説明

T細胞介在の病気を治療するための製剤と方法

【課題】T細胞介在の病気、自己免疫の病気等の、病原に含まれるT細胞によって認識される抗原からなる治療製剤、生物学的に活性なキャリヤとして新陳代謝できる脂質エマルジョンの提供。
【解決手段】TH1からTH2へのサイトカインシフトを促進するので、新陳代謝できる脂質エマルジョン、例えばイントラリピドおよびリポフンディンは、自己免疫病および他のTH1T細胞介在の病気または状態のペプチド療法のためのビヒクルとして優れている。このようなエマルジョンはT細胞介在の病気または状態の病原と関連した炎症性T細胞によって認識される抗原と共に、このような状態の治療のために使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はT細胞介在の病気のためのワクチン療法に関し、特にT細胞介在の病気、例えば自己免疫の病気、の病原に含まれるT細胞によって認識される抗原からなる治療製剤、および生物学的に活性なキャリヤとして新陳代謝できる脂質エマルジョンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自己免疫不調、例えば、インシュリン依存真性糖尿病(IDDMまたはタイプI糖尿病)、多発性硬化症、慢性関節リウマチおよび甲状腺炎は、組織に必然的に危害を与える内生的な抗原への免疫系の反応に特徴がある。これらの自己抗原への免疫応答は自己反応性Tリンパ球の持続性活性化によって維持される。
【0003】
CD4“ヘルパー”タイプのT細胞は活性化されるときに分泌する特徴的なサイトカインによって2群に分けられた(モスマンおよびコフマン、1989)。T細胞増殖を誘発するIL−2、および組織炎症を媒介するIFN−γのようなサイトカインをTH1細胞は分泌する。これに対して、TH2細胞はIL−4およびIL−10を分泌する。IL−4は、一定のIgGアイソトープの抗体を分泌し、TH1炎症性のサイトカインの生成を抑制する(バンチェロウら、1994)。IL−10はマクロファージによる炎症性サイトカイン生成および抗原表示に作用してTH1活性化を抑制する(ムーアら、1993)。器官特異的自己免疫病の病原に貢献するのはTH1細胞である。TH1タイプの応答は接触皮膚炎のような、他のT細胞介在の病気または状態に含まれるように思われる(ロマグナニ、1994)。
【0004】
自己免疫病の免疫的に特異的な治療に適するペプチドは、自己免疫の病因に含まれるT細胞によって認識されるペプチドである。各自己免疫病は治療に使用するための理想的なペプチドをもつ。ミエリン塩基性蛋白質(MBP)のような自己抗原に反応するT細胞を含む多発硬化症のような病気(アレグレタら、1990)は、その治療にミエリン塩基性蛋白質のペプチドを必要とし、例えばオータら、1990によって記載されたものがある。
【0005】
本発明者らは、タイプI真性糖尿病のような自己免疫病はオイルビヒクル中の適当なペプチドを投与して治療することができることを示した。NODマウスは島のインシュリン生成β細胞を攻撃する自己免疫T細胞が原因のタイプI糖尿病を自発的に発現する。自己免疫の攻撃は、60kDa の熱ショック蛋白質 (hsp60)のペプチドと、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)のペプチドを含む種々の自己抗原に対して、T細胞の反応性と関連している。従って、例えば、マウスのNOD/Lt株中に発現する自発性糖尿病は、ヒトhsp60配列の部位437-460に対応するp277と呼ばれるペプチドを用いて(PCT特許公報第WO90/10499;D.Eli as and I.R.Cohen,Peptide therapy for diabates in NOD mice, The Lancet 343: 704-06,1994) ;部位6および/または11での1または両方のシステイン残基がバリンによって置換したかおよび/または部位16でのThr残基がLysによって置換した、p272ペプチドの変異体を用いて(PCT公報WO96/19236参照)、および、それぞれヒトhsp60配列の部位166-185および466-485に対応するp12およびp32と呼ばれるペプチドを用いて治療することができる。1995年6月30日出願の出願と同一出願人のイスラエル特許出願第114,407 号参照。1996年7月1日出願、PCT出願第PCT/US96... ,前記イスラエル出願第114,407号の優先権主張、全体の内容をここに参考文献として組み込む。
【0006】
p12、p32、p277またはその変異体を使用するIDDMの治療のためのペプチド療法は、不完全フロイントアジュバント(IFA) として知られている鉱物油のエマルジョンのようなオイルビヒクルでマウスに皮下(sc)投与した。しかしながら、IFAならびに完全フロイントアジュバント(CFA; マイコバクテリアの殺した組織を種々の量で含む鉱物油の調製) は、鉱物油が新陳代謝せず、身体内で分解することができないので、ヒトに使用することができない。従って、新陳代謝することができるペプチド治療に有効なビヒクルを見出すことが望まれていた。
【0007】
いくつかの脂肪エマルジョンが何年間もヒトの患者の静脈栄養摂取のために使用されてきた。市販品として入手できるエマルジョンのうち2つは、イントラリビド(「Intralipid」は Kabi Pharmacia,Sweden の登録商標であり、US特許第3,169,094 号に記載されている静脈栄養摂取のための脂肪エマルジョン)、およびリポフンディン(LipofundinはB.Braun Melsungen,Germany の登録商標)として知られており、脂肪として大豆油を含む(1,000mlの蒸溜水に100または200g: それぞれ10%または20%)。卵黄リン脂質はイントラリピド(12g/l 蒸留水)に、卵黄レシチンはリポフンディン(12g/l 蒸留水)に乳化剤として使用される。等浸透はイントラリピド中およびリポフンディン中にグリセロール (25g/l)を追加するとなる。これらの脂肪エマルジョンは全く安全であり、経口により栄養摂取できない胃腸または神経の障害を受けた患者の静脈栄養摂取に使用され、従って生命維持に必要なカロリーを受けることができる。通常の毎日の投与は一日当たり1リットルまでである。
【0008】
レトリンドらによる1978年2 月14日に発行されたUS特許第4,073,943号、レトリンドらによる1979年9月18日に発行された特許第4,168,308号の再発行特許として1990年5月29日に発行された再発行32,393には、親水性の相に分散した疎水性の相として薬理学的に不活性のリポイドを含む安定な水中油型のエマルジョンからなる、薬理学的に活性の油溶性剤を非経口、特に静脈投与を高めて使用するためのキャリヤシステムを記載しており、前記リピドは、受容できる治療効果の迅速な開始を達成するため1ミクロン以下の平均粒子を有する微細粒子としてエマルジョンに分散されており、前記キャリヤシステムは、疎水性の相中に分画比にて前記リポイドに優勢に溶解している前記薬理学的に活性な油溶性剤の有効量で使用され、前記治療効果は活性剤の前記有効量に帰する。このキャリヤシステムは、リポイド相に優勢に溶解した水不溶性または水溶性の油溶解の薬理学的に活性な薬剤の投与のために適していると言える。このような薬理学的に活性な薬剤の例は、抑制剤、麻酔薬、鎮痛薬、興奮剤、鎮痙薬、筋弛緩剤、欠陥運動抑制剤および診断、例えばX線対比の薬剤がある。キャリヤシステムは、身体組織への損傷の範囲を減らすことにより達成される迅速な開始と共に、薬剤の診断または治療効果を高めると言われている。
【0009】
イントラリピドは、ワクチンに使用するための複数の補助薬のための非刺激性ビヒクルとして提案された、例えば、6-O-(2- テトラデシルヘキサデカノイル)-および6-O-(3-ヒドロキシ-2- ドコシルヘキサコサノイル)-N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン(Tsujimoto ら、1986および1989)、アブリジン (Woodward and Jasman,1985)、N,N-ジオクタデシル-N',N'-ビス(2-ヒドロキシエチル) プロパンジアミン (CP-20,961)(ドイツ特許出願第DE2945788号; Anderson and Reynolds,1979; Niblackら、1979)。クリスチャンセンおよびスパルマン、1983は、マウスにおける血球凝集素とノイラミニダーゼの免疫原性が、イントラリピドを構成するリピド粒子に吸着した後に著しく増加することを開示している。
【0010】
上記刊行物のいずれにも、自己免疫病の治療においてペプチドのためのビヒクルとしてイントラリピドを使用することは記載しておらず、また、TH1タイプの応答からTH2タイプの応答への免疫応答のシフトをイントラリピドが媒介できることも何ら開示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】PCT特許公報第WO90/10499
【特許文献2】PCT公報WO96/19236
【特許文献3】US特許第3,169,094号
【特許文献4】US特許第4,073,943号
【特許文献5】再発行特許第4,168,308号
【特許文献6】再発行特許32,393号
【特許文献7】ドイツ特許出願第DE2945788号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】モスマンおよびコフマン、1989
【非特許文献2】バンチェロウら、1994
【非特許文献3】ムーアら、1993
【非特許文献4】ロマグナニ、1994
【非特許文献5】アレグレタら、1990
【非特許文献6】D.Eli as and I.R.Cohen,Peptide therapy for diabates in NOD mice, The Lancet 343: 704-06,1994
【非特許文献7】Tsujimoto ら、1986および1989
【非特許文献8】Woodward and Jasman,1985
【非特許文献9】Anderson and Reynolds,1979; Niblackら、1979
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、新陳代謝できる脂質エマルジョン、例えばイントラリピドおよびリポフンディンは、自己免疫病および他のTH1T細胞介在の病気または状態のペプチド療法のためのビヒクルとして作用することができることが見出された。さらに、この活性はTH1からTH2へのサイトカインシフトと関連することが見出された。
【0014】
従って、本発明は、自己免疫病または他のT細胞介在の病気または状態の治療のための治療製剤に関し、ペプチドまたは他の抗原および生物学的活性リピドキャリヤからなり、ペプチドまたは他の抗原は前記病気または状態の病原と関連した炎症性のT細胞によって認識されるものであり、生物学的活性リピドキャリヤは植物および/または動物起源の10-20%トリグリセリド、植物および/または動物起源の1.2-2.4%リン脂質、2.25-4.5%浸透調節剤、0-0.05%抗酸化剤、および無菌水を100%まで加えてなる脂肪エマルジョンである。
【0015】
植物または動物起源のトリグリセリドおよびリン脂質は、任意適当な植物油、例えば大豆油、綿実油、ココナツオイルまたはオリーブ油、または卵黄または牛血清から得ることができる。好ましくは、トリグリセリドは大豆油から得て、リン脂質は大豆または卵黄から得られる。好ましくは、トリグリセリド/リン脂質の重量比は約8:1である。
【0016】
任意適当な浸透調節剤は、脂肪エマルジョン、好ましくはグリセロール、キシリトールまたはソルビトールに添加することができる。脂肪エマルジョンは任意に抗酸化剤、例えば、0.05% のトコフェロールからなることができる。
【0017】
本発明の1の例では、上記の脂肪エマルジョンは遠心分離で、例えば、10,000 g またはそれ以上で処理され、従って、約1:1のトリグリセリド:リン脂質を含むリン脂質の豊富な水性分散液の上部に若干トリグリセリドの豊富な(約90%のトリグリセリド)層を形成し、そしてこの水性分散液は本発明の製剤に脂質ビヒクルとして使用される。
【0018】
本発明の1の好適例では、製剤はインシュリン依存性真性糖尿病(IDDM)の治療のためにあり、IDDMの病原と関連した炎症性T細胞によって認識されるヒト熱ショックタンパク質60(hsp60)から得られるペプチドからなり、前記ペプチドは次の表1に示されるペプチド群から選択される。
【0019】
【表1】


* Vに変化したC-442をもつ配列ID No.:1の 437-460
** Vに変化したC-447をもつ配列ID No.:1の 437-460
***Vに変化したC-442とC-447をもつ配列ID No.:1の 437-460
さらに本発明は、自己免疫病または他のTH1介在病または状態になっている者の治療方法に関し、前記者に本発明による治療製剤を有効量投与することからなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は実施例2に記載されるように、(i)イントラリピドまたは(ii)ホスフェート緩衝塩水(PBS)中のペプチドp277(Val-Val11)で処理したNODマウスの抗p-277抗体の生成を示す図である。
【図2】図2は実施例3に記載されるように、イントラリピド中のペプチドp277(Val-Val11)で処理したNODマウスに誘発されたTH2依存性抗体イソタイプを示す図である。
【図3】図3A−Bは、p277(Val-Val11)/イントラリピド治療がNODマウスにおいて、実施例4に記載されるように、p277(Val-Val11)ペプチドに反応するT細胞によって生成したサイトカインのプロフィル中に特異的スイッチを誘発することを示す図である。図3Aは、イントラリピド中のp277(Val-Val11)ペプチドを用いてマウスを処理し、p277(Val-Val11)を用いて脾臓細胞をインキュベーションした後のTH1(IL−2,IFN−γ)の減少とTH2(IL−4、IL−10)サイトカインの上昇があることを示す図である。図3Bは、イントラリピド中のp277(Val-Val11)ペプチドを用いてマウスを処理し、Con A を用いて脾臓細胞をインキュベーションした後のサイトカインには変化がないことを示す図である。
【図4】図4は、実施例5に記載されているように、p277(Val-Val11)への自発的なT細胞増殖性の応答が、イントラリピド中のp277(Val-Val11)ペプチドを用いて治療した後に減少することを示す図である。
【図5】図5は、実施例6に記載されているように、イントラリピド中のミエリン塩基性タンパク質ペプチドp71-90を用いてラットを処理すると、実験的自己免疫脳脊髄炎(EAE)の苦しさを減らすことを示す図である。
【図6】図6は、実施例6に記載されているように、IFA中のミエリン塩基性タンパク質ペプチドp71-90を用いてラットを処理すると、実験的自己免疫脳脊髄炎(EAE)の苦しさを減らすことを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の詳細な説明
本発明によれば、p277(Val-Val11)ペプチド治療が、適当なキャリヤにおいて、hsp60 およびGAD の療法のエピトープへの自発的なT細胞増殖性の応答を下方に調節し、hsp60 へ、GAD へ、インシュリンへの自己抗体の生成を無効にすることを見出した。病気の進行の阻止は、T細胞耐性またはアネルギーと関連しないが、TH1様プロフィル(IL−2、IFNγ)からTH2様プロフィル(IL−4、IL−10)までp277(Val-Val11)に反応する自己免疫T細胞によって生成するサイトカインへのシフトと関連していた。調節は、免疫学的に特異的であり、細菌性のhsp60 ペプチドへの治療マウスの自発的T細胞応答は、TH1モードに残った。したがって、複数の自己抗原への自己免疫を特徴とする糖尿病誘発性の進行は抗原のひとつ、例えば、ペプチドp277(Val-Val11)を用いて治療することができる。
【0022】
T細胞増殖から抗体までのp277(Val-Val11)への反応性におけるスイッチとp277(Val-Val11)療法の関連は、治療マウスの自己免疫T細胞によって生成した優勢なサイトカインにおけるシフトに治療効果が由来することを示している。T細胞増殖を誘発するTH1細胞はIL−2、および組織炎症を介在するIFN−γのようなサイトカインを、分泌し、これによって、病気の病原に寄与する;これに対して、TH2細胞は、IL−4およびIL−10を分泌する。IL−4は、一定のIgGイソタイプのB細胞分泌抗体を助けて、TH1炎症性サイトカインの生成を抑制する。IL−10は間接的に抗原提示を行ってTH1活性化を、そしてマクロファージによって炎症性サイトカインの生成を阻害する。従って、TH2細胞は、TH1活性を抑制する(Liblauら、1995を参照)。TH1からTH2様挙動へのシフトはp277(Val-Val11)治療の前後に生成した抗体のイソタイプの分析によって支持された。
【0023】
脂質ビヒクル治療におけるペプチドの治療効果のメカニズムがTH1→TH2サイトカインシフトを含むことが示されるという事実は、治療が有効であり、有益な応答を引きだした証拠としてTH1→TH2シフトを使用する可能性を与える。換言すれば、TH1→TH2シフトは治療への応答の代用マーカーとして役立つことができる。例えば、シフトの不足は、二次治療の必要性を示すことができる。1995年7月5日出願のイスラエル特許出願第114,459号参照、対応するPCT出願はこれと同じ日に出願した、全体の内容を参考文献としてここに組み込む。
【0024】
本発明の脂質エマルジョンは、治療される病気または状態に含まれるT細胞が活性である抗原性物質を用いてワクチンアジュバントとして使用するとき、治療前のTH1T細胞応答から、治療後のTH2T細胞応答へのシフトを介在するために役立つ。この発見は、このような脂質エマルジョンが、任意のTH1介在病または状態の治療のためのワクチンに使用することができる寛容原の生物学的に活性なキャリヤであることを確認させる。このようなワクチンでは、抗原は治療効果のための免疫学的特異性を与え、一方、本発明の生物学的活性キャリヤは生物学的結果、即ち、TH1→TH2シフトを与える。本発明の前記生物学的活性キャリヤによって介在されるシフトのために、自己反応性の範囲での病気は、T細胞サイトカインシフトを誘発することができる単一の抗原/キャリヤの組み合わせを用いて消すことができる。
【0025】
本発明による好ましい使用は、TH1細胞によって介在される器官特異的自己免疫病の治療である。このような病気には、IDDM、変形関節炎、多発性硬化症および甲状腺炎のような、自己免疫病を含むが、これらに制限されない。このような治療に使用されるペプチドは自己抗原ペプチドである。従って、例えば、IDDMについてはペプチドは上記p277ペプチドまたはバリン置換類似p277(Val-Val11)であり;多発性硬化症については、このようなペプチドはミエリン塩基性タンパク質から誘導され;甲状腺炎については、ペプチドは甲状腺グロブリンから誘導されると考えられ;リューマチ性関節炎については、自己抗原はミコバクテリウム細菌、例えば、結核菌から誘導できる。
【0026】
抗原がペプチドであることは決定的ではない。従って、例えば、接触皮膚炎のような、皮膚敏感および炎症によるTH1介在アレルギー応答は、刺激抗原とTH1タイプからTH2タイプへのシフトをサイトカイン応答に引き起こす本発明による生物学的に活性なキャリヤを含むワクチンによって治療することができる。従って、患者が抗原に対して上昇レベルの抗体を持ち続けながら、皮膚過敏の原因である炎症性T細胞応答を抑制する。
【0027】
従って、本発明の寛容原の生物学的活性キャリヤは、T細胞が攻撃する抗原に耐性となることが望ましいときにいつでも、即ち、ワクチンがT細胞介在状態、特にTH1細胞介在状態を制限するために使用されるときにいつでも、使用することができる。抗原が移植片拒絶または移植片対宿主病における応答を活性化することを決定できる場合には、このような抗原を本発明によるキャリヤと共に投与することは、T細胞がこのような状態で活性な抗原の数の全体的な複雑さに関わらず、望ましくない炎症性のTH1応答が、さらに望ましいTH2応答へシフトすることを容易にすることが期待される。
【0028】
ペプチドを用いて活性化の次にくるサイトカインのT細胞分泌を決定するために、患者の末梢血液からのリンパ球をインヴィトロ活性化アッセイで試験する。末梢血液リンパ球はficol-hypaque のヘパリンで凝血防止した全血から単離し、5-50μg/mlの濃度で試験ペプチドと培養する。培養T細胞からの上澄みを時間を変えて収集し、ELISA またはバイオアッセイによって、種々のサイトカインの活性を試験する。
【0029】
本発明の製剤に使用することができる脂肪エマルジョンの例には、静脈栄養摂取のために市販品として入手できるイントラリピドおよびリポフンディン、および上記米国特許番号3,169,096、4,073,943、4,168,308号に記載されている脂肪エマルジョンを含むが、これらに制限されず、またこれらの全体を参考文献としてここに組み込む。しかしながら、これらの新陳代謝できる脂質が、静脈栄養摂取のために予め投与され、T細胞介在の病気の治療のためにビヒクルとして有効に使用できるという本発明による発見は、全く期待外である。同様に、これらの製剤が、TH1→TH2シフトを介在する生物学的に活性なキャリヤに寛容原となるという発見も、全く期待外である。
【0030】
本発明の脂肪エマルジョンは、新しく調製され、または雰囲気に曝していないコンテナに貯蔵した後に、使用する事が好ましい。例えば、雰囲気に曝しながらのイントラリピドの長期貯蔵は、pHの減少および対応して生物学的活性の減少の原因となる。
【0031】
1例では、本発明の生物学的に活性なキャリヤは、10%の大豆油、1.2%の卵黄リン脂質、2.5%のグリセロールおよび全量100mlにする殺菌水(イントラリピド10%)からなる脂肪エマルジョンである。他の例では、ビヒクルは、20%の大豆油、2.4%の卵黄リン脂質、2.5%のグリセロールおよび全量100mlにする殺菌水からなる脂肪エマルジョンである。
【0032】
さらに他の例では、ビヒクルは5%の大豆油、および動物源からの他の5%トリグリセリド、例えば、バターからの5%中位鎖トリグリセリド、1.2%の卵黄レシチン、2.5%のグリセロールおよび全量100mlにする殺菌水(リポフンディン10%)からなる脂肪エマルジョンである。
【0033】
本発明の1例では、ビヒクルは、ここに定義された元の脂肪エマルジョンを、例えば10,000またはそれ以上で、遠心分離により得られる加工処理した脂質エマルジョンであり、これにより、僅かに豊富なトリグリセリド(約90%トリグリセリド)が、約1:1のトリグリセリド:リン脂質を含むリン脂質に富んだ水性分散液の上部に形成される。この2相を分離してリン脂質に富んだ水性分散液をビヒクルとして使用する。
【0034】
本発明の製剤は、1またはそれ以上のペプチドからなる。従って、例えば、IDDMの治療には、製剤は1またはそれ以上のペプチドp12、p32、p277、p277 (Val)、p277(Val11)、p277(Val-Val11)、または表1の他のペプチドのいずれかを含むことができる。1の好適例では、IDDMの治療のための製剤は、ペプチドp277またはp277(Val-Val11)および、10%の大豆油、1.2%の卵黄リン脂質、2.5%のグリセロールおよび全量100mlにする殺菌水(イントラリピド10%)からなる脂肪エマルジョンからなる。
【0035】
さらに本発明は、ここに定義されたような脂肪エマルジョンの使用、または1またはそれ以上のペプチドまたは他の抗原および、自己免疫病または他のTH1介在病または状態の治療においてビヒクルとして、前記脂肪エマルジョンまたは加工処理した水性分散液からなる治療製剤の調製のために、遠心分離によってそこから調製された加工処理したリン脂質に富んだ水性分散液の使用に関する。
【0036】
次の実施例は、本発明を説明するためのもので、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0037】
実施例1
オイル中にp277(Val6-Val11)を使用するタイプI糖尿病のペプチド療法
NODマウスの糖尿病のペプチド療法のためのビヒクルとして種々の脂質の効力を試験した。このモデルでは、パンクレアーゼ中のβ細胞を生成するインシュリンの自己免疫破壊をTリンパ球によって介在させる。炎症性の浸潤物は5−8週齢にてランゲルハンス島の周りに発現し、β細胞破壊はインシュリン欠乏を導き、そして明白な糖尿病は14-20週齢で一目瞭然となり、35-40週齢のNODマウスの雌は略100%冒される。
【0038】
NOD雌マウスを、0.1mlの(i)リン酸塩緩衝塩水(PBS)、または(ii)10% 大豆油、1.2%の卵黄リン脂質および2.25%のグリセロールからなる10% リピドエマルジョン(イントラリピド、Kabi Pharmacia AB,Sweden)中、一匹当たり100μgのペプチドp277(Val-Val11)で治療した。
【0039】
6月齢での糖尿病の発病率および抗p277(Val-Val11)抗体の生成を追跡した。糖尿病は持続性の過血糖症として診断し、11ミリモル/リットルを超える血液グルコースの水準はベックマングルコースアナライザーIIを用いて週の間隔で少なくとも2回測定した。好結果のペプチド治療は通常の血液グルコース濃度を維持(11ミリモル/リットルより小さい)、ランゲルハンス島(insulitis)の島内の炎症の軽減、およびTH2タイプの免疫応答のインジケーターとして治療上のペプチドへの抗体の誘発、によってアッセイした。結果を表2に示す。
【0040】
【表2】


#p<0.01 未治療NOD マウスと比較

表2から判るように、イントラリピド中で投与したペプチド治療は、糖尿病の発病率および死亡率を減らすのに効果があった。一方、PBS中で投与した治療は効果がなかった。
実施例2
抗p277(Val-Val11)抗体生成
p277(Val-Val11)ペプチドで治療した糖尿病からの防護はペプチドに対するTH2免疫反応性に依存する。従って、抗体生成はELISAによりp277(Val-Val11)免疫マウスで測定した。マキシソープマイクロタイタープレート(Nunc)をp277(Val-Val11)ペプチド10μg/mlで18時間被覆し、2時間7%粉乳で非特異的結合をブロックした。1:50に希釈したマウス血清を2時間結合させ、特異的結合は2時間アルカリホスファターゼ抗マウスIgG (Serotec)を、30分間p−ニトロフェニルホスフェート基質 (Sigma)を添加して検出した。色調強度をOD-405nmにてELISAリーダー(Anthos)によって測定した。
【0041】
図1から判るように、イントラリピド中のp277(Val-Val11)に免疫になったNODマウスは、ペプチド特異的抗体を発現したが、PBS中のp277(Val-Val11)に免疫になったマウスは全く抗体応答を示さなかった。
実施例3
p277(Val-Val11)治療によって誘発した抗体イソタイプ
実施例2に示したp277(Val-Val11)に抗体を用いてp277(Val-Val11)イントラリピド治療を組み合わせると、治療効果が自己免疫T細胞によって生成した優勢なサイトカインにおけるシフトの結果であることを示唆した。CD4「ヘルパー」タイプのT細胞は特徴のあるサイトカインによって2群に分けられ、活性化するときに分泌し (Mosmann and Coffman,1996):TH1細胞はT細胞増殖を誘発するIL−2、および組織炎症を介在するIFNγのようなサイトカインを誘発し;TH2細胞は、対照的に、「ヘルプス」B細胞が一定の抗体イソタイプを生成するIL−4、および組織炎症を「抑制する」ことができるIL−10および他のサイトカインを分泌する。TH1からTH2様挙動へのシフトの可能性は、p277(Val-Val11)治療後に生成した抗体のイソタイプの分析によって支持された。
【0042】
3月齢のNODマウスの群を、実施例2に記載したようにp277(Val-Val11)またはPBSで治療した。各マウスの血清を、治療後(1群につき12-15匹のマウス)p277(Val-Val11)への抗体のイソタイプについてアッセイした。抗体イソタイプは、イソタイプを特異的に発現する抗体試薬 (Southern Biotechnology Associates, Birmingham,AL)でELISAアッセイを使用して検出した。その結果を図2に示す。ここで、白丸はコントロール治療NODマウスのp277(Val-Val11)への抗体;黒丸はp277(Val-Val11)治療マウスのp277(Val-Val11)への抗体である。各実験欄は等しい数のマウスによる結果である;丸の数の明らかな減少は重ね合わせが原因である。
【0043】
治療後に発現する抗p277抗体の抗体イソタイプの分析は、IgG1とIgG2bクラスのみであることを示しており、IL−4を生成するTH2T細胞 (Snapperら、1993a)および多分TGFβ (Snapper ら、1993b)に起因する。p277(Val-Val11)治療によって誘発されたTH1タイプのIgG2a抗体はなかった。治療に使用した特異的ペプチドへの抗体の発現は、自己免疫T細胞応答が、TH1と呼ばれる損傷している炎症モードから、無害の抗体を生成し炎症と組織損傷(Rabinovitch, 1994)を抑制するTH2T細胞応答へ、シフトしたことのサインである。
実施例4
ペプチドp277(Val-Val11)/イントラリピド療法はサイトカインプロフィルで特異的スイッチを誘発する
サイトカインスイッチの考えを確認するために、p277(Val-Val11)/イントラリピド治療のマウスとコントロールマウスにおけるp277(Val-Val11)へのT細胞反応によって生成したサイトカインをアッセイした。コンカナバリンA(ConA)、T細胞マイトジェンを使用してコントロールとして全脾臓T細胞を活性化した。
【0044】
3月齢の10匹のNODマウスの群を、イントラリピド(黒棒)中のp277(Val-Val11)、またはイントラリピド中のPBS(白棒)を用いて治療した(実施例2参照)。5週後、マウスの脾臓を取り出し脾臓細胞をプールした。脾臓細胞は、24時間(IL−2およびIL−4分泌)または48時間(IL−10およびIFNγ分泌)、ConAまたはp277(Val-Val11)でインキュベーションした。培養上澄液のサイトカインの存在は、ファーミンゲンサイトカインELISAプロトコルに従ってファーミンゲンのペアの抗体を使用して、ELISAによって定量した。ファーミンゲンの組換マウスサイトカインを、較正曲線のための標準として使用した。簡単に述べると、平底96穴マイクロタイタープレートを、4℃で18時間ラットの抗マウスサイトカインmAbsで被覆し、培養上澄液または組換マウスサイトカインを4℃で18時間添加した。プレートを洗浄し、ビオチニル化したラット抗マウスサイトカインmAbsを室温で45分間添加し、次に大量洗浄し、アヴィジンアルカリホスファターゼを添加した。プレートを洗浄し、クロモゲン基質(p−ニトロフェニルホスフェート)を添加し、試料を405nm にてELISAリーダーで測定した。その結果を図3に示す。サイトカインの濃度はODリーディングとして示す。*p<0.01。
【0045】
図3Aはコントロールマウスの脾臓細胞がIL−2とIFNγをp277(Val-Val11)とインキュベーションした時に分泌したことを示す。これに対して、p277(Val-Val11)で治療したマウスは、ペプチドp277(Val-Val11)でのインキュベーションにたいする応答で、IL−2およびIFNγを著しく減らして(p<0.01)生成した。このTH1サイトカインでの減少は特異的である;p277(Val-Val11)治療のマウスはConA(図3B)へのIL−2およびIFNγサイトカイン応答を維持した。図3Aと3Bはマウスの脾臓細胞によって生成したIL−10とIL−4の量を示す。コントロールマウスは、p277(Val-Val11)またはConAへの応答で極僅かのIL−4またはIL−10を生成した。これに対して、p277(Val-Val11)への応答のみ、およびp277(Val-Val11)/イントラリピド治療マウスでだけの応答では、IL−10とIL−4がかなり増加していた(p<0.01)。IL−10とIL−4の増加とつながるIL−2およびIFNγの減少は、TH1様挙動からTH2様挙動へのシフトを確認する。このようなシフトは、先に本発明者らによって(Eliasら、1991)示されたp277へのT細胞増殖の低下、および本発明によるp277(Val-Val11)へのIgG1とIgG2b抗体の出現の両方を説明する助けとなる。
実施例5
p277(Val-Val11)への自発的T細胞増殖応答はp277(Val-Val11)療法によって減縮される
NOD/Lt株の5匹の雌マウスの群を、3月齢にて、イントラリピド中のペプチドp277(Val-Val11)100μg、またはイントラリピドを混合したPBS(スケールは後に)で、治療した。5週後に、マウスの脾臓を取り除き、T細胞増殖応答を標準アッセイを使用しT細胞マイトジェンConA(1.25μg/ml)またはp277(Val-Val11)(10μg/ml) に対しインヴィトロでアッセイした。その結果を図4に示す:ConAは黒縞棒;p277(Val-Val11)は灰色棒。T細胞応答は、3日培養の最後の18時間に4倍の培養基のウェルに添加した〔H〕チミジンの混和によって検出した。刺激インデックス(SI)は、抗原またはConAなしで培養したコントロールウェルに対する抗原含有ウェルの平均cpmに対して、試験培養物の平均cpmの比として計算した。平均cpmからの標準偏差値は常に10%よりも小さかった。
【0046】
図4に示すように、PBS/イントラリピドで治療したコントロールマウスは、p277(Val-Val11)およびT細胞マイトジェンConAの両方に対するT細胞増殖応答を示した。これに対して、イントラリピド中のp277(Val6-Val11)で治療したマウスは、p277(Val-Val11)へのT細胞増殖反応性の減少示したが、ConAには減少を示さなかった。従って、p277(Val-Val11)ペプチド療法の有益な効果は、自己免疫応答を不活性化することによって生じないが、挙動の異なるサイトカインモードに自己免疫を活性化することによって生じる(Cohen、1995)。破壊的な自己免疫の制御は、免疫系内にプログラムされる (Cohen、1992);脂質ビヒクルと共にペプチドを必要とする適当な信号によって活性化されるだけが必要である;表1に示すように、ペプチド単独または、ペプチドなしの脂質は有効でない。これらの結果は、新陳代謝できる脂質エマルジョンをビヒクルとして自己免疫病の治療に不完全に使用できることを示している。各病気はその特異的ペプチドを必要とするが、新陳代謝できる脂質エマルジョンは種々の治療に使用することができる。
実施例6
イントラリピド中のペプチドの投与は実験的自己免疫脳脊髄炎の発現に有効である
実験的自己免疫脳脊髄炎(EAE)は、多発性硬化症のモデル状況に教示される動物の実験的自己免疫病である (Zamvil and Steinman,1990)。EAEは、完全フロイドアジュバント(CAF)中のミエリン塩基性タンパク(MBP)質に、殺したマイコバクテリアを含む鉱油のエマルジョンを免疫化してルイスラットのようなラットの敏感な血統に誘発することができる。病気は免疫化の12日後に発現し、中枢神経系の炎症による種々の度合の麻痺によって特徴づけられる。麻痺は6ないし7日続き、ラットは通常、急性麻痺のピークの間に死なない場合には治癒する。EAEはMBP分子の一定の決定因子を認識するT細胞によって引き起こされる。ルイスラットにおける主なMBP決定因子はペプチド配列71-90から成る (Zamvil and Steinman,1990)。
【0047】
従って、われわれは、実験を行い、IFA中の脳炎発生のMBPペプチドp71-90の投与もまたEAEの発現を阻害するか否かを試験した。図5は、EAEの誘発14日前にIFA中のp71-90の投与は、病気の苦しさに影響のないようにIFA中に乳化させたPBSを用いたコントロールの治療と比較して、麻痺を最大度合でかなり減少させることを示している。従って、IFA中に与えたp71-90はEAEに影響を与える。
【0048】
しかしながら、IFAは上述のように、体内で新陳代謝させることができず、局部炎症の原因となるので、ヒトには投与できない。従って、われわれは、ルイスラットをイントラリピド中のp71-90で治療した。図6はその結果を示す。イントラリピド中のp71-90を受けたラットは、PBS/イントラリピドで治療したコントロールラットよりも、麻痺がかなり小さかった。従って、イントラリピド中に投与したp71-90のような適切なペプチドがラットにおいてEAEを調節できると、結論することができる。よって、ペプチド/イントラリピド治療の効果は、1の種において1のみのペプチドに、または1の自己免疫病のみに限定されない。
実施例7
新しい10%イントラリピドエマルジョンと古いものとの有効性
10%イントラリピドエマルジョンを使用して、12週齢のNOD雌マウスをp277(Val-Val11)で治療した。エマルジョンは、密封瓶を開封した日、または雰囲気にさらした4ヶ月後に、使用した。エマルジョンのpHは治療のためにペプチド+エマルジョンを調製した時に試験した。エージングはpHが8.2から6.7 に下がることによってマークした。各実験では、10匹のマウスをペプチド+エマルジョンで治療し、10匹のマウスにはエマルジョンのみを与え、10匹のマウスには何もしなかった。その結果を表3に示す。
【0049】
【表3】


*p<0.01

プラシーボ治療マウス(エマルジョンのみ、群2および4)および未処理マウス(群5)は、6月齢にて同様の糖尿病の発病率80-90%を発現した。これに対して、新しく開封したエマルジョン中のペプチドでマウスを治療すると、80% のマウスが糖尿病から守られた。しかしながら、「古い」エマルジョンを使用すると、40%だけ糖尿病から守られた。従って、エマルジョンは、pH値でマークした減少によって示されるように、空気に曝した後は化学的に不安定であった。この変化はその生物学的活性に関連する。従って、イントラリピドは、機能的性質がpHに依存し、不活性の脂質の存在にのみ依存するのではない生物学的活性キャリヤである。
【0050】
本発明を詳細に説明したが、当然に、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、過度の実験を行うことなく、当業者が同様に広範囲の同等のパラメーター、濃度、および条件で実施できる。
【0051】
本発明はその特定例によって説明したが、さらに変更可能である。この出願は、一般に、本発明の基本に従い、本技術分野の既知の通常のプラクチス内に入るように、請求の範囲に従って示した上記の基本的な特徴に応用できるように本発明の開示から離れていることも含み任意の変数、用途、または発明の応用をカバーすることができる。
【0052】
ここに引用した全参考文献は、雑誌または要約書を含めて、発行されたまたは未発行の米国または外国の特許出願、米国または外国の特許、また任意他の文献も、全データー、表、図、および引用文献として示された文献も含めて、すべてここに参考文献として組み込まれる。さらに、ここに引用した文献内に引用された文献の全内容も全て参考文献として組み込まれる。
【0053】
既知の方法工程、通常の方法工程、既知の方法または通常の方法の参照は、任意の局面、記述または本発明の実施例が開示され、教示され、あるいは関連した技術で示唆されていることを容認している事柄ではない。
【0054】
特定例の前記記述は、本発明の一般的性質を完全に示すものであり、他者が、当業者の範囲の知識を応用して、(ここに引用した文献の内容を含めて)、過度の実験をすることなく、本出願の一般概念から逸脱することなく、特定例を種々の応用のために容易に改変および/または採用することができる。従って、このような応用や改変は、ここに示される教示や案内に基づき、開示した実施例の意味する同等の範囲内にある。本明細書の術語は、当業者の知識と組み合わせて、ここに示される教示や案内に照らして当業者により解説されるべきであると解される。
【0055】

【0056】












【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原および/または生物学的活性キャリヤからなるT細胞介在の病気または状態の治療のための治療製剤において、抗原が、前記病気または状態の病原と関連した炎症性のT細胞によって認識されるものであり、そして前記キャリヤが植物および/または動物起源の10-20%トリグリセリド、植物および/または動物起源の1.2-2.4%リン脂質、2.25-4.5%浸透調節剤、0-0.05%抗酸化剤、および無菌水を100mlまで加えてなる脂肪エマルジョンである治療製剤。
【請求項2】
トリグリセリドが植物起源である、請求項1記載の製剤。
【請求項3】
トリグリセリドを大豆油から誘導する、請求項2記載の製剤。
【請求項4】
トリグリセリドが動物起源である、請求項1記載の製剤。
【請求項5】
トリグリセリドを卵黄または牛血清から誘導する、請求項4記載の製剤。
【請求項6】
リン脂質が植物起源である、請求項1ないし5のいずれか1項記載の製剤。
【請求項7】
リン脂質を大豆油から誘導する、請求項6記載の製剤。
【請求項8】
リン脂質が動物起源である、請求項1ないし5のいずれか1項記載の製剤。
【請求項9】
リン脂質を卵黄または牛血清から誘導する、請求項8記載の製剤。
【請求項10】
浸透調節剤がグリセロール、キシリトールおよびソルビトールからなる群から選択される、請求項1ないし5のいずれか1項記載の製剤。
【請求項11】
抗酸化剤として0.05%のトコフェロールを含む、請求項1ないし5のいずれか1項記載の製剤。
【請求項12】
生物学的活性キャリヤは10%大豆油、1.2%卵黄リン脂質、2.5%グリセロールおよび無菌水を100%まで加えてなる脂肪エマルジョンである、請求項1記載の製剤。
【請求項13】
生物学的活性キャリヤは20%大豆油、2.4%卵黄リン脂質、2.5%グリセロールおよび無菌水を100%まで加えてなる脂肪エマルジョンである、請求項1記載の製剤。
【請求項14】
生物学的活性キャリヤは5%大豆油、5%中位鎖トリグリセリド、1.2%卵黄レシチン、2.5%グリセロールおよび無菌水を100mlまで加えてなる脂肪エマルジョンである、請求項1記載の製剤。
【請求項15】
TH1からTH2への各T細胞サイトカイン応答のシフトを起こす請求項1ないし5、または12ないし14のいずれか1項記載の製剤。
【請求項16】
IL−2またはIFNγT細胞サイトカイン応答の減少、およびIL−4またはIL−10T細胞サイトカイン応答の増加を起こす請求項1ないし5、または12ないし14のいずれか1項記載の製剤。
【請求項17】
インシュリン依存性真性糖尿病(IDDM)の治療のため、IDDMの病原と関連した炎症性T細胞によって認識されるヒト熱ショックタンパク質60(hsp60)から得られるペプチドからなる製剤において、前記ペプチドは表1に示されるペプチド群から選択される、請求項1ないし5、または12ないし14のいずれか1項記載の製剤。
【請求項18】
ペプチドp277、および10%大豆油、1.2%卵黄リン脂質、2.5%グリセロールおよび無菌水を100mlまで加えてなる脂肪エマルジョンからなるIDDMの治療のための請求項17記載の製剤。
【請求項19】
ペプチドp277(Val6-Val11)、および10%大豆油、1.2%卵黄リン脂質、2.5%グリセロールおよび無菌水を100mlまで加えてなる脂肪エマルジョンからなるキャリヤを含む、IDDMの治療のための請求項17記載の製剤。
【請求項20】
多発性硬化症の病原に含まれるT細胞によって認識されるミエリン塩基性タンパク質(MBP)から誘導されるペプチドからなる、多発性硬化症の治療のための請求項1ないし5、または12ないし14のいずれか1項記載の製剤。
【請求項21】
植物および/または動物起源の10-20%トリグリセリド、植物および/または動物起源の1.2-2.4%リン脂質、2.25-4.5%浸透調節剤、0-0.05%抗酸化剤、および無菌水を100mlまで加えてなる脂肪エマルジョンを、請求項1記載の治療製剤の製造に使用する方法。
【請求項22】
10%大豆油、1.2%卵黄リン脂質、2.5%グリセロールおよび無菌水を100%まで加えてなる脂肪エマルジョンを請求項12記載の治療製剤の製造に使用する方法。
【請求項23】
植物および/または動物起源の10-20%トリグリセリド、植物および/または動物起源の1.2-2.4%リン脂質、2.25-4.5%浸透調節剤、0-0.05%抗酸化剤、および無菌水を100mlまで加えてなる脂肪エマルジョンからなる生物学的に活性なキャリヤ中に、T細胞介在の病気または状態の病原と関連した炎症性T細胞によって認識される抗原を含む製剤により前記T細胞介在の病気または状態を治療する方法。
【請求項24】
キャリヤが10%大豆油、1.2%卵黄リン脂質、2.5%グリセロールおよび無菌水を100%まで加えてなる脂肪エマルジョンからなる、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記T細胞介在の病気が自己免疫病であり、前記抗原がペプチドである、請求項23または24記載の方法。
【請求項26】
前記T細胞介在の病気がTH1介在の病気である請求項23または24記載の方法。
【請求項27】
前記自己免疫病が器官特異的自己免疫病である、請求項26記載の方法。
【請求項28】
表1に示される1またはそれ以上のペプチド、および10%大豆油、1.2%卵黄リン脂質、2.5%グリセロールおよび無菌水を100%まで加えてなる脂肪エマルジョンからなる生物学的に活性なキャリヤからなる製剤によりIDDMを治療する方法。
【請求項29】
製剤がペプチドp277を含む、請求項28記載の方法。
【請求項30】
製剤がペプチドp277(Val6-Val11)を含む、請求項28記載の方法。
【請求項31】
前記T細胞介在の病気がT細胞介在アレルギーの状態であり、前記抗原が前記状態の引金となるアレルゲンである、請求項23記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−242412(P2009−242412A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−141914(P2009−141914)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【分割の表示】特願平9−505317の分割
【原出願日】平成8年7月2日(1996.7.2)
【出願人】(500534636)イエダ リサーチ アンド デベロプメント カンパニイ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】