TNF/NGFレセプターファミリーおよびほかのタンパク質のレセプター機能調節物質
【課題】炎症、細胞生存および細胞死の経路において、レセプター相互作用タンパク質(RIP)の細胞内活性を調節または媒介することができるRAP−2機能を調節/媒介することのできるタンパク質を提供する。
【解決手段】RAP−2結合タンパク質、そのアイソフォーム、断片または類似体をコードしているDNAであって、特定の配列またはRAP−2に結合することができるそのアイソフォーム、断片または類似体を含むDNA。
【解決手段】RAP−2結合タンパク質、そのアイソフォーム、断片または類似体をコードしているDNAであって、特定の配列またはRAP−2に結合することができるそのアイソフォーム、断片または類似体を含むDNA。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にTNF/NGFレセプタースーパーファミリーに属するレセプターおよびその生物学的機能の制御の分野にある。TNF/NGFレセプタースーパファミリーとしては、p55およびp75腫瘍壊死因子レセプター(TNF−Rs、本明細書中以下、p55−Rおよびp75−Rという)およびFASリガンドレセプター(FAS/APO1またはFAS−Rともいい、本明細書中以下、FAS−Rという)といったレセプターならびにほかのものが挙げられる。特に本発明は、それ自身でTNF−NGFレセプターファミリーのメンバーおよびほかの細胞内調節タンパク質に直接または間接的に結合するほかのタンパク質に結合する新規タンパク質に関する。
【0002】
さらに特には、本明細書中でRAP−2(RIP−関連タンパク質−2なので)と称するこのようなタンパク質およびそのアイソフォーム、断片、誘導体のみならず、RAP−2に結合するタンパク質に関する。
【0003】
RAP−2はRIP(「レセプター相互作用タンパク質」)に結合し、RIPの機能を調節または媒介することができ、それによりRIPに直接または間接的に結合するほかのタンパク質の機能を直接または間接的に調節または媒介することもできる。RAP−2結合タンパク質はRAP−2機能の調節物質または媒介物質である。
【背景技術】
【0004】
腫瘍壊死因子(TNF−α)およびリンホトキシン(TNF−β)(本明細書では以下、TNF−αとTNF−βの双方をTNFという)は主に単核食細胞によって生成される多機能前炎症性(pro-inflammatory)サイトカインであり、細胞において多くの効果を有する(Wallach, D.(1986) In;Interferon 7 (Ion Gresser,ed.), pp.83-122, Academic Press, London;and Beutler and Cerami(1987))。TNF−αおよびTNF−β双方は、特定の細胞表面レセプターへの結合によってその効果を開始する。この効果のいくつかは生物に対しておそらく有益であり:これらはたとえば腫瘍細胞またはウイルス感染細胞を破壊し、顆粒球の抗菌活性を増大させる。このように、TNFは腫瘍および感染性媒介物(infectious agents)に対する生物の防御に寄与し、傷からの回復に寄与する。したがって、TNFはその適応において腫瘍細胞表面上のそのレセプターに結合し、それにより腫瘍細胞の死を導く事象を開始する抗腫瘍試薬として使用することができる。TNFはまた抗感染試薬として使用することもできる。
【0005】
しかしながら、TNF−αおよびTNF−β双方は有害な効果も有する。TNF−αの過剰産生は様々な疾病において主要な病原の役割を果たすという証拠がある。たとえば、主として血管上において、TNF−αの効果が敗血症性ショックの症状の主要な原因であることが知られている(Tracey et al., 1986)。いくつかの疾病において、TNFは含脂肪細胞の活性を抑制すること、および拒食症を引き起こすことで体重の過度の減少(悪液質(cachexia))を引き起こす可能性があり、TNF−αはしたがってカケクチン(cachectin)と呼ばれた。また、リウマチ疾病での組織への損傷の媒介物質として(Beutler and Cerami, 1987)、また移植片対宿主反応で観察された損傷の主な媒介物質として(Piquet et al., 1987)記載された。さらにTNFは炎症の過程および多くの他の疾病において関与することが知られている。
【0006】
2つの異なった独立して発現したレセプターであり、TNF−αおよびTNF−βに特異的に結合する、p55およびp75 TNF−Rsは、前記したTNFの生物学的な効果を開始および/または媒介する。これらの2つのレセプターは、構造的に類似しない細胞内ドメインを有し、これらは異なったシグナルであることを示している(Hohmann et al., 1989;Engelmann et al., 1990;Brockhaus et al., 1990;Leotscher et al., 1990;Schall et al., 1990;Nophar et al., 1990;Smith et al., 1990;Heller et al., 1990)。しかしながら、たとえば様々なタンパク質および可能性のあるほかの因子の、p55およびp75 TNF−Rsの細胞内シグナリング(signaling)に関与する細胞メカニズムはまだ解明されていない。この細胞内シグナリングは、通常リガンド、すなわちTNF(αまたはβ)のレセプターへの結合後に起こるものであり、そのリガンドが、最終的に結果として、観察されるTNFに対する細胞の応答となる反応のカスケードの開始を招く。
【0007】
前記したTNFの細胞致死効果に関しては、これまで研究されたほとんどの細胞において、この効果は主としてp55 TNF−Rによって誘発される。p55 TNF−Rの細胞外ドメイン(リガンド結合ドメイン)に対する抗体それ自身が、細胞致死効果を誘発することができる(EP412486参照)。この効果は、細胞内シグナリング過程の発生の第1段階であると信じられている、抗体によるレセプターの架橋の効果と関連がある。さらに、変異体の研究(Brakebusch et al., 1992;Tartaglia et al., 1993)は、p55 TNF−Rの生物学的機能が、その細胞内ドメインの完全性に依存していることを示している。したがって、TNFの細胞致死効果を導く細胞内シグナリングの開始は、p55 TNF−Rの2つまたはそれ以上の細胞内ドメインの会合の結果として起こることが提唱されている。さらにTNF(αおよびβ)はホモ三量体となり、それ自体がそのレセプター分子への結合および架橋、すなわちレセプター凝集を引き起こす能力によって、p55 TNF−Rを介して細胞内シグナリングを誘導すると提唱されている。
【0008】
レセプターのTNF/NGFスーパーファミリーのもう1つのメンバーはFASレセプター(FAS−R)であり、これはまたFAS抗原とも呼ばれ、様々な組織に発現している細胞表面タンパク質であり、TNF−RおよびNGF−Rを含む多くの細胞表面レセプターと相同性を有している。FAS−Rはアポトーシスのかたちで細胞死を媒介し(Itoh et al., 1991)、自己反応性(autoreactive)T細胞のネガティブセレクター(negative selector)として役割を果たすために現れ、すなわちT細胞の成熟化の間にFAS−Rは自己抗原を認識しているT細胞のアポトーシス死を媒介する。FAS−R遺伝子(lpr)の変異が、ヒト自己免疫疾患全身性エリテマトーデス(SLE)と類似するマウスにおけるリンパ球増殖障害を引き起こすことも発見されている(Watanabe-Fukunaga et al., 1992)。FAS−Rに対するリガンドが、なかでもキラーT細胞(または細胞傷害性Tリンパ球−CTLs)に提示された細胞表面関連分子として現れるため、これらのCTLsがFAS−Rを提示している細胞と接触するとき、FAS−R提示細胞のアポトーシス細胞死を起こすことが可能となる。さらにモノクローナル抗体がFAS−Rに対して特異的に製造され、このモノクローナル抗体はヒトFAS−RをコードしているcDNAによって形質転換されたマウス細胞を含むFAS−R提示細胞でのアポトーシス細胞死を誘導する能力がある(Itoh et al., 1991)。
【0009】
多くのアプローチが、出願人(たとえばEuropean Application Nos. EP186833, EP308378, EP398327 および EP412486参照)によって、抗TNF抗体を用いてTNFのそのレセプターへの結合を抑制することで、または細胞表面結合TNF−RsへのTNFの結合と競合させるために可溶性TNFレセプターを用いることで、TNFの有害な効果を調節するためになされている。さらに、TNFのそのレセプターへの結合がTNF誘導性細胞効果に必要であるということに基づいて、出願人によるアプローチ(たとえばEP568,925参照)がTNF−Rsの活性を調節することでTNF効果を調節するようになされている。
【0010】
つまり、EP568925は、ペプチドまたは他の分子がレセプターそれ自身と、もしくはレセプターに相互作用してTNF−Rsの正常な機能を調節しているエフェクタータンパク質とのどちらかと相互作用し得るようなシグナル伝達および/またはTNF−Rsの切断を調節する方法に関連する。EP568925では、p55 TNF−Rの細胞外ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインに変異を有する様々な変異型のp55 TNF−Rsの構築およびキャラクタリゼーションが記述されている。この方法では、p55 TNF−Rの前記ドメイン内の領域が、レセプターが機能するのに、すなわちリガンド(TNF)の結合、ならびにそれに続くシグナル伝達および最終的に細胞において観察されたTNF効果となる細胞内シグナリングに、必須であると認められた。さらに、TNF−Rの前記ドメインの様々な領域に結合することができるタンパク質、ペプチドまたはほかの因子を単離し、同定するための多くのアプローチも記載されており、そのタンパク質、ペプチドおよびほかの因子はTNF−Rの活性を制限し、または調節するのに関わる可能性がある。これらのタンパク質およびペプチドをコードしているDNA配列を単離し、クローニングするための、これらのタンパク質およびペプチドの産出のための発現ベクターを構築するための、ならびにTNF−Rと、もしくはTNF−Rの様々な領域に結合する前記タンパク質およびペプチドと相互作用する抗体またはその断片を製造するための多くのアプローチもまたEP568925に説明されている。しかしながら、EP568925はTNF−Rs(たとえばp55 TNF−R)の細胞内ドメインに結合する実際のタンパク質およびペプチドを特定するのではなく、またTNF−Rsの細胞内ドメインに結合するこのようなタンパク質またはペプチドを単離し、同定するために酵母ツーハイブリッドアプローチ(the yeast two-hybrid approach)を記述しているのでもない。同様に、EP568925において、FAS−Rの細胞内ドメインに結合する能力のあるタンパク質またはペプチドの開示はない。
【0011】
腫瘍壊死因子(TNF)レセプターおよび構造的に関連するレセプターFAS−Rが、細胞内で白血球産出リガンドによる刺激によってそれら自身の死を導く破壊活性を引き起こすことが知られている一方、この誘発のメカニズムはまだほとんどわかっていない。変異研究はFAS−Rおよびp55 TNFレセプター(p55−R)において、細胞傷害性のシグナリングはその細胞内ドメイン内の別々の領域に関連することを指し示している(Brakebusch et al., 1992;Tartaglia et al., 1993;Itoh and Nagata, 1993)。これらの領域(「細胞死誘導領域(death domains)」)は配列類似性を有する。FAS−Rおよびp55−R双方の「細胞死誘導領域」は自己会合(self-association)する傾向にある。それらの自己会合は明らかに、シグナリングの開始に必要なレセプターの凝集を促進し(Song et al., 1994;Wallach et al., 1994;Boldin et al., 1995参照)、レセプターの高いレベルでの発現はリガンド非依存シグナリングの引き金となりうる(Boldine et al., 1995)。
【0012】
他のレセプター誘導効果と同様に、TNFレセプターとFAS−Rとによる細胞死誘導は、リガンド−レセプター結合から最終的な酵素的エフェクター機能の活性化を導く一連のタンパク質−タンパク質相互作用によって起こり、ケーススタディでは、細胞死に対するシグナリングを開始する非酵素的タンパク質−タンパク質相互作用を明らかにした。三量体TNFまたはFAS−Rリガンド分子のレセプターへの結合、結果として起こるそれらの細胞内ドメインの相互作用(Brakebusch et al., 1992;Tartaglia et al., 1993;Itoh and Nagata, 1993)は自己会合するための細胞死誘導領域モチーフの性質によって増大し(Boldin et al., 1995a)、(互いに結合もできる)2つの細胞質タンパク質、FAS−Rに対するMORT−1(またはFADD)(Boldin et al., 1995b;Chinnaiyan et al., 1995;Kischkel et al., 1995)およびp55−Rに対するTRADDの、レセプターの細胞内ドメインへの結合を誘導した(Hsu et al., 1995;Hsu et al., 1996)。相同領域のヘテロ会合(hetero-associate)を通じたレセプターによる細胞死誘導にかかわる「細胞死誘導領域」領域でFAS−Rおよびp55−Rの細胞内ドメインに結合し、単独で細胞死を引き起こす能力をも有する3つのタンパク質が、酵母ツーハイブリッドスクリーニング手法にて同定された。これらの1つは、FAS−Rに特異的に結合するFADD(Chinnaiyan et al., 1995)としても知られているタンパク質、MORT−1(Boldin et al., 1995b)である。2つ目のTRADD(Hsu et al., 1995, 1996も参照)はp55−Rに結合し、3つ目のRIP(Stanger et al., 1995も参照)はFAS−Rおよびp55−R双方に結合する。これらのFAS−Rおよびp55−Rへの結合に加えて、これらのタンパク質はまた互いに結合することができ、FAS−Rとp55−Rとの間の機能的な「クロス−トーク(cross-talk)」を提供する。これらの結合は、保存された配列モチーフであるレセプターとそれらの関連するタンパク質とに共通な「細胞死誘導領域モジュール」を通して生じる。さらに、酵母ツーハイブリッド試験においてMORT−1はFAS−Rに自然に結合することが示されたが、哺乳動物細胞ではこの結合はレセプターの刺激の後のみに起こり、このことは、MORT−1がFAS−Rシグナリングの開始事象に参加していることを指し示している。MORT−1は酵素的活性の配列モチーフ特性を含んでおらず、したがってその細胞死を引き起こす能力はMORT−1それ自身の本来備わっている活性に関連しているのではなく、むしろMORT−1に結合するいくつかの他のタンパク質の活性化に関連し、そしてシグナリングカスケードのさらに下流で働くように見える。分子のN−末端部分を欠失しているMORT−1変異体の細胞発現は、FAS/APO1(FAS−R)またはp55−Rによる細胞傷害性誘導の阻害を示し(Hsu et al., 1996;Chinnaiyan et al., 1996)、このことは、このN−末端領域がタンパク質−タンパク質相互作用を通した両方のレセプターの細胞致死効果に対するシグナリングを伝達することを示している。
【0013】
このように、レセプターp55−RおよびFAS−Rの「細胞死誘導領域」だけでなく、それらの3つの関連タンパク質MORT−1、RIPおよびTRADDの「細胞死誘導領域」モチーフも、タンパク質−タンパク質相互作用の部位であるようだ。3つのタンパク質MORT−1、RIPおよびTRADDは、p55−RおよびFAS−R細胞内ドメインとそれらの細胞死誘導領域のレセプター細胞死誘導領域への結合により相互作用し、(MORT−1はその細胞死誘導領域が自己会合しないという観点で異なってはいるが)RIPおよびTRADDの両者についてはそれらの細胞死誘導領域は自己会合もする。さらに、MORT−1およびTRADDはFAS−Rおよびp55−Rに別々に結合するし、お互いに結合もする。さらにMORT−1およびTRADDの両者は、RIPにも有効的に結合する。従って、3つのタンパク質、MORT−1、RIPおよびTRADD間の相互作用は、これらのタンパク質により媒介される細胞内シグナリングの調節全体の重要部分であろう。これらの3つの細胞内タンパク質間の相互作用の干渉は、この相互作用により引き起こされる効果を結果として調節するであろう。例えば、MORT−1に結合するTRADDの阻害はFAS−Rとp55 TNF−Rの相互作用を調節するであろう。同様に、MORT−1に結合するTRADDの前記阻害に加えてRIPの阻害はさらにFAS−Rとp55 TNF−Rの相互作用を調節するであろう。
【0014】
p55−Rの「細胞死誘導領域」に対し、特にTRADDおよびRIPの部位の結合部位に対し産生したモノクローナル抗体はこれらのタンパク質の結合を阻害または防御するために用いられ、そうしてFAS−Rとp55−Rとの間の相互作用の調節を引き起こす。
【0015】
FAS−R、p55−R、MORT−1、TRADD、RIP、MACH、Mch4およびG1といった種々のレセプターおよびその結合タンパク質により媒介されるその前記細胞傷害活性およびその調節のほかにも、これらの多数のレセプターおよびその結合タンパク質は核転写因子NF−κBの活性調節に関与し、それが細胞残存または生存の重要な媒介物質であり、多くの免疫および炎症反応遺伝子の発現の制御に責任がある。例えば、TNF−αは実際にNF−κBの活性を刺激することができ、そうしてTNF−αは細胞内で、一つは細胞死を顕現させ、もう一方はNF−κBを介した遺伝子発現を導くことにより死の誘導に対して細胞を保護する、2種のシグナルを導くことができる(Beg and Baltimore, 1996;Wang et al., 1996;Van Antwerp et al., 1996参照)。FAS−Rについての類似の二重効果も報告されている(前記Van Antwerp et al., 1996に記載されているこの効果を参照)。従って、TNF−αおよび/またはFAS−Rリガンドを用いて種々の細胞型を刺激する際、細胞死と細胞生存との間には繊細なバランスがあり、どの細胞内経路がより広範囲まで刺激されるかによって、刺激の最終結果は、細胞死(通常はアポプトーシスによる)を導くかまたはNF−κBの活性を介して細胞生存を導くようである。
【0016】
さらに本発明者らは最近、TNF/NGFレセプターファミリーのメンバーがNF−κBを活性化する可能な経路も解明した(Malinin et al., 1997および本明細書中の種々の前記参考文献;ならびに共願のイスラエル国特許出願番号IL117800およびIL119133参照)。要約すると、TNF/NGFレセプターファミリーのいくつかのメンバーは、共通のアダプタータンパク質、TRAF2によりNF−κBを活性化することができる。新規に解明されたNIKというプロテインキナーゼ(前記Malinin et al., 1997ならびにIL117800およびIL119133参照)はTRAF2に結合でき、NF−κB活性を刺激できる。実際、キナーゼ欠失NIK突然変異体の細胞内発現は細胞のNF−κBの刺激を正常な内因性の様式で不可能とし、またTNFにより、FAS−Rを介してならびに(これらのp55−Rおよび/またはFAS−Rレセプターを結合するアダプタータンパク質である)TRADD、RIPおよびMORT−1によるNF−κB誘導のブロックにより、細胞のNF−κB活性の誘導をブロックすると示された(前記Malinin et al.およびIL出願参照)。レセプターp55−R、p75−R、FAS−Rおよびそれらのアダプタータンパク質MORT−1、TRADDおよびRIPは全て、NIKへのその結合能力によりNF−κBの誘導を明らかに調節するTRAF2に直接または間接的に結合する。
【0017】
FAS−R および/またはp55−R刺激後の細胞死および生存の間の微妙なバランスに関与する前記調節物質タンパク質のうち、タンパク質RIPは重要な役割を有するようである。RIP(Stanger et al., 1995 および Malinin et al., 1997も参照)はC末端領域に「細胞死誘導領域」を有し、独立して、またMORT−1、p55−R、FAS−RおよびTRADDの細胞死誘導領域との会合により細胞傷害を誘導する。RIPもそのN末端領域にプロテインキナーゼドメインを有し、ならびにTRAF2とのその交わり(結合)およびそれによるNF−κB誘導におけるその関与を可能にすると信じられている中間体ドメインを有する。従って、RIPの特徴および配列(DNAおよびアミノ酸)に関する詳細は、参考文献によりその全体で本明細書中に盛り込まれている前記刊行物に記載されている(特にStanger et al., 1995)。
【0018】
TNFは、宿主抗ウイルス防衛の開始および調節に関与するサイトカインの1種である。同様に、タンパク質がサイトカインの活性を制御する遺伝子を発現するようウイルスが開発され、これらのサイトカイン制御ウイルスタンパク質は動物宿主内でウイルスの永続性を促進すると考えられる。このようなタンパク質で最もよく研究されている例の1つにTNF媒介細胞崩壊の強アンタゴニストとして作用する型2および5のグループCヒトアデノウイルス(Ad)からE3−14.7Kが挙げられる。
【0019】
ウイルス感染時にE3−14.7Kについての標的となるTNFシグナリングカスケードの分子成分を単離するために、最近ヒトE3−14.7K結合タンパク質がツーハイブリットスクリーニングにより単離された(14−K相互作用タンパク質なのでFIP−2、Li.Y et al., 1998)。FIP−2はそれ自身非毒性であり、TNFR−IまたはRIPの過剰発現により導かれ、2つの前記タンパク質のどちらにも結合しないで細胞傷害についてE3−14.7Kの保護効果を逆転することが見いだされた。FIP−2はRAP−2、本発明のタンパク質に対しいくらか相同性を有することが見いだされた。それにもかかわらず2つのアミノ酸配列の広範囲のアラインメント(図3)から見受けられるように、RAP−2とFIP−2間の全体的類似性の度合いはやはりかなり低い。しかしながら、相同性はタンパク質のC末端向特異的領域ではより有意となり、30C末端アミノ酸の実質的一致に達する。前記C末端ドメインのほかに、FIP−2の推定ロイシンジッパーモチーフがRAP−2で(IleからAlaへの置換を除いては)強く保存されていることも記載すべきである。
【0020】
RAP−2に遠いホモログであると考えられ、ハンティングトン病関連タンパク質をコードするHYPLという類似の配列が最近「ハンティングトン相互作用タンパク質、HYPL」の名目でジーンバンク(GenBank)に提出された(受け入れ番号AF049614)。しかしながら、タンパク質の機能を記載した刊行物はいまだ発刊されていない。
【0021】
Yamaoka S.ら(1998)による最近の刊行物では、マウスRAP−2ホモログの同定が報告されている。マウスホモログNEMO(NF−κB必須調節物質なので)はNF−κBシグナリングの活性を制御する鍵モジュールの探査において同定された。HTLV−1 Tax形質転換ラット繊維芽細胞のフラット細胞変異型が特徴づけられ、5Rと命名され、試験したNF−κB活性化刺激(LPS、PMA、IL−I、TNF)全てに対し非応答性であり、その遺伝的相補性を果たした。この手法の結果、NEMO 48kDタンパク質をコードするcDNAが再発見された。このデータに基づき、このタンパク質は5R細胞から欠いており、高分子量IκBキナーゼ複合体の部分であり、かつその形成に要求されるといわれている。インビトロでは、NEMOはホモ二量体化して、直接IKKβと相互作用することができる。
【0022】
イスラエル国特許明細書第120485号には、RIPに特異的に結合し、NF−κB誘導を阻害するRIP関連タンパク質、RAPが開示されている。
【0023】
イスラエル国特許明細書第123758号および本出願は、同じまたは類似の活性を有する別のRIP関連タンパク質、RAP−2に関する。
【0024】
本発明によるRAP−2は、303またはRAP−303またはRAT−303とも呼ばれる。一貫性のため、本明細書中ではRAP−2という。
【発明の概要】
【0025】
本発明の目的は、RIPタンパク質(以下、「RIP」という)に結合することができる新規タンパク質RAP−2、そのアイソフォーム、類似体、断片または誘導体を提供することである。RIPは炎症、細胞傷害/細胞死の細胞内媒介物質、p55−RおよびFAS−Rならびに例えばMORT−1、TRADD、MACH、Mch4、G1およびほかのものといったそれらの関連アダプターまたは調節物質タンパク質と直接または間接的に相互作用することができるので、RIPに結合することによる本発明の新規タンパク質は従ってFASリガンドのそのレセプターへの結合およびTNFのそのレセプター(p55−R)への結合により開始される細胞内シグナリング過程に影響を与えることができ、そしてこのような本発明の新規タンパク質は、細胞でのp55−RおよびFAS−R媒介効果の調節物質である。RIPはTRAF2と相互作用することもでき、それによりNIKと直接または間接的に相互作用することができ、そのようなRIPはNF−κB誘導を含む炎症および細胞生存経路の調節物質として働き、したがって本発明の新規タンパク質はRIP関連炎症および細胞生存活性の調節物質である。同様に、RIPへの結合またはRIPが結合したTRAF2への結合により直接または間接的にNF−κBおよび細胞生存を誘導することができるFAS−R、p55−Rおよびそれらの調節物質タンパク質、MORT−1およびTRADDによって、本発明のタンパク質は、種々の前記タンパク質が細胞生存を誘導する共通のまたは関連する細胞内シグナリング経路を操作することによる細胞生存プロセスの媒介物質でもあり得る。同様に、p75−RはRIPが結合するTRAF2に結合するので、本発明の新規タンパク質はまたp75−R媒介活性のRIP関連媒介の調節物質でもあり得る。
【0026】
本発明の別の目的は、前記新規RAP−2、そのアイソフォーム、類似体、断片および誘導体に対するアンタゴニスト(例えば、抗体、ペプチド、有機化合物またはさらに何らかのアイソフォーム)を提供することであり、所望によりシグナリングプロセス、より特には炎症細胞−細胞傷害または細胞生存プロセスを阻害するために用いてもよい。
【0027】
本発明のさらなる目的は、前記新規RAP−2タンパク質、そのアイソフォーム、類似体、断片および誘導体を用いて、レセプター活性制御に関与するであろうさらなるタンパク質または因子、例えばRAP−2タンパク質に結合したりその活性に影響するようなほかのタンパク質を単離および特徴づけすることおよび/またはこれらの新規タンパク質、類似体、断片および誘導体が結合し、それにより機能的に関与もするシグナリングプロセスの上流または下流のほかのレセプターを単離および同定することである。
【0028】
本発明は、RAP−2機能を調節/媒介することができるRAP−2結合タンパク質も提供する。
【0029】
本発明のなおもさらなる目的は、細胞に導入されRAP−2および可能なRAP−2アイソフォームと結合または相互作用する阻害剤を提供することであり、その阻害剤は細胞傷害プロセスにおいてRIP関連活性を阻害するよう、所望により細胞生存を高めるよう作用するか、または細胞生存プロセスにおいてRIP関連活性を阻害するよう、所望により細胞傷害を高めるよう作用し得る。
【0030】
さらに本発明の目的は、前記新規RAP−2タンパク質、そのアイソフォーム、類似体、断片および誘導体を、それに対するポリクローナルおよび/またはモノクローナル抗体製造のための抗原として用いることである。また、その抗体を、例えば細胞抽出物または形質転換した細胞系などの異なる材料からの新規タンパク質精製のために用いてもよい。
【0031】
さらに、これらの抗体を診断目的で、例えばp55−R、FAS−Rまたはほかの関連レセプターにより媒介される細胞効果の異常な機能に関連する疾患を同定するために用いてもよい。
【0032】
本発明のさらなる目的は、前記新規RAP−2タンパク質、そのアイソフォームまたは類似体、断片または誘導体を含んでなる医薬組成物だけでなく、前記抗体またはほかのアンタゴニストを含んでなる医薬組成物を提供することである。
【0033】
本発明に基づいて、新規タンパク質RAP−2が単離されている。RAP−2はRIPに結合または相互作用することができ、そのためRIP細胞内活性の調節物質または媒介物質である。RIPは細胞内シグナル経路の調節または媒介に関係している。この細胞内シグナル経路は、たとえば、RIPがそれ自身で、およびRIPが、RIPおよびそのタンパク質に存在する「細胞死誘導領域」モチーフ/モジュールを介して直接または間接的方法で会合もしくは結合できる多数のほかの細胞死関連タンパク質、たとえばMORT−1、TRADD、MACH、Mch4、Gl、p55−RおよびFAS−Rと会合して細胞傷害性活性を有する、細胞傷害または細胞死関連経路であり、またRIPが、RIPに存在するキナーゼモチーフまたはドメインの存在と、炎症および細胞生存に中心的な役割を果たすNF−κBの活性化に、結果として直接的に関係するNIKを結合できるTRAF2に結合することができるRIPの能力との直接的または間接的理由で活性化の役割を有する、炎症、細胞生存または生存能力経路であるほかの経路である。さらに、p55−RはTRADDおよびTRAF2(TRADDを介して)と相互作用することもでき、NF−κB活性化と、それによる細胞生存経路とも絡み合い、従ってRIPはFAS−R、TRADDおよびp55−R(TRADDを介して)だけでなく、TRAF2と結合または相互作用することができるので、これらのタンパク質により炎症、細胞生存活性の調節とも絡み合うであろう。従って、RIPはこれらの経路の調節物質または媒介物質であり、同様にRIPに結合する本発明の新規RAP−2はこれらの細胞内経路の調節物質または媒介物質である。
【0034】
RAP−2は、本明細書中以下に詳細が記載されるように、酵母ツーハイブリットシステムを用いて単離およびクローニング、配列決定ならびに特徴づけされ、RAP−2は高特異的RIP結合タンパク質であり、従って特異的RIP調節物質/媒介物質であると考えられる。RAP−2はTRADD、MORT−1、p55−R、p75−RおよびMACHに結合しない。さらにRAP−2は特徴的細胞死誘導領域モジュールまたはモチーフを有さず、このことはRAP−2がそれ自身で細胞傷害を誘導しないという見解と一致すると考えられる。
【0035】
本明細書中いたるところで用いられるように、RIP活性には炎症および細胞死/生存経路の調節/媒介でのその活性が含まれる。これらの活性は本明細書中前記および以下に記載されているばかりでなく、前記刊行物および特許出願にも記載され、その全内容が参考文献により本明細書中に盛り込まれている。同様に、本明細書中いたるところで用いられるように、RAP−2活性にはRIPへのその特異的結合によるRIP活性の調節/媒介が含まれ、このRAP−2によるRIPの調節/メディエーションにはRIPが直接または間接的に関与する炎症、細胞死および細胞生存経路の調節/媒介が含まれ、このようにRAP−2は前記タンパク質および炎症、細胞死または細胞生存に関与し、直接または間接的方法でRIPが結合またはRIPが相互作用することが可能な多数のほかのタンパク質の間接的調節/媒介物質として考えられるであろう。
【0036】
本発明は、ベイト(bait)として全長RAP−2タンパク質配列を用いたツーハイブリッドスクリーニングにより同定される、2つの新規RAP−2結合タンパク質も開示する。
【0037】
ツーハイブリッドスクリーニングでは、ベイトとして全長RAP−2タンパク質を用い、前記または以下に記載するクローン#10(またはクローン#10コードタンパク質またはRAT結合タンパク質#10またはRBP−10)新規RAP−2相互作用タンパク質である。得られたcDNAの配列をさらに当該技術分野で知られる慣用の配列決定方法により5’末端にむかって伸長し、開始コドンは欠くタンパク質の部分的オープンリーディングフレームを再構築した。
【0038】
クローン#10の結合レパートリーのツーハイブリッドアッセイでは、このタンパク質がRAP−2に結合するだけでなく、TRAF2に対してもかなり強い親和性を表すことがわかった。しかしながら、クローン#10はRIP、TRADD、MORT1、MACH、TNFR−I、TIP60およびNIKだけでなく、いくつかのコントロールタンパク質(例えば、ラミンおよびサイクリンD)には結合しなかった。しかしながら、酵母におけるNIKの挙動の特色を考慮して、クローン#10のNIKへの結合がほ乳類細胞においてみられる可能性は排除され得なかった。クローン#10は後者のC末端200アミノ酸内で、すなわちRIP、TIP60、NIKおよびIKKβの結合との関連に必要のない領域でRAP−2を結合すると示された。しかしながら、この配列は不正確で、クローン#10のホモログを同定する目的でジーンバンクサーチを数ラウンド実施した。クローン#10によりコードされるタンパク質に実質的類似度を表す唯一のタンパク質は生理学的役割が決定されていないF40F12.5、線虫(C. Elegans)からの仮説分子であった。
【0039】
興味深いことに、F40F12.5はユビキチン結合プロテアーゼの広範囲に保存されたファミリーのいくつかのメンバーに対し類似性を表すことがわかった。これらの酵素はユビキチン化機構の破壊的効果と平衡し、細胞内タンパク質変性現象の大部分の責任を負うと知られる。ユビキチンリガーゼは変性するタンパク質に対しポリユビキチンツリーを付着することに責任があり、ユビキチンプロテアーゼは成長ツリーの効果的な分枝を防御する。しかしながら、この特別なタンパク質がユビキチンポリマーに対し酵素活性を有するか否かについてはまだ調べられておらず、前記ユビキチン結合プロテアーゼに対する類似性に基づくF40F12.5の機能に関するこのような仮定には問題がある。さらに二点:
a)ユビキチンプロテアーゼのサブクラスのどれかにあるコア触媒領域を構築すると信じられている残基がF40F12.5またはクローン#10のどちらにおいても保存されていない、
b)その触媒部位以外に、種々の種(細菌からヒトまで)由来のユビキチン向プロテアーゼファミリーの酵素が事実上配列類似性を表さず、F40F12.5およびクローン#10はある程度の相同性を表す、
において、このような一致が全く見込みのないものにされている。
【0040】
このように、RAP−2は特異的RIP結合タンパク質であり、従ってRIP細胞内活性の調節物質/媒介物質であると考えられる。RAP−2結合タンパク質は、そのRAP−2結合能により、RIPに対し間接的影響を有し、RIP細胞内活性の調節物質/媒介物質でもある。
【0041】
このように、RAP−2は明らかに、RIPが直接または間接的に関与している炎症、細胞生存および/または細胞死活性、とくに、TNF/NGFレセプターファミリーおよび同様な可能なほかのレセプターによって伝達される刺激を含む、様々な刺激によって生じるまたは誘導される細胞傷害および炎症に関連する炎症、細胞生存および/または細胞死活性の調節/媒介において、役割を有する。
【0042】
またRAP−2はほかのタンパク質、例えばRIPおよびRIPに結合するタンパク質、の複合体の一部として存在することにより細胞傷害および炎症の阻害剤として寄与してもよく、このようにこれらのほかのタンパク質(例えば、p55−R、FAS−R、MACH、Mch4、G1およびMORT−1)の細胞傷害または炎症効果に影響し、最終的にそれらの細胞傷害活性またはその炎症における活性の阻害を導く。
【0043】
なおもRAP−2は前記のようなほかのタンパク質、例えばRIPおよびRIPに結合するほかのタンパク質の活性を増大することにより細胞傷害および炎症のエンハンサーまたは促進剤(augmentor)として寄与してもよく、RIPによるこれらのタンパク質の補充、種々のタンパク質の細胞傷害活性を増大するためまたはその炎症効果を増大するために寄与する補充を目的とする。
【0044】
同様に、類似の方法で、RAP−2は細胞生存経路のRIP関与により前記のようにこの経路の阻害剤または促進剤として寄与してもよい。
【0045】
したがって、本発明は、RIPに結合することおよび、炎症、および/または細胞死および/または細胞生存の調節/媒介であるRIPの細胞内活性を調節または媒介することができる、RIP関連タンパク質(RAP−2)、そのアイソフォーム、断片または類似体をコードするDNA配列を提供する。
【0046】
とくに、本発明は、(a)天然RAP−2タンパク質のコーディング領域由来のcDNA配列、(b)適度に厳しい条件下で(a)の配列にハイブリダイズできる、生物学的に活性なRAP−2タンパク質をコードするDNA配列、ならびに(c)(a)および(b)で定義されたDNA配列への遺伝暗号の結果として変性され、生物学的に活性なRAP−2タンパク質をコードするDNA配列、
からなる群から選択されるDNA配列を提供する。
【0047】
本発明の前記DNA配列のもう1つの特別な実施態様は、RAP−2タンパク質の少なくとも1つのアイソフォームをコードしている配列の少なくとも一部からなるDNA配列である。前記DNA配列のほかの実施態様は、図1に表されたRAP−2タンパク質をコードしている配列である。さらにもう1つの実施態様は図2に表されたDNA配列である。
【0048】
本発明は、本発明の前記配列のいずれかにコードされるRAP−2タンパク質およびその類似体、断片または誘導体を提供する。該タンパク質、類似体、断片および誘導体はRIPに結合することができ、細胞内での細胞死および/または細胞生存経路においてRIPの生物学的活性を調節/媒介することができる。
【0049】
本発明の特別な実施態様は、RAP−2タンパク質、その類似体、断片および誘導体である。図1および2のDNA配列から推定されるRAP−2タンパク質配列は図3に示される。ほかの実施態様は、RAP−2タンパク質のいずれかのアイソフォーム、その類似体、断片および誘導体である。
【0050】
また、本発明によって提供されるのは、前記DNAからなる複製可能な発現ビヒクルであって、これら複製可能な発現ビヒクルは、好適な真核または原核宿主細胞において発現されることができるビヒクル、そのような複製可能な発現ビヒクルを含む、形質転換された真核または原核宿主細胞、およびRAP−2タンパク質、または本発明の類似体、断片もしくは誘導体の製造方法であり、そのような形質転換された宿主細胞を、該タンパク質、類似体、断片または誘導体の発現に好適な条件下で増殖させ、該タンパク質を得るために必要なタンパク質の翻訳後修飾を作用し、該形質転換された細胞の培地からまたは該形質転換された細胞の細胞上清から発現されたタンパク質、アイソフォーム、断片、類似体または誘導体を抽出することからなる製造方法である。前期定義がRAP−2タンパク質のすべてのアイソフォームを含むことを意図している。
【0051】
もう一方の側面では、本発明はまた、本発明のRAP−2タンパク質、ならびにアイソフォーム、断片、類似体および誘導体に特異的な抗体またはその活性誘導体もしくは断片を提供する。
【0052】
本発明のさらなるほかの側面によって、前記DNA配列またはそれらにコードされるタンパク質のさまざまな用途が提供される。本発明に基づき、いずれの用途もほかの間に含まれる。
【0053】
(i)タンパク質RIPによって調節または媒介される、細胞内炎症、細胞死および/または細胞生存経路の調節方法であって、細胞の処理が、RIPに結合することのできる1つまたはそれ以上のRAP−2タンパク質、アイソフォーム、類似体、断片または誘導体で細胞を処理することからなる方法であり、細胞の処理が、1つまたはそれ以上の該タンパク質、アイソフォーム、類似体、断片または誘導体をそれらの細胞内導入に好適な形で細胞に導入すること、またはその1つまたはそれ以上のタンパク質、アイソフォーム、類似体、断片または誘導体をコードしているDNA配列を、その配列を運搬するのに好適なベクターの形で細胞に導入することからなる方法であり、該ベクターが該配列が該細胞で発現するように細胞内にその配列を挿入することができる方法。
【0054】
(ii)前記(i)に基づくRIPタンパク質の作用を介して細胞におよぼす効果によって、TNFファミリーのリガンドに媒介される炎症、細胞死および/または細胞生存経路の調節方法であって、細胞の前記処置が、該細胞中への、前記RAP−2タンパク質、またはアイソフォーム、類似体、断片もしくは誘導体をそれらの細胞内導入に好適な形で細胞に導入すること、または該G1タンパク質、またはアイソフォーム、類似体、断片もしくは誘導体をコードしているDNA配列を、その配列を運搬するのに好適なベクターの形で細胞に導入することからなる方法であり、該ベクターが、該配列が該細胞で発現するように細胞内にその配列を挿入することができる方法。
【0055】
(iii)前記(ii)記載の方法であって、前記細胞への処置が、
(a)FAS−R−またはp55−R−提示細胞の表面上の特異的な細胞表面レセプターに結合できるウイルス表面タンパク(リガンド)をコードしている配列、および該細胞で発現されると、細胞内炎症、細胞死および/または細胞生存経路を調節/媒介することができる、RAP−2タンパク質、ならびにアイソフォーム、類似体、断片および誘導体から選択されるタンパク質をコードしている第2の配列を運搬する組換え動物ウイルスベクターの構築、および
(b)(a)のベクターによる該細胞の感染
の工程からなる、組換え動物ウイルスベクターによる該細胞のトランスフェクションによってなされる方法。
【0056】
(iv)RIPタンパク質の作用を介して細胞におよぼす効果によって、TNFファミリーのリガンドに媒介される炎症、細胞死および/または細胞生存経路の調節方法であって、該細胞を本発明に基づく抗体またはその活性断片もしくは誘導体で処理することからなる方法であり、該処理が、該抗体、その活性断片または誘導体を含む適切な組成物の該細胞への適用によってなされる方法であり、RAP−2タンパク質の少なくとも一部が細胞外表面にさらされているとき、該組成物は細胞外適用として処方され、該RAP−2タンパク質がすべて細胞内であれば、該組成物は細胞内適用として処方される方法。
【0057】
(v)RIPタンパク質の作用を介して細胞におよぼす効果によって、TNFファミリーのリガンドに媒介される炎症、細胞死および/または細胞生存経路の調節方法であって、本発明のRAP−2タンパク質配列の少なくとも一部に対するアンチセンス配列をコードしているオリゴヌクレオチド配列で該細胞を処理することからなる方法であり、該オリゴヌクレオチド配列がRAP−2タンパク質の発現を妨害することのできる方法。
【0058】
(vi)前記(ii)記載の腫瘍細胞もしくはHIV感染細胞またはほかの疾病細胞の治療方法であって、
(a)特異的な腫瘍細胞表面レセプターもしくはHIV感染細胞表面レセプターまたはほかの疾病細胞によって保持されたレセプターに結合できるウイルス表面タンパクをコードしている配列、および本願発明の、該腫瘍細胞、HIV感染細胞、またはほかの疾病細胞で発現されると、RIPタンパク質の作用を介して該細胞を殺傷することができる、RAP−2タンパク質、類似体、断片および誘導体から選択されるタンパク質をコードしている配列を運搬する組換え動物ウイルスベクターの構築、および
(b)(a)のベクターによる、該腫瘍もしくはHIV感染細胞またはほかの疾病細胞の感染
からなる方法。
【0059】
(vii)RIPタンパク質の作用を介して細胞におよぼす効果によって、TNFファミリーのリガンドに媒介される炎症、細胞死および/または細胞生存経路の調節方法であって、本発明に基づくRAP−2タンパク質をコードしている細胞mRNA配列と相互作用することができるリボザイム配列をコードしているベクターを、細胞におけるリボザイム配列の発現を可能にする形で細胞に導入する、リボザイム手法の適用からなる方法であり、該リボザイム配列が細胞中で発現すると、細胞mRNA配列と相互作用し、mRNA配列を開裂させ、結果として該細胞でのRAP−2タンパク質の発現を阻害する方法。
【0060】
(viii)本願発明に基づき前記方法から選択される方法であって、前記RAP−2タンパク質をコードしている配列が、少なくともRIPに結合できる本発明に基づくRAP−2アイソフォーム、そのいずれかの類似体、断片および誘導体の1つである方法。
【0061】
(ix)本発明に基づくRIPタンパク質に結合できるタンパク質の単離および同定方法であって、RIPをコードしている配列が1つのハイブリッドベクターによって運搬され、cDNAまたはゲノムDNAライブラリーの配列が第2のハイブリッドベクターに運搬され、ついでベクターが酵母宿主細胞を形質転換するために使用され、正の形質転換された細胞が単離され、そののち該RIPタンパク質に結合するタンパク質をコードしている配列を得るため前記第2のハイブリッドベクターの抽出する、酵母ツーハイブリッド手法の適用からなる方法。
【0062】
(x)前記(i)−(x)のいずれか記載の方法であって、RAP−2タンパク質がRAP−2のアイソフォームのいずれか、それらいずれかの類似体、断片および誘導体である方法。
【0063】
(xi)前記(i)−(x)のいずれか記載の方法であって、RAP−2タンパク質またはそのアイソフォーム、類似体、断片および誘導体のいずれかが、RAP−2タンパク質、アイソフォーム、類似体、断片または誘導体が直接または間接的に結合できるほかの媒介物質または誘導物質によって媒介または調節される細胞効果の調節に関与する方法。
【0064】
本発明はまた、前記、RIPタンパク質の作用を介して細胞におよぼす効果または、ほかの媒介物質または誘導物質の細胞におよぼす効果によって、TNFファミリーのリガンドに媒介される炎症、細胞死および/または細胞生存経路の調節するための医薬組成物であって、以下のいずれかひとつの活性成分からなる医薬組成物を提供する。
【0065】
(i)本発明に基づくRAP−2タンパク質、およびその生物学的活性断片、類似体、誘導体またはその混合物、
(ii)本発明に基づく細胞表面レセプターに結合できるたんぱく質、RAP−2タンパク質、およびその生物学的活性断片または類似体をコードしている組換え動物ウイルスベクター含む医薬組成物、
(iii)本発明に基づくRAP−2タンパク質配列のアンチセンス配列をコードしているオリゴヌクレオチド配列であって、該オリゴヌクレオチドが、(ii)記載の組換え動物ウイルスベクターの第2配列であってもよいオリゴヌクレオチド配列。
【0066】
本発明はまた、
I.RIPによって、またはほかの媒介物質または誘導物質の細胞におよぼす効果もしくはほかのNF−κB誘導物質または阻害剤の細胞におよぼす効果によって調節/媒介される炎症、細胞内細胞死および/または細胞生存経路の調節方法であって、前記(i)−(x)のいずれかひとつの方法に合わせて、RAP−2タンパク質、そのアイソフォーム、類似体、断片もしくは誘導体で、またはRAP−2タンパク質、アイソフォーム、類似体、断片もしくは誘導体をコードしている配列で、細胞を処理することからなる方法であり、該処理の結果として、RIPに媒介される効果が増強または阻害され、それによって、またFAS−Rもしくはp55−Rに媒介される効果、またはほかの媒介物質もしくは誘導物質またはほかのNF−κB誘導物質もしくは阻害剤の効果が増強または阻害される方法。
【0067】
II.RAP−2タンパク質、その類似体、断片または誘導体が、とくにRIP、ほかの媒介物質もしくは誘導物質、またはほかのNF−κB誘導物質もしくは阻害剤への結合に関係しているRAP−2タンパク質の一部である前記方法であって、該RAP−2タンパク質配列が、とくにRIP、ほかの媒介物質もしくは誘導物質、またはほかのNF−κB誘導物質もしくは阻害剤への結合に関係しているRAP−2タンパク質の一部の配列である方法。
【0068】
III.前記RAP−2タンパク質がRAP−2アイソフォームのいずれかである前記方法であって、該アイソフォームがRIP関連効果を増強することのできる方法。
【0069】
IV.前記RAP−2タンパク質がRAP−2アイソフォームのいずれかである前記方法であって、該アイソフォームが、RIP関連効果、または細胞におよぼすほかの媒介物質もしくは誘導物質関連効果を阻害することができ、それによって細胞におよぼすFAS−Rもしくはp55−R関連効果、または細胞におよぼすほかの細胞傷害性媒介物質もしくは誘導物質の効果も阻害することのできる方法。
【0070】
V.前記RAP−2タンパク質、アイソフォーム、類似体、断片または誘導体NF−κBの直接もしくは間接的阻害またはJNKおよびp38キナーゼの直接もしくは間接的活性化による炎症および細胞生存経路におよぼすRIP関連効果を増強または阻害することのできる前記方法。
【0071】
RAP−2タンパク質の単離、その同定およびキャラクタリゼーションは、タンパク質を単離および同定するために使用されるいずれかの標準的なスクリーニング技術、たとえば酵母ツーハイブリット法、アフィニティークロマトグラフィー、およびこれらの目的に使用されるほかのよく知られた標準的な手法のいずれかで実行してもよい。
【0072】
また本発明のほかの側面では、RAP−2タンパク質それ自身、またはそのアイソフォーム、断片もしくは誘導体が、それらに結合するタンパク質の酵母ツーハイブリットスクリーニングにおいて、ベイトとして使用される。
【0073】
RAP−2、そのアイソフォーム、断片または誘導体に結合するタンパク質もまた、本発明の一部である。
【0074】
本発明のほかの側面および実施態様もまた、以下の本発明の詳細な説明から生じるものとして提供される。
【0075】
いたるところで用いられる以下の用語:「細胞におけるRIPまたはFAS−リガンドまたはTNF効果の調節/メディエーション」および本明細書に記載されるほかのこのような「調節/メディエーション」とは、インビトロだけでなくインビボ処理を包含し、さらに阻害、増加/増大を包含するとも解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】図1(配列番号1)は、RAP−2のヌクレオチド配列、下線を引いた開始コドンおよび終結コドンを表す。矢印はツーハイブリッドスクリーニングにより得られる1.5Kbクローンの開始を示す。
【図2】図2(配列番号2)は、クローン#41072(実施例1参照)のヌクレオチド配列、下線を引いた開始コドンおよび終結コドンを表す。
【図3A】図3Aは、RAP−2のヒト(20.4全長およびヒト shrt)およびマウス(NEMO全長およびマウス part)スプライス型の推定アミノ酸配列を示す。
【図3B】図3BはBCM サーチランチャー(Search Launcher)(ベイラー薬科大学(Baylor Collage of Medicine)、ヒューストン、テキサス州(TX))で入手可能なソフトウェアパッケージを用いて並べたFIP−2の公開された配列を表す。相同アミノ酸を囲み、同一アミノ酸に陰をつけた。アスタリスクはFIP−2の推定ロイシンジッパー(LZ)様モチーフを記す。
【図4A】図4Aは、RAP−2の分子特徴を示す図であり、ヒトMTN Blot I(Clontech)の RAP−2 DNAフラグメントを用いたノーザンブロットハイブリダイゼーションを示す。
【図4B】図4Bは、RAP−2の分子特徴を示す図である。RIPに結合したRIP−2を実施例3に詳述するように分析する。矢印は免疫沈降したタンパク質の位置を記す。
【図4C】図4Cは、RAP−2の分子特徴を示す図である。抗FLAG抗体をウェスタンブロッティングに用いたのち、抗His6で免疫沈降した以外は、NIK−RAP−2相互作用を図4Bのように検出した。矢印は免疫沈降したタンパク質の位置を記す。
【図5A】図5Aは、実施例4に記載したRAP−2の異所性発現により、種々の刺激によるNF−κBおよびc−Jun活性化の大規模なダウンレギュレーションを図で表す。HEK−293T細胞を一時的にリポータープラスミド(NF−κB(A)についてはHIVLTR−LucまたはCMV−Lucおよびc−Jun(B)活性化アッセイについてはGAL4−Luc)および示した誘導物質についての発現ベクターおよび空のビヒクル(pcDNA3、図に単独で記した)または全長RAP−2をコードするプラスミド(pcRAP−2、図に記したプラス)のどちらかを用いてトランスフェクションした。リポーター遺伝子ルシフェラーゼ活性の活性化を相対ルシフェラーゼユニット(R.L.U.)で表す。
【図5B】図5Bは、実施例4に記載したRAP−2の異所性発現により、種々の刺激によるNF−κBおよびc−Jun活性化の大規模なダウンレギュレーションを図で表す。HEK−293T細胞を一時的にリポータープラスミド(NF−κB(A)についてはHIVLTR−LucまたはCMV−Lucおよびc−Jun(B)活性化アッセイについてはGAL4−Luc)および示した誘導物質についての発現ベクターおよび空のビヒクル(pcDNA3、図に単独で記した)または全長RAP−2をコードするプラスミド(pcRAP−2、図に記したプラス)のどちらかを用いてトランスフェクションした。リポーター遺伝子ルシフェラーゼ活性の活性化を相対ルシフェラーゼユニット(R.L.U.)で表す。
【図6A】図6Aは、RAP−2が高濃度範囲でNF−κB向類似の抑圧の動きを表すことを示す。TRAF2をHEK−293T細胞で種々の記載する量のpcRAP−2(センス)またはpcRAP−2−a/s(アンチセンス)構築物のどちらかと一緒に一時的に発現させた。NF−κB活性化を評価するため、pHIVLTR−Lucリポータープラスミドをそれぞれ含ませた。実施例4で図5に記載したようにルシフェラーゼアッセイを行った。
【図6B】図6Bは、RAP−2が高濃度範囲でc−Jun向類似の抑圧の動きを表すことを示す。TRAF2をHEK−293T細胞で種々の記載する量のpcRAP−2(センス)またはpcRAP−2−a/s(アンチセンス)構築物のどちらかと一緒に一時的に発現させた。c−Jun活性化を評価するため、pGAL4−Lucリポータープラスミドをそれぞれ含ませた。実施例4で図5に記載したようにルシフェラーゼアッセイを行った。
【図7A】図7Aは、RAP−2がJNK1/2活性化レベルで妨害されることなく、強力にc−Junのシグナル誘導リン酸化を強化することを示す。マイナス印(−)で図に示したpcDNA3キャリアまたはプラス印(+)で図に示したpcRAP−2と共に記載した発現構築物でトランスフェクションしたHEK−293T細胞の細胞ライゼート全体を、実施例5に記載した抗ホスホJun抗体を用いてウェスタンブロット分析により特定した。下のパネルに表すコントロールメンブレンを抗全c−Jun Absで再プローブした(NEB)。
【図7B】図7Bは、RAP−2がJNK1/2活性化レベルで妨害されることなく、強力にc−Junのシグナル誘導リン酸化を強化することを示す。pcDNA3またはpcRAP−2のどちらかでトランスフェクションし、時間をのばすためhrTNFαで処理したHEK−293T細胞由来活性化JNK1/2を、実施例5に詳述するようにホスホJNKに対するAbsを用いた総ライゼートのウェスタンブロッティングにより検出した。
【図7C】図7Cは、RAP−2がJNK1/2活性化レベルで妨害されることなく、強力にc−Junのシグナル誘導リン酸化を強化することを示す。HA−JNK1発現プラスミドと共に空のベクター、pcRAP−2およびpcRIPを用いて同時トランスフェクションしたHEK−293T細胞。つぎにJNK1を、そのN末端HA−tagを介して免疫沈降し、リン酸化細菌産生精製GST−Junに対するその能力をインビトロキナーゼアッセイで決定した。反応産物をSDS−PAGEにより分析した。GST−Junを矢印により印する。
【図8A】図8Aは、RAP−2がDNAへの結合についてAP−1と競合しないことを示す。HEK−293Tを記載したタンパク質で単独で(−)またはpcRAP−2とともにトランスフェクションした。細胞から調製した核抽出物をAP−1の古典(classical)認識配列を含んでなる32P標識オリゴヌクレオチドとともにインキュベートした。反応産物を非変性PAGEにより分析した。
【図8B】図8Bは、RAP−2がDNAへの結合についてNF−κBと競合しないことを示す。HEK−293Tを記載したタンパク質で単独で(−)またはpcRAP−2とともにトランスフェクションした。細胞から調製した核抽出物をNF−κBの古典認識配列を含んでなる32P標識オリゴヌクレオチドとともにインキュベートした。反応産物を非変性PAGEにより分析した。
【図9A】図9Aは、変動量RAP−2(センス)またはRAP−2アンチセンス(a/s)のどちらかでトランスフェクションしたHEK−293TにおけるNF−κBの基本レベルにRAP−2が影響することを示す。
【図9B】図9Bは、変動量RAP−2(センス)またはRAP−2アンチセンス(a/s)のどちらかでトランスフェクションしたヒーラ細胞におけるNF−κBの基本レベルにRAP−2が影響することを示す。
【図10】図10(配列番号3)は、クローン#10の部分的ヌクレオチド配列を示す。
【図11A】図11Aは、RAP−2のシリアル欠失の機能的特徴を示す。RAP−2の連続的C末端欠失の略図表示である。すべて無傷のRAP−2N末端を共にし、そのC末端を矢印により設計した。RIP、NIK、IKKβおよびTIP60結合領域に下線を引いた。3つのハッチ付け囲みは推定ロイシンジッパー様モチーフに対応する。
【図11B】図11Bは、RAP−2のシリアル欠失の機能的特徴を示す。NF−κBのためのHIV−LTRルシフェラーゼリポータープラスミドを用いたRelA、TRAF2 TNFおよびNIKによるHEK−293T細胞のNF−κBについてのAに記載の欠失構築物の過剰発現の効果を示す。リポーター遺伝子ルシフェラーゼ活性の活性を相対ルシフェラーゼユニット(R.L.U.)で表す。
【図12A】図12Aは、RAP−2機能と結合領域のマッピングを示す。RAP−2の種々の欠失をトランスフェクションした酵母(片方のカラム)およびほ乳類HEK−293T細胞(もう片方のカラム)内のその記載したタンパク質結合能について試験した。2つの最良カラムは実施例9に詳述するHEK−293T細胞への高量トランスフェクション同一欠失能を示し、TNFα処理に応答するNF−κB活性を阻害し、c−Jun高リン酸化(c−Jun)を強化する。目立たせたクロスは与えられる効果の強さに比例する。アスタリスクはRelA刺激に対する標識構築物の観察される効果が異なることを示す(図11B参照)。
【図12B】図12Bは、RAP−2機能と結合領域のマッピングを示す。図12Aに示す欠失分析から推定され、タンパク質骨格にあわせて並べたRAP−2の結合(上部)および機能(底部)領域のローカリゼーションを表すチャートの要約。ハッチを付した部分は最小領域に対応する境界の可能な位置を示す。
【図13】図13は、RAP−2のser−148がser−63でのc−Jun高リン酸化誘導能に必須であることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0077】
本発明は、ある観点では、RIPタンパク質に結合し、それにより、特にRIPは本明細書中前記詳述するような炎症、細胞死および/または細胞生存経路の調節または媒介に関与する、RIPの細胞内活性を媒介または調節することができる、新規RAP−2タンパク質に関する。このようにRAP−2は細胞死/炎症生存経路におけるRIP活性を阻害してもよく、RAP−2は炎症または細胞死生存経路のRIP活性を高めるか、これらの経路の1つにおいてRIP活性を高める一方で他方を阻害してもよい。
【0078】
より特には、本発明に従えば、新規タンパク質RAP−2が提供される。RAP−2は配列決定され、特徴付けられ、RAP−2はRIPに対し高い特異性を有するRIP結合タンパク質であるが、炎症、細胞死または細胞生存を導く細胞内シグナリング経路に関与すると知られる多数のタンパク質には結合しないことがわかった。またRAP−2はこれらの経路のどれかで活性であるタンパク質に共通のドメインを有しないことも明らかであり、すなわちRAP−2は「細胞死誘導領域」モチーフまたはモジュールを有さず、キナーゼモチーフまたはドメインを有さず、かつプロテアーゼドメインまたはモチーフも有しない。決定したRAP−2配列はジーンバンク、ヒューマンゲノム レベル1および「dbest」データベースといった多数のデータベースの配列と比較するとわかる独特の配列でもある。前記詳述したように(記載した刊行物および特許出願全ても参照して)、RIPは細胞内炎症、細胞死および細胞生存経路に関与する。したがって、RIP活性の制御またはコントロールはこのような経路が開始されると、これらの経路、例えばTNFまたはFAS−リガンドのそれらのレセプター(特にTNFについて、p55−R)への結合のどれかまたは全てを制御する。RIPはどの経路がより広範囲に活性化されるかを決定することにおいて、細胞死誘導領域を有する多数の細胞傷害タンパク質およびキナーゼ活性を有する多数のタンパク質をも結合することができるおかげで、重要な役割を担い得る。従って、本発明のRAP−2タンパク質のようなRIPに特異的に結合することができるタンパク質は、RIP活性を調節し、それによりほかに比べてある経路の誘導範囲を調節することにおいて重要な役割を担い得る。このように、本発明のRAP−2タンパク質は重要な細胞内シグナル調節物質または媒介物質である。
【0079】
本発明のRAP−2全長タンパク質に加えて、より短いcDNAがクローニングされ、明らかに同じ遺伝子の二者択一的スプライシングにより生じる、「全」cDNAのいくらか離れた領域由来の配列「ブロック」が構成されることがわかった。ヒトRAP−2のマウス版がマウスESTコレクションの同様サーチで特定された。部分的マウスcDNAはヒト版にそのコード領域のいたるところで事実上同一であることがわかった。
【0080】
さらにRIP−RAP−2相互作用の生理学的関連を、トランスフェクションしたHEK−293Tおよびヒーラ細胞で確認した。しかしながら、過剰発現RIP非リン酸化RAP−2により証明されるように、このような複合体の形成はRIP酵素活性を導かなかった。
【0081】
ほ乳類HEK−293T細胞でのトランスフェクション実験でもRAP−2−NIK複合体の安定な形成が得られた。
【0082】
RAP−2は、NIK、IKKβおよびTIP60(ヒストン アセチルトランスフェラーゼ)に結合し、NF−κBおよびc−Jun依存転写を調節するため、NF−κBおよびc−Junシグナル変換経路の重大な要素であるようだ。実際、RAP−2の異所性発現が高まると、NF−κB応答の阻害を導き、一方アンチセンス構築物による細胞からの涸渇はNF−κBおよびc−Junトランス活性化を高める結果となる。
【0083】
RAP−2は、JNK活性により媒介されないc−Jun高リン酸化を強化することもわかった。RAP−2はDNAに結合するc−JunおよびRelAを阻害しなかった。RAP−2の結合および機能ドメインを配列欠失分析により同定した。これらの研究によりRIP、NIKおよびTIP60に対する結合領域は重なり、RAP−2のアミノ酸95〜264内に見いだされることが示された。しかしながら、RAP−2により媒介されるダウンレギュレーション機能効果はタンパク質のN末端ドメインに位置し、アミノ酸1〜264を包含することがわかった。
【0084】
前記観点で、RAP−2はストレス応答ネットワークのシグナル減衰循環の重大な要素であると考えられ、つまりセンスコード構築物の異所性発現が応答を阻害し、一方アンチセンスコード構築物の発現が応答を高める。実際、RAP−2は本発明者らの研究室ではRAT(RIPのアテニュエーター(attenuator))としても知られ、従ってRATおよび/またはRAT−303および/またはクローン303として本明細書中記載されることもある。
【0085】
多重スプライス変異型(multiple splice variant)の存在は、少なくとも部分的に、与えられる条件下でのRAT−2の正味の効果が、有力なアイソフォームで、タンパク質結合/ターゲティング/トランスロケーション/修飾に必要である、特定配列ブロックの存在に依存することを示す。例えば、必要に応じ、RAT−2のTIP60への結合は前者の核局在化を可能とし、スプライスアウト核局在化シグナル(NLS)を用いたRAP−2の変異型は、NF−κB/AP−1抑圧において不完全または逆に、過度に活性となるかもしれないと仮説された。配列分析では、RAP−2はほとんどの既知NLSに特徴的ないくつかの正荷電アミノ酸(E、KおよびR)のクラスターを収容することを示す。
【0086】
RIPへのRAP−2結合はRAP−2タンパク質の領域にマッピングされ、アミノ酸177〜218の間で始まり、アミノ酸264で終結する。RAP−2内のRIP結合ドメインはIKKβまたはNIK結合部位のどちらにも重ならなかった。
【0087】
TIP60への結合では、ヒストンアセチルトランスフェラーゼと呼ばれる核タンパク質ファミリーのメンバーが、明らかにアミノ酸95〜264におよぶある領域内にマッピングされる。ホモ二量化に関与する領域がアミノ酸217〜264間に位置することがわかった。
【0088】
蓄積したデータは、RAP−2の全機能効果(すなわち、NF−κB阻害およびc−Jun高リン酸化の誘導)が同じ領域にマッピングされることを示唆する。
【0089】
クローン#10によりコードされるタンパク質は、明らかにアミノ酸218〜309間に始まりアミノ酸416で終結する領域内で結合し、その結合部位はRIP、NIK、IKKβおよびTIP60に対する結合部位を伴う重複領域からなるであろう。
【0090】
さらに、全ての誘導物質によるシグナリングの効果的な調節に充分な領域が、タンパク質のN末端部分に位置することが可能である。
【0091】
アミノ酸95〜416を包含する領域は、全長タンパク質により引き起こされる効果に比べるとかなり弱いものの効果を有する、このように、内在性RAP−2の補強した凝集に起因し得る。
【0092】
さらに、RelAを除いて、我々の実験により得られた全効果はRAP−2の約100N末端アミノ酸ほどにより媒介されうる。実際、アミノ酸1〜102を包含する断片でさえ、はっきりと加減するにもかかわらず、異なる効果を媒介する。
【0093】
他方、RelA媒介効果の抑制にはRAP−2のかなり長い部分が要求される。これまでのところ、本発明者らは、明らかに、アミノ酸157と264の間の領域に何らかの特異性、RelA関連、結合特性を与える、アミノ酸1〜264内のこの領域の境界を決定した。
【0094】
前記観察観点により、以下のaおよびbが考えられる。
a.RelAを除いて、RIP、クローン#10ならびにより可能なNIKおよびTIPへのRAP−2結合は、NF−κBを導く過剰発現の阻害剤としてのタンパク質の機能に要求されない。
b.RelA過剰発現誘導活性化についてのRAP−2の効果は明らかに、異なる結合現象によって少なくとも部分的に媒介される。本質的には、前記タンパク質のすべてが、特にこれまでに実施した実験から導かれるように、与えられた活性に寄与することが見いだされ得る。
【0095】
細胞死を引き起こすFAS−RおよびTNFレセプターの個性的な能力だけでなく、様々なほかの組織損傷活性を惹起するTNFレセプターの能力により、これらのレセプター機能の異常は特に生物に有害となりうる。実際、これらのレセプターの過剰なおよび不充分な機能はどちらも種々の疾患の病理学的徴候に寄与すると示された。これらのレセプターのシグナリング活性に関与する分子を同定すること、およびこれらの分子の機能を調節する方法を見いだすことは、これらの疾患への新しい治療学的アプローチのための有力な助けとなる。FAS−Rおよびp55−R細胞傷害におけるRIPの推測される重要な役割、そしてRIPの調節を介したFAS−RおよびTNFにおけるRAP−2の推測される重要な制御の役割を鑑み、可能性としてRAP−2がRIP媒介細胞傷害を高めるために作用する条件下(前記のように、RIPはそれ自身でおよび細胞死誘導領域を有するほかのタンパク質との結合により細胞傷害性を有する)、RAP−2のRIPへの結合をブロックすることにより、さもなければRAP−2とRIP間の相互作用を阻害することにより、RIPの細胞傷害機能をブロックしうる医薬を設計することが特に重要と思われる。
【0096】
同様に、FAS−Rおよびp55−RがNF−κBの活性化に関与し、それにより細胞生存の活性化に関与することも(前記のように)知られている。従って、細胞、例えばがん細胞、HIV感染細胞などを殺そうとする場合は、FAS−Rおよびp55−R(および例えば、MORT−1、MACH、Mch4、G1、TRADDなどのその関連タンパク質)の細胞傷害効果を高め、一方同時にそれらのNF−κB誘導能を阻害することが望まれるであろう。よって、RIPへのRAP−2相互作用または結合が結果としてNF−κB誘導を高めるRIPの可能な役割の増大を引き起こし(TRAF2を介してもよいし、キナーゼドメインおよび/またはRIPの中間体ドメインを介してもよい)、つぎにRAP−2とRIP間のこの相互作用をブロックしてNF−κB活性化を阻害、または少なくとも増大を防御し、それによりTNFまたはFAS−リガンド誘導効果のバランスを細胞傷害側から最終的に細胞死増大を提供する側へシフトする。
【0097】
同様に、RIPへのRAP−2結合が実際にFAS−Rおよびp55−R炎症または細胞傷害効果の阻害を引き起こすような反対の状況(前記状況に対し)において、例えば細胞生存増大が求められるような、炎症、種々の自己免疫疾患などではこれらの細胞傷害効果をブロックし、つぎにRAP−2とRIP間の相互作用を高めて細胞死の阻害全体を高め、細胞生存の方へバランスをシフトする薬剤をデザインすることが重要である。RAP−2のRIPとの相互作用が、RIPのNF−κB活性を高める機能の阻害を引き起こし、細胞生存を望む場合は、RAP−2とRIP間のこの相互作用をブロックすることが必要であり、それによりNF−κB活性を増大するRIP活性を高めるという事象は前記から明らかである。
【0098】
前記全体からみて、RIPは炎症、細胞死または細胞生存経路の誘導または媒介間のバランスにおいて重要な役割を果たし、したがって、RAP−2はRIPの調節物質として等しく重要な役割を有することがわかる。前記および以下に記載するような種々の薬剤または治療を用いてRAP−2−RIP相互作用/結合へ影響を与えることは、細胞死から細胞生存へ、または所望によりその逆へ細胞内シグナリング経路にシフトを与えることを可能とするであろう。
【0099】
本発明はまた、RAP−2タンパク質をコードしているDNA配列およびそのDNA配列によってコードされるRAP−2タンパク質に関する。
【0100】
そのうえさらに本発明は、RAP−2タンパク質の生物学的に活性な類似体、断片、および誘導体をコードしているDNA配列、ならびにそれによってコードされる類似体、断片および誘導体に関する。このような類似体、断片および誘導体は、天然のタンパク質に関して少なくとも1つのアミノ酸残基の変更を有する類似体を産生するために、RAP−2タンパク質をコードしているDNA配列中、1つまたはそれ以上のコドンを欠失させ、付加し、または他と置換させることができる標準的な手法(たとえば、Sambrook et al., 1989参照)によって製造される。
【0101】
RAP−2タンパク質、アイソフォーム、類似体、断片または誘導体をコードする本発明の前記DNA配列の中で、天然RAP−2タンパク質のコード領域に由来するcDNA配列とハイブリダイズすることができ、そのようなハイブリダイゼーションが適度に厳しい条件下で行なわれ、ハイブリダイズ可能なDNA配列が生物学的に活性なRAP−2タンパク質をコードするようなDNA配列も、本発明の一様態として含む。したがって、これらのハイブリダイズ可能なDNA配列は、天然RAP−2タンパク質cDNA配列に比較的高い相同性を有するDNA配列、およびたとえば、様々なRAP−2タンパク質アイソフォームをコードしている天然由来の配列、またはRAP−2タンパク質の活性を有するタンパク質をコードしているRAP−2タンパク質様配列の群に属するタンパク質をコードしている天然由来配列であり得るRAP−2タンパク質様配列に相当するDNA配列を含む。さらに、これらの配列はまた、たとえば天然RAP−2cDNA配列に類似するが多数の所望の修飾が組み込まれている非天然であり、合成的に産生された配列も含んでよい。このような合成配列はしたがって、すべてがRAP−2の活性を有する、RAP−2の類似体、断片、および誘導体をコードし得る配列のすべてを含む。
【0102】
様々な前記天然に存在するRAP−2様配列を得るために、様々な組織からの天然由来DNAまたはRNA試料のスクリーニングおよび単離の標準的な手順は、プローブとして天然のRAP−2cDNAまたはその部分を用いておこなってよい(たとえばSambrook et al., 1989に示されている標準的な手順を参照)。
【0103】
同様に、RAP−2の類似体、断片または誘導体をコードする前記種々の合成RAP−2様配列を製造するために、多くの標準的な手法が、このような類似体、断片および誘導体の製造に関して本明細書異化に詳述されるように、用いられ得る。
【0104】
RAP−2タンパク質に「実質的に相当する」ポリペプチドまたはタンパク質は、RAP−2タンパク質だけでなくRAP−2の類似体であるポリペプチドまたはタンパク質を含む。
【0105】
RAP−2タンパク質に実質的に相当する類似体は、もし結果得られるタンパク質が、それが相当するRAP−2タンパク質と同じかまたはより高い生物学的活性を実質的に示すならば、RAP−2タンパク質のアミノ酸配列の1つまたはそれ以上のアミノ酸が、他のアミノ酸に置換され、欠失され、および/または挿入されているポリペプチドである。
【0106】
実質的にRAP−2タンパク質に相当するために、アイソフォームのようなRAP−2タンパク質の配列の変更は、一般的に比較的少数である。変更の数が10以上であってもよいが、好ましくは10以下の変更であり、さらに好ましくは5以下であり、もっとも好ましくはそのような変更が3以下である。任意の技術を実質的にRAP−2タンパク質に相当する潜在的に生物学的に活性なタンパク質を発見するために使用できる一方、そのような技術の1つは、結果としていくつかの修飾を生じる、タンパク質をコードしているDNA上での従来の突然変異誘発技術を使用することである。ついで、このようなクローンによって発現されたタンパク質は、RIPに結合し、そして前記した細胞内経路の調節/媒介においてRIP活性を調節するそれらの能力に対してスクリーニングできる。
【0107】
「保存的な」変更は、タンパク質の活性を変化させることが予想されない保存的な変更である。通常、これらはタンパク質のサイズ、電荷または立体配置を実質的に変更することが予想されず、したがってその生物学的特性を変更することが予想されないようにスクリーニングすることが第一である。
【0108】
RAP−2タンパク質の保存的な置換は、ポリペプチドの少なくとも1つのアミノ酸残基が異なるアミノ酸によって保存的に置き換わるような類似体を含む。そのような置換は、好ましくは表IAにあるような以下のリストにしたがって作製し、その置換は、RAP−2タンパク質の生物学的活性特性を保ったまま、合成ポリペプチド分子の修飾された構造的および機能的特性を提供するための決まりきった実験によって決定してよい。
【0109】
【表1】
【0110】
あるいはまた、RAP−2タンパク質の置換の別の群では、ポリペプチド内の少なくとも1つのアミノ酸残基が除かれており、表IBにしたがってその代わりに異なる残基が挿入されている。ポリペプチド内でなされ得る置換の型は、Schulz et al., G. E., Principles of Protein Structure Springer-Verlag, New York, NY, 1798の表1−2およびCreighton, T. E., Proteins:Structure and Molecular Properties, W. H. Freeman & Co., San Francisco, CA 1983の図3−9に示されたように、異なる種の相同タンパク質との間のアミノ酸変更の頻度の解析に基づいてよい。このような解析に基づいて、代替の保守的置換(alternative conservative substitutions)が、以下の5つの群の1つで交換するとして本明細書中に定義される。
【0111】
表 1 B
1.小さい脂肪族、非極性またはわずかに極性残基:Ala、Ser、Thr
(Pro、Gly);
2.極性負荷電残基およびそれらのアミド:Asp、Asn、Glu、
Gln;
3.極性正荷電残基:
His、Arg、Lys;
4.大きい脂肪族非極性残基:
Met、Leu、Ile、Val(Cys);および
5.大きい芳香族残基:Phe、Tyr、Trp
【0112】
前記かっこ内の3つのアミノ酸残基はタンパク質構造において特別な役割を有する。グリシン(Gly)は側鎖を欠く唯一の残基であり、したがって鎖に柔軟性を与える。これはしかし、α−ヘリックス以外の2次構造の形成を促進する傾向にある。いくつかの場合、システイン(Cys)はタンパク質の折りたたみに重要であるジスルフィド結合形成に参加することができるが、プロリン(Pro)はその特異なジオメトリー(geometry)のため、鎖を強固に拘束し、一般的にβ−ターン様構造を促進する傾向にある。Schulz et al.,が前記でグループ1および2にまとめたことに注意すること。またチロシン(Tyr)はその水素結合能力により、セリン(Ser)およびスレオニン(Thr)などと明らかな類似関係にあることも注意するべきである。
【0113】
たとえば前にあるように、本発明による保存的なアミノ酸置換は当業者に知られており、アミノ酸置換後にポリペプチドの生物学的および構造的な特性を保つことが予想されるであろう。本発明によるほとんどの欠失および置換は、タンパク質またはポリペプチド分子の特徴に根本的な変更を生じないものである。「特徴」は、たとえばRIPへの結合および/または細胞死におけるRIP効果の媒介のような生物学的活性の変更だけでなく、たとえばα−ヘリックスまたはベータシートのような2次構造の変更の両方を定義するための非包括的方法(non-inclusive manner)で定義される。
【0114】
本発明における用途としてのRAP−2タンパク質の類似体を入手するために使用できるタンパク質のアミノ酸置換の産生の実施例は、Mark et al.に付与された米国特許第RE33,653号、第4,959,314号、第4,588,585号および第4,737,462号;Koths et al.に付与された第5,116,943号、Namen et al.に付与された第4,965,195号;Chong et al.に付与された第4,879,111号;Lee et al.に付与された第5,017,691号;および米国特許第4,904,584号(Shaw et al.)にあるリジン置換タンパク質などにあるように任意の既知の方法工程を含む。
【0115】
RAP−2タンパク質の活性を顕著にではなく変更した前記保存的な置換に加えて、RAP−2タンパク質の類似体の生物学的活性の増加を引き起こす保存的な置換またはほとんど保存的でない置換およびランダムな変更のどちらも、本発明の範囲に含むことが意図される。
【0116】
置換または欠失の正確な効果が認められたとき、当業者は置換、欠失などの効果が結合と細胞死の決まりきった検定によって評価されるであろうことを理解するであろう。このような標準試験を用いるスクリーニングは過度の実験を含まない。
【0117】
許容可能なRAP−2類似体は、少なくともRIPに結合する能力を保ち、それにより前記細胞内経路においてのRIP活性を前記のように媒介する。このような系において、いわゆるドミナントネガティブ効果を有する類似体、すなわちRIPへの結合、または後のシグナリングもしくはそのような結合に引き続く他の活性のいずれかにおいて欠陥のある類似体を産生できる。このような類似体は、たとえば、RIPの効果を阻害するために、またはRIPの効果を誘導する(直接的または間接的)NF−κBを阻害するために、これらの活性のいずれがRAP−2とRIPの相互作用によって調節される主要なものであるかどうか(前記を参照)、およびいずれが、RIPとの結合に対して天然RAP−2タンパク質と競合しているこれらの類似体によって調節される主要なものであるかどうかに依存しながら使用できる。
【0118】
遺伝子のレベルでは、これらの類似体は一般的にRAP−2タンパク質をコードしているDNAのヌクレオチドの位置指定突然変異誘発(site-directed mutagenesis)により製造され、それによって類似体をコードしているDNAを産生し、その後DNAを合成し、組換え細胞培養でポリペプチドを発現する。類似体は典型的に天然由来のタンパク質と質的に同等または増加した生物学的活性を示すAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publications および Wiley Interscience, New York, NY, 1987-1995;Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY, 1989。
【0119】
本明細書にしたがってRAP−2タンパク質の製造、または遺伝子コードの既知の縮重によって許容された変更のために同じポリペプチドをコードするが天然の配列とは異なるもう一つの核酸配列の製造は、より以前に製造された類似体またはRAP−2タンパク質の天然型をコードするDNAの位置特異突然変異誘発(site-specific mutagenesis)によってなし遂げられる。位置特異突然変異誘発は、横たわっている欠失連結部(deletion junction)の両側で安定なデュプレックスを形成するのに充分なサイズと配列の複雑さとを有するプライマー配列を提供するために、充分な数の近接したヌクレオチドと同様に、所望の突然変異のDNA配列をコードしている特定のオリゴヌクレオチド配列の使用を通して、類似体を産生することを可能にする。典型的には、変更した配列の両端に約5から10の相補的なヌクレオチドを有する、長さにして約20から25ヌクレオチドのプライマーが好ましい。一般的に位置指定突然変異誘発の技術は、Adelman et al., DNA 2:183(1983)のような刊行物に例示されたように本技術分野で良く知られており、その開示は参考文献により本明細書中に組み込まれている。
【0120】
理解されるように、位置指定突然変異誘発技術は典型的に一本鎖および二本鎖型の両方で存在するファージベクターを用いる。位置指定突然変異誘発で有用な典型的なベクターは、たとえば、Messing et al., Third Cleveland Symposium on Macromolecules and Recombinant DNA, Editor A. Walton, Elsevier, Amsterdam(1981)に開示されたようにM13ファージのようなベクターを含んでおり、その開示は参考文献によって本明細書に組み込まれている。これらのファージは容易に商業的に入手でき、その用途は一般的に当業者に良く知られている。あるいは、一本鎖ファージの複製起点を含むプラスミドベクター(Veira et al., Meth. Enzymol.153:3, 1987)は一本鎖DNAを入手するために用いて良い。
【0121】
一般的に、本明細書による位置指定突然変異誘発は、まず関連したポリペプチドをコードするDNA配列をその配列内に含む一本鎖ベクターを入手することで実施する。所望の突然変異配列を有するオリゴヌクレオチドプライマーを自動化(automated)DNA/オリゴヌクレオチド合成によって合成的に製造する。ついで、このプライマーを一本鎖タンパク質配列含有ベクターにアニールし、突然変異を有する鎖の合成を完成させるために、大腸菌ポリメラーゼ I クレノウ断片のようなDNA重合酵素(DNA-polymerizing enzymes)に曝す。このようにして、突然変異配列および2次鎖は所望の突然変異を有する。ついで、このヘテロデュプレックスベクターは大腸菌JM101細胞のような適切な細胞を形質転換するために使用し、変異させた配列を有する組換えベクターを含むクローンを選択する。
【0122】
このようなクローンを選択した後、変異させたRAP−2タンパク質配列を取り除き、適切なベクター、一般的には適切な宿主のトランスフェクションのために利用可能な型の転移あるいは発現ベクターに配置してもよい。
【0123】
したがって、RAP−2タンパク質をコードしている遺伝子または核酸はまた、PCRおよび化学的オリゴヌクレオチド合成などの既知のDNAまたはRNA増幅技術を用いて、インビトロ、インサイチュ(in situ)および/またはインビボで検出され、入手され、および/または修飾され得る。PCRはDNAポリメラーゼ反応を繰り返すことで特定のDNA配列の(その数を増やしての)増幅を可能にする。この反応はクローニングの代わりに使用でき、必要なものは核酸配列の知識だけである。PCRを実施するために、プライマーを目的の配列と相補的であるように設計する。そして、プライマーを自動化DNA合成にて産生する。プライマーが遺伝子の任意の部分にハイブリダイズするように設計できるので、条件は相補的な塩基対でのミスマッチを許容するようにつくることができる。これらのミスマッチした領域の増幅は、結果として新しい特性を有するペプチドを生成することになる突然変異誘発された産物の合成を導くことができる(すなわち、位置指定突然変異誘発)。たとえば、前記Ausubel, supra, Ch.16も参照のこと。また、PCRで逆転写酵素を用いることによって相補的なDNA(cDNA)合成を連結することにより、RNAはクローニングすることなくプロラクチンレセプターの細胞外ドメインの合成のための開始材料として使用できる。
【0124】
さらに、PCRプライマーは、新規制限部位、または増幅する遺伝子セグメントの末端における終止コドンのような他の特徴を組み込むよう設計できる。この増幅遺伝子配列の5’および3’末端での制限部位の配置は、RAP−2タンパク質、またはその断片をコードしている遺伝子セグメントに対して、他の配列および/またはベクターのクローニング部位とのライゲーションのために注文して設計され得る。
【0125】
PCRならびにRNAおよび/またはDNAの他の増幅方法は、当業者に良く知られており、本明細書にある指導およびガイダンスを基にした、過度の実験なく本発明にしたがって使用できる。DNAまたはRNA増幅の既知の方法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)および関連した増幅工程(たとえば、Mullis et al.に付与された米国特許第4,683,195号、第4,683,202号、第4,800,159号、第4,965,188号、Tabor et al.に付与された第4,795,699号および第4,921,794号、Innisに付与された第5,142,033号、Wilson et al.に付与された第5,122,464号、Innisに付与された第5,091,310号、Gyllensten et al.に付与された第5,066,584号、Gelfand et al.に付与された第4,889,818号、Silver et al.に付与された第4,994,370号、Biswasに付与された第4,766,067号、Ringoldに付与された第4,656,134号、およびInnis et al., eds., PCR Protocols: A Guide to Method and Applicationsを参照のこと)、および二本鎖DNA合成のための鋳型として標的配列に対するアンチセンスRNAを用いるRNA媒介増幅(商品名NASBAである、Malek et al.に付与された米国特許第5,130,238号)、および抗体標識とDNA増幅の使用を組み合わせた免疫−PCR(Ruzicka et al., Science 260:487(1993);Sano et al., Science 258:120(1992);Sano et al., Biotechniques 9:1378(1991))、参考文献としてそのすべてが本明細書に組み込まれている特許と参考文献の全内容を含んでいるが、これらに限定はされない。
【0126】
類似体の形において、RAP−2タンパク質の生物学的に活性な断片(たとえば、任意のRAP−2タンパク質またはそのアイソフォーム)は、RAP−2タンパク質の類似体に関して前記したように製造して良い。RAP−2タンパク質の適切な断片は、RAP−2タンパク質能力を保持し、RIPまたは直接的もしくは間接的にRIPに会合する他のタンパク質の生物学的活性を媒介することのできるものである。したがって、RAP−2タンパク質断片は、類似体に関して前記したような、ドミナントネガティブまたはドミナントポジティブ効果を有するように製造できる。これらの断片は本発明の類似体の特定のクラスを代表する、すなわち、RAP−2タンパク質の全長配列に(たとえば、RAP−2タンパク質の任意の配列またはそのアイソフォームの配列に)由来したRAP−2相互作用タンパク質の部分を定義し、このような部分または断片のそれぞれが前記した所望の活性のいくつかを有しているということに注意するべきである。このような断片はたとえばペプチドであってよい。
【0127】
同様に誘導体は、本技術分野で良く知られているように、RAP−2タンパク質、その類似体もしくは断片の1つまたはそれ以上のアミノ酸残基の側鎖基の標準的な修飾によって、またはRAP−2タンパク質、その類似体もしくは断片をたとえば抗体、酵素、レセプターなどの他の分子と結合させることによって製造して良い。したがって、本明細書で使用する「誘導体」は本技術分野で知られており、残基上の側鎖、またはN−末端もしくはC−末端基として存在する官能基から製造して良い誘導体を含み、本発明に含まれる。これらのフラクション(fraction)がRAP−2タンパク質と同じまたはより高い生物学的活性を有するならば、誘導体は炭化水素またはリン酸残基のような化学的部分(chemical moieties)を有して良い。
【0128】
たとえば、誘導体は、カルボキシル基の脂肪族エステル、アンモニアまたは第1もしくは第2アミンとの反応によるカルボキシル基のアミド、アシル部で形成されるアミノ酸残基のN−アシル誘導体もしくはフリーのアミノ基(たとえばアルカノイル、またはカルボ環アロイル基)、またはアシル部で形成されるフリーのヒドロキシル基(たとえば、セリル、またはトレオニル残基のヒドロキシル基)のO−アシル誘導体を含んで良い。
【0129】
「誘導体」の語は、1つのアミノ酸を、天然に共通して存在する20のアミノ酸の他の1つに変更しない誘導体のみを含むことを意図する。
【0130】
RAP−2はタンパク質またはポリペプチド、すなわちアミノ酸残基の配列である。本明細書の定義に従い、RAP−2タンパク質の全配列を包含するより大きい配列からなるポリペプチドは、その付加が本発明の基本および新しい特徴に影響しない限り、すなわちそれらがRAP−2タンパク質の生物学的活性を維持または増大するならば、またはRAP−2タンパク質の生物学的活性を有するタンパク質またはポリペプチドを残すよう開裂しうるならば、このようなポリペプチドの範囲内に含まれるとする。このように、例えば本発明はほかのアミノ酸またはペプチドを有するRAP−2タンパク質の融合タンパク質を包含するものとする。
【0131】
新規RAP−2タンパク質、その類似体、その断片および誘導体は、多数の使用可能性を有する。たとえば
(i)RAP−2タンパク質、その類似体、その断片および誘導体は、前記のような炎症、細胞死または細胞生存経路のいずれかでRIPの機能を調節するために用いられる。たとえば、RAP−2がNF−κB、JNK(Junキナーゼ)またはp38キナーゼの活性におよぼすRIPの効果を調節することができるなら、抗腫瘍、抗または前炎症、抗HIV適用を望まれる場合、そのようなRAP−2効果はいずれもこのようなRAP−2−RIP効果を高める。この場合、炎症を調節し、細胞傷害効果を高め、または細胞生存効果をブロックするRAP−2タンパク質、その類似体、その断片または誘導体は、本質的に既知の標準的操作により細胞に導入されてもよい。例えば、RAP−2タンパク質が(推測されるように)全細胞内にあり、RIPにより媒介されるFAS−RリガンドもしくはTNFまたはほかの細胞傷害タンパク質効果を望む細胞内のみに導入すべき場合、このタンパク質の細胞への特異的導入システムが必要である。これを行う一つの方法は、そのDNAに以下の2つの遺伝子、すなわち細胞により特異的に発現される細胞表面タンパク質、例えばある細胞(CD4リンパ球および関連する白血病)に特異的に結合するAIDs(HIV)ウイルスgp120タンパク質のようなものに結合するリガンド、または組換えウイルスベクターがFAS−Rまたはp55−R提示細胞に結合することができるような組換えウイルスベクターであるFAS−Rおよびp55−R提示細胞に特異的に結合するほかのリガンドをコードする遺伝子、ならびにRAP−2タンパク質をコードする遺伝子を導入する組換え動物ウイルス、例えばワクシニア由来のものを創ることによる。このように、ウイルス表面上の細胞表面結合タンパク質の発現は腫瘍細胞またはほかのFAS−Rもしくはp55−R提示細胞に特異的なウイルスを標的とし、RAP−2タンパク質コード配列がウイルスを介して細胞内に導入され、いったん細胞内で発現されると、FAS−RリガンドまたはTNFの効果のRIP媒介または独立RIPの効果を高めることとなるであろう。このような組換え動物ウイルスの構築は標準的操作(たとえば、Sambrookら、1989を参照)による。もうひとつの可能性としては、細胞により吸収され、そこで発現されうるオリゴヌクレオチドの形態でRAP−2タンパク質(例えば、RAP−2またはそのアイソフォームのいずれか)の配列を導入することである。
【0132】
(ii)それらをRIPまたは独立したRIP効果により媒介される、FAS−RリガンドまたはTNFまたは関連タンパク質効果を阻害するため、例えば敗血症ショックでの組織損傷、移植片対宿主の拒絶または急性肝炎といったFAS−RリガンドまたはTNF誘導FAS−Rまたはp55−R細胞内シグナリングまたは独立RIP効果またはほかのタンパク質媒介シグナリングをブロックし、同時に細胞生存経路を増大することを望む場合に使用してもよい。この場合、例えば細胞内に標準的操作により、RAP−2タンパク質に対するアンチセンスコード配列を有するオリゴヌクレオチドを導入することも可能であり、そのオリゴヌクレオチドが、RAP−2タンパク質をコードするmRNAの翻訳を効果的にブロックし、それによりその発現をブロックし、FAS−RリガンドまたはTNFまたはRIPまたはほかのタンパク質効果の阻害を誘導する。このようなオリゴヌクレオチドを前記組換えウイルスアプローチにより細胞内に導入してもよく、ウイルスにより提示される第二の配列はオリゴヌクレオチド配列である。
【0133】
同様に、前記のように、RAP−2−RIP相互作用の性質に依存して、前記(i)および(ii)の方法により、所望とする細胞炎症および生存経路を高めたり、阻害することも可能であろう。
【0134】
別の可能性として、RAP−2タンパク質に特異的な抗体を用いて、その細胞内シグナリング活性を阻害することもある。
【0135】
RIP媒介効果またはRIP独立効果を阻害するなおも別の方法では、最近開発されたリボザイムアプローチによる。リボザイムは特にRNAを開裂する触媒RNA分子である。リボザイムを操作して、選択した標的RNA、例えば本発明のRAP−2タンパク質をコードするmRNAを開裂してもよい。このようなリボザイムはRAP−2タンパク質mRNAに特異的な配列を有し、それと相互作用(相補的結合)しうることにより、mRNAを開裂し、その結果、RAP−2発現減少(または欠損完成)を起こし、その発現減少のレベルは標的細胞でのリボザイム発現レベルに依存するであろう。リボザイムを選択した細胞(例えば、FAS−Rまたはp55−R提示細胞)に導入するには、この目的に通常用いられる適切なベクター(前記(i)も参照、ウイルスは第二の配列として選択したリボザイム配列をコードするcDNAを有する)、例えばプラスミド、動物ウイルス(レトロウイルス)ベクターが使用され得る。リボザイム関連の方法などの総説として、Chen et al., 1992;Zhao and Pick, 1993;Shore et al., 1993;Joseph and Burke, 1993;Shimayama et al., 1993;Cantor et al., 1993;Barinaga, 1993;Crisell et al., 1993 および Koizumi et al., 1993参照のこと。この細胞傷害をブロックするよう望まれ、RAP−2−RIP相互作用が細胞傷害を高める場合、またはこの阻害をブロックし、このようなNF−κB活性を増大することが望まれ、RAP−2−RIP相互作用がNF−κB活性を阻害する場合、すなわち両場合とも前記(ii)のような細胞生存を増大することが望まれる場合、このアプローチは適切である。
【0136】
(iii)RAP−2タンパク質、その類似体、断片または誘導体を、同じクラスのほかのタンパク質、すなわちRIPまたは細胞内シグナリング過程に関与する機能的関連レセプターまたはタンパク質に結合するタンパク質を単離、同定およびクローニングするために用いてもよい。この適用には、前記酵母ツーハイブリットシステムを用いてもよく、非ストリンジェントなサザンハイブリダイゼーションの後PCRクローニングする最近開発されたシステム(Wilks et al., 1989)を用いてもよい。Wilksらの刊行物では、キナーゼモチーフの既知配列、推測キナーゼ配列に基づき、非ストリンジェントなサザンハイブリダイゼーションののちPCRクローニングを応用することよる2つの推定タンパク質−チロシンキナーゼの同定およびクローニングが記載されている。このアプローチは、本発明においては、RAP−2タンパク質の配列を用い、関連RIP結合タンパク質の配列を同定およびクローニングするのに使用してもよい。
【0137】
(iv)本発明のRAP−2タンパク質、その類似体、その断片または誘導体を利用したなおも別のアプローチとしては、結合することができるほかのタンパク質または因子、例えば細胞内シグナリング過程に関与するほかのタンパク質または因子を単離および特定するためのアフィニティークロマトグラフィー方法でそれらを用いることである。この適用では、本発明のRAP−2タンパク質、その類似体、その断片または誘導体をアフィニティーグラフィーマトリックスに別々に付着させ、次に細胞内シグナリング過程に関与すると考えられる細胞抽出物または単離したタンパク質もしくは因子と接触させる。アフィニティークロマトグラフィーの後、本発明のRAP−2タンパク質、またはその類似体、その断片または誘導体に結合するほかのタンパク質または因子を溶出し、単離し、特徴付けることができる。
【0138】
(v)前記のように、本発明のRAP−2タンパク質、またはその類似体、その断片もしくは誘導体を免疫原(抗原)として用い、それに対する特異的抗体を産生してもよい。これらの抗体を、細胞抽出物またはRAP−2タンパク質、またはその類似体または断片を産生する形質転換した細胞系のどちらかからのRAP−2タンパク質(例えば、RAP−2またはそのアイソフォームのいずれか)の精製目的に用いてもよい。さらに、これらの抗体をRIP媒介FAS−RリガンドもしくはTNF系または独立したRIP活性の異常な機能、例えばRIPに媒介される過剰なまたは不充分な活性のFAS−RリガンドもしくはTNF誘導細胞効果かまたはRIP自身の特異的細胞効果に関連する疾患特定の診断目的に用いてもよい。このように、RIPタンパク質、または種々のほかの前記RIP結合タンパク質またはRAP−2タンパク質それ自身に関与する細胞内シグナリング系機能不全に関連するこのような疾患では、そのような抗体は重要な診断道具として役に立つであろう。
【0139】
本発明のRAP−2タンパク質の単離、同定および特徴付けは既知の標準的スクリーニング操作のいずれかを用いて実施してもよいことにも注意すべきである。例えば、これらのスクリーニング操作の一つ、本明細書中以下に記載するような酵母ツーハイブリット操作がRIPタンパク質、続いて本発明の種々のRAP−2タンパク質(前記および以下に記載する共願の特許出願における種々のほかの新規タンパク質のほかに)同定のために用られた(Stanger et al., 1995)。前記および以下の記載と同様に、本発明のRAP−2タンパク質を単離、同定および特徴付けるために、または本発明のRAP−2タンパク質に結合し得るさらなるタンパク質、因子、レセプターなどを単離、同定および特徴付けるために当該技術分野で知られるようなアフィニティークロマトグラフィー、DNAハイブリダイゼーション操作などのほかの操作を用いてもよい。
【0140】
本明細書中前記のように、RAP−2タンパク質を、RAP−2タンパク質、例えばRAP−2およびそのアイソフォーム、に対する特異的な抗体を産生するために用いてもよい。これらの抗体またはその断片を本明細書中以下に詳述するように用いてもよく、これらの適用では抗体またはその断片はRAP−2タンパク質に特異的なものとして理解される。
【0141】
RAP−2はRIPに特異的に結合し、そのためRIPの媒介物質/調節物質であり、このように、RIPの機能は独立してまたはほかのタンパク質(例えば、細胞死経路でのFAS−R、p55−R、MORT−1、MACH、Mch4、G1およびTRADD、または細胞生存経路でのTRAF2との)と結合している、炎症、細胞死または細胞生存経路でのRIPの活性を媒介/調節するという本発明による見解に基づき、これらの経路のどちらがRAP−2−RIP相互作用により高められる/阻害されるかに依存して、所望ようにRAP−2−RIP相互作用を高めるまたは阻害する医薬を設計することが重要である。このような医薬が大きな助けとなりうる疾患は多数ある。とりわけ、肝臓への急激な損傷がFAS−Rリガンド媒介肝臓細胞死となる急性肝炎、糖尿用を引き起こす脾臓のβランゲルハンス細胞死のような自己免疫誘導細胞死、移植片拒絶の細胞死(例えば、腎臓、心臓および肝臓)、多発性硬化症における脳の乏突起神経膠細胞死、およびAIDSの増殖を引き起こすAIDS阻害T細胞自殺、およびそれによるAIDS疾患が挙げられる。
【0142】
RAP−2または1つまたはそれ以上のその可能なアイソフォームは、1つまたはそれ以上の前記経路におけるRIPの「天然」阻害剤として役立つこともでき、このようにこれらはRIPの前記特異的阻害剤として用いられてもよい。同様に、ペプチド、有機化合物、抗体などのほかの物質は、RAP−2−RIP相互作用を阻害しうる特異的医薬を得るためにスクリーニングしてもよい。
【0143】
RAP−2−RIP相互作用のペプチド阻害剤としての非限定例を設計し、スクリーニングはICEまたはICE様プロテアーゼのペプチド阻害剤、ICEに特異的な基質、およびペプチド合成を用いたエピトープ分析のためのストラテジーについての以前の研究に基づいた。ICEによるペプチドの効果的な開裂のために最低限要求されるのは、P1位置におけるアスパラギン酸に対する強い優先およびP1位置の右に充分なメチルアミンを有する開裂部位の左に4個のアミノ酸を含むことであるとわかった(Sleath et al., 1990;Howard et al., 1991;Thomberry et al., 1992)。さらに、ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)の配列に対応する蛍光物質ペプチド(テトラペプチド)、Ac−DEVD−AMCと省略されるアセチル−Asp−Glu−Val−Asp−a−(4−メチル−クーマリル−7−アミド)が、FAS−R刺激だけでなくほかのアポプトーシス過程(Kaufmann, 1989;Kaufmann et al., 1993, Lazebnik et al., 1994)の後すぐに細胞で開裂し、CPP32(CED3/ICEプロテアーゼファミリーのメンバー)およびMACHプロテアーゼ(および同様に可能性のあるG1プロテアーゼ、たとえば共願のIL第120367号参照)により効果的に開裂することがわかった。
【0144】
基質のP1位置のAspは重要であるので、第四アミノ酸残基および最初の三個の残基位置のアミノ酸の種々の組み合わせとしてAspを有するテトラペプチドは、例えば固体支持体上の多数のペプチドを抗体を用いて特異的相互作用のためにスクリーニングするGeysenにより開発された方法(Geysen, 1985;Geysen et al., 1987)を用いて、プロテアーゼの活性部位への結合に対して速くスクリーニングされうる。特異的ペプチドに対するMACHプロテアーゼの結合は、G1プロテアーゼの放射標識といった当該技術分野の者に周知の種々の検出方法により検出されうる。Geysenのこの方法は、各実施日につき、少なくとも4000ペプチドを試験することができると示された。
【0145】
同様に、RAP−2とRIP間の相互作用を決定する正確な結合領域または相同領域を解明し、つぎにこの相互作用をブロックするように役立つペプチド、例えばRIPに結合する天然のRAP−2と競合しうる結合領域またはそれへの相補的ペプチドに類似の配列を有する合成ペプチドをスクリーニングするとよい。
【0146】
RAP−2−RIP相互作用を阻害することによるRAP−2の炎症または細胞死活性を阻害しうる薬剤またはペプチド阻害剤は、細胞への侵入を容易にする分子と結合または複合させてもよい。
【0147】
米国特許第5,149,782号は、細胞膜を横断して輸送される分子を、融合ポリペプチド、イオンチャンネル形成ポリペプチド、ほかの膜ポリペプチドおよび例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸といった長鎖脂肪酸のような膜混合剤と結合させることを開示している。これらの膜混合剤は分子複合体を細胞膜の脂質二重層に挿入し、細胞質へのその侵入を容易にする。
【0148】
Lowら、米国特許第5,108,921号は、レセプターが媒介するエンドサイトーシス活性の機構によるタンパク質および核酸といった分子、しかしそれらに限定されない分子の膜貫通送達の可能な方法を総説する。これらのレセプターシステムとしては、ガラクトース、マンノース、6−リン酸マンノース、トランスフェリン、アシアログリコプロテイン、トランスコバラミン(ビタミンB12)、α−2マクログロブリン、インスリンおよび表皮成長因子(EGF)といったほかのペプチド成長因子を認識するものが挙げられる。Lowらは、ビオチンおよび葉酸塩のレセプターといった栄養レセプターを、ほとんどの細胞の膜表面上にあるビオチンおよび葉酸塩の存在および多様性ならびに関連するレセプター媒介膜貫通輸送過程により、有利には細胞膜を横断する輸送を高めるために用いることができると教示する。このように、細胞質に送達される化合物とビオチンまたは葉酸塩といったリガンド間に形成された複合体をビオチンまたは葉酸塩レセプターを提示する細胞膜と接触させ、レセプター媒介貫膜輸送機構を開始し、それにより所望とする化合物を細胞に侵入させる。
【0149】
さらに、所望とするペプチド配列とリーダー/シグナルペプチド配列とを融合し、「キメラペプチド」を創り、このような「キメラペプチド」を細胞膜を横断して細胞質へ輸送させうることが当該技術分野で知られる。
【0150】
ペプチド技術分野の者には考えられるように、本発明によるRAP−2−RIP相互作用のペプチド阻害剤は、恐らくより安定な阻害剤を設計するようRAP−2/RIPプロテアーゼへの結合に対し、速くスクリーニングされることもできるペプチド擬似薬剤または阻害剤を含むと解される。
【0151】
前記のような細胞膜横断ペプチド阻害剤の輸送を容易にしたりまたは高めるのと同じ方法を、RAP−2またはそのアイソフォーム自身だけでなく細胞内効果を発揮するほかのペプチドおよびタンパク質に応用することができるとも考えられるであろう。
【0152】
本明細書中いたるところに記載されるような抗体に関し、用語「抗体」とは、可溶または結合型で標識されうる抗体に対するポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAbs)、キメラ抗体、抗イディオ型(抗Id)抗体だけでなく、酵素的開裂、ペプチド合成または組換え技術、しかしこれらに限定されない既知の技術により与えられるその断片を包含すると解される。
【0153】
ポリクローナル抗体は、抗原で免疫化した動物血清由来の抗体分子の異種集団である。モノクローナル抗体は、実質的に抗原に特異的な抗体の同種集団を含み、その集団は実質的に類似するエピトープ結合部位を含む。MAbsは、当該技術分野の者に知られる方法により得られる。例えば、Kohler and Milstein, Nature, 256:495-497(1975);米国特許第4,376,110号;Ausubel et al., eds., Harlow and Lane ANTIBODIES: A LABORATORY MANUAL, Cold Spring Harbor Laboratory (1988);およびColligan et al., eds., Curemt Protocols in Immunology, Greene Publishing Assoc. and Wiley Interscience N.Y.,(1992-1996)、本明細書中全体として参考文献により盛り込まれる参考文献の内容を参照のこと。このような抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、GILDを含む免疫グロブリンのいずれかのクラスおよびそのサブクラスであればよい。本発明のmAbを産生するハイブリドーマはインビトロ、in situまたはインビボで培養するとよい。インビボまたはin situでの高力価mAbsを生産することが目下好ましい生産方法である。
【0154】
キメラ抗体は、マウスmAb由来の可変領域とヒト免疫グロブリン定常領域を有するというように、その異なる部分が異なる動物種由来である分子である。キメラ抗体は本来適用において免疫原性を減少し、生産収率を増大するために用いられ、例えばヒト/マウスキメラmAbsを用いるように、マウスmAbsがハイブリドーマからより高い収率を有するがヒトではより高い免疫原性を有する。キメラ抗体とその生産方法は当該技術分野で知られる(Cabilly et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81: 3273-3277(1984);Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81: 6851-6855(1984);Bourianne et al., Nature 312: 643-646(1984);Cabilly et al., 欧州特許出願第125023号(1984年11月14日公開);Neuberger et al., Nature 314: 268-270(1985);Taniguchi et al., 欧州特許出願第171496号(1985年2月19日公開);Morrison et al., 欧州特許出願第173494号(1986年3月5日公開);Neuberger et al., PCT出願第WO8601533号(1986年3月13日公開);Kudo et al., 欧州特許出願第184187号(1986年6月11日公開);Sahagan et al., J. Immunol. 137: 1066-1074(1986);Robinson et al., 国際特許出願第WO8702671号(1987年5月7日公開);Liu et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA 84: 3439-3443(1987);Sun et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA 84: 214-218(1987);Better et al., Science 240: 1041-1043(1988);およびHarlow and Lane、ANTIBODIES: A LABORATORY MANUAL、前記)。これらの参考文献は本明細書中参考文献により全体として盛り込まれている。
【0155】
抗イディオ型(抗−Id)抗体は一般的に抗体の抗原結合部位に関連する固有の決定基を認識する抗体である。Id抗体は抗−Idを調製するmAbの源(source)として同種および同遺伝子型の動物(たとえばマウス種)で免役することで調製できる。免役された動物はこれらのイディオ型決定基への抗体(抗−Id抗体)を産出することで、免疫抗体のイディオ型決定基を認識し、応答するであろう。たとえば参考文献によって本明細書に全体が組み込まれている米国特許第4,699,880号を参照のこと。
【0156】
抗−Id抗体はまた、抗−抗−Id抗体と呼ばれる抗体を産出して他の動物でも免疫応答を誘導するための「免疫原」として使用してもよい。抗−抗−Idはエピトープが抗−Idを誘導する本来のmAbと同一であってもよい。したがって、mAbのイディオ型決定基に対する抗体を用いることで、同一の特異性の抗体を発現している他のクローンを同定することができる。
【0157】
したがって、本発明のRAP−2タンパク質、その類似体、断片または誘導体に対して生成したmAbsを、BALB/cマウスのような適切な動物で抗−Id抗体を誘導するために使用してもよい。そのような免役されたマウスからの脾臓細胞を、抗−Id mAbsを分泌する抗−Idハイブリドーマを産出するために使用する。さらに、抗−Id mAbsをキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)のような担体に連結でき、さらなるBALB/cマウスを免役するために使用できる。これらのマウスからの血清は前記RAP−2タンパク質、またはその類似物、断片および誘導体のエピトープに対して特異的な本来のmAbの結合特性を有する抗−抗−Id抗体を含むであろう。
【0158】
このように、抗Id mAbsはそれ自身イディオ型エピトープ、またはGRBタンパク質aのような構造的に評価するエピトープに類似の「イディオトープ」を有する。
【0159】
また用語「抗体」とは、たとえば抗原を結合することができるFabおよびF(ab’)2といった完全な分子だけでなくその断片の両方を含むことを意味する。FabおよびF(ab’)2断片は、完全な抗体のFc断片を欠き、循環系からより素早く除かれ、完全な抗体より少ない非特異組織を有するであろう(Wahl et al., J.Nucl.Med.24:316-325(1983))。
【0160】
本発明で有用な、抗体のFabならびにF(ab’)2および他の断片が完全な抗体分子について本明細書に開示した方法に基づいて、RAP−2タンパク質の検出および定量のために使用してよいことが理解されるであろう。このような断片は、典型的にパパイン(Fab断片を産出するため)またはペプシン(F(ab’)2断片を産出するため)などの酵素を用いたタンパク質分解的切断によって産出される。
【0161】
抗体は、分子と特異的に反応し、それにより抗体へ分子を結合する場合、分子を「結合可能」といわれる。用語「エピトープ」とは、抗体により認識されることもできる抗体により結合されることができる任意の分子の部分を示すことを意味するものとする。エピトープまたは「抗原決定基」は通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面基を含み、特定の電荷特性と同様に特異的な3次元構造特性を有する。
【0162】
「抗原」は、抗体により結合されることができる分子または分子の部分であり、その抗体は、その抗原のエピトープに結合することができる抗体を産生するために動物に誘導することができる。抗原は1つまたはそれ以上のエピトープを有していてもよい。前記に示した特異的反応とは、抗原は高選択的にその対応する抗体と反応し、ほかの抗原により引き起こされたほかの多数の抗体とは反応しないことを示すことを意味する。
【0163】
本発明に用いられる抗体の断片を含む抗体を、試料中のRAP−2タンパク質を定量的または定性的に検出するため、または本発明のRAP−2タンパク質を発現する細胞の存在を検出するために用いてもよい。これは光学顕微鏡、フローサイトメトリーまたは蛍光定量検出との組み合わせにより蛍光標識化抗体(以下記載を参照)を用いた免疫蛍光技術により成し遂げることができる。
【0164】
本発明において有用な抗体(またはその断片)は組織学的に免疫蛍光または免疫電気顕微鏡のように、本発明のRAP−2タンパク質のin situ検出に用いてもよい。in situ検出は、患者から組織学的試料を採取し、このような試料に対する本発明の標識抗体を提供することにより成し遂げられるであろう。抗体(または断片)は、好ましくは標識抗体(または断片)を生物学的試料に付すまたは重層することにより提供される。このような操作をするにあたり、RAP−2タンパク質の存在だけでなく、調べた組織についてのその分布を決定することも可能である。本発明を用いれば、通常の技術を有する者であれば、このようなin situ検出を達成するため広範囲の組織学的方法(染色技術など)のいずれかを修飾することなど容易に認められるであろう。
【0165】
本発明のRAP−2タンパク質についてのこのようなアッセイは、典型的には生物学的流体、組織抽出物、リンパ球や白血球といった新鮮な収集細胞、または組織培養でインキュベートした細胞などの生物学的試料を、RAP−2タンパク質を同定することができる検出可能な標識化抗体の存在下インキュベートすること、および当該技術分野で周知の多数の技術のうちいずれかにより抗体を検出することからなる。
【0166】
生物学的試料を、ニトロセルロースなどの固相支持体もしくは担体または細胞、粒子または可溶性タンパク質を固定することができるほかの固相支持体もしくは担体と処理してもよい。つぎに、支持体または担体を適切な緩衝液で洗浄し、前記のような本発明よる検出可能な標識化抗体で処理してもよい。つぎに、固相支持体または担体を2回緩衝液で洗浄し、非結合抗体を除去するとよい。つぎに、前記固体支持体または担体に結合した標識の量を慣用の方法により検出するとよい。
【0167】
「固相支持体」、「固相担体」、「固体支持体」、「固体担体」、「支持体」または「担体」とは、抗原または固体を結合することができるいかなる支持体または担体をも意図するものとする。よく知られる支持体または担体としては、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロンアミラーゼ、天然および修飾セルロース、ポリアクリルアミド、斑糲岩および磁鉄鉱が挙げられる。担体の性質は、本発明の目的のためには、ある程度の可溶性または不溶性であってもよい。支持体材料は、結合させた分子が抗原または抗体に結合することができる限り、実質的にはいかなる可能な構造的配置を有してもよい。このように、支持体または担体配置はビーズのような球形、試験管内側表面のような円柱形、またはロッドの外側表面であるとよい。あるいは、表面はシート、テストストリップなどのように平らであってもよい。好ましい支持体または担体としては、ポリスチレンビーズが挙げられる。当該技術分野の者には、抗体または抗原を結合するためのほかの適切な担体もわかるであろうし、慣用の実験を用いて同じことを確かめることもできるであろう。
【0168】
前記本発明の与えられる多くの抗体の結合活性は、よく知られる方法により決定される。当該技術分野の者は慣用の実験を用いて各決定についての操作および最適アッセイ条件を決定することができるであろう。
【0169】
洗浄、撹拌、振とう、濾過などのようなほかの工程を特別な状況に応じて、または必要によりアッセイに加えてもよい。
【0170】
本発明による抗体を標識して検出するほかの方法は、同じものを酵素に連結することによる酵素免疫アッセイを用いることである。この場合、この酵素は、後に適当な基質にさらされ、例えば分光光度定量法、蛍光定量法により、または可視化する方法により、検出しうる化学的部分を生産するように基質と反応する。抗体を検出可能に標識化するために用いられうる酵素としては、マレイン酸デヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、デルタ−5−ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、アルファ−グリセロリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリンホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼおよびアセチルコリン−エステラーゼなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。検出は酵素に対する色素原基質を用いる比色法により行ってもよい。また検出は、同様に調製した標準との比較により基質の酵素反応の程度を視覚的に比較して行ってもよい。
【0171】
種々のほかの免疫アッセイのいずれかを用いて検出を行ってもよい。例えば、放射活性標識化抗体または抗体断片により、ラジオ免疫アッセイ(RIA)を用いて、R−PTPaseを検出することも可能である。RIAについてのよい説明が、本明細書中参考文献により盛り込まれているWork, T.S. et al., North Holland Publishing Company、NY(1978), Laboratory Techniques and Biochemistry in Molecular BiologyのChard, T.による「An Introduction to Radioimmune Assay and Related Techniques」という題名の項目に特に参照されていることがわかるであろう。放射性同位元素はgカウンターまたはシンチレーションカウンターの使用によりまたはオートラジオグラフィーによる方法で検出することができる。
【0172】
本発明によれば、抗体を蛍光化合物で標識化することも可能である。蛍光標識した抗体を適当な波長光にあてると、つぎに蛍光によりその存在を検出することができる。多くの通常用いられる蛍光標識化合物としては、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリスリン、ピコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルデヒドおよびフルオレスカミンが挙げられる。
【0173】
また抗体を、152Eまたはランタニド系列のほかのものといった蛍光放射金属を用いて標識して検出することができる。これらの金属は、ペンタ酢酸ジエチレントリアミン(ETPA)といったこのような金属キレート基を用いて抗体に付着させることができる。
【0174】
また抗体を、化学発光化合物と組み合わせることにより標識して検出することもできる。つぎに、化学発光体を付した抗体の存在を、化学反応の過程で生じる発光の存在を検出することにより決定することができる。特に有用な化学発光標識化合物の例としては、ルミノール、イソルミノール、テロマティックアクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩およびオキサレートエステルが挙げられる。
【0175】
同様に、本発明の抗体を標識化するために生物発光化合物を用いてもよい。生物発光とは、触媒タンパク質が化学発光反応の効果を増大する生物学的システムで見られる化学発光の型である。生物発光タンパク質の存在は、発光物質の存在を検出することにより決定される。標識を目的とする重要な生物発光化合物としては、ルシフェリン、ルシフェラーゼおよびエクオリンが挙げられる。
【0176】
本発明の抗体分子を、「ツーサイト」または「サンドイッチ」アッセイとしても知られる免疫定量アッセイでの使用に適用してもよい。典型的な免疫定量アッセイでは、ある量の非標識化抗体(または抗体の断片)を固体支持体または担体に結合させ、ある量の検出可能な標識化可溶性抗体を加えて固相抗体、抗原および標識化抗体間に形成された三量体複合体の検出および/または定量をさせる。
【0177】
典型的な、そして好ましい免疫検定には、固相に結合する抗体がまず二重固相抗体−抗原複合体の形成によって標本から抗原を抽出するために試験する標本に接触させるような「正(forward)」検定が含まれる。適切なインキュベート時間の後、固相支持体または担体を、反応していない抗原を含んでいる流体(fluid)標本の残余物を取り除くために洗浄し、必要ならば次に不明な量の(「レポーター分子」として機能する)標識化抗体を含んでいる溶液と接触させる。標識化抗体を、非標識化抗体を通して固体支持体または担体に結合している抗原と複合化させるための2次インキュベート期間後、固体支持体または担体を反応していない標識化抗体を取り除くために2回洗浄する。
【0178】
これも本発明の抗原に有用である可能性のあるもう一つの型の「サンドイッチ」検定において、「同時(simultaneous)」および「逆(reverse)」検定と呼ばれるものを使用する。同時検定では抗体は個体支持体または担体に結合し、標識化抗体も同時に試験する標本に加えるのでインキュベート工程は1回である。インキュベートが完了した後、固体支持体または担体を流体標本からの残余物と複合化しない標識化抗体を取り除くために洗浄する。固体支持体または担体に関連する標識化抗体の存在は、ついで従来の「正」サンドイッチ検定でなされるように決定する。
【0179】
「逆」検定において、標識化抗体溶液の流体標本への最初の段階的付加と、それに続く適切なインキュベーション期間の後、固体支持体または担体に結合する非標識化抗体の付加を使用する。2次インキュベーション後、試験する標本の残余物および非反応標識化抗体の溶液がなくなるように固相を従来の方法で洗浄する。ついで固体支持体または担体に関連した標識化抗体の検出を、「同時」および「正」検定でなされるように決定する。
【0180】
本発明のRAP−2タンパク質は、当該技術分野で知られる適当な真核または原核宿主細胞を、タンパク質をコードする配列を含む適当な真核または原核ベクターにより形質転換する標準的組換えDNA操作(例えば、Sambrook et al., 1989 および Ansabel et al.,1987-1995前記参照)により生産することができる。従って、本発明は、本発明のタンパク質生産のためのこのような発現ベクターおよび形質転換した宿主にも関する。前記のように、これらのタンパク質にはその生物学的活性類似体、断片および誘導体も含まれ、このためこれらをコードするベクターにはこれらのタンパク質の類似体および断片をコードするベクターも含まれ、形質転換した宿主にはこのような類似体および断片を生産するものも含まれる。形質転換した宿主により生産されるこれらのタンパク質の誘導体とは、タンパク質またはその類似体または断片の標準的修飾により生産される誘導体である。
【0181】
本発明はRAP−2タンパク質をコードする組換え動物ウイルスベクターを含んでなる医薬組成物にも関し、該ベクターは細胞へのRAP−2タンパク質配列の挿入を指示するため、特異的標的細胞(例えば、がん細胞)表面タンパク質を結合することができるウイルス表面タンパク質をコードする。さらに本発明の医薬組成物は、有効成分として(a)RAP−2タンパク質配列のアンチセンス配列をコードするオリゴヌクレオチド配列、または(b)RAP−2−RIP相互作用をブロックする薬剤を含んでなる。
【0182】
本発明による医薬組成物は、その目的を達するような充分な量の有効成分を含有する。さらに医薬組成物は、当業者に良く知られているように、薬学的に使用できる製剤への活性化合物のプロセシングを容易にし、必要であればその患者への投与のためにこのような製剤を安定にし得る賦形剤および補助剤を含んでなる薬学的に許容し得る適当な担体を含んでもよい。
【0183】
RAP−2タンパク質およびそのアイソフォームまたはイソタイプは、前記に挙げた共願の特許出願に記載されるような細胞内シグナリング経路に関与する種々のほかのタンパク質の発現に対して類似の様式で、異なる組織で著しく異なるレベルで、また明らかに異なるパターンのイソタイプで発現することが予想される。これらの差異は、Fas/APO1リガンドおよびTNFに応答する組織特異的特徴に貢献することができるであろう。ほかのCED3/ICE相同体の場合(Wang et al., 1994;Alnemri et al., 1995)のように、本発明者らは不完全CED3/ICE領域を含むMACHアイソフォーム(例えば、MACHα3)が同時発現するMACHα1またはMACHα2分子の活性について阻害効果を有することがわかったと以前に示し(前記特許出願)、それらはFas/APO1およびp55−Rによる死誘導をブロックすることもわかった。細胞におけるこのような阻害性アイソフォームの発現は、Fas/APO1およびTNF媒介細胞傷害に対する細胞自己保護の機構に貢献するようである。少なくともいくつかのG1アイソフォームの同様の阻害性効果も予想される(最近単離された新規Mch4および可能なMACH結合タンパク質であるG1、ならびにMORT MODULESおよびプロテアーゼドメインを有するMORT−1結合タンパク質、共願のIL第120367号を参照)。CED3/ICEファミリーの任意のほかのプロテアーゼに観察されるような過剰の、MACHアイソフォームの広い異質性(heterogeneity)、および予想されるような同様の、G1アイソフォームの類似の異質性は、活性なMACHアイソフォームの、また同様に活性なG1アイソフォームの機能の特に良好なチューニングをさせる。したがって、前記のように、RAP−2タンパク質またはその可能なアイソフォームは、RIPとのその相互作用に関し、異なる組織での効果およびそれによる前記のような細胞死または細胞生存経路の活性の間のバランスについての影響を変化させる。
【0184】
可能なRAP−2アイソフォームのいくつかが、ほかの機能を提供することもありうる。たとえば、RAP−2またはいくつかのRAP−2アイソフォームは、RIPとの相互作用を介するFas/APO1およびTNFレセプターまたはRIP単独での非細胞傷害性効果といった、ほかに関与する分子に対するドッキング部位として作用してもよい。
【0185】
炎症、細胞死を惹起するFas/APO1およびTNFレセプターの個性的な能力だけでなく、TNFレセプターのほかの組織を損傷する活性を惹起する能力により、これらのレセプターの機能における異常型は生体にとって特に有害となり得る。実際、これらのレセプターの過剰なおよび不完全な機能は両方、種々の疾患の病理学的顕れに寄与すると示された(Vassalli, 1992;Nagata and Golstein, 1995)。レセプターのシグナリング活性に関与する分子の同定、およびこれらの分子の活性の調節方法の発見は、新しい治療学的アプローチを指示する。本発明のほかの観点は、以下の実施例から明らかとなるであろう。
【0186】
ここに本発明を以下の実施例およびそれに伴う図面によりさらに詳細に記載するが、これに限定されるものではない。
【0187】
MORT−1およびMORT−1結合タンパク質(例えば、MACH)だけでなく新たに単離されたタンパク質G1(IL第120367号参照)に関する、(i)ツーハイブリッドスクリーニングおよびツーハイブリッドβ−ガラクトシダーゼ発現試験、(ii)タンパク質の発現誘導、代謝標識および免疫沈降、(iii)インビトロ結合、(iv)細胞傷害の評価、および(v)ノーザンおよび配列分析、(Boldin et al., 1995bも参照)2、3(Boldin et al., 1996も参照)および4以下、の手法は本発明の対応するRAP−2およびそのありうるアイソフォームの単離、クローニングおよび特徴付けに等しく応用しうる(いくらかの修飾により)ことも注意すべきである。したがって、例えば共願のイスラエル国出願第114,615号、第114,986号、第115,319号、第116588号、第117,932号および第120367だけでなく対応するPCT出願PCT/US96/10521号と同じまたは等しい形式で詳述されるように、これらの手法は、本発明によるRAP−2の単離、クローニングおよび特徴付けに用いられる同じ手法の全開示として解釈されるべきである。さらにNIKタンパク質およびNF−κBを活性化するその役割、それによる細胞生存とこの細胞生存経路、例えばTRAF2とRIPおよびほかのタンパク質と間の相互作用、におけるTRAF2による役割に関しては、本発明者らにより、共願のIL第117800号、IL第119133号およびMalinin et al., 1997により詳述されている。
【0188】
実施例1:RIPタンパク質に結合するRAP−2タンパク質のクローニングおよび単離、ツーハイブリッドスクリーニング、配列決定および予備分析
B細胞ライブラリーで、ベイトとしてRIPを用いたツーハイブリッドスクリーニングにより(例えばFields and Song, 1989, WO/96/18641を参照)、約1.5Kbサイズのクローンを単離した。この1.5Kbクローン(図1および2の矢印を参照)をファージcDNAライブラリーのスクリーニングに用い、図1に示す配列の約2.0Kbクローンを得た。
【0189】
1.5Kbクローンの配列を用いてESTマッチングを行うことにより、I.M.A.G.E.協会クローン#41072(Research Gentetics Institute)の3’末端を構成するEST断片を得た。このクローンの、胎児脳ライブラリー由来の3’および5’末端でのその小さな配列断片のみが公開されている。クローンを得た後、それを配列決定し、これらの公開された配列断片でさえエラーを含むことが判明した。配列決定したクローン(図2)は図1のクローンとそのコーディング領域において同一であるが、5’非コーディング領域においては違いがあることがわかった。したがって、両cDNAは同じ遺伝子の二者択一的にスプライシングされた型であると仮定された。
【0190】
配列分析により、RAP、RAP−2様タンパク質は明らかに「細胞死誘導領域」を有さず、MORT MODULEを有さず、ICEファミリーのもののようなプロテアーゼドメインを有さず、キナーゼドメインを有さず、またTRAFドメインを有しないことが示された(細胞内シグナリング経路に存在する種々のドメイン全てに関する前記共願中の特許出願および種々の参考文献、特にMalinin et al., 1997)。3個のロイシンジッパー(LZ)「らしきもの」ブロックが対等にタンパク質コーディング領域に分配されるのを除いて、与えられた配列内にはいかなる考慮すべきモチーフも存在しないとわかった。それらの内2個がLeuからVal、MetまたはIleへの置換を含むので、これらは「らしきもの」と表現した。通常保存的であると考えられるとはいえ、ロイシンジッパードメイン内のこのような変化がその機能活性、例えばほかのLZsへの結合、を維持するためにタンパク質に認められているのか明らかではない。結合の研究では、RAP−2は特にRIPへ結合し、RAP−2はTRADD、MORT−1、p55−R、p75−RおよびMACHには結合できないとわかった(それまでに実施された研究において)。これらの結果は、RAP−2が明らかに「細胞死誘導領域」およびMORT MODULEに欠いているという事実を支持する。
【0191】
したがって、RAP−2は非常に特異的な方法で、RIPへ相互作用/結合する特異的RIP結合タンパク質であると考えられる。このように、RAP−2は炎症および細胞死/細胞生存経路でのRIPの調節/媒介において重要な役割を担うRIP細胞内活性の特異的調節物質/媒介物質であると考えられる。
【0192】
要約すると、RAP−2のクローンは、「ベイト」として全長RIPタンパク質を用いたヒトB細胞cDNAライブラリーのツーハイブリッドスクリーニングにより得られた。RIP配列は以前の刊行物(例えば、Stanger et al., 1995)から入手可能であり、ヒトRIP配列であるジーンバンクデータベース受け入れ番号U25994で存在した(マウスRIP配列も受け入れ番号U25995で存在する)。この配列情報を用いてOLIGO4(商標)ソフトウェアにより適当なPCRプライマーを設計し、RIPのコーディング部分に相当するDNA断片を、鋳型として全RNAヒト繊維芽細胞ライブラリー由来のcDNAを用いたPCRにより得た(標準的操作による)。つぎに、このRIPのコーディング部分をpGBT−9ベクター(Clontech)にクローン化し、前記のようにツーハイブリッドスクリーニング操作でベイトとして用いた。このツーハイブリッドスクリーニングでは、RIPと相互作用するRIP結合タンパク質をコードするクローンを得た。
【0193】
前記のように、このクローンを用いてファージcDNAライブラリーおよびESTデータバンクをスクリーニングした。図1および2から、2個のクローンのコード配列が5’非コード領域は異なるものの、同一であることがわかる。このように、本発明者は恐らく二者択一的スプライシングをうけた型に関心をもった。クローンは約1.5KbのORF(オープンリーディングフレーム)を有する約2.0Kbのものであり、タンパク質自身に対して約50Kd分子量と計算された。RAP−2の導かれたアミノ酸配列を図3に示す。
【0194】
RAP−2クローンの前記配列および「dbest」データベース、ヒトゲノムデータベースレベル1およびジーンバンクデータベースの配列分析では、RAP−2配列は独特の(新規の)配列であり、このRAP−2配列に対し有意な相同性を示す配列はないことがわかった。IL第123758号を出願した後、本出願はそこから優先権を請求しており、Yamaoka S. et al.,(1998)は48kDタンパク質をコードするマウスcDNAのキャラクタリゼーションを報告し、NEMO(NF−κB必須調節物質なので)と名付けた(背景技術参照)。
【0195】
さらなるデータベース(in silico)サーチにより、Li Y. et., al(1998、背景技術参照)によりもともとクローン化された未知機能を有するタンパク質、FIP−2を同定した。
【0196】
RAP−2とFIP−2との配列の広いアラインメントから(図3B)わかるように、全体的な類似性の程度はかなり低い(従って驚くこともなく、広いアルゴリズムに基づくスキャンを用いても配列は同定されなかった)。RAP−2とFIP−2との間の相同性はタンパク質のC末端に向かって増大し、C末端30アミノ酸の実質的同一で最高点に達する。気づくべきことは、後の領域を除けば、FIP−2の推定LZモチーフはRAP−2でより大きく保存されている(Ile/Ala置換を除く)。
【0197】
約0.5kbのさらに短いRAP−2 cDNAも同定され(ID:1469996)、以下ヒトshrtという。この変型は、1.5kb「全長」cDNAのいくつかの離れた領域からのコーディング配列「ブロック」を含んでなり、恐らく同じ遺伝子の二者択一的スプライシングに由来する。
【0198】
RAP−2 cDNAの0.9kb BglII−断片を用いた、多重組織ノーザンブロット(Mulyiple Tissue Nortern blot)(Clontech)のノーザンブロットハイブリダイゼーション分析では、RAP−2 mRNAの複合体パターンがあらわにされた。1kbから7kbまでのサイズ範囲の、少なくとも5種の異なるmRNAを、多少ユビキタウス普及で(ubiquitous prevalence)2.5kbおよび6kb型を用いて検出した(図4A)。
【0199】
実施例2:マウスRAP−2の同定
TIGRに設立されたマウスESTコレクションでの類似のサーチにより、コーディング領域のいたるところでそのヒトのものに実質同一(95%)であるため、恐らくマウスRAP−2に対応する1.6kbの部分的cDNA(マウス部分(Mouse part)ID:761011、図3)を得た。
【0200】
ヒトとマウスには違いがあるとはいえ、RAP−2およびNEMO配列は、通例の種族間の違いに明確に帰すことができるものを越えて拡張している。実際、全長ヒト型および部分的マウス配列に比較して、マウスRAP−2およびNEMO配列からの7個のアミノ酸(20.4における位置249)の欠けたブロックおよびNEMOオープンリーディングフレームにおける3個のアミノ酸(位置111のKLE)の挿入は、唯一最も注意すべき例である(図3)。しかしながら、これらはタンパク質活性において機能的影響をもたらすことができよう。実際、NEMOについて報告された分画分析(fractionation analysis)は、それがシグナルサム(signalsome)に局在化することを確認しているが、NEMOに関して報告された機能的性質は、ヒトRAP−2に見られるものとは反対であるようである。
【0201】
実施例3:ほ乳類細胞におけるRAP−2へのRIP結合
RAP−2−RIP相互作用の生理学的関連のさらなる証拠を、トランスフェクションしたHEK−293Tおよびヒーラ細胞で得た。実際、これらの2個のタンパク質は、以下に記載するような図4Bの各レーンのようにトランスフェクションしたHEK−293(ATCC番号CRL1573)細胞の細胞ライゼート(cellular lysates)から容易に共沈し、抗FLAG mAb(コダック社製)で免疫沈降させられた。つぎに、免疫複合体を抗His6 mAbs(シグマ社製)を用いた慣用のウェスタンブロット操作によりHIS−RAP−2の存在について分析した(図4Bおよびデータは示していない)。しかしながら、このような複合体の形成は、インビトロ免疫複合体キナーゼアッセイにより我々が判定した範囲までRIP酵素活性をもたらさず、過剰に発現したRIPはRAP−2をリン酸化しなかった(データは示さない)。
【0202】
RAP−2が、ほかの既知細胞内シグナリングタンパク質のいずれかに結合するか否かを決定するための結合アッセイを行った。これらの試験では、タンパク質TRADD、MORT−1、p55−R、p75−R、MACHのRAP−2への結合能について試験した。しかしながら、RAP−2はこれらのタンパク質のいずれにも結合し得ないことがわかった。RAP−2はコントロールタンパク質、例えばラミン、サイクリンDのいずれにも結合しなかった。
【0203】
したがって、前記結果全てから、新規RAP−2タンパク質は非常に特異的な様式でRIPと相互作用し、RIPの特異的調節物質/媒介物質であるようだと示唆された。
【0204】
実施例4:RAP−2はNIKと相互作用し、Nf−κBおよびc−Jun依存性転写を調節する
酵母でのツーハイブリッド試験では、RAP−2−NIK相互作用が検出されなかった(前記参照)とはいえ、HEK−293Tほ乳類細胞でのトランスフェクション実験はこの複合体の安定な形成を示唆した。抗FLAG抗体をウェスタンに用いた後、抗His6を用いて免疫沈降したほかは、実施例3に記載のようにしてNIK−PAR−2相互作用を検出した(図4C)。全長NIKは酵母で発現する際その結合特性を失う傾向にあるので、酵母における結合とほ乳類細胞における結合との間のこのような不一致は驚くべきことではない。
【0205】
インビボでRIPおよびNIK両者がTNF誘導NF−κB活性化に必要不可欠な媒介物質であると信じられているという事実から、本発明者らは、細胞培養におけるRAP−2の過剰発現がこの特殊なシグナリング経路を妨げることができるか否かについて調べた。実験の最初のセットは、HIV−LTR最小プロモーターのコントロール下、ルシフェラーゼ遺伝子を含んでなるリポータープラスミドで一時的にトランスフェクションしたHEK−293T細胞で実施した。同様のセットアップで、RAP−2がTNFシグナリングに関与する種々の既知NF−κB誘導物質(NIK、TRAF2、RIPなど)の過剰発現および細胞外刺激による細胞処理の両方により惹起されるリポーター活性をダウンレギュレートし、ほとんど基準レベルに戻すことがまずわかった(TNFおよびPMA、図5A)。HEK−293T細胞をリポータープラスミドで(NF−κB(5A)についてはHIVLTR−LucまたはCMV−Luc、およびc−Jun(5B)についてはGAL4−Luc活性化アッセイ)、および示した誘導物質および、空のビヒクル(pcDNA3)または全長RAP−2をコードするプラスミド(pcRAP−2)のどちらかについての発現ベクターで一時的にトランスフェクションした。注意すべきことに、RAP−2が、RelAのようにシグナル伝達経路を低下させる限り、その効果を発揮しうるという事実は、一部のこのタンパク質作用が、種々の、さもなければ互いに異なるシグナリング経路に共通することを意味する(以下記載参照)。同時に、ルシフェラーゼのκB独立転写(CMV初期プロモーターによる)は妥協せず(図5A)、そのため本発明者らは、RAP−2による可能な基準(basal)転写/翻訳機構の遺伝子混乱は妨げられると信じる。これらの結果は続いてヒーラ細胞で確認された(データは示さない)。
【0206】
しかしながら、さらなる滴定アッセイで、実際の現象ははるかに複雑であることがわかった。実際、TRAF2を図6に示す種々の量のpcRAP−2を用いてHEK−293T細胞で一時的に発現させると、RAP−2は低濃度(20ng/106細胞個近辺)でその挙動が劇的に変化し、TRAF2 NF−κB誘導転写を促進した(図6A参照)。さらに、もとの挿入を逆方向のものと置き換えると、効果的なRAP−2アンチセンス発現ビヒクルが設計され、TRAF2を種々の示した量のpcRAP−2−a/s(アンチセンス)構築物を用いてHEK−293T細胞で一時的に発現し、RAP−2の連続的欠失効果を分析し、濃度に関する図式の概要を導いた。プロットの全体的傾向は、タンパク質のわずかな、内生的レベルに関する「ゼロ」地点にだいたいある特徴的領域を除いて、細胞応答がトランスフェクションしたRAP−2DNA量に関しておおまかには反対であることを示す(図6)。センス過剰発現とは反対に、アンチセンス導入によりダウンレギュウレートする与えられた遺伝子の発現は、恐らくより精密となることがわかるであろう。実際アンチセンスは細胞内のいかなる外来タンパク質の人工的生産にも関与せず、したがって明らかにRAP−2阻害許容量の有効性を強調する。さもなければ、前記低濃度での急激な変化はチャートのアンチセンス半分に反映し、反対しないとわかるであろう(図6)。
【0207】
RAP−2が関与する転写系の多様性を評価するため、本発明者らはc−Junの研究にシフトし、適当なストレス応答を設立し、維持する役割の核因子がNF−κBのものと同じようにほとんど決定的であることを証明した。市販の「Path Detect」系(ストラタジーン(Stratagene)社製)の成分を用いて、本発明者らはHEK−293Tおよびヒーラ細胞でのAP−1のいくつかの認識される活性に関し、RAP−2の同様の二層実施(bi-phase performance)について確認した(図5Bおよび6B参照)。
【0208】
実施例5:RAP−2タンパク質はJNK活性を変えずに、c−Jun高リン酸化を促進する
このように先にわかった転写効果に基づく機構を研究するためには、正常なシグナリングが滅びる正確なレベルを決定することが必要であった。c−Junのトランス活性化ポテンシャルは、アミノ末端活性化ドメインの2個のセリン残基(63Serおよび73Ser)の細胞外シグナル誘導リン酸化により制御されることがわかる。前記リン酸化に責任を負うJNK/SAPKタンパク質キナーゼはMAPキナーゼファミリーのかなり離れたサブセットを構築し、それ自身さらに上流の二元特異的(dual-specificity)キナーゼにより媒介される183Thrおよび185Tyrでのリン酸化を介して活性化される。従って、c−JunおよびJNK両内の適当な部位でのリン酸化状態は、タンパク質の活性化部位に影響するマーカーとして用いることができる。一時的にトランスフェクションしたHEK−293T細胞のライゼートを用いたウェスタンブロットでは、c−Jun媒介転写の傷害にもかかわらず、RAP−2は、多数の刺激により誘導される63Serでの内因性c−Junのリン酸化を著しく強化した(図7A参照)。マイナス印(−)により図7に記したpcDNA3担体またはプラス印(+)により同じ図に記したpcRAP−2のどちらかと一緒に示した発現構築物を用いてトランスフェクションしたHEK−293T細胞の細胞ライゼート全体を、ECL膜に移し、抗リン酸63Ser−c−Jun Absでプローブした(NEB)。図7Aの下のパネルに示した膜を、コントロールとして抗全体c−Jun Absを用いて再プローブした(NEB)。
【0209】
しかしながら、c−Junの全体量は修飾の可能な源として、c−Junレベル飛躍を除いて未変化を維持した。JNK1/2のリン酸化型に特異的な抗体は、c−Junのさらなるリン酸化はJNK活性のRAP−2依存後押しをもたらさないことを示すRAP−2過剰発現に応答するこれらの活性化キナーゼ量の実質的増大を検出しなかった(図7B)。増大に必要な期間hrTNFαで処理した、pcDNA3またはpcRAP−2のどちらかでトランスフェクションしたHEK−293T細胞由来の活性化JNK1/2は、図7に示すようにリン酸化(183Thr/185Tyr)JNK Abs(NEB)を用いて全ライゼートのウェスタンブロットにより検出した。
【0210】
後期のさらなる支持では、基質として免疫沈降したJNK1および精製したGST−c−Junを用いたインビトロキナーゼアッセイが本質的に同じ結果を出した(図7C)。HEK−293T細胞をHA−JNK1発現プラスミドとの種々の組み合わせで、空のベクター、pcRAP−2およびpcRIPを用いて同時トランスフェクションした。つぎに、JNK1はそのN末端HA−tagを介して免疫沈降し、細菌により産生した精製GST−Junリン酸化能をインビトロキナーゼアッセイにおける32P取り込みにより決定した。図7に示すように、SDS−PAGEにより反応生成物を分析した。
【0211】
RAP−2−IKK1複合体をトランスフェクションしたHEK293細胞から免疫沈降すると、RAP−2はリン酸化され、インビトロリン酸化条件下インキュベートされた。RAP−2のリン酸化の機能的役割についての探索では、このタンパク質のある特殊なセリン(位置148)の突然変異はそれによりJunリン酸化活性化を全体的になくすことが示された。図13に表されるように、野生型RAP−2の過剰発現がJunリン酸化の大規模な増大をもたらす一方、RAP2(S148A)の過剰発現はJunのリン酸化に全く影響しなかった。しかしながら、NF−κBについてのRAP2効果はこの突然変異により全く影響されなかった。これらの所見から、RAP2におけるセリン148のリン酸化はJunリン酸化についてのその効果に特に関与することがわかる。
【0212】
実施例6:RAP−2はDNAへのc−JunおよびRelA結合を阻害しない
実施例5に報告した実験では、NF−κBおよびAP−1シグナリングカスケードのRAP−2過剰発現の細胞調節標的が明らかでなかった事実から、本発明者らは転写に要求される核プロセスの完全さを調べた。トランスフェクションされたHEK−293T細胞の核抽出物を用いて実施した電気移動シフトアッセイ(EMSA)は、RAP−2がそのもとの認識配列に対応するオリゴヌクレオチドへのc−JunおよびRelAの結合を妨げないことを無条件に証明した(図8)。実際、RAP−2トランスフェクションされた細胞では、DNA/AP−1複合体形成効果の数倍の上昇が観察された。さらに、後の活性ドメインの立体的傷害をもたらしたRAP−2とc−Jun/RelAとの間には相互作用が観察されなかった。いずれにせよ、核へのRAP−2の侵入効果はエンハンサー結合事象の下流のいくつかの位置で標的にされることが示唆される。
【0213】
実施例7:RAP−2はヒストンアセチルトランスフェラーゼTIP60とインビボで相互作用する
TIP60(ジーンバンク U 74667)は、最近記載されたヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HATs)と呼ばれる核タンパク質のファミリーに属する。これらのタンパク質の酵素活性は、ヌクレオソーム複合体のクロマチン構造状態に関連する。HATは転写機構を有する特定の要素と頻繁に関連し、転写の速度を調節することができる。HATsは、ヒストンの特異的リジン残基上にアセチル基を転移することによって、開始部位の近辺のクロマチンパッケージを弛緩することにより作用し、それによりDNAへの種々の関連する因子の歩み寄りを促進する。明らかに、これらの補助核タンパク質の一つはエンハンサー結合因子とRNAポリメラーゼIIとの間のクロストークを容易にする。このため、本発明者らはTIP60がRAP−2と複合することができるか否かを調べた。ヒーラ細胞からの免疫沈降の後、ツーハイブリッド試験では決定的に、両系でRAP−2が強くTIP60と相互作用することを示した。とはいえ、本発明者らはHEK−293T細胞でのTIP60の同時発現の際、NF−κBおよびc−JunについてのRAP−2媒介効果の考慮すべき変化をみることはできなかった。コントロール実験、すなわち±TIP60(w/o RAP−2)刺激では同様の変化の欠如が観察され、短時間の読み出し(トランスフェクション後20〜30時間)で恐らくクロマチンとなるリポーターDNAの機会を排除し、HAT様酵素にとって実施するに充分な時間が残されないと観察された。
【0214】
実施例8:クローン#10 RAP−2と相互作用する新規タンパク質
B細胞cDNAライブラリーのツーハイブリッドスクリーニングにおけるベイトとして全長RAP−2タンパク質を用いて、本発明者らは本明細書中以下、クローン#10またはクローン#10コードタンパク質またはRAT結合タンパク質#10またはRBP−10と記載するRAP−2と相互作用する新規タンパク質を単離した(図10)。もとのクローン(約2.2kb)は約60kDaの分子量の推定ポリペプチドをコードすることがわかった。しかしながら、推定ATG第一コドンは明らかにこの配列から欠けていた。したがって、その考慮すべき長さにもかかわらず、得られたcDNAはさらに5’末端へオープンリーディングフレーム全体を再構成するよう拡張されている。
【0215】
クローン#10の結合レパートリーのツーハイブリッドアッセイでは、このタンパク質が、RAP−2のほかに、TRAF2にかなり強い親和性を有することが示された。しかしながら、クローン#10は、RIP、TRADD、MORT1、MACH、TNFR−I、TIP60およびNIKだけでなく、いくつかのコントロールタンパク質(例えば、ラミンおよびサイクリン)にも結合しなかった。しかしながら、酵母におけるNIKの挙動の特色を考慮すると、クローン#10のNIKへの結合は、ほ乳類細胞に見られるかもしれないということは排除できない。クローン#10は後のC末端200アミノ酸内、すなわちRIP、TIP60、NIKおよびIKKβの結合との関連に必要ではない領域でRAP−2を結合することが示された。
【0216】
ほ乳類293T細胞でのTRAF−2を用いたクローン#10の同時発現は、NIKを用いたクローン#10の同時発現がNIK(the latter)によりNF−κB活性化を強く高める一方、NF−κBのTRAF2媒介活性化を妨げた。これらの発見で、クローン#10の重要な制御機能が示された。観察された明確な調節効果は、恐らく細胞内のタンパク質作用の異なる、重ならない部位の存在を意味するであろう。
【0217】
RBP−10ホモログ近似の同定を目的とした数ラウンドのジーンバンクサーチにより、線虫由来の過程タンパク質で、生理学的役割はわからないF40F12.5(受け入れ番号S42834)を同定した。興味深いことに、F40F12.5はユビキチン結合プロテアーゼファミリーに広く保存される数メンバーにいくらか類似性を表すことがわかった。これらの酵素は、大部分の細胞内タンパク質変性事象の責任を負うと知られるユビキチン化機構の破壊的効果と釣り合う。ユビキチンリガーゼが、ポリユビキチンツリー(poly-ubiquitin tree)の、変性するタンパク質への付着に責任を負うのに対し、ユビキチンプロテアーゼはツリー成長の効果的な分枝を妨げる。しかしながら、前記ユビキチン結合プロテアーゼに対する類似性に基づくF40F12.5の機能に関するこのような仮定は、いまだこの特殊なタンパク質がユビキチンポリマー性酵素活性を有するか否かについて調べられていないので疑問視されると考えられる。さらに、2点ほどこのような全くありそうもない一致があるようだ。
【0218】
a)ユビキチンプロテアーゼのどのサブクラスにおいてもコア触媒領域を構成すると信じられている残基は、F40F12.5にもRBP−10にも保存されていない。
b)その触媒部位を除いて、種々の種(細菌からヒトまで)由来のユビキチン結合プロテアーゼファミリーの酵素は、実質配列類似性を有さず、一方F40F12.5およびクローン#10はある程度の相同性を表す。
【0219】
実施例9:クローン#84:RAP−2相互作用タンパク質
B細胞cDNAライブラリーのツーハイブリットスクリーニングで、ベイトとして全長RAP−2タンパク質を用いて、さらなるRAP−2結合タンパク質を特定し、クローン#84と命名した。
【0220】
クローン#84は、TRAF2、MORT1、TRADD、RIP、NIK、TIP60およびラミンといったほかの分析したタンパク質と相互作用を表さない一方で、全長RAP−2には特異的に結合することがわかった。機能的p53タンパク質をいだく細胞での特異的にアップレギュレーションされる転写物として特定され、以前にクローニングされた細胞成長制御タンパク質CGR19をコードするcDNAの配列に、クローン#84の部分的5’配列は一致することがわかった(Madden S. et al., 1996, 受け入れ番号#U66469)。CGR19の配列分析により、そのC末端ドメインでC3HC4亜鉛フィンガーモチーフを特定した(RINGフィンガーも参照のこと)。CGR19の発現は、いくつかの細胞系の成長を抑制することがわかった。RAP−2への結合によるNF−κB制御におけるCGR19タンパク質の関与は、TNF−Rファミリーのメンバーによる細胞サイクル制御ネットワークの調節の可能性を示した。
【0221】
実施例10:RAP−2の構造−機能相関
A.結合領域
連続的欠失分析を用いて、RAP−2内の結合領域をマッピングし、RIP、NIK、TIP60結合だけでなく、自己会合ドメインをも同定した(図11)。
【0222】
RIPへの結合は、アミノ酸177〜218間で始まり、アミノ酸264で終結するRAP−2タンパク質の領域にマッピングされた。
【0223】
これまでに、IKKβまたはNIK結合部位、それぞれアミノ酸95〜264およびアミノ酸1〜264のどちらもRAP−2内のRIP結合部位と重ならないことがわかった(図11)。
【0224】
TIP60への結合は明らかにアミノ酸95〜264内にある領域内にマッピングされる。アミノ酸95〜309にある欠失断片を用いた相互作用がなければ、この特殊な欠失に適する特異的な妨害形態をもたらすであろう。
【0225】
欠失断片への結合における同様の不一致が、クローン#10の結合について、およびRAP−2の自己会合についてわかるであろう。しかしながら、TIP60に反対して、全長RAP−2がアミノ酸218〜416を含む欠失断片だけでなく、アミノ酸1〜264を含む欠失断片に結合するという事実は、ホモ二量化に関与する領域がアミノ酸217〜264間に位置することを意味する。
【0226】
前記例外により、クローン#10によりコードされるタンパク質は明らかにアミノ酸218〜309の間で始まり、アミノ酸416で終結する領域内で結合し、このためその結合部位はRIP、NIK、IKKβおよびTIP60についての結合部位を有する重なる領域を含んでなるであろう(図11)。
【0227】
B.機能的領域
本発明者らが現在知る限り、RAP−2の全機能的効果(すなわち、NF−κB阻害およびc−Jun高リン酸化の誘導)は同じ領域にマッピングされる(図11)。
【0228】
さらに、これらの実験で用いられた全誘導物質によるシグナリングの充分に効果的な調節のための領域はタンパク質のN末端セグメントに位置する。
【0229】
全長タンパク質により引き起こされるものと比較して有意に弱く、このため内因性RAP−2の凝集を強いることにより生じるけれども、アミノ酸95〜416に強調される領域は効果を有する。
【0230】
さらに、RelAを除いて、本発明者らの実験に用いた誘導物質全ての効果はRAP-2の約100個のN末端アミノ酸により媒介された。実際、アミノ酸1〜102を包含する断片でさえ、たとえかなり穏やかではあっても、明確な効果を媒介する(図12B)。
【0231】
他方、RelAの好結果の誘導はよりずっと長いRAP-2タンパク質の部分を要する。これまでに、本発明者らは明らかにある特異的な、RelA関連の結合特性を有するアミノ酸157〜264間の領域にあると考えられる、アミノ酸1〜264にあるこの領域の境界を突き止めた。
【0232】
C.結合−機能相関
図11および12に示した結果から、
a)RelAを除いて、RIP、クローン#10および恐らくNIKおよびTIP60に対するRAP-2結合は、NF-κBに誘導される過剰発現の阻害剤として、タンパク質の機能に要求されない。
b)RelA過剰発現誘導活性に対するRAP-2の効果は、明らかに、少なくとも部分的に、異なる結合現象により媒介される。本質的には、これまでに実施された実験から推測されるように、前記タンパク質は全て、与えられた活性に寄与するとわかるであろう。
【0233】
RAP-2とRIP間の相互作用の正確な部位は決定されたが、この部位はRIPおよびRAP-2に特異的なものであって、RIPと相互作用するほかの既知タンパク質、例えばMORT-1、TRADD、FAS-Rおよび可能性としてTRAF2とは共有されない(malinin et al., 1997 参照)。(前記種々のデータベースにおける配列分析および配列比較から)RAP-2は「細胞死誘導領域」、MORT MODULE、タンパク質ドメイン(例えば、ICE/CED3モチーフ)、キナーゼドメイン/モチーフまたはTRAFドメインを有さないこということもわかるであろう。この流れで、生物学的活性分析により、RAP-2が明らかに以下の特徴を有することも示された。
【0234】
(i)過剰発現すると、RAP-2はTNFによる、またはTRADD、RIP、TRAF-2、NIKもしくはp65NF-κBサブユニットの過剰発現によるNF-κB活性を強く阻害する。
(ii)RAP-2は、JNK活性を変えることなく、c-Jun高リン酸化を強化する。
(iii)RAP-2は、欠失分析により示されるように、RIPの細胞死誘導領域またはRIPへの結合に対するRIPのキナーゼ活性を必要としない。
(iv)前記欠失分析に基づき、RAP-2のRIPへの結合領域は約200アミノ酸のN末端領域に狭められる。
(v)RAP-2はトランスフェクションしたほ乳類細胞ではNIKに結合するが、酵母では結合しない。
【0235】
したがって、前記観点から、RAP-2はRIP媒介細胞内シグナリング経路に関与するであろう、高い特異性を有するRIP結合タンパク質であり、そのためRIP調節物質/媒介物質でもあると考えられる。
【0236】
前記のように、RAP-2はRIP活性の調節/媒介に関与するようである。細胞内では、これらは細胞生存経路(恐らくTRAF2との相互作用を介するNF-κB活性化)および、炎症および細胞死経路(その「細胞死誘導領域」またはMORT-1、TRADD、p55-R、FAS-Rといったほかのタンパク質およびMACH、Mch4、G1などの関連タンパク質との相互作用を介して独立して)におけるRIPの関与である。RAP-2がRIPの活性を調節/メディエートする可能性は前記で詳述した。例えば、RAP-2-RIP相互作用は細胞死または細胞生存経路のどちらかを増大し、細胞死または細胞生存経路のどちらかを阻害してもよく、この増大または阻害はこれらの二種の対峙する細胞内経路のほかのメンバーの関連活性に依存しているようである。RAP-2は、RIP分子およびほかのRIPまたはRAP-2結合タンパク質のメンバーを凝集させるためのドッキングタンパク質として働き、つぎにその凝集は細胞死または細胞生存のどちらか(または両方)に向けて、細胞内でこれらの経路のほかのメンバーの関連活性/量に依存して機能するだろう。
【0237】
実施例11:RAP-2に対するポリクローナル抗体の製造
まず、ウサギに完全フロイントアジュバントで乳化したRAP-2の純粋調製物5μgを皮下注射した。3週間後、再度不完全フロイントアジュバントで調製したRAP-2を5μg皮下注射した。さらにPBS溶液で二度RAP-2を10日間隔で注射した。最後の免疫化の10日後、ウサギの血を抜き殺した。抗体レベルの進展はラジオイムノアッセイにより追跡した。125I標識RAP−2を、ウサギ血清の種々の希釈液(1:50、1:500、1:5000および1:50000)と混合した。タンパク質Gアガロースビーズ懸濁液(20μl、ファルマシア社(Pharmacia)製)を総量200μlで加えた。混合物を1時間室温に放置し、つぎにビーズを3度洗浄して、結合した放射活性を測定した。ヒトレプチンに対するウサギ抗血清をネガティブコントロールとして用いた。RAP-2抗血清の力価をネガティブコントロールのものと比較して測定した。
【0238】
実施例12:RAP-2に対するモノクローナル抗体の製造
雌Balb/Cマウス(3ヵ月齢)にまず完全フロイントアジュバントで乳化した精製RAP-2を2μg注射し、3週間後、不完全フロイントアジュバントで皮下注射した。10日間隔で3度さらに、PBSを用いて皮下注射した。最終ではIRIAにより決定した最高結合力価を示すマウスへの融合の4および3日前に腹膜投与した(以下記載参照)。融合はNSO/1骨髄腫細胞系、および融合パートナーとして動物の脾臓およびリンパ節両者から調製したリンパ球を用いて実施した。融合した細胞をマイクロ培養プレートに蒔き、HATおよび15%ウマ血清を足したDMEMにてハイブリドーマを選択した。RAP-2に対する抗体を生産するとわかったハイブリドーマを、限定希釈法によりサブクローン化し、腹水の産生のためプリスタンを満たしたBalb/Cマウスに注射した。抗体のイソタイプを市販で入手可能なELISAキット(アマルシャム社(Amersham)製、U.K)を用いて決定した。
【0239】
抗RAP-2モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニングは以下のように実施した。ハイブリドーマ上清を逆固相ラジオイムノアッセイ(IRIA)により抗RAP-2抗体の存在について試験した。ELISAプレート(ダイナッテクラボラトリー社(Dynatech Laboratories)製、Alexandria、VA)をTalon精製IL-18BPa-His6(10μg/ml、100μl/ウェル)で被覆した。つぎに4℃で一晩インキュベーションし、プレートを2度BSA(0.5%)およびツイーン20(0.05%)を含有するPBSで洗浄し、少なくとも2時間37℃で洗浄溶液中ブロックした。ハイブリドーマ培養上清(100μl/ウェル)を加え、プレートを4時間37℃でインキュベートした。プレートを3度洗浄し、ヤギ抗マウスセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP、Jackson Labs、1:10000、100μl/ウェル)のコンジュゲートを2時間室温で加えた。プレートを4度洗浄し、基質としてH2O2を用いたABTS(2,2’-アジノ-ビス(3-エチルベンズチアゾリン-6-スルホン酸、シグマ社製)により色素発色させた。プレートを自動ELISAリーダーにより読みとった。少なくとも5倍ネガティブコントロール値より高いODを示す試料を陽性と見なした。
【0240】
RAP-2抗体をアフィニティークロマトグラフィーによりRAP-2の精製に用いた。
【0241】
実施例13:ELISA試験
マイクロタイタープレート(Dynatech or Maxisorb、Nunc)を抗RAP-2モノクローナル抗体(血清を含まないハイブリドーマ上清または腹水免疫グロブリン)で一晩4℃で被覆した。プレートをBSA(0.5%)およびツイーン20(0.05%)を含有するPBSで洗浄し、同じ溶液中少なくとも2時間37℃でブロックした。試験試料をブロッキング溶液に希釈し、ウェルに4時間37℃で加えた(100μl/ウェル)。つぎに、プレートを3度ツイーン20(0.05%)を含有するPBSで洗浄し、ウサギ抗RAP-2血清を加え(1:1000、100μl/ウェル)、さらに一晩4℃でインキュベートした。プレートを3度洗浄し、ヤギ抗ウサギセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP、Jackson Labs、1:10000、100μl/ウェル)のコンジュゲートを2時間室温で加えた。プレートを4度洗浄し、基質としてH2O2を用いてABTS(2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンズチアゾリン−6−スルホン酸、シグマ社製)により色素発色させた。プレートを自動ELISAリーダーにより読みとった。
【0242】
本発明の全てをここに記載し、当業者には、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく、また不適当な実験もなく、広範囲の同じパラメーター、濃度および条件により同じく実施することができるよう考えられるであろう。
【0243】
本発明をその特別な実施態様と共に記載したが、さらなる修飾もありうることが理解されるであろう。本出願は、本発明に従ういかなる変型、使用または適応、一般には本発明の原理を包含するものとし、本発明が属する技術において既に知られるような本開示からのこのような出典または習慣的実施をも包含し、添付したクレーム範囲のような本明細書中前記の本質的特徴に用いることができるであろう。
【0244】
本明細書中引用した全ての参考文献は、ジャーナルの論文または要約、公開されたもしくは対応する米国または外国特許出願、発行米国または外国特許、またはほかのいかなる参考文献をも包含し、本明細書中参考文献により全体が盛り込まれ、引用した参考文献のデータ、表、図および文章の全てを包含する。さらに、本明細書中引用した参考文献において引用された参考文献の全内容もまた参考文献により全体が盛り込まれている。
【0245】
既知の方法工程、慣用の方法工程、既知の方法または慣用の方法についての参照はいずれにせよ、本発明の観点、記載または実施態様が関連技術において開示され、教示または示唆されたという認容ではない。
【0246】
前記特別な実施態様の記載は、ほかの者が当該技術分野の知識を用いて(本明細書で引用した参考文献の内容を含む)、不適当な実験もなく、本発明の一般的趣旨から逸脱することもなく、種々の応用のためにこの特別な実施態様を容易に修飾および/または適用できる本発明の一般的性質を完全に表す。したがって、このような適用および修飾は、本明細書中記載する教示および指導に基づき、開示した実施態様に等しい範囲内あるものとする。本明細書における文言および用語は、当業者が有する通常の知識と組み合わせて、本明細書の教示および指導により技術者に解釈されるよう、記載の目的のためにあり、限定されるものではないことがわかるであろう。
【0247】
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【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にTNF/NGFレセプタースーパーファミリーに属するレセプターおよびその生物学的機能の制御の分野にある。TNF/NGFレセプタースーパファミリーとしては、p55およびp75腫瘍壊死因子レセプター(TNF−Rs、本明細書中以下、p55−Rおよびp75−Rという)およびFASリガンドレセプター(FAS/APO1またはFAS−Rともいい、本明細書中以下、FAS−Rという)といったレセプターならびにほかのものが挙げられる。特に本発明は、それ自身でTNF−NGFレセプターファミリーのメンバーおよびほかの細胞内調節タンパク質に直接または間接的に結合するほかのタンパク質に結合する新規タンパク質に関する。
【0002】
さらに特には、本明細書中でRAP−2(RIP−関連タンパク質−2なので)と称するこのようなタンパク質およびそのアイソフォーム、断片、誘導体のみならず、RAP−2に結合するタンパク質に関する。
【0003】
RAP−2はRIP(「レセプター相互作用タンパク質」)に結合し、RIPの機能を調節または媒介することができ、それによりRIPに直接または間接的に結合するほかのタンパク質の機能を直接または間接的に調節または媒介することもできる。RAP−2結合タンパク質はRAP−2機能の調節物質または媒介物質である。
【背景技術】
【0004】
腫瘍壊死因子(TNF−α)およびリンホトキシン(TNF−β)(本明細書では以下、TNF−αとTNF−βの双方をTNFという)は主に単核食細胞によって生成される多機能前炎症性(pro-inflammatory)サイトカインであり、細胞において多くの効果を有する(Wallach, D.(1986) In;Interferon 7 (Ion Gresser,ed.), pp.83-122, Academic Press, London;and Beutler and Cerami(1987))。TNF−αおよびTNF−β双方は、特定の細胞表面レセプターへの結合によってその効果を開始する。この効果のいくつかは生物に対しておそらく有益であり:これらはたとえば腫瘍細胞またはウイルス感染細胞を破壊し、顆粒球の抗菌活性を増大させる。このように、TNFは腫瘍および感染性媒介物(infectious agents)に対する生物の防御に寄与し、傷からの回復に寄与する。したがって、TNFはその適応において腫瘍細胞表面上のそのレセプターに結合し、それにより腫瘍細胞の死を導く事象を開始する抗腫瘍試薬として使用することができる。TNFはまた抗感染試薬として使用することもできる。
【0005】
しかしながら、TNF−αおよびTNF−β双方は有害な効果も有する。TNF−αの過剰産生は様々な疾病において主要な病原の役割を果たすという証拠がある。たとえば、主として血管上において、TNF−αの効果が敗血症性ショックの症状の主要な原因であることが知られている(Tracey et al., 1986)。いくつかの疾病において、TNFは含脂肪細胞の活性を抑制すること、および拒食症を引き起こすことで体重の過度の減少(悪液質(cachexia))を引き起こす可能性があり、TNF−αはしたがってカケクチン(cachectin)と呼ばれた。また、リウマチ疾病での組織への損傷の媒介物質として(Beutler and Cerami, 1987)、また移植片対宿主反応で観察された損傷の主な媒介物質として(Piquet et al., 1987)記載された。さらにTNFは炎症の過程および多くの他の疾病において関与することが知られている。
【0006】
2つの異なった独立して発現したレセプターであり、TNF−αおよびTNF−βに特異的に結合する、p55およびp75 TNF−Rsは、前記したTNFの生物学的な効果を開始および/または媒介する。これらの2つのレセプターは、構造的に類似しない細胞内ドメインを有し、これらは異なったシグナルであることを示している(Hohmann et al., 1989;Engelmann et al., 1990;Brockhaus et al., 1990;Leotscher et al., 1990;Schall et al., 1990;Nophar et al., 1990;Smith et al., 1990;Heller et al., 1990)。しかしながら、たとえば様々なタンパク質および可能性のあるほかの因子の、p55およびp75 TNF−Rsの細胞内シグナリング(signaling)に関与する細胞メカニズムはまだ解明されていない。この細胞内シグナリングは、通常リガンド、すなわちTNF(αまたはβ)のレセプターへの結合後に起こるものであり、そのリガンドが、最終的に結果として、観察されるTNFに対する細胞の応答となる反応のカスケードの開始を招く。
【0007】
前記したTNFの細胞致死効果に関しては、これまで研究されたほとんどの細胞において、この効果は主としてp55 TNF−Rによって誘発される。p55 TNF−Rの細胞外ドメイン(リガンド結合ドメイン)に対する抗体それ自身が、細胞致死効果を誘発することができる(EP412486参照)。この効果は、細胞内シグナリング過程の発生の第1段階であると信じられている、抗体によるレセプターの架橋の効果と関連がある。さらに、変異体の研究(Brakebusch et al., 1992;Tartaglia et al., 1993)は、p55 TNF−Rの生物学的機能が、その細胞内ドメインの完全性に依存していることを示している。したがって、TNFの細胞致死効果を導く細胞内シグナリングの開始は、p55 TNF−Rの2つまたはそれ以上の細胞内ドメインの会合の結果として起こることが提唱されている。さらにTNF(αおよびβ)はホモ三量体となり、それ自体がそのレセプター分子への結合および架橋、すなわちレセプター凝集を引き起こす能力によって、p55 TNF−Rを介して細胞内シグナリングを誘導すると提唱されている。
【0008】
レセプターのTNF/NGFスーパーファミリーのもう1つのメンバーはFASレセプター(FAS−R)であり、これはまたFAS抗原とも呼ばれ、様々な組織に発現している細胞表面タンパク質であり、TNF−RおよびNGF−Rを含む多くの細胞表面レセプターと相同性を有している。FAS−Rはアポトーシスのかたちで細胞死を媒介し(Itoh et al., 1991)、自己反応性(autoreactive)T細胞のネガティブセレクター(negative selector)として役割を果たすために現れ、すなわちT細胞の成熟化の間にFAS−Rは自己抗原を認識しているT細胞のアポトーシス死を媒介する。FAS−R遺伝子(lpr)の変異が、ヒト自己免疫疾患全身性エリテマトーデス(SLE)と類似するマウスにおけるリンパ球増殖障害を引き起こすことも発見されている(Watanabe-Fukunaga et al., 1992)。FAS−Rに対するリガンドが、なかでもキラーT細胞(または細胞傷害性Tリンパ球−CTLs)に提示された細胞表面関連分子として現れるため、これらのCTLsがFAS−Rを提示している細胞と接触するとき、FAS−R提示細胞のアポトーシス細胞死を起こすことが可能となる。さらにモノクローナル抗体がFAS−Rに対して特異的に製造され、このモノクローナル抗体はヒトFAS−RをコードしているcDNAによって形質転換されたマウス細胞を含むFAS−R提示細胞でのアポトーシス細胞死を誘導する能力がある(Itoh et al., 1991)。
【0009】
多くのアプローチが、出願人(たとえばEuropean Application Nos. EP186833, EP308378, EP398327 および EP412486参照)によって、抗TNF抗体を用いてTNFのそのレセプターへの結合を抑制することで、または細胞表面結合TNF−RsへのTNFの結合と競合させるために可溶性TNFレセプターを用いることで、TNFの有害な効果を調節するためになされている。さらに、TNFのそのレセプターへの結合がTNF誘導性細胞効果に必要であるということに基づいて、出願人によるアプローチ(たとえばEP568,925参照)がTNF−Rsの活性を調節することでTNF効果を調節するようになされている。
【0010】
つまり、EP568925は、ペプチドまたは他の分子がレセプターそれ自身と、もしくはレセプターに相互作用してTNF−Rsの正常な機能を調節しているエフェクタータンパク質とのどちらかと相互作用し得るようなシグナル伝達および/またはTNF−Rsの切断を調節する方法に関連する。EP568925では、p55 TNF−Rの細胞外ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインに変異を有する様々な変異型のp55 TNF−Rsの構築およびキャラクタリゼーションが記述されている。この方法では、p55 TNF−Rの前記ドメイン内の領域が、レセプターが機能するのに、すなわちリガンド(TNF)の結合、ならびにそれに続くシグナル伝達および最終的に細胞において観察されたTNF効果となる細胞内シグナリングに、必須であると認められた。さらに、TNF−Rの前記ドメインの様々な領域に結合することができるタンパク質、ペプチドまたはほかの因子を単離し、同定するための多くのアプローチも記載されており、そのタンパク質、ペプチドおよびほかの因子はTNF−Rの活性を制限し、または調節するのに関わる可能性がある。これらのタンパク質およびペプチドをコードしているDNA配列を単離し、クローニングするための、これらのタンパク質およびペプチドの産出のための発現ベクターを構築するための、ならびにTNF−Rと、もしくはTNF−Rの様々な領域に結合する前記タンパク質およびペプチドと相互作用する抗体またはその断片を製造するための多くのアプローチもまたEP568925に説明されている。しかしながら、EP568925はTNF−Rs(たとえばp55 TNF−R)の細胞内ドメインに結合する実際のタンパク質およびペプチドを特定するのではなく、またTNF−Rsの細胞内ドメインに結合するこのようなタンパク質またはペプチドを単離し、同定するために酵母ツーハイブリッドアプローチ(the yeast two-hybrid approach)を記述しているのでもない。同様に、EP568925において、FAS−Rの細胞内ドメインに結合する能力のあるタンパク質またはペプチドの開示はない。
【0011】
腫瘍壊死因子(TNF)レセプターおよび構造的に関連するレセプターFAS−Rが、細胞内で白血球産出リガンドによる刺激によってそれら自身の死を導く破壊活性を引き起こすことが知られている一方、この誘発のメカニズムはまだほとんどわかっていない。変異研究はFAS−Rおよびp55 TNFレセプター(p55−R)において、細胞傷害性のシグナリングはその細胞内ドメイン内の別々の領域に関連することを指し示している(Brakebusch et al., 1992;Tartaglia et al., 1993;Itoh and Nagata, 1993)。これらの領域(「細胞死誘導領域(death domains)」)は配列類似性を有する。FAS−Rおよびp55−R双方の「細胞死誘導領域」は自己会合(self-association)する傾向にある。それらの自己会合は明らかに、シグナリングの開始に必要なレセプターの凝集を促進し(Song et al., 1994;Wallach et al., 1994;Boldin et al., 1995参照)、レセプターの高いレベルでの発現はリガンド非依存シグナリングの引き金となりうる(Boldine et al., 1995)。
【0012】
他のレセプター誘導効果と同様に、TNFレセプターとFAS−Rとによる細胞死誘導は、リガンド−レセプター結合から最終的な酵素的エフェクター機能の活性化を導く一連のタンパク質−タンパク質相互作用によって起こり、ケーススタディでは、細胞死に対するシグナリングを開始する非酵素的タンパク質−タンパク質相互作用を明らかにした。三量体TNFまたはFAS−Rリガンド分子のレセプターへの結合、結果として起こるそれらの細胞内ドメインの相互作用(Brakebusch et al., 1992;Tartaglia et al., 1993;Itoh and Nagata, 1993)は自己会合するための細胞死誘導領域モチーフの性質によって増大し(Boldin et al., 1995a)、(互いに結合もできる)2つの細胞質タンパク質、FAS−Rに対するMORT−1(またはFADD)(Boldin et al., 1995b;Chinnaiyan et al., 1995;Kischkel et al., 1995)およびp55−Rに対するTRADDの、レセプターの細胞内ドメインへの結合を誘導した(Hsu et al., 1995;Hsu et al., 1996)。相同領域のヘテロ会合(hetero-associate)を通じたレセプターによる細胞死誘導にかかわる「細胞死誘導領域」領域でFAS−Rおよびp55−Rの細胞内ドメインに結合し、単独で細胞死を引き起こす能力をも有する3つのタンパク質が、酵母ツーハイブリッドスクリーニング手法にて同定された。これらの1つは、FAS−Rに特異的に結合するFADD(Chinnaiyan et al., 1995)としても知られているタンパク質、MORT−1(Boldin et al., 1995b)である。2つ目のTRADD(Hsu et al., 1995, 1996も参照)はp55−Rに結合し、3つ目のRIP(Stanger et al., 1995も参照)はFAS−Rおよびp55−R双方に結合する。これらのFAS−Rおよびp55−Rへの結合に加えて、これらのタンパク質はまた互いに結合することができ、FAS−Rとp55−Rとの間の機能的な「クロス−トーク(cross-talk)」を提供する。これらの結合は、保存された配列モチーフであるレセプターとそれらの関連するタンパク質とに共通な「細胞死誘導領域モジュール」を通して生じる。さらに、酵母ツーハイブリッド試験においてMORT−1はFAS−Rに自然に結合することが示されたが、哺乳動物細胞ではこの結合はレセプターの刺激の後のみに起こり、このことは、MORT−1がFAS−Rシグナリングの開始事象に参加していることを指し示している。MORT−1は酵素的活性の配列モチーフ特性を含んでおらず、したがってその細胞死を引き起こす能力はMORT−1それ自身の本来備わっている活性に関連しているのではなく、むしろMORT−1に結合するいくつかの他のタンパク質の活性化に関連し、そしてシグナリングカスケードのさらに下流で働くように見える。分子のN−末端部分を欠失しているMORT−1変異体の細胞発現は、FAS/APO1(FAS−R)またはp55−Rによる細胞傷害性誘導の阻害を示し(Hsu et al., 1996;Chinnaiyan et al., 1996)、このことは、このN−末端領域がタンパク質−タンパク質相互作用を通した両方のレセプターの細胞致死効果に対するシグナリングを伝達することを示している。
【0013】
このように、レセプターp55−RおよびFAS−Rの「細胞死誘導領域」だけでなく、それらの3つの関連タンパク質MORT−1、RIPおよびTRADDの「細胞死誘導領域」モチーフも、タンパク質−タンパク質相互作用の部位であるようだ。3つのタンパク質MORT−1、RIPおよびTRADDは、p55−RおよびFAS−R細胞内ドメインとそれらの細胞死誘導領域のレセプター細胞死誘導領域への結合により相互作用し、(MORT−1はその細胞死誘導領域が自己会合しないという観点で異なってはいるが)RIPおよびTRADDの両者についてはそれらの細胞死誘導領域は自己会合もする。さらに、MORT−1およびTRADDはFAS−Rおよびp55−Rに別々に結合するし、お互いに結合もする。さらにMORT−1およびTRADDの両者は、RIPにも有効的に結合する。従って、3つのタンパク質、MORT−1、RIPおよびTRADD間の相互作用は、これらのタンパク質により媒介される細胞内シグナリングの調節全体の重要部分であろう。これらの3つの細胞内タンパク質間の相互作用の干渉は、この相互作用により引き起こされる効果を結果として調節するであろう。例えば、MORT−1に結合するTRADDの阻害はFAS−Rとp55 TNF−Rの相互作用を調節するであろう。同様に、MORT−1に結合するTRADDの前記阻害に加えてRIPの阻害はさらにFAS−Rとp55 TNF−Rの相互作用を調節するであろう。
【0014】
p55−Rの「細胞死誘導領域」に対し、特にTRADDおよびRIPの部位の結合部位に対し産生したモノクローナル抗体はこれらのタンパク質の結合を阻害または防御するために用いられ、そうしてFAS−Rとp55−Rとの間の相互作用の調節を引き起こす。
【0015】
FAS−R、p55−R、MORT−1、TRADD、RIP、MACH、Mch4およびG1といった種々のレセプターおよびその結合タンパク質により媒介されるその前記細胞傷害活性およびその調節のほかにも、これらの多数のレセプターおよびその結合タンパク質は核転写因子NF−κBの活性調節に関与し、それが細胞残存または生存の重要な媒介物質であり、多くの免疫および炎症反応遺伝子の発現の制御に責任がある。例えば、TNF−αは実際にNF−κBの活性を刺激することができ、そうしてTNF−αは細胞内で、一つは細胞死を顕現させ、もう一方はNF−κBを介した遺伝子発現を導くことにより死の誘導に対して細胞を保護する、2種のシグナルを導くことができる(Beg and Baltimore, 1996;Wang et al., 1996;Van Antwerp et al., 1996参照)。FAS−Rについての類似の二重効果も報告されている(前記Van Antwerp et al., 1996に記載されているこの効果を参照)。従って、TNF−αおよび/またはFAS−Rリガンドを用いて種々の細胞型を刺激する際、細胞死と細胞生存との間には繊細なバランスがあり、どの細胞内経路がより広範囲まで刺激されるかによって、刺激の最終結果は、細胞死(通常はアポプトーシスによる)を導くかまたはNF−κBの活性を介して細胞生存を導くようである。
【0016】
さらに本発明者らは最近、TNF/NGFレセプターファミリーのメンバーがNF−κBを活性化する可能な経路も解明した(Malinin et al., 1997および本明細書中の種々の前記参考文献;ならびに共願のイスラエル国特許出願番号IL117800およびIL119133参照)。要約すると、TNF/NGFレセプターファミリーのいくつかのメンバーは、共通のアダプタータンパク質、TRAF2によりNF−κBを活性化することができる。新規に解明されたNIKというプロテインキナーゼ(前記Malinin et al., 1997ならびにIL117800およびIL119133参照)はTRAF2に結合でき、NF−κB活性を刺激できる。実際、キナーゼ欠失NIK突然変異体の細胞内発現は細胞のNF−κBの刺激を正常な内因性の様式で不可能とし、またTNFにより、FAS−Rを介してならびに(これらのp55−Rおよび/またはFAS−Rレセプターを結合するアダプタータンパク質である)TRADD、RIPおよびMORT−1によるNF−κB誘導のブロックにより、細胞のNF−κB活性の誘導をブロックすると示された(前記Malinin et al.およびIL出願参照)。レセプターp55−R、p75−R、FAS−Rおよびそれらのアダプタータンパク質MORT−1、TRADDおよびRIPは全て、NIKへのその結合能力によりNF−κBの誘導を明らかに調節するTRAF2に直接または間接的に結合する。
【0017】
FAS−R および/またはp55−R刺激後の細胞死および生存の間の微妙なバランスに関与する前記調節物質タンパク質のうち、タンパク質RIPは重要な役割を有するようである。RIP(Stanger et al., 1995 および Malinin et al., 1997も参照)はC末端領域に「細胞死誘導領域」を有し、独立して、またMORT−1、p55−R、FAS−RおよびTRADDの細胞死誘導領域との会合により細胞傷害を誘導する。RIPもそのN末端領域にプロテインキナーゼドメインを有し、ならびにTRAF2とのその交わり(結合)およびそれによるNF−κB誘導におけるその関与を可能にすると信じられている中間体ドメインを有する。従って、RIPの特徴および配列(DNAおよびアミノ酸)に関する詳細は、参考文献によりその全体で本明細書中に盛り込まれている前記刊行物に記載されている(特にStanger et al., 1995)。
【0018】
TNFは、宿主抗ウイルス防衛の開始および調節に関与するサイトカインの1種である。同様に、タンパク質がサイトカインの活性を制御する遺伝子を発現するようウイルスが開発され、これらのサイトカイン制御ウイルスタンパク質は動物宿主内でウイルスの永続性を促進すると考えられる。このようなタンパク質で最もよく研究されている例の1つにTNF媒介細胞崩壊の強アンタゴニストとして作用する型2および5のグループCヒトアデノウイルス(Ad)からE3−14.7Kが挙げられる。
【0019】
ウイルス感染時にE3−14.7Kについての標的となるTNFシグナリングカスケードの分子成分を単離するために、最近ヒトE3−14.7K結合タンパク質がツーハイブリットスクリーニングにより単離された(14−K相互作用タンパク質なのでFIP−2、Li.Y et al., 1998)。FIP−2はそれ自身非毒性であり、TNFR−IまたはRIPの過剰発現により導かれ、2つの前記タンパク質のどちらにも結合しないで細胞傷害についてE3−14.7Kの保護効果を逆転することが見いだされた。FIP−2はRAP−2、本発明のタンパク質に対しいくらか相同性を有することが見いだされた。それにもかかわらず2つのアミノ酸配列の広範囲のアラインメント(図3)から見受けられるように、RAP−2とFIP−2間の全体的類似性の度合いはやはりかなり低い。しかしながら、相同性はタンパク質のC末端向特異的領域ではより有意となり、30C末端アミノ酸の実質的一致に達する。前記C末端ドメインのほかに、FIP−2の推定ロイシンジッパーモチーフがRAP−2で(IleからAlaへの置換を除いては)強く保存されていることも記載すべきである。
【0020】
RAP−2に遠いホモログであると考えられ、ハンティングトン病関連タンパク質をコードするHYPLという類似の配列が最近「ハンティングトン相互作用タンパク質、HYPL」の名目でジーンバンク(GenBank)に提出された(受け入れ番号AF049614)。しかしながら、タンパク質の機能を記載した刊行物はいまだ発刊されていない。
【0021】
Yamaoka S.ら(1998)による最近の刊行物では、マウスRAP−2ホモログの同定が報告されている。マウスホモログNEMO(NF−κB必須調節物質なので)はNF−κBシグナリングの活性を制御する鍵モジュールの探査において同定された。HTLV−1 Tax形質転換ラット繊維芽細胞のフラット細胞変異型が特徴づけられ、5Rと命名され、試験したNF−κB活性化刺激(LPS、PMA、IL−I、TNF)全てに対し非応答性であり、その遺伝的相補性を果たした。この手法の結果、NEMO 48kDタンパク質をコードするcDNAが再発見された。このデータに基づき、このタンパク質は5R細胞から欠いており、高分子量IκBキナーゼ複合体の部分であり、かつその形成に要求されるといわれている。インビトロでは、NEMOはホモ二量体化して、直接IKKβと相互作用することができる。
【0022】
イスラエル国特許明細書第120485号には、RIPに特異的に結合し、NF−κB誘導を阻害するRIP関連タンパク質、RAPが開示されている。
【0023】
イスラエル国特許明細書第123758号および本出願は、同じまたは類似の活性を有する別のRIP関連タンパク質、RAP−2に関する。
【0024】
本発明によるRAP−2は、303またはRAP−303またはRAT−303とも呼ばれる。一貫性のため、本明細書中ではRAP−2という。
【発明の概要】
【0025】
本発明の目的は、RIPタンパク質(以下、「RIP」という)に結合することができる新規タンパク質RAP−2、そのアイソフォーム、類似体、断片または誘導体を提供することである。RIPは炎症、細胞傷害/細胞死の細胞内媒介物質、p55−RおよびFAS−Rならびに例えばMORT−1、TRADD、MACH、Mch4、G1およびほかのものといったそれらの関連アダプターまたは調節物質タンパク質と直接または間接的に相互作用することができるので、RIPに結合することによる本発明の新規タンパク質は従ってFASリガンドのそのレセプターへの結合およびTNFのそのレセプター(p55−R)への結合により開始される細胞内シグナリング過程に影響を与えることができ、そしてこのような本発明の新規タンパク質は、細胞でのp55−RおよびFAS−R媒介効果の調節物質である。RIPはTRAF2と相互作用することもでき、それによりNIKと直接または間接的に相互作用することができ、そのようなRIPはNF−κB誘導を含む炎症および細胞生存経路の調節物質として働き、したがって本発明の新規タンパク質はRIP関連炎症および細胞生存活性の調節物質である。同様に、RIPへの結合またはRIPが結合したTRAF2への結合により直接または間接的にNF−κBおよび細胞生存を誘導することができるFAS−R、p55−Rおよびそれらの調節物質タンパク質、MORT−1およびTRADDによって、本発明のタンパク質は、種々の前記タンパク質が細胞生存を誘導する共通のまたは関連する細胞内シグナリング経路を操作することによる細胞生存プロセスの媒介物質でもあり得る。同様に、p75−RはRIPが結合するTRAF2に結合するので、本発明の新規タンパク質はまたp75−R媒介活性のRIP関連媒介の調節物質でもあり得る。
【0026】
本発明の別の目的は、前記新規RAP−2、そのアイソフォーム、類似体、断片および誘導体に対するアンタゴニスト(例えば、抗体、ペプチド、有機化合物またはさらに何らかのアイソフォーム)を提供することであり、所望によりシグナリングプロセス、より特には炎症細胞−細胞傷害または細胞生存プロセスを阻害するために用いてもよい。
【0027】
本発明のさらなる目的は、前記新規RAP−2タンパク質、そのアイソフォーム、類似体、断片および誘導体を用いて、レセプター活性制御に関与するであろうさらなるタンパク質または因子、例えばRAP−2タンパク質に結合したりその活性に影響するようなほかのタンパク質を単離および特徴づけすることおよび/またはこれらの新規タンパク質、類似体、断片および誘導体が結合し、それにより機能的に関与もするシグナリングプロセスの上流または下流のほかのレセプターを単離および同定することである。
【0028】
本発明は、RAP−2機能を調節/媒介することができるRAP−2結合タンパク質も提供する。
【0029】
本発明のなおもさらなる目的は、細胞に導入されRAP−2および可能なRAP−2アイソフォームと結合または相互作用する阻害剤を提供することであり、その阻害剤は細胞傷害プロセスにおいてRIP関連活性を阻害するよう、所望により細胞生存を高めるよう作用するか、または細胞生存プロセスにおいてRIP関連活性を阻害するよう、所望により細胞傷害を高めるよう作用し得る。
【0030】
さらに本発明の目的は、前記新規RAP−2タンパク質、そのアイソフォーム、類似体、断片および誘導体を、それに対するポリクローナルおよび/またはモノクローナル抗体製造のための抗原として用いることである。また、その抗体を、例えば細胞抽出物または形質転換した細胞系などの異なる材料からの新規タンパク質精製のために用いてもよい。
【0031】
さらに、これらの抗体を診断目的で、例えばp55−R、FAS−Rまたはほかの関連レセプターにより媒介される細胞効果の異常な機能に関連する疾患を同定するために用いてもよい。
【0032】
本発明のさらなる目的は、前記新規RAP−2タンパク質、そのアイソフォームまたは類似体、断片または誘導体を含んでなる医薬組成物だけでなく、前記抗体またはほかのアンタゴニストを含んでなる医薬組成物を提供することである。
【0033】
本発明に基づいて、新規タンパク質RAP−2が単離されている。RAP−2はRIPに結合または相互作用することができ、そのためRIP細胞内活性の調節物質または媒介物質である。RIPは細胞内シグナル経路の調節または媒介に関係している。この細胞内シグナル経路は、たとえば、RIPがそれ自身で、およびRIPが、RIPおよびそのタンパク質に存在する「細胞死誘導領域」モチーフ/モジュールを介して直接または間接的方法で会合もしくは結合できる多数のほかの細胞死関連タンパク質、たとえばMORT−1、TRADD、MACH、Mch4、Gl、p55−RおよびFAS−Rと会合して細胞傷害性活性を有する、細胞傷害または細胞死関連経路であり、またRIPが、RIPに存在するキナーゼモチーフまたはドメインの存在と、炎症および細胞生存に中心的な役割を果たすNF−κBの活性化に、結果として直接的に関係するNIKを結合できるTRAF2に結合することができるRIPの能力との直接的または間接的理由で活性化の役割を有する、炎症、細胞生存または生存能力経路であるほかの経路である。さらに、p55−RはTRADDおよびTRAF2(TRADDを介して)と相互作用することもでき、NF−κB活性化と、それによる細胞生存経路とも絡み合い、従ってRIPはFAS−R、TRADDおよびp55−R(TRADDを介して)だけでなく、TRAF2と結合または相互作用することができるので、これらのタンパク質により炎症、細胞生存活性の調節とも絡み合うであろう。従って、RIPはこれらの経路の調節物質または媒介物質であり、同様にRIPに結合する本発明の新規RAP−2はこれらの細胞内経路の調節物質または媒介物質である。
【0034】
RAP−2は、本明細書中以下に詳細が記載されるように、酵母ツーハイブリットシステムを用いて単離およびクローニング、配列決定ならびに特徴づけされ、RAP−2は高特異的RIP結合タンパク質であり、従って特異的RIP調節物質/媒介物質であると考えられる。RAP−2はTRADD、MORT−1、p55−R、p75−RおよびMACHに結合しない。さらにRAP−2は特徴的細胞死誘導領域モジュールまたはモチーフを有さず、このことはRAP−2がそれ自身で細胞傷害を誘導しないという見解と一致すると考えられる。
【0035】
本明細書中いたるところで用いられるように、RIP活性には炎症および細胞死/生存経路の調節/媒介でのその活性が含まれる。これらの活性は本明細書中前記および以下に記載されているばかりでなく、前記刊行物および特許出願にも記載され、その全内容が参考文献により本明細書中に盛り込まれている。同様に、本明細書中いたるところで用いられるように、RAP−2活性にはRIPへのその特異的結合によるRIP活性の調節/媒介が含まれ、このRAP−2によるRIPの調節/メディエーションにはRIPが直接または間接的に関与する炎症、細胞死および細胞生存経路の調節/媒介が含まれ、このようにRAP−2は前記タンパク質および炎症、細胞死または細胞生存に関与し、直接または間接的方法でRIPが結合またはRIPが相互作用することが可能な多数のほかのタンパク質の間接的調節/媒介物質として考えられるであろう。
【0036】
本発明は、ベイト(bait)として全長RAP−2タンパク質配列を用いたツーハイブリッドスクリーニングにより同定される、2つの新規RAP−2結合タンパク質も開示する。
【0037】
ツーハイブリッドスクリーニングでは、ベイトとして全長RAP−2タンパク質を用い、前記または以下に記載するクローン#10(またはクローン#10コードタンパク質またはRAT結合タンパク質#10またはRBP−10)新規RAP−2相互作用タンパク質である。得られたcDNAの配列をさらに当該技術分野で知られる慣用の配列決定方法により5’末端にむかって伸長し、開始コドンは欠くタンパク質の部分的オープンリーディングフレームを再構築した。
【0038】
クローン#10の結合レパートリーのツーハイブリッドアッセイでは、このタンパク質がRAP−2に結合するだけでなく、TRAF2に対してもかなり強い親和性を表すことがわかった。しかしながら、クローン#10はRIP、TRADD、MORT1、MACH、TNFR−I、TIP60およびNIKだけでなく、いくつかのコントロールタンパク質(例えば、ラミンおよびサイクリンD)には結合しなかった。しかしながら、酵母におけるNIKの挙動の特色を考慮して、クローン#10のNIKへの結合がほ乳類細胞においてみられる可能性は排除され得なかった。クローン#10は後者のC末端200アミノ酸内で、すなわちRIP、TIP60、NIKおよびIKKβの結合との関連に必要のない領域でRAP−2を結合すると示された。しかしながら、この配列は不正確で、クローン#10のホモログを同定する目的でジーンバンクサーチを数ラウンド実施した。クローン#10によりコードされるタンパク質に実質的類似度を表す唯一のタンパク質は生理学的役割が決定されていないF40F12.5、線虫(C. Elegans)からの仮説分子であった。
【0039】
興味深いことに、F40F12.5はユビキチン結合プロテアーゼの広範囲に保存されたファミリーのいくつかのメンバーに対し類似性を表すことがわかった。これらの酵素はユビキチン化機構の破壊的効果と平衡し、細胞内タンパク質変性現象の大部分の責任を負うと知られる。ユビキチンリガーゼは変性するタンパク質に対しポリユビキチンツリーを付着することに責任があり、ユビキチンプロテアーゼは成長ツリーの効果的な分枝を防御する。しかしながら、この特別なタンパク質がユビキチンポリマーに対し酵素活性を有するか否かについてはまだ調べられておらず、前記ユビキチン結合プロテアーゼに対する類似性に基づくF40F12.5の機能に関するこのような仮定には問題がある。さらに二点:
a)ユビキチンプロテアーゼのサブクラスのどれかにあるコア触媒領域を構築すると信じられている残基がF40F12.5またはクローン#10のどちらにおいても保存されていない、
b)その触媒部位以外に、種々の種(細菌からヒトまで)由来のユビキチン向プロテアーゼファミリーの酵素が事実上配列類似性を表さず、F40F12.5およびクローン#10はある程度の相同性を表す、
において、このような一致が全く見込みのないものにされている。
【0040】
このように、RAP−2は特異的RIP結合タンパク質であり、従ってRIP細胞内活性の調節物質/媒介物質であると考えられる。RAP−2結合タンパク質は、そのRAP−2結合能により、RIPに対し間接的影響を有し、RIP細胞内活性の調節物質/媒介物質でもある。
【0041】
このように、RAP−2は明らかに、RIPが直接または間接的に関与している炎症、細胞生存および/または細胞死活性、とくに、TNF/NGFレセプターファミリーおよび同様な可能なほかのレセプターによって伝達される刺激を含む、様々な刺激によって生じるまたは誘導される細胞傷害および炎症に関連する炎症、細胞生存および/または細胞死活性の調節/媒介において、役割を有する。
【0042】
またRAP−2はほかのタンパク質、例えばRIPおよびRIPに結合するタンパク質、の複合体の一部として存在することにより細胞傷害および炎症の阻害剤として寄与してもよく、このようにこれらのほかのタンパク質(例えば、p55−R、FAS−R、MACH、Mch4、G1およびMORT−1)の細胞傷害または炎症効果に影響し、最終的にそれらの細胞傷害活性またはその炎症における活性の阻害を導く。
【0043】
なおもRAP−2は前記のようなほかのタンパク質、例えばRIPおよびRIPに結合するほかのタンパク質の活性を増大することにより細胞傷害および炎症のエンハンサーまたは促進剤(augmentor)として寄与してもよく、RIPによるこれらのタンパク質の補充、種々のタンパク質の細胞傷害活性を増大するためまたはその炎症効果を増大するために寄与する補充を目的とする。
【0044】
同様に、類似の方法で、RAP−2は細胞生存経路のRIP関与により前記のようにこの経路の阻害剤または促進剤として寄与してもよい。
【0045】
したがって、本発明は、RIPに結合することおよび、炎症、および/または細胞死および/または細胞生存の調節/媒介であるRIPの細胞内活性を調節または媒介することができる、RIP関連タンパク質(RAP−2)、そのアイソフォーム、断片または類似体をコードするDNA配列を提供する。
【0046】
とくに、本発明は、(a)天然RAP−2タンパク質のコーディング領域由来のcDNA配列、(b)適度に厳しい条件下で(a)の配列にハイブリダイズできる、生物学的に活性なRAP−2タンパク質をコードするDNA配列、ならびに(c)(a)および(b)で定義されたDNA配列への遺伝暗号の結果として変性され、生物学的に活性なRAP−2タンパク質をコードするDNA配列、
からなる群から選択されるDNA配列を提供する。
【0047】
本発明の前記DNA配列のもう1つの特別な実施態様は、RAP−2タンパク質の少なくとも1つのアイソフォームをコードしている配列の少なくとも一部からなるDNA配列である。前記DNA配列のほかの実施態様は、図1に表されたRAP−2タンパク質をコードしている配列である。さらにもう1つの実施態様は図2に表されたDNA配列である。
【0048】
本発明は、本発明の前記配列のいずれかにコードされるRAP−2タンパク質およびその類似体、断片または誘導体を提供する。該タンパク質、類似体、断片および誘導体はRIPに結合することができ、細胞内での細胞死および/または細胞生存経路においてRIPの生物学的活性を調節/媒介することができる。
【0049】
本発明の特別な実施態様は、RAP−2タンパク質、その類似体、断片および誘導体である。図1および2のDNA配列から推定されるRAP−2タンパク質配列は図3に示される。ほかの実施態様は、RAP−2タンパク質のいずれかのアイソフォーム、その類似体、断片および誘導体である。
【0050】
また、本発明によって提供されるのは、前記DNAからなる複製可能な発現ビヒクルであって、これら複製可能な発現ビヒクルは、好適な真核または原核宿主細胞において発現されることができるビヒクル、そのような複製可能な発現ビヒクルを含む、形質転換された真核または原核宿主細胞、およびRAP−2タンパク質、または本発明の類似体、断片もしくは誘導体の製造方法であり、そのような形質転換された宿主細胞を、該タンパク質、類似体、断片または誘導体の発現に好適な条件下で増殖させ、該タンパク質を得るために必要なタンパク質の翻訳後修飾を作用し、該形質転換された細胞の培地からまたは該形質転換された細胞の細胞上清から発現されたタンパク質、アイソフォーム、断片、類似体または誘導体を抽出することからなる製造方法である。前期定義がRAP−2タンパク質のすべてのアイソフォームを含むことを意図している。
【0051】
もう一方の側面では、本発明はまた、本発明のRAP−2タンパク質、ならびにアイソフォーム、断片、類似体および誘導体に特異的な抗体またはその活性誘導体もしくは断片を提供する。
【0052】
本発明のさらなるほかの側面によって、前記DNA配列またはそれらにコードされるタンパク質のさまざまな用途が提供される。本発明に基づき、いずれの用途もほかの間に含まれる。
【0053】
(i)タンパク質RIPによって調節または媒介される、細胞内炎症、細胞死および/または細胞生存経路の調節方法であって、細胞の処理が、RIPに結合することのできる1つまたはそれ以上のRAP−2タンパク質、アイソフォーム、類似体、断片または誘導体で細胞を処理することからなる方法であり、細胞の処理が、1つまたはそれ以上の該タンパク質、アイソフォーム、類似体、断片または誘導体をそれらの細胞内導入に好適な形で細胞に導入すること、またはその1つまたはそれ以上のタンパク質、アイソフォーム、類似体、断片または誘導体をコードしているDNA配列を、その配列を運搬するのに好適なベクターの形で細胞に導入することからなる方法であり、該ベクターが該配列が該細胞で発現するように細胞内にその配列を挿入することができる方法。
【0054】
(ii)前記(i)に基づくRIPタンパク質の作用を介して細胞におよぼす効果によって、TNFファミリーのリガンドに媒介される炎症、細胞死および/または細胞生存経路の調節方法であって、細胞の前記処置が、該細胞中への、前記RAP−2タンパク質、またはアイソフォーム、類似体、断片もしくは誘導体をそれらの細胞内導入に好適な形で細胞に導入すること、または該G1タンパク質、またはアイソフォーム、類似体、断片もしくは誘導体をコードしているDNA配列を、その配列を運搬するのに好適なベクターの形で細胞に導入することからなる方法であり、該ベクターが、該配列が該細胞で発現するように細胞内にその配列を挿入することができる方法。
【0055】
(iii)前記(ii)記載の方法であって、前記細胞への処置が、
(a)FAS−R−またはp55−R−提示細胞の表面上の特異的な細胞表面レセプターに結合できるウイルス表面タンパク(リガンド)をコードしている配列、および該細胞で発現されると、細胞内炎症、細胞死および/または細胞生存経路を調節/媒介することができる、RAP−2タンパク質、ならびにアイソフォーム、類似体、断片および誘導体から選択されるタンパク質をコードしている第2の配列を運搬する組換え動物ウイルスベクターの構築、および
(b)(a)のベクターによる該細胞の感染
の工程からなる、組換え動物ウイルスベクターによる該細胞のトランスフェクションによってなされる方法。
【0056】
(iv)RIPタンパク質の作用を介して細胞におよぼす効果によって、TNFファミリーのリガンドに媒介される炎症、細胞死および/または細胞生存経路の調節方法であって、該細胞を本発明に基づく抗体またはその活性断片もしくは誘導体で処理することからなる方法であり、該処理が、該抗体、その活性断片または誘導体を含む適切な組成物の該細胞への適用によってなされる方法であり、RAP−2タンパク質の少なくとも一部が細胞外表面にさらされているとき、該組成物は細胞外適用として処方され、該RAP−2タンパク質がすべて細胞内であれば、該組成物は細胞内適用として処方される方法。
【0057】
(v)RIPタンパク質の作用を介して細胞におよぼす効果によって、TNFファミリーのリガンドに媒介される炎症、細胞死および/または細胞生存経路の調節方法であって、本発明のRAP−2タンパク質配列の少なくとも一部に対するアンチセンス配列をコードしているオリゴヌクレオチド配列で該細胞を処理することからなる方法であり、該オリゴヌクレオチド配列がRAP−2タンパク質の発現を妨害することのできる方法。
【0058】
(vi)前記(ii)記載の腫瘍細胞もしくはHIV感染細胞またはほかの疾病細胞の治療方法であって、
(a)特異的な腫瘍細胞表面レセプターもしくはHIV感染細胞表面レセプターまたはほかの疾病細胞によって保持されたレセプターに結合できるウイルス表面タンパクをコードしている配列、および本願発明の、該腫瘍細胞、HIV感染細胞、またはほかの疾病細胞で発現されると、RIPタンパク質の作用を介して該細胞を殺傷することができる、RAP−2タンパク質、類似体、断片および誘導体から選択されるタンパク質をコードしている配列を運搬する組換え動物ウイルスベクターの構築、および
(b)(a)のベクターによる、該腫瘍もしくはHIV感染細胞またはほかの疾病細胞の感染
からなる方法。
【0059】
(vii)RIPタンパク質の作用を介して細胞におよぼす効果によって、TNFファミリーのリガンドに媒介される炎症、細胞死および/または細胞生存経路の調節方法であって、本発明に基づくRAP−2タンパク質をコードしている細胞mRNA配列と相互作用することができるリボザイム配列をコードしているベクターを、細胞におけるリボザイム配列の発現を可能にする形で細胞に導入する、リボザイム手法の適用からなる方法であり、該リボザイム配列が細胞中で発現すると、細胞mRNA配列と相互作用し、mRNA配列を開裂させ、結果として該細胞でのRAP−2タンパク質の発現を阻害する方法。
【0060】
(viii)本願発明に基づき前記方法から選択される方法であって、前記RAP−2タンパク質をコードしている配列が、少なくともRIPに結合できる本発明に基づくRAP−2アイソフォーム、そのいずれかの類似体、断片および誘導体の1つである方法。
【0061】
(ix)本発明に基づくRIPタンパク質に結合できるタンパク質の単離および同定方法であって、RIPをコードしている配列が1つのハイブリッドベクターによって運搬され、cDNAまたはゲノムDNAライブラリーの配列が第2のハイブリッドベクターに運搬され、ついでベクターが酵母宿主細胞を形質転換するために使用され、正の形質転換された細胞が単離され、そののち該RIPタンパク質に結合するタンパク質をコードしている配列を得るため前記第2のハイブリッドベクターの抽出する、酵母ツーハイブリッド手法の適用からなる方法。
【0062】
(x)前記(i)−(x)のいずれか記載の方法であって、RAP−2タンパク質がRAP−2のアイソフォームのいずれか、それらいずれかの類似体、断片および誘導体である方法。
【0063】
(xi)前記(i)−(x)のいずれか記載の方法であって、RAP−2タンパク質またはそのアイソフォーム、類似体、断片および誘導体のいずれかが、RAP−2タンパク質、アイソフォーム、類似体、断片または誘導体が直接または間接的に結合できるほかの媒介物質または誘導物質によって媒介または調節される細胞効果の調節に関与する方法。
【0064】
本発明はまた、前記、RIPタンパク質の作用を介して細胞におよぼす効果または、ほかの媒介物質または誘導物質の細胞におよぼす効果によって、TNFファミリーのリガンドに媒介される炎症、細胞死および/または細胞生存経路の調節するための医薬組成物であって、以下のいずれかひとつの活性成分からなる医薬組成物を提供する。
【0065】
(i)本発明に基づくRAP−2タンパク質、およびその生物学的活性断片、類似体、誘導体またはその混合物、
(ii)本発明に基づく細胞表面レセプターに結合できるたんぱく質、RAP−2タンパク質、およびその生物学的活性断片または類似体をコードしている組換え動物ウイルスベクター含む医薬組成物、
(iii)本発明に基づくRAP−2タンパク質配列のアンチセンス配列をコードしているオリゴヌクレオチド配列であって、該オリゴヌクレオチドが、(ii)記載の組換え動物ウイルスベクターの第2配列であってもよいオリゴヌクレオチド配列。
【0066】
本発明はまた、
I.RIPによって、またはほかの媒介物質または誘導物質の細胞におよぼす効果もしくはほかのNF−κB誘導物質または阻害剤の細胞におよぼす効果によって調節/媒介される炎症、細胞内細胞死および/または細胞生存経路の調節方法であって、前記(i)−(x)のいずれかひとつの方法に合わせて、RAP−2タンパク質、そのアイソフォーム、類似体、断片もしくは誘導体で、またはRAP−2タンパク質、アイソフォーム、類似体、断片もしくは誘導体をコードしている配列で、細胞を処理することからなる方法であり、該処理の結果として、RIPに媒介される効果が増強または阻害され、それによって、またFAS−Rもしくはp55−Rに媒介される効果、またはほかの媒介物質もしくは誘導物質またはほかのNF−κB誘導物質もしくは阻害剤の効果が増強または阻害される方法。
【0067】
II.RAP−2タンパク質、その類似体、断片または誘導体が、とくにRIP、ほかの媒介物質もしくは誘導物質、またはほかのNF−κB誘導物質もしくは阻害剤への結合に関係しているRAP−2タンパク質の一部である前記方法であって、該RAP−2タンパク質配列が、とくにRIP、ほかの媒介物質もしくは誘導物質、またはほかのNF−κB誘導物質もしくは阻害剤への結合に関係しているRAP−2タンパク質の一部の配列である方法。
【0068】
III.前記RAP−2タンパク質がRAP−2アイソフォームのいずれかである前記方法であって、該アイソフォームがRIP関連効果を増強することのできる方法。
【0069】
IV.前記RAP−2タンパク質がRAP−2アイソフォームのいずれかである前記方法であって、該アイソフォームが、RIP関連効果、または細胞におよぼすほかの媒介物質もしくは誘導物質関連効果を阻害することができ、それによって細胞におよぼすFAS−Rもしくはp55−R関連効果、または細胞におよぼすほかの細胞傷害性媒介物質もしくは誘導物質の効果も阻害することのできる方法。
【0070】
V.前記RAP−2タンパク質、アイソフォーム、類似体、断片または誘導体NF−κBの直接もしくは間接的阻害またはJNKおよびp38キナーゼの直接もしくは間接的活性化による炎症および細胞生存経路におよぼすRIP関連効果を増強または阻害することのできる前記方法。
【0071】
RAP−2タンパク質の単離、その同定およびキャラクタリゼーションは、タンパク質を単離および同定するために使用されるいずれかの標準的なスクリーニング技術、たとえば酵母ツーハイブリット法、アフィニティークロマトグラフィー、およびこれらの目的に使用されるほかのよく知られた標準的な手法のいずれかで実行してもよい。
【0072】
また本発明のほかの側面では、RAP−2タンパク質それ自身、またはそのアイソフォーム、断片もしくは誘導体が、それらに結合するタンパク質の酵母ツーハイブリットスクリーニングにおいて、ベイトとして使用される。
【0073】
RAP−2、そのアイソフォーム、断片または誘導体に結合するタンパク質もまた、本発明の一部である。
【0074】
本発明のほかの側面および実施態様もまた、以下の本発明の詳細な説明から生じるものとして提供される。
【0075】
いたるところで用いられる以下の用語:「細胞におけるRIPまたはFAS−リガンドまたはTNF効果の調節/メディエーション」および本明細書に記載されるほかのこのような「調節/メディエーション」とは、インビトロだけでなくインビボ処理を包含し、さらに阻害、増加/増大を包含するとも解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】図1(配列番号1)は、RAP−2のヌクレオチド配列、下線を引いた開始コドンおよび終結コドンを表す。矢印はツーハイブリッドスクリーニングにより得られる1.5Kbクローンの開始を示す。
【図2】図2(配列番号2)は、クローン#41072(実施例1参照)のヌクレオチド配列、下線を引いた開始コドンおよび終結コドンを表す。
【図3A】図3Aは、RAP−2のヒト(20.4全長およびヒト shrt)およびマウス(NEMO全長およびマウス part)スプライス型の推定アミノ酸配列を示す。
【図3B】図3BはBCM サーチランチャー(Search Launcher)(ベイラー薬科大学(Baylor Collage of Medicine)、ヒューストン、テキサス州(TX))で入手可能なソフトウェアパッケージを用いて並べたFIP−2の公開された配列を表す。相同アミノ酸を囲み、同一アミノ酸に陰をつけた。アスタリスクはFIP−2の推定ロイシンジッパー(LZ)様モチーフを記す。
【図4A】図4Aは、RAP−2の分子特徴を示す図であり、ヒトMTN Blot I(Clontech)の RAP−2 DNAフラグメントを用いたノーザンブロットハイブリダイゼーションを示す。
【図4B】図4Bは、RAP−2の分子特徴を示す図である。RIPに結合したRIP−2を実施例3に詳述するように分析する。矢印は免疫沈降したタンパク質の位置を記す。
【図4C】図4Cは、RAP−2の分子特徴を示す図である。抗FLAG抗体をウェスタンブロッティングに用いたのち、抗His6で免疫沈降した以外は、NIK−RAP−2相互作用を図4Bのように検出した。矢印は免疫沈降したタンパク質の位置を記す。
【図5A】図5Aは、実施例4に記載したRAP−2の異所性発現により、種々の刺激によるNF−κBおよびc−Jun活性化の大規模なダウンレギュレーションを図で表す。HEK−293T細胞を一時的にリポータープラスミド(NF−κB(A)についてはHIVLTR−LucまたはCMV−Lucおよびc−Jun(B)活性化アッセイについてはGAL4−Luc)および示した誘導物質についての発現ベクターおよび空のビヒクル(pcDNA3、図に単独で記した)または全長RAP−2をコードするプラスミド(pcRAP−2、図に記したプラス)のどちらかを用いてトランスフェクションした。リポーター遺伝子ルシフェラーゼ活性の活性化を相対ルシフェラーゼユニット(R.L.U.)で表す。
【図5B】図5Bは、実施例4に記載したRAP−2の異所性発現により、種々の刺激によるNF−κBおよびc−Jun活性化の大規模なダウンレギュレーションを図で表す。HEK−293T細胞を一時的にリポータープラスミド(NF−κB(A)についてはHIVLTR−LucまたはCMV−Lucおよびc−Jun(B)活性化アッセイについてはGAL4−Luc)および示した誘導物質についての発現ベクターおよび空のビヒクル(pcDNA3、図に単独で記した)または全長RAP−2をコードするプラスミド(pcRAP−2、図に記したプラス)のどちらかを用いてトランスフェクションした。リポーター遺伝子ルシフェラーゼ活性の活性化を相対ルシフェラーゼユニット(R.L.U.)で表す。
【図6A】図6Aは、RAP−2が高濃度範囲でNF−κB向類似の抑圧の動きを表すことを示す。TRAF2をHEK−293T細胞で種々の記載する量のpcRAP−2(センス)またはpcRAP−2−a/s(アンチセンス)構築物のどちらかと一緒に一時的に発現させた。NF−κB活性化を評価するため、pHIVLTR−Lucリポータープラスミドをそれぞれ含ませた。実施例4で図5に記載したようにルシフェラーゼアッセイを行った。
【図6B】図6Bは、RAP−2が高濃度範囲でc−Jun向類似の抑圧の動きを表すことを示す。TRAF2をHEK−293T細胞で種々の記載する量のpcRAP−2(センス)またはpcRAP−2−a/s(アンチセンス)構築物のどちらかと一緒に一時的に発現させた。c−Jun活性化を評価するため、pGAL4−Lucリポータープラスミドをそれぞれ含ませた。実施例4で図5に記載したようにルシフェラーゼアッセイを行った。
【図7A】図7Aは、RAP−2がJNK1/2活性化レベルで妨害されることなく、強力にc−Junのシグナル誘導リン酸化を強化することを示す。マイナス印(−)で図に示したpcDNA3キャリアまたはプラス印(+)で図に示したpcRAP−2と共に記載した発現構築物でトランスフェクションしたHEK−293T細胞の細胞ライゼート全体を、実施例5に記載した抗ホスホJun抗体を用いてウェスタンブロット分析により特定した。下のパネルに表すコントロールメンブレンを抗全c−Jun Absで再プローブした(NEB)。
【図7B】図7Bは、RAP−2がJNK1/2活性化レベルで妨害されることなく、強力にc−Junのシグナル誘導リン酸化を強化することを示す。pcDNA3またはpcRAP−2のどちらかでトランスフェクションし、時間をのばすためhrTNFαで処理したHEK−293T細胞由来活性化JNK1/2を、実施例5に詳述するようにホスホJNKに対するAbsを用いた総ライゼートのウェスタンブロッティングにより検出した。
【図7C】図7Cは、RAP−2がJNK1/2活性化レベルで妨害されることなく、強力にc−Junのシグナル誘導リン酸化を強化することを示す。HA−JNK1発現プラスミドと共に空のベクター、pcRAP−2およびpcRIPを用いて同時トランスフェクションしたHEK−293T細胞。つぎにJNK1を、そのN末端HA−tagを介して免疫沈降し、リン酸化細菌産生精製GST−Junに対するその能力をインビトロキナーゼアッセイで決定した。反応産物をSDS−PAGEにより分析した。GST−Junを矢印により印する。
【図8A】図8Aは、RAP−2がDNAへの結合についてAP−1と競合しないことを示す。HEK−293Tを記載したタンパク質で単独で(−)またはpcRAP−2とともにトランスフェクションした。細胞から調製した核抽出物をAP−1の古典(classical)認識配列を含んでなる32P標識オリゴヌクレオチドとともにインキュベートした。反応産物を非変性PAGEにより分析した。
【図8B】図8Bは、RAP−2がDNAへの結合についてNF−κBと競合しないことを示す。HEK−293Tを記載したタンパク質で単独で(−)またはpcRAP−2とともにトランスフェクションした。細胞から調製した核抽出物をNF−κBの古典認識配列を含んでなる32P標識オリゴヌクレオチドとともにインキュベートした。反応産物を非変性PAGEにより分析した。
【図9A】図9Aは、変動量RAP−2(センス)またはRAP−2アンチセンス(a/s)のどちらかでトランスフェクションしたHEK−293TにおけるNF−κBの基本レベルにRAP−2が影響することを示す。
【図9B】図9Bは、変動量RAP−2(センス)またはRAP−2アンチセンス(a/s)のどちらかでトランスフェクションしたヒーラ細胞におけるNF−κBの基本レベルにRAP−2が影響することを示す。
【図10】図10(配列番号3)は、クローン#10の部分的ヌクレオチド配列を示す。
【図11A】図11Aは、RAP−2のシリアル欠失の機能的特徴を示す。RAP−2の連続的C末端欠失の略図表示である。すべて無傷のRAP−2N末端を共にし、そのC末端を矢印により設計した。RIP、NIK、IKKβおよびTIP60結合領域に下線を引いた。3つのハッチ付け囲みは推定ロイシンジッパー様モチーフに対応する。
【図11B】図11Bは、RAP−2のシリアル欠失の機能的特徴を示す。NF−κBのためのHIV−LTRルシフェラーゼリポータープラスミドを用いたRelA、TRAF2 TNFおよびNIKによるHEK−293T細胞のNF−κBについてのAに記載の欠失構築物の過剰発現の効果を示す。リポーター遺伝子ルシフェラーゼ活性の活性を相対ルシフェラーゼユニット(R.L.U.)で表す。
【図12A】図12Aは、RAP−2機能と結合領域のマッピングを示す。RAP−2の種々の欠失をトランスフェクションした酵母(片方のカラム)およびほ乳類HEK−293T細胞(もう片方のカラム)内のその記載したタンパク質結合能について試験した。2つの最良カラムは実施例9に詳述するHEK−293T細胞への高量トランスフェクション同一欠失能を示し、TNFα処理に応答するNF−κB活性を阻害し、c−Jun高リン酸化(c−Jun)を強化する。目立たせたクロスは与えられる効果の強さに比例する。アスタリスクはRelA刺激に対する標識構築物の観察される効果が異なることを示す(図11B参照)。
【図12B】図12Bは、RAP−2機能と結合領域のマッピングを示す。図12Aに示す欠失分析から推定され、タンパク質骨格にあわせて並べたRAP−2の結合(上部)および機能(底部)領域のローカリゼーションを表すチャートの要約。ハッチを付した部分は最小領域に対応する境界の可能な位置を示す。
【図13】図13は、RAP−2のser−148がser−63でのc−Jun高リン酸化誘導能に必須であることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0077】
本発明は、ある観点では、RIPタンパク質に結合し、それにより、特にRIPは本明細書中前記詳述するような炎症、細胞死および/または細胞生存経路の調節または媒介に関与する、RIPの細胞内活性を媒介または調節することができる、新規RAP−2タンパク質に関する。このようにRAP−2は細胞死/炎症生存経路におけるRIP活性を阻害してもよく、RAP−2は炎症または細胞死生存経路のRIP活性を高めるか、これらの経路の1つにおいてRIP活性を高める一方で他方を阻害してもよい。
【0078】
より特には、本発明に従えば、新規タンパク質RAP−2が提供される。RAP−2は配列決定され、特徴付けられ、RAP−2はRIPに対し高い特異性を有するRIP結合タンパク質であるが、炎症、細胞死または細胞生存を導く細胞内シグナリング経路に関与すると知られる多数のタンパク質には結合しないことがわかった。またRAP−2はこれらの経路のどれかで活性であるタンパク質に共通のドメインを有しないことも明らかであり、すなわちRAP−2は「細胞死誘導領域」モチーフまたはモジュールを有さず、キナーゼモチーフまたはドメインを有さず、かつプロテアーゼドメインまたはモチーフも有しない。決定したRAP−2配列はジーンバンク、ヒューマンゲノム レベル1および「dbest」データベースといった多数のデータベースの配列と比較するとわかる独特の配列でもある。前記詳述したように(記載した刊行物および特許出願全ても参照して)、RIPは細胞内炎症、細胞死および細胞生存経路に関与する。したがって、RIP活性の制御またはコントロールはこのような経路が開始されると、これらの経路、例えばTNFまたはFAS−リガンドのそれらのレセプター(特にTNFについて、p55−R)への結合のどれかまたは全てを制御する。RIPはどの経路がより広範囲に活性化されるかを決定することにおいて、細胞死誘導領域を有する多数の細胞傷害タンパク質およびキナーゼ活性を有する多数のタンパク質をも結合することができるおかげで、重要な役割を担い得る。従って、本発明のRAP−2タンパク質のようなRIPに特異的に結合することができるタンパク質は、RIP活性を調節し、それによりほかに比べてある経路の誘導範囲を調節することにおいて重要な役割を担い得る。このように、本発明のRAP−2タンパク質は重要な細胞内シグナル調節物質または媒介物質である。
【0079】
本発明のRAP−2全長タンパク質に加えて、より短いcDNAがクローニングされ、明らかに同じ遺伝子の二者択一的スプライシングにより生じる、「全」cDNAのいくらか離れた領域由来の配列「ブロック」が構成されることがわかった。ヒトRAP−2のマウス版がマウスESTコレクションの同様サーチで特定された。部分的マウスcDNAはヒト版にそのコード領域のいたるところで事実上同一であることがわかった。
【0080】
さらにRIP−RAP−2相互作用の生理学的関連を、トランスフェクションしたHEK−293Tおよびヒーラ細胞で確認した。しかしながら、過剰発現RIP非リン酸化RAP−2により証明されるように、このような複合体の形成はRIP酵素活性を導かなかった。
【0081】
ほ乳類HEK−293T細胞でのトランスフェクション実験でもRAP−2−NIK複合体の安定な形成が得られた。
【0082】
RAP−2は、NIK、IKKβおよびTIP60(ヒストン アセチルトランスフェラーゼ)に結合し、NF−κBおよびc−Jun依存転写を調節するため、NF−κBおよびc−Junシグナル変換経路の重大な要素であるようだ。実際、RAP−2の異所性発現が高まると、NF−κB応答の阻害を導き、一方アンチセンス構築物による細胞からの涸渇はNF−κBおよびc−Junトランス活性化を高める結果となる。
【0083】
RAP−2は、JNK活性により媒介されないc−Jun高リン酸化を強化することもわかった。RAP−2はDNAに結合するc−JunおよびRelAを阻害しなかった。RAP−2の結合および機能ドメインを配列欠失分析により同定した。これらの研究によりRIP、NIKおよびTIP60に対する結合領域は重なり、RAP−2のアミノ酸95〜264内に見いだされることが示された。しかしながら、RAP−2により媒介されるダウンレギュレーション機能効果はタンパク質のN末端ドメインに位置し、アミノ酸1〜264を包含することがわかった。
【0084】
前記観点で、RAP−2はストレス応答ネットワークのシグナル減衰循環の重大な要素であると考えられ、つまりセンスコード構築物の異所性発現が応答を阻害し、一方アンチセンスコード構築物の発現が応答を高める。実際、RAP−2は本発明者らの研究室ではRAT(RIPのアテニュエーター(attenuator))としても知られ、従ってRATおよび/またはRAT−303および/またはクローン303として本明細書中記載されることもある。
【0085】
多重スプライス変異型(multiple splice variant)の存在は、少なくとも部分的に、与えられる条件下でのRAT−2の正味の効果が、有力なアイソフォームで、タンパク質結合/ターゲティング/トランスロケーション/修飾に必要である、特定配列ブロックの存在に依存することを示す。例えば、必要に応じ、RAT−2のTIP60への結合は前者の核局在化を可能とし、スプライスアウト核局在化シグナル(NLS)を用いたRAP−2の変異型は、NF−κB/AP−1抑圧において不完全または逆に、過度に活性となるかもしれないと仮説された。配列分析では、RAP−2はほとんどの既知NLSに特徴的ないくつかの正荷電アミノ酸(E、KおよびR)のクラスターを収容することを示す。
【0086】
RIPへのRAP−2結合はRAP−2タンパク質の領域にマッピングされ、アミノ酸177〜218の間で始まり、アミノ酸264で終結する。RAP−2内のRIP結合ドメインはIKKβまたはNIK結合部位のどちらにも重ならなかった。
【0087】
TIP60への結合では、ヒストンアセチルトランスフェラーゼと呼ばれる核タンパク質ファミリーのメンバーが、明らかにアミノ酸95〜264におよぶある領域内にマッピングされる。ホモ二量化に関与する領域がアミノ酸217〜264間に位置することがわかった。
【0088】
蓄積したデータは、RAP−2の全機能効果(すなわち、NF−κB阻害およびc−Jun高リン酸化の誘導)が同じ領域にマッピングされることを示唆する。
【0089】
クローン#10によりコードされるタンパク質は、明らかにアミノ酸218〜309間に始まりアミノ酸416で終結する領域内で結合し、その結合部位はRIP、NIK、IKKβおよびTIP60に対する結合部位を伴う重複領域からなるであろう。
【0090】
さらに、全ての誘導物質によるシグナリングの効果的な調節に充分な領域が、タンパク質のN末端部分に位置することが可能である。
【0091】
アミノ酸95〜416を包含する領域は、全長タンパク質により引き起こされる効果に比べるとかなり弱いものの効果を有する、このように、内在性RAP−2の補強した凝集に起因し得る。
【0092】
さらに、RelAを除いて、我々の実験により得られた全効果はRAP−2の約100N末端アミノ酸ほどにより媒介されうる。実際、アミノ酸1〜102を包含する断片でさえ、はっきりと加減するにもかかわらず、異なる効果を媒介する。
【0093】
他方、RelA媒介効果の抑制にはRAP−2のかなり長い部分が要求される。これまでのところ、本発明者らは、明らかに、アミノ酸157と264の間の領域に何らかの特異性、RelA関連、結合特性を与える、アミノ酸1〜264内のこの領域の境界を決定した。
【0094】
前記観察観点により、以下のaおよびbが考えられる。
a.RelAを除いて、RIP、クローン#10ならびにより可能なNIKおよびTIPへのRAP−2結合は、NF−κBを導く過剰発現の阻害剤としてのタンパク質の機能に要求されない。
b.RelA過剰発現誘導活性化についてのRAP−2の効果は明らかに、異なる結合現象によって少なくとも部分的に媒介される。本質的には、前記タンパク質のすべてが、特にこれまでに実施した実験から導かれるように、与えられた活性に寄与することが見いだされ得る。
【0095】
細胞死を引き起こすFAS−RおよびTNFレセプターの個性的な能力だけでなく、様々なほかの組織損傷活性を惹起するTNFレセプターの能力により、これらのレセプター機能の異常は特に生物に有害となりうる。実際、これらのレセプターの過剰なおよび不充分な機能はどちらも種々の疾患の病理学的徴候に寄与すると示された。これらのレセプターのシグナリング活性に関与する分子を同定すること、およびこれらの分子の機能を調節する方法を見いだすことは、これらの疾患への新しい治療学的アプローチのための有力な助けとなる。FAS−Rおよびp55−R細胞傷害におけるRIPの推測される重要な役割、そしてRIPの調節を介したFAS−RおよびTNFにおけるRAP−2の推測される重要な制御の役割を鑑み、可能性としてRAP−2がRIP媒介細胞傷害を高めるために作用する条件下(前記のように、RIPはそれ自身でおよび細胞死誘導領域を有するほかのタンパク質との結合により細胞傷害性を有する)、RAP−2のRIPへの結合をブロックすることにより、さもなければRAP−2とRIP間の相互作用を阻害することにより、RIPの細胞傷害機能をブロックしうる医薬を設計することが特に重要と思われる。
【0096】
同様に、FAS−Rおよびp55−RがNF−κBの活性化に関与し、それにより細胞生存の活性化に関与することも(前記のように)知られている。従って、細胞、例えばがん細胞、HIV感染細胞などを殺そうとする場合は、FAS−Rおよびp55−R(および例えば、MORT−1、MACH、Mch4、G1、TRADDなどのその関連タンパク質)の細胞傷害効果を高め、一方同時にそれらのNF−κB誘導能を阻害することが望まれるであろう。よって、RIPへのRAP−2相互作用または結合が結果としてNF−κB誘導を高めるRIPの可能な役割の増大を引き起こし(TRAF2を介してもよいし、キナーゼドメインおよび/またはRIPの中間体ドメインを介してもよい)、つぎにRAP−2とRIP間のこの相互作用をブロックしてNF−κB活性化を阻害、または少なくとも増大を防御し、それによりTNFまたはFAS−リガンド誘導効果のバランスを細胞傷害側から最終的に細胞死増大を提供する側へシフトする。
【0097】
同様に、RIPへのRAP−2結合が実際にFAS−Rおよびp55−R炎症または細胞傷害効果の阻害を引き起こすような反対の状況(前記状況に対し)において、例えば細胞生存増大が求められるような、炎症、種々の自己免疫疾患などではこれらの細胞傷害効果をブロックし、つぎにRAP−2とRIP間の相互作用を高めて細胞死の阻害全体を高め、細胞生存の方へバランスをシフトする薬剤をデザインすることが重要である。RAP−2のRIPとの相互作用が、RIPのNF−κB活性を高める機能の阻害を引き起こし、細胞生存を望む場合は、RAP−2とRIP間のこの相互作用をブロックすることが必要であり、それによりNF−κB活性を増大するRIP活性を高めるという事象は前記から明らかである。
【0098】
前記全体からみて、RIPは炎症、細胞死または細胞生存経路の誘導または媒介間のバランスにおいて重要な役割を果たし、したがって、RAP−2はRIPの調節物質として等しく重要な役割を有することがわかる。前記および以下に記載するような種々の薬剤または治療を用いてRAP−2−RIP相互作用/結合へ影響を与えることは、細胞死から細胞生存へ、または所望によりその逆へ細胞内シグナリング経路にシフトを与えることを可能とするであろう。
【0099】
本発明はまた、RAP−2タンパク質をコードしているDNA配列およびそのDNA配列によってコードされるRAP−2タンパク質に関する。
【0100】
そのうえさらに本発明は、RAP−2タンパク質の生物学的に活性な類似体、断片、および誘導体をコードしているDNA配列、ならびにそれによってコードされる類似体、断片および誘導体に関する。このような類似体、断片および誘導体は、天然のタンパク質に関して少なくとも1つのアミノ酸残基の変更を有する類似体を産生するために、RAP−2タンパク質をコードしているDNA配列中、1つまたはそれ以上のコドンを欠失させ、付加し、または他と置換させることができる標準的な手法(たとえば、Sambrook et al., 1989参照)によって製造される。
【0101】
RAP−2タンパク質、アイソフォーム、類似体、断片または誘導体をコードする本発明の前記DNA配列の中で、天然RAP−2タンパク質のコード領域に由来するcDNA配列とハイブリダイズすることができ、そのようなハイブリダイゼーションが適度に厳しい条件下で行なわれ、ハイブリダイズ可能なDNA配列が生物学的に活性なRAP−2タンパク質をコードするようなDNA配列も、本発明の一様態として含む。したがって、これらのハイブリダイズ可能なDNA配列は、天然RAP−2タンパク質cDNA配列に比較的高い相同性を有するDNA配列、およびたとえば、様々なRAP−2タンパク質アイソフォームをコードしている天然由来の配列、またはRAP−2タンパク質の活性を有するタンパク質をコードしているRAP−2タンパク質様配列の群に属するタンパク質をコードしている天然由来配列であり得るRAP−2タンパク質様配列に相当するDNA配列を含む。さらに、これらの配列はまた、たとえば天然RAP−2cDNA配列に類似するが多数の所望の修飾が組み込まれている非天然であり、合成的に産生された配列も含んでよい。このような合成配列はしたがって、すべてがRAP−2の活性を有する、RAP−2の類似体、断片、および誘導体をコードし得る配列のすべてを含む。
【0102】
様々な前記天然に存在するRAP−2様配列を得るために、様々な組織からの天然由来DNAまたはRNA試料のスクリーニングおよび単離の標準的な手順は、プローブとして天然のRAP−2cDNAまたはその部分を用いておこなってよい(たとえばSambrook et al., 1989に示されている標準的な手順を参照)。
【0103】
同様に、RAP−2の類似体、断片または誘導体をコードする前記種々の合成RAP−2様配列を製造するために、多くの標準的な手法が、このような類似体、断片および誘導体の製造に関して本明細書異化に詳述されるように、用いられ得る。
【0104】
RAP−2タンパク質に「実質的に相当する」ポリペプチドまたはタンパク質は、RAP−2タンパク質だけでなくRAP−2の類似体であるポリペプチドまたはタンパク質を含む。
【0105】
RAP−2タンパク質に実質的に相当する類似体は、もし結果得られるタンパク質が、それが相当するRAP−2タンパク質と同じかまたはより高い生物学的活性を実質的に示すならば、RAP−2タンパク質のアミノ酸配列の1つまたはそれ以上のアミノ酸が、他のアミノ酸に置換され、欠失され、および/または挿入されているポリペプチドである。
【0106】
実質的にRAP−2タンパク質に相当するために、アイソフォームのようなRAP−2タンパク質の配列の変更は、一般的に比較的少数である。変更の数が10以上であってもよいが、好ましくは10以下の変更であり、さらに好ましくは5以下であり、もっとも好ましくはそのような変更が3以下である。任意の技術を実質的にRAP−2タンパク質に相当する潜在的に生物学的に活性なタンパク質を発見するために使用できる一方、そのような技術の1つは、結果としていくつかの修飾を生じる、タンパク質をコードしているDNA上での従来の突然変異誘発技術を使用することである。ついで、このようなクローンによって発現されたタンパク質は、RIPに結合し、そして前記した細胞内経路の調節/媒介においてRIP活性を調節するそれらの能力に対してスクリーニングできる。
【0107】
「保存的な」変更は、タンパク質の活性を変化させることが予想されない保存的な変更である。通常、これらはタンパク質のサイズ、電荷または立体配置を実質的に変更することが予想されず、したがってその生物学的特性を変更することが予想されないようにスクリーニングすることが第一である。
【0108】
RAP−2タンパク質の保存的な置換は、ポリペプチドの少なくとも1つのアミノ酸残基が異なるアミノ酸によって保存的に置き換わるような類似体を含む。そのような置換は、好ましくは表IAにあるような以下のリストにしたがって作製し、その置換は、RAP−2タンパク質の生物学的活性特性を保ったまま、合成ポリペプチド分子の修飾された構造的および機能的特性を提供するための決まりきった実験によって決定してよい。
【0109】
【表1】
【0110】
あるいはまた、RAP−2タンパク質の置換の別の群では、ポリペプチド内の少なくとも1つのアミノ酸残基が除かれており、表IBにしたがってその代わりに異なる残基が挿入されている。ポリペプチド内でなされ得る置換の型は、Schulz et al., G. E., Principles of Protein Structure Springer-Verlag, New York, NY, 1798の表1−2およびCreighton, T. E., Proteins:Structure and Molecular Properties, W. H. Freeman & Co., San Francisco, CA 1983の図3−9に示されたように、異なる種の相同タンパク質との間のアミノ酸変更の頻度の解析に基づいてよい。このような解析に基づいて、代替の保守的置換(alternative conservative substitutions)が、以下の5つの群の1つで交換するとして本明細書中に定義される。
【0111】
表 1 B
1.小さい脂肪族、非極性またはわずかに極性残基:Ala、Ser、Thr
(Pro、Gly);
2.極性負荷電残基およびそれらのアミド:Asp、Asn、Glu、
Gln;
3.極性正荷電残基:
His、Arg、Lys;
4.大きい脂肪族非極性残基:
Met、Leu、Ile、Val(Cys);および
5.大きい芳香族残基:Phe、Tyr、Trp
【0112】
前記かっこ内の3つのアミノ酸残基はタンパク質構造において特別な役割を有する。グリシン(Gly)は側鎖を欠く唯一の残基であり、したがって鎖に柔軟性を与える。これはしかし、α−ヘリックス以外の2次構造の形成を促進する傾向にある。いくつかの場合、システイン(Cys)はタンパク質の折りたたみに重要であるジスルフィド結合形成に参加することができるが、プロリン(Pro)はその特異なジオメトリー(geometry)のため、鎖を強固に拘束し、一般的にβ−ターン様構造を促進する傾向にある。Schulz et al.,が前記でグループ1および2にまとめたことに注意すること。またチロシン(Tyr)はその水素結合能力により、セリン(Ser)およびスレオニン(Thr)などと明らかな類似関係にあることも注意するべきである。
【0113】
たとえば前にあるように、本発明による保存的なアミノ酸置換は当業者に知られており、アミノ酸置換後にポリペプチドの生物学的および構造的な特性を保つことが予想されるであろう。本発明によるほとんどの欠失および置換は、タンパク質またはポリペプチド分子の特徴に根本的な変更を生じないものである。「特徴」は、たとえばRIPへの結合および/または細胞死におけるRIP効果の媒介のような生物学的活性の変更だけでなく、たとえばα−ヘリックスまたはベータシートのような2次構造の変更の両方を定義するための非包括的方法(non-inclusive manner)で定義される。
【0114】
本発明における用途としてのRAP−2タンパク質の類似体を入手するために使用できるタンパク質のアミノ酸置換の産生の実施例は、Mark et al.に付与された米国特許第RE33,653号、第4,959,314号、第4,588,585号および第4,737,462号;Koths et al.に付与された第5,116,943号、Namen et al.に付与された第4,965,195号;Chong et al.に付与された第4,879,111号;Lee et al.に付与された第5,017,691号;および米国特許第4,904,584号(Shaw et al.)にあるリジン置換タンパク質などにあるように任意の既知の方法工程を含む。
【0115】
RAP−2タンパク質の活性を顕著にではなく変更した前記保存的な置換に加えて、RAP−2タンパク質の類似体の生物学的活性の増加を引き起こす保存的な置換またはほとんど保存的でない置換およびランダムな変更のどちらも、本発明の範囲に含むことが意図される。
【0116】
置換または欠失の正確な効果が認められたとき、当業者は置換、欠失などの効果が結合と細胞死の決まりきった検定によって評価されるであろうことを理解するであろう。このような標準試験を用いるスクリーニングは過度の実験を含まない。
【0117】
許容可能なRAP−2類似体は、少なくともRIPに結合する能力を保ち、それにより前記細胞内経路においてのRIP活性を前記のように媒介する。このような系において、いわゆるドミナントネガティブ効果を有する類似体、すなわちRIPへの結合、または後のシグナリングもしくはそのような結合に引き続く他の活性のいずれかにおいて欠陥のある類似体を産生できる。このような類似体は、たとえば、RIPの効果を阻害するために、またはRIPの効果を誘導する(直接的または間接的)NF−κBを阻害するために、これらの活性のいずれがRAP−2とRIPの相互作用によって調節される主要なものであるかどうか(前記を参照)、およびいずれが、RIPとの結合に対して天然RAP−2タンパク質と競合しているこれらの類似体によって調節される主要なものであるかどうかに依存しながら使用できる。
【0118】
遺伝子のレベルでは、これらの類似体は一般的にRAP−2タンパク質をコードしているDNAのヌクレオチドの位置指定突然変異誘発(site-directed mutagenesis)により製造され、それによって類似体をコードしているDNAを産生し、その後DNAを合成し、組換え細胞培養でポリペプチドを発現する。類似体は典型的に天然由来のタンパク質と質的に同等または増加した生物学的活性を示すAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publications および Wiley Interscience, New York, NY, 1987-1995;Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY, 1989。
【0119】
本明細書にしたがってRAP−2タンパク質の製造、または遺伝子コードの既知の縮重によって許容された変更のために同じポリペプチドをコードするが天然の配列とは異なるもう一つの核酸配列の製造は、より以前に製造された類似体またはRAP−2タンパク質の天然型をコードするDNAの位置特異突然変異誘発(site-specific mutagenesis)によってなし遂げられる。位置特異突然変異誘発は、横たわっている欠失連結部(deletion junction)の両側で安定なデュプレックスを形成するのに充分なサイズと配列の複雑さとを有するプライマー配列を提供するために、充分な数の近接したヌクレオチドと同様に、所望の突然変異のDNA配列をコードしている特定のオリゴヌクレオチド配列の使用を通して、類似体を産生することを可能にする。典型的には、変更した配列の両端に約5から10の相補的なヌクレオチドを有する、長さにして約20から25ヌクレオチドのプライマーが好ましい。一般的に位置指定突然変異誘発の技術は、Adelman et al., DNA 2:183(1983)のような刊行物に例示されたように本技術分野で良く知られており、その開示は参考文献により本明細書中に組み込まれている。
【0120】
理解されるように、位置指定突然変異誘発技術は典型的に一本鎖および二本鎖型の両方で存在するファージベクターを用いる。位置指定突然変異誘発で有用な典型的なベクターは、たとえば、Messing et al., Third Cleveland Symposium on Macromolecules and Recombinant DNA, Editor A. Walton, Elsevier, Amsterdam(1981)に開示されたようにM13ファージのようなベクターを含んでおり、その開示は参考文献によって本明細書に組み込まれている。これらのファージは容易に商業的に入手でき、その用途は一般的に当業者に良く知られている。あるいは、一本鎖ファージの複製起点を含むプラスミドベクター(Veira et al., Meth. Enzymol.153:3, 1987)は一本鎖DNAを入手するために用いて良い。
【0121】
一般的に、本明細書による位置指定突然変異誘発は、まず関連したポリペプチドをコードするDNA配列をその配列内に含む一本鎖ベクターを入手することで実施する。所望の突然変異配列を有するオリゴヌクレオチドプライマーを自動化(automated)DNA/オリゴヌクレオチド合成によって合成的に製造する。ついで、このプライマーを一本鎖タンパク質配列含有ベクターにアニールし、突然変異を有する鎖の合成を完成させるために、大腸菌ポリメラーゼ I クレノウ断片のようなDNA重合酵素(DNA-polymerizing enzymes)に曝す。このようにして、突然変異配列および2次鎖は所望の突然変異を有する。ついで、このヘテロデュプレックスベクターは大腸菌JM101細胞のような適切な細胞を形質転換するために使用し、変異させた配列を有する組換えベクターを含むクローンを選択する。
【0122】
このようなクローンを選択した後、変異させたRAP−2タンパク質配列を取り除き、適切なベクター、一般的には適切な宿主のトランスフェクションのために利用可能な型の転移あるいは発現ベクターに配置してもよい。
【0123】
したがって、RAP−2タンパク質をコードしている遺伝子または核酸はまた、PCRおよび化学的オリゴヌクレオチド合成などの既知のDNAまたはRNA増幅技術を用いて、インビトロ、インサイチュ(in situ)および/またはインビボで検出され、入手され、および/または修飾され得る。PCRはDNAポリメラーゼ反応を繰り返すことで特定のDNA配列の(その数を増やしての)増幅を可能にする。この反応はクローニングの代わりに使用でき、必要なものは核酸配列の知識だけである。PCRを実施するために、プライマーを目的の配列と相補的であるように設計する。そして、プライマーを自動化DNA合成にて産生する。プライマーが遺伝子の任意の部分にハイブリダイズするように設計できるので、条件は相補的な塩基対でのミスマッチを許容するようにつくることができる。これらのミスマッチした領域の増幅は、結果として新しい特性を有するペプチドを生成することになる突然変異誘発された産物の合成を導くことができる(すなわち、位置指定突然変異誘発)。たとえば、前記Ausubel, supra, Ch.16も参照のこと。また、PCRで逆転写酵素を用いることによって相補的なDNA(cDNA)合成を連結することにより、RNAはクローニングすることなくプロラクチンレセプターの細胞外ドメインの合成のための開始材料として使用できる。
【0124】
さらに、PCRプライマーは、新規制限部位、または増幅する遺伝子セグメントの末端における終止コドンのような他の特徴を組み込むよう設計できる。この増幅遺伝子配列の5’および3’末端での制限部位の配置は、RAP−2タンパク質、またはその断片をコードしている遺伝子セグメントに対して、他の配列および/またはベクターのクローニング部位とのライゲーションのために注文して設計され得る。
【0125】
PCRならびにRNAおよび/またはDNAの他の増幅方法は、当業者に良く知られており、本明細書にある指導およびガイダンスを基にした、過度の実験なく本発明にしたがって使用できる。DNAまたはRNA増幅の既知の方法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)および関連した増幅工程(たとえば、Mullis et al.に付与された米国特許第4,683,195号、第4,683,202号、第4,800,159号、第4,965,188号、Tabor et al.に付与された第4,795,699号および第4,921,794号、Innisに付与された第5,142,033号、Wilson et al.に付与された第5,122,464号、Innisに付与された第5,091,310号、Gyllensten et al.に付与された第5,066,584号、Gelfand et al.に付与された第4,889,818号、Silver et al.に付与された第4,994,370号、Biswasに付与された第4,766,067号、Ringoldに付与された第4,656,134号、およびInnis et al., eds., PCR Protocols: A Guide to Method and Applicationsを参照のこと)、および二本鎖DNA合成のための鋳型として標的配列に対するアンチセンスRNAを用いるRNA媒介増幅(商品名NASBAである、Malek et al.に付与された米国特許第5,130,238号)、および抗体標識とDNA増幅の使用を組み合わせた免疫−PCR(Ruzicka et al., Science 260:487(1993);Sano et al., Science 258:120(1992);Sano et al., Biotechniques 9:1378(1991))、参考文献としてそのすべてが本明細書に組み込まれている特許と参考文献の全内容を含んでいるが、これらに限定はされない。
【0126】
類似体の形において、RAP−2タンパク質の生物学的に活性な断片(たとえば、任意のRAP−2タンパク質またはそのアイソフォーム)は、RAP−2タンパク質の類似体に関して前記したように製造して良い。RAP−2タンパク質の適切な断片は、RAP−2タンパク質能力を保持し、RIPまたは直接的もしくは間接的にRIPに会合する他のタンパク質の生物学的活性を媒介することのできるものである。したがって、RAP−2タンパク質断片は、類似体に関して前記したような、ドミナントネガティブまたはドミナントポジティブ効果を有するように製造できる。これらの断片は本発明の類似体の特定のクラスを代表する、すなわち、RAP−2タンパク質の全長配列に(たとえば、RAP−2タンパク質の任意の配列またはそのアイソフォームの配列に)由来したRAP−2相互作用タンパク質の部分を定義し、このような部分または断片のそれぞれが前記した所望の活性のいくつかを有しているということに注意するべきである。このような断片はたとえばペプチドであってよい。
【0127】
同様に誘導体は、本技術分野で良く知られているように、RAP−2タンパク質、その類似体もしくは断片の1つまたはそれ以上のアミノ酸残基の側鎖基の標準的な修飾によって、またはRAP−2タンパク質、その類似体もしくは断片をたとえば抗体、酵素、レセプターなどの他の分子と結合させることによって製造して良い。したがって、本明細書で使用する「誘導体」は本技術分野で知られており、残基上の側鎖、またはN−末端もしくはC−末端基として存在する官能基から製造して良い誘導体を含み、本発明に含まれる。これらのフラクション(fraction)がRAP−2タンパク質と同じまたはより高い生物学的活性を有するならば、誘導体は炭化水素またはリン酸残基のような化学的部分(chemical moieties)を有して良い。
【0128】
たとえば、誘導体は、カルボキシル基の脂肪族エステル、アンモニアまたは第1もしくは第2アミンとの反応によるカルボキシル基のアミド、アシル部で形成されるアミノ酸残基のN−アシル誘導体もしくはフリーのアミノ基(たとえばアルカノイル、またはカルボ環アロイル基)、またはアシル部で形成されるフリーのヒドロキシル基(たとえば、セリル、またはトレオニル残基のヒドロキシル基)のO−アシル誘導体を含んで良い。
【0129】
「誘導体」の語は、1つのアミノ酸を、天然に共通して存在する20のアミノ酸の他の1つに変更しない誘導体のみを含むことを意図する。
【0130】
RAP−2はタンパク質またはポリペプチド、すなわちアミノ酸残基の配列である。本明細書の定義に従い、RAP−2タンパク質の全配列を包含するより大きい配列からなるポリペプチドは、その付加が本発明の基本および新しい特徴に影響しない限り、すなわちそれらがRAP−2タンパク質の生物学的活性を維持または増大するならば、またはRAP−2タンパク質の生物学的活性を有するタンパク質またはポリペプチドを残すよう開裂しうるならば、このようなポリペプチドの範囲内に含まれるとする。このように、例えば本発明はほかのアミノ酸またはペプチドを有するRAP−2タンパク質の融合タンパク質を包含するものとする。
【0131】
新規RAP−2タンパク質、その類似体、その断片および誘導体は、多数の使用可能性を有する。たとえば
(i)RAP−2タンパク質、その類似体、その断片および誘導体は、前記のような炎症、細胞死または細胞生存経路のいずれかでRIPの機能を調節するために用いられる。たとえば、RAP−2がNF−κB、JNK(Junキナーゼ)またはp38キナーゼの活性におよぼすRIPの効果を調節することができるなら、抗腫瘍、抗または前炎症、抗HIV適用を望まれる場合、そのようなRAP−2効果はいずれもこのようなRAP−2−RIP効果を高める。この場合、炎症を調節し、細胞傷害効果を高め、または細胞生存効果をブロックするRAP−2タンパク質、その類似体、その断片または誘導体は、本質的に既知の標準的操作により細胞に導入されてもよい。例えば、RAP−2タンパク質が(推測されるように)全細胞内にあり、RIPにより媒介されるFAS−RリガンドもしくはTNFまたはほかの細胞傷害タンパク質効果を望む細胞内のみに導入すべき場合、このタンパク質の細胞への特異的導入システムが必要である。これを行う一つの方法は、そのDNAに以下の2つの遺伝子、すなわち細胞により特異的に発現される細胞表面タンパク質、例えばある細胞(CD4リンパ球および関連する白血病)に特異的に結合するAIDs(HIV)ウイルスgp120タンパク質のようなものに結合するリガンド、または組換えウイルスベクターがFAS−Rまたはp55−R提示細胞に結合することができるような組換えウイルスベクターであるFAS−Rおよびp55−R提示細胞に特異的に結合するほかのリガンドをコードする遺伝子、ならびにRAP−2タンパク質をコードする遺伝子を導入する組換え動物ウイルス、例えばワクシニア由来のものを創ることによる。このように、ウイルス表面上の細胞表面結合タンパク質の発現は腫瘍細胞またはほかのFAS−Rもしくはp55−R提示細胞に特異的なウイルスを標的とし、RAP−2タンパク質コード配列がウイルスを介して細胞内に導入され、いったん細胞内で発現されると、FAS−RリガンドまたはTNFの効果のRIP媒介または独立RIPの効果を高めることとなるであろう。このような組換え動物ウイルスの構築は標準的操作(たとえば、Sambrookら、1989を参照)による。もうひとつの可能性としては、細胞により吸収され、そこで発現されうるオリゴヌクレオチドの形態でRAP−2タンパク質(例えば、RAP−2またはそのアイソフォームのいずれか)の配列を導入することである。
【0132】
(ii)それらをRIPまたは独立したRIP効果により媒介される、FAS−RリガンドまたはTNFまたは関連タンパク質効果を阻害するため、例えば敗血症ショックでの組織損傷、移植片対宿主の拒絶または急性肝炎といったFAS−RリガンドまたはTNF誘導FAS−Rまたはp55−R細胞内シグナリングまたは独立RIP効果またはほかのタンパク質媒介シグナリングをブロックし、同時に細胞生存経路を増大することを望む場合に使用してもよい。この場合、例えば細胞内に標準的操作により、RAP−2タンパク質に対するアンチセンスコード配列を有するオリゴヌクレオチドを導入することも可能であり、そのオリゴヌクレオチドが、RAP−2タンパク質をコードするmRNAの翻訳を効果的にブロックし、それによりその発現をブロックし、FAS−RリガンドまたはTNFまたはRIPまたはほかのタンパク質効果の阻害を誘導する。このようなオリゴヌクレオチドを前記組換えウイルスアプローチにより細胞内に導入してもよく、ウイルスにより提示される第二の配列はオリゴヌクレオチド配列である。
【0133】
同様に、前記のように、RAP−2−RIP相互作用の性質に依存して、前記(i)および(ii)の方法により、所望とする細胞炎症および生存経路を高めたり、阻害することも可能であろう。
【0134】
別の可能性として、RAP−2タンパク質に特異的な抗体を用いて、その細胞内シグナリング活性を阻害することもある。
【0135】
RIP媒介効果またはRIP独立効果を阻害するなおも別の方法では、最近開発されたリボザイムアプローチによる。リボザイムは特にRNAを開裂する触媒RNA分子である。リボザイムを操作して、選択した標的RNA、例えば本発明のRAP−2タンパク質をコードするmRNAを開裂してもよい。このようなリボザイムはRAP−2タンパク質mRNAに特異的な配列を有し、それと相互作用(相補的結合)しうることにより、mRNAを開裂し、その結果、RAP−2発現減少(または欠損完成)を起こし、その発現減少のレベルは標的細胞でのリボザイム発現レベルに依存するであろう。リボザイムを選択した細胞(例えば、FAS−Rまたはp55−R提示細胞)に導入するには、この目的に通常用いられる適切なベクター(前記(i)も参照、ウイルスは第二の配列として選択したリボザイム配列をコードするcDNAを有する)、例えばプラスミド、動物ウイルス(レトロウイルス)ベクターが使用され得る。リボザイム関連の方法などの総説として、Chen et al., 1992;Zhao and Pick, 1993;Shore et al., 1993;Joseph and Burke, 1993;Shimayama et al., 1993;Cantor et al., 1993;Barinaga, 1993;Crisell et al., 1993 および Koizumi et al., 1993参照のこと。この細胞傷害をブロックするよう望まれ、RAP−2−RIP相互作用が細胞傷害を高める場合、またはこの阻害をブロックし、このようなNF−κB活性を増大することが望まれ、RAP−2−RIP相互作用がNF−κB活性を阻害する場合、すなわち両場合とも前記(ii)のような細胞生存を増大することが望まれる場合、このアプローチは適切である。
【0136】
(iii)RAP−2タンパク質、その類似体、断片または誘導体を、同じクラスのほかのタンパク質、すなわちRIPまたは細胞内シグナリング過程に関与する機能的関連レセプターまたはタンパク質に結合するタンパク質を単離、同定およびクローニングするために用いてもよい。この適用には、前記酵母ツーハイブリットシステムを用いてもよく、非ストリンジェントなサザンハイブリダイゼーションの後PCRクローニングする最近開発されたシステム(Wilks et al., 1989)を用いてもよい。Wilksらの刊行物では、キナーゼモチーフの既知配列、推測キナーゼ配列に基づき、非ストリンジェントなサザンハイブリダイゼーションののちPCRクローニングを応用することよる2つの推定タンパク質−チロシンキナーゼの同定およびクローニングが記載されている。このアプローチは、本発明においては、RAP−2タンパク質の配列を用い、関連RIP結合タンパク質の配列を同定およびクローニングするのに使用してもよい。
【0137】
(iv)本発明のRAP−2タンパク質、その類似体、その断片または誘導体を利用したなおも別のアプローチとしては、結合することができるほかのタンパク質または因子、例えば細胞内シグナリング過程に関与するほかのタンパク質または因子を単離および特定するためのアフィニティークロマトグラフィー方法でそれらを用いることである。この適用では、本発明のRAP−2タンパク質、その類似体、その断片または誘導体をアフィニティーグラフィーマトリックスに別々に付着させ、次に細胞内シグナリング過程に関与すると考えられる細胞抽出物または単離したタンパク質もしくは因子と接触させる。アフィニティークロマトグラフィーの後、本発明のRAP−2タンパク質、またはその類似体、その断片または誘導体に結合するほかのタンパク質または因子を溶出し、単離し、特徴付けることができる。
【0138】
(v)前記のように、本発明のRAP−2タンパク質、またはその類似体、その断片もしくは誘導体を免疫原(抗原)として用い、それに対する特異的抗体を産生してもよい。これらの抗体を、細胞抽出物またはRAP−2タンパク質、またはその類似体または断片を産生する形質転換した細胞系のどちらかからのRAP−2タンパク質(例えば、RAP−2またはそのアイソフォームのいずれか)の精製目的に用いてもよい。さらに、これらの抗体をRIP媒介FAS−RリガンドもしくはTNF系または独立したRIP活性の異常な機能、例えばRIPに媒介される過剰なまたは不充分な活性のFAS−RリガンドもしくはTNF誘導細胞効果かまたはRIP自身の特異的細胞効果に関連する疾患特定の診断目的に用いてもよい。このように、RIPタンパク質、または種々のほかの前記RIP結合タンパク質またはRAP−2タンパク質それ自身に関与する細胞内シグナリング系機能不全に関連するこのような疾患では、そのような抗体は重要な診断道具として役に立つであろう。
【0139】
本発明のRAP−2タンパク質の単離、同定および特徴付けは既知の標準的スクリーニング操作のいずれかを用いて実施してもよいことにも注意すべきである。例えば、これらのスクリーニング操作の一つ、本明細書中以下に記載するような酵母ツーハイブリット操作がRIPタンパク質、続いて本発明の種々のRAP−2タンパク質(前記および以下に記載する共願の特許出願における種々のほかの新規タンパク質のほかに)同定のために用られた(Stanger et al., 1995)。前記および以下の記載と同様に、本発明のRAP−2タンパク質を単離、同定および特徴付けるために、または本発明のRAP−2タンパク質に結合し得るさらなるタンパク質、因子、レセプターなどを単離、同定および特徴付けるために当該技術分野で知られるようなアフィニティークロマトグラフィー、DNAハイブリダイゼーション操作などのほかの操作を用いてもよい。
【0140】
本明細書中前記のように、RAP−2タンパク質を、RAP−2タンパク質、例えばRAP−2およびそのアイソフォーム、に対する特異的な抗体を産生するために用いてもよい。これらの抗体またはその断片を本明細書中以下に詳述するように用いてもよく、これらの適用では抗体またはその断片はRAP−2タンパク質に特異的なものとして理解される。
【0141】
RAP−2はRIPに特異的に結合し、そのためRIPの媒介物質/調節物質であり、このように、RIPの機能は独立してまたはほかのタンパク質(例えば、細胞死経路でのFAS−R、p55−R、MORT−1、MACH、Mch4、G1およびTRADD、または細胞生存経路でのTRAF2との)と結合している、炎症、細胞死または細胞生存経路でのRIPの活性を媒介/調節するという本発明による見解に基づき、これらの経路のどちらがRAP−2−RIP相互作用により高められる/阻害されるかに依存して、所望ようにRAP−2−RIP相互作用を高めるまたは阻害する医薬を設計することが重要である。このような医薬が大きな助けとなりうる疾患は多数ある。とりわけ、肝臓への急激な損傷がFAS−Rリガンド媒介肝臓細胞死となる急性肝炎、糖尿用を引き起こす脾臓のβランゲルハンス細胞死のような自己免疫誘導細胞死、移植片拒絶の細胞死(例えば、腎臓、心臓および肝臓)、多発性硬化症における脳の乏突起神経膠細胞死、およびAIDSの増殖を引き起こすAIDS阻害T細胞自殺、およびそれによるAIDS疾患が挙げられる。
【0142】
RAP−2または1つまたはそれ以上のその可能なアイソフォームは、1つまたはそれ以上の前記経路におけるRIPの「天然」阻害剤として役立つこともでき、このようにこれらはRIPの前記特異的阻害剤として用いられてもよい。同様に、ペプチド、有機化合物、抗体などのほかの物質は、RAP−2−RIP相互作用を阻害しうる特異的医薬を得るためにスクリーニングしてもよい。
【0143】
RAP−2−RIP相互作用のペプチド阻害剤としての非限定例を設計し、スクリーニングはICEまたはICE様プロテアーゼのペプチド阻害剤、ICEに特異的な基質、およびペプチド合成を用いたエピトープ分析のためのストラテジーについての以前の研究に基づいた。ICEによるペプチドの効果的な開裂のために最低限要求されるのは、P1位置におけるアスパラギン酸に対する強い優先およびP1位置の右に充分なメチルアミンを有する開裂部位の左に4個のアミノ酸を含むことであるとわかった(Sleath et al., 1990;Howard et al., 1991;Thomberry et al., 1992)。さらに、ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)の配列に対応する蛍光物質ペプチド(テトラペプチド)、Ac−DEVD−AMCと省略されるアセチル−Asp−Glu−Val−Asp−a−(4−メチル−クーマリル−7−アミド)が、FAS−R刺激だけでなくほかのアポプトーシス過程(Kaufmann, 1989;Kaufmann et al., 1993, Lazebnik et al., 1994)の後すぐに細胞で開裂し、CPP32(CED3/ICEプロテアーゼファミリーのメンバー)およびMACHプロテアーゼ(および同様に可能性のあるG1プロテアーゼ、たとえば共願のIL第120367号参照)により効果的に開裂することがわかった。
【0144】
基質のP1位置のAspは重要であるので、第四アミノ酸残基および最初の三個の残基位置のアミノ酸の種々の組み合わせとしてAspを有するテトラペプチドは、例えば固体支持体上の多数のペプチドを抗体を用いて特異的相互作用のためにスクリーニングするGeysenにより開発された方法(Geysen, 1985;Geysen et al., 1987)を用いて、プロテアーゼの活性部位への結合に対して速くスクリーニングされうる。特異的ペプチドに対するMACHプロテアーゼの結合は、G1プロテアーゼの放射標識といった当該技術分野の者に周知の種々の検出方法により検出されうる。Geysenのこの方法は、各実施日につき、少なくとも4000ペプチドを試験することができると示された。
【0145】
同様に、RAP−2とRIP間の相互作用を決定する正確な結合領域または相同領域を解明し、つぎにこの相互作用をブロックするように役立つペプチド、例えばRIPに結合する天然のRAP−2と競合しうる結合領域またはそれへの相補的ペプチドに類似の配列を有する合成ペプチドをスクリーニングするとよい。
【0146】
RAP−2−RIP相互作用を阻害することによるRAP−2の炎症または細胞死活性を阻害しうる薬剤またはペプチド阻害剤は、細胞への侵入を容易にする分子と結合または複合させてもよい。
【0147】
米国特許第5,149,782号は、細胞膜を横断して輸送される分子を、融合ポリペプチド、イオンチャンネル形成ポリペプチド、ほかの膜ポリペプチドおよび例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸といった長鎖脂肪酸のような膜混合剤と結合させることを開示している。これらの膜混合剤は分子複合体を細胞膜の脂質二重層に挿入し、細胞質へのその侵入を容易にする。
【0148】
Lowら、米国特許第5,108,921号は、レセプターが媒介するエンドサイトーシス活性の機構によるタンパク質および核酸といった分子、しかしそれらに限定されない分子の膜貫通送達の可能な方法を総説する。これらのレセプターシステムとしては、ガラクトース、マンノース、6−リン酸マンノース、トランスフェリン、アシアログリコプロテイン、トランスコバラミン(ビタミンB12)、α−2マクログロブリン、インスリンおよび表皮成長因子(EGF)といったほかのペプチド成長因子を認識するものが挙げられる。Lowらは、ビオチンおよび葉酸塩のレセプターといった栄養レセプターを、ほとんどの細胞の膜表面上にあるビオチンおよび葉酸塩の存在および多様性ならびに関連するレセプター媒介膜貫通輸送過程により、有利には細胞膜を横断する輸送を高めるために用いることができると教示する。このように、細胞質に送達される化合物とビオチンまたは葉酸塩といったリガンド間に形成された複合体をビオチンまたは葉酸塩レセプターを提示する細胞膜と接触させ、レセプター媒介貫膜輸送機構を開始し、それにより所望とする化合物を細胞に侵入させる。
【0149】
さらに、所望とするペプチド配列とリーダー/シグナルペプチド配列とを融合し、「キメラペプチド」を創り、このような「キメラペプチド」を細胞膜を横断して細胞質へ輸送させうることが当該技術分野で知られる。
【0150】
ペプチド技術分野の者には考えられるように、本発明によるRAP−2−RIP相互作用のペプチド阻害剤は、恐らくより安定な阻害剤を設計するようRAP−2/RIPプロテアーゼへの結合に対し、速くスクリーニングされることもできるペプチド擬似薬剤または阻害剤を含むと解される。
【0151】
前記のような細胞膜横断ペプチド阻害剤の輸送を容易にしたりまたは高めるのと同じ方法を、RAP−2またはそのアイソフォーム自身だけでなく細胞内効果を発揮するほかのペプチドおよびタンパク質に応用することができるとも考えられるであろう。
【0152】
本明細書中いたるところに記載されるような抗体に関し、用語「抗体」とは、可溶または結合型で標識されうる抗体に対するポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAbs)、キメラ抗体、抗イディオ型(抗Id)抗体だけでなく、酵素的開裂、ペプチド合成または組換え技術、しかしこれらに限定されない既知の技術により与えられるその断片を包含すると解される。
【0153】
ポリクローナル抗体は、抗原で免疫化した動物血清由来の抗体分子の異種集団である。モノクローナル抗体は、実質的に抗原に特異的な抗体の同種集団を含み、その集団は実質的に類似するエピトープ結合部位を含む。MAbsは、当該技術分野の者に知られる方法により得られる。例えば、Kohler and Milstein, Nature, 256:495-497(1975);米国特許第4,376,110号;Ausubel et al., eds., Harlow and Lane ANTIBODIES: A LABORATORY MANUAL, Cold Spring Harbor Laboratory (1988);およびColligan et al., eds., Curemt Protocols in Immunology, Greene Publishing Assoc. and Wiley Interscience N.Y.,(1992-1996)、本明細書中全体として参考文献により盛り込まれる参考文献の内容を参照のこと。このような抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、GILDを含む免疫グロブリンのいずれかのクラスおよびそのサブクラスであればよい。本発明のmAbを産生するハイブリドーマはインビトロ、in situまたはインビボで培養するとよい。インビボまたはin situでの高力価mAbsを生産することが目下好ましい生産方法である。
【0154】
キメラ抗体は、マウスmAb由来の可変領域とヒト免疫グロブリン定常領域を有するというように、その異なる部分が異なる動物種由来である分子である。キメラ抗体は本来適用において免疫原性を減少し、生産収率を増大するために用いられ、例えばヒト/マウスキメラmAbsを用いるように、マウスmAbsがハイブリドーマからより高い収率を有するがヒトではより高い免疫原性を有する。キメラ抗体とその生産方法は当該技術分野で知られる(Cabilly et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81: 3273-3277(1984);Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81: 6851-6855(1984);Bourianne et al., Nature 312: 643-646(1984);Cabilly et al., 欧州特許出願第125023号(1984年11月14日公開);Neuberger et al., Nature 314: 268-270(1985);Taniguchi et al., 欧州特許出願第171496号(1985年2月19日公開);Morrison et al., 欧州特許出願第173494号(1986年3月5日公開);Neuberger et al., PCT出願第WO8601533号(1986年3月13日公開);Kudo et al., 欧州特許出願第184187号(1986年6月11日公開);Sahagan et al., J. Immunol. 137: 1066-1074(1986);Robinson et al., 国際特許出願第WO8702671号(1987年5月7日公開);Liu et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA 84: 3439-3443(1987);Sun et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA 84: 214-218(1987);Better et al., Science 240: 1041-1043(1988);およびHarlow and Lane、ANTIBODIES: A LABORATORY MANUAL、前記)。これらの参考文献は本明細書中参考文献により全体として盛り込まれている。
【0155】
抗イディオ型(抗−Id)抗体は一般的に抗体の抗原結合部位に関連する固有の決定基を認識する抗体である。Id抗体は抗−Idを調製するmAbの源(source)として同種および同遺伝子型の動物(たとえばマウス種)で免役することで調製できる。免役された動物はこれらのイディオ型決定基への抗体(抗−Id抗体)を産出することで、免疫抗体のイディオ型決定基を認識し、応答するであろう。たとえば参考文献によって本明細書に全体が組み込まれている米国特許第4,699,880号を参照のこと。
【0156】
抗−Id抗体はまた、抗−抗−Id抗体と呼ばれる抗体を産出して他の動物でも免疫応答を誘導するための「免疫原」として使用してもよい。抗−抗−Idはエピトープが抗−Idを誘導する本来のmAbと同一であってもよい。したがって、mAbのイディオ型決定基に対する抗体を用いることで、同一の特異性の抗体を発現している他のクローンを同定することができる。
【0157】
したがって、本発明のRAP−2タンパク質、その類似体、断片または誘導体に対して生成したmAbsを、BALB/cマウスのような適切な動物で抗−Id抗体を誘導するために使用してもよい。そのような免役されたマウスからの脾臓細胞を、抗−Id mAbsを分泌する抗−Idハイブリドーマを産出するために使用する。さらに、抗−Id mAbsをキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)のような担体に連結でき、さらなるBALB/cマウスを免役するために使用できる。これらのマウスからの血清は前記RAP−2タンパク質、またはその類似物、断片および誘導体のエピトープに対して特異的な本来のmAbの結合特性を有する抗−抗−Id抗体を含むであろう。
【0158】
このように、抗Id mAbsはそれ自身イディオ型エピトープ、またはGRBタンパク質aのような構造的に評価するエピトープに類似の「イディオトープ」を有する。
【0159】
また用語「抗体」とは、たとえば抗原を結合することができるFabおよびF(ab’)2といった完全な分子だけでなくその断片の両方を含むことを意味する。FabおよびF(ab’)2断片は、完全な抗体のFc断片を欠き、循環系からより素早く除かれ、完全な抗体より少ない非特異組織を有するであろう(Wahl et al., J.Nucl.Med.24:316-325(1983))。
【0160】
本発明で有用な、抗体のFabならびにF(ab’)2および他の断片が完全な抗体分子について本明細書に開示した方法に基づいて、RAP−2タンパク質の検出および定量のために使用してよいことが理解されるであろう。このような断片は、典型的にパパイン(Fab断片を産出するため)またはペプシン(F(ab’)2断片を産出するため)などの酵素を用いたタンパク質分解的切断によって産出される。
【0161】
抗体は、分子と特異的に反応し、それにより抗体へ分子を結合する場合、分子を「結合可能」といわれる。用語「エピトープ」とは、抗体により認識されることもできる抗体により結合されることができる任意の分子の部分を示すことを意味するものとする。エピトープまたは「抗原決定基」は通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面基を含み、特定の電荷特性と同様に特異的な3次元構造特性を有する。
【0162】
「抗原」は、抗体により結合されることができる分子または分子の部分であり、その抗体は、その抗原のエピトープに結合することができる抗体を産生するために動物に誘導することができる。抗原は1つまたはそれ以上のエピトープを有していてもよい。前記に示した特異的反応とは、抗原は高選択的にその対応する抗体と反応し、ほかの抗原により引き起こされたほかの多数の抗体とは反応しないことを示すことを意味する。
【0163】
本発明に用いられる抗体の断片を含む抗体を、試料中のRAP−2タンパク質を定量的または定性的に検出するため、または本発明のRAP−2タンパク質を発現する細胞の存在を検出するために用いてもよい。これは光学顕微鏡、フローサイトメトリーまたは蛍光定量検出との組み合わせにより蛍光標識化抗体(以下記載を参照)を用いた免疫蛍光技術により成し遂げることができる。
【0164】
本発明において有用な抗体(またはその断片)は組織学的に免疫蛍光または免疫電気顕微鏡のように、本発明のRAP−2タンパク質のin situ検出に用いてもよい。in situ検出は、患者から組織学的試料を採取し、このような試料に対する本発明の標識抗体を提供することにより成し遂げられるであろう。抗体(または断片)は、好ましくは標識抗体(または断片)を生物学的試料に付すまたは重層することにより提供される。このような操作をするにあたり、RAP−2タンパク質の存在だけでなく、調べた組織についてのその分布を決定することも可能である。本発明を用いれば、通常の技術を有する者であれば、このようなin situ検出を達成するため広範囲の組織学的方法(染色技術など)のいずれかを修飾することなど容易に認められるであろう。
【0165】
本発明のRAP−2タンパク質についてのこのようなアッセイは、典型的には生物学的流体、組織抽出物、リンパ球や白血球といった新鮮な収集細胞、または組織培養でインキュベートした細胞などの生物学的試料を、RAP−2タンパク質を同定することができる検出可能な標識化抗体の存在下インキュベートすること、および当該技術分野で周知の多数の技術のうちいずれかにより抗体を検出することからなる。
【0166】
生物学的試料を、ニトロセルロースなどの固相支持体もしくは担体または細胞、粒子または可溶性タンパク質を固定することができるほかの固相支持体もしくは担体と処理してもよい。つぎに、支持体または担体を適切な緩衝液で洗浄し、前記のような本発明よる検出可能な標識化抗体で処理してもよい。つぎに、固相支持体または担体を2回緩衝液で洗浄し、非結合抗体を除去するとよい。つぎに、前記固体支持体または担体に結合した標識の量を慣用の方法により検出するとよい。
【0167】
「固相支持体」、「固相担体」、「固体支持体」、「固体担体」、「支持体」または「担体」とは、抗原または固体を結合することができるいかなる支持体または担体をも意図するものとする。よく知られる支持体または担体としては、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロンアミラーゼ、天然および修飾セルロース、ポリアクリルアミド、斑糲岩および磁鉄鉱が挙げられる。担体の性質は、本発明の目的のためには、ある程度の可溶性または不溶性であってもよい。支持体材料は、結合させた分子が抗原または抗体に結合することができる限り、実質的にはいかなる可能な構造的配置を有してもよい。このように、支持体または担体配置はビーズのような球形、試験管内側表面のような円柱形、またはロッドの外側表面であるとよい。あるいは、表面はシート、テストストリップなどのように平らであってもよい。好ましい支持体または担体としては、ポリスチレンビーズが挙げられる。当該技術分野の者には、抗体または抗原を結合するためのほかの適切な担体もわかるであろうし、慣用の実験を用いて同じことを確かめることもできるであろう。
【0168】
前記本発明の与えられる多くの抗体の結合活性は、よく知られる方法により決定される。当該技術分野の者は慣用の実験を用いて各決定についての操作および最適アッセイ条件を決定することができるであろう。
【0169】
洗浄、撹拌、振とう、濾過などのようなほかの工程を特別な状況に応じて、または必要によりアッセイに加えてもよい。
【0170】
本発明による抗体を標識して検出するほかの方法は、同じものを酵素に連結することによる酵素免疫アッセイを用いることである。この場合、この酵素は、後に適当な基質にさらされ、例えば分光光度定量法、蛍光定量法により、または可視化する方法により、検出しうる化学的部分を生産するように基質と反応する。抗体を検出可能に標識化するために用いられうる酵素としては、マレイン酸デヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、デルタ−5−ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、アルファ−グリセロリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリンホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼおよびアセチルコリン−エステラーゼなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。検出は酵素に対する色素原基質を用いる比色法により行ってもよい。また検出は、同様に調製した標準との比較により基質の酵素反応の程度を視覚的に比較して行ってもよい。
【0171】
種々のほかの免疫アッセイのいずれかを用いて検出を行ってもよい。例えば、放射活性標識化抗体または抗体断片により、ラジオ免疫アッセイ(RIA)を用いて、R−PTPaseを検出することも可能である。RIAについてのよい説明が、本明細書中参考文献により盛り込まれているWork, T.S. et al., North Holland Publishing Company、NY(1978), Laboratory Techniques and Biochemistry in Molecular BiologyのChard, T.による「An Introduction to Radioimmune Assay and Related Techniques」という題名の項目に特に参照されていることがわかるであろう。放射性同位元素はgカウンターまたはシンチレーションカウンターの使用によりまたはオートラジオグラフィーによる方法で検出することができる。
【0172】
本発明によれば、抗体を蛍光化合物で標識化することも可能である。蛍光標識した抗体を適当な波長光にあてると、つぎに蛍光によりその存在を検出することができる。多くの通常用いられる蛍光標識化合物としては、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリスリン、ピコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルデヒドおよびフルオレスカミンが挙げられる。
【0173】
また抗体を、152Eまたはランタニド系列のほかのものといった蛍光放射金属を用いて標識して検出することができる。これらの金属は、ペンタ酢酸ジエチレントリアミン(ETPA)といったこのような金属キレート基を用いて抗体に付着させることができる。
【0174】
また抗体を、化学発光化合物と組み合わせることにより標識して検出することもできる。つぎに、化学発光体を付した抗体の存在を、化学反応の過程で生じる発光の存在を検出することにより決定することができる。特に有用な化学発光標識化合物の例としては、ルミノール、イソルミノール、テロマティックアクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩およびオキサレートエステルが挙げられる。
【0175】
同様に、本発明の抗体を標識化するために生物発光化合物を用いてもよい。生物発光とは、触媒タンパク質が化学発光反応の効果を増大する生物学的システムで見られる化学発光の型である。生物発光タンパク質の存在は、発光物質の存在を検出することにより決定される。標識を目的とする重要な生物発光化合物としては、ルシフェリン、ルシフェラーゼおよびエクオリンが挙げられる。
【0176】
本発明の抗体分子を、「ツーサイト」または「サンドイッチ」アッセイとしても知られる免疫定量アッセイでの使用に適用してもよい。典型的な免疫定量アッセイでは、ある量の非標識化抗体(または抗体の断片)を固体支持体または担体に結合させ、ある量の検出可能な標識化可溶性抗体を加えて固相抗体、抗原および標識化抗体間に形成された三量体複合体の検出および/または定量をさせる。
【0177】
典型的な、そして好ましい免疫検定には、固相に結合する抗体がまず二重固相抗体−抗原複合体の形成によって標本から抗原を抽出するために試験する標本に接触させるような「正(forward)」検定が含まれる。適切なインキュベート時間の後、固相支持体または担体を、反応していない抗原を含んでいる流体(fluid)標本の残余物を取り除くために洗浄し、必要ならば次に不明な量の(「レポーター分子」として機能する)標識化抗体を含んでいる溶液と接触させる。標識化抗体を、非標識化抗体を通して固体支持体または担体に結合している抗原と複合化させるための2次インキュベート期間後、固体支持体または担体を反応していない標識化抗体を取り除くために2回洗浄する。
【0178】
これも本発明の抗原に有用である可能性のあるもう一つの型の「サンドイッチ」検定において、「同時(simultaneous)」および「逆(reverse)」検定と呼ばれるものを使用する。同時検定では抗体は個体支持体または担体に結合し、標識化抗体も同時に試験する標本に加えるのでインキュベート工程は1回である。インキュベートが完了した後、固体支持体または担体を流体標本からの残余物と複合化しない標識化抗体を取り除くために洗浄する。固体支持体または担体に関連する標識化抗体の存在は、ついで従来の「正」サンドイッチ検定でなされるように決定する。
【0179】
「逆」検定において、標識化抗体溶液の流体標本への最初の段階的付加と、それに続く適切なインキュベーション期間の後、固体支持体または担体に結合する非標識化抗体の付加を使用する。2次インキュベーション後、試験する標本の残余物および非反応標識化抗体の溶液がなくなるように固相を従来の方法で洗浄する。ついで固体支持体または担体に関連した標識化抗体の検出を、「同時」および「正」検定でなされるように決定する。
【0180】
本発明のRAP−2タンパク質は、当該技術分野で知られる適当な真核または原核宿主細胞を、タンパク質をコードする配列を含む適当な真核または原核ベクターにより形質転換する標準的組換えDNA操作(例えば、Sambrook et al., 1989 および Ansabel et al.,1987-1995前記参照)により生産することができる。従って、本発明は、本発明のタンパク質生産のためのこのような発現ベクターおよび形質転換した宿主にも関する。前記のように、これらのタンパク質にはその生物学的活性類似体、断片および誘導体も含まれ、このためこれらをコードするベクターにはこれらのタンパク質の類似体および断片をコードするベクターも含まれ、形質転換した宿主にはこのような類似体および断片を生産するものも含まれる。形質転換した宿主により生産されるこれらのタンパク質の誘導体とは、タンパク質またはその類似体または断片の標準的修飾により生産される誘導体である。
【0181】
本発明はRAP−2タンパク質をコードする組換え動物ウイルスベクターを含んでなる医薬組成物にも関し、該ベクターは細胞へのRAP−2タンパク質配列の挿入を指示するため、特異的標的細胞(例えば、がん細胞)表面タンパク質を結合することができるウイルス表面タンパク質をコードする。さらに本発明の医薬組成物は、有効成分として(a)RAP−2タンパク質配列のアンチセンス配列をコードするオリゴヌクレオチド配列、または(b)RAP−2−RIP相互作用をブロックする薬剤を含んでなる。
【0182】
本発明による医薬組成物は、その目的を達するような充分な量の有効成分を含有する。さらに医薬組成物は、当業者に良く知られているように、薬学的に使用できる製剤への活性化合物のプロセシングを容易にし、必要であればその患者への投与のためにこのような製剤を安定にし得る賦形剤および補助剤を含んでなる薬学的に許容し得る適当な担体を含んでもよい。
【0183】
RAP−2タンパク質およびそのアイソフォームまたはイソタイプは、前記に挙げた共願の特許出願に記載されるような細胞内シグナリング経路に関与する種々のほかのタンパク質の発現に対して類似の様式で、異なる組織で著しく異なるレベルで、また明らかに異なるパターンのイソタイプで発現することが予想される。これらの差異は、Fas/APO1リガンドおよびTNFに応答する組織特異的特徴に貢献することができるであろう。ほかのCED3/ICE相同体の場合(Wang et al., 1994;Alnemri et al., 1995)のように、本発明者らは不完全CED3/ICE領域を含むMACHアイソフォーム(例えば、MACHα3)が同時発現するMACHα1またはMACHα2分子の活性について阻害効果を有することがわかったと以前に示し(前記特許出願)、それらはFas/APO1およびp55−Rによる死誘導をブロックすることもわかった。細胞におけるこのような阻害性アイソフォームの発現は、Fas/APO1およびTNF媒介細胞傷害に対する細胞自己保護の機構に貢献するようである。少なくともいくつかのG1アイソフォームの同様の阻害性効果も予想される(最近単離された新規Mch4および可能なMACH結合タンパク質であるG1、ならびにMORT MODULESおよびプロテアーゼドメインを有するMORT−1結合タンパク質、共願のIL第120367号を参照)。CED3/ICEファミリーの任意のほかのプロテアーゼに観察されるような過剰の、MACHアイソフォームの広い異質性(heterogeneity)、および予想されるような同様の、G1アイソフォームの類似の異質性は、活性なMACHアイソフォームの、また同様に活性なG1アイソフォームの機能の特に良好なチューニングをさせる。したがって、前記のように、RAP−2タンパク質またはその可能なアイソフォームは、RIPとのその相互作用に関し、異なる組織での効果およびそれによる前記のような細胞死または細胞生存経路の活性の間のバランスについての影響を変化させる。
【0184】
可能なRAP−2アイソフォームのいくつかが、ほかの機能を提供することもありうる。たとえば、RAP−2またはいくつかのRAP−2アイソフォームは、RIPとの相互作用を介するFas/APO1およびTNFレセプターまたはRIP単独での非細胞傷害性効果といった、ほかに関与する分子に対するドッキング部位として作用してもよい。
【0185】
炎症、細胞死を惹起するFas/APO1およびTNFレセプターの個性的な能力だけでなく、TNFレセプターのほかの組織を損傷する活性を惹起する能力により、これらのレセプターの機能における異常型は生体にとって特に有害となり得る。実際、これらのレセプターの過剰なおよび不完全な機能は両方、種々の疾患の病理学的顕れに寄与すると示された(Vassalli, 1992;Nagata and Golstein, 1995)。レセプターのシグナリング活性に関与する分子の同定、およびこれらの分子の活性の調節方法の発見は、新しい治療学的アプローチを指示する。本発明のほかの観点は、以下の実施例から明らかとなるであろう。
【0186】
ここに本発明を以下の実施例およびそれに伴う図面によりさらに詳細に記載するが、これに限定されるものではない。
【0187】
MORT−1およびMORT−1結合タンパク質(例えば、MACH)だけでなく新たに単離されたタンパク質G1(IL第120367号参照)に関する、(i)ツーハイブリッドスクリーニングおよびツーハイブリッドβ−ガラクトシダーゼ発現試験、(ii)タンパク質の発現誘導、代謝標識および免疫沈降、(iii)インビトロ結合、(iv)細胞傷害の評価、および(v)ノーザンおよび配列分析、(Boldin et al., 1995bも参照)2、3(Boldin et al., 1996も参照)および4以下、の手法は本発明の対応するRAP−2およびそのありうるアイソフォームの単離、クローニングおよび特徴付けに等しく応用しうる(いくらかの修飾により)ことも注意すべきである。したがって、例えば共願のイスラエル国出願第114,615号、第114,986号、第115,319号、第116588号、第117,932号および第120367だけでなく対応するPCT出願PCT/US96/10521号と同じまたは等しい形式で詳述されるように、これらの手法は、本発明によるRAP−2の単離、クローニングおよび特徴付けに用いられる同じ手法の全開示として解釈されるべきである。さらにNIKタンパク質およびNF−κBを活性化するその役割、それによる細胞生存とこの細胞生存経路、例えばTRAF2とRIPおよびほかのタンパク質と間の相互作用、におけるTRAF2による役割に関しては、本発明者らにより、共願のIL第117800号、IL第119133号およびMalinin et al., 1997により詳述されている。
【0188】
実施例1:RIPタンパク質に結合するRAP−2タンパク質のクローニングおよび単離、ツーハイブリッドスクリーニング、配列決定および予備分析
B細胞ライブラリーで、ベイトとしてRIPを用いたツーハイブリッドスクリーニングにより(例えばFields and Song, 1989, WO/96/18641を参照)、約1.5Kbサイズのクローンを単離した。この1.5Kbクローン(図1および2の矢印を参照)をファージcDNAライブラリーのスクリーニングに用い、図1に示す配列の約2.0Kbクローンを得た。
【0189】
1.5Kbクローンの配列を用いてESTマッチングを行うことにより、I.M.A.G.E.協会クローン#41072(Research Gentetics Institute)の3’末端を構成するEST断片を得た。このクローンの、胎児脳ライブラリー由来の3’および5’末端でのその小さな配列断片のみが公開されている。クローンを得た後、それを配列決定し、これらの公開された配列断片でさえエラーを含むことが判明した。配列決定したクローン(図2)は図1のクローンとそのコーディング領域において同一であるが、5’非コーディング領域においては違いがあることがわかった。したがって、両cDNAは同じ遺伝子の二者択一的にスプライシングされた型であると仮定された。
【0190】
配列分析により、RAP、RAP−2様タンパク質は明らかに「細胞死誘導領域」を有さず、MORT MODULEを有さず、ICEファミリーのもののようなプロテアーゼドメインを有さず、キナーゼドメインを有さず、またTRAFドメインを有しないことが示された(細胞内シグナリング経路に存在する種々のドメイン全てに関する前記共願中の特許出願および種々の参考文献、特にMalinin et al., 1997)。3個のロイシンジッパー(LZ)「らしきもの」ブロックが対等にタンパク質コーディング領域に分配されるのを除いて、与えられた配列内にはいかなる考慮すべきモチーフも存在しないとわかった。それらの内2個がLeuからVal、MetまたはIleへの置換を含むので、これらは「らしきもの」と表現した。通常保存的であると考えられるとはいえ、ロイシンジッパードメイン内のこのような変化がその機能活性、例えばほかのLZsへの結合、を維持するためにタンパク質に認められているのか明らかではない。結合の研究では、RAP−2は特にRIPへ結合し、RAP−2はTRADD、MORT−1、p55−R、p75−RおよびMACHには結合できないとわかった(それまでに実施された研究において)。これらの結果は、RAP−2が明らかに「細胞死誘導領域」およびMORT MODULEに欠いているという事実を支持する。
【0191】
したがって、RAP−2は非常に特異的な方法で、RIPへ相互作用/結合する特異的RIP結合タンパク質であると考えられる。このように、RAP−2は炎症および細胞死/細胞生存経路でのRIPの調節/媒介において重要な役割を担うRIP細胞内活性の特異的調節物質/媒介物質であると考えられる。
【0192】
要約すると、RAP−2のクローンは、「ベイト」として全長RIPタンパク質を用いたヒトB細胞cDNAライブラリーのツーハイブリッドスクリーニングにより得られた。RIP配列は以前の刊行物(例えば、Stanger et al., 1995)から入手可能であり、ヒトRIP配列であるジーンバンクデータベース受け入れ番号U25994で存在した(マウスRIP配列も受け入れ番号U25995で存在する)。この配列情報を用いてOLIGO4(商標)ソフトウェアにより適当なPCRプライマーを設計し、RIPのコーディング部分に相当するDNA断片を、鋳型として全RNAヒト繊維芽細胞ライブラリー由来のcDNAを用いたPCRにより得た(標準的操作による)。つぎに、このRIPのコーディング部分をpGBT−9ベクター(Clontech)にクローン化し、前記のようにツーハイブリッドスクリーニング操作でベイトとして用いた。このツーハイブリッドスクリーニングでは、RIPと相互作用するRIP結合タンパク質をコードするクローンを得た。
【0193】
前記のように、このクローンを用いてファージcDNAライブラリーおよびESTデータバンクをスクリーニングした。図1および2から、2個のクローンのコード配列が5’非コード領域は異なるものの、同一であることがわかる。このように、本発明者は恐らく二者択一的スプライシングをうけた型に関心をもった。クローンは約1.5KbのORF(オープンリーディングフレーム)を有する約2.0Kbのものであり、タンパク質自身に対して約50Kd分子量と計算された。RAP−2の導かれたアミノ酸配列を図3に示す。
【0194】
RAP−2クローンの前記配列および「dbest」データベース、ヒトゲノムデータベースレベル1およびジーンバンクデータベースの配列分析では、RAP−2配列は独特の(新規の)配列であり、このRAP−2配列に対し有意な相同性を示す配列はないことがわかった。IL第123758号を出願した後、本出願はそこから優先権を請求しており、Yamaoka S. et al.,(1998)は48kDタンパク質をコードするマウスcDNAのキャラクタリゼーションを報告し、NEMO(NF−κB必須調節物質なので)と名付けた(背景技術参照)。
【0195】
さらなるデータベース(in silico)サーチにより、Li Y. et., al(1998、背景技術参照)によりもともとクローン化された未知機能を有するタンパク質、FIP−2を同定した。
【0196】
RAP−2とFIP−2との配列の広いアラインメントから(図3B)わかるように、全体的な類似性の程度はかなり低い(従って驚くこともなく、広いアルゴリズムに基づくスキャンを用いても配列は同定されなかった)。RAP−2とFIP−2との間の相同性はタンパク質のC末端に向かって増大し、C末端30アミノ酸の実質的同一で最高点に達する。気づくべきことは、後の領域を除けば、FIP−2の推定LZモチーフはRAP−2でより大きく保存されている(Ile/Ala置換を除く)。
【0197】
約0.5kbのさらに短いRAP−2 cDNAも同定され(ID:1469996)、以下ヒトshrtという。この変型は、1.5kb「全長」cDNAのいくつかの離れた領域からのコーディング配列「ブロック」を含んでなり、恐らく同じ遺伝子の二者択一的スプライシングに由来する。
【0198】
RAP−2 cDNAの0.9kb BglII−断片を用いた、多重組織ノーザンブロット(Mulyiple Tissue Nortern blot)(Clontech)のノーザンブロットハイブリダイゼーション分析では、RAP−2 mRNAの複合体パターンがあらわにされた。1kbから7kbまでのサイズ範囲の、少なくとも5種の異なるmRNAを、多少ユビキタウス普及で(ubiquitous prevalence)2.5kbおよび6kb型を用いて検出した(図4A)。
【0199】
実施例2:マウスRAP−2の同定
TIGRに設立されたマウスESTコレクションでの類似のサーチにより、コーディング領域のいたるところでそのヒトのものに実質同一(95%)であるため、恐らくマウスRAP−2に対応する1.6kbの部分的cDNA(マウス部分(Mouse part)ID:761011、図3)を得た。
【0200】
ヒトとマウスには違いがあるとはいえ、RAP−2およびNEMO配列は、通例の種族間の違いに明確に帰すことができるものを越えて拡張している。実際、全長ヒト型および部分的マウス配列に比較して、マウスRAP−2およびNEMO配列からの7個のアミノ酸(20.4における位置249)の欠けたブロックおよびNEMOオープンリーディングフレームにおける3個のアミノ酸(位置111のKLE)の挿入は、唯一最も注意すべき例である(図3)。しかしながら、これらはタンパク質活性において機能的影響をもたらすことができよう。実際、NEMOについて報告された分画分析(fractionation analysis)は、それがシグナルサム(signalsome)に局在化することを確認しているが、NEMOに関して報告された機能的性質は、ヒトRAP−2に見られるものとは反対であるようである。
【0201】
実施例3:ほ乳類細胞におけるRAP−2へのRIP結合
RAP−2−RIP相互作用の生理学的関連のさらなる証拠を、トランスフェクションしたHEK−293Tおよびヒーラ細胞で得た。実際、これらの2個のタンパク質は、以下に記載するような図4Bの各レーンのようにトランスフェクションしたHEK−293(ATCC番号CRL1573)細胞の細胞ライゼート(cellular lysates)から容易に共沈し、抗FLAG mAb(コダック社製)で免疫沈降させられた。つぎに、免疫複合体を抗His6 mAbs(シグマ社製)を用いた慣用のウェスタンブロット操作によりHIS−RAP−2の存在について分析した(図4Bおよびデータは示していない)。しかしながら、このような複合体の形成は、インビトロ免疫複合体キナーゼアッセイにより我々が判定した範囲までRIP酵素活性をもたらさず、過剰に発現したRIPはRAP−2をリン酸化しなかった(データは示さない)。
【0202】
RAP−2が、ほかの既知細胞内シグナリングタンパク質のいずれかに結合するか否かを決定するための結合アッセイを行った。これらの試験では、タンパク質TRADD、MORT−1、p55−R、p75−R、MACHのRAP−2への結合能について試験した。しかしながら、RAP−2はこれらのタンパク質のいずれにも結合し得ないことがわかった。RAP−2はコントロールタンパク質、例えばラミン、サイクリンDのいずれにも結合しなかった。
【0203】
したがって、前記結果全てから、新規RAP−2タンパク質は非常に特異的な様式でRIPと相互作用し、RIPの特異的調節物質/媒介物質であるようだと示唆された。
【0204】
実施例4:RAP−2はNIKと相互作用し、Nf−κBおよびc−Jun依存性転写を調節する
酵母でのツーハイブリッド試験では、RAP−2−NIK相互作用が検出されなかった(前記参照)とはいえ、HEK−293Tほ乳類細胞でのトランスフェクション実験はこの複合体の安定な形成を示唆した。抗FLAG抗体をウェスタンに用いた後、抗His6を用いて免疫沈降したほかは、実施例3に記載のようにしてNIK−PAR−2相互作用を検出した(図4C)。全長NIKは酵母で発現する際その結合特性を失う傾向にあるので、酵母における結合とほ乳類細胞における結合との間のこのような不一致は驚くべきことではない。
【0205】
インビボでRIPおよびNIK両者がTNF誘導NF−κB活性化に必要不可欠な媒介物質であると信じられているという事実から、本発明者らは、細胞培養におけるRAP−2の過剰発現がこの特殊なシグナリング経路を妨げることができるか否かについて調べた。実験の最初のセットは、HIV−LTR最小プロモーターのコントロール下、ルシフェラーゼ遺伝子を含んでなるリポータープラスミドで一時的にトランスフェクションしたHEK−293T細胞で実施した。同様のセットアップで、RAP−2がTNFシグナリングに関与する種々の既知NF−κB誘導物質(NIK、TRAF2、RIPなど)の過剰発現および細胞外刺激による細胞処理の両方により惹起されるリポーター活性をダウンレギュレートし、ほとんど基準レベルに戻すことがまずわかった(TNFおよびPMA、図5A)。HEK−293T細胞をリポータープラスミドで(NF−κB(5A)についてはHIVLTR−LucまたはCMV−Luc、およびc−Jun(5B)についてはGAL4−Luc活性化アッセイ)、および示した誘導物質および、空のビヒクル(pcDNA3)または全長RAP−2をコードするプラスミド(pcRAP−2)のどちらかについての発現ベクターで一時的にトランスフェクションした。注意すべきことに、RAP−2が、RelAのようにシグナル伝達経路を低下させる限り、その効果を発揮しうるという事実は、一部のこのタンパク質作用が、種々の、さもなければ互いに異なるシグナリング経路に共通することを意味する(以下記載参照)。同時に、ルシフェラーゼのκB独立転写(CMV初期プロモーターによる)は妥協せず(図5A)、そのため本発明者らは、RAP−2による可能な基準(basal)転写/翻訳機構の遺伝子混乱は妨げられると信じる。これらの結果は続いてヒーラ細胞で確認された(データは示さない)。
【0206】
しかしながら、さらなる滴定アッセイで、実際の現象ははるかに複雑であることがわかった。実際、TRAF2を図6に示す種々の量のpcRAP−2を用いてHEK−293T細胞で一時的に発現させると、RAP−2は低濃度(20ng/106細胞個近辺)でその挙動が劇的に変化し、TRAF2 NF−κB誘導転写を促進した(図6A参照)。さらに、もとの挿入を逆方向のものと置き換えると、効果的なRAP−2アンチセンス発現ビヒクルが設計され、TRAF2を種々の示した量のpcRAP−2−a/s(アンチセンス)構築物を用いてHEK−293T細胞で一時的に発現し、RAP−2の連続的欠失効果を分析し、濃度に関する図式の概要を導いた。プロットの全体的傾向は、タンパク質のわずかな、内生的レベルに関する「ゼロ」地点にだいたいある特徴的領域を除いて、細胞応答がトランスフェクションしたRAP−2DNA量に関しておおまかには反対であることを示す(図6)。センス過剰発現とは反対に、アンチセンス導入によりダウンレギュウレートする与えられた遺伝子の発現は、恐らくより精密となることがわかるであろう。実際アンチセンスは細胞内のいかなる外来タンパク質の人工的生産にも関与せず、したがって明らかにRAP−2阻害許容量の有効性を強調する。さもなければ、前記低濃度での急激な変化はチャートのアンチセンス半分に反映し、反対しないとわかるであろう(図6)。
【0207】
RAP−2が関与する転写系の多様性を評価するため、本発明者らはc−Junの研究にシフトし、適当なストレス応答を設立し、維持する役割の核因子がNF−κBのものと同じようにほとんど決定的であることを証明した。市販の「Path Detect」系(ストラタジーン(Stratagene)社製)の成分を用いて、本発明者らはHEK−293Tおよびヒーラ細胞でのAP−1のいくつかの認識される活性に関し、RAP−2の同様の二層実施(bi-phase performance)について確認した(図5Bおよび6B参照)。
【0208】
実施例5:RAP−2タンパク質はJNK活性を変えずに、c−Jun高リン酸化を促進する
このように先にわかった転写効果に基づく機構を研究するためには、正常なシグナリングが滅びる正確なレベルを決定することが必要であった。c−Junのトランス活性化ポテンシャルは、アミノ末端活性化ドメインの2個のセリン残基(63Serおよび73Ser)の細胞外シグナル誘導リン酸化により制御されることがわかる。前記リン酸化に責任を負うJNK/SAPKタンパク質キナーゼはMAPキナーゼファミリーのかなり離れたサブセットを構築し、それ自身さらに上流の二元特異的(dual-specificity)キナーゼにより媒介される183Thrおよび185Tyrでのリン酸化を介して活性化される。従って、c−JunおよびJNK両内の適当な部位でのリン酸化状態は、タンパク質の活性化部位に影響するマーカーとして用いることができる。一時的にトランスフェクションしたHEK−293T細胞のライゼートを用いたウェスタンブロットでは、c−Jun媒介転写の傷害にもかかわらず、RAP−2は、多数の刺激により誘導される63Serでの内因性c−Junのリン酸化を著しく強化した(図7A参照)。マイナス印(−)により図7に記したpcDNA3担体またはプラス印(+)により同じ図に記したpcRAP−2のどちらかと一緒に示した発現構築物を用いてトランスフェクションしたHEK−293T細胞の細胞ライゼート全体を、ECL膜に移し、抗リン酸63Ser−c−Jun Absでプローブした(NEB)。図7Aの下のパネルに示した膜を、コントロールとして抗全体c−Jun Absを用いて再プローブした(NEB)。
【0209】
しかしながら、c−Junの全体量は修飾の可能な源として、c−Junレベル飛躍を除いて未変化を維持した。JNK1/2のリン酸化型に特異的な抗体は、c−Junのさらなるリン酸化はJNK活性のRAP−2依存後押しをもたらさないことを示すRAP−2過剰発現に応答するこれらの活性化キナーゼ量の実質的増大を検出しなかった(図7B)。増大に必要な期間hrTNFαで処理した、pcDNA3またはpcRAP−2のどちらかでトランスフェクションしたHEK−293T細胞由来の活性化JNK1/2は、図7に示すようにリン酸化(183Thr/185Tyr)JNK Abs(NEB)を用いて全ライゼートのウェスタンブロットにより検出した。
【0210】
後期のさらなる支持では、基質として免疫沈降したJNK1および精製したGST−c−Junを用いたインビトロキナーゼアッセイが本質的に同じ結果を出した(図7C)。HEK−293T細胞をHA−JNK1発現プラスミドとの種々の組み合わせで、空のベクター、pcRAP−2およびpcRIPを用いて同時トランスフェクションした。つぎに、JNK1はそのN末端HA−tagを介して免疫沈降し、細菌により産生した精製GST−Junリン酸化能をインビトロキナーゼアッセイにおける32P取り込みにより決定した。図7に示すように、SDS−PAGEにより反応生成物を分析した。
【0211】
RAP−2−IKK1複合体をトランスフェクションしたHEK293細胞から免疫沈降すると、RAP−2はリン酸化され、インビトロリン酸化条件下インキュベートされた。RAP−2のリン酸化の機能的役割についての探索では、このタンパク質のある特殊なセリン(位置148)の突然変異はそれによりJunリン酸化活性化を全体的になくすことが示された。図13に表されるように、野生型RAP−2の過剰発現がJunリン酸化の大規模な増大をもたらす一方、RAP2(S148A)の過剰発現はJunのリン酸化に全く影響しなかった。しかしながら、NF−κBについてのRAP2効果はこの突然変異により全く影響されなかった。これらの所見から、RAP2におけるセリン148のリン酸化はJunリン酸化についてのその効果に特に関与することがわかる。
【0212】
実施例6:RAP−2はDNAへのc−JunおよびRelA結合を阻害しない
実施例5に報告した実験では、NF−κBおよびAP−1シグナリングカスケードのRAP−2過剰発現の細胞調節標的が明らかでなかった事実から、本発明者らは転写に要求される核プロセスの完全さを調べた。トランスフェクションされたHEK−293T細胞の核抽出物を用いて実施した電気移動シフトアッセイ(EMSA)は、RAP−2がそのもとの認識配列に対応するオリゴヌクレオチドへのc−JunおよびRelAの結合を妨げないことを無条件に証明した(図8)。実際、RAP−2トランスフェクションされた細胞では、DNA/AP−1複合体形成効果の数倍の上昇が観察された。さらに、後の活性ドメインの立体的傷害をもたらしたRAP−2とc−Jun/RelAとの間には相互作用が観察されなかった。いずれにせよ、核へのRAP−2の侵入効果はエンハンサー結合事象の下流のいくつかの位置で標的にされることが示唆される。
【0213】
実施例7:RAP−2はヒストンアセチルトランスフェラーゼTIP60とインビボで相互作用する
TIP60(ジーンバンク U 74667)は、最近記載されたヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HATs)と呼ばれる核タンパク質のファミリーに属する。これらのタンパク質の酵素活性は、ヌクレオソーム複合体のクロマチン構造状態に関連する。HATは転写機構を有する特定の要素と頻繁に関連し、転写の速度を調節することができる。HATsは、ヒストンの特異的リジン残基上にアセチル基を転移することによって、開始部位の近辺のクロマチンパッケージを弛緩することにより作用し、それによりDNAへの種々の関連する因子の歩み寄りを促進する。明らかに、これらの補助核タンパク質の一つはエンハンサー結合因子とRNAポリメラーゼIIとの間のクロストークを容易にする。このため、本発明者らはTIP60がRAP−2と複合することができるか否かを調べた。ヒーラ細胞からの免疫沈降の後、ツーハイブリッド試験では決定的に、両系でRAP−2が強くTIP60と相互作用することを示した。とはいえ、本発明者らはHEK−293T細胞でのTIP60の同時発現の際、NF−κBおよびc−JunについてのRAP−2媒介効果の考慮すべき変化をみることはできなかった。コントロール実験、すなわち±TIP60(w/o RAP−2)刺激では同様の変化の欠如が観察され、短時間の読み出し(トランスフェクション後20〜30時間)で恐らくクロマチンとなるリポーターDNAの機会を排除し、HAT様酵素にとって実施するに充分な時間が残されないと観察された。
【0214】
実施例8:クローン#10 RAP−2と相互作用する新規タンパク質
B細胞cDNAライブラリーのツーハイブリッドスクリーニングにおけるベイトとして全長RAP−2タンパク質を用いて、本発明者らは本明細書中以下、クローン#10またはクローン#10コードタンパク質またはRAT結合タンパク質#10またはRBP−10と記載するRAP−2と相互作用する新規タンパク質を単離した(図10)。もとのクローン(約2.2kb)は約60kDaの分子量の推定ポリペプチドをコードすることがわかった。しかしながら、推定ATG第一コドンは明らかにこの配列から欠けていた。したがって、その考慮すべき長さにもかかわらず、得られたcDNAはさらに5’末端へオープンリーディングフレーム全体を再構成するよう拡張されている。
【0215】
クローン#10の結合レパートリーのツーハイブリッドアッセイでは、このタンパク質が、RAP−2のほかに、TRAF2にかなり強い親和性を有することが示された。しかしながら、クローン#10は、RIP、TRADD、MORT1、MACH、TNFR−I、TIP60およびNIKだけでなく、いくつかのコントロールタンパク質(例えば、ラミンおよびサイクリン)にも結合しなかった。しかしながら、酵母におけるNIKの挙動の特色を考慮すると、クローン#10のNIKへの結合は、ほ乳類細胞に見られるかもしれないということは排除できない。クローン#10は後のC末端200アミノ酸内、すなわちRIP、TIP60、NIKおよびIKKβの結合との関連に必要ではない領域でRAP−2を結合することが示された。
【0216】
ほ乳類293T細胞でのTRAF−2を用いたクローン#10の同時発現は、NIKを用いたクローン#10の同時発現がNIK(the latter)によりNF−κB活性化を強く高める一方、NF−κBのTRAF2媒介活性化を妨げた。これらの発見で、クローン#10の重要な制御機能が示された。観察された明確な調節効果は、恐らく細胞内のタンパク質作用の異なる、重ならない部位の存在を意味するであろう。
【0217】
RBP−10ホモログ近似の同定を目的とした数ラウンドのジーンバンクサーチにより、線虫由来の過程タンパク質で、生理学的役割はわからないF40F12.5(受け入れ番号S42834)を同定した。興味深いことに、F40F12.5はユビキチン結合プロテアーゼファミリーに広く保存される数メンバーにいくらか類似性を表すことがわかった。これらの酵素は、大部分の細胞内タンパク質変性事象の責任を負うと知られるユビキチン化機構の破壊的効果と釣り合う。ユビキチンリガーゼが、ポリユビキチンツリー(poly-ubiquitin tree)の、変性するタンパク質への付着に責任を負うのに対し、ユビキチンプロテアーゼはツリー成長の効果的な分枝を妨げる。しかしながら、前記ユビキチン結合プロテアーゼに対する類似性に基づくF40F12.5の機能に関するこのような仮定は、いまだこの特殊なタンパク質がユビキチンポリマー性酵素活性を有するか否かについて調べられていないので疑問視されると考えられる。さらに、2点ほどこのような全くありそうもない一致があるようだ。
【0218】
a)ユビキチンプロテアーゼのどのサブクラスにおいてもコア触媒領域を構成すると信じられている残基は、F40F12.5にもRBP−10にも保存されていない。
b)その触媒部位を除いて、種々の種(細菌からヒトまで)由来のユビキチン結合プロテアーゼファミリーの酵素は、実質配列類似性を有さず、一方F40F12.5およびクローン#10はある程度の相同性を表す。
【0219】
実施例9:クローン#84:RAP−2相互作用タンパク質
B細胞cDNAライブラリーのツーハイブリットスクリーニングで、ベイトとして全長RAP−2タンパク質を用いて、さらなるRAP−2結合タンパク質を特定し、クローン#84と命名した。
【0220】
クローン#84は、TRAF2、MORT1、TRADD、RIP、NIK、TIP60およびラミンといったほかの分析したタンパク質と相互作用を表さない一方で、全長RAP−2には特異的に結合することがわかった。機能的p53タンパク質をいだく細胞での特異的にアップレギュレーションされる転写物として特定され、以前にクローニングされた細胞成長制御タンパク質CGR19をコードするcDNAの配列に、クローン#84の部分的5’配列は一致することがわかった(Madden S. et al., 1996, 受け入れ番号#U66469)。CGR19の配列分析により、そのC末端ドメインでC3HC4亜鉛フィンガーモチーフを特定した(RINGフィンガーも参照のこと)。CGR19の発現は、いくつかの細胞系の成長を抑制することがわかった。RAP−2への結合によるNF−κB制御におけるCGR19タンパク質の関与は、TNF−Rファミリーのメンバーによる細胞サイクル制御ネットワークの調節の可能性を示した。
【0221】
実施例10:RAP−2の構造−機能相関
A.結合領域
連続的欠失分析を用いて、RAP−2内の結合領域をマッピングし、RIP、NIK、TIP60結合だけでなく、自己会合ドメインをも同定した(図11)。
【0222】
RIPへの結合は、アミノ酸177〜218間で始まり、アミノ酸264で終結するRAP−2タンパク質の領域にマッピングされた。
【0223】
これまでに、IKKβまたはNIK結合部位、それぞれアミノ酸95〜264およびアミノ酸1〜264のどちらもRAP−2内のRIP結合部位と重ならないことがわかった(図11)。
【0224】
TIP60への結合は明らかにアミノ酸95〜264内にある領域内にマッピングされる。アミノ酸95〜309にある欠失断片を用いた相互作用がなければ、この特殊な欠失に適する特異的な妨害形態をもたらすであろう。
【0225】
欠失断片への結合における同様の不一致が、クローン#10の結合について、およびRAP−2の自己会合についてわかるであろう。しかしながら、TIP60に反対して、全長RAP−2がアミノ酸218〜416を含む欠失断片だけでなく、アミノ酸1〜264を含む欠失断片に結合するという事実は、ホモ二量化に関与する領域がアミノ酸217〜264間に位置することを意味する。
【0226】
前記例外により、クローン#10によりコードされるタンパク質は明らかにアミノ酸218〜309の間で始まり、アミノ酸416で終結する領域内で結合し、このためその結合部位はRIP、NIK、IKKβおよびTIP60についての結合部位を有する重なる領域を含んでなるであろう(図11)。
【0227】
B.機能的領域
本発明者らが現在知る限り、RAP−2の全機能的効果(すなわち、NF−κB阻害およびc−Jun高リン酸化の誘導)は同じ領域にマッピングされる(図11)。
【0228】
さらに、これらの実験で用いられた全誘導物質によるシグナリングの充分に効果的な調節のための領域はタンパク質のN末端セグメントに位置する。
【0229】
全長タンパク質により引き起こされるものと比較して有意に弱く、このため内因性RAP−2の凝集を強いることにより生じるけれども、アミノ酸95〜416に強調される領域は効果を有する。
【0230】
さらに、RelAを除いて、本発明者らの実験に用いた誘導物質全ての効果はRAP-2の約100個のN末端アミノ酸により媒介された。実際、アミノ酸1〜102を包含する断片でさえ、たとえかなり穏やかではあっても、明確な効果を媒介する(図12B)。
【0231】
他方、RelAの好結果の誘導はよりずっと長いRAP-2タンパク質の部分を要する。これまでに、本発明者らは明らかにある特異的な、RelA関連の結合特性を有するアミノ酸157〜264間の領域にあると考えられる、アミノ酸1〜264にあるこの領域の境界を突き止めた。
【0232】
C.結合−機能相関
図11および12に示した結果から、
a)RelAを除いて、RIP、クローン#10および恐らくNIKおよびTIP60に対するRAP-2結合は、NF-κBに誘導される過剰発現の阻害剤として、タンパク質の機能に要求されない。
b)RelA過剰発現誘導活性に対するRAP-2の効果は、明らかに、少なくとも部分的に、異なる結合現象により媒介される。本質的には、これまでに実施された実験から推測されるように、前記タンパク質は全て、与えられた活性に寄与するとわかるであろう。
【0233】
RAP-2とRIP間の相互作用の正確な部位は決定されたが、この部位はRIPおよびRAP-2に特異的なものであって、RIPと相互作用するほかの既知タンパク質、例えばMORT-1、TRADD、FAS-Rおよび可能性としてTRAF2とは共有されない(malinin et al., 1997 参照)。(前記種々のデータベースにおける配列分析および配列比較から)RAP-2は「細胞死誘導領域」、MORT MODULE、タンパク質ドメイン(例えば、ICE/CED3モチーフ)、キナーゼドメイン/モチーフまたはTRAFドメインを有さないこということもわかるであろう。この流れで、生物学的活性分析により、RAP-2が明らかに以下の特徴を有することも示された。
【0234】
(i)過剰発現すると、RAP-2はTNFによる、またはTRADD、RIP、TRAF-2、NIKもしくはp65NF-κBサブユニットの過剰発現によるNF-κB活性を強く阻害する。
(ii)RAP-2は、JNK活性を変えることなく、c-Jun高リン酸化を強化する。
(iii)RAP-2は、欠失分析により示されるように、RIPの細胞死誘導領域またはRIPへの結合に対するRIPのキナーゼ活性を必要としない。
(iv)前記欠失分析に基づき、RAP-2のRIPへの結合領域は約200アミノ酸のN末端領域に狭められる。
(v)RAP-2はトランスフェクションしたほ乳類細胞ではNIKに結合するが、酵母では結合しない。
【0235】
したがって、前記観点から、RAP-2はRIP媒介細胞内シグナリング経路に関与するであろう、高い特異性を有するRIP結合タンパク質であり、そのためRIP調節物質/媒介物質でもあると考えられる。
【0236】
前記のように、RAP-2はRIP活性の調節/媒介に関与するようである。細胞内では、これらは細胞生存経路(恐らくTRAF2との相互作用を介するNF-κB活性化)および、炎症および細胞死経路(その「細胞死誘導領域」またはMORT-1、TRADD、p55-R、FAS-Rといったほかのタンパク質およびMACH、Mch4、G1などの関連タンパク質との相互作用を介して独立して)におけるRIPの関与である。RAP-2がRIPの活性を調節/メディエートする可能性は前記で詳述した。例えば、RAP-2-RIP相互作用は細胞死または細胞生存経路のどちらかを増大し、細胞死または細胞生存経路のどちらかを阻害してもよく、この増大または阻害はこれらの二種の対峙する細胞内経路のほかのメンバーの関連活性に依存しているようである。RAP-2は、RIP分子およびほかのRIPまたはRAP-2結合タンパク質のメンバーを凝集させるためのドッキングタンパク質として働き、つぎにその凝集は細胞死または細胞生存のどちらか(または両方)に向けて、細胞内でこれらの経路のほかのメンバーの関連活性/量に依存して機能するだろう。
【0237】
実施例11:RAP-2に対するポリクローナル抗体の製造
まず、ウサギに完全フロイントアジュバントで乳化したRAP-2の純粋調製物5μgを皮下注射した。3週間後、再度不完全フロイントアジュバントで調製したRAP-2を5μg皮下注射した。さらにPBS溶液で二度RAP-2を10日間隔で注射した。最後の免疫化の10日後、ウサギの血を抜き殺した。抗体レベルの進展はラジオイムノアッセイにより追跡した。125I標識RAP−2を、ウサギ血清の種々の希釈液(1:50、1:500、1:5000および1:50000)と混合した。タンパク質Gアガロースビーズ懸濁液(20μl、ファルマシア社(Pharmacia)製)を総量200μlで加えた。混合物を1時間室温に放置し、つぎにビーズを3度洗浄して、結合した放射活性を測定した。ヒトレプチンに対するウサギ抗血清をネガティブコントロールとして用いた。RAP-2抗血清の力価をネガティブコントロールのものと比較して測定した。
【0238】
実施例12:RAP-2に対するモノクローナル抗体の製造
雌Balb/Cマウス(3ヵ月齢)にまず完全フロイントアジュバントで乳化した精製RAP-2を2μg注射し、3週間後、不完全フロイントアジュバントで皮下注射した。10日間隔で3度さらに、PBSを用いて皮下注射した。最終ではIRIAにより決定した最高結合力価を示すマウスへの融合の4および3日前に腹膜投与した(以下記載参照)。融合はNSO/1骨髄腫細胞系、および融合パートナーとして動物の脾臓およびリンパ節両者から調製したリンパ球を用いて実施した。融合した細胞をマイクロ培養プレートに蒔き、HATおよび15%ウマ血清を足したDMEMにてハイブリドーマを選択した。RAP-2に対する抗体を生産するとわかったハイブリドーマを、限定希釈法によりサブクローン化し、腹水の産生のためプリスタンを満たしたBalb/Cマウスに注射した。抗体のイソタイプを市販で入手可能なELISAキット(アマルシャム社(Amersham)製、U.K)を用いて決定した。
【0239】
抗RAP-2モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニングは以下のように実施した。ハイブリドーマ上清を逆固相ラジオイムノアッセイ(IRIA)により抗RAP-2抗体の存在について試験した。ELISAプレート(ダイナッテクラボラトリー社(Dynatech Laboratories)製、Alexandria、VA)をTalon精製IL-18BPa-His6(10μg/ml、100μl/ウェル)で被覆した。つぎに4℃で一晩インキュベーションし、プレートを2度BSA(0.5%)およびツイーン20(0.05%)を含有するPBSで洗浄し、少なくとも2時間37℃で洗浄溶液中ブロックした。ハイブリドーマ培養上清(100μl/ウェル)を加え、プレートを4時間37℃でインキュベートした。プレートを3度洗浄し、ヤギ抗マウスセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP、Jackson Labs、1:10000、100μl/ウェル)のコンジュゲートを2時間室温で加えた。プレートを4度洗浄し、基質としてH2O2を用いたABTS(2,2’-アジノ-ビス(3-エチルベンズチアゾリン-6-スルホン酸、シグマ社製)により色素発色させた。プレートを自動ELISAリーダーにより読みとった。少なくとも5倍ネガティブコントロール値より高いODを示す試料を陽性と見なした。
【0240】
RAP-2抗体をアフィニティークロマトグラフィーによりRAP-2の精製に用いた。
【0241】
実施例13:ELISA試験
マイクロタイタープレート(Dynatech or Maxisorb、Nunc)を抗RAP-2モノクローナル抗体(血清を含まないハイブリドーマ上清または腹水免疫グロブリン)で一晩4℃で被覆した。プレートをBSA(0.5%)およびツイーン20(0.05%)を含有するPBSで洗浄し、同じ溶液中少なくとも2時間37℃でブロックした。試験試料をブロッキング溶液に希釈し、ウェルに4時間37℃で加えた(100μl/ウェル)。つぎに、プレートを3度ツイーン20(0.05%)を含有するPBSで洗浄し、ウサギ抗RAP-2血清を加え(1:1000、100μl/ウェル)、さらに一晩4℃でインキュベートした。プレートを3度洗浄し、ヤギ抗ウサギセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP、Jackson Labs、1:10000、100μl/ウェル)のコンジュゲートを2時間室温で加えた。プレートを4度洗浄し、基質としてH2O2を用いてABTS(2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンズチアゾリン−6−スルホン酸、シグマ社製)により色素発色させた。プレートを自動ELISAリーダーにより読みとった。
【0242】
本発明の全てをここに記載し、当業者には、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく、また不適当な実験もなく、広範囲の同じパラメーター、濃度および条件により同じく実施することができるよう考えられるであろう。
【0243】
本発明をその特別な実施態様と共に記載したが、さらなる修飾もありうることが理解されるであろう。本出願は、本発明に従ういかなる変型、使用または適応、一般には本発明の原理を包含するものとし、本発明が属する技術において既に知られるような本開示からのこのような出典または習慣的実施をも包含し、添付したクレーム範囲のような本明細書中前記の本質的特徴に用いることができるであろう。
【0244】
本明細書中引用した全ての参考文献は、ジャーナルの論文または要約、公開されたもしくは対応する米国または外国特許出願、発行米国または外国特許、またはほかのいかなる参考文献をも包含し、本明細書中参考文献により全体が盛り込まれ、引用した参考文献のデータ、表、図および文章の全てを包含する。さらに、本明細書中引用した参考文献において引用された参考文献の全内容もまた参考文献により全体が盛り込まれている。
【0245】
既知の方法工程、慣用の方法工程、既知の方法または慣用の方法についての参照はいずれにせよ、本発明の観点、記載または実施態様が関連技術において開示され、教示または示唆されたという認容ではない。
【0246】
前記特別な実施態様の記載は、ほかの者が当該技術分野の知識を用いて(本明細書で引用した参考文献の内容を含む)、不適当な実験もなく、本発明の一般的趣旨から逸脱することもなく、種々の応用のためにこの特別な実施態様を容易に修飾および/または適用できる本発明の一般的性質を完全に表す。したがって、このような適用および修飾は、本明細書中記載する教示および指導に基づき、開示した実施態様に等しい範囲内あるものとする。本明細書における文言および用語は、当業者が有する通常の知識と組み合わせて、本明細書の教示および指導により技術者に解釈されるよう、記載の目的のためにあり、限定されるものではないことがわかるであろう。
【0247】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
RAP−2結合タンパク質、そのアイソフォーム、断片または類似体をコードしているDNAであって、配列番号3に表された配列またはRAP−2に結合することができるそのアイソフォーム、断片または類似体を含むDNA。
【請求項2】
RAP−2機能を調節/媒介することのできるタンパク質をコードしている請求項1記載のDNA。
【請求項3】
請求項1または2記載のDNAによりコードされ、RAP−2の機能を調節または媒介することができるRAP−2結合タンパク質、そのアイソフォーム、断片または類似体。
【請求項4】
RAP−2に結合できるタンパク質の単離および同定方法であって、RAP−2タンパク質、そのアイソフォーム、断片または類似体をコードしているDNA配列が1つのハイブリッドベクターによって運搬され、cDNAまたはゲノムDNAライブラリー由来のDNA配列が第2のハイブリッドベクターに運搬され、ついでベクターが酵母宿主細胞を形質転換するために使用され、正の形質転換された細胞が単離され、そののち該RAP−2に結合するタンパク質をコードしているDNA配列を得るため該第2のハイブリッドベクターを抽出する、酵母ツーハイブリッド手法の適用を含み;該DNA配列が、
(a)配列番号4に示すアミノ酸配列を有するRAP−2タンパク質をコードするDNA;
(b)配列番号1または2に示すDNA
(c)中程度にストリンジェントな条件下で(a)または(b)の配列にハイブリダイズすることができ生物学的に活性なRAP−2タンパク質をコードするDNA
(d)遺伝子コドンの結果として(a)または(b)のいずれかに規定されるDNA配列に縮重し、かつ生物学的に活性なRAP−2タンパク質をコードするDNA;および
(c)(a)に示すアミノ酸配列の少なくとも一部を有するRAP−2タンパク質、アイソフォーム、断片または類似体をコードする(b)記載のDNA
からなる群より選択される方法。
【請求項5】
炎症、細胞死および/または細胞生存を調節するための医薬組成物の製造における、1つまたはそれ以上の請求項3記載のRAP−2結合タンパク質、またはそのアイソフォーム、断片または類似体の使用。
【請求項6】
前記RAP−2結合タンパク質が、クローン10によってコードされる請求項5記載の使用。
【請求項1】
RAP−2結合タンパク質、そのアイソフォーム、断片または類似体をコードしているDNAであって、配列番号3に表された配列またはRAP−2に結合することができるそのアイソフォーム、断片または類似体を含むDNA。
【請求項2】
RAP−2機能を調節/媒介することのできるタンパク質をコードしている請求項1記載のDNA。
【請求項3】
請求項1または2記載のDNAによりコードされ、RAP−2の機能を調節または媒介することができるRAP−2結合タンパク質、そのアイソフォーム、断片または類似体。
【請求項4】
RAP−2に結合できるタンパク質の単離および同定方法であって、RAP−2タンパク質、そのアイソフォーム、断片または類似体をコードしているDNA配列が1つのハイブリッドベクターによって運搬され、cDNAまたはゲノムDNAライブラリー由来のDNA配列が第2のハイブリッドベクターに運搬され、ついでベクターが酵母宿主細胞を形質転換するために使用され、正の形質転換された細胞が単離され、そののち該RAP−2に結合するタンパク質をコードしているDNA配列を得るため該第2のハイブリッドベクターを抽出する、酵母ツーハイブリッド手法の適用を含み;該DNA配列が、
(a)配列番号4に示すアミノ酸配列を有するRAP−2タンパク質をコードするDNA;
(b)配列番号1または2に示すDNA
(c)中程度にストリンジェントな条件下で(a)または(b)の配列にハイブリダイズすることができ生物学的に活性なRAP−2タンパク質をコードするDNA
(d)遺伝子コドンの結果として(a)または(b)のいずれかに規定されるDNA配列に縮重し、かつ生物学的に活性なRAP−2タンパク質をコードするDNA;および
(c)(a)に示すアミノ酸配列の少なくとも一部を有するRAP−2タンパク質、アイソフォーム、断片または類似体をコードする(b)記載のDNA
からなる群より選択される方法。
【請求項5】
炎症、細胞死および/または細胞生存を調節するための医薬組成物の製造における、1つまたはそれ以上の請求項3記載のRAP−2結合タンパク質、またはそのアイソフォーム、断片または類似体の使用。
【請求項6】
前記RAP−2結合タンパク質が、クローン10によってコードされる請求項5記載の使用。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【公開番号】特開2009−148285(P2009−148285A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38597(P2009−38597)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【分割の表示】特願2000−536855(P2000−536855)の分割
【原出願日】平成11年3月18日(1999.3.18)
【出願人】(500018608)イエダ リサーチ アンド ディベロップメント カンパニー リミテッド (35)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【分割の表示】特願2000−536855(P2000−536855)の分割
【原出願日】平成11年3月18日(1999.3.18)
【出願人】(500018608)イエダ リサーチ アンド ディベロップメント カンパニー リミテッド (35)
【Fターム(参考)】
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