説明

RBC分析用の微小流体カード

赤血球の分析を含む全血球数のための微小流体回路カートリッジ。赤血球の種々のパラメータを得ることができる。カートリッジは、血球の沈降を減少させるか、または、なくすための構成を有するチャネルまたはループを有する球状化機構を有してもよい。チャネルまたはループは、重力環境で、直線経路と曲線経路の組合せを組み込んでもよい。チャネルは、あるいは、親水性または疎水性の内部表面を有してもよい。再びあるいは、チャネルは、電気湿潤可能な内部表面を有してもよい。または、チャネルは、電場または磁場を受けてもよい。サンプルの凝集を減少させるか、または、なくすための機構が存在してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析器に関し、特に、血液学分析器に関する。より詳細には、本発明は、取り外し可能なカードまたはカートリッジを有する分析器に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、2005年7月1日に出願された米国仮特許出願第60/696,162号の利益を主張する。2005年7月1日に出願された米国仮特許出願第60/696,162号は、参照により組み込まれる。
【0003】
本発明に関連する特許および出願は、2002年5月7日に発行され、「Fluid Driving System for Flow Cytometry」という名称の米国特許第6,382,228号、2003年7月22日に発行され、「Portable Flow Cytometry」という名称の米国特許第6,597,438号、2005年11月29日に発行され、「Optical Alignment Detection System」という名称の米国特許第6,970,245号、2003年4月15日に発行され、「Optical Detection System for Flow Cytometry」という名称の米国特許第6,549,275号、1998年11月17日に発行され、「Electrostatically Actuated Mesopump Having a Plurality of Elementary Cells」という名称の米国特許第5,836,750号、2004年12月30日に発行され、「Optical Detection System with Polarizing Beamsplitter」という名称の米国特許出願第11/027,134号、2005年5月16日に発行され、「Cytometer Analysis Cartridge Optical Configuration」という名称の米国特許出願第10/908,543号、および、2005年4月25日に発行され、「A Flow Control System of a Cartridge」という名称の米国特許出願第10/908,014号を含んでもよく、それらの全てが、参照により組み込まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、血球数測定の一部として、一部の赤血球指標を測定するための微小流体カードシステムを述べる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
システムは、サンプル凝集および/または粒子沈降を減少させるか、または、なくすための微小流体構造を含んでもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明は、一般に、サンプル分析器に関し、特に、医師のオフィス、家庭、またはフィールドの他のところなどで、患者のポイントオブケア時に使用するための、取り外し可能な、かつ/または、使い捨てのカートリッジを有するサンプル分析器またはサイトメータに関する。取り外し可能な、かつ/または、使い捨てのカートリッジあるいはカードに、必要とされる試薬および/または流体を入れることによって、サンプル分析器は、特別な訓練がほとんど無い、または、全く無い状態で、実験所環境の外部で確実に使用できる。本分析器は、たとえば、サンプル分析プロセスを合理化し、医療要員または他の要員にかかるコストおよび負荷を軽減し、比較的頻繁な血液監視/分析を必要とする患者を含む多くの患者についてのサンプル分析の便益を増加させるのに役立つ場合がある。
【0007】
粒子懸濁サンプル内での迅速でかつ効率的な粒子判別を可能にする手法はフローサイトメトリである。この手法では、粒子の懸濁液、通常、血液サンプル中の血球は、流路を通って運ばれ、流路において、サンプル内の個々の粒子が、1つまたは複数の集束された光ビームで照明される。光ビーム(複数可)と、流路を通って流れる個々の粒子との相互作用は、1つまたは複数の光検出器によって検出される。一般に、検出器は、特定のビーム波長または放出波長における光吸収または蛍光放出、および/または、特定の散乱角における光散乱を測定するように設計される。そのため、流路を通過する各粒子は、その吸収、蛍光、光散乱、あるいは、他の光学的または電気的特性に関連する1つまたは複数の機能に関して特徴付けられることができる。検出器によって測定される特性は、各粒子が、特徴空間内にマッピングされることを可能にしてもよく、特徴空間の軸は、光強度、または、検出器によって測定される他の特性である。理想的な状況では、サンプル内の異なる粒子は、特徴空間の全く異なり、かつ、オーバラップしない領域内にマッピングされ、各粒子が、特徴空間内でのマッピングに基づいて分析されることが可能になる。こうした分析は、粒子の、計数、識別、(1つまたは複数の物理的特徴に関する)定量化、および/または分類を含んでもよい。
【0008】
1つの具体的な例では、収集された全血サンプルなどの収集されたサンプルを受け取る取り外し可能カートリッジを有するサンプル分析器が設けられてもよく、また、取り外し可能カートリッジが設置され、かつ、分析器が起動されると、分析器およびカートリッジは、サンプルを自動的に処理してもよく、分析器は、ユーザが臨床決定を行うために十分な情報を提供してもよい。一部の例では、分析器は、さらなる計算または解釈がユーザによって要求されないように、(たとえば、定義済の範囲の内側および/または外側の)定量的結果を表示するか、または、印刷出力してもよい。
【0009】
サンプル分析器は、たとえば、血液サンプル内の血球の数および/またはタイプを決定するのに使用されてもよい。具体的な例では、分析器は、ハウジングおよび取り外し可能流体カートリッジを含み、ハウジングは、取り外し可能流体カートリッジを受け取るようになっている。場合によっては、取り外し可能流体カートリッジは、使い捨てカートリッジである。具体的な例では、取り外し可能流体カートリッジは、1つまたは複数の試薬(たとえば、球状化剤、溶解試薬、シージング剤、染料、および/または希釈液、1つまたは複数の分析チャネル、1つまたは複数の流量センサ、1つまたは複数のバルブ、および/または、サンプルを処理し(たとえば、球状化し、溶解し、シージングし、染色し、または、その他を行い)、処理されたサンプル(複数可)をカートリッジ上の適切な分析チャネルに送出するようになっている流体回路を含んでもよい。カードを支持するために、ハウジングは、たとえば、圧力源、1つまたは複数の光源、1つまたは複数の光検出器、プロセッサ、および電力源を含んでもよい。圧力源は、取り外し可能流体カートリッジポートに適切な圧力(複数可)を提供して、流体回路を通して必要に応じて流体を押し出してもよい。分析器の1つまたは複数の光源は、取り外し可能流体カートリッジの少なくとも選択された分析チャネルにおいて、調製されたサンプルに問い合わせるのに使用されてもよく、また、分析器の1つまたは複数の検出器は、サンプルを通過する、サンプルによって吸収される、かつ/または、サンプルによって散乱される光を検出してもよい。プロセッサは、光源と検出器、および、おそらく、流量センサ、バルブ、および/またはポンプのうちの少なくとも一部に結合し、サンプルの1つまたは複数のパラメータを決定してもよい。一部の例では、取り外し可能流体カートリッジ上の1つまたは複数の分析チャネルは、1つまたは複数のフローサイトメトリチャネルを含んでもよい。一部の具体的な例では、全血サンプルは、取り外し可能流体カートリッジに提供されてもよく、また、取り外し可能カートリッジは、血液分析を実施するようになっていてもよい。
【0010】
本発明は、赤血球(RBC)数、球状化RBC、血小板数、RBCの溶解、RBCの平均血球容積決定、白血球(WBC)のマルチパート分画、ヘモグロビン吸収度ベース測定、RBC、血小板、WBC、ヘモグロビンなどの種々の付加的な指標を含むアイテムのうちの1つまたは複数のアイテムを得るための、マイクロスケールフローサイトメータ、血球の単一ファイルストリームを生成するための流体力学的集束、および、空気圧流体ドライバシステムに基づいて全血球数(CBC)カードを提供してもよい。さらなるアイテムが、本システムによって提供されてもよい、かつ/または、本システムの一部であってよい。
【0011】
機能試験用のカードを得るために、RBCおよび血小板の測定および計数を試験するためのカードが使用されてもよい。このカードは、オフカード試薬格納部からの容積ベースの送出によって供給される流体および流量センサを有する、ウェットインタフェースを使用してもよい。保持される唯一のオンカード格納部は、廃物タンクおよび全血サンプルループであってよい。
【0012】
図1aは、具体的なサンプル分析器およびカートリッジの斜視図である。具体的なサンプル分析器は、全体が10で示され、ハウジング12および取り外し可能な、または、使い捨ての流体カートリッジ14を含んでもよい。カートリッジまたはカード14は、本明細書で述べた堆積物防止チャネルを有する赤血球数(RBC)のためのものであってよい。具体的なハウジング12は、ベース16、カバー18、および、ベース16をカバー18に取り付けるヒンジ20を含んでもよいが、これは、かならずしも必要とされない。具体的な例では、ベース16は、サンプル分析器の動作用の、関連光学部品および必要な電子部品と共に、第1光源22a、第2光源22b、および第3光源22cを含む。光源は、それぞれ、用途に応じて、単一光源または複数光源であってよい。場合によっては、ハウジングの全体寸法は、所望に応じて、28,320立方センチメートル(1立方フィート)未満、14,160立方センチメートル(2分の1立方フィート)未満、7,079立方センチメートル(4分の1立方フィート)未満、またはそれより小さくてもよい。同様に、ハウジングの総重量は、所望に応じて、4535.924グラム(10ポンド)未満、2267.962グラム(5ポンド)未満、453.5924グラム(1ポンド)未満、またはそれより小さくてもよい。
【0013】
具体的なカバー12は、圧力源(たとえば、コントロールマイクロバルブを有する圧力チャンバ)、第1光検出器24a、第2光検出器22b、および第3光検出器22cを含み、光検出器は、それぞれ、関連光学部品および電子部品、たとえば、プロセッサを有する。光検出器は、それぞれ、用途に応じて、単一光検出器または複数光検出器であってよい。用途に応じて、所望である場合、偏光器、スプリッタ、および/またはフィルタが設けられてもよい。
【0014】
具体的な取り外し可能カートリッジ14は、具体的な例では、ランセット32を含むサンプル収集器ポートを介してサンプル流体を受け取るようになっていてもよい。ランセット32は、一部の例と同様に、伸縮自在であってもよく、かつ/または、ばねで正常位置に留められてもよい。取り外し可能カートリッジ14が使用されないとき、サンプル収集器ポートおよび/またはランセット32を保護するために、キャップ38が使用されてもよい。
【0015】
具体的な例では、取り外し可能カートリッジ14は、全血サンプルに関して血液分析を実施してもよい。ランセット32は、血液のサンプルを作るために、ユーザの指を突くのに使用されてもよく、血液のサンプルは、毛管作用によって、取り外し可能カートリッジ14内の抗凝血剤をコーティングされた毛管内に抽出されてもよい。取り外し可能カートリッジ14は、流体回路を用いて構築されてもよく、流体回路の一部は、エッチングされたチャネルを有する積層構造を使用して作製される。しかし、取り外し可能カートリッジ14が、所望に応じて、射出成形、または、任意の他の適した製造プロセスまたは方法を含む、任意の適した方法で構築されてもよいことを理解されたい。
【0016】
使用中に、また、血液サンプルが、取り外し可能カートリッジ14内に抽出された後に、取り外し可能カートリッジ14は、カバー18が開位置にあるときに、ハウジング内に挿入されてもよい。場合によっては、取り外し可能カートリッジ14は、ベース16内の位置決めピン28aおよび28bを受け取る穴26aおよび26bを含んでもよく、位置決めピン28aおよび28bは、器具の異なる部分間の整列および結合を提供するのに役立ってもよい。取り外し可能カートリッジ14は、また、第1透明フローストリーム窓30a、第2透明フローストリーム窓30b、および第3透明窓30cを含み、それらは、それぞれ、第1、第2、および第3光源22a、22b、および22cならびに第1、第2、および第3検出器24a、24b、および24cに整列状態になる。
【0017】
カバーが閉位置に移動し、かつ、システムが加圧されると、カバー18は、圧力供給ポート36a、36b、36c、および36dを介して、具体的な取り外し可能カートリッジ14内の、それぞれ、圧力受け取りポート34a、34b、34c、および34dに制御された圧力を提供してもよい。用途に応じて、より多くのまたはより少ない圧力供給ポートおよび圧力受け取りポートが使用できることが考えられる。別法として、または、付加的に、取り外し可能カートリッジ14上の流体回路を動作させるための、必要な圧力を提供するために、静電気により作動するメソポンプなどの1つまたは複数のマイクロポンプが、取り外し可能カートリッジ14上に、または、カートリッジ14内に設けられてもよいことが考えられる。具体的な静電気により作動するいくつかのメソポンプは、たとえば、米国特許第5,836,750号、第6,106,245号、第6,179,586号、第6,729,856号、および第6,767,190号に記載され、それらの全ては、本発明の譲受人に譲渡され、かつ、参照により本明細書に組み込まれる。加圧されると、具体的な器具は、収集された血液サンプルに関して血液分析を実施してもよい。
【0018】
図1bは、具体的な例のRBCカートリッジまたはカード14の一部の態様を示す図である。サンプル収集器13に全血のサンプル11が入ることから始められてもよい。血液は、球オンザフライ注入器(sphere on the fly injector)15に推進されてもよい。サンプル、同様に、球状化流体およびシージング流体をプッシュするための流量は、ポンプ機構または流量コントロールボックス17によって提供されてもよい。球オンザフライ注入器15用の球状化流体は、球状化溶液リザーバ19からもたらされてもよい。溶液および血液は、球状化チャネル21を通って、流体力学的集束チャンバ23へ進んでもよい。シージング流体は、シースリザーバ25から流体力学的集束チャンバ23へ進んで、検出および分析のための光学チャネル29によって、球状化赤血球を単一ファイル27内に整列させるのに役立ってもよい。血球が、光学チャネル29を通って進んだ後、血球および流体は、廃物格納部31へ進んでもよい。
【0019】
本システムは、血球(たとえば、RBC、PLTなど)を計数し判別し、また、光学検知を使用してサイトメータチャネル内で血球サイズ(直径、容積)を測定するのに使用されてもよい。レーザ(または、他の)源は、細長い線源として、または、2つの別個のスポット源として、サイトメータまたは流路内に集束されてもよい。血球は、集束光を通してサイトメータチャネル内を流れるように作られてもよい。
【0020】
血液サンプルに対する光学手法を用いて、いくつかの主なまたは主要なパラメータ(たとえば、指標)、赤血球(RBC)数(血球数/μL)、血小板(PLT)数(血球数/μL)、平均血球容積(MCV)、および赤血球分布幅(RDW)が得られてもよい。MCVは、実際上、RBCの平均サイズの測定値である。RDWは、RBC間のサイズの変動である。RBCのサイズの変動が大きくなればなるほど、RDWが大きくなる。
【0021】
RBC数は、分析下の血液の単位容積当たりのRBCの実際の数である。Hctは、RBC×MCVであるヘマトクリットであり、血液の酸素搬送容量(すなわち、分析下の単位容積内の血球の全ての総容量)の尺度に等しい場合がある。Hctは、また、RBCが血液中で占める空間量または赤血球からなる全血の割合とみなされてもよい。MCHは、「平均血球ヘモグロビン」であり、実際上、各RBC内のヘモグロビン量である。MCHは、ピコグラム単位の、個々のRBC内のヘモグロビンの平均質量またはほぼ平均質量とみなされてもよい。MCH=Hb÷RBCである。Hbは、分析下のサンプルの単位容積当たりのヘモグロビン量である。MCHCは、「平均血球ヘモグロビン濃度」であり、RBCのそれぞれの中の単位容積当たりのヘモグロビン濃度とみなされてもよい。MCHC=Hb÷Hctである。
【0022】
システムは、本質的に光学的な技法のコントロール電子部品またはプロセッサによって、測定パラメータのセットを含む情報を提供してもよく、測定パラメータの集合は、血球流量(FR)、測定時間(T)、希釈率(DF)、計数されたRBCの数(NRBC)、計数された血小板の数(NPLT)、ヘモグロビン量(Hb)、および、各血球の直径(ミクロン)(drbc)を含む。<drbc>は、集合{drbc}で示される、血球の測定された血球直径の平均である。計算された主要なパラメータの一部は、RBC=NRBC÷(DF×FR×T)、PLT=NPLT÷(DF×FR×T)、MCV=(π/6)×<drbc>、およびRDW=SD{[(π/6)drbc]}÷MCVを含み、ここで、SDは、測定量の標準偏差を示す。計算されたパラメータは、Hct=RBC×MCV、MCHC=Hb÷Hct、およびMCH=MCHC×MCVを含んでもよい。
【0023】
血液サンプルは、サンプル調製モジュールに進んでもよい。赤血球は、球でない形状から球に変えられてもよい。赤血球の元の形状は、平坦カップ形状である傾向がある。この再成形は、等容積球状化と呼ばれてもよい。球状化流体は、たとえば、米国特許第4,412,004号においてOrnsteinおよびKimによって述べられるように、赤血球を球に似た血球に再成形するのに使用されてもよい。球状化流体は、サンプルの赤血球に影響を与えるだけに見える。
【0024】
手法のうちの1つは、赤血球数(RBC)カードを必要とする。1つの関心事は、流路内で流体流量および赤血球の分布の精密なコントロールを達成することである。1つの役立つ特性は、システムの剛性である場合がある。システムが、非常に低い機械および流体柔軟性を有する場合、流量センサがオフカードであっても、良好な流量コントロールが可能である。これは、機械的に剛性のあるカード、たとえば、厚い壁を有するカードを必要とする場合がある。
【0025】
別の関心事は、サンプルループである。小さな通路によって接続された小さな断面を有するチャネルは、以下の特性を提供する場合がある。特性は、サンプルプッシュバックを減少させる、背圧を増加させるための流体抵抗の増加、プッシャ流体によるサンプルの掃き出しの改善、より小さなチャネル壁による機械的剛性の増加、および完全湿潤(wet−out)中における、捕捉されたガス気泡のサイズおよび数の減少による流体剛性の増加を含んでもよい。同様に、小さな壁の粗さは、捕捉される気泡を最小化する可能性がある。
【0026】
球状化チャネル内での沈降物理学が留意されてもよい。赤血球は、約1.1の比重を有し、希釈された血液中で即座に沈降し始める。沈降速度Usettlingは、流体粘度、粒子のサイズと形状、ならびに、粒子と流体の密度の関数である。たとえば、ニュートン流体内の硬い球の沈降速度は、
settling=(2/9)aΔρg/μ
であり、ここで、aは球の半径であり、gは重力の加速度であり、μは流体粘度であり、Δρは、球と周囲流体との間の密度差である。他の粒子形状は、摩擦抗力と浮力の均衡から得られる、異なる沈降速度を有してもよい。
【0027】
チャネル内の任意の位置における血球の局所的な数密度は、沈降によって影響を受ける場合がある。サイトメトリでは、粒子は、一般に、チャネルの中心に置かれる。粒子堆積は、壁に沿って粒子を捕捉することによって粒子計数精度に悪い影響を及ぼす場合があり、そのため、こうした粒子は、計数されないであろう。
【0028】
堆積を回避する1つの方策は、重力の方向を基準にしてチャネル流の方向を回転させることを含んでもよい。この方策は、堆積することなく、チャネル内での粒子の滞留時間の増加を可能にする場合がある。無次元堆積パラメータSは、
S=(δ/w)−(Usettling/w)Σ(cosθΔt)>0
によって定義されてもよく、ここで、δは、壁からの粒子の初期距離であり、wは、幅が変動するチャネルの局所幅である(図2aおよび2bは、それぞれ、初期セクションと「i」セクションについてのものである)。下付き添え字0は、チャネルの始めにおける初期値を指し、下付き添え字i=0,1,2,…は、チャネル方向の各変化を指す。シグマ記号Σは、下付き添え字iの各値にわたる、括弧内の以下の量の和を表す。角度θは、重力の方向と、壁に垂直な粒子を通る線との間の角度である。時間Δtは、壁から距離δにある粒子が、チャネルのセクションiを通過するのにかかることになる時間量である。Sの正の値は、粒子が壁に接触しないことを保証する。
【0029】
図2aおよび図2bは、流体チャネルの初期セクションと下流セクション「i」における粒子の略図であり、重力方向gと、壁からの粒子の距離δとの間の角度θを示す。重力に関してチャネル方向が変わるだけでなく、チャネルwの幅が、セクションごとに変わってもよい。チャネル方向を変えることは、チャネル壁に沿って粒子が堆積することなく、チャネル内での粒子の許容可能な滞留時間を増加させる場合がある。
【0030】
球状化操作(すなわち、段階希釈(serial dilution))に関して、球状化チャネルは、サンプルの小さな流れをシージングする大きな希釈液流によって装填されてもよい。装填された流体は、その後、サンプルの小さな流れによって吐出されてもよい。
【0031】
図3は、具体的に示すために、互いに離れた、RBCカード40の層41、42、43、44、45、46、47、48および49を示す。図4、5、6、7、8、9、10、11および12は、サイトメータカード設計の層を示す寸法入り図面である。データムは、光学チャネル53において定義されてもよい。寸法は、データムに関して指定されてもよい。一般的な許容誤差は、特徴部上で10%以内であってよい。より厳しい許容誤差が所望される場合、特定の許容誤差を要求してもよい。
【0032】
図4は、層が積重ねられたカード40の平面図を示し、いくつかの流体回路詳細は、ミリメートル(mm)単位の一部の寸法を有する。図5は、一部のチャネル詳細を有する層42を示す。図6は、層42上の一部のアイテムの詳細を示す。図7は、一部の詳細と共に層43を示す。図8は、沈降防止ループ51を含む詳細を有する層44を示す。図9は、カード44のループ51を含む、いくつかのアイテムを詳細に示す。図10および図11は、それぞれ、層45および46を示す。図12は、廃物チャンバのリブ52を含む層47を示す。
【0033】
微小流体回路のコンポーネントの多くは、図20および図21の表に指示された容積および断面(幅と高さ)を有する長くかつ狭いチャネルであってよい。高さ寸法は、チャネル内での圧力損失、堆積レート、および拡散速度に最も影響を及ぼすため、最小であり、かつ、最も厳しい許容誤差を有してもよい。チャネルの幅と長さは、しばしば、公称であってよいが、容積は、実際に、所定許容誤差を必要とする。
【0034】
図13は、RBCサイトメータカードの重要な特徴を明らかにする。サンプルは、ポート61を通してサンプルループ65内に装填された全血であってよい。球状化溶液およびシース流体(両者は、同じ流体であることができる)は、それぞれ、ポート63および64を通してカード内に圧送されてもよい。これらのポートは、試験多岐管上のOリング接続部に対応するように位置してもよい。ポート61は、血液サンプルを装填するのに使用されるシリンジ針先端に一致する大きさに作られてもよい。改善されたインタフェースは、カード60上に弾性隔壁に貫入する針を多岐管上に有してもよい。これらの針のベースは、エラストマに押し付けられてもよく、操作中に、柔軟性(compliance)の低いシールを提供する。検査後に、隔壁は、廃棄のためにカードを操作している間に、自己シールし、漏れを防止してもよい。
【0035】
ベント穴62は、充填されるときの、廃物タンク内の圧力増大を防止してもよい。ベント穴62は、液体ではく、ガスの通過を可能にする多孔性膜を有してもよい。サンプルループ65は、いくつかの理由で、長くかつ薄いチャネルであってよい。1つの理由は、システムダイナミックスを含む場合がある。大きな流れ(すなわち、球状化溶液およびシース流体)の中での過渡的事象に対するサンプル流の応答(たとえば、「プッシュバック」)は、流体抵抗およびインダクタンスを増加させることによって、また、サンプルループチャネルの柔軟性を減少させることによって低減されてもよい。別の理由は、サンプルの均一性を含む場合がある。サンプルプッシャ流体は、サンプルループ65からサンプルをきれいに掃き出す可能性が非常に高い。サンプルループ65が、短く幅広のチャネルであった場合、プッシャ流体は、チャネル中心を通って掃き出し、多量のサンプル血液が壁に沿って置き去りになるはずである。
【0036】
サンプル/希釈液注入器の射出成形版が存在してもよい。プラスチックフィルム積層体版の物理的形状は、異なってもよいが、その動作は、同じに見える。血液は、3層積層体の後縁内の穴から、より速く流れる希釈液(RBCカード内の球状化溶液)の周囲ストリーム内に吐出されてもよい。この後縁は、血液が、希釈液流によって、即座に平坦化されて、薄いリボン状になるように形作られてもよい。サンプル/希釈液注入器チャネルは、その後、狭くなってオリフィスになるため、流体チャネルが5層から1層へ薄化するときに捕捉されるであろう、気泡を掃き出すのに十分に流体速度が増加する。サンプル/希釈液注入器66は、プライミング中に、その浮力が、捕捉された空気が出るのを容易にするように、その出口を上部に置くように配置されてもよい。
【0037】
球状化チャネル67は、おおよそ、逆さのU形状であってよく、逆さのU形状は、球状化反応のための滞留時間を提供する広い垂直脚を有し、また、血球計数精度に悪い影響を及ぼすであろう、血球堆積を最小にするための、狭い水平脚を有する。
【0038】
集束チャンバ68は、サンプル/希釈液注入器66に対して、形態および機能が似ていてもよい。希釈されたサンプルは、後縁から、集束チャンバ68の5層の深い本体内に吐出される。後縁は、周囲シース流体が、吐出されストリームに側面から近づき、吐出されストリームを狭いストリームに圧縮するように、形作られてもよい。光学チャネル69が近づくにつれて、集束チャンバ68の側面が集束するため、流体力学的集束を継続することができる。サンプル/希釈液注入器の場合と同様に、集束チャンバの天井および床は、光学チャネルに至る前に、5層の深さからたった1層まで切換わるため、流体速度は、その領域で捕捉される可能性がある気泡を吐き出すのに十分に高い。集束チャンバ68は、プライミング中に、浮力作用が、捕捉された空気を除去するのに役立つように配置されてもよい。
【0039】
光学チャネル69は、使用中の積層技術および光学センサを用いて、できる限り狭くかつ薄くなってもよい。流体光学チャネル69の高さは、両側に3M−501FL接着剤(25ミクロン)の層を有する、50ミクロンPETキャリアフィルムからなる両面テープの厚さ(100ミクロン)によって設定されてもよい。光学チャネル69の幅(200ミクロン)は、ULS(商標)レーザ機によって生成することができるよりも狭いレーザカットによって設定されてもよい。層3〜5について、グリーンフィルタ材料から透明フィルタ材料へ切換えるという決定が行われる場合、光学センサ照明のチャネル壁からの反射を防止するために、光学チャネル69の幅は、300ミクロンまで増加してもよい。光学チャネル69が、支配的な流量制限である場合、また、カード内での対応する圧力上昇が、システムダイナミックスに悪い影響を及ぼす場合、光学チャネル69の長さは、できる限り短くされてもよい。成形技術は、光学チャネルおよび他の分析器カード構造の作製の他の展望を提供してもよい。
【0040】
廃物タンク70は、カード60内に注入された全ての流体の容積を保持する大きさに作られてもよい。廃物タンク70は、カード60が手で操作されている間に、廃物タンク70が、流体を変位させる蛇腹として働かないように柔軟性を最小にするためのリブ52を有してもよい。入口は、入ってくる流体が、流体流量の一時的な変動を導入する滴を形成するのではなく、代わりに、開いた面のあるチャネルを通してタンクの底部へ運ばれるように、設計されてもよい。
【0041】
カードは、カードの柔軟性をできる限りなくすために、剛性のある外層を有してもよい。柔軟性が低いことは、外部駆動流体流量に対する内部流体流量の忠実度が高いことを意味する。すなわち、高い忠実度=よりよいコントロールである。
【0042】
流量とタイミングならびにセットアッププロセスが留意されてもよい。図14に示すように、61において全血が事前装填されてもよい。その後、カード60は、多岐管内に入れられてもよい。図15に示すように、球状化溶液で、球状化チャネル67が完全湿潤してもよい。図16に示すように、集束チャンバ68、光学チャネル69、および廃物タンク70が完全湿潤してもよい。
【0043】
2ステップサイクルが、t=0秒で始まってもよい。図17に示すように、1.5μl/分で、プッシャ流体(a)を用いてサンプルを連続してプッシュする間に、継続期間=10秒によって、全血の正確な希釈を得るために、球状化ループは、450μl/分でポート63に対して球状化剤を充填されてもよい。図18に示すように、ポート64のシース流体は、450μl/分で流れてもよく、また、血球は、継続期間=60秒によって計数されてもよい。2ステップサイクルは、サンプルが使い果たされるか、または、廃物タンク70が一杯になるまで、繰り返されてもよい。
【0044】
容積許容誤差が留意されてもよい。流体を格納するコンポーネントは、特定の許容誤差を有するべきである。全血格納ループ65は、15〜18マイクロリットルの許容誤差で、16マイクロリットルの公称容積を有してもよい。希釈チャネルは、2.75〜3.3マイクロリットルの許容誤差で、3マイクロリットルの公称容積を有してもよい。廃物タンク70は、3000マイクロリットルの公称容積と2900〜3600マイクロリットルの許容誤差を有してもよい。
【0045】
チャネル幅許容誤差が留意されてもよい。図19に示すいくつかのチャネルの幅は、クリティカルであり、特定の許容誤差を必要としてもよい。チャネル壁に関する粗さ許容誤差は、0.010mm(0.0004インチ)であってよい。種々の寸法が留意されてよい。光学チャネル69は、+/−0.010ミリメートルの許容誤差で、0.2ミリメートルの公称寸法71を有してもよい。チャネル集束チャンバ68は、+/−0.010ミリメートルの許容誤差で、0.2ミリメートルの公称寸法72を有してもよい。球状化チャネル67の進入部の寸法73は、+/−0.010ミリメートルの許容誤差で、0.2ミリメートルの公称寸法を有してもよい。サンプル/希釈液注入器66は、+/−0.015ミリメートルの許容誤差で、0.39ミリメートルの公称寸法74を有してもよい。公称寸法75は、+/−0.050ミリメートルの許容誤差で、1.3ミリメートルであってよい。
【0046】
層厚さの許容誤差が留意されてもよい。比較的大きな柔軟性を有し、かつ、システムダイナミックスの問題を導入するチャネル特徴部が存在する場合がある。これらのエリアは、サンプルループ、集束チャンバ、および廃物タンクを含む。この柔軟性の問題の多くは、層41および47について、厚い材料の使用によって解決されてもよい。図20の表は、カードの各層の材料および所望の厚さ許容誤差を挙げる。これらは、流体性能および光学性能についての要件に基づいてもよい。これらの挙げた許容誤差の一部は、RBCカードについて概して利用される一般的な層厚さ許容誤差と比べて厳しくてもよい。これは、一般的な厚さ許容誤差が、マイクロ加工中に通常遭遇する許容誤差より大きいからである。たとえば、PMMAなどの一部の材料は、部品製造業者から購入されるシートごとに比較的大きな厚さ変動を有する。しかし、特定のシートにわたる厚さ変動は、一般に、ずっと小さい可能性がある。特定のシートから作られた特定のカードのロットは、この減少した変動を示すべきである。図20の表の層厚さ許容誤差は、取って代わるものとみなされ、品質コントロール手法で使用されてもよい。
【0047】
表面エネルギーは、湿潤するチャネル全体を通して均一であるべきである。40〜60ダイン/cmの総合的な値が、一般に、カードについて適切であってよいが、特定のカードの表面エネルギーの均一性は、数ダイン/cmに制限されるべきである。これは、湿潤速度が、それぞれの一定チャネル断面にわたってほぼ一定である気泡が全く無いチャネルの完全湿潤によって実証される場合がある。チャネル湿潤は、捕捉された気泡を流体前面の背後に残す湿潤速度サージを伴う休止を示すべきではない。
【0048】
品質コントロールは、作製されるカードについて以下のメトリックを含むべきである。各カードは、カード設計の重要な寸法に関する許容誤差を満たすべきである。組み合わせた層43〜45の厚さは、光学チャネル内の一貫した寸法について、0.02032cm+/−0.0005842cm(0.008インチ+/−0.00023インチ)であるべきである。チャネルの均一な表面特性は、それぞれの製造ロット内でのランダムなサンプルカードの気泡の無い完全湿潤によって検証されてもよい。カードのチャネルは、1ミクロンより大きいちり粒子、毛髪などが無い状態であるべきである。目的は、チャネル閉塞を回避すること、および、血球計数中における異物の干渉を回避することである。10psiゲージ圧のカードチャネルの加圧が、カード層間での流体の漏れを引き起こさないように、粘着層の十分な粘着力が存在すべきである。
【0049】
いくつかのRBCサンプリング代替物が存在してもよい。1つの代替物は、赤血球のオンザフライ溶解、2ステップ流体力学的集束、および空気圧流体ドライバシステムを含む、マイクロスケールフローサイトメータに基づく全血球数(CBC)カードを有してもよい。サイトメータに関して使用される光学/電子サンプリング周波数は、白血球(WBC)が測定チャネル内に到達する周波数に対処するのに十分に速くてもよい。血液の同じ容積内には、WBCに比べて、3桁多い赤血球(RBC)が存在する場合がある。血球到達周波数を、現行の光学/電子サンプリング周波数まで減少させるのに十分に、全血球サンプル流量を落とすことができないため、いくつかの代替のRBCサンプリング方策の1つの方策が、使用されてもよい。
【0050】
より高速な光学/電子サンプリング周波数が使用されてもよい。測定チャネル内における血球の到達周波数farrivalは、血球の数密度ρ(すなわち、サンプルの容積当たりの血球数)とサンプル流量Qsampleの積であってよい。
arrival=ρsample (1)
サンプルを正確に吐出する(これは、全体の測定精度にとって重要である)ために、サンプルについての設計流量は、Qsample≧3μl/分=0.05μl/秒に設定されてもよい。正常な全血中のRBCの数密度は、ρ=5,000,000血球数/μlであってよい。そのため、サンプリング周波数についての最低要件は、
sampling=farrival=5,000,000・0.05=250,000Hz
であってよい。これは、3,000Hzの現行のサンプリング周波数に比べて83倍速い。サンプリング周波数が増加する可能性があるが、2桁の増加は、通常、達成するのが困難である場合がある。さらに、VCSEL照明長(公称で20μm)が、同様に2桁だけ減少しなければ、血球コインシデンスが非常に高くなる場合がある。
【0051】
球状化し、次に、計数する段階操作が存在してもよい。最小サンプル流量要件を最大サンプリング周波数から分離する1つの方策は、段階バッチモードで動作することであってよい。この手法では、球状化溶液と血液サンプルは、拡散するように混合され、格納タンクに送られてもよい。流れ経路を変更するために、バルブが切換えられた後、球状化RBC溶液が、集束チャンバの通常注入ポートに圧送されてもよい。この方策は、段階希釈に対処してもよく、必要とされる希釈は、2つ以上の別個のステップで実施される。
【0052】
バルブおよび付加的な流量センサが、CBCカードに追加されてもよい。第2に、RBCは、約s.g.=1.1の比重を有してもよく、また、格納タンク内に沈降する傾向があるであろう。正常な全血内のRBCの平均血球直径をd=5.5μm=0.0055mmとし、球状化溶液の動粘度をν=1mm/秒(すなわち、水と同じ)とし、また、重力加速度をg=9810mm/秒として使用すると、球状化RBC溶液のRBCの沈降速度は、
settling=2/9(d/2)(s.g.−1)g/ν=0.00165mm/秒または99μm/分
であってよい。
【0053】
球状化RBC溶液が、中間格納タンクの底部または上部から圧送される場合、RBC堆積は、血球数を変える可能性を有する場合がある。球状化RBC溶液を格納することと、球状化RBC溶液を測定チャネルに圧送することとの間の、停止されたフロー時間Δtstoppedを最小にすることによって、影響が低減される場合があり、堆積物高さysettling、すなわち、停止されたフロー時間と沈降速度の積、ysettling=Δtstoppedsettlingと比べて、タンクの垂直寸法が、かなり大きいことが確保され、また、ysettlingを超えたところにある、格納タンクの出口から溶液が圧送される。
【0054】
球状化RBCのほとんどを廃物タンクに転送してもよい。段階プロセス方策を使用するのではなく、球状化RBC溶液を2つのストリームに分離する連続フロープロセスが利用されてもよい。1つのストリームは、廃物タンクに直接落とし込まれることになり、第2ストリームは、通常通りに、測定チャネルに流れることになる。サンプルの正確な量が、確実に測定されるようにするために、第2ストリーム上に、流量センサが必要とされてもよい。段階プロセス方策において指摘されたように、現行のサンプリングレートに一致させるために、球状化RBC溶液のサンプリングされるストリームは、総ストリームの1/83または1.2%であることになる。こうして、球状化RBCの98%以上が、廃物に転送されることになり、オンカード格納のやや非効率的な使用であるように見える。プロセスのコントロールは、球状化RBC溶液のサンプリングされるストリームについて正確な流量を達成するために、サンプルおよび希釈液ポンプを変えることによって能動的に、または、最大流量を超えないと仮定して、溶液の適切な容積がサンプリングされたときに血球計数を停止することによって受動的に達成されてもよい。
【0055】
別の手法は、測定チャネル内への球状化RBC溶液の2段階プッシュを使用することを含んでもよい。第1段階(段階1)は、最小サンプル流量と正確な希釈の両方を達成するために設定された流量QsampleとQdiluentを用いた全血サンプルおよび球状化溶液の平行流であってよい。球状化RBC溶液は、集束チャンバおよび測定チャネルにつながる長い球状化チャネルに充填し始めてもよい。しかし、溶液が集束チャネルに達し、サンプリングが開始する前に、所望の血球到来周波数が達成されるのに十分になるように、サンプル流を停止すること、および、希釈液流を低速化することを同時に行うことによって、第2段階が始まってもよい。球状化溶液だけの流れは、RBCが計数される間、継続してもよい。
【0056】
RBC計数が実施されている間に、球状化RBC溶液が、第2段階(段階2)の低速化プッシュ中に使い果たされないように、十分な容積の球状化RBC溶液を、球状化チャネルが第1段階中に充填されてもよい。表21の表は、式1(farrival=ρsample)および希釈係数DFから計算された種々の希釈比についてのサンプルおよび球状化溶液の流量を示す。希釈式は、
diluent=DFfarrival/ρ
であってよい。図21の表は、また、30,000血球数(count)を生じるはずである10秒のRBC計数時間を仮定して、段階1中に球状化チャネルに格納された球状化RBC溶液の容積を示す。
【0057】
実際の慣行では、段階1は、希釈係数に応じて球状化RBC溶液の25〜250μlを生じる、数秒(たとえば、5秒)間、続いてもよい。段階1の一部は、希釈液ポンプ流量が、段階2用の設計流量まで落ちる間の、段階2の始まりで使用されることになる。この時点で、光学部品および検出器は、計数を始める準備ができていることになる。計数後、球状化RBC溶液の残りは、パージされて廃物にされてもよい。
【0058】
この方策は、流れが決して止まらないため、堆積が減少し、両方の段階中に希釈液流量を測定するのに同じセンサを使用することができるために、付加的な流量センサが必要とされず、また、チャネルオン/オフを切換えるために、オンカードバルブが必要とされない点で、方策2の段階プロセスと異なる。
【0059】
図21の表は、3μl/分の最小サンプル流量と3,000Hzの最大サンプリングレートの両方に対処する、球状化RBC溶液の2段階プッシュについてのサンプルおよび球状化溶液の流量を示す。同様に、図21の表は、30,000血球数を生じる10秒検査に必要とされる球状化RBC溶液の最小容積を示す。段階1の流れは、高い希釈係数において非常に高いことが示される。
【0060】
この手法または方策のいくつかのアイテムは、以下のものを含んでもよい。球状化溶液用の流量センサは、段階1と段階2との間で2桁異なる流量を正確に測定する必要がある場合がある。これは、流量センサが、この広い範囲にわたってたとえ非線形であっても、これらの条件について較正されるため、達成可能である場合がある。球状化溶液流量を2桁変えることは、流体システム内のキャパシタンスのために、コントロールするのが難しい場合がある。最高の希釈係数において、高い球状化溶液流量(すなわち、典型的なシース流量の4倍以上)が必要とされる場合がある。球状化溶液流量を減少させるために、低い希釈係数(たとえば、DF=100)が、利用されることができるが、これは、血球コインシデンスを制限するために、相応して高いシース流量を必要とする場合がある。
【0061】
連続サンプルポンピングを用いた球状化RBCの2段階プッシュが存在する場合がある。先の方策の変形は、希釈液ポンプを使用する代わりに、第2段階のプッシュ中に、球状化RBC溶液をプッシュするサンプルポンプを利用することである場合がある。これは、第1段階と第2段階の両方の間に、サンプルポンプが、一定流量で動作することができるため、コントロールダイナミックスを単純化する場合がある。希釈液ポンプは、第1段階中に、1つの流量に達し、その流量を保持し、次に、シースポンプが始動する間に、第2段階の開始時に低速化し、停止する必要があるだけであることになる。図22のグラフは、RBCサンプリングのための球状化RBC溶液の2段階プッシュ中における、サンプルおよび希釈液ポンプについてのコントロール方式またはパターンを示す。ランプアップ中に格納された溶液は、RBCサンプリングが始まる前のランプダウン中に、測定チャネルを通して廃棄されてもよい。球状化RBC格納部の容積は、以下の流体が全血に向かう傾向があるため、RBCサンプリング期間の間、十分である必要がある。
【0062】
図23の表は、3μl/分のサンプル流量と、500μl/分のシース流量と、3,000Hzのサンプリングレートを仮定した、球状化RBCの2段階プッシュについての球状化溶液流量と血球コインシデンスを示す。同様に、表は、30,000血球数を生じる10秒検査に必要とされる球状化RBC溶液の最小容積を示す。段階1の流れは、高い希釈係数において非常に高いように見える。表は、必要とされる希釈液流量に及ぼす希釈比の影響および結果得られる血球コインシデンスを示す。
【0063】
いくつかの点が留意されてもよい。所望の希釈を持たないため、ランプアップ中に格納された球状化RBC溶液は、RBCサンプリングが始まる前のランプダウン中に、測定チャネルを通して廃棄されてもよい。これは、ランプアップ期間とランプダウン期間中に、希釈液ポンプによって、同じ容積の流体が移動することを確保することによって、容易にされてもよい。
【0064】
サンプル注入器と集束チャンバとの間のチャネル内に蓄積された球状化RBC溶液の容積(球状化RBC格納部)は、チャネル内の以下の流体が、益々希薄になり、全血の方に向かう傾向があるため、RBCサンプリング期間全体に供給するのに十分である必要がある。
【0065】
希釈液流量は、高く見え、また、サンプル注入器の下流の狭い拡散−混合チャネルの制限のため、ポンプに著しい背圧をもたらす場合がある。この制限は、チャネルがそこにわたって狭い長さを短縮し、かつ、z方向の厚さを保持することによる、幾何形状の再設計によって大幅に減少されてもよい。流体が、測定チャネルにまだ達していないことになるため、段階1の間、測定チャネルを通して圧力損失が存在しないことになることが留意されてもよい。
【0066】
希釈液流量は、サンプル流量に比例して減少することができる。たとえば、サンプル流量が、1.5μl/分に減少した場合、流量は、半分になることができる。
シース流量は、段階2のRBCサンプリング期間中にポンプの背圧を著しく増加させることなく、400〜500μl/分に増加してもよい。それは、希釈液ポンプが、その期間の間、オフであるからである。
【0067】
ダイナミックシステムにとって不安定となる場合がある(シースポンプが始動するときの)ランプダウン期間中に、測定チャネルを通した希釈液流とシース流との組合せによって、高い背圧が存在する場合がある。シース流は、希釈液ランプダウン期間中に、上昇することができるため、シース流量と希釈液流量の和が、ランプダウン期間とRBCサンプリング期間にわたってほぼ一定になる。
【0068】
希釈液とシースの同一の流量を用いた連続サンプルポンピングによる、球状化RBCの2段階プッシュが存在してもよい。シース溶液が、球状化溶液と同じであってもよいという可能性が考えられる場合、同じポンプを使用して、希釈液をプッシュすることと、シースをプッシュすることを切換えるバルブ操作を用いて、両方を順次に送出することが可能になる。図24は、この場合を示し、球状化RBC溶液が格納された後に、集束チャンバ内への流れを可能にする1つのバルブが開き、次に、球状化RBC格納チャネル内への流れを停止させる第2バルブが閉じる。
【0069】
図24は、RBCサンプリングのための球状化RBC溶液の2段階プッシュ中のサンプルポンプと希釈液ポンプについてのコントロール方式を示す。希釈液ポンプは、また、シース流体として使用される希釈液をプッシュするのに使用される。オンカードバルブは、チャネル間で流れを切換える。ランプアップ中に格納された溶液は、RBCサンプリングが始まる前のランプダウン中に測定チャネルを通して廃棄されることになる。球状化RBC格納部の容積は、以下の流体が全血に向かう傾向があるため、RBCサンプリング期間の間、十分である必要がある。
【0070】
図25の表は、希釈液とサンプル流量と、必要とされる血球数の数についてのサンプリング時間と、球状化RBC溶液に必要とされる格納部の容積との間のトレードオフを示す。示す場合では、得られるコアは、9×9ミクロンであり、または、集束チャンバの幾何形状によって操作される場合、25×3ミクロンである、すなわち、z方向に非常に薄くあるべきである。
【0071】
図25の表は、3,000Hzのサンプリングレートを仮定した、球状化RBCの2段階プッシュについての球状化溶液流量と血球コインシデンスを示す。サンプリング中に必要とされる球状化RBC溶液の量は、これらの動作条件について、典型的には1.5μl未満であることが留意されてもよい。
【0072】
方策5、一定サンプル流量を用いた球状化RBC溶液の2段階プッシュは、付加的なポンプ、バルブ、または流量センサを必要とせず、また、さらに、全血サンプル流量の要件Qsample≧3μl/秒と計数周波数の要件fsampling≦3,000Hzを満たすため、魅力があるように見える。考えられる難問は、段階1プッシュにおいて利用される大きな希釈液流量を用いたシステムのダイナミックなコントロールを維持することを含む。
【0073】
方策5の変形である方策6は、同じポンプ(および流量センサ)が、流路間の切換えを行うバルブ操作を用いて、最初は希釈液として、その後、シース流体として、球状化溶液を順次プッシュすることを可能にする。図25の表に挙げた動作条件のうちの1つの条件に進むことが提案されてもよい。
【0074】
手法は、ここで、球状化RBC溶液を生成するための流れを使用することと、球状化RBC溶液をシース流体として使用することを切換えるように、バルブが動作するときに、流量コントロールが、球状化溶液ポンプによって維持されることができるかどうかを判定することを含んでもよい。その後、希釈液ポンプからの流れが、最大流量の100%から50%までどれほど速く下降することができるかを判定することが存在してもよい。この時間は、シースポンプからの流量を最大値の0%から100%まで上昇させるのに必要とされる時間と比較されてもよい。サンプル注入器の下流の拡散混合チャネルは、この流体経路内での圧力損失を減少させるために再設計されてもよい。血小板サンプリングプロセスは、方策6にどの程度適合することができるか、また、血小板コインシデンスが管理し易いかどうかを判定するために分析されてもよい。
【0075】
RBCサイトメトリカード上の球状化チャネルの目的は、球状化プロセスが終了するように十分な滞留時間を用いて、全血の薄いリボン内の赤血球を球状化剤にさらすことであってよい。薄いリボン形状は、球状化剤が、赤血球に対して迅速に拡散し、その球状化作用を始動することを可能にするため、望ましい場合がある。しかし、全血が希釈されるとすぐに、赤血球は、血漿タンパクによって必ずしも所定位置に長く保持されるわけではなく、沈降し始める。球状化チャネルは、赤血球の堆積、重要な血球計数誤差源を最小にするように設計されてもよい。
【0076】
球状化チャネルは、RBCサイトメトリカードの流体チャネルのうちの1つの流体チャネルであってよい。RBCカードは図19に示される。球状化チャネル67は、寸法73と72との間の曲線セクションである。図26は、球状化チャネル67のパラメトリックスケッチである。球状化溶液111によって囲まれた全血の薄いリボン112(図27)は、73の左下の入口に入り、72の集束チャンバ内の出口へ流れてもよい。図27の視方向は、球状化チャネルに入るように下流を見ている。血球は、断面の4.8%を占める中心において薄いリボン112を形成すると考えられる。球状化チャネルの図26は、全てミリメートル単位で、r1=2.5、m=0.2、n=0.4、およびw=1.3であるパラメータ値を示す。
【0077】
球状化チャネル内での赤血球(血球)の滞留時間は、球状化剤が、赤血球を完全に球状化するのに十分に長い必要がある。しかし、血球は、周囲の水性溶液と比べて(その鉄含有量(ヘモグロビン)のせいで)濃いため、常時沈降する可能性があり、したがって、滞留時間は、必要に応じて最小に維持されるべきである。水平チャネル内では、その性質から、壁に対する非常に短い距離が存在し、血球堆積が起こる可能性がある。フロー速度が低い、壁に近い領域に到達する血球は、堆積物を形成する可能性があり、流れ内に再伴出される見込みがない。垂直チャネル内では、血球沈降は、上昇流内の血球数密度を減少させ、下降流内の数密度を増加させる場合がある。角の周りの層流内では、より速い速度が、内半径の近くにある。外半径流は、ずっと低速である傾向がある。これらの検討は、以下のアイテムをもたらす。水平チャネルは、局所的なフロー速度を増加させ、そこでの血球滞留時間を減少させるために狭く作られてもよい。垂直チャネルは、流れを低速化し、球状化チャネル内での滞留時間のほとんどを提供するために幅広に作られてもよい。垂直チャネルは、血球数密度の変動を最小にするために、同一長さの上昇チャネルと下降チャネルであることが確保されてもよい。血球が集まる低速流の領域をなくすように、角の周りでチャネルがスムーズに狭隘化されるべきである。
【0078】
初期条件は、以下のアイテムを含んでもよい。シミュレーションの始めでは、球状化チャネルは、純粋な球状化溶液で充填されてもよい。血球は存在すべきでなく、流体フロー速度は、ゼロであるべきである。実際には、球状化チャネルは、最初に、空気を充填されるため、チャネルを湿潤させる手法が存在してもよい。
【0079】
球状化チャネルの入口における境界条件は、球状化チャネルの装填−吐出サイクルを実施してもよい。入力流量は、経時的に変化してもよく、また、血球数密度は、入力フロー断面にわたって空間的に変わってもよい。血球の濃度プロファイルは、チャネル67入口の中心に位置する血球の薄いリボンを含んでもよい。血液流は、1.5μl/分で一定であってよい。球状化溶液流量は、最初の1秒の間にゼロから450μl/分へ上昇し、9.5〜10秒してゼロに戻るように下降し、その後、しばらくの間、ゼロのままであることが仮定されてもよい。本質的には、球状化溶液によって最初にシージングされた全血は、入口において球状化チャネル67に入り、集束チャンバに進んでもよい。球状化チャネルの出口は、(大気圧に対して)ゼロ圧力に維持されてもよい。
【0080】
血液と球状化溶液との間の運動量移行は、5.5μmの気泡(血球)直径を有する、(水カラム内の浮遊性気泡をモデル化するために最初に開発された)ウォーリス(Wallis)(1969)モデルを仮定してもよい。球状化溶液の密度は、ρ=0.001gm/lであってよく、動粘度は、0.001Pa・sである。血球の比重は、1.11と仮定され、比粘度は、5.5と仮定されてもよい。重力の加速度は、9810mm/秒と考えられる。
【0081】
球状化チャネルのモデルは、数値マルチフィジクス手法(numerical multiphysics approach)を使用して開発されてもよい。計算手法は、質量および運動量の保存による流体運動のモデル化を含んでもよい。デバイス幾何形状の本質的な特徴をモデル化するために、有限容積の計算メッシュが使用されてもよい。使用される数値手法(numerical approach)は、2つの流体(血球と球状化溶液)の運動および2つの流体間の運動量移行をモデル化する2流体法であってよい。数値手法は、各流体について別々の質量保存式と運動量保存式を解いてもよく、運動量保存式は、血球に対する重力による体積力と相間抗力との相互作用の包含を可能にする。これらの式は、各有限容積内の血球の容積分率として考えられる容積分率αによって関連付けられる。
【0082】
流体が球状化チャネルを通って進むときの流体のそれぞれの運動の計算は、各流体について運動量保存を独立に適用することによって達成されてもよい。ナビエ・ストークス方程式(Navier−Stokes equation)は、非圧縮性ニュートン流体のために使用されてもよく、システム内の流体にニュートンの第2法則を適用した結果である。ナビア・ストークス方程式は、
【0083】
【数1】

【0084】
であり、ベクトル速度u=(u,u,u)、血球の容積分率α、圧力勾配ΔP、流体密度ρ、流体粘度μ、および、重力と相間抗力を含む体積力Fを有する、複雑な3次元流体場について使用されてもよい一般式である。式は、2つの流体のそれぞれをモデル化するために、独立に解かれてもよく、その後、血球と球状化溶液との間の抗力に関して相間運動量移行関係(interphase momentum transfer relation)によって関係付けられてもよい。実際には、球状化溶液が、血液サンプルストリーム内に拡散し、血液サンプルストリームを希釈するにつれて、粘度が減少するときに、血球相について一定粘度が仮定されてもよい。
【0085】
サンプルループ内へのサンプルのプッシュバックは、サイトメータカードでは一般的である場合がある。プッシュバックは、希釈液流および/またはシース流の突然の開始による、サンプル/希釈液注入器内の圧力の突然の増加によって引き起こされる場合がある。圧力の増加は、カード構造または流体内の上流柔軟部内への逆流をもたらす場合がある。サンプル流量が小さいため、プッシュバック容積がたとえマイクロリットル未満であっても、サンプルが、注入器に戻るのに何秒もかかる場合がある。
【0086】
RBCカードでは、サンプルプッシュバックは、希釈液流の開始時点に応答してもよい。カードとシリンジポンプとの間に位置する流量センサは、いずれの明白な逆流もまだ示していないため、柔軟性が、サンプルループ内にあると疑われる場合がある。カードは、柔軟性がないか、または、物理的に剛性があるため、サンプル流体が疑われる。
【0087】
サンプル流体は、3つのカード内に装填されてもよく、3つのカードは、気泡、可能性の高い柔軟性の発生源があるかを検査される。2つのカードは、図28に示す設計81および82を有する場合がある。これらのカードは、チャネル端が、チャネル端間の通路より大きくなるように拡大している変形部を有してもよい。カードは、ほぼ2つの異なる流量で手作業によって装填されるか、または、充填されてもよい。1つの流量は、速い、すなわち、約5μl/秒であってよい。他の流量は、低速、すなわち、約0.2μl/秒であってよい。設計81および82では、約25ミクロン直径の気泡128が、チャネルの壁に沿って、時々、現れる場合がある。同様に、設計81および82では、大きな気泡129が、通路の後に位置する幅広の進入部チャネル内で発生する場合がある。設計83は、チャネル端間の通路と同じサイズであるチャネル端を有する。設計83では、いかなる気泡も発生すべきでない。高速充填を用いると、気泡を含む通路の割合は、設計83の場合、約30%、設計81および83の場合、約100%になる場合がある。低速充填を用いると、気泡を含む通路の割合は、設計83の場合、約0%、設計81および82の場合、約50%になる場合がある。
【0088】
壁に沿う小さな気泡は、充填中に空気を捕捉する可能性がある壁の粗さ(うねりではない)によって引き起こされる場合がある。設計83の壁は、設計81および82の壁より平滑であるように見え、そのため、より少ない気泡を示した。低速充填は、これらの気泡を最小にする場合がある。
【0089】
通路は、チャネル端と同じサイズであるべきである。チャネル端に対して小さな通路は、気泡形成に関係がある。チャネル端は、丸くふくらむべきではない。壁は、真っ直ぐであるべきである。通路の直径が、チャネル端に一致するように増加してもよく、または、チャネル端が、通路に一致するように減少すべきである。最も大きな気泡は、一般に、入力チャネルの端に現れる。こうしたチャネルは、気泡捕捉をなくすために、図28の設計83に示すように変更されるべきである。
【0090】
図29〜34は、RBC分析カートリッジ上の、粒子沈降解決策用のコンポーネントの例を示す。こうしたコンポーネントは、図1bの球状化チャネル21、図4、8、および9の球状化チャネル51、ならびに、図13〜19の球状化チャネル67の一部または置換えであってもよく、または、そうでなくてもよい。図29〜34のコンポーネントは、赤血球の沈降などの、粒子の沈降を妨げるための沈降防止または蓄積防止特性を示す構成を有する。これらのコンポーネントは、球状化チャネルであってよい。
【0091】
図29において、RBCサンプル85は、デバイスまたはチャネル91内に流れてもよい。流れは、最終的に、ほぼ平行であるが重力86に抗して上方に流れてもよい。流れは、チャネル91の上部に近づくにつれて、チャネル91のUターンまたは湾曲部分87を通過し、チャネル91の出口に向かって下方に戻ってもよい。チャネル91の内部断面は、Uターンまたは湾曲部分87においてより小さく、または、より制限されてもよい。これは、重力と一緒に、赤血球の蓄積および移動停止を減少させるか、または、防止して、チャネル内での赤血球の沈降を防止する可能性がある。Uターン部分は、約180°であってよく、または、約90〜270°であると考えられてもよい。
【0092】
図30は、蛇に似たチャネル92を示す。RBCサンプル流は、下方部分に入り、上に向き、Uターン部または湾曲部87で反対方向に進み、水平方向に移動し、湾曲部87で再び転回して、反対方向に移動してもよい。例のチャネル92では、流れは、4つのUターン部87に遭遇する場合がある。より多くの、または、より少ないターン部または湾曲部87が存在してもよい。Uターン部は、通常、約180°であってよく、または、約90〜270°であると考えられてもよい。チャネル92は、流れ85の上方移動が、重力86の反対方向になるように位置決めされてもよい。チャネル92は、堆積物または血球の蓄積または集積を減少させるか、または、防止してもよい。
【0093】
図31は、別の、沈降防止または堆積物蓄積防止デバイス93を示す。RBC流85は、水平方向にチャネル93に入ってもよい。チャネル93は、2つ以上のサブチャネル88に分割されてもよい。底部サブチャネルは、上に曲がり、他のサブチャネルと結合して完全なチャネルになってもよい。上部サブチャネルは、下に曲がり、底部サブチャネルと結合して完全なチャネルになってもよい。流れ85の全体の方向は、重力86の方向に垂直であってよい。この構成は、直列に繰り返されてもよい。
【0094】
図32は、沈降防止または堆積物蓄積防止デバイスのためのほぼ真っ直ぐなチャネル94を示す。同様に、チャネル94は、真っ直ぐでなくてもよい。RBCサンプル流85は、チャネル94に入り、チャネル94を通って流れてもよい。チャネル94は、親水性または疎水性である特別な内部表面を有してもよい。たとえば、表面は、RBC搬送流体に対して親水性であってよい。こうした流体は、希釈液、球状化剤、溶解剤、シージング剤、水などであってよい。親水性表面は、血球または気泡が表面に付着する可能性を減少させる可能性がある。付着した血球は、計数されることができず、付着した気泡は、システムの柔軟性を増し、また、流体運動の能動的コントロールを低下させる可能性がある。しかし、プラスチック射出成形プロセスにおいてうまく働く多くのプラスチック材料は疎水性である。この場合、たとえば、タンパク質溶液を用いた前処理は、最初は疎水性である表面を結合タンパク質で覆い、親水性表面を生成してもよい。
【0095】
図33は、沈降防止または堆積物防止デバイスのためのほぼ真っ直ぐなチャネル95を示す。チャネルは、真っ直ぐでなくてもよい。RBCサンプル流85は、チャネル94に入り、チャネル94を通って流れてもよい。チャネル95は、表面印加される電位に伴ってエネルギーが変化する電気湿潤可能な内部表面97を有してもよい。電位源または電圧源は、進入部98の近くで、かつ、チャネル95の内部表面97に接続され、信号源のアースは、出口99の近くで、かつ、チャネル95の表面97に接続されてもよい。電位または電圧は、同じ方式であるが、表面97に対して極性が逆であってもよく、または、表面97のいくつかの部分に対していずれかの極性であってもよい。
【0096】
図34は、粒子の沈降防止または堆積物蓄積防止のために設計されたチャネル96を示す。チャネル96は、真っ直ぐなチャネルであってよく、または、真っ直ぐでないチャネルであってよい。電場および/または磁場101は、少なくとも鉄を含む赤血球に対してチャネル内に沈降防止または蓄積防止特性をもたらすために、サンプル流85にほぼ垂直なチャネル96を通して印加されてもよい。
【0097】
全血は、粘弾性材料であるため、溶解溶液または球状化溶液108内にサンプル107として注入されるときに、凝集挙動を示す可能性がある。この凝集挙動を最小にする1つの方法は、図35のT字接合構成110に示され、T字接合構成110では、チャネル111、112のチャネル幅105および106は、それぞれ、サンプル107流量および試薬108流量に関連して選択されて、接合部の主チャネル111内の壁において、1000回/秒のせん断が生成されてもよい。このせん断力は、全血の粘弾性回復力に打ち勝ち、凝集挙動を最小にする。チャネル112は、注入器として働いてもよい。サンプル107と結合した試薬108は、主チャネル111内を下流に流れ、カートリッジの微小流体網状体の次の段階に入ってもよい。次の段階は、球状化チャネルであってよく、本明細書で述べられ、また、図29〜34に示されるバージョンのうちの1つであってよい機構115であってよく、あるいは、機構115が別のバージョンであってよい。図36は、球状化されたサンプル出力116を有する球状化機構115と一緒に、せん断機構または構成110を示す。
【0098】
本明細書では、事柄の一部が、仮説的または予言的性質を持つ場合があるが、別の方法または別の意味で述べられてもよい。
本発明は、少なくとも1つの具体的な例に関して述べられたが、本明細書を読むことによって、多くの変形および変更が、当業者に明らかになるであろう。したがって、全てのこうした変形および変更を含むために、添付特許請求の範囲は、従来技術を考慮してできる限り幅広く解釈されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1a】血液学分析システムの図である。
【図1b】分析システムの例の赤血球カートリッジまたはカードの図である。
【図2】チャネル内の粒子に及ぶ重力の影響および重力に対するチャネルの方向を示す図である。
【図3】分析カードの分解図である。
【図4】分析カードのいくつかの層のうちの1つを示す図である。
【図5】分析カードのいくつかの層のうちの1つを示す図である。
【図6】分析カードのいくつかの層のうちの1つを示す図である。
【図7】分析カードのいくつかの層のうちの1つを示す図である。
【図8】分析カードのいくつかの層のうちの1つを示す図である。
【図9】分析カードのいくつかの層のうちの1つを示す図である。
【図10】分析カードのいくつかの層のうちの1つを示す図である。
【図11】分析カードのいくつかの層のうちの1つを示す図である。
【図12】分析カードのいくつかの層のうちの1つを示す図である。
【図13】カードのコンポーネントのレイアウトを示す図である。
【図14】カード上での赤血球分析のための流体移動を示す図である。
【図15】カード上での赤血球分析のための流体移動を示す図である。
【図16】カード上での赤血球分析のための流体移動を示す図である。
【図17】カード上での赤血球分析のための流体移動を示す図である。
【図18】カード上での赤血球分析のための流体移動を示す図である。
【図19】クリティカルな測定許容誤差の一部のロケーションを示す図である。
【図20】カードの層の寸法の表である。
【図21】サンプルの希釈および球状化仕様の表である。
【図22】サンプルポンプおよび希釈液ポンプについてのコントロールパターンのグラフである。
【図23】希釈液流量、血球コインシデンス、および溶液格納部のパラメータを有する表である。
【図24】RBCサンプリングのための球状化RBC溶液の2段階プッシュ中のサンプルポンプと希釈液ポンプについてのコントロールパターンのグラフである。
【図25】希釈液流量、血球コインシデンス、および溶液格納部のパラメータを有する表である。
【図26】赤血球の球状化チャネルの図である。
【図27】球状化溶液チャネル内の血液の断面を示す図である。
【図28】気泡低減のためのチャネルおよび通路インタフェースの種々の設計を示す図である。
【図29】堆積物防止特性または蓄積防止特性を有する球状化チャネルの種々の構成のうちの1つを示す図である。
【図30】堆積物防止特性または蓄積防止特性を有する球状化チャネルの種々の構成のうちの1つを示す図である。
【図31】堆積物防止特性または蓄積防止特性を有する球状化チャネルの種々の構成のうちの1つを示す図である。
【図32】堆積物防止特性または蓄積防止特性を有する球状化チャネルの種々の構成のうちの1つを示す図である。
【図33】堆積物防止特性または蓄積防止特性を有する球状化チャネルの種々の構成のうちの1つを示す図である。
【図34】堆積物防止特性または蓄積防止特性を有する球状化チャネルの種々の構成のうちの1つを示す図である。
【図35】サンプルの凝集を最小にするための接合を示す図である。
【図36】せん断機構および球状化機構のブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体分析器システムであって、
サンプルの血球数を提供する微小流体回路と、
前記サンプルの堆積物沈降を減少させるために前記微小流体回路に接続された第1構造とを備え、
前記第1構造が、血球を球状化するためのものであり、前記流体分析器システムは血液学分析器である、システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、前記サンプルの凝集を減少させるために、前記微小流体回路に接続された第2構造をさらに備える、システム。
【請求項3】
請求項2に記載のシステムであって、前記第2構造が、前記サンプルの凝集をほぼなくすために、前記サンプルにせん断作用を加えるためのものである、システム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムであって、
前記微小流体回路が、前記微小流体回路内に、通路を通して第2チャネルに接続される第1チャネルを備え、
前記第1チャネルおよび前記第2チャネルが、気泡の存在を減少させるために、前記通路に接続された、前記通路とほぼ同じサイズである端部を有する、システム。
【請求項5】
請求項1に記載のシステムであって、
前記第1構造が、第1距離にわたってほぼ直線であり、第2距離にわたってほぼ90〜270°湾曲し、また、第3距離にわたってほぼ直線である連続経路を有するチャネルを備え、
前記チャネルが、力の場内に位置する、システム。
【請求項6】
請求項1に記載のシステムであって、
前記第1構造は、チャネルを有し、
前記チャネルは、
第1セグメントと、
前記第1セグメントに接続された第2セグメントと、
前記第1セグメントに接続された第3セグメントと、
前記第2セグメントおよび前記第3セグメントに接続された第4セグメントとを備え、
前記第2セグメントが、第1方向と第2方向に順次に湾曲し、
前記第3セグメントが、第2方向と第3方向に順次に湾曲し、
前記チャネルが、力の場内に位置し、
前記チャネルが、前記力の場の方向にほぼ垂直な細長い寸法を有する、システム。
【請求項7】
請求項1に記載のシステムであって、
前記第1構造は、チャネルを有し、
前記チャネルは、内部表面を備え、
前記内部表面が親水性である、システム。
【請求項8】
請求1に記載のシステムであって、
前記第1構造は、チャネルを有し
前記チャネルが内部表面を備え、
前記内部表面が電気湿潤可能な表面である、システム。
【請求項9】
請求項1に記載のシステムであって、
前記第1構造は、チャネルを有し、
前記チャネルが、第1端部および第2端部を備え、
前記チャネルが電場内または磁場内に置かれ、
前記チャネルが前記電場または磁場にほぼ垂直の細長い寸法を有する、システム。
【請求項10】
血液学分析器であって、
血球数を提供する流体回路を備え、
前記血球数が、赤血球数、血小板数、RBCの平均血球容積決定、白血球(WBC)のマルチパート分画、および/または、ヘモグロビン吸収度ベース測定を含み、
前記流体回路が、
せん断機構と、
前記せん断機構に接続された球状化機構を備える、血液学分析器。

【図1a】
image rotate

【図1b】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate


【公表番号】特表2008−545141(P2008−545141A)
【公表日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−519729(P2008−519729)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【国際出願番号】PCT/US2006/026211
【国際公開番号】WO2007/005973
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】