説明

TAB−ICの実装構造

【目的】 隣接するTABリード間のクロストークノイズの発生を防止すると共に、該ノイズのTABリードまたはICへ影響を抑えて、高周波特性に優れかつ廉価なTAB−ICの実装構造を提供する。
【構成】 誘電体層15a,15b,15c,15d並びにグランド用導体層16a,16b及び信号用導体層17を有する多層基板14にTAB−IC21を収納できるようなスペースでキャビティ部18及びこのキャビティ部18の周囲にTABリード9を収納する切り込み部19を設ける。該キャビティ部18にTAB−IC21のIC2をそして切り込み部19にはTABリード9を入り込むようにして載置すると共に、前記TABリード9を前記信号用導体層17に接続して実装し、前記TAB−IC21の上部をグランド用導体層20bを有するサブ基板20で覆って多層基板14内に埋設することとした。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高速信号伝送に用いるTAB−ICの多層基板への実装構造に関する。
【0002】
【従来の技術】図5は従来例のTAB−ICの実装例を示す側面図であり、図において1はIC2を搭載するための基板であり、この基板1は誘電体層3と、この誘電体層3の下面側に設けられたグランド用導体層4と、このグランド用導体層4とは反対側のもう一方の上面側に設けられた信号用導体5並びにIC搭載用導体6とにより形成された3層構造となっている。なお、この基板1は前記誘電体層3の厚み、及び信号用導体5の線幅並びに厚みをコントロールすることでインピーダンスコントロールを行って、高速信号伝送を忠実に行えるようにしている。
【0003】7は前記IC2の上面側に設けられたAu等のバンプ、9はこのバンプ7を介してIC2の電極とそのインナー側を接続しているTABリードであり、そのアウター側は前記基板1の信号用導体層5に接続しており、前記IC2はAgペースト等から成る接着剤10を介して前記IC搭載用導体6上に搭載されている。そして、上記TABリード9には、ポリイミド等の誘電体層11と、グランド用導体層12により形成されたTABテープ13を部分的に設けることでマイクロストリップライン構造とし、これによりインピーダンスをコントロールできるようにして、高速信号伝送に対応させる構造としていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら上述した従来の技術においては、高速信号伝送、かつ高密度実装を考慮した場合、TABリードに設けたTABテープが部分的であることからマイクロストリップ構造が部分的であること、さらにTABリードの片面側、つまり多層基板とは反対側の面が空気に接していることから、隣接する他のTABリードとの間で、クロストークノイズが生じ、大きくなってしまうという問題があった。
【0005】また、上述した構造によることでTABリードまたはICは、外部からのノイズの影響を受けやすく、しかもさらにノイズをTABリードから発生してしまい、他の回路に対して影響を与えてしまうという問題があった。さらに、前記TABリードに設けたTABテープは、ポリイミド等の誘電体層及びグランド用導体より成っており、高価であるという問題もあった。
【0006】本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、隣接するTABリード間のクロストークノイズの発生を防止して、該ノイズの発生により影響を受け易かったTABリードまたはICへのノイズの影響を無くすと共に発生を抑制して高周波特性の優れた、しかも廉価なTAB−ICの実装構造を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上述した目的を達成するため本発明は、信号を伝送する信号用導体層とグランド用導体層の間に、前記信号用導体層がインピーダンス整合されるように厚さをコントロールされた誘電体層をもつ基板に搭載するTAB−ICの実装構造において、前記基板の上下面に誘電体層並びにグランド用導体層を有する誘電体層とを設けて多層基板を形成し、該多層基板に前記TAB−ICを収納できるようなスペースでキャビティ部及びこのキャビティ部の周囲にTABリードを収納する切り込み部を設けて、該キャビティ部にTAB−ICのIC部をそして切り込みにはTABリードを入り込むようにして載置すると共に、前記TABリードを前記信号用導体に接続して実装して、前記TAB−ICの上部をグランド用導体層を有するサブ基板で覆って多層基板内に埋設することとしたものである。
【0008】
【作用】上述した構成によれば、TAB−ICは多層基板内に埋設された状態に支持されることになり、そのTABリードも多層基板の誘電体層に形成された切り込み部に入り込ませるので、互いに隣接するTABリード間には誘電体層が介在することになり、従ってTABリード間でクロストクノイズの発生が抑制される。また、TAB−ICも多層基板内に埋められており、かつグランド用導体層さまれているために、外部からのノイズの影響を受けず、かつ外部へのノイズの放射も抑えられることになる。
【0009】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図面を用いて説明する。図1は本実施例の構造を示す側断面図、図2は図1に示した多層基板の要部側断面図、図3は同じく図1に示したサブ基板の側面図、図4は本実施例の製造方法を示す説明図であり、(a)に要部断面図を、また(b)に要部斜視図を示している。なお、以下に示す説明において従来とほぼ同様のものにつては同一符号を付して説明している。
【0010】まず、図2において、14は多層基板であり、この多層基板14は4層の誘電体層15a,15b,15c,15dと、3層の導体層、つまり誘電体層15a,15bとの間、および最上層の誘電体層15d上に形成されたグランド用導体層16a,16bと、誘電体層15b,15c間の信号用導体層17とより成っている。
【0011】18はこの多層基板14内に形成された後述するTAB−IC搭載用のキャビティ部であり、誘電体層15a上のグランド用導体層16aまで露出させている。そして、さらにこのキャビティ部18の周囲から外方に延在するようにして誘電体層15cに溝状の切り込み部19が形成されており、この切り込み部19はIC2に接続されるTABリード9を収納するようになっていて、前記信号用導体層17を露出させている。
【0012】なお、前記誘電体層15b,15c,15dの厚さは、信号用導体層17内の信号線がストリップライン構造となる部分内でインピーダンス整合されるようにコントロールされている。次に、図3において、20はサブ基板であり、前記多層基板14の誘電体層15dと等しい厚さを持つ誘電体20aと、該誘電体層20a上に形成されたグランド用の導体層20bとからなっている。
【0013】上記構成による多層基板14とサブ基板20を用いて行うTAB−ICの実装手順を、上記図2及び図3に、図4並びに図1を加えて、以下に説明する。なお、図1及び図4に示す21はTAB−ICであり、このTAB−IC21はIC2と、このIC2に設けられたAu等から成るバンプ7を介してそのインナー側が接続されている複数本のTABリード9とより成っていて、このTABリード9はIC2の周縁部から水平に外方向に延在して形成されている。
【0014】まず、図2に示す前記多層基板14のキャビティ部18に、該キャビティ部18の底面となるグランド用導体層16aの上面にAgペースト等の接着剤10を塗布し、この接着剤10を塗布したキャビティ部18に前記TAB−IC21を載置してダイボンディングし、IC2の裏面とグランド用導体層16aを電気的に接続する。
【0015】そして、このTAB−IC21のTABリード9のアウター側は、誘電体層15b上の信号用導体層17上にボンディングする。この時、誘電体層15cには、図4(b)に示すように、前記TABリード9を収納するための切り込み部19が形成されており、前記TAB−IC21をキャビティ部18に載置する際に、TABリード9もそれぞれ対応する誘電体層15cの各切り込み部19内に入り込ませ、これにより、隣り合う各TABリード9間には誘電体層15cが介在するようにしておく。
【0016】この後、図1に示すようにTABリード9が入り込んだ切り込み部19内の隙間を、Agペースト等の接着剤22で埋めて硬化させた後、サブ基板20をTAB−IC21上及び誘電体層15c上に載せる。そして、このサブ基板20と多層基板14とを固定するため、サブ基板20の周囲に形成される多層基板14との間隙に接着剤23を注入して硬化させ、最後に多層基板14上のグランド用導体層16bとサブ基板20上のグランド用導体層16bとを、ワイヤ又はリード24により接続して、電気的に接続させる。これによりTAB−IC21は多層基板14内に埋設されて一体となる。
【0017】上記構造によりTABリード9はサブ基板20上の誘電体層15a,グランド用導体層16a,多層基板14の誘電体層15a,グランド用導体層16bにより構成されるストリップライン構造となり、TABリード9間のクロストークノイズは減少して外部からのノイズにも強くなってTAB−IC21内部で発生するノイズも外部へ漏れにくくなる。
【0018】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、信号を伝送する信号用導体層とグランド用導体層の間に、前記信号用導体層がインピーダンス整合されるように厚さをコントロールされた誘電体層をもつ基板に搭載するTAB−ICの実装構造において、前記基板の上下面に誘電体層並びにグランド用導体層を有する誘電体層とを設けて多層基板を形成し、該多層基板に前記TAB−ICを収納できるようなスペースでキャビティ部及びこのキャビティ部の周囲にTABリードを収納する切り込み部を設けて、該キャビティ部にTAB−ICのIC部をそして切り込みにはTABリードを入り込むようにして載置すると共に、前記TABリードを前記信号用導体に接続して実装して、前記TAB−ICの上部をグランド用導体層を有するサブ基板で覆って多層基板内に埋設することとした。
【0019】このため、TAB−ICは多層基板とサブ基板のグランド用導体層と誘電体層とにより挟み付けて埋設される構造となるので、TABリードはストリップライン構造となる。また、このTABリードは、互いに隣接するリード間には、誘電体層が介在することになるので、近接することで生じるクロストークノイズを減少させることができる。
【0020】また、TAB−ICも多層基板内に埋設されかつグランド用導体層に挟まれた構造となっていることで、外部からのノイズの影響を受けにくく、またTAB−IC内で発生するノイズも外部へ放射しにくくなるという効果が得られる。さらに、従来の高周波用TAB−ICによれば、TABリードをマイクロストリップライン構造とするために、高価なTABテープを前記TABリードに部分的に設けていたが、これが不要となるので、廉価に実装することができるという効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例の構造を示す側断面図である。
【図2】図1に示した多層基板の要部側断面図である。
【図3】図1に示したサブ基板の側面図である。
【図4】本実施例の製造方法を示す説明図で、(a)に要部断面図を、また(b)に要部斜視図を示している。
【図5】従来例のTAB−ICの実装例を示す側面図である。
【符号の説明】
2 IC
9 TABリード
14 多層基板
15a,15b,15c,15d 誘電体層
16a,16b グランド用導体層
17 信号用導体層
18 キャビティ部
20 サブ基板
20a 誘電体層
20b グランド用導体層
21 TAB−IC

【特許請求の範囲】
【請求項1】 信号を伝送する信号用導体層とグランド用導体層の間に、前記信号用導体層がインピーダンス整合されるように厚さをコントロールされた誘電体層をもつ基板に搭載するTAB−ICの実装構造において、前記基板の上下面にそれぞれ誘電体層並びにグランド用導体層を有する誘電体層とを設けて多層基板を形成し、該多層基板に前記TAB−ICを収納できるようなスペースでキャビティ部及びこのキャビティ部の周囲にTABリードを収納する切り込み部を設けて、該キャビティ部にTAB−ICのIC部をそして切り込みにはTABリードを入り込むようにして載置すると共に、前記TABリードを前記信号用導体に接続して実装して、前記TAB−ICの上部をグランド用導体層を有するサブ基板で覆って多層基板内に埋設することを特徴とするTAB−ICの実装構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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