説明

RFIDでのデータ通信装置

【課題】 1台のリーダライターに対してアンテナを配置しても正常な作動を確保することのできるRFIDでのデータ通信装置を提供する。
【解決手段】 アンテナ(2)を介して無線ICタグとリーダライター(1)との間で通信するRFIDでのデータ通信装置であって、1つのリーダライター(1)に対して複数のアンテナ(2)を配置し、リーダライター(1)に高周波誘導カップリング器(3)を接続するとともに、それぞれのアンテナ(2)にも高周波誘導カップリング器(4)をそれぞれ接続し、リーダライター(1)に接続されている高周波誘導カップリング器(3)と各アンテナ(2)に接続されている高周波誘導カップリング器(4)とをそれぞれ相対移動可能に対向配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線ICタグを利用して家畜等の成育状態を管理する管理システムでのデータ通信装置に関し、特に、鶏舎や畜舎等で飼育しているものでのデータ通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、鶏舎を始めとする動物の生体を経営資源とする産業では、鶏舎等の大規模化、生体個数の増加が見られる。このように、大規模化すると、ここの生体の状態を把握することが困難であることから、生体に無線ICタグを個別に装着し、その無線ICタグとリーターライターとの間の通信で飼育動物の状況を管理するようにしている。
【0003】
このように無線ICタグを利用して家畜等の成育状態を管理するものとして、従来、鶏を始めとする家畜の所定部位に、所定部位の傾き情報を記憶した無線ICタグを装着し、この無線ICタグの情報を受信することで、家畜の変調を知るようにしたもの(特許文献1)や、家畜などの生体に無線ICタグを個別に装着し、カイバ桶等の給餌・給水設備に沿って検出用のワイヤを配置し、生体が給餌・給水のために給餌・給水設備な近づくことにより、生体の個体識別を行なうようにしたもの(特許文献2)、が提案されている。
【特許文献1】特開2005−278547号公報
【特許文献2】特表2001−500733号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
RFIDのシステムは、パソコン等の制御装置と無線IDタグにデータを読み書きするリーダーライターとアンテナとで構成され、アンテナと無線IDタグとは非接触でデータを読み書きするようになっている。ところで、ケージ飼育等の金属で囲まれた内部に動物を収容して動物を飼育管理する場合ケージの外側からアンテナを内部に向けて電波を発射しても、金属の間隔が電波を通過させる開放部分がないと、内部に向けて強力な電波を発射しなければならない。しかし、無線IDタグからの返送信号は微弱な電波のためリーダライターを感知させるだけの電波は激減して届かないという問題がある。
【0005】
ケージ内にリーダライターとアンテナとをセットで配置すると無線IDタグからの微弱な電波で構成されている返送信号を受信して飼育管理することはできるが、ケージ空間数(個体数)に応じたリーダライターとアンテナのセットを用意することは設備コストの面で現実的ではない。また、1つのリーダライターと複数のアンテナとを切換え器を使用して接続することも考えられるが、この場合、機械的精度及び高周波接点において酸化防止対策等をとっても、空気中での切換えは継続が困難で劣化が著しいという問題がある。
【0006】
このような点に着目し、本発明は、1台のリーダライターに対して複数のアンテナを配置しても正常な作動を確保することのできるRFIDでのデータ通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、請求項1に記載した発明は、アンテナを介して無線ICタグとリーダライターとの間で通信するRFIDでのデータ通信装置であって、1つのリーダライターに対して複数のアンテナを配置し、リーダライターに高周波誘導カップリング器を接続するとともに、それぞれのアンテナにも高周波誘導カップリング器をそれぞれ接続し、リーダライターに接続されている高周波誘導カップリング器と各アンテナに接続されている高周波誘導カップリング器とをそれぞれ相対移動可能に対向配置したことを特徴としている。
【0008】
又、請求項2に記載した発明は、請求項1に記載の発明において、リーダライターに接続されている高周波誘導カップリング器を可動部材に装着するとともに、アンテナに接続されている高周波誘導カップリング器を固定部材に装着したことを特徴とし、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、固定部材が養鶏用ゲージであり、可動部材が餌供給装置であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、無線ICタグと交信するアンテナと、アンテナを介して無線ICタグとリーダライターとの間で通信するRFIDでのデータ通信装置であって、1つのリーダライタに対して複数のアンテナを配置し、リーダライターに高周波誘導カップリング器を接続するとともに、それぞれのアンテナにも高周波誘導カップリング器をそれぞれ接続し、リーダライタに接続されている高周波誘導カップリングと各アンテナに接続されている高周波誘導カップリングとをそれぞれ相対移動可能に対向配置していることから、1つのリーダライターに対して複数のアンテナを対応させて配置することができ、また、リーダライタ側の高周波誘導カップリング器とアンテナ側の高周波誘導カップリング器とを非接触で電気的に接続することができる。この結果、設備コストを低減化することができるうえ、1台のリーダライタに対して複数のアンテナを配置しても安定した作動を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図は本発明の一実施形態を概略的に示す図であり、図1はRFIDでのデータ通信装置の概略構成図、図2は使用状態の一例を示す該略図である。
このRFIDのデータ通信装置は、1台のリーダライター(1)と、複数のループ型アンテナ(2)と、リーダライター(1)とループ型アンテナ(2)とを電気的に接続する回路中に配置した高周波誘導カップリング器(3)(4)と、リーダライター側高周波誘導カップリング器(3)とリーダライター(1)との間に配置したマッチング器(5)とで構成してある。
【0011】
そして、上述の構成からなるRFIDでのデータ通信装置は、例えば図2に示す養鶏システムに使用される。この養鶏システムは、複数段複数列に鶏飼育室(6)を形成した養鶏ケージ(7)と、この養鶏ケージ(7)の前面をケージ前面に沿って移動する給餌用ホッパー(8)とで構成してある。
【0012】
養鶏ケージ(7)の鶏飼育室(6)における前寄り側面部分には、それぞれループ型アンテナ(2)が垂直姿勢で配置してあり、そのループ型アンテナ(2)に電気的に接続している高周波誘導カップリング器(4)の端子は鶏飼育室(6)の前面部分に配置されている給餌用樋(9)に取り付けてある。
【0013】
一方、リーダライター(1)は給餌用ホッパー(8)に装着してあり、リーダライター側高周波誘導カップリング器(3)の端子は給餌用ホッパー(8)から突出して、給餌用ホッパー(8)の移動に伴って給餌用樋(9)に沿って移動するようにしてある。
【0014】
図2中符号(10)は給餌用樋(9)に餌を供給する餌供給パイプ、(11)は卵を受け止め排出する卵用コンベアである。図示は省略したが、また、鶏飼育室(6)に収容されている鶏には、無線ICタグが装着してある。さらに、リーダライター(1)は図示を省略したコンピュータ等の制御装置に電気的に接続されている。
【0015】
上述した養鶏システムでは、鶏飼育室(6)内に収容されている鶏に無線ICタグを装着するとともに、ループ型アンテナ(2)を鶏飼育室(6)の前寄り側面部分に配置しているので、鶏が給餌のために鶏飼育室の前側に寄って来ると、前側に近付いた鶏に取り付けられている無線ICタグをループ型アンテナで感知することになる。
【0016】
そして、ループ型アンテナ(2)に電気的に接続されているアンテナ側高周波誘導カップリング器(4)は鶏飼育室(6)の前面部分に配置されている給餌用樋(9)に、アンテナ側高周波誘導カップリング器(4)と対をなすリーダライター側高周波誘導カップリング器(3)は給餌用樋(9)沿って移動する給餌用ホッパー(8)に装着してあるから、給餌用ホッパー(8)の移動によって、リーダライター側高周波誘導カップリング器(3)が複数のアンテナ側高周波誘導カップリング器(4)に対して順次選択的に対向するようになり、鶏飼育室(6)に収容されている鶏に取り付けられている無線ICタグのデータを読み書きすることになる。
【0017】
ここで、リーダライター側高周波誘導カップリング器(3)と複数のアンテナ側高周波誘導カップリング器(4)とが対向するタイミングは、鶏飼育室(6)前の給餌用樋(9)に給餌用ホッパー(8)から餌が供給されたタイミングとなるため、鶏が餌を啄ばみに来る時期と重なることになり、鶏飼育室(6)の前寄り側面部分に配置したループ型アンテナ(2)と鶏に取り付けられている無線ICタグとのデータ授受が容易となる。このため仮に、給餌のタイミングで鶏を検知できなかった場合には、鶏に変調があったとして管理することができる。
【0018】
上述の実施形態では、ループ型アンテナ(2)を養鶏ケージ(7)の鶏飼育室(6)における前寄り側面部分に配置するものについて説明したが、養鶏ケージ(7)の鶏飼育室(6)における前寄りで天井面あるいは床面部分に水平に配置するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、養鶏のみならず、対象家畜を収容室に収容して飼育する場合に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】RFIDでのデータ通信装置の概略構成図である。
【図2】使用状態の一例を示す該略図である。
【符号の説明】
【0021】
2…アンテナ、1…リーダライター、3・4…高周波誘導カップリング器、7…養鶏用ゲージ、8…餌供給装置。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ(2)を介して無線ICタグとリーダライター(1)との間で通信するRFIDでのデータ通信装置であって、1つのリーダライター(1)に対して複数のアンテナ(2)を配置し、リーダライター(1)に高周波誘導カップリング器(3)を接続するとともに、それぞれのアンテナ(2)にも高周波誘導カップリング器(4)をそれぞれ接続し、リーダライター(1)に接続されている高周波誘導カップリング器(3)と各アンテナに接続されている高周波誘導カップリング器(4)とをそれぞれ相対移動可能に対向配置したことを特徴とするRFIDでのデータ通信装置。
【請求項2】
リーダライター(1)に接続されている高周波誘導カップリング器(3)を可動部材に装着するとともに、アンテナ(2)に接続されている高周波誘導カップリング器(4)を固定部材に装着した請求項1に記載したRFIDでのデータ通信装置。
【請求項3】
固定部材が養鶏用ゲージ(7)であり、可動部材が餌供給装置(8)である請求項2に記載したRFIDでのデータ通信装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−259015(P2007−259015A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−80107(P2006−80107)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(304031302)神戸通信工業 株式会社 (3)
【Fターム(参考)】