説明

RFIDリーダ

【課題】 高出力が必要とされない場合には低出力で電磁波を送信することにより消費電力を抑えることができるRFIDリーダを提供する。
【解決手段】 RFIDリーダであって、電磁波送信手段と、電磁波受信手段と、電圧検出手段と、第1制御手段と、第2制御手段と、出力制御手段を有する。電圧検出手段は、電磁波受信手段で受信されるRFタグからの電磁波により生じる電圧を検出する。第1制御手段は、電磁波受信手段でRFタグから送信される電磁波が受信されるまで第1の電磁波を電磁波送信手段に繰り返し送信させる。第2制御手段は、第1の電磁波の送信中に電磁波受信手段でRFタグから送信される電磁波が受信された場合に、第2の電磁波を電磁波送信手段に送信させる。出力制御手段は、第2の電磁波の送信中に電圧検出手段で検出される電圧に基づいて、第2の電磁波の送信出力を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFタグからデータを読み出すRFIDリーダに関する。
【背景技術】
【0002】
RFIDリーダは、通信可能領域内にRFタグが存在するか否かを検出するための電磁波を定期的に送信する。RFタグが検出されると、RFIDリーダは、電磁波によりコマンドを送信し、RFタグとの間でデータの送受信を行う。特許文献1には、RFタグを検出するための電磁波を低出力で送信し、RFタグが検知された場合に、データの送受信を行うための電磁波を高出力で送信するRFIDリーダが開示されている。RFタグを検出するための電磁波を低出力で送信することで、RFIDリーダの省電力化が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−236474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
RFタグとRFIDリーダの間で通信が行われる際には、RFIDリーダの通信可能領域内にRFタグが配置される。この際、RFタグのRFIDリーダに対する角度や位置が適切でないと、両者の間で行われる電磁波の送受信感度が低下する。例えば、カード型のRFタグとの通信に用いられるRFIDリーダは、多くの場合、通信用の平面部分を備えている。ユーザが平面部分にRFタグをかざすと、RFタグとRFIDリーダとの間で通信が行われる。このようなRFIDリーダは、通常、RFタグが平面部分の真上に平面部分に対して平行に配置されたときに、電磁波の送受信感度が最も良くなるように設計されている。したがって、RFタグが傾いた状態で平面部分の上に配置された場合等には、電磁波の送受信感度が低下する。
【0005】
特許文献1のRFIDリーダでは、RFタグを検出するための電磁波は低出力で送信されるものの、データの送受信を行うための電磁波は常に高出力で送信される。これは、RFタグが適切に配置されていない場合でも通信を可能とするためである。しかしながら、多くの場合、ユーザはRFタグを適切に通信可能領域内に進入させるため、電磁波の送信にそれほど高い出力が必要とされることは少ない。特許文献1のRFIDリーダは、データの送受信を行う際に、高出力が必要でない場合にも高出力で電磁波を送信するという問題があった。
【0006】
本発明は上述した実情を鑑みて創作されたものであり、高出力が必要とされない場合には低出力で電磁波を送信することにより消費電力を抑えることができるRFIDリーダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1のRFIDリーダは、電磁波受信手段でRFタグから送信される電磁波が受信されるまで、第1の電磁波を繰り返し送信する。RFタグが通信可能領域内に存在している場合には、第1の電磁波の送信中にRFタグから送信される電磁波が電磁波受信手段で受信されて、RFタグが検出される。RFタグを検出すると、RFIDリーダは、第2の電磁波を送信する。そして、第2の電磁波の送信中にRFタグから送信される電磁波を受信することで、RFタグからデータを読み出す。第2の電磁波の送信中には、電磁波受信手段で受信されるRFタグからの電磁波により生じる電圧が電圧検出手段で検出される。この電圧は、RFIDリーダとRFタグとの間の電磁波の送受信感度に応じて変化する。一般的には、RFタグが電磁波受信手段に対して傾いて配置された場合に、送受信感度が低くなり、電圧検出手段で検出される電圧は低くなる。逆に、RFタグが電磁波受信手段に対して平行に配置された場合には、送受信感度が高くなり、電圧検出手段で検出される電圧が高くなる。RFIDリーダは、第2の電磁波の送信中に電圧検出手段で検出される電圧に基づいて、第2の電磁波の送信出力を制御する。すなわち、このRFIDリーダは、RFタグの検出(すなわち、第1の電磁波の送信)の後に行われるRFタグからデータを読み出すための通信(すなわち、第2の電磁波の送信)の際に、送受信感度に応じて第2の電磁波の送信出力を制御する。したがって、高出力が必要でない場合にまで第2の電磁波が高出力で送信されることがない。これによって、消費電力を抑えることができる。
【0008】
上述したように、電圧検出手段によって検出される電圧の振幅は、RFタグとRFIDリーダの間における電磁波の送受信感度に応じて変化する。但し、振幅変調した電磁波を送信するRFタグが用いられる場合には、電圧検出手段により検出される電圧には、第1のデータに対応する第1振幅を有する第1信号電圧と、第2のデータに対応しており、第1振幅よりも大きい第2振幅を有する第2信号電圧が含まれる。すなわち、電圧検出手段により検出される電圧の振幅は、振幅変調の影響によっても変化する。請求項2のRFIDリーダは、振幅の大きい第2振幅を基準として、電磁波送信手段の送信出力を制御する。したがって、振幅変調の影響を受けることなく、電磁波の送受信感度に応じて電磁波送信手段の送信出力を制御することができる。
また、ユーザは、RFタグをRFIDリーダの通信可能領域内に進入させ、その後、通信可能領域外に移動させる。このため、電圧検出手段により検出される電圧の振幅は、RFタグの進入時には経時的に増大し、RFタグを通信可能領域外に移動させる時には経時的に減少する。すなわち、電圧検出手段によって電圧の振幅の最大値が検出された後は、RFタグとRFIDリーダの間の送受信感度が経時的に低下していく。請求項2のRFIDリーダは、第2振幅が減少するまでに検出された第2振幅の最大値に基づいて、電磁波送信手段が送信する電磁波の出力を制御する。第2振幅の最大値が第1基準値以下である場合には、電磁波送信手段が送信する電磁波の出力を増大させる。これにより、その後の通信の信頼性が確保される。また、第2振幅の最大値が第1基準値を超える場合には、その後に送受信感度が低下しても十分な送受信感度が得られるため、送信出力を増大させない。これにより、無駄な電力消費を抑えることができる。
【0009】
請求項3のRFIDリーダでは、電磁波送信手段が、第2振幅の最大値が第1基準値より低い第2基準値以下であるときに電磁波の送信を停止する。これにより、通信が行えないほど送受信感度が低いときにまで、電磁波が送信されることが防止され、無駄な電力消費をさらに抑えることができる。
【0010】
請求項4のRFIDリーダは、第2振幅の最大値に基づいて、RFタグの使用方法の良否をユーザに通知する。第2振幅の最大値は、ユーザによるRFタグの使用方法の良否を示す指標となる。したがって、第2振幅の最大値に基づいて使用方法の良否をユーザに通知することで、ユーザに適切な使用を促すことができる。
【0011】
請求項5のRFIDリーダによれば、電圧の経時変化から予測される読み出し可能時間と残りのデータを読み出すのに必要な時間に応じて、送信する電磁波の出力が制御される。したがって、適切に電力消費を抑えることができる。
【0012】
請求項6のRFIDリーダによれば、第2振幅の最大値から読み出し可能時間が予測される。振幅変調の影響を受けることなく、正確に読み出し可能時間を予測することができる。
【0013】
請求項7のRFIDリーダによれば、周波数変調または位相変調された電磁波を送信するRFタグが用いられる場合に、適切に電力消費を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】RFIDリーダライタ10とRFタグ50のブロック図。
【図2】RFIDリーダライタ10の送受信アンテナ16から送信される電波の波形の一例を示す図。
【図3】RFタグ50の送受信アンテナ56から送信される電波の波形の一例を示す図。
【図4】電波の送受信感度の説明図。
【図5】RFIDリーダライタ10が実行するデータの読み出し動作を示すフローチャート。
【図6】データの読み出し処理時における、送受信アンテナ16の送信出力と、受信電圧検出回路20で検出される信号電圧の振幅の経時的変化の一例を示すグラフ。
【図7】データの読み出し処理時における、送受信アンテナ16の送信出力と、受信電圧検出回路20で検出される信号電圧の振幅の経時的変化の一例を示すグラフ。
【図8】実施例2のRFIDリーダライタが実行するデータの読み出し動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0015】
実施例1のRFIDリーダライタについて説明する。図1に示す実施例1のRFIDリーダライタ10は、カード型のRFタグ50との間で通信を行う。RFIDリーダライタ10は、RFタグ50からデータの読み出しを行うことができるとともに、RFタグ50にデータを書き込むことができる。RFIDリーダライタ10は、CPU12と、送信回路14と、送受信アンテナ16と、受信回路18と、受信電圧検出回路20と、電波出力変更回路22と、記憶装置24と、表示装置26を備えている。
【0016】
CPU12は、各種の演算を実行するとともに、RFIDリーダライタ10の各部の制御を行う。例えば、CPU12は、送信回路14へのデータの入力、電波出力変更回路22の制御、表示装置26の制御等を行う。
【0017】
送信回路14は、CPU12から入力されるデータを、振幅変調した信号電圧に変換し、変換した信号電圧を送受信アンテナ16に入力する。
【0018】
送受信アンテナ16は、RFタグ50との間で電波の送受信を行う。送受信アンテナ16はカバーを有しており、そのカバーには平面部分が形成されている。平面部分の上方の空間が送受信アンテナ16の通信可能領域である。送受信アンテナ16の送受信感度は、RFタグ50が平面部分に対して平行な状態で通信可能領域内に配置されたときにもっとも高くなる。送受信アンテナ16は、送信回路14から入力される信号電圧を電波として送信する。また、送受信アンテナ16は、RFタグ50から送信される電波を受信する。送受信アンテナ16で受信された電波は、信号電圧として受信回路18に入力される。
【0019】
受信回路18は、送受信アンテナ16から入力される信号電圧をデジタルデータに変換し、変換したデジタルデータをCPU12に入力する。
【0020】
受信電圧検出回路20は、受信回路18に入力される信号電圧を検出し、検出した信号電圧の振幅のデータをCPU12に入力する。
【0021】
電波出力変更回路22は、CPU12からの命令に基づいて、送受信アンテナ16の送信出力を変更する。
【0022】
記憶装置24は、各種のデータを記憶している。記憶装置24は、CPU12から入力されるデータを記憶することができる。記憶装置24に記憶されているデータは、CPU12によって読み出される。
【0023】
表示装置26は、4つのLEDランプ26a〜26dを有している。LEDランプ26aは青色LEDランプであり、LEDランプ26bは緑色LEDランプであり、LEDランプ26cは黄色LEDランプであり、LED26dは赤色LEDランプである。LEDランプ26a〜26dは、ユーザが視認可能な位置に取り付けられている。
【0024】
RFタグ50は、CPU52、送信回路54、送受信アンテナ56、受信回路58、及び、記憶装置60を有している。
【0025】
送受信アンテナ56は、RFIDリーダライタ10から送信される電波を受信する。送受信アンテナ56で受信された電波により生じる電力は、CPU52、送信回路54、受信回路58、及び、記憶装置60に供給される。これにより、CPU52、送信回路54、受信回路58、及び、記憶装置60が動作する。また、送受信アンテナ56で受信された電波は、信号電圧となって受信回路58に入力される。また、送受信アンテナ56は、送信回路54から信号電圧の入力を受け、入力された信号電圧に応じた電波を送信する。
【0026】
受信回路58は、送受信アンテナ56から入力される信号電圧をデジタルデータに変換し、変換したデジタルデータをCPU52に入力する。
【0027】
CPU52は、受信回路58から入力されるデータに応じて、各種の演算を実行するとともにRFタグ50の各部の制御を行う。例えば、CPU52は、記憶装置60からのデータの読み出し、記憶装置60へのデータの書き込み、送信回路54へのデータの入力等を行う。
【0028】
送信回路54は、CPU52からデータの入力を受け、入力されたデータに応じて送受信アンテナ56に信号電圧を入力する。
【0029】
記憶装置60は、各種のデータを記憶している。記憶装置60は、CPU52から入力されるデータを記憶することができる。記憶装置60に記憶されているデータは、CPU52によって読み出される。
【0030】
RFIDリーダライタ10とRFタグ50は、以下のように、データの送受信を行う。RFIDリーダライタ10のCPU12は、記憶装置24から所定データ(例えば、読み出しコマンド、書き込みコマンド等)を読み出し、読み出したデータを送信回路14に入力する。送信回路14は、入力された上記所定データを振幅変調した信号電圧に変換し、変換した信号電圧を送受信アンテナ16に入力する。これにより、送受信アンテナ16から通信可能領域内に電波が送信される。図2は、送受信アンテナ16から送信される電波の波形を示している。図2に示すように、送受信アンテナ16から送信される電波には、前半部分に上記所定データを示す振幅変調された電波W1が含まれており、後半部分に振幅が一定である電波W2が含まれている。送受信アンテナ16の通信可能領域内にRFタグ50が存在している場合には、RFIDリーダライタ10の送受信アンテナ16から送信された電波がRFタグ50の送受信アンテナ56で受信される。送受信アンテナ56で電波が受信されると、RFタグ50の各部に電力が供給され、RFタグ50が動作する。送受信アンテナ56では、最初に電波W1が受信される。送受信アンテナ56で受信された電波W1は、信号電圧となって受信回路58に入力される。受信回路58に入力された信号電圧は、上記所定データを示すデジタルデータに変換され、変換されたデジタルデータがCPU52に入力される。CPU52は、入力された前記所定データに応じた動作を行う。例えば、前記所定データが読み出しコマンドである場合には、CPU52は、記憶装置60からデータを読み出し、読み出したデータを含むレスポンスを送信回路54に入力する。また、前記所定データが書き込みコマンドである場合には、CPU52は、記憶装置60にデータを書き込み、書き込み結果等を含むレスポンスを送信回路54に入力する。送信回路54は、CPU52から入力されたレスポンスを信号電圧に変換し、変換した信号電圧を送受信アンテナ56に入力する。送受信アンテナ56は、コイルとコイルに接続された回路を有している。送信回路54から送受信アンテナ56に入力された信号電圧は、コイルに接続された回路のインピーダンスを変化させる。一方、RFIDリーダライタ10の送受信アンテナ16は、電波W1を送信した後に、振幅が一定である電波W2を送信している。電波W2が送信されている間にRFタグ50の送受信アンテナ56のインピーダンスが変化することで、RFタグ50の送受信アンテナ56からRFIDリーダライタ10の送受信アンテナ16に振幅が変調された電波が送信される。例えば、図3に示すように振幅変調された電波が送受信アンテナ56から送受信アンテナ16に送られる。なお、図3の波形では、振幅が小さい電波Y1が1ビットのデータ「0」を意味し、振幅が大きい電波Y2が1ビットのデータ「1」を意味する。このように、RFタグ50の送受信アンテナ56は、RFIDリーダライタ10からの電波W2の振幅を変調して図3の電波を送信する。このため、RFIDリーダライタ10の送受信アンテナ16が送信する電波W2の出力(振幅)が大きい場合には、図3の電波Y1、Y2の振幅も大きくなる。送受信アンテナ56から送受信アンテナ16に送信された電波は、信号電圧として受信回路18に入力される。受信回路18に入力された信号電圧は、RFID50のレスポンスを示すデジタルデータに変換され、変換されたレスポンスがCPU12に入力される。
【0031】
次に、RFIDリーダライタ10とRFタグ50の間の電波の送受信感度について説明する。図4は、ユーザがRFタグ50を送受信アンテナ16の通信可能領域内に進入させ、その後、通信可能領域外に移動させた場合において、受信回路18で受信される信号電圧の振幅の経時変化を示している。なお、図4は、RFIDリーダライタ10の送受信アンテナ56から一定の振幅を有する電波が送信されると仮定した場合の例である。したがって、図4の信号電圧の振幅は、振幅変調の影響を受けておらず、RFIDリーダライタ10とRFタグ50の間の電波の送受信感度を示している。
【0032】
図4のグラフA1は、RFタグ50を送受信アンテナ16の平面部分に対して平行な姿勢とした場合の例を示している。RFタグ50が通信可能領域に進入すると信号電圧が検出され、その後、RFタグ50が平面部分に近づくに従って信号電圧の振幅が増大する。そして、RFタグ50が平面部分に最も近づいたときに信号電圧の振幅が最大となる。通常は、ユーザはRFタグ50を平面部分に最も近づけた状態でRFタグ50を停止させるので、信号電圧の振幅が最大値近くの値で維持される状態が所定時間継続する。その後、ユーザがRFタグ50を平面部分から遠ざけると、それに従って信号電圧の振幅が減少する。RFタグ50が送受信アンテナ16の平面部分に対して平行な姿勢である場合には、送受信感度が最も高くなるので、受信回路18で受信される信号電圧の振幅は高くなる。また、図4に示す限界電圧B1は、RFIDリーダライタ10でデータを読み取ることが可能な信号電圧の振幅の下限値を示している。グラフA1の場合には、限界電圧B1より信号電圧の振幅が高い通信可能期間C1が長い。
【0033】
図4のグラフA2は、RFタグ50を送受信アンテナ16の平面部分に対して少し傾けた場合に、RFIDリーダライタ10で受信される信号電圧の振幅を示している。この場合、RFタグ50を平面部分に対して平行とした場合(グラフA1の場合)よりも信号電圧の振幅は低くなる。グラフA2の場合における通信可能期間C2は、グラフA1の場合における通信可能期間C1よりも短くなる。
【0034】
図4のグラフA3は、グラフA2の場合よりもさらにRFタグ50を傾けた場合に、RFIDリーダライタ10で受信される信号電圧の振幅を示している。グラフA3では、グラフA2よりもさらに信号電圧の振幅は低くなる。グラフA3の場合における通信可能期間C3は、グラフA2の場合における通信可能期間C2よりもさらに短くなる。
【0035】
図4のグラフA4は、グラフA3の場合よりもさらにRFタグ50を傾けた場合に、RFIDリーダライタ10で受信される信号電圧の振幅を示している。グラフA4では、信号電圧の振幅が極めて低くなり、通信可能期間C4が極めて短くなる。
【0036】
図4の期間D1は、データの送受信を完了するのに必要な最小限の期間(以下では、通常時最小限期間という)を示している。通信可能期間が通常時最小限期間D1より短い場合には、データの送受信を適切に完了することができない。但し、後述するように、送受信アンテナ16の送信出力を増大させると、通信可能期間を延長することができる。図4の期間D2は、送受信アンテナ16の送信出力を増大させたときに、通常時最小限期間D1まで延長することが可能な最小限の通信可能期間(以下では、増大時最小限期間という)を示している。つまり、通常時最小限期間D1より通信可能期間が短い場合であっても増大時最小限期間D2より通信可能期間が長い場合には、送受信アンテナの送信出力を増大させることで、データの送受信を適切に完了することができる。増大時最小限期間D2より通信可能期間が短い場合には、送受信アンテナ16の送信出力を増大させたとしても、データの送受信を適切に完了することができない。図4の例では、グラフA1の場合には、通信可能期間C1が通常時最小限期間D1より長いので、送受信アンテナ16の送信出力を増大させることなく、データの送受信を適切に完了することができる。グラフA2及びA3の場合には、通信可能期間C2及びC3が、通常時最小限期間D1より短く、増大時最小限期間D2より長いので、送受信アンテナ16の送信出力を増大させることによって、データの送受信を適切に完了することができる。グラフA4の場合には、通信可能期間C4が増大時最小限期間D2より短いので、データの送受信を適切に完了することができない。
【0037】
本実施例のRFIDリーダライタ10は、上述した送受信感度と通信可能期間の関係に基づいて送受信アンテナ16の送信出力を制御することにより、通信の信頼性を確保するとともに、無駄な電力の消費を抑制する。以下に、RFタグ50と通信する際のRFIDリーダライタ10の動作について詳細に説明する。なお、上述したように、読み出し動作と書き込み動作は、送受信されるコマンドやデータの内容が異なるものの、通信方式は略同じである。したがって、以下では、RFIDリーダライタ10による読み出し動作について説明する。RFIDリーダライタ10は、図5に示すフローチャートに従って読み出し動作を実行する。
【0038】
ステップS2では、RFIDリーダライタ10は、通信可能領域内にRFタグ50が存在するか否かを検出するために、開始コマンドを送信する。送受信アンテナ16から通信可能領域内に、開始コマンドを示す電波が送信される。ステップS2では、電波出力変更回路22により送受信アンテナ16の送信出力が低く設定されている。したがって、ステップS2では、低出力で電波が送信される。
【0039】
ステップS2の実行時に通信可能領域内にRFタグ50が存在していれば、ステップS2で送信された開始コマンドがRFタグ50で受信される。RFタグ50は、開始コマンドに対応するレスポンスをRFIDリーダライタ10に送信し、RFIDリーダライタ10は、RFタグ50からのレスポンスを受信する。一方、ステップS2の実行時に送受信アンテナ16の通信可能領域内にRFタグ50が存在していない場合には、RFIDリーダライタ10は、RFタグ50からのレスポンスを受信しない。
【0040】
ステップS4では、RFIDリーダライタ10は、RFタグ50からのレスポンスが受信されたか否かを判定する。レスポンスが受信されていない場合には、RFIDリーダライタ10は、ステップS4でNOと判定して、再度、ステップS2を実行する。すなわち、RFIDリーダライタ10は、レスポンスが受信されない間は、繰り返しステップS2、S4を実行し、周期的に開始コマンドを示す電波を送信する。レスポンスが受信された場合には、RFIDリーダライタ10は、ステップS4でYESと判定して、ステップS6を実行する。これにより、RFタグ50からのデータの読み出し処理が開始される。
【0041】
ステップS6では、RFIDリーダライタ10は、読み出しコマンドを送信する。すなわち、送受信アンテナ16から通信可能領域内に読み出しコマンドを含む電波(図2参照)が送信される。また、RFIDリーダライタ10は、図2の電波W2を送信している間に、RFタグ50からのレスポンスを受信する。これにより、RFIDリーダライタ10はRFタグ50からデータを読み出す。また、RFIDリーダライタ10は、RFタグ50からのレスポンスを受信する際に、受信回路18で受信される信号電圧を受信電圧検出回路20により検出する。なお、後に詳述するように、RFIDリーダライタ10は、繰り返しステップS6を実行することによって、RFタグ50から必要なデータを読み出す。
【0042】
ステップS6において送受信される電波の出力について、図6を用いて説明する。図6(a)は、RFIDリーダライタ10が送信する電波の出力を例示しており、図6(b)は、受信電圧検出回路20により検出される信号電圧の振幅を例示している。なお、図6の期間PaはRFIDリーダライタ10が電波W2(図2参照)を送信するとともにレスポンスを受信している期間を示しており、図6の期間Pbはその他の期間(図2の電波W1を送信する期間、及び、後述するステップS8〜S18等を実行する期間)を示している。したがって、図6ではRFIDリーダライタ10は複数の期間Pa(期間Pa1〜Pa7)に亘ってデータの読み出しを行っている。また、上述したように、RFタグ50が送信する電波には振幅が小さい電波Y1と振幅が大きい電波Y2が含まれる。したがって、図6(b)に示す信号電圧には、振幅が小さい信号電圧Y1と振幅が大きい信号電圧Y2が含まれている。
【0043】
最初のステップS6では、ステップS2と同様に、RFIDリーダライタ10は低出力で電波を送信する。RFタグ50は、電波W2が送信されている間に、振幅変調された電波(レスポンス)を送信する。したがって、図6の期間Pa1では、振幅変調された信号電圧が検出される。なお、最初の期間Pa1では、ユーザがRFタグ50を徐々に送受信アンテナ16の平面部分に近づけている段階にあるので、受信電圧検出回路20で検出される信号電圧の振幅が徐々に増大する。RFIDリーダライタ10は、レスポンスを受信すると、ステップS7を実行する。
【0044】
ステップS7では、RFIDリーダライタ10は、送受信アンテナ16の送信出力が増大済みであるか否かを判定する。後述するステップS16が実行された場合には、ステップS7でYESと判定される。その他の場合には、ステップS7でNOと判定される。最初のステップS7では、送受信アンテナ16の送信出力は増大されていないので、NOと判定される。この場合、RFIDリーダライタ10は、ステップS8を実行する。
【0045】
ステップS8では、RFIDリーダライタ10は、直前の期間Paで検出された信号電圧の最大振幅を特定する。最初のステップS8では、期間Pa1における最大振幅V1が特定される。なお、RFタグ50が送信する電波には必ず電波Y2(振幅が大きい電波)が含まれるので、ステップS8では信号電圧Y2の最大値が特定される。
【0046】
ステップS8が終了すると、RFIDリーダライタ10は、ステップS10を実行する。最初のステップS10では、RFIDリーダライタ10は常にNOと判定する。すなわち、ステップS2で開始コマンドを送信する際は、信号電圧の最大振幅はリセットされて「0」となっている。このため、最初のステップS10では必ずNOと判定される。したがって、RFIDリーダライタ10は、ステップS18を実行する。ステップS18では、RFIDリーダライタ10は、必要な全てのデータをRFタグ50から読み出したか否かを判定する。図6の例では、最初のステップS18ではNOと判定される。すると、RFIDリーダライタ10は、再度、ステップS6を実行する。
【0047】
2度目以降のステップS6、S7、S8は、最初のステップS6、S7、S8と同様に実行される。2度目以降のステップS10では、RFIDリーダライタ10は、ステップS8で特定された最大振幅が減少したか否かを判定する。すなわち、RFIDリーダライタ10は、直前のステップS8で特定された最大振幅が、その前の周期のステップS8で特定された最大振幅より低いか否かを判定する。図6の例では、2度目のステップS6で、期間Pa2の信号電圧が検出される。期間Pa2でもユーザがRFタグ50を送受信アンテナ16の平面部分に近づけている段階にあるので、信号電圧の振幅が徐々に増大している。RFIDリーダライタ10は、ステップS8で最大振幅V2を特定し、その後、ステップS10を実行する。最大振幅V2が最大振幅V1より大きいので、ステップS10でNOと判定される。その後、ステップS18でNOと判定され、再度、ステップS6が実行される。
【0048】
図6の例では、3度目のステップS6、S7、S8、S10、S18は、2度目と同様に実行される。
【0049】
図6の例では、4度目のステップS6(すなわち、期間Pa4)において、RFタグ50が送受信アンテナ16の平面部分に最も接近した状態となる。このときに、信号電圧の振幅は最大(最大振幅V4)となる。その後は、RFタグ50が平面部分から徐々に離されるので、信号電圧の振幅(特に電波Y2の振幅)が徐々に減少する。4度目のステップS7ではNOと判定され、その後、4度目のステップS8では最大振幅V4が特定される。4度目のステップS10では、最大振幅V4が最大振幅V3より大きいので、NOと判定される。その後、ステップS18でNOと判定され、再度、ステップS6が実行される。
【0050】
図6の例では、5度目のステップS6、S7、S8が実行されることで、最大振幅V5が特定される。期間Pa4以降は信号電圧の振幅が徐々に減少するので、最大振幅V5は最大振幅V4よりも小さい。したがって、RFIDリーダライタ10は、5度目のステップS10でYESと判定し、ステップS12を実行する。
【0051】
ステップS12では、RFIDリーダライタ10は、最初のステップS6の開始時以降における信号電圧の最大振幅(以下では、この最大振幅をピーク振幅という)を特定する(図6の例では、最大振幅V4)。そして、特定されたピーク振幅が、基準電圧VTH(図6参照)より大きいか否かを判定する。なお、基準電圧VTHは、通信可能期間が通常時最小限期間D1(図4参照)となるピーク振幅である。つまり、ピーク振幅が基準電圧VTHより大きい場合には、送受信アンテナ16の送信出力を増大させることなく、データの送受信を完了することができる。ピーク振幅が基準電圧VTHより大きい場合には、ステップS12でYESと判定され、ステップS18が実行される。ピーク振幅が基準電圧VTH以下である場合には、ステップS12でNOと判定され、ステップS14が実行される。ステップS14では、RFIDリーダライタ10は、ピーク振幅が読み取り下限電圧VLOW(図6参照)より大きいか否かを判定する。読み取り下限電圧VLOWは、通信可能期間が増大時最小限期間D2(図4参照)となるピーク振幅の値である(すなわち、通信可能期間を十分に確保できないピーク振幅の値である)。つまり、ピーク振幅が基準電圧VTH以下であり、読み取り下限電圧VLOWより大きい場合には、送受信アンテナ16の送信出力を増大させれば、データの送受信を完了できる。ピーク振幅が読み取り下限電圧VLOW以下である場合には、送受信アンテナ16の送信出力を増大させても、データの送受信を完了することはできない。ピーク振幅が読み取り下限電圧VLOWより大きい場合には、ステップS14でYESと判定され、ステップS16が実行される。ステップS16では、RFIDリーダライタ10は、送受信アンテナ16の送信出力を増大させる。RFIDリーダライタ10は、その後ステップS18を実行し、必要な全てのデータを読み出していなければ、再度、ステップS6からの処理を実行する。したがって、ステップS16において送受信アンテナ16の送信出力を増大させた後にステップS6を実行するときは、RFIDリーダライタ10は高出力で電波を送信する。一方、ステップS14でNOと判定された場合には、ステップS20でデータの読み出し処理が中止される。
【0052】
図6の例では、ステップS12で期間Pa1〜期間Pa5におけるピーク振幅として振幅V4が特定される。ピーク振幅V4は基準電圧VTHより小さいので、ステップS12でNOと判定される。また、ピーク振幅V4は読み取り下限電圧VLOWより大きいので、ステップS14でYESと判定される。したがって、ステップS16で送受信アンテナ16の送信出力が増大される。その後、ステップS18でNOと判定され、再度、ステップS6が実行される。6度目のステップS6では、図6(a)に示すように、送受信アンテナ16が高出力で電波を送信する。このため、RFタグ50からRFIDリーダライタ10に送信される電波(レスポンス)の出力も大きくなる。したがって、図6の期間Pa6では、検出される信号電圧の振幅が大きくなる。これにより、期間Pa6における通信の信頼性が確保される。送受信アンテナ16の送信出力が増大された以降では、ステップS7でYESと判定されるので、ステップS8〜S16はスキップされる。したがって、ステップS7の後にステップS18が実行される。ステップS18ではNOと判定され、再度、ステップS6が実行される。7度目のステップS6でも、RFIDリーダライタ10から高出力で電波が送信されて通信が行われる。7度目のステップS6が完了することで、データの読み出しが完了する。このため、その後のステップS18でYESと判定される。
【0053】
以上に説明したように、RFIDリーダライタ10は、信号電圧Y2の振幅が低下したときに、それまでに検出された信号電圧Y2の振幅の最大値(ピーク振幅)を特定する。そして、ピーク振幅が基準電圧VTH以下である場合に、送受信アンテナ16の送信出力を増大させる。これにより、その後の通信の信頼性が確保される。また、信号電圧Y2の振幅が低下するまでは送受信アンテナ16の送信出力が低く設定されている。このため、低出力の電波でも通信可能な場合には高出力で電波が出力されることがない。これにより、電力の消費が抑えられる。
【0054】
また、図7は、図6よりも送受信感度が高い場合(すなわち、RFタグ50が送受信アンテナ16の平面部分に対して略平行な姿勢で使用される場合)における例を示している。図7では、図6よりも振幅が大きい信号電圧が検出されている。図7の例でも、期間Pa1〜期間Pa4までは図6の例と同様に各ステップが実行される。期間Pa5における最大振幅V5が期間Pa4における最大振幅V4よりも小さいので、5度目のステップS10でYESと判定される。ステップS12では、期間Pa1〜Pa5におけるピーク振幅として振幅V4が特定される。図7の例では、ピーク振幅V4が基準電圧VTHよりも大きいので、ステップS12でYESと判定される。このため、ステップS16が実行されず、送受信アンテナ16の送信出力は増大されない。このため、その後の処理においても、送受信アンテナ16は低出力で電波を送信し、全てのデータの読み出しが完了する。このように、ピーク振幅が基準電圧VTHより大きく、送信出力を増大させることなく確実に残りのデータの読み出しを行うことができる場合には、RFIDリーダライタ10は送受信アンテナ16の送信出力を増大させない。これにより、電力の消費が抑えられる。
【0055】
また、ピーク振幅が読み取り下限電圧VLOW以下である場合には、ステップS14でNOと判定され、ステップS20で読み出し処理が中止される。送受信アンテナ16が、電波の送信を停止する。これによって、電波の送信出力を増大させたとしてもデータの読み出しが適切に完了できない場合にまで、電波が送信されることが防止される。これにより、電力の消費が抑えられる。
【0056】
データの読み出しが完了した場合(ステップS18でYES)、または、データの読み出し処理を中止した場合(ステップS20)には、RFIDリーダライタ10は、ステップS22を実行する。ステップS22では、RFIDリーダライタ10は、ステップS8〜S12の処理によって特定されたピーク振幅に応じたLEDランプを点灯させる。図4で説明したように、ユーザのRFタグ50の使用方法(すなわち、RFタグ50を送受信アンテナ16の平面部分に対して平行な姿勢で接近させるか、RFタグ50を送受信アンテナ16に対して傾いた姿勢で接近させるか)によって、ピーク振幅は変化する。したがって、ピーク振幅に応じたLEDランプを点灯させることで、ユーザにRFタグ50の使用方法の良否を通知することができる。ピーク振幅が基準電圧VTHより大きい場合には、青色のLEDランプ26aが点灯される。これにより、RFタグ50の使用方法が適切であることが通知される。ピーク振幅が基準電圧VTH以下であるが基準電圧VTHに近い値である場合には、緑色のLEDランプ26bが点灯される。これにより、使用時にRFタグ50が少し傾いていることが通知される。ピーク振幅が読み取り下限電圧VLOWより少し高い程度の値である場合には、黄色のLEDランプ26cが点灯される。これにより、使用時にRFタグ50が大きく傾いていることが通知される。ユーザは、点灯したLEDランプの色によって、自己の使用方法が適切か否かを判断することができ、次回の使用時に使用方法を改善することができる。また、ピーク振幅が読み取り下限電圧VLOW以下であった場合には、赤色のLEDランプ26dが点灯される。これにより、ユーザに対してデータの読み出しが適切に完了しなかったことが通知される。
【0057】
以上の処理により、RFIDリーダライタ10はRFタグ50からデータを読み出す。ステップS20が完了したら、RFIDリーダライタ10はステップS2からの処理を再度繰り返す。
【0058】
以上に説明したように、実施例1のRFIDリーダライタ10は、RFタグ50の検出の後に行われるデータを読み出すための通信の際に、送受信感度に応じて電波の送信出力を制御する。したがって、高出力が必要でない場合にまで電波が高出力で送信されることがなく、消費電力が抑えられている。
【0059】
なお、上述した実施例1では、RFIDリーダライタ10は、期間Pa毎に最大振幅を特定し(ステップS8)、各期間Paにおける最大振幅を比較することで、信号電圧Y2の振幅の減少を検出した(ステップS10)。しかしながら、信号電圧Y2の振幅を継続して監視することで、信号電圧Y2の振幅の減少を検出してもよい。例えば、図6の例では、振幅V4の検出後に信号電圧Y2の振幅が減少する。この信号電圧Y2の振幅の減少を期間Pa4の間に検出してもよい。この場合、4度目のステップS10でYESと判定されるので、RFIDリーダライタ10は期間Pa5から高出力で電波を送信する。
【0060】
また、送受信アンテナ16の送信出力を増大させる幅は、ピーク振幅の値に応じて変更してもよい。例えば、ピーク振幅が基準電圧VTH以下であるが基準電圧に近い値である場合には送信出力の増大幅を小さくし、ピーク振幅が読み取り下限電圧VLOWより少し高い程度の値である場合には送信出力の増大幅を大きくしてもよい。この構成によれば、送受信アンテナ16の送信出力を、通信の信頼性を確保するのに最小限の送信出力とすることができ、より消費電力を低減することができる。
【実施例2】
【0061】
次に、実施例2のRFIDリーダライタについて説明する。実施例2のRFIDリーダライタは、記憶装置24が読み出し可能時間を記憶している点で実施例1のRFIDリーダライタ10と異なる。また、実施例2のRFIDリーダライタは、データの読み出し処理が実施例1のRFIDリーダライタとは異なる。実施例2のRFIDリーダライタのその他の構成は、実施例1のRFIDリーダライタ10と同様である。
【0062】
実施例2のRFIDリーダライタの記憶装置24は、上述したピーク振幅に対応させて、読み出し可能時間を記憶している。読み出し可能時間とは、ピーク振幅が検出された後にRFタグ50からデータを読み出すことが可能な時間である。図4に示すように、読み出し可能時間とピーク振幅の間には相関関係があるので、ピーク振幅から読み出し可能時間を予測することができる。
【0063】
図8は、RFIDリーダライタ80が実行する読み出し処理を示している。図8の処理は、実施例1の読み出し処理(図5の処理)のステップS12がステップS12aに変更されたものである。図8のステップS2〜S10及びS14〜S20は、図5のステップS2〜S10及びS14〜S20と同様である。
【0064】
ステップS12aでは、RFIDリーダライタは、RFタグ50から残りのデータを読み出すのに必要な時間を算出する。また、RFIDリーダライタは、ピーク振幅を特定し、特定されたピーク振幅に対応する読み出し可能時間を記憶装置24から読み出す。そして、残りのデータを読み出すのに必要な時間と読み出し可能時間を比較する。一般的に、RFIDリーダライタは、16バイトのデータを読み出すのに約2msecの時間を要する。したがって、例えば、RFタグ50から読み出す必要がある残りのデータが32バイトである場合には、残りのデータを読み出すのに必要な時間として4msecが算出され、算出された時間が読み出し可能時間と比較される。読み出し可能時間が残りのデータを読み出すのに必要な時間に満たない場合(ステップS12aでNOの場合)であって、ピーク振幅が読み取り下限電圧VLOWより大きい場合(ステップS14でYESの場合)には、ステップS16が実行され、送受信アンテナ16の送信出力が増大される。すなわち、送信出力を増大することで、読み出し可能時間が残りのデータを読み出すのに必要な時間より長くなるときは、送信出力が増大される。なお、送信出力を増大しても、読み出し可能時間が残りのデータを読み出すのに必要な時間に満たない場合(ステップS14でNOの場合)には、読み出し処理が中止される(ステップS20)。一方、読み出し可能時間が残りのデータを読み出すのに必要な時間より長い場合(ステップS12aでYESの場合)には、ステップS16は実行されず、送受信アンテナ16の送信出力は増大されない。このように、残りのデータを読み出すのに必要な時間と読み出し可能時間を比較することで、送信出力を増大しなくてもデータの読み出しを完了できる場合に送信出力が増大されることが防止される。
【実施例3】
【0065】
次に、実施例3のRFIDリーダライタについて説明する。実施例3のRFIDリーダライタは、位相変調または周波数変調した電波によって、RFタグ50と通信を行う。実施例3のRFIDリーダライタのその他の構成は、実施例1のRFIDリーダライタ10と同様である。
【0066】
RFIDリーダライタは位相変調または周波数変調した電波により通信を行うので、受信電圧検出回路20で検出される信号電圧の振幅が振幅変調の影響を受けない。すなわち、信号電圧の振幅は、RFIDリーダライタとRFタグ50との間の送受信感度と、送受信アンテナ16の送信出力によって変化する。RFIDリーダライタは、図5に示す実施例1と同様の読み出し処理を実行する。これにより、電力の消費が抑えられる。このように、図5に示す処理によれば、位相変調または周波数変調した電波により通信を行うRFIDリーダライタの消費電力を抑えることもできる。また、位相変調または周波数変調した電波により通信を行う場合に、図8に示す実施例2と同様の読み出し処理を行っても、RFIDリーダライタの消費電力を抑えることができる。
【0067】
なお、上述した実施例1〜3のRFIDリーダライタは、LEDランプによってユーザにRFタグの使用方法の良否を通知した。しかしながら、LCD等の表示画面によって、ユーザにRFタグの使用方法の良否を通知してもよい。例えば、ピーク振幅が基準電圧より大きい場合には、LCDに「読み取りOK」とのメッセージを表示し、ピーク振幅が基準電圧以下であり読み取り下限電圧より大きい場合には、LCDに「読み取りOK、次回傾けずに操作して下さい」とのメッセージを表示し、ピーク振幅が読み取り下限電圧以下である場合には、LCDに「読み取りNG、もう一度操作して下さい」とのメッセージを表示してもよい。また、これらと同様の内容を、ブザーによる音声や電子音によって通知してもよい。または、LEDランプ、LCD、及び、ブザーを組み合わせて用いることで通知してもよい。
【符号の説明】
【0068】
10:RFIDリーダライタ
12:CPU
14:送信回路
16:送受信アンテナ
18:受信回路
20:受信電圧検出回路
22:電波出力変更回路
24:記憶装置
26:表示装置
26a〜26d:LEDランプ
50:RFタグ
52:CPU
54:送信回路
56:送受信アンテナ
58:受信回路
60:記憶装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFタグからデータを読み出すRFIDリーダであって、
電磁波を送信する電磁波送信手段と、
電磁波送信手段により電磁波を送信しているときにRFタグから送信される電磁波を受信する電磁波受信手段と、
電磁波受信手段で受信されるRFタグからの電磁波により生じる電圧を検出する電圧検出手段と、
電磁波受信手段でRFタグから送信される電磁波が受信されるまで第1の電磁波を電磁波送信手段に繰り返し送信させる第1制御手段と、
第1の電磁波の送信中に電磁波受信手段でRFタグから送信される電磁波が受信された場合に、第2の電磁波を電磁波送信手段に送信させる第2制御手段と、
第2の電磁波の送信中に電圧検出手段で検出される電圧に基づいて、第2の電磁波の送信出力を制御する出力制御手段、
を有していることを特徴とするRFIDリーダ。
【請求項2】
第2の電磁波の送信中に電圧検出手段により検出される電圧には、第1のデータに対応する第1振幅を有する第1信号電圧と、第2のデータに対応するとともに第1振幅より大きい第2振幅を有する第2信号電圧が含まれており、
出力制御手段は、第2振幅が減少するまでに検出された第2振幅の最大値が第1基準値以下であるときに、第2の電磁波の送信出力を増大させることを特徴とする請求項1に記載のRFIDリーダ。
【請求項3】
電磁波送信手段は、前記最大値が第1基準値より低い第2基準値以下であるときに、第2の電磁波の送信を停止することを特徴とする請求項2に記載のRFIDリーダ。
【請求項4】
前記最大値に基づいて、RFタグの使用方法の良否をユーザに通知する通知手段をさらに有することを特徴とする請求項2または3に記載のRFIDリーダ。
【請求項5】
出力制御手段は、第2の電磁波の送信中に電圧検出手段で検出される電圧の振幅の経時変化から予測される読み出し可能時間が、RFタグから残りのデータを読み出すのに必要な時間に満たないときに、第2の電磁波の送信出力を増大させることを特徴とする請求項1に記載のRFIDリーダ。
【請求項6】
第2の電磁波の送信中に電圧検出手段により検出される電圧には、第1のデータに対応する第1振幅を有する第1信号電圧と、第2のデータに対応するとともに第1振幅より大きい第2振幅を有する第2信号電圧が含まれており、
出力制御手段は、第2振幅が減少するまでに検出された第2振幅の最大値から前記読み出し可能時間を予測することを特徴とする請求項5に記載のRFIDリーダ。
【請求項7】
第2の電磁波の送信中に電圧検出手段により検出される電圧には、周波数変調または位相変調された信号電圧が含まれており、
出力制御手段は、第2の電磁波の送信中に電圧検出手段により検出される電圧の振幅が減少するまでに検出された前記振幅の最大値が第1基準値以下であるときに、電磁波送信手段が送信する第2の電磁波の送信出力を増大させることを特徴とする請求項1に記載のRFIDリーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−81745(P2011−81745A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−235678(P2009−235678)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】