説明

RNAウィルスの新規作製方法

要約書:本発明は、ヘルパーウィルスの存在下で線状発現コンストラクトを使用するマイナス鎖の分節化したRNAウィルスの作製方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘルパーウィルスの存在下で線状発現コンストラクトを使用するマイナス鎖の分節化したRNAウィルスの作製方法を提供する。
【0002】
背景技術
マイナス鎖RNAウィルスは、インフルエンザ、はしか、ムンプス、狂犬病、RSウィルス、エボラ及びハンタウィルスを含むいくつかの重要なヒトの病原体を包含する動物ウィルスの一群である。
【0003】
これらRNAウィルスのゲノムは、単分子であるか又は分節化していてよく、(−)極性の単鎖である。2つの本質的な要求が、これらウィルス間で共有されている:そのゲノムRNAsはウィルスRNA中へと効率的にコピー導入されなくてはならず、この形態は、子孫ウィルス粒子中への組み込みのために使用され、かつ、ウィルスタンパク質へと翻訳されるmRNAへと転写されることができる。真核性宿主細胞は典型的には、RNAテンプレートの複製のための又はマイナス鎖のRNAテンプレートからのポリペプチドの翻訳のための機構を含まない。したがって、マイナス鎖のRNAウィルスは、子孫ウィルスへのアセンブリーのために新規ゲノムRNAの、及び、ウィルスタンパク質への翻訳のためにmRNAsの、合成を触媒作用するために、RNA−依存性RNAポリメラーゼをコードしかつ所有する。
【0004】
ゲノムウィルスRNAは、ウィルスが伝達されるように、ウィルス粒子中へとパッケージされなくてはならない。子孫ウィルス粒子がアセンブリー化されるプロセス及びアセンブリーの間に生じるタンパク質/タンパク質相互作用は、RNAウィルス間で類似している。ウィルス粒子の形成は、RNAゲノムを1の宿主細胞から別の宿主細胞へと単一の宿主内で又は異なる宿主生物間で効率的に伝達することを保証する。
【0005】
ネガティブ−センスゲノムを有する、エンベロープ付きの、単鎖RNAを含むウィルス科は、分節化してないゲノムを有する群(パラミクソウィルス科(Paramyxoviridae)、ラブドウィルス科(Rhabdoviridae)、フィロウィルス科(Filoviridae)及びボルナ病ウィルス(Borna Disease Virus)、トガウィルス科(Togaviridae))、そして、分節化ゲノムを有する群(オルトミクソウィルス科(Orthomyxoviridae)、ブンヤウィルス科(Bunyaviridae)及びアレナウィルス科(Arenavihdae))に分類される。オルトミクソウィルス科は、インフルエンザ、タイプA、B及びCウィルス、また同様にトゴト(Thogoto)及びドリウィルス(Dhori viruse)及び感染性サケ貧血ウィルスのウィルスを含む。
【0006】
インフルエンザビリオンは、単鎖RNAゲノムを含む内側リボ核タンパク質コア(ヘリックス状ヌクレオキャプシド)及びマトリックスタンパク質(M1)により内部で裏打ちされている外側リポタンパク質エンベロープからなる。インフルエンザAウィルスの分節化したゲノムは、8つの分子の、線状の、負の極性の、単鎖のRNAsからなり、このRNAsは次のものを含めた11つのポリペプチドをコードする(いくつかのインフルエンザA株においては10つ):RNA依存性RNAポリメラーゼタンパク質(PB2、PB1及びPA)及び核タンパク質(NP)、これはヌクレオキャプシドを形成する;マトリックス膜タンパク質(M1、M2);2の表面糖タンパク質、これは脂質含有エンベロープから放出される:ヘマグルチニン(HA)及びノイラミニダーゼ(NA);非構造タンパク質(NS1)及び核輸送タンパク質(NEP)。大抵のインフルエンザA株は、アポトーシス促進特性を有すると思われている第11番目のタンパク質(PB1−F2)をもコードする。
【0007】
ウィルスゲノムの転写及び複製は、核中で生じ、アセンブリーは形質膜上での出芽を介して生じる。ウィルスは、混合した感染の間に遺伝子をリアソート(reassort)することができる。インフルエンザウィルスは、HAを介して、細胞膜糖タンパク質及び糖脂質中のシアリルオリゴ糖に吸着する。ビリオンのエンドサイトーシスに続き、HA分子中のコンフォメーション変化が細胞エンドソーム内で生じ、これは、膜融合を容易にし、このようにして脱外被を引き起こす。ヌクレオキャプシドは、ウィルスRNAが転写される核へと移動する。ウィルスmRNAは、ウィルスエンドヌクレアーゼが細胞の非相同mRNAs(heterologous mRNAs)からキャップ化5′末端を切断する独特の機構により転写され、このmRNAsは次いで、ウィルストランスクリプターゼによるウィルスRNAテンプレートの転写のためのプライマーとして機能する。転写産物は、そのテンプレート末端から15〜22塩基の部位で終結し、ここではオリゴ(U)配列がポリ(A)領域(poly(A) tract)の付加のためのシグナルとして機能する。このように生産される8つのウィルスRNA分子のうち、6つがモノシストトニックメッセージであり、これはHA、NA、NPを示すタンパク質、及びウィルスポリメラーゼタンパク質PB2、PB1及びPA中に直接的に翻訳される。他の2つの転写物はスプライスングを受け、それぞれ2つのmRNAsを生じ、これは、M1、M2、NS1及びNEPを生産するための異なるリーディングフレームに翻訳される。言い換えると、8つのウィルスRNA分節は、11つのタンパク質をコードする:9つの構造的タンパク質及び2つの非構造的タンパク質(NS1及び最近発見されたPB1−F2)である。
【0008】
インフルエンザウィルスのための、特に高病原性トリインフルエンザウィルスのための現代のワクチンの作製は、リバースジェネティクスの使用に頼っており、これは、DNAからのインフルエンザウィルスの生産を可能にする。マイナス鎖のRNAインフルエンザウィルスの構築のための第1のリバースジェネティクスシステムは、in vitro再構成したリボ核タンパク質(RNP)複合体と混合した単独ウィルス遺伝子のトランスフェクション及び引き続くインフルエンザヘルパーウィルスでの感染を伴った。RNP複合体は、合成RNA転写物を精製NP及びポリメラーゼタンパク質(PB1、PB2及びPA)(インフルエンザウィルス由来)でインキュべーションすることにより作成されており、ヘルパーウィルスは、ウィルスタンパク質の、及び、他のvRNAsの、細胞内供給源として使用された(Luytjes et al., 1989, 0611, 59, 1107-1113)。
【0009】
Neumann et al.(1994, Virology, 202, 477-479)は、マウスRNAポリメラーゼIプロモーター応答性プラスミドからのRNAの発現後にインフルエンザ−感染させた細胞中でのウィルスモデルRNAsのRNP形成を達成した。Pleschka et al.(1996, J. Virol., 4188-4192)は、RNP複合体がプラスミドベースの発現ベクターから再構成された方法を説明した。ウィルスRNA様転写物の発現は、短縮したヒトポリメラーゼI(polI)プロモーター及びリボザイム配列を含有するプラスミドから達成され、これは自己触媒切断により3′末端で作成された。polI駆動されたプラスミドを、ヒト293細胞中にpolII応答性プラスミドで共トランスフェクションし、これはウィルス性PB1、PB2、PA及びNPタンパク質を発現した。トランスフェクション効率は極めて低かったが、トランスフェクションにつき約10つのトランスフェクタントウィルス粒子を伴う。さらに、このプラスミドをベースとする戦略は、ヘルパーウィルスの助けに依存する。
【0010】
WO01/04333においては、分節化したマイナス鎖RNAウィルスを、ゲノム性vRNA分節及びRNPタンパク質を発現するための1セットの12つの発現プラスミドを使用して構築した。WO01/04333に説明されたベクターは、良く知られているpUC19又はpUC18プラスミドをベースとした。発明の詳細な説明によれば、このシステムは、インフルエンザウィルスの8つの分節全てを発現する8つのプラスミド1セットを、核タンパク質及びRNA依存的RNAポリメラーゼ(PB1、PB2、PA及びNP)のサブユニットを発現する4つのプラスミドの付加的な1セットと一緒に必要とする。
【0011】
WO00/60050は、1セットの、インフルエンザウィルス分節cDNA(PA、PB1、PB2、HA、NP、NA、M)に操作可能に連結された、及び、転写終結配列に連結されたプロモーターを含有する少なくとも2つのベクター、及びインフルエンザウィルス分節DNA(PA、PB1、PB2、NP)に操作可能に連結されたプロモーターを含有する少なくとも2つのベクターを包含する。このシステムは、1つのプラスミドに組み合わせられた4つのウィルスRNA合成のための8つのRNAポリメラーゼI転写カセットを有するプラスミドを用いることにより、多数の異なるベクターを使用することの困難性を克服することを試みた。
【0012】
WO01/83794は、RNAポリメラーゼII(polII)プロモーター及びポリアデニル化シグナルの間に挿入された、RNAポリメラーゼI(polI)プロモーター及びpolI終結シグナルを含有する環状発現プラスミドを開示する。本願により、ベクターとの用語は、一般的に、付加的な外来DNAを許容できる二重鎖DNAの自蔵式分子(a self-contained molecule)であり、かつ、適した宿主細胞中に容易に導入されることができるプラスミドとして説明される。
【0013】
WO2009/00891は、インフルエンザウィルス遺伝子分節の発現のための線状発現コンストラクト及びその使用を説明する。
【0014】
Ozawa M. et al(J.Virol, 2007, vol. 81 , pp. 9556-9559)は、アデノウィルスベクターを使用するインフルエンザAウィルス作製のためのリバースジェネティクスシステムを説明する。Hoffmann E. et al(Virology, 2000, 267, pp. 310-317)は、両方向性転写コンストラクトを使用する1のテンプレートからのウィルスRNA及びmRNAの作製によるインフルエンザウィルスの作出のためのシステムを開示する。8つのプラスミドからのインフルエンザBウィルスのレスキューもHoffmann et al.(Proc.Natl.Acad.Sci., 2002, 99, pp. 11411 -11416)に開示されている。
【0015】
ウィルス疾病により引き起こされるエピデミック及びパンデミックは、未だヒト生命を奪うものであり、かつ、世界経済に影響を及ぼす。インフルエンザは、数百万の仕事休み日及び医師の診察、世界的に数十万の入院患者(Couch 1993, Ann. NY. Acad. Sci 685;803)、数万の超過死亡(Collins & Lehmann 1953 Public Health Monographs 213:1 ; Glezen 1982 AmJ. Public Health 77:712)及び数十億ユーロのヘルスケアコスト(Williams et al. 1988, Ann. Intern. Med. 108:616)の原因である。健康な成年が免疫化すると、現在入手可能なワクチンは70〜90%の場合に臨床的疾病を予防する。このレベルは、65歳を超える場合に30〜70%に減少し、ナーシングホームで暮らす65歳以上ではさらに一層減少する(Strategic Perspective 2001 : The Antiviral Market. Datamonitor. p. 59)。このウィルスの低頻度抗原変化はさらに、より多数の死亡者数に寄与し、というのも、年間のワクチン接種でさえ保護を保証できないからである。このようにして、U.S.死亡者数は、1976/77の16363名から1998/99には4倍も増加した(Wall Street Journal, Flu-related deaths in US despite vaccine researches. January 7, 2003)。
【0016】
特にパンデミックウィルス疾病の大発生の場合には、ワクチン接種又は処置をこの疾病の大発生の直後に提供することが最も重要になる可能性がある。ウィルス性疾病の効率的な保護及び処置を提供するとの緊急の必要性の観点において、未だに高い需要が、当該発現技術の欠点及び困難性を克服でき、かつ、ウィルス発現のための代替的方法を提供する、ウィルス生産のために経済的な、迅速かつ効率的な発現システムの開発について存在する。この課題は、本願の実施態様の提供により達成される。
【0017】
発明の簡単な概要
本発明は、ヘルパーウィルスの存在下でRNAウィルスの発現のために線状発現コンストラクトが使用される代替技術を提供する。
【0018】
意外なことに、RNAポリメラーゼI(polI)プロモーター及びpolI終結シグナルであってRNAポリメラーゼII(polII)プロモーター及びポリアデニル化シグナルの間に挿入されたものを含み、HA及び/又はNA遺伝子分節であってpolIプロモーター及びpolI終結シグナルの間に挿入されたものを含有する、いかなる増幅及び/又は選択配列も含まない少なくとも1の線状発現コンストラクトの使用が、ヘルパーウィルスの存在下で、ウィルス粒子の迅速なレスキューのための効率的なツールを提供することが見出された。知られている技術により使用される方法とは対照的に、細菌細胞中でのクローニング工程は必要でなく、宿主細胞はウィルスゲノムの全分節でトランスフェクションされる必要はない。具体的には、1又は2だけの分節、すなわち、HA及び/又はRAをコードする遺伝子でのトランスフェクションが、ウィルス全体の発現のために十分であることができる。したがって、ウィルス粒子の十分な量のトランスフェクション及び発現のために必要な時間が極めて減少される。
【0019】
例えば、PCT/EP2008/058182(これは参照により本願に取り込まれる)に説明されるような線状発現コンストラクトは、ヘルパーウィルスの存在下で、RNAウィルス、具体的には、野生型、突然変異体又はリアソータント株のいずれかのインフルエンザウィルスを含有するワクチンの開発のために使用されることができる。これは、インフルエンザエピデミック又はパンデミックの発生の場合に必要とされる任意のウィルスワクチンの迅速な作成のためのツールを提供する。
【0020】
さらに、本発明は、ヘルパーウィルスの除去のための改善された方法を提供し、かつ、改善された選択及び精製目的のために改変された切断部位を有するHA分節を提供する。
【0021】

図1a及び1bは、線状両方向性発現コンストラクトの作製を描写する概要図である。図1aは、フラグメントF1、F2及びF3を示し、これはPCR増幅により別個に作製されている。図1bは、フラグメントF4を示し、これはオリゴヌクレオチドP4及びP6を使用するオーバーラップPCRにより作製されている。
【0022】
発明の詳細な説明
本発明は、マイナス鎖の分節化したRNAウィルスの生産方法であって、
a)いかなる増幅及び/又は選択配列も含まない線状発現コンストラクトを提供する工程、このコンストラクトは、RNAポリメラーゼI(polI)プロモーター及びpolI終結シグナルを含み、両者はRNAポリメラーゼII(polII)プロモーター及びポリアデニル化シグナルの間に挿入されており、このコンストラクトはさらに、polIプロモーター及びpolI終結シグナルの間に挿入されたHA及び/又はNA遺伝子分節を含有する、
b)宿主細胞を前記線状発現コンストラクトでトランスフェクションする工程、
c)前記宿主細胞を、ヘルパーウィルスHA及び/又はNAタンパク質を有するヘルパーウィルスで感染させる工程、
d)前記宿主細胞を、ウィルス粒子を増殖させるために培養する工程、
e)ウィルス粒子を選択する工程、これは、
(i)前記線状発現コンストラクト由来の前記HA及び/又はNAタンパク質を含有するが、
(ii)前記ヘルパーウィルスHA及びNAタンパク質、又はこの分節を含有しない、
その際、前記選択は、前記HA及び/又はNAタンパク質のフェノタイプの、ゲノタイプの又は抗原の特性に基づく、及び場合により
その際、ヘルパーウィルスHA及びNAタンパク質の非存在が、核酸又はアミノ酸配列の分析により決定される工程、
を含む生産方法に関する。
【0023】
より具体的には、マイナス鎖の分節化したRNAウィルス粒子の生産方法は、
増幅配列、選択配列、又は増幅配列及び選択配列の両方を含まない線状発現コンストラクトを提供する工程、その際、このコンストラクトは、RNAポリメラーゼI(polI)プロモーター及びpolI終結シグナルを含み、このpolIプロモーター及びpolI終結シグナルは、RNAポリメラーゼII(polII)プロモーター及びポリアデニル化シグナルの間に挿入されており、その際、この線状発現コンストラクトはさらに、polIプロモーター及びpolI終結シグナルの間に挿入されたHA遺伝子分節、NA遺伝子分節、又はHA遺伝子分節及びNA遺伝子分節の両方を含有する、
宿主細胞を前記線状発現コンストラクトでトランスフェクションする工程、
前記宿主細胞を、ヘルパーウィルスで感染させる工程、その際、このヘルパーウィルスはHAタンパク質、NAタンパク質、又はHAタンパク質及びNAタンパク質の両方をコードするゲノムRNAを含有する;
前記宿主細胞を培養する工程、これにより、子孫ウィルス粒子を生産し、その際、少なくともいくつかの子孫ウィルス粒子は前記線状発現コンストラクト由来のHAタンパク質又はNAタンパク質を含有する;及び、候補ウィルス粒子を前記子孫ウィルス粒子のうちから選択する工程
を含むことができ、その際、前記候補ウィルス粒子は、
i)前記線状発現コンストラクトがHA遺伝子分節を含有する場合には、前記線状発現コンストラクト由来のHAタンパク質を含有するが、前記ヘルパーウィルス由来のHAタンパク質を含有しない、
ii)前記線状発現コンストラクトがNA遺伝子分節を含有する場合には、前記線状発現コンストラクト由来のNAタンパク質を含有するが、前記ヘルパーウィルス由来のNAタンパク質を含有しない。
【0024】
本発明によれば、前記宿主細胞は、HA又はNA遺伝子分節を含有する少なくとも1の線状発現コンストラクトでトランスフェクションされる。好ましくは、前記宿主細胞は、少なくとも2つの線状発現コンストラクトでトランスフェクションされ、その際、1の線状コンストラクトはHA遺伝子分節を含有し、第2の線状コンストラクトはNA遺伝子分節を含有する。
【0025】
候補ウィルス粒子の選択の工程は、さらに、前記候補ウィルス粒子がヘルパーウィルスのHAアミノ酸配列又はNAアミノ酸配列を含まないことを決定するために前記候補ウィルス粒子のアミノ酸配列の分析又は前記候補ウィルス粒子がヘルパーウィルスのHAヌクレオチド配列又はNAヌクレオチド配列を含まないことを決定するために候補ウィルス粒子の核酸分子の分析を含むことができる。
【0026】
本発明により、「線状発現コンストラクト」は、いかなる増幅及び/又は選択配列も含まず、かつ、RNAポリメラーゼI(polI)プロモーター及びpolI終結シグナルを含み、これはRNAポリメラーゼII(polII)プロモーター及びポリアデニル化シグナルの間に挿入されており、かつ、遺伝子分節を含み、これはpolIプロモーター及びpolI終結シグナルの間に挿入されているもの、と定義される。
【0027】
好ましくは、前記線状発現コンストラクトは、細菌細胞におけるプラスミドの増幅に必要とされるいかなる選択又は増幅配列も含まない。ori(複製起点)配列も抗生物質耐性遺伝子又はいかなる他の選択マーカーも含まれる必要がない。必要とされる場合には、短いリンカー配列を用いてこの線状発現コンストラクトは環化されることができる。
【0028】
本発明の特定の一実施態様によれば、この線状発現コンストラクトは、DNA分子の他の分子、例えば、更なる保護配列をこのコンストラクトのN及び/又はC末端に含有することができる。例えば、これら保護配列は、WO00/56914に説明されるペプチド核酸配列(PNAs)であることができる。これらPNAsは、全体的なデオキシリボースホスファート骨格が化学的に完全に異なるが、構造的に相同性である、2−アミノエチルグリシン単位を含有するポリアミド(ペプチド)骨格で交換されている、核酸アナログである。PNA「クランプ」は、安定性を増加させることも示されており、その際、2つの同一PNA配列が、3つの8−アミノ−3,6−ジオキサオクタン酸単位を含有するフレキシブルなヘアピンリンカーにより連結される。PNAが相補的ホモプリン又はホモピリミジンDNAターゲット配列と混合される場合には、PNA−DNA−PNAトリプレックスハイブリッドが形成されることができ、これは極端に安定である(Bentin et al., 1996, Biochemistry, 35, 8863-8869, Egholm et al., 1995, Nucleic Acids Res., 23, 217-222, Nielsen et al., Science, 1991 , 254, 1497-1500, Demidov et al., Proc.Natl.Acad.Sci., 1995, 92, 2637-2641)。これらは、ヌクレアーゼ及びプロテアーゼ消化に対して抵抗性であることが示されている(Demidov et al., Biochem.Pharm., 1994, 48, 1010-1013)。このウィルス遺伝子分節とは、前記分節のcDNAコピー又はRT−PCR増幅産物であることができる。
【0029】
具体的には、本発明は、RNAウィルスの発現及び生産方法であって、
a)宿主細胞を、HA遺伝子分節を含有する線状発現コンストラクト及び/又はNA遺伝子分節を含有する線状発現コンストラクト、
及び場合により、PB1、PB2、PA、NS、M、NPから選択されるさらなる遺伝子分節又はその少なくとも一部を含有する線状発現コンストラクト
でトランスフェクションする工程、
b)前記宿主細胞をヘルパーウィルスで感染させる工程、
c)前記の感染した宿主細胞を、ウィルス粒子を増殖させるために培養する工程、
d)前記線状発現コンストラクト由来の少なくともHA及び/又はNAタンパク質を含有するウィルス粒子を選択する工程
を含む方法を提供する。
【0030】
前記選択は、非ヘルパーウィルス起源のHA又はNAタンパク質のゲノタイプの、フェノタイプの又は抗原の特性に基づいて実施されることができる。任意の選択法が、異なる配列、異なるフェノタイプ特徴又は異なる抗原特徴を含むタンパク質間を区別するために知られているとおりに使用されることができる。具体的には、選択尺度が、本発明に説明されているとおりに使用されることができる。ヘルパーウィルス起源及び非ヘルパーウィルス起源からのHA及びNAタンパク質は、ヌクレオチド及びアミノ酸配列において変動し、したがって、この分野において知られている配列比較法も前記線状発現コンストラクト由来のHA又はNA配列を含むウィルスの同定のために使用されることができる。発現コンストラクト又はウィルス「由来」の核酸分子は、発現コンストラクト又はウィルスのヌクレオチド配列又は相補配列を含むものであり、一般的には発現コンストラクト又はウィルスの存在の結果として細胞培地又はこの分子の生産のための他の媒体中で生産される。発現コンストラクト又はウィルス「由来」のタンパク質は、発現コンストラクト又はウィルスのヌクレオチド配列又は相補配列から翻訳されるものであり、一般的には発現コンストラクト又はウィルスの存在の結果として細胞培地又はこのタンパク質の生産のための他の媒体中で生産される。
【0031】
少なくとも1の線状発現コンストラクトの使用に加えて、リバースジェネティクス技術の実施のためにこの分野において知られているプラスミドが、ウィルスタンパク質及び/又はウィルスゲノムの更なる分節の発現のために使用されることができる。これらプラスミドは例えば、Hoffmann et al.(Vaccine 2002, 20(25-26), 3165-3170, これは参照により組み込まれる)に記載されている。具体的には、これら発現プラスミドは、次のものをコードする分節:PB1、PB2、PA、NS、NA、HA、M又はNP又はその部分を含む。
【0032】
「HAタンパク質及びNAタンパク質」との用語は、本発明により、HA又はNAタンパク質それぞれの完全アミノ酸配列又は前記配列の部分として定義され、その際、前記部分は、野生型HA又はNAタンパク質により生じる応答に類似して又はこれに等しく前記HA又はNAタンパク質に対する免疫応答を誘発するのに十分である。好ましくは、前記HA又はNAタンパク質は少なくとも70%の、この完全タンパク質の前記HA又はNAアミノ酸配列を含有し、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%である。
【0033】
免疫原性の観点で機能的等価とは、例えばLu et al.(J. Virol., 1999, 5903-5911)又はBoyd M. R. and Beeson M. F.(J. Antimicrobial Chemotherapy, 1975, 43-47)に説明される動物モデルについて試験されることができる。
【0034】
ヘルパーウィルスは、ヘルパー依存性ウィルスベクターのコピーを生産する場合に使用されるウィルスであり、これは、自体で複製する能力を有しない。このヘルパーウィルスは、ウィルスベクターと一緒に細胞を共感染させるのに使用され、かつ、ウィルスベクターのゲノムの複製のために必要な酵素を提供する。
【0035】
「ヘルパーウィルス」との用語は、生産すべきウィルスに対して同一な少なくとも1の遺伝子分節を含有し、かつ、完全ウィルス粒子の生産のために必要とされる少なくとも1のウィルス分節及び/又は少なくとも1のウィルスタンパク質を提供することによりウィルス作製を支持することができる任意のウィルスとして定義される。
【0036】
ヘルパーウィルスは、一般的に、本発明の方法においては、線状発現コンストラクトでのトランスフェクション後に宿主細胞に添加されるが、代替的方法によれば、ヘルパーウィルスは感染のために宿主細胞へと、この宿主細胞がHA及び/又はNA遺伝子分節を含有する発現コンストラクトによりトランスフェクションされる前に添加されることができる。
【0037】
前記方法により発現されることができるRNAウィルスは、HA及び/又はNA遺伝子分節又はこれら構造に機能的等価な構造を含有する任意のRNAウィルスであることができる。「機能的等価な構造」との用語は、レセプター結合及び融合活性を有するウィルスタンパク質を意味する。
【0038】
RNAウィルスは、インフルエンザウィルス、具体的にはインフルエンザA、B又はCウィルス、コロナウィルス、RSウィルス、ニューカッスル病ウィルスからなる群から選択されることができる。
【0039】
ウィルスの培養のために本発明による方法において使用されることができる細胞は、培養されることができ、エンベロープ付きウィルス、具体的にはインフルエンザウィルスで感染されることができる任意の所望のタイプの細胞であることができる。具体的には、これは、BSC−1細胞、LLC−MKウィルス、CV−1細胞、CHO細胞、COS細胞、マウス細胞、ヒト細胞、HeLa細胞、293細胞、VERO細胞、CEK(トリ胚性腎臓)、CEF(トリ胚性繊維芽細胞)、MDBK細胞、MDCK細胞、MDOK細胞、CRFK細胞、RAF細胞、TCMK細胞、LLC−PK細胞、PK15細胞、WI−38細胞、MRC−5細胞、T−FLY細胞、BHK細胞、SP2/0細胞、NSO、PerC6(ヒト網膜細胞)であることができる。
【0040】
本発明により、宿主細胞は知られている方法により、例えば電気穿孔によりトランスフェクションされることができる。
【0041】
この宿主細胞培養物は、この分野において前記ウィルスを複製することが知られている標準的条件下で培養されることができ、特に、最大細胞変性効果又は最大量のウィルス抗原が検出されることができるまでである。この回収は、代わりに培養の間の任意の時間点であることができる。
【0042】
宿主細胞の培養のためのpHは、例えば6.5〜7.5であることができる。培養のためのpHは、培養のために使用される宿主細胞のpH安定性に依存する。これは、異なるpH条件下での宿主細胞の生存性の試験により決定されることができる。
【0043】
この分野においては、エピデミックインフルエンザに対する年間(annual)のワクチン接種のためのワクチン株の調製において使用される野生型ウィルスが、世界保健機構(WHO)により毎年勧告されることが良く知られている。これら株は次に、リアソータントウィルス株(reassortant vaccine strain)の生産のために使用されてよく、これは一般的には、野生型ウィルスのNA及び/又はHA遺伝子を、ドナーウィルス(しばしば、マスタードナーウィルス又はMDVとも呼ばれる)由来のこの残りの遺伝子分節と組み合わせ、これは特定の所望される特徴を有するものである。例えば、MVD株は冷温適合され(cold-adapted)、かつ/又は温度感受性、かつ/又は弱毒化され、かつ/又は高い成長速度を有してよい。本発明によれば、このウィルス粒子は好ましくは、季節性ワクチン接種目的のために勧告されるウィルス株の、又は、高度に免疫原性を示しているウィルス株(特にパンデミックウィルスの場合には)の、HA及び/又はNAタンパク質を含有する。
【0044】
前記表面タンパク質を含有するウィルスの選択は、フェノタイプの、ゲノタイプの又は抗原の特性に基づくことができ、これは、ヘルパーウィルス起源のHA及びNAタンパク質から前記タンパク質を区別する。
【0045】
ヘルパーウィルス起源のHA及びNAタンパク質のフェノタイプ特性であって非ヘルパーウィルス起源のHA及びNAタンパク質から前記タンパク質を区別する特性は、選択されたウィルスと同様に、例えば、HAの活性化のための切断部位における相違を有するか、又は低pHに対する安定性において相違する。このヘルパーウィルスHAは、ワクチンウィルスのHAを活性化させるプロテアーゼとは異なるプロテアーゼによるタンパク質加水分解活性化に依存する切断部位を含んでよい。このヘルパーウィルスは、ワクチンウィルスに比較して低pH条件に対する低安定性を示してもよい。
【0046】
ワクチンウィルスのHA及びNAを含有するウィルスの選択は、抗原特性を基礎としてもよい。ワクチンウィルス(例えば、H1N1)とは異なるサブタイプ(例えば、H3N2)のヘルパーウィルスの使用により、ヘルパーウィルスの成長は、ヘルパーウィルスサブタイプ、例えばH3N2に特異的な抗血清により抑制されることができる。
【0047】
選択のために活用されてよいゲノタイプ特徴は、ヘルパーウィルス起源のHA及び/又はNA分節及び非ヘルパーウィルス起源のHA及びNAタンパク質の間の核酸又はアミノ酸配列差異を含む。配列分析をするための方法はこの分野で良く知られている。
【0048】
ヌクレオチド配列差異に基づいて、例えばsiRNAs又はアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ヘルパーウィルスのHA及び/又はNAについて特異的に設計されることができる。これらsiRNA又はアンチセンスオリゴヌクレオチドのトランスフェクションにより、ヘルパーウィルス成長は抑制されることができた。
【0049】
1の選択肢は、ヘルパーウィルス起源のHAタンパク質を含むウィルス粒子をこの候補ウィルス粒子からプロテアーゼを用いた処理により分離することであってよく、これは、ヘルパーウィルス起源のHAタンパク質を切断しないが、このリアソータントウィルスのHAタンパク質を切断し、これにより活性化させる。例えば、このプロテアーゼは、トリプシン、エラスターゼ、キモトリプシン、パパイン又はサーモリシンからなる群から選択されることができる。
【0050】
例えば、ヘルパーウィルスのHAタンパク質は、活性化するように改変でき、これは例えば切断であり、プロテアーゼにより行われ、その際、前記プロテアーゼはトリプシンでなく、その一方で、最終的なワクチンウィルスのHAタンパク質はトリプシンにより切断される。これにより、単純かつ適用可能な選択システムが提供される。これは、切断部位の改変により実施されることができる。ヘルパーウィルスとして有用なウィルス株のHA分節は、突然変異生成、例えばPCR突然変異生成により、トリプシンの代わりにエラスターゼによりタンパク質加水分解的に活性化される切断部位を含むよう変更させることができる。例えば、この切断部位を取り囲むアミノ酸配列は、PSIQPI/GLFGA(切断部位は/により示される)であることができる。
【0051】
必要とされない先祖返り事象(reversion event)を最小限にするために、コドンが、コドンにつき少なくとも2のヌクレオチド変化が好ましくは当初アミノ酸への先祖返りを引き起こすために必要であるように選択される。
【0052】
代替的に、ヘルパーウィルス起源のHA及びNAタンパク質を含有するウィルス粒子が、低pH条件を提供することにより線状コンストラクトから発現されるNA又はHAタンパク質を含有する候補ウィルス粒子から分離されることができる。いくつかの継代のために細胞培養において、具体的にはVera細胞培養において培養されるウィルス粒子は、野生型HA及び/又はNAタンパク質を含有する臨床的単離物からの株に比較してHAタンパク質内での改変のために低pHに向かって減少した安定性を示す。このようにして、低pH条件、すなわち、pH5.2〜6.2下でのヘルパーウィルスの処理は、ヘルパーウィルスの減少した増殖速度を生じ、ひいては、改変していないHA及び/又はNAタンパク質を含有する候補ウィルス粒子の選択を生じる。
【0053】
本発明の更なる代替的一実施態様として、ヘルパーウィルス起源のHA及び/又はNAタンパク質を含有するウィルス粒子は、ヘルパーウィルス起源のHA及び/又はNAタンパク質を中和するか又はこれに結合する抗体を含有する抗血清を用いた処理により候補ウィルス粒子から分離される。
【0054】
必要とされないHA及びNAタンパク質を除去するための様々な方法の組み合わせも、本発明により実施されることができる。
【0055】
本発明の特定の一実施態様によれば、ヘルパーウィルス粒子は、野生型ウィルスのNAタンパク質に比較して減少した活性を有するNAタンパク質を含有することができる。この実施態様においてヘルパーウィルスは、機能的NAタンパク質、すなわち、宿主細胞からウィルスが放出されることを可能にするNAタンパク質を欠損することができるか、又は、NAタンパク質を全体的に欠損することができる。
【0056】
更なる代替的な一実施態様によれば、ヘルパーウィルスは、インフルエンザCウィルスのHEFタンパク質を含有する。インフルエンザCウィルスは、たった1つの主要表面糖タンパク質、HEG(ヘマグルチニンエラスターゼ融合)を有し、これはHAタンパク質に機能的等価である。HEFタンパク質は、例えばトリプシン又はTPCKトリプシンを用いて活性化されることができ、これはGao et al.(J.Virol., 2008, 6419-6426)に説明されるとおりであり、これは参照により本願に組み込まれる。
【0057】
代替的に、ウィルス糖タンパク質HEFを含有する改変したインフルエンザウィルスは、外来プロテアーゼ切断部位、例えばエラスターゼ切断部位の導入により改変されることができるが、本発明により具体的に請求される。
【0058】
本発明の更なる代替的な一実施態様として、ヘルパーウィルス起源のHEFタンパク質を含有するウィルス粒子は、前記HEFタンパク質を中和するか又はこれに結合する抗体での処理により除去される。
【0059】
更なる代替策として、ヘルパーウィルスは、コロナウィルスのHAタンパク質を含有できる。インフルエンザAウィルスの生産においては、代替的にインフルエンザB起源のHA及び/又はNAタンパク質が使用されることができる。
【0060】
ワクチン製造のためのウィルスまた同様にヘルパーウィルスは具体的にはインフルエンザウィルス起源であることができ、より具体的にはこれは弱毒化したインフルエンザウィルスであることができる。
【0061】
具体的な一実施態様によれば、インフルエンザウィルスは弱毒化したインフルエンザウィルスである。具体的には、インフルエンザウィルスは、宿主細胞の生得免疫応答を阻害する病原性因子内での欠失又は改変を含む。弱毒は例示的に、低温適合されたウィルス株由来であるか又はNS1遺伝子内の欠失又は改変(ΔNS1ウィルス)のためであってよく、これはWO99/64571及びWO99/64068に説明されるとおりであり、これは参照により全体が本願に組み込まれる。「改変」とは、野生型NS1配列に比較した1又は複数の核酸の置換又は欠失を指す。NS遺伝子内の改変は、インターフェロンコンピテント細胞において成長不全(Growth deficient)であるウィルス粒子を生じることができる。成長不全とは、動物の気道において不稔複製を経るのでこれらウィルスが複製不全であることを意味する。代替的に、ウィルスは、PB1−F2遺伝子の欠失又は改変を含むことができる。
【0062】
本発明による方法は、具体的には、機能的NS1タンパク質の欠失を含むインフルエンザウィルスの生産のために特に使用されることができる。
【0063】
本発明によれば、ヘルパーウィルスは、生産すべきウィルスと同一である少なくとも4、好ましくは少なくとも5、好ましくは6の分節を含むことができる。具体的には、これは断片はPB1、PB2、PA、NP、M、NSである。
【0064】
ヘルパーウィルスは、知られているリバースジェネティクス技術により又はウィルスリアソートメントのような代替技術により生産されることができる。
【0065】
「リアソート」との用語は、ウィルスに関する場合には、このウィルスが、1より多い親ウィルス株又は供給源由来の遺伝的及び/又はポリペプチド成分を含むことを示す。例えば、7:1リアソータントは、第1の親ウィルス由来の、7つのウィルスのゲノム分節(又は遺伝子分節)と、第2の親ウィルス由来の、単独の相補ウィルスゲノム分節(これは例えば、ヘマグルチニン又はノイラミニダーゼをコードする)を含む。6:2リアソータントは、6つのゲノム分節、最も一般的には6つの内部遺伝子を第1の親ウィルス由来で、そして、2つの相補分節、例えばヘマグルチニン及びノイラミニダーゼを異なる親ウィルス由来で、含む。
【0066】
NS1欠失を含むヘルパーウィルスの生産方法は、Egorov et al.(1998 J. Virol. 1998 Aug; 72(8):6437-41 ; Egorov et al., Vopr. Virusol., 39:201 -205)により説明されている。これにより、H1インフルエンザAウィルスは、温度感受性突然変異をNS遺伝子内で含有する基本ウィルスとして使用されることができ、これはさらに改変されて、インターフェロン欠失細胞においてだけ成長することができる完全に欠失されたNS遺伝子を生じる。
【0067】
本発明は、PSIQPIGLFGA(配列番号7)の配列を含有するHAポリペプチドをも包含する。
【0068】
以下の配列又はその部分を含むHAヌクレオチド配列も本発明によって包含される:

【0069】
特に、以下の配列を含むHAヌクレオチドは、本発明において含められる:

【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】図1は、線状両方向性発現コンストラクトの作製の概略図を示す図である。
【0071】
実施例:
実施例1:線状H3N2 HA発現コンストラクトの作製
Vero細胞培養由来のインフルエンザA H3N2ウィルスのHA分節を、オリゴヌクレオチドP1及びP2を使用してPCR増幅した(図1a中のF1)。引き続き、pHW2000(Hoffmann et al. 2000, Proc Natl Acad Sci U S A. 97:6108-13)由来の2つのDNAフラグメント(F2及びF3、図1中)を、オーバーラップPCRを利用してHA PCR産物に融合した(図1b参照のこと)。この第1のDANフラグメント(F2)は、CMVプロモーター及びPolIターミネーターを含み、この第2のもの(3)は、ヒトのPolIプロモーター及びBGHポリAシグナルを含む。オーバーラップPCR産物の作製を容易にするために、HA増幅のために使用されるオリゴヌクレオチドをその5′末端で、P1がPolIターミネーターに相補的な配列を含み、かつ、P2がPolIプロモーターに相補的な配列を含むように伸長した(図1a参照のこと)。同様に、フラグメントF1及びF2の作製のために使用されるプライマーP3及びP5をその5′末端で、HAの5′及び3′末端に相補的な配列を含むように伸長した(図1a参照のこと)。
【0072】
フラグメントF2及びF3は、pHW2000骨格において説明された配列由来の保護配列を含有する。これら配列はmRNA及びvRNAの転写に直接かかわらないが、しかし、エキソヌクレアーゼによる両方向性発現カセットの分解を減少させる。
【0073】
ウィルスRNAは、Vero細胞培養由来のインフルエンザA H3N2ウィルスから、Qiagen ViralAmpキットを用いて抽出され、かつ、Uni12オリゴヌクレオチドを用いて逆転写され、これは以前説明されているとおりである(Hoffmann et al.2001 , Arch Virol. 146:2275-89)。HA分節は、第1表に示されるオリゴヌクレオチドで、Pfu Turbo DNAポリメラーゼ及びTaq DNAポリメラーゼの混合物を用いて増幅された。
【0074】
第1表:
【表1】

【0075】
H3配列に相応するヌクレオチドはイタリック太字で示され、PolIターミネーター(P1)及びPolIプロモーター(P2)に相同性であるヌクレオチドは標準的な大文字で示されている。
【0076】
このHA F4 PCR産物を、Qiaquick PCR Purification kit (Qiagen)を用いて精製した。PCRフラグメントF2及びF3を、pHW2000プラスミドDNAからプライマー対P3+P4及びP5+P6(第2表及び図1a参照のこと)を用いて増幅し、それぞれ、Pfu Turbo DNAポリメラーゼ及びTaq DNAポリメラーゼの混合物を使用した。PCR産物 F2及びF3を、Qiaquick PCR Purification kit (Qiagen)を用いて精製した。
【0077】
第2表:
【表2】

【0078】
H3配列に相応するP3及びP5ヌクレオチドについてはイタリック太字で示され、pHW2000に相補的なヌクレオチドは標準の大文字で示されている。
【0079】
P4及びP6については全てのヌクレオチドは、5′末端にある4つのヌクレオチドを除き、pHW2000に相応する。
【0080】
HA、CMVプロモーター、PolIターミネーター、PolIプロモーター及びBGHポリAシグナルを含有する完全長PCR産物(F4)の作製のために、フラグメントF1、F2及びF3を組み合わせ、プライマーP4及びP6を用いたオーバーラップPCRにより、Pfu Turbo DNAポリメラーゼ及びTaq DNAポリメラーゼの混合物を使用して増幅した。
【0081】
図1は、線状両方向性発現コンストラクトの作製の概略図を示す。
【0082】
図1aは、図により、フラグメントF1、F2及びF3を開示し、これはPCR増幅により別個に作製されている。
【0083】
フラグメントF1は、それぞれウィルス分節を含み、かつ、PolIターミネーター及びPolIプロモーターに相補的な伸長部を含む。フラグメントF2は、CMVプロモーター及びPolIターミネーターまた同様にそれぞれのウィルス分節に相補的な伸長部を含む。フラグメントF3は、PolIプロモーター及びBGHポリアデニル化シグナルまた同様にそれぞれのウィルス分節に相補的な伸長部を含む。F1フラグメントのPCR増幅のために使用されるオリゴヌクレオチドP1及びP2は、それぞれのウィルス分節に相補的である。P1は、PolIターミネーターに相補的な5′末端を、P2は、PolIプロモーターに相補的な5′末端を含む。
【0084】
オリゴヌクレオチドP3及びP4は、F2フラグメントのPCR増幅のために使用され、これは、それぞれのウィルス分節に相補的な5′伸長部を含むP3を有する。オリゴヌクレオチドP5及びP6は、F3フラグメントのPCR増幅のために使用され、これは、それぞれのウィルス分節に相補的な5′伸長部を含むP5を有する。保護配列は、pHW2000骨格由来であり、mRNA又はvRNA転写に直接的に関連する配列を含まない。
【0085】
実施例2:エラスターゼ依存的ヘルパーウィルスの作製
インフルエンザA/ニューカレドニア/20/99−様(H1N1)株のHA分節は、PCR突然変異生成により変更されて、トリプシンの代わりにエラスターゼによりタンパク質加水分解的に活性化される切断部位を含むようになっている。この切断部位を取り囲むアミノ酸配列は、PSIQSR/GLFGAからPSIQPI/GLFGAへと変更されている(この切断部位は/により示されている)。実施例1と同様に、10〜20μgの線状両方向性発現コンストラクトF4をPCRにより作成し、Qiaquick kit (Qiagen)を用いて、そして引き続きQiagen Endofree Plasmid kitを介して精製した。
【0086】
Vero細胞は、10%のウシ胎児血清及び1%のGlutamax-I補給を含有するDMEM/F12培地中で37℃及び5%CO2で維持される。
【0087】
ウィルス作製のために、この改変されたF4 HA DNAフラグメントは単独で又はPB1、PB2、PA及びNPをコードする4つのタンパク質発現プラスミドと一緒に、Vero細胞のトランスフェクションのために使用された。トランスフェクション24h後に、細胞をMOI0.001〜1でインフルエンザA IVR116株で感染させ、これは、機能的NS1を発現しない(IVR−116−delNS1)。
【0088】
感染後に、ウィルス複製を支持するために、Vero細胞を血清不含培地(Opti-Pro; Invitrogen)中で、5μg/mlエラスターゼの存在下で培養した。50〜100%のCPEが観察されるとすぐに、このレスキューされたエラスターゼ依存性IVR−116−delNS1ウィルス(IVR116−delNS1 −EL)を凍結させるか又はVero細胞上でプラーク精製した。
【0089】
実施例3:エラスターゼ依存性H1N1ヘルパーウィルスを使用することによるインフルエンザA H3N2リアソータントウィルスの作製
A/ブリスベン/10/2007(H3N2)−様ウィルスのHA及びNA分節のための線状両方向性発現コンストラクト(F4)を、実施例1に説明されるとおりPCRにより作製した。実施例2に説明されるとおりの精製に引き続き、HA及びNA F4 PCR産物を単独で又はPB1、PB2、PA及びNPをコードする4つのタンパク質発現プラスミドと一緒に、Vero細胞のトランスフェクションのために使用した。トランスフェクション24h後に、細胞をMOI0.001〜1でインフルエンザA IVR−116−delNS1−ELウィルス(ヘルパーウィルス)で感染させた。感染後に、細胞を血清不含培地(Opti-Pro; Invitrogen)中で5μg/mlトリプシンの存在下でインキュベーションした。10〜100%CPEが観察されるとすぐにウィルスを回収した。選択的継代(selective passage)をウィルス回収物を24h4℃で適当な濃度(例えば10%v/v)の抗血清(コレラ菌からのノイラミニダーゼで前処理されている)又は精製したIgG調製物(これは、A/ニューカレドニア/20/99HA及びNAに対して特異的である)(ヘルパーウィルスを中和するために)を用いて処理することにより実施した。次いでVero細胞を30分間RTで前処理されたウィルスを用いてインキュベーションし、PBSで洗浄し、引き続き37℃で5μg/mlトリプシンを含有する血清不含培地中でインキュベーションした。選択的に、A/ニューカレドニア/20/99HA及びNAに特異的な精製したIgGが、この培養培地に添加されてよい。10〜100%CPEが観察されるとすぐに、ウィルスを回収し、第2の選択的継代を実施する。CPEが発達すると、ウィルスを凍結させるか又はプラーク精製する。
【0090】
実施例4:低pH処理と組み合わせた、エラスターゼ依存性H1N1ヘルパーウィルスを使用することによるインフルエンザA H3N2リアソータントウィルスの作製
A/ブリスベン/10/2007(H3N2)−様ウィルスのHA及びNA分節のための線状両方向性発現コンストラクト(F4)を、実施例1に説明されるとおりPCRにより作製した。実施例2に説明されるとおりの精製に引き続き、HA及びNA F4 PCR産物を単独で又はPB1、PB2、PA及びNPをコードする4つのタンパク質発現プラスミドと一緒に、Vero細胞のトランスフェクションのために使用した。トランスフェクション24h後に、細胞をMOI0.001〜1でインフルエンザA IVR−116−delNS1−ELウィルス(ヘルパーウィルス)で感染させた。感染後に、細胞を血清不含培地(Opti-Pro; Invitrogen)中で5μg/mlトリプシンの存在下でインキュベーションした。10〜100%CPEが観察されるとすぐにウィルスを回収した。ウィルス回出物を次いで、1:1に、150mM NaCl及び50mM MES pH5.4〜6.2を有する緩衝液で希釈し、30分間37℃で優先的にヘルパーウィルスHAを不活性化するためにインキュベーションした。pH中和後に、選択的継代を次いで、ウィルス回収物を24h4℃で適当な濃度(例えば10%v/v)の抗血清(コレラ菌からのノイラミニダーゼで前処理されている)又は精製したIgG調製物(これは、A/ニューカレドニア/20/99HA及びNAに対して特異的である)(ヘルパーウィルスを中和するために)を用いてインキュベーションすることにより実施できる。次いでVero細胞を30分間RTで前処理されたウィルスを用いてインキュベーションし、PBSで洗浄し、引き続き37℃で5μg/mlトリプシンを含有する血清不含培地中でインキュベーションした。選択的に、A/ニューカレドニア/20/99HA及びNAに特異的な精製したIgGは、この培養培地に添加されてよい。10〜100%CPEが観察されるとすぐに、ウィルスを回収し、第2の選択的継代を実施する。
【0091】
CPEが発達すると、ウィルスを凍結させるか又はプラーク精製する。
【0092】
実施例5:エラスターゼ依存性H3N2ヘルパーウィルスを使用することによるインフルエンザA H1N1リアソータントウィルスの作製
A/ニューカレドニア/20/99(H1N1)−様ウィルスのHA及びNA分節のための線状両方向性発現コンストラクト(F4)を、実施例1に説明されるとおりPCRにより作製した。実施例2に説明されるとおりの精製に引き続き、HA及びNA F4 PCR産物を単独で又はPB1、PB2、PA及びNPをコードする4つのタンパク質発現プラスミドと一緒に、Vero細胞のトランスフェクションのために使用した。トランスフェクション24h後に、細胞をMOI0.001〜1でエラスターゼ依存性インフルエンザA/ウィスコンシン67/05(H3N2)様ウィルス(ヘルパーウィルス)で感染させた。感染後に、細胞を血清不含培地(Opti-Pro; Invitrogen)中で5μg/mlトリプシンの存在下でインキュベーションする。10〜100%CPEが観察されるとすぐにウィルスを回収した。選択的継代をウィルス回収物を24h4℃で適当な濃度(例えば10%v/v)の抗血清(コレラ菌からのノイラミニダーゼで前処理されている)又は精製したIgG調製物(これは、A/ウィスコンシン/67/05HA及びNAに対して特異的である)(ヘルパーウィルスを中和するために)を用いて処理することにより実施した。次いでVero細胞を30分間RTで前処理されたウィルスを用いてインキュベーションし、PBSで洗浄し、引き続き37℃で5μg/mlトリプシンを含有する血清不含培地中でインキュベーションした。選択的に、A/ウィスコンシン/67/05HA及びNAに特異的な精製したIgGは、この培養培地中に添加されてよい。10〜100%CPEが観察されるとすぐに、ウィルスを回収し、第2の選択的継代を実施する。
【0093】
CPEが発達すると、ウィルスを凍結させるか又はプラーク精製する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイナス鎖の分節化したRNAウィルスの生産方法であって、
a)いかなる増幅及び/又は選択配列も含まない線状発現コンストラクトを提供する工程、このコンストラクトは、RNAポリメラーゼI(polI)プロモーター及びpolI終結シグナルを含み、両者はRNAポリメラーゼII(polII)プロモーター及びポリアデニル化シグナルの間に挿入されており、このコンストラクトはさらに、polIプロモーター及びpolI終結シグナルの間に挿入されたHA及び/又はNA遺伝子分節を含有する、
b)宿主細胞を前記線状発現コンストラクトでトランスフェクションする工程、
c)前記宿主細胞を、ヘルパーウィルスHA及び/又はNAタンパク質を有するヘルパーウィルスで感染させる工程、
d)前記宿主細胞を、ウィルス粒子を増殖させるために培養する工程、
e)ウィルス粒子を選択する工程、これは、
(i)前記線状発現コンストラクト由来の前記HA及び/又はNAタンパク質を含有するが、
(ii)前記ヘルパーウィルスHA及びNAタンパク質、又はこの分節を含有しない、
その際、前記選択は、前記HA及び/又はNAタンパク質のフェノタイプの、ゲノタイプの又は抗原の特性に基づく、及び場合により
(f)ヘルパーウィルスHA及びNAタンパク質の非存在が、核酸又はアミノ酸配列の分析により決定される工程
を含む生産方法。
【請求項2】
宿主細胞が、PB1、PB2、PA、NS、M及びNPからなる群から選択されるタンパク質をコードする線状コンストラクトでトランスフェクションされる請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ヘルパーウィルス由来のHAタンパク質を含有する子孫ウィルス粒子が、子孫ウィルス粒子をプロテアーゼで処理することにより候補ウィルス粒子から分離され、その際、前記プロテアーゼは、ヘルパーウィルス由来のHAタンパク質を切断しないが、前記候補ウィルス粒子のHAタンパク質を切断する請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記プロテアーゼが、トリプシン、エラスターゼ、キモトリプシン、パパインからなる群から選択される請求項1から3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
ヘルパーウィルスのHAタンパク質が、プロテアーゼにより切断されるように改変され、その際、前記プロテアーゼがトリプシンでない請求項1又は2記載の方法。
【請求項6】
ヘルパーウィルス起源のHA及びNAタンパク質を含有する子孫ウィルス粒子が、低pH条件を提供することにより候補ウィルス粒子から分離される請求項1又は3記載の方法。
【請求項7】
ヘルパーウィルス起源のHA及び/又はNAタンパク質を含有する子孫ウィルス粒子が、この子孫ウィルスと、前記HA及び/又はNAタンパク質に結合する抗体とを接触させることにより候補ウィルス粒子から分離される請求項1から6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記ヘルパーウィルス粒子が、減少した活性を有するNAタンパク質を含有するか、又は機能的NAタンパク質を欠損する請求項1から7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
ヘルパーウィルスが、インフルエンザCウィルスのHEFタンパク質を含有する請求項1から8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
ヘルパーウィルスのHEFタンパク質が、プロテアーゼにより切断されるように改変され、その際、前記プロテアーゼがトリプシンでない請求項9記載の方法。
【請求項11】
ヘルパーウィルスが、コロナウィルスのHAタンパク質を含有する請求項1から8のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記ウィルス粒子が、インフルエンザウィルス粒子である請求項1から11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記ウィルス粒子が、弱毒したインフルエンザウィルス粒子である請求項1から12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記ウィルスが、NS1遺伝子内で欠失又は改変を含む請求項1から13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記ヘルパーウィルスが、改変したか又は欠失したNS遺伝子を含有し、かつ、インターフェロンコンピテント細胞において成長不全である請求項1から14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記ヘルパーウィルスが、生産すべきウィルスに対して同一である、少なくとも4、好ましくは少なくとも5、好ましくは6の分節を含有する請求項1から15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
以下の配列PSIQPIGLFGA(配列番号7)を含有するHAポリペプチドフラグメント。
【請求項18】
配列CCATCCATTCAACCCATTGGTTTGTTTGGAGCC(配列番号9)を含有するHAヌクレオチド配列フラグメント。

【図1】
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【公表番号】特表2012−510283(P2012−510283A)
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539032(P2011−539032)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066358
【国際公開番号】WO2010/063804
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(510173030)アヴィール グリーン ヒルズ バイオテクノロジー リサーチ ディベロプメント トレード アクチエンゲゼルシャフト (3)
【氏名又は名称原語表記】AVIR Green Hills Biotechnology Research Development Trade AG
【住所又は居所原語表記】Forsthausgasse 11, A−1200 Wien, Austria
【Fターム(参考)】