説明

RH真空脱ガス装置浸漬管付着スラグの簡易除去装置および簡易除去方法

【課題】RH真空脱ガス装置の浸漬管に付着したスラグを簡易に効率良く除去することができるRH真空脱ガス装置浸漬管付着スラグの簡易除去装置および簡易除去方法を提供する。
【解決手段】浸漬管付着スラグ簡易除去装置10は、浸漬管1の下端面に付着したスラグを除去する浸漬管下端面付着スラグ除去刃31を取り付けた部位30と、浸漬管1同士の間に付着したスラグを除去する浸漬管間付着スラグ除去刃21を取り付けた部位20とからなり、浸漬管1の変形などによって当該装置10にその強度を超える負荷が作用しても、スラグ除去刃21、31のバネ32による傾動とシャーピンの切断によって当該装置10を保護し、かつ当該装置10を人手で容易かつ早急に復旧することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RH真空脱ガス装置の浸漬管に付着したスラグの簡易除去装置および簡易除去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、RH真空脱ガス装置の浸漬管に付着したスラグを除去する際には、浸漬管を外周方向に囲む刃が取り付けられた装置を浸漬管に対して、上昇・下降させたり(例えば、特許文献1参照)、外周方向に回転させたり(例えば、特許文献2参照)して、スラグを除去している。また、スラグ除去用の垂直刃をバネで支持したものをRH台車(RH真空脱ガス装置用の溶鋼鍋輸送台車)に設置して、RH台車を浸漬管側に移動させることによって、浸漬管下部に付着したスラグをかき落として除去する方法も行われている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−81912号公報
【特許文献2】特開平2−290665号公報
【特許文献3】実開昭58−111148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1、2に記載のスラグ除去用の刃をもった装置を浸漬管に対して上昇・下降させたり、回転させたりしてスラグを削り取る方法では、スラグ除去用の刃を駆動する駆動部があるため、装置の構造が複雑になり、1500℃を超える溶鋼に浸漬した後の浸漬管から放射される高温の放射熱の影響で壊れやすいという欠点があった。加えて、スラグ除去の際には、浸漬管の真下に専用の装置を配置する必要があり、生産を一時中断する必要があり、能率が著しく低下していた。さらに、スラグ除去装置に過荷重が加わり故障した場合、装置を元に復旧するのに大幅に時間が掛かっていた。
【0005】
また、特許文献3に記載のスラグ除去用の垂直刃をバネで支持したものをRH台車に設置してスラグを除去する方法では、浸漬管下端面のみスラグの除去が可能であり、浸漬管同士の間に付着したスラグの除去は全くできなかった。
【0006】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、RH真空脱ガス装置の浸漬管に付着したスラグを簡易に効率良く除去することができるRH真空脱ガス装置浸漬管付着スラグの簡易除去装置および簡易除去方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有する。
【0008】
[1]RH真空脱ガス装置下部の浸漬管に付着したスラグを除去するための簡易除去装置であって、浸漬管を溶鋼に浸漬して抜き出した後、浸漬管に付着したスラグを除去する際に、当該装置の強度を超える負荷が作用しても当該装置を保護し、かつ当該装置を人手で容易かつ早急に復旧できるように、スラグ除去用の刃を取り付けた部位を前後に傾動可能とし、スラグ除去の際はスラグ除去用の刃を取り付けた部位を当該装置の本体に、当該装置の強度未満の強度を有するシャーピンで固定するようにした構造であることを特徴とする浸漬管付着スラグの簡易除去装置。
【0009】
[2]浸漬管の下端面に付着したスラグを除去する浸漬管下端面付着スラグ除去刃を取り付けた部位と、浸漬管同士の間に付着したスラグを除去する浸漬管間付着スラグ除去刃を取り付けた部位からなり、RH真空脱ガス装置の下で溶鋼鍋を積載して移動するRH台車に設置され、前記浸漬管下端面スラグ除去用刃はRH台車進行方向とほぼ直角に取り付けられ、前記浸漬管間付着スラグ除去刃はRH台車進行方向とほぼ平行に取り付けられ、前記浸漬管間付着スラグ除去刃の取り付け部位が前記[1]に記載の構造を有することを特徴とする浸漬管付着スラグの簡易除去装置。
【0010】
[3]前記[2]に記載の簡易除去装置を用いて、RH台車の移動のみによってスラグを除去することを特徴とする浸漬管付着スラグの簡易除去方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明においては、RH真空脱ガス装置の浸漬管に付着したスラグを簡易に効率良く除去することができる。
【0012】
すなわち、本発明においては、単純な構造で壊れにくく、かつ生産を止めることなく能率よくスラグを除去できる。さらに、浸漬管の変形などによって過負荷が加わった場合でも、特定の部位が壊れるような構造のため、事後のメンテナンスが容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態を示す側面図である。
【図2】本発明の一実施形態における要部拡大側面図である。
【図3】本発明の一実施形態におけるRH台車を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態を示す側面図である。
【0016】
図1に示すように、本発明の一実施形態における浸漬管付着スラグ簡易除去装置10は、浸漬管1の下端面に付着したスラグを除去する浸漬管下端面付着スラグ除去刃31を取り付けた部位30と、浸漬管1同士の間に付着したスラグを除去する浸漬管間付着スラグ除去刃21を取り付けた部位20とからなる単純な構造となっている。
【0017】
そして、この浸漬管付着スラグ簡易除去装置10はRH真空脱ガス装置の下で溶鋼鍋を積載して移動するRH台車(RH真空脱ガス装置用の溶鋼鍋輸送台車)に設置され、浸漬管下端面スラグ除去用刃31はRH台車進行方向とほぼ直角に取り付けられ、浸漬管間付着スラグ除去刃21はRH台車進行方向とほぼ平行に取り付けられる。
【0018】
図2は、浸漬管間付着スラグ除去刃21を取り付けた部位20の拡大側面図である。
【0019】
図2に示すように、浸漬管間付着スラグ除去刃21はバネ22で支持されていて、前後に傾動可能になっている。そして、浸漬管1に付着したスラグを除去する際に、浸漬管付着スラグ簡易除去装置10の本体11にシャーピン23で固定される。
【0020】
同様に、浸漬管下端面付着スラグ除去刃31を取り付けた部位30では、浸漬管下端面付着スラグ除去刃31はバネ32で支持されていて、前後に傾動可能になっている。
【0021】
これによって、この実施形態においては、浸漬管1を溶鋼に浸漬して抜き出した後、浸漬管1に付着したスラグを除去する際に、浸漬管1の変形などによって浸漬管付着スラグ簡易除去装置10にその強度を超える負荷が作用しても、スラグ除去刃21、31のバネ22、32による傾動とシャーピン23の切断によって当該装置10を保護し、かつ当該装置10を人手で容易かつ早急に復旧することができる。
【0022】
そして、図3に示すように、溶鋼鍋3を搭載するRH台車2に浸漬管付着スラグ簡易除去装置10を設置することにより、操業を止めることなく、RH台車2の移動のみによって、浸漬管1同士の間に付着したスラグおよび浸漬管1の下端面に付着したスラグを除去することができる。
【0023】
このようにして、この実施形態においては、RH真空脱ガス装置の浸漬管1に付着したスラグを簡易に効率良く除去することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 浸漬管
2 RH台車
3 溶鋼鍋
10 浸漬管付着スラグ簡易除去装置
11 浸漬管付着スラグ簡易除去装置の本体
20 浸漬管間付着スラグ除去刃を取り付けた部位
21 浸漬管間付着スラグ除去刃
22 バネ
23 シャーピン
30 浸漬管下端面付着スラグ除去刃を取り付けた部位
31 浸漬管下端面付着スラグ除去刃
32 バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
RH真空脱ガス装置下部の浸漬管に付着したスラグを除去するための簡易除去装置であって、浸漬管を溶鋼に浸漬して抜き出した後、浸漬管に付着したスラグを除去する際に、当該装置の強度を超える負荷が作用しても当該装置を保護し、かつ当該装置を人手で容易かつ早急に復旧できるように、スラグ除去用の刃を取り付けた部位を前後に傾動可能とし、スラグ除去の際はスラグ除去用の刃を取り付けた部位を当該装置の本体に、当該装置の強度未満の強度を有するシャーピンで固定するようにした構造であることを特徴とする浸漬管付着スラグの簡易除去装置。
【請求項2】
浸漬管の下端面に付着したスラグを除去する浸漬管下端面付着スラグ除去刃を取り付けた部位と、浸漬管同士の間に付着したスラグを除去する浸漬管間付着スラグ除去刃を取り付けた部位からなり、RH真空脱ガス装置の下で溶鋼鍋を積載して移動するRH台車に設置され、前記浸漬管下端面スラグ除去用刃はRH台車進行方向とほぼ直角に取り付けられ、前記浸漬管間付着スラグ除去刃はRH台車進行方向とほぼ平行に取り付けられ、前記浸漬管間付着スラグ除去刃の取り付け部位が請求項1に記載の構造を有することを特徴とする浸漬管付着スラグの簡易除去装置。
【請求項3】
請求項2に記載の簡易除去装置を用いて、RH台車の移動のみによってスラグを除去することを特徴とする浸漬管付着スラグの簡易除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−219337(P2012−219337A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86928(P2011−86928)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】