説明

RFIDタグ、RFIDリーダ・ライタ、RFIDシステムおよびRFIDシステムの処理方法

【課題】RFIDシステムにおいて、RFIDタグとRFIDリーダ・ライタ間の通信時間を短縮する。
【解決手段】例えば、リーダ・ライタR/Wが、通信方式(A)を備えたN個のRFIDタグ(A)と通信方式(C)を備えたX個のRFIDタグ(C)に向けて、通信方式(A)のRFIDタグを一度に応答させる質問コマンドALL(A)を送信する。この場合、R/Wは、N個のRFIDタグ(A)から応答を受信するため、その受信レベル等によって通信方式(A)を備えたRFIDタグが存在していることを認識できる。次に、R/Wは、通信方式(B)のRFIDタグを一度に応答させる質問コマンドALL(B)を送信する。この場合、R/Wは、応答を受信しないため、通信方式(B)を備えたRFIDタグが存在しないことを迅速に認識することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーダ・ライタとRFIDタグを含むRFIDシステムに関し、特に、通信方式が異なる複数種類のRFIDタグを含むRFIDシステムに適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
RFID(Radio Frequency Identification)システムは、図1のように一般的にリーダ・ライタR/Wと呼ばれる端末と、複数のRFIDタグ(RFID)から構成される。R/Wは、例えば、アンテナATN_Rに接続された通信回路RFと、記憶回路MEM1と、これらの回路を制御する制御回路CPUなどによって構成され、無線通信でRFIDに保存されているデータの読み書きを行う。具体的には、R/Wは、RFIDに対し電波(無変調波又は変調波)102を送り、RFIDは、R/Wから発射された電波を受信及び復調し、必要に応じて内蔵データによって再発射し、これをR/Wが受信及び復調する。
【0003】
現在、このR/W、RFID間の無線通信の方式は複数の方式が提案されており、その複数の方式に応じたRFIDシステムが存在する。例えば、ISO(International Organization for Standard)及びIEC(International Electrotechnical Commission)では、UHF帯(860MHz〜960MHz)のエアーインターフェース、プロトコル規格としてISO/IEC 18000−6 タイプA,タイプBの2種類が規格化されている。一方、EPCグローバル(国際的なバーコード標準化団体である国際EAN(European Article Numbering)協会及び米UCC(Uniform Code Council)が共同で設立した電子タグ標準化の為の非営利組織)においてもUHF帯で独自の標準化を行っている。
【0004】
図2にISO/IECで国際標準化されているUHF帯の方式の一覧を示す。前述した通り、ISO/IECではISO/IEC 18000−6 タイプA,タイプBの2種類がすでに規格化されているが、現在EPCグローバルからタイプCとしてISO/IECへ提案され審議中となっている(ISO/IEC 18000−6 タイプA,タイプB,タイプCは、以下タイプA,タイプB,タイプCと言う)。図2からわかるように、リーダ・ライタR/WからRFIDタグ(RFID)への送信インターフェースとして、タイプA,タイプB,タイプCでは通信速度がそれぞれ、33kbps,10 or 40kbps,40〜160kbpsと統一されていない。また、符号化方式においても、タイプA,CではPIE(Pulse Interval Encoding)方式、タイプBではマンチェスタ符合を使用しており統一されていないことがわかる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したように、複数の無線通信方式が混在すると、物品等にどの方式のRFIDが貼られているかわからない為、R/Wは複数の方式を持ち、その複数方式の1つ1つを順番に切替えながら、RFIDと通信する必要がある。このように複数の方式を順番に切替えながらRFIDと通信すると、通信時間が複数倍に長くなってしまい、RFIDがベルトコンベアやトラックなどで高速に移動するようなアプリケーションでは使用できなくなる。
【0006】
その様子を図14で説明すると、R/Wは、どの通信方式のRFIDが存在するかがわからない為、まず通信方式(A)のRFID(A)を読んでいく。通常R/Wは、予めN個程度のRFIDを読むことを想定しており、それに応じて質問コマンドを送出する。最初に送出する質問コマンド1(A)(図示せず)は、以降送出される質問コマンドの数が設定されている。RFID(A)は、質問コマンド1(A)を受信すると、質問コマンド1(A)又は以降に送出される複数の質問コマンド(A)のいずれかに応答することをランダムに決定する。R/Wは、通常、質問コマンド1(A)又は質問コマンド(A)に対して1つのRFID(A)しか受信できない。図14の場合、RFID(A)は存在するのでR/Wから送出される質問コマンド(A)に対してN個のRFID(A)がそれぞれ応答する。
【0007】
次にRFID(B)を読む為に、R/Wは、質問コマンド1(B)(図示せず)及び質問コマンド(B)を送出する。RFID(B)は存在しない為、RFID(B)からの応答は無いが、R/Wは数回にわたり質問コマンド(B)を送出し続ける。しかし、RFID(B)からの応答がない為、質問コマンド(B)の回数又は時間によってRFID(B)が存在しないことを認識する。次にR/Wは、質問コマンド1(C)(図示せず)及び質問コマンド(C)を送出し、RFID(C)を読む。X個のRFID(C)は、質問コマンド(C)に対してそれぞれ応答する。
【0008】
このように、RFID(B)が存在しないのにRFID(B)を読む時間が発生し、トータルの通信時間が長くなってしまう。そこで、本発明の目的は、特に複数の通信方式をもつRFIDタグとの通信時に、その通信時間の短縮を実現することにある。本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0010】
本発明によるRFIDシステムは、第1通信方式に対応した第1RFIDタグと、第2通信方式に対応した第2RFIDタグと、第1および第2RFIDタグとの間で無線通信が可能なRFIDリーダ・ライタとを備えている。そして、このRFIDシステムは、RFIDリーダ・ライタに向けて、複数の第1RFIDタグを一度に応答させ、複数の第2RFIDタグを一度に応答させる機能を有するものとなっている。
【0011】
このような構成によると、例えば、次のような処理シーケンスが実現できる。すなわち、まず、リーダ・ライタが、1つ1つのRFIDタグの読み書きを行う前に、複数の通信方式の中の1つとなる第1通信方式で、その第1通信方式をもった複数の第1RFIDタグが一度に応答する第1コマンドを送信する。そして、第1RFIDタグからの応答があるかどうかで、第1通信方式をもったRFIDタグが存在するかを確認し、応答があった場合は第1通信方式で輻輳制御を行いながら各RFIDタグを読み書きする。もし、応答がなかった場合は、リーダ・ライタが、先程とは違う第2通信方式で、その第2通信方式をもった複数の第2RFIDタグが一度に応答する第2コマンドを送信することで、第2通信方式をもったRFIDタグが存在するかを確認する。
【0012】
また、例えば、次のような処理シーケンスを実現することも可能である。すなわち、まず、リーダ・ライタが、1つ1つのRFIDタグの読み書きを行う前に、複数の通信方式を含む複数のRFIDタグで共通の第3コマンドを送信する。この際に、予め各RFIDタグに対して、第3コマンドに対して応答するタイミング(スロット又は時間)を自身の通信方式に基づき一義的に定義しておく。そうすると、リーダ・ライタは、例えば、第1通信方式の第1RFIDタグからの応答を一度に受信し、その直後に続けて第2通信方式の第2RFIDタグからの応答を一度に受信することができる。リーダ・ライタは、これらの応答および応答の受信レベルを検知することで、第1通信方式の第1RFIDタグおよび第2通信方式の第2RFIDタグの存在を確認する。
【0013】
以上のような処理シーケンスを用いると、例えば、ある通信方式を備えたRFIDタグが存在しなかった場合に、この存在しないということを迅速に確認できるため、従来技術に比べて通信時間の短縮が実現可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、通信時間の短縮を実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0016】
(実施の形態1)
通常、数メートル程度で通信を行うRFIDシステムにおいては、複数のRFIDタグ(RFID)を読む場合、リーダ・ライタR/Wは、RFIDからの応答衝突を避ける為に、スロットアロハ又はバイナリーツリーなどの輻輳制御方式を用いてRFIDを読む。本実施の形態では、その通信方式に従った輻輳制御でRFIDを一度に応答させ、応答の衝突を検知し、RFIDの存在を確認した上で各RFIDとの通信を行うことが特徴となっている。
【0017】
図3を用いて説明すると、R/Wは、複数のRFIDに対して、ある特定の通信方式で輻輳制御方式(A)を持つRFID(A)に対してRFID(A)が受信及び解釈できる質問コマンドALL(A)を送出する。この質問コマンドALL(A)には、その輻輳制御方式(A)をもつRFID(A)が1度に同じタイミングで応答するように設定しておく。この質問コマンドALL(A)を受信及び解釈できるRFID(A)が1個以上あった場合は、すぐに応答する。図3ではRFID(A)がN個あった場合を想定しており、応答1(A)〜応答N(A)がR/Wに戻ってくる。
【0018】
R/Wは、N個のRFID(A)が一度に同じタイミングで応答するのでRFID(A)の応答の衝突が発生し、正常に受信できない可能性がある。但し、受信レベルはRFID(A)が応答してくるレベル以上なのでいくつかのRFID(A)が応答していると認識できる。又は、R/Wの直近のRFID(A)の応答レベルが高く、そのRFID(A)の応答が正常に受信できることもある。R/Wは、質問コマンドALL(A)に対し、応答レベル以上の受信レベルを検知又は正常受信した場合には、RFID(A)が1個以上存在すると認識し、以降RFID(A)を1個ずつ受信するプロセスに入る。すなわち、質問コマンド1(A)(図示せず)及び質問コマンド(A)を送出し、この質問コマンド1(A)及び質問コマンド(A)に応答するRFID(A)を1個ずつ受信していきN個のRFID(A)を認識する。
【0019】
次にRFID(A)と異なる通信方式で輻輳制御方式(B)を持つRFID(B)に対してRFID(B)が受信及び解釈できる質問コマンドALL(B)を送出する。この質問コマンドALL(B)も、その輻輳制御方式(B)をもつRFID(B)が1度に同じタイミングで応答するように設定しておく。図3では、RFID(B)が1個も無い場合を想定しており、この場合、RFID(B)からの応答が無いので、R/WはすぐにRFID(B)が無いことを認識できる。
【0020】
次にRFID(A)、RFID(B)と異なる通信方式で輻輳制御方式(C)を持つRFID(C)に対してRFID(C)が受信及び解釈できる質問コマンドALL(C)を送出する。この質問コマンドALL(C)も、その輻輳制御方式(C)をもつRFID(C)が1度に同じタイミングで応答するように設定しておく。この質問コマンドALL(C)を受信及び解釈できるRFID(C)が1個以上あった場合は、すぐに応答する。R/Wは質問コマンドALL(C)に対し、応答レベル以上の受信レベルを検知又は正常受信した場合には、RFID(C)が1個以上存在すると認識し、以降RFID(C)を1個ずつ受信するプロセスに入る。すなわち、質問コマンド1(C)(図示せず)及び質問コマンド(C)を送出し、この質問コマンド1(C)及び質問コマンド(C)に応答するRFID(C)を1個ずつ受信していきX個のRFID(C)を認識する。
【0021】
以上のような通信方式は、より具体的には、例えば、以下に述べるようなR/WおよびRFIDの制御方式によって実現可能となる。
【0022】
図6は、R/WからRFIDに向けたコマンドフォーマットの一例を示す説明図である。図6では、前述した質問コマンド1と質問コマンドと質問コマンドALLのコマンドフォーマットの一例がそれぞれ示されている。質問コマンド1は、例えば、コマンド設定部601aと、タグ選択条件設定部602aと、スロット数設定部603aと、エラーチェック部604aなどから構成される。質問コマンドは、例えば、コマンド設定部601bと、タグ選択条件設定部602bなどから構成される。質問コマンドALLは、例えば質問コマンド1と同様に、コマンド設定部601cと、タグ選択条件設定部602cと、スロット数設定部603cと、エラーチェック部604cなどから構成される。
【0023】
コマンド設定部601a〜601cは、質問内容を示すビット列であり、質問内容毎にビット列が異なっている。例えば、RFIDタグを認識する際に発行する質問コマンドは“0001”であり,RFIDタグのメモリリードコマンドは“100”である。タグ選択条件設定部602a〜602cは、この質問内容に応答するRFIDタグの種類、RFIDタグの状態及びRFIDタグの応答条件などを示す。この条件が合わないとRFIDタグは応答しない。RFIDタグの種類とは、例えば、あるIDをもったRFIDタグなどを意味し、タグの状態とは、すでに、タグIDがR/Wに読まれたかなどを意味し、タグの応答条件とは、RFIDタグの通信速度や符号化方式などを意味する。
【0024】
スロット数設定部603a,603cは、RFIDタグが応答するスロット数を示す。RFIDタグは、この指定されたスロット数の間に応答する。複数のタグが存在する場合、このスロット数は、通常、複数の値を設定する。ここで、図3に示したような機能を備えた質問コマンドALLは、例えば、このスロット数設定部603cでのスロット数を‘0’に設定することで実現することができる。エラーチェック部604a,604cは、当該質問コマンドのデータ誤り等を検出するビット列であり、例えば、CRC(Cyclic Redundancy Check)符号などである。
【0025】
このようなコマンドフォーマットを用いてR/WおよびRFIDタグ間で通信を行った場合、例えば図7に示すようなタイミングチャートとなる。図7(a)は、1個1個のRFIDタグを認識することで、ある通信方式のRFIDタグが存在することを確認するという、いわば図14で述べた従来技術の処理シーケンスに対応する。ここでは、RFIDタグが5個存在し、前述した質問コマンド1で、スロット数を‘3’に設定した場合を想定している。
【0026】
図7(a)でのRFIDタグの認識方法は、例えば、R/Wが発生した質問コマンド1によって各RFIDタグがスロット数に応じた乱数をそれぞれ発生し、その発生した乱数の値が‘0’(スロット0)であったRFIDタグがR/Wに向けて応答を返すものとなっている。更に、質問コマンド1の後に、R/Wはスロット数に応じた回数分の質問コマンドを順次発生し、各RFIDタグは、この質問コマンドを受信する毎に、前述した自己の乱数の値(スロット)を1減算していくものとなっている。例えば、図7(a)では、質問コマンド1によって乱数‘0’(スロット0)を発生したのはRFIDタグ3のみであり、RFIDタグ3のみが応答を返している。続く質問コマンドでは、最初の質問コマンド1で乱数‘1’(スロット1)を発生したRFIDタグ1と4が、この質問コマンドによってスロットが減算され、その結果スロット0となるため、それぞれ応答を返している。
【0027】
一方、図7(b)は、本実施の形態の質問コマンドALLであり、ここでは、前述したようにスロット数を‘0’に定義しているため、全てのRFIDタグ1〜5が1つの同じスロット(スロット0)を発生することになる。したがって、質問コマンドALLを受信した複数のRFIDタグは、質問コマンドALLの受信直後に、ほぼ同じようなタイミングで応答することになる。なお、この質問コマンドALLの実現方式は、勿論これに限定されるものではない。例えば、新たなコマンドを設け、このコマンドを受信した複数のRFIDタグが、自身の通信方式に基づいて一義的に定まる固定タイミングで応答する仕様を構築すればよい。
【0028】
図4および図5は、R/Wの制御方式の一例を示すフロー図である。R/Wは、ステップ401で、質問コマンドALL(図3の例では、質問コマンドALL(A))を送出した後、ステップ402でRFIDからの応答を受信する。RFIDからの応答を受信した場合は、ステップ403で質問コマンド1(図3の例では、質問コマンド1(A))を送出し、以降順次、質問コマンドの送出によって各RFIDを読んでいく。
【0029】
一方、ステップ402でRFIDの応答を受信できなかった場合は、ステップ402のRFID受信時に取得していた受信レベルが、RFID受信応答レベルと同等であるYdBm以上かどうかをステップ404で判定する。もし、YdBm以上の受信レベルであったなら、ステップ403の質問コマンド1送信のプロセスに行く。もし、YdBm未満の受信レベルであったなら、RFIDからの応答がなかったとして、次の通信方式であるステップ405の質問コマンドALL(図3の例では、質問コマンドALL(B))を送出する。これにより、複数の通信方式を持つRFIDを即座に見つけることができ、複数のRFIDを認識する際の時間を削減することが可能となる。
【0030】
図4のステップ403の質問コマンド1を送信した後、個々のRFIDタグ(図3の例では、RFID(A)の個々)を認識するためには、例えば、図5のような処理を行う。なお、この処理は、前述した図7(a)のようなタイミングチャートとなる。図5では、ステップ403で、図6に基づき所望のスロット数を設定して質問コマンド1を送信した後、ステップ501でRFIDからの応答有無を確認する。応答が有った場合は、ステップ502で、質問コマンド1の設定スロット数を1減算する。応答が無かった場合は、ステップ503で一定時間応答を待った後、タイムオーバーでステップ502へ移行する。
【0031】
ステップ502でスロット数を1減算後、ステップ504で、スロット数の値が‘0’か否かを判定する。‘0’であった場合は、所望の次の処理へ移行する。一方、‘0’で無かった場合は、ステップ505で、質問コマンドを送信し、ステップ501へ戻る。すなわち、スロット数に基づく回数分だけ質問コマンドを発行することになる。
【0032】
図8は、RFIDタグの構成例を示すブロック図である。図8に示すRFIDタグ(RFID)は、例えば、アンテナATN_Tと、復調回路DEMと、電源生成回路VGと、変調回路MODと、制御回路CTLと、記憶回路MEM2などから構成される。復調回路DEMは、ATN_Tから受信した信号を復調し、クロック信号clkやデータ信号dataを制御回路CTLに出力する。電源生成回路VGは、ATN_Tから受信したキャリア信号から整流等を経て電源電圧Vddを生成し、各回路に対して供給する。変調回路MODは、制御回路CTLから出力されたデータ信号dataを変調し、ATN_Tを介してR/Wに向けて送信する。制御回路CTLは、例えば、DEMを介して得られたコマンド信号の解釈や、記憶回路MEM2の読み出し/書き込み制御や、MEM2からの読み出しデータをMODへ送る処理といった各種ベースバンドの処理を行う。
【0033】
図9および図10は、RFIDタグの制御方式の一例を示すフロー図である。図4および図5で述べたR/Wの処理に対応して、RFIDは、図9および図10に示すような処理を行う。図9において、RFIDは、R/Wから質問コマンド1を受信すると(ステップ901)、質問コマンド1内のタグ選択条件の一致/不一致を判定する(ステップ902)。一致した場合は、ステップ903において質問コマンド1内のスロット数が‘0’か否かを判定する。不一致の場合は、ステップ904においてコマンドの受信待ち状態となる。
【0034】
ステップ903において、スロット数が‘0’であった場合、RFIDは、R/Wに向けて応答を返す(ステップ905)。スロット数が‘0’でなかった場合、ステップ906において、スロット数の値(N)に応じた0〜Nのいずれかの乱数(スロット)を発生する。この発生したスロットの値が‘0’であった場合(ステップ907)は、ステップ908において応答を返す。一方、‘0’でなかった場合は、コマンド受信待ち状態となる(ステップ909)。そして、この状態で、コマンドを受信した場合(ステップ910)、質問コマンドか否かを判定する(ステップ910)。質問コマンドの場合は、ステップ911においてスロットの値を1減算し、ステップ907へ戻る。質問コマンドでない場合は、コマンドに応じた処理を行う。
【0035】
また、図10において、RFIDは、R/Wから質問コマンドALLを受信すると(ステップ1001)、質問コマンドALL内のタグ選択条件の一致/不一致を判定する(ステップ1002)。一致した場合は、R/Wに向けて応答を返し(ステップ1003)、不一致の場合は、コマンドの受信待ち状態となる(ステップ1004)。このように、RFIDは、質問コマンドALLを受信し、そのタグ選択条件(例えば通信方式など)が一致した場合は即座に応答を返すことになる。したがって、同じ通信方式の複数のRFIDが存在した場合は、図7(b)にも示したように、同じようなタイミングで一度に応答が行われる。
【0036】
以上、本実施の形態1のRFIDシステムを用いることで、通信方式が異なる複数のRFIDが混在する場合に、図3等に示したようにそれらの読み取り時間の高速化が実現可能となる。したがって、通信時間を短縮できる。
【0037】
(実施の形態2)
本実施の形態2では、前述した図3等とは異なり、通信の初期段階において、複数のRFIDタグに含まれている単数または複数の通信方式を早期に認識することを特徴としている。
【0038】
図11を用いて説明すると、R/Wは、どの通信方式をもったRFIDがあるのかを認識する為に、質問コマンドALL(A)を送信すると、N個のRFID(A)からの応答が返ってくるので、R/WはRFID(A)が1個以上存在すると認識する。次に、質問コマンドALL(B)を送信すると、応答が無いのでRFID(B)が無いと認識する。次に、質問コマンドALL(C)を送信すると、X個のRFID(C)からの応答が返ってくるので、R/WはRFID(C)が1個以上存在すると認識する。
【0039】
この結果、R/Wは1個以上のRFID(A)及び1個以上のRFID(C)が存在することを認識できる。ここで、R/Wはアプリケーションからの必要性に応じてRFID(A)又はRFID(C)のどちらか一方だけを受信するとか、又はRFID(C)を先に個別受信するかなどを選択することができる。図11では、RFID(A)よりもRFID(C)を先に受信する例を示した。
【0040】
このように、どの通信方式のRFIDが存在するかを事前に検知することで、実施の形態1の効果に加えて、各用途に応じた読み取り方法が実現可能となる。したがって、通信時間の短縮や、通信処理の柔軟性を向上させることなどが可能となる。
【0041】
(実施の形態3)
前述した実施の形態1,2では、1回のコマンドで同じ通信方式を備えた複数のRFIDタグを一度に応答させることで各通信方式を順次認識していく例を示したが、本実施の形態3では、1回のコマンドで異なる通信方式を備えた複数のRFIDタグを応答させ、各通信方式を一括して認識することが特徴となっている。
【0042】
通信方式によっては通信方式の共通部分があり、R/Wからのコマンドを複数の通信方式のRFIDが認識できる場合がある。この場合、R/Wからは複数の通信方式のRFIDが認識できる質問コマンドALLを送信することで、複数のRFIDが応答し一度にどの通信方式のRFIDが存在するかを認識することが可能となる。
【0043】
図12、図13を用いて説明すると、図12でR/Wは、複数の通信方式のRFIDが認識できる質問コマンドALLを送信すると、RFID(A)とRFID(C)が応答する。RFID(B)は存在しないので応答しない。応答するタイミングとしては、例えば図13のようにR/Wが送出する質問コマンドALLに対して、それぞれの通信方式の応答タイミングをあらかじめ一義的に定義しておく。
【0044】
例えば、RFID(A)については、質問コマンドALLを受信した後、0以上t1未満の時間内で応答させる。RFID(B)は、質問コマンドALLを受信した後、t1以上t2未満の時間内で応答させる。RFID(C)は、質問コマンドALLを受信した後、t2以上t3未満の時間内で応答させる。このような定義を行うと、それぞれの通信方式の応答タイミングが衝突しないので、RFID(A)、(B)、(C)の存在を認識できる。ここで再度繰り返すが、それぞれの通信方式の応答タイミングは異なるが、同じ通信方式のRFIDが複数ある場合は、同じタイミングで応答を返すので、複数RFIDの中のいくつかを正常受信できる場合もあれば、正常受信できず受信レベルを検知して、その通信方式のRFIDの存在を認識することもある。また、図12、図13の例では3種類の通信方式について記載しているが1からN種類の通信方式にも対応することができる。
【0045】
その後、R/Wは、図12のように、質問コマンドALLに応答してきたRFID(A)及びRFID(C)の存在を認識し、以降それぞれのRFIDを1個ずつ読取ることができる。このように、複数のRFIDタグの中に含まれる異なる通信方式を、1回の質問コマンドALLで認識することによって、更に通信時間の短縮が実現可能となる。
【0046】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明のRFIDシステムは、特に、通信方式が異なる複数種類のRFIDタグを含んだRFIDシステムに適用して有益な技術である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】RFIDシステムの構成例を示す概略図である。
【図2】ISO/IECで規定されているUHF帯パッシブRFIDシステム仕様を示す説明図である。
【図3】本発明の実施の形態1によるRFIDシステムにおいて、リーダ・ライタおよびRFIDタグ間の処理の一例を示すシーケンス図である。
【図4】本発明の実施の形態1によるRFIDシステムにおいて、リーダ・ライタの制御方式の一例を示すフロー図である。
【図5】図4に続くリーダ・ライタの制御方式の一例を示すフロー図である。
【図6】本発明の実施の形態1によるRFIDシステムにおいて、リーダ・ライタからRFIDタグに向けたコマンドフォーマットの一例を示す説明図である。
【図7】図6のコマンドフォーマットを用いてリーダ・ライタおよびRFIDタグ間で通信を行った場合の処理の一例を示すタイミングチャートであり、(a)は質問コマンド1に対するチャート、(b)は質問コマンドALLに対するチャートである。
【図8】本発明の実施の形態1によるRFIDシステムにおいて、RFIDタグの構成の一例を示すブロック図である。
【図9】本発明の実施の形態1によるRFIDシステムにおいて、RFIDタグの制御方式の一例を示すフロー図である。
【図10】本発明の実施の形態1によるRFIDシステムにおいて、RFIDタグの制御方式の他の一例を示すフロー図である。
【図11】本発明の実施の形態2によるRFIDシステムにおいて、リーダ・ライタおよびRFIDタグ間の処理の一例を示すシーケンス図である。
【図12】本発明の実施の形態3によるRFIDシステムにおいて、リーダ・ライタおよびRFIDタグ間の処理の一例を示すシーケンス図である。
【図13】図12のシーケンスにおいて、RFIDタグの応答動作の一例を示すタイミングチャートである。
【図14】本発明の前提として検討したRFIDシステムにおいて、リーダ・ライタおよびRFIDタグ間の処理の一例を示すシーケンス図である。
【符号の説明】
【0049】
RFID RFIDタグ
ATN_R,ANT_T アンテナ
R/W リーダ・ライタ
CPU 制御回路
RF 通信回路
MEM 記憶回路
MOD 変調回路
DEM 復調回路
CTL 制御回路
VG 電源生成回路
102 電波
601 コマンド設定部
602 タグ選択条件設定部
603 スロット数設定部
604 エラーチェック部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1通信方式に対応した単数または複数の第1RFIDタグと、
第2通信方式に対応した単数または複数の第2RFIDタグと、
前記単数または複数の第1RFIDタグおよび前記単数または複数の第2RFIDタグとの間で無線通信が可能なRFIDリーダ・ライタとを備えたRFIDシステムであって、
前記RFIDリーダ・ライタに向けて、前記単数または複数の第1RFIDタグを一度に応答させ、前記単数または複数の第2RFIDタグを一度に応答させる第1機能を有することを特徴とするRFIDシステム。
【請求項2】
請求項1記載のRFIDシステムにおいて、
前記第1機能は、前記RFIDリーダ・ライタに、
前記単数または複数の第1RFIDタグを一度に応答させる第1コマンドと、
前記単数または複数の第2RFIDタグを一度に応答させる第2コマンドとを設けることで実現されることを特徴とするRFIDシステム。
【請求項3】
請求項1記載のRFIDシステムにおいて、
前記第1機能は、
前記単数または複数の第1RFIDタグに、第1タイミングを設け、
前記単数または複数の第2RFIDタグに、前記第1タイミングより後となる第2タイミングを設け、
前記RFIDリーダ・ライタに、前記単数または複数の第1RFIDタグを前記第1タイミングで一度に応答させ、続いて前記単数または複数の第2RFIDタグを前記第2タイミングで一度に応答させる第3コマンドを設けることで実現されることを特徴とするRFIDシステム。
【請求項4】
請求項1記載のRFIDシステムにおいて、
前記RFIDリーダ・ライタは、前記単数または複数の第1RFIDタグを応答させた際に、前記単数または複数の第1RFIDタグからの応答に対する受信可否または受信レベルの大きさを検知することで、前記第1通信方式に対応した第1RFIDタグの存在を認識することを特徴とするRFIDシステム。
【請求項5】
RFIDリーダ・ライタから送信されたコマンドに対応して、前記RFIDリーダ・ライタに向けて応答を返信するRFIDタグであって、
前記RFIDタグは、前記コマンドに応じて返信するタイミングとして、自身の通信方式に基づいて一義的に定義される固定の応答タイミングを備えていることを特徴とするRFIDタグ。
【請求項6】
第1通信方式に対応した単数または複数の第1RFIDタグおよび第2通信方式に対応した単数または複数の第2RFIDタグとの間で無線通信が可能なRFIDリーダ・ライタであって、
前記単数または複数の第1RFIDタグを一度に応答させ、前記単数または複数の第2RFIDタグを一度に応答させるコマンドを備えることを特徴とするRFIDリーダ・ライタ。
【請求項7】
請求項6記載のRFIDリーダ・ライタにおいて、
前記コマンドは、
前記単数または複数の第1RFIDタグを一度に応答させる第1コマンドと、
前記単数または複数の第2RFIDタグを一度に応答させる第2コマンドとを含むことを特徴とするRFIDリーダ・ライタ。
【請求項8】
請求項6記載のRFIDリーダ・ライタにおいて、
前記コマンドは、前記単数または複数の第1RFIDタグを第1タイミングで一度に応答させ、続いて前記単数または複数の第2RFIDタグを前記第1タイミングより後の第2タイミングで一度に応答させる第3コマンドであることを特徴とするRFIDリーダ・ライタ。
【請求項9】
第1通信方式に対応した単数または複数の第1RFIDタグと、
第2通信方式に対応した単数または複数の第2RFIDタグと、
前記単数または複数の第1RFIDタグおよび前記単数または複数の第2RFIDタグとの間で無線通信が可能なRFIDリーダ・ライタとを備えたRFIDシステムの処理方法であって、
前記RFIDリーダ・ライタから前記単数または複数の第1RFIDタグおよび前記単数または複数の第2RFIDタグに向けて第1コマンドを送信する第1ステップと、
前記単数または複数の第1RFIDタグが、前記RFIDリーダ・ライタに向けて一度に第1応答を返信する第2ステップと、
前記RFIDリーダ・ライタが、前記第1応答に対する受信可否または受信レベルの大きさを検知する第3ステップと、
前記RFIDリーダ・ライタから前記単数または複数の第1RFIDタグおよび前記単数または複数の第2RFIDタグに向けて第2コマンドを送信する第4ステップと、
前記単数または複数の第2RFIDタグが、前記RFIDリーダ・ライタに向けて一度に第2応答を返信する第5ステップと、
前記RFIDリーダ・ライタが、前記第2応答に対する受信可否または受信レベルの大きさを検知する第6ステップとを有することを特徴とするRFIDシステムの処理方法。
【請求項10】
請求項9記載のRFIDシステムの処理方法であって、
前記第1ステップ〜前記第6ステップを経た後に、
前記単数または複数の第1RFIDタグを個別に認識するか又は個別に認識を行わないステップと、
前記単数または複数の第2RFIDタグを個別に認識するか又は個別に認識を行わないステップとが行われることを特徴とするRFIDシステムの処理方法。
【請求項11】
第1通信方式に対応した単数または複数の第1RFIDタグと、
第2通信方式に対応した単数または複数の第2RFIDタグと、
前記単数または複数の第1RFIDタグおよび前記単数または複数の第2RFIDタグとの間で無線通信が可能なRFIDリーダ・ライタとを備えたRFIDシステムの処理方法であって、
前記RFIDリーダ・ライタから前記単数または複数の第1RFIDタグおよび前記単数または複数の第2RFIDタグに向けて第3コマンドを送信する第1ステップと、
前記単数または複数の第1RFIDタグが、前記RFIDリーダ・ライタに向けて第1タイミングで一度に第1応答を返信する第2ステップと、
前記RFIDリーダ・ライタが、前記第1応答に対する受信可否または受信レベルの大きさを検知する第3ステップと、
前記単数または複数の第2RFIDタグが、前記RFIDリーダ・ライタに向けて前記第1タイミングより後の第2タイミングで一度に第2応答を返信する第4ステップと、
前記RFIDリーダ・ライタが、前記第2応答に対する受信可否または受信レベルの大きさを検知する第5ステップとを有することを特徴とするRFIDシステムの処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−114821(P2007−114821A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−302491(P2005−302491)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】