説明

Pseudomonas体外毒素A様キメラ免疫原

【課題】Pseudomonas体外毒素のIbドメインにおいて非ネイティブエピトープを含むPseudomonas体外毒素A様キメラ免疫原、これらの免疫原を使用して免疫応答を誘発する方法を提供すること。
【解決手段】無毒性Pseudomonas体外毒素A様(「PE様」)キメラ免疫原であって、(1)細胞表面レセプターに結合する10と1500との間のアミノ酸の細胞認識ドメイン;(2)細胞サイトゾルへのトランスロケーションをもたらすのに十分なPEドメインIIの配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含むトランスロケーションドメイン;(3)非ネイティブエピトープをコードする5と1500との間のアミノ酸のアミノ酸配列を含む非ネイティブエピトープドメイン;および(4)小胞体(「ER」)保持配列を含むER保持ドメインをコードするアミノ酸配列、を含む免疫原。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、1997年7月11日に出願した同時係属出願第60/052,375号(この内容を、この全体において、本明細書中で参考として援用する)の出願日の利益を請求する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、キメラタンパク質および免疫学の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
感染性疾患に対する免疫は、近年の医学の偉大な業績の1つである。ワクチンは、ワクチンがそれ自体有意に病原性でない場合のみ、有用であり得る。多くのワクチンが、病原体を不活化することによって産生される。例えば、肝炎ワクチンは、ウイルスを加熱し、そしてホルムアルデヒドでそれを処置することによって作製され得る。他のワクチン(例えば、特定のポリオワクチン)は、生病原体を弱毒化することによって産生される。しかし、その病理学が完全に解明されていない特定の感染性因子(例えば、HIV)のための弱毒化ワクチンの産生についての関心が存在する。
【0004】
分子生物学は、サブユニットワクチン(免疫原が親タンパク質または複合体のフラグメントまたはサブユニットであるワクチン)の産生を可能にしてきた。HIV−1のエンベロープタンパク質(例えば、gp120)は、サブユニットワクチンとして評価されている。いくつかの研究は、gp120のV3ループ領域に対する抗体が、ウイルス中和化を介して保護を提供することを示唆してきた(Emini,E.A.ら、1992, Nature 355, 728−30;Javaherian,Kら、1989,Proc Natl Acad Sci USA 86, 6768−72;Steimer,K.S.ら、1991, Science 254, 105−8;Wang,C.Y.ら、1991, Science 254, 285−8)。
【0005】
しかし、サブユニットワクチンは、適切な免疫反応を生成するのに十分な複合体でなくてもよい。また、病原体が高度に変異しやすい(mutable)場合(例えば、HIVである場合)、株特異的免疫性を誘発するサブユニットワクチンは、全体的な保護を産生することに効果的でなくてもよい。さらに、不活化ウイルスの注射またはエンベロープタンパク質自体さえ、中和抗体およびいわゆる「増強」抗体の混合物を産生する可能性を有する(Toth,F.D.ら、1994, Clin Exp Immunol 96, 389−94;Eaton,A.M.ら、1994, Aids Res Hum Retroviruses 10, 13−8;Mitchell,W.M.ら、1995, Aids 9.27−34:Montefiori,D.C.ら、1996, J Infect Dis 173, 60−7)。
【0006】
サブユニットワクチンの免疫原性は、時々、結合体ワクチンを生成するキャリアタンパク質にサブユニットをカップリングすることによって増加される。1つのこのようなキャリアタンパク質は、Pseudomonas体外毒素A(「PE」)である。研究者は、リポポリサッカライド(「LPS」)由来の非免疫原性O−ポリサッカライドをPEに共有結合させた。得られる結合体ワクチンは、LPSおよびPEの両方に対して免疫応答を誘発した(S.J.Cryz,Jr.ら(1987)J.Clin.Invest., 80:51−56およびS.J.Cryz,Jr.ら(1990)J.Infectious Diseases, 163:1040−1045)。別の研究において、研究者は、スペーサーを介してPEにカップリングさせることにより、Plasmodium falciparum抗原に対して免疫応答を誘発し得た(J.U.Queら(1988)Infection and Immunity, 56:2645−49)。第3の研究において、研究者は、PEを解毒し、そしてそれにHIV−1の主要中和ドメイン(principle neutralizing domain)(「PND」)ペプチドを化学的に架橋させた。結合体ワクチンは、PNDペプチドを認識する抗体の産生を誘発し、そして相同株HIV−1MNを中和した(S.J.Cryz,Jr.ら(1995)Vaccine, 13:66−71)。
【0007】
HIV−1の成分を含むキメラタンパク質は構築されており、そしてそれらの免疫原的特性は評価されている。これらは、以下を含む:HIV−1由来のgp41膜貫通糖タンパク質のエピトープを含むポリオウイルス抗原(Evans,D.J.ら、1989, Nature 339, 385−8)、V3ループの多数コピーを含むムチンタンパク質(Fontenot,J.D.ら、1995, Proc Natl Acad Sci USA, 92, 315−9)、V3ループ配列を有する一般的に改変されたコレラB鎖(Backstrom, M.ら、1994, Gene 149,211−7)、および化学的に解毒されたPE−V3ループペプチド結合体(Cryz,S.,Jr.ら、1995, Vaccine 13, 67−71)。
【0008】
エンベロープタンパク質gp120の第3可変(third varible)(V3)ループは、HIV−1の主要中和ドメインを含む(Emini,E.A.ら、1992, Nature 355, 728−30;Javaherian,Kら、1989, Proc Natl Acad Sci USA 86, 6768−72;Rusche,J.R.ら、(出版された正誤表はProc Natl Acad Sci USA 22, 8697 1988、およびProc Natl Acad Sci USA 5, 1667 1989に掲載される);Proc Natl Acad Sci USA 85, 3198−202 1988)。V3ループは、種々のHIV−1株の間で相当変化するが(Berman,P.W.ら、1990, Nature 345, 622−5)、この領域に対して特異的な抗体は、ウイルスの感染性を中和し、そしてインビトロでウイルス細胞融合を防止することが示されている(Kovacs,J.A.ら、1993, J.Clin Invest 92, 919−28)。さらに、gp120の組換え形態での全身性免疫は、HIV−1全身性チャレンジによる感染からチンパンジーを有意に保護するようである。White−Scharf,M.E.ら、1993, Virology 192, 197−206。
【0009】
HIVは、しばしば、粘膜表面で身体への進入を獲得する。しかし、現在利用可能なHIV免疫原は、分泌性免疫応答(これは、粘膜を介するウイルス接近を阻害する)を誘発することが知られていない。
【0010】
体液性応答および細胞性応答(粘膜性免疫を含む)の両方を誘発し得、かつ感染性因子の多くの株(例えば、HIV−1)由来の配列を取り込むのに十分可動性であり得る安定なワクチンの開発が所望されている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
Pseudomonas体外毒素A様(「PE様」)キメラ免疫原(ここで、非ネイティブエピトープは、Ibドメインに挿入される)は、非ネイティブエピトープに対する、体液性免疫応答、細胞媒介性免疫応答、およびう分泌性免疫応答を誘発するのに有用である。詳細には、非ネイティブエピトープは、HIVのgp120のV3ループであり得る。このようなキメラは、HIV感染に対するワクチンにおいて有用である。
【0012】
PEキメラ免疫原は、いくつかの利点を提供する。第1に、全体として組換え手段によって作製され得る。このことは、化学的架橋によってエピトープをPEに接続し、かつ体外毒素を化学的に不活化する必要性を排除する。組換え技術はまた、Ibドメイン位置で非ネイティブエピトープの選択についての挿入部位を有するキメラ「カセット」を作製することを可能にする。このことは、エピトープの存在する改変体、または迅速に進化するエピトープの新規な改変体を迅速に挿入することを可能にする。このことは、異なる免疫原のカクテルを含むワクチンの産生を可能にする。
【0013】
第2に、Pseudomonas体外毒素は、そのドメインの機能を変化させるように操作され得、それにより種々の活性を提供する。例えば、Pseudomonas体外毒素Aのネイティブ細胞結合ドメイン(ドメインIa)を、特定の細胞レセプターについてのリガンドと置換することにより、特定の細胞型に結合するキメラを標的し得る。
【0014】
第3に、Ibドメインはシステイン−システインループを含むので、天然においてかなり束縛されるエピトープは、ほぼネイティブなコンフォメーションで提示され得る。このことは、ネイティブ抗原に対する免疫応答を惹起することを補佐する。例えば、ターン−ターン−へリックスモチーフは、環状であることが明らかであるが(ジスルフィド結合によって束縛される)、線状エピトープではない(Ogata,M.ら、1990, Biol Chem 265, 20678−85)。また、環状ペプチドは、線状のものよりも、抗V3ループモノクローナル抗体によってより容易に認識される(Catasti,P.ら、1995, J Biol Chem 270, 2224−32)。
【0015】
第4に、本発明のキメラは、体液性免疫応答、細胞媒介性免疫応答、または分泌性免疫応答を誘発するために使用され得る。Pseudomonas体外毒素は、抗原提示細胞において前もってプロセシングすることではなく、MHCクラスII分子に対して直接的に結合する「スーパー抗原」として作用することが報告されている。P.K.Legaardら(1991)Cellular Immunology 135:372−382。このことは、非ネイティブエピトープを含むタンパク質を保有する細胞に対するMHCクラスII媒介性免疫応答を促進する。また、細胞表面レセプターへの結合に基づいて、キメラPseudomonas体外毒素はサイトゾルにトランスロケーションする。このことは、それらの表面において非ネイティブエピトープを保有する細胞に対するMHCクラスI依存性免疫応答を可能にする。この局面は、特に有利である。なぜなら、正常な免疫系は、細胞によって生成されるタンパク質に対してのみMHCクラスI依存性免疫応答を増加するからである。また、キメラを粘膜表面に指向させることによって、IgAに関与する分泌性免疫応答を誘発し得る。
【0016】
1つの局面において、本発明は、以下を含む無毒性Pseudomonas体外毒素A様(「PE様」)キメラ免疫原を提供する:(1)細胞表面レセプターに結合する10と1500との間のアミノ酸の細胞認識ドメイン;(2)細胞サイトゾルへのトランスロケーションをもたらすのに十分なPEドメインIIの配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含むトランスロケーションドメイン;(3)非ネイティブエピトープを含む5と1500との間のアミノ酸のアミノ酸配列を含む非ネイティブエピトープドメイン;および、必要に応じて(4)小胞体(「ER」)保持ドメイン保持配列を含むER保持ドメインをコードするアミノ酸配列。1つの実施態様において、キメラ免疫原は、無毒性PEのアミノ酸配列を含み、ここでドメインIbはさらに、ドメインIbの2つのシステイン残基の間に非ネイティブエピトープを含む。
【0017】
特定の実施態様において、細胞認識ドメインは、α2−マクログロブリンレセプター(「α2−MR」)、上皮増殖因子(「EGF」)レセプター、IL−2レセプター、IL−6レセプター、ヒトトランスフェリンレセプター、またはgp120に結合する。別の実施態様において、細胞認識ドメインは、増殖因子のアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、トランスロケーションドメインは、PEのドメインIIのアミノ酸280〜384を含む。別の実施態様において、非ネイティブエピトープドメインは、非ネイティブエピトープドメインを含むシステイン−システインループを含む。別の実施態様において、非ネイティブエピトープドメインは、HIV−1のV3ループから選択されるアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、ER保持ドメインは、ADPリボシル化活性を排除する変異体(例えば、ΔE553)を含むPEのドメインIIIである。ER保持ドメインは、ER保持配列REDLK(配列番号11)、REDL(配列番号12)、またはKDEL(配列番号13)を含み得る。別の実施態様において、非ネイティブエピトープは、病原体由来のエピトープ(例えば、ウイルス、細菌、または寄生性原虫由来のエピトープ)またはガン抗原由来のエピトープである。
【0018】
別の実施態様において、細胞認識ドメインはPEのドメインIaであり、トランスロケーションドメインはPEのドメインIIであり、非ネイティブエピトープドメインは、PEのドメインIbの2つのシステイン残基間に挿入された非ネイティブエピトープをコードするアミノ酸配列を含み、そしてER保持ドメインは、PEのドメインIIIであり、かつADPリボシル化活性を排除する変異体を含む。
【0019】
別の局面において、本発明は、本発明のPseudomonas体外毒素A様キメラ免疫原をコードする核酸配列を含む組換えポリヌクレオチドを提供する。1つの実施態様において、組換えポリヌクレオチドは、ヌクレオチド配列に作動可能に連結される発現制御配列をさらに含む発現ベクターである。
【0020】
別の局面において、本発明は、以下をコードするヌクレオチド配列を含むPseudomonas体外毒素A様キメラ免疫原クローニングプラットフォームを提供する:(1)細胞表面レセプターに結合する10と1500との間のアミノ酸の細胞認識ドメイン;(2)細胞サイトゾルへのトランスロケーションをもたらすのに十分なPEドメインIIの配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含むトランスロケーションドメイン;(3)小胞体(「ER」)保持ドメイン保持配列を含むER保持ドメインをコードするアミノ酸配列、および必要に応じて(4)トランスロケーションドメインをコードする配列とER保持ドメインをコードする配列との間のスプライシング部位。1つの実施態様において、組換えポリヌクレオチドは、ヌクレオチド配列に作動可能に連結される発現制御配列をさらに含む発現ベクターである。
【0021】
別の局面において、本発明は、システイン−システインループ内に天然に存在する非ネイティブエピトープに対する抗体を産生するための方法を提供する。この方法は、動物に、本発明の無毒性Pseudomonas体外毒素A様キメラ免疫原を接種する工程を包含し、ここで非ネイティブエピトープドメインは、非ネイティブエピトープを含むシステイン−システインループを含む。
【0022】
別の局面において、本発明は、少なくとも1つの無毒性Pseudomonas体外毒素A様キメラ免疫原を含むワクチンを提供し、これは細胞認識ドメイン、トランスロケーションドメイン、非ネイティブエピトープをコードする非ネイティブエピトープドメイン、および小胞体(「ER」)保持ドメイン保持配列を含むER保持ドメインを含む。1つの実施態様において、ワクチンは、複数のPE様キメラ免疫原を含み、各免疫原は、異なる非ネイティブエピトープを有する。別の実施態様において、異なる非ネイティブエピトープは、同じ病原体の異なる株のエピトープである。
【0023】
別の局面において、本発明は、被験体において、非ネイティブエピトープに対する免疫応答を誘発する方法を提供する。この方法は、本発明の少なくとも1つのPseudomonas体外毒素A様キメラ免疫原を含むワクチンを被験体に投与する工程を包含する。1つの実施態様において、非ネイティブエピトープは、被験体のMHCクラスII分子についての結合モチーフを含み、そして誘発される免疫応答は、MHCクラスII依存性細胞媒介性免疫応答である。別の実施態様において、非ネイティブエピトープは、被験体のMHCクラスI分子についての結合モチーフを含み、そして誘発される免疫応答は、MHCクラスI依存性細胞媒介性免疫応答である。
【0024】
別の局面において、本発明は、本発明の無毒性Pseudomonas体外毒素A様キメラ免疫原をコードするヌクレオチド配列を含む少なくとも1つの組換えポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドワクチンを提供する。
【0025】
別の局面において、本発明は、被験体において、非ネイティブエピトープに対する免疫応答を誘発する方法を提供する。この方法は、本発明の無毒性Pseudomonas体外毒素A様キメラ免疫原をコードするヌクレオチド配列を含む少なくとも1つの組換えポリヌクレオチドを含むワクチンを被験体に投与する工程を包含する。1つの実施態様において、組換えポリヌクレオチドは、ヌクレオチド配列に作動可能に連結される発現制御配列を含む発現ベクターである。
【0026】
別の局面において、本発明は、被験体において、非ネイティブエピトープに対する免疫応答を誘発する方法を提供する。この方法は、本発明の無毒性Pseudomonas体外毒素A様キメラ免疫原をコードするヌクレオチド配列を含む組換えポリヌクレオチドで細胞をトランスフェクトする工程、および被験体に細胞を投与する工程を包含する。
【0027】
別の局面において、本発明は、IgA媒介性分泌性免疫応答を誘発する方法を提供する。この方法は、本発明の無毒性Pseudomonas体外毒素キメラ免疫原を粘膜に投与する工程を包含し、ここで細胞認識ドメインは、粘膜上のレセプターに結合する。細胞認識ドメインは、α2−MR(例えば、PEのネイティブ細胞認識ドメイン)またはEGFレセプターに結合し得る。粘膜表面は、口、鼻、肺、腸、膣、結腸、または直腸であり得る。
【0028】
別の局面において、本発明は、粘膜表面を介して身体に進入する病原体のエピトープ(例えば、HIV−1のエピトープ)を特異的に認識する分泌性IgA抗体を含む組成物を提供する。
【0029】
さらに、本発明は、以下の手段もまた、提供する:
(項目1) 無毒性Pseudomonas体外毒素A様(「PE様」)キメラ免疫原であって、以下:
(1)細胞表面レセプターに結合する10と1500との間のアミノ酸の細胞認識ドメイン;
(2)細胞サイトゾルへのトランスロケーションをもたらすのに十分なPEドメインIIの配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含むトランスロケーションドメイン;
(3)非ネイティブエピトープをコードする5と1500との間のアミノ酸のアミノ酸配列を含む非ネイティブエピトープドメイン;および
(4)小胞体(「ER」)保持配列を含むER保持ドメインをコードするアミノ酸配列、
を含む免疫原。
【0030】
(項目2) PEΔE533のドメインIbの配列がドメインIbの2つのシステイン残基の間の前記非ネイティブエピトープを含むことを除く、PEΔE533のアミノ酸配列を有する、項目1に記載の免疫原。
【0031】
(項目3) 前記細胞認識ドメインが、PEのドメインIaである、項目1に記載の免疫原。
【0032】
(項目4) 前記細胞認識ドメインが、α2−マクログロブリンレセプター(「α2−MR」)、上皮増殖因子(「EGF」)レセプター;IL−2レセプター;IL−6レセプター;HIV感染細胞;ケモカインレセプター;白血球細胞表面レセプター;IgAレセプターのリガンド;またはレセプターを指向する抗体もしくは抗体フラグメントに結合する、項目1に記載の免疫原。
【0033】
(項目5) 前記細胞認識ドメインが、増殖因子または抗体のアミノ酸配列を含む、項目1に記載の免疫原。
【0034】
(項目6) 前記細胞認識ドメインが、前記ER保持ドメインに含まれる、項目1に記載の免疫原。
【0035】
(項目7) 前記トランスロケーションドメインが、PEのドメインIIのアミノ酸280〜364を含む、項目1に記載の免疫原。
【0036】
(項目8) 前記トランスロケーションドメインが、PEのドメインIIである、項目1に記載の免疫原。
【0037】
(項目9) 前記非ネイティブエピトープドメインが、前記非ネイティブエピトープを含むシステイン−システインループを含む、項目1に記載の免疫原。
【0038】
(項目10) 前記非ネイティブエピトープドメインが、PEのドメインIbの2つのシステイン残基の間に挿入された非ネイティブエピトープをコードするアミノ酸配列を含む、項目1に記載の免疫原。
【0039】
(項目11) 前記非ネイティブエピトープドメインが、CTRPNYNKRK RIHIGPGRAF YTTKNIIGTI RQAHC(配列番号3)またはCTRPSNNTRT SITIGPGQVF YRTGDIIGDI RKAYC(配列番号4)から選択されるアミノ酸配列を含む、項目1に記載の免疫原。
【0040】
(項目12) 前記ER保持ドメインが、変異ΔE553を含むPEのドメインIIIである、項目1に記載の免疫原。
【0041】
(項目13) 前記ER保持配列が、REDLK(配列番号11)、REDL(配列番号12)、またはKDEL(配列番号13)を含む、項目1に記載の免疫原。
【0042】
(項目14) 項目1に記載の免疫原であって、該免疫原は、ntPE−V3MN14またはntPE−V3MN26である、免疫原。
【0043】
(項目15) 前記非ネイティブエピトープが、ウイルス性病原体、細菌性病原体、または寄生性原虫病原体由来のエピトープである、項目1に記載の免疫原。
【0044】
(項目16) 前記非ネイティブエピトープが、HIV−1のgp120のV3ループのエピトープである、項目9に記載の免疫原。
【0045】
(項目17) 前記非ネイティブエピトープが、レトロウイルスの主要な中和ループのエピトープである、項目9に記載の免疫原。
【0046】
(項目18) 前記非ネイティブエピトープが、V3ループの尖を含む少なくとも8アミノ酸のHIV−2の主要中和ループ、またはHIV−1のgp120のV3ループのエピトープである、項目9に記載の免疫原。
【0047】
(項目19) 無毒性Pseudomonas体外毒素A様(「PE様」)キメラ免疫原をコードするヌクレオチド配列を含む組換えポリヌクレオチドであって、該PE様キメラ免疫原は以下:
(1)細胞表面レセプターに結合する10と1500との間のアミノ酸の細胞認識ドメイン;
(2)細胞サイトゾルへのトランスロケーションをもたらすのに十分なPEドメインIIの配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含むトランスロケーションドメイン;
(3)非ネイティブエピトープをコードする5と1500との間のアミノ酸のアミノ酸配列を含む非ネイティブエピトープドメイン;および
(4)小胞体(「ER」)保持配列を含むER保持ドメインをコードするアミノ酸配列、
を含む、組換えポリヌクレオチド。
【0048】
(項目20) 前記ヌクレオチド配列に作動可能に連結される発現制御配列をさらに含む発現ベクターである、項目19に記載の組換えポリヌクレオチド。
【0049】
(項目21) 前記ヌクレオチド配列が、PEのアミノ酸配列をコードし、ここでPEのドメインIbが、ドメインIbの2つのシステイン残基の間の非ネイティブエピトープをさらに含む、項目19に記載の組換えポリヌクレオチド。
【0050】
(項目22) 組換え無毒性Pseudomonas体外毒素A様(「PE様」)キメラ免疫原クローニングプラットフォームであって、以下:
(1)細胞表面レセプターに結合する10と1500との間のアミノ酸の細胞認識ドメイン;
(2)細胞サイトゾルへのトランスロケーションをもたらすのに十分なPEドメインIIの配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含むトランスロケーションドメイン;
(3)小胞体(「ER」)保持配列を含むER保持ドメインをコードするアミノ酸配列;ならびに
(4)トランスロケーションドメインをコードする配列と、該保持ドメインをコードする配列との間のスプライス部位、
をコードするヌクレオチド配列を含む、組換え無毒性Pseudomonas体外毒素A様(「PE様」)キメラ免疫原クローニングプラットフォーム。
【0051】
(項目23) 前記ヌクレオチド配列に作動可能に連結される発現制御配列をさらに含む発現ベクターである、項目22に記載の組換えクローニングプラットフォーム。
【0052】
(項目24) 非ネイティブエピトープに対する抗体を産生するための方法であって、該非ネイティブエピトープはシステイン−システインループ内に天然に存在し、該方法は、無毒性Pseudomonas体外毒素A様(「PE様」)キメラ免疫原を動物に接種する工程を包含し、該PE様キメラ免疫原は以下:
(1)細胞表面レセプターに結合する10と1500との間のアミノ酸の細胞認識ドメイン;
(2)細胞サイトゾルへのトランスロケーションをもたらすのに十分なPEドメインIIの配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含むトランスロケーションドメイン;
(3)システイン−システインスープ内に非ネイティブエピトープをコードする5と1500との間のアミノ酸のアミノ酸配列を含む該システイン−システインスープを含む非ネイティブエピトープドメイン;および
(4)小胞体(「ER」)保持配列を含むER保持ドメインをコードするアミノ酸配列、
を含む、方法。
【0053】
(項目25) 前記システイン−システインループが、約30アミノ酸以下を含む、項目24に記載の方法。
【0054】
(項目26) 前記非ネイティブエピトープが、HIV−1のV3ドメインのエピトープである、項目24に記載の方法。
【0055】
(項目27) 少なくとも1つの無毒性Pseudomonas体外毒素A様(「PE様」)キメラ免疫原を含むワクチンであって、該PE様キメラ免疫原は以下:
(1)細胞表面レセプターに結合する10と1500との間のアミノ酸の細胞認識ドメイン;
(2)細胞サイトゾルへのトランスロケーションをもたらすのに十分なPEドメインIIの配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含むトランスロケーションドメイン;
(3)非ネイティブエピトープをコードする5と1500との間のアミノ酸のアミノ酸配列を含む非ネイティブエピトープドメイン;および
(4)小胞体(「ER」)保持配列を含むER保持ドメインをコードするアミノ酸配列、
を含む、ワクチン。
【0056】
(項目28) 複数のPE様キメラ免疫原を含み、各免疫原が異なる非ネイティブエピトープを有する、項目27に記載のワクチン。
【0057】
(項目29) 薬学的に受容可能なキャリアをさらに含む、項目27に記載のワクチン。
【0058】
(項目30) 免疫用量の形態である、項目27に記載のワクチンであって、前記免疫原が、ヒト被験体において前記非ネイティブエピトープに対する免疫応答を誘発するに有効な量で存在する、ワクチン。
【0059】
(項目31) 前記異なる非ネイティブエピトープが、同じ病原体の異なる株のエピトープである、項目28に記載のワクチン。
【0060】
(項目32) 前記非ネイティブエピトープが、HIV−1のV3ループのエピトープであり、そして前記同じ病原体の異なる株が、HIV−1 MNおよびHIV−1 Thai−Eである、項目31に記載のワクチン。
【0061】
(項目33) 被験体において、非ネイティブエピトープに対する免疫応答を誘発する方法であって、該方法は、少なくとも1つの無毒性Pseudomonas体外毒素A様(「PE様」)キメラ免疫原を含むワクチンを該被験体に投与する工程を包含し、該PE様キメラ免疫原は以下:
(1)細胞表面レセプターに結合する10と1500との間のアミノ酸の細胞認識ドメイン;
(2)細胞サイトゾルへのトランスロケーションをもたらすのに十分なPEドメインIIの配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含むトランスロケーションドメイン;
(3)非ネイティブエピトープをコードする5と1500との間のアミノ酸のアミノ酸配列を含む非ネイティブエピトープドメイン;および
(4)小胞体(「ER」)保持配列を含むER保持ドメインをコードするアミノ酸配列、
を含む、方法。
【0062】
(項目34) 前記非ネイティブエピトープが、前記被験体のMHCクラスII分子の結合モチーフを含み、そして前記誘発される免疫応答は、MHCクラスII依存性細胞媒介性免疫応答である、項目33に記載の方法。
【0063】
(項目35) 前記非ネイティブエピトープが、前記被験体のMHCクラスI分子の結合モチーフを含み、そして前記誘発される免疫応答は、MHCクラスI依存性細胞媒介性免疫応答である、項目33に記載の方法。
【0064】
(項目36) 前記非ネイティブエピトープが、HIV−1のV3ドメインのエピトープである、項目33に記載の方法。
【0065】
(項目37) 前記ワクチンが、前記非ネイティブエピトープを保有する因子によって媒介される疾患に対して予防的処置として投与される、項目33に記載の方法。
【0066】
(項目38) 前記ワクチンが、前記非ネイティブエピトープを保有する因子によって媒介される疾患に対して治療的処置として投与される、項目33に記載の方法。
【0067】
(項目39) 無毒性Pseudomonas体外毒素A様(「PE様」)キメラ免疫原をコードするヌクレオチド配列含む少なくとも1つの組換えポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドワクチンであって、該PE様キメラ免疫原は以下:
(1)細胞表面レセプターに結合する10と1500との間のアミノ酸の細胞認識ドメイン;
(2)細胞サイトゾルへのトランスロケーションをもたらすのに十分なPEドメインIIの配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含むトランスロケーションドメイン;
(3)非ネイティブエピトープをコードする5と1500との間のアミノ酸のアミノ酸配列を含む非ネイティブエピトープドメイン;および
(4)小胞体(「ER」)保持配列を含むER保持ドメインをコードするアミノ酸配列、
を含む、ポリヌクレオチドワクチン。
【0068】
(項目40) 被験体において、非ネイティブエピトープに対する免疫応答を誘発する方法であって、該方法は、無毒性Pseudomonas体外毒素A様(「PE様」)キメラ免疫原をコードするヌクレオチド配列を含む少なくとも1つの組換えポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドワクチンを該被験体に投与する工程を包含し、該PE様キメラ免疫原は以下:
(1)細胞表面レセプターに結合する10と1500との間のアミノ酸の細胞認識ドメイン;
(2)細胞サイトゾルへのトランスロケーションをもたらすのに十分なPEドメインIIの配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含むトランスロケーションドメイン;
(3)非ネイティブエピトープをコードする5と1500との間のアミノ酸のアミノ酸配列を含む非ネイティブエピトープドメイン;および
(4)小胞体(「ER」)保持配列を含むER保持ドメインをコードするアミノ酸配列、
を含む、方法。
【0069】
(項目41) 前記組換えポリヌクレオチドが、前記ヌクレオチド配列に作動可能に連結される発現制御配列を含む発現ベクターである、項目40に記載の方法。
【0070】
(項目42) 前記ヌクレオチド配列が、前記免疫原のアミノ末端に接続される哺乳動物分泌配列をさらにコードする、項目40に記載の方法。
【0071】
(項目43) 被験体において、非ネイティブエピトープに対する免疫応答を誘発する方法であって、該方法は、無毒性Pseudomonas体外毒素A様(「PE様」)キメラ免疫原をコードするヌクレオチド配列を含む組換えポリヌクレオチドで細胞をトランスフェクトする工程および該被検体に該細胞を投与する工程を包含し、該PE様キメラ免疫原は以下:
(1)細胞表面レセプターに結合する10と1500との間のアミノ酸の細胞認識ドメイン;
(2)細胞サイトゾルへのトランスロケーションをもたらすのに十分なPEドメインIIの配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含むトランスロケーションドメイン;
(3)非ネイティブエピトープをコードする5と1500との間のアミノ酸のアミノ酸配列を含む非ネイティブエピトープドメイン;および
(4)小胞体(「ER」)保持配列を含むER保持ドメインをコードするアミノ酸配列、
を含む、方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0072】
(発明の詳細な説明)
(I.定義)
他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明に属する当業者により共通に理解される意味を有する。以下の参考文献は、本発明に使用される多くの用語の一般的な定義を有する技術のものを提供する:Singletonら、DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY(第2版、1994);THE CAMBRIDGE DICTIONARY OF SCIENCE AND TECHNOLOGY(Walker編、1988);THE GLOSSARY OF GENETICS,第5版、R.Riegerら(編),Springer Verlag(1991);およびHaleおよびMarham、THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY(1991)。本明細書中に使用されるように、以下の用語は別に特定されない限りそれらに基づいた意味を有する。
【0073】
「ポリヌクレオチド」はヌクレオチド単位を構成するポリマーを意味する。ポリヌクレオチドは天然に存在する核酸、例えばデオキシリボ核酸(「DNA」)およびリボ酢酸(「RNA」)、ならびに核酸アナログを含む。核酸アナログは天然に存在しない塩基、天然に存在するホスホジエステル結合以外の、他のヌクレオチドとの連結で結合するヌクレオチドを含むか、またはホスホジエステル以外の連結によって結合された塩基を含むものである。従って、ヌクレオチドアナログは、例えばそして限定することなく、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロトリエステル、ホスホラミデート、ボラノホスフェート、メチルホスホネート、キラル−メチルホスホネート、2−O−メチルリボヌクレオチド、ペプチド−核酸(PNA)などを含む。このようなポリヌクレオチドは、例えば、自動化DNA合成器を使用して、合成され得る。用語「核酸」は、代表的には、長いポリヌクレオチドを表す。用語「オリゴヌクレオチド」は、代表的には、短いポリヌクレオチド(一般的には、約50ヌクレオチド以下)を表す。ヌクレオチド配列がDNA配列(すなわち、A、T、G、C)で表される場合、これもまたRNA配列(すなわち、A、U、G、C)(ここで「U」は、「T」を置き換える)を含むことが、理解される。
【0074】
「cDNA」は、一本鎖または二本鎖形態のいずれかにおいて、mRNAと相補的または同一のDNAを表す。
【0075】
慣用的な記号が、ポリヌクレオチドを記載するために本明細書中で使用される:一本鎖ポリヌクレオチド配列の左側末端は5’末端である;二本鎖ポリヌクレオチド配列の左側方向は5'方向を表す。新生RNA転写物に対するヌクレオチドの5’から3’付加の方向は、転写方向として表される。mRNAと同じ配列を有するDNA鎖は「コード鎖」として表される;DNAから転写されたmRNAと同じ配列を有し、かつRNA転写物の5’末端に対し5’に位置されるDNA鎖における配列は、「上流配列」として表される;RNAと同じ配列を有しかつコードRNA転写物の3’末端に対し3’に位置されるDNA鎖における配列は、「下流配列」として表される。
【0076】
「相補的」は2つのポリヌクレオチドの相互作用する表面の局所的適合性または共に一致することを表す。従って、2つの分子は相補的として記載され得、そしてさらに、接触表面の特徴は互いに相補的である。第1のポリヌクレオチドは、第1のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が第2ポリヌクレオチドのポリヌクレオチド結合パートナーのヌクレオチド配列と同一である場合、第2ポリヌクレオチドと相補的である。従って、配列5’−TATAC−3’のポリヌクレオチドはその配列が5’−GATATA−3’であるポリヌクレオチドと相補的である。
【0077】
ヌクレオチド配列は、対象ヌクレオチド配列に対する配列相補性が参照ヌクレオチド配列と実質的に同じである場合、参照ヌクレオチド配列と「実質的に相補的」である。
【0078】
「コードする」はポリヌクレオチド(例えば、遺伝子、cDNA、またはmRNA)におけるヌクレオチドの特異的な配列の固有な特性を表し、定義されたヌクレオチドの配列(すなわち、rRNA、tRNAおよびmRNA)または定義されたアミノ酸の配列のいずれかを有する生物学的プロセス、およびそれらから得られる生物学的特性における他のポリマーおよび高分子の合成のためのテンプレートとして役立つ。従って、遺伝子は、その遺伝子により産生されるmRNAの転写および翻訳が細胞または他の生物学的系におけるタンパク質を産生する場合、タンパク質をコードする。転写のためのテンプレートとして使用される、遺伝子またはcDNAの、コード鎖、mRNA配列と同一であり、そして通常配列表に提供されるヌクレオチド配列、および非コード鎖の両方は、遺伝子またはcDNAのタンパク質または他の産物をコードするとして表され得る。他に限定がなければ、「アミノ酸配列コードヌクレオチド配列」は全てのヌクレオチド配列を含み、これらは互いの縮重版であり、そして同じアミノ酸配列をコードする。タンパク質およびRNAをコードするヌクレオチド配列は、イントロンを含み得る
「組換えポリヌクレオチド」は共に天然には結合されていない配列を有するポリヌクレオチドを表す。増幅されたまたは集合された組換えポリヌクレオチドは適切なベクターに含まれ得、そしてこのベクターを使用して適切な宿主細胞を形質転換し得る。組換えポリヌクレオチドを含む宿主細胞は、「組換え宿主細胞」として表される。次いで、遺伝子は組換え宿主細胞において発現され、例えば「組換えポリペプチド」を産生する。組換えポリヌクレオチドは同様に非コード機能(例えば、プロモーター、複製起点、リボソーム結合部位など)に役立ち得る。
【0079】
「発現制御配列」は、それに作動可能に連結したヌクレオチド配列の発現(転写および/または翻訳)を調節するポリヌクレオチドにおけるヌクレオチド配列を表す。「作動可能に連結した」は、2つの部分間の機能的相互関係を表し、ここで、1つの部分の活性(例えば、転写を調節する能力)が他の部分の作用(例えば、配列の転写)を生じる。発現制御配列は、例えばそして限定することなく、プロモーター(例えば、誘導性または構成性)、エンハンサー、転写ターミネーター、開始コドン(すなわち、ATG)、イントロンについてのスプライシングシグナル、および終止コドンの配列を含み得る。
【0080】
「発現ベクター」は、発現されるヌクレオチド配列に作動可能に連結した発現制御配列を含む、組換えポリヌクレオチドを含むベクターを表す。発現ベクターは、発現についての十分なシス−作用性エレメントを含む;発現についての他のエレメントは、宿主細胞またはインビトロ発現系によって供給され得る。発現ベクターは、コスミド、プラスミド(例えば、裸であるかまたはリポソームに含まれる)および組換えポリヌクレオチドを取り込むウイルスのような当該分野に公知の全てのものを含む。
【0081】
「増幅」は、ポリヌクレオチド配列がコピーされ、従って、ポリヌクレオチド分子が、例えば逆転写、ポリメラーゼ連鎖反応、およびリガーゼ連鎖反応により多数のポリヌクレオチド分子に伸長される、任意の手段を表す。
【0082】
「プライマー」は、設計されたポリヌクレオチドテンプレートに特異的にハイブリダイズし、そして相補的なポリヌクレオチドの合成のための開始点を提供し得るポリヌクレオチドを表す。このような合成はポリヌクレオチドプライマーが合成が誘導される条件下(すなわち、ヌクレオチド、相補的ポリヌクレオチドテンプレート、およびDNAポリメラーゼのような重合のための因子の存在下)に置かれる場合に、生じる。プライマーは代表的には一本鎖であるが、二本鎖でもあってもよい。プライマーは、代表的にはデオキシリボ核酸であるが、広範な種々の合成プライマーおよび天然に存在するプライマーも、多くの適用に有用である。プライマー合成の開始のための部分として役に立つようにハイブリダイズするために設計されるテンプレートと相補的であるが、テンプレートの正確な配列を反映する必要はない。このような場合、テンプレートに対するプライマーの特異的なハイブリダイゼーションはハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーに依存する。プライマーは、例えば、色素産生性、放射活性、または蛍光部分で標識され得、そして検出可能部分として使用され得る。
【0083】
「プローブ」は、ポリヌクレオチドに関して使用される場合、別のポリヌクレオチドの設計された配列に特異的にハイブリダイズし得るポリヌクレオチドを表す。プローブは標的相補的ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズするが、テンプレートの正確な相補的配列を反映する必要はない。このような場合、標的に対するプローブの特異的ハイブリダイゼーションはハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーに依存する。プローブは、例えば、色素産生性、放射活性、または蛍光部分で標識され得、そして検出可能部分として使用され得る。
【0084】
第1配列は、配列が第1の配列であるポリヌクレオチドが、配列が第2の配列であるポリヌクレオチドと特異的にハイブリダイズする場合、第2の配列に関して「アンチセンス配列」である。
【0085】
「特異的にハイブリダイズする」または「特異的ハイブリダイゼーション」または「選択的にハイブリダイズする」は、配列がDNAまたはRNAの複合混合物(例えば、全細胞性)に存在する場合、ストリンジェントな条件下での特定のヌクレオチド配列に優先的に核酸分子を、結合、複製、またはハイブリダイズすることを表す。
【0086】
用語「ストリンジェントな条件」は、プローブがその標的部分配列に優先的にハイブリダイズし、そして他の配列のより少ないまたは全くない程度にハイブリダイズする条件を表す。核酸ハイブリダイゼーション実験(例えば、サザンおよびノーザンハイブリダイゼーション)の文脈における「ストリンジェントなハイブリダイゼーション」および「ストリンジェントなハイブリダイゼーション洗浄条件」は、配列依存性であり、そして異なる環境パラメーター下で異なる。核酸のハイブリダイゼーションに対する広範なガイドは、Tijssen(1993) Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−−Hybridization with Nucleic Acid Probes パートI 第2章「Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid probe assays」、Elsevier、New Yorkに見出される。一般に、高度にストリンジェントなハイブリダイゼーションおよび洗浄条件は、定義されるイオン強度およびpHにおける特定の配列についての熱融解点(Tm)より約5℃低いように選択される。Tmは標的配列の50%が(定義されたイオン強度およびpHの下で)完全に適合したプローブとハイブリダイズする温度である。非常にストリンジェントな条件は特定のプローブについてのTmに等しくなるように選択される。
【0087】
相補的な核酸のハイブリダイゼーション(これらは、サザンまたはノーザンブロットおいてフィルター上に100より多い相補的残基を有する)のためのストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例は、一晩行われるハイブリダイゼーションで、42℃において1mgのへパリンを含む50%ホルマリンである。高度にストリンジェントな洗浄条件の例は、約15分間72℃における0.15M NaClである。ストリンジェントな洗浄条件の例は、15分間65℃における0.2×SSC洗浄である(Sambrookら、SSC緩衝液の記載について参照のこと)。しばしば、高度なストリンジェンシー洗浄は、低ストリンジェンシー洗浄を先に行い、バックグラウンドプローブシグナルを除去する。例えば、100ヌクレオチドより多い複製についての、中ストリンジェンシー洗浄の例は、15分間45℃における1×SSCである。例えば、100ヌクレオチドより多い複製についての、低ストリンジェンシー洗浄の例は、15分間40℃における4〜6×SSCである。一般的に、特定のハイブリダイゼーションアッセイにおける無関係のプローブについて観測されるより2倍(またはそれ以上)のシグナル対ノイズ比は、特異的なハイブリダイゼーションの検出を増加する。
【0088】
「ポリペプチド」はアミノ酸残基から構成されるポリマーを表し、これらは天然に存在する構造改変体、およびそれらのペプチド結合を介して結合した天然に存在しない合成アナログに関連し、天然に存在する構造改変体、およびそれらの天然に存在しない合成アナログに関連する。合成ポリペプチドは、例えば、自動化ポリペプチド合成器を用いて合成され得る。用語「タンパク質」は代表的には、大きなポリペプチドを表す。用語「ペプチド」は代表的には、短いポリペプチドを表す。
【0089】
慣用的な記号は、ポリペプチド配列を言葉で示すために本明細書中で使用される:ポリペプチド配列の左側末端はアミノ末端である;ポリペプチド配列の右側末端はカルボキシル末端である。
【0090】
「保存的置換」は機能的に類似のアミノ酸とアミノ酸のポリペプチドにおける置換を表す。以下の6つのグループの各々は互いについての保存的置換であるアミノ酸を含む:
1)アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リジン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);および
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。
【0091】
「対立遺伝子改変体」は、同じ遺伝子座を占有する遺伝子の任意の2つ以上の多形形態を表す。対立遺伝子改変体は変異を通して自然に生じ、そして集団内の表現型多形性を生じ得る。遺伝子変異はサイレント(コードされたポリペプチドにおいて変化しない)であり得、または変化したアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードし得る。「対立遺伝子改変体」はまた、遺伝子の対立遺伝子改変体のmRNA転写物由来のcDNA、ならびにそれらにコードされるタンパク質を表す。
【0092】
用語「同一」または「同一性」の割合は、2つ以上のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の文脈において、2つ以上の配列または部分配列を表し、これらは、最大一致について比較されそして整列された場合、続く配列比較アルゴリズムの1つを用いてまたは視診によって測定された場合、同じであるかあるいは同じであるヌクレオチドまたはアミノ酸残基の特定の割合を有する。
【0093】
句「実質的に同一」は、2つの核酸またはポリペプチドの文脈において、最大一致について比較されそして整列された場合、続く配列比較アルゴリズムの1つを用いてまたは視診によって測定された場合、少なくとも60%、80%、90%、95%または98%のヌクレオチドまたはアミノ酸残基同一性を有する2つ以上の配列または部分配列を表す。好ましくは、実施的な同一性は、少なくとも約50残基長の配列の領域にわたって、より好ましくは、少なくとも約100残基の領域にわたって存在し、最も好ましくは、配列は実質的に少なくとも約150残基にわたって同一である。最も好ましい実施態様において、配列は、コード領域の全長にわたって実質的に同一である。
【0094】
配列比較について、代表的には1つの配列は、参照配列として作用し、試験配列が比較される。配列比較アルゴリズムを用いる場合、試験配列および参照配列はコンピューターに入力され、必要であれば、部分配列座標が指定され、配列アルゴリズムプログラムパラメーターが指定される。次いで、配列比較アルゴリズムは、指定されたプログラムパラメーターに基づいて、参照配列に対する試験配列についての配列同一性の割合を計算する。
【0095】
比較についての配列の最適整列は、例えば、SmithおよびWaterman、Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所相同性アルゴリズムにより、NeedlemanおよびWunsch、J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性整列アルゴリズムによって、PearsonおよびLipman、Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:244(1988)の類似の方法についての検索によって、これらのアルゴリズムのコンピュータ化の実行によって(Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575 Science Dr.Madison、WIにおけるGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)、または視診によって(一般的にはAusubelら(前出)を参照のこと)、実行され得る。
【0096】
有用なアルゴリズムの1つの例は、PILEUPである。PILEUPは、進行性の、ペアをなす整列を用いる関連する配列のグループから複数の配列整列を作成して、関係および配列同一性の割合を示す。それはまた使用されるクラスター形成関係を示す樹系図またはデンドグラム(dendogram)をプロットして、整列を作成する。PILEUPはFengおよびDoolittle、J.Mol.Evol.35:351−360(1987)の進行性整列法の単純化を使用する。使用される方法は、HigginsおよびSharp、CABIOS 5:151−153(1989)により記載される方法に同様である。プログラムは、300配列まで整列し得る(各々の最大長の5,000ヌクレオチドまたはアミノ酸)。複数の整列手段は、2つの最も類似する配列のペアをなす整列で始まり、2つの整列した配列のクラスターを生成する。次いで、このクラスターは、整列した配列の次の最も関連する配列またはクラスターに整列される。配列の2つのクラスターは、2つの個々の配列のペアをなす整列の単純な延長により整列される。最後の配列は、一連の進行性のペアをなす整列により達成される。プログラムは特定の配列、および配列比較の領域についてのそのアミノ酸配列またはヌクレオチド座標を指定することにより、そしてプログラムパラメーターを指定することにより実行される。例えば、参照配列は他の試験配列と比較されて以下のパラメーターを使用して配列同一性関連の割合を決定し得る:デフォルトギャップ重量(3.00)、デフォルトギャップ長重量(0.10)、および加重末端ギャップ。
【0097】
配列同一性の割合および配列類似性の割合を決定するために適切なアルゴリズムの別の例は、BLASTアルゴリズムであり、これはAltschulら、J.Mol.Biol.215:403−410(1990)に記載される。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、Biotechnology InformationについてのNational Centerを通して公然に入手可能である(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)。このアルゴリズムは、まず照会配列における長さWの短縮ワードを同定することによって、高スコアリング配列ペア(HSP)を同定することを包含し、これは、データベース配列における同じ長さのワードで整列される場合、いくつかの正の閥値スコアTと一致するかまたは満たすかのいずれかである。Tは隣接ワードスコア閥値として表される(Altschlら、前出)。これらの初期隣接ワードヒットは、開始検索についての発端(seed)として作用し、それらを含むより長いHSPを見つける。次いで、ワードヒットは、累積整列スコアが増加され得る限りの間、各配列に沿った両方の方向に拡張される。累積スコアはヌクレオチド配列について、パラメーターM(一致残基のペアについての報酬スコア;常に>0)およびN(不一致残基についてのペナルティースコア;常に<0)を用いて計算される。アミノ酸配列について、スコアリングマトリクスを使用して累積スコアを計算する。各方向におけるワードヒットの拡張は、以下の場合停止される:累積整列スコアが達成されたその最大値からの量Xによって降下する場合;累積スコアが、1つ以上の負のスコアリング残基整列の増幅のために、ゼロまたはそれ未満になる場合;あるいはいずれかの配列の末端が達成される場合。BLASTアルゴリズムパラメーターW、T、およびXは整列の感度および速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列について)は、11のワード長(W)、10の期待値(E)、M=5、N=−4、および両方の鎖の比較をデフォルトとして、使用する。アミノ酸配列について、BLASTPプログラムは3のワード長(W)、10の期待値(E)、およびBLOSUM62スコアリングマトリクス(HenikoffおよびHenikoff、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915(1989)を参照のこと)をデフォルトとして、使用する。
【0098】
計算する配列同一性の割合に加えて、BLASTアルゴリズムはまた2つの配列間の類似性の統計学的な分析を実施する(例えば、KarlinおよびAltschul、Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 90:5873−5787(1993))。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの測定は、最小合計確率(P(N))であり、これは2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の一致が偶然生じる確率の指標を提供する。例えば、核酸は、試験核酸の参照核酸に対する比較における最小合計確率が約0.1より小さい、より好ましくは約0.01より小さい、そして最も好ましくは約0.001より小さい場合、参照配列と同様であると考慮される。
【0099】
以下に記載されるように、2つの核酸配列またはポリペプチドが実質的に同一であるさらなる指標は、第1核酸によりコードされるポリペプチドが第2の核酸によりコードされるペプチドとの免疫学的交叉反応であることである。従って、ポリペプチドは代表的には、第2ポリペプチド(例えば、ここで2つのペプチドは保存的置換基によってのみ異なる)と実質的に同一である。本明細書中に記載されるように、2つの核酸配列が実質的に同一である別の指標は、2つの分子がストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズすることである。
【0100】
「リガンド」は標的分子と特異的に結合する化合物である。
【0101】
「レセプター」はリガンドと特異的に結合する化合物である。
【0102】
「抗体」は免疫グロブリン遺伝子もしくは免疫グロブリン遺伝子類、またはそれらのフラグメントによって実施的にコードされるポリペプチドリガンドを表し、これらはエピトープ(例えば、抗原)を特異的に結合し、そして認識する。認識された免疫グロブリン遺伝子はκおよびλ軽鎖定常領域遺伝子、α、γ、δ、εおよびμ重鎖定常領域遺伝子および無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。抗体は、例えばインタクトな免疫グロブリンとしてまたは種々のペプチドでの消化により産生された多数の良く特徴付けされたフラグメントとして存在する。これは、例えば、Fab’およびF(ab)’フラグメントを含む。本明細書中に使用されるように、用語「抗体」はまた、全抗体の改変または組換えDNA方法論を使用する新規に合成されるもののいずれかによって産生される抗体フラグメントを含む。それはまた、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体およびヒト化抗体を含む。抗体の「Fc」部分は、免疫グロブリン重鎖の部分を表し、これは1つ以上の重鎖定常領域ドメイン、CH、CHおよびCHを含むが、重鎖可変領域を含まない。
【0103】
リガンドまたはレセプター(例えば、抗体)は、リガンドまたはレセプターが異種の化合物のサンプルにおける分析物の存在の決定因子である結合反応において機能する場合、化合物分析物と「特異的に結合する」または「特異的に免疫活性である」。従って、設計されたアッセイ(例えば、イムノアッセイ)条件下、リガンドまたはレセプターは、特定の分析物と優先的に結合し、そしてサンプルに存在する他の化合物に十分な量で結合しない。例えば、ポリヌクレオチドはハイブリダイゼーション条件下で、相補的配列を含む分析物ポリヌクレオチドに対して特異的に結合する;抗体はイムノアッセイ下で、抗体が惹起されるエピトープを保有する抗原分析物に対して特異的に結合する;そして吸着剤は適切な溶出条件下で分析物と特異的に結合する。
【0104】
「イムノアッセイ」はサンプルにおける分析物を検出する方法を表し、サンプルと分析物と特異的に結合する抗体との接触する工程、および抗体と分析物との間の結合を検出する工程を含む。種々のイムノアッセイフォーマットを使用して、特定のタンパク質との抗体特異的免疫反応を選択し得る。例えば、固相ELISAイムノアッセイを慣用的に使用して、タンパク質とのモノクローナル抗体特異的免疫活性を選択する。HarlowおよびLane(1988)Antibodies、A Laboratory Manual、Cold Sprng Harbor Publications、New Yorkを参照のこと。イムノアッセイフォーマットおよび条件の記載について、これを使用して特異的免疫反応性を決定し得る。
【0105】
「ワクチン」は、非常に低レベルの罹患率または死亡率のみを生じる間、生物における治療的程度の免疫性を与えるのに有効な薬剤または薬剤を含む組成物を表す。もちろん、ワクチンを製造する方法は、免疫系研究ならびに動物またはヒトの疾患の予防および処置に有用である。
【0106】
「免疫原性量」は被験体における免疫応答を誘発するのに有効な量である。
【0107】
対象の種を意味する「実質的に純粋」または「単離された」は、優勢な種の存在(すなわち、モル濃度を基に、組成物における任意の他の個々の高分子種より大量)であり、そして実質的に精製された画分は組成物であり、ここで対象種は全ての高分子種の存在の少なくとも約50%(モル濃度を基に)含む。一般的に、実質的に純粋な組成物は、組成物における約80%から90%以上の高分子種の存在が目的の精製種であることを意味する。対象種は、組成物が本質的に単一の高分子種からなる場合、本質的に均一(汚染種は従来の検出方法により組成物中に検出され得ない)に精製される。溶媒種、小分子(<500ダルトン)、安定化剤(例えば、BSA)、および元素イオン種は本定義の目的のための高分子種とみなされない。
【0108】
対象に適用されるような「天然に存在する」は、実験室の人間により故意に改変されていない対象が天然に見出され得る事実を表す。例えば、天然の供給源から単離され得、生物(ウイルスを含む)に存在する、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列は、天然に存在する。
【0109】
「検出する」は、サンプル中の分析物の存在、非存在、または量を検出することを表し、そしてサンプル中の分析物の量またはサンプル中の細胞当たりの量を定量することを含み得る。
【0110】
「検出可能部分」または「標識」は分光学的、光化学的、生物化学的、免疫化学的、または化学手段により検出可能な組成物を表す。例えば、有用な標識は、32P、35S、蛍光色素、高電子密度試薬、酵素(例えば、ELISAにおいて一般的に使用される場合)、ビオチン−ストレプトアビジン、ジオキシゲニン、ハプテン、および抗血清またはモノクローナル抗体が入手可能なタンパク質、または標的に相補的な配列を有する核酸分子を含む。検出可能部分は、しばしば、測定可能シグナル、例えば、放射活性、色素原性、または蛍光シグナルを生成し、これらを使用して、サンプル中の結合検出可能部分の量を定量し得る。検出可能部分は共有、またはイオン、ファンデルワールスもしくは水素結合を介してのいずれかでプライマーまたはプローブに取り込まれるかまたは結合し得る(例えば、放射活性ヌクレオチド、またはストレプトアビジンにより認識されるビオチン化ヌクレオチドの取り込み)。検出可能部分は直接または間接的に検出可能であり得る。間接検出は、第2の直接または間接検出可能部分の検出可能部分に対する結合を包含し得る。例えば、検出可能部分は結合パートナーのリガンド(例えば、ビオチン(これはストレプトアビジンについての結合パートナーである)、またはヌクレオチド配列(これは相補的配列についての結合パートナーであり、特異的にハイブリダイズし得る))であり得る。結合パートナーはそれ自身直接検出可能であり得、例えば、抗体はそれ自身蛍光分子で標識され得る。結合パートナーはまた、間接的に検出可能であり得、例えば、相補的ヌクレオチド配列を有する核酸は、分岐したDNA分子の部分であり得、これは次いで他の標識された核酸分子とハイブリダイゼーションを介して検出可能である。(例えば、PD.FahrlanderおよびA.Klausner、Bio/Technology(1988)6:1165を参照のこと。)シグナルの定量は例えばシンチレーション計数、デンシトメトリー、またはフローサイトメトリーによって達成される。
【0111】
「リンカー」は2つの他の分子、共有、またはイオン、ファンデルワールスもしくは水素結合を介してのいずれかで結合する分子を表し、例えば、5‘末端で1つの相補的配列および3’末端で別の相補的配列にハイブリダイズし、従って2つの非相補的配列を結合する核酸分子である。
【0112】
「薬学的組成物」は哺乳動物において薬学的使用のために適切な組成物を表す。薬学的組成物は、薬理学的有効量の活性試薬および薬学的に受容可能なキャリアを含む。「薬理学的有効量」は意図される薬理学的結果を生成するのに有効な試薬の量を表す。「薬学的受容可能なキャリア」は、任意の標準薬学的なキャリア、緩衝液、および賦形剤(例えば、リン酸緩衝化生理食塩水、5%デキストロース水溶液、および乳濁液(例えば、油/水または水/油乳濁液)、および種々の型の湿潤剤および/またはアジュバント)を表す。適切な薬学的キャリアおよび処方物はRemington‘s Pharmaceutical Sciences、第19版(Mack Publishing Co.、Easton、1995)に記載される。好ましい薬学的キャリアは活性試薬の投与の意図された様式に依存する。代表的な投与の様式は、腸内(例えば、経口)または非経口(例えば、皮下、筋肉内、静脈内または腹腔内注射;または局所、経皮、または経粘膜投与)を含む。「薬学的に受容可能な塩」は、例えば、金属塩(ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなど)およびアンモニアまたは有機アミンの塩を含む、薬学的使用のための化合物中に処方され得る塩である。
【0113】
「小有機分子」は、一般的に薬学的に使用されるこれらの有機分子に適合性のサイズの有機分子を表す。この用語は有機生体高分子(例えば、タンパク質、核酸など)を含む。好ましい小有機分子は、約5000Daまで、約2000Daまで、または約1000Daまでのサイズの範囲である。
【0114】
診断または処置の「被験体」は、ヒトまたは非ヒト動物(哺乳動物または霊長類を含む)である。
【0115】
「処置」は予防処置または治療的処置を表す。
【0116】
「予防」処置は、初期兆候のみを示す疾患の兆候を示さないかまたは被験体に対する発達した病理学のリスクを減少するための投与処置である。
【0117】
「治療的」処置は、これらの兆候を減少するかまたはなくすための病理学の兆候を示す被験体に対する投与処置である。
【0118】
「診断的」は、病理学の状態の存在または性質の同定を意味する。診断的方法は、それらの特異性および選択性において異なる。特定の診断方法は状態の最終的な診断を提供し得ないが、方法が診断の助けになるポジティブ指標を提供する場合、十分である。
【0119】
「予後の」は病理学の状態の起こりそうな発達(例えば、重症度)の予想を意味する。
【0120】
「複数」は少なくとも2つを意味する。
【0121】
「Pseudomonas体外毒素A」または「PE」は、3つの突起した球状ドメイン(Ia、II、およびIII)およびドメインIIおよびIIIを連結する1つの小さいサブドメイン(Ib)から構成される67kDタンパク質としてPs aeruginosaにより分泌される。(A.S.Alluredら(1986)Proc.Natl.Acad.Sci.83:1320−1324。)PEのドメインIaは細胞結合を媒介する。事実上、ドメインIaは低密度リポタンパク質レセプター関連タンパク質(「LRP」)(α2−マクログロブリンレセプター(「α2−MR」)としても公知である)と結合する。(M.Z.Kounnasら(1992)J.Biol.Chem.267:12420−23。)それはアミノ酸1−252におよぶ。ドメインIIはサイトゾルへのトランスロケーションを媒介する。それはアミノ酸253−364におよぶ。ドメインIbは機能が公知ではない。それはアミノ酸365−399におよぶ。ドメインIIIは細胞毒性を担い、そして小胞体保持配列を含む。それは伸長因子2のADPリボシル化を媒介し、これはタンパク質合成を不活性化する。それはアミノ酸400−613におよぶ。PEは、それがEF2 ADP リボシル化活性を欠く場合、「無毒性」である。ドメインIII由来のアミノ酸E553の欠失(「ΔE553」)は分子を解毒する。変異ΔE553を有するPEは本明細書中で「PEΔE553」として称される。PEの遺伝子的に改変された形態は、例えば、Pastanら、米国特許第5,602,095号;Pastanら、米国特許第5,512,658号およびPastanら、米国特許第5,458,878号に記載される。PEの対立遺伝子形態は、本定義に含まれる。例えば、M.L.Vasilら、(1986)Infect.Immunol.52:538−48参照のこと。「システイン−システインループ」はポリペプチドにおけるペプチド部分を表し、これは2つのジスルフィド−結合したシステイン残基により隣接する(bordered)アミノ酸配列により定義される。
【0122】
「非ネイティブエピトープ」は、Pseudomonas体外毒素AのIbドメイン中に天然に生じないアミノ酸配列によってコードされるエピトープを表す。
【0123】
(II.Pseudomonas体外毒素A様キメラ免疫原)
(A.基本構造)
本発明のPseudomonas体外毒素A様(「PE様」)キメラ免疫原は、本明細書中で提供されるようなものを除いては、PEの4つの構造ドメイン(すなわち、Ia、II、Ib、およびIII)と同一の配列で組織化された構造ドメインを有し、そしてPEの機能的ドメインによってまた保有される特定の機能(例えば、細胞認識、サイトゾルトランスロケーション、および小胞体保持)を有する、ポリペプチドである。さらに、本発明のPE様キメラ免疫原は、これまで機能が同定されていなかったPEのドメインを機能化するドメインを保有する。すなわち、PE様キメラ免疫原は、PEのIbドメインを、非ネイティブエピトープに対する免疫応答を誘発する免疫原として働く、機能的な非ネイティブエピトープドメインに置き換える。
【0124】
従って、PE様キメラ免疫原は、アミノ酸配列から構成される次の構造ドメイン(そのキメラタンパク質に特定の機能を与える)を含む:(1)細胞表面レセプターのリガンドとして機能し、そして細胞へのタンパク質の結合を媒介する「細胞認識ドメイン」;(2)エンドソームからサイトゾルへのトランスロケーションを媒介する「トランスロケーションドメイン」;(3)免疫原性非ネイティブエピトープを含む「非ネイティブエピトープドメイン」;および、必要に応じて、(4)エンドソームから、小胞体(ここから分子はサイトゾルに入る)に分子をトランスロケーションするように機能する、「小胞体(「ER」)保持ドメイン」。ER保持ドメインが除去された場合、キメラ免疫原はなお免疫原性機能を保持し得る。
【0125】
1つの実施態様において、PE様キメラ免疫原は、非ネイティブエピトープのアミノ酸配列を含むように操作されているIbドメインを除いて、PEのネイティブ配列を含む。例えば、Ibドメインのシステイン−システインループに、非ネイティブエピトープをコードするアミノ酸配列を挿入し得る。しかし、PE構造とその機能との関係は、広範に研究された。PEのアミノ酸配列は、新しい機能を提供するために繰り返し操作され、そして多くの、PE機能に決定的なアミノ酸またはペプチドセグメントおよび決定的でないアミノ酸またはペプチドセグメントが同定された。本発明のPE様キメラ免疫原は、PEに対するこれらの構造的な改変を組み込み得る。
【0126】
(B.細胞認識ドメイン)
本発明のPseudomonas体外毒素キメラは、「細胞認識ドメイン」をコードするアミノ酸配列を含む。細胞認識ドメインは、細胞表面レセプターのリガンドとして機能する。それはタンパク質の細胞への結合を媒介する。その目的は、キメラを、プロセッシングのためにサイトゾルにタンパク質を輸送する細胞に標的化することである。細胞認識ドメインは、PEのドメインIaの位置に配置され得る。しかし、このドメインは、正常の組織的な配列の外に移動され得る。より詳細には、細胞認識ドメインはER保持ドメインの上流に挿入され得る。あるいは、細胞認識ドメインは化学的に毒素に結合され得る。また、キメラはIaドメインの位置に第1の細胞認識ドメインを含み得、そしてER保持ドメインの上流に第2の細胞認識ドメインを含み得る。このような構築物は1つより多い細胞型に結合し得る。例えば、R.J.Kreitmanら、(1992)Bioconjugate Chem.3:63−68を参照のこと。
【0127】
細胞認識ドメインは、キメラを細胞に付着させるためのハンドル(取っ手)として機能するので、特定のレセプターに結合することが知られる任意のポリペプチドの構造を有し得る。従って、そのドメインは一般的に既知のポリペプチドリガンドのサイズを有し、例えば約10アミノ酸と約1500アミノ酸との間、または約100アミノ酸と約300アミノ酸との間である。
【0128】
キメラ免疫原における使用のための機能的な細胞認識ドメインを同定するために、いくつかの方法が有用である。1つの方法は、細胞認識ドメインを含むキメラとレセプターまたはレセプターを有する細胞との間の結合の検出を含む。他の方法は、キメラがサイトゾルに入ることを検出することを含み、このことは第1の段階である細胞結合が成功したことを示す。これらの方法は、以下の試験に関するセクションの中で詳細に記載される。
【0129】
細胞認識ドメインは、細胞表面レセプターに結合する任意のポリペプチドの構造を有し得る。1つの実施態様において、アミノ酸配列はPEのドメインIaのアミノ酸配列であり、それによってキメラタンパク質をα2−MRドメインに標的化する。他の実施態様において、ドメインIaは以下で置き換えられ得る:TGFαのような増殖因子、これは上皮増殖因子(「EGF」)に結合する;IL−2、これはIL−2レセプターに結合する;IL−6、これはIL−6レセプターに結合する(例えば、活性化されたB細胞、および肝細胞);CD4、これはHIV感染細胞に結合する;ケモカイン(例えば、Rantes、MIP−1αまたはMIP−1β)、これは、ケモカインレセプターに結合する(例えば、CCR5またはfusin(CXCR4));白血球細胞表面レセプターのリガンド、例えば、GM−CSF、G−CSF;IgAレセプターのリガンド;または任意のレセプターを指向する抗体または抗体フラグメント(例えば、ヒトトランスフェリンレセプターに対する単鎖抗体)。I.Pastanら、(1992)Annu.Rev.Biochem.61:331−54。
【0130】
1つの実施態様において、細胞認識ドメインがPEのドメインIaの代わりに配置される。それはリンカーを通じて分子の他の部分に付着し得る。しかし、操作研究は、ポリペプチドのカルボキシ末端に位置するER保持配列の上流に細胞認識ドメインを導入することにより、Pseudomonas体外毒素が特定の細胞型に標的化され得ることを示す。例えば、TGFαは、アミノ酸604の直前、すなわちカルボキシ末端から約10アミノ酸のドメインIIIに挿入された。このキメラタンパク質はEGFレセプターを有する細胞に結合する。Pastanら、米国特許第5,602,095号。
【0131】
タンパク質である細胞特異的リガンドは、しばしば部分的または全体的に本発明のPseudomonas体外毒素キメラとの融合タンパク質として形成され得る。「融合タンパク質」とは、一方のポリペプチドのアミノ末端および他方のポリペプチドのカルボキシ末端によって形成されたペプチド結合による、2つ以上のポリペプチドの結合によって形成されたポリペプチドをいう。融合タンパク質は、成分ポリペプチドの化学的カップリングによって形成され得るが、代表的には単一の連続する融合タンパク質をコードする核酸配列から単一のポリペプチドとして発現される。このような融合タンパク質には、単鎖Fvフラグメント(scFv)が含まれる。特に好ましい標的化されたPseudomonas体外毒素キメラは、本明細書中で例示されるような融合タンパク質として部分的に形成され得る、ジスルフィド安定化タンパク質である。他のタンパク質細胞特異的リガンドは、当業者に周知のクローニング方法論を用いて融合タンパク質として形成され得る。
【0132】
細胞特異的リガンドの付着もまた、リンカーの使用を通して達成され得る。リンカーは、両方の分子への共有結合または高アフィニティーの非共有性の結合を形成し得る。適切なリンカーは当業者に周知であり、直鎖状または分岐鎖の炭素リンカー、複素環式炭素リンカー、またはペプチドリンカーを含むがこれらに限定されない。リンカーは、アミノ酸の側鎖(例えば、システインへのジスルフィド結合)を通して成分アミノ酸に連結され得る。
【0133】
1つの実施態様において、ドメインIaは、標的細胞に特異的な免疫グロブリンからの免疫グロブリン重鎖のポリペプチド配列で置き換えられる。免疫グロブリンの軽鎖は、軽鎖−重鎖ダイマーを形成するように、PE様キメラ免疫原とともに同時発現され得る。結合体タンパク質においては、抗体は、キメラ免疫原の他のドメインを含むポリペプチドに化学的に連結される。
【0134】
Pseudomonas体外毒素キメラを抗体または他の細胞特異的リガンドに付着する手順は、毒素の化学構造に従って変化する。抗体は、種々の官能基を含む:例えば、スルフヒドリル基(−S)、カルボン酸(COOH)、または遊離のアミン基(−NH)、これらは毒素上の適切な官能基との反応に利用可能である。さらに、またはあるいは、抗体またはPseudomonas体外毒素キメラは、さらなる反応性の官能基に暴露されるか、または付着されるために誘導体化され得る。誘導体化は、Pierce Chemical Company、Rockford Illinoisから入手可能なもののような任意の多数のリンカー分子の付着を含み得る。
【0135】
Pseudomonas体外毒素キメラ上の基と反応性である1つの官能基、および細胞特異性リガンドと反応性の別の基を有する二官能性リンカーは、所望の結合体を形成するために使用され得る。あるいは、誘導体化は、Pseudomonas体外毒素キメラまたは細胞特異的リガンドの化学処理を含み得る(例えば、遊離のアルデヒド基を生じるように過ヨウ素酸塩を用いる、糖タンパク質抗体の糖部分のグリコール切断)。抗体上の遊離のアルデヒド基は、抗体上の遊離のアミンまたはヒドラジン基と反応して、そこにPseudomonas体外毒素キメラが結合し得る(J.D.Rodwellら、米国特許第4,671,958号を参照のこと)。抗体または他のタンパク質上に遊離のスルフヒドリル基を生成する方法はまた、公知である(R.A.Nicolettiら、米国特許第4,659,839号を参照のこと)。
【0136】
(C.トランスロケーションドメイン)
PE様キメラ免疫原はまた、「PEトランスロケーションドメイン」をコードするアミノ酸配列を含む。PEトランスロケーションドメインは、細胞によってサイトゾルにエンドサイトーシスされたキメラタンパク質のトランスロケーションをもたらすに十分なアミノ酸配列を含む。アミノ酸配列は、PEのドメインIIから選択された配列に同一であるか、または実質的に同一である。
【0137】
トランスロケーションをもたらすに十分なアミノ酸配列は、ネイティブなPEのトランスロケーションドメインから誘導され得る。このドメインは、アミノ酸253〜364にわたる。トランスロケーションドメインはドメインIIの完全配列を含み得る。しかし、完全配列はトランスロケーションに必要ではない。例えば、アミノ酸配列は、最小限、例えば、PEのドメインIIのアミノ酸280〜344を含み得る。この領域の外側の配列、すなわちアミノ酸253〜279および/または345〜364は、ドメインから除去され得る。このドメインはまた、トランスロケーション活性が保持される限り、置換により操作され得る。
【0138】
トランスロケーションドメインは以下のように機能する。細胞表面のレセプターに結合後、キメラタンパク質はクラスリンコートされたくぼみを通してエンドサイトーシスによって細胞に入る。残基265および287はジスルフィドループを形成するシステインである。いったん酸性環境を有するエンドソーム中に取り込まれると、ペプチドはプロテアーゼフリン(furin)によってArg279とGly280との間で切断される。次いで、ジスルフィド結合が還元される。Arg279における変異は、タンパク質分解的な切断および続いて起こるサイトゾルへのトランスロケーションを阻害する。M.Ogataら、(1990)J.Biol.Chem.265:20678−85。しかし、Arg279の下流の配列を含むPEのフラグメント(「PE37」と呼ばれる)は、サイトゾルにトランスロケーションする実質的な能力を保持する。C.B.Siegallら、(1989)J.Biol.Chem.264:14256−61。ドメインIIにおけるアミノ酸345を超える配列もまた、トランスロケーションを阻害することなく欠失され得る。さらに、339位および343位のアミノ酸は、トランスロケーションに必須のようである。C.B.Siegallら、(1991)Biochemistry 30:7154−59。
【0139】
トランスロケーションドメインの機能性を決定する方法は、以下の試験に関するセクションの中で記載される。
【0140】
(D.非ネイティブエピトープドメイン)
PE様キメラ免疫原はまた、「非ネイティブエピトープドメイン」をコードするアミノ酸配列を含む。非ネイティブエピトープドメインは、非ネイティブエピトープのアミノ酸配列を含む。このドメインは、免疫系に対する提示のための免疫原非ネイティブエピトープを含むように機能する。非ネイティブエピトープドメインは、トランスロケーションドメイン(例えば、ドメインII)とER保持ドメイン(例えば、ドメインIII)との間のPEのIbドメイン位置に操作される。トランスロケーションドメインの免疫原性を決定するための方法は、以下の試験に関するセクションの中で記載される。
【0141】
非ネイティブエピトープは、免疫原性である任意のアミノ酸配列であり得る。非ネイティブエピトープドメインは、約5アミノ酸と約1500アミノ酸との間を有し得る。これは約15アミノ酸と_約350アミノ酸との間、または約15アミノ酸と約50アミノ酸との間を有するドメインを含む。
【0142】
ネイティブなPseudomonas体外毒素Aにおいて、ドメインIbはアミノ酸365〜399にわたる。ネイティブなIbドメインは、372位と379位の2つのシステインの間のジスルフィド結合によって構造的に特徴付けられる。ドメインIbは、細胞結合、トランスロケーション、ER保持、またはADPリボシル化活性に必須ではない。それゆえ、それは完全に再操作され得る。
【0143】
非ネイティブエピトープドメインは、直鎖状であり得るか、または非ネイティブエピトープを含むシステイン−システインループを含み得る。1つの実施態様において、非ネイティブエピトープドメインは、非ネイティブエピトープを含むシステイン−システインループを含む。この配置は、いくつかの利点を提供する。第1に、非ネイティブエピトープが天然にシステイン−システインジスルフィド結合したループ内部に存在するか、またはシステイン−システインジスルフィド結合したループを含む場合に、非ネイティブエピトープドメインはネイティブに近いコンフォメーションにあるエピトープを示す。第2に、ネイティブIbドメイン中の荷電アミノ酸残基は、分子からそして溶媒(ここでアミノ酸残基は免疫系の成分と相互作用するために利用可能である)へと突出した親水性構造を生じると考えられている。それゆえ、非ネイティブエピトープもまた親水性である場合、非ネイティブエピトープをシステイン−システインループ内に配置することは、より効果的な提示を生じる。第3に、Ibドメインは変異に対して高度に非感受性である。それゆえ、ネイティブIbドメインのシステイン−システインループはシステイン残基間に6アミノ酸のみを有するが、細胞結合、トランスロケーション、ER保持、またはADPリボシル化活性を破壊することなく、ループ中により長い配列を挿入し得る。
【0144】
本発明は、非ネイティブエピトープドメインをIbドメイン配置に操作するいくつかの方法を意図する。1つの方法は、非ネイティブエピトープのアミノ酸配列を、ネイティブアミノ酸配列の欠失を伴うか、または伴わないで、直接的にIbドメインのアミノ酸配列に挿入する工程を含む。別の方法は、Ibドメインのすべてまたは一部を除去する工程、および、タンパク質が発現される場合にシステインがジスルフィド結合に従事するように、2つのシステイン残基間の非ネイティブエピトープを含むアミノ酸配列でそれを置き換える工程を含む。例えば、ポリペプチドのシステイン−システインループ構造内に非ネイティブエピトープが通常存在する場合、ループおよび非ネイティブエピトープを含むポリペプチドの部分は、システイン−システインループドメインの代わりに挿入され得る。
【0145】
非ネイティブエピトープの選択は、当業者の裁量にある。選択する際に、当業者は以下を考慮し得る。非ネイティブエピトープドメインは直鎖状であり得るが、システイン−システインループ内に天然に存在する非ネイティブエピトープは、Pseudomonas体外毒素AのIbループの天然構造をうまく利用する。不活性な感染またはガン特異的抗原の原因である因子からのエピトープは魅力的である。なぜなら、これらの抗原は、免疫系からの攻撃に抵抗する傾向があるからである。また、組換え技術は、エピトープをコードするポリヌクレオチドを、キメラタンパク質をコードするベクターに迅速に挿入することを可能にする。それゆえ、非ネイティブエピトープの変化に応じて配列を迅速に変化させ得る。従って、急速に進化する感染因子からのエピトープは、魅力的な挿入物を作る。
【0146】
従って、例えば、エピトープは任意の病原体、例えば、ウイルス、細菌、および原虫寄生生物から選択され得る。エピトープのウイルスの供給源は、例えば、HIV、帯状疱疹、インフルエンザ、ポリオ、および肝炎を含む。細菌の供給源は、例えば、結核、クラミジア、またはサルモネラを含む。寄生性原虫の供給源には、例えば、TrypanosomaまたはPlasmodiumを含む。特に、因子は体内への侵入を上皮粘膜を通過して得るものであり得る。有用なガン特異的な抗原は、細胞表面で発現されるものを含み、そしてそれゆえ、細胞傷害性のT−リンパ球応答(例えば、前立腺ガン特異的マーカー(例えば、PSA)、乳ガン特異的マーカー(例えば、BRCA−1またはHER2)、膵臓ガン特異的マーカー(例えば、CA9−19)、メラノーママーカー(例えば、チロシナーゼ)またはEGFのガン特異的な変異形態)の標的であり得る。
【0147】
1つの実施態様において、非ネイティブエピトープは、レトロウイルス(例えば、HIV−1またはHIV−2)の主要な中和ループから誘導される。特に、エピトープはHIV−1からのgp120タンパク質のV3ループから誘導され得る。中和ループは、中和抗体、すなわち、ウイルスの感染性を中和する抗体によって同定され得る。配列は、任意の株、特に循環する株由来であり得る。このような株は、例えば、MN(例えば、サブタイプB)またはThai−E(例えば、サブタイプE)を含む。 HIV−1の種々の株のV3ループは、約35アミノ酸を有する。HIVの株は、T細胞向性またはマクロファージ向性であり得る。1つの実施態様において、V3ループからの配列は、V3ループの頂尖を含む少なくとも8アミノ酸(例えば、MHCクラスII結合ポケットに適合するに十分な長さのペプチド)を含む。HIVのMN株のV3ループは配列:CTRPNYNKRK RIHIGPGRAF YTTKNIIGTI RQAHC(配列番号3)を有する。HIVのThai−E株のV3ループは、配列:CTRPSNNTRT SITIGPGQVF YRTGDIIGDI RKAYC(配列番号4)を有する。V3ループの頂尖に下線を付す。配列は約14から約26アミノ酸長である。ワクチンは異なるウイルスエピトープを有する複数の免疫原を含み得る。
【0148】
別の実施態様において、非ネイティブエピトープは、疾患の間に細胞によって発現されるエピトープであり得る。例えば、非ネイティブエピトープは、ガン細胞マーカーであり得る。例えば、特定の乳ガンは、スプライシング改変体から生じる変異体EGF(「上皮増殖因子」)レセプターを発現する。この変異体形態は独特なエピトープを示す。
【0149】
(E.ER保持ドメイン)
PE様キメラ免疫原はまた、「小胞体保持ドメイン」をコードするアミノ酸配列を含み得る。小胞体(「ER」)保持ドメインは、エンドソームから、小胞体(ここからサイトゾルへ輸送される)へのキメラタンパク質のトランスロケーションにおいて機能する。ER保持ドメインは、PEのドメインIIIの位置に配置される。ER保持ドメインは、そのカルボキシ末端にER保持配列を有するアミノ酸配列を含む。ネイティブPEにおけるER保持配列は、REDLK(配列番号11)である。リジンは活性を減少させることなく除去され得る(すなわち、REDL(配列番号12))。REDLK(配列番号1からの)は、KDEL(配列番号12)またはこれらの配列のポリマーのような他のER保持配列で置き換えられ得る。M.Ogataら、(1990)J.Biol.Chem.265:20675−85。Pastanら、米国特許第5,458,878号。I.Pastanら、(1992)Annu.Rev.Biochem.61:331−54。
【0150】
ER保持配列の上流の配列は、(好ましくは無毒化された)ネイティブPEドメインIIIであり得るか、完全に除去され得るか、または別のアミノ酸配列によって置き換えられ得る。別のアミノ酸配列によって置き換えられた場合、配列は、それ自体、高度に免疫原性であり得るか、またはわずかに免疫原性であり得る。高度に免疫原性のER保持ドメインは、体液性免疫応答を誘発することにおける使用に好ましい。ER保持ドメインがわずかに免疫原性であるのみであるキメラは、MHCクラスI依存性細胞媒介性免疫応答が所望である場合に、より有用である。
【0151】
このドメインの活性は、以下に記載するアッセイを用いて、タンパク質の標的細胞サイトゾルへのトランスロケーションを試験することによって評価され得る。
【0152】
ネイティブなPEにおいて、ER保持配列はドメインIIIのカルボキシ末端に配置される。ドメインIIIはPEにおいて2つの機能を有する。ドメインIIIはADPリボシル化活性を示し、そしてエンドサイトーシスされた毒素を小胞体へ方向付ける。キメラタンパク質からER保持配列を除去することは、スーパー抗原としてのPseudonomas体外毒素の活性を変化させないが、MHCクラスI依存性細胞媒介性応答を誘発するための有用性を示す。
【0153】
PEのリボシル化活性は、PEのアミノ酸約400と600との間に位置する。本発明のキメラタンパク質を用いて被験体にワクチン接種する方法において、タンパク質が無毒性であることが好ましい。そうすることの1つの方法は、ADPリボシル化活性を除去することによる。この方法において、キメラタンパク質は、毒素としてよりも、細胞によってプロセシングされ、そしてMHCクラスI分子を有する細胞表面上で提示される非ネイティブエピトープ配列のためのベクターとして機能し得る。ADPリボシル化活性は、例えば、アミノ酸E553を欠失させること(「ΔE553」)によって除去され得る。M.Lukacら、(1988)Infect.and Immun.56:3095−3098。あるいは、ドメインIIIのアミノ酸配列またはその部分が、タンパク質から欠失され得る。当然ながら、ER保持配列はカルボキシ末端に含まれるべきである。
【0154】
1つの実施態様において、ER保持ドメインの配列は、ドメインIIIのネイティブなアミノ酸配列、またはそのフラグメントに実質的に同一である。1つの実施態様において、ER保持ドメインは、PEのドメインIIIである。
【0155】
別の実施態様において、細胞認識ドメインは、ER保持ドメインのアミノ酸配列に(例えば、ドメインIIIに)挿入される。例えば、細胞認識ドメインは、ER保持配列のすぐ上流に挿入され得、その結果ER保持配列は、直接的に連結されるかまたは細胞認識ドメインのカルボキシ末端の10アミノ酸以内にある。
【0156】
(F.PE様キメラ免疫原を作製する方法)
PE様キメラ免疫原は、以下に記載するように好ましくは組換え的に産生され得る。本発明はまた、当該分野に利用可能な方法を用いて、化学合成によるPEキメラタンパク質の産生を意図する。
【0157】
(G.PE様免疫原性キメラの試験)
キメラ免疫原のドメインとして種々の構造を選択すると、これらのドメインの機能、および全体としてのキメラの機能が、機能性を検出するために試験され得る。PE様免疫原性キメラは、慣用的なアッセイを用いて、細胞認識、サイトゾルトランスロケーションおよび免疫原性について試験され得る。完全なキメラタンパク質が試験され得るか、または、種々のドメインの機能が野生型毒素のネイティブドメインの代わりにそれらで置換することによって試験され得る。
【0158】
(1.レセプター結合/細胞認識)
細胞結合ドメインの機能は、単離されたか、または細胞表面にあるかのいずれかの標的レセプターに結合するキメラの機能として試験され得る。
【0159】
1つの方法において、標的へのキメラの結合は、アフィニティークロマトグラフィーによって行われる。例えば、キメラはアフィニティーカラム中のマトリックスに付着され得、そしてマトリックスへのレセプターの結合が検出される。
【0160】
細胞上のレセプターへのキメラの結合は、例えば、キメラを標識し、そして細胞へのその結合を、例えば、蛍光細胞ソーティング、オートラジオグラフィーなどによって検出することによって試験され得る。
【0161】
細胞認識ドメインが由来するリガンドに結合する抗体が同定された場合、抗体はまた、イムノアッセイによって、または同種のレセプターについての競合アッセイによって、キメラ免疫原中の細胞認識ドメインの存在を検出するに有用である。
【0162】
(2.サイトゾルへのトランスロケーション)
トランスロケーションドメインおよびER保持ドメインの機能は、サイトゾルへの接近を得るキメラの能力の機能として試験され得る。接近は第1に細胞への結合を必要とするので、これらのアッセイはまた、細胞認識ドメインが機能しているかどうかを決定することに有用である。
【0163】
(a.サイトゾルにおける存在)
1つの方法において、サイトゾルへの接近は、サイトゾル中のキメラの物理的な存在を検出することによって決定される。例えば、キメラは標識され得、そしてキメラは細胞に暴露される。次いで、サイトゾル画分は単離され、そして画分中の標識の量が決定される。画分中の標識を検出することは、キメラがサイトゾルへの接近を得たことを示す。
【0164】
(b.ADPリボシル化活性)
別の方法において、トランスロケーションドメインおよびER保持ドメインのサイトゾルへのトランスロケーションをもたらす能力は、ADPリボシル化活性を有するドメインIIIを含む構築物を用いて試験され得る。手短にいえば、細胞を組織培養プレートに播種し、そしてネイティブドメインの代わりに、改変されたトランスロケーションドメインもしくはER保持配列を含むキメラタンパク質または操作されたPE体外毒素に暴露する。ADPリボシル化活性は、例えば、H−ロイシンの取り込みをモニターすることによって、タンパク質合成の阻害の関数として決定される。
【0165】
(3.免疫原性)
非ネイティブエピトープの機能は、体液性または細胞媒介性免疫原性を決定することによって決定され得る。免疫原性は、いくつかの方法によって試験され得る。体液性免疫応答は、動物に接種すること、および外来性の免疫原に対する抗体の産生を検出することによって試験され得る。細胞媒介細胞傷害性免疫応答は、免疫原で動物を免疫すること、細胞傷害性T細胞を単離すること、およびそれらのMHCクラスI分子が非ネイティブエピトープからのアミノ酸配列を有する細胞を殺傷する能力を検出することによって試験され得る。細胞傷害性T細胞応答を生成することは、キメラの細胞への結合、およびサイトゾルへのトランスロケーションの両方を必要とするので、この試験はまた、細胞認識ドメイン、トランスロケーションドメイン、およびER保持ドメインの活性を試験する。
【0166】
(III.PE様キメラ免疫原をコードする組換えポリヌクレオチド)
(A.組換えポリヌクレオチド)
(1.供給源)
本発明は、本発明のPE様キメラ免疫原をコードするヌクレオチド配列を含む組換えポリヌクレオチドを提供する。これらのポリヌクレオチドは、PE様キメラ免疫原を作製するために有用である。別の局面において、本発明は、細胞認識ドメイン、トランスロケーションドメイン、ER保持ドメイン、およびトランスロケーションドメインとER保持ドメインとの間の、非ネイティブエピトープドメインをコードするポリヌクレオチド配列のためのクローニング部位をコードする組換えポリヌクレオチド配列を含む、PE様タンパク質クローニングプラットフォームを提供する。
【0167】
本発明の組換えポリヌクレオチドは、Pseudomonas体外毒素Aをコードするポリヌクレオチド、またはその部分に基づく。PEをコードするヌクレオチド配列は上記に示される。従事者はこの配列を使用して、全長配列を単離するためのPCRプライマーを調製し得る。PEの配列は改変され、PE様キメラ免疫原またはプラットフォームをコードするポリヌクレオチドを操作し得る。
【0168】
本発明のキメラタンパク質に使用されるPEをコードするポリヌクレオチドまたは任意の他のポリヌクレオチドは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、転写に基づく増幅系(TAS)、自己支持配列複製系(3SR)、およびQβレプリカーゼ増幅系(QB)のようなインビトロ方法によってクローニングされ得るか、または増幅され得る。例えば、タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、PEまたは細胞認識分子のDNA配列に基づくプライマーを使用してcDNAのポリメラーゼ連鎖反応によって単離され得る。
【0169】
広範な種々のクローニングおよびインビトロ増幅方法論は、当業者に周知である。PCR法は、例えば、米国特許第4,683,195号;Mullisら(1987)Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.51:263;およびErlich、編、PCR Technology、(Stockton Press,NY,1989)に記載される。ポリヌクレオチドはまた、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、所望のポリヌクレオチドの配列から選択されるプローブを用いてゲノムまたはcDNAライブラリーをスクリーニングすることによって単離され得る。
【0170】
(2.変異誘発させたバージョン)
タンパク質の変異体バージョンは、タンパク質をコードする他のポリヌクレオチドの部位特異的変異誘発によって、または0.1mM MnClおよび不均衡なヌクレオチド濃度を用いて、もともとのポリヌクレオチドのPCRの誤りの頻度を増加させることによって引き起こされたランダム変異誘発によって作製され得る。
【0171】
アミノ酸1〜252をコードするヌクレオチドを除去することは、「PE40」と呼ばれる構築物を産生する。アミノ酸1〜279をコードするヌクレオチドを除去することは、「PE37」と呼ばれる構築物を産生する(Pastanら、米国特許第5,602,095号を参照のこと)。従業者は、細胞認識ドメインをコードする配列をこれらのプラットフォームの5’末端に連結して、特定の細胞表面レセプターに指向されるPE様キメラタンパク質を操作し得る。これらの構築物は、必要に応じてアミノ末端メチオニンをコードし得る。細胞認識ドメインは、ER保持ドメインをコードするヌクレオチド配列中でこのような構築物に挿入され得る。
【0172】
(3.キメラタンパク質クローニングプラットフォーム)
非ネイティブエピトープドメインのクローニング部位は、ドメインIbのシステイン残基をコードするヌクレオチドの間に導入され得る。例えば、実施例で述べるように、システインコード残基の間のIbドメインの部分をコードするヌクレオチド配列は除去され得、そしてあるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列およびPstIクローニング部位を含むヌクレオチド配列で置き換えられ得る。非ネイティブエピトープをコードし、そしてPstI配列で隣接されるポリヌクレオチドは、ベクターに挿入され得る。
【0173】
構築物はまた、タンパク質のアミノ末端に分泌配列をコードするように操作され得る。このような構築物は、哺乳動物細胞中で免疫原を産生するために有用である。インビトロにおいて、このような構築物は免疫原の単離を単純化する。インビボにおいて、このような構築物はポリヌクレオチドワクチンとして有用である;この構築物を組み込まれる細胞は、タンパク質を発現し、そしてそれを分泌し、そこで免疫系と相互作用し得る。
【0174】
(B.発現ベクター)
本発明はまた、PE様キメラ免疫原を発現するための発現ベクターを提供する。発現ベクターは、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結された発現制御配列を含む組換えポリヌクレオチド分子である。発現ベクターは、転写およびmRNAの翻訳のために、適切なプロモーター、複製配列、マーカーなどの包含によって、原核生物または真核生物における機能に適合され得る。発現ベクターの構築およびトランスフェクトされた細胞における遺伝子の発現は、当該分野でも周知の分子クローニング技術の使用を含む。Sambrookら、Molecular Cloning−A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY,(1989)およびCurrent Protocols in Molecular Biology,F.M.Ausubelら、編、(Current Protocols,Greene Publishing Associates,Inc.とJohn Wiley&Sons,Inc.との間のジョイントベンチャー)。このような目的のための有用なプロモーターは、メタロチオネインプロモーター、構成的アデノウイルス主要後期プロモーター、デキサメタゾン誘導性MMTVプロモーター、SV40プロモーター、MRP polIIIプロモーター、構成的MPSVプロモーター、テトラサイクリン誘導性CMVプロモーター(例えば、ヒト最初期CMVプロモーター)、および構成的CMVプロモーターを含む。遺伝子治療に有用なプラスミドは、選択マーカー、同定領域、および他の遺伝子のような他の機能的なエレメントを含み得る。
【0175】
本発明において有用な発現ベクターは、それらの意図する使用に依存する。そのような発現ベクタ-は、当然ながら、宿主細胞と適合可能な発現および複製シグナルを含まなければならない。PE様キメラ免疫原を発現するに有用な発現ベクターには、レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルスのようなウイルスベクター、プラスミドベクター、コスミドなどが含まれる。ウイルスベクターおよびプラスミドベクターが、哺乳動物細胞のトランスフェクトのために好まれる。発現ベクターpcDNA1(Invitrogen,San Diego,CA)は、発現制御配列がCMVプロモーターを含み、良好なトランスフェクションおよび発現割合を提供する。アデノ随伴ウイルスベクターは、本発明の遺伝子治療法において有用である。
【0176】
細胞にポリヌクレオチドを送達するために種々の手段が利用可能であり、それらには、例えば、細胞による溶液からの直接的な分子の取り込み、リポフェクション(例えば、リポソームまたは免疫リポソーム)を介する取り込みの促進、粒子媒介トランスフェクション、および阻害ポリヌクレオチドをコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結された発現制御配列を有する発現カセットからの細胞内発現が含まれる。Inouyeら、米国特許第5,272,065号;Methods in Enzymology,185巻,Academic Press,Inc.,San Diego,CA(D.V.Goeddel,編)(1990)またはM.Krieger,Gene Transfer and Expression−−A Laboratory Manual,Stockton Press,New York, NY,(1990)もまた参照のこと。組換えDNA発現プラスミドもまた、遺伝子治療による以外の手段による送達のために本発明のポリヌクレオチドを調製するために使用され得るが、インビトロでの化学合成による短いオリゴヌクレオチドを作製することはより経済的であり得る。
【0177】
構築物はまた、タンパク質の単離を単純化するためのタグを含み得る。例えば、例えば6ヒスチジン残基のポリヒスチジンタグが、タンパク質のアミノ末端に組み込まれ得る。ポリヒスチジンタグは、ニッケルキレートクロマトグラフィーによって単一工程でタンパク質の便利な単離を可能にする。
【0178】
(C.組換え細胞)
本発明はまた、本発明のPEキメラ免疫原をコードするヌクレオチド配列の発現のための発現ベクターを含む組換え細胞を提供する。宿主細胞は、タンパク質を精製するために高レベルの発現について選択され得る。細胞は、E.coliのような原核細胞または真核細胞であり得る。有用な真核細胞は、酵母および哺乳動物細胞を含む。細胞は、例えば、培養した組換え細胞またはインビボの細胞であり得る。
【0179】
E.coliは、PE様キメラ免疫原を産生するために首尾よく使用されてきた。タンパク質は折り畳まれ得、そしてこの細胞中でジスルフィド結合が形成し得る。
【0180】
(IV.Pseudomonas体外毒素A様キメラ免疫原ワクチン)
PE様キメラ免疫原は、非ネイティブエピトープを有する因子に対して防御的な免疫応答を誘発するためのワクチンにおいて有用である。ワクチンは、1つまたは複数(すなわち、多価ワクチン)の異なるPE様キメラ免疫原を含み得る。例えば、ワクチンは、その非ネイティブエピトープがいくつかの病原体の循環する株に由来する、PE様キメラ免疫原を含み得る。病原体が進化するにつれて、例えば、ブレークスルーウイルスからの変化したエピトープを含む、新規なPE様キメラ免疫原が構築され得る。1つの実施態様において、ワクチンは、T細胞向性ウイルスからの、およびマクロファージ向性ウイルスからのエピトープを含む。例えば、HIV感染に対するワクチンは、その非ネイティブエピトープがHIVのMN株およびThai−E株のV3ループに由来する免疫原を含み得る。また、エピトープは、膜融合に関与するHIVからの任意のペプチド(例えば、gp120またはgp41)に由来し得る。あるいは、それらはサブユニットワクチンであるので、ワクチンは、その非ネイティブエピトープが同一の病原体の種々のエピトープから選択される、PE様キメラ免疫原を含み得る。
【0181】
ワクチンは凍結乾燥した状態で、または使用のために滅菌溶液中にあらかじめ再構成されて供給され得る。免疫用量は、組換えタンパク質の約1μgと約1000μgとの間、より通常には、約10μgと約50μgとの間である。免疫用量の決定については、例えば、Manual of Clinical Immunology,H.R.RoseおよびH.Friedman,American Society for Microbiology,Washington,D.C.(1980)を参照のこと。単位用量は、約0.05ml〜約1ml、より通常には約0.5mlである。用量は、好ましくは皮下または筋肉内で送達される。注射は、約4〜約8週間間隔でさらに数回継続し得る。追加免疫用量は、約1〜約10年間継続し得る。ワクチンは、1と50用量との間(例えば、0.5ml〜25ml)、より通常には1と10用量との間(例えば、0.5ml〜5ml)を含む用量形態で調製され得る。ワクチンはまた、抗原と組み合わせて用いられた場合に免疫応答を強化する、アジュバントを含み得る。有用なアジュバントは、ミョウバン、水酸化アルミニウム、またはリン酸アルミニウムを含む。
【0182】
(V.免疫応答を誘発する方法)
PE様キメラ免疫原は、非ネイティブエピトープを有する抗原に対する免疫応答を誘発するにおいて有用である。体液性の免疫応答を誘発することは、非ネイティブエピトープを特異的に認識する抗体の産生において、そして非ネイティブエピトープを有する細胞、ウイルス、または他の因子に対する免疫化において有用である。PE様キメラ免疫原はまた、MHCクラスI依存性またはMHCクラスII依存性細胞媒介免疫応答を誘発するにおいて有用である。これらはまた、分泌性の免疫応答を誘発するにおいても有用である。
【0183】
(A.予防的および治療的処置)
PE様キメラ免疫原は、病原性生物または被験体からの病理学的な細胞(例えば、ガン細胞)からの非ネイティブエピトープを含み得る。従って、本発明は、非ネイティブエピトープを有する病原体または異常な細胞のいずれかである因子の病理学的活性を含む、疾患に対する予防的および治療的処置を提供する。本方法は非ネイティブエピトープを有するPE様キメラ免疫原で被験体を免疫する工程を含む。生じる免疫応答は、病原体それ自体、または非ネイティブエピトープを発現する細胞に対する攻撃の準備をする。例えば、病原体が細菌または寄生性原虫感染から生じる場合、免疫系は、病原体それ自体に対する応答を準備する。病原体がウイルスである場合、感染した細胞はそれらの表面に非ネイティブエピトープを発現し、そして細胞傷害性応答の標的となる。ガン細胞のような異常な細胞は、しばしば通常でないエピトープを発現し、そしてまた細胞傷害性免疫応答を受け得る。
【0184】
(B.体液性免疫応答)
PE様キメラ免疫原は、被験体による非ネイティブエピトープに対する抗体の産生を誘発するに有用である。PE様キメラ免疫原は、システイン−システインループ内に天然に生じる非ネイティブエピトープに対する抗体を作製するために魅力的な免疫原である。それらはシステイン−システインループ内に非ネイティブエピトープを含むので、それらはネイティブに近いコンフォメーションで免疫系にエピトープを提示する。生じる抗体は一般的に、非ネイティブエピトープの直鎖状バージョンに対して惹起された抗体よりもより良好にネイティブな抗原を認識する。
【0185】
ポリクローナル抗体を産生する方法は、当業者に公知である。手短にいえば、免疫原、好ましくは精製されたポリペプチド、適切なキャリアにカップリングされたポリペプチド(例えば、GST、キーホールリンペットヘモシアニンなど)、または組換えワクシニアウイルス(米国特許第4,722,848号を参照のこと)のような免疫化ベクターに組み込まれたポリペプチドを、アジュバントとともに混合する。動物をこの混合物で免疫する。免疫原性調製物に対する動物の免疫応答を、試験出血を取り、そして目的のポリペプチドに対する反応性の力価を決定することによってモニターする。免疫原に対する適切な高力価の抗体が得られる場合には、血液が動物から収集され、そして抗血清が調製される。ポリペプチドに反応性の抗体について富化するためのさらなる抗血清の分画が、所望の場合行われる。例えば、Coligan(1991)Current Protocols in Immunology Wiley/Greene,NY;ならびにHarlowおよびLane(1989)Antibodies:A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Press,NYを参照のこと。
【0186】
種々の実施態様において、最終的に産生される抗体は、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、または抗体フラグメントであり得る。
【0187】
モノクローナル抗体は、所望の抗体を分泌する細胞から調製される。これらの抗体は、エピトープを含むポリペプチドへの結合についてスクリーニングされるか、またはアゴニストもしくはアンタゴニスト活性、例えば、非ネイティブエピトープを含む因子を通して媒介される活性についてスクリーニングされる。いくつかの例において、種々の哺乳動物宿主(例えば、マウス、げっ歯動物、霊長類、ヒトなど)からのモノクローナル抗体を調製することが所望される。このようなモノクローナル抗体を調製するための技術の記載は、例えば、Stitesら(編)Basic and Clinical Immunology(第4版)Lange Medical Publications,Los Altos,CAおよびそこで引用される参考文献;HarlowおよびLane,前出;Goding(1986)Monoclonal Antibodies:Principles and Practice(第2版)Academic Press,New York,NY;ならびにKohlerおよびMilstein(1975)Nature 256:495−497に見出される。
【0188】
別の実施態様において、抗体はヒト化免疫グロブリンである。ヒト化抗体は、組換えDNA技術によってヒト定常領域に非ヒト抗体のCDR領域を連結することによって作製される。Queenら、米国特許第5,585,089号を参照のこと。
【0189】
本発明の別の実施態様において、非ネイティブエピトープに対する抗体のフラグメントが提供される。代表的には、これらのフラグメントは、完全な免疫グロブリンのエピトープに類似する非ネイティブエピトープへの特異的な結合を示す。抗体フラグメントは、別個の重鎖、軽鎖、Fab、Fab’、F(ab’)、およびFvを含む。フラグメントは、組換えDNA技術によって産生されるか、またはインタクトな免疫グロブリンの酵素的もしくは化学的な分離によって産生される。
【0190】
他の適切な技術は、ファージまたは類似のベクター中の組換え抗体のライブラリーの選択を含む。Huseら(1989)Science 246:1275−1281;およびWardら(1989)_Nature 341:544−546を参照のこと。
【0191】
ヒトモノクローナル抗体またはその結合フラグメントをコードするDNA配列を単離するためのアプローチは、Huseら、Science 246:1275−1281(1989)によって概説された一般的なプロトコールに従ってヒトB細胞からのDNAライブラリーをスクリーニングし、次いで所望の特異性の抗体(または結合フラグメント)をコードする配列をクローニングし、そして増幅することによる。Huseによって記載されたプロトコールは、ファージディスプレイ技術と組み合わせてより効果的になる。例えば、Dowerら、WO91/17271およびMcCaffertyら、WO92/01047を参照のこと。ファージディスプレイ技術はまた、本発明のポリペプチドまたはそれらのリガンドについてアフィニティーを有することがすでに示されている抗体のCDR領域を変異誘発するためにも使用され得る。改善された結合アフィニティーを有する抗体が選択される。
【0192】
本発明の抗体は、非ネイティブエピトープを有する因子を単離する際のアフィニティークロマトグラフィーのために有用である。カラムを、例えば、固体支持体(例えば、アガロース、Sephadexなどのような粒子)に連結した抗体を用いて調製する。ここで細胞溶解物をカラムに通し、洗浄し、そして漸増濃度の穏やかな変性剤で処理し、それによって精製された因子が放出される。
【0193】
非ネイティブエピトープとして、gp120 V3ループを有するPE様キメラ免疫原を用いてgp120に対して抗体を産生させた。モノクローナル抗体は、可溶性MNおよびTh−Eキメラタンパク質を選択的に捕獲し、V3ループが抗体プローブに暴露され、そして接近可能であったことを確認した。また、免疫されたウサギからの血清は、インビトロアッセイにおいてHIV−1の感染性を中和した。
【0194】
(C.MHCクラスII依存性細胞媒介性免疫応答)
別の局面において、本発明は、非ネイティブエピトープを発現する細胞に対するMHCクラスII依存性免疫応答を誘発するための方法を提供する。MHCクラスII分子は、当該分野で周知の特定のアミノ酸モチーフを有するペプチドに結合する。MHCクラスII依存性応答は、抗原提示細胞(APC)による抗原の取り込み、そのプロセシング、およびMHCクラスII/抗原性ペプチド複合体の一部としての細胞表面での提示を含む。あるいは、細胞表面上のMHCクラスII分子は、適切なモチーフを有するペプチドに結合し得る。
【0195】
抗原提示細胞は、CD4ポジティブヘルパーT細胞と相互作用し、それによってヘルパーT細胞を活性化する。活性化されたヘルパーT細胞はBリンパ球を刺激して抗原に対する抗体を産生する。抗体は表面に抗原を有する細胞に印を付ける。印を付けられた細胞は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害をこうむり、そこではFcレセプターを有するNK細胞またはマクロファージが印を付けられた細胞を攻撃する。
【0196】
MHCクラスII依存性免疫応答を誘発するための方法は、被験体のMHCクラスII分子によって認識されるアミノ酸モチーフを含むキメラPseudomonas体外毒素の免疫原的な量を含むワクチンを被験体に投与する工程を含む。あるいは、抗原提示細胞は、そのようなペプチドとともに結合を可能にするために培養され得、そしてこの細胞は被験体に投与され得る。好ましくは、細胞は被験体と同系である。
【0197】
(D.MHCクラスI依存性細胞媒介性免疫応答)
別の局面において、本発明は、被験体において非ネイティブエピトープを発現する細胞に対するMHCクラスI依存性細胞媒介性免疫応答を誘発するための方法を提供する。MHCクラスI分子は、当該分野で周知の特定のアミノ酸モチーフを有するペプチドに結合する。細胞中で発現するタンパク質はペプチドに消化され、そしてMHCクラスI分子と結合して細胞表面上に提示される。そこで、それらはCD8ポジティブリンパ球によって認識され、MHCクラスI分子と結合したエピトープを発現する細胞に対して細胞傷害性Tリンパ球応答を生じる。HIVに感染したCD4ポジティブTリンパ球はgp120、従ってV3ドメインを発現するので、このような細胞を攻撃する細胞傷害性Tリンパ球の生成は、HIV感染の予防的または治療的処置において有用である。
【0198】
HLA−A1結合モチーフは、T、SまたはMという第1の保存性残基、DまたはEという第2の保存性残基、およびYという第3の保存性残基を含む。他の第2の保存性残基は、A、SまたはTである。第1および第2の保存性残基は隣接し、そして好ましくは第3の保存性残基とは6〜7残基離れている。第2のモチーフは、EまたはDという第1の保存性残基、およびYという第2の保存性残基からなり、ここで第1の保存性残基と第2の保存性残基とは5〜6残基離れている。HLA−A3.2結合モチーフは、2位にL、M、I、V、S、A、TおよびFという第1の保存性残基、ならびにC末端にK、R、またはYという第2の保存性残基を含む。他の第1の保存性残基は、C、G、またはD、あるいはEである。他の第2の保存性残基は、HまたはFである。第1の保存性残基と第2の保存性残基とは好ましくは6〜7残基離れている。HLA−A11結合モチーフは、2位にTまたはVという第1の保存性残基、およびKというC末端保存性残基を含む。第1の保存性残基と第2の保存性残基とは好ましくは6または7残基離れている。HLA−A24.1結合モチーフは、2位にY、FまたはWという第1の保存性残基、およびF、I、W、MまたはLというC末端保存性残基を含む。第1の保存性残基と第2の保存性残基とは好ましくは6〜7残基離れている。
【0199】
別の方法は、このような発現ベクターを用いて、エキソビボで細胞をトランスフェクトする工程、および被験体に細胞を投与する工程を含む。細胞は好ましくは被験体と同系である。
【0200】
被験体内でウイルスに対する免疫応答を誘発する方法は、未だに感染していない被験体にワクチンを投与する場合に、ウイルスの感染を予防するための予防的方法において有用である。
【0201】
(E.IgA媒介性分泌性免疫応答)
粘膜は、多くの感染性病原体にとって主要な通路である。このような病原体には、例えば、HIV、ヘルペス、ワクシニア、サイトメガロウイルス、エルジニア、およびビブリオが含まれる。粘膜には、口、鼻、咽喉、肺、膣、直腸、および結腸が含まれる。侵入に対する防御として、身体は、病原体に対して、上皮粘膜の表面に分泌性のIgAを分泌する。さらに、1つの粘膜表面に提示された抗原は、これらの粘膜間の抗体分泌細胞のトラフィッキングにより、他の粘膜表面における応答の引き金を引き得る。分泌性IgAの構造は、持続性残存および粘膜の管腔の表面における効果的な機能に決定的であることが示唆されてきた。本明細書中で使用される場合、「分泌性IgA」または「sIgA」は、J鎖により連結され、そしてさらに分泌性成分と結合している2つのIgA免疫グロブリンを含むポリマー性分子をいう。抗原の粘膜投与はIgG応答を生じ得るが、免疫原の非経口投与は強力なsIgA応答をほとんど生じない。HIVに対する防御のための分泌性の免疫応答を生成することは、認識されている必要性である(Bukawa,H.ら、1995,Nat Med 1,681−5;Mestecky,J.,ら,1994,Aids Res Hum Retroviruses 10,S11−20)。
【0202】
Pseudomonas体外毒素は、粘膜上のレセプターに結合する。それゆえ、PE様キメラ免疫原は、粘膜表面に非ネイティブエピトープを運ぶための魅力的なベクターである。そこでは、免疫原が、免疫原に対するIgA媒介性免疫応答を誘発する。従って、本発明は粘膜を介して侵入する病原体からの非ネイティブエピトープを含むPE様キメラ免疫原を提供する。細胞認識ドメインは、任意の粘膜表面レセプターに標的化され得る。これらのPE様キメラ免疫原は、粘膜表面を介して身体へ侵入する免疫原に対する、IgA媒介性の分泌性免疫応答を誘発するために有用である。この目的のために使用されるPE様キメラ免疫原は、それらの細胞認識ドメインとして、粘膜上のレセプターに結合するリガンドを有するべきである。例えば、上皮増殖因子は、粘膜表面上の上皮増殖因子レセプターに結合する。
【0203】
免疫原は、液体または固体の形態の薬学的組成物(例えば、スプレー、軟膏、坐剤または免疫原を含浸させた浸食性のポリマー)を含む任意の代表的な手段によって粘膜表面に適用され得る。投与は、免疫原を複数の異なる粘膜表面に一連の免疫、例えば追加抗原免疫として適用することを含み得る。追加抗原接種はまた、非経口的に(例えば、皮下に)投与され得る。免疫原は約1μg〜1000μgの用量で、例えば、約10μg〜100μgで投与され得る。
【0204】
HIVのgp120の主要な中和ドメインからのエピトープを含むワクチンを用いる皮下接種は、分泌性IgAを生成することが知られていない。従って、本発明のキメラ免疫原の粘膜提示は、これらの従来未知であった抗体を産生するために有用である。本発明はまた、粘膜を介して体に侵入する他の病原体のエピトープを特異的に認識する分泌性IgAを提供する。
【0205】
IgA応答は,免疫原に暴露された粘膜表面において最も強力である。それゆえ、1つの実施態様において、免疫原は特定の病原体への暴露の部位であるらしい粘膜表面に適用される。従って、性感染病に対するキメラ免疫原は、膣、肛門、または口の粘膜表面に投与され得る。
【0206】
本発明のキメラ免疫原の粘膜投与は、IgAおよびIgGの両方についての強力な記憶応答を生じる。それゆえ、それを用いるワクチン投与において、粘膜的または非経口的のいずれかでの追加抗原用量を提供することは有用である。記憶応答は、最初の用量後1年を越えて追加抗原用量を投与することによって誘発され得る。例えば、追加抗原用量は、最初の用量から約12、約16、約20、または約24か月後に投与され得る。
【0207】
(VI.遺伝子治療のポリヌクレオチドワクチンおよび方法)
タンパク質免疫原をコードするポリヌクレオチドを含有するワクチン(しばしば、「DNAワクチン」と呼ばれる)は、ポリペプチドワクチンに対して特定の利点を提供する。DNAワクチンは、所望されないタンパク質免疫原による汚染の危険を冒さない。被検体への投与の際、ポリヌクレオチドは、細胞によって取り込まれる。RNAは、DNAに逆転写される。DNAは、形質転換された細胞のゲノム内に特定のパーセントで組み込まれる。発現制御配列と作動可能に連結されるようにDNAが組み込まれる場合、またはこのような配列が、組換えポリヌクレオチドと共に提供される場合、この細胞はコードされたポリペプチドを発現する。細胞からの分泌に際し、ポリペプチドは免疫原として作用する。裸のDNAは、優先的に、肝臓および筋肉細胞によって取り込まれる。従って、ポリペプチドは、例えば、微粒子銃注入によって、筋肉組織内に注入され得るか、または提供される。一般に、裸のポリヌクレオチドの用量は、代表的な70kgの患者において、約1μg〜100μgである。
【0208】
本発明のポリヌクレオチドワクチンは、ポリペプチドワクチンにおいて使用されるPE様キメラ免疫原をコードするポリヌクレオチドを含み得る。これは、エピトープの数個の改変体を含む多重免疫原を含む。
【0209】
以下の実施例は、例示によって提供されるが、これらに限定されない。
【0210】
(実施例)
(I.PE様キメラ免疫原の構築)
キメラタンパク質を生成するために、ntPEのサブドメインIbを、HIV−1のMN(サブタイプB)またはThai−Eサブタイプ株のいずれかに由来するV3ループ配列と置き替えた。このMN配列は、T細胞向性株由来である一方で、Thai−E配列は、マクロファージ向性株由来である。
【0211】
野生型(WT)PEは、613アミノ酸から構成され、そして67,122 Daの分子量を有する。グルタミン酸553(ΔE553)の欠損は、PEの無毒性バージョンを生じ(Lukac, M.,ら、1988、Infect and Immun 56:3095−3098)、ntPEと命名される。
【0212】
プラスミドを、V3ループ配列をコードするオリゴヌクレオチド二本鎖を、新規なPstI部位を用いて設計された新しいPEをベースとするベクターに挿入することによって構築した。gp120中に見出されるトポロジーと同様のトポロジーのV3ループを生成する試みにおいて、14または26アミノ酸の挿入物を、システイン残基によって隣接させた(図1C−太字)。新規なベクターの構築は、V3ループの挿入点付近のntPEのアミノ酸配列内において、幾つかの変化を生じた(図1C−斜体)。無毒性キメラ、ntPE−V3MN14、ntPE−V3MN26およびntPE−V3Th−E26は、それぞれ、MN株由来の14もしくは26アミノ酸またはThai−E株由来の26アミノ酸V3ループを含んでいた(nt = 「無毒性」)。不適切な16アミノ酸配列の挿入は、ntPE−fp126と命名されるコントロールキメラの構築を生じる。Ibループ(6アミノ酸)の除去およびV3ループ挿入物に隣接する側方アミノ酸の修飾は、野生型PEに比べて分子量のわずかな増加を生じた(図1C)。
【0213】
より詳細には、PEをコードするプラスミドpMOA1A2VK352(Ogata, M., ら、1992、J Biol Chem, 267, 25396−401)を、Sfi1およびApaI(それぞれ残基1143および1275)を用いて消化し、次いで、新規なPst1部位を含む二本鎖を用いて再結合させた。この二本鎖のコードストランドは、以下の配列を有した:5’−tggccctgac cctggccgcc gccgagagcg agcgcttcgt ccggcagggc accggcaacg acgaggccgg cgcggcaaac ctgcagggcc−3’(配列番号:5)。得られたプラスミドは、PEのわずかにより小さいバージョンをコードし、そしてドメインIbのほとんどを欠いた。次いで、PstI部位を、システイン残基によって隣接されるV3ループ配列をコードする二本鎖を導入するために使用した。無毒性タンパク質を生成するために、ベクターを、pVC45ΔE553由来の酵素学的に不活性なドメインIII中に、サブクローン化することによって、修飾した。pJH4(Hwang, J.,ら、1987、Cell、48、129−136)由来の追加のサブクローン化が、シグナル配列を欠いたベクターを生成するために必要とされた。二本鎖の挿入およびサブクローン化修飾は、初めに制限分析によって確証され、一方で、最終構築物が、ジデオキシ二本鎖配列決定によって確認された。
【0214】
(II.キメラの特徴付け)
(A.発現)
全てのntPE−V3ループキメラタンパク質を、T7プロモーター/T7ポリメラーゼシステム(Studier, F.W.,ら、1990、Methods Enzymol 185、60−89)を使用して、E coli SA2821/BL21(λDE3)において発現した。SA2821/BL21(λDE3)細胞を、適切なプラスミドを用いて形質転換し、アンピシリンを含む培地中で1.0(600 nm)の吸光度にまで成長させた。高いレベルのタンパク質発現を誘導するために、イソプロピル−β−D−チオガラクトシド(1 mM)を培地に添加し、そして追加の90分間インキュベートした。E. coli 細胞ペレットを、50 mM Tris/20 mM EDTA, pH 8.0(TE緩衝液)中に再懸濁し、そしてTissue Miser を使用して分散した。細胞溶解を、リゾチーム(200 μg/ml最終濃度;Sigma)を用いて達成し、そして膜結合タンパク質を、2.5% Triton X−100および0.5 M NaClの添加によって溶解した。
【0215】
PE−V3ループキメラは封入体内に存在し、これは、遠心分離によって回収された。0.5%Triton X−100を含むTEを用いて洗浄、次いでTE単独で洗浄した後、封入体を、6Mグアニジンおよび65 mM ジチオエリスリトールの添加によって溶解した。0.5 M L−アルギニン(Sigma)、2 mM EDTA および0.9 mM グルタチオンを含む0.1 M Tris(pH 8.0)において、8℃で、最小24時間の間、100μg/mlの最終タンパク質濃度にて、再折りたたみを進めた。プロテアーゼインヒビターAEBSF(Boerhinger Mannheim)を、0.5 mM の最終濃度まで添加した。タンパク質を、20 mM Tris、2 mM EDTAおよび100 mM 尿素、pH 7.4に対して透析した。透析後、タンパク質を、Qセファロースカラム(Pharmacia Biotech; Piscataway, NJ)に付与した。0.1 M NaClを含む20 mM Tris(pH 8.0)を用いて洗浄した後、キメラタンパク質を、同じ緩衝液中の0.3 M NaClを用いて溶出し、そして、Centriprep−30限外濾過装置(Amicon, Inc.;Beverly, MA)を使用して濃縮した。最終生成物を単離するために、HPLCゲル濾過カラム(Toso Haas からのG3000SW;Montgomeryville, PA)を、使用した。4Lバクテリア培養あたりの適切に折りたたまれたタンパク質の代表的な収率は、50−100 mg であり、純度は、95%より高かった。
【0216】
(B.生化学的特徴付け)
キメラタンパク質を、SDS−PAGEによって、8−16%勾配ポリアクリルアミドゲル(Novex; San Diego, CA)を使用して分離し、そしてCoomassie Blueを用いた染色によって視覚化した。ウェスタンブロット分析において、タンパク質は、Immobilon−P メンブレン(Millipore Corp., Bedford, MA)上に移し、そして抗PEマウスモノクローナル抗体(M40−1(Ogata, M.,ら、1991、Infect and Immun 59、407−414))または抗−gp120マウスモノクローナル抗体(MN配列の場合1F12、もしくはThai−E配列の場合1B2;Genentech, Inc.;South San Francisco, CA)のいずれかに曝露した。一次抗体を、西洋ワサビペルオキシダーゼに結合した二次抗マウス抗体によって検出した。反応生成物を、ジアミノベンザジンおよび過酸化水素の添加によって視覚化した。免疫捕捉実験を、1F12抗−gp120モノクローナル抗体を使用して、23℃で、30分間行った。抗体−キメラタンパク質複合体を、タンパク質Gセファロースビーズ(Pharmacia Biotech; Piscataway, NJ)を用いて回収し、そしてSDS−PAGEを使用して(上記のように)、分離した。HIV−1−MN(120/MN; Genentech, Inc.)およびThai サブタイプE単離体(gp120/Th−E−Chiang Mai; Advanced Biotechnologies, Columbia MD) 由来のgp120の組換え形態を、標準として使用した。
【0217】
精製されたntPE−V3ループキメラのSDS−PAGE分析(図2A)は、計算された分子量と一致した(図1C)。gp120/MN(1F12)またはgp120/Th−E(1B2)に対して惹起したモノクローナル抗体を使用するウエスタンブロットは、MNおよびThai−E V3ループキメラとの株特異的反応性を示した(図2B)。
【0218】
精製されたntPE−V3ループの遊離スルフヒドリル分析は、任意の不対システインを実証するのに失敗し、このことは、精製されたntPE−V3ループキメラが再度折りたたまれ、そして酸化されて、V3ループのベースにてジスルフィド結合を形成したことを示唆する(図1A)。このジスルフィド結合の形成は、キメラの表面にて、V3ループの曝露を生じることが期待された。
【0219】
スルフヒドリル含有量を決定するために、1 mM EDTAを含むPBS(pH 7.4)中のキメラタンパク質(15 nmols)を、15分間、23℃にて、1 mMチオニトロベンゾエート(DTNB)(Pierce Chem Co, Rockford, IL)と反応させた。チオニトロベンゾエートの放出を、412 nm にてモニターした。DTNB反応性を、システインの使用によって確証した。
【0220】
これを、直接に、免疫捕捉研究によって試験した(図2C)。1F12および1B2モノクローナル抗体は、可溶性MNおよびTh−Eキメラタンパク質を選択的に捕捉し、このことは、V3ループが曝露され、そして抗体プローブに接近可能であったことを確証する。ウェスタンブロットにて、1F12抗体がntPE−V3MN14と強く反応したという事実にもかかわらず(図2B)、それは、ほんの少量の可溶性タンパク質のみ(図2C、レーン3)を捕捉し、このことは、たった14個のアミノ酸が挿入された場合、反応性エピトープが、完全に曝露されなかったことを示す。
【0221】
(C.円二色性)
アミノ酸の挿入物がキメラの二次構造に及ぼす影響について評価するため、精製したntPE−V3MN14およびntPE−V3MN26タンパク質について、近および遠UV CD スペクトル分析を行い、これらを野生型PE(wtPE)スペクトルに対して比較した(図3Aおよび3B)。円二色性(CD)スペクトルを、Aviv 60DS 分光偏光計上で回収した。1 cm 光路長セル内のサンプルについて、近UV CD スペクトル(400 nm〜250 nm)を、0.5 nm バンド幅および5秒間一定(150 読み込み/秒平均)で、0.2 nm おきに得た。遠UV スペクトル(250 nm〜190 nm)を、0.05 cm 光路長セル内で、0.5 nm バンド幅および3秒間一定で、0.2 nm おきに回収した。各スペクトルを、デジタル形式で、Savitsky−Golay アルゴリズム(Gorry, P.A.1990, Analytical Chem 62, 570−573)を使用して平滑化し、濃度について補正し、そして、以下の関係式を使用して、平均残基質量楕円率(θMRW)の単位で規格化した:
【0222】
【数1】

【0223】
ここで、θobs は、観測された楕円率であり、MWmonomerは、モノマーの分子量であり、nmonomerは、モノマー中のアミノ酸の数であり、dは、セルの光路長(cm)であり、そして、cは、セル内のサンプルの濃度(mg/ml)である。
【0224】
二次構造計算(図3C)は、これらのタンパク質とwtPEとの間に有意な差がなかったことを示した。ntPE−V3MN14は、ntPE−V3MN26およびwtPEに比べ、より負の楕円率を示し、このことは、このキメラのループ挿入物のベースにおけるジスルフィド結合においてより多くの歪みが生じ得ることを示す。ntPE−V3MN14およびntPE−V3MN26の両方は、290 nm にて明確なレッドシフトを示し、恐らく、キメラ内の追加のチロシン残基に起因する。あるいは、このレッドシフトは、トリプトファン残基の環境のわずかな乱れから生じ得る。結局、これらの結果は、V3ループ挿入物が、野生型毒素に対して二次構造の大きな変化を生じず、そして、三次構造内の変化が14および26アミノ酸挿入物の存在と一致したことを示す。
【0225】
(III.サイトゾルへのトランスロケーション)
LRPレセプターに結合した後、ntPE−V3ループキメラは、エンドサイトーシスによりインターナリゼーションし、フューリンによって切断され、そしてドメインIIを含むC末端部位、V3ループおよびIIIは、wtPEと同様の様式でサイトゾルにトランスロケーションされる(Ogata, M.,ら、1990、Biol Chem 265、20678−85)。これは、PE−V3MN14および26の酵素学的に活性なバージョン(グルタミン酸553を含み、そして延長因子2をADPリボシル化する能力を有する)を生成することによって、直接に試験され、そして、細胞毒性アッセイにて、それらの活性をwtPEと比較した。
【0226】
ヒトA431(類表皮癌腫)細胞を、24−ウェル組織培地プレート内に、5%ウシ胎児血清で補充されたRPMI 1640 培地中の1×10細胞/ウェルで播種した。24時間後、細胞を、18時間、37℃にて、キメラタンパク質のwtPEまたは毒性形態(553位にグルタミン酸残基を有し、そして延長因子2をADPリボシル化し得る)のいずれかの4倍希釈物を用いて処理した。タンパク質合成の阻害を、H−ロイシンの取り込みをモニターすることによって評価した。
【0227】
タンパク質合成を阻害するその能力についてアッセイする場合、PE−V3MN26は、ヒトA431細胞内のwtPEと同様の毒性を示した(図4)。PE−V3MN14はまた、完全に毒性であった。これらの結果は、V3ループ挿入物のサイズと位置がサイトゾルへの毒素送達を妨害しないことを確証した。さらに、これらのデータは、単離、再折りたたみおよびこれらのキメラを調製するために使用された精製プロトコールが、正確に折りたたまれ、かつ機能的なタンパク質の産生をもたらしたことを示す。
【0228】
(IV.免疫原性)
免疫原としてのそれらの有用性を調べるために、ウサギに200μgのMNまたはThai−Eキメラのいずれかを皮下に注入した。ウサギは、200μg(合計)のntPE−V3MN26を用いて皮下に4ヶ所にて免疫化した。最初の注入は、完全Freundアジュバントを用いて投与した。全ての後の注入(2、4、および12週間にて)を、不完全Freundアジュバントを用いて与えた。第三の注入後に毎週、静脈の放血を得て、そしてgp120に対して免疫ブロットすることによってスクリーニングした。
【0229】
ウェスタンブロットにて、ntPE−V3MNタンパク質を用いて免疫化したウサギ由来の血清サンプルは、免疫化された組換えgp120/MNについて強い反応性を示した(図5A)。反応力価は時間と共に増加した:6週間目には1:200の希釈で反応性が注目され、12週間目には1:5,000の希釈で注目され、そしてそれより遅い時間では、1:25,000で反応性が検出された。これらの抗V3ループ/MN血清はgp120/Thai−Eとは反応性ではなかった(図5A)。無毒性PE(例えば、挿入物を有しないntPE)と共に注入されたウサギ由来血清は、gp120に対し反応性を示さなかった。ntPE−V3Th−Eと共に注入されたウサギは、gp120/Thai−Eに対し反応性血清を生成したが、gp120/MNに対しては生成しなかった(図5A)。
【0230】
ntPE−V3MN26を用いて免疫化したウサギ由来の血清を、さらに特徴づけた。これらの血清が可溶性の組換えgp120/MNと予備混合された場合、固定化gp120/MNに対する反応性が吸収された(図5B)。このブロッキング活性(用量に依存し、そして50μg/mlにおいて最大であった)は、ウサギが、gp120の表面上に曝露されるV3ループ配列に主に応答したことを示した。
【0231】
免疫化されたウサギ由来の血清はまた、インビトロアッセイにおけるHIV−1感染性を中和することが見出された(図6)。このアッセイは、HIV−1−媒介細胞死の指標としてMT4細胞を利用した(Miyoshi, I.,ら、1981、Nature 294、770−1)。抗血清の二重の連続希釈物を、FDA/H9細胞内で増殖させたHIV−1/MNとともにインキュベートし(Popovic, M.,ら、1984、Science 224,497−500)、そしてこの混合物を細胞に7日間添加した。ウィルス媒介細胞死を、MTT色素アッセイ(Robertson, G. A., ら、1988、J Virol Methods 20、195−202)および570 nm における分光光度法分析を使用して、評価した。血清の50%阻害濃度を計算し、そして中和力価として報告した。
【0232】
予備免疫血清は、HIV−1 MNによる殺傷からのヒトT細胞株、MT4の保護を全く示さなかった。免疫化後5週間目における血清はまた全く保護を示さなかったが、8週間目および27週間目の血清は、約1:400の希釈において生じる50%中和をともなってウィルス抗原投与に対して保護的であった。使用された免疫スケジュールに基づき、5週間目の血清は、免疫化され、そして一度追加免疫された動物内の応答を反映したが、一方で、8週間目の血清は2回追加免疫された動物由来であり、そして27週間目の血清は、3回追加免疫された動物由来であった。8週目および27週目の出血において、1:100未満の血清の希釈において得られたMT4細胞生存値は、規格化のために使用された抗原投与されていない細胞コントロールより大きかった。これは、ウサギ血清内に存在する成長因子による刺激に起因するものらしかった。このデータは、ntPE−V3ループキメラの皮下注入後の免疫応答が、中和抗体の生成を生じ得ることを示唆する。
【0233】
(V.感染力の中和)
キメラ免疫原によって誘発された抗体は、p24産生の抑制がHIV中和の指標として使用されたウィルス増殖アッセイにおいて、HIV−1の感染力を中和する能力を有することが示された。サブタイプB、RVL05およびサブタイプE、Th92009に対応する臨床分離株を、ウサギ血清の希釈物とともにインキュベートし、そして合計で5日間PBMC内で培養した。
【0234】
1つのアッセイは、HIV−1−媒介細胞死の指標としてMT4細胞を利用した。I.Miyoshiら(1981)Nature 294:770−771。抗血清の二重の連続希釈物をHIV−1/MNを用いてインキュベートし、FDA/H9細胞内で増殖させ、そしてこの混合物をMT4細胞に7日間添加した。M.Popovicら(1984) Science 224 : 497−500。ウィルス媒介細胞死を、3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド色素アッセイおよび570 nm における分光学法分析を使用して評価した。G.A.Robertsonら(1988)J. Virol. Methods 20 : 195−202。血清50%阻害濃度を計算し、中和力価として報告した。
【0235】
第二のアッセイは、ウィルス増殖の指標としてp24産生を使用した。T.Wrinら(1995)J. Virol.69 : 39−48。初期ウィルスを最初に滴定し、顕著ではあるが準最大量のp24を再現可能に得られた量を決定した。ウィルス調製物を、免疫または予備放血のいずれかのウサギ血清の種々の希釈物と、37℃で1時間インキュベートし、次いで、この混合物を4通りで2.5×10PBMCに添加した。培養を3日間継続し、この時間に細胞を洗浄し、そしてV3 Loop−Toxin Chimeras 9952をインターロイキン2を含む培地中に再懸濁した。p24の蓄積を、ELISAによって検出した。
【0236】
ntPE−V3MN26を用いて免疫化したウサギの1つから採取した血清は、MT4アッセイで1:400の希釈にてウィルスを中和したため、この血清を、臨床単離体に対する活性を評価するために使用した。24週間目にて採取した血清サンプルは、BおよびEサブタイプ単離体の両方に対する中和活性を示した(図14を参照)。同じウサギ由来の予備放血の血清を用いた場合、中和活性は観察されなかった。
【0237】
(VI.IgA−媒介免疫応答の誘発)
HIV−1のgp120のV3ループの26個のアミノ酸を含むPE様キメラ免疫原による粘膜播種は、HIV−1に対する体液性および細胞媒介免疫応答の両方を誘発した。このキメラの毒性バージョンは、集密の単層として増殖したヒト腸細胞株、Caco−2を殺傷し得た。非致死的形態のキメラを、皮下、または膣、直腸、胃もしくは鼻の粘膜表面のいずれかにて、マウスに投与した。皮下投与により、これらの種々の粘膜表面において、次の追加免疫を行った。血清および唾液サンプル内のMNgp120−特異的抗体の測定は、全ての群の粘膜および皮下投与において、IgAおよびIgG応答の両方を証明した。これらの結果は、本発明のPE様キメラ免疫原が上皮細胞に浸入し得、天然毒素と同様に輸送され得、インタクトな上皮障壁を横切って輸送し得、そしてIgAおよびIgG抗体の両方の生成を誘導することを示す。
【0238】
(A.PE様キメラ免疫原)
これらの実験において使用されたPE様キメラは、実施例Iに記載される。ネイティブ(毒性)PEをコードする構造遺伝子を改変してIb領域を欠失し、そして26アミノ酸のV3ループ配列の挿入のための唯一のPstI部位を提供した。無毒性バージョンのPE−V3ループキメラが調製され、これは、553位におけるグルタミン酸残基を欠き(ΔE553)、従ってADPリボシル化活性は有していない。全てのPE−V3ループキメラタンパク質を、E coli BL21(λDE3)中で、T7プロモーター/T7ポリメラーゼシステムを使用して発現した。IPTG(1.0 mM、90分間)を添加し、タンパク質発現を向上させた。PE−V3ループタンパク質を封入体から単離し、そしてアニオン交換クロマトグラフィーの連続的なラウンドおよび最後のゲル濾過によって精製した。
【0239】
(B.細胞ベースの研究)
MN gp120(tPE−MN26)のV3ループの26アミノ酸を含む毒性バージョンのPsudomonas 体外毒素(PE)キメラを、分極したCaco−2細胞の集密の単層の尖端表面に付与した。Caco−2細胞を培養し、そして以前に記載されたように(W. Rubas ら(1996)「Caco−2 単層を横切るフラックス測定はヒト大腸組織における輸送を予見し得る」J.Pharm.Sci.85:165−169)、予め湿らせた(PBS、15分、外側次いで内側)コラーゲン被覆ポリカーボネートフィルター支持体(SnapwellsTM)上に維持した。培養培地を1日おきに変え、そして集密の単層を、播種の25日後および30−35の継代で使用した。毒性バージョンのPEおよびPE−V3ループキメラを培養培地内の尖端表面に添加した。37℃で24時間の連続的なインキュベーション後、Caco−2単層をPBSで3回洗浄し、血清エステラーゼ活性を除去し、そしてカルセインAMおよびエチジウムホモダイマーとともにインキュベートし、生/死細胞比(LIVE/DEAD(登録商標)Eukolight kit ; Molecular Probes, Inc., Eugene, OR)を決定した。
【0240】
キメラは、これらの腸上皮細胞を、標準PEのそれと同様な効力で殺傷した(図8)。細胞の生存率を、生細胞と死細胞の比として測定した。
【0241】
無毒性(Δ553)キメラ(ntPE−V3MN26)を、全ての後の免疫化研究に使用し、ntPE−V3MN26のCaco−2単層上においてPEの毒性作用をブロックする能力について検討した(図8)。従って、図8の結果は、PEの内因性Ibループの代わりにMNgp120(ntPE−V3MN26)のV3ループの26個のアミノ酸の取り込みが、PEキメラの分極した、集密上皮細胞によって取り込まれ、かつプロセッシングされる能力を変化させないことを示す。上皮細胞によって取り込まれ、かつプロセッシングされるPE−V3ループキメラのこの能力は、HIV−1のような病原体(ヒト腸上皮細胞の機能に影響を及ぼし、かつ改変し得る)に対して、重要である。D.M.Asmuth ら(1994)「ヒト腸上皮細胞に対するHIV感染の生理学的影響:HIV腸症に対するインビトロモデル」AIDS 8 : 205−211。
【0242】
(C.免疫化プロトコール)
雌balb−cマウスは、Simonsen から6−8週令の年令で得、そして研究前2週間の間検疫した。動物を2週間のインターバルで三回播種した6グループの一つに配置した。この動物を適宜に食物および水で維持した。動物グループは、以下のように免疫化された:(1)経口、経口、経口;(2)膣、膣、膣;(3)直腸、直腸、直腸;(4)膣、経口、経口;(5)直腸、経口、経口;および(5)皮下、皮下、皮下。各々の経口播種は、0.05%Tween 20、1 mg/ml BSA および0.2 M NaHCO(pH = 8.1)を含む200μlのPBS中の40μgのPE−V3ループキメラを使用した。全ての膣、直腸および皮下播種は、0.05%Tween 20を含む20μlのPBS中の20μg PE−V3ループキメラを含んだ。
【0243】
(D.抗体力価)
0.1 mg のピロカルピンの腹腔内注入の後、マウス唾液(代表的には50μl)を、ポリプロピレンPasteur ピペットを用いて回収し、そしてポリプロピレンチューブに配置した。血清サンプル(100μl)を、血清分離チューブを使用して、眼窩周囲放血から得た。回収された血清および唾液サンプルを、分析するまで−70℃で貯蔵した。gp120−特異的ELISAを、gp120でコートしたCostar 9018 E.I.A./R.I.A.プレートを使用して行った。PBST(0.05%Tween 20 および0.01%チメロゾールを含むPBS)で洗浄した後、プレートをアッセイ緩衝液(0.5%BSAを含むPBST)でブロックした。次の洗浄は、血清または唾液サンプルの導入(100μl/ウェル)前に行った。結合した免疫グロブリンを、ビオチン化した全ヤギ抗体(これはマウスIgAまたはマウスIgG(Amersham)のいずれかを選択的に認識する)を使用してタグ化した。1F12(Genentech, Inc.)で表示されたマウスモノクローナル抗体を、IgGアッセイにおける陽性コントロールとして使用した。gp120−特異的マウスIgAは、陽性標準として利用可能でなかった。ExtrAvidin(登録商標)ペルオキシダーゼ複合体(Sigma)、2,2’−アジノ−ビス(2エチルベンズチアゾリン−6−スルホン酸(Sigma)ならびに尿素および過酸化水素を含むリン酸−クエン酸緩衝液を、405 nm にて結合した抗体を定量化するために使用した。
【0244】
無毒性PE−V3MN26を、経口栄養、膣粘膜への適用、直腸粘膜への適用との組み合わせで、あるいは皮下注射により、balb−cマウスに送達した。血清および唾液サンプルを、各投与群からの最初の接種の1ヶ月、2ヶ月、および3ヶ月後に回収し、そしてELISAにより分析して、MN gp120に特異的なIgGおよびIgA抗体力価を決定した。免疫前の唾液および血清サンプルは、これらのgp120特異的ELISAにおいて有意なバックグラウンド反応を示さなかった。gp120特異的IgGの測定可能な量が、全ての投与群の血清において観察された(図9)。観察されたIgG応答は、皮下群(subcutaneous group)において最初は最も大きかったが、全ての群は最終的に強い血清IgG応答を示した。ntPE−V3MN26に経口的に曝露された群はまた、膣粘膜または直腸粘膜においてのみ曝露された群よりも速いIgG応答を得るようであった。マウスモノクローナルIgG(これは、MN gp120のV3ループを選択的に認識する)と比較すると、gp120特異的IgGの各群における最も高い測定レベルは、5〜25μg/ml血清であった。
【0245】
IgA抗体は、粘膜性転移増殖の後に進行して全身性疾患を引き起こす、厳格な(strict)粘膜性病原体および侵襲性因子の両方に対する耐性に寄与するようである。R.I.Walkerら(1994)「より効果的な免疫を達成するために粘膜ワクチン接種を使用するための新規ストラテジー」Vaccine 12:387−400。ELISAを使用して、回収された唾液サンプル中のgp120特異的IgAレベルを、粘膜抗体応答の指標として決定した。入手可能なMN gp120特異的モノクローナルIgAは存在しないので、ELISAにより得られた値は、群の間でのみ比較され、絶対的レベルとしては特徴付けられなかった。全ての6つの投与群由来の唾液サンプルは、gp120特異的IgAを含有した(図10)。最も強いIgA応答は、最初にPE−V3ループキメラの経膣投与を受容し、そして引き続いて経口投与を受容した動物において観察された。皮下注射のみを受容した動物が、キメラの粘膜曝露のみを受容した群において観察されるIgAレベルのいくつかに相当するIgAレベルを示したことは、興味深いことであった。このことは、IgA ELISAにおいて用いられた抗体の問題に関し得る。それにも関わらず、これらの結果は、粘膜的および全身的の免疫性の両方が、百日咳毒素を用いる経口的免疫で以前に観察されたことと同様に、粘膜免疫によって誘発され得ることを示している。M.J.Walkerら(1992)「Salmonella typhimurium aro A,Salmonella typhi Ty21a,および侵襲性Escherichia coli発現組換え百日咳毒素S1サブユニットを用いたマウスの経口免疫後の特異的な肺粘膜および全身性の免疫応答」Infect.Immun.60:4260。
【0246】
HIV−1サブユニットワクチンは、皮下投与の後にのみIgG応答を生じる(M.B.Vasudevachariら(1992)「組換えHIV−1 gp160をワクチン接種された個体の唾液中におけるエンベロープ特異的抗体」J.Acquir.Immune Defic.Syndr.5:817−821)、あるいは筋肉内注射の後にIgGおよびIgAの両方を生じる(G.J.Gorseら(1996)「ヒト免疫欠損ウイルスタイプ1組換えgp120ワクチンにより誘発された、唾液結合抗体」Clin.Diagnostic Lab.Immunol.3:769−773)ことが報告されてきた。これらの著者は、粘膜抗体の産生を最大化することはHIV−1ワクチンのために重要であると示唆しているが、しかし、検出されたIgA抗体が分泌物であったかどうかは不明である。おそらく、sIgAは、唾液サンプル中のIgAの最初の形態であり、そしてダイマーIgAは、本研究と同様の血清サンプル中のIgAの最初の形態である。ここで使用されたIgA結合試薬は、血清IgAに対して産生され、従ってIgA測定において偏りを提供し得る。従って、血清中で測定されたIgAレベルは、ダイマーIgAに対する親和性よりも低いsIgAに対する親和性に起因する唾液レベルよりも大きく見えるにすぎない。従って、本研究で得られるIgA値は、相対的スケールでのみ示される。
【0247】
Th1細胞およびTh2細胞により放出される多くの因子が、IgA応答を調節することが示されている(J.R.McGheeら(1993)「ワクチン開発に重点を置いた、粘膜免疫における新規展望」Seminars in Hematology.30:3−15)。例えば、IL−5の存在下で、IL−2はTGF−βと相乗してIgA合成を増強し、免疫応答の薬理学的操作の展望がもたらされる。しかしながら、抗原提示の形態は、免疫原の運命(fate)により顕著に指示される。粘膜表面における上皮細胞(これは、ntPE−V3MN26に結合しそしてntPE−V3MN26を内在化させるためのLRPレセプターを有する)は、MHCクラスIIタンパク質を発現することが示されており、そしてクラスIIは、リソソーム性起源からの抗原提示のために細胞の表面に効果的に到達し得る(V.G. Brachetら(1997)「Ii鎖は、リソソームへおよびリソソームからの主要組織適合性遺伝子複合体クラスII分子の輸送を制御する」J.Cell Biol.137:51−65)。従って、ntPE−V3MN26は、 MHCクラスII構造によって、上皮細胞の細胞表面に送達され得る。あるいは、免疫原が粘膜バリアを横断し、そして内在する(underlying)固有層中のプロフェッショナル抗原提示細胞(professional antigen presentation cell)にインタクトな形態で到達する場合、これはTh2応答を誘発し、そしてMHCクラスIの制限された抗原提示を生じるはずである。
【0248】
(VII.キメラ免疫原の粘膜投与により誘発される記憶応答)
ntPE−V3MN26の粘膜投与は、Th1およびTh2経路の両方の血清IgGアイソタイプの組み合わせにより特徴付けられる、有意な記憶応答を生じた。Th2応答は、ウイルスの中和化に有利であることが提唱されており、そしてTh1事象に関連する細胞傷害性免疫応答は、細胞内ウイルスに対する効果的な免疫応答に必要とされ得るので(J.R.McGheeら(1994)Reprod.Fertil.Dev.6:369−379)、これらの結果は、ntPE−V3MN26を用いる粘膜免疫化が、HIV−1感染に対する保護のために必要とされるタイプの応答を提供することを示唆した(G.L.Adaら(1997)AIDS Res.Hum.Retroviruses 13:205−210。
【0249】
(A.材料および方法)
(1.試薬)
これらの研究に用いられたntPE−V3MN26の構造および調製は、本明細書中に記載される。MN gp120、およびMN gp120のV3ループを認識する1F12モノクローナル抗体を、Genentech,Inc.(South San Francisco, CA)にて調製した。マウスIgGまたはマウスIgAのいずれかに対して惹起されたビオチン標識化ヤギ抗体を、Amersham Life Sciences(Arlington Heights,IL)から購入した。マウスIgG、IgG2a、IgG2b、IgG、およびIgEを認識するビオチン化ラット抗体を、Pharmingen(San Diego,CA)から得た。
【0250】
(2.免疫プロトコルおよびサンプル回収)
雌性BALB/cマウスを6〜8週齢で得、そして研究の前の2週間にわたって隔離し、そして研究の間、適宜に食料および水を維持した。動物を、群(n=6)にランダムに割り当て、これらは、経口、経膣、経直腸、または皮下投与の組み合わせを受容した。経口接種を、200μlのPBS(0.05%のTween 20、1mg/mlのBSA、0.2M NaHCO(最終pH=8.1)、および40μgのntPE−V3MN26を含有する)の経口栄養により実施した。経膣、経直腸、および皮下接種物は、20μlのPBS(0.05%のTween 20を含有する)中に、20μgのntPE−V3MN26を含有した。マウス唾液(代表的には、50〜100μl)を、動物1匹当たり0.1mgのピロカルピンの腹腔内注射により誘発された過流涎の後、約10分にわたって、ポリプロピレンパスツールピペットを用いて回収した。血清サンプル(100μl)を、血清分離管を用いて、眼窩骨膜血から得た。回収した血清および唾液サンプルを、分析まで−70℃で保存した。
【0251】
別の研究において、マウスに20μgのntPE−V3MN26または20μgのntPEを皮下注射し、そして2週間および7週間追加免疫した。ntPE−V3MN26を受容した動物(n=3)とntPEを受容した動物(n=2)の1組に、40μlのフロイント完全アジュバントを最初に、そして40μlのフロイント不完全アジュバントを、2週間および7週間で同時に投与した。40μlの通常の生理食塩水中で処方した20μgのntPE−V3MN26を投与した動物(n=3)の1組を、コントロールとして供した。血清サンプル(100μl)を、毎週ベースで得、そして上記のように保存した。
【0252】
(3.抗体応答の測定)
抗gp120特異的抗体を、酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)により測定した。簡潔には、Costar9018E.I.A./R.I.A.96ウェルプレートを、1μg/ウェルのMN gp120でコーティングし、PBS(0.05%Tween20(v/v)を含有する)で3回洗浄し、次いでPBS(1%BSAを含有する)で、一晩4℃にてブロックした。PBS/Tween20で洗浄した後、プレートを血清または唾液サンプルの希釈物(PBS/Tween20(0.1%BSAを含有する)で希釈した)でインキュベートした。プレートを、穏やかに撹拌しながら室温で2時間インキュベートし、次いで、 PBS/Tween20で3回洗浄し、そしてビオチン複合体化ヤギ抗マウスIgAまたはIgGとともにインキュベートするか、あるいはIgGサブクラスまたはIgE応答を決定するために、ビオチン複合体化ラット抗マウスIgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、またはIgEで、1時間、同様のインキュベーション条件を用いてインキュベートした。PBS/Tween20で洗浄した後、西洋ワサビペルオキシダーゼ複合体化ストレプトアビジンを添加した。結合抗体を、ExtrAvidin(登録商標)ペルオキシダーゼ複合体(Sigma)、2,2’−アジノ−ビス(2エチルベンズチアゾリン−6−スルホン酸(Sigma)により視覚化し、そしてリン酸−クエン酸緩衝液(尿素および過酸化水素を含有する)を用いて、405nmにて結合抗体を定量した。
【0253】
(B.結果)
(1.IgA抗体はntPE−V3MN26に対して応答する)
動物に、種々の経路にて、nt−V3MN26を接種し(n=6/群)、次いで第14日目および第21日目に、次いで第16ヶ月目に、2回追加免疫した。 動物は、経口的に(PO)、経膣的に(V)、経直腸的に(R)、経膣的および経口的に(V/PO)、経直腸的および経口的に(R/PO)、または皮下的に(SC)のいずれかで、nt−V3MN26を受容した。唾液サンプルを、第30日目、第60日目、および第90日目に回収し、次いで第16.5ヶ月目に再び、抗原特異的IgAについて分析した(図11)。アッセイを標準化するための抗V3ループIgA抗体なしで、1つの強くポジティブなサンプルに対して応答を正規化した。抗原特異的IgAユニットの任意のスケールについて値を報告した。全ての投与群は、第30日目および第60日目にて、同等の唾液IgA応答を示した。第90日目までに、最初に経膣投与を受容し続いて経口追加免疫を受容した群において、最も強い唾液IgA応答が観察された。第16.5ヶ月目にて、全ての経口群、全ての経膣群、および全ての経直腸群は、最も高いレベルの抗原特異的唾液IgAを示した。組み合わせの粘膜接種群(経膣/経口および経直腸/経口)の応答は、皮下的に投与された群において観察された応答と同等であった。
【0254】
これらの唾液IgA応答が、唾液成分に対する抗原特異的結合を反映し、かつ非特異的結合は反映しないということを確認するために、免疫前唾液サンプルを評価し、そしてV3ループペプチドとntPEとの混合物をマウスに投与する研究を実行した。この研究は、未希釈の免疫前唾液サンプルが、ELISAフォーマットにおいて測定可能なバックグラウンドを示さないことを示した。ntPEと未結合体化V3ループ(ジスルフィド結合で束縛されている)を同時に投与した動物もまた、測定可能なMN gp120特異的IgAレベルを有さなかった。これらの結果は、ELISAにおいて非特異的交差反応性が少しであったか、または全くなかったことを示している。
【0255】
検出可能な抗体特異的血清IgA応答は、1ヶ月、2ヶ月、または3ヶ月のサンプリング時間において、いずれの投与群においても観察されなかった。しかしながら、16.5ヶ月目において、全ての群から回収された血清は、抗原特異的IgAを示した(表1)。この時点における血清IgAを検出する能力は、特異的刺激に起因するものではなく、高められた全免疫応答に起因し得る可能性がある。興味深いことに、相対的な血清IgAレベルは、唾液IgAレベルと相関しなかった。例えば、経直腸/経口の組合せ接種は、より弱い記憶唾液IgA応答の1つを生じたが、最も強い記憶血清IgA応答を生じた(表1、図11)。全ての経口群、全ての経膣群、または全ての経直腸群(これらは第16.5ヶ月にて最も大きい唾液IgA応答を提供した)は、この時点で、最も弱い血清IgA応答をいくつか有した。ntPE−V3MN26の粘膜投与(ここで、唾液および血清の対向するレベルが標準値である)とは異なり、ntPE−V3MN26の皮下接種は、マウスの唾液および血清の両方において、中程度のIgA応答を生じた(表1、図11)。IgA産生の刺激が何であっても、抗原特異的血清IgAレベルは一過性であった。第22ヶ月のサンプリングにて、経直腸/経口群のちょうど2つの動物は、MN gp120を認識する測定可能な血清IgAに対して、ポジティブのみを示した。他の群は、皮下注射群でさえも、この時点で、いかなる検出可能な血清IgAレベルも示さなかった。
【0256】
表1.ntPE−V3MN26での免疫化は、マウスにおいて抗原特異的血清IgAおよび唾液IgGの産生を刺激する
【0257】
【表1】

【0258】
免疫は、第0日目、第14日目、第21日目、および第16ヶ月目において、経口的に(PO)、経膣的に(V)、経直腸的に(R)、または皮下的に(SC)のいずれかで、動物に実行された。
【0259】
MN gp120特異的IgAレベルは、第16.5ヶ月目にてELISAにより測定され、そして単一のサンプル標準に対して正規化され、そして任意の単位で報告された。
【0260】
MN gp120特異的IgGレベルは、第16.5ヶ月目にてELISAにより測定され、そしてマウスモノクローナル抗体(1F12)(これは、タンパク質のV3ループを認識する)に対して校正された。
【0261】
(2.IgG抗体は、ntPE−V3MN26に応答する)
ELISAにより測定された血清および唾液の抗原特異的IgG応答を、マウスモノクローナル抗体(1F12)(これは、MN gp120のV3ループを認識する)を用いて標準化した。アッセイは、1F12について0.05〜2.5μgの範囲にわたって直線状であり、そして免疫前血清および唾液は、ELISAフォーマットにおいてネガティブであった。最初の接種とそれに続く2回の追加免疫により生じたIgG応答は、皮下注射群において最終的に最も大きかったが、全ての粘膜接種群は、第30日目、第60日目、および第90日目において、強い血清IgG応答を示した(図12)。第16ヶ月目におけるntPE−V3MN26追加免疫の2週間後、皮下注射群は、最も高い血清IgG記憶応答を有した。全ての粘膜群はまた、この時点で、強い記憶応答を示した(図12)。しかしながら、第22週目までに、抗原特異的血清IgG力価は、全ての群において減少した。
【0262】
(3.血清および唾液のIgGおよびIgAレベルの比較)
先行する研究は、血清IgGが粘膜表面上で漏出し得、おそらく免疫保護のいくつかの形態を提供することを示唆してきた。M.B.Vasudevachariら(1992)J.Acquir.Immune Defic.Syndr.5:817−821。他の研究は、このような漏出事象を示すことができていない。E.−L.Johanssonら(1998)Infect.Immun.66:514−520。これらの研究において、抗原特異的IgGは、唾液サンプルにおいて、第1ヶ月目、第2ヶ月目、および第3ヶ月目にて観察されなかったが、第16ヶ月目の追加免疫後、検出可能なレベルまで上昇した(表1)。全ての粘膜投与された動物の群は、この時点で同等の唾液IgG応答を有しており、これは皮下的にntPE−V3MN26を受容した動物について観察された唾液IgG応答よりも大きかった(表1)。血清および唾液の抗原特異的IgGの相対的なレベル間に相関性がないこと(図12、表1)は、血清および唾液のIgGプールの分離が、この記憶応答から生じることを示唆している。従って、本研究における唾液中に存在するIgGは、循環する血清抗体からの「溢流出(spill−over)」ではなく、局所的な抗体産生から、有意な程度で生じ得るように見える。
【0263】
(4.血清IgGアイソタイプは、ntPE−V3MN26に応答する)
マウスにおいて、Th1応答の導入は、代表的にB細胞によるIgG2aおよびIgG3の産生をもたらすが、一方、Th2応答は、IgG1およびおそらくはIgE産生を生じる。A.K.Abbasら(1996)Nature 383:787−793。Th1またはTh2応答のいずれかの発達は、特定のサイトカイン(例えば、インターフェロン−γおよびIL−4)により駆動される。ntPE−V3MN26の皮下注射による全身的導入、あるいは経口的、経膣的、または経直腸組織的な適用によるntPE−V3MN26の導入のいずれかは、抗原特異的血清IgG応答に発達をもたらす。これらの血清サンプルのIgGアイソタイプ集団が研究され、そしてMN gp120特異的応答は、IgG1により支配されていた(約55%)ことが見出された。より少なくかつ同等の量の抗原特異的IgG2a(約20%)およびIgG2b(約20%)が、少量(約5%)のIgG3と共に見出された。抗原特異的IgEは検出されなかった。これらの結果は、ntPE−V3MN26の皮下投与が、Th2表現型支配を有するBALB/cマウスにおけるTh1およびTh2応答の両方を誘発することを示唆する。
【0264】
(VIII.アジュバントとしてのntPE−V3MN26の評価)
アジュバントは、接種の部位において抗原の提示を促進しおよび/または免疫応答を活性化するために作用し得る。F.R.Vogelら(1995)、ワクチンアジュバントおよび賦形剤の要約、141〜228頁。M.F.Powell、およびM.J.Newman(編)、VACCINE DESIGN中:THE SUBUNIT AND ADJUVANT APPROACH、第6巻、Plemun Press、New York。入手可能な最も強力なアジュバントのうちの1つとして認識されたフロイントアジュバントは、鉱油、界面活性剤、およびMycobacterium tuberculosisの混合物である。ntPE−V3MN26による血清IgG導入の効率を評価するための研究は、最初にntPE−V3MN26とフロイント完全アジュバントとをマウスに皮下注射し、14日および49日後にntPE−V3MN26とフロイント不完全アジュバントとで追加免疫し、次いでIgG血清応答を、フロイントアジュバントなしでntPE−V3MN26を受容した動物のIgG血清応答と比較することにより、実施した(図13)。フロイントアジュバントの代わりに通常の生理食塩水を用いる、ntPE−V3MN26の同様の皮下投与レジメンを受容している動物は、このキメラをフロイントアジュバントと共に受容する動物において観察された免疫応答のほぼ3分の1の抗原特異的免疫応答を示した。この時間枠にわたるntPE−V3MN26の応答のレベルは、第1ヶ月目、第2ヶ月目、および第3ヶ月目において、図12中で図示された皮下注射群において観察されたレベルと同様であり、このことは、このキメラ送達のこの形態についての完全に一致する結果を示唆している。フロイントアジュバントのレジメンが無毒性PE(これは、MN gp120のV3ループを欠く)と共に注射されるコントロールは、測定される免疫応答の特異性を示した(図13)。
【0265】
本発明は、Pseudomonas体外毒素A様キメラ免疫原、および免疫応答を惹起する方法を提供する。特定の実施例が提供されてきたが、上記記載は例示であって、限定するものではない。本発明の多くの改変は、本明細書を検討すると、当業者に明らかになる。従って、本発明の範囲は、上記記載を参照して決定されるべきではなく、添付の特許請求の範囲をその同等物の全範囲と共に参照して決定されるべきである。
【0266】
本出願中で引用された全ての刊行物および特許文献は、全ての目的のために、同じ程度まで、個別の刊行物または特許文献のそれぞれが個々に示されているかのごとく、その全体が参考文献として援用される。出願人は、この文献中におけるそれらの種々の参考文献の引用によって、いかなる特定の参考文献も、それらの発明に対して「先行技術」であるとは認めない。
【図面の簡単な説明】
【0267】
【図1】(AおよびB)ドメインIIとIIIとの間のIbおよびV3ループの相対的位置を示すPEおよびPE-V3ループキメラの模式図。PE毒性を除去するための単一アミノ酸欠失(ΔE533)の適切な位置もまた、示される。(C)単一のレターコードで表したアミノ酸配列(これは、ジスルフィド結合形成後にループコンフォメーションを生じるように設計された2つのシステイン残基を含む、HIV−1のMNまたはThai−E(TE)株のいずれか由来である、gp120のV3ループ配列(太字)と野生型PEのIbループを置き換えた)。V3ループ配列の導入のために使用された、固有のPstI制限部位の挿入は、Ibループ(イタリック)に隣接する野生型PEアミノ酸配列のいくつかの改変を生じた。無関連なコントロールペプチド挿入物をコントロールとして調製し、そしてntPE−fp16と命名する。計算された分子量は、全長の発現タンパク質について示される。野生型PE−−配列番号6;ntPE−V3MN14−−配列番号7;ntPE−V3MN26−−配列番号8;ntPE−V3Th−E26−−配列番号9;ntPE−fp16−−配列番号10。
【図2】SDS−PAGEによる分離後のntPE−V3ループキメラの特徴付け。(A)SDS−PAGEによる分離に続く、精製されたntPE−V3ループキメラのクーマシーブルー染色。約1μgのタンパク質を各レーンにロードした。(B)ntPE−V3ループキメラのウエスタンブロット分析。イモビロンP膜への移入後、タンパク質をインタクトなgp120/MN(1F12)またはgp120/Thai−E(1B2)に対して産生されたモノクローナル抗体でプローブした。16アミノ酸の無関連配列を、ntPE(ntPE−fp16)のIbループ領域へ挿入し、そしてネガティブコントロールとして本明細書で使用した。(C)プロテインGセファロ−ス上に固定した1F12または1B2のいずれかを用いる、免疫捕獲研究を使用して、種々のキメラタンパク質の表面上へのV3ループ配列の曝露を特徴付けた。タンパク質をクーマシーブルーでゲルを染色することによって可視化した。Gp120およびntPE−fp16を、それぞれポジティブコントロールおよびネガティブコントロールとして使用した。PE−V3ループタンパク質の捕獲を、1つの三角矢印によって示し、そしてgp120の捕獲を2つの三角矢印によって示す。左パネルは、抗体重鎖の(hc)の存在を示す。なぜなら軽鎖(lc)のみが、ゲルから流出したからである。右パネルは両鎖を示す。
【図3】V3ループアミノ酸配列挿入物は、野生型PEの二次構造を有意に変化させない。近UV(A)および遠UV(B)CDスペクトル(バックグラウンドスペクトルの減算に続く3回のスキャンの平均)を、計数的に円滑化し、濃度について補正し、そして平均残基重量楕円率の単位へ基準化した。(C)二次構造計算をSELCONフィッティングプログラムを使用して実施した。*計算したαヘリックス含量は、222nmで観測された楕円率の変化から決定した値と一致する。
【図4】毒性PE−V3ループキメラは、細胞生存率に影響する。H−ロイシン取り込みによって評価したタンパク質合成の程度を、種々の濃度の野生型PEまたはPE−V3MN26の毒性形態(553位でのグルタミン酸残基およびADPリボシル化可能な伸長因子2と共に)のいずれかへの18時間の曝露後のヒトA431細胞において決定した。
【図5】ntPE−V3MN26またはntPE−V3Th−E26のいずれかでの免疫後のウサギ血清の特徴付け。(A)組換えgp120/MNおよびgp120/Th−Eについて1:1000に希釈したウサギ抗血清のウエスタンブロット反応性を、SDS−PAGE、そしてタンパク質のイモビロンP膜への移入によって評価した。反応性一次抗体を西洋ワサビペルオキシダーゼへ結合体化させた二次抗ウサギ抗体によって検出した。(B)ntPE−V3MN26を注射した動物から得たウサギ血清を、50μg/mlまでの濃度で、競合する可溶性gp120/MNと共に予めインキュベートした。残存反応性を、(A)について記載されるように、固定化したgp120/MNのウエスタンブロット分析によって検出した。
【図6】ウサギへ投与したntPE−V3ループキメラは、インビトロでHIV−1感染性を中和し得る抗体応答を産生する。ウサギを、200μgのntPE−V3MN26で皮下的に免疫し、そして、2、4、12週後に同様に追加免疫した。最初の投与後27週までに回収した血清を、MTT色素転換アッセイによって評価したように、ヒトT細胞株、MT4をHIV−1MNによる殺傷から保護する能力について評価した。数値は、ウイルスによってチャレンジされないコントロールMT4インキュベーションに対して正常化された3連読み込みを表す。
【図7】Pseudomonas体外毒素A構造の図である。配列番号2に基づくアミノ酸位が示される。ドメインIaは、アミノ酸1〜252から伸長する。ドメインIIは、アミノ酸253〜364から伸長する。これは、アミノ酸265〜287のシステインによって形成されるシステイン-システインループを含む。フーリン(furin)は、アミノ酸279と280との間のシステイン−システインループ内を切断する。アミノ酸280で始まるPEのフラグメントは、サイトゾルへトランスロケーションする。アミノ酸345〜364が排除される構築物もまた、トランスロケーションする。ドメインIbは、アミノ酸365から399にかかる。これは、アミノ酸372および379のシステインによって形成されたシステイン−システインループを含む。このドメインは、全体的に排除され得る。ドメインIIIは、アミノ酸400〜613へかかる。アミノ酸553の欠失は、ADPリボシル化活性を排除する。小胞体配列REDLK(配列番号11)は、アミノ酸609〜613から、この分子のカルボキシル末端に位置する。
【図8】PE−V3ループキメラが、ネイティブPEと同様に輸送されることを証明する。Caco−2細胞のコンフルエントな単層が、組換えの酵素的に活性であるPseudomonas体外毒素(rEA−PE)に対して突端的に曝露された。種々のネイティブPE(rEA−PE)濃度での24時間の曝露によって生じた細胞殺傷を、HIV−1 MNgp120のV3ループの14または26アミノ酸のいずれかを含む、PEキメラの酵素的活性バージョンによる同様の処理によって生じた細胞殺傷と比較した。
【図9】PE−V3ループキメラが、血清IgG応答を誘導することを証明する。HIV−1 MNgp120(PEMN26)のV3ループの26のアミノ酸を含む無毒性(酵素的に不活性である)V3ループキメラを、6つの異なる接種プロトコルによってウサギへ投与した。記載された時間で取り出された血清サンプルを、モノクローナル抗体(1F12)(これは、アッセイ較正のために、このタンパク質のV3ループを認識する)を使用して、MNgp120特異的IgGについてELISAによってアッセイした。
【図10】PE−V3ループキメラが、唾液IgA応答を誘導することを示す。 HIV−1 MNgp120(PEMN26)のV3ループの26個のアミノ酸を含む無毒性(酵素的に不活性である)V3ループキメラを、6つの異なる接種プロトコルによってウサギへ投与した。記載された時間でのピロカプリン投与後に得られた唾液サンプルを、MNgp120特異的IgAについてELISAによってアッセイした。gp120特異的IgA抗体を、アッセイ較正のために利用し得なかった。値を、標準化ポジティブサンプルに対して正規化した値として報告する。
【図11】ntPE−V3MN26での粘膜接種または全身性接種後の唾液腺IgAの相対レベルを示す。MN−gp120特異的IgA抗体を、強いポジティブサンプルに対して正規化した唾液サンプルにおいてELISAによって測定し、任意のスケールの1つの抗原特異的IgAユニットで報告した。
【図12】ntPE−V3MN26での粘膜接種または全身性接種後のIgGの血清レベルを示す。MN−gp120特異的IgG抗体を、ELISAによって血清サンプルにおいて測定し、そしてマウスモノクローナル抗体(これは、MNgp120のV3ループを特異的に認識する)に対して正規化した。
【図13】ntPE−V3MN26の皮下注射後のIgGの血清レベルを示す。ntPE−V3MN26の注射から生じた免疫応答(斜線四角)を、フロイント完全アジュバントおよび不完全アジュバント(黒四角)のレジメンで同時注射した場合に誘導された免疫応答と比較した。MNgp120のV3ループからの26個のアミノ酸を含まない無毒性PEを、コントロ−ルと同様のアジュバントレジメンで注射した。MN−gp120特異的IgG抗体を、ELISAによって血清サンプル中で測定し、そしてマウスモノクローナル抗体(これは、MNgp120のV3ループを特異的に認識する)に対して基準化した。
【図14】本発明のキメラ免疫原で誘発した抗体での臨床的HIV単離物の中和を示す。ntPE−V3MN26を注射したウサギからの予防接種後の血清を、B(図14A)またはE(図14B)サブタイプウイルスのいずれかと混合した。37℃での1時間のインキュベーション後、ウイルス感染性を、別に3日間、PBMCへの処理されたウイルスの添加によって決定した。ウイルス増殖の阻害を、p24レベルを測定することによって評価した。白四角:p24抗原(未感染);黒丸:血清から分取後のp24抗原1;白丸:p24抗原1免疫血清(24週)。
【0268】
(配列表)
【表A−1】


【表A−2】


【表A−3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
無毒性Pseudomonas体外毒素A様(「PE様」)キメラ免疫原。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2009−79068(P2009−79068A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−316284(P2008−316284)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【分割の表示】特願2000−502207(P2000−502207)の分割
【原出願日】平成10年7月10日(1998.7.10)
【出願人】(500018619)ザ ガバメント オブ ザ ユナイテッド ステイツ リプリゼンテッド バイ ザ セクレタリー, デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズ (1)
【Fターム(参考)】