説明

RFIDタグ及びRFIDタグの製造方法

【課題】
表面または裏面に印刷するRFIDタグの表面または裏面の凹凸による印字不可能領域をなくする。
【解決手段】
RFIDタグを、ベースフィルムと、このベースフィルム上に形成されたアンテナパターンと、このアンテナパターンとはんだ接続されたICチップと、アンテナパターン上に形成された絶縁膜層と、ICチップとアンテナ及びベースフィルムとの間及びICチップと絶縁膜層との間隙に充填されたアンダーフィル材料と、絶縁膜層に接合されてICチップの上面に相当する部分に窓部を有して表面の高さが前記ICチップの表面の高さと略等しい形成層と、この形成層とベースフィルム及びICチップとの間隙に充填された緩衝層と、形成層とICチップとの表面を覆う印刷層とを備えて構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面や裏面あるいは表裏面に印刷を施し利用するRFIDタグ及びその製造方法に関するものであり、印刷を妨げたり印刷品質を劣化させたりする表面または裏面の凹凸を改善し、平坦化を図ることを目的とした構造を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、RFID(Radio Frequency Identification)タグはラベル状やカード形状に加工され、物品に取付けて物品の情報管理などに使用する形で広く利用されている。RFIDタグはICチップとアンテナからなるインレットあるいはインレイと呼ばれる構造体の表面や裏面に、目的や用途に応じてフィルムや紙を接着剤や粘着剤などにより接着して製造される。
【0003】
ICチップに記憶されているID(Identification:識別情報)等の種々の情報をアンテナにより無線でリーダライタと通信することができ、リーダライタによってICチップに記憶されている情報を非接触で読み取ったり、逆にICチップに書き込んだりすることで、様々な物品管理に利用されている。RFIDタグは取り付けられる物品の情報と紐付けされ、物品の情報などをタグ表面に印刷することで、人が目視確認できるようにしている場合が多く、IDが読めなくなった場合のバックアップとして利用される場合が多い。 そのため、通常、RFIDタグの表面または裏面は印字が可能な構造になっている。また、RFID内蔵リライタブルシートと呼ばれるシートは、内部にRFIDを格納し、表面にリライタブル層を持ち、熱などにより約1000回もの印字・消字を繰り返して使用される。
【0004】
このようなRFIDタグの利用状態にあっては、RFIDタグは印刷を施すことを前提に構成されていて、さまざまな印刷機を用いて必要な情報が印刷される。印刷の際に印刷面に凹凸が存在すると、印刷品質が劣ったり、印刷ができなかったり、印刷面が傷ついたりする問題が生じる。特に、ICチップはその厚さが少なくとも30μm以上あるため、ICチップの存在する場所は他の部分よりも厚さが厚くなるため、ICチップを破損させる危険もある。そのため、RFIDタグは表面を平坦にすることが必要である。
【0005】
RFIDタグの表面を平坦化するための技術として特許文献1には、図9の912のようなベースフィルム92の上に形成したアンテナ91にはんだ95で接続して周囲にアンダーフィル96を塗布したICチップ94の近傍をくりぬいたフィルム層912を用いる方法が開示されている。
【0006】
又、特許文献2には、アンテナを形成した基材の上にICチップを搭載し、ICチップを加圧しながら基材に埋め込むことにより基材の表面にICチップの厚みによる凹凸ができないようにするICタグインレットの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−9881号公報
【特許文献2】特開2008−102805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に第2の実施形態として記載されている方法で平坦にするためには、図9の(b)に示した構成において、アンダーフィル96が塗布されているエリア全てをくりぬく必要があり、(a)に示すような大きな穴を有するフィルム層912を必要とする。アンダーフィル96のフィレット端が存在する場所にフィルム層がかかると、アンダーフィルの厚さ分だけフィルム層912が盛り上がり、結果として平坦化を妨げることになる。
【0009】
アンダーフィル96は通常、塗布量をシリンジからの出る体積で制御するが、塗布領域(面積)を正確に制御することは困難である。なぜなら僅かな気温や湿度の差、ロット差などによって流動性が異なるためである。そのため、サンプルごとにそれぞれアンダーフィル塗布領域が異なるため、平坦化のためのフィルム層をくりぬくエリアはアンダーフィルの最大量の面積にせざるをえない。このため、チップ面積よりもかなり大きくする必要があり、チップ端からフィルム層までの空間が大きくなる。この部分は下地がないため、印刷に対して不安定になり印字不可能領域となる。
【0010】
また、特許文献2に記載されている方法では、基材に埋め込んだICチップの周辺にへこんだ部分が生じるために、ICタグ表面の印刷不可能な領域が埋め込んだICチップの大きさよりもかなり大きくなってしまう。
【0011】
発明者らはアンダーフィルの塗布領域の調査を行った。その結果、一例として0.4mm×0.4mmのICチップの場合、アンダーフィルの塗布領域はチップ端から計測して0.3mm程度から1.2mm程度までばらつきがあることが明らかになった。このような大きな差があるため、従来は形成層912のチップ部のくりぬき部分の大きさは位置あわせの領域を含めて直径5mm程度の穴が必要であった。ICチップの多くはタグの中心部に位置し、直径5mm程度の印刷禁止領域がタグの中心部に存在することになる。ICチップの大きさが大きくなると、この印刷禁止領域も比例して大きくなるため、極力小さくする必要があり、そのためにはアンダーフィルの塗布領域の制御が必要である。
【0012】
本発明は、表面または裏面あるいは表裏面に印刷することを前提として用いられるRFIDタグに関して、RFIDタグの印字不可能領域をなくし、平坦なRFIDタグを提供することを目的とする。特に、RFIDリライタブルシートと呼ばれる熱などにより印字・消字を繰り返すシートは1000回以上の印字耐性が必要であり、特に印字面が平坦である必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記した課題を解決するために本発明では、RFIDタグを、ベースフィルムと、このベースフィルム上に形成されたアンテナパターンと、このアンテナパターンとはんだ接続されたICチップと、アンテナパターン上に形成された絶縁膜層と、ICチップとアンテナ及びベースフィルムとの間及びICチップと絶縁膜層との間隙に充填されたアンダーフィル材料と、絶縁膜層に接合されてICチップの上面に相当する部分に窓部を有して表面の高さが前記ICチップの表面の高さと略等しい形成層と、この形成層とベースフィルム及びICチップとの間隙に充填された緩衝層と、形成層とICチップとの表面を覆う印刷層とを備えて構成した。
【0014】
また上記した課題を解決するために本発明では、RFIDタグを、ベースフィルムと、このベースフィルム上に形成されたアンテナパターンと、このアンテナパターンとはんだ接続されたICチップと、アンテナパターン上に形成された絶縁膜層と、ICチップとアンテナ及びベースフィルムとの間及びICチップと絶縁膜層との間隙に充填されたアンダーフィル材料と、絶縁膜層に接合されてICチップの上面に相当する部分に窓部を有して表面の高さがICチップの表面の高さと略等しい形成層と、この形成層とベースフィルム及びICチップとの間隙に充填された緩衝層と、形成層とICチップとの表面を覆うベース層と、ベースフィルムに接合された印刷層とを備えて構成した。
【0015】
更に上記した課題を解決するために本発明では、RFIDタグの製造方法において、アンテナパターン材料が形成されたベースフィルム上にレジストを塗布しアンテナパターンを露光してアンテナパターンを形成し、この形成したアンテナパターン上に残ったレジストのうちアンテナパターンにICチップを搭載する部分及びその周辺のレジストを除去し、このレジストを除去したアンテナパターン上にICチップを搭載して接続し、ICチップとアンテナ及びベースフィルムとの間及びICチップとレジストとの間隙にンダーフィル材料を充填し、ICチップの上面に相当する部分に窓部を有して表面の高さがICチップの表面の高さと略等しい形成層をレジストに接合し、形成層とベースフィルム及びICチップとの間隙に緩衝材料を充填し、形成層とICチップとの表面を覆うようにして印刷層を接合してRFIDタグを形成するようにした。
【0016】
更にまた、上記した課題を解決するために本発明では、RFIDタグの製造方法において、アンテナパターン材料が形成されたベースフィルム上にレジストを塗布しアンテナパターンを露光してアンテナパターンを形成し、形成したアンテナパターン上に残ったレジストのうちアンテナパターンにICチップを搭載する部分及びその周辺のレジストを除去し、このレジストを除去したアンテナパターン上にICチップを搭載して接続し、ICチップとアンテナ及びベースフィルムとの間及びICチップとレジストとの間隙にンダーフィル材料を充填し、ICチップの上面に相当する部分に窓部を有して表面の高さがICチップの表面の高さと略等しい形成層をレジストに接合し、この形成層とベースフィルム及びICチップとの間隙に緩衝材料を充填し、形成層とICチップとの表面を覆うようにしてベース層を接合し、ベースフィルムの表面に印刷層を接合してRFIDタグを形成するようにした。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、RFIDタグの表面または裏面を平坦に形成できるので、表面または裏面において印字不可能領域をなくすことができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例1および2におけるRFIDタグの構成を示すRFIDタグの断面図である。
【図2A】実施例1および2におけるにおける印刷レジストを用いたRFIDインレットのアンテナ製造工程を示すフロー図及び各工程におけるRFIDタグの構成を示す断面図である。
【図2B】実施例1および2において、レジスト除去工程まで処理されたRFIDタグの斜視図である。
【図3】実施例1乃至3におけるRFIDインレットの製造工程を示すフロー図及び各工程におけるRFIDタグの構成を示す断面図である。
【図4A】実施例1乃至3におけるRFIDタグの製造工程を示すフロー図及び各工程におけるRFIDタグの構成を示す断面図である。
【図4B】実施例1乃至3における成形層の斜視図である。
【図5】実施例2におけるポジ型ネガ型両用レジストを用いたRFIDインレット用のアンテナ製造工程を示すフロー図及び各工程におけるRFIDタグの構成を示す断面図である。
【図6】実施例3におけるフィルム貼り付け型のRFIDインレットのアンテナ製造工程を示すフロー図及び各工程におけるRFIDタグの構成を示す断面図である。
【図7】実施例4におけるICチップ下方全面にアンテナがない場合のRFIDタグの製造工程を示すフロー図及び各工程におけるRFIDタグの構成を示す断面図である。
【図8】実施例5におけるRFIDタグの構成を示すRFIDタグの断面図である。
【図9】従来技術としてのRFIDタグの構成を示すRFIDタグの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施例を、図を用いて説明する。
まず、本発明によるRFIDタグの層構成を図1に示す。
本発明によるRFIDタグは、ベース層11の上に接着されたベースフィルム2、その上に形成されたアンテナ1、アンテナ1の周囲を覆う緩衝層13、緩衝層13の内側に設けたアンテナ1を覆うようにして形成したレジスト層3、はんだバンプ5でアンテナ1に接続したICチップ4、ICチップ4の周辺の高さをICチップ4と同じにして平坦化するための形成層12、ICチップ4と形成層12の表面を覆うようにして形成された印刷層15、印刷層の表面を覆う保護層15で構成されている。
【0020】
ベースフィルム2、その上に形成されたアンテナ1、はんだバンプ5でアンテナ1に接続したICチップ4を含んで構成される部品をRFIDインレット10と呼ぶ。
【0021】
このRFIDタグの製造工程を大きく分けると、(1)アンダーフィル塗布制御領域を持つRFIDインレット10を製造する工程と、(2)平坦化RFIDタグを製造する工程とに分けられる。
【0022】
上記(1)のアンダーフィル塗布制御領域を持つRFIDインレットを製造する工程においてアンダーフィル塗布制御領域を持つRFIDインレットは、RFIDインレット用のアンテナを製造する際に用いるレジストを流用して、アンダーフィル塗布制御領域部分のみのレジストを剥離して残りのレジストを残すことにより製造する。また、アンダーフィル塗布領域制御部分をくりぬいたフィルムを貼ることでも製造可能である。
【0023】
アンダーフィル塗布制御領域を持つRFIDインレット10を用いることによって、ICチップ4の厚さを埋めるための形成層12のくりぬき穴の大きさを、従来はICチップの数十倍の面積が必要であったが、これを最低限に小さくすることが可能であるとともに、RFIDインレットはアンテナのすべての領域がレジストとアンダーフィルによって保護されることにより、曲げや引っ張りなどの機械的強度があがる。また絶縁物によりアンテナが保護されることによって、ICチップの静電気による破壊から保護する役割を果たし、通常のRFIDタグよりも高強度なタグを製造できる。
【0024】
上記(2)の平坦化RFIDタグの製造方法は、アンダーフィルの塗布制御領域を持つRFIDインレット10を中心として、RFIDインレット10の下層に必要であればRFIDインレットを支えるベースとなるRFIDタグベース層11を接着する。RFIDインレット10の上層にICチップ4の厚さを平坦化するためにICチップ4の高さ分の厚さを持ち、アンダーフィル塗布領域制御部分と同じ面積を除外した形成層12を接着する。前記形成層12の上面とICチップ4の上面の高さが一致するため、RFIDタグは平坦化がされる。さらに、形成層12の上に流動してICチップ周辺部分の穴を埋めるため緩衝層9を配する。この緩衝層を設けることにより、ICチップ上面の上層にも印刷が可能となる。形成層12の上層に印刷層を設ける。必要に応じて、印刷層の保護層14を配する構造である。
以下に、図1に示した構成のRFIDタグを製造するための実施例を説明する。
【実施例1】
【0025】
第一の実施例について説明する。
上記に説明したRFIDタグの製造工程のうち(1)のアンダーフィル塗布制御領域を持つRFIDインレット10を製造する工程は、更に、(1−1)アンダーフィル塗布制御領域を持つRFIDアンテナ製造工程と、(1−2)ICチップを搭載し、アンダーフィル塗布・ベークによりRFIDインレットを製造する工程とに分けることができる。
以下に、上記した各工程についてそのプロセスを詳細に説明する。
【0026】
(1−1)アンダーフィル塗布制御領域を持つRFIDアンテナ製造工程
図2A及びBを用いて本実施例におけるアンダーフィル塗布制御領域を持つRFIDアンテナ製造工程の処理フローを詳細に説明する。図2Aには、各処理ステップと、各処理ステップにおける素子の断面構造を示す。
【0027】
まず、厚さ20μmのアルミニウム箔1と厚さ25μmのPET(Polyethylene Terephthalate)あるいはPEN(Polyethylene Naphthalate)から成るベースフィルム2を、接着剤を介して接着する(S201)。次に、印刷レジスト、たとえば塩化ビニルと酢酸ビニルの共重合体のレジスト、を用いてグラビア印刷の回転刷版でアンテナの形状を印刷する(S202)。通常のアンテナエッチングのためのレジスト印刷厚さは4〜6μm程度の厚さであるが、本実施例では、アンダーフィル塗布制御領域を作製するために、制御したい塗布面積にしたがって厚さをコントロールする。たとえば、通常の塗布厚さの倍の10μmとした。アンダーフィル塗布領域をさらに狭めたい場合は、さらに厚塗りにすることも可能である。このアンテナパターンの印刷は、グラビア印刷だけでなく、スクリーン印刷でもかまわない。
【0028】
また、一般的なフォトエッチング技術によるポジ型あるいはネガ型の液状のフォトレジストやドライフィルムなどを用いてアンテナパターンを製造してもかまわない。アンテナパターンの製造後、アルミニウムをエッチングする(S203)。アンテナ材料としてアルミニウムを例に挙げたが、銅箔でも同様な方法で製造可能である。
【0029】
通常は、この後表面のレジストを全て除去するが、本実施例ではICチップを搭載後のアンダーフィル塗布したい領域のみレジストを除去する(S204)。レジストの除去にはエキシマレーザーなどを用いてレジストを消失させる。図2AのS204に示す素子の斜視図を図2Bに示す。図2Bのレジスト3の中心部に円形でレジストを除去したエリア:穴部31がアンダーフィル塗布制御領域となる。図2Bのa-b面の断面図が図2AのS204に示した素子の断面図である。
【0030】
発明者らはアンダーフィルの塗布領域を制御しなかった場合のアンダーフィル塗布面積を詳細に検討した結果、チップ面積の10倍前後の広がりがあることが明らかになった。そのため、このアンダーフィル塗布領域を半分以下に小さくすることは平坦化のために大きな効果があることが明らかである。
【0031】
また、レジスト3の厚さをICチップ4の厚さと同等まで厚くすると、アンダーフィル6を塗布した際にアンダーフィル内部に泡を巻き込む可能性が高くなるため、レジスト3の厚さはICチップ4の厚さより薄くすることが好ましい。
【0032】
(1−2)チップの搭載及びアンダーフィル塗布工程
チップの搭載及びアンダーフィル塗布工程を図3を用いて説明する。(1−1)で説明した各工程を経て製造されたアンダーフィル塗布領域を制御したアンテナ1に、接続する電極部分にはんだバンプ5を付着させたICチップ4を搭載して接続する(S301)。ICチップ4とアンテナ1との接続は、アンテナ1に搭載したICチップ4の上面に超音波ホーン30を当て、圧力と超音波を印加することによって行う。超音波の振動によってはんだバンプ5が溶融し、ICチップ4とアルミニウムアンテナ1が接合する。この状態で、ICチップ4がアンテナ1から脱落することは無いが、アンダーフィルを塗布することによって接合強度を強化させる(S302)。アンダーフィル6はICチップ4が小さい場合はフィラーの入っていないタイプのものが望ましい。アンダーフィル6はICチップ4とアンテナ1の間、スリットの中を充填し、レジスト3の壁面を越えない量を塗布する。アンダーフィル6を硬化してアンダーフィル塗布制御領域を持つインレット10(S302に対応する構成)を製造する。
【0033】
尚、ICチップ4の搭載・接続方法は超音波による接続方法のみに限らず、ACF(Anisotropic Conductive Film:異方性導電膜)やACP(Anisotropic Conductive Paste:異方性導電ペースト)、NCF(Non-conductive Film)やNCP(Non-conductive Paste)などによるものでもかまわない。
【0034】
(2)印刷対応平坦化RFIDインレットの製造工程
次に、印刷対応平坦化RFIDインレットの製造工程を、図4A及びBを用いて説明する。この工程では、上記した(1−2)の工程で製造したアンダーフィル塗布制御領域をもつインレット10を用いて印刷対応平坦化RFIDインレットを製造する。
【0035】
先ず、図4Aに示すように、RFIDインレット10の下層にベースとなる層13を配し、前記インレット10の上層にICチップの厚さを平坦化させる形成層12をICチップと位置あわせを行い接着する(S401)。この形成層12には、図4Bに示した斜視図のように、中央部に穴部121が設けられている。この穴部121は、レジスト3の穴部31で形成したアンダーフィル塗布制御領域と同じ面積とすることで、RFIDタグの平坦性を向上させるものである。印刷される面がインレット10の下面であれば、RFIDベース層11が印刷面になるため、印刷可能な材料を配する。
【0036】
次に流動して形成層12の穴部121を埋める緩衝層13を塗布する(S402)。緩衝層13はポリエステル系、オレフィン系、ゴム系、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合)系などのホットメルト樹脂や、ABS樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリイソブチレン系樹脂、ポリサルファイド系樹脂、ウレタン樹脂などの熱可塑性樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂などの熱硬化性樹脂など、流動して穴部121を埋められるものであればいずれも使用できる。尚、この緩衝層13は形成層12をRFIDインレット10に接着する接着剤をかねてもかまわない。
【0037】
穴部121を埋めた後、ホットメルト樹脂であれば室温で、熱硬化樹脂なら硬化温度にて硬化させる。次に、上層に印刷層14を設ける(貼り付ける?)(S403)。RFIDリライタブルシートであれば、この印刷層14がリライト層になる。さらに必要に応じて保護層15を設ける。
【0038】
本実施例によれば、RFIDタグの表面または裏面を平坦に形成できるので、表面または裏面において印字不可能領域をなくすことができる。また、また繰り返し使用する場合の曲げや引っ張りなどの機械的ストレスに強いRFIDタグを提供することが可能になる。
【実施例2】
【0039】
本発明による第二の実施例について説明する。
本実施例は、実施例1で説明した各工程のうち、(1−1)のアンダーフィル塗布制御領域を持つRFIDアンテナ製造工程を一部変えたものである。その具体的例を、図5を用いて説明する。
【0040】
本実施例は、アンダーフィル塗布領域を制御したRFIDインレット10の製造方法について、ポジ型・ネガ型両用レジストをもちいて製造することを特徴とする。フォトレジストは通常はネガ型かポジ型に分けられ、用途に応じて使い分けるが、ポジ型・ネガ型両用レジストがある。これは露光線源や露光強度、現像液などによりネガ型をポジ型に逆転あるいはポジ型をネガ型に逆転可能なものである。
【0041】
図5に示すように、まず、アンテナとなる金属箔1を基材(ベースフィルム)2に接着して、反転可能なポジ型レジスト30を塗布する(S501)。塗布したレジスト30を乾燥させ、エッチング後に取り除く部分のアンテナパターンをマスク100を用いて露光・現像し(S502)、金属箔をエッチングしてアンテナ形状1を得る。その後、アンダーフィル塗布領域を制御するためのエリアをマスク101を用いて遮光し、このエリア以外の部分のレジスト30を露光する際に(S503)、露光強度を強くすることで、前記反転可能なポジ型レジスト30がネガ型として働き、現像することでアンダーフィル塗布制御領域のレジストを除去できる(S504)。この後のRFIDタグの製造方法は第一の実施例と同じである。
【実施例3】
【0042】
本発明による第三の実施例を説明する。
本実施例は、実施例1で説明した各工程のうち、(1−1)のアンダーフィル塗布制御領域を持つRFIDアンテナ製造工程を一部変えたものである。その具体的例を、図6を用いて説明する。
【0043】
銀ペーストなどのペーストを用いて、スクリーン印刷によりRFIDインレットの基材(ベースフィルム)2の上にアンテナ1を形成するものは、アンテナ1形成の際にレジストを使用しない(S601)。そのため、このようなアンテナの上には実施例1、実施例2で用いたレジスト3または30を使用してもかまわないが、アンテナ1の性能上、アンダーフィル塗布領域を制御する穴部201が設けられた穴あきフィルム20を接着することが望ましい(S602)。スクリーン印刷により形成したアンテナ101の場合はアンテナ内部に空隙が多いため、その空隙にレジストがしみこむと誘電率等が変化してアンテナ性能を劣化させる可能性があるためである。
貼り付けるフィルム20としては、PETフィルム、PENフィルムなど、アンテナ基材のフィルムと同等のものが利用できる。または、これらに限らず、穴明け加工が可能であるフィルムであればいずれの素材でも利用可能である。フィルムの厚さはICチップの厚さよりも薄いものとすることで、ICチップ搭載後のアンダーフィル塗布の際に、アンダーフィル内にボイドができにくい構造になる。
【実施例4】
【0044】
本発明による第四の実施例を図7を用いて説明する。
本実施例は、図1で説明したRFIDタグの構成に対して、RFIDインレットのアンテナとなる金属箔がチップ直下全面に存在しない場合についての例である。
【0045】
このような構成のアンテナ形状の場合であっても、実施例1で説明したものと同じ工程を経て処理することにより、表面が平坦化されて印刷に対して良好であり、信頼性の高いRFIDタグを形成することができる。
【0046】
すなわち、図7に示すように、先ずベースフィルム層702にアンテナの材料と成る金属箔を貼り付けてその上にレジスト703を塗布してマスク(図示せず)を用いてレジスト703を露光し、現像後エッチング処理することにより、ベースフィルム層702の上にアンテナパターン701が形成される(S701)。次に、ICチップ74が搭載される箇所のアンテナパターン701上のレジスト703を除去する(S702)。次に、レジストが除去されて露出したアンテナパターン71上にICチップ704を搭載し、ICチップ704に超音波ホーン(図示せず)を当ててICチップ704に付着させたはんだバンプ705を溶融してICチップ704とアンテナパターン701とを接続する(S703)。
【0047】
次に、アンテナパターン701と接続したICチップ704の周囲とベースフィルム層702との間にアンダーフィル706を供給する(S704)。このとき、ICチップ704が搭載された領域の周辺に残されたレジスト703によりアンダーフィル塗布制限領域が形成されており、供給されたアンダーフィルの広がりが抑えられる。アンダーフィル706は、レジスト層703の表面よりも高くならない程度に供給する。次に、ICチップ704よりも少し大きめの窓(穴)が形成された形成層712をレジスト層703に貼り付け、緩衝層713を塗布する(S705)。次に、形成層712の表面に印刷層714を張り付け、その上に保護層715を貼り付けてRFIDタグを形成する。
【0048】
本実施例においては、図1に示したRFIDタグの構成におけるベース層11に相当する層への貼り付けを省略したが、必要に応じてベースフィルム層702をベース層11に相当する層に貼り付ける構成としても良い。
【0049】
このことから、本発明はいかなる形状のアンテナにおいても適用可能であり、アンテナ形状に左右されないものである。
【実施例5】
【0050】
本発明による第五の実施例を説明する。
実施例一、二、三、四のいずれかの方法において製造されたRFIDインレット10を用いて、第一の実施例の(2)の印刷対応平坦化RFIDインレットの製造工程において製造する場合、図8に示すようにRFIDインレット10のICチップ4が下向きであり、形成層12がRFIDインレット10の下方にあり、RFIDインレット10の上方に印刷層14及び保護層15が存在してもかまわない。
【0051】
即ち、本実施例においては、図2A,図3で説明した工程を経て形成されたRFIDインレット10を用いて、図4Aで説明した工程フローのS401においては形成層12とベース層11とをRFIDインレット10に貼り付けたが、本実施例においてはS401に相当する工程において形成層12だけを貼り付け、S402に相当する工程で緩衝層13を塗布した後、S403に相当するステップにおいてベースフィルム2の表面に印刷層14を貼り付け、その上に保護層15を貼り付ける。一方、形成層12の表面にはベース層11を貼り付けて図8に示すような構成のRFIDタグを形成する。
【0052】
本実施例によれば、ベースフィルム2の表面に印刷層14を貼り付けた構成となり、実施例1乃至4の場合と比べて印刷層14の表面の平坦性がより向上する。
【符号の説明】
【0053】
1・・・アンテナ用金属箔 2・・・ベースフィルム 3・・・レジスト 4・・・ICチップ 5・・・はんだバンプ 6・・・アンダーフィル
10・・・RFIDインレット 11・・・タグベース層 12・・・形成層
13・・・緩衝層 14・・・印刷層 15・・・保護層 20・・・形成フィルム層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフィルムと、
該ベースフィルム上に形成されたアンテナパターンと、
該アンテナパターンとはんだ接続されたICチップと、
前記アンテナパターン上に形成された絶縁膜層と、
前記ICチップと前記アンテナ及び前記ベースフィルムとの間及び前記ICチップと前記絶縁膜層との間隙に充填されたアンダーフィル材料と、
前記絶縁膜層に接合されて前記ICチップの上面に相当する部分に窓部を有し、表面の高さが前記ICチップの表面の高さと略等しい形成層と、
該形成層と前記ベースフィルム及び前記ICチップとの間隙に充填された緩衝層と、
前記形成層と前記ICチップとの表面を覆う印刷層と
を備えたことを特徴とするRFIDタグ。
【請求項2】
ベースフィルムと、
該ベースフィルム上に形成されたアンテナパターンと、
該アンテナパターンとはんだ接続されたICチップと、
前記アンテナパターン上に形成された絶縁膜層と、
前記ICチップと前記アンテナ及び前記ベースフィルムとの間及び前記ICチップと前記絶縁膜層との間隙に充填されたアンダーフィル材料と、
前記絶縁膜層に接合されて前記ICチップの上面に相当する部分に窓部を有し、表面の高さが前記ICチップの表面の高さと略等しい形成層と、
該形成層と前記ベースフィルム及び前記ICチップとの間隙に充填された緩衝層と、
前記形成層と前記ICチップとの表面を覆うベース層と
前記ベースフィルムに接合された印刷層と
を備えたことを特徴とするRFIDタグ。
【請求項3】
前記アンテナパターン上に形成された絶縁膜層は前記ICチップが搭載されている箇所の周辺において前記アンテナパターンの上から除去されていることを特徴とする請求項1または2に記載のRFIDタグ。
【請求項4】
前記絶縁膜層の厚さが前記ICチップの厚さよりも薄いことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のRFIDタグ。
【請求項5】
前記絶縁膜層が前記アンテナパターンを形成するときにマスクとして用いられたレジストであることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のRFIDタグ。
【請求項6】
前記絶縁膜層が前記アンテナパターン上に貼り付けられたフィルムであることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のRFIDタグ。
【請求項7】
アンテナパターン材料が形成されたベースフィルム上にレジストを塗布しアンテナパターンを露光してアンテナパターンを形成し、
該形成したアンテナパターン上に残ったレジストのうち前記アンテナパターンにICチップを搭載する部分及びその周辺のレジストを除去し、
該レジストを除去したアンテナパターン上にICチップを搭載して接続し、
前記ICチップと前記アンテナ及び前記ベースフィルムとの間及び前記ICチップと前記レジストとの間隙にンダーフィル材料を充填し、
前記ICチップの上面に相当する部分に窓部を有し、表面の高さが前記ICチップの表面の高さと略等しい形成層を前記レジストに接合し、
該形成層と前記ベースフィルム及び前記ICチップとの間隙に緩衝材料を充填し、
前記形成層と前記ICチップとの表面を覆うようにして印刷層を接合する
ことを特徴とするRFIDタグの製造方法。
【請求項8】
アンテナパターン材料が形成されたベースフィルム上にレジストを塗布しアンテナパターンを露光してアンテナパターンを形成し、
該形成したアンテナパターン上に残ったレジストのうち前記アンテナパターンにICチップを搭載する部分及びその周辺のレジストを除去し、
該レジストを除去したアンテナパターン上にICチップを搭載して接続し、
前記ICチップと前記アンテナ及び前記ベースフィルムとの間及び前記ICチップと前記レジストとの間隙にンダーフィル材料を充填し、
前記ICチップの上面に相当する部分に窓部を有し、表面の高さが前記ICチップの表面の高さと略等しい形成層を前記レジストに接合し、
該形成層と前記ベースフィルム及び前記ICチップとの間隙に緩衝材料を充填し、
前記形成層と前記ICチップとの表面を覆うようにしてベース層を接合し、
前記ベースフィルムの表面に印刷層を接合する
ことを特徴とするRFIDタグの製造方法。
【請求項9】
前記レジスト層の厚さが前記ICチップの厚さよりも薄くなるように前記レジストを塗布することを特徴とする請求項7又は8に記載のRFIDタグの製造方法。
【請求項10】
前記アンテナパターンにICチップを搭載する部分及びその周辺のレジストを除去することを、前記アンテナパターンにICチップを搭載する部分及びその周辺のレジストにレーザを照射してレジストを消失させることにより行うことを特徴とする請求項7乃至9の何れかに記載のRFIDタグの製造方法。
【請求項11】
前記アンテナパターンにICチップを搭載する部分及びその周辺のレジストを除去することを、前記ICチップを搭載する部分及びその周辺のレジストをマスクした状態で他の部分のレジストを前記アンテナパターンを露光したときよりも強い光で露光し、該強い光で露光されなかった前記マスクした領域のレジストを除去することにより行うことを特徴とする請求項7乃至9の何れかに記載のRFIDタグの製造方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−32931(P2012−32931A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170578(P2010−170578)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】