説明

RDS受信装置

【課題】時計の自動調整を正確に行うことができるRDS受信装置を提供することを目的とするものである。
【解決手段】第一のチューナ20が受信した信号に含まれるRDSデータを第一のRDSデコーダ50が復調し、復調されたRDSデータに基づいて時計部61が時計の調整を行なうラジオ受信機100において、受信制御部60が、受信したRDSデータの中にCTデータを検出し、かつ、受信したRDSデータの中に現在走行している国のPIコードが含まれると判定した場合に、検出したCTデータに基づいて時計の調整を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放送信号および放送信号に多重化されたデータを受信してユーザに視聴させることが可能なRDS受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
FMラジオ放送信号にクロックタイム(Clock Time:以下、略語CTを用いる)データを含むRDSデータを重畳させ、この放送を受信してCTデータに基づいて時計の自動調整を可能にしたRDS受信装置機が、ヨーロッパで普及している。このCTデータは1分毎に1回送信されているので、このCTデータを利用することにより時計を自動調整することができる。
【0003】
また、RDS受信装置は、RDSデータに含まれる、放送が行われている国や地域情報等を表すProgram Identification(以下、略語PIを用いる)コードを利用することができる。
【0004】
従来のRDS受信機として、57kHzバンドパスフィルターとデコーダーからなるRDS受信回路と時計を組み合わせ、また、国情報を持つPIコードを利用して、国境付近を車が走行した場合でも、希望する国の時間を表示することができるものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
さらに、表示切替手段の操作時間に応じてマニュアル調整モードと自動調整モードとを選択可能にし、マニュアル調整モードを選択したときはマニュアルで時・分調整可能にすると共に、自動調整モードを選択したときは放送信号のCTデータに基づいて時計の自動調整を可能にすることによって、状況に応じてユーザの希望に沿うような時計の調整を行うことができるものが知られている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−298470号公報
【特許文献2】特開平6−244752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のCTデータに基づいた時計の自動調整においては、走行している国をユーザが手動で受信機に設定しなければならず、国境を跨ぐ度に再設定することになるので、操作が煩雑になるという問題があった。
【0008】
本発明は、従来の問題を解決するためになされたもので、現在走行している国の設定をユーザの手動で行うのではなく、受信機側が自動的に判断して設定を行うことで、ユーザの操作無しに時計の自動調整を正確に行うことができるRDS受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、アンテナを介してRDSデータが重畳された放送信号を受信して受信信号の中から希望の放送局を選局して受信した音声信号を出力するチューナと、前記チューナが受信した信号に含まれるRDSデータを復調するRDSデコーダと、前記RDSデコーダが復調したRDSデータに基づいて時計の調整を行う計時部と
、 前記経時部が行う時計の調整を制御する制御部とを備え、前記制御部は、受信したRDSデータの中にCTデータを検出し、前記受信したRDSデータの中に現在走行している国のPIコードが含まれると判定した場合、検出したCTデータに基づいて時計の調整を行うという構成を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ユーザの操作無しに時計の自動調整ができ、複数の国からの放送を受信可能な場合でも、走行している国のCTデータによって時計の自動調整を行うことができ、誤って他の国からのCTデータにより誤った時計の自動調整が行なわれてしまうことを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1における時計の自動調整機能を内蔵したラジオ受信機の全体構成を示すのブロック図
【図2】本発明の実施の形態1におけるメモリ部に格納されるリストの一例を示す図
【図3】本発明の実施の形態1における時計の自動調整動作説明のためのフローチャート
【図4】本発明の実施の形態1における現在走行している国の設定と判定を示すフローチャート
【図5】本発明の実施の形態1における現在走行している国を判定するために用いる評価値算出表の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1におけるRDS受信装置について図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態における時計の自動調整機能を内蔵したRDS受信装置としてのラジオ受信機100の全体構成を示すブロック図である。
【0014】
ラジオ受信機100は、第一のアンテナ10、第二のアンテナ11、第一のチューナ20、第二のチューナ21、パワーアンプ30、スピーカ40、第一のRDSデコーダ50、第二のRDSデコーダ51、受信制御部60、表示部70から構成される。
【0015】
第一のアンテナ10は、CTデータを含むRDSデータが重畳された放送信号を受信し後段の第一のチューナ20に送出する。
【0016】
第一のチューナ20は、第一のアンテナ10から送出された受信信号の中から希望の放送局を選局し、受信音声信号をパワーアンプ30に出力する。
【0017】
パワーアンプ30は、前記受信音声信号を増幅し、スピーカ40に出力する。
スピーカ40は、パワーアンプ30から入力される増幅された受信音声信号を音声として再生する。
【0018】
第一のRDSデコーダ50は、第一のチューナ20によって選局された受信信号の中からCTデータを含むRDSデータの復号を行いデータ抽出し、受信制御部60に出力する。
【0019】
受信制御部60は、ラジオ受信機100の全体を制御する制御部としてのCPU(中央演算処理装置)であり、受信制御部60に内蔵された内部クロックによって時刻を刻む。
【0020】
また、受信制御部60は、第一のRDSデコーダ50で復号されたCTデータを含むRDSデータから時計の自動調整等を行う計時部としての時計部61と、全周波数に対して、放送が行われている国や地域情報等を表すPIコード、電界等の情報のリストを格納するためのメモリ部62を含む。
【0021】
前述した様に、多くの国が隣接しているヨーロッパでは、ある国において他の国からの放送が容易に受信できるようになっており、各国間には時差があるため放送信号のCTデータに基づいて時計を自動調整することが必ずしも便利になるとは限らない。
【0022】
そのため、現在走行している国を判断し、放送信号から得られるCTデータの取捨選択を行う必要がある。
【0023】
従来のラジオ受信機では、現在走行している国の判断をユーザの受信機への手動により設定にしていた。しかし、それではユーザは国境を跨ぐ度に受信機に再設定する必要があり、操作が煩雑になる。
【0024】
そこで、本実施の形態では、メモリ部62に全周波数の放送が行われている国や地域情報等を表すPIコード、電界等の情報のリストをあらかじめ記憶しておき、その情報に基づいて時計部61で自動的に現在走行している国を判断し、放送信号から得られるCTデータの取捨選択を行い、時計の自動調整が行われる様に受信機側が制御する。
【0025】
時計の自動調整は放送信号からCTデータが得られた場合のみ行われ、それ以外の場合には内部クロックにより時刻が刻まれ、これを用いて時計の自動調整が行なわれる。
【0026】
表示部70は時刻を含む種々の情報データを表示するためのものであり、液晶ディスプレイなどの一般的な表示部品が用いられる。
【0027】
第二のアンテナ11、第二のチューナ21、第二のRDSデコーダ51は、第一のアンテナ10、第一のチューナ20、第一のRDSデコーダ50のそれぞれと同様の機能を備える。
【0028】
そして、現在音声を出力している放送局の周波数以外の全周波数に対して順にチューニング動作を行い、チューニングした周波数の放送が行われている国や地域情報等を表すPIコード、電界等の情報を取得し、メモリ部62に格納するために使用される。
【0029】
全周波数に対するチューニングは繰り返し行われる。メモリ部62に格納されるリストは例えば図2に示されるものを用い、各々の周波数に対して、放送が行われている国や地域情報等を表すPIコード、電波状態を示す電界、最後にPIコードを取得してからの経過時間を示すタイマ値がそれぞれ対応付けられて格納される。
【0030】
タイマ値は、PIコードが取得できたタイミングで0にリセットされ、次にPIコードが取得されるまで内部クロックにより更新される。
【0031】
以下、本実施例のRDS受信装置の時計の自動調整動作を図3を参照して説明する。図3はラジオ受信機100の受信制御部60が実行する処理動作を示すフロー図である。
【0032】
まず、受信制御部60は、現在、ラジオ受信機100が音声出力している放送信号のRDS受信を行う(ステップS301)。
【0033】
次に、ステップS301にて受信したRDSデータからCTデータが検出されたか否かを判定を行う(ステップS302)。
【0034】
CTデータが検出された場合(ステップS302のYes)はステップS303に進み、検出されなかった場合(ステップS302のNo)はステップS301に戻る。
【0035】
ステップS303では、ステップS301にて受信したRDSデータに現在走行している国のPIコードが含まれるか否かを判定する。
【0036】
ステップS303において、現在走行している国のPIコードが含まれていた場合(ステップ303のYes)はステップS304に進みCTデータに基づいて時計の自動調整を行う。
【0037】
ステップS303において、現在走行している国のPIコードが含まれていなかったと判断した場合(ステップ303のNo)は、ステップS301に戻る。
【0038】
ここで、図3のステップ303で具体的にどのような判定を行うか図4のフローチャートを参照して説明する。
【0039】
まず、全周波数に対して、評価値を算出する(ステップS401)。評価値の算出には図5のような評価値表を用いる。
【0040】
図5は、上述の評価表の一例を示す図である。図5に示すとおり、タイマー値が小さいほど評価値が高く、なおかつ、電界値が大きい(電界が強い)ほど評価値が高くなるよう、あらかじめ設定しておく。
【0041】
このような電界の強さとタイマ値を評価値の算出に用いることにより、時々刻々と変化する受信環境に対応する。
【0042】
ステップS401の後、PIコード別のトータルの評価値を算出し(ステップS402)、算出した評価値が最大のPIコードを現在走行している国として設定する(ステップS403)。
【0043】
ここで判定された現在走行している国のPIコードと受信信号のPIコードが一致するか否かの判定を行う(ステップS404)。
【0044】
PIコードが一致すれば、時計の自動調整を行い(図3のステップS304)、一致しなければRDS受信を行う(図3のステップS301)。
【0045】
以上説明したとおり、本実施の形態によれば、現在走行している国をラジオ受信機が判断して設定を行うことで、ユーザーの操作無しに時計の自動調整ができ、複数の国からの放送を受信可能な場合でも、走行している国のCTデータによって時計の自動調整を行うことができ、誤って他の国からのCTデータにより時計の自動調整を行ってしまうことを防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明のRDS受信装置は、ユーザーの操作無しに時計の自動調整を正確に行うことができ、放送信号および放送信号に多重化されたデータを受信してユーザに視聴させることが可能なRDS受信装置として有用である。
【符号の説明】
【0047】
10 第一のアンテナ
11 第二のアンテナ
20 第一のチューナ
21 第二のチューナ
30 パワーアンプ
40 スピーカ
50 第一のRDSデコーダ
51 第二のRDSデコーダ
60 受信制御部
61 時計部
62 メモリ部
70 表示部
100 ラジオ受信機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナを介してRDSデータが重畳された放送信号を受信して受信信号の中から希望の放送局を選局して受信した音声信号を出力するチューナと、前記チューナが受信した信号に含まれるRDSデータを復調するRDSデコーダと、前記RDSデコーダが復調したRDSデータに基づいて時計の調整を行う計時部と、前記経時部が行う時計の調整を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、受信したRDSデータの中にCTデータを検出し、前記受信したRDSデータの中に現在走行している国のPIコードが含まれると判定した場合、検出したCTデータに基づいて時計の調整を行うことを特徴とするRDS受信装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記チューナが受信した放送が行われている国の情報を表すPIコードと前記チューナが受信した放送局と該放送局の信号の電界値と前回PIコードを受信してからの経過時間を示すタイマ値とを格納するメモリ部を備え、該メモリ部に記憶された電界値とタイマ値に応じた評価値に基づいて、前記受信したRDSデータの中に現在自装置が存在している国のPIコードが含まれると判定することを特徴とする請求項1記載のRDS受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−205162(P2012−205162A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69217(P2011−69217)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】