説明

RSV、PIVおよび他の呼吸器系ウイルスのRNAi調節とその使用法

本発明は、RSVおよびPIVがRNAi薬の鼻腔内投与ならびに非経口投与により抑制されうることを示したin vivoでの証明に基づいている。さらに、2以上のウイルスが同時に治療される場合も、ウイルスの効果的減少が達成されうることが示されている。これらの所見に基づき、本発明は、ヒトなどの哺乳動物などの被検体において、RSVまたはPIVのmRNAレベル、RSVまたはPIVのタンパク質レベルおよびウイルス価を減少させるうえで有用な、一般的ならびに特定の組成物および方法を提供する。これらの所見は他の呼吸器系ウイルスにも適用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸器系ウイルス治療法と、ウイルスの複製を調節するための組成物および方法の分野に関するものであり、特に、オリゴヌクレオチドを吸入により肺および鼻腔内に局所的に投与/鼻腔内投与することにより、または注射により全身的/静脈内に投与することにより、RNA干渉を介して呼吸器系ウイルスの遺伝子をダウンレギュレーションすることに関する。
【背景技術】
【0002】
気道は、その本来の機能ゆえに、さまざまな呼吸器疾患を引き起こす空気中の大量の病原体に曝されている。先進国では、乳児の入院原因として最も多いのが気道のウイルス感染であり、米国では年間の入院件数が91,000件、そのコストは3億ドルと推定されている。ヒト呼吸器合胞体ウイルス(RSV)およびパラインフルエンザウイルス(PIV)は呼吸器疾患の2つの主要な原因物質であり、両ウイルスが共に上気道および下気道に感染すると、クループ、肺炎および細気管支炎を引き起こす(非特許文献1および2)。RSV単独では、出生後1年以内の乳児の最大65%が感染し、2年以内では基本的に全員が感染する。高齢者においても罹患および死亡の重大な原因となっている。RSV感染後の免疫は、不完全で永続性がなく、このため、あらゆる年齢群で反復感染が生じる。RSV細気管支炎を経験した乳児は、後年、喘鳴および喘息を発現する可能性が高い。RSVに対する有効な治療およびワクチンを求めた研究が40年近く続けられているが、成果は少ない(非特許文献1および3)。現在のところ、RSVおよびPIVのいずれにも臨床的に認可されたワクチンは存在しない。両ウイルスの株は、ウシ、ヤギ、ブタおよびヒツジなどヒト以外の動物に関しても存在し、農業および酪農食肉産業に損害を引き起こしている(非特許文献2)。
【0003】
RSVおよびPIVはいずれも非分節性マイナス鎖RNAゲノムを有し、パラミクソウイルス科に属する。これらのウイルスの多数の特徴が、予防および治療の難しさに寄与している。当該ウイルスのゲノムは、RNAゲノムの複製校正機構がないために高率で変異し、信頼性の高いワクチンまたは抗ウイルス薬を設計するうえで重要な課題を提示している(非特許文献4)。有望なRSV融合タンパク質(F)阻害薬は、一つには該ウイルスがF遺伝子に位置づけられた耐性変異を発現したことが原因で、途中で断念された(非特許文献5および6)。両ウイルスは細胞タンパク質と結び付くため、ワクチン接種のための無細胞ウイルス材料を得ることも困難である(非特許文献7〜9)。また、両ウイルス、特にRSVの免疫学はきわめて複雑である(非特許文献10および11)。変性したRSVタンパク質をワクチンとして使用すると、「免疫強化」またはワクチンによる疾患の増強を招くが(非特許文献12)、この現象はPIVについては検討されておらず、起こる可能性も除外されていない。最近になって多数の抗RSVバイオ医薬プログラムが閉鎖されたことにより、全体的な問題が強調されている。
【0004】
RSVゲノムは、15,222ヌクレオチド長の一本鎖マイナスセンスRNAからなり、主に11のタンパク質を産生する(非特許文献13)。これらのタンパク質のうちの2つはF(融合)およびG(接着)糖タンパク質であり、これらは主要な表面タンパク質であり、防御免疫を誘導するために最も重要である。SH(小型疎水性)タンパク質、M(マトリックス)タンパク質およびM2(22kDa)タンパク質は、ウイルスのエンベロープに関連しているが、防御免疫反応を誘導しない。Nタンパク質(主要なヌクレオキャプシド会合タンパク質)、Pタンパク質(リンタンパク質)およびLタンパク質(主要なポリメラーゼタンパク質)は、ビリオンRNAと関連していることが見出されている。2つの非構造タンパク質であるNS1およびNS2は、おそらく宿主とウイルスとの相互作
用に関与していると思われるが、感染性ビリオンには存在しない。
【0005】
ヒトRSV株は、主要な2つの群であるAおよびBに分類されている。G糖タンパク質はRSVタンパク質のうち最も分岐していることが示されている。2つのRSV群間および群内にみられるRSVのG糖タンパク質の多様性が、疾患を毎年大発生させるRSVの能力に重要であると考えられている。G糖タンパク質は289〜299アミノ酸からなり(RSV株によって異なる)、細胞内の膜貫通型の高度にグリコシル化された90kDaのストーク構造と、ヘパリン結合ドメインを有する。この糖タンパク質は分泌型および膜結合型で存在する。
【0006】
RSV感染の治療に有効な方法は、現在のところ利用可能となっていない(非特許文献3)。RSVによる下気道の感染は、ほとんどの場合、自己限定性の疾患である。当該疾患を有する乳児および小児の治療方法または入院もしくは退院時期に関して、決定的なガイドラインや基準が存在しない。RSV感染に関連して発生することがある低酸素症は、鼻カニューレを介して酸素で治療することができる。呼吸不全、ショックまたは再発性無呼吸の小児に対する機械的人工呼吸は、死亡率を低下させうる。ステロイド薬を処方する医師もいる。しかし、いくつかの研究から、ステロイド療法は細気管支炎で入院した乳児および小児の臨床経過に影響を及ぼさないことが示されている。このため、当該疾患以外は健康で人工呼吸を施されていない患者では、副腎皮質ステロイド薬の単独投与、または気管支拡張薬との併用投与は細気管支炎の管理に有用ではないと考えられる。気管支肺異形成および喘息などの心肺疾患が内在する乳児および小児には、ステロイド薬も使用されている。
【0007】
1980年代中期から、抗ウイルス活性を有するグアノシン類似体であるリバビリンが、RSV細気管支炎の乳児および小児の治療に使用されてきたが、その使用を評価した多くの試験は相反する結果を示している。現在ではほとんどの施設で、リバビリンの使用は免疫無防備状態の患者および重症患者に制限されている。
【0008】
RSV細気管支炎の重症度は、低い血清レチノール濃度と関連しているが、RSV細気管支炎で入院した小児を対象とした臨床試験から、ビタミンAの補給は有益な効果をまったく提供しないことが示された。RSV下気道感染に対するRSV免疫グロブリン1500mg/kgの静脈投与および免疫グロブリン100mg/kgの吸入による治験も、実質的に有益な効果を示すことができなかった。
【0009】
先進国では、RSV下気道感染の治療は一般に対症療法に限定されている。抗ウイルス療法は、コストが高く、有効性に関してコンセンサスが得られていないことから、通常、生命にかかわる状況に使用が制限されている。発展途上国では酸素が主要な治療法であり(利用可能な場合)、死亡率を低下させる唯一の方法は予防することである。
【0010】
RNA干渉すなわち「RNAi」は、二本鎖RNA(dsRNA)が線虫に導入されると遺伝子発現を妨げうるという観察所見を説明するために、ファイア(Fire)らが最初に作り出した用語である(非特許文献14)。短いdsRNAは、脊椎動物を含めた多くの生物において遺伝子特異的な転写後サイレンシングを導くことから、遺伝子機能を研究するための新たなツールを提供してきた。RNAiは、新たな種類の治療薬を開発する方法として提案されてきた。しかし、現在までのところ、たいていは提案にすぎず、RNAiを治療的に使用できることを示した証拠は存在しない。
【非特許文献1】Openshaw, P.J.M.. Respir. Res. 3 (Suppl 1), S15-S20 (2002)
【非特許文献2】Easton, AJ., et al., Clin. Microbiol. Rev. 17, 390-412 (2004)
【非特許文献3】Maggon, K. et al, Rev. Med. Virol. 14, 149-168 (2004)
【非特許文献4】Sullender, W.M. Clin. Microbiol. Rev. 13, 1-15(2000)
【非特許文献5】Razinkov, V, et. al., Antivir. Res. 55, 189-200 (2002)
【非特許文献6】Morton, CJ. et al. Virology 311, 275-288 (2003)
【非特許文献7】Burke, E., et al., Virology 252, 137-148 (1998)
【非特許文献8】Burke, E., et al., J. Virol. 74, 669-675 (2000)
【非特許文献9】Gupta, S., et al., J. Virol. 72, 2655-2662 (1998)
【非特許文献10】Peebles, R.S., Jr., et al.,Viral. Immunol. 16, 25-34 (2003)
【非特許文献11】Haynes, L.M., et al., J. ytrol 11, 9831-9844 (2003)
【非特許文献12】Polack, F.P. et al. J. Exp. Med. 196, 859-865 (2002)
【非特許文献13】Falsey, A. R., and E. E. Walsh, 2000, Clinical Microbiological Reviews 13:371-84
【非特許文献14】Fire et al, Nature 391:806-811, 1998
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、RSVに対する安全かつ有効なワクチンが、特に乳児および小児のために必要である。また、あらゆる年齢層および免疫無防備状態の個体のRSV感染を治療する治療薬および治療方法も必要である。RSVに対する防御免疫反応を特徴付けるための科学的方法も必要であり、該方法により、該疾患の発生機序を研究でき、治療薬およびワクチンのためのスクリーニングを促進することができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、RSVおよびPIV感染の調節または予防に有効な方法および組成物を提供することにより、当該技術分野のこれまでの欠点を克服し、他の呼吸器系ウイルスにも拡大適用される。特に、本発明は、in vivoでRSVおよびPIVレベルを低下させることが示された、すなわち当該分子種の治療活性が示されたiRNA薬を提供することにより、当技術分野を進歩させる。さらに、2つ以上のウイルスを同時に治療できることも実証する。
【0013】
(要約)
本発明は、RSVおよびPIVをRNAi薬の鼻腔内投与ならびに非経口投与により抑制可能であることを示したin vivoの証明に基づいている。さらに、異なる2つのiRNA薬を用いて2つ以上のウイルスが同時に治療される場合も、ウイルス価の効果的減少が達成されうることが示されている。これらの所見に基づき、本発明は、ヒトなどの哺乳動物などの被検体において、RSVまたはPIVのmRNAレベル、RSVまたはPIVのタンパク質レベルおよびウイルス価を減少させるうえで有用な、一般的ならびに特定の組成物および方法を提供する。これらの所見は他の呼吸器系ウイルスにも適用することができる。
【0014】
本発明は、RSV、PIVまたは他の呼吸器系ウイルスの遺伝子の1つ、特にRSVまたはPIVのP遺伝子ならびにRSVのN、G、F、SH、MおよびL遺伝子の、15個連続したヌクレオチドからなる、または少なくとも15個連続したヌクレオチドを含んでなるiRNA薬を具体的に提供する。当該iRNA薬は、鎖あたり30個未満のヌクレオチド、たとえば21〜23個のヌクレオチドを含んでなることが好ましい。二本鎖iRNA薬は、平滑末端か、あるいは、より好ましくは当該iRNA薬の一方または両方の3’末端に1〜4ヌクレオチドの突出部を有することができる。
【0015】
さらに上記iRNA薬は、天然に存在するリボヌクレオチド・サブユニットのみを含んでもよいし、あるいは、当該薬に含まれる1つ以上のリボヌクレオチド・サブユニットの
糖または塩基に対し1つ以上の修飾が含まれるように合成されてもよい。該iRNA薬は、当該薬の安定性、分布または細胞への取込みを改善するために選択されるコレステロールなどのリガンドに接続されるように、さらに修飾することができる。該iRNA薬はさらに、単離された形態でもよいし、あるいは、本明細書に記述する方法に使用される医薬組成物、特に肺もしくは鼻腔内に送達するために製剤された、または非経口投与のために製剤された医薬組成物の一部であってもよい。該医薬組成物は1つ以上のiRNA薬を含有することができ、一部の実施形態では、各々がRSVおよびPIVなどの異なる呼吸器系ウイルスを標的とした2つ以上のiRNA薬を含有することができる。
【0016】
本発明はさらに、細胞中のRSV、PIVまたは他の呼吸器系ウイルスのmRNAレベルを低下させるための方法も提供する。当該方法は、RNA干渉に関与する細胞機構を利用して細胞中のウイルスmRNAを選択的に分解するものであり、本発明の抗ウイルスiRNA薬の1つと細胞を接触させるステップを含んでなる。当該方法は、細胞に対して直接行うこともできるし、あるいは、本発明の1つのiRNA薬/医薬組成物を被検体に投与することにより哺乳動物被検体で行なうこともできる。細胞中のウイルスmRNAが減少すると、産生されるウイルスタンパク質の量が減少し、生物体においては複製ウイルス価が減少する。実施例はPIVおよびRSVを用いてこれを実証しており、これは他の呼吸器系ウイルスにも拡大適用することができる。
【0017】
本発明はさらに、細胞中に存在する、各々が異なるウイルスに由来する2つ以上の呼吸器系ウイルスmRNAのレベルを低下させるための方法も提供する。当該方法は、RNA干渉に関与する細胞機構を利用して細胞中の異なる2つのウイルスに由来するウイルスmRNAを選択的に分解するものであり、本発明の2つの抗ウイルスiRNA薬と細胞を接触させるステップを含んでなる。当該方法は、細胞に対して直接行うこともできるし、あるいは、本発明の2つのiRNA薬を被検体に投与することにより、哺乳動物被検体で行なうこともできる。細胞中の異なる2つのウイルス由来のウイルスmRNAが減少すると、産生される両ウイルスタンパク質の量が減少し、生物体においては両ウイルスの複製ウイルス価が減少する。実施例は、PIVおよびRSVを用いて、iRNA薬の同時投与でこれを実証している。本発明の当該実施形態は、任意の2つの呼吸器系ウイルスに適用することができる。
【0018】
本発明の方法および組成物、たとえば、当該方法およびiRNA組成物は、本明細書に記述したどの用量および/または製剤でも使用することができ、本明細書に記述したどの投与経路でも使用することができる。本明細書で示している特に重要なことは、iRNA薬の鼻腔内投与と、呼吸器組織においてウイルス複製を抑制できる当該薬の能力である。この所見は、実施例に示すPIVのような他の呼吸器系ウイルスや、吸入/噴霧など肺に局所的に送達する他の投与経路にも適用できる。
【0019】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細を、添付の図面および以下の記述に示す。本発明のその他の特徴、目的および利点はこの記述、図面および特許請求の範囲から明らかになるはずである。本出願は、引用したすべての参考文献、特許および特許出願を、あらゆる目的に対してその全体を参照することにより組み込んでいる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本明細書では説明を簡略化するために、RNA薬の1つ以上の単量体サブユニットについて「ヌクレオチド」または「リボヌクレオチド」という用語を使用する場合がある。当然のことながら、本明細書における用語「リボヌクレオチド」または「ヌクレオチド」の使用は、修飾RNAまたはヌクレオチド代替物の場合には、以下にさらに記述するように、1つ以上の位置における、修飾ヌクレオチドまたは代替物置換部分を指すこともできる。
【0021】
本明細書で使用している「RNA薬」とは、非修飾RNA、修飾RNAまたはヌクレオシド代替物を指し、これらはいずれも本明細書に記述しているか、またはRNA合成技術分野で周知のものである。修飾RNAおよびヌクレオシド代替物が多数記述されているが、好適な例には、修飾されていないRNAよりもヌクレアーゼ分解に対する耐性が強いものが含まれる。好適な実施例には、2’糖修飾、一本鎖突出部における修飾、好ましくは3’一本鎖突出部における修飾、または、特に一本鎖である場合に、1つ以上のリン酸基または1つ以上のリン酸基類似体を含む5’修飾を有するものが含まれる。
【0022】
「iRNA薬」は、本明細書で使用しているように「RNAi薬」とも呼ばれ(「干渉RNA薬」の略語)、RSVなどの標的遺伝子の発現をダウンレギュレートすることができるRNA薬である。理論に拘束されることを望むものではないが、iRNA薬は多数の機構のうちの1つ以上によって作用すると考えられ、これらの機構には、当技術分野でRNAiと呼ばれることもある標的mRNAの転写後開裂、または転写前もしくは翻訳前機構などがある。iRNA薬は一本鎖を有していてもよいし、または2つ以上の鎖をしていてもよく、たとえば、二本鎖(ds)iRNA薬であってもよい。iRNA薬が一本鎖である場合は、1つ以上のリン酸基または1つ以上のリン酸基類似体を含む5’修飾を有することが特に好ましい。
【0023】
本明細書で使用しているように「一本鎖iRNA薬」とは、単一分子から作製されるiRNA薬である。該iRNA薬は、鎖内のペアリングにより形成された二重鎖領域を含んでもよく、たとえば、ヘアピン構造もしくはパンハンドル構造であっても、これらの構造を含んでいてもよい。一本鎖iRNA薬は、標的分子に関してアンチセンスであることが好ましい。
【0024】
本明細書で使用しているように「ds iRNA薬」(「二本鎖iRNA薬」の略語)は、2本以上の鎖、好ましくは2本の鎖を有し、鎖間のハイブリダイゼーションにより二重鎖構造の領域が形成されうるiRNA薬である。
【0025】
本明細書に記述するds iRNA薬およびsiRNA薬を含めた単離されたiRNA薬は、標的遺伝子のサイレンシングを、たとえばRNA分解により仲介することができる。便宜上、本明細書ではこのようなRNAをサイレンシングされるRNAとも呼ぶ。また、このような遺伝子を標的遺伝子とも呼ぶ。好ましくは、サイレンシングされるRNAは、内在性RSV遺伝子の遺伝子産物である。
【0026】
本明細書で使用しているように、「RNAiを仲介する」という語句は、配列特異的な様式で標的遺伝子をサイレンシングする作用物質の能力を指す。「標的遺伝子をサイレンシングする」とは、該作用物質と接触していないときには標的遺伝子の特定の産物を含有および/または分泌する細胞が、該作用物質と接触したときに、該作用物質と接触していない同様の細胞に比べて当該遺伝子産物を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%少なく含有および/または分泌することになるプロセスを意味する。標的遺伝子のこのような産物とは、たとえば、メッセンジャーRNA(mRNA)でも、タンパク質または調節要素でもよい。
【0027】
本発明の抗ウイルス使用では、標的遺伝子のサイレンシングは細胞中の「ウイルス価」を減少させることになる。本明細書で使用しているように、「ウイルス価の減少」とは、ウイルス標的遺伝子のサイレンシングを受けている生物において、細胞により産生される、または当該生物に見出される生存可能なウイルスの数が減少することを指す。産生される細胞中ウイルスの量の減少が、治療を受ける被検体の組織において産生される測定可能なウイルス量を減少させ、かつウイルス感染症状の重症度を軽減させることが好ましい。
本発明のiRNA薬を「抗ウイルスiRNA薬」とも呼ぶ。
【0028】
本明細書で使用しているように、「RSV遺伝子」とは、RSVウイルスゲノムにおいて同定された遺伝子のうちの任意の1つを指す(Falsey, A. R., and E. E. Walsh, 2000, Clinical Microbiological Reviews 13:371- 84 を参照)。これらの遺伝子は当技術分野ですでに周知であり、F、G、SH、M、N、PおよびL遺伝子がある。
【0029】
本明細書で使用しているように、「PIV遺伝子」とは、PIVウイルスゲノムにおいて同定された遺伝子のうちの任意の1つを指す(GenBank受入番号NC_001796を参照) 。これらの遺伝子は当技術分野ですでに周知であり、N、P、C、D、V、M、F、HNおよびL遺伝子がある。
【0030】
本明細書で使用しているように、「呼吸器系ウイルス」とは呼吸器系の細胞中で複製するウイルスを指す。このようなウイルスには、RSV、PIV、インフルエンザウイルス、メタニューモウイルス、アデノウイルスおよびコロナウイルス(SARSなど)があるが、これらに限定されない。
【0031】
本明細書で使用しているように、「相補的」という用語は、本発明の化合物と、標的RNA分子、たとえばRSV、PIVまたは他の呼吸器系ウイルスのmRNA分子との間に安定かつ特異的な結合が生じるほど十分な程度の相補性があることを示すために使用している。特異的な結合には、特異的な結合が望まれる条件下、すなわち、in vivo測定法もしくは治療的処置の場合には生理学的条件下、in vitro測定法の場合には該測定法が行われる条件下で、上記オリゴマー化合物と非標的配列との非特異的結合が回避されるのに十分な程度の相補性が必要である。非標的配列は、典型的には少なくとも4個のヌクレオチドが異なっている。
【0032】
本明細書で使用しているように、iRNA薬が細胞中の標的RNAにコードされるタンパク質の産生を低下させる場合に、当該iRNA薬は標的RNA、たとえば標的mRNA(たとえば標的RSVまたはPIVのmRNA)に「十分に相補的」である。iRNA薬が標的RNAと「厳密に相補的」(SRMS含有サブユニットを除く)で、たとえば標的RNAとiRNA薬が、好ましくは厳密な相補性を有する領域においてワトソンクリック型塩基対だけからなるハイブリッドを形成するようにアニーリングしてもよい。「十分に相補的」なiRNA薬は、標的ウイルスRNAと厳密に相補的な内部領域(たとえば、少なくとも10個のヌクレオチドの領域)を有することができる。さらに、一部の実施形態では、当該iRNA薬は単一ヌクレオチドの相違を明確に識別する。この場合、該iRNA薬は、当該単一ヌクレオチドの相違の領域(たとえば7ヌクレオチドの範囲内)に厳密な相補性が見出される場合に限って、RNAiを仲介する。好適なiRNA薬は、実施例に提供するセンス配列およびアンチセンス配列に基づく、またはこれらの配列で構成される、またはこれらの配列を包含するものである。
【0033】
本明細書で使用しているように、「本質的に同一」とは、第1のヌクレオチド配列を第2のヌクレオチド配列との比較において指す場合に使用するとき、第1のヌクレオチド配列が、最大1個、2個または3個のヌクレオチド置換(たとえばアデノシンのウラシルへの置換)を除けば第2のヌクレオチド配列と同一であることを意味する。
【0034】
本明細書で使用しているように、「被検体」とは、RSVまたはPIV感染などのウイルス発現により仲介される障害の治療を受ける哺乳動物、あるいはウイルス感染を防ぐ予防的治療を受ける哺乳動物を指す。当該被検体は、霊長類、ウシ、ウマ、マウス、ラット、イヌ、ブタ、ヤギなど、どのような哺乳動物でもよい。好適な実施形態では、当該被検体はヒトである。
【0035】
本明細書で使用しているように、RSV感染、PIV感染または他の呼吸器系ウイルス感染を治療するとは、1)被検体にウイルスが存在することにより部分的に仲介され、2)存在するウイルスタンパク質のレベルを低下させることによりその転帰が影響を受けうる、任意の生物学的または病理学的エンドポイントを改善することを指す。
【0036】
本明細書で使用しているように、「共投与」とは被検体に2つ以上の薬剤、特に2つ以上のiRNA薬を投与することを指す。複数の薬剤を単一の医薬組成物に包含させて同時に投与してもよいし、あるいは、別々の製剤に包含させて被検体に連続的に投与してもよい。2つの薬剤が被検体において同時に検出できる限り、その2つの薬剤は共投与されたと言う。
【0037】
iRNA薬により仲介されたサイレンシングは、当該iRNA薬組成物の投与後数日間は存続しうるため、多くの場合、1日1回より少ない頻度で該組成物を投与することが可能であり、あるいは場合によっては、治療処方全体で1回だけ投与することも可能である。
【0038】
iRNA薬の設計および選択
本発明は、鼻腔内投与/吸入のいずれかによりiRNA薬を肺および鼻腔内に局所投与することにより、または注射による全身的/非経口投与することにより、in vivoにおいて呼吸器系ウイルス遺伝子の標的遺伝子サイレンシングを行い、その結果としてウイルス感染を治療できるという実証結果に基づいている。本発明はさらに、2つ以上の呼吸器系ウイルスにiRNA薬を使用することと、2つ以上のiRNA薬を共投与して両ウイルス感染を治療することにも適用を広げている。
【0039】
これらの結果に基づいて、本発明は、ウイルス感染、特に呼吸器系ウイルス感染、特にRSVまたはPIV感染の治療に使用できるiRNA薬を、単離された形態で、また以降に記述する医薬組成物としても具体的に提供する。当該薬は、ウイルス遺伝子に相補的な少なくとも15個連続したヌクレオチドを有するセンス鎖と、該センス鎖配列に相補的な少なくとも15個連続したヌクレオチドを有するアンチセンス鎖とを含む。RSVまたはPIVのPタンパク質遺伝子に由来するヌクレオチド配列を有するiRNA薬が特に有用である。RSVのこのほかの標的遺伝子には、F、G、SH、M、NおよびL遺伝子がある。PIVのこのほかの標的遺伝子には、N、P、C、D、V、M、F、HNおよびL遺伝子がある。例示するiRNA薬を表1に記載する。
【0040】
iRNA薬の候補は、たとえば、iRNA標的としての役目を果たすウイルス遺伝子の遺伝子歩行解析を行うことにより設計することができる。転写される領域の全部または一部に対応する重複した、隣接した、または近接した候補薬を作製してテストすることができる。標的遺伝子の発現をダウンレギュレートする能力について、各iRNA薬をテストして評価することができる(以下の「iRNA薬候補の評価」を参照)。
【0041】
iRNA薬は、配列情報および望ましい特徴に基づいて合理的に設計することができる。たとえば、iRNA薬は、候補二本鎖の相対的融解温度に従って設計することができる。一般に、当該二本鎖は、アンチセンス鎖の5’末端ではアンチセンス鎖の3’末端よりも低い融解温度を有するべきである。
【0042】
したがって、本発明は、各々が少なくとも15、16、17、18、19、20、21または23ヌクレオチドの配列を有するセンス鎖およびアンチセンス鎖を含んでなるiRNA薬を提供し、当該ヌクレオチド配列は、上に定義したように、呼吸器系ウイルスの遺伝子、特にRSVまたはPIVのPタンパク質遺伝子の一部と本質的に同一である。例示
するiRNA薬には、表1に記載した薬剤のうちの1つに由来する15個連続したヌクレオチドを包含するものが含まれる。
【0043】
iRNA薬のアンチセンス鎖は、15、16、17、18、19、25、29、40または50ヌクレオチド長に等しいか、あるいは少なくともこれらの長さであるべきである。さらに、50、40または30ヌクレオチド長以下であるべきである。好適な範囲は、15〜30、17〜25、19〜23、および19〜21ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、iRNA薬は、表1の薬剤のうちの1つに由来する15個のヌクレオチドを包含する。
【0044】
iRNA薬のセンス鎖は、15、16、17、18、19、25、29、40または50ヌクレオチド長に等しいか、あるいは少なくともこれらの長さであるべきである。さらに、50、40または30ヌクレオチド長以下であるべきである。好適な範囲は、15〜30、17〜25、19〜23、および19〜21ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、iRNA薬は、表1の薬剤のうちの1つに由来する15個のヌクレオチドを包含する。
【0045】
iRNA薬の二本鎖部分は、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、29、40または50ヌクレオチド対の長さに等しいか、あるいは少なくともこれらの長さであるべきである。また、50、40または30ヌクレオチド対の長さ以下であるべきである。好適な範囲は、15〜30、17〜25、19〜23、および19〜21ヌクレオチド対の長さである。
【0046】
表1に記載した薬剤は、各鎖が21ヌクレオチド長である。当該iRNA薬は、19ヌクレオチドの二本鎖領域と、当該薬の各3’末端にある2ヌクレオチドの突出部とを有する。当該薬は、本明細書に記述しているように修飾して、当該配列の少なくとも一部、および/または当該オリゴヌクレオチドの塩基および結合の修飾を包含する同等のiRNA薬を得ることができる。
【0047】
一般に、本発明のiRNA薬は、ウイルス遺伝子、たとえばRSVまたはPIVのPタンパク質遺伝子に十分に相補的な領域を含み、さらに、当該iRNA薬またはその断片がその特定のウイルス遺伝子のダウンレギュレーションを仲介できる十分な長さのヌクレオチド長を有する。本発明のiRNA薬のアンチセンス鎖は、本明細書でRSVおよびPIVのPタンパク質について記述しているように、ウイルス遺伝子のmRNA配列に十分に相補的であることが好ましい。しかし、当該iRNA薬と標的との間に完全な相補性が存在する必要はない。ただし、当該iRNA薬またはその開裂産物がたとえばRSV mRNAのRNAi開裂により配列特異的サイレンシングを誘導することが可能な程度に、十分に一致していなければならない。
【0048】
したがって、本発明のiRNA薬には、ウイルス遺伝子、特にRSVまたはPIVのPタンパク質遺伝子の配列のうちの1つと以下に定義するように本質的に同一である少なくとも16、17または18ヌクレオチドの配列をそれぞれ有するセンス鎖およびアンチセンス鎖を含んでなるiRNA薬が含まれ、ただし、各鎖あたり1、2または3個以下のヌクレオチドは他のヌクレオチドによって置換される(たとえばアデノシンがウラシルに置換される)と同時に、以下に定義するようにヒト培養細胞においてRSV発現を抑制する能力は本質的に残存している。したがって、当該薬は、ウイルス遺伝子、特にRSVまたはPIVのPタンパク質遺伝子の配列のうちの1つと同一な少なくとも15個のヌクレオチドを有するが、標的ウイルスmRNA配列に関して、またはセンス鎖とアンチセンス鎖との間で、1、2または3個の塩基のミスマッチが導入されている。標的ウイルスmRNA配列に対するミスマッチ、特にアンチセンス鎖におけるミスマッチは、末端領域におい
て最も許容され、ミスマッチが存在する場合は、末端領域すなわち、5’および/または3’末端の6、5、4もしくは3ヌクレオチドの範囲内にあることが好ましく、センス鎖の5’末端またはアンチセンス鎖の3’末端の6、5、4、または3ヌクレオチドの範囲内にあることが最も好ましい。センス鎖は、当該分子の全体的な二本鎖の特徴を維持できる程度にアンチセンス鎖と相補的であれば十分である。
【0049】
センス鎖およびアンチセンス鎖は、iRNA薬が表1に例示したiRNA薬のように該分子の一端または両端に一本鎖すなわち対をなさない領域を有するように選択されることが好ましい。したがってiRNA薬は、突出部、たとえば1つまたは2つの5’もしくは3’突出部、好適には2〜3ヌクレオチドの3’突出部を含むように対をなしたセンス鎖およびアンチセンス鎖を含むことが好ましい。ほとんどの実施形態は、3’突出部を有する。好適なsiRNA薬は、当該薬の一端または両端に、1〜4ヌクレオチド長、または好ましくは2〜3ヌクレオチド長の一本鎖突出部、好ましくは3’突出部を有する。該突出部は、一方の鎖が他方の鎖より長い結果であってもよいし、あるいは、同一の長さの2本の鎖がずれた結果であってもよい。5’末端はリン酸化されていることが好ましい。
【0050】
二本鎖領域の好適な長さは、たとえば上に述べたsiRNA薬の範囲では、15〜30ヌクレオチド長、最も好適には18、19、20、21、22および23ヌクレオチド長である。当該siRNA薬の2つの鎖が、たとえば共有結合などで連結している実施形態も含まれる。必要な二本鎖領域と、好ましくは3’突出部とを提供するヘアピン構造または他の一本鎖構造も本発明の範囲内にある。
【0051】
iRNA薬候補の評価
標的遺伝子の発現をダウンレギュレートする能力についてiRNA薬候補を評価することができる。たとえば、iRNA薬候補を提供し、たとえば標的遺伝子を含有するウイルスなどの目的のウイルスにすでに感染している、または感染させるヒト細胞などの細胞と接触させることができる。別例として、当該細胞を、標的ウイルス遺伝子を発現する構築物でトランスフェクトし、ウイルス感染性モデルの必要をなくすことができる。iRNA薬候補と接触させる前後の標的遺伝子発現レベルを、たとえばmRNAレベルもしくはタンパク質レベルで、またはウイルス価などについて比較することができる。標的遺伝子から発現されるRNA、タンパク質またはウイルスの量が、iRNA薬との接触後では低いと判断されれば、当該iRNA薬は標的遺伝子発現をダウンレギュレートすると結論することができる。細胞中の標的ウイルスRNAまたはウイルスタンパク質のレベル、あるいは、細胞または組織中のウイルス価は、任意の方法で測定することができる。たとえば、標的RNAレベルは、ノーザンブロット分析、逆転写とポリメラーゼ連鎖反応の組み合わせ(RT−PCR)、bDNA分析、またはRNAseプロテクション法により測定することができる。タンパク質レベルは、たとえば、ウェスタンブロット法または免疫蛍光法により測定することができる。ウイルス価は、プラーク形成法で検出することができる。
【0052】
iRNA薬の安定性試験、修飾および再試験
たとえば、iRNA薬候補が被検体の体内に導入される場合のように、エンドヌクレアーゼまたはエクソヌクレアーゼによる開裂に対する感受性などの安定性に関してiRNA薬候補を評価することができる。たとえば被検体の体内に見出される成分による開裂など、特に開裂による修飾を受け易い部位を同定するための方法を用いることができる。
【0053】
開裂し易い部位が同定されると、開裂の可能性のある該部位を、例えば、その開裂部位に2’−O−メチル基などの2’修飾を導入することにより開裂に対して耐性とした、さらなるiRNA薬を設計および/または合成することができる。このさらなるiRNA薬を安定性について再試験することができ、望ましい安定性を示すiRNA薬が見つかるまでこのプロセスを繰り返せばよい。
【0054】
in vivo試験
RSV遺伝子発現を抑制できることが確認されたiRNA薬は、実施例に示すように、動物モデル(たとえばマウスまたはラットなどの哺乳動物)でin vivoでの機能性について試験することができる。たとえば、当該iRNA薬を動物に投与し、その分布および安定性のほか、RSVまたはPIVなどのウイルスの遺伝子発現を抑制する能力またはウイルス価を減少させる能力について評価することができる。
【0055】
iRNA薬は、注射などにより標的組織に直接投与されてもよいし、あるいは、ヒトに投与される場合と同じ様式で動物モデルに投与されてもよい。本明細書に示すように、当該薬はウイルス感染を治療する手段として、吸入により投与できることが好ましい。
【0056】
iRNA薬を、細胞内分布について評価することもできる。この評価には、当該iRNA薬が該細胞に取り込まれたかどうか測定することを含めることができる。さらにこの評価には、当該iRNA薬の安定性(たとえば半減期)を測定することも含めることができる。iRNA薬のin vivoでの評価は、追跡可能なマーカー(たとえば、フルオレセインなどの蛍光マーカー、35S、32P、33Pまたは3 Hなどの放射性標識、金粒子、あるいは免疫組織化学検査のための抗原粒子)と結合させたiRNA薬を使用することにより、容易に行なうことができる。
【0057】
生体内分布をモニターするのに有用なiRNA薬は、in vivoにおいて遺伝子サイレンシング活性を欠いていてもよい。たとえば、当該iRNA薬はその動物には存在しない遺伝子を標的としてもよいし(たとえば、マウスに注射するiRNA薬がルシフェラーゼを標的としていてもよい)、あるいは、iRNA薬は、いかなる遺伝子も(たとえば任意の内在遺伝子を)標的としないナンセンス配列を有していてもよい。たとえば、上に記述した追跡可能な物質などのiRNA薬に取り付けた追跡可能な標識により、当該iRNAの局在性/生体内分布をモニターすることができる。
【0058】
ウイルス遺伝子発現をダウンレギュレートする能力に関してiRNA薬を評価することができる。たとえば、in situハイブリダイゼーションにより、またはiRNA薬に曝露する前後の組織からRNAを単離することにより、in vivoでのウイルス遺伝子発現レベルを測定することができる。組織を回収するために動物を屠殺する必要がある場合は、未治療の対照動物が比較の役割を果たす。標的ウイルスmRNAは、RT−PCR、ノーザンブロット、分枝DNA法、またはRNAseプロテクション法などの望ましい任意の方法で検出できるが、これらの方法に限定されない。もう1つの方法として、もしくは、これらに加える方法として、iRNA薬で治療した組織抽出物についてウェスタンブロット分析を行うことにより、ウイルス遺伝子発現をモニターすることができる。ウイルス価は、pfu法を用いて測定することができる。
【0059】
iRNAの化学
本明細書に記述している単離されたiRNA薬は、たとえば、RNAiを仲介して、RSVまたはPIVのPタンパク質などのウイルス遺伝子の発現を抑制するRNA分子(二本鎖、一本鎖)である。
【0060】
本明細書で述べているRNA薬には、その他の非修飾RNAのほか、たとえば有効性を改善するため修飾されたRNA、ならびにヌクレオシド代替物のポリマーが含まれる。非修飾RNAとは、核酸の構成要素、すなわち、糖、塩基およびリン酸部分が、天然に生じるもの、好適にはヒトの体内で天然に生じるものと同一または本質的に同一である分子を指す。当技術分野では、稀または例外的ではあるが天然に生じるRNAを、修飾RNAと呼んでいる。たとえば、Limbach et al., (1994) Nucleic Acids Res. 22: 2183-2196 を
参照されたい。修飾RNAと呼ばれることが多い(当該RNAが概して転写後修飾の結果であるからだと思われる)このような稀または例外的なRNAは、本明細書で使用している非修飾RNAという用語の範囲内に含まれる。本明細書で使用している修飾RNAとは、核酸の構成要素、すなわち、糖、塩基およびリン酸部分のうち1つ以上が、天然に生じるものとは異なっている分子、好適にはヒトの体内で天然に生じるものとは異なっている分子を指す。該分子は修飾された「RNA」と呼ばれるが、その修飾により、RNAではない分子も当然含まれることになる。ヌクレオシド代替物は、糖リン酸(ribophosphate)骨格が非糖リン酸構築物で置換されている分子であり、当該非糖リン酸構築物は塩基を空間的に正しい関係において提示することができるためハイブリダイゼーションは糖リン酸骨格でみられるものとほぼ同じである。当該非糖リン酸構築物はたとえば糖リン酸骨格の非帯電模倣物が挙げられる。上記のそれぞれについての実施例を、本明細書で説明する。
【0061】
本明細書に記述している修飾は、iRNA薬など、本明細書に記述している任意の二本鎖RNAおよびRNA様分子に組み込むことができる。iRNA薬のアンチセンス鎖およびセンス鎖の一方または両方を修飾することが望ましいと考えられる。核酸はサブユニットまたは単量体の重合体であるため、下記の修飾の多くは核酸内の反復される位置においてなされる。たとえば、塩基もしくはリン酸部分の修飾、またはリン酸部分の結合に関与していないOの修飾などである。場合によっては、核酸における対象位置のすべてが修飾されるが、多くの場合、実際にはほとんどの場合、すべての対象位置が修飾されることはない。一例として、修飾は3’または5’末端位置にだけ生じる場合もあるし、末端領域例えば末端ヌクレオチドの位置または鎖の端から2、3、4、5もしくは10ヌクレオチドに生じてもよい。修飾は二本鎖領域、一本鎖領域、または両方になされてよい。たとえば、結合に関与していないO位のホスホロチオエート修飾が、一端または両端だけになされてもよいし、末端領域例えば末端ヌクレオチドの位置または鎖の端から2、3、4、5もしくは10ヌクレオチドだけになされてもよいし、あるいは二本鎖および一本鎖領域の特に末端になされてもよい。同じように、修飾はセンス鎖、アンチセンス鎖、または両方になされてよい。一部の場合では、センス鎖とアンチセンス鎖が同一の修飾または同種の修飾を有することがあるが、他の場合では、センス鎖とアンチセンス鎖は異なる修飾を有し、たとえば一部の場合では、1つの鎖だけ、例えばセンス鎖だけを修飾することが望ましいこともある。
【0062】
iRNA薬に修飾を導入する2つの主な目的は、生物学的環境における分解に対する安定化と、薬力学的特性などの薬理学的特性の改善であり、これらについては下にさらに述べる。iRNA薬の糖、塩基または骨格に対するこのほかの適切な修飾は、2004年1月16日出願の共願のPCT出願番号第PCT/US2004/011930号に記述されている。iRNA薬は、2004年4月16日出願の共願のPCT出願番号第PCT/US2004/011822号に記述されている塩基のような、非天然型の塩基を含むことができる。iRNA薬は、非炭水化物の環状担体分子のような、非天然型の糖を含むことができる。iRNA薬に使用するための非天然型の糖の模範的特徴は、2003年4月16日出願の共願のPCT出願番号第PCT/US2004/11829号に記述されている。
【0063】
iRNA薬は、ヌクレアーゼ耐性を増強するのに有用なヌクレオチド間結合(たとえばキラルなホスホロチオエート結合)を含むことができる。これに加えて、あるいはこれとは別に、iRNA薬はヌクレアーゼ耐性を増強するためのリボース模倣物を含むことができる。ヌクレアーゼ耐性を増強するための模範的なヌクレオチド間結合およびリボース模倣物は、2004年3月8日出願の共願のPCT出願番号第PCT/US2004/0707号に記述されている。
【0064】
iRNA薬は、リガンドを結合させた単量体サブユニットと、オリゴヌクレオチド合成のための単量体とを含むことができる。模範的な単量体は、2004年8月10日出願の共願の米国特許出願番号第10/916,185号明細書に記述されている。
【0065】
iRNA薬は、2004年3月8日出願の共願のPCT出願番号第PCT/US2004/07070号に記述されているようなZXY構造を有することができる。
iRNA薬は、両親媒性の化学部分と複合体を形成することができる。iRNA薬に使用するための模範的な両親媒性部分は、2004年3月8日出願の共願のPCT出願番号第PCT/US2004/07070号に記述されている。
【0066】
別の実施形態では、iRNA薬は、モジュラー複合体を特徴とする送達物質との複合体を形成することができる。該モジュラー複合体は、(a)縮合剤(例えばイオン相互作用または静電的相互作用を介して核酸を誘引、例えば結合させることができる物質など)、(b)融合誘導因子(例えば細胞膜を通じて融合および/または輸送する能力のある物質)、(c)標的決定基、例えば細胞または組織を標的とする物質、例えばレクチン、糖タンパク質、脂質もしくはタンパク質、例えば特定のタイプの細胞と結合する抗体など、のうち1つ以上(好適には2つ以上、より好適には3つすべて)と連結された担体物質を含むことができる。送達物質と複合体を形成するiRNA薬は、2004年3月8日出願の共願のPCT出願番号第PCT/US2004/07070号に記述されている。
【0067】
iRNA薬は、iRNA二本鎖のセンス配列とアンチセンス配列との間などに、標準的ではないペアリングを有することができる。標準的ではないiRNA薬の模範的特徴は、2004年3月8日出願の共願のPCT出願番号第PCT/US2004/07070号に記述されている。
【0068】
増強されたヌクレアーゼ耐性
iRNA薬、たとえばRSVを標的とするiRNA薬は、増強されたヌクレアーゼ耐性を有することができる。耐性を増強する1つの方法は、開裂部位を同定して、開裂を妨げるように当該部位を修飾することである。たとえば、ジヌクレオチド5’−UA−3’、5’−UG−3’、5’−CA−3’、5’−UU−3’または5’−CC−3’は、開裂部位としての機能を果たしうる。
【0069】
ヌクレアーゼ耐性または標的との結合親和性のうち少なくともいずれか一方を増強するため、iRNA薬、たとえば当該iRNA薬のセンス鎖および/またはアンチセンス鎖は、たとえば2’を修飾したリボースユニットおよび/またはホスホロチオエート結合を含むことができる。たとえば、2’水酸基(OH)はさまざまな「オキシ」もしくは「デオキシ」置換基で修飾または置換することができる。
【0070】
「オキシ」−2’水酸基修飾の例としては、アルコキシまたはアリールオキシ(OR、たとえばR=H、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールまたは糖);ポリエチレングリコール(PEG)、O(CH2 CH2 O)CH2 CH2 OR;たとえば同一のリボース糖の4’炭素に例えばメチレン架橋により2’水酸基が接続されている「ロックされた」核酸(LNA);O−AMINE(AMINE=NH2 ;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、またはジヘテロアリールアミノ、エチレンジアミン、ポリアミノ)およびアミノアルコキシ、O(CH2 AMINE、(たとえば、AMINE=NH2 ;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、またはジヘテロアリールアミノ、エチレンジアミン、ポリアミノ)が挙げられる。メトキシエチル基(MOE)、(OCH2 CH2 OCH3 、PEG誘導体)だけを有するオリゴヌクレオチドが、頑丈なホスホロチオエート修飾で修
飾したオリゴヌクレオチドに匹敵するヌクレアーゼ安定性を示すことは注目に値する。
【0071】
「デオキシ」修飾には、水素(すなわちデオキシリボース糖、特に部分的dsRNAの突出部と関連性のあるもの);ハロ(たとえばフルオロ);アミノ(たとえばNH2 ;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノまたはアミノ酸);NH(CH2 CH2 NH)CH2 CH2 −AMINE(AMINE=NH2 ;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノまたはジヘテロアリールアミノ)、−NHC(O)R(R=アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールまたは糖)、シアノ;メルカプト;アルキル‐チオ‐アルキル;チオアルコキシ;ならびにアルキル、シクロアルキル、アリール、アルケニルおよびアルキニルが挙げられ、これらは、任意選択でたとえばアミノ官能基で置換されてもよい。好適な置換基は2’−メトキシエチル、2’−OCH3、2’−O−アリル、2’−C−アリル、および2’−フルオロである。
【0072】
ヌクレアーゼ耐性を最大にするために、上記2’修飾を、1つ以上のリン酸リンカー修飾(たとえばホスホロチオエート)と組み合わせて使用することができる。いわゆる「キメラな」オリゴヌクレオチドとは、2つ以上の異なる修飾を含むオリゴヌクレオチドである。
【0073】
特定の実施形態では、iRNA薬のすべてのピリミジンが2’−修飾を有し、このため当該iRNA薬は増強されたエンドヌクレアーゼ耐性を有する。ヌクレアーゼ耐性の増強は、5’ヌクレオチドの修飾によっても達成することができ、この場合は、たとえば少なくとも1つの5’−ウリジン−アデニン−3’(5’−UA−3’)ジヌクレオチドのウリジンが2’−修飾されたヌクレオチドになるか、少なくとも1つの5’−ウリジン−グアニン−3’(5’−UG−3’)ジヌクレオチドの5’−ウリジンが2’−修飾されたヌクレオチドになるか、少なくとも1つの5’−シチジン−アデニン−3’(5’−CA−3’)ジヌクレオチドの5’−シチジンが2’−修飾されたヌクレオチドになるか、少なくとも1つの5’−ウリジン−ウリジン−3’(5’−UU−3’)ジヌクレオチドの5’−ウリジンが2’−修飾されたヌクレオチドになるか、あるいは、少なくとも1つの5’−シチジン−シチジン−3’(5’−CC−3’)ジヌクレオチドの5’−シチジンが2’−修飾されたヌクレオチドになる。iRNA薬は、このようなジヌクレオチドを少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つまたは少なくとも5つ含むことができる。
【0074】
オリゴヌクレオチド骨格にフラノース糖を組み入れても、エンドヌクレアーゼによる開裂を減少させることができる。iRNA薬はさらに、3’カチオン基を含めることにより、または3’末端のヌクレオシドを3’−3’結合で反転させることにより、修飾することもできる。また別の実施形態では、3’末端を、3’C5−アミノアルキルdTなどのアミノアルキル基でブロックすることができる。他の3’結合体は3’−5’エクソヌクレアーゼによる開裂を妨げることができる。理論に拘束されるわけではないが、ナプロキセンまたはイブプロフェンなどの3’結合体は、エクソヌクレアーゼがオリゴヌクレオチドの3’末端と結合するのを立体的に妨害することにより、エクソヌクレアーゼによる開裂を妨げると考えられる。さらに小さいアルキル鎖、アリール基、または複素環の結合体あるいは修飾された糖(D−リボース、デオキシリボース、グルコースなど)は3’−5’エクソヌクレアーゼを妨害することができる。
【0075】
同じように、5’結合体も5’−3’エクソヌクレアーゼによる開裂を妨げることができる。理論に拘束されるわけではないが、ナプロキセンまたはイブプロフェンなどの5’結合体は、エクソヌクレアーゼがオリゴヌクレオチドの5’末端と結合するのを立体的に
妨害することにより、エクソヌクレアーゼによる開裂を妨げると考えられる。さらに小さいアルキル鎖、アリール基、または複素環の結合体あるいは修飾された糖(D−リボース、デオキシリボース、グルコースなど)は5’−3’エクソヌクレアーゼを妨害することができる。
【0076】
iRNA薬は、二本鎖iRNA薬が少なくとも一端に一本鎖ヌクレオチド突出部を含む場合に、増強したヌクレアーゼ耐性を有することができる。好適な実施形態では、当該ヌクレオチド突出部は1〜4個の、好ましくは2〜3個の非対合(対をなさない)ヌクレオチドを含む。好適な実施形態では、一番端のヌクレオチド対のすぐ隣の一本鎖突出部の非対合ヌクレオチドはプリン塩基を有し、かつ前記一番端のヌクレオチド対はG−C対であるか、あるいは端から4組の相補的ヌクレオチド対のうち少なくとも2つがG−C対である。さらなる実施形態では、ヌクレオチド突出部は1つまたは2つの非対合ヌクレオチドを有していてもよく、例示的な実施形態では、ヌクレオチド突出部は5’−GC−3’である。好適な実施形態では、ヌクレオチド突出部はアンチセンス鎖の3’末端にある。1つの実施形態では、iRNA薬はアンチセンス鎖の3’末端にモチーフ5’−CGC−3’を有することよって2ヌクレオチドの突出部5’−GC−3’が形成される。
【0077】
このようにiRNA薬は、たとえば、被検体の体内に見出されるエンドヌクレアーゼまたはエクソヌクレアーゼなどのヌクレアーゼによる分解を妨げることができるように修飾された単量体を含むことができる。当該単量体を、本明細書ではNRM、すなわちヌクレアーゼ耐性促進単量体またはヌクレアーゼ耐性促進修飾と呼ぶ。多くの場合、当該修飾はiRNA薬の他の特性も調節することになり、たとえば該特性は、血清アルブミンなどの輸送タンパク質またはRISCのメンバーなどのタンパク質と相互作用する能力、あるいは第1および第2の配列が相互に二本鎖を形成する能力、または標的分子などの別の配列と二本鎖を形成する能力などである。
【0078】
上に述べた好適なヌクレアーゼ耐性の基準に適合するiRNA薬を作製するために有用な可能性のある修飾には、次に示す糖、塩基および/またはリン酸骨格の化学的および/または立体化学的修飾のうち1つ以上を含めることができる。
【0079】
(i)キラル(Sp)チオエート。従って、好適なNRMは、非架橋位置にヘテロ原子を含有する修飾リン酸基の特定のキラル型、たとえば、通常は酸素が占める位置であるX位置におけるSpまたはRp、について豊富な、または純粋なヌクレオチド二量体を含む。X位置の原子はS、Se、Nr2 またはBr3 でもよい。XがSであるとき、豊富な、またはキラル的に純粋なSp結合が好ましい。豊富とは、好適な形態が少なくとも70、80、90、95または99%であることを意味する。当該NRMについては、以降にさらに詳しく述べる。
【0080】
(ii)糖、塩基および/またはリン酸骨格部分もしくは修飾されたリン酸骨格部分のリン原子に1つ以上のカチオン基を取り付けること。従って、好適なNRMとしては、カチオン基で誘導体化した末端位置の単量体が挙げられる。アンチセンス配列の5’末端は末端に‐OHまたはリン酸基を有する必要があるため、当該NRMはアンチセンス配列の5’末端には使用しないことが好ましい。該カチオン基は、H結合形成およびハイブリダイゼーションへの妨害を最小限に抑える塩基上の位置に取り付けるべきであり、たとえば、他方の鎖の相補的塩基と相互作用する面から離れた位置、たとえばピリミジンの5’位またはプリンの7位が挙げられる。これらについて、以下にさらに詳しく述べる。
【0081】
(iii)末端における非リン酸結合。この場合、好適なNRMは非リン酸結合を含み、たとえば、リン酸結合よりも開裂に対し大きい耐性を与える4つの原子の結合を含む。例として、3’CH2 −NCH3 −O−CH2 −5’および3’CH2 −NH−(O=)
−CH2 −5’が挙げられる。
【0082】
(iv)3’−架橋チオリン酸および5’−架橋チオリン酸。従って、好適なNRMはこれらの構造を含むことができる。
(v)L−RNA、2’−5’結合、反転した結合、α−ヌクレオシド。従って、他の好適なNRMは、L−ヌクレオシドおよびL−ヌクレオシドから誘導された二量体ヌクレオチド;2’−5’リン酸結合、非リン酸結合および修飾リン酸結合(たとえばチオリン酸、ホスホルアミデートおよびホウ素リン酸);反転した結合を有する二量体、たとえば3’−3’または5’−5’結合;糖の1’位にアルファ結合を有する単量体、たとえば本明細書で記述するアルファ結合を有する構造体、を含む。
【0083】
(vi)コンジュゲート基(結合基)。従って、好適なNRMは、たとえば、本明細書に記載のターゲティング(標的決定)部分または結合リガンドであって、例えば糖、塩基または骨格などを介して単量体と結合させたものを含むことができる。
【0084】
(vii)無塩基結合。従って、好適なNRMは無塩基単量体を含むことができ、たとえば、本明細書に記述している無塩基単量体(たとえば核酸塩基を含まない単量体) ;本明細書に記述している芳香族単量体または複素環単量体または複素多環芳香族(polyheterocyclic aromatic )単量体が挙げられる。
【0085】
(viii)5’−ホスホン酸および5’−リン酸プロドラッグ。従って、好適なNRMは好適には末端位置、たとえば5’位の単量体であって、リン酸基の1つ以上の原子が保護基で誘導体化されており、1つまたは複数の該保護基は、カルボキシエステラーゼまたは被検体の体内に存在する酵素など被検体の体内にある構成要素の作用の結果として除去される。たとえばリン酸プロドラッグであって、カルボキシエステラーゼがこの保護された分子を開裂させ、リン酸のOに隣接する炭素を攻撃するチオエートアニオンを産生し、その結果、保護されていないリン酸が産生されるもの。
【0086】
1つ以上の異なるNRM修飾をiRNA薬またはiRNA薬の配列に導入することができる。NRM修飾を配列またはiRNA薬に2回以上使用することができる。一部のNRMはハイブリダイゼーションを妨害するため、組み込む総数は、許容可能なレベルのiRNA薬二本鎖形成が維持されるようにあるべきである。
【0087】
一部の実施形態では、NRM修飾は、被検体の所望の配列または遺伝子を標的としない配列(センス鎖またはセンス配列)の末端開裂部位または開裂領域に導入される。これにより、的外れのサイレンシングを減少させることができる。
【0088】
ヌクレアーゼ耐性修飾は、末端だけに配置可能なものと、任意の位置に行なえるものがある。一般に、ハイブリダイゼーションを阻害しうる修飾は末端領域のみに使用し、被検体の配列または遺伝子を標的とする配列の開裂部位または開裂領域には使用しないことが好ましい。当該修飾は、iRNA薬の2つの配列間で十分なハイブリダイゼーションが維持されるという条件であれば、センス鎖の任意の位置に使用することができる。一部の実施形態では、的外れのサイレンシングを最小限に抑えることができるように、被検体の配列または遺伝子を標的としない配列の開裂部位または開裂領域にNRMを置くことが望ましい。
【0089】
ほとんどの場合、ヌクレアーゼ耐性を促進する修飾は、配列が被検体の配列を標的とする(アンチセンス配列と呼ばれることが多い)か、被検体の配列を標的としない(センス配列と呼ばれることが多い)かによって分布が異なることになる。配列が被検体の配列を標的とするものである場合は、エンドヌクレアーゼによる開裂を妨害または阻害する修飾
を、RISC仲介性開裂の対象となる領域、たとえば該開裂部位または該開裂領域に挿入すべきではない(参照により本明細書に組み込まれるElbashir et ah, 2001 , Genes and
Dev. 15: 188 に記載のとおり)。標的の開裂は、20または21ntのガイドRNAの中ほどで、あるいは当該ガイド配列と相補的な最初のヌクレオチドの約10または11ヌクレオチド上流で生じる。本明細書で使用しているように、開裂部位とは、標的または標的とハイブリダイズするiRNA薬鎖の、開裂部位の両側のヌクレオチドを指す。開裂領域とは、該開裂部位に加えて両方向に1、2または3ヌクレオチドを意味する。
【0090】
以上の修飾は、末端領域に導入することができ、たとえば、被検体の配列を標的とする配列あるいは標的としない配列の末端位置または末端の2、3、4もしくは5位に導入することができる。
【0091】
連結されたリガンド
薬理学的特性などのiRNA薬の特性は、たとえば、連結されたリガンド(tethered ligands)などのリガンドを導入することにより影響を受けうるため、リガンドの導入等によって調整することができる。
【0092】
リガンドなどの種々の実体物をiRNA薬に連結することができ、たとえば、リガンド結合性単量体サブユニットの担体に連結することができる。リガンド結合性単量体サブユニットとの関連で以下に実施例を記述しているが、好適な例を示しているにすぎず、実体物はiRNA薬の他の部位にも結合することができる。
【0093】
好適な化学成分は、担体と直接的または介在連結部(intervening tether)を介して間接的に結合される、好適には共有結合されるリガンドである。好適な実施形態では、該リガンドは介在連結部を介して担体に取り付けられている。該リガンドまたは連結されたリガンドは、リガンド結合性単量体を伸長する鎖に組み込むときに、該リガンド結合性単量体上に存在していてもよい。一部の実施形態では、該リガンドは、リガンド結合性単量体サブユニット「前駆物質」を伸長する鎖に組み込んだ後に、当該前駆物質に組み込まれてもよい。たとえば、TAP−(CH2)NH2 などのアミノ基終端連結部を有する単量体を、伸長しているセンス鎖またはアンチセンス鎖に組み込んでもよい。その後の操作では、すなわち単量体サブユニット前駆物質を組み込んだ後は、ペンタフルオロフェニルエステルまたはアルデヒド基などの求電子基を有するリガンドを、該リガンドの求電子とリガンド結合性単量体サブユニット前駆物質連結部の末端求核基とを結合させることにより、該リガンド結合性単量体前駆物質に取り付けることができる。
【0094】
好適な実施形態では、リガンドは、該リガンドが組み込まれるiRNA薬の分布、ターゲティングまたは寿命を変化させる。好適な実施形態では、リガンドは、選択された標的(例えば分子、細胞もしくは細胞種)、コンパートメント(例えば細胞もしくは臓器のコンパートメント)、組織、臓器、または身体の領域に対し、当該リガンドのないものに比べ、増強された親和性を提供する。
【0095】
好適なリガンドは、輸送、ハイブリダイゼーションおよび特異性を改善することができ、結果として生じた天然型または修飾型オリゴリボヌクレオチドや、本明細書に記述している単量体および/または天然型もしくは修飾型リボヌクレオチドの任意の組み合わせからなる重合体分子の、ヌクレアーゼ耐性も改善しうる。
【0096】
一般にリガンドには、例えば取込みを促進するための治療的修飾因子、例えば分布をモニターするための診断的化合物または受容体基、架橋剤、ヌクレアーゼ耐性を付与する化学部分、および天然型もしくは例外的な核酸塩基を含めることができる。一般的な例として、脂質親和体、脂質、ステロイド類(たとえばウバオール、ヘシゲニン(hecigenin )
、ジオスゲニン)、テルペン類(たとえば、サルササポゲニン、フリーデリンおよびエピフリーデラノール誘導体化リトコール酸などのトリテルペン)、ビタミン類(たとえば葉酸、ビタミンA、ビオチン、ピリドキサール)、炭水化物、タンパク質、タンパク質結合剤、インテグリンを標的とする分子、ポリカチオン体、ペプチド、ポリアミン、およびペプチド模倣物が挙げられる。
【0097】
リガンドには、天然に生じる物質(たとえば、ヒト血清アルブミン(HSA)、低密度リポタンパク質(LDL)またはグロブリン)、炭水化物(たとえば、デキストラン、プルラン、キチン、キトサン、イヌリン、シクロデキストリンまたはヒアルロン酸)、アミノ酸、または脂質が含まれうる。該リガンドは、組換え分子でも合成ポリマーなどの合成分子でもよく、たとえば合成ポリアミノ酸が挙げられる。ポリアミノ酸の例として、ポリリシン(PLL)、ポリL−アスパラギン酸、ポリL−グルタミン酸、スチレン−マレイン酸無水物共重合体、ポリ(L−ラクチド−コ−グリコライド)共重合体、ジビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド共重合体(HMPA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリウレタン、ポリ(2−エチルアクリル酸)、N−イソプロピルアクリルアミドポリマー、またはポリホスファジンが挙げられる。ポリアミンの例として、ポリエチレンイミン、ポリリシン(PLL)、スペルミン、スペルミジン、ポリアミン、偽ペプチド−ポリアミン、ペプチド擬似ポリアミン、デンドリマーポリアミン、アルギニン、アミジン、プロタミン、陽イオン性の化学部分、たとえば陽イオン性脂質、陽イオン性ポルフィリン、ポリアミンの四級塩、またはアルファ螺旋ペプチドが挙げられる。
【0098】
リガンドには標的決定基も含めることができ、標的決定基は例えば細胞または組織を標的とする因子、例えばレクチン、糖タンパク質、脂質もしくはタンパク質などで、例えば肝細胞または空腸の細胞などの特定のタイプの細胞と結合する抗体が挙げられる。標的決定基は、甲状腺刺激ホルモン、メラノトロピン、レクチン、糖タンパク質、サーファクタントプロテインA、ムチン炭水化物、多価乳糖、多価ガラクトース、N−アセチル−ガラクトサミン、N−アセチル−グルコサミン、多価マンノース、多価フコース、糖化ポリアミノ酸、多価ガラクトース、トランスフェリン、ビスホスホネート、ポリグルタメート、ポリアスパルテート、脂質、コレステロール、ステロイド、胆汁酸、葉酸、ビタミンB12、ビオチン、またはRGDペプチドもしくはRGDペプチド模倣物であることができる。
【0099】
リガンドは、糖タンパク質などのタンパク質、コリガンドに対し特異的な親和性を有する分子などのペプチド、あるいはがん細胞、内皮細胞または骨細胞などの特定のタイプの細胞と結合する抗体などの抗体であることができる。リガンドには、ホルモンおよびホルモン受容体も含まれうる。リガンドには、非ペプチド性の分子種、例えば脂質、レクチン、炭水化物、ビタミン類、コファクター、多価乳糖、多価ガラクトース、N−アセチル−ガラクトサミン、N−アセチル−グルコサミン、多価マンノース、または多価フコースなども含めることができる。リガンドは、たとえば、リポポリサッカライド、p38MAPキナーゼの活性化因子、またはNF−κBの活性化因子であってもよい。
【0100】
リガンドは、例えば細胞の微小管、マイクロフィラメントおよび/または中間径フィラメントを崩壊させることにより細胞の細胞骨格を崩壊させることなどによって、iRNA薬の細胞への取込みを増大させることができる薬剤などの物質であることができる。該薬剤は、たとえば、タキサン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、サイトカラシン、ノコダゾール、ジャスプラキノリド、ラトルンクリンA、ファロイジン、スウィンホライドA、インダノシン、またはミオサービン(myoservin )であることができる。
【0101】
1つの態様では、リガンドは脂質または脂質系分子である。当該脂質または脂質系分子
は、好適にはヒト血清アルブミン(HSA)などの血清タンパク質を結合する。HSAを結合したリガンドは、肝臓の実質細胞を含めた肝臓組織などの標的組織に当該結合体を分布させることができる。HSAを結合することができる他の分子も、リガンドとして使用することができる。たとえば、ナプロキセンまたはアスピリンを使用することができる。脂質または脂質系のリガンドは、(a)結合体の分解耐性を増強させることができ、(b)標的の細胞もしくは細胞膜を標的とする能力、または同細胞もしくは細胞膜への輸送を向上させることができ、かつ/または(c)HSAなどの血清タンパク質との結合を調整するために使用することができる。
【0102】
脂質系リガンドは、結合体の標的組織への結合をコントロールするなど、調節のために使用することができる。たとえば、HSAとより強力に結合する脂質または脂質系のリガンドは、腎臓を標的とする可能性が低くなるため、体内から消失する可能性が低くなる。HSAとの結合が弱い脂質または脂質系のリガンドは、結合体の標的を腎臓にするために使用することができる。
【0103】
好適な実施形態では、脂質系のリガンドはHSAと結合する。好適には、該リガンドは、結合体が非腎臓組織に好適に分布するように十分な親和性でHSAと結合する。しかし、親和性はHSAとリガンドとの結合が不可逆的なほど強くはないことが好ましい。
【0104】
別の態様では、リガンドは、増殖細胞などの標的細胞により取り込まれるビタミンなどの化学部分である。当該リガンドは、がん細胞など悪性または非悪性型の望ましくない細胞増殖を特徴とする障害を治療するために特に有用である。模範的なビタミンにはビタミンA、EおよびKが挙げられる。このほかの模範的なビタミンとしては、葉酸、B12、リボフラビン、ビオチン、ピリドキサールなどのビタミンB群、がん細胞により取り込まれる他のビタミンまたは栄養素が挙げられる。HSAおよび低密度リポタンパク質(LDL)も挙げられる。
【0105】
別の態様では、リガンドは細胞透過因子であり、好適には螺旋状の細胞透過因子である。好適には、該因子は両親媒性である。模範的な因子はtatまたはantennopediaなどのペプチドである。該因子がペプチドである場合は、ペプチジル模倣体、インバートマー(invertomer)、非ペプチド結合または偽ペプチド結合、およびD−アミノ酸の使用などにより修飾することができる。螺旋状の因子は好適にはアルファ螺旋因子であり、親油性相と疎油性相を有することが好ましい。
【0106】
5’−リン酸修飾
好適な実施形態では、iRNA薬は5’リン酸化されているか、または5’末端にホスホリル類似体を有する。アンチセンス鎖の5’−リン酸修飾には、RISC仲介遺伝子サイレンシングと両立する修飾が含まれる。適切な修飾として、5’−一リン酸((HO)2(O)P−O−5’)、5’−二リン酸((HO)2(O)P−O−P(HO)(O)−O−5’)、5’−三リン酸((HO)2(O)P−O−(HO)(O)P−O−P(HO)(O)−O−5‘)、5’−グアノシンキャップ(7−メチル化または非メチル化)(7m−G−O−5’−(HO)(O)P−O−(HO)(O)P−O−P(HO)(O)−O−5’)、5’−アデノシンキャップ(Appp)、および任意の修飾または未修飾のヌクレオチドキャップ構造(N−O−5’−(HO)(O)P−O−(HO)(O)P−O−P(HO)(O)−O−5’)、5’−モノチオリン酸(ホスホロチオエート、(HO)2(S)P−O−5’)、5’−モノジチオリン酸(ホスホロジチオエート、(HO)(HS)(S)P−O−5’)、5’−ホスホロチオレート((HO)2(O)P−S−5’)、酸素/イオウの任意のさらなる組み合わせで置換された一リン酸、二リン酸および三リン酸(5’−アルファ−チオ三リン酸、5’−ガンマ−チオ三リン酸など)、5’−ホスホルアミデート((HO)2(O)P−NH−5’、(HO)(NH2)
(O)P−O−5’)、5’−アルキルホスホネート(R=アルキル=メチル、エチル、イソプロピル、プロピルなど、たとえばRP(OH)(O)−O−5’−、(OH)2(O)P−5’−CH2−)、5’−アルキルエーテルホスホネート(R=アルキルエーテル=メトキシメチル(MeOCH2−)、エトキシメチルなど、たとえばRP(OH)(O)−O−5’−)が挙げられる。
【0107】
センス鎖を不活化して活性なRISCの形成を防ぐためにセンス鎖を修飾することにより、的外れの作用を減少させることができる。これは、センス鎖の5’−リン酸化反応を防ぐ修飾によって、例えば、5’−O−メチルリボヌクレオチドを用いた修飾により、達成することができる(Nykaenen et al, (2001) ATP requirements and small interfering RNA structure in the RNA interference pathway. Cell 107, 309-321を参照)。リン酸化反応を防ぐ他の修飾も使用することができ、例えば、5’−OHをO−MeではなくHで単純に置換する修飾がある。あるいは、大きく嵩高い基を5’−リン酸に付加してホスホジエステル結合に変えてもよい。
【0108】
iRNA薬の組織および細胞への送達
製剤
本明細書に記述しているiRNA薬は、被検体に投与するため、好適には、吸入または鼻腔内投与を介した肺および鼻腔への局所投与のため、あるいは注射などによる非経口投与のために製剤することができる。
【0109】
説明を簡略化するため、この項では主に、修飾していないiRNA薬に関して、その製剤、組成物および方法を述べる。しかし、これらの製剤、組成物および方法は、修飾iRNA薬など、他のiRNA薬についても実行することができ、そのような実行は本発明の範囲内にある。
【0110】
製剤化されたiRNA組成物については、さまざまな状態を想定できる。一部の実施例では、該組成物は少なくとも部分的に結晶質、均一な結晶質、および/または無水物(たとえば水分が80、50、30、20または10%未満)である。別の実施例では、iRNAは水を含む溶液中などの水相中にあり、この剤形は吸入を介した投与に好適な剤形である。
【0111】
水相または結晶質の組成物は、リポソームなどの送達ビヒクル(特に水相用)または粒子(結晶質組成物に適切である可能性のある微粒子など) に組み込むことができる。一般に、iRNA組成物は、意図された投与方法と適合する様態で製剤する。
【0112】
iRNA製剤は、別の治療薬や、iRNAと複合体を形成してiRNPを形成するタンパク質などのiRNAを安定化させる物質など、別の作用物質と組み合わせて製剤することができる。このほかの作用物質には、EDTAなどのキレート化剤(たとえばMg2+などの二価カチオンを除去するため)、塩類、RNAse阻害薬(RNAsinなどの広特異性RNAse阻害薬など)などがある。
【0113】
1つの実施形態では、iRNA製剤は、第2の遺伝子に関してRNAi を仲介できる第2のiRNA薬など、別のiRNA薬を含有する。さらに別の製剤は、少なくとも3、5、10、20、50または100種以上の異なるiRNAを含有することができる。一部の実施形態では、当該iRNA薬は同一のウイルスではあるが異なる標的配列を対象とするものである。別の実施形態では、各iRNA薬は異なるウイルスを対象とする。実施例に示すように、2以上のウイルスについて、該ウイルスのうち1つをそれぞれ対象とする2つのiRNA薬を同時に、または接近した時間間隔で共投与することにより阻害することができる。
【0114】
治療方法および送達経路
本発明のiRNA薬、たとえばRSVまたはPIVを標的とするiRNA薬を含む組成物は、さまざまな経路で被検体に送達することができる。例示的経路には、吸入、髄腔内、実質内、静脈内、鼻腔内、経口および点眼による送達が挙げられる。本発明のiRNA薬を投与する好適な手段は、肺および鼻腔への直接的投与、または非経口投与による全身的投与である。
【0115】
iRNA薬は、投与に適した医薬組成物に組み込むことができる。たとえば組成物には、1つ以上のiRNA薬および製薬学的に許容可能な担体が含まれうる。本明細書で使用しているように、「製薬学的に許容可能な担体」という用語は、医薬の投与に適合するありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤、抗真菌剤、等張剤、および吸収遅延剤などが含まれることを意図している。医薬として活性な物質に対するこのような媒体および作用物質の使用は、当技術分野で周知である。いかなる慣用の媒体および作用物質も活性化合物と不適合でない限り、該組成物に使用されることが意図される。補助的な活性化合物も該組成物に組み込むことができる。
【0116】
本発明の医薬組成物は、局所治療が望ましいか、全身治療が望ましいかに応じて、かつ治療する領域に応じて、複数の方法で投与してもよい。投与は、局所(点眼、鼻腔内、経皮、肺内)、経口または非経口であってもよい。非経口投与には、点滴静注、皮下、腹腔内または筋肉内注射、または髄腔内もしくは脳室内投与が挙げられる。
【0117】
一般に、本発明のiRNA薬の送達は、被検体の感染部位への送達を達成するために行なわれる。これを達成する好適な手段は、吸入もしくは鼻腔内投与を介した呼吸器組織への投与など、肺もしくは鼻腔内への局所投与か、または、非経口投与などの全身投与のいずれかによるものである。
【0118】
吸入または非経口投与のための製剤は、当技術分野で周知である。このような製剤には滅菌水溶液が含まれてよく、滅菌水溶液は緩衝剤、希釈剤および他の適切な添加剤も含有してよい。静脈内使用のためには、該製剤を等張にするために溶質の総濃度を調整する必要がある。
【0119】
本明細書で開示している活性化合物は、好適には、任意の適切な手段により被検体の肺または鼻腔に投与される。活性化合物は、1または複数の活性化合物からなる呼吸吸入可能な粒子のエアロゾル懸濁液の投与により投与してよく、被検体がこれを吸入する。該活性化合物は、さまざまな剤形でエアロゾル化でき、たとえば、乾燥粉末吸入剤、定量吸入剤、または液体/液体懸濁液があるが、これらに限定されない。呼吸吸入可能な粒子は、液体でも固体でもよい。該粒子は、米国特許第4,501,729号明細書に記載されているように、気道粘液分泌物からの水分の再吸収を阻害するのに有効な量の選択化合物とともに、アミロリド、ベンザミルまたはフェナミルなどの他の治療成分を任意に含有してよい。
【0120】
粒子状の医薬組成物を、任意選択で、分散または輸送に役立つように担体と結合させてもよい。糖(すなわち、乳糖、ショ糖、トレハロース、マンニトール)などの適切な担体を、適切な割合(たとえば重量比で1:1)で1または複数の活性化合物と混合すればよい。
【0121】
本発明を実行するための活性化合物からなる粒子は、呼吸吸入可能なサイズの粒子、すなわち、吸入時に口または鼻および喉頭を通り、気管支および肺胞に入るほど十分に小さいサイズの粒子を含む必要がある。一般に、約1〜10ミクロン(特に約5ミクロン未満
)のサイズの粒子が呼吸吸入可能である。呼吸吸入不可能なサイズの粒子がエアロゾルに含まれていると、咽喉に沈着して飲み込まれる傾向があるため、エアロゾルに含まれる呼吸吸入不可能な粒子の量を最小限に抑えることが好ましい。鼻腔内投与の場合には、鼻腔での保持を確実なものとするために、10〜500μMの範囲の粒子サイズが好ましい。
【0122】
エアロゾルを産生するための活性化合物の液体医薬組成物は、発熱物質を含まない滅菌水などの適切なビヒクルと活性化合物を混合することにより調製可能である。本発明を実施するために使用する高張生理食塩水は、生理学的に許容可能な塩を1〜15パーセント(重量比)含有する、発熱物質を含まない滅菌水溶液であることが好ましく、生理学的に許容可能な塩を重量比で3〜7パーセント含有することがさらに好ましい。
【0123】
活性化合物を含有する液体粒子のエアロゾルは、圧力駆動式ジェットネブライザまたは超音波ネブライザなどの任意の適切な手段で産生してよい。たとえば、米国特許第4,501,729号明細書を参照されたい。ネブライザは、典型的には空気または酸素の圧縮ガスを狭いベンチュリ管開口部を通して加速する手段、または超音波撹拌の手段のいずれかにより、活性成分の溶液または懸濁液を治療用エアロゾルミストへと変換する器具である。
【0124】
ネブライザに使用するための適切な製剤は、液体担体中の活性成分で構成され、該活性成分は製剤の最大40%(w/w)を構成するが、好適には20%(w/w)未満である。担体は、典型的には水(および最も好適には発熱物質を含まない滅菌水)または希釈した水性アルコール溶液であり、等張にしたものが好ましいが、たとえば塩化ナトリウムを加えることにより、体液より高張であってもよい。任意の添加剤には、製剤が滅菌されていない場合にメチルヒドロキシ安息香酸などの保存料、抗酸化剤、着香料、精油類、緩衝剤および界面活性剤が含まれる。
【0125】
活性化合物を含有する固体粒子のエアロゾルは、同様に、任意の治療用固体粒子エアロゾル発生器で産生すればよい。固体粒子治療薬を被検体に投与するためのエアロゾル発生器は、呼吸吸入可能な粒子を産生し、所定の一定量の治療薬を含有する容積のエアロゾルをヒトへの投与に適した速度で発生させる。固体粒子用エアロゾル発生器の種類の1例は、インサフレータである。吸入による投与に適した製剤には、インサフレータの手段により送達できる、または鼻から吸い込む様式で鼻腔内に取り入れ可能な微細粉砕粉末が含まれる。インサフレータ内では、該粉末(たとえば、本明細書に記述している治療を実施するのに有効な定量粉末)は、一般にゼラチンまたはプラスチックで作られたカプセルまたはカートリッジに充填されており、該カプセルまたはカートリッジがその場で穿孔または開封されて、粉末が、吸入時に器具を通して空気が吸込まれることにより、または手動操作ポンプの手段により送達される。インサフレータに使用される粉末は、活性成分のみで構成されるか、または活性成分と、乳糖などの適切な粉末希釈剤と、任意選択の界面活性剤とを含む粉末混合物から構成される。活性成分は、典型的には製剤の0.1〜100(w/w)を構成する。
【0126】
エアロゾル発生器の種類の第2の例は、定量吸入器である。定量吸入器は、加圧型のエアロゾルディスペンサであり、典型的には液化高圧ガス中に活性成分の懸濁製剤または溶液製剤を含有する。使用時に当該器具は、活性成分を含有する微粒子スプレーを産生するために一定の容積、典型的には10〜200μlを送達するようになされたバルブを通して製剤を放出する。適切な高圧ガスとして、特定のクロロフルオロカーボン化合物、たとえば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタンおよびこれらの混合物が挙げられる。該製剤はさらに、1つ以上の共溶媒、たとえばエタノール、オレイン酸またはトリオレイン酸ソルビタンなどの界面活性剤、抗酸化剤および適切な着香料も含有してよい。
【0127】
投与は、被検体が行ってもよいし、または介護者などの別の人が行ってもよい。介護者とは、その人へのケアを提供することに関わる任意の存在であってよく、たとえば、病院、ホスピス、医院、外来患者向け診療所;医師、看護師または他の開業医などの医療従事者;あるいは配偶者または親などの保護者が挙げられる。投薬は、用量を計量して、または定量を送達するディスペンサで提供することができる。
【0128】
「治療的有効量」という用語は、治療される被検体に望ましいレベルの薬物が提供されて期待される生理学的反応を得るのに必要な組成物に存在する量をいう。1つの実施形態では、RSVおよびPIVなどの異なる呼吸器系ウイルスをそれぞれ対象とする2以上のiRNA薬の治療的有効量が、被検体に同時に投与される。
【0129】
「生理学的有効量」という用語は、被検体に送達されて、望ましい緩和効果または治療効果を与える量をいう。
「製薬学的に許容可能な担体」という用語は、該担体が肺に対して顕著な有害毒性作用を及ぼさずに肺に取り込まれうることを意味する。
【0130】
担体として有用な医薬賦形剤の種類には、ヒト血清アルブミン(HSA)などの安定剤;炭水化物、アミノ酸およびポリペプチドなどの増量剤;pH調整剤または緩衝剤;塩化ナトリウムなどの塩などがある。これらの担体は、結晶質または非晶質の形状であってよく、または両者の混合物であってもよい。
【0131】
特に価値のある増量剤には、適合可能な炭水化物、ポリペプチド、アミノ酸またはこれらの組み合わせが挙げられる。適切な炭水化物には、ガラクトース、D−マンノース、ソルボースなどの単糖類;乳糖、トレハロースなどの二糖類;2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンなどのシクロデキストリン類;ラフィノース、麦芽デキストリン、デキストランなどの多糖類;マンニトール、キシリトールなどのアルジトール類が挙げられる。好適な炭水化物群には、乳糖、トレハロース、ラフィノース、麦芽デキストリンおよびマンニトールが含まれる。適切なポリペプチドにはアスパルテームが挙げられる。アミノ酸には、アラニンおよびグリシンが挙げられ、グリシンが好ましい。
【0132】
適切なpH調整剤または緩衝剤には、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウムなど有機酸および有機塩基から調製した有機塩が挙げられ、クエン酸ナトリウムが好ましい。
【0133】
用量。iRNA薬は、体重1kgあたり約75mg未満、または体重1kgあたり約70、60、50、40、30、20、10、5、2、1、0.5、0.1、0.05、0.01、0.005、0.001もしくは0.0005mg未満、および体重1kgあたりRNA薬200nmole(たとえば約4.4×1016コピー)未満、または体重1kgあたりRNA薬1500、750、300、150、75、15、7.5、1.5、0.75、0.15、0.075、0.015、0.0075、0.0015、0.00075、0.00015nmole未満の単位用量で投与することができる。単位用量は、たとえば、注射(静脈内もしくは筋肉内、髄腔内、または臓器への直接注射)、吸入、または局所適用により投与することができる。
【0134】
iRNA薬の臓器への直接的な送達(たとえば肝臓への直接的送達)は、1回の投与量として1臓器あたり約0.00001〜約3mgのオーダーとすることができ、好適には、1臓器あたり約0.0001〜0.001mg、1臓器あたり約0.03〜3.0mg、片眼あたり約0.1〜3.0mgまたは1臓器あたり約0.3〜3.0mgとすることができる。
【0135】
用量は、疾患または障害を治療もしくは予防するのに有効な量であることができる。
1つの実施形態では、単位用量を1日1回より少ない頻度、たとえば2、4、8または30日に1回より少ない頻度で投与する。別の実施形態では、単位用量を頻度で投与しない(たとえば一定の頻度では投与しない)。たとえば、単位用量を単回で投与してもよい。
【0136】
1つの実施形態では、他の伝統的な治療様式で有効量を投与する。
1つの実施形態では、二本鎖iRNA薬またはsiRNA薬などのiRNA薬(たとえばプロセシングされてsiRNA薬になりうる大きなiRNA薬などの前駆物質、二本鎖iRNA薬またはsiRNA薬などのiRNA薬をコードするDNA、あるいはそれらの前駆物質)の初回用量と、1回以上の維持用量とを被検体に投与する。1回または複数回の維持用量は、一般に初回用量より少なく、たとえば初回用量の半分未満である。維持処方には、1日に体重1kgあたり0.01μg〜75mgの範囲、たとえば、1日に体重1kgあたり70、60、50、40、30、20、10、5、2、1、0.5、0.1、0.05、0.01、0.005、0.001または0.0005mgの1回または複数回用量を用いて被検体を治療することを含みうる。維持用量は、5、10または30日に1回を超えない頻度で投与することが好ましい。さらに、治療処方は一定の期間にわたって続けてよいが、この期間の長さは、特定の疾患の性質、その重症度および患者の全身状態に応じて変わることになる。好適な実施形態では、1日1回以下の頻度で用量を送達することができ、たとえば、24、36、48時間またはそれ以上の時間に1回以下、たとえば、5日または8日に1回以下で送達してよい。治療後、患者の状態の変化および疾患状態の症状の緩和について、患者をモニターすることができる。該化合物の用量は、患者が現在の用量レベルに著明な反応を示さない場合は増量してよく、疾患状態の症状の緩和が観察される場合、疾患状態が取り除かれた場合、または望ましくない副作用が観察される場合は、用量を減量してもよい。
【0137】
特定の状況下で望ましい場合、または適切とみなされる場合は、単回または2回以上で有効量を投与することができる。反復注入または頻回注入を容易にすることが望ましい場合は、ポンプ、半永久的ステント(たとえば、静脈内、腹腔内、大槽内または関節包内ステント)、またはリザーバーなどの送達デバイスの埋め込みが賢明と考えられる。
【0138】
1つの実施形態では、iRNA薬の医薬組成物は複数種のiRNA薬を含有する。これらのiRNA薬は、例えばRSV遺伝子の標的配列などの天然に存在する標的配列とは重複も隣接もしない配列を有することができる。別の実施形態では、複数種のiRNA薬は天然に存在する異なる標的遺伝子に特異的である。たとえば、RSVのPタンパク質遺伝子を標的とするiRNA薬が、Nタンパク質遺伝子などの異なる遺伝子を標的とするiRNA薬と同一の医薬組成物中に存在することができる。別の実施形態では、iRNA薬はRSVおよびPIVなどの異なるウイルスに特異的である。
治療が奏効した後は、患者に維持療法を行なって疾患状態の再発を予防することが望ましいと考えられ、その場合、本発明の化合物を体重1kgあたり0.01μg〜100gの範囲の維持用量で投与する(米国特許第6,107,094号明細書を参照)。
【0139】
iRNA薬組成物の濃度は、障害の治療または予防に有効である十分な量か、あるいはヒトの生理学的状態を調節するのに十分な量である。投与されるiRNA薬の濃度または量は、当該薬について測定したパラメータのほか、鼻腔内、口腔内または肺内投与などの投与方法によって決まることになる。たとえば、鼻腔用製剤は、鼻腔内の刺激または熱傷を避けるため、一部の成分の濃度をかなり低くする必要がある傾向がある。適切な鼻腔用製剤を提供するために、経口用製剤を最大10〜100倍に希釈することが望ましい場合もある。
【0140】
特定の要因が被検体を効果的に治療するために必要な用量に影響を及ぼすことが考えられ、こうした要因には疾患または障害の重症度、以前の治療、被検体の全身の健康状態および/または年齢、ならびに他の疾患の存在が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、二本鎖iRNA薬またはsiRNA薬などのiRNA薬(たとえばプロセシングされてsiRNA薬になりうる大きなiRNA薬などの前駆物質、二本鎖iRNA薬またはsiRNA薬などのiRNA薬をコードするDNA、あるいはそれらの前駆物質)の治療的有効量を用いた被検体の治療は、単回治療を含んでもよいし、または好適には一連の治療を含んでもよい。当然ながら、治療のために使用するsiRNA薬などのiRNA薬の有効量は、特定の治療の期間中に増減可能である。用量の変更は、本明細書に記述したような診断的測定法の結果を基に行い、これらの結果から明らかになると考えられる。たとえば、iRNA薬組成物を投与した後に、被検体をモニターすることができる。このモニタリングの情報に基づいて、iRNA薬組成物の追加量を投与することができる。
【0141】
投薬は治療される疾患状態の重症度および反応性に依存し、治療期間は数日間から数カ月間、あるいは治癒が達成されるまで、または疾患状態の縮小が達成されるまで続く。最適な投薬スケジュールは、患者の体内の薬物蓄積量を測定することから算出できる。通常の技術を有する人であれば、最適な用量、投与方法および反復速度を容易に判断することができる。最適な用量は、個々の化合物の相対的効力によって異なると考えられ、一般には、in vitroおよびin vivo動物モデルで有効であることが見出されたEC50に基づいて推定することができる。一部の実施形態では、該動物モデルには、標的のRSV RNAを産生する遺伝子など、ヒト遺伝子を発現する遺伝子導入動物が含まれる。該遺伝子導入動物は、対応する内在RNAが欠損していてもよい。別の実施形態では、検査する組成物は、動物モデルの標的RSV RNAとヒトにおける標的RSV RNAとの間で保存されている配列に、少なくとも内部領域において相補的であるiRNA薬を含んでいる。
【0142】
以下に示す実施例により本発明をさらに説明するが、これらの実施例は本発明をさらに制限するものとして解釈すべきではない。
(実施例)
RSVおよびHPIV3リンタンパク質mRNAに対する抗ウイルスsiRNAの設計
RSV Pに対するsiRNAおよびHPIV3 P mRNAに対するsiRNAを化学的に合成し(Bitko, V. and Bank, placeS. BMC Microbiol. 1, 34 (2001))、その
ex vivoでのIC50(標的の50%減少を引き起こすsiRNAの濃度)を測定した(図1a)。該siRNA配列およびIC50値を列記する(表1)。RSV−Pに対する2つのsiRNA(#1、#2)およびHPIV3に対する1つのsiRNA(#4)は明らかな抑制活性を示したため、さらなる試験のために選択した。標的mRNAとタンパク質との相関は、siRNA#1で実証しているように(図1a)、RNAi 機構と一致しており、以下に示すように、siRNAのex vivoノックダウン活性も動物における(in vivo)活性と一致していた。したがって、このex vivoアッセイは、抗ウイルスsiRNA薬のための、信頼性が高く安価で迅速かつ簡便な初期スクリーニング法を提供する。
【0143】
鼻腔内(IN)siRNAは、マウス肺においてRSVおよびHPIV3の複製を抑制する
ex vivoで活性なsiRNAが実際の感染期間に有効であるかどうか判断するために、動物モデルを使用した。BALB/cマウスは、RSV感染の進行、病理学および免疫学を研究するための十分に確立された実験モデルである(Graham, B.S., et al., J.
Med. Virol. 26, 153-162 (1988), van Schaik, S.M., et al, J. Infect. Dis. 177, 269- 276 (1998), Haeberle, H. A. et al. J. Virol. 75, 878-890 (2001) )。Tran
sIT−TKO(登録商標)試薬と複合体を形成させたsiRNAを用いてマウスの鼻腔内を処理し、4時間後に各動物に107 pfuのRSVまたはHPIV3を鼻腔内に接種した。マウス肺におけるRSVの最大増殖が感染後約5〜6日で観察でき、この時間点をさらなる試験に用いた。ex vivoで有効であったsiRNA(図1a)は、動物において高い抗ウイルス活性を示した(図1b、c)。マウス1匹あたりIN siRNA
5ナノモル用量(二本鎖siRNAでは平均約70μg)で、siRNA#1およびsiRNA#4はそれぞれ肺のRSVおよびHPIV3のウイルス価を個々の感染において約5,000倍および100倍減少させた(図1b、c)。重要なことは、トランスフェクション試薬を含有しないsiRNAも有意に肺のウイルス価を抑制したことである(図1d)。これは、iRNA薬を含有する単純な医薬組成物を用いて、吸入ベースの抗ウイルス療法が可能であることを実証している。HPIV3は、RSVほど容易にはマウスに感染しないことに注目すべきであり(Durbin, A.P., Elkins, W.R. and Murphy, B.R. Vaccine 18, 2462-2469 (2000))、これはマウス肺におけるHPIV3の複製が比較的低いためである(図1c)。ショ糖精製高力価HPIV3を接種材料として用いたところ、マウス肺において測定可能な感染を達成することができた。
【0144】
該実施例のこのほかのいくつかの特徴は、本発明のさまざまな実施形態に適用できる。第1に、上記の結果はsiRNAのウイルス特異的作用を実証している(図1)。最も効力の高い抗RSV siRNA(#1)でさえ、HPIV3ではなくRSVだけを抑制し、またこの逆も同様であったことから、IN siRNAの非特異的抗ウイルス作用に反論するものである。第2は、抗ルシフェラーゼsiRNA(Elbashir, S.M. et al. Nature 411, 494-498 (2001))は、試験した最高用量(50ナノモルまたは700μg/マウス)でさえ、いずれのウイルスをも抑制しなかったことである(図1b〜d)。最後に、IN siRNAはTransit−TKO試薬を用いた場合も用いなかった場合も、未感染マウスに明らかな不快症状を引き起こさなかった(正常な被毛、活動、食欲および体重増加ならびに呼吸困難の欠如により判断)ことから、可能性のある医薬品の開発にとって有利な薬理学的特性が示唆される点である。
【0145】
本明細書に記述しているすべての実験において、ウイルスタンパク質免疫ブロット法の結果は常にウイルス価と一致していたことから、所定の実験では、各結果が他の結果の重複するマーカーとしての機能を果たすことができるため、補足的データをすべて提示しているわけでないことに注意すべきである。
【0146】
IN siRNAの特異的抗ウイルス作用は肺感染を予防する
上に提示した結果はウイルス複製の抑制を実証したが、肺組織の感染の破棄を直接証明するものではなかった。したがって、適切なウイルスに特異的な抗体を使用して、感染後5日時点で両肺のさまざまな切片を精査した。マウス1匹あたり107 pfuを吹き込んだ結果、いずれのウイルスも頑強な肺感染を引き起こした。代表的な結果(図2a)をみると、TransIT−TKOとの複合体を形成させた抗RSV siRNA#1を5ナノモル(70μg)用いて前処理したマウスでは、感染は明らかに消滅していた。抗HPIV3 siRNA#4を5ナノモル用いた場合も、HPIV3感染が同様に退行していた。ウイルス価と同様に、トランスフェクション試薬を用いなかったsiRNAも、RSVについ提示したように、感染の有意な退行を示した。siRNAが同量である場合、試薬を含まないsiRNAは、TransIT−TKOと複合体を形成させたsiRNAのおよそ70〜80%の効果を示したと我々は推定している。本論文の残りの部分には、TransIT−TKOと複合体を形成させたsiRNAについてのデータのみを提示したが、これらの結果は、他の化学物質を含まない純粋な裸のsiRNAのIN送達が、呼吸器系病原体に対して実質的な予防を提供する可能性があることを指摘している。これは、トランスフェクション試薬自体が副作用を有するかもしれないので、特に重要である。ポリエチレンイミン(PEI)は、インフルエンザウイルスに対するsiRNAおよびDN
Aの静脈内(IV)ならびに気管内(IT)送達の担体として有効に使用されていることを、ここで述べておきたい(Ge, Q., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101, 8676-8681 (2004))。しかし、我々の経験では、PEIの直接IN投与は、siRNAを使用した場合も使用しない場合も、マウスに明らかな疾病および/または死亡を引き起こすことが多かった。
【0147】
IN siRNAは肺に局在し、インターフェロンを活性化しない
肺に観察されたウイルス抑制が鼻腔内に適用したsiRNAの直接的かつ特異的作用であったという証拠をさらに提供するため、2種類の実験を行なった。第1に、特異的なノーザン分析により肺組織中にsiRNAのアンチセンス鎖を検出することができた(図2b)。第2に、siRNAの抗ウイルス作用がインターフェロン(IFN)の活性化によるものである可能性が、以下のことにより除外された。パラミクソウイルスは一般に、IFNの影響を弱める種々の機構をコードし、特にRSVはI型IFN(IFN−α/β)に大部分が耐性であるが、II型IFN(IFN−γ)には感受性である(Schlender, J., et al., J. Virol. 74, 8234- 8242 (2000), Ramaswamy, M., et al., Am. J. Respir. Cell Mol. Biol. 30, 893-900 (2004))。本発明者らの初期の研究では、I型IFN遺伝子が欠失しているVero細胞においてsiRNAがRSVおよびHPIV3に対し活性であることが示された(データ省略)。それでもなお、種々のsiRNAによる治療から経過日数がさまざまに異なる時点でネズミ肺組織のIFN−αおよびIFN−γのレベルを測定したところ、いずれのタイプのIFNにも活性化は見出されなかった(図2c)。
【0148】
混合感染ではsiRNAはRSVおよびHPIV3を競合的に防御する
複数の病因による気道の同時感染は常に起こりうることであり、一部の研究ではRSVとHPIV3による関節感染が診断されている(Coiras, M.T., et al, J. Med. Virol. 72, 484-495 (2004))。実際に、RSV抗原のほかHPIV3抗原をも組み込んだキメラウイルスや組換え型ワクチンが、両ウイルスからの同時防御を提供するという期待を込めて構築されている(Schmidt, A.C., et al., J. Virol. 75, 4594-4603 (2001), Bernhard, W. et al. Am. J. Respir. Cell Mol. Biol. 25, 725-731 (2001))。siRNA#1およびsiRNA#4がそれぞれRSVおよびHPIV3に対し特異的抗ウイルス作用を示したことから、我々は、両ウイルスによるマウスの混合感染において両siRNAをいっしょに(それぞれ5ナノモルまたは70μg)試験することとした。対照マウスは一種類のsiRNA(#1または#4のいずれか)で治療した。両ウイルスの混合物において各ウイルスのpfuを判断する簡単な方法がないため、上述の免疫蛍光顕微鏡検査法を用い、抗RSV抗体および抗HPIV3抗体の混合物を使用して肺組織切片に二重染色法を行なった。実際にこの判定基準によって、肺組織の混合感染が達成された(図2d)。siRNA#1またはsiRNA#4で前処理したマウスでは、緑または赤のいずれかの蛍光が喪失し、両方の喪失はないことからわかるように、それぞれRSVおよびHPIV3感染が予防された(図2d)。2つのsiRNA(それぞれ5ナノモルすなわち70μg)の組み合わせを用いた場合は、両タイプの蛍光が消失し、両ウイルスの抑制が立証された(図2d)。以前と同じく、トランスフェクション試薬を含まない同一のsiRNA混合物も高い活性を示した(データ省略)。
【0149】
興味深いことに、1方のsiRNAを過度に大量に使用すると、二重感染測定法において他方のsiRNAの活性が阻害された(図3)。定量的リアルタイムRT−PCRによる測定では、siRNA#1(抗RSV P)の濃度が0、20、200nMと上昇すると、siRNA#4(抗HPIV3 P)のex vivoでのIC50は15、35、100nMに増大した(図3a)。これらの結果は、免疫ブロット法によるHPIV3 Pタンパク質の測定によって検証された(図3b)。マウスの二重感染では、各ウイルスのNタンパク質の免疫ブロット法による定量からも本質的に同じ結論が得られ、各siR
NAが5ナノモル(70μg)ではいずれのウイルスも効果的に抑制されたが、一方のsiRNAが50ナノモルの場合は他方の5ナノモルの作用が低下した(図3c)。
【0150】
IN siRNAは肺の病理を予防する
siRNAが感染を予防したことから、当然の疑問は、siRNAが病理学的特徴の発現も予防したかどうかであった。目視検査では、siRNAで治療したRSV曝露マウスは、正常な活動、艶のある被毛および全身的健康を示す非感染マウスと本質的に同様の行動および外見を示していた。そこで我々は、呼吸数、ロイコトリエンの誘導、および肺の炎症を測定した。BALB/cマウスの呼吸数は、RSV感染に応答して増加することが知られている(Haeberle, H. A. et al. J. Virol. 75, 878-890 (2001), Volovitz, B.,
et al., Pediatr. Res. 24, 504-507 (1988) )。リポキシゲナーゼ経路の産物であるロイコトリエンは、気管支平滑筋に存在するロイコトリエン受容体と結合し、喘息患者、RSV感染を有する乳児、およびRSVに感染したマウスの気道分泌物中に増加している(Volovitz, B., et al., Pediatr. Res. 24, 504-507 (1988), Welliver, R.C., 2nd, et al., J Infect. Dis. 187, 1773-1779 (2003) )。これらの化合物は、気道の粘液分泌、気管支収縮および炎症細胞による気道浸潤を引き起こすが、これらの状態は重度のRSV疾患の重要な特徴である。RSVと同時に(またはRSVの前に)抗RSV siRNA#1を投与すると、呼吸数、肺の組織病理および気管支肺胞洗浄液(BALF)中のロイコトリエン蓄積量に有意な減少が観察された(図4)。これらの値はベースラインに近い値を維持し、偽感染マウスの値にほぼ匹敵するものであった。感染後少なくとも14日時点ですべてのパラメータが低い値を維持していたことから、該siRNAは真に疾患を予防し、単に先送りしたのではないことが実証された。実際に、siRNAで治療したマウスは、最長で6週間の観察期間中に呼吸困難の明らかな徴候をまったく示さなかった。陰性対照RNAまたはluc−siRNA(表1)はすべての実験において軽減をまったく提供しなかった(データ省略)。
【0151】
IN siRNAは感染後に有効な抗ウイルス薬である
siRNAは、感染前に投与すると呼吸器系ウイルス疾患を予防できることが示されたため、感染が確立された後では治療効果があるかどうかという疑問が生じる。これは小児医学において重要な目標であるからである。この一連の実験では、RSV感染から種々の日数を経た時点でsiRNA#1を投与し、マウスの体重を毎日計測した。マウスはRSV感染から最長で約8〜10日後に体重が減少することが知られており、その後は、開始接種材料が高量すぎるかまたは中〜低量であるかによって、死亡するかまたは緩徐に体重を取り戻す(Haeberle, H.A. et al. J. Virol 75, 878-890 (2001) )。類似コホートのマウスで、所定の日に肺の試料を採取し、感染性ウイルスについて分析した。予想どおり、siRNA未治療のマウスは感染後約4日間は体重を維持したが、その後は徐々に減少し、少なくとも最長9日間まで減少が続いた(図5a)。RSVの前(データ省略)またはRSVと同時(第0日)にsiRNAで治療したマウスは、本質的に感染していないように見え、間断なく体重が増加し続けた。第1日にsiRNAを投与されたほとんどのマウスも、偽感染対照と区別するのがかなり困難であった。その後(第1〜4日)にsiRNAを投与されたマウスでは、保護効果が次第に少なくなったが、いずれの治療群についてもすべての日において体重の改善が観察された。
【0152】
これらのマウスで第2、4、6、8、10および16日に肺のRSV価を測定したところ、同じような状況が現れた(図5b)。siRNA未治療マウスでは、第4〜5日までウイルス価が上昇し、その後は徐々に低下して第16日までには検出不能レベルまで低下した。RSV感染の前または同時にsiRNA治療を行なった場合は、検査したすべての日においてウイルス価は5,000倍低かった。感染の後にsiRNAを投与した場合は、次第に効果が弱くなったが、ウイルス価は、検査したいずれの日にも未治療対照より常に低かった。siRNAは、その投与時期にかかわらず、ウイルスの複製速度を減速させ
、その結果、ウイルス価の最高値を低くするようであった。その後、ウイルス価は検出可能レベル未満に低下するが、siRNAの投与が早ければ早いほど、早い時期に検出可能レベル未満まで低下する。たとえば、未治療の感染マウスの肺では、感染後最長16日時点でRSVが検出できたが、第1日にsiRNAで治療したマウスでは感染後10日時点で検出できなかった。前述と同様、陰性対照siRNAまたはルシフェラーゼsiRNA(表1)は、すべての実験で何の作用も示さなかった(データ省略)。総合すると以上の結果は、RSV P siRNAは感染後に投与した場合でも治療効果を有し、マウスは未治療コホートよりも常に病状が軽く、早く回復したことを示していた。
【0153】
考察
本明細書の主な所見は、適切に設計され鼻腔内に適用されたsiRNAは、呼吸器感染からの防御を提供するとともに、感染後に適用した場合も意味のある療法を提供する、ということにある。簡単な手持ち式の吸入器で小粒子エアロゾルにより送達されるsiRNAを、肺感染の予防または治療に使用することができる。我々の原稿が準備中であった間に、siRNAが別の重要な呼吸器系病原体であるインフルエンザウイルスをネズミモデルで抑制したことを示した2つの報告書が現れた(Ge, Q., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101, 8676- 8681 (2004), Tompkins, S.M., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101, 8682-8686 (2004) )。一方の研究(Ge, Q., et al., Proc. Natl. Acad. Sci.
USA 101, 8676-8681 (2004))では、合成siRNAまたはsiRNAを発現するプラスミドDNAがIV経路とIT経路の組み合わせを介して投与された。他方の研究(Tompkins, S.M., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101, 8682-8686 (2004))では、まず、流体力学的IV送達によりsiRNAを送達し、16〜24時間後に、マウスにIN経路でインフルエンザウイルスを感染させ、液体担体中のsiRNAの第2の投与をIN経路で行なった。2日後に肺のウイルスの存在を検査した結果、種々の株のインフルエンザウイルスで10〜50倍の抑制が観察された。RSVおよびPIVに対する本発明者らの研究は、これまでの研究を上回る次のような改善および単純化を提供する。すなわち、(i)送達は鼻腔内だけであり、そのため比較的非侵襲性で痛みがなく、吸入器または噴霧ベースの療法に使用しやすい。(ii)いかなる担体も含まないsiRNAが有意に有効であり、このため担体の副作用の潜在的なリスクが軽減される。(iii)約5ナノモルのsiRNA(二本鎖RNA70μg)の単回投与は感染の全期間にわたって有益であるようである。標的配列(たとえばRSV P)のより包括的なスクリーニングと、より新しい化学手法の使用によって、有意に低いIC50と良好な薬物動態を有するsiRNAがもたらされ、その結果、用量がさらに少なくなると考えられる。siRNAは、特に高濃度で、さまざまな程度の非特異的作用すなわち的外れの作用を示す(Jackson, A.L. et al.
Nat. Biotechnol. 21, 635-637 (2003), Sledz, C.A., et al., Nat. Cell Biol. 5, 834-839 (2003), Persengiev, S.P., et al., RNA 10, 12-18 (2004), Bridge, A.J., et al., Nat. Genet. 34, 263-264 (2003))。治療においてこれが懸念となることは明らかであり、siRNAのIV投与は全身性の副作用を招く可能性がある。対照的に、鼻腔内に送達したsiRNAは、専ら局在化するのではないとしても、呼吸器組織に集中する可能性が高く、このため副作用は最小限に抑えられる。鼻腔内に送達された合成siRNAによりIFNが活性化されないことは、化学的に合成された5’リン酸を欠くsiRNAが、細胞培養物でIFN経路を活性化しないことを示した以前の所見(Kim, D.H. et al. Nat. Biotechnol. 22, 321-325 (2004))を裏付け、さらに拡大するものである。総合すると、抗ウイルス活性と特異的mRNAのノックダウンとの相関(図1)、標的組織(肺)におけるsiRNAの検出(図2b)、IFN活性化の欠如(図2c)、およびsiRNAのウイルス特異的作用(図1〜3)はすべて、抗ウイルス作用が特異的で直接的であり、かつRNAiにより仲介されていることを示す証拠を提供するものである。(iii)RSVおよびPIVなどの呼吸器系ウイルスは、呼吸器組織を感染させるうえで組織親和性において高い選択性を示す。このため、IN送達は、siRNAが感染部位を標的とすることを確実にしており、薬理学的に理想的な状態である。
【0154】
RSVとHPIVは共感染することがあるが、これらの相互作用は大部分が無視されてきた。1つのsiRNAが別のsiRNAにより阻害されたことを示した観察所見の背後にある正確な理由については、さらなる研究が必要である。可能性は除外できないものの、ex vivo(細胞培養物)でも起こるという事実から、インターフェロンなどの動物に存在する体液因子およびサイトカインが原因とは考えにくい。RSVは実際にインターフェロンの活性化を阻害し(Schlender, J., et al., J. Virol. 74, 8234-8242 (2000), Ramaswamy, M., et al., Am. J. Respir. Cell Mol. Biol. 30, 893-900 (2004) )、このためPIVの増殖を抑制するのではなく促進するはずである。別の可能性として、一方のウイルスの増殖が、細胞内資源を求めた競合などの他の機構を通して、他方のウイルスを抑制することが考えられる。また一方では、細胞におけるRNAi機構は飽和しうることが知られており、このため2つのsiRNAがこの機構の一定のプールを求めて競合している可能性が考えられる(Barik, S. Virus Res. 102, 27-35 (2004), (Hutvagner, G, et al., PLoS Biol. 2, E98 (2004) )。このような競合は、siRNAの比較的高い用量、すなわち数十ないし数百ナノモルに限って感知できたことに注目すべきである(図3)。対照的に、我々のsiRNAは、わずか数ナノモルでマウスにほぼ完全な防御を提供した。このため、観察された競合は、IC50が低いナノモル範囲にあるsiRNAでは実際的な懸念となる問題ではない。
【0155】
予防薬として使用したとき、該siRNAは感染を予防しただけでなく、体重、肺病理、呼吸器パラメータおよびアレルギーマーカーで測定した疾患プロセスのさまざまな側面の出現も抑制した(図4)。マウスとヒトにおける疾患プロセスの動態は比較的類似しており、両種においてRSV感染後は急速に免疫病理学的変化が起こる。感染が起こった後に治療薬として使用する場合は、すでに生じた病理変化をsiRNAが正すことは期待されない。しかし、その場合も、ウイルスのさらなる増殖は抑制され、より速い治癒および回復がもたらされる(図5)。このため、いかなる疾患においてもより早期の治療がより良い予後をもたらすはずではあるが、RSV感染患者には治療の「絶好のタイミング」がいつの時点にも存在するようである。裸のsiRNAの有効性については、今後明らかにしなければならない課題である。呼吸器組織、特に肺は、自然状態で小分子の交換に対して受容性が高い可能性があり、あるいは、感染するとそのようになる可能性も考えられる。
【0156】
最後に、siRNAと標的との対合の厳密度(ストリンジェンシー)に応じて、siRNAへの曝露がsiRNA耐性ウイルスの選択を引き起こす可能性があり、HIVではこれがすでに立証されている(Das, A.T. et al. J. Virol. 78, 2601-2605 (2004) )。本明細書で試験したsiRNAでは、この問題に直面していない。siRNAで治療したネズミの肺から回収できたウイルスは、A549細胞培養物中で増殖し、siRNAに対し最初の接種材料と同じIC50を示すことが見出された(データ省略)。さらに、プラークから精製した6つほどのRSV分離株では、P遺伝子のsiRNA領域の配列は元の野生型配列であった(データ省略)。今後、時折発生する耐性に出くわすことがあるとしても、IC50が低く、かつP mRNAの異なる領域または異なるウイルスmRNAを標的とする第2のsiRNAを多剤処方で用いることができ、これにより、ウイルス耐性の可能性を低くすることができる。
【0157】
方法
ウイルス、siRNAおよび他の試薬。RSV Long株およびヒトPIVタイプ3(HPIV3)JS株を、RSVについて記述されているようにHEp−2単層上で増殖させた(Burke, E., et al., Virology 252, 137-148 (1998), Burke, E., et al., J. Virol. 74, 669-675 (2000), Gupta, S., et al., J. Virol. 72, 2655-2662 (1998) )。RSVは約70時間の時点、HPIV3は50時間の時点で、放出された子孫ウイルスを
含有する細胞外培地を収集した。RSVについての記述とほぼ同じように(Ueba, O. Acta. Med. Okayama 32, 265-272 (1978))、ポリエチレングリコール(MW8,000)を用いた沈殿およびショ糖密度勾配遠心法により、ウイルスを精製し濃縮した。最終的な調製物は、108 〜109 pfu/mlの範囲の感染力価を有しており、小分けして−80℃で凍結保存した。すべての感染性ウイルス価(pfu)を、ニュートラルレッド染色を用い、HEp−2単層上でアガロースプラーク測定法により測定した(Burke, E., et al., Virology 252, 137-148 (1998), Burke, E., et al., J. Virol. 74, 669-675 (2000), Gupta, S., et al., J. Virol. 72, 2655-2662 (1998) )。
【0158】
siRNAはダーマコン(Dharmacon )から購入し、同社の推奨どおり処理した(Bitko, V. and Barik, placeS. BMC Microbiol. 1, 34 (2001) )。TransIT−TKO
(登録商標)試薬は米国ウィスコンシン州マディソン所在のミラスバイオ社(Mirus Bio Corp)から入手した。ウサギで作製されたRSV−P抗体をすべての免疫組織学的染色に用いた(Bitko, V. and Barik, placeS. BMC Microbiol. 1, 34 (2001) )。精製したビ
リオンに対してヤギで作製されたポリクローナルRSVおよびHPIV3抗体を、それぞれ米国カリフォルニア州テメキュラ所在のケミコン(Chemicon)および米国カリフォルニア州エメリービル所在のバイオスパシフィック(BiosPacific )から購入したが、これらの抗体により免疫ブロット法で検出される主なウイルスのバンドはヌクレオキャプシドタンパク質(N)である。プロフィリン抗体については以前に記述されている(Burke, E.,
et al., J. Virol. 74, 669-675 (2000), Gupta, S., et al., J. Virol. 72, 2655-2662 (1998))。
【0159】
ウイルス感染およびsiRNA治療。単層培養で増殖したA549細胞の感染およびsiRNA処理を、記述どおりに行なった(Bitko, V. and Barik, placeS. BMC Microbiol. 1, 34 (2001) )。マウスにおけるRSVの鼻腔内投与は、確立された手順であり、細
気管支炎を引き起こす。体重が16〜20gで病原体未感染の8〜10週齢雌BALB/cマウスをチャールズリバー(Charles River Laboratories)から購入した。感染またはsiRNA投与のための麻酔は、ネンブタール0.2ml(5mg/ml)の腹腔内注射で達成された。安楽死は、ネンブタール0.3mlで麻酔した後に頚椎脱臼法により行なった。siRNAは、1μl中に所望量が含まれるように、製造業者から提供された希釈用緩衝液で適切に希釈した。これを実験の直前にTransIT−TKO(登録商標)試薬5μlおよびOpti−MEM(登録商標)(米国カリフォルニア州カールズバッド所在ギブコ・インビトロゲン((Gibco Life Technologies, Invitrogen ))35μlと混合し、総容量41μlとする。担体なしでsiRNAを用いる場合は、トランスフェクション試薬5μlの代わりにOpti−MEM5μlを使用した。ショ糖で精製したウイルスを、30μl中に107 pfuのウイルスが含まれるように、冷やしたリン酸緩衝食塩水(PBS)で感染の直前に適切に希釈した。偽感染は、ウイルスを含まない同一容量のPBSで行なった。siRNA混合物およびウイルスはいずれも2つの鼻孔に等しく分け、マイクロピペットで塗布した(すなわち、各鼻孔に20.5μl中のsiRNA35μgと15μl中のウイルス0.5×107 pfuを投与した)。マウスは自然の呼吸で液体をすべて吸入したため、特別な器具は必要なかった。二重感染については、RSVおよびHPIV3株を希釈し、各ウイルス107 pfuの混合物と、すでに述べた容量と同じ各5ナノモル(70μg)のsiRNA#1およびsiRNA#4の混合物を各マウスに与えた。動物実験は、所定のすべてのガイドラインに従い、IACUCによって承認された。
【0160】
肺ウイルス測定法および臨床測定。動物を毎日チェックし、体重を測定した。鼻汁、うっ血および細気管支炎による呼吸数の増加、光沢のない被毛、しわくちゃの毛皮および/または脱毛、ならびに全体的無気力および倦怠を含めた標準のRSV症状を記録した。呼吸数(1分あたりの呼吸)は、ビデオ撮りによって測定した(Volovitz, B., et al., Pe
diatr. Res. 24, 504-507 (1988))。くしゃみ、鼻すすりおよび溜息は集計から除外した。感染後(p.i.)種々の日数が経過した時点で肺を切除し、下に記述するように、感染性ウイルス測定法、免疫ブロット分析、または免疫染色法によるRSV検出に供した。
【0161】
ウイルス価を測定するため、2%FBSを補ったDMEM中で冷やした状態で肺をホモジナイズした(組織100mgあたりDMEM2ml)。抽出物を2,000×gで10分間遠心分離し、上清の連続希釈物を測定してpfuを求めた。ウイルスタンパク質の免疫ブロット(Burke, E., et al., Virology 252, 137-148 (1998) )では、ホモジナイズした(遠心分離前の)試料10μlを2×SDS−PAGE試料用緩衝液10μlに加え、混合物を98℃で5分間加熱し、微量遠心分離機で室温にて遠心分離することにより清澄化し、透明な上清10μlを、ヤギの抗RSV抗体および抗HPIV3抗体を用いて免疫ブロット法により分析した。IFNを測定するため(Durbin, J.E. et al. J. Immunol. 168, 2944-2952 (2002) )、肺をPBS中でホモジナイズし、上のように処理して、検出限界10pg/mlのELISAキット(米国ミネソタ州ミネアポリス所在のアール・アンド・ディー・システムズ(R and D Systems ))で連続希釈物を検定した。
【0162】
肺の病理組織検査については、肺を潅流して10%緩衝化ホルマリンに固定し、パラフィン包埋した。厚さ4μmの複数の切片をヘマトキシリンおよびエオシンで染色し、2名の別々の研究者が光学顕微鏡下で細胞の炎症について採点した。血管および細気管支の周囲の炎症細胞の層を数えることにより、炎症性浸潤を採点した。炎症細胞の層が0〜3である場合を正常とみなし、血管または細気管支の周囲の50%以上を囲む炎症細胞が3層を超える場合を異常とみなした。血管周囲および細気管支周囲の異常なスペース数をスペース総数で割った数を、病理スコアとしてパーセンテージで報告した。各動物について、肺あたり合計約20箇所のスペースについて集計した。107 のRSV(かつsiRNAなし)では(Haeberle, H. A. et al. J. Virol. 75, 878-890 (2001) )、早くも第1日に血管周囲および細気管支周囲のスペースの約30〜35%に異常を見出すことができ、第5日付近で最高値に達した。
【0163】
免疫組織検査については(Haeberle, H.A. et al. J. Virol. 75, 878-890 (2001))、肺組織を100%OCT化合物で包埋し、−80℃で凍結させた。切片を切り取ってスライド上に置き、風乾してアセトンで固定し、PBSで洗浄し、0.2%TritonX−100含有PBSで透過化処理し、10%ヤギ血清含有PBSで室温にて20分間ブロッキングした。PBSで複数回洗浄した後、1.5%ヤギ血清含有PBSで希釈した抗RSV−P抗体または抗HPIV3抗体のいずれかとともに、組織を室温で2時間インキュベートした。該スライドを再びPBSで複数回洗浄し、FITC結合抗ウサギおよびTRITC結合抗ヤギ免疫グロブリンG抗体を用いて、2つの抗体を検出した。室温で1時間インキュベーション後、該スライドにPBSで最後の洗浄を行い、DABCO−DAPI封入剤でマウントし、蛍光顕微鏡法で観察した(Bitko, V. and Barik, placeS. BMC Microbiol. 1, 34 (2001) )。
【0164】
気管支および肺を5×1.0mlの生理食塩水(1mlあたりインドメタシン10μg含有)で潅流することにより、気管支肺胞洗浄液(BALF)を収集し(Bernhard, W. et al. Am. J. Respir. Cell Mol. Biol. 25, 725-731 (2001) )、マウス1匹あたりのBALFの総回収量は4.2〜4.4mlであった。血液汚染の明らかな兆候を有する試料は破棄した。5,000×g、4℃で15分間遠心分離することによりBALFから細胞を除去し、さらに分析を行うまで試料を−80℃で保存した。ELISAキット(米国ミネソタ州ミネアポリス所在のアール・アンド・ディー・システムズ)を用い、製造業者のプロトコルに従ってBALF中のシステイニルロイコトリエン結合体の濃度を測定した。製品説明書によれば、種々のロイコトリエンに対する該キットの交差反応性は、LTC4
100%、LTD4 115%、LTE4 63%およびLTB4 1.2%であった

【0165】
リアルタイムPCR実験については、HPIV3感染細胞からRNAを単離し、GeneAmp(登録商標)RNA PCR Coreキット(米国カリフォルニア州フォスター・シティ所在のパーキンエルマー・アプライドバイオシステムズ(Perkin-Elmer Applied Biosystems ))を用いて第一鎖のcDNAを作製した。プレミアバイオソフト(Premier Biosoft)からのBeacon Designerソフトウェア バージョン2.13により、プライマーを設計した。次のプライマーをHPIV3 P mRNAの増幅に使用した:5’−GGTCATCACACGAATGTACAAC−3’(配列番号1)および5’−CTTGGAACATCTGCAGATTGTC−3’(配列番号2)。バイオラッド(BioRad Laboratories )(米国カリフォルニア州ハーキュリーズ所在)のiCycler(登録商標)iQ(登録商標)Quantitative PCRシステムで、iQ(登録商標)Sybr(登録商標)Green SuperMixを使用して、リアルタイムPCRを行なった。該製造会社のソフトウェアおよび内部対照としてGAPDHを用いて、遺伝子発現測定値を算出した。
【0166】
32Pで末端を標識した相補的合成オリゴデオキシヌクレオチドを用いて、本質的には記述されているように(Reinhart, B.J., et al., Genes and Dev. 16, 1616-1626 (2002) )、肺組織のsiRNAのアンチセンス鎖を抽出し、ノーザンハイブリダイゼーションにより検出した。
【0167】
統計解析。治療群間またはin vitro実験セット間の変化を、一元配置ANOVAで解析し、次にBonferroni補正を用いたStudentのt検定で解析した。ロイコトリエン濃度の増大は、Mann−Whitney検定で判定した。数値データはすべて、少なくとも3回の別個の実験から収集した。結果を平均値±SEM(グラフのエラーバー)で表示した。差は、P<0.05で有意とみなした。
【0168】
【表1】

【0169】
上記表において、RSV−P、HPIV3−Pおよびルシフェラーゼ配列のGenBank登録番号はそれぞれM22644、Z11575およびX65324である。siRNA配列は、本発明者らの研究所で行なったウイルス株の実際の配列決定に基づいたものであり、このためsiRNA#2は、GenBankの配列とは1ヌクレオチド異なっている(下線を引いたCはM22644ではUである)ことに注意されたい。陰性対照のsiRNA配列はキアゲン(Qiagen)(米国カリフォルニア州バレンシア所在)から入手した。
【図面の簡単な説明】
【0170】
【図1】ex vivoにおける抗ウイルスsiRNAの力価測定を示す図。(a)内部対照としてプロフィリンを用いた、RSV感染A549細胞(ex vivo)の総タンパク質の免疫ブロット分析。ボックス内の数値はsiRNA処理後の標的P mRNAのレベルを示しており、未処理のレベルに対する割合(%)で表している。次の3つのパネルでは、siRNAから4時間後にウイルスを投与した。(b)RSV感染マウスにおける肺感染ウイルス(各データ点でn=8)、(c)HPIV3感染マウスにおける肺感染ウイルス(各データ点でn=8)、(d)いかなるトランスフェクション試薬も用いずに裸のsiRNAを投与したこと以外は(b)と同じ。星印は有意な抑制を示す(P<0.05)。siRNAは表1に記載する。
【図2】siRNA治療ネズミ肺におけるIFN活性化を伴わないウイルス抗原のノックダウンを示す図。(a)siRNAから4時間後にウイルスを投与し、感染から4日後に肺の間接的免疫組織検査によりウイルス抗原を検出した(緑、RSV;赤、HPIV3)。(1)偽感染、RSV P抗体で精査;(2〜6)RSV感染、RSV P抗体で精査;(7,8)HPIV3感染、HPIV3抗体で精査。次のsiRNA(5ナノモル、約70μg)を用いた:(1,2)なし;(3)siRNA#1+TransIT−TKO試薬;(4)siRNA#1、試薬なし;(5)陰性対照siRNA+TransIT−TKO試薬 ;(6)luc−siRNA+TransIT−TKO;(7)なし;(8)siRNA#4+TransIT−TKO。代表的な肺組織は感染から5日後のものとした。バー=400μm。(b)標識したRSV P DNAをプローブとして用いて、siRNA投与から2日後の種々の量の肺の総RNA量をノーザン分析で解析することにより、siRNA#1のアンチセンス鎖を検出した。RSV NS1に対するプローブは反応しなかったことから検出の特異性が示された。(c)IN siRNA(マウス1匹あたり10ナノモルまたは140μg)は、I型(IFN−α)およびII型(INF−γ)のいずれの肺IFNをも検出域値(約10pg/ml)を上回る状態に活性化しなかったが、対照の肺では、RSV感染がII型を活性化し、I型を低レベルで活性化した。レーン1、siRNA#1;レーン2、siRNA#4;レーン3、Luc siRNA;レーン4、RSV感染であるがsiRNAなし(エラーバーも示した)。siRNA投与から2日後と感染から4日後に肺を得た(各グラフn=4)。(d)間接的免疫組織検査により測定した、RSVおよびHPIV3による二重感染のsiRNAによる抑制(緑、RSV;赤、HPIV3)。(1,5)siRNAなし;(2,6)siRNA#1、5ナノモル(70μg);(3,7)siRNA#4、5ナノモル(70μg);(4,8)siRNA#1およびsiRNA#4、各5ナノモル。(1〜4)RSV P抗体で精査;(5〜8)HPIV3抗体で精査。siRNAから4時間後にウイルスを投与し、感染から4日後に肺組織を検査した。バー=400μm。
【図3】RSVおよびHPIV3による二重感染における高濃度siRNAでの競合的ウイルス抑制を示す図。(a)リアルタイムPCR(ex vivo);(b)免疫ブロット(ex vivo);(c)ヤギの抗ウイルス抗体を用いた肺免疫ブロット。それぞれのウイルスのNタンパク質のバンド強度を定量し、siRNA未治療の肺試料に対する割合(%)で表した。siRNAから4時間後にウイルスを投与し、肺組織は感染から5日後のものとした(各データ点でn=4)。黒色バー、RSV;白色バー、HPIV3。標準誤差は示すとおりである。
【図4】siRNA#1治療マウスにおける肺病理の軽減および喘息マーカーの減少を示す図。(a)呼吸数;(b)肺の病理組織;(c)ロイコトリエン。すべての測定法においてP<0.002;すべてのデータ点でn=4;標準誤差のバーを示す。siRNA(70μg)から4時間後にウイルスを投与した。陰性対照のsiRNAで治療したマウスはsiRNA未治療マウスと区別がつかなかった(データ省略)。
【図5】RSV疾患におけるsiRNAの治療効果を示す図。マウスのRSV感染期間中の(a)体重および(b)肺のウイルス価の変化。標準誤差のバーを示す;各データ点につきn=6。矢印はsiRNA(70μg)の投与日を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の細胞中のウイルスタンパク質、ウイルスmRNAまたはウイルス価のレベルを減少させる方法であって、該被検体にiRNA薬を投与するステップを包含し、該iRNA薬が、第1の哺乳動物呼吸器系ウイルスからの遺伝子と相補的な少なくとも15個連続したヌクレオチドを有するセンス鎖と、該センス鎖に相補的な少なくとも15個連続したヌクレオチドを有するアンチセンス鎖とを含んでなることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記哺乳動物呼吸器系ウイルスがPIVおよびRSVからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記RSVからの前記遺伝子がPタンパク質遺伝子である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記iRNA薬が表1のiRNA薬のうちの1つから選択される15ヌクレオチドを含んでなる、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記iRNA薬が被検体の鼻腔内に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記iRNA薬が吸入または噴霧により被検体に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記iRNA薬が前記被検体のウイルス価を減少させる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記被検体に第2のiRNA薬を共投与することをさらに包含し、該第2のiRNA薬が、第2の哺乳動物呼吸器系ウイルスからの遺伝子と相補的な少なくとも15個連続したヌクレオチドを有するセンス鎖と、該センス鎖に相補的な少なくとも15個連続したヌクレオチドを有するアンチセンス鎖とを含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記被検体がウイルス感染を有すると診断されている、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の哺乳動物呼吸器系ウイルスがRSVであり、前記第2の呼吸器系ウイルスがPIVである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記被検体が前記第1および第2の哺乳動物呼吸器系ウイルスによるウイルス感染を有すると診断されている、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
被検体の細胞中の第1および第2のウイルスからのウイルスタンパク質のレベルを減少させる方法であって、該被検体に第1および第2のiRNA薬を共投与するステップを包含し、該第1のiRNA薬が、第1の哺乳動物呼吸器系ウイルスからの遺伝子と相補的な少なくとも15個連続したヌクレオチドを有するセンス鎖と、該センス鎖に相補的な少なくとも15個連続したヌクレオチドを有するアンチセンス鎖とを含んでなり、該第2のiRNA薬が、第2の哺乳動物呼吸器系ウイルスからの遺伝子と相補的な少なくとも15個連続したヌクレオチドを有するセンス鎖と、該センス鎖に相補的な少なくとも15個連続したヌクレオチドを有するアンチセンス鎖とを含んでなることを特徴とする方法。
【請求項13】
前記第1の哺乳動物呼吸器系ウイルスがRSVであり、前記第2の哺乳動物呼吸器系ウイルスがPIVである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記iRNA薬が鼻腔内に投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記iRNA薬が吸入または噴霧により投与される、請求項13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−517940(P2008−517940A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−538147(P2007−538147)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/038269
【国際公開番号】WO2006/062596
【国際公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(594066213)サウス、アラバマ、メディカル、サイエンス、ファウンデーション (3)
【氏名又は名称原語表記】SOUTH ALABAMA MEDICAL SCIENCE FOUNDATION
【Fターム(参考)】