説明

RRO補正情報の記録方法、RRO補正情報記録回路、および情報記憶装置

【課題】ヘッドで正しいRRO補正データを確実に読み取ることができるRRO補正情報の記録方法、RRO補正情報記録回路、および情報記憶装置を提供する。
【解決手段】記録媒体の周方向に沿って間欠的に設けられた複数のサーボフレームの各々において、記録トラック毎にRRO補正情報を記録する方法であって、複数のサーボフレームの一つにおいて、第一記録トラックに対応する第一RRO補正情報を第一トラック上に記録し、上記サーボフレームにおいて、第一記録トラックとは異なる第二記録トラックに対応する第二RRO補正情報を、周方向について第一RRO補正情報の位置とは異なる位置で第二トラック上に記録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドの位置とトラックセンターとの定常的なずれ(RRO:Repeatable Run Out)を補正するRRO補正情報の記録方法、RRO補正情報記録回路、および情報記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
情報化社会の進展に伴い、情報量は増大の一途を辿っている。この情報量の増大に対応して、大容量かつ低価格な記憶装置の開発が求められている。特に、磁場で情報アクセスが行われる磁気ディスクは、情報の書き換えが可能な高密度記憶媒体として注目されており、磁気ディスクとヘッドとを内蔵し、ヘッドで磁気ディスクに対して情報アクセスを行う磁気ディスク装置は、さらなる大容量化のために盛んに研究開発が行われている。
【0003】
磁気ディスク装置の容量を向上させる方法としては、磁気ディスクのTPI(1インチ当たりのトラック数)を増加させることなどが行われている。この場合、隣接するトラック間の距離(トラックピッチ)が狭まるため、磁気ヘッドに対しては、情報が書き込まれるトラックのみに確実に磁場を印加することが求められる。通常、磁気ディスクは、記憶領域がトラックの周方向に複数の領域(セクタ)に分割されており、磁気ディスク装置を出荷する前に、各セクタの先頭に、周波数と振幅を調整するためのプリアンブル、全セクタに共通のデータパターンを有するサーボマーク、トラックの番号を表わすグレーコード、およびトラックセンターからのずれ量を示すPESデータ(Position Error Signal)などで構成されたサーボフレームが予め記録される。磁気ヘッドでは、情報アクセスに先駆けてサーボフレームが取得され、サーボフレームに基づいて磁気ディスクの目的のトラック上に位置決めされる。
【0004】
しかし、磁気ディスクにサーボフレームを記録するサーボトラックライタの振動や、磁気ディスクをサーボトラックライタに装着するときの回転軸のずれなどによって、サーボフレームは必ずしも安定的に記録されているわけではなく、サーボフレーム中のPESデータが示すトラックセンターの軌跡は、実際のトラックセンターが有する円形からデコボコした位置ずれを生じている。この位置ずれは、磁気ディスクの1回転を周期として繰り返し同じように発生するため、RRO(Repeatable Run Out)と呼ばれている。RROが大きい場合、サーボフレームに追従して磁気ヘッドの位置合わせが行われると、磁気ヘッドが目的のトラックと隣接する別のトラックに近づいてしまい、目的のトラック以外のトラックに記録されたデータを誤って上書きしてしまう恐れがある。このような不具合を回避するためには、トラックピッチを十分に広げる必要があり、磁気ディスクの記録容量が低下してしまうという問題がある。
【0005】
この点に関し、各トラックごとのRROの軌跡を示すRRO補正データをサーボフレームの最後に記録しておき、実際に情報アクセスを行うときには、RRO補正データが示す位置ずれ分をキャンセルして磁気ヘッドを位置決めすることが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
図1は、磁気ディスクのトラックフォーマットの一例を示す図である。
【0007】
図1に示すように、磁気ディスク10上には、同心円状の複数のトラック11が設けられており、磁気ディスク10の記録領域は、複数のセクタに分割されている。
【0008】
各セクタの先頭には、磁気ヘッド20の位置を検出するための位置データ12aと、RRO補正データ12bとで構成されたサーボフレーム12が記録されており、そのサーボフレーム12の後で、アクセス対象であるユーザデータ13が記録されている。尚、位置データ12aは、磁気ヘッド20が磁気ディスク10上のどの位置にあっても読み取ることができ、その磁気ヘッド20の位置を検出できるようになっている。
【0009】
磁気ディスク10が矢印A方向に回転すると、まず、磁気ヘッド20は、位置データ12a中のトラック番号に基づいて半径方向(矢印B方向)に移動され、情報アクセスの対象となるデータが記録された目的のトラック11上に位置決めされる。
【0010】
図2は、図1に示す磁気ディスク10上の1つのトラック11を示す図であり、図3は、トラックピッチが狭められた磁気ディスク10´上の1つのトラック11´を示す図である。
【0011】
図2に示す磁気ヘッド20では、実際のトラックセンターOを中心にしてトラックピッチW1内に記録されているRRO補正データ12bやユーザデータ13に対して情報アクセスを行うことができる。また、実際のトラックセンターOに対して、位置データ12a中のPESデータが示すトラックセンターの位置P1,P2はずれており、これらの位置ずれ量W2,W3がRRO補正データ12bとして記録されている。
【0012】
磁気ヘッド20が目的のトラック11上に位置決めされると、位置データ12a中のPESデータが示すトラックセンターの位置P1,P2からRRO補正データ13が示す位置ずれ分W2,W3がキャンセルされて、磁気ヘッド20の位置が半径方向(矢印B方向)に微調整される。磁気ディスク10が矢印A方向に回転し、位置データ12aおよびRRO補正データ12bに基づいて磁気ヘッド20の位置合わせが行われることによって、見かけ上は、磁気ヘッド20が矢印A´方向にトラックセンターO上を移動する。
【0013】
このRRO補正データ12bを使った位置ずれの補正は、磁気ヘッド20がトラックセンターOを中心に補正範囲W5内にある場合のみ可能であり、磁気ヘッド20が補正範囲W5の所定倍に設定されたオントラック幅W4内にある場合には、磁気ヘッド20がトラック11上に位置決めされていると判断される。これら補正範囲W5およびオントラック幅W4は、位置データ12を記録するサーボトラックライタの振動程度などによって決定されるものであり、磁気ヘッド20がオントラック幅W4内にあるときには、RRO補正データ12bを確実に読み取る必要がある。
【0014】
ここで、上述したように、近年では、磁気ディスク装置の容量を向上させるために、磁気ディスクのTPIが増加を増加させることが広く行われている。磁気ディスクのTPIが増加すると、図3に示すように、トラックピッチW1´は狭められることとなる。しかし、サーボトラックライタの振動や磁気ディスクの回転軸ずれなどを完全に防止することは困難であり、上述した補正範囲W5およびオントラック幅W4は、従来からあまり減少していないのが現状である。
【特許文献1】特開平9−330571号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
以上のように、トラックピッチW1´が狭められると、トラックピッチW1´に対するRRO補正データ12bの補正範囲W5が相対的に大きくなり、オントラック幅W4がトラックピッチW1´を超えてしまうこととなる。このため、目的のトラック11´と隣接する別のトラックが、目的のトラック11´におけるオントラック幅W4内に入ってしまい、磁気ヘッド20´が隣接するトラック上に移動してしまっても、磁気ヘッド20´が目的のトラック11´上にあるものと判断されてしまう。その結果、磁気ヘッド20´において誤ったRRO補正データ12bが読み出され、その誤ったRRO補正データ12bに従って位置合わせが行われることとなり、隣接するトラックに記録されたデータを上書きしてしまったり、アクセス性能が大きく劣化してしまうという問題がある。
【0016】
上記事情に鑑み、ヘッドで正しいRRO補正データを確実に読み取ることができるRRO補正情報の記録方法、RRO補正情報記録回路、および情報記憶装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するRRO補正情報の記録方法の基本形態は、
記録媒体の周方向に沿って間欠的に設けられた複数のサーボフレームの各々において、記録トラック毎にRRO補正情報を記録する方法であって、
複数のサーボフレームの一つにおいて、第一記録トラックに対応する第一RRO補正情報を第一トラック上に記録し、
上記サーボフレームにおいて、第一記録トラックとは異なる第二記録トラックに対応する第二RRO補正情報を、周方向について第一RRO補正情報の位置とは異なる位置で第二トラック上に記録することを特徴とする。
【0018】
このRRO補正情報の記録方法の基本形態によると、第一記録トラックに対応する第一RRO補正情報と、第二記録トラックに対応する第二RRO補正情報とが、周方向に相互に異なる位置に記録されるため、それらが読み取られるタイミングが相互に異なることとなる。このため、トラックピッチが狭まっても、目的のトラックに応じたタイミングでRRO補正情報を読み取ることによって、隣接するトラックに対応するRRO補正情報を読み取ってしまう不具合を防止することができ、ヘッドの位置を確実にトラックセンターに合わせることができる。
【0019】
また、上記目的を達成するRRO補正情報記録回路の基本形態は、
記録媒体の周方向に沿って間欠的に設けられた複数のサーボフレームの各々において、記録トラック毎にRRO補正情報を記録するRRO補正情報記録回路であって、
複数のサーボフレームの一つにおいて、第一トラックに対応する第一RRO補正情報を第一トラック上に記録することを指示し、第一記録トラックとは異なる第二記録トラックに対応する第二RRO補正情報を、周方向について第一RRO補正情報の位置とは異なる位置で第二トラック上に記録することを指示する記録指示部と、
記録指示部の指示に応答してRRO補正情報を記録する記録部と、
を有することを特徴とする。
【0020】
このRRO補正情報記録回路の基本形態によると、第一トラックに対応する第一RRO補正情報と、第二記録トラックに対応する第二RRO補正情報とが、相互に異なるタイミングで読み取られるように記録されるため、ヘッドにおいて誤ったトラックのRRO補正情報を読み取ってしまう不具合を防止することができる。
【0021】
また、上記目的を達成する情報記憶装置の基本形態は、
周方向に沿って間欠的に複数のサーボフレームが設けられた記録媒体と、
複数のサーボフレームの一つについて、第一トラックに対応する第一RRO補正情報を第一トラック上に記録することを指示し、第一記録トラックとは異なる第二記録トラックに対応する第二RRO補正情報を、周方向について第一RRO補正情報の位置とは異なる位置で第二トラック上に記録することを指示する記録指示部、及び記録指示部の指示に応答してRRO補正情報を記録する記録部を備えてなるRRO補正情報記録回路と、
を有することを特徴とする。
【0022】
この情報記憶装置の基本形態によると、相互に異なるトラックに対応する複数のRRO補正情報が、記録媒体の、周方向に相互に異なる位置に記録されるため、それらのRRO補正情報を相互に異なるタイミングで読み取らせることができる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、RRO補正情報の記録方法、RRO補正情報記録回路、および情報記憶装置の基本形態によると、ヘッドで正しいRRO補正データを確実に読み取ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照して、上記説明した基本形態に対する具体的な実施形態を説明する。
【0025】
図4は、磁気ディスク100に記録されるデータを示す図である。
【0026】
図4に示すように、磁気ディスク100には、同心円状の複数のトラック110が設けられており、磁気ディスク100の記録領域は、トラック110の周方向に複数のセクタ120に分割されている。各セクタ120の先頭には、ヘッドの位置合わせなどに利用されるサーボフレーム130が記録されており、サーボフレーム130の後に、アクセス対象であるユーザデータ140が記録されている。磁気ディスク100は、上述したRRO補正情報の記録方法、RRO補正情報記録回路、および情報記憶装置における記録媒体の一例にあたり、サーボフレーム130は、上述したRRO補正情報の記録方法、RRO補正情報記録回路、および情報記憶装置におけるサーボフレームの一例に相当する。
【0027】
図5は、サーボフレーム130を構成する各種データを示す図である。
【0028】
図5に示すように、サーボフレーム130は、周波数と振幅を調整するためのプリアンブル131、全セクタ120に共通のデータパターンを有するサーボマーク132、トラック110の番号を表わすグレーコード133、トラック110の中心からの位置ずれ量を検出するためのPESデータ134、およびサーボフレーム130が有する定常的な位置ずれを補正するためのRRO補正データ135などで構成されている。プリアンブル131、サーボマーク132、グレーコード133、およびPESデータ134を合わせた位置データ136は、ヘッドが磁気ディスク100上のどの位置にあっても読み出すことができる。
【0029】
図6は、磁気ディスク100におけるトラックフォーマットを示す概念図である。
【0030】
磁気ディスク100は、矢印A方向に回転駆動されるものであり、ヘッド200は、トラック110に沿って磁気ディスク100を矢印A´方向に走査する。磁気ディスク100には、複数のトラック110に跨ってサーボフレーム130が記録されており、サーボフレーム130の後方には、各トラック110ごとにユーザデータ140が記録されている。
【0031】
サーボフレーム130中の位置データ136は、全てのトラック110に共通で記録されている。また、RRO補正データ135は、対応するトラック110の両隣のトラックにまで跨って記録されているとともに、トラック110の周方向に分割された前側領域Q1および後側領域Q2に交互に記録されている。すなわち、n番目のトラック110_nに対応するRRO補正データ135_nは、前側領域Q1に、隣接する(n−1)番目および(n+1)番目のトラック110_(n−1),110_(n+1)にまで跨って記録されており、n番目のトラック110_nの1つ前の(n−1)番目のトラック110_(n−1)に対応するRRO補正データ135_(n−1)は、後側領域Q2に、隣接するn番目および(n−2)番目のトラック110_n,110_(n−2)にまで跨って記録されており、n番目のトラック110_nの1つ後ろの(n+1)番目のトラック110_(n+1)に対応するRRO補正データ135_(n+1)は、後側領域Q2に、隣接するn番目および(n+2)番目のトラック110_n,110_(n+2)にまで跨って記録されている。
【0032】
図7は、磁気ディスク100にサーボフレーム130を記録するサーボトラックライタ300の概略構成図である。
【0033】
サーボトラックライタ300には、磁気ディスク100を回転させるスピンドルモータ330、磁気ディスク100に対して情報アクセスを実行する磁気ヘッド310、磁気ヘッド310を磁気ディスク100上の面に沿って移動させるボイスコイルモータ320、磁気ディスク100に書き込むサーボフレーム130を表わす書込電流を発生するライトチャネル350、スピンドルモータ330およびボイスコイルモータ320を駆動するモータドライバ340、位置データ136を生成するサーボパターン生成部380、磁気ディスク100の偏心などを検出するRRO検出装置と接続され、RRO検出装置からRRO補正データ135を取得するRROデータ取得部360、RRO補正データ135の書き込み位置を指示する記録指示部370、およびサーボトラックライタ300全体を制御する制御部390が備えられている。記録指示部370は、上述したRRO補正情報記録回路および情報記憶装置における記録指示部の一例にあたり、ライトチャネル350は、上述したRRO補正情報記録回路および情報記憶装置における記録部の一例に相当する。
【0034】
磁気ディスク100にサーボフレーム130を記録する際には、まず、このサーボトラックライタ300に磁気ディスク100装着される。
【0035】
続いて、制御部390からの指示に従って、モータドライバ340がスピンドルモータ330を駆動して磁気ディスク100を矢印A方向に回転させるとともに、ボイスコイルモータ320を駆動して磁気ヘッド310を磁気ディスク100上の所定トラック110に位置決めさせる。
【0036】
磁気ヘッド310が位置決めされると、サーボパターン生成部380においてサーボフレーム130中の位置データ136が生成される。生成された位置データ136は、ライトチャネル350に伝えられる。
【0037】
ライトチャネル350では、位置データ136が表わす位置情報を担持した書込電流が生成され、書込電流が磁気ヘッド310に印加される。
【0038】
磁気ヘッド310では、書込信号に応じた向きの磁界が発生し、磁界に応じた磁束が磁気ディスク100に向けて発せられる。その結果、磁気ディスク100に、情報に応じた向きの磁化が形成されて、磁気ディスク100に位置データ136が記録される。
【0039】
制御部390からの指示に従って磁気ヘッド310が目的のトラック110上に位置決めされ、位置データ136が目的のトラック110上の各セクタに記録される一連の処理が、磁気ディスク100上の全てのトラック110に対して実行される。
【0040】
以上のようにして磁気ディスク100上に位置データ136が記録されると、続いて、RRO補正データ135の記録が開始される。
【0041】
RRO補正データ135の記録にあたっては、まず、制御部390からの指示に従って、磁気ヘッド310が磁気ディスク100上の所定トラック110に位置決めされる。
【0042】
図8は、磁気ディスク100上のn番目のトラック110_nを示す図である。
【0043】
サーボトラックライタ300の振動や、磁気ディスク100をサーボトラックライタ300に装着するときの回転軸のずれなどによって、位置データ136は必ずしも安定的に記録されていない。このため、位置データ136中のPESデータ134が示すトラックセンターの位置P1,P2は、実際のトラック110_nの中心位置からずれている。RRO検出装置では、位置データ136中のPESデータ134が示すトラックセンターの位置P1,P2とトラックセンターOとの位置ずれ量W2,W3が検出される。
【0044】
RROデータ取得部360では、RRO検出装置で検出された位置ずれ量W2,W3がRRO補正データ135として取得される。取得されたRRO補正データ135は、記録指示部370に伝えられる。
【0045】
記録指示部370では、ライトチャネル350に対し、n番目のトラック110_nに対応するRRO補正データ135_nを、位置データ136の後方に用意された2つの領域Q1,Q2のうちの前側領域Q1に記録する指示が伝えられる。
【0046】
この図8では、PESデータ134が示すトラックセンター位置のずれが補正範囲W5内である場合には、RRO補正データ135_nを使って磁気ヘッド200の位置を補正することができる。また、磁気ヘッド200がトラック110_n上にあると判断されるオントラック幅W4は、トラック110_nのトラックピッチW1よりも短くなっている。ライトチャネル350では、n番目のトラック110_nに対応するRRO補正データ135_nが、相対的に早いタイミングで、オントラック幅W4よりも広い幅W6で記録される。その結果、n番目のトラック110_nに対応するRRO補正データ135_nは、2つの領域Q1,Q2のうちの前側領域Q1に、隣接するトラック110_(n+1),110_(n−1)にまで跨って記録される。n番目のトラック110_nは、上述したRRO補正情報の記録方法、RRO補正情報記録回路、および情報記憶装置における第一記録トラックの一例にあたり、RRO補正データ135_nは、上述したRRO補正情報の記録方法、RRO補正情報記録回路、および情報記憶装置における第一RRO補正情報の一例に相当する。
【0047】
続いて、制御部390からの指示に従って、磁気ヘッド200が(n+1)番目のトラック110_(n+1)上に移動される。
【0048】
図9は、磁気ディスク100上の(n+1)番目のトラック110_(n+1)を示す図である。
【0049】
(n+1)番目のトラック110_(n+1)においても、RROデータ取得部360では、位置データ136中のPESデータ134が示すトラックセンターの位置P1´,P2´と実際のトラック110_nの中心位置との位置ずれ量W2´,W3´がRRO補正データ135_(n+1)として取得される。
【0050】
記録指示部370では、ライトチャネル350に対し、(n+1)番目のトラック110_(n+1)に対応するRRO補正データ135_(n+1)を後側領域Q2に記録する指示が伝えられる。
【0051】
ライトチャネル350では、(n+1)番目のトラック110_(n+1)に対応するRRO補正データ135_(n+1)が、相対的に遅いタイミングで、オントラック幅W4よりも広い幅W6で記録される。その結果、(n+1)番目のトラック110_(n+1)に対応するRRO補正データ135_(n+1)は、2つの領域Q1,Q2のうちの後側領域Q2に、隣接するトラック110_n,110_(n+1)にまで跨って記録される。(n+1)番目のトラック110_(n+1)は、上述したRRO補正情報の記録方法、RRO補正情報記録回路、および情報記憶装置における第二記録トラックの一例にあたり、RRO補正データ135_(n+1)は、上述したRRO補正情報の記録方法、RRO補正情報記録回路、および情報記憶装置における第二RRO補正情報の一例に相当する。
【0052】
以上のようにして、RRO補正データ135は、対応するトラック110と隣接するトラックにまで跨って、磁気ディスク100上の2つの領域Q1,Q2に交互に記録される。全てのサーボフレーム130が記録されると、磁気ディスク100はサーボトラックライタ300から取り外されて、磁気ヘッド200が備えられた磁気ディスク100に装着される。
【0053】
続いて、磁気ディスク100に記録されたデータに対してアクセスするときの一連の処理について説明する。
【0054】
図10は、ハードディスク装置400の概略構成図である。
【0055】
このハードディスク装置400は、磁気ディスク100に対してアクセスを行うものであり、パーソナルコンピュータなどに代表されるホスト装置500に接続され、あるいは内部に組み込まれて利用される。
【0056】
ハードディスク装置400には、サーボフレーム130が記録された磁気ディスク100、磁気ディスク100を回転させるスピンドルモータ210、磁気ディスク100に対して情報アクセスを実行する磁気ヘッド200、磁気ヘッド200を磁気ディスク100上の面に沿って移動させるボイスコイルモータ220、磁気ヘッド200で読み取られた再生信号を増幅するプリアンプ230、磁気ディスク100に書き込む記録データを表わす書込電流を発生するライトチャネル240、再生信号をデジタルデータに復調するリードチャネル250、スピンドルモータ210およびボイスコイルモータ220を駆動するモータドライバ260、ホスト装置500との間でデータの送受信を行うハードディスクコントローラ270、およびハードディスクコントローラ270で使用されるバッファメモリ280が備えられている。
【0057】
磁気ディスク100に対して情報アクセスが実行されるときには、まず、モータドライバ230が、スピンドルモータ210を駆動して磁気ディスク100を回転させるとともに、ボイスコイルモータ220を駆動して磁気ヘッド200を磁気ディスク100上に移動させる。
【0058】
磁気ヘッド200では、ユーザデータ140に先立ってサーボフレーム130中の位置データ136が取得され、位置データ136中のグレイコード133が表わすトラック番号がアクセス対象である目的のトラック110のトラック番号と一致するまで、磁気ヘッド200が半径方向(図8の矢印B方向)に移動される。
【0059】
磁気ヘッド200が目的のトラック110上に移動されると、ハードディスクコントローラ270からリードチャネル250に向けてRRO補正データ135を読み取るタイミングが指示される。目的のトラック110のトラック番号Nが偶数の場合、相対的に早いタイミングでRRO補正データ135を読み取る指示が伝えられ、目的のトラック110のトラック番号Nが奇数の場合、相対的に遅いタイミングでRRO補正データ135を読み取る指示が伝えられる。リードチャネル250では、指示されたタイミングでRRO補正データ135が読み取られる。すなわち、目的のトラック110が図8に示すn番目のトラック110_nである場合、RRO補正データ135_nが前側領域Q1に記録されているため、相対的に早いタイミングでRRO補正データ135_nが読み取られ、目的のトラック110が図9に示す(n+1)番目のトラック110_(n+1)である場合、RRO補正データ135_(n+1)が後側領域Q2に記録されているため、相対的に遅いタイミングでRRO補正データ135_(n+1)が読み取られる。
【0060】
このように、本実施形態では、隣接するトラック110_n,110_(n+1)それぞれに対応するRRO補正データ135_n,135_(n+1)が周方向に相互に異なる領域Q1,Q2に記録されているため、それらRRO補正データ135_n,135_(n+1)を読み取るタイミングを調整することによって、誤ったRRO補正データ135を取得してしまう不具合を防止することができる。また、RRO補正データ135_n,135_(n+1)が記憶されている幅W6は、トラックピッチW1よりも広く、さらには、オントラック幅W4よりも広いため、RRO補正データ135_n,135_(n+1)を確実に読み取ることができる。
【0061】
RRO補正データ135が読み取られると、そのRRO補正データ135と、位置データ136中のPESデータ134とを使って、磁気ヘッド200の細かい位置合わせが実行される。
【0062】
図11は、PESデータ134とRRO補正データ135のイメージを示す概念図である。
【0063】
図11(A)に示すように、位置データ136中のPESデータ134が表わすトラックセンターの軌跡は、実際のトラックセンターOと比べてデコボコとした位置ずれを生じている。
【0064】
ハードディスクコントローラ270では、図11(A)に示すPESデータ134に、図11(B)に示すRRO補正データ135が加算され、図11(C)に示す補正後のPESデータ137が生成される。生成された補正後のPESデータ137は、図11(A)に示す補正前のPESデータ134と比べて、トラックセンターOに近づいている。
【0065】
磁気ヘッド200では、補正後のPESデータ137に追従して半径方向(図8の矢印B方向)に移動される。その結果、磁気ヘッド200は、見かけ上、トラックセンターO上を矢印A´方向に移動する。
【0066】
以上のようにして磁気ヘッド200の位置が目的のトラック110のトラックセンターO上に合わせられると、実際の情報アクセスが実行される。
【0067】
このように、本実施形態によると、ヘッドで正しいRRO補正データを確実に読み取ることができ、ヘッドの位置を高精度に目的のトラック上に合わせることができる。
【0068】
以上で、上記説明した基本形態に対する具体的な第1実施形態の説明を終了し、上記説明した基本形態に対する具体的な第2実施形態について説明する。この第2実施形態については、第1実施形態と同じ要素については同じ符号を付して説明を省略し、第1実施形態との相違点についてのみ説明する。
【0069】
図12は、第2実施形態の磁気ディスク100におけるトラックフォーマットを示す概念図である。
【0070】
図12に示す第2実施形態の磁気ディスク100´は、図6に示す第1実施形態の磁気ディスク100とは異なり、複数のトラック110それぞれに対応する複数のRRO補正データ135が、磁気ヘッド200の走査方向A´に沿って(n−2)番目のRRO補正データ135_(n−2),(n−1)番目のRRO補正データ135_(n−1),…,(n+2)番目のRRO補正データ135_(n+2)の順に並べられ、各RRO補正データ135が全てのトラック110を横切るように記録されている。
【0071】
磁気ディスク100´に対して情報アクセスを実行するときには、まず、磁気ヘッド200が目的のトラック110上に移動され、図10に示すハードディスクコントローラ270からリードチャネル250に向けてRRO補正データ135を読み取るタイミングが指示される。本実施形態においては、目的のトラック110のトラック番号Nが小さいほど相対的に早いタイミングでRRO補正データ135を読み取る指示が伝えられる。リードチャネル250では、目的のトラック110がトラック番号が小さい(n−2)番目のトラック110_(n−2)である場合、早いタイミングが指示されることによってRRO補正データ135_(n−2)が読み取られ、目的のトラック110が(n−1)番目のトラック110_(n−1)である場合、(n−2)番目のトラック110_(n−2)よりは遅いタイミングが指示されることによってRRO補正データ135_(n−1)が読み取られ、目的のトラック110がn番目のトラック110_nである場合、(n−1)番目のトラック110_(n−1)よりも遅いタイミングが指示されることによってRRO補正データ135_nが読み取られ、目的のトラック110が(n+1)番目のトラック110_(n+1)である場合、n番目のトラック110_nよりも遅いタイミングが指示されることによってRRO補正データ135_(n+1)が読み取られ、目的のトラック110が(n+2)番目のトラック110_(n+2)である場合、(n+1)番目のトラック110_(n+1)よりも遅いタイミングが指示されることによってRRO補正データ135_(n+2)が読み取られる。
【0072】
このように、本実施形態によると、複数のトラックそれぞれに対応する複数のRRO補正データが相互に異なる周方向に全てのトラックを横切るように記録されることによって、RRO補正データが記録されている幅が広くなり、RRO補正データを確実に読み取ることができる。また、本実施形態によると、RRO補正データを読み取るタイミングの制御が容易となり、誤ったRRO補正データを取得してしまう不具合を確実に防止することができる。
【0073】
ここで、上記では、記録媒体として磁場を使って情報を記録する磁気ディスクを適用する例について説明したが、上述した情報アクセス装置における記録媒体は、光を使って情報を記録するMOなどであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】磁気ディスクのトラックフォーマットの一例を示す図である。
【図2】図1に示す磁気ディスク上の1つのトラックを示す図であり、
【図3】トラックピッチが狭められた磁気ディスク上の1つのトラックを示す図である。
【図4】磁気ディスクに記録されるデータを示す図である。
【図5】サーボフレームを構成する各種データを示す図である。
【図6】磁気ディスクにおけるトラックフォーマットを示す概念図である。
【図7】磁気ディスクにサーボフレームを記録するサーボトラックライタの概略構成図である。
【図8】磁気ディスク上のn番目のトラックを示す図である。
【図9】磁気ディスク上の(n+1)番目のトラックを示す図である。
【図10】ハードディスク装置の概略構成図である。
【図11】PESデータとRRO補正データのイメージを示す概念図である。
【図12】第2実施形態の磁気ディスクにおけるトラックフォーマットを示す概念図である。
【符号の説明】
【0075】
100 磁気ディスク
110 トラック
120 セクタ
130 サーボフレーム
131 プリアンブル
132 サーボマーク
133 グレーコード
134 PESデータ
135 RRO補正データ
136 位置データ
140 ユーザデータ
200 磁気ヘッド
210 スピンドルモータ
220 ボイスコイルモータ
230 プリアンプ
240 ライトチャネル
250 リードチャネル
260 モータドライバ
270 ハードディスクコントローラ
280 バッファメモリ
300 サーボトラックライタ
310 磁気ヘッド
320 ボイスコイルモータ
330 スピンドルモータ
340 モータドライバ
350 ライトチャネル
360 RROデータ取得部
370 記録指示部
380 サーボパターン生成部
390 制御部
400 ハードディスク装置
500 ホスト装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体の周方向に沿って間欠的に設けられた複数のサーボフレームの各々において、記録トラック毎にRRO補正情報を記録する方法であって、
前記複数のサーボフレームの一つにおいて、第一記録トラックに対応する第一RRO補正情報を該第一トラック上に記録し、
前記サーボフレームにおいて、前記第一記録トラックとは異なる第二記録トラックに対応する第二RRO補正情報を、周方向について前記第一RRO補正情報の位置とは異なる位置で前記第二トラック上に記録することを特徴とするRRO補正情報の記録方法。
【請求項2】
前記第一のトラックと前記第二のトラックは互いに隣接することを特徴とする請求項1に記載のRRO補正情報の記録方法。
【請求項3】
複数本のトラックに対し、RRO補正情報を交互に同一周方向位置に記録することを特徴とする請求項2に記載のRRO補正情報の記録方法。
【請求項4】
或るトラックに対応するRRO補正情報を当該トラックに隣接する2つのトラックに跨がって記録することを特徴とする請求項2に記載のRRO補正情報の記録方法。
【請求項5】
複数のトラックそれぞれに対応する複数のRRO補正データが相互に異なる周方向に全てのトラックを横切るように記録することを特徴とする請求項1に記載のRRO補正情報の記録方法。
【請求項6】
記録媒体の周方向に沿って間欠的に設けられた複数のサーボフレームの各々において、記録トラック毎にRRO補正情報を記録するRRO補正情報記録回路であって、
前記複数のサーボフレームの一つにおいて、第一トラックに対応する第一RRO補正情報を該第一トラック上に記録することを指示し、前記第一記録トラックとは異なる第二記録トラックに対応する第二RRO補正情報を、周方向について前記第一RRO補正情報の位置とは異なる位置で該第二トラック上に記録することを指示する記録指示部と、
前記記録指示部の指示に応答してRRO補正情報を記録する記録部と、
を有することを特徴とするRRO補正情報記録回路。
【請求項7】
周方向に沿って間欠的に複数のサーボフレームが設けられた記録媒体と、
前記複数のサーボフレームの一つについて、第一トラックに対応する第一RRO補正情報を該第一トラック上に記録することを指示し、前記第一記録トラックとは異なる第二記録トラックに対応する第二RRO補正情報を、周方向について前記第一RRO補正情報の位置とは異なる位置で該第二トラック上に記録することを指示する記録指示部、及び前記記録指示部の指示に応答してRRO補正情報を記録する記録部を備えてなるRRO補正情報記録回路と、
を有することを特徴とする情報記憶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−245549(P2009−245549A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−92645(P2008−92645)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】