説明

RFIDラベルおよび該RFIDラベルを用いた識別用タグ

【課題】医療現場で使用されるリストバンド等に貼付でき、保管や使用などの作業性が向上したRFIDラベル、および該RFIDラベルをリストバンドに貼付した識別用タグを提案する。
【解決手段】粘着テープ3の粘着剤層にRFIDインレット2が固着され、さらに該粘着剤層を保護する離型シートの付着状態で貼付使用不能とし、剥離して貼付使用可能な状態とするようにしたRFIDラベル1であるから、医療現場で腕を動かし難い患者に取り付けたリストバンド31に貼付してICチップに認識情報を記憶することによって、腕を動かすこと無く該認識情報を確認して患者個人を特定できる。一方、このようなRFIDラベル1をリストバンド31に貼り付けた識別用タグ7によれば、前記RFIDラベル1の作用効果が発揮される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触でデータを書き換え可能なRFIDラベルと、所定の識別情報を格納したRFIDラベルを用いた識別用タグとに関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療の現場では、患者個人を正確かつ容易に特定できるように、個人の識別情報を印刷したリストバンドが用いられている。ここで、リストバンドには、識別情報がバーコード化されて印刷されたものが広く知られており、該バーコードを専用の読取装置で読み取ることによって患者個人を間違いなく特定できるようにしている。
【0003】
さらに、上記のリストバンドは、バーコードを読み込むために専用の読取装置をバーコードに近接させねばならないが、ケガや病気等により腕を動かし難い患者の場合等では読取装置をバーコードに近接させ難く、それに要する労力と時間とが増大してしまうことがあり得た。これ以外にも、夜間消灯している場合には、懐中電灯等でバーコードの読み取り位置を探さねばならずに読取作業の効率が低下したり、また、患者が就寝中であれば、患者を起こしてしまったりする。さらに、就寝中の患者を起こしてはいけない場合もあり、この場合にはバーコードの読み取りが極めて難しくなる。これら問題に対して、例えば特許文献1には、RFIDインレットがリストバンドに内部形成されている構成のものが提案されている。この構成では、RFIDインレットに記憶された識別情報を専用装置により非接触で読み取ることができるため、腕を動かすことなく識別情報を確認することができ、前記した労力や時間が増大するという問題を生じない。これにより、例えば、前記のように就寝中の患者の場合には、布団をめくること無く、該布団越しに識別情報を読み取ることができ、患者を起こしてしまうこともない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4443975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、RFIDインレットが内部形成されたリストバンドの従来構成にあっては、RFIDインレットがリストバンドとして一体形成されていることから、容易に腕を動かすことができる患者であっても当該リストバンドを使用する場合がある。しかし、RFIDインレットが内部形成された構成を全ての患者に用いることは、コスト増大となることから、腕を容易に動かせる患者には、RFIDインレットを備えない構成のリストバンドが使用されることも行われている。このように患者に応じて、RFIDインレットを内部形成した構成と、該RFIDインレットを備えない構成とを使い分ける場合には、両者を区別して使用しなければならないため、その保管や使用に手間がかかり、現場での作業性が低減してしまうという問題を生じていた。
【0006】
また、RFIDインレットが内部形成されたリストバンドは、その表面にバーコードを印刷することにより、この従来構成のみで、腕を動かせる患者と動かせない患者の両方に対応可能であるが、内部形成されたRFIDインレットによって局部的な肉厚の形態となっていることから、バーコードを一般的な印刷装置で印刷し難いという問題もあった。
【0007】
本発明は、上述した問題の解決を試みたものであって、医療現場でリストバンドに使用する場合にも保管や使用の手間を軽減して作業性を改善できるRFIDラベル、および該RFIDラベルがリストバンドに貼付された識別用タグを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、データを書き換え可能に格納するメモリを具備したICチップと、該ICチップに接続されたアンテナと、ICチップおよびアンテナを担持し且つ保護する易変形性の薄膜状フィルムとを備え、前記データを所定の入出力装置と非接触で送受信する機能を備えたRFIDインレットと、易変形性を有する薄膜状の合成樹脂製シートと、該シートの片面に設けられ、該片面の一部領域に前記RFIDインレットが固着された粘着剤層とを備えた粘着テープとを備え、さらに、前記粘着テープの粘着剤層に剥離可能に付着され、付着状態で該粘着剤層の全面を保護して貼付使用不能とし、該粘着剤層から剥離されることにより貼付使用可能とする離型シートを備えていることを特徴とするRFIDラベルである。
【0009】
ここで、RFIDインレットは、粘着テープの粘着剤層に固着された状態でICチップやアンテナが露出しないように、薄膜状フィルムが少なくともICチップやアンテナの一側に配された構成とする。これにより、RFIDラベルが貼付対象物に貼り付けられた状態で、該対象物にICチップやアンテナが直接触れずに保護できる。さらに、RFIDラベルと添付対象物とを接着した間から水分が浸入した場合にも、薄膜状フィルムによってICチップとアンテナとを保護できる。また、RFIDインレットの薄膜状フィルムと粘着テープの合成樹脂製シートとを易変形性を有するものとしていることから、様々な形状のものにフィットして安定かつ容易に貼り付けることができる。
【0010】
かかる構成にあっては、RFIDインレットのICチップに所望のデータを記憶して、用途に応じて所望の貼付対象物に貼り付けることにより、記憶したデータを随時正確かつ安定して読み込むことができる。例えば、上述したように医療現場でリストバンドに印刷したバーコード(識別情報)により患者個人を特定するようにしている場合にあって、病気やケガ等により腕を動かし難い患者には、本発明のRFIDラベルを貼り付けて、そのICチップに個人を特定する認識情報をデータ化して記憶すれば、該データを所定の入出力装置により非接触で読み取ることができるため、患者の腕を動かすこと無く正確かつ容易に患者個人を特定できる。そして、比較的容易に腕を動かすことのできる患者には、バーコードを印刷したリストバンドのみを使用できることから、患者に応じて、RFIDラベルを貼付したり、貼付しなかったりすることを適宜選択して使用可能である。さらに、リストバンドとRFIDラベルとを夫々管理して使用できることから、これらの保管や使用による手間も可及的に抑制でき、それに伴うコスト増加を抑制できる。
【0011】
尚、同様に、本発明のRFIDラベルを上記のリストバンドに貼付して使用すれば、夜間の診察を必要とする患者や就寝中の診察を必要とする患者にあっても、患者の腕を動かしたり又は布団をめくったりすること無く該布団越しに、認識情報を容易かつ安定して確認できる。
【0012】
さらに、RFIDラベルを貼付しない状態のリストバンドであれば、一般的な印刷装置によりバーコードを容易かつ安定して印刷でき、印刷ミス等の発生を可及的に抑制できる。したがって、バーコードを印刷したリストバンドとして安定供給できるという利点も有する。
【0013】
また、合成樹脂製のリストバンドに貼付された場合には、該リストバンドが水を通し難いことから、同じく水を通し難い粘着テープとリストバンドとの間でICチップとアンテナとが密封された状態となるため、生活防水性を有するものとできる。
【0014】
本構成の粘着テープとしては、ポリオレフィン製、ウレタンフィルム製、又は塩ビ合成樹脂製の合成樹脂製シートと、アクリル系粘着剤またはシリコン系粘着剤からなる粘着剤層とを、用途、特性、およびコストなどに応じて適宜組み合わせたものが好適に用いられる。このように合成樹脂製シートと粘着剤層とを組み合わせることによって、人体に触れたときのフィット感が良く、肌にやさしく、水分に強く、汗などで剥がれ難いという作用効果を奏する。尚、粘着テープの具体例としては、以下の構成が好適に用い得る。
(1)ポリオレフィン製の合成樹脂製シートと、アクリル系粘着剤からなる粘着剤層とを備え、テープ厚が0.1mm以上かつ0.13mm以下である構成のもの。
(2)ウレタンフィルム製の合成樹脂製シートと、シリコン系粘着剤からなる粘着剤層とを備え、テープ厚が0.05mm以上かつ0.07mm以下である構成のもの。
【0015】
また、離型シートを付着して貼付使用不可能な状態とすることにより、粘着剤層の粘着力の低減を抑制して保管できるため、比較的長期に亘って保管して使用することができる。また、離型シートがRFIDインレットも被覆することから、該RFIDインレットの保護効果にも優れる。
【0016】
上述した本発明のRFIDラベルにあって、離型シートが、粘着テープの長手方向中央部分で、その両側へ剥離可能とするように分割されたものであることを特徴とする構成が提案される。
【0017】
かかる構成によれば、容易に離型シートを剥離することができるため、貼付使用不可能な状態から貼付使用可能な状態に変換する手間を可及的に低減でき、作業性が高い。
【0018】
上述した本発明のRFIDラベルにあって、ラベル全体を内包するための包装用袋に収容されて保管されるものであって、前記包装用袋から取り出されることにより使用されるものである構成が提案される。
【0019】
ここで、包装用袋は、紙製や樹脂製等のものを適用することができる。例えば、二枚の矩形状シート片を重ね合わせて外周縁を接着したもの、一枚の矩形状シート片を折り重ねて外周縁を接着したものが好適に用い得る。そして、矩形状シート片の外周縁を全て接着した構成、外周縁の一部を非接着とした構成のいずれも適用できる。
【0020】
かかる構成によれば、包装用袋に内包された状態では粘着剤層の劣化を長期に亘って防ぐ効果が高い。さらに、包装用袋に内包されていれば、RFIDインレットのICチップやアンテナの保護効果も高く、運搬中などで破損してしまうことを防止する効果も向上する。したがって、本構成のRFIDラベルは、包装用袋に内包された状態で保管することにより、所望の性能を長期に亘って維持することができるため、長期保管することが可能である。
【0021】
上述した本発明のRFIDラベルにあって、離型シートが剥離された貼付使用可能な状態で、所定の識別情報が印刷されたリストバンドの裏面に、粘着テープの粘着剤層が貼り付けられるものであって、RFIDインレットのICチップに、前記リストバンドに印刷された識別情報と同じ情報が書き込まれることにより、該識別情報を非接触で確認可能な状態として使用されるものである構成が提案される。
【0022】
かかる構成によれば、上述したように腕を動かし難い患者等に使用したリストバンドに貼付することにより、患者の腕を動かすこと無く該患者の識別情報を正確かつ容易に得ることが可能である。また、RFIDラベルのICチップにはリストバンドに印刷された識別情報と同じ情報がデータ化されて記憶されていることから、例えば、バーコードから読み取った認識情報とRFIDラベルから読み取った認識情報との両方を確認することによって患者を一層確実に特定することができる。さらに、一方が破損等によって識別情報を確認できなくなっても他方から識別情報を得ることができるため、患者個人を誤認してしまう不足の事態が発生することを可及的に防止できる。
【0023】
一方、本発明のもう一つの発明としては、表面に所定の識別情報が印刷され、易変形性を有するリストバンドと、該リストバンドの裏面に、離型シートが剥離された貼付使用可能な状態で貼り付けられた上述したRFIDラベルとを備え、前記リストバンドの表面に印刷された識別情報と同じ情報が、RFIDインレットのICチップに格納されているものであることを特徴とする識別用タグである。ここで、リストバンドは、合成樹脂製、紙製、繊維製等のものを用いることができ、なかでも耐水性に優れた合成樹脂製のものが好適に用い得る。
【0024】
かかる構成は、上述した本発明のRFIDラベルを貼り付けられたものであることから、上述した本発明の作用効果を発揮することができる。さらに、本構成の識別用タグを医療現場で用いることにより、夜間消灯中や患者の就寝中であってもRFIDラベルから非接触で識別情報を読み取ることができるため、患者を起こしたりすることもなく、該識別情報を確認する作業を容易に行うことができ、その作業性も向上する。また、本構成の場合には、RFIDラベルとリストバンドとを別々に保管して、使用する際に両者を接着すれば良いことから、それぞれの保管と管理を行い易いと共に、それぞれに応じた保管場所等を設定することもできる。また、リストバンドは、RFIDラベルを貼り付ける前にバーコードを印刷できるので、一般的な印刷装置によりバーコードを容易かつ安定して印刷できるという上述した本発明の作用効果を奏し得る。
【0025】
尚、上述したリストバンドには、識別情報がバーコード化されて印刷する構成を示しているが、バーコードの他にも二次元コード等を適用可能である。
【発明の効果】
【0026】
本発明のRFIDラベルは、粘着テープの粘着剤層にRFIDインレットが固着され、さらに該粘着剤層を保護する離型シートの付着状態で貼付使用不能とし、剥離して貼付使用可能な状態とするようにしたものであるから、医療現場で患者に取り付けたリストバンドに貼付してICチップに認識情報を記憶することによって、無理に腕を動かすこと無く該認識情報を確認して患者個人を特定できる。そのため、ケガ等により腕を動かし難い患者に使用する場合や、夜間の診察や就寝時の診察を必要とする場合等で適用し、非接触により容易に認識情報を確認できる。そして、本発明のRFIDラベルは、患者に応じて使用するか否かを適宜選択して使い分けることができる。また、RFIDラベルを貼付する前に、一般的な印刷装置によりバーコードをリストバンドに印刷できるため、認識情報をバーコード化して容易かつ安定して印刷できる。また、離型シートの付着状態で粘着剤層の品質を維持できるため、比較的長期に亘って保管して使用することができる。一方、このようなRFIDラベルをリストバンドに貼り付けた本発明の識別用タグにあっては、前述したRFIDラベルの作用効果が発揮され、医療現場で安定して長期に亘って使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のRFIDラベル1の、(A)平面図と、(B)底面図である。
【図2】RFIDラベル1の、図1(A)のP−P断面図である。
【図3】RFIDラベル1を包装用袋22に内包した状態を示す(A)縦断面図と、(B)横断面図である。
【図4】巻回する前のリストバンド31の、(A)平面図と、(B)底面図である。
【図5】巻回した状態のリストバンド31の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明にかかる実施形態を添付図面に従って説明する。
本実施例のRFIDラベル1は、図1,2のように、RFIDインレット2と粘着テープ3とから構成されている。
【0029】
上記のRFIDインレット2は、合成樹脂製のフィルム11上に、ICチップ12と該ICチップに接続されたアンテナ13とが配設されている。このRFIDインレット2は、図示しない入出力装置(リーダ・ライタ)との間で電磁波を利用してコマンド、データ等の信号を非接触で送受信できる非接触型の電池レスタイプとなっており、前記ICチップが具備するメモリに前記入出力装置との交信によりコマンドやデータが格納される。ここで、合成樹脂製のフィルム11としては、ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタレート、ポリイミド等の合成樹脂製ものが好適に用いられ、フィルム厚が10μm〜100μmのものを適用できる。このフィルム11は、易変形性を有し、さらに肌触りも良い。また、本実施例のフィルム11は、透明性のフィルムを用いていることから、図1(A)のように、フィルム11側からRFIDインレット2のICチップ12やアンテナ13を視認可能となっている。
【0030】
尚、RFIDインレット2は、ICチップ12とアンテナ13とを合成樹脂製フィルム11上に配設し、これを合成樹脂製の外装シートで表裏から被覆したものであってもよい。また、RFIDインレット2は、HF帯域(例えば13.56MHz)、UHF帯域(例えば953MHzや2.45GHz)等のいずれの帯域で作動するものであってもよい。
【0031】
また、上記の粘着テープ3は、長方形状の対向する短辺を円弧状とした合成樹脂製のシート16と、該シート16の片側全面にほぼ均一な層厚で設けられた粘着剤層17とを備えている。ここで、合成樹脂製のシート16および粘着剤層17としては下記の構成のものを好適に用い得る。これら構成によれば、人の肌に直接触れても不快感を生じることが無く、耐水性を有していることから剥がれ難いという作用効果を奏する。また、易変形性を有することから、様々な形状のものに安定して貼り付けることができ、剥がれ難い。
(1)ポリオレフィン製の合成樹脂製シート16と、アクリル系粘着剤からなる粘着剤層17とを備え、テープ厚が0.1mm以上かつ0.13mm以下である構成のもの。
(2)ウレタンフィルム製の合成樹脂製シート16と、シリコン系粘着剤からなる粘着剤層17とを備え、テープ厚が0.05mm以上かつ0.07mm以下である構成のもの。
【0032】
尚、この粘着テープ3としては、上記の構成以外にも、ポリオレフィン製、ウレタンフィルム製、又は塩ビ合成樹脂製の合成樹脂製シートと、アクリル系粘着剤またはシリコン系粘着剤からなる粘着剤層とを、用途、特性、およびコストなどに応じて適宜組み合わせたものが好適に用いられる。いずれを組み合わせた構成にあっても、人体に触れたときのフィット感が良く、肌にやさしく、水分にも強く、汗などで剥がれ難いという作用効果を奏する。
【0033】
このような粘着テープ3の粘着剤層17に上記のRFIDインレット2が固着されて、本実施例のRFIDラベル1が構成されている。ここで、RFIDインレット2は粘着テープ3に比して小さい面積に形成されており、粘着テープ3の長辺方向および短辺方向の中央部分にRFIDインレット2が粘着剤層17の接着力により固着されている。これにより、RFIDインレット2を囲むように粘着剤層17が露出することから、当該RFIDラベル1を貼り付けることが可能となっている。また、RFIDインレット2は、合成樹脂製のフィルム11が外面に露出するように、粘着テープ3の粘着剤層17に該粘着剤層17の粘着力により固着されている。これにより、RFIDインレット2のICチップ12とアンテナ13とが露出せずにフィルム11により保護される。
【0034】
上述したRFIDラベル1には、粘着テープ3の粘着剤層17とRFIDインレット2とを全体的に被覆する離型シート21,21が剥離可能に付着されている。離型シート21,21は、RFIDラベル1の長手方向中央で二分割されており、両側方へ剥がし易くなっている。すなわち、RFIDラベル1は、離型シート21,21が付着した状態で貼り付けて使用できず、該離型シート21,21とを剥離した状態で貼り付けて使用できる。
【0035】
さらに、離型シート21,21とが付着された状態のRFIDラベル1は、図3のように、包装用袋22に内包されて保管される。この包装用袋22は、矩形状の紙製シート片23,23が表裏方向で重ね合わされて、その三辺が接着されると共に、接着されていない一辺に掴み部24が設けられている。この包装用袋22には、表裏の紙製シート片23,23の間に、前記RFIDラベル1が挟まれるように内包されて一枚毎収容される。そして、RFIDラベル1を使用する際には、包装用袋22の掴み部24を把持して表裏のシート片23,23を引き剥がすことによって、内包されているRFIDラベル1を取り出して使用できる。
【0036】
こうして、RFIDラベル1は、離型シート21,21により粘着剤層17とRFIDインレット2とを保護し、さらに包装用袋22に内包されて個別に保管されることから、その品質を長期に亘って維持することができる。そのため、大量に購入し(仕入れ)て必要に応じて使用するようにした場合にも、安定した品質で使用することが可能である。
【0037】
上述した本実施例のRFIDラベル1は、医療現場で個人情報を記入したリストバンド31に貼付されて使用され得る。ここで、リストバンド31は、ポリウレタンやポリエステル等の合成樹脂材料から形成されており、柔軟性(易変形性)と肌触りの良さとを有している。このリストバンド31は、図4のように、個人情報を印刷する幅広の情報表示部32と、手首や足首等に巻回される長尺状のバンド部33と、バンド部33を固定する固定部34とを備えている。そして、患者に使用する前の状態で、バンド部33と情報表示部32と固定部34とが一直線状に連続した細長い板状に一体形成され、この状態で保管される。
【0038】
バンド部33には、その長手方向に所定間隔で複数の孔35が開口形成されており、一端が情報表示部32に連成されている。また、固定部34は、情報表示部32に連成された第一固定部34aと、該第一固定部34aに連成され且つ情報表示部32に連成されていない第二固定部34bとから構成されており、該第二固定部34bは、長手方向と直交する方向に突出するように第一固定部34aと連成されている。そして、第一固定部34aと第二固定部34bとにはそれぞれ孔36a,36bが開口形成されており、第二固定部34bを第一固定部34aに折り重ねた状態で両者の孔35,36a,36bが連通する位置に夫々形成されている。
【0039】
リストバンド31は、図5のように、バンド部33を湾曲させてリング状とする。そして、バンド部33を折り重ねられた第一固定部34aと第二固定部34bとの間に挿入して、該バンド部33のいずれかの孔と第一固定部34aおよび第二固定部34bの各孔とを合わせることにより長さ調整され、合わせた状態でボタン状の止め具38により表裏から挟み込むようにして固定される。これにより、細長い板状の状態から患者の手首や足首に取り付けられる巻回状態とすることができる。この巻回状態とする作業を、患者の手首や足首に応じて長さ調整して行うことにより、リストバンド31を切断しなければ患者から取り外せなくすることができる。
【0040】
リストバンド31の情報表示部32には、図4(A)のように、巻回状態で外側となる表面に、患者個人を識別するための識別情報が印刷される。この印刷作業は、細長い板状の状態で所定のプリンタで行うことができ、安定かつ正確に識別情報を印刷できる。ここで、識別情報としては、氏名、生年月日、血液型、患者ID等が活字により表示された情報と、同様の氏名や患者ID等がバーコードにより表示された情報とを設定している。これにより、担当医や看護婦が目視により患者を特定できると共に、所定の装置によりバーコードを読み込んで患者を特定できることから、該患者に応じた診療処置を正しく行うことができ、過誤診療を防止できる。
【0041】
一方、このリストバンド31の情報表示部32の裏面に、図5のように、上述したRFIDラベル1を貼付する。RFIDラベル1は、その包装用袋22から取り出して離型シート21,21を剥離し、粘着テープ3の粘着剤層17によってリストバンド31に貼り付けられる。このようにリストバンド31にRFIDラベル1を貼り付けて一体化した状態が、本発明にかかる識別用タグ7である。尚、この識別用タグ7は、RFIDラベル17とリストバンド31とを接着した間から水分が浸入したとしても、該RFIDラベル17のフィルム11によりICチップ12とアンテナ13とを保護できる。さらに、RFIDラベル17の粘着テープ3が合成樹脂製であり、かつリストバンド31が合成樹脂製であることから、水分を通し難く、両者に挟まれて密封されたICチップ12とアンテナ13とを保護できる。したがって、本実施例の識別用タグ7は、患者の汗等に対する生活防水性(耐水性)を有している。
【0042】
RFIDラベル1は、そのRFIDインレット2のICチップ12に、患者の認識情報が記憶される。これは、RFIDラベル1をリストバンド31に貼り付ける直前または直後に、所定の入出力装置(図示せず)により、該リストバンド31に印刷されたバーコードが示す認識情報を読み込み、読み込んだ認識情報をRFIDラベル1のICチップ12に書き込むことにより記憶する。ここで、入出力装置としては、バーコードの読み取り機能と、該機能により読み取った情報を入力データに変換する機能と、変換した入力データをICチップ12に非接触で出力する機能とを有するハンディタイプのものが好適に用いられ得る。
【0043】
このようにリストバンド31の情報表示部32に印刷されたバーコードが示す認識情報を、RFIDラベル1のICチップ12に書き込むことによって、両者の情報内容を確実に一致させ得る。これにより、認識情報がRFIDラベル1に間違って記憶されることを防止できる。そして、RFIDラベル1のICチップ12に記憶した認識情報は、上記の入出力装置により非接触で読み込むことができる。そのため、ケガや病気等によって腕を動かすことが困難な患者の場合には、該腕を動かすこと無くリストバンド31に貼付したRFIDラベル1から認識情報を読み取ることにより、患者の特定を容易かつ正確に行い得る。又は、夜間の診察を要する患者や就寝中の診察を要する患者にも、本実施例のRFIDラベル1を貼付したリストバンド31を適用することによって、無理に腕を動かすこと無く、RFIDラベル1から認識情報を非接触で読み取って患者を特定できる。そのため、就寝中の患者の布団をめくること無く、布団越しに認識情報を読み取ることができ、就寝中の患者を起こしてしまうこともない。
【0044】
この識別用タグ7によれば、リストバンド31のバーコードを読み込むか、RFIDラベル1に記憶した情報を読み込むかのいずれかによって、患者を容易かつ正確に特定できることから、過誤診療を防止できる。さらに、使用中にバーコードとRFIDラベル1との一方が破損しても、他方で患者を特定することができる。また、腕を動かすことに何ら問題の無い患者の場合には、RFIDラベル1を貼付せずに、リストバンド31のみで使用することも可能である。このようにRFIDラベル1を貼付するか否かを患者に応じて選択して使用することができるため、コスト削減もできる。
【0045】
上述したように本実施例のRFIDラベル1によれば、リストバンド31に貼付してICチップ12に認識情報を記憶することによって、該認識情報を所定の入出力装置により非接触で確認できることから、腕を動かし難い患者であっても容易に認識情報を確認できる。このRFIDラベル1は、そのRFIDインレット2および粘着テープ3が極薄いフィルムやシートにより構成されており易変形性を有することから、リストバンド31のように湾曲させて使用するものにも容易かつ安定して貼付することができ、該貼付した状態を長期に亘って維持できる。また、リストバンド31とRFIDラベル1とが別体であることから、リストバンド31に認識情報(活字およびバーコード)を印刷する作業と、RFIDラベル1に認識情報(データ)を記憶する作業とを別々に行うことができる。これにより、バーコードの印刷作業を従来の印刷装置(プリンタなど)により行うことができるため、印刷作業に伴うコスト上昇を抑制でき、安定かつ正確に印刷できる。さらにまた、医療現場ではリストバンド31とRFIDラベル1とを夫々に購入(仕入れ)して保管することができるため、これに伴う管理を容易に行うことができる。そして、RFIDラベル1は、離型シート21,21が付着されて包装用袋22に内包されて保管できるため、長期に亘って所望の品質を維持することができる。また、運搬中に破損することを防止する効果も高い。
【0046】
尚、医療現場で本実施例のRFIDラベル1をリストバンド31に貼付して使用する場合にあって、上述したようにバーコードの読み込みとICチップ12への記憶とを行うことができる入出力装置を用いる際に、バーコードから読み込んだ認識情報を予め設定した情報と照合した後にICチップ12へ出力して記憶するようにしてもよい。例えば、ハンディタイプの入出力装置によってバーコードを読み取り、その読み取った識別情報のデータをパソコンを介してサーバに出力する。サーバには予め患者のデータが入力されており、前記パソコンから入力した識別情報のデータに基づいて患者を照合して、RFIDラベル1のICチップ12に書き込み用のデータを生成する。この書き込み用のデータをパソコンを介して入出力装置へ送信し、該出力装置によってRFIDラベル1のICチップ12に出力して書き込む。このようにすれば、リストバンド31のバーコードに示された識別情報を、患者データを集積したサーバによって照合確認し、これに基づいてRFIDラベル1へ同じ識別情報を記憶することができる。
【0047】
また、投薬などの医療処置を患者に施す場合には、リストバンド31のバーコードまたは/およびRFIDラベル1のICチップ12から識別情報を読み取り、該識別情報を処置内容と照合することによって、過誤診療を防止できる。
【0048】
本発明にあっては、上述した実施例に限定されるものではなく、上述の実施例以外の構成についても本発明の趣旨の範囲内で適宜変更して実施可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 RFIDラベル
2 RFIDインレット
3 粘着テープ
7 識別用タグ
11 フィルム(薄膜状フィルム)
12 ICチップ
13 アンテナ
16 シート(合成樹脂製シート)
17 粘着剤層
21 離型シート
22 包装用袋
23 シート片(矩形状シート片)
31 リストバンド


【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを書き換え可能に格納するメモリを具備したICチップと、該ICチップに接続されたアンテナと、ICチップおよびアンテナを担持し且つ保護する易変形性の薄膜状フィルムとを備え、前記データを所定の入出力装置と非接触で送受信する機能を備えたRFIDインレットと、
易変形性を有する薄膜状の合成樹脂製シートと、該シートの片面に設けられ、該片面の一部領域に前記RFIDインレットが固着された粘着剤層とを備えた粘着テープと
を備え、
さらに、前記粘着テープの粘着剤層に剥離可能に付着され、付着状態で該粘着剤層の全面を保護して貼付使用不能とし、該粘着剤層から剥離されることにより貼付使用可能とする離型シートを備えていることを特徴とするRFIDラベル。
【請求項2】
離型シートが、粘着テープの長手方向中央部分で、その両側へ剥離可能とするように分割されたものであることを特徴とする請求項1に記載のRFIDラベル。
【請求項3】
ラベル全体を内包するための包装用袋に収容されて保管されるものであって、前記包装用袋から取り出されることにより使用されるものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のRFIDラベル。
【請求項4】
離型シートが剥離された貼付使用可能な状態で、所定の識別情報が印刷されたリストバンドの裏面に、粘着テープの粘着剤層が貼り付けられるものであって、
RFIDインレットのICチップに、前記リストバンドに印刷された識別情報と同じ情報が書き込まれることにより、該識別情報を非接触で確認可能な状態として使用されるものであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のRFIDラベル。
【請求項5】
表面に所定の識別情報が印刷され、易変形性を有するリストバンドと、
該リストバンドの裏面に、離型シートが剥離された貼付使用可能な状態で貼り付けられた請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のRFIDラベルと
を備え、
前記リストバンドの表面に印刷された識別情報と同じ情報が、RFIDインレットのICチップに格納されているものであることを特徴とする識別用タグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−109445(P2013−109445A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252318(P2011−252318)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000186566)小林クリエイト株式会社 (169)
【Fターム(参考)】