説明

RSVサブユニット成分およびインフルエンザウイルス調製物を含む多価免疫原性組成物

【課題】呼吸器合胞体ウイルスおよびインフルエンザウイルスによる感染に起因する疾患から防御するため、成人、具体的には高齢者に投与するための免疫原性組成物の提供。
【解決手段】呼吸器合胞体ウイルスおよびインフルエンザウイルスによる感染に起因する疾患から防御するため、成人、具体的には高齢者に投与するための免疫原性組成物であって、免疫有効量のRSVの精製された融合(F)タンパク質、付着(G)タンパク質およびマトリックス(M)タンパク質の混合物、ならびに免疫有効量の非毒性インフルエンザウイルス調製物を含んでなる組成物。この組成物の成分は、in vivo投与のためのワクチンとして製剤化された場合、互いの免疫原性を損なうことはない。免疫原性組成物は、また、アジュバントを含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、特に成人へ投与するための多価免疫原性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
ヒト呼吸器合胞体ウイルスは、幼児および幼い子供の下部呼吸器感染症の主な原因である(ref.1〜3;参考文献のリストを本開示の最後に示し、リスト中の各文献を参照により本明細書に組み込む)。世界的には、毎年6,500万の感染症が発生し、160,000人の死者を出している(ref.4)。米国だけでも一年で100,000人の子供が、RSウイルスに起因する肺炎および気管支炎による入院を必要としている(ref.5、6)。RSウイルス感染症の入院患者および子供の外来治療を行うのに、米国では毎年3億4000万ドル以上を費やしている(ref.7)。RSウイルス感染による重篤な下部呼吸器感染症は、主に2から6カ月の幼児に発生する(ref.8)。RSウイルスおよび3型パラインフルエンザウイルス(PIV−3)の感染による重篤な呼吸器疾患に起因する合併症により、米国では毎年4,000人の幼児が死亡している。世界保険機構(WHO)および国立アレルギー感染病研究所(NIAID)ワクチン諮問委員会は、ワクチン開発についてHIVの次にRSウイルスを位置づけた。
【0003】
成人におけるRSV感染症は当初、施設内の高齢者などの特定のハイリスク集団のみに見られる重要な問題であると考えられていた。しかしながら、この感染症が以前は健康であった成人にもしばしば発生するという証拠が蓄積されている(ref.9)。
【0004】
高齢者におけるRSV感染症は通常、前にも多くの感染症が見られた高齢者に再感染として現れる。これらの感染症は、異常な気道抵抗性および慢性閉塞性肺疾患の憎悪を引き起こすことが報告されている。
【0005】
60歳以上の成人では、RSVは通常、軽度の鼻づまりを引き起こし、発熱、食欲不振、肺炎、気管支炎および死につながることもある(ref.10)。
【0006】
RSVの構造および組成は解明されており、教科書「Fields Virology」Fields、B.N.他、Raven Press、N.Y.(1996年)、特にCollins、P.、McIntosh、K.、およびChanock、R.M.による44章、1313〜1351ページの「Respiratory Syncytial Virus」に詳しく記載されている(ref.11)。
【0007】
RSVの2つの主要防御抗原は、外被融合(F)および付着(G)糖タンパク質である(ref.12)。Fタンパク質は、タンパク質分解によりジスルフィド結合したF1(約48kDa)およびF2(約20kDa)ポリペプチド断片に切断される約68kDaの前駆体分子(F0)として合成される(ref.13)。Gタンパク質(約33kDA)は、高度にO−グリコシル化されており、見かけの分子量が約90kDaの糖タンパク質を生成する(ref.14)。RSウイルスの2つの広義のサブタイプは、AおよびBと定義されてきた(ref.15)。これらのサブタイプ間の主要な抗原性の相違は、G糖タンパク質に見い出されるが、F糖タンパク質はより保存されている(ref.7、16)。
【0008】
FおよびG糖タンパク質によって生じる抗体応答の他に、RSV感染によって生成するヒト細胞傷害性T細胞は、RSV Fタンパク質、マトリックスタンパク質M、核タンパク質N、小さな疎水性タンパク質SH、および非構造的タンパク質1bを認識することが分かった(ref.17)。
【0009】
安全で有効なRSVワクチンは市販されておらず、緊急に必要である。RSウイルスワクチン開発への手法は、ホルマリンによるウイルスの不活化(ref.18)、低温適応性および/または温度感受性変異体ウイルスの分離(ref.19)、および精製したFまたはG糖タンパク質(ref.20、21、22)であった。臨床試験の結果は、生弱毒化ワクチンとホルマリン不活化ワクチンのいずれもRSウイルス感染に対し、ワクチンを十分に保護できないことを示した(ref.23から25)。鼻腔内投与された弱毒低温適応性および/または温度感受性RSウイルス変異体が遭遇する問題点には、臨床疾病率、遺伝的不安定性および過剰弱毒化(overattenuation)があった(ref.26から28)。皮下投与された生RSウイルスワクチンもまた無効であった(ref.29)。不活化RSウイルスワクチンは通常、不活化剤としてホルマリンを用いて調製されてきた。Murphy他(ref.30)は、ホルマリン不活化RSウイルスで免疫化された幼児および子供における免疫応答についてのデータを報告した。幼児(2から6カ月)は、F糖タンパク質に対して高い抗体価を示したが、Gタンパク質に対する応答は不十分であった。年長の幼児(7から40カ月)は、RSウイルスに感染した子供に匹敵するFおよびG抗体価を示した。しかしながら、幼児と子供が示した中和抗体は、未変性のRSウイルスに感染した同年齢の者よりも低いレベルであった。主な免疫原性RSウイルスタンパク質であるF(融合)およびG(付着)タンパク質に対する抗体価は高いが中和抗体価は低いという不均衡な免疫応答は、ホルマリン処理によってFおよびG糖タンパク質中の重要な抗原決定基が一部変化したためと考えられる。さらに、ホルマリン不活化RSウイルスワクチンを投与された何人かの幼児は、続いて未変性のRSウイルスに曝露すると、免疫化されていない幼児より重篤な下部呼吸器疾患を示した(ref.24、25)。したがって、ホルマリン不活化RSウイルスワクチンは、ヒトの使用には不適当であると判断された。
【0010】
異常な免疫応答の証拠は、ホルマリン不活化RSウイルスで免疫化されたコットンラットでも認められた(ref.31)。さらに、コットンラットにおけるRSウイルスホルマリン不活化ワクチンの評価は、生ウイルスでチャレンジすると、免疫化された動物には肺組織変化の拡大が現れることも示した(ref.32)。
【0011】
ホルマリン不活化RSウイルスワクチン調製物に起因する疾患増強の機構は確かめられているが、有効なRSウイルスワクチンの開発における主要な障害である。この増強は、部分的にFおよびG糖タンパク質に対するホルマリンの作用によるものと考えられる。さらに、疾患増強のRSウイルス非特異的機構は、ワクチン調製物中に存在する混入した細胞または血清成分に対する免疫応答が部分的に疾患の憎悪に寄与するのではないかと示唆されている(ref.33)。実際、HEp−2細胞の溶解物のワクチンを接種され,HEp−2細胞上で生長させたRSウイルスでチャレンジされたマウスおよびコットンラットは、高まった肺の炎症性反応を呈した。
【0012】
さらに、酸性pHにおける溶出を用いイムノアフィニティ・クロマトグラフィによって精製されたRSウイルス糖タンパク質は、免疫原性かつ防御性であるが、コットンラットにおける免疫強化を低下させた(ref.31、34)。
【0013】
インフルエンザウイルス感染は、呼吸器疾患に最もよくみられる原因である。通常、この疾患は、成人においては通常華氏100度(約37.8℃)から華氏103度(約39.4℃)、子供ではより高いことがある高熱、咽頭炎、鼻水または鼻づまりなどの呼吸器症状、ならびに頭痛、筋肉痛および極度な疲労をもたらす。例年、米国では約20,000人の死亡、およびそれよりずっと多い入院にインフルエンザが関係している(CDC)。
【0014】
インフルエンザウイルスは、A、BおよびCと表される3つのタイプに分類される。AおよびB型は、ほぼ毎年発生する流行病の原因である。インフルエンザウイルスは、突然変異により頻繁に変化し、これは抗原ドリフトと呼ばれている。
【0015】
インフルエンザAウイルスは、2つの表面抗原、赤血球凝集素(H)およびノイラミニダーゼ(N)に基づいてサブタイプに分類される。広範囲にわたるヒト疾患を引き起こすインフルエンザAウイルスには、赤血球凝集素の3つのサブタイプ(H1、H2、H3)およびノイラミニダーゼの2つのサブタイプ(N1、N2)が知られている。これらの抗原に対する免疫は、感染の可能性を減らし、感染が生じた場合には疾患の重症度を軽くする。
【0016】
抗原ドリフトの結果、インフルエンザの新たな変異体に起因する呼吸器疾患の大流行が発生し続ける。したがって、循環する菌株の抗原の特徴は、年毎のワクチンに含まれるウイルス株を選択する根拠を提供する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
抗原を混合し、複数の病原体に対する防御をもたらすワクチンには多くの現実的かつ潜在的な利点があるにもかかわらず、これらの組合せは、個々の成分の免疫原性に対して有害な影響を持つことがある。
【0018】
前述のように、RSVおよびインフルエンザウイルス感染は、成人集団、特に高齢者に流行し、単一のワクチン組成物の投与によってこのような感染に対する防御をもたらすことが望まれる。しかしながら、単一製剤でRSVとインフルエンザウイルス双方に対する防御をもたらすのに適した混合抗原について、潜在的有害効果は知られていない。
【課題を解決するための手段】
【0019】
(発明の概要)
発明者他は意外にも、ワクチン製剤中でRSVタンパク質の混合物を非毒性のインフルエンザウイルスと混合することが、成分を個々に投与することによって得られる応答とほぼ同じ免疫応答をもたらすことを見いだした。したがって、単一製剤中で混合することにより、個々の成分の免疫原性に対する有害な影響は観察されない。発明者他はまた、非毒性のインフルエンザウイルスの存在下で免疫原性組成物をアジュバントと共に製剤化することにより、RSVタンパク質の混合物に対する免疫応答の増強が得られることを見いだした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
したがって、本発明の一態様では、宿主において呼吸器合胞体ウイルス(RSV)およびインフルエンザウイルスによる感染に起因する疾患に対する防御を付与するための多価免疫原性組成物であって、(a)免疫有効量のRSVの精製された融合(F)タンパク質、付着(G)タンパク質およびマトリックス(M)タンパク質の混合物、ならびに(b)免疫有効量の非毒性インフルエンザウイルス調製物を含んでなる組成物を提供する。この免疫原性組成物は、宿主、特に成人ヒト宿主(少なくとも18歳)へのin vivo投与のためのワクチンとして製剤化することが好ましく、組成物の個々の成分(a)および(b)は、個々の成分(a)および(b)の免疫原性が損なわれないように処方する。
【0021】
本発明の免疫原性組成物は、微小粒子、カプセル、ISCOMまたはリポソームとして製剤化してもよい。免疫原性組成物はさらに、少なくとも1つの免疫原性または免疫賦活材料を含み、それらは少なくとも1つのアジュバントまたはIL−2を含むサイトカインなどの少なくとも1つの免疫調節物質であってもよい。
【0022】
本明細書で提供される免疫原性組成物はさらに、アジュバント、具体的には非毒性インフルエンザウイルス調製物なしにアジュバントと共に製剤化されたRSV混合物と比較した際、RSVに対する増強された免疫応答を付与するアジュバントを含むことができる。
【0023】
少なくとも1つのアジュバントは、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、QS21、Quil Aまたはその誘導体または成分、リン酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化亜鉛、糖脂質類縁体、アミノ酸のオクタデシルエステル、ムラミルジペプチド、ポリホスファゼン、ISCOPREP、リポタンパク質、ISCOMマトリックス、DC−chol、DDBA、および、例えば、本出願と同じ譲受人に譲渡され、その開示を参照により本明細書に組み込む1994年6月10日出願のUSAN08/258,228に記載されているような他のアジュバントおよび細菌毒素、その成分およびその誘導体からなる群から選択することができる(WO95/34323)。特定の環境下では、Th1応答を誘発するアジュバントが望ましい。アジュバントの有利な組合せは、本出願と同じ譲受人に譲渡され、その開示を参照により本明細書に組み込む1995年6月7日出願の同時係属米国特許出願第08/483,856号に記載されている(WO 95/34308)。
【0024】
アジュバントは、ポリホスファゼン、すなわちポリ−ジ(カルボキシラートフェノキシ)−ホスファゼン(PCPP)であることが好ましい。
【0025】
本発明の免疫原性組成物は、単一剤形で製剤化することができ、RSVタンパク質の混合物は、約10から約200μg、好ましくは約50から約100μgの量で存在し、非毒性インフルエンザウイルス調製物は、約1から約100μg、好ましくは約10から約75μgの量で存在する。
【0026】
融合(F)タンパク質は、多量体融合(F)タンパク質を含むことができ、非還元条件で分析した場合に分子量約70kDaのヘテロ二量体、ならびに二量体および三量体型を含むことができる。
【0027】
付着(G)タンパク質は、非還元条件で分析した場合に、オリゴマーGタンパク質、分子量約95kDaのGタンパク質および分子量約55kDAaのGタンパク質を含むことができる。
【0028】
マトリックス(M)タンパク質は、非還元条件で分析した場合に、分子量約28〜34kDaのタンパク質を含むことができる。
【0029】
本明細書で用いるRSVタンパク質混合物は、還元SDS−PAGE分析によって分析した場合に、分子量約48kDaのF1サブユニットおよび約23kDaのF2サブユニットを含む融合(F)タンパク質、分子量約95kDaのGタンパク質および分子量約55kDAaのGタンパク質を含む付着(G)タンパク質、および約31kDaのMタンパク質を含むマトリックス(M)タンパク質を含むことができる。
【0030】
本発明で用いるRSVタンパク質混合物は、
Fは約35から約70重量%、
Gは約5から約30重量%、
Mは約10から約50重量%の相対的比率で、F、GおよびMタンパク質を含むことができる。還元条件下でのSDS−PAGE分析、および銀染色の後、濃度測定走査によって分析した場合、この混合物における分子量約48kDaのF1サブユニットと分子量約23kDaのF2サブユニットの比は、約1:1と2:1の間である。F、GおよびMタンパク質の混合物は、少なくとも約75%、好ましくは少なくとも約85%の純度を有する。
【0031】
本発明のかかつ形態において、本明細書で用いる混合物は、後述するように本明細書で用いる分離方法を考慮し、モノクローナル抗体がなく、レンチルレクチンおよびコンカナバリンAもない。
【0032】
一般的に本明細書で用いられるタンパク質の混合物として提供されるRSVタンパク質は、調製の穏和な条件によって実質的な変性を受けず、サブタイプRSV AとRSV Bに一方または双方のRSVタンパク質を含むことができる。
【0033】
RSVタンパク質の混合物を調製する組成および方法は、1996年7月12日出願の米国特許出願第08/679,060号、および公表されたPCT出願WO98/02457にすべて記載されており、その開示を参照により本明細書に組み込む。そこに記載されているように、RSVタンパク質の混合物は、ウイルスからの同時分離および同時精製によって得ることができる。RSV細胞を細胞培養で生長させ、細胞培養から分離する。F、GおよびMタンパク質は、分離したウイルスから可溶化し、可溶化したRSVタンパク質を同時分離および同時精製する。このような同時分離および同時精製は、可溶化したタンパク質をイオン交換マトリックス、好ましくはリン酸カルシウムマトリックス、具体的にはヒドロキシアパタイト上に充填し、イオン交換マトリックスからF、GおよびMタンパク質を選択的に溶出することによって行うことができる。生長させたウイルスをまず尿素で洗浄し、F、GおよびMタンパク質を実質的に取り去ることなく不純物を除去する。
【0034】
本明細書で用いる非毒性インフルエンザ調製物は通常、複数の異なる非毒性インフルエンザウイルス株を含み、これには低温適応性の弱毒ウイルスが含まれる。従来のインフルエンザウイルスワクチンは、インフルエンザ季節に流行し残存する菌株に基づいて毎年製剤化され、2、3またはそれ以上の異なる菌株を含むことがある。このようなインフルエンザウイルス調製物は、ホルマリンなどのいずれの便利な不活化剤による不活性化など、便利などの方法でも非毒性にすることができる。非毒性インフルエンザ調製物は、HA、NA、NP、M、PB1、NS1、NS2またはPB2などのインフルエンザ抗原を含むことができ、これらは弱毒化または不活化ウイルスから分離するか組換えによって調製することができる。
【0035】
本発明の別の態様においては、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)およびインフルエンザウイルスによる感染に起因する疾患に対してヒト宿主を免疫化する方法であって、本明細書で提供される免疫有効量の免疫原性組成物を宿主に投与することを含む方法を提供する。
【0036】
免疫原性組成物は、宿主にin vivo投与するためのワクチンとして製剤化し、組成物の個々の成分(a)および(b)は、個々の成分(a)および(b)の免疫原性が損なわれないように製剤化することが好ましい。本明細書で提供される製剤は、このような免疫化によって高齢者が保護されることを可能にする。
【0037】
本発明は、その追加の態様において、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染およびインフルエンザウイルス感染に起因する疾患を防御するためのワクチンを製造する方法であって、本明細書で提供される免疫原性組成物を被験宿主に投与してRSVおよびインフルエンザウイルスに起因する疾患からの防御をもたらすための投与量および投与回数を決定すること、決定された投与量および投与回数に従って治療を受ける宿主に投与するのに適当な形で免疫原性組成物を製剤化することを含む方法を提供する。治療される宿主はヒトであってよい。
【0038】
本発明はさらに、ワクチンとして用いる場合の本発明の免疫原性組成物に拡大する。さらに、本発明には、宿主においてRSVおよびインフルエンザウイルスに起因する疾患からの防御をもたらすためのワクチンの製造における(a)RSVの精製された融合(F)タンパク質、付着(G)タンパク質およびマトリックス(M)タンパク質の混合物、(b)非毒性インフルエンザウイルス調製物の使用法が含まれる。
【0039】
本発明の利点には、RSVおよびインフルエンザウイルスによる感染に起因する疾患からの高齢者の免疫化を単一の免疫化措置で可能にする単一ワクチン製剤が含まれる。
【0040】
それぞれの図において、実験に用いた抗原を識別するために共通の凡例を用い、図中に示すデータは以下の通りである。
【0041】
(a)リン酸緩衝食塩水(PBS)、(b)PCPPアジュバント 200μg、(c)生RSV 1.5×106pfu、(d)生インフルエンザ 200から400HA単位、(e)PCPPアジュバントを含むFluzone(登録商標)ワクチン 5μg、(f)PCPPアジュバントを含むRSVワクチン 1μg、(g)PCPPアジュバントを含むFluzone(登録商標)ワクチン 5μgとRSVワクチン 1μg 、(h)アジュバントを含まないFluzone(登録商標)ワクチン 5μg、RSVワクチン 1μg、(i)アジュバントを含まないFluzone(登録商標)ワクチン 5μg、(j)アジュバントを含まないRSV ワクチン1μg。
(発明の一般的説明)
本明細書で用いるRSVのF、GおよびMタンパク質の混合物は、RSウイルスから同時分離および同時精製することができる。前記USAN08/679,060およびWO98/02457に記載のように、VERO細胞およびヒト二倍体細胞など、MRC5およびWI38などのワクチン品質の細胞系上でウイルスを生長させ、生長したウイルスを採取する。発酵は、ウシ胎仔血清(FBS)およびトリプシンの存在下で行うことができる。
【0042】
ウイルス採取物をろ過し、次いで通常は所望の分子量カットオフ膜によるタンジェンシャルフロー(tangential flow)限外ろ過を用いて濃縮し、ダイアフィルトレーションする。ウイルス採取濃縮物を遠心分離し、上澄みを捨てる。遠心分離後のペレットを、まず尿素を含む緩衝液で洗浄し、F、GおよびMタンパク質に実質的な影響を及ぼさないように可溶性の不純物を除去し、次いで再び遠心分離する。次いで、遠心分離から得られるペレットを界面活性剤抽出し、F、GおよびMタンパク質をペレットから可溶化する。このような界面活性剤抽出は、オクタジエニルフェノール(エチレングリコール)10である非イオン性界面活性剤のTRITON(登録商標)X−100を含む非イオン性界面活性剤などの界面活性剤を含有する抽出緩衝液中にペレットを再懸濁して元の採取濃縮物体積とすることにより行うことができる。用いることができる他の界面活性剤には、オクチルグリコシドおよびMega界面活性剤が含まれる。
【0043】
遠心分離して不溶のタンパク質を除去した後、クロマトグラフィ法によってF、GおよびMタンパク質を精製する。抽出液をまずイオン交換カラムクロマトグラフィマトリックスに加え、F、GおよびMタンパク質を結合させ、不純物はカラムを貫流させる。イオン交換カラムクロマトグラフィマトリックスは、所望のいずれのクロマトグラフィ材料、具体的にはリン酸カルシウムマトリックス、特にヒドロキシアパタイトであってもよいが、DEAEおよびTMAEなどの他の材料を用いてもよい。
【0044】
次いで、結合したF、GおよびMタンパク質を適当な溶出液によりカラムから同時溶出する。得られる同時精製されたF、GおよびMタンパク質をさらに処理し、純度を上げる。
【0045】
本明細書で用いる精製されたF、GおよびMタンパク質は、F:Gヘテロ二量体および二量体、四量体およびさらに大きな分子種を含むホモおよびヘテロオリゴマーの形であってよい。この方法に従って調製されたRSVタンパク質調製物は、いかなる外来性試剤、赤血球吸着剤および生ウイルスの形跡も示さなかった。
【0046】
本明細書で利用するインフルエンザウイルスワクチンは、ニワトリの胚で繁殖させたインフルエンザウイルスから調製した無菌懸濁液である。ウイルスを含有する尿膜液を採取し、連続フロー遠心分離機を用いて線形ショ糖密度勾配溶液中で精製する。次いで、Triton(登録商標)X−100を用いてウイルスを化学的に破壊するとスプリット抗原が生成する。次いで、このスプリット抗原を化学的手段によってさらに精製し、リン酸ナトリウム緩衝等張塩化ナトリウム溶液に懸濁する。次いで、安定剤としてゼラチン(0.05%)を加え、保存剤としてチメロサール(1:10,000)を加える。
【0047】
本明細書で用い、前記手順で調製する市販ワクチン(Fluzone(登録商標))は、Connaught Laboratories Inc.、Swiftwater、PA、USAから入手した。
【0048】
以下の実施例で詳しく示すように、RSV Aサブユニットワクチンおよび三価インフルエンザワクチンの様々な組合せをPCPPアジュバントと共に、またはなしに調製し、いくつかの対照と比較しながらその免疫原性を試験した。詳細は以下に示すが、免疫化試験においては、3週間おいて2回の免疫原注射でBalb/cマウスを免疫化した。血液を集めて免疫応答をモニターし、試験の最後にインフルエンザあるいはRSVでマウスをチャレンジし、防御性が得られるかどうかを測定した。
【0049】
得られた結果の詳細は、以下の実施例および図1から9に示す。RSVとインフルエンザ抗原はいずれも、アジュバント化された形およびアジュバント化されていない形のいずれにおいても、一方の免疫原性を妨害あるいは損なうことのないことが分かった。さらに、アジュバント化した場合、RSVおよびインフルエンザ免疫原の組合せは、インフルエンザ免疫原のないものと比較してRSVに対して増強された免疫応答を生み出した。
【0050】
本発明の様々な実施形態が、ワクチン接種、呼吸器合胞体ウイルスおよびインフルエンザウイルス感染の診断および治療、ならびに免疫学的薬剤の生成の分野で多くの応用例を有することは当業者には全く明らかであろう。次に、このような点についてのさらに非限定的な考察を以下に示す。
【0051】
1.ワクチンの調製および使用
ワクチンとして使用するのに適当な免疫原性組成物は、非病原性インフルエンザウイルス調製品と共に、RSVの免疫原性F、GおよびMタンパク質を含む混合物から調製される。免疫原性組成物は、製剤中に存在する各株に対する抗インフルエンザ抗体だけでなく、抗F、抗Gおよび抗M抗体を含む抗RSV抗体を含めた抗体を産生する免疫応答を誘導する。このような抗体はウイルスの中和性および/または抗融合抗体である。
【0052】
ワクチンを含む免疫原性組成物は、注入剤、即ち液体溶液、懸濁液または乳濁液として調製され得る。活性免疫原性成分を、それと適合性のある製剤上許容可能な賦形剤と混合してもよい。このような賦形剤は水、塩水、ブドウ糖、グリセロール、エタノールおよびその組合せを含む。免疫原性組成物およびワクチンは、更に湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、その有効性を高めるためのアジュバント等の補助物質を含有してもよい。免疫原性組成物およびワクチンは、非経口的に、即ち皮下、皮内または筋肉内注射によって投与される。あるいは、本発明に従って製剤される免疫原性組成物は、粘膜表面の免疫応答を引起すように製剤され、送達されてもよい。したがって、免疫原性組成物を、例えば鼻腔または経口(胃内)ルートによって粘膜表面に投与してもよい。あるいは、坐薬や経口製剤を含む他の投与方式が好ましいかもしれない。坐薬に対しては、結合剤および担体は、例えばポリアルキレングリコールまたはトリグリセリドを含む。このような坐薬は、約0.5から約10%、好ましくは約1から2%の範囲の活性免疫原性成分を含有する混合物から形成される。経口製剤は、例えば製剤用のサッカリン、セルロース、炭酸マグネシウム等の普通に使用される担体を含み得る。これらの組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル、持続性放出製剤または粉剤の形態をとり、活性成分を約1から95%、好ましくは約20から約75%含有することができる。
【0053】
免疫原性調製品およびワクチンは、調剤処方に適合した方式で、かつ治療上有効で免疫原性や防御性を示すような量で投与される。投与すべき量は、例えば、抗体を合成し、必要であれば細胞性免疫応答を起こす対象者個人の免疫系の能力を含め、治療される対象者に依存する。必要とされる活性成分の精確な投与量は、担当開業医の判断次第である。しかし、適当な投与量範囲は当分野の技術者によって容易に決定することができ、1回のワクチン接種当たり、活性成分の数マイクログラムから数ミリグラムの位数である。初期投与量および追加投与量に対する適当なプログラムも変動し得るが、初期投与とその後の追加投与を含み得る。投与量は投与ルートにも依存し、宿主の大きさに応じて変化すると思われる。
【0054】
本発明による免疫原性組成物中の活性成分の濃度は、一般に約1から95%である。1種だけの病原体の抗原物質を含有するワクチンが、一価ワクチンである。
【0055】
アジュバントと共に抗原を同時投与した場合、免疫原性を顕著に改善することができる。アジュバントは抗原の免疫原性を高めるが、それ自体は必ずしも免疫原性を示さない。アジュバントは、貯蔵効果を生じるように、投与部位近傍に抗原を局所的に保持することによって作用し、免疫系の細胞に対する抗原の遅い持続的な放出を促進する。アジュバントは抗原貯蔵部に免疫系の細胞を引寄せ、免疫応答を引起すようにこのような細胞を刺激することもできる。
【0056】
例えばワクチンに対する宿主免疫応答を改善するために、免疫刺激剤即ちアジュバントが長年にわたり使用されてきた。リポ多糖類のような内在性アジュバントは、通常ワクチンとして用いられる死滅または弱体化細菌の成分である。外来性アジュバントは、宿主免疫応答を高めるように処方された免疫調節剤である。したがって、非経口的に送達された抗原に対する免疫応答を高めるアジュバントが確認された。しかし、これらのアジュバントの一部は有毒であり、望ましくない副作用を引起すことができ、人間や多くの動物に使用するには不適当である。実際、水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウム(一般にアルムと総称される)だけが、人間や動物のワクチン中のアジュバントとして日常的に使用されている。ジフテリアおよび破傷風のトキソイドに対する抗体応答を増加させる上で、アルムの有効性が十分に確立されている。一部の用途に対するアルムの有用性は十分に確立されているが、限界もある。例えば、アルムはインフルエンザのワクチン接種に対して無効であり、普通細胞性免疫応答を引起さない。アルムをアジュバントとする抗原により誘発される抗体は、マウスにおいては主にIgG1イソタイプであり、一部のワクチン剤による保護に最適とは思われない。
【0057】
広範囲の外来性アジュバントが、抗原に対する効力のある免疫応答を引起すことができる。これらのアジュバントは、膜タンパク質抗原と複合したサポニン(免疫刺激複合体)、鉱油を含んだpluronicポリマー、鉱油中の死菌マイコバクテリア、不完全フロイントアジュバント、リピッドAだけでなくムラミルジペプチド(MDP)、リポ多糖(LPS)等の細菌生成物、およびリポソームを含む。
【0058】
体液性免疫応答(HIR)および細胞性免疫(CMI)を効果的に誘発するためには、免疫原をアジュバント中に乳化することがしばしば行われる。多くのアジュバントは有毒で、肉芽腫、急性および慢性の炎症(完全フロイントアジュバント、FCA)、細胞溶解(サポニンおよびpluronicポリマー)および発熱性、関節炎および前部ブドウ膜炎(LPSおよびMDP)を誘発する。FCAは優れたアジュバントで研究では広く使用されているが、毒性のために人間や動物のワクチンに使用することは認可されていない。
【実施例】
【0059】
実施例
上記の開示は、一般的に本発明を説明している。以下の特定の実施例を参考とすることによって、もっと完全な理解を得ることができる。これらの実施例を例示するためにだけ記述しており、本発明の範囲を制限することを意図するものではない。状況により手段が思い浮かぶか、入手される場合、形態の変化や同等物による置換が予想される。本明細書では特定の用語を用いてきたが、このような用語は説明を意図したものであって、制限することを意図したものではない。
【0060】
(組織培養感染用量)50(TCID50/mL)、プラークおよび中和力価を決定する方法は、本開示に明確に記載していないが、科学文献中に十分に報告されており、かつ、当分野の技術者の範囲内に十分に入る。タンパク質の濃度は、参考のために本明細書中に組込まれているPierce Manual(23220,23225;Pierce Chemical company,U.S.A.)に記載のビシンコニン酸(BCA)法により決定した。
【0061】
細胞培養およびウイルス増殖には、CMRL1969培地およびIscoveの改良Dulbecco培地(IMDM)を使用した。本研究に使用した細胞は、Institut Merieuxから入手したワクチン用アフリカミドリザル腎細胞(VERO ロットM6)である。使用したRSウイルスは、American Type Culture Collection(ATCC)から入手したRSウイルスサブタイプA(LongおよびA2株)、最近のサブタイプA臨床分離株、およびBaylor College of Medicineから入手したRSVサブタイプB臨床分離株である。
【0062】
実施例1
この実施例は、150Lの制御装置付き発酵槽中、ミクロ担体ビーズ上の哺乳細胞系でのRSVの生産を例示する。
【0063】
105細胞/mlの濃度のワクチン用アフリカ・ミドリザル腎細胞(VERO)を、Cytodex−1ミクロ担体ビーズ360gを含む150Lのバイオリアクター中、pH7.2のCMRL1969培地60Lに添加し、2時間攪拌した。CMRL1969培地を更に60L添加し、全体積を120Lとした。ウシ胎児血清を最終濃度3.5%で、添加した。ブドウ糖を、最終濃度3g/Lで添加し、また、L−グルタミンを、最終濃度0.6g/Lで添加した。溶存酸素(40%)、pH(7.2)、攪拌(36rpm)および温度(37℃)を制御した。細胞増殖、ブドウ糖、乳酸およびグルタミンのレベルを監視した。4日目に培地を発酵槽から排出し、E199培地(ウシ胎児血清を含まない)100Lを添加し、10分攪拌した。発酵槽から排出し、E199培地120Lで再び満たした。
【0064】
RSVサブタイプAのRSV接種試料を感染多重度(M.O.I.)0.001で添加し、次いで培養を3日間維持後、培地の3分の1から2分の1を排出し、新鮮培地で置換えた。感染後6日目に攪拌を停止し、ビーズを沈積させた。ウイルス培養液を排出し、更に処理する前に20mmのフィルター、次いで3mmのフィルターでろ過した。
【0065】
300NMWL膜を付けた接線流限外ろ過を用いて、清澄な生成ウイルス液を75倍から150倍に濃縮し、10%グリセロール含有リン酸緩衝塩水でダイアフィルトレーションした。更なる精製の前に、ウイルス濃縮液を、一旦−70℃で凍結保存した。
【0066】
実施例2
この実施例は、RSVサブタイプAのウイルス濃縮液からRSVサブユニットを精製する方法を例示する。
【0067】
実施例1に記載のように調製したウイルス濃縮液の一部に、50%ポリエチレングリコール−8000の溶液を添加し、6%の最終濃度とした。室温で1時間攪拌後、混合物を4℃のSorvall SS−34ローター中、15000RPMで30分遠心した。ウイルスのペレットを1mMリン酸ナトリウム、pH6.8、2M尿素、0.15M NaCl中に懸濁し、室温で1時間攪拌し、次いで4℃のSorvall SS−34ローター中、15000RPMで30分再び遠心した。次に、ウイルスのペレットを1mMリン酸ナトリウム、pH6.8、50mM NaCl、1% Triton X−100中に懸濁し、室温で30分攪拌した。4℃のSorvall SS−34ローター中、15000RPMで30分遠心することによって、不溶のウイルスのコアを除いた。可溶性タンパク質の上清をセラミックヒドロキシアパタイト(タイプII、Bio−Rad Laboratories)のカラムに施用し、次いでカラム5本分の体積の1mMリン酸ナトリウム、pH6.8、50mM NaCl、0.02% Triton X−100でカラムを洗浄した。カラム10本分の体積の1mMリン酸ナトリウム、pH6.8、400mM NaCl、0.02% Triton X−100でカラムを溶出することによって、RSVサブタイプAに由来し、F、G、Mの各タンパク質を含有するRSVサブユニット組成物を得た。
【0068】
実施例3
この実施例は、インフルエンザウイルスの産生を例示する。
【0069】
本発明で利用されるインフルエンザウイルスワクチンは、ニワトリの胚中で増殖したインフルエンザウイルスから調製した滅菌懸濁液である。ウイルス含有尿膜腔液を採取し、ホルムアルデヒドで不活性化する。次いで連続流遠心機を用いて、蔗糖密度線形勾配溶液中でウイルスを濃縮し、精製する。次に、Triton(登録商標) X−100を用いてウイルスを化学的に破壊し、分割抗原を産生する。次いで分割抗原を化学的手段によって更に精製し、リン酸ナトリウム緩衝等張塩化ナトリウム溶液中に懸濁する。次にゼラチン(0.05%)を安定剤として添加し、チメロソール(1:10000)を保存剤として添加する。
【0070】
本発明で使用され、上記のように調製される市販ワクチン(Fluzone(登録商標))を、Connaught Laboratories Inc.,Swiftwater,PA,USAから入手した。
【0071】
実施例4
この実施例は、マウスを用いた試験に使用される免疫処方を例示する。
【0072】
最初の免疫処置の前日、および試験の22日目と28日目にもマウスから採血した。免疫処置を1日目と22日目に行った。免疫処置液を共に、ももの筋肉内に筋肉内投与した。各免疫処置液の注入を2部位(左右のももの筋肉;0.05ml/部位)で行なった。RSVワクチンの投与量はタンパク質合計で1μgであり、Fluzoneワクチンの投与量は1回の投与当たりタンパク質合計で5μgであった。アジュバントの存在下、または不在下で、RSVまたはFluzoneワクチンを投与した。使用したアジュバントはポリジ(カルボキシラトフェノキシ)ホスファゼン(PCPP)であり、200μg/投与で投与した。免疫原として生菌RSV(A2株)を投与されたマウスは、鼻腔内に1.5×106pfu/投与の投与を受けた。免疫原として生菌インフルエンザウイルス(A/Taiwan株)を投与されたマウスは、腹腔内に200から400HAU/投与の投与を受けた。生菌ウイルス免疫マウスに投与したときと同じ用量を用いて、RSVまたはインフルエンザによるウイルス攻撃を29日目に鼻腔内に投与した。33日目に全てのマウスを屠殺した。肺を取除き、後にウイルス力価を決定するために、直ちに液体窒素中に凍結した。
【0073】
実施例5
この実施例は、マウスの肺におけるRSV力価の決定を例示する。
【0074】
屠殺時にマウスの肺を取除き、液体窒素中に速やかに凍結し、次いで−70℃で保存し、ウイルス力価の検定に備えた。肺を処理するために、肺を融解し、その重量を測定し、次いで10%ウシ胎児血清を含有するDulbeccoの改良Eagles(DME)組織培養培地中で均質化した。ホモジェネートを200×gで15分遠心することによって細胞屑を除去し、上清を収集した。実施例6に記載のようなRSVプラークアッセイを用いて、上清のRSV力価を検定した。
【0075】
図3に示すように、マウスをRSVで攻撃したとき、肺での力価が非常に低いアジュバント入り組合せ(レーンg)に、RSV単独(レーンf)や生菌RSV(レーンc)と同等の良好な免疫応答が再び観察された。このことは、インフルエンザ成分とRSV成分の間に干渉がないことも示している。
【0076】
実施例6
この実施例は、RSVプラークアッセイを記述する。
【0077】
RSV力価を検定するために、Vero細胞を10%FBS含有CMRL1969培地中で増殖させた。試験試料を10倍のステップで連続的に希釈し、集密Vero細胞を含有する24−ウェルプレートに1から2時間添加した。吸着後、試料を取除き、0.75%メチルセルロース含有培地で置換した。4から5日のインキュベーション後、モノクローナル抗F抗体で各ウェルを探ることによって、ウイルスのプラークを検出した。西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ロバ抗マウス免疫グロブリンおよび4−クロロ−1−ナフトール/H22と順次インキュベートすることによって、結合抗体を可視化した。プラークをマニュアルで計数した。
【0078】
実施例7
この実施例は、RSVプラーク減少アッセイを記述する。
【0079】
試験血清を56℃、30分で熱不活化した。試料を4倍の連続的ステップで希釈し、10%モルモット補体含有アッセイ培地中で等量のRSV A(long株;30〜70PFU)と混合した。37℃で1時間のインキュベーション後、混合物をVero細胞上に1から2時間接種した。この後0.75%メチルセルロースで覆い、4から5日間インキュベートした。実施例6のRSVプラークアッセイで記述したように、ウイルスのプラークを検出した。中和力価を、プラーク形成の60%減少(線形内挿分析によって決定された)を生じる希釈度の逆数として表す。
【0080】
プラーク減少力価の見られる図2に、RSV応答の増加が示されている。RSV/Fluの組合せ(レーンg)は、RSV単独(レーンf)より再び高い力価を示している。
【0081】
実施例8
この実施例は、マウス抗RSV F抗体ELISAについて記述する。
【0082】
固相被覆として元のFタンパク質を用いる抗原特異的ELISAで、マウス血清中の抗F免疫グロブリン抗体力価を測定した。固定化抗Fモノクローナル抗体を用いるイムノアフィニティ・クロマトグラフィーによって、かかるFタンパク質は精製した。各ウェルはFタンパク質で被覆し、次いでPBS中1%BSAでブロッキングを施した。血清試験試料の希釈液を添加し、インキュベーション後、各ウェルを再び1%BSAで洗浄した。結合したFに特異的な抗体を、マウスIgG(H+L鎖)に特異的な西洋ワサビペルオキシダーゼ標識抗体を用い、更に洗浄を行った後、テトラメチルベンジジン+過酸化水素の基質により検出した。発色は、自動プレート読取機において、450nmで測定した。陰性対照の2倍の吸光度を維持する、最大の4倍希釈度の逆数として、抗体力価を表現する。
【0083】
図1から判るように、RSV−F IgG抗体応答は、アジュバントの有無いずれの場合にも、RSV/Flu免疫処置(レーンg+h)において認められた。これらの結果は、RSV免疫処置単独(レーンf)に匹敵し、事実、組合せ免疫処置(レーンg)はRSV単独(レーンf)より高いRSV応答を示す。このことは、インフルエンザ成分とRSV成分の間に干渉がなかったことを示す。
【0084】
実施例9
この実施例は、マウス抗インフルエンザ抗体ELISAについて記述する。
【0085】
適当なインフルエンザ株(A/Texas、A/Johannesburg、またはB/Harbin)で被覆したマイクロタイター・プレートを用いて、マウス血清中のインフルエンザ株特異的抗体力価を測定した。プレートの処理および現像を、実施例8のRSV−F抗体ELISAで記述したように行った。
【0086】
図4、5、6から分かるように、3種のインフルエンザ株は全て、RSV/Fluの組合せ投与(レーンg)でインフルエンザウイルスに対する良好な抗体応答を誘導した。これは単独で投与されたインフルエンザワクチン(レーンe)と同等であった。このことは、組合せワクチンがインフルエンザ成分に対する免疫応答を減少させたり、妨害することがないことを再び示している。
【0087】
実施例10
この実施例は、インフルエンザ血球凝集阻止アッセイについて記述する。
【0088】
補体を不活化するために、血清試料を56℃で30分加熱し、次に内因性血球凝集阻止剤を破壊するために、トリプシンおよび過ヨウ素酸カリウムで処理した。標準的な血球凝集阻止アッセイにおいて、4HA単位のインフルエンザウイルス(A/Texas、A/Johannesburg、またはB/Harbin)によるニワトリ赤血球の凝集に対して、連続的に希釈した抗血清の阻止能力を試験した。
【0089】
図7、8および9は、組合せワクチン(レーンg)がインフルエンザワクチン単独と同等の良好な赤血球凝集素(HA)力価を産生したことを示す。このことは、この場合HAIにより測定された良好なインフルエンザ免疫反応を、RSV成分が妨害しなかったことを再び示している。
【産業上の利用可能性】
【0090】
(開示の概要)
開示を概説すれば、本発明は、RSVタンパク質サブユニット成分および非病原性インフルエンザウイルス調製品を含む多価免疫原性組成物であって、その活性成分が他の成分の免疫原性を妨害せず、成人および老人への投与に適した組成物を提供する。改変は本発明の範囲で可能である。
【0091】
(参照文献)
【0092】
【表1】

【0093】
【表2】

【0094】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】それぞれの免疫原で免疫化されたマウスにおける抗RSV F 免疫グロブリン力価を示す図である。
【図2】それぞれの免疫原で免疫化されたマウスにおけるRSVプラーク減少の力価を示す図である。
【図3】それぞれの免疫原で免疫化され、次いで生RSVでチャレンジされたマウスの肺におけるRSVの力価を示す図である。
【図4】それぞれの免疫原で免疫化されたマウスにおける抗A/ヨハネスブルク型インフルエンザ 免疫グロブリン抗体価を示す図である。
【図5】それぞれの免疫原で免疫化されたマウスにおける抗A/テキサス型インフルエンザ 免疫グロブリン抗体価を示す図である。
【図6】それぞれの免疫原で免疫化されたマウスにおける抗B/ハルビン型インフルエンザ 免疫グロブリン抗体価を示す図である。
【図7】それぞれの免疫原で免疫化されたマウスにおける抗A/ヨハネスブルク型インフルエンザの赤血球凝集を阻害する力価を示す図である。
【図8】それぞれの免疫原で免疫化されたマウスにおける抗A/テキサス型インフルエンザの赤血球凝集の阻害力価を示す図である。
【図9】それぞれの免疫原で免疫化されたマウスにおける抗B/ハルビン型インフルエンザの赤血球凝集の阻害力価を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
宿主において、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)およびインフルエンザウイルスによる感染に起因する疾患に対する防御を付与するための多価免疫原性組成物であって、
(a)免疫有効量のRSVの精製された融合(F)タンパク質、付着(G)タンパク質およびマトリックス(M)タンパク質の混合物、および
(b)免疫有効量の非毒性なインフルエンザウイルス調製物を含んでなる組成物。
【請求項2】
組成物の個々の成分(a)および(b)が、個々の成分(a)および(b)の免疫原性が損なわれないように処方されている、宿主へin vivo投与するためのワクチンとして製剤化された、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項3】
さらにアジュバントを含む、請求項2に記載の免疫原性組成物。
【請求項4】
前記アジュバントは、非毒性インフルエンザウイルス調製物なしにアジュバントと共に製剤化された混合物(a)と比較した際、RSVに対する増強された免疫応答を付与する、請求項3に記載の免疫原性組成物。
【請求項5】
アジュバントは、ポリ−ジ(カルボキシラートフェノキシ)−ホスファゼン(PCPP)である、請求項3に記載の免疫原性組成物。
【請求項6】
単回投与量中に、前記混合物(a)が約10から約200μgの量で存在し、(b)が約1から約100μgの量で存在する、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項7】
前記融合(F)タンパク質は、多量体融合(F)タンパク質を含む、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項8】
非還元条件で分析した際、前記多量体融合(F)タンパク質には、分子量約70kDaのヘテロ二量体、ならびに二量体および三量体型が含まれる、請求項7に記載の免疫原性組成物。
【請求項9】
非還元条件で分析した際、前記付着(G)タンパク質は、分子量約95kDaのGタンパク質および分子量約55kDAaのGタンパク質、ならびにオリゴマーGタンパク質を含む、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項10】
非還元条件で分析した際、前記マトリックス(M)タンパク質は、分子量約28〜34kDaのタンパク質を含む、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項11】
還元SDS−PAGE分析によって分析した際、
前記融合(F)タンパク質は、分子量約48kDaのF1サブユニットおよび約23kDaのF2サブユニットを含み、
前記付着(G)タンパク質は、分子量約95kDaのGタンパク質および分子量約55kDAaのGタンパク質を含み、 かつ
前記マトリックス(M)タンパク質は、約31kDaのMタンパク質を含む、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項12】
前記F、GおよびMタンパク質が、
Fは約35から約70重量%、
Gは約5から約30重量%、
Mは約10から約50重量%の相対的比率で混合物(a)中に存在する、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項13】
還元条件下でのSDS−PAGE分析し、かつ銀染色した際、走査濃度測定による測定すると、分子量約48kDaのF1サブユニットと分子量約23kDaのF2サブユニットの比が、約1:1と2:1の間である、請求項12に記載の免疫原性組成物。
【請求項14】
前記混合物は、少なくとも約75%の純度である、請求項13に記載の免疫原性組成物。
【請求項15】
前記混合物中の前記RSVタンパク質は、サブタイプRSV AおよびRSV Bの一方または双方に由来している、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項16】
前記非毒性インフルエンザウイルス調製物は、複数の非毒性インフルエンザウイルス株を含む、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項17】
前記非毒性インフルエンザウイルス調製物は、不活化されたインフルエンザウイルス調製物である、請求項16に記載の免疫原性組成物。
【請求項18】
前記非毒性インフルエンザウイルス調製物は、弱毒化インフルエンザウイルスを含む、請求項16に記載の免疫原性組成物。
【請求項19】
前記非毒性インフルエンザウイルス調製物が、少なくとも1つのインフルエンザ抗原を含む、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項20】
ワクチンとして使用する請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項21】
呼吸器合胞体ウイルス(RSV)およびインフルエンザウイルスによる感染に起因する疾患に対してヒト宿主を免疫化する方法であって、免疫有効量の請求項1に記載の免疫原性組成物を宿主に投与することを含んでなる方法。
【請求項22】
前記免疫原性組成物は、組成物の個々の成分(a)および(b)は、個々の成分(a)および(b)の免疫原性が損なわれないように処方されており、宿主へin vivo投与するためのワクチンとして製剤化されている、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記宿主は、少なくとも18歳に達したヒト宿主である、請求項22に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−31452(P2007−31452A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−304271(P2006−304271)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【分割の表示】特願2000−587800(P2000−587800)の分割
【原出願日】平成11年12月16日(1999.12.16)
【出願人】(500096994)サノフィ パスツ−ル リミテッド (12)
【氏名又は名称原語表記】SANOFI PASTEUR LIMITED
【Fターム(参考)】