説明

SIMホルダー

【課題】 SIMを装着できるSIMホルダーであって、内蔵する電池電源とアンテナコ
イルにより非接触で外部リーダライタと交信すると共にUSB接続を可能にする。
【解決手段】 本発明のSIMホルダー1は、SIMサイズの小型ICカードが装着可能
であって、USBインタフェースを有する携帯可能なSIM用リーダライタであって、該
リーダライタには少なくとも、(1)制御回路チップ3と非接触通信用コンバータチップ
4と、(2)非接触通信のためのアンテナコイル11と、(3)電池電源7とそのスイッ
チ8と、が搭載され、該スイッチ8を入れて電池電源から制御回路チップ3、非接触通信
用コンバータチップ4、及びSIM2に電力を供給することによって、アンテナコイル1
1を通じて、外部非接触通信リーダライタと該リーダライタに装着されたSIM2との通
信を可能にすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯可能なICカード用リーダライタ(SIMホルダー)に関する。詳しく
は、より携帯に適したGSM11.11 の規格に則ったSIMサイズの小型ICカードが装着
可能なUSBインタフェース付きリーダライタであり、搭載した制御回路チップはUSB
インタフェースを介してパソコン(以下、「PC」ともいう。)などの外部装置とSIM
−ICカードとの通信を制御するだけでなく、同じく搭載された非接触通信用コンバータ
チップとアンテナコイルを介して、外部の非接触リーダライタとの間でISO14443
,ISO18092規格との電磁誘導方式での非接触通信によりSIMサイズの小型IC
カードの利用を可能にするデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ICカード、特にSIMサイズの小型ICカード(以下、「SIM」という。)
とSIMを装着するリーダライタを一緒に持ち歩き、いつでも、どこでもPCに接続させ
てPCログオン、ネットワークログイン等のシステムに使用するようになってきている。
発明者は、特願2002−244613(特許文献1)、特願2002−284825
(特許文献2)でこのようなリーダライタを明らかにしている。特に、特願2002−2
84825では、接触、非接触の両方のインタフェースを持ったSIMを装着し、リーダ
ライタに敷設されたワイヤアンテナによって、ISO14443近接非接触通信を可能に
している。
【0003】
しかしながら、この特願2002−284825に示された技術は、装着するSIMが
接触と非接触の両方のインタフェース機能を持つものに限られていた。また、そのSIM
と直接アンテナコイルとの接続のために特殊なSIM−ICモジュール(ISO7816
のC1からC8の8つの端子のC4,C8の端子をアンテナと接続可能な非接触端子とす
る)でなければならない問題があった。加えて、外部非接触リーダライタからの電磁誘導
を起電力としてSIMが駆動するため、ISO14443非接触通信では、その通信距離
が2cmから5cm程度しか得られないものであった。
【0004】
さらに、近年では、ますますICカードはネットワークセキュリティ認証デバイスとし
ての利用が拡大して、その暗号処理やデータ通信速度、データ処理速度の向上を目的とし
て32bitCPUなどの高消費電力のICチップが使用されるに至って、上述の如くの
接触、非接触の2つのインタフェースを持つチップは実用性を失いつつある。
すなわち、高消費電力のチップは外部非接触電磁誘導による起電力では動作できないことから、非接触機能は実現されていない製品となっているため、特願2002−284825の技術が活かせなくなってきている。
【0005】
なお、SIMホルダーに関しては、上記特許文献1、特許文献2以外に特許文献3、特
許文献4等がある。特許文献3は、デュアルインターフェースSIMを装着するSIMリ
ーダライタに関し、特許文献4は、CPUと電池を備える携帯機器に関する。
【0006】
【特許文献1】特開2004− 86402号公報(特願2002−244613)
【特許文献2】特開2004−118771号公報(特願2002−284825)
【特許文献3】特開2004−264915号公報
【特許文献4】特開2005−202563号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明のSIMホルダーでは、従来のICカードリーダライタの機能に加えて
、SIMから読み出したデータを非接触通信用コンバータチップとアンテナコイルを介し
て外部の非接触通信リーダライタと電磁誘導方式で交信(外部非接触リーダライタからデ
ータを受信してICカードに書き込みも行う。)を行えるようにしたものである。
従って、本発明のSIMホルダーにSIMを挿入して非接触で通信を行うということは
、接触型のICカード(SIM)を、非接触でも使用可能にするものである。
【0008】
これまでの非接触ICカードや前記特願2002−284825の技術では、電磁誘導
による電力変換によってICカードが動作電力を得ていたが、ICチップの高消費電力化
に伴い、電磁変換により得られる電力では動作しなくなってきたため、リーダライタデバ
イス自体で電池電源を持ち、それにより動作するようにした新しいデバイスを提供するも
のである。
【0009】
また、本発明では、電池電源の搭載にあたって生じる電池の消耗に関する解決策を提示する。すなわち、電池電源の制御において、外部非接触リーダライタからの応答要求信号及び/または命令信号が一定時間受信できなかった場合は制御回路チップによって電池電源の供給を停止するなど、電池電源の消耗防止を可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明の要旨は、SIMサイズの小型ICカードが装着可能な、USBインタフェースを有する携帯可能なSIM用リーダライタであって、該リーダ
ライタには少なくとも、(1)制御回路チップと非接触通信用コンバータチップと、
(2)非接触通信のためのアンテナコイルと、(3)電池電源とそのスイッチと、が搭載
され、該スイッチを入れて電池電源から制御回路チップ、非接触通信用コンバータチップ
、及びSIMに電力を供給することによって、アンテナコイルを通じて、外部非接触リー
ダライタと該リーダライタに装着されたSIMとの通信を可能にすることを特徴とするS
IMホルダー、にある。
【0011】
上記において、SIMホルダーが、USB接続している場合はUSBバスパワーで駆動
するものであって、制御回路チップは、パワーオンリセット直後にUSB接続モードか非
接触通信モードであるかを判定し、USB接続されていなければ電池電源駆動であると判
断して非接触通信モードに移行する、ようにすることができる。
【0012】
上記において、SIMホルダーが、USB接続している場合はUSBバスパワーで駆動
するものであって、制御回路チップは、パワーオンリセット直後にUSB接続モードか非
接触通信モードであるかを判定し、非接触通信モードであっても、途中からUSB接続し
てUSB接続モードと判定した場合は、電池電源の供給を停止する、ようにすることがで
きる。
【0013】
また、外部非接触リーダライタからの応答要求信号及び/または命令信号が一定時間受
信できなかった場合は、制御回路チップによって、電池電源の供給を停止する、ようにす
ることができ、電池電源のスイッチを入れて電力が供給開始された場合は、外部非接触リ
ーダライタからの信号の有無にかかわらず、制御回路チップは外部非接触リーダライタと
の全ての通信処理に先行して、SIMをリセット解除し、ATRデータを取得して、SI
Mを活性化状態、コマンド入力待ち状態にする、ようにすることもできる。
【0014】
さらに、電池電源の制御においては、制御チップが、信号の有無ばかりでなく受信した信号が「期待する信号」か否かを判別し、「期待する信号」でない場合は電池電源の供給を停止する、ようにすることもできる。
【発明の効果】
【0015】
(1)本発明のSIMホルダー(請求項1)は、USBインタフェースを備え、SIMと
PC間のUSB接続が可能であると共に、SIMが接触型であっても、内蔵する電池電源
とアンテナコイルにより、外部非接触リーダライタとSIM間の通信を可能にする。
(2)通常の非接触ICカードの場合、外部非接触リーダライタとの間では、5cm程度
の通信距離しか得られないのに対し、本発明のSIMホルダー(請求項1)では、10c
m程度の通信距離が得られる。
(3)請求項2のSIMホルダーは、USB接続によって、USBバスパワーで駆動して
いるか、USB接続されていなければ、電池電源で駆動しているかの判断をして、各々の
USB接続モードか非接触通信モードかの切り替えを行うことができる。
【0016】
(4)請求項3のSIMホルダーは、USBバスパワーで駆動可能であって、USB接続
している場合は電池電源の供給を停止するので、電池電源の消費を少なくできる。
(5)請求項4のSIMホルダーは、外部非接触リーダライタからの応答要求信号及び/
または命令信号が一定時間受信できなかった場合は、制御回路チップによって、電池電源
の供給を停止するので、電池電源の消費を少なくできる。
(6)請求項5のSIMホルダーでは、SIMが活性化状態、コマンド入力待ち状態にさ
れているので、ドアゲート等との素早い交信が可能となる。
【0017】
(7)請求項6のSIMホルダーでは、受信した信号が「期待するもの」か否かを判別し、「期待するもの」が一定時間受信できない場合は、電池電源の供給を停止するので、電池電源の無駄な消耗を防止することができる。
(8)請求項7のSIMホルダーでは、受信した信号が「期待するもの」か否かを判別し、さらに「期待しない」ものの受信回数をカウントし、一定回数に達した時点で電池電源の供給を停止するので、電池電源の消費を少なくすることができる。
(9)請求項8のSIMホルダーでは、制御回路チップは、SIMとの通信プロトコルにかかわる情報、例えば、SIMがどのような過程で通信を進めていくかを示す情報と、SIMとの通信の過程で各段階毎にSIMから受け取る可能性のある信号の種類を、内蔵する不揮発メモリに記録しているものであって、
(A)電池電源がONしたとき及び非接触通信用コンバータチップに応答を返した後にタイマーをセットする手段(手段1)と、
(B)電池電源がON時においてアンテナコイルが受信した信号について、その通信の段階で受け取る可能性のある信号であるかを比較する手段(手段2)と、
(C)(B)における信号が受け取る可能性のある信号の場合は、タイマーを再セットし同信号をコマンドとして実行させる手段(手段3)と、
(D)(B)における信号が受け取る可能性のない信号の場合は、タイマーのカウントを続行させる手段(手段4)と、
(E)規定時間に達したら電池電源を遮断する手段(手段5)と、
を備える構成としたものであり、通信の各段階で受信した信号が「期待するもの」か否かを判別し、「期待するもの」が一定時間受信できない場合は、電池電源の供給を停止するので、電池電源の無駄な消耗をより少なくすることができる。
(10)請求項9のSIMホルダーでは、制御回路チップは、SIMとの通信プロトコルにかかわる情報、例えば、SIMがどのような過程で通信を進めていくかを示す情報と、SIMとの通信の各段階毎にSIMから受け取る可能性のある信号の種類を、内蔵する不揮発メモリに記録しているものであって、
(F)電池電源がON時においてアンテナコイルが受信した信号について、その通信の段階で受け取る可能性のある信号であるかを比較する手段(手段6)と、
(G)(F)における信号が受け取る可能性のある信号と異なる場合は、その信号を一時的に記録する手段(手段7)と、
(H)次に受信した信号と、(G)において一時記録された信号とを比較する手段(手段8)と、
(I)(H)における信号同士が一致した場合、その回数を一時的に記録する手段(手段9)と、
(J)(I)において記録した一致回数が規定数に達した場合は、電池電源を遮断する手段(手段10)と、
を備える構成としたものであり、通信の各段階で受信した信号が「期待するもの」か否かを判別し、「期待しないもの」の種類と回数を記録し、規定数に達した時点で(時間に限らず)電池電源の供給を停止するので、電池電源の無駄な消耗をさらに少なくすることができる。
ここにおいて、上記の手段1から手段10は、制御回路チップがプログラムを実行することによって実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明のSIMホルダーの例の外観図、図2は、SIMホルダーの内部構造の
一部を示す図、図3は、SIMホルダーの機能ブロック図、図4は、SIMの外観図、図
5、図6は、制御回路チップの動作フローを示す図、図7は、ポーリング信号待機状態を説明するフロー図、図8は、タイマーの動作を説明するフロー図、図10は、受信信号の要/不要を判別し時間により電源OFFを制御する場合の制御回路チップの動作を説明するフロー図、図11は、不要信号の計数により電源OFFを制御する場合の制御回路チップの動作を説明するフロー図である。
【0019】
図1は、本発明のSIMホルダーの例の外観図である。SIMホルダー1は、回路や部
品、SIMを納める筐体10からなり、SIM2を挿入口15からスライドして着脱で
きる構造になっている。筐体10は透明な材質、例えば透明アクリルで構成され、透明窓
16からSIM2を観察できる構造になっている。図1の場合、USBコネクタ5はAコ
ネクタ(雄型)であるが、筐体から突出しないミニBコネクタ(雌型)であってもよい。
筐体10には、電源ボタン18(スイッチ8と一体のもの)や使用状態を確認するLED
表示17が設けられている。携帯に便利なように、ストラップ通し穴14を有することも
好ましい。ただし、外観や構造、材質は、図1の例に限定されるものではない。
【0020】
本発明に使用するSIM(Subscriber Identity Module)
2は、図4(A)のような外観のものである。SIM2は、一般的には、長辺L1が25
mm程度、短辺L2が15mm程度に形成されている。厚みは、1.0mm以内で通常は
0.76mmの均一な薄板状のものである。矩形状SIM2の一端角部に切り欠き23を
有するのは、SIM2をSIMホルダー1に装着する際の整合を容易にするためのもので
ある。SIM2の本来的目的は、携帯電話サービスの利用目的で開発されたが、一般のI
Cカードと同様の使用方法が可能であり、クレジット決済用の個人識別情報などを暗号化
して登録することも可能となっている。本発明で使用するSIM2は、接触型であって、
端子板22を有するが、基板20内にアンテナコイルを有していない。
【0021】
SIM2の基板20も一般のICカードと同様にプラスチック材料からなっている。通
常は、ICカードと同様の工程により同様の製造装置で製造可能とするため、ICカード
と同一サイズのICカード基板30に形成され、図4(B)のように、SIM2の周囲に
溝30mと折り線30kを形成して、必要によりICカード基板30から折り取りできる
ようにされている。なお、図4(B)では、接触端子板22は裏面側に位置している。
本発明のSIMホルダー1では小型ICカードのSIMを使用することが、リーダライ
タの小型化に寄与することから、SIM対応として本デバイス(SIMホルダー)1を説
明しているが、ICカードはSIMに限定されず、通常の札入れサイズICカード対応で
あっても発明の機能を損なうものでないことは、当該分野に関わるものならば容易に類推
できるものである。
【0022】
図2は、SIMホルダーの内部構造の一部を示す図である。図2(A)は、内部構造の
概略透視図、図2(B)は、SIM2の端子板12とコンタクトピンの関係を示す断面図
である。この図面では、SIM2は右側から挿入されて、端子板12上の定位置で停止す
るようにされている(図2(A))。端子板12は8本の弾性体である金属製コンタクト
ピン13を有していて、SIM2が定位置で停止した際、接触端子板22の8個の端子と
電気的に接続するようにされている(図2(B))。図示してないが、SIMホルダー1
にはSIMを取り出す機構も備えられている。USBコネクタ5は省略している。
【0023】
図3は、SIMホルダーの機能ブロック図である。全体の制御回路(CPU)として制
御回路チップ(マイクロコンピュータチップ)3を用いた一例である。制御回路チップ3
はCPUの機能を有するので、以下単に、「CPU3」という場合もある。
SIMホルダー全体は制御回路チップ(CPU)3が持つプログラムによって制御され、プログラムはROM(不揮発性メモリを含む)に格納されている。
ROMやRAMは、CPU3に内蔵されているチップを想定しているが、外付けROMやRAMであっても同様に機能させることができる。
SIM2とは物理的には、図2に図示する8本のコンタクトピン13を有する端子板12により接続しているが、CPU3にはSIM(制御)コントローラ31が搭載されている。すなわち、SIM2はISO7816−3で規定するプロトコルを持ち、CPU3はこのISO7816−3のインタフェース、および、プロトコルを有している。
【0024】
CPU3はまた、USB(インタフェース)コントローラ32を有している。ICカー
ド(SIM)リーダライタとして、本SIMホルダー1を使用する場合には、例えば、外
部パソコンとUSB接続され、パソコンのアプリケーションとSIM2とのトランスミッ
ション(伝達)を本SIMホルダー1が行う。すなわち、アプリケーションからSIM2
に記憶されたIDデータを読み出すコマンドがUSBインタフェース経由で本SIMホル
ダー1のCPU3に送信され、そのコマンドを解釈して(または変換して)SIM2へ通
知し、SIM2からそのデータを受け取り、USBコネクタ5経由で外部パソコンのアプ
リケーションへ通知するといった機能を持っている。
【0025】
さらに、CPU3は非接触コントローラ33を有し、非接触通信用コンバータ(デジタ
ル/アナログ変換)チップ4を制御させる機能を持たせているのが、本発明の特徴である
。非接触通信用コンバータチップ4には、アンテナコイル11が接続している。アンテナ
コイル11は、筐体10の内側に沿って敷設されているもので、ISO14443、IS
O18092のキャリア周波数13.56MHzの特性に合わせられている。
【0026】
一般の非接触ICカードでは外部非接触リーダライタからのポーリング応答要求信号を
受信すると、そのポーリング信号の電磁波を誘導起電力として、ICカード自体がその電
力で起動し、応答を外部非接触リーダライタに返信するが、本SIMホルダー1の場合は
他のCPUを含めて動作電力が大きいために、電磁誘導起電力では動作できない。
そこで、本発明では、電池電源7での回路駆動としてその問題を解決している。電源ボ
タン(スイッチ8)18を「ON」にして、CPU3、SIM2と非接触通信用コンバー
タチップ4を可動状態にした段階で、外部非接触リーダライタからのポーリング応答要求
を受信した場合に、その応答を返信し、外部非接触リーダライタからのIDデータ要求コ
マンドを受け付けて、IDデータを送出するようにしたものである。すなわち、外部非接
触リーダライタとSIM2とのトランスミッションをCPU3がその仲介を行っているこ
とになる。
【0027】
すなわち、本SIMホルダー1はSIM2を挿入してから、USB接続することによっ
て、SIM用リーダライタとなり、USB接続されていない時には電池電源を「ON」にして、自身の電池電源7によって駆動することにより、SIM2を非接触IDデバイスとして使用可能ならしめるという特徴を有するものである。
電池電源7は、二次電池でも一次電池であってもよい。二次電池の場合は、充電回路3
5を備える必要がある。二次電池にはリチウムイオン電池等を使用できる。電池電源7は
電源ボタン(スイッチ8)18を「ON」にした際に、電源供給ライン36を通じて、C
PU3、非接触通信用コンバータチップ4、SIM2に供給される。USB接続している
場合は、パソコンから同様にバスパワーにより電源が供給される。
【0028】
この場合は、非接触通信用コンバータチップ4に電源供給する必要はない。また、非接
触通信用コンバータチップ4に電源供給してもCPU3が非接触通信用コンバータチップ
4を制御して、信号遮断を行うなどにより非接触通信は行わないようにする。
タイマー34は、電池電源の無駄な消費を防ぐために設けられたもので、その機能につ
いては後述する。
【0029】
SIMホルダー1は次のような使用方法が考えられる。電源ボタン(スイッチ8)18
を「ON」にして、リーダライタ(外部非接触リーダライタ)が設置されたドアゲートに
かざして、ドアを開閉して入室する。入室した部屋のパソコンにUSB接続してネットワ
ークログインする、といった使用例が代表的である。このような使用法により、許可され
たID者のみが入室し、パソコンに接続してネットワークログインすることが可能になる
。他方、許可されないID者は入室もネットワークログインも禁止される。
【0030】
非接触デバイスとしての使用の典型的な例は、上記のようなドアゲートなどのゲート通
過システムであるが、この場合にはデバイスの電源を「ON」にして、すばやく交信する
必要がある。そのため、ゲートの外部非接触リーダライタにかざす前にデバイスに装着さ
れたSIMをリセット解除し、SIMも非接触通信用コンバータチップ4も活性化状態に
しておかねばならず、特にSIMはATR(Answer To Reset)データの
送信を終えて(制御回路チップ3がATRデータを取得済み状態で)、コマンド入力待ち
状態にしておくことが重要であり、最初にこの処理を行うように工夫されている。
【0031】
逆に、電源ONにしてから、外部非接触リーダライタと交信が行われなかった場合には
、電池の消耗を最小限にするために、ある一定時間の交信がない場合は、制御回路チップ
3が電力を遮断する機能を持たせた。ドアゲートに限らず、PC接続の卓上非接触リーダ
ライタとの長時間の交信においても、ある一定時間の交信がない場合には、電池電源から
の供給を遮断(停止)する機能を持たせ、電池の無用な消耗を防ぐ工夫も行っている。
【0032】
図5は、CPUの動作フローを示す図である。電源ONの状態でCPU3は、パワーオ
ンリセット(S11)直後に、USBコントローラ32のレジスタの状態をチェックする
(S12)。すなわち、CPU3が起動した場合に、USBバスパワーでの起動か、電池
電源からの起動かは、CPU3の立ち上がり直後には不明なため、レジスタがUSB接続
を示していればUSBでのトランスミッションを始める状態に移行する。ここに示す機能
は、例えば、ルネサステクノロジ社製マイコンの「H8S/2215」、「H8S/22
18」などは、USBインタフェースを持ち、接続を示すレジスタが用意されている。
USB接続されていなければ、電池電源駆動であると判断して(S13)、非接触通信
モードでトランスミッションを始める状態に移行する。
【0033】
図6も、同様にCPUの動作フローを示す図である。CPU3は、パワーオンリセット
(S11)直後に、USBコントローラ32のレジスタの状態をチェックする(S12)
。レジスタがUSB接続を示していればUSBでのトランスミッションを始める状態に移
行する。電池電源駆動していても(非接触通信モードであっても)、USB接続された場
合には、CPU3は一定間隔でUSBレジスタをチェックしていて、その時点でUSB接
続か否かを判断し(S13)、USB接続されたと判断した場合は、電池電源7のスイッ
チOFF信号を送出して(S14)、電池電源7を切断してUSBモードとする。
【0034】
これによって、USB接続モードか非接触モードかのどちらのモードで駆動すべきかを
判断することができ、また、電池の無駄な消費を抑えることが可能となる。このチェック
動作を一定間隔(例えば、0.5秒)毎に行う。なお、図3の機能ブロック図では、電池
電源スイッチのOFF信号をタイマーコントロールにより送出するように図示されている
が、どのラインからでもよい。図3のように、タイマーコントロールする場合は、タイマ
ーのカウント値を設定値まで強制的に繰り上げて信号送出するようにする。
【0035】
次に、図7のフローチャートを参照して、信号待機状態などについて説明する。
上述のようなドアーゲートシステムでの使用では、電源ボタン(スイッチ8)18をO
Nにしてから(S21)、外部非接触リーダライタ6にかざして非接触通信を行うが、電
源ONにした状態の直後では上述の如く、USB接続モードか、非接触通信モードかの選
択を行う。非接触通信モードと判断した場合には直後にSIM2をリセットし(2a)、
ATR応答を得て(2b)、SIM2を稼働状態にしておく。これにより、CPU3は、
ポーリング信号確認待ち状態(S22)になり、SIM2は、コマンド入力待ち状態(S
23)になる。
【0036】
このようにすることによって、いつ外部非接触リーダライタ6から非接触通信用コンバ
ータチップ4にポーリング応答要求(2c)があって、ポーリング信号受信通知(2d)
が、CPU3にされても、ポーリング応答返信通知(2e)をすることができる。非接触
通信用コンバータチップ4が、外部非接触リーダライタ6にポーリング応答(2f)をす
ると、外部非接触リーダライタ6は、IDデータ要求コマンド(2g)を非接触通信用コ
ンバータチップ4に返し、CPU経由SIMに送信される(2h,2i)。SIM2は、
IDデータ返信をCPU3と非接触通信用コンバータチップ4を経由して、外部非接触リ
ーダライタ6に返信する(2j,2k,2l)。この処理フローにより、使用上では電源
ONからいつでも非接触システムとして使用可能とすることができる。通常では、0.5
秒以内でSIMはコマンド入力待ちの状態にすることができる。
【0037】
本デバイス(SIMホルダー)1は、非接触通信モードでは電池電源7を使用するが、
前述のドアゲートシステムを例にすると、電池電源スイッチ8を「ON」にしてから、外
部非接触リーダライタにかざさない場合も想定することができる。この場合は延々と電池
が消費されるので、電池電源の無駄な消費を防ぐためにタイマー機能を搭載する。
【0038】
図8のフローチャートを参照して、タイマーの動作などについて説明する。
前記のように、SIM2をリセットし(3a)、ATR応答を得て(3b)、SIM2
を稼働状態にしておく。これにより、CPU3はポーリング信号確認待ち状態(S32)
になり、SIM2は、コマンド入力待ち状態(S33)になる。このように、SIM2を
活性化した直後に、CPU3は、自己のタイマーをセットする(S34)。
ドアゲートなどの非接触システムを想定すると10秒が最適と言える。10秒間、何も
非接触通信用コンバータチップ4からの信号がない場合は、終了シーケンスを実行して、
電源スイッチにOFF信号を出力して電池電源供給を「OFF」させる。
【0039】
図7と同様に、外部非接触リーダライタ6から、ポーリング応答要求(3c)があって
、非接触通信用コンバータチップ4からの、ポーリング信号受信通知(3d)を受け、ポ
ーリング応答返信通知(3e)し、ポーリング応答(3f)する。IDデータ要求コマン
ド(3g,3h,3i)に対して、IDデータ返信した場合(3j,3k,3l)は、そ
の後、タイマー34をセットする(S35)。タイマーセット後、10秒間コマンド信号
入力無しを確認(S36)した場合は、CPU3は、終了シーケンス(3m)をSIM2
に送信し、電源スイッチOFF信号を出力し(S37)、電池電源供給を「OFF」させ
る。すなわち、非接触通信が途絶えて約10秒後には、必ず電池電源を「OFF」するこ
とが可能となり、無駄な電力消費を防ぐことができる。
【0040】
さらに綿密なタイマーの制御法について、図9のフローチャートを参照して説明する。
図7と同様に、外部非接触リーダライタ6から、ポーリング応答要求(3c)があって
、非接触通信用コンバータチップ4からのポーリング信号受信通知(3d)を受けた場合、CPU3はポーリング応答返信通知(3e)を出しタイマーをセットする(S35)。タイマーセット後、10秒間「期待する信号」の入力が無いことを確認(S37)した場合は、CPU3は、終了シーケンス(3m)をSIM2に送信し、電源スイッチOFF信号を出力し(S38)、電池電源供給を「OFF」させる。
【0041】
上記とは逆に、データ要求コマンド(3g,3h)のような「期待する信号」が入力した場合は、CPU3は、非接触通信用コンバータチップ4、SIM2との通信を行うとともに、その都度タイマーをセットする(S36)。これにより、一定時間内(上記例では10秒間)に「期待する信号」を受信する間は、電源電池がONの状態が続き、SIMホルダー1は外部非接触リーダライタ6との通信を続けることができる。
【0042】
ここでいう「期待する信号」とは、装着されたSIMが解釈できるコマンドを意味し、具体的にはポーリングコマンドやIDリードコマンドなどである。
CPU3には内部のメモリにプログラムとともにSIMの情報が予め格納してあり、CPU3は、このSIM情報を参照しながら動作する。SIM情報とは、ホルダーに装着される可能性のあるSIMの種類とそのSIMが使用するコマンドの種類及びそれらコマンドのビットパターンを対応づけたテーブルと、通信の各段階毎に受信する可能性のあるコマンドの種類を明らかにしたテーブルから成る。これにより、CPU3は、非接触通信用コンバータチップと通信しながら各ステータスにおいて期待する信号か否かを判別することができる。
【0043】
通常は、ホルダーに装着されるSIMは数種類の範囲で予め決まっており、これらSIMの情報がメモリに記録されているが、新たなSIMが出現した場合でも、SIMホルダーはUSB接続あるいは非接触通信によって新たなSIMの情報を外部から取得することは可能である。
【0044】
以下、請求項8及び請求項9に対応する制御回路チップの動作を図10(フロー図A)を参照して説明する。
図9においてタイマーセット(S34)した後、非接触コンバーターチップからのデータ信号を受信しなければ、例えば10秒のタイマーならば、タイマーカウントを経て(S109)、電源スイッチOFFの信号出力を行う(S110)。
10秒以内にデータ信号を受信していれば、コンバータチップからの受信データ信号が期待値であるか否かのチェックを行う(S104)。
【0045】
コンバータチップからの受信データ信号が期待値であれば、それまでのエラーカウンタをクリアして(S105)、またタイマーカウンタを止めて(S106)、正常処理・応答を行う(S107)。正常処理・応答後はまたタイマーセット(S108)を行い、次の信号を待つ。
【0046】
コンバータチップからの受信データ信号が期待値でない場合は、そのエラー(期待値でない)データ信号をそれ以前に受信していたかのメモリーチェックを行う(S111)。またそれが規定回数に達したか否かのチェックを行い(S112)、例えば規定数が5回にセットされていれば、5回目のエラーデータ信号を受信したところで電源スイッチOFF信号の出力を行う(S113)。5回目以下であれば、エラーカウントをインクリメント(1度数増加)して(S114)、タイマーカウントの継続に戻る(S102)。即ち、10秒のカウントを続けながらコンバータチップからの信号を待つ。(当然、10秒経過すれば「電源OFF信号」を出力する。)
このように綿密な制御により、外乱電磁波ノイズのような不要信号を判別し排除することができ、電池電源の無駄な消耗を抑えることが可能となる。
【0047】
さらに図11(フロー図B)では、同じエラー信号の場合の、より迅速な電源OFF処理を実現している。
コンバータチップからの受信データ信号が期待値と異なる場合にはその前のエラーデータ信号を記録しておいて、今回のエラーデータ信号がその前のデータ信号を同じかどうかチェックし(S203)、同じであれば、エラーカウンタの規定回数を下回っていても、その時点で電源スイッチOFF信号を出力して電源を切断する(S205)。
エラーデータであっても、記録されているエラーデータと異なるものであれば(S203、S204)、そのデータを記録し(S206)、エラーカウンタをインクリメントして(S207)、タイマーカウントの継続に戻る。
同じエラーデータ信号を送ってくるのは、例えば装着されたSIMとは別種のシステムと通信しようとした、など異常な状態であることと判断して、早く電源を切ることによって電池の消耗を防ぐ。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明では小型ICカードのSIMを使用することが、リーダライタの小型化に寄与す
ることから、SIMを例として記述し、SIM対応として本デバイスを説明してきたが、
ICカードはSIMに限定されず、通常の札入れサイズICカードにも適用できることは
、当業者には自明のことである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明のSIMホルダーの例の外観図である。
【図2】SIMホルダーの内部構造の一部を示す図である。
【図3】SIMホルダーの機能ブロック図である。
【図4】SIMの外観図である。
【図5】CPUの動作フローを示す図である。
【図6】制御回路チップ(CPU)の動作フローを示す図である。
【図7】ポーリング信号待機状態を説明するフロー図である。
【図8】タイマーの動作を説明するフロー図である。
【図9】制御回路チップ(CPU)が受信信号の要/不要を判別する場合のタイマーの動作を説明するフロー図である。
【図10】受信信号の要/不要を判別し時間により電源OFFを制御する場合の制御回路チップ(CPU)の動作を説明するフロー図である。
【図11】不要信号の計数により電源OFFを制御する場合のCPUの動作を説明するフロー図である。
【符号の説明】
【0050】
1 SIMホルダー、本デバイス
2 SIM
3 制御回路チップ、CPU
4 非接触通信用コンバータチップ
5 USBコネクタ
6 外部非接触リーダライタ
7 電池電源
8 スイッチ
10 筐体
11 アンテナコイル
12 端子板
13 コンタクトピン
16 透明窓
17 LED表示
18 電源ボタン
20 基板
22 接触端子板
23 切り欠き
30 ICカード基板
31 SIMコントローラ
32 USBコントローラ
33 非接触コントローラ
34 タイマー
35 充電回路
36 電源供給ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SIMサイズの小型ICカードが装着可能な、USBインタフェー
スを有する携帯可能なSIM用リーダライタであって、該リーダライタには少なくとも、
(1)制御回路チップと非接触通信用コンバータチップと、
(2)非接触通信のためのアンテナコイルと、
(3)電池電源とそのスイッチと、
が搭載され、該スイッチを入れて電池電源から制御回路チップ、非接触通信用コンバータ
チップ、及びSIMに電力を供給することによって、アンテナコイルを通じて、外部非接
触リーダライタと該リーダライタに装着されたSIMとの通信を可能にすることを特徴と
するSIMホルダー。
【請求項2】
SIMホルダーが、USB接続している場合はUSBバスパワーで駆動す
るものであって、制御回路チップは、パワーオンリセット直後にUSB接続モードか非接
触通信モードであるかを判定し、USB接続されていなければ電池電源駆動であると判断
して非接触通信モードに移行することを特徴とする請求項1記載のSIMホルダー。
【請求項3】
SIMホルダーが、USB接続している場合はUSBバスパワーで駆動す
るものであって、制御回路チップは、パワーオンリセット直後にUSB接続モードか非接
触通信モードであるかを判定し、非接触通信モードであっても、途中からUSB接続して
USB接続モードと判定した場合は、電池電源の供給を停止することを特徴とする請求項
1記載のSIMホルダー。
【請求項4】
外部非接信リーダライタからの応答要求信号及び/または命令信号が一定
時間受信できなかった場合は、制御回路チップによって、電池電源の供給を停止すること
を特徴とする請求項1記載のSIMホルダー。
【請求項5】
電池電源のスイッチを入れて電力が供給開始された場合は、外部非接触リ
ーダライタからの信号の有無にかかわらず、制御回路チップは外部非接触リーダライタと
の全ての通信処理に先行して、SIMをリセット解除し、ATRデータを取得して、SI
Mを活性化状態、コマンド入力待ち状態にすることを特徴とする請求項1記載のSIMホ
ルダー。
【請求項6】
電池電源がONの状態で、アンテナコイルが受信した信号を非接触コンバータが制御回路チップに送出する際に、制御回路チップは期待する信号でない場合はこの信号を無視し、規定時間内に期待する信号が受信できなければ電池電源を遮断する手段を備えることにより、電池電源の無駄な消耗を防止する構成とした請求項1記載のSIMホルダー。
【請求項7】
電池電源がONの状態で、アンテナコイルが受信した信号を非接触コンバータが制御回路チップに送出する際に、制御回路チップは「期待する信号でないもの」を複数回受信した場合、規定回数に達した時点で電源を遮断する手段を備えることにより、電池電源の無駄な消耗を防止する構成とした請求項1記載のSIMホルダー。
【請求項8】
制御回路チップは、SIMとの通信プロトコルにかかわる情報を、内蔵する不揮発メモリに記録しているものであって、
(1)電池電源がONしたとき及び非接触通信用コンバータチップに応答を返した後にタ イマーをセットする手段と、
(2)電池電源がON時においてアンテナコイルが受信した信号について、その通信の段 階で受け取る可能性のある信号であるかを比較する手段と、
(3)(2)における信号が受け取る可能性のある信号の場合は、タイマーを再セットし 同信号をコマンドとして実行させる手段と、
(4)(2)における信号が受け取る可能性のない信号の場合は、タイマーのカウントを 続行させる手段と、
(5)規定時間に達したら電池電源を遮断する手段と、
を備える構成とした請求項1記載のSIMホルダー。
【請求項9】
制御回路チップは、SIMとの通信プロトコルにかかわる情報を、内蔵する不揮発メモリに記録しているものであって、
(1)電池電源がON時においてアンテナコイルが受信した信号について、その通信の段 階で受け取る可能性のある信号であるかを比較する手段と、
(2)(1)における信号が受け取る可能性のある信号と異なる場合は、その信号を一時 的に記録する手段と、
(3)次に受信した信号と、(2)において一時記録された信号とを比較する手段と、
(4)(3)における信号同士が一致した場合、その回数を一時的に記録する手段と、
(5)(4)において記録した一致回数が規定数に達した場合は、電池電源を遮断する手 段と、
を備える構成とした請求項1記載のSIMホルダー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−210370(P2008−210370A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−299297(P2007−299297)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】