説明

SEMの操作装置

【目的】本発明は、走査型電子顕微鏡の実機の機能を可視化して制御する操作装置に関し、小中校、高等学校、大学等における教育用SEMや、SEM操作の初心者用シミュレータ等として用いたり、電子線状態を実験パラメターとして問う場合が多い表面解析分野などに用いたりすることを目的とする。
【構成】走査型電子顕微鏡の実機の機能および電子線ビームの軌道を可視化した実機模式図上に表示された機能の形状あるいは表示された電子線ビームの位置を調整する操作手段と、操作手段により機能の形状あるいは表示された電子線ビームの位置が調整されたときに調整後の状態を表示する表示手段と、検出された調整後の調整された形状あるいは調整された位置に対応して、実機の機能に対する電圧あるいは電流を算出する算出手段と、算出手段によって算出された電圧あるいは電流を実機の該当機能に供給する実行手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査型電子顕微鏡の実機の機能を可視化して制御する操作装置であって、小中校、高等学校、大学等における教育用SEMや、SEM操作の初心者用シミュレータ等として用いたり、電子線状態を実験パラメターとして問う場合が多い表面解析分野などにおける、SEMの操作装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のSEMの構成について図6を用いて説明する。
【0003】
図6において、電子銃31より放射された電子線ビーム37を電磁レンズや静電レンズを用いて試料38上にに縮小集束し、かつ電子線ビームを偏向器34で偏向して試料38上で平面走査し、当該試料38から放出された2次電子などを検出器36で検出・増幅し、図示外の表示装置上に画像を表示する。
【0004】
この従来のSEMにおける手動によるフォーカス合わせや倍率指定などの操作は、手動操作盤上41で行い、電源の出力値をボリュームや押しボタンやセレクタ切り替えスイッチ等の手動操作で調整(可変)して行っている。
【0005】
この手動操作で調整しているときの対応するレンズの強さ状態などを直接に観察することができないので、どのような電子線ビームの形態であるかは想像するしか方法がなく、陽に知ることはできなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のSEMでは、上述したように、図6の手動操作盤41上で対物レンズ35に対応するボリュームなどを調整して図示外の表示装置上に表示された画像が鮮明になるように調整することを行っており、そのときに実機である対物レンズ35の状態がどのような形態にあるか可視化して認識できないという問題があった。
【0007】
また、その他の各種調整にしても、図示外の表示装置上の画像を見ながら行うしか方法がなく、実機のSEMの各レンズなどがどのような動作状態にあるが、更にそのように変化したのかなどを可視化して表示できなく、小中校、高等学校、大学等における教育用SEMや、SEM操作の初心者用シミュレータ等として用いたり、電子線状態を実験パラメターとして問う場合が多い表面解析分野などには使えないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、これらの問題を解決するため、走査型電子顕微鏡の実機の機能を可視化して制御する操作装置において、走査型電子顕微鏡の実機の機能および電子線ビームの軌道を可視化した実機模式図と、実機模式図上に表示された機能の形状あるいは表示された電子線ビームの位置を調整する操作手段と、操作手段により実機模式図上に表示された機能の形状あるいは表示された電子線ビームの位置が調整されたときに調整された形状あるいは調整された位置に調整後の状態を表示する表示手段と、調整後の調整された形状あるいは調整された位置を検出する検出手段と、検出手段によって検出された調整後の調整された形状あるいは調整された位置に対応して、実機の該当機能に対する電圧あるいは電流を算出する算出手段と、算出手段によって算出された電圧あるいは電流を実機の該当機能に供給する実行手段とを備え、実機模式図上における機能の形状の調整あるいは電子線ビームの位置の調整に対応して、実機の該当機能に所定の電圧あるいは電流を供給して制御するようにしている。
【0009】
この際、機能の形状を調整するとして集束レンズの強さ、対物レンズの強さ、および電子線ビームの位置を調整するとして前記集束レンズあるいは前記対物レンズによって電子線ビームが光軸上に焦点合わせされる焦点位置のうちのいずれか1つ以上とするようにしている。
【0010】
また、レンズを静電レンズあるいは磁界レンズとするようにしている。
【0011】
また、実機模式図上における機能の形状の調整あるいは電子線ビームの位置の調整について、微細に個別調整する可変手段を実機模式図上で該当機能に対応づけて表示するようにしている。
【0012】
また、実機模式図上における各機能の形状に対応した機能の値をデジタルで表示するようにしている。
【0013】
また、デジタルの値として、供給した電圧値あるいは電流値、焦点距離、倍率、結像位置のいずれか1つ以上とするようにしている。
【0014】
また、実機により電子線ビームが試料にフォーカスされて平面走査されたときの信号を検出し、検出した信号をもとに画像を併せて表示するようにしている。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、SEMの実機の機能を模式的に表現した実機模式図を表示し、当該実機模式図上で利用者が操作すると操作後の状態に再表示すると共に当該再表示に合わせて操作量を検出し、実機の対応する機能に対応する電圧/電流を供給すると共にそのときに検出された信号をもとに表示装置に拡大画像を表示し、レンズなどが可視化された実機模式図上で利用者がレンズなどの焦点距離、電子線ビームの焦点位置などを視覚的に調整する構成を採用しているため、自動的に実機のSEMの調整を行うと共にそのときの画像を表示することが可能となる。
【0016】
その結果、小中校、高等学校、大学等における教育用SEMや、SEM操作の初心者用シミュレータ等として用いたり、電子線状態を実験パラメターとして問う場合が多い表面解析分野などにおける、SEMの操作装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、レンズなどが可視化された実機模式図上で利用者がレンズなどの焦点距離、電子線ビームの焦点位置などを視覚的に調整し、自動的に実機のSEMの調整を行うと共にそのときの画像を表示することを実現した。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明の1実施例構成図を示す。
【0019】
図1の(a)は電磁型の実機を含めた全体の構成例を示し、図1の(b)は静電型の実機の部分の構成例を示す。
【0020】
図1において、操作表示系1は、走査型電子顕微鏡の実機の模式図(実機模式図17)を表示操作画面16に表示し、実機2,2’を操作するものであって、ここでは、実機支援ソフト11、表示操作画面16、処理装置19、マウス/キーボード20などから構成されるものである。
【0021】
実機支援ソフト11は、キャラクタ・ジェネレータ12、変換器13,14、制御手段15などから構成されるものであって、ここでは、プログラムに従い各種制御を行うものであり、表示操作画面16に表示された実機模式図17(実機の機能や電子線ビームの軌跡を表現した実機模式図)上で実機2,2’の機能の調整や電子線ビームの位置の調整がマウス/キーボード19により指示されると、いずれが調整されたかを検出し、検出された機能あるいは電子線ビームの位置に対応する実機2,2’の機能に供給する電圧あるいは電流あるいは走査電圧/走査電流を算出し、実機2,2’の該当機能に供給し、実機2,2’を制御すると共に、実機2,2’で検出された検出信号をもとに表示操作画面16の画像18として表示したりなどするものである。
【0022】
キャラクタ・ジェネレータ12は、表示操作画面16の実機模式図17上に各種キャラクタなどを表示、例えば後述する図2の(a)の実機模式図17、図4、図5を表示するものである。
【0023】
変換器13は、電流/電圧からレンズの焦点距離などを数式を用いあるいはテーブル(実験で両者の関係を予め求めて設定したテーブル)を参照して変換するものである(後述する)。
【0024】
変換器14は、レンズの焦点距離などからレンズに供給する電流/電圧を数式を用いあるいはテーブル(実験で両者の関係を予め求めて設定したテーブル)を参照して変換するものである(後述する)。
【0025】
制御手段15は、プログラムに従い各種制御を行うものであって、表示操作画面16の実機模式図17上で機能の調整あるいは電子線ビームの位置の調整などがマウス20によりドラッグなどされて調整されると、これを検出して調整後の実機模式図17を作成して表示すると共に実機2,2’の該当機能に供給する電圧/電流などを算出して電源15に送信し、実機2,2’を制御したり、更に、実機2,2’で電子線ビーム23が試料22を平面走査したときに放出された信号を図示外の検出器で検出された検出信号をもとに表示操作画面16の画像(例えばSEM画像)18を表示したりなどするものである(図2から図5を用いて後述する)。
【0026】
表示操作画面16は、実機2,2’の模式図である実機模式図17および実機2,2’で検出された検出信号をもとに試料22の拡大された画像18を表示したりなどするものである。
【0027】
実機模式図17は、走査型電子顕微鏡の機能および電子線ビームの軌道を分かりやすく模式的に表示したものである(図2から図5を用いて後述する)。
【0028】
画像18は、実機2,2’の図示外の検出器によって、電子線ビーム23が試料22を平面走査したときに放出された2次電子、反射電子などを検出・増幅し、表示操作画面16の上に表示した画像(試料22の拡大画像)である。
【0029】
処理装置19は、プログラムをもとに各種制御を行うもの(中央演算装置)である。
【0030】
マウス/キーボード20は、表示操作画面16に表示された実機模式図17上でレンズの強さを強くしたり(レンズを厚くする方向にドラッグ又は像点をレンズに近い方向にドラッグして強くしたり)などの入力指示を行ったり、各種データを入力したりなどする入出力装置の例である。
【0031】
電源10は、操作表示系1からの指示信号に従い、実機2,2’へ電圧、電流、走査電圧/走査電流などを供給する電源であって、例えばレンズ(集束レンズ、対物レンズ)に所定の電圧/電流、偏向器に所定の電圧/電流、電子銃に所定の高電圧、非点補正装置に所定の非点補正電流などを供給するものである。
【0032】
実機(電磁型)2、実機(静電型)2’は、走査型電子顕微鏡の実機を模式的に表した電磁型あるいは静電型のものであって、電源10から供給された電圧、電流、走査電圧/走査電流を受け取って各機能(集束レンズ、対物レンズ、偏向器、電子銃など)に供給し、電子線ビームを集束、偏向、焦点合わせ、平面走査などし、細く絞った電子線ビーム23を試料22の表面に平面走査してそのときに試料22から放出された2次電子、反射電子などを図示外の検出器で検出し、操作表示系1に送出して表示操作画面16上に画像18として表示させたりなどするものである。図示の例では、走査型電子顕微鏡の実機のうち、対物レンズ21の部分のみを模式的に表示するが、これに限られず、全体が含まれるものである(図4、図6)。
【0033】
次に、図1の構成のもとで、レンズ電流(レンズ電圧)からレンズの焦点距離を求める概要について説明する。
【0034】
(1) 実機2,2’のレンズに供給する電流/電圧から実機模式図17上に表示するレンズの強さ(焦点距離)に変換する処理(図1の変換器13の処理)について以下詳細に説明する。
【0035】
電源10の出力電流値Iを、実機2を構成する対物レンズ21に入力する。この際、変換器13は対物レンズ21が電磁レンズであった場合には、
焦点距離:fM=fM(I, S, D, N) ・・・・(式2)
S:ppの間隙
D:ppの穴径
N:レンズコイルの巻数
を出力する。S, D, Nはレンズの固有値(定数)であるので、予め変換器13はこれを知っているものとして、
焦点距離:fM=fM(I) ・・・・(式2’)
という演算変換を行い焦点距離fMを得ることができる。
【0036】
電子光学系による具体的演算例を挙げると、釣鐘型分布の磁束密度をもつと仮定した近軸軌道の場合の電磁レンズの励磁電流Iから求めるレンズの焦点距離fは、MSK単位系を用いて、
焦点距離: fM=a sin(P) ・・・・(式3)
P=n/(K+1)2 K:レンズパワー
K=(e/m) 1/2 B0/(8VA)1/2
B00NI/(S2+0.45D2)1/2
e:電子の素電荷
m:電子の質量
B0:レンズ中心の磁束密度
VA:加速電圧
μ0:空間の磁気透磁率
N:レンズコイル巻数
S:レンズポールピースのギャップ
D:レンズポールピースの内径
となる。ここで、e、m、μ0は物理定数であり、N、S、Dはレンズの持つ形態であるから、これをあらかじめ変換器13に教えておけば、fM=fM(I)は定式で計算される。又は、実験で測定したレンズ特性データ表をテーブルにして記憶させておけば、上記計算に代わって当該テーブルを参照して変換演算を行える。
【0037】
(2)静電レンズの場合も同様に、静電レンズへのVを用いて、焦点距離fEに変換することができる。
【0038】
焦点距離: fE=fE(V, S, D) ・・・・(式4)
S:電極間距離
D:電極穴径
T:中間電極の厚み
S、D、Tはパラメターであるので、同様に
焦点距離:fE=fE(V) ・・・・(式4’)
の変換を行う。
【0039】
これによって、レンズ-像点間距離は、
レンズー像点間距離:z1=z1(f, z0)=1/(1/f-1/z0) ・・・・(式5)
z0は物点-レンズ間距離
を演算し、z1に対応した画像上の位置をこのレンズによる集束点とする。
【0040】
上記演算はすでに計算した表をメモリ(テーブル)に記憶させ、電流あるいは電圧に対応したf, z1を出力する方法でもよい。
【0041】
次に、図1の構成のもとで、レンズの焦点距離(レンズの厚さ)からレンズ電流(レンズ電圧)を求める概要について説明する。
【0042】
(1)図1の実機模式図17上に表示されたレンズの強さ(焦点距離)やレンズ・像点間距離を調整した場合に、実機2,2’のレンズに供給する電流/電圧に変換する処理(図1の変換器14の処理)の概略について説明する。
【0043】
図2の(a)の実機模式図17上でレンズの厚さ、あるいは電子線ビームの結像位置をマウスで移動操作する。例えば図2の(a)の実機模式図17上で図示の対物レンズをマウスでクリックして光軸方向の、当該対物レンズの厚さを増す方向あるいは薄くなる方向に移動させる(z方向に移動させる)と、z1の移動量が変換器14に入力される。ここで、(2’式)の逆変換
I=I(fM) ・・・・(式6)
を行い、電源10に入力し、実機2のレンズでは対応するように電子線ビームを集束する。尚、微調整は、図2の(a)の実機模式図17上のレンズの横に配置したカーソルをマウスでドラッグして所望の値に微細調整する(図1の表示操作画面16の画像18を見ながら微細調整する)。
【0044】
図2は、本発明の説明図を示す。
【0045】
図2の(a)は実機模式図(対物レンズ)を示し、図2の(b)は実機(対物レンズ)を示す。ここで、図1の表示操作画面16をより詳細に表現した図2において、レンズは厚い程強いレンズ(焦点距離が短い)、薄い程弱いレンズ(焦点距離が長い)になるように円弧の半径を調整して表示する。また、レンズに近接して、キャラクタ・ジェネレータ12によって焦点距離“f=***mm”と数値などを合わせて図示のように表示する。
【0046】
次に、図3のフローチャートの順番に従い、既述した図1および図2の構成の動作を詳細に説明する。図3中において、表示手段151は図1の制御手段15を構成する表示手段であり、変換器13,14は図1の変換器13,14であり、実体51(電源10及び実機2)は図1の電源10および実機2である。
【0047】
図3において、S1は、レンズ電流Iによるレンズ稼動を行う。これは、図1の電源10から供給されたレンズ電流Iをレンズ(例えば図1の対物レンズ21)に供給して当該レンズの稼動(動作)を行い、電子線ビーム23を例えば試料22の表面に焦点合わせを行う。
【0048】
S2は、電源電流を焦点距離へ関数f=f(I)により変換し、更に、焦点距離を像点距離に関数z1=z1(f)により変換する。これは、S1でレンズに供給したレンズ電流Iをもとに、当該レンズ電流を関数f=f(I)(既述した(2’式))により焦点距離fに変換し、更に、当該焦点距離fを関数z1=z1(f)で像点距離z1に変換する(具体的には、例えばレンズの焦点距離fが分かれば公知の式(1/z0+1/z1=1/f)に代入してレンズ中心から像点までの距離z1(像点距離z1)を算出する)。ここで、z0はレンズ中心から物点までの距離(物点距離)、z1はレンズ中心から像点までの距離(像点距離)を表す。
【0049】
S3は、光線図とキャラクタの表示、およびSEM像の表示を行う。これは、S2で算出したレンズ電流Iに対する焦点距離f(例えば4.7mm),像点距離z1(例えば5.0mm)、更に、固定あるいは前段のレンズの像点距離などから算出したレンズ中心から物点までの物点距離(例えばz0=70mm)をもとに、既述した図2の(a)の実機模式図(対物レンズ)17に示すように、対物レンズのf=4.7mm、z0=70mm,z1=5.0mmと表示すると共に当該焦点距離f=4.7mmに対応した当該対物レンズの厚さ(焦点距離fが短い程、厚く、焦点距離fが長くなる程、薄くした対物レンズの厚さ)に変換して表示する。
【0050】
S4は、マウスでドラッグか判別する。YESの場合には、S5に進む。NOの場合にはS4を繰り返し待機する。
【0051】
S5は、S4のYESでマウスがドラッグされたと判明したので、更に、ドラッグされたのはziか判別する。これは、例えば既述した図2の(a)の実施模式図17上で、利用者がマウスのカーソルをz1の文字あるいはz1の像点(対物レンズが焦点を結んだ光軸上の像点)に位置付けた状態でクリックしたまま、光軸方向(図2の(a)の上方向あるいは下方向)にドラッグして離したか判別する。YESの場合には、利用者がマウスを操作して図2の(a)の実機模式図17上でレンズの像点z1を増減したと判明したので、S10、S11、S1を実行する。即ち、S10でS5のYESで増減した後の像点距離z1を関数f=f(z1)に代入して焦点距離fに変換する。更に、S11で焦点距離fを関数I=I(f)により電源電流Iに変換する。そして、S1で変換したレンズ電流Iによるレンズ稼動を行い、結果として、S5のYESでドラッグした像点距離z1になるように実機2のレンズにレンズ電流Iを供給して当該像点距離z1の位置に電子線ビームが結像(焦点合わせ)されるように制御する。一方、S5のNOの場合には、S6に進む。
【0052】
S6は、ドラッグされたのはレンズ厚さか判別する。これは、例えば既述した図2の(a)の実施模式図17上で、利用者がマウスのカーソルを光軸上のレンズの上側あるいは下側の円弧部分に位置付けた状態でクリックしたまま、光軸方向(図2の(a)の上方向あるいは下方向)にドラッグして離したか判別する。YESの場合には、利用者がマスクを操作して図2の(a)の実機模式図17上でレンズの厚さを増減したと判明したので、S12、S11、S1を実行する。即ち、S12でS6のYESで増減した後のレンズの厚さsを関数f=f(s)に代入して焦点距離fに変換する。更に、S11で焦点距離fを関数I=I(f)により電源電流Iに変換する。そして、S1で変換したレンズ電流Iによるレンズ稼動を行い、結果として、S6のYESでドラッグしたレンズ厚さsの焦点距離fになるように実機2のレンズにレンズ電流Iを供給して当該レンズ厚さに相当する焦点距離fをもとに算出した像点距離の位置に電子線ビームが結像(焦点合わせ)されるように制御する。一方、S6のNOの場合には、S7に進む。
【0053】
S7は、ドラッグされたのは微調整か判別する。これは、例えば既述した図2の(a)の実機模式図17上で、利用者がマウスのカーソルを右側のFINEと記載した部分の微調整ツマミ部分に位置付けた状態でクリックしたまま、上方向あるいは下方向にドラッグして離して微細調整を行ったか判別する。YESの場合には、利用者がマウスを操作して図2の(a)の実機模式図17のレンズの微調整ツマミの微調整を行ったと判明したので、S13、S1を実行する。即ち、S13でS7のYESで利用者が表示操作画面17の画像18(SEM像)を参照しながらレンズの微調整した電流Iを検出し、S1で検出した微調整したレンズ電流Iによるレンズ稼動を行い、結果として、S7のYESで利用者がSEM像を観察しながらドラッグした微調整ツマミに対応するレンズ電流Iを実機2のレンズに供給し、焦点合わせされた綺麗な画像に調整する。一方、S7のNOの場合には、S8に進む。
【0054】
S8は、dあるいはIの動作点か判別する。これは、表示操作画面16上に表示した例えば図5の(a)の曲線上でdあるいはIの動作点のいずれかが増減された値にドラッグされたか判別する。YESの場合には、ドラッグ後の電子線ビームのスポット径dあるいは電子線ビーム電流IになるようにS14、S11、S1を実行する。即ち、S14でドラッグされた後のdあるいはIの値について、図5の(a)の曲線を参照してドラッグ後(調整後)のIを求め(ドラッグされたのがIであればドラッグ後のIB、一方、ドラッグされたのがdであれば図5の曲線を参照して当該dに対応するIを求め)、当該求めたIを関数f=f(I)に代入して焦点距離fを算出し、S11で算出した焦点距離fを関数I=I(f)により電源電流Iに変換し、S1で変換したレンズ電流Iによるレンズ稼動を行い、結果として、S8のYESで利用者が図5の(a)の曲線を表示した状態でdあるいはIの動作点のいずれかを増減したことに対応して、当該dあるいはIが得られるレンズ電流Iを実機2のレンズに供給し、指定された電子線ビームのスポット径dあるいは電子線ビーム電流Iに調整することが可能となる。一方、S8のNOの場合には、S9に進む。
【0055】
S9は、その他の処理を行う。これは、S5のYE,S6のYES,S7のYES、S8のYES以外の他の処理を、利用者からの指示に従い行う。その他の処理としては、S5、S6、S7、S8以外に、図2の(a)の実機模式図17に表示されている、
・x0(光点距離):
・f(焦点距離):
・その他:
更に、図5のdB・曲線の他に、図5の(b),(c)に示す2段レンズ径における、
・x10:
・f1:
・レンズ1の厚さ:
・x11:
・f2:
・レンズ2の厚さ:
・x20:
・x21:
・その他:
がある。
【0056】
以上によって、利用者が表示操作画面16の実機模式図17、図4の2段レンズ系、図5の(a)の曲線などを表示し、表示した実機模式図17、図4の2段レンズ径、図5の(a)の曲線上でマウスによりパラメタをドラッグして増減することにより、自動的に該当するレンズの電流Iを算出し、実機2のレンズ電流を調整すると共に、そのときに得られた画像を表示することが可能となる。
【0057】
図4は、本発明の2段レンズの場合の操作表示画面例を示す。
【0058】
図4において、図示の操作表示画面上に表示した実機模式図17は、図2の(a)の実機模式図17に代わるものであって、レンズをレンズ1(通常、集束レンズ)、レンズ2(通常、対物レンズ)の2つのレンズからなる2段レンズ系とした場合の例であり、a点を電子線ビームの線源(通常は、電子銃における線源の位置)、b点をレンズ1(集束レンズ)の像点、c点はb点を物点とした場合のレンズ2(対物レンズ)の像点である。
【0059】
レンズ1、レンズ2には、図示の、
・レンズ1:
・物点間距離x10=8.0mm
・焦点距離f1=7.3mm
・倍率M1=0.1
・加速電圧VL1=−900V(レンズ1が静電レンズの場合)
・レンズ2:
・物点間距離x20=92.0mm
・焦点距離f2=12.9mm
・倍率M2=0.6
・加速電圧VL2=−600V(レンズ2が静電レンズの場合)
・レンズ1とレンズ2との間の距離x20=92mm
・レンズ1と試料との間の距離x12=100mm
というパラメタ値(実機2に所定電圧/電流を供給したときの当該レンズ1、2などのパラメタ)がそれぞれ表示されている。
【0060】
また、レンズ1,2の横には、当該レンズ1,2を微細調整するスライドボリュームである、L1 FINE,L2 FINEがそれぞれ表示されている。利用者が表示操作画面16上に表示されている画像(SEM画像)を見ながら、微細に焦点合わせする方向に、スライドボリュームのツマミをマウスでクリックして上方向あるいは下方向にドラッグすると、レンズ1あるいはレンズ2の焦点距離を微小かつ任意に調整し、当該画像の明るさを調整したり、焦点のあった綺麗な画像に調整したりなどすることができる。
【0061】
以上のように、操作表示画面に図示の実機模式図17を表示し、利用者が当該実機模式図17に表示された実機(SEM装置)の模式図上で現在のレンズ1,2のパラメタを認識したり、更に、レンズ1、2、b、cなどをマウスでクリックしてドラッグしてレンズ1,2の厚さやb,cの位置などを調整すると、自動的に実機2に反映した電圧/電流を供給して制御を行うと共に表示操作画面16の上に実機2から得られたSEM画像(画像18)を表示することにより、利用者は図4に図示の実機模式図17の図形上で実機を操作およびそのパラメタを認識することが可能となる。
【0062】
図5は、本発明の説明図を示す。
【0063】
図5の(a)は、電子線ビームのスポット径dと電流Iの関係曲線を示す。図示のグラフで、横軸は試料に入射した電子線ビームの電流Iであり、縦軸はそのときの径dであって、電子銃の種類、加速電圧、レンズの形式とその寸法等によって定まる関係にあり、これは計算してあるいは実験によって測定して図示の曲線を作成する。ここで、
B=dB (IB)
の関係がある(公知)。定性的に説明すれば、IBが小さい場合にはレンズの収差限界によりdBはある値以下にはならないが、IBが大きい場合は収差が寄与しないので、log(IB)とlog(dB)の関係はほぼ直線を形成する。
【0064】
以上の図5の(a)の曲線を表示操作画面16に表示し、現状の動作点をマウスのカーソルを位置づけてドラッグして動かすことにより、例えば既述した図4のレンズ1の焦点距離を調整して電子線ビームのスポット径d(あるいは電子電流I)を当該図5の(a)の曲線上の任意の値に制御することが可能となる。
【0065】
例えば図5の(a)の曲線上の現状を表示したx点(図5の(c)参照)にマウスカーソルを位置付けてドラッグしてx’点で離し、dを小さくすると(電子線ビームスポット径dを小さくすると)、既述した図4のレンズ1が強く表示され、かつx11は小さく表示され、かつレンズ1の拡大率は減少(縮小率は増大)して表示され(図5の(b)参照)、それに対応して実機2のレンズ1に供給される電圧/電流を増大して焦点距離fを小さく制御し、結果として試料に照射される電子線ビームのスポット径dを小さく制御する。この際、図4のレンズ2の物点bがわずか上方向に移動するので、当該レンズ2のx21はわずかに小さくなり(僅かに焦点がぼけるので)、当該僅かなボケは図4のレンズ2のL2 FINEのボリュームを使ってレンズ2の電流を僅かに減少させることにより、SEM画像上で正焦点を結ばせることが可能となる。
【0066】
図5の(c)は、既述した図5の(a)の曲線上のx点のときに表示される光線図(実機模式図17)の例を示す。
【0067】
図5の(b)は、既述した図5の(a)の曲線上のx’点のときに表示される光線図(実機模式図17)を示す。ここでは、利用者が図5の(a)の曲線上でx点の電子線ビームのスポット径dBにマウスカーソルを位置づけてx’点までドラッグして離し、電子線ビームスポット径dを小さくするように指示したので、x点の場合の図5の(c)に比して図5の(b)ではレンズ1が厚く表示される(図示しないが焦点距離f1は小さく、像点間距離x11は小さく表示される、更に、併せてレンズ2の物点距離x20は僅か大きく、像点距離x21は僅か小さく表示される)。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、小中校、高等学校、大学等における教育用SEMや、SEM操作の初心者用シミュレータ等として用いたり、電子線状態を実験パラメターとして問う場合が多い表面解析分野などにおける、SEMの操作装置に関するものである。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の1実施例構成図である。
【図2】本発明の説明図である。
【図3】本発明の動作説明フローチャートである。
【図4】本発明の2段レンズの場合の操作表示画面例である。
【図5】本発明の説明図である。
【図6】従来のSEMの構成図である。
【符号の説明】
【0070】
1:操作表示系
11:実機支援ソフト
12:キャラクタ・ジェネレータ
13、14:変換器
15:制御手段
151:表示手段
16:表示操作画面
17:実機模式図
18:画像
19:処理装置
20:マウス/キーボード
2、3:実機
21:対物レンズ
22:試料
23:電子線ビーム
10:電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査型電子顕微鏡の実機の機能を可視化して制御する操作装置において、
走査型電子顕微鏡の実機の機能および電子線ビームの軌道を可視化した実機模式図と、
前記実機模式図上に表示された機能の形状あるいは表示された電子線ビームの位置を調整する操作手段と、
前記操作手段により前記実機模式図上に表示された機能の形状あるいは表示された電子線ビームの位置が調整されたときに当該調整された形状あるいは当該調整された位置に調整後の状態を表示する表示手段と、
前記調整後の調整された形状あるいは調整された位置を検出する検出手段と、
前記検出手段によって検出された調整後の調整された形状あるいは調整された位置に対応して、前記実機の該当機能に対する電圧あるいは電流を算出する算出手段と、
前記算出手段によって算出された電圧あるいは電流を実機の該当機能に供給する実行手段と
を備え、実機模式図上における機能の形状の調整あるいは電子線ビームの位置の調整に対応して、実機の該当機能に所定の電圧あるいは電流を供給して制御することを特徴するSEMの操作装置。
【請求項2】
前記機能の形状を調整するとして集束レンズの強さ、対物レンズの強さ、および電子線ビームの位置を調整するとして前記集束レンズあるいは前記対物レンズによって電子線ビームが光軸上に焦点合わせされる焦点位置のうちのいずれか1つ以上としたことを特徴とする請求項1記載のSEMの操作装置。
【請求項3】
前記レンズを静電レンズあるいは磁界レンズとしたことを特徴とする請求項2記載のSEMの操作装置。
【請求項4】
前記実機模式図上における機能の形状の調整あるいは電子線ビームの位置の調整について、微細に個別調整する可変手段を当該実機模式図上で該当機能に対応づけて表示したことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のSEMの操作装置。
【請求項5】
前記実機模式図上における各機能の形状に対応した当該機能の値をデジタルで表示したことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のSEMの操作装置。
【請求項6】
前記デジタルの値として、供給した電圧値あるいは電流値、焦点距離、倍率、結像位置のいずれか1つ以上としたことを特徴とする請求項5記載のSEMの操作装置。
【請求項7】
前記実機により電子線ビームが試料にフォーカスされて平面走査されたときの信号を検出し、検出した信号をもとに画像を併せて表示することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のSEMの操作装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−157370(P2010−157370A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−333492(P2008−333492)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(592191195)株式会社アプコ (9)
【出願人】(590002666)新日本電工株式会社 (7)
【Fターム(参考)】