の中に注ぎ込んだ後、CHCl(2x200mL)で抽出した。そのCHCl層を一緒にして飽和NaHCO溶液に続いて飽和NaCl溶液で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を蒸発させた後、MeOH:CHCl:EtN(20:1、体積/体積、トリエチルアミンが1%)を用いたシリカゲルクロマトグラフィーにかけることで、表題の化合物を得た。
5’−O−ジメトキシトリチル−2’−O−[2(2−N,N−ジメチルアミノエトキシ)エチル)]−5−メチルウリジン−3’−O−(シアノエチル−N,N−ジイソプロピル)ホスホルアミダイト
5’−O−ジメトキシトリチル−2’−O−[2(2−N,N−ジメチルアミノエトキシ)エチル)]−5−メチルウリジン(2.17g、3ミリモル)をCHCl(20mL)に溶解させることで生じさせた溶液にジイソプロピルアミノテトラゾリド(0.6g)および2−シアノエトキシ−N,N−ジイソプロピルホスホルアミダイト(1.1mL、2当量)をアルゴン雰囲気下で加える。この反応混合物を一晩撹拌した後、溶媒を蒸発させる。その結果として得た残留物をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけて酢酸エチルを溶離剤として用いて精製することで表題の化合物を得た。
【実施例2】
【0123】
オリゴヌクレオチド合成
ヨウ素による酸化を伴う標準的ホスホルアミダイト化学を用いて未置換および置換ホスホジエステル(P=O)オリゴヌクレオチドを自動DNA合成装置(Applied Biosystemsモデル380B)で合成する。
【0124】
ホスファイト結合に段階的チア化(thiation)を受けさせる目的で標準的酸化用ボトルにアセトニトリル中0.2Mの3H−1,2−ベンゾジチオール−3−オン1,1−ジオキサイド溶液による交換を受けさせる以外はホスホジエステルオリゴヌクレオチドの場合と同様にしてホスホロチオエート(P=S)を合成する。チア化待機段階(thiation wait step)を長くして68秒間にし、その後にキャッピング段階(capping step)を設けた。CPGカラムを用いた開裂そして濃水酸化アンモニウムを55℃で用いた脱ブロック(deblocking)(18時間)の後、0.5MのNaCl溶液にエタノールを2.5倍体積入れて沈澱を起こさせることを2回行うことでオリゴヌクレオチドを精製した。ホスフィネートオリゴヌクレオチドを米国特許第5,508,270号(引用することによって本明細書に組み入れられる)に記述されているようにして調製する。
【0125】
アルキルホスホネートオリゴヌクレオチドの調製を米国特許第4,469,863号(引用することによって本明細書に組み入れられる)に記述されているようにして行う。3’−デオキシ−3’−メチレンホスホネートオリゴヌクレオチドの調製を米国特許第5,610,289号または5,625,050号(引用することによって本明細書に組み入れられる)に記述されているようにして行う。ホスホルアミダイトリゴヌクレオチドの調製を米国特許第5,256,776号または米国特許第5,366,878号(引用する
ことによって本明細書に組み入れられる)に記述されているようにして行う。アルキルホスホノチオエートオリゴヌクレオチドの調製を公開されたPCT出願PCT/US94/00902およびPCT/US93/06976(それぞれWO 94/17093およびWO 94/02499として公開)(引用することによって本明細書に組み入れられる)に記述されているようにして行う。3’−デオキシ−3’−アミノホスホルアミデートオリゴヌクレオチドの調製を米国特許第5,476,925号(引用することによって本明細書に組み入れられる)に記述されているようにして行う。ホスホトリエステルオリゴヌクレオチドの調製を米国特許第5,023,243号(引用することによって本明細書に組み入れられる)に記述されているようにして行う。ボラノホスフェートオリゴヌクレオチドの調製を米国特許第5,130,302号および米国特許第5,177,198号(両方とも引用することによって本明細書に組み入れられる)に記述されているようにして行う。
【実施例3】
【0126】
オリゴヌクレオシド合成
メチレンメチルイミノ結合オリゴヌクレオシド(またMMI結合オリゴヌクレオシドとしても識別する)、メチレンジメチルヒドラゾ結合オリゴヌクレオシド(またMDH結合オリゴヌクレオシドとしても識別する)、メチレンカルボニルアミノ結合オリゴヌクレオシド(またアミド−3結合オリゴヌクレオシドとしても識別する)およびメチレンアミノカルボニル結合オリゴヌクレオシド(またアミド−4結合オリゴヌクレオシドとしても識別する)ばかりでなく、例えばMMIとP=OもしくはP=S結合が交互に存在する混合バックボーン化合物(mixed backbone compounds)の調製も米国特許第5,378,825号、5,386,023号、5,489,677号、5,602,240号および5,610,289号(これらの全部は引用することによって本明細書に組み入れられる)に記述されているようにして行う。
【0127】
ホルムアセタールおよびチオホルムアセタールで連結しているオリゴヌクレオシドの調製を米国特許第5,264,562号および5,264,564号(引用することによって本明細書に組み入れられる)に記述されているようにして行う。エチレンオキサイドで連結しているオリゴヌクレオシドの調製を米国特許第5,223,618号(引用することによって本明細書に組み入れられる)に記述されているようにして行う。
【実施例4】
【0128】
PNAの合成
Peptide Nucleic Acids(PNA):Synthesis,Properties and Potential Applications、Bioorganic & Medicinal Chemistry、1996、4、5−23に示されているいろいろな手順の中のいずれかに従ってペプチド核酸(PNA)の調製を行う。それらの調製をまた米国特許第5,539,082号、5,700,922号および5,719,262号(引用することによって本明細書に組み入れられる)に従って行うことも可能である。
【実施例5】
【0129】
キメラオリゴヌクレオチドの合成
本発明のキメラオリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオシドまたは混合オリゴヌクレオチド/オリゴヌクレオシドには異なる数種類があり得る。それらには、連結ヌクレオシドの「ギャップ(gap)」セグメントが連結ヌクレオシドの5’と3’「ウィング(wing)」セグメントの間に位置する1番目の種類、そして「ギャップ」セグメントがオリゴマー状化合物の3’もしくは5’末端のいずれかに位置する2番目の「開放末端(open end)」型が含まれる。1番目の種類のオリゴヌクレオチドはまた本技術分野で「
ギャップマー(gapmers)」またはギャップト(gapped)オリゴヌクレオチドとしても知られる。2番目の種類のオリゴヌクレオチドはまた本技術分野で「ヘミマー(hemimers)」または「ウィングマー(wingmers)」としても知られる。
[2’−O−ME]−−[2’−デオキシ]−−[2’−O−ME]キメラホスホロチオエートオリゴヌクレオチド
2’−O−アルキルホスホロチオエートと2’−デオキシホスホロチオエートのオリゴヌクレオチドセグメントを有するキメラオリゴヌクレオチドの合成を上述した如きApplied Biosystemsの自動DNA合成装置モデル380Bを用いて行う。前記自動合成装置を用い、DNA部分に2’−デオキシ−5’−ジメトキシトリチル−3’−O−ホスホルアミダイトを用いかつ5’および3’ウィングに5’−ジメトキシトリチル−2’−O−メチル−3’−O−ホスホルアミダイトを用いてオリゴヌクレオチドを合成する。テトラゾールおよび塩基を送り込んだ後の待機段階を長くして600秒にしてRNAでは4回繰り返しそして2’−O−メチルでは2回繰り返すと言った修飾を標準的合成サイクルに受けさせた。完全に保護されたオリゴヌクレオチドを支持体から開裂させ、そしてホスフェート基に脱保護を3:1のアンモニア/エタノール中で室温において一晩受けさせた後、凍結乾燥を受けさせた。次に、あらゆる塩基に脱保護を受けさせる目的でアンモニアのメタノール溶液中の処理を室温で24時間行った後、そのサンプルに再び凍結乾燥を受けさせた。そのペレットをTHF中1MのTBAFに入れて再懸濁させて室温に24時間置くことで2’位に脱保護を受けさせる。次に、この反応物に1MのTEAAを用いたクエンチを受けさせ、そのサンプルの体積をロトバク(rotovac)で1/2にまで小さくした後、それに脱塩をG25サイズ排除カラムを用いて受けさせた。次に、その回収したオリゴ(oligo)に分光光度計による分析を収率に関して受けさせかつ毛細管電気泳動法および質量分光法による分析を純度に関して受けさせた。
[2’−O−(2−メトキシエチル)]−−[2’−デオキシ]−−[2’−O−メトキシエチル)]キメラホスホロチオエートオリゴヌクレオチド
[2’−O−(2−メトキシエチル)]−−[2’−デオキシ]−−[−2’−O−メトキシエチル)]キメラホスホロチオエートオリゴヌクレオチドの調製をこの上に2’−O−メチルキメラオリゴヌクレオチドで示した手順に従って行ったが、ここでは、2’−O−メチルアミダイトの代わりに2’−O−(メトキシエチル)アミダイトを用いた。
[2’−O−(2−メトキシエチル)ホスホジエステル]−−[2’−デオキシホスホロチオエート]−−[2’−O−(2−メトキシエチル)ホスホジエステル]キメラオリゴヌクレオチド
[2’−O−(2−メトキシエチル)ホスホジエステル]−−[2’−デオキシホスホロチオエート]−−[2’−O−(2−メトキシエチル)ホスホジエステル]キメラオリゴヌクレオチドの調製をこの上に2’−O−メチルキメラオリゴヌクレオチドで示した手順に従って行ったが、ここでは、2’−O−メチルアミダイトの代わりに2’−O−(メトキシエチル)アミダイトを用い、ヨウ素による酸化でキメラ構造物のウィング部分の中にホスホジエステルヌクレオチド間結合を生じさせかつ3,H−1,2ベンゾジチオール−3−オン1,1ジオキサイド(Beaucage Reagent)を用いた硫化で中心のギャップにホスホロチオエートヌクレオチド間結合を生じさせる。
【0130】
他のキメラオリゴヌクレオチド、キメラオリゴヌクレオシドおよび混合キメラオリゴヌクレオチド/オリゴヌクレオシドの合成を米国特許第5,623,065号(引用することによって本明細書に組み入れられる)に従って行う。
【実施例6】
【0131】
オリゴヌクレオチドの単離
制御された孔を有するガラスカラム(Applied Biosystems)からオリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオシドを開裂させ、そしてそれに脱ブロックを55
℃の濃水酸化アンモニウム中で18時間受けさせた後、0.5MのNaClに2.5倍体積のエタノールを入れることで起こさせる沈澱を2回受けさせることで精製を行った。合成したオリゴヌクレオチドに変性ゲル使用ポリアクリルアミドゲル電気泳動法による分析を受けさせることで、その材料は少なくとも全長の85%であると判断した。合成で得たホスホロチオエート結合とホスホジエステル結合の相対量を定期的に31P核磁気共鳴分光法で検査し、そしていくつかの試験では、オリゴヌクレオチドにHPLCによる精製をChiang他、J.Biol.Chem.1991、266、18162−18171に記述されているようにして受けさせた。HPLCによる精製を受けさせた材料を用いて得た結果はHPLCによる精製を受けさせていない材料を用いた時に得た結果と同様であった。
【実施例7】
【0132】
オリゴヌクレオチド合成−96個ウエルプレートフォーマット(96 WELL PLATE FORMAT)
96個の配列を標準的96個ウエルフォーマットの状態で同時に組み立てることが可能な自動合成装置を用いた固相P(III)ホスホルアミダイト化学でオリゴヌクレオチドの合成を行った。ヨウ素水溶液を用いた酸化でホスホジエステルヌクレオチド間結合を生じさせた。3,H−1,2ベンゾジチオール−3−オン1,1ジオキサイド(Beaucage Reagent)を無水アセトニトリルに入れて用いる硫化でホスホルチオエートヌクレオチド間結合を生じさせた。標準的塩基で保護されているベータ−シアノエチルジイソプロピルホスホルアミダイトを商業的売り主(例えばPE−Applied Biosystems、Foster City、CAまたはPharmacia、Piscataway、NJ)から購入した。標準的でないヌクレオシドに関しては、それらの合成を公知文献または特許方法に従って行う。それらを塩基で保護されているベータ−シアノエチルジイソプロピルホスホルアミダイトとして用いる。
【0133】
オリゴヌクレオチドを支持体から開裂させ、それに脱保護を高温(55−60℃)の濃NHOHを用いて12−16時間受けさせた後、その放出された生成物を真空下で乾燥させた。次に、その乾燥させた生成物を無菌水に入れて再び懸濁させることでマスタープレートを生じさせ、その後、それを用いて、あらゆる分析および試験プレートサンプルに希釈をロボットピペッターで受けさせた。
【実施例8】
【0134】
オリゴヌクレオチド分析−96個ウエルプレートフォーマット
サンプルの希釈および紫外線吸収分光測定を用いて各ウエルに入っているオリゴヌクレオチドの濃度を評価した。96個ウエルフォーマット(Beckman P/ACEJ MDQ)を用いて個々の産物の完全長性を毛細管電気泳動法(CE)で評価するか、或は個別に調製したサンプルの場合には、市販のCE装置(例えばBeckman P/ACEJ 5000、ABI 270)を用いて評価した。エレクトロスプレー質量分析を用いて化合物の質量分析を行うことで塩基およびバックボーンの組成を立証した。単一および多チャンネル(multi−channel)のロボットピペッターを用いてあらゆる検定用試験プレートに希釈をマスタープレートを用いて受けさせた。プレート上の化合物の少なくとも85%が全長の少なくとも85%であるならばそのようなプレートは受け入れられると判断した。
【実施例9】
【0135】
細胞培養およびオリゴヌクレオチド処置
アンチセンス化合物が標的核酸発現に対して示す効果をいろいろな細胞型のいずれに関しても試験することができるが、その標的核酸が測定可能濃度で存在することを条件とする。これの測定は例えばPCRまたはノーザンブロット分析を用いて常規通り実施可能で
ある。下記の5種類の細胞を説明の目的で示すが、標的が選択した種類の細胞の中で発現することを条件として他の種類の細胞も常規通り使用可能である。これの測定は本技術分野で常規の方法、例えばノーザンブロット分析、リボヌクレアーゼ保護検定またはRT−PCRなどを用いて容易に実施可能である。
T−24細胞:
ヒト転移性細胞である膀胱癌細胞系T−24をAmerican Type Culture Collection(ATCC)(Manassas、VA)から入手した。T−24細胞の培養を、常規通り、ウシ胎児血清(Gibco/Life Technologies、Gaithersburg、MD)を10%、ペニシリンを1mL当たり100単位およびストレプトマイシン(Gibco/Life Technologies、Gaithersburg、MD)を1mL当たり100ミクログラム補充しておいた完全McCoy’s 5A基本培地(Gibco/Life Technologies、Gaithersburg、MD)の中で行った。細胞が90%コンフルエンスに到達した時点でそれにトリプシン処理および希釈を受けさせることで常規通り継代を受けさせた。細胞をRT−PCR分析で用いる場合には、それを96個ウエルプレート(Falcon−Primaria #3872)にウエル1個当たり7000個の細胞密度で種付けした。
【0136】
ノーザンブロッティングまたは他の分析の場合には、細胞を100mmまたは他の標準的組織培養プレートに種付けすることも可能であり、そして培地およびオリゴヌクレオチドを適切な体積で用いて同様に処置してもよい。
A549細胞:
ヒト肺癌細胞系A549をAmerican Type Culture Collection(ATCC)(Manassas、VA)から入手した。A549細胞の培養を、常規通り、ウシ胎児血清(Gibco/Life Technologies、Gaithersburg、MD)を10%、ペニシリンを1mL当たり100単位およびストレプトマイシン(Gibco/Life Technologies、Gaithersburg、MD)を1mL当たり100ミクログラム補充しておいたDMEM基本培地(Gibco/Life Technologies、Gaithersburg、MD)の中で行った。細胞が90%コンフルエンスに到達した時点でそれにトリプシン処理および希釈を受けさせることで常規通り継代を受けさせた。
NHDF細胞:
ヒト新生児皮膚線維芽細胞(NHDF)をClonetics Corporation(Walkersville MD)から入手した。NHDF細胞を、常規通り、供給業者が推奨したように補充しておいた線維芽細胞増殖用培地(Clonetics Corporation、Walkersville MD)の中に保持した。細胞を供給業者が推奨するように10継代に及んで保持した。
HEK細胞:
ヒト胎芽ケラチノサイト(HEK)をClonetics Corporation(Walkersville MD)から入手した。HEKを、常規通り、供給業者が推奨するように調合したケラチノサイト増殖用培地(Clonetics Corporation、Walkersville MD)の中に保持した。細胞を供給業者が推奨するように常規通り10継代に及んで保持した。
PC−12細胞:
ラットニューロン細胞系PC−12をAmerican Type Culture Collection(Manassas、VA)から入手した。PC−12細胞の培養を、常規通り、10%ウマ血清+5%ウシ胎児血清(Gibco/Life Technologies、Gaithersburg、MD)を補充しておいた高グルコースのDMEM(Gibco/Life Technologies、Gaithersburg、MD)の中で行った。細胞が90%コンフルエンスに到達した時点でそれにトリプシン
処理および希釈を受けさせることで常規通り継代を受けさせた。細胞をRT−PCR分析で用いる場合には、それを96個ウエルプレート(Falcon−Primaria #3872)にウエル1個当たり20000個の細胞密度で種付けした。
【0137】
ノーザンブロッティングまたは他の分析の場合には、細胞を100mmまたは他の標準的組織培養プレートに種付けすることも可能であり、そして培地およびオリゴヌクレオチドを適切な体積で用いて同様に処置してもよい。
アンチセンス化合物を用いた処置:
細胞が80%コンフルエンスに到達した時点でそれらにオリゴヌクレオチドを用いた処置を受けさせた。細胞を96個ウエルプレートで増殖させる場合には、ウエルを200μLのOPTI−MEMJ−1還元血清培地(reduced−serum medium)(Gibco BRL)で一度洗浄した後、LIPOFECTINJ(Gibco BRL)を3.75μg/mL入れておいた130μLのOPTI−MEMJ−1および所望濃度のオリゴヌクレオチドで処置した。処置を4−7時間行った後、前記培地を新鮮な培地と交換した。オリゴヌクレオチドで処置して16−24時間後に細胞を収穫した。
【0138】
用いたオリゴヌクレオチドの濃度は細胞系から細胞系で異なる。個々の細胞系に最適なオリゴヌクレオチド濃度を決定する目的で、その細胞を正の対照であるオリゴヌクレオチドである範囲の濃度に渡って処置する。ヒト細胞の場合の正の対照であるオリゴヌクレオチドは、ヒトH−rasを標的にするISIS 13920、即ちTCCGTCATCGCTCCTCAGGG、配列識別番号:1、ホスホロチオエートバックボーン含有2’−O−メトキシエチルギャップマー(2’−O−メトキシエチルをアンダーラインで示す)である。マウスまたはラットの細胞の場合の正の対照であるオリゴヌクレオチドは、マウスおよびラット両方のc−rafを標的にするISIS 15770、即ちATGCATTCTGCCCCCAAGGA、配列識別番号:2、ホスホロチオエートバックボーン含有2’−O−メトキシエチルギャップマー(2’−O−メトキシエチルをアンダーラインで示す)である。次に、正の対照であるオリゴヌクレオチドの濃度を結果としてc−Ha−ras(ISIS 13920の場合)またはc−raf(ISIS 15770の場合)のmRNAが80%阻害される濃度にして、それを次に行う当該細胞系の実験で用いる新規なオリゴヌクレオチドの選別用濃度として用いる。80%阻害が達成されない場合には、H−rasまたはc−rafのmRNAの60%阻害をもたらす正の対照であるオリゴヌクレオチドの最低濃度を次に行う当該細胞系の実験で用いるオリゴヌクレオチド選別用濃度として用いる。60%阻害が達成されない場合には、そのような特別な細胞系はオリゴヌクレオチド移入実験で用いるに適さないと見なす。
【実施例10】
【0139】
オリゴヌクレオチドが示すPTP1B発現抑制の分析
PTP1B発現のアンチセンス調節を本技術分野で公知のいろいろな方法で検定することができる。例えばPTP1BのmRNAの濃度の場合、例えばノーザンブロット分析、競合ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)またはリアルタイムPCR(RT−PCR)などを用いて濃度を量化することができる。現在のところリアルタイム定量PCRが好適である。全細胞RNAまたはポリ(A)+mRNAに関してRNA分析を実施することができる。RNA単離方法は例えばAusubel,F.M.他、Current Protocols in Molecular Biology、第1巻、4.1.1−4.2.9および4.5.1−4.5.3頁、John Wiley & Sons,Inc.、1993などに教示されている。ノーザンブロット分析は本技術分野で常規の分析であり、例えばAusubel,F.M.他、Current Protocols in Molecular Biology、第1巻、4.2.1−4.2.9頁、John Wiley & Sons,Inc.、1996などに教示されている。リアルタイム定量(PCR)は、PE−Applied Biosystems、Foster City、
CAから入手可能な市販のABI PRISMJ 7700配列検出装置を製造業者の指示に従って用いることで便利に達成可能である。定量PCR分析を行う前に、測定すべき標的遺伝子に特異的なプライマー−プローブセット(primer−probe sets)にそれらがGAPDH増幅反応で「マルチプレックスされ(multiplexed)」得るか否かの評価を受けさせる。マルチプレクシング(multiplexing)では、標的遺伝子と内部標準遺伝子であるGAPDHの両方が単一サンプルの中で同時に増幅される。この分析では、未処置の細胞から単離したmRNAに順次希釈を受けさせる。各希釈物に増幅をGAPDHのみにか、標準遺伝子のみ(「シングル−プレキシング(single−plexing)」)にか或は両方(マルチプレキシング)に特異的なプライマー−プローブセットの存在下で受けさせる。PCR増幅後、シングルプレックスを受けさせたサンプルおよびマルチプレックスを受けさせたサンプルの両方からGAPDHおよび標的mRNAシグナルの標準曲線を希釈度の関数として作成する。前記マルチプレックスを受けさせたサンプルから作成したGAPDHおよび標的シグナルの傾きおよび相関係数の両方がシングルプレックスを受けさせたサンプルから得たそれらの相当する値の10%以内ならば、その標的に特異的なプライマー−プローブセットはマルチプレクサブル(multiplexable)であると見なす。また、他のPCR方法も本技術分野で公知である。
【0140】
PTP1Bの蛋白質の濃度は本技術分野で良く知られているいろいろな方法、例えば免疫沈澱、ウエスタンブロット分析(イムノブロッティング)、ELISAまたは蛍光活性化細胞分類分け(FACS)などで量化可能である。PTP1Bに向かう抗体をいろいろな源、例えばMSRSの抗体カタログ(Aerie Corporation、Birmingham、MI)などから識別して入手可能することができるか、或は通常の抗体発生方法を用いて生じさせることができる。ポリクローナル抗血清の調製方法は例えばAusubel,F.M.他、Current Protocols in Molecular Biology、第2巻、11.12.1−11.12.9頁、John Wiley & Sons,Inc.、1997などに教示されている。モノクローナル抗体の調製は例えばAusubel,F.M.他、Current Protocols in
Molecular Biology、第2巻、11.4.1−11.11.5頁、John Wiley & Sons,Inc.、1997などに教示されている。
【0141】
免疫沈澱方法は本技術分野で標準的な方法であり、例えばAusubel,F.M.他、Current Protocols in Molecular Biology、第2巻、10.16.1−10.16.11頁、John Wiley & Sons,Inc.、1998などに見ることができる。ウエスタンブロット(イムノブロット)分析は本技術分野で標準的な分析であり、例えばAusubel,F.M.他、Current Protocols in Molecular Biology、第2巻、10.8.1−10.8.21頁、John Wiley & Sons,Inc.、1997などに見ることができる。酵素結合免疫吸着検定(ELISA)は本技術分野で標準的な検定であり、例えばAusubel,F.M.他、Current Protocols in Molecular Biology、第2巻、11.2.1−11.2.22頁、John Wiley & Sons,Inc.、1991などに見ることができる。
【実施例11】
【0142】
ポリ(A)+mRNAの単離
Miura他、Clin.Chem.、1996、42、1758−1764に従ってポリ(A)+mRNAの単離を行った。他のポリ(A)+mRNA単離方法が例えばAusubel,F.M.他、Current Protocols in Molecular Biology、第1巻、4.5.1−4.5.3頁、John Wiley &
Sons,Inc.、1993などに教示されている。簡単に述べると、細胞を96個ウエルプレートで増殖させる場合には、その細胞から増殖用培地を除去した後、各ウエルを200μLの冷PBSで洗浄した。各ウエルに細胞溶解用緩衝液(10mMのTris−HCl、pH7.6、1mMのEDTA、0.5MのNaCl、0.5%のnP−40、20mMのバナジル−リボヌクレオシド複合体)を60μL加え、前記プレートを穏やかに撹拌した後、室温で5分間インキュベートした。55μLの細胞溶解物をOligo
d(T)で被覆しておいた96個ウエルプレート(AGCT Inc.、Irvine
CA)に移した。プレートを室温で60分間インキュベートし、200μLの洗浄用緩衝液(10mMのTris−HCl、pH7.6、1mMのEDTA、0.3MのNaCl)で3回洗浄した。最後の洗浄を行った後、前記プレートをペーパータオルでふくことで余分な洗浄用緩衝液を除去した後、空気で5分間乾燥させた。各ウエルに前以て70℃に加熱しておいた溶離用緩衝液(5mMのTris−HCl、pH7.6)を60μL加え、前記プレートを90℃のホットプレート上で5分間インキュベートした後、その溶離液を新鮮な96個ウエルプレートに移した。
【0143】
あらゆる溶液を適切な体積で用いて100mmまたは他の標準的プレート上で増殖させた細胞を同様に処置してもよい。
【実施例12】
【0144】
全RNAの単離
Qiagen Inc.(Valencia、CA)から購入したRneasy 96Jキットおよび緩衝液を製造業者の推奨した手順に従って用いることで全mRNAの単離を行った。簡単に述べると、96個ウエルプレート上で増殖させた細胞では、その細胞から増殖用培地を除去した後、各ウエルを200μLの冷PBSで洗浄した。各ウエルに緩衝液RLTを100μL加えた後、そのプレートを20秒間激しく撹拌した。次に、各ウエルに70%のエタノールを100μL加えた後、その内容物をピペットで吸い上げて吐き出すことを3回行うことで混合を行った。次に、そのサンプルを廃棄物収集用トレーが備わっているQIAVACJ多岐管に取り付けられておりかつ真空源に取り付けられているRNEASY 96Jウエルプレートに移した。真空を15秒間かけた。前記RNEASY 96Jプレートの各ウエルに緩衝液RW1を1mL加えた後、真空を再び15秒間かけた。次に、前記RNEASY 96Jプレートの各ウエルに緩衝液RPEを1mL加えた後、真空を15秒間かけた。次に、緩衝液RPE洗浄を繰り返した後、真空を更に10分間かけた。次に、前記プレートをQIAVACJ多岐管から取り外した後、ペーパータオルを用いてふくことで乾燥させた。次に、前記プレートを1.2mLの収集用管が含まれている収集用管ラック(rack)が取り付けられているQIAVACJ多岐管に再び取り付けた。次に、ピペットを用いて各ウエルに水を60μL入れ、1分間インキュベートした後、真空を30秒間かけることで、RNAを溶離させた。この溶離段階を追加的に水を60μL用いて繰り返した。
【0145】
そのピペットで移す段階と溶離段階の繰り返しをQIAGEN Bio−Robot 9604(Qiagen,Inc.、Valencia、CA)を用いて自動的に行うことも可能である。本質的に、細胞を培養プレート上で溶解させた後、前記プレートをロボットデッキに移し、そのデッキの所で、ピペットで移すこと、DNアーゼ処理および溶離段階を実施する。
【実施例13】
【0146】
PTP1BのmRNAの濃度のリアルタイム定量PCR分析
ABI PRISMJ 7700配列検定装置(PE−Applied Biosystems、Foster City、CA)を製造業者の指示に従って用いるリアルタイム定量PCRでPTP1BのmRNAの濃度の定量測定を行った。それはゲルが基になっ
ていない密封された管である蛍光検出装置であり、この装置を用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)産物の高処理量化をリアルタイムで行うことができる。リアルタイム定量PCRでは、PCRが完了した後に増幅産物を量化する標準的なPCRとは対照的に、産物を蓄積させながらそれの量化を行う。前方と後方のPCRプライマーの間のアニーリングを特異的に起こさせるオリゴヌクレオチドプローブ(これに2種類の蛍光色素を含有させておく)をPCR反応に含めることで前記を達成する。レポーター色素(例えばOperon Technologies INc.、Alameda、CAまたはPE−Applied Biosystems、Foster City、CAのいずれかから入手したJOE、FAMまたはVIC)を前記プローブの5’末端に結合させかつクエンチャー色素(quencher dye)(例えばOperon Technologies INc.、Alameda、CAまたはPE−Applied Biosystems、Foster City、CAのいずれかから入手したTAMRA)を前記プローブの3’末端に結合させる。前記プローブと色素が損なわれていない時には、レポーター色素の発色(emission)が3’クエンチャー色素の近接によって消える。増幅中に前記プローブと標的配列のアニーリングが起こると、Taqポリメラーゼの5’−エキソヌクレアーゼ活性によって開裂し得る基質が作り出される。PCR増幅サイクルの伸長段階中に前記プローブがTaqポリメラーゼによって開裂を起こすことでレポーター色素が前記プローブの残りから放出され(従って、クエンチャー部分から放出され)、そして配列に特異的な蛍光シグナルが発生する。各サイクル毎に追加的レポーター色素分子がそれらの個々のプローブから開裂し、そしてABI PRISMJ 7700配列検出装置に組み込まれているレーザー光学を用いて蛍光強度を規則的間隔で監視する。各検定毎に、未処置の対照サンプルを用いて順次希釈したmRNAを含めた一連の並行反応で標準曲線を作成し、この曲線を用いて、試験サンプルをアンチセンスオリゴヌクレオチドで処置した後の阻害パーセントを量化する。
【0147】
PCR反応体をPE−Applied Biosystems、Foster City、CAから入手した。ポリ(A)mRNA溶液を25μL入れておいた96個ウエルプレートにPCRカクテル(1xのTAQMANJ緩衝液A、5.5mMのMgCl、各々が300μMのdATP、dCTPおよびdGTP、600μMのdUTP、各々が100nMの前方プライマー、後方プライマーおよびプローブ、20単位のRNアーゼ阻害剤、1.25単位のAMPLITAQ GOLDJ、および12.5単位のMuLV逆転写酵素)を25μL添加することでRT−PCR反応を実施した。インキュベーションを48℃で30分間行うことでRT反応を実施した。AMPLITAQ GOLDJに活性化を受けさせる目的でインキュベーションを95℃で10分間行った後、2段階のPCRプロトコル:95℃で15秒間(変性)に続く60℃で1.5分間(アニーリング/伸長)を40サイクル実施した。
【0148】
公開された配列情報(GenBankのアクセス番号M31724、配列識別番号3として本明細書に組み入れる)を用いて、ヒトPTP1Bに対するプローブおよびプライマーをそれらがヒトPTP1B配列とハイブリッド形成するように設計した。ヒトPTP1B用のPCRプライマーは下記:
前方プライマー:GGAGTTCGAGCAGATCGACAA(配列識別番号:4)
後方プライマー:GGCCACTCTACATGGGAAGTC(配列識別番号:5)
であり、そしてPCRプローブはFAM−AGCTGGGCGGCCATTTACCAGGAT−TAMRA(配列識別番号:6)であり、ここで、FAM(PE−Applied Biosystems、Foster City、CA)は蛍光レポーター色素であり、そしてTAMRA(PE−Applied Biosystems、Foster City、CA)はクエンチャー色素である。ヒトGAPDH用のPCRプライマーは下記:
前方プライマー:GAAGGTGAAGGTCGGAGTC(配列識別番号:7)
後方プライマー:GAAGATGGTGATGGGATTTC(配列識別番号:8)
であり、そしてPCRプローブは5’JOE−CAAGCTTCCCGTTCTCAGCC−TAMRA3’(配列識別番号:9)であり、ここで、JOE(PE−Applied Biosystems、Foster City、CA)は蛍光レポーター色素であり、そしてTAMRA(PE−Applied Biosystems、Foster City、CA)はクエンチャー色素である。
【0149】
公開された配列情報(GenBankのアクセス番号M33962、配列識別番号10として本明細書に組み入れる)を用いて、ラットPTP1Bに対するプローブおよびプライマーをそれらがラットPTP1B配列とハイブリッド形成するように設計した。ラットPTP1B用のPCRプライマーは下記:
前方プライマー:CGAGGGTGCAAAGTTCATCAT(配列識別番号:11)後方プライマー:CCAGGTCTTCATGGGAAAGCT(配列識別番号:12)であり、そしてPCRプローブはFAM−CGACTCGTCAGTGCAGGATCAGTGGA−TAMRA(配列識別番号:13)であり、ここで、FAM(PE−Applied Biosystems、Foster City、CA)は蛍光レポーター色素であり、そしてTAMRA(PE−Applied Biosystems、Foster City、CA)はクエンチャー色素である。ラットGAPDH用のPCRプライマーは下記:
前方プライマー:TGTTCTAGAGACAGCCGCATCTT(配列識別番号:14)
後方プライマー:CACCGACCTTCACCATCTTGT(配列識別番号:15)であり、そしてPCRプローブは5’JOE−TTGTGCAGTGCCAGCCTCGTCTCA−TAMRA3’(配列識別番号:16)であり、ここで、JOE(PE−Applied Biosystems、Foster City、CA)は蛍光レポーター色素であり、そしてTAMRA(PE−Applied Biosystems、Foster City、CA)はクエンチャー色素である。
【実施例14】
【0150】
PTP1BのmRNAの濃度のノーザンブロット分析
アンチセンス処置して18時間後の細胞の単層を冷PBSで2回洗浄した後、1mLのRNAZOLJ(TEL−TEST「B」Inc.、Friendswood、TX)に入れて溶解させた。製造業者の推奨プロトコルに従って全RNAを調製した。MOPS緩衝系(AMRESCO,Inc.Solon、OH)を用い、ホルムアルデヒドを1.1%入れておいた1.2%のアガロースゲルに通す電気泳動で20ミクログラムの全RNAを分別した。ノーザン/サザントランスファー緩衝系(TEL−TEST「B」Inc.、Friendswood、TX)を用い、毛細管トランスファーを一晩行うことで、RNAを前記ゲルからHYBONDJ−N+ナイロン膜(Amersham Pharmacia Boitech、Piscataway、NJ)に移した。RNAトランスファーを紫外線による可視化で立証した。STRATALINKERJ UV Crosslinker 2400(Stratagene,Inc.、La Jolla、CA)を用いて紫外線で架橋を起こさせることで膜を固定した後、QUICKHYBJハイブリッド形成用溶液(Stratagene,Inc.、La Jolla、CA)を用い、厳重な調節に関する製造業者の推奨を用いて覆った。
【0151】
ヒトPTP1Bの検出では、前方プライマーGGAGTTCGAGCAGATCGACAA(配列識別番号:4)および後方プライマーGGCCACTCTACATGGGAAGTC(配列識別番号:5)を用いたPCRでヒトPTP1Bに特異的なプローブを調製した。充填率(loading)およびトランスファー効率の変動に関する正規化を行う目的で、膜を剥がした後、ヒトグリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ
(GAPDH)RNA(Clontech、Palo Alto、CA)に関して精査した。
【0152】
ラットPTP1Bの検出では、前方プライマーCGAGGGTGCAAAGTTCATCAT(配列識別番号:11)および後方プライマーCCAGGTCTTCATGGGAAAGCT(配列識別番号:12)を用いたPCRでラットPTP1Bに特異的なプローブを調製した。充填率およびトランスファー効率の変動に関する正規化を行う目的で、膜を剥がした後、ラットグリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ(GAPDH)RNA(Clontech、Palo Alto、CA)に関して精査した。
【0153】
PHOSPHORIMAGERJおよびIMAGEQUANTJソフトウエアV3.3(Molecular Dynamics、Sunnyvale、CA)を用いて、ハイブリッド形成した膜を可視化して量化した。データを未処置対照のGAPDH濃度に対して正規化した。
【実施例15】
【0154】
2’−MOEウィングとデオキシギャップを有するキメラホスホロチオエートオリゴヌクレオチドを用いたヒトPTP1B発現のアンチセンス抑制
本発明に従い、公開された配列(GenBankのアクセス番号M31724、配列識別番号3として本明細書に組み入れる)を用いて、ヒトPTP1BのRNAのいろいろな領域を標的にする一連のオリゴヌクレオチドを設計した。これらのオリゴヌクレオチドを表1に示す。「標的部位」は、オリゴヌクレオチドが結合する個々の標的配列上の1番目(最も5’側)のヌクレオチド員を示す。表1に示す化合物は全部長さがヌクレオチド20個分のキメラオリゴヌクレオチド(「ギャップマー」)であり、10個の2’−デオキシヌクレオチド[これの両側(5’および3’方向)が5個のヌクレオチドの「ウィング」に隣接している]から成る中心の「ギャップ」領域を含有する。前記ウィングは2’−メトキシエチル(2’−MOE)ヌクレオチドで構成されている。ヌクレオシド間(バックボーン)結合はオリゴヌクレオチド全体に渡ってホスホロチオエート(P=S)である。シチジン残基は全部5−メチルシチジンである。本明細書に示した他の実施例に記述した如き定量リアルタイムPCRを用いて、前記化合物に分析をこれらがヒトPTP1BのmRNAの濃度に対して示す効果に関して受けさせた。データは2回行った実験の平均である。「N.D.」が存在する場合、これは「データなし」を示す。
【0155】
【表1】

【0156】
【表2】

【0157】
【表3】

【0158】
表1に示すように、配列識別番号
18、19、20、21、22、23、24、26、27、29、30、32、33、
35、36、38、39、40、42、45、46、47、48、49、50、52、
53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、
66、67、69、70、72、73、75、78、79、80、81、83、84、
86、87、89、90、92、93、94、95、および 96
は、前記検定でヒトPTP1B発現を少なくとも35%抑制することが示され、従って好適である。
【実施例16】
【0159】
2’−MOEウィングとデオキシギャップを有するキメラホスホロチオエートオリゴヌクレオチドを用いたラットPTP1B発現のアンチセンス抑制
本発明に従い、公開された配列(GenBankのアクセス番号M33962、配列識別番号10として本明細書に組み入れる)を用いて、ラットPTP1BのRNAのいろいろな領域を標的にする2番目の一連のオリゴヌクレオチドを設計した。これらのオリゴヌクレオチドを表2に示す。「標的部位」は、オリゴヌクレオチドが結合する個々の標的配列上の1番目(最も5’側)のヌクレオチド員を示す。表2に示す化合物は全部長さがヌクレオチド20個分のキメラオリゴヌクレオチド(「ギャップマー」)であり、10個の2’−デオキシヌクレオチド[これの両側(5’および3’方向)が5個のヌクレオチドの「ウィング」に隣接している]から成る中心の「ギャップ」領域を含有する。前記ウィングは2’−メトキシエチル(2’−MOE)ヌクレオチドで構成されている。ヌクレオシド間(バックボーン)結合はオリゴヌクレオチド全体に渡ってホスホロチオエート(P=S)である。シチジン残基は全部5’−メチルシチジンである。本明細書に示した他の実施例に記述した如き定量リアルタイムPCRを用いて、前記化合物に分析をこれらがラットPTP1BのmRNAの濃度に対して示す効果に関して受けさせた。データは2回行った実験の平均である。「N.D.」が存在する場合、これは「データなし」を示す。
【0160】
【表4】

【0161】
【表5】

【0162】
【表6】

【0163】
【表7】

【0164】
表2に示すように、配列識別番号
97、99、100、101、102、103、104、106、107、108、109、110、112、113、114、115、117、120、121、122、123、124、126、127、128、130、131、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、144、145、146、147、148、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、177 178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、191、193、195、196、198、201、202、204、205、206、211、215、217、219、223、225、226、228、229、230、232、233、235、236、237、239 および 240
は、前記実験でラットPTP1B発現を少なくとも30%抑制することが示され、従って好適である。
【実施例17】
【0165】
PTP1B蛋白質濃度のウエスタンブロット分析
標準的方法を用いてウエスタンブロット分析(イムノブロット分析)を実施する。オリゴヌクレオチド処置を受けさせて16−20時間後に細胞を収穫し、PBSで1回洗浄し、Laemmli緩衝液(100ul/ウエル)に入れて懸濁させ、5分間沸騰させた後、16%SDS−PAGEゲルに充填した。ゲルを150Vで1.5時間走らせた後、ウエスタンブロッティング用膜に移した。PTP1Bに向かう適切な一次抗体と一緒に前記一次抗体種に向かう放射標識もしくは蛍光標識付き二次抗体を用いる。PHOSPHORIMAGERJ(Molecular Dynamics、Sunnyvale CA)を用いてバンドを可視化した。
【実施例18】
【0166】
血液のグルコース濃度に関するPTP1B(ISIS 113715)のアンチセンス抑制効果
db/dbマウスを2型糖尿病のモデルとして用いる。このマウスは高血糖症で肥満で高脂血症でインシュリン耐性を示す。そのdb/db表現型はC57BLKSバックグラウンド(background)上のレプチン受容体に変異が存在することによる。しかしながら、異なるマウスバックグラウンド上のレプチン遺伝子に変異が存在すると糖尿病を伴わない肥満がもたらされる可能性がある(ob/obマウス)。レプチンは脂肪が産出するホルモンであり、これは食欲を調節し、そしてレプチンが欠乏している動物またはヒトは肥満になる。ヘテロ接合db/wtマウス[リーンリタメート(lean littermates)として知られる]は高血糖症/高脂血症も肥満表現型も示さず、これ
を対照として用いる。
【0167】
本発明に従い、PTP1Bがグルコース代謝および血流遮断で果たす役割を取り扱うように設計した実験でISIS 113715(GCTCCTTCCACTGATCCTGC、配列識別番号:166)を調査した。ISIS 113715は、本明細書に配列識別番号:3(ヒトPTP1Bのヌクレオチド951の所で始まる;Genbankアクセス番号M31724)、配列識別番号:10(ラットPTP1Bのヌクレオチド980の所で始まる;Genbankアクセス番号M33962)および配列識別番号:241(マウスPTP1Bのヌクレオチド1570の所で始まる;Genbankアクセス番号U24700)として組み入れたヒト、ラットおよびマウスPTP1Bヌクレオチド配列のコード付け領域の中の配列に完全な相補性を示す。用いた対照はISIS 29848(NNNNNNNNNNNNNNNNNNNN、配列識別番号:242)(ここで、NはA、G、TおよびCの混合である)である。
【0168】
オスのdb/dbマウスおよびリーン(ヘテロ接合、即ちdb/wt)リタメート(時間0の時に9週令)を同じ平均血液グルコース濃度を有する合致群(matched groups)(n=6)に分割して、それらに食塩水、ISIS 29848(対照オリゴヌクレオチド)またはISIS 113715を週に一度腹腔内注射することで処置した。db/dbマウスに処置をISIS 113715を10、25または50mg/kgの用量で用いるか或はISIS 29848を50mg/kg用いて受けさせる一方、リーンリタメートには処置をISIS 113715を50または100mg/kgの用量で用いるか或はISIS 29848を100mg/kg用いて受けさせた。処置を4週間継続して、0、7、14、21および28日目に血液のグルコース濃度を測定した。
【0169】
db/dbマウスでは、28日までに血液のグルコース濃度が如何なる用量の時にも減少し、用量が10mg/kgの時には出発濃度の300mg/dLから225mg/dLにまで減少し、用量が25mg/kgの時には175mg/dLにまで減少し、そして用量が50mg/kgの時には125mg/dLにまで減少した。これらの最終濃度は野生型マウスの正常な範囲(170mg/dL)内である。ミスマッチの対照および食塩水で処置した対照の28日目の濃度はそれぞれ320mg/dLおよび370mg/dLであった。
【0170】
リーンリタメートの血液グルコース濃度はあらゆる処置群で試験全体に渡って一定のままであった(平均で120mg/dL)。このような結果は、ISIS 113715で処置するとdb/dbマウスでは血液のグルコースが減少しかつdb/dbマウスにもリーンリタメートマウスにもオリゴヌクレオチド処置の結果として低血糖症が誘発されることはないことを示している。
【0171】
同様な実験において、ob/obマウスおよびこれらのリーンリタメート(ヘテロ接合、即ちob/wt)にISIS 113715、ISIS 29848または食塩水対照を50mg/kgの用量で週に2回投与して、血液のグルコース濃度を7、14および21日が終了した時点で測定した。ob/obマウスをISIS 113715で処置した時に最大の経時的血液グルコース減少がもたらされ、7日目の225mg/dLから21日目の95mg/dLに到達した。ob/obマウスは血漿グルコースの経時的上昇を示して300mg/dLから325mg/dLに到達したが、対照オリゴヌクレオチドで処置すると血漿グルコースが平均で280mg/dLから130mg/dLにまで減少した。リーンリタメートの血漿グルコース濃度は処置群全部において変化しないままであった(平均濃度100mg/dL)。
【実施例19】
【0172】
肝臓におけるmRNA発現に関するPTP1B(ISIS 113715)のアンチセンス抑制効果
オスのdb/dbマウスおよびリーンリタメート(時間0の時に9週令)を同じ平均血液グルコース濃度を有する合致群(n=6)に分割して、それらに食塩水、ISIS 29848(対照オリゴヌクレオチド)またはISIS 113715を週に一度腹腔内注射することで処置した。db/dbマウスに処置をISIS 113715を10、25または50mg/kgの用量で用いるか或はISIS 29848を50mg/kg用いて受けさせる一方、リーンリタメートには処置をISIS 113715を50または100mg/kgの用量で用いるか或はISIS 29848を100mg/kg用いて受けさせた。処置を4週間継続した後、マウスを屠殺して組織を集めることで、mRNA分析を行った。RNA値を正規化しそして食塩水で処置した対照に対するパーセントとして表す。
【0173】
ISIS 113715が試験を行ったあらゆる用量でdb/dbマウスの肝臓の中のPTP1B mRNAの濃度を成功裏に低くし(PTP1B mRNAを60%減少させ)たが、対照オリゴヌクレオチドで処置した動物はPTP1B mRNAの減少を全く示さず、食塩水で処置した対照が示した濃度のままであった。リーンリタメートをISIS
113715で処置した時にもまた50mg/kgの用量の時にmRNA濃度が対照の45%にまで減少しかつ用量が100mg/kgの時には対照の25%まで減少した。対照オリゴヌクレオチド(ISIS 29848)を用いた時にはmRNA濃度低下が全く示されなかった。
【実施例20】
【0174】
体重に関するPTP1B(ISIS 113715)のアンチセンス抑制効果
オスのdb/dbマウスおよびリーンリタメート(時間0の時に9週令)を同じ平均血液グルコース濃度を有する合致群(n=6)に分割して、それらに食塩水、ISIS 29848(対照オリゴヌクレオチド)またはISIS 113715を週に一度腹腔内注射することで処置した。db/dbマウスに処置をISIS 113715を10、25または50mg/kgの用量で用いるか或はISIS 29848を50mg/kg用いて受けさせる一方、リーンリタメートには処置をISIS 113715を50または100mg/kgの用量で用いるか或はISIS 29848を100mg/kg用いて受けさせた。処置を4週間継続した。28日目にマウスを屠殺して最終体重を測定した。
【0175】
ob/obマウスをISIS 113715で処置すると結果として体重が上昇し、これは用量範囲全体に渡って一様であり、動物の体重上昇の度合は平均で11.0グラムであったが、食塩水で処置した対照の体重上昇は5.5グラムであった。対照オリゴヌクレオチドで処置した動物の体重上昇は平均で7.8グラムであった。
【0176】
ISIS 113715を50または100mg/kg用いてリーンリタメートを処置すると体重が3.8グラム上昇したのに比較して、食塩水対照の体重上昇は3.0グラムであった。
【0177】
同様な実験において、ob/obマウスおよびこれらのリーンリタメートにISIS 113715、ISIS 29848または食塩水対照を50mg/kgの用量で週に2回投薬して体重を7、14および21日目が終了した時点で測定した。
【0178】
ob/obマウスをISIS 113715、ISIS 29848または食塩水対照で処置するとそれら全部の体重が21日の時間経過に渡って同様に上昇した。7日目が終了した時点のob/ob処置群全部の平均体重は42グラムであった。ISIS 113715で処置した動物の21日目の平均体重は48グラムであったが、ISIS 298
48(対照オリゴヌクレオチド)および食塩水対照群のそれぞれの平均体重は52グラムであった。リーンリタメート全部の平均体重は時間経過開始時に25グラムであり、そしてリーンリタメート処置群全部が体重上昇を示して21日目に28グラムになった。
【実施例21】
【0179】
血漿インシュリン濃度に関するPTP1B(ISIS 113715)のアンチセンス抑制効果
オスのdb/dbマウス(時間0の時に9週令)を同じ平均血液グルコース濃度を有する合致群(n=6)に分割して、それらに食塩水、ISIS 29848(対照オリゴヌクレオチド)またはISIS 113715を50mg/kgの用量で週に二度腹腔内注射することで処置した。処置を3週間継続し、7、14および21日目に血漿インシュリン濃度を測定した。
【0180】
ISIS 113715で処置したマウスは血漿インシュリン濃度の低下を示し、7日目の15ng/mLから21日目の7.5ng/mLになった。食塩水で処置した動物では7日目の血漿インシュリン濃度が37ng/mLであり、14日目に25ng/mLまで降下したが、再び上昇して21日目に33ng/mLになった。対照オリゴヌクレオチドで処置したマウスもまた試験の時間経過全体に渡って血漿インシュリン濃度の低下を示し、7日目の25ng/mLから21日目の10ng/mLになった。しかしながら、ISIS 113715が経時的血漿インシュリン減少で最も高い効果を示した。
【実施例22】
【0181】
2’−MOEウィングとデオキシギャップを有する追加的キメラホスホロチオエートオリゴヌクレオチドを用いたヒトPTP1B発現のアンチセンス抑制
本発明に従い、公開された配列(GenBankのアクセス番号M31724、配列識別番号3として本明細書に組み入れる)およびGenBankのアクセス番号AL034429のヌクレオチド残基1−31000に続くGenBankのアクセス番号AL133230のヌクレオチド残基1−45000から誘導された連結ゲノム配列(本明細書に配列識別番号243として組み入れる)を用いて、ヒトPTP1BのRNAのいろいろなゲノム領域を標的にする一連の追加的オリゴヌクレオチドを設計した。これらのオリゴヌクレオチドを表3に示す。「標的部位」は、オリゴヌクレオチドが結合する個々の標的配列上の1番目(最も5’側)のヌクレオチド員を示す。表3に示す化合物は全部長さがヌクレオチド20個分のキメラオリゴヌクレオチド(「ギャップマー」)であり、10個の2’−デオキシヌクレオチド[これの両側(5’および3’方向)が5個のヌクレオチドの「ウィング」に隣接している]から成る中心の「ギャップ」領域を含有する。前記ウィングは2’−メトキシエチル(2’−MOE)ヌクレオチドで構成されている。ヌクレオシド間(バックボーン)結合はオリゴヌクレオチド全体に渡ってホスホロチオエート(P=S)である。シチジン残基は全部5−メチルシチジンである。本明細書に示した他の実施例に記述した如き定量リアルタイムPCRを用いて、前記化合物に分析をこれらがヒトPTP1BのmRNAの濃度に対して示す効果に関して受けさせた。データは2回行った実験の平均である。「N.D.」が存在する場合、これは「データなし」を示す。
【0182】
【表8】

【0183】
【表9】

【0184】
【表10】

【0185】
表3に示すように、配列識別番号
244、245、247、248、249、250、251、252、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、267、268、269、271、275、276、277、278、279、281、282、283、288、290、291、292、294、296、297、298、299、300、302、303、307、310、311、313、315、317、および 318
は、前記検定でヒトPTP1B発現を少なくとも50%抑制することが示され、従って好適である。
【実施例23】
【0186】
2’−MOEウィングとデオキシギャップを有する追加的キメラホスホロチオエートオリゴヌクレオチドを用いたヒトPTP1B発現のアンチセンス抑制
本発明に従い、公開された配列(GenBankのアクセス番号M31724、配列識別番号3として本明細書に組み入れる)およびGenBankのアクセス番号AL034429のヌクレオチド残基1−31000に続くGenBankのアクセス番号AL133230のヌクレオチド残基1−45000から誘導された連結ゲノム配列(本明細書に配列識別番号243として組み入れる)を用いて、ヒトPTP1B RNAの3’UTRまたは5’UTRのいずれかを標的にする一連の追加的オリゴヌクレオチドを設計した。これらのオリゴヌクレオチドを表4に示す。「標的部位」は、オリゴヌクレオチドが結合する個々の標的配列上の1番目(最も5’側)のヌクレオチド員を示す。表4に示す化合物は全部長さがヌクレオチド20個分のキメラオリゴヌクレオチド(「ギャップマー」)であり、10個の2’−デオキシヌクレオチド[これの両側(5’および3’方向)が5
個のヌクレオチドの「ウィング」に隣接している]から成る中心の「ギャップ」領域を含有する。前記ウィングは2’−メトキシエチル(2’−MOE)ヌクレオチドで構成されている。ヌクレオシド間(バックボーン)結合はオリゴヌクレオチド全体に渡ってホスホロチオエート(P=S)である。シチジン残基は全部5−メチルシチジンである。本明細書に示した他の実施例に記述した如き定量リアルタイムPCRを用いて、前記化合物に分析をこれらがヒトPTP1BのmRNAの濃度に対して示す効果に関して受けさせた。データは2回行った実験の平均である。「N.D.」が存在する場合、これは「データなし」を示す。
【0187】
【表11】

【0188】
【表12】

【0189】
【表13】

【0190】
表4に示すように、配列識別番号
322,323,324,325、326、327、328、329、330、331、332、333、334、335、337、340、341、342、343、344、345、347、349、350、351、352、353、354、355、356、357、358、360、361、362、363、364、365、366、368、369、371、372、373、374、375、377、378、380、381、384、385、386、387、388、および 389
は、前記検定でヒトPTP1B発現を少なくとも40%抑制することが示され、従って好適である。
【実施例24】
【0191】
カニクイザルの肝臓、筋肉および脂肪組織のPTP1B発現(ISIS 113715)のアンチセンス抑制
さらなる態様では、オスのカニクイザル(cynomolgus monkeys)をISIS 113715(配列識別番号:166)で処置して、筋肉、脂肪および肝臓組織の中のPTP1BのmRNAおよび蛋白質の濃度を測定した。また、血清サンプルにもインシュリン濃度に関する測定を受けさせた。
【0192】
オスのカニクイザルを2つの処置群、即ち対照動物(n=4;食塩水のみで処置)および処置動物(n=8;ISIS 113715で処置)に分割した。インシュリンおよびグルコースのベースライン値を確立する目的であらゆる動物に投薬前のグルコース耐性試験(GTT)を2回受けさせた。処置群の動物には1、8および15日目にISIS 113715をそれぞれ3mg/kg、6mg/kgおよび12mg/kg皮下投与した。対照群の動物には処置を受けさせなかった。あらゆる動物にGTTを5、13および19日目、即ち投与して4日後に受けさせた。最後に12mg/kg投与して10日目に処置群(ISIS 113715)の動物全部にISIS 113715を6mg/kgの用量で一度に与えた。3日後、あらゆる動物を屠殺して組織を取り出すことで、PTP1BのmRNAおよび蛋白質の濃度を分析した。mRNAおよび蛋白質の濃度を食塩水で処置した動物が示したそれらに対して正規化した。試験を受けさせた組織の中で、脂肪および肝臓の中のPTP1B mRNAの濃度が最も高い度合で減少し、それぞれ41%および40%減少した。筋肉の中のmRNAの濃度は10%だけ減少した。肝臓の中の蛋白質濃度は60%減少しそして筋肉の中の蛋白質濃度は45%減少したが、脂肪では10%上昇することが示された。
【0193】
肝臓の酵素であるALTとASTの濃度を毎週測定したが変化が見られず、このことは、オリゴヌクレオチド処置は進行毒性効果(ongoing toxic effects)を全く示さないことを示している。
【0194】
このような試験の結果は、ISIS 113715を用いて処置すると肝臓のPTP1BのmRNAおよび蛋白質が有意に減少することを示している。その上、群と群の間にも
同じ群の処置前と処置後の間にも空腹時のインシュリン濃度に全く変化が見られなかった。しかしながら、あらゆる群でインシュリン濃度が有意に低下したが空腹時のグルコース濃度は全く低下せず、このことは、ISIS 113715で処置するとインシュリンの効率(感受性)が向上することを示唆している。
【0195】
以下に本発明の主な特徴と態様を列挙する。
【0196】
1. PTP1Bをコード化する核酸分子を標的にする長さが核酸塩基8から50個分のアンチセンスオリゴヌクレオチド化合物であって、配列識別番号:
244、245、247、248、249、250、251、252、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、267、268、269、271、275、276、277、278、279、281、282、283、288、290、291、292、294、296、297、298、299、300、302、303、307、310、311、313、315、317、318、322、323、324、325、326、327、328、329、330、331、332、333、334、335、337、340、341、342、343、344、345、347、349、350、351、352、353、354、355、356、357、358、360、361、362、363、364、365、366、368、369、371、372、373、374、375、377、378、380、381、384、385、386、387、388、または 389
から成る群から選択される配列を含んで成っていてPTP1Bと特異的にハイブリッド形成しかつそれの発現を抑制する化合物。
【0197】
2. 前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが修飾ヌクレオシド間結合を少なくとも1つ含んで成る1.記載の化合物。
【0198】
3. 前記修飾ヌクレオシド間結合がホスホロチオエート結合である2.記載の化合物。
【0199】
4. 前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが修飾糖部分を少なくとも1つ含んで成る1.記載の化合物。
【0200】
5. 前記修飾糖部分が2’−O−メトキシエチル糖部分である4.記載の化合物。
【0201】
6. 前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが修飾核酸塩基を少なくとも1つ含んで成る1.記載の化合物。
【0202】
7. 前記修飾核酸塩基が5−メチルシトシンである6.記載の化合物。
【0203】
8. 前記アンチセンスオリゴヌクレオチドがキメラオリゴヌクレオチドである1.記載の化合物。
【0204】
9. 1.記載の化合物と薬学的受け入れられる担体もしくは希釈剤を含んで成る組成物。
【0205】
10. 更にコロイド状の分散系も含んで成る9.記載の組成物。
【0206】
11. PTP1Bをコード化する核酸分子上の活性部位の少なくとも8核酸塩基部分と特異的にハイブリッド形成する1.記載の化合物。
【0207】
12. 細胞もしくは組織の中で起こるPTP1Bの発現を抑制する方法であって、PT
P1Bの発現が抑制されるように前記細胞もしくは組織を1.記載の化合物と接触させることを含んで成る方法。
【0208】
13. 前記細胞もしくは組織がヒトの細胞もしくは組織である12.記載の方法。
【0209】
14. 前記細胞もしくは組織が齧歯類の細胞もしくは組織である12.記載の方法。
【0210】
15. 前記齧歯類の細胞もしくは組織がマウスの細胞もしくは組織である14.記載の方法。
【0211】
16. 前記齧歯類の細胞もしくは組織がラットの細胞もしくは組織である14.記載の方法。
【0212】
17. 前記細胞もしくは組織が肝臓、腎臓または脂肪細胞もしくは組織である14.記載の方法。
【0213】
18. PTP1Bに関連した病気または状態を有するか或は有すると思われる動物を治療する方法であって、PTP1Bの発現が抑制されるように前記動物に1.記載の化合物を治療もしくは予防有効量で投与することを含んで成る方法。
【0214】
19. 前記動物がヒトである18.記載の方法。
【0215】
20. 前記病気もしくは状態が代謝病もしくは状態である18.記載の方法。
【0216】
21. 前記病気もしくは状態が糖尿病である18.記載の方法。
【0217】
22. 前記病気もしくは状態が2型糖尿病である18.記載の方法。
【0218】
23. 前記病気もしくは状態が肥満症である18.記載の方法。
【0219】
24. 前記病気もしくは状態が過増殖状態である18.記載の方法。
【0220】
25. 前記過増殖状態が癌である24.記載の方法。
【0221】
26. 動物における血液グルコース濃度を低下させる方法であって、前記動物に1.記載の化合物を投与することを含んで成る方法。
【0222】
27. 前記動物がヒトまたは齧歯類である26.記載の方法。
【0223】
28. 前記血液グルコース濃度が血漿グルコース濃度または血清グルコース濃度である26.記載の方法。
【0224】
29. 前記動物が糖尿病の動物である26.記載の方法。
【0225】
30. 動物におけるPTP1Bに関連した病気または状態の開始を防止または遅らせる方法であって、前記動物に1.記載の化合物を治療もしくは予防有効量で投与することを含んで成る方法。
【0226】
31. 前記動物がヒトである30.記載の方法。
【0227】
32. 前記病気もしくは状態が代謝病もしくは状態である30.記載の方法。
【0228】
33. 前記病気もしくは状態が糖尿病である30.記載の方法。
【0229】
34. 前記病気もしくは状態が2型糖尿病である30.記載の方法。
【0230】
35. 前記病気もしくは状態が肥満症である30.記載の方法。
【0231】
36. 前記病気もしくは状態が過増殖状態である30.記載の方法。
【0232】
37. 前記過増殖状態が癌である36.記載の方法。
【0233】
38. 動物における血液グルコース濃度上昇の開始を防止または遅らせる方法であって、前記動物に1.記載の化合物を投与することを含んで成る方法。
【0234】
39. 前記動物がヒトまたは齧歯類である38.記載の方法。
【0235】
40. 前記血液グルコース濃度が血漿グルコース濃度または血清グルコース濃度である38.記載の方法。
【0236】
41. 前記動物が糖尿病の動物である38.記載の方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PTP1Bをコード化する核酸分子を標的にする長さが核酸塩基8から50個分のアンチセンスオリゴヌクレオチド化合物であって、配列識別番号:
244、245、247、248、249、250、251、252、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、267、268、269、271、275、276、277、278、279、281、282、283、288、290、291、292、294、296、297、298、299、300、302、303、307、310、311、313、315、317、318、322、323、324、325、326、327、328、329、330、331、332、333、334、335、337、340、341、342、343、344、345、347、349、350、351、352、353、354、355、356、357、358、360、361、362、363、364、365、366、368、369、371、372、373、374、375、377、378、380、381、384、385、386、387、388、または 389
から成る群から選択される配列を含んで成っていてPTP1Bと特異的にハイブリッド形成しかつそれの発現を抑制する化合物。

【公開番号】特開2010−158249(P2010−158249A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41991(P2010−41991)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【分割の表示】特願2002−589640(P2002−589640)の分割
【原出願日】平成14年5月13日(2002.5.13)
【出願人】(502254408)イシス・フアーマシユーチカルズ・インコーポレーテツド (5)
【Fターム(参考)】