TRIFバイアスを誘発するための方法
本発明は、TLR4受容体複合体を介してTRIFバイアスシグナルを誘発するための合成リピッドA模倣物、特にAPG化合物CRX547の使用に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TLR4受容体複合体を介してTRIFバイアスシグナルを誘発するための合成リピッドA模倣物、特にAPG化合物CRX547の使用に関する。
【0002】
本出願は、米国仮特許出願第61/140226号(2008年12月23日出願)の利益を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
(37 C.F.R.1.71(E) 37 C.F.R.1.71(E)に従う著作権通知)
本特許書類の開示内容の一部は著作権保護を受ける材料を含む。著作権者はその特許文献または特許開示内容をいずれかの者によってファクシミリによって再生されることに対して、それが米国特許商標庁のファイルまたは記録において現れるので異議はないが、それ以外はすべての著作権をどのような場合でも保持する。
【0004】
(連邦政府による資金提供を受けた研究に関する記載)
この発明の態様は、国立アレルギー・感染症研究所との契約番号HHSN266200400008C/N01-AI-40008に従って米国政府の支援によってなされている。米国政府はこの発明に対して特定の権利を有する。
【背景技術】
【0005】
Toll様受容体(TLR)は、ペプチドグリカン(TLR2),CpG DNA(TLR9),ウイルスRNA(TLR3/7/8)、細菌フラジェリン(TLR5)およびLPS(TLR4)を含む、保存的微生物モチーフを認識するパターン認識受容体である。特に、TLR4はリガンド結合細胞外ロイシンリッチ領域反復ドメインおよび細胞質中のToll-/IL-1Rホモロジードメイン(細胞内のシグナル伝達アダプターを促す)(Nahori et al., 2005)により特徴づけられる。リポ多糖類(LPS)、リポテイコ酸(LTA)、フィブロネクチン、また、RSV、タキソールおよびワクチンアジュバントモノホスホリルリピッドA(MPL)の融合蛋白を含む、TLR4のいくつかのリガンドが記載されている。TLR4の活性化に関連する2つの主要なシグナル伝達経路、つまりMyD88依存的およびTRIF依存的経路、が記載されている。
【0006】
最近、他のTLR4アンタゴニストと比べた場合、サルモネラミネソタの細胞壁由来の精製された解毒糖脂質の誘導体であるTLR4リガンドMPLがTRIF依存的シグナルおよびMyD88依存的シグナルに対するバイアスを示すことが報告されており、MPLが、PI3キナーゼ経路などの追加的下流シグナル経路を誘発することでMyD88依存的炎症性経路の能動的抑制を誘発するであろうと想定された(Mata-Haro et. al. 2007)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Nahori et al., 2005
【非特許文献2】Mata-Haro et. al. 2007
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
アミノアルキルグルコサミニド4‐リン酸(AGP)の選ばれた異性体を投与することを含む相対的TRIFバイアス反応を誘発する方法を提供する。本明細書に開示の合成リピッドA模倣物によるTRIF依存的シグナルの選択的誘発は、炎症性サイトカイン/ケモカインの誘発に関連する毒性の副作用の危険性を緩和する一方で、免疫反応を選択的に変化させるワクチンアジュバントまたは免疫調節物質の開発を可能にする。
【0009】
本発明は、TLR4受容体複合体を介してTRIFバイアスシグナルを誘発するための合成リピッドA模倣物、特にAPG化合物CRX547の使用に関する。CRX547はAGP CRX527のジアステレオマーである。用語「TRIFバイアス」とは、他の化合物(例えば、CRX527)のMyD88依存的シグナル伝達と比較して、化合物(例えば、CRX547)のMyD88依存的シグナル伝達の低減を言う。好ましい一実施形態において、TRIFバイアスは低減したMyD88シグナル伝達を提供し、TRIF依存的シグナル伝達を維持または増加する。他の好ましい一実施形態において、本発明はin vitroで樹状細胞からの有意なレベルのTh1細胞媒介性免疫を指向するサイトカインであるIL−12を誘発するとともに、大幅に少ない炎症性メディエーターであるIL−23(炎症性メディエーターのIL−17とTNFαを産生するTh17T細胞の維持を促するサイトカイン)を誘発することによって、TRIFバイアスを示す(Wilson et. al.2007)。Th17T細胞は関節炎、炎症性腸疾患、および多発性硬化症を含めた炎症性自己免疫疾患の発症に結び付けられていた(McGeachy et. al. 2007)。
【0010】
本発明のいくつかの実施態様を簡単に記載する。
【0011】
L−セリルAGP CRX527を含有する組成物により誘発されるMyD88依存的シグナル伝達のポテンシャルを有意に低減しながら、TLR4受容体複合体を介して有意なTRIF依存的シグナルを誘発する方法であって、該組成物中のL−セリルAGPのD−セリル誘導体を置換することを含む、上記方法。
【0012】
TRIF依存的サイトカインを誘発し、リピッドA模倣物アジュバント組成物によりヒト細胞内に誘発されるMyD88依存的サイトカインのレベルを低減する方法であって、ヒト細胞にCRX547を投与することを含む、上記方法。
【0013】
CRX527の合成D−セリル誘導体をヒトに投与することを含む、L−セリルAGP CRX527により誘発されたレベルと比べてヒト細胞中のIL−12p70とIL−23をより低いレベルに誘発する方法。
【0014】
CRX527により誘発されたIRF3と同等か高いレベルであるが、有意に低いレベルのNF-κB活性を活性化する方法であって、527のD−セリルジアステレオマーを投与することを含む、上記方法。
【0015】
第二合成リピッドAであるCRX547を投与することを含む、第一リピッドA模倣物によるMyD88依存的サイトカイン誘発を抑制する方法。
【0016】
ヒト細胞内での有益なTRIF依存的シグナル伝達のアジュバント組成物誘発を向上させる方法であり、アジュバント組成物はCRX547ではないAGPを含有しており、該方法はアジュバント組成物にCRX547を組み込むことを含む、上記方法。
【0017】
ヒトの免疫反応の向上に使用するCRX547を含むリピッドA模倣物組成物であり、CRX547を含まないリピッドA模倣物組成物と比べてTRIF依存的サイトカインは増加し、MyD88依存的サイトカインは減少する、上記組成物。
【0018】
ヒトで免疫反応を起こすのに使用するCRX547を含むリピッドA模倣物組成物であり、CRX547を含まないリピッドA模倣物組成物と比べて、NF-κB 活性は減少するが、しかし、同等か高いレベルのIRF3が認められる、上記組成物。
【0019】
ヒトで免疫反応を起こすのに使用するCRX547を含むリピッドA模倣物組成物であり、CRX547を含まないリピッドA模倣物組成物と比べてIL−12p70およびIL−23のレベルは減少する、上記組成物。
【0020】
ヒトの免疫反応の起こす際に抗原と合わせて使用するリピッドA模倣物アジュバントであり、CRX547を含まないリピッドA模倣物アジュバントと比べてIL−12p70およびIL−23のレベルは減少する、上記アジュバント。
【0021】
本明細書で説明される方法のいずれかにおいて使用するためのCRX547およびCRX547を含むリピッドA模倣物。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】CRX527およびCRX547ならびにエステル連結脂肪アシル鎖、CRX527およびCRX547をもつアミノアルキルグルコサミニド4‐リン酸塩。
【図2】ヒトPBMCにおける(A)MyD88依存的および(B)TRIF依存的サイトカインおよびケモカインの誘発についての、S. minn. Re595 LPSとリピッドA模倣物、CRX527およびCRX547の比較。
【図3】S. minn. Re595 LPS, CRX527およびCRX547を用いたヒトの単球由来樹状細胞の処理による(A)IL−12p70および(B)IL−23の誘発。
【図4】MyD88(MyD88−DN)およびTRIF(TRIF−DN)のドミナントネガティブ構築物を発現するプラスミドの形質移入によるヒトマクロファージ細胞株における(A)MyD88および(B)TRIF依存的サイトカイン/ケモカインの誘発の抑制。
【図5】エンドサイトーシス阻害剤であるジナソアの存在下でCRX−527、CRX−547、およびLPSによる誘発される(A)MyD88依存的(MIP−1α)および(B)TRIF依存的(RANTES)サイトカイン/ケモカイン。
【図6】画像ストリームゲーティング法。
【図7】ヒト単球細胞(MM6)はCRX−527またはCRX−547のいずれかで5分、15分、30分、または120分間処理し、NFкBの核移行は核染料(DRAK−5)と転写因子の共局在として定量化した。
【図8】huTLR4/huMd-2/huCD14形質移入HEK293細胞がS. minn. Re595 LPS、CRX−527、およびCRX−547で処理された時のNF-κB誘導性プロモータ活性の比較。
【図9】CRX−547の濃度上昇の存在下での、CRX−527ならびにLPSによる(A)MyD88依存的および(B)TRIF依存的サイトカイン/ケモカイン誘導の抑制。
【図10】(A)CRX−547の濃度上昇の追加によるCRX−527誘発性 TNFαの抑制(B)シルド回帰分析はCRX−527とCRX−547の両方のEC50と類似するCRX−547親和性(0.33nM)の推定値をもたらす。
【図11】CRX−547の濃度上昇の存在下でのCRX−527およびLPS MyD88依存性(TNFα)サイトカイン誘発の抑制。
【図12】CRX−547の濃度上昇の存在下でのCRX−527−誘発性NFкBの核移行の抑制。
【図13】シグナル伝達活性およびケモカイン誘導に対するCRX−527/CRX−547の安定性増強修飾の効果。LとDの異性体対CRX−527/CRX−547および1a/1bによる、(A) huTLR4/huMD-2/huCD14-形質移入HEK293細胞におけるNFкB シグナル伝達と(B)ヒト単球細胞(MM6)におけるMyD88依存的(MIP−1β)誘発の比較。
【図14】CRX−527で処理されたヒト一次、PBMC由来単球のウェスタンブロット分析であって、TRIFのホスホIRF3下流の活性化の動態およびレベルの類似、ならびにCRX−547で刺激された細胞よりもMyD88のIRAK1下流の方がより大きな分解を示す。
【図15】CRX−527で処理されたMM6細胞のウェスタンブロット分析であって、CRX−547で刺激された細胞よりもMyD88のIRAK4下流の方がより大きな分解を示す。
【図16】LとDの異性体対、化合物2aおよび2bによる(A) huTLR4/huMD-2/huCD14-形質移入HEK293細胞におけるNFкB シグナル伝達と(B)ヒト単球細胞(MM6)におけるMyD88依存的(MIP−1β)誘発の比較。
【図17】ヒト(上段)かマウス(下段)TLR4/MD−2/CD14のいずれかで形質移入されたHEK293細胞におけるCRX−527、CRX−547、およびLPSよるNFкB−依存的プロモータ活性の誘発。
【図18】同系のヒト/マウスTLR4/MD−2またはキメラ 組み合わせ(huTLR4/muMD2またはmuTLR4/huMD-2)のいずれかで形質移入されたHEK293細胞におけるNFкB−依存的プロモータ活性の誘発。
【図19】示されたアゴニストで処理されたラビットの体重変化。
【図20】示されたアゴニストで処理されたラビットの接種後の体温。
【図21】示されたアゴニストで処理されたDraizeによる注射部位反応。
【図22】示されたアゴニストを作用させたラビットの注射部位病理組織検査。示されたアゴニストで処理されたラビットの体重変化。
【図23】0.01uMのCRX−527またはCRX−547で処理後のヒトPBMC由来単球における(A)MyD88依存的、および(B)TRIF依存的サイトカイン/ケモカイン遺伝子発現の誘発。
【図24】CRX−547(2ロット)およびCRX−527(実験は一度実施)で試験したBALB/cマウスからのPBMC。
【図25】CRX−527、CRX−547、化合物1aおよび1bによるTRIF依存的(IP−10)の誘発。
【図26】CRX−527、CRX−547、化合物1aおよび1bによるMyD88依存的(TNFα)サイトカイン/ケモカインの誘発。
【図27】AGPおよびそれらのD異性体で刺激した4時間後のTNFαレベル。
【図28】AGPおよびそれらのD異性体で刺激した4時間後のIP−10レベル。
【図29】RAW264.7細胞におけるCRX−547およびCRX−527刺激後のシグナル伝達タンパク質のウェスタンブロット分析。
【図30】安定的に形質移入されたRAW264.7細胞。
【図31】LとDの異性体で刺激した20時間後のIP−10産生(siRNA 細胞株は各試験において無関係な対照と比較)。
【図32】LとDの異性体で刺激した20時間後のIP−10産生(siRNA 細胞株は各試験において無関係な対照と比較)
【図33】LとDの異性体による刺激の20時間後のTNFα産生。
【図34】LとDの異性体による刺激の20時間後のTNFα産生。
【図35】TNFα産生のためにCRX−527、CRX−547、化合物1aおよび1bで4時間刺激したRAW264.7siRNA細胞株。
【発明を実施するための形態】
【0023】
序論
リピッドAは、膜結合TLR/MD−2TLR4受容体複合体に結合しているLPS分子内の活性、疎水性構造モチーフである。リピッドAはバクテリア種の間でかなりのばらつきがある。個々のグラム陰性菌は表面上でリピッドAの構造を調節することが出来き、程度は異なっても炎症になる(Bishop et al. 5071-80; Guo et al. 189-988)。アシル鎖の数と長さおよびリン酸化のパターンの変化が極めて強力なアゴニストからアンタゴニストまでのリピッドA分子の活性を変化させることが示されている。(Hawkins, 2002 30067 /id, Stover at al, Seydel et. al. 2000)。ほとんどのLPS種の毒性はTLR4受容体複合体に関するリピッドA部分との相互作用により決定される(Baker et al. 1992)。アシル鎖の数、長さ、および配置、ならびに荷電基の数および位置における差異はリピッドAに対する免疫学的応答のレベルと性格の両方に有意に影響することが示されている(Teghanemt et al. 2005, Stover et. al. 2004, Schromm et al. 1998)。さらに、単糖、リピッドA模倣物、アミノアルキルグルコサミニド4リン酸塩(AGP)とTLR4アゴニストおよびアンタゴニスト活性とを合わせたライブラリーの設計と合成も記載されている(Stover et al. 4440-49;Persing et al. S32-S37;Johnson et al. 2273-78)。
【0024】
上記のように、2つの主要なシグナル伝達経路はTLR4アゴニストによるTLR4活性化、MyD88依存的およびTRIF依存的経路に沿って記載されている。MyD88依存的シグナルは、2つのToll/インターロイキン−1受容体(TIR)ドメイン含有アダプタータンパク質、Mal/TIRAPおよびMyD88をTLR4のTIRドメインに連続的または同時的に結合することに依存している(Fitzgeral et. al. 2001)。TRIF依存的シグナルは、TIRドメイン含有アダプタータンパク質、TRAM/TICAM−2およびTRIF/TICAM−1がTLR4−TIRドメインに連続的または同時的に結合をすることを要求する(Rowe et al. 6299-304;Yamamoto et al. 1144-50)。2つの経路とも先天および適応免疫の連結に関係している(Kawai et. al. 2001, Kaisho et al. 2001)。
【0025】
リピッドA−レセプター相互作用の下流、特定のTLR4依存的シグナル伝達経路、(MyD88依存的およびTRIF依存的経路)は受容体結合に対する細胞応答を決定する。MyD88依存的シグナルは、TNFαおよびIL−1βなどの炎症性メディエーターの合成と分泌により特徴づけされる炎症反応を促す(Huang et. al. 2004)。MyD88依存的経路を介するシグナルは、初期のNF-κB 活性化および腫瘍壊死因子-α(TNF−α)などの炎症性サイトカイン、インターロイキン(IL)−1β およびMIP−1αなどのケモカインの放出を誘発する。
【0026】
TRIF依存的シグナルは、1型IFNなどの免疫仲介物質、一部のIL−12ファミリーメンバーおよび樹状細胞成熟を誘発しT−細胞成熟に影響するケモカインの産生を促す。TRIF依存的経路を介したシグナルは、MyD88経路を介するシグナルよりもNF-κB の活性化(Hoebe et al. 743-48)を低下させ、遅らせ、しかしより維持しながら、インターフェロン調節因子である(IRF)−3およびIRF−7の活性化と核移行を誘発する(Kawai et al. 5887-94)。IRF−3およびIRF−7の活性化はIFNβの転写および続く細胞外放出を駆動する。次にIFN−α/β受容体へのIFNβのオートクリンまたはパラクリン結合は、JAK/STAT経路を活性化することでIFNαとIFNβ、ならびに、インターフェロン誘導性タンパク質―10(IP−10)、活性化正常T細胞における発現および分泌調節性(RANTES)、およびマクロファージ走化性タンパク質‐1(MCP−1)などのIFN−誘導性ケモカインの発現が高まる(Yamamoto et. al. 2003, Kawai et. al. 2001, Serbina et. al. 2003)。
【0027】
大部分のAGPはMyD88およびTRIF依存的経路を介して情報伝達する。近年、特異で興味深いD−セリルAGP、CRX−547がTRIF依存的経路を介して大部分を情報伝達することが示された。このことは、MyD88およびTRIF依存的経路を刺激する立体異性体であるL−セリルAGP、CRX−527とは対照的である。TRIF依存的経路がI型インターフェロンの産生を生じる一方で、MyD88経路が炎症性サイトカインの誘発と関連するのでTRIF経路の使用およびMyD88経路の回避が、例えば、アジュバントとして使用される時のTLR4アゴニストの有効性および安全性の両方に影響し得る。MyD88依存的シグナルの相対的減少が安全性改善(炎症の誘発低下)し、従って、L−セリル異性体と比較してD−セリル異性体の治療係数を向上させる一方で、TRIFシグナルの相対的な増加は増強された細胞媒介性免疫を生じ得る。
【0028】
用語
別途説明されないかぎり、本明細書に用いられるすべての技術的および科学的用語は、この開示が属する技術分野の技術者により一般に理解されるのと同じ意味をもつ。分子生物学における一般的な用語の定義は、Oxford University Press, 1994に出版されたBenjamin Lewin, Genes V(ISBN 0-19-854287-9); Blackwell Science Ltd., 1994に出版されたKendrew et al. (eds.), The Encyclopedia of Molecular Biology(ISBN 0-632-02182-9);およびVCH Publishers, Inc., 1995 (ISBN 1-56081-569-8)により出版されたRobert A. Meyers (ed.), Molecular Biology and Biotechnology: A Comprehensive Desk Referenceに見出されうる。
【0029】
単数形「1つの(a)」、「ある(an)」、および「その(the)」は、文脈において特記されない限り、複数形の指示対象を含む。同様に、用語「または」は、文脈において特記されない限り、「および」を含むものとして使用される。用語「複数」は2つまたはそれ以上をいう。核酸またはポリペプチドについて与えられる場合、すべての塩基サイズまたはアミノ酸サイズ、およびすべての分子量または分子質量の値は近似であり、説明のために提供されることが、さらに理解されるべきである。さらに、抗原などの物質の濃度またはレベルに関して行なわれた数値限定は近似を示している。従って、濃度が少なくとも(例えば)200pgとされた場合、濃度は少なくとも近似的に(または「約」または「〜」)200pgであると理解されることを意図している。
【0030】
ここに記載のものと類似または同等の方法及び物質が、この開示において実用的または試験的であることが可能ではあるが、適切な方法および物質が以下に記載されている。「含む」とは「含有する」を意味する。従って、その状況が他のことを要求していない限り、用語「含む(comprises)」、および「含む(comprise)」と「含んでいる(comprising)」などの変法は明示された化合物または組成物(例えば、核酸、ポリペプチド、抗原)、もしくは、いかなる他の化合物、組成物、ステップ、もしくはそれらの群を排除することなく、ステップ、または化合物もしくはステップの群が含まれることを意味するものと理解されるべきである。略語「e.g.」はラテン語のexempli gratiaに由来し、非限定な例を示すのに使用される。従って、略語「e.g.」は、「例えば(for example)」と同じである。
【0031】
「リピッドA模倣物」は、TLR4受容体(例えば、MPLとAGP)を介して、TRIF情報伝達および/またはMyD88情報伝達を誘発するTLR4リガンドである。
【0032】
「TRIFバイアス」とは、一の化合物によるMyD88依存的シグナル伝達のレベルが、他の化合物によるものよりも低いことをいう。
【0033】
本開示の様々な実施形態の審査を容易にするために、以下の説明を提供する。さらなる用語と説明を本開示の文脈において提供することもできる。
【0034】
アミノアルキルグルコサミニド4‐ホスフェート
簡単に述べると、セリルAGP CRX527およびCRX547は、リピッドAの還元性糖類がアミノアルキルL−またはD−セレンベース単位で置換され、かつ、10炭素の正常な脂肪アシル鎖を含む3つの(R)−3−nアルカノイルオキシテトラデカノイル残基を有する、リピッドA模倣物のクラスである。AGPは、ヒドロキシルとアミノ基の化学的識別および(R)−3−nアルカノイルオキシテトラデカノイル残基の連続的導入ができる高度な収束手法により以前に記載されているように調製する。(Bazin et al. Bioorg. Med. Chem. Lett. 2008 18, 5350; Johnson et al Bioorg. Med. Chem. Lett 9 1999 2273; Patent PublicationWO 04/005308を参照)。セリルAGPはシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(純度 >95%)で精製し、標準的な分析法でトリアルキルアンモニウム塩として分析する。
【化1】
【0035】
また、図1にはCRX527とCRX547が示されており、以前に合成され記載がされている(U.S. Patent No. 6,113,918; Examples 15 and 16, and WO 2006/012425 WO 2006/016997を参照)。CRX537の場合に比べて、CRX547の構造的な相違がアグリコンカルボキシル基の位置に影響を与える。この差異が荷電カルボキシル基のTLR4受容体複合体との相互作用に影響を与え得る。LPS模倣物がMD2を介してTLR4受容体複合体との相互作用をすることが以前に示され(Ohto et. al. 2007)、従って、CRX547とCRX527のジアステレオマ間の差異がMD−2またはTLD4をともないカルボキシル基、リピッドAリン酸バイオアイソスターの相互作用を阻害する可能性がある。次に、受容体の二量体化、またはそれに代えてMyD88と下流シグナルの結合を推進する細胞内コンフォメーション変化を阻害するかもしれない。おそらくは、この阻害または変化はTRIF依存的シグナルを排除しない。
【0036】
最近公表されたヒトTR4/MD-2/lipidIVa (Ohto et al. (2007) Science. 316:1632) およびヒトTLR4/MD−2/Eritoran受容体の結晶構造は、リピッドA模倣物の還元性糖類の1つにおけるある位置のリン酸基がリピッドAのためのMD2疎水性結合ポケットの出口近くにある荷電基と相互作用をすることを示唆している。第2TLR4/MD−2複合体と合わせTLR4/MD−2二量体化の構造モデル(Kim et al. 906-17;Walsh et al. 1245-54) は、MD−2/リピッドA複合体の表面がダイマーパートナーのTLR4と相互作用し得ることを示唆する。シグナル伝達の差異を誘発し得る偏左右異性CRX547が阻害する可能性がある一方でCRX527の生物的等配電子体カルボキシル基がこれらの相互作用を維持し得る。
【0037】
試験をしてみるとMPLはCRX547と同様のMyD88およびTRIF依存的シグナルのパターンを示し、同時に、MPLはCRX547における構造的な変化に影響を受ける同じ位置でのリン酸を欠失する。従って、MPLとCRX547は、実質的なMyD88依存的シグナル伝達の非存在化でTRIF依存的シグナル伝達を誘発する共通の機序を共有し得る。
【0038】
材料および方法
本明細書に記載された材料および方法は、後述する実施例の実施において有用である。
【0039】
細胞株および試薬
ヒトTLR4、MD−2、およびCD14発現HEK293細胞株、NF-κB/LacZリポーター・プラスミド、ドミナントネガティブMyD88発現(pDeNy-hMyD88)および ドミナントネガティブTRIF発現(pDeNy-hTRIF)プラスミド、LyoVecトランスフェクション試薬およびS. minnesota 由来のウルトラピュアRe595 LPS は InvivoGenから得ることができる。ヒト単球/マクロファージ細胞株、THP−1はATCCから得ることができる。FuGENE6トランスフェクション試薬はRocheから得ることができる。InvivoGen (San Diego, CA)から得たHEK293-hTLR4/hMD2/hCD14細胞は、 RPMI 1640 (ATCC) の中で10% FBS (Hyclone)、10 μg/mL ブラスチシジン、50 μg/mL HygroGold (InvivoGen)とを使って培養する。THP−1細胞はRPMI1640(ATCC)の中で10% FBS (Hyclone)、100 U/mL ペニシリン/100 ug/mLストレプトマイシン(Sigma)とを使い培養する。
【0040】
初代ヒト細胞培養
末梢血単核球(PBMC)はフィコール・ハイパック1.077 勾配を介して健康なドナーの血液から単離し、アゴニストで処理され、かつ、述べたように単球溶媒 (RPMI 1640 (ATCC)、10%ヒトAB血清(Lonza/BioWhittaker), 100 U/mL ペニシリン/100 ug/mL ストレプトマイシン(Sigma)、50 uM 2-メルカプトエタノール (Sigma) 内で付着単球を単離するのに使われる(Stover et al. 4440-49;Kawai et al. 5887-94;Gervassi et al. 7231-39)。単球由来マクロファージは、アゴニストを作用させる前に3日目と5日目に溶媒を交換し50 ng/mL rhM-CSF (R&D Systems) を用いて単球溶媒中で付着単球を5日間インキュベートして産生した。単球由来樹状細胞は、3日目と6日目に溶媒を交換し 10 ng/mL rhGM-CSFおよび10 ng/mL rhIL-4 (R&D Systems)を用いて単球溶媒中で付着単球を7日間インキュベートして産生した。
【0041】
NFkB核移行
指数増殖におけるMonoMac6細胞は、示された時間にて、2%グリセロール媒体で希釈したAGPの濃度を上昇させて刺激した。直ちに固定化した細胞(2%パラホルマリンで一晩)は、膜透過処理液緩衝液 (PBS, 2%FBS, 0.1% TritonX)中で一次抗体であるanti-NFκB(p65) (SantaCruz Biotechnology, SantaCruz, CA)およびanti-IRF3 (BD Biosciences, San Jose, CA)で染色し、その後、二次抗体であるanti-Rabbit FITC (Jackson Labs, Bar Harbor, ME), anti-mouse PE (BD Biosciences, San Jose, CA)で染色した。核染色 DRAQ5 (Alexis Biochemicals (San Diego, CA) )を用いたシグナル伝達たんぱく質の局在化の類似度スコアは、すでに述べたように核移行の画像ストリーム解析に使用される(George, 2006 32669 /id)。最小限の3,000個の細胞が各試験の条件で採取され解析される。
【0042】
ドミナントネガティブMyD88およびTRIF
12ウェルプレート(5 × 105 cells/well)中にTHP−1細胞を播種し、マクロファージへと分化させるために100 U/mL ペニシリン/100 ug/mL ストレプトマイシン(Sigma)、 20 ng/mL phorbol mystyric acid (PMA) (InvivoGen) を使い、 0.5 mL RPMI 1640 (ATCC) 中でインキュベートした。THP−1が分化した後、溶媒を5 ng/mL PMA でTHP−1溶媒に変更し、ならびに、細胞は、48時間、pDeNy-hMyD88/LacZ、またはpUNO-mcs (control)/LacZ プラスミドおよびFuGENE6トランスフェクション試薬の0.5 μg/well で一過的に形質移入した。溶媒は新鮮な溶媒に交換して、その後14時間表示した濃度のTLR4アゴニストで刺激した。回収した上清はLuminexプラットフォームを用いて、マルチプレックスサンドイッチELISA (R&D Systems) によりサイトカインのレベルをアッセイした。対照ウェルは Invivogen LacZ Quantitationキットを用いて、トランスフェクション効率をアッセイした。
【0043】
MyD88およびTRIF (MAL/TRAM)のsiRNAノックダウン
指数増殖するRAW264.7 細胞は、タンパク質ノックダウンのためのshRNA 配列、Zeocin抵抗性遺伝子およびGFPコード配列 (InVivoGen, San Diego, CA)を含む、psiRNA-mTICAM1, psiRNA-mMyD88,またはpsiRNA-LUC (無関係な対照) プラスミドを使い、Optimem (Roche, Indianaopolis IN) の既存の方法によりFuGENE6で安定的に形質移入した。選択した後のトランスフェクション効率は、画像ストリームを用いてGFP陽性細胞の割合で決定する。
【0044】
HEK293トランスフェクション
12ウェルプレート(4 x 105 cells/well)中にHEK293-hTLR4/hMD2/hCD14細胞を播種し、40%〜60%コンフルエントになるまで(2〜3日間)培養した。細胞を、5か所のNF-κB部位 (pNiFty2-SEA-InvivoGen; San Diego, CA)およびチミジンキナーゼプロモータ駆動ルシフェラーゼ (Promega)を構成的に発現するトランスフェクション コントロールプラスミドを用いて、遺伝子組換えELAMプロモータの制御下で分泌されたヒト胎児アルカリホスファターゼを発現する NF-Bレポーター構築物の100 ngを使用して24時間、形質移入した。プラスミドは、QiagenのEndofree Maxiprepプラスミドキットで調製された。トランスフェクション後、細胞は14時間、TLR4アゴニストで刺激し清澄した上清は、 NF-кB活性化を定量するSEAP活性についてアッセイして(SEAP Reporter Assay Kit-InvivoGen)、NF-кB活性化およびルシフェラーゼ活性 (Promega)および供給されたプロトコールに従ってトランスフェクション効率を基準化する。
【0045】
エンドサイトーシスに対するCRX−547シグナル伝達の依存性:ジナソア阻害
分化したTHP−1マクロファージ (20 ng/mL PMAを用いて48-ウェルプレート内に5E5/ウェル)は、無血清THP−1溶媒中で60分間エンドサイトーシスに対する低分子阻害剤であるジナソア10 uMで予め処理した。アゴニストの指定濃度で8時間、刺激する前に溶媒は0.45mLのTHP−1溶媒に変更する。上清は採取され、Luminexプラットフォームを用いてマルチプレックスサンドイッチELISA (R&D Systems) によりサイトカイン/ケモカイン解析の前に80℃で貯蔵される。
【0046】
ウェスタンブロット法
ウェスタンブロットおよびリン酸―ウェスタンブロットタンパク質解析では、細胞はCell Lysis Buffer (Cell Signaling Technology, Danvers, MA) と併せた Protease Inhibitor Cocktail (Sigma, St. Louism MO)で溶解する。標準的な方法を使ってPVDF膜 (Millipore) 上でウェスタンブロットを実施する。バンドはECL Advance Western Blot kit (GE Healthcare, Piscataway, NJ)で検出する。二次Anti-Rabbit HRP抗体はKPL, (Gaithersburg, MD)から得ることができる。Anti-β actin, anti-IRF-3, anti-phospho-IRF-3 (Ser396)およびanti-IRAK1抗体は、Cell Signaling Technology (Danvers, MA)から得ることができる。
【0047】
マウスの血清サイトカイン/ケモカインの誘発
実験開始時の年齢は7週から9週である雌のBALB/cまたはC57Bl/6マウスをCharles River Laboratories, USAから入手した。賦形剤 (0.2%グリセロール) に200 uL のアゴニストまたは賦形剤単独でマウスに腹腔内注射した。血清試料は注射2時間または6時間後に取り出され、Luminexプラットフォームを用いて、マルチプレックスサンドイッチELISA (Invitrogen) によりサイトカイン/ケモカインの誘発に関する試験をした。Public Health ServiceおよびInstitutional Animal Care and Use Committee at GlaxoSmithKline Biologicals, Hamilton, Montanaが確立したガイドラインに従ってすべての動物を用いる。
【0048】
ウサギを用いた毒性試験
3匹のウサギの群(NZW−Western Oregon Rabbit Company, Philomath, OR)は0日、7日、14日目に1mLの希釈したAGP,またはMPLコントロールをIMで接種した。AGPの2つの投与が評価される。体重、体温、臨床症状およびDraizeスコア について全ての動物をモニターする。これらの動物は最終投与後一週間で屠殺する。血液学分析と臨床化学検査のため処理前、第2回接種後2日目、および犠牲にした時に血液を採取する。注射部位および主要臓器の病理組織検査を標準的な治療法で実施する。Public Health ServiceおよびInstitutional Animal Care and Use Committee at GlaxoSmithKline Biologicals, Hamilton, Montanaが確立したガイドラインに従ってすべての動物を用いる。
【実施例】
【0049】
実施例1
L−異性体(CRX527)との比較における合成リピッドA模倣物(CRX547)のD−異性体投与による類似したレベルのTRIF依存的サイトカイン、一方さらに低いレベルのMyD88依存的サイトカイン
ヒトの新鮮な末梢血単核細胞(PBMC)からのサイトカイン誘発に対するS. minnesota Re595 LPS, CRX-547およびCRX-527の影響を比較した場合、CRX−527とLPSは類似したレベルのサイトカインTNFα およびケモカインMIP-1α (図2A)を誘発する。または、CRX−547は有意に低いレベルのTNFαとMIP-1αを誘発するが、ケモカインIT−10とRANTESは同程度であった(図2B)。
【0050】
TNFαとMIP-1αの発現はTLR4アダプターであるMyD88を介したシグナル伝達に依存する一方でIP−10とRANTESの発現はTLR4アダプターであるTRIF/TICAM-1を介したシグナル伝達に依存する(Hoebe et al, Kawai et al)。ヒトの新鮮な全血、培養ヒト単球、ヒト単球由来マクロファージ、およびヒト単球由来樹状細胞における同じ組み合わせのMyD88依存的およびTRIF依存的サイトカインの誘発についてアゴニストを比較した場合、類似のパターンが認められる(データを示さず)。
【0051】
実施例2
CRX−547は、単球由来樹状細胞におけるより低いレベルのIL−12p70およびIL−23を誘発する。
【0052】
炎症性サイトカインの誘発および樹状細胞(DC)の成熟は、アジュバントワクチンを投与する間、強い免疫反応を高めることに寄与する。従って、ヒトDCにIL−12p70を誘発するCRX527とCRX−547の能力を比較する。IL−12p70の誘発はTh1ヘルパーT細胞系列の発達を促し、細胞媒介性免疫応答を促す(Goriely, Neurath, and Goldman 81-86;Gutcher and Becher 1119-27)。IL-12p70 の発現がMyD88およびTRIFシグナル依存であると示されたので(Goriely, Neurath, and Goldman 81-86)、CRX547処理に対するDC応答が消失するか否かが確認される。CRX−527およびLPSと比較した場合有意に減少しているが、CRX−547はヒト単球由来DCからのIL−12p70応答を誘発し得る(Error!Reference source not found.3A)。
【0053】
または、DCにおける炎症性メディエーターであるIL−23の発現は全面的にMyD88依存的である (Re and Strominger 37692-99;Goriely, Neurath, and Goldman 81-86)。樹状細胞のCRX−527とCRX−547処理によるIL−23の誘発を比較した場合、IL−23発現は事実上CRX−547処理細胞におけるベースラインまで下がる(Error!Reference source not found.3B)。
【0054】
実施例3
サイトカイン誘発のMyD88およびTRIF依存性
ドミナントネガティブ変異体構築物の発現がMyD88を介するシグナル伝達を抑制するのに使われる場合、MyD88依存的サイトカインであるTNFαのCRX−527での誘発は有意に減少し、TRIF依存的サイトカインであるRANTESの誘発はほんの僅か減少する一方で、MyD88依存的サイトカインのCRX−547誘発はMyD88のノックダウンにより影響を受けない([066]4A)。
【0055】
または、TRIFの発現を同様の方法を用いてノックダウンさせた場合に、CRX−527とCRX−547の両方によるTRIF依存的サイトカインの誘発は同様の程度減少する([066]4B)。
【0056】
また、AGP、CRX−527およびCRX−547のMyD88/TRIF シグナル伝達特異性は、エンドサイトーシス依存性により区別し得る。最近、2つのグループ(Kagan et al. 361-68;Tanimura et al. 94-99)が、TLR4受容体複合体の内部移行後にTLR4のTRIF依存的シスシグナル伝達下流がエンドソーム/リソソームから開始される一方でTLR4のMyD88依存的シスシグナル伝達下流は細胞膜から開始することを報告した。Kaganらは、エンドサイトーシス阻害剤のDynasoreを使ってMyD88依存的サイトカインではなくTRIF依存的サイトカインの誘発が抑制されることを示した。従って、以下に示されるようにDynasoreは、CRX−527およびCRX−547によるサイトカイン/ケモカイン誘発のMyD88およびTRIF依存性を比較するのに使われる。
【0057】
Dynasoreを用いたエンドサイトーシスの抑制によりヒトPBMC由来マクロファージにおけるCRX−527およびCRX−547によるTRIF依存的RANTES誘発を抑制する一方で、未処理細胞と比べてMyD88依存的MIP-1αの誘発は僅かに増加する。これらの結果は、TLR4の下流のCRX−527およびCRX−547によるTRIF依存的サイトカイン誘発は、エンドサイトーシス後の同様のシグナル伝達機序により起こることを示唆している。
【0058】
実施例4
CRX−547はCRX−527と比べた場合、有意に低いレベルのNFκB の核移行および転写活性の誘発し、同等かまたはそれ以上に高いレベルのIRF−3核移行を誘発する。
【0059】
TNFαおよびIL-1βを含めた多くの炎症性サイトカインの発現は、NFκBの活性化および核移行に依存する。TLR4受容体複合体のMyD88依存的およびTRIF依存的シグナル伝達下流の両方が、転写因子であるNFκBの活性化および核移行を誘発する。しかしながら、TRIF依存的シグナル伝達を介してNFκB活性化が後で誘発され、かつ、それはMyD88依存的シグナル伝達を介する活性化と比べてかなり低い程度である(Yamamoto et. al. 2002)。
【0060】
インターフェロン応答因子−3(IRF−3)は、TRIF依存的TLR4シグナル伝達経路の下流で活性化する転写因子である(Yamamoto et al. 640-43)。IRF−3リン酸化により、IRF−3の二量体化、核移行、ならびにI型インターフェロン(IFNβ)およびインターフェロン誘導性遺伝子の転写の誘発を生じる(Honda, Takaoka, and Taniguchi 349-60;Tailor, Tamura, and Ozato 134-40)。画像ストリームは、ラベルした転写因子と核特異的染料(DRAK−4)で染色された細胞核の共局在の定量化によりNFκBとIRF-3の両方の核移行を測定できる(Beum et al. 90-99;George et al. 117-29;Arechiga et al. 7800-04)。
【0061】
CRX−527およびCRX−547により開始したシグナルを比較するために、CRX−527およびCRX−547の処理によるNFκBおよびIRF-3の核移行の誘発は、画像ストリーム解析を用いてヒト単球細胞株であるMonoMac6 (MM6) において比較した。Error!Reference source not found.6は、CRX−527およびCRX−547で刺激されたMM6細胞のゲーティングストラテジーを示す。
【0062】
CRX−547と比べると、CRX−527はより初期のNFκB 核移行(刺激後、早ければ5分後)を誘発する。CRX−547活性で誘発されるNFκB 核移行は、ある特定閾値(この場合は50%前後)以上には決して達しない一方で、CRX−527による刺激では30分でほぼ100%のNFκBが核移行する(Error!Reference source not found.7)。AGPのいずれも投与量依存的に機能するように見える。CRX−537であるかCRX−547であるかの刺激に関わらず、高いバックグラウンドレベルのIRF3核移行が存在し、これはTRIFを介したシグナル伝達を示唆する(データは示さず)。初期のNFκB活性はMyD88シグナル伝達パターンを示しているので、このデータはCRX−527はMyD88を介して情報伝達するがCRX−547はMyD88シグナル伝達の誘発において作用が弱いことを示す。
【0063】
CRX−527とCRX−547での核移行の差異が転写活性化の上昇と言い換えられることを確認するために、ヒトTLR4, MD-2, CD14およびNFкBレポタープラスミドで形質移入したHEK293 細胞内でのCRX−527およびCRX−547誘発NFκB活性化を比較する。核移行アッセイにあるようにCRX−527およびLPSは、CRX−547と比べて NF-κB プロモータの有意に高い活性化を誘発することが示されている((Error!Reference source not found.8)。
【0064】
実施例5
CRX−547はCRX−527によるMyD88依存的サイトカイン誘発を抑制する。
【0065】
CRX−527は、サイトカインおよびケモカインを誘発する転写因子の活性化に導くTLR4/MD2受容体複合体を介して情報伝達する。固定濃度のCRX−527またはLPSを添加する前に、CRX−547の濃度を高めて一次ヒト付着単球に添加した場合、MyD88依存的サイトカインであるTNFαの誘発は抑制される一方で、TRIF依存的ケモカインであるMCP−1の誘発は、より高い濃度のCRX−547にて相加的に増大する(Error!Reference source not found.)。TNFα 誘発を抑制するのに必要なCRX−547の濃度はCRX−527およびLPSの固定濃度と同じ範囲にあり、これはCRX−547がTLR4複合体への結合についてCRX−527およびLPSと競合し得るが、結合時のTRIF経路を介したシグナル伝達を主として誘発することを示唆する。
【0066】
CRX−547は、単球細胞におけるTLR4のMyD88依存的サイトカイン/ケモカイン下流の誘発に対して、CRX−527およびLPSと比較して部分的アゴニストであるように見えるので、単球細胞をCRX−527で処理した場合にCRX−547を含ませることはサイトカイン/ケモカイン誘発を抑制し得るし、CRX−547によるTRIF選択的シグナル伝達の作用メカニズムについて洞察を与える。この目的のために、一次ヒト単球をCRX−547の増加濃度下でCRX−527の用量範囲内で処理する。
【0067】
得られる用量反応曲線は4−パラメーターロジスティック方程式に適合する。図10Aは、CRX−527誘発TNFαについての容量反応曲線に対する 0 uM、0.000016 uM、0.004 uM、および0.1 uMのCRX-547の効果を示す。
【0068】
部分的アゴニストとして予測されていたように、CRX−547の濃度の増加により、TNFα誘導曲線をX軸に沿ってシフトする一方で、当該曲線の基礎レベル(下位の漸近線)が、CRX−527の非存在下におけるCRX−547の反応レベルまで増加する。CRX−547の濃度の対数に対してのCRX−547の各濃度についての対数 EC50 移動(DR−1)をプロットする(Schild回帰)と、CRX−547およびCRX−527の用量応答曲線から計算したCRX−547についてのEC50 と、計算による親和性(Kbapp)とを比較することができる。この値は、CRX−547の親和性がCRX−547のとCRX−527の両方のEC50 値に近づくことを確認し、CRX−547はTLF4受容体複合体での結合とMyD88依存的シグナル(TNFα 誘発を生む)について効果的にCRX−527と競合することを示唆している(図10B)。
【0069】
同様に、図11は、CRX−527またはLPSの固定濃度を添加するとともに、CRX−547の濃度を高めて一次ヒト付着単球に添加した場合、MyD88依存的サイトカインであるTNFαの誘発は抑制されることを示している。TNFαの誘発を抑制するのに必要とされるCRX−547の濃度はCRX−527およびLPSの固定濃度(100 nM)と同じ範囲 (IC50CRX-527: 48±30 nM/IC50LPS: 18±12) であり、これはCRX−547がTLR4複合体との結合においてCRX−527とLPSと競合することを示す。
【0070】
CRX−547が、一定のCRX−527で処理された細胞におけるNFκB核移行を拮抗するかを決定するために、CRX−547の投与を増やしつつMM6細胞を20分、35分および2時間刺激する(図12)。同時にAGPが添加された時にはCRX−547は、最大値の投与量のCRX−527で誘発されたNFκB核移行を拮抗した。CRX−547が一定であり、CRX−527でスパイクされた場合、CRX−527刺激はCRX−547単独でのNFκB核移行の最大作用を克服できる。このデータは、CRX−547とCRX−527はTLR4受容体複合体での結合について競合しMyD88依存的シグナル伝達を抑制することを示す。
【0071】
実施例6
ヒトTLR4の明らかなTRIFバイアスアゴニズムを持つCRX−547の類似体
AGPファミリーの中の類似体を評価するために、類似パターンのサイトカイン/ケモカイン誘発について、化合物を試験する。エステル連結二次アシル鎖を持つ、セリルAGP、CRX−527およびCRX−547のLとDの異性体対を、エーテル連結二次アシル鎖、化合物1aおよび1b(Error!Reference source not found.1に示す化合物)、リード候補AGPの潜在的安定性強化修飾を持つセリル類縁体と比較した。興味深いことに、1bにおいて、分子を修飾してエステル結合二次アシル鎖ではなくエーテル結合二次アシル鎖を有することにより、、MyD88依存的シグナル伝達の誘発についてL異性体に比べてD異性体において実質的な有効性を回復する(図13)。エーテル結合D異性体によるMyD88有効性救済の機序的な根拠は不明である。
【0072】
実施例7
CRX−527またはCRX−547で、またはCRX−527もしくはCRX−547で刺激されたMM6で刺激された一次ヒト単球のリン酸―ウェスタンブロット解析
セリン/トレオニンキナーゼであるIRAK−1の分解はMyD88依存的TLR4シグナル伝達の下流で起こる一方で、TRIF依存的TLR4シグナル伝達はIRF−3活性化を起こす(Yamamoto et al. 6668-72;Yamamoto et al. 640-43)。一次ヒト単球は示された時間、CRX−547かCRX−527のいずれかで刺激され、細胞分解溶解物をMyD88経路―活性化キナーゼ、IRAK−1およびTRIF経路―活性化転写因子IRF−3(リン酸―IRF−3および総IRF−3)のレベルについて、ウェスタンブロットにて解析する。β−アクチンの値はローディング対照として使用される。CRX−527で刺激した単球はIRAK−1が急激に減少する一方で、CRX−547で刺激した細胞ではこのタンパク質の分解の遅れ、減少が示された(Error!Reference source not found.4)。
【0073】
TLR4連結後のMyD88対TRIFシグナル伝達におけるMAPKシグナル伝達分子の役割は複雑である。なぜなら、p38が両方の経路に関係しているからである。しかしながら、p38リン酸化のTRIF経路のインディケータとしての役割は文献に示されている。LPS刺激の後のp38のリン酸化はTRIF-/- マウス由来のマクロファージ内で減少する一方で、TRIF+/+ マクロファージはp38の持続性リン酸化を示し、これはTLR4連結後のTRIFがp38のリン酸化状態の維持に役割をはたすことを示唆した(Thomas et al. 31119-30)。p38のリン酸化状態がCRX−527対CRX−547での刺激後に異なることを決定するために、MM6細胞からの細胞分解溶解物をウェスタンブロット解析する。活性化の類似した動態を示したが、CRX−547と比較した場合のCRX−527の刺激はp38のリン酸化状態を僅かに増加させる(図15)。
【0074】
MAPK経路および下流の転写因子はTLRアゴニストにより別個に調節される。IRAK4およびIκBαの分解はTLR4シグナル伝達後のMyD88を示す一方で、TRIF媒介性TLR4シグナル伝達はIRF3活性化を起こす(Yamamoto et al. 6668-72;Yamamoto et al. 640-43)。MM6は示された時間、CRX−527かCRX−527(10ng/ml) のいずれかにより刺激される。細胞分解溶解物は採取されβ−アクチンをローディング対照として使用してMyD88経路タンパク質、リン酸―IκBα、総IκBα、IRAK4,およびTRIF経路タンパク質、リン酸−p38、総IRF3およびリン酸IRF3のウェスタンブロット解析が実施される。CRX−527で刺激したMM6細胞では総IκBαおよびIRAK4が急激に減少した一方で、CRX−547で刺激した細胞はMyD88誘発シグナル伝達タンパク質両方の分解は遅れるか、少ない。TRIF媒介性シグナル伝達タンパク質、リン酸―p38、総p38、IRF3およびリンーIRF3においては、これらの2つのAGPの違いは僅かであると認められる。
【0075】
実施例8
マウスにおけるMyD88およびTRIF依存的シグナル伝達の評価
一次ヒト細胞の結果とは対照的に BALB/cマウスに静脈投与した後CRX−547はマウス血清中に同様のレベルのMyD88依存的サイトカインを誘発する。この反応がBALB/cマウスに特異的でないことを確認するために、C57/BL/6マウスにおいて血清サイトカイン誘発の同様の試験を実施する(Error!Reference source not found.)。BALB/cマウスに認められる場合と比べて、選択したサイトカインについてCRX−547による相対的な誘発は僅かに小さいが(示していない)、動態(投与後2時間または6時間で誘発)およびサイトカイン誘発の強度はMyD88依存的 (TNFα, IL-10) およびTRIF依存的(RANTES, IP-10, MIG) サイトカイン/ケモカインについてはCRX−527およびCRX−547と類似している。さらに、関心がもたれているものは、試験されたMyD88依存的サイトカインの誘発が投与後6時間よりも2時間において常に高い値である一方で、TRIF依存的サイトカインの誘発は各アゴニストの6時間で高く、これは二つの経路を介したサイトカインの誘発の異なる動態を示唆する。この現象は、多くのTRIF依存的サイトカインの誘発について従来から認められている初期のIFNβ誘発およびオートクリン/パラクリン活性の必要性(Perry et al. 407-22)、または、エンドサイトーシスの必要性によるTRIF依存的シグナルの遅れ(Kagan et al. 361-68)で説明できる。
【0076】
LおよびD異性体AGPによるin vitroにおけるMyD88およびTRIF依存的サイトカイン/サイトカイン誘発を試験したいくつかの実施例(下記の実施例12-14を参照)。マウスPBMCでのサイトカイン誘発、マウスのマクロファージ細胞株RAW264.7でのサイトカイン誘発、および muTLR4/muMD2―形質移入HEK293細胞での NFкB活性誘発を含む各ケースにおいて、セリルAGPのD異性体は、本明細書に開示されたヒト系で示されたのと同じTRIFシグナル伝達バイアスは示さない。
【0077】
実施例9
CRX−547シグナル伝達の種特異性(マウス対ヒト)についての受容体の基礎
TRIFバイアス状態でのシグナル伝達について、CRX−547、CRX−527のD異性体での2つのAGP異性体における異なるシグナル伝達パターンが注目される一方で、CRX−527はMyD88およびTRIF依存的経路の両方を介して情報伝達する。研究の初期の段階では、ヒトの細胞で認められマウスでは認められないのでCRX−547TRIFバイアスシグナル伝達は種依存的と思われた。この明かな相違を取り上げるために、ヒトおよびマウスのTLR4-、MD-2-、および CD14-形質移入HEK293細胞ならびにこれらの組み合せを用いて受容体/共受容体の必要性ならびにAGPシグナルについての受容体の種特異性を試験する。
【0078】
huTLR4、huMD-2、およびhuCD14で形質移入された、ならびにCRX−547で刺激されているHEK293細胞はCRX−527とLPSと比べてNFκBリポータ活性を少なく誘発する一方で、muTLR4-、muMD-2-、およびmuCD14-形質移入HEK293細胞におけるCRX−547により誘発される活性レベルはCRX−527およびLPSに類似してる(Error!Reference source not found.)。CRX−547によるシグナルの誘発について、この解析はマウスTLR4受容体複合体を好むことを示す。この種特異性の理由がTLR4自身なのか別の補助受容体成分なのかをはっきりするために、解析にはヒトおよびマウスTLR4受容体成分の組み合せを発現するHEK293細胞を含める。
【0079】
Error!Reference source not found.8に示すように、ヒトHEK293細胞がTLR4およびマウスMD−2の組み合せで形質移入された場合、CRX−527とCRX−547の間にプロモータ活性の誘導についての大きな相対差が残ることは、この相違がヒトTLR4でのCRX−527とCRX−547の相互作用における相違からくることを示唆する。HEK293細胞がマウスTLR4とヒトMD−2との組み合せで形質移入された場合、CRX−527とCRX−547が類似のレベルのプロモータ活性を誘発していることは、活性の差がAGP/TLR4接触面での相互作用の相違からきていることを示唆する。これらの結果は、アシル鎖の長さおよびMuroiらが認めた分子のMD−2との相互作用の差を発生させた組成物における修飾の影響とは異なる(Muroi, M and Tanamoto, K. (2006). J. Biol. Chem. 281. p5484-5491)。
【0080】
注目すべきは、活性のレベルは同系の受容体成分を有する複合体が存在する時(huTLR4/huMD2, muTLR4/muMD2)よりもキメラ複合体(huTLR4/muMD2, muTLR4/huTLR4)において全体的により低いということであり、これは、種間キメラがこの系では最適に機能していないことを示唆する。CRX−547の意図する種特異性に寄与する特定の残基を解明するにはさらなる生化学的解析が必要となる。
【0081】
実施例10
筋肉内投与によるリード候補AGPを使ったウサギ毒性試験
CRX−527、524、547および化合物1の毒性は、AGPのみを筋肉内投与したウサギで評価する。3匹のウサギの群に、0日目、7日目、14日目に1mLの希釈AGP,またはMPL対照をIMにてワクチン接種した。高用量(25 μg)と低用量(5 μg)の2つのAGPを評価した。体重、体温、臨床症状およびDraizeスコア について全ての動物をモニターする。これらの動物は最終投与後一週間で犠牲にする。血液学分析と臨床化学検査のため処理前、第2回接種後2日目、および犠牲にした時に血液を採取する。注射部位および主要臓器の病理組織検査を実施する。
【0082】
第2回目と第3回目のワクチン接種した間のMPL群を除いて、全ての動物は試験の期間を通して体重増加を示した(図19)。賦形剤対照群含めてワクチン摂取後の温度変化± 〜1°Cが見られる(図20)。ウサギの体温は正常な範囲にある。賦形剤対照群を含めたすべての群について Draize scoreで最小注射部位反応が見られ、ワクチン接種の回数が増えるに従い反応は減少した(図21)。CRX−524を除き、アジュバント高投与群のすべてで針痕に沿った筋肉が白色に変色した個所および注射部位にて病変が見られる。CRX−527および化合物1に病変が認められるが低用量のCRX−524または−547の治療群はこの限りでない。
【0083】
血液学分析では、低用量および高用量のCRX−527ならびに低用量のCRX−524と化合物1を投与したウサギで9日目 (2 days post-2°) に顆粒球増加症の傾向が認められ、これは21日目(7 days post-3°)までに消失する。AGPは好中球を引き寄せることが知られている。ワクチン接種後の臨床化学的値が注目される傾向は認めなかった。
【0084】
筋病変がみられない低用量のCRX−547を例外として、主に好塩基球およびマクロファージ筋炎を含む注射部位での炎症は、全ての処置群において唯一偶発所見でない(図2225)。高用量のCRX−527において筋炎が最も一貫して最大である。さらに、直近の2回の注射による注射部位と筋炎が一致しており、これは炎症反応の一過的な特性を示す(データは示さず)。
【0085】
CRX−547は高用量でのみ最小毒性であり、CRX−524、−527および化合物1は低パワー (n=3 ウサギ/群)で中程度の毒性であるような全体的な印象である。病理所見は一過性である。
【0086】
実施例11
CRX−527とCRX−547処理に反応するサイトカイン遺伝子発現
ヒト細胞におけるサイトカイン/ケモカイン分泌の誘発についてCRX−527とCRX−547を比べるために、そしてさらに観察された相違点の原因となるシグナル伝達機序を解明するために、CRX−527とCRX−547により誘発された遺伝子発現をマイクロアレイ技術を使い評価した。最初の実験は、qPCRを使ったMyD88およびTRIF依存的サイトカイン遺伝子誘発の時間経過解析を含む。この解析は、両方のアゴニストについてMyD88およびTRIF依存的サイトカイン/ケモカイン遺伝子の誘発は処理後1-2時間で検出可能となり、処理後3時間で確固としたレベルへ上昇し、処理後6時間でベースラインレベル近傍へ下降することを示している(データは示さず)。MyD88およびTRIF依存的サイトカイン/ケモカインの両方の誘発については処理後3時間で最高値となる傾向があり、MyD88およびTRIF依存的誘発の間の実質的な動態的差異は遺伝子発現のレベルでは動作しないことを示唆する。動態的パターンの1つの例外はIFNβ誘発であるが、これはCRX−547かCRX−527処理かのいずれかで1時間処理後すでに最高値を示す状態にあり、その後低下する。
【0087】
本解析においてCRX−547と比べてCRX−527はより大きなMyD88依存的サイトカイン/ケモカイン遺伝子発現を誘発するのみでなく、より大きなTRIF依存的サイトカイン/ケモカイン遺伝子発現を誘発する。この現象は、TRIF依存的サイトカイン/ケモカイン分泌での2つのアゴニストが類似しているサイトカイン/ケモカインタンパク質分泌について認められるパターンと相関しない。このデータは、他の因子がCRX−527およびCRX−547により誘発されてTRIF依存的サイトカイン/ケモカイン分泌のレベルに影響を与えていることを示唆する。1つの可能性として、CRX−527と比べてCRX−547処理が誘発するより大きなTRIF依存的遺伝子mRNA 安定性がある。この遺伝子のレベルは処理後6時間でほぼベースラインまで減少しているが(データは示さず)、3時間から6時間のmRNAのレベルはまだ試験が終了していない。
【0088】
in vitroマウス系
実施例12 in vitroサイトカイン誘発
上述のとおり、より少ないCRX−547によるTRIFバイアスが、マウスのPBMCを用いるサイトカイン誘発実験、マウスの細胞株(RAW264.7)およびHEK293形質移入試験(データは示さず)において示唆される。拡張した投与範囲を使い、エステル連結脂肪アシル鎖ではなくエーテルを用いる追加のLおよびD異性体対、化合物1aおよび1bを試験してRAW264.7細胞におけるCRX−547およびCRX−527によるサイトカインのさらなる比較を提供する(図1)。さらに、種特異性の現象に対するより大きな機序の理解を取得するために、キメラヒト/マウスTLR4受容体複合体で形質移入された細胞においてCRX−547により誘発されたシグナル伝達を比較した。さらに、そのような種―特異的TLR4アンタゴニスト/アゴニスト活性が、リピッドIVaである4つの一次アシル鎖のみの大腸菌からのリピッドA前駆体について報告されており(Muroi, Ohnishi, and Tanamoto 3546-50;Muroi and Tanamoto 5484-91)、この活性はマウスでのTLR4補助受容体MD-2の構造上の違いに起因した。
【0089】
マウス血液由来のPBMCがCRX−527またはCRX−547で処理した後にMyD88サイトカインの同様なプロファイルを有するかを調べるために、市販されているBALB/cマウスからの血液をCRX−527またはCRX−547を用いて試験をする(図24)。試験を行った2群間ではレベルは同様と思われる。
【0090】
マウス細胞においてLおよびD異性体間の効力の共通性をより比較し確認するために、RAW264.7(マクロファージ)細胞を、MyD88(TNFα) およびTRIF依存的(IP-10)産生のためにアッセイしたCRX−527,CRX−547、化合物1aおよび1bならびに上清を用いてより広い投与範囲で刺激した。この範囲ではCRX−547よりもCRX−527がTNFαおよびIP-10の産生を誘発する能力がより高い。このマウス細胞株については、TRIFおよびMyD88依存的サイトカインの両方に対するCRX−547の誘発はCRX−527に比べて能力が低い。このデータは、ヒト細胞株におけるMyD88依存的サイトカインの誘発についてCRX−527とCRX−547の活性の差異は一般的にマウス細胞株に比べてかなり大きいのであるが、CRX−547の種特異的活性は明確ではなく、このことは、CRX−547のマウスとヒトのTLR4/MD2受容体複合体との相互作用において主要な差異が存在することを示唆している。
【0091】
化合物1aおよび1bはマウスとヒトの細胞株において同じレベルのTRIFおよびMyD88依存的サイトカインを誘発するが、アグリコンセリル基のL異性体からD異性体までの変化と合わせたエステル連結脂肪酸鎖からエーテル連結脂肪酸鎖まで変化がヒト細胞中のD異性体の活性を救済するを示唆している。AGP上の荷電基の相対的位置をこれらの修飾の両方が変えるので、この差異は分子のTLR4/MD2受容体複合体との相互作用における差異と関連し得る。
【0092】
TLR4刺激の後のMyD88依存的シグナル伝達がTRIF依存的シグナルよりも先であり、かつ、MyD88とTRIFの両方がNFκB経路の活性化により下流TNFα産生を誘発し得るために、LおよびD異性体で刺激した後のサイトカイン産生について初期の時点を試験をする。刺激を4時間した後、CRX−527の方がRAW264.7細胞でのTNFαおよび IP-10産生を誘発する能力が僅かに高いように見える(図27と28)。
【0093】
実施例13 マウスRAW264.7細胞のウェスタンブロット解析
RAW264.7細胞でのTRIF対MyD88における主要なタンパク質シグナル伝達分子のリン酸化(活性化)状態を測るために、細胞は予備活性化(10 -7M PMAを用いて)し10ng/mlのAGPで刺激した。細胞分解溶解物は、0、15m、30m、45m、60m、120m、240mで調製した。MM6細胞の結果と同様に、CRX−547と比べてIκBα の分解がCRX−527での刺激の後は早く進んだ(Error!Reference source not found.17)。驚くべきことに、CRX−547の刺激はより高いIκBαリン酸化とIRF3リン酸化をもたらす。これらの細胞の増加した反応性は単球細胞の成熟状態を向上させると知られるPMAでの予備活性化によると思われ、CRX−547はリン酸―IκBαおよびリン酸―IRF3の発現を誘発する。IRF3はTRIF媒介性シグナル伝達を経て誘発される。また、総IRF3タンパク質の量はCRX−547で処理された細胞においてより高い。(注記:実験回数は一回であり、負荷コントロール(βactin)は不均一な負荷の可能性を示唆する。)
実施例14 RNA干渉解析
RNA干渉(RNAi)は、TLR2,TLR4およびMyD88のTLRシグナル伝達経路に含まれる特異的遺伝子の発現を破壊するのに利用される。RAW264.7 siRNA細胞株は市販されているプラスミド (Invivogen)を使って調製される。このプラスミドはZeocin選択マーカー、GFPをコードする配列およびノックダウン用のshRNAをコードする配列を含む。細胞が一度効率的に形質移入すると、安定した細胞株が抗生物質選択を経て生じる。培養物の精度は、培養系内のGFP+細胞で決定される。また、無関係なプラスミドも対照として安定的に細胞を形質移入するのに使われる。図30は、同系のsiRNAの安定的な形質移入体においてのMyD88とTRIFのノックダウンを示す。図30Aは、サイトカイン−再生実験の前にGFP陽性細胞のパーセンテージが3つのすべての細胞株において96%以上であることを示す。図30Bは、LPSでの刺激が無関係の対照と比べてタンパク質のレベルが低下しているのでMyD88とTRIFについて首尾よくノックダウンした証拠を示す。
【0094】
LおよびD異性体による刺激の後、TRIFまたはMyD88がサイトカイン応答に必要であるかを測定するために、安定的に形質移入した siRNA細胞株を20時間(MM6力価アッセイに類似するアッセイで)または4時間(MyD88誘発サイトカイン応答を捉えるため)刺激し、細胞の上清はTNFα (MyD88)およびIP-10 (TRIF)についてアッセイした。刺激後の20時間において、無関係な対照であるLUC細胞株は、wt RAW264.7細胞が以前に示したものと類似のIP−10誘発パターンを示す。TRIFノックダウン細胞において、IP−10レベルが無関係な対照で認められた応答と同じ用量応答にならないことは、TRIFはAGP刺激の後、効率的なIP−10応答を必要としていることを示唆する。TRIFが無傷の場合(MyD88ノックダウン細胞株において)、IP−10レベルは用量反応を示し、総ケモカインは無関係な対照(LUC)を超えて上昇する。他のアッセイ系(ヒトおよびマウス系を含む)は、LとD異性体の両方ともがTRIF媒介性サイトカインを誘発するに効率的であるという仮説を支持する。
MyD88(TNFαの初期放出)およびTRIF(NFκBの遅延活性化によるTNFαの遅延放出)の両方でコントロールされるTNFαにおいて、CRX−527はCRX−547と比べて、無関係な対照においてより能力がある(図31)。MyD88またはTRIFのいずれかがノックダウンしている場合、CRX−547を超えるCRX−527の効力の増加が認められる。TNFαがMyD88とTRIFの両方で誘発するので、20時間の時点ではCRX−527またはCRX−547の刺激の後のシグナル経路間を十分に区別できない。総合すると、このデータは試験された時間枠内でTNFαはMyD88を必要としないか、または、MyD88のsiRNAのノックダウンがTNFαを抑制するのに十分でないという2つの可能性を示唆する。TRIFシグナル単独がTNFαを誘発できるとう仮説はある程度裏付けられ、つまり、この誘発はTRIF媒介性シグナル伝達によるものである得る。従って、TNFα誘発はMyD88とTRIF媒介性シグナル伝達の両方によるものである得る。化合物1aおよびCRX−679は両方のアッセイ系において20時間で同等の反応性を持つ。
【0095】
MyD88のTNFα産生の要件をより良く区別するために、siRNAノックダウン細胞株をAGP刺激を4時間した後、TNFαの産生に関して試験した(図35)。刺激後の4時間でCRX−527およびCRX−547は無関係な対照細胞株(LUC)においてTNFαを同様に誘発することを示した。力価の差異およびTNFα産生のピークは、TNFα産生がMyD88の誘発に限定されるTRIFのノックダウン細胞において増強された。MyD88のノックダウンは2つのAGP間の同様なレベルのTNFα産生を生じる。総合すると、このデータはAGPによる刺激の後のTNFα産生の誘発を早期に行うMyD88の要件を示している。さらに、CRX−527は同一投与量のCRX−547よりもTNFαを誘発する能力が強い。化合物1aおよび1bは同様なサイトカインのパターンを生じる。RAW264.7細胞を用いて刺激した4時間後のIP−10レベルは非常に低いので siRNA 細部株はIP−10レベルについてアッセイしなかった。
【0096】
参考文献
【技術分野】
【0001】
本発明は、TLR4受容体複合体を介してTRIFバイアスシグナルを誘発するための合成リピッドA模倣物、特にAPG化合物CRX547の使用に関する。
【0002】
本出願は、米国仮特許出願第61/140226号(2008年12月23日出願)の利益を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
(37 C.F.R.1.71(E) 37 C.F.R.1.71(E)に従う著作権通知)
本特許書類の開示内容の一部は著作権保護を受ける材料を含む。著作権者はその特許文献または特許開示内容をいずれかの者によってファクシミリによって再生されることに対して、それが米国特許商標庁のファイルまたは記録において現れるので異議はないが、それ以外はすべての著作権をどのような場合でも保持する。
【0004】
(連邦政府による資金提供を受けた研究に関する記載)
この発明の態様は、国立アレルギー・感染症研究所との契約番号HHSN266200400008C/N01-AI-40008に従って米国政府の支援によってなされている。米国政府はこの発明に対して特定の権利を有する。
【背景技術】
【0005】
Toll様受容体(TLR)は、ペプチドグリカン(TLR2),CpG DNA(TLR9),ウイルスRNA(TLR3/7/8)、細菌フラジェリン(TLR5)およびLPS(TLR4)を含む、保存的微生物モチーフを認識するパターン認識受容体である。特に、TLR4はリガンド結合細胞外ロイシンリッチ領域反復ドメインおよび細胞質中のToll-/IL-1Rホモロジードメイン(細胞内のシグナル伝達アダプターを促す)(Nahori et al., 2005)により特徴づけられる。リポ多糖類(LPS)、リポテイコ酸(LTA)、フィブロネクチン、また、RSV、タキソールおよびワクチンアジュバントモノホスホリルリピッドA(MPL)の融合蛋白を含む、TLR4のいくつかのリガンドが記載されている。TLR4の活性化に関連する2つの主要なシグナル伝達経路、つまりMyD88依存的およびTRIF依存的経路、が記載されている。
【0006】
最近、他のTLR4アンタゴニストと比べた場合、サルモネラミネソタの細胞壁由来の精製された解毒糖脂質の誘導体であるTLR4リガンドMPLがTRIF依存的シグナルおよびMyD88依存的シグナルに対するバイアスを示すことが報告されており、MPLが、PI3キナーゼ経路などの追加的下流シグナル経路を誘発することでMyD88依存的炎症性経路の能動的抑制を誘発するであろうと想定された(Mata-Haro et. al. 2007)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Nahori et al., 2005
【非特許文献2】Mata-Haro et. al. 2007
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
アミノアルキルグルコサミニド4‐リン酸(AGP)の選ばれた異性体を投与することを含む相対的TRIFバイアス反応を誘発する方法を提供する。本明細書に開示の合成リピッドA模倣物によるTRIF依存的シグナルの選択的誘発は、炎症性サイトカイン/ケモカインの誘発に関連する毒性の副作用の危険性を緩和する一方で、免疫反応を選択的に変化させるワクチンアジュバントまたは免疫調節物質の開発を可能にする。
【0009】
本発明は、TLR4受容体複合体を介してTRIFバイアスシグナルを誘発するための合成リピッドA模倣物、特にAPG化合物CRX547の使用に関する。CRX547はAGP CRX527のジアステレオマーである。用語「TRIFバイアス」とは、他の化合物(例えば、CRX527)のMyD88依存的シグナル伝達と比較して、化合物(例えば、CRX547)のMyD88依存的シグナル伝達の低減を言う。好ましい一実施形態において、TRIFバイアスは低減したMyD88シグナル伝達を提供し、TRIF依存的シグナル伝達を維持または増加する。他の好ましい一実施形態において、本発明はin vitroで樹状細胞からの有意なレベルのTh1細胞媒介性免疫を指向するサイトカインであるIL−12を誘発するとともに、大幅に少ない炎症性メディエーターであるIL−23(炎症性メディエーターのIL−17とTNFαを産生するTh17T細胞の維持を促するサイトカイン)を誘発することによって、TRIFバイアスを示す(Wilson et. al.2007)。Th17T細胞は関節炎、炎症性腸疾患、および多発性硬化症を含めた炎症性自己免疫疾患の発症に結び付けられていた(McGeachy et. al. 2007)。
【0010】
本発明のいくつかの実施態様を簡単に記載する。
【0011】
L−セリルAGP CRX527を含有する組成物により誘発されるMyD88依存的シグナル伝達のポテンシャルを有意に低減しながら、TLR4受容体複合体を介して有意なTRIF依存的シグナルを誘発する方法であって、該組成物中のL−セリルAGPのD−セリル誘導体を置換することを含む、上記方法。
【0012】
TRIF依存的サイトカインを誘発し、リピッドA模倣物アジュバント組成物によりヒト細胞内に誘発されるMyD88依存的サイトカインのレベルを低減する方法であって、ヒト細胞にCRX547を投与することを含む、上記方法。
【0013】
CRX527の合成D−セリル誘導体をヒトに投与することを含む、L−セリルAGP CRX527により誘発されたレベルと比べてヒト細胞中のIL−12p70とIL−23をより低いレベルに誘発する方法。
【0014】
CRX527により誘発されたIRF3と同等か高いレベルであるが、有意に低いレベルのNF-κB活性を活性化する方法であって、527のD−セリルジアステレオマーを投与することを含む、上記方法。
【0015】
第二合成リピッドAであるCRX547を投与することを含む、第一リピッドA模倣物によるMyD88依存的サイトカイン誘発を抑制する方法。
【0016】
ヒト細胞内での有益なTRIF依存的シグナル伝達のアジュバント組成物誘発を向上させる方法であり、アジュバント組成物はCRX547ではないAGPを含有しており、該方法はアジュバント組成物にCRX547を組み込むことを含む、上記方法。
【0017】
ヒトの免疫反応の向上に使用するCRX547を含むリピッドA模倣物組成物であり、CRX547を含まないリピッドA模倣物組成物と比べてTRIF依存的サイトカインは増加し、MyD88依存的サイトカインは減少する、上記組成物。
【0018】
ヒトで免疫反応を起こすのに使用するCRX547を含むリピッドA模倣物組成物であり、CRX547を含まないリピッドA模倣物組成物と比べて、NF-κB 活性は減少するが、しかし、同等か高いレベルのIRF3が認められる、上記組成物。
【0019】
ヒトで免疫反応を起こすのに使用するCRX547を含むリピッドA模倣物組成物であり、CRX547を含まないリピッドA模倣物組成物と比べてIL−12p70およびIL−23のレベルは減少する、上記組成物。
【0020】
ヒトの免疫反応の起こす際に抗原と合わせて使用するリピッドA模倣物アジュバントであり、CRX547を含まないリピッドA模倣物アジュバントと比べてIL−12p70およびIL−23のレベルは減少する、上記アジュバント。
【0021】
本明細書で説明される方法のいずれかにおいて使用するためのCRX547およびCRX547を含むリピッドA模倣物。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】CRX527およびCRX547ならびにエステル連結脂肪アシル鎖、CRX527およびCRX547をもつアミノアルキルグルコサミニド4‐リン酸塩。
【図2】ヒトPBMCにおける(A)MyD88依存的および(B)TRIF依存的サイトカインおよびケモカインの誘発についての、S. minn. Re595 LPSとリピッドA模倣物、CRX527およびCRX547の比較。
【図3】S. minn. Re595 LPS, CRX527およびCRX547を用いたヒトの単球由来樹状細胞の処理による(A)IL−12p70および(B)IL−23の誘発。
【図4】MyD88(MyD88−DN)およびTRIF(TRIF−DN)のドミナントネガティブ構築物を発現するプラスミドの形質移入によるヒトマクロファージ細胞株における(A)MyD88および(B)TRIF依存的サイトカイン/ケモカインの誘発の抑制。
【図5】エンドサイトーシス阻害剤であるジナソアの存在下でCRX−527、CRX−547、およびLPSによる誘発される(A)MyD88依存的(MIP−1α)および(B)TRIF依存的(RANTES)サイトカイン/ケモカイン。
【図6】画像ストリームゲーティング法。
【図7】ヒト単球細胞(MM6)はCRX−527またはCRX−547のいずれかで5分、15分、30分、または120分間処理し、NFкBの核移行は核染料(DRAK−5)と転写因子の共局在として定量化した。
【図8】huTLR4/huMd-2/huCD14形質移入HEK293細胞がS. minn. Re595 LPS、CRX−527、およびCRX−547で処理された時のNF-κB誘導性プロモータ活性の比較。
【図9】CRX−547の濃度上昇の存在下での、CRX−527ならびにLPSによる(A)MyD88依存的および(B)TRIF依存的サイトカイン/ケモカイン誘導の抑制。
【図10】(A)CRX−547の濃度上昇の追加によるCRX−527誘発性 TNFαの抑制(B)シルド回帰分析はCRX−527とCRX−547の両方のEC50と類似するCRX−547親和性(0.33nM)の推定値をもたらす。
【図11】CRX−547の濃度上昇の存在下でのCRX−527およびLPS MyD88依存性(TNFα)サイトカイン誘発の抑制。
【図12】CRX−547の濃度上昇の存在下でのCRX−527−誘発性NFкBの核移行の抑制。
【図13】シグナル伝達活性およびケモカイン誘導に対するCRX−527/CRX−547の安定性増強修飾の効果。LとDの異性体対CRX−527/CRX−547および1a/1bによる、(A) huTLR4/huMD-2/huCD14-形質移入HEK293細胞におけるNFкB シグナル伝達と(B)ヒト単球細胞(MM6)におけるMyD88依存的(MIP−1β)誘発の比較。
【図14】CRX−527で処理されたヒト一次、PBMC由来単球のウェスタンブロット分析であって、TRIFのホスホIRF3下流の活性化の動態およびレベルの類似、ならびにCRX−547で刺激された細胞よりもMyD88のIRAK1下流の方がより大きな分解を示す。
【図15】CRX−527で処理されたMM6細胞のウェスタンブロット分析であって、CRX−547で刺激された細胞よりもMyD88のIRAK4下流の方がより大きな分解を示す。
【図16】LとDの異性体対、化合物2aおよび2bによる(A) huTLR4/huMD-2/huCD14-形質移入HEK293細胞におけるNFкB シグナル伝達と(B)ヒト単球細胞(MM6)におけるMyD88依存的(MIP−1β)誘発の比較。
【図17】ヒト(上段)かマウス(下段)TLR4/MD−2/CD14のいずれかで形質移入されたHEK293細胞におけるCRX−527、CRX−547、およびLPSよるNFкB−依存的プロモータ活性の誘発。
【図18】同系のヒト/マウスTLR4/MD−2またはキメラ 組み合わせ(huTLR4/muMD2またはmuTLR4/huMD-2)のいずれかで形質移入されたHEK293細胞におけるNFкB−依存的プロモータ活性の誘発。
【図19】示されたアゴニストで処理されたラビットの体重変化。
【図20】示されたアゴニストで処理されたラビットの接種後の体温。
【図21】示されたアゴニストで処理されたDraizeによる注射部位反応。
【図22】示されたアゴニストを作用させたラビットの注射部位病理組織検査。示されたアゴニストで処理されたラビットの体重変化。
【図23】0.01uMのCRX−527またはCRX−547で処理後のヒトPBMC由来単球における(A)MyD88依存的、および(B)TRIF依存的サイトカイン/ケモカイン遺伝子発現の誘発。
【図24】CRX−547(2ロット)およびCRX−527(実験は一度実施)で試験したBALB/cマウスからのPBMC。
【図25】CRX−527、CRX−547、化合物1aおよび1bによるTRIF依存的(IP−10)の誘発。
【図26】CRX−527、CRX−547、化合物1aおよび1bによるMyD88依存的(TNFα)サイトカイン/ケモカインの誘発。
【図27】AGPおよびそれらのD異性体で刺激した4時間後のTNFαレベル。
【図28】AGPおよびそれらのD異性体で刺激した4時間後のIP−10レベル。
【図29】RAW264.7細胞におけるCRX−547およびCRX−527刺激後のシグナル伝達タンパク質のウェスタンブロット分析。
【図30】安定的に形質移入されたRAW264.7細胞。
【図31】LとDの異性体で刺激した20時間後のIP−10産生(siRNA 細胞株は各試験において無関係な対照と比較)。
【図32】LとDの異性体で刺激した20時間後のIP−10産生(siRNA 細胞株は各試験において無関係な対照と比較)
【図33】LとDの異性体による刺激の20時間後のTNFα産生。
【図34】LとDの異性体による刺激の20時間後のTNFα産生。
【図35】TNFα産生のためにCRX−527、CRX−547、化合物1aおよび1bで4時間刺激したRAW264.7siRNA細胞株。
【発明を実施するための形態】
【0023】
序論
リピッドAは、膜結合TLR/MD−2TLR4受容体複合体に結合しているLPS分子内の活性、疎水性構造モチーフである。リピッドAはバクテリア種の間でかなりのばらつきがある。個々のグラム陰性菌は表面上でリピッドAの構造を調節することが出来き、程度は異なっても炎症になる(Bishop et al. 5071-80; Guo et al. 189-988)。アシル鎖の数と長さおよびリン酸化のパターンの変化が極めて強力なアゴニストからアンタゴニストまでのリピッドA分子の活性を変化させることが示されている。(Hawkins, 2002 30067 /id, Stover at al, Seydel et. al. 2000)。ほとんどのLPS種の毒性はTLR4受容体複合体に関するリピッドA部分との相互作用により決定される(Baker et al. 1992)。アシル鎖の数、長さ、および配置、ならびに荷電基の数および位置における差異はリピッドAに対する免疫学的応答のレベルと性格の両方に有意に影響することが示されている(Teghanemt et al. 2005, Stover et. al. 2004, Schromm et al. 1998)。さらに、単糖、リピッドA模倣物、アミノアルキルグルコサミニド4リン酸塩(AGP)とTLR4アゴニストおよびアンタゴニスト活性とを合わせたライブラリーの設計と合成も記載されている(Stover et al. 4440-49;Persing et al. S32-S37;Johnson et al. 2273-78)。
【0024】
上記のように、2つの主要なシグナル伝達経路はTLR4アゴニストによるTLR4活性化、MyD88依存的およびTRIF依存的経路に沿って記載されている。MyD88依存的シグナルは、2つのToll/インターロイキン−1受容体(TIR)ドメイン含有アダプタータンパク質、Mal/TIRAPおよびMyD88をTLR4のTIRドメインに連続的または同時的に結合することに依存している(Fitzgeral et. al. 2001)。TRIF依存的シグナルは、TIRドメイン含有アダプタータンパク質、TRAM/TICAM−2およびTRIF/TICAM−1がTLR4−TIRドメインに連続的または同時的に結合をすることを要求する(Rowe et al. 6299-304;Yamamoto et al. 1144-50)。2つの経路とも先天および適応免疫の連結に関係している(Kawai et. al. 2001, Kaisho et al. 2001)。
【0025】
リピッドA−レセプター相互作用の下流、特定のTLR4依存的シグナル伝達経路、(MyD88依存的およびTRIF依存的経路)は受容体結合に対する細胞応答を決定する。MyD88依存的シグナルは、TNFαおよびIL−1βなどの炎症性メディエーターの合成と分泌により特徴づけされる炎症反応を促す(Huang et. al. 2004)。MyD88依存的経路を介するシグナルは、初期のNF-κB 活性化および腫瘍壊死因子-α(TNF−α)などの炎症性サイトカイン、インターロイキン(IL)−1β およびMIP−1αなどのケモカインの放出を誘発する。
【0026】
TRIF依存的シグナルは、1型IFNなどの免疫仲介物質、一部のIL−12ファミリーメンバーおよび樹状細胞成熟を誘発しT−細胞成熟に影響するケモカインの産生を促す。TRIF依存的経路を介したシグナルは、MyD88経路を介するシグナルよりもNF-κB の活性化(Hoebe et al. 743-48)を低下させ、遅らせ、しかしより維持しながら、インターフェロン調節因子である(IRF)−3およびIRF−7の活性化と核移行を誘発する(Kawai et al. 5887-94)。IRF−3およびIRF−7の活性化はIFNβの転写および続く細胞外放出を駆動する。次にIFN−α/β受容体へのIFNβのオートクリンまたはパラクリン結合は、JAK/STAT経路を活性化することでIFNαとIFNβ、ならびに、インターフェロン誘導性タンパク質―10(IP−10)、活性化正常T細胞における発現および分泌調節性(RANTES)、およびマクロファージ走化性タンパク質‐1(MCP−1)などのIFN−誘導性ケモカインの発現が高まる(Yamamoto et. al. 2003, Kawai et. al. 2001, Serbina et. al. 2003)。
【0027】
大部分のAGPはMyD88およびTRIF依存的経路を介して情報伝達する。近年、特異で興味深いD−セリルAGP、CRX−547がTRIF依存的経路を介して大部分を情報伝達することが示された。このことは、MyD88およびTRIF依存的経路を刺激する立体異性体であるL−セリルAGP、CRX−527とは対照的である。TRIF依存的経路がI型インターフェロンの産生を生じる一方で、MyD88経路が炎症性サイトカインの誘発と関連するのでTRIF経路の使用およびMyD88経路の回避が、例えば、アジュバントとして使用される時のTLR4アゴニストの有効性および安全性の両方に影響し得る。MyD88依存的シグナルの相対的減少が安全性改善(炎症の誘発低下)し、従って、L−セリル異性体と比較してD−セリル異性体の治療係数を向上させる一方で、TRIFシグナルの相対的な増加は増強された細胞媒介性免疫を生じ得る。
【0028】
用語
別途説明されないかぎり、本明細書に用いられるすべての技術的および科学的用語は、この開示が属する技術分野の技術者により一般に理解されるのと同じ意味をもつ。分子生物学における一般的な用語の定義は、Oxford University Press, 1994に出版されたBenjamin Lewin, Genes V(ISBN 0-19-854287-9); Blackwell Science Ltd., 1994に出版されたKendrew et al. (eds.), The Encyclopedia of Molecular Biology(ISBN 0-632-02182-9);およびVCH Publishers, Inc., 1995 (ISBN 1-56081-569-8)により出版されたRobert A. Meyers (ed.), Molecular Biology and Biotechnology: A Comprehensive Desk Referenceに見出されうる。
【0029】
単数形「1つの(a)」、「ある(an)」、および「その(the)」は、文脈において特記されない限り、複数形の指示対象を含む。同様に、用語「または」は、文脈において特記されない限り、「および」を含むものとして使用される。用語「複数」は2つまたはそれ以上をいう。核酸またはポリペプチドについて与えられる場合、すべての塩基サイズまたはアミノ酸サイズ、およびすべての分子量または分子質量の値は近似であり、説明のために提供されることが、さらに理解されるべきである。さらに、抗原などの物質の濃度またはレベルに関して行なわれた数値限定は近似を示している。従って、濃度が少なくとも(例えば)200pgとされた場合、濃度は少なくとも近似的に(または「約」または「〜」)200pgであると理解されることを意図している。
【0030】
ここに記載のものと類似または同等の方法及び物質が、この開示において実用的または試験的であることが可能ではあるが、適切な方法および物質が以下に記載されている。「含む」とは「含有する」を意味する。従って、その状況が他のことを要求していない限り、用語「含む(comprises)」、および「含む(comprise)」と「含んでいる(comprising)」などの変法は明示された化合物または組成物(例えば、核酸、ポリペプチド、抗原)、もしくは、いかなる他の化合物、組成物、ステップ、もしくはそれらの群を排除することなく、ステップ、または化合物もしくはステップの群が含まれることを意味するものと理解されるべきである。略語「e.g.」はラテン語のexempli gratiaに由来し、非限定な例を示すのに使用される。従って、略語「e.g.」は、「例えば(for example)」と同じである。
【0031】
「リピッドA模倣物」は、TLR4受容体(例えば、MPLとAGP)を介して、TRIF情報伝達および/またはMyD88情報伝達を誘発するTLR4リガンドである。
【0032】
「TRIFバイアス」とは、一の化合物によるMyD88依存的シグナル伝達のレベルが、他の化合物によるものよりも低いことをいう。
【0033】
本開示の様々な実施形態の審査を容易にするために、以下の説明を提供する。さらなる用語と説明を本開示の文脈において提供することもできる。
【0034】
アミノアルキルグルコサミニド4‐ホスフェート
簡単に述べると、セリルAGP CRX527およびCRX547は、リピッドAの還元性糖類がアミノアルキルL−またはD−セレンベース単位で置換され、かつ、10炭素の正常な脂肪アシル鎖を含む3つの(R)−3−nアルカノイルオキシテトラデカノイル残基を有する、リピッドA模倣物のクラスである。AGPは、ヒドロキシルとアミノ基の化学的識別および(R)−3−nアルカノイルオキシテトラデカノイル残基の連続的導入ができる高度な収束手法により以前に記載されているように調製する。(Bazin et al. Bioorg. Med. Chem. Lett. 2008 18, 5350; Johnson et al Bioorg. Med. Chem. Lett 9 1999 2273; Patent PublicationWO 04/005308を参照)。セリルAGPはシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(純度 >95%)で精製し、標準的な分析法でトリアルキルアンモニウム塩として分析する。
【化1】
【0035】
また、図1にはCRX527とCRX547が示されており、以前に合成され記載がされている(U.S. Patent No. 6,113,918; Examples 15 and 16, and WO 2006/012425 WO 2006/016997を参照)。CRX537の場合に比べて、CRX547の構造的な相違がアグリコンカルボキシル基の位置に影響を与える。この差異が荷電カルボキシル基のTLR4受容体複合体との相互作用に影響を与え得る。LPS模倣物がMD2を介してTLR4受容体複合体との相互作用をすることが以前に示され(Ohto et. al. 2007)、従って、CRX547とCRX527のジアステレオマ間の差異がMD−2またはTLD4をともないカルボキシル基、リピッドAリン酸バイオアイソスターの相互作用を阻害する可能性がある。次に、受容体の二量体化、またはそれに代えてMyD88と下流シグナルの結合を推進する細胞内コンフォメーション変化を阻害するかもしれない。おそらくは、この阻害または変化はTRIF依存的シグナルを排除しない。
【0036】
最近公表されたヒトTR4/MD-2/lipidIVa (Ohto et al. (2007) Science. 316:1632) およびヒトTLR4/MD−2/Eritoran受容体の結晶構造は、リピッドA模倣物の還元性糖類の1つにおけるある位置のリン酸基がリピッドAのためのMD2疎水性結合ポケットの出口近くにある荷電基と相互作用をすることを示唆している。第2TLR4/MD−2複合体と合わせTLR4/MD−2二量体化の構造モデル(Kim et al. 906-17;Walsh et al. 1245-54) は、MD−2/リピッドA複合体の表面がダイマーパートナーのTLR4と相互作用し得ることを示唆する。シグナル伝達の差異を誘発し得る偏左右異性CRX547が阻害する可能性がある一方でCRX527の生物的等配電子体カルボキシル基がこれらの相互作用を維持し得る。
【0037】
試験をしてみるとMPLはCRX547と同様のMyD88およびTRIF依存的シグナルのパターンを示し、同時に、MPLはCRX547における構造的な変化に影響を受ける同じ位置でのリン酸を欠失する。従って、MPLとCRX547は、実質的なMyD88依存的シグナル伝達の非存在化でTRIF依存的シグナル伝達を誘発する共通の機序を共有し得る。
【0038】
材料および方法
本明細書に記載された材料および方法は、後述する実施例の実施において有用である。
【0039】
細胞株および試薬
ヒトTLR4、MD−2、およびCD14発現HEK293細胞株、NF-κB/LacZリポーター・プラスミド、ドミナントネガティブMyD88発現(pDeNy-hMyD88)および ドミナントネガティブTRIF発現(pDeNy-hTRIF)プラスミド、LyoVecトランスフェクション試薬およびS. minnesota 由来のウルトラピュアRe595 LPS は InvivoGenから得ることができる。ヒト単球/マクロファージ細胞株、THP−1はATCCから得ることができる。FuGENE6トランスフェクション試薬はRocheから得ることができる。InvivoGen (San Diego, CA)から得たHEK293-hTLR4/hMD2/hCD14細胞は、 RPMI 1640 (ATCC) の中で10% FBS (Hyclone)、10 μg/mL ブラスチシジン、50 μg/mL HygroGold (InvivoGen)とを使って培養する。THP−1細胞はRPMI1640(ATCC)の中で10% FBS (Hyclone)、100 U/mL ペニシリン/100 ug/mLストレプトマイシン(Sigma)とを使い培養する。
【0040】
初代ヒト細胞培養
末梢血単核球(PBMC)はフィコール・ハイパック1.077 勾配を介して健康なドナーの血液から単離し、アゴニストで処理され、かつ、述べたように単球溶媒 (RPMI 1640 (ATCC)、10%ヒトAB血清(Lonza/BioWhittaker), 100 U/mL ペニシリン/100 ug/mL ストレプトマイシン(Sigma)、50 uM 2-メルカプトエタノール (Sigma) 内で付着単球を単離するのに使われる(Stover et al. 4440-49;Kawai et al. 5887-94;Gervassi et al. 7231-39)。単球由来マクロファージは、アゴニストを作用させる前に3日目と5日目に溶媒を交換し50 ng/mL rhM-CSF (R&D Systems) を用いて単球溶媒中で付着単球を5日間インキュベートして産生した。単球由来樹状細胞は、3日目と6日目に溶媒を交換し 10 ng/mL rhGM-CSFおよび10 ng/mL rhIL-4 (R&D Systems)を用いて単球溶媒中で付着単球を7日間インキュベートして産生した。
【0041】
NFkB核移行
指数増殖におけるMonoMac6細胞は、示された時間にて、2%グリセロール媒体で希釈したAGPの濃度を上昇させて刺激した。直ちに固定化した細胞(2%パラホルマリンで一晩)は、膜透過処理液緩衝液 (PBS, 2%FBS, 0.1% TritonX)中で一次抗体であるanti-NFκB(p65) (SantaCruz Biotechnology, SantaCruz, CA)およびanti-IRF3 (BD Biosciences, San Jose, CA)で染色し、その後、二次抗体であるanti-Rabbit FITC (Jackson Labs, Bar Harbor, ME), anti-mouse PE (BD Biosciences, San Jose, CA)で染色した。核染色 DRAQ5 (Alexis Biochemicals (San Diego, CA) )を用いたシグナル伝達たんぱく質の局在化の類似度スコアは、すでに述べたように核移行の画像ストリーム解析に使用される(George, 2006 32669 /id)。最小限の3,000個の細胞が各試験の条件で採取され解析される。
【0042】
ドミナントネガティブMyD88およびTRIF
12ウェルプレート(5 × 105 cells/well)中にTHP−1細胞を播種し、マクロファージへと分化させるために100 U/mL ペニシリン/100 ug/mL ストレプトマイシン(Sigma)、 20 ng/mL phorbol mystyric acid (PMA) (InvivoGen) を使い、 0.5 mL RPMI 1640 (ATCC) 中でインキュベートした。THP−1が分化した後、溶媒を5 ng/mL PMA でTHP−1溶媒に変更し、ならびに、細胞は、48時間、pDeNy-hMyD88/LacZ、またはpUNO-mcs (control)/LacZ プラスミドおよびFuGENE6トランスフェクション試薬の0.5 μg/well で一過的に形質移入した。溶媒は新鮮な溶媒に交換して、その後14時間表示した濃度のTLR4アゴニストで刺激した。回収した上清はLuminexプラットフォームを用いて、マルチプレックスサンドイッチELISA (R&D Systems) によりサイトカインのレベルをアッセイした。対照ウェルは Invivogen LacZ Quantitationキットを用いて、トランスフェクション効率をアッセイした。
【0043】
MyD88およびTRIF (MAL/TRAM)のsiRNAノックダウン
指数増殖するRAW264.7 細胞は、タンパク質ノックダウンのためのshRNA 配列、Zeocin抵抗性遺伝子およびGFPコード配列 (InVivoGen, San Diego, CA)を含む、psiRNA-mTICAM1, psiRNA-mMyD88,またはpsiRNA-LUC (無関係な対照) プラスミドを使い、Optimem (Roche, Indianaopolis IN) の既存の方法によりFuGENE6で安定的に形質移入した。選択した後のトランスフェクション効率は、画像ストリームを用いてGFP陽性細胞の割合で決定する。
【0044】
HEK293トランスフェクション
12ウェルプレート(4 x 105 cells/well)中にHEK293-hTLR4/hMD2/hCD14細胞を播種し、40%〜60%コンフルエントになるまで(2〜3日間)培養した。細胞を、5か所のNF-κB部位 (pNiFty2-SEA-InvivoGen; San Diego, CA)およびチミジンキナーゼプロモータ駆動ルシフェラーゼ (Promega)を構成的に発現するトランスフェクション コントロールプラスミドを用いて、遺伝子組換えELAMプロモータの制御下で分泌されたヒト胎児アルカリホスファターゼを発現する NF-Bレポーター構築物の100 ngを使用して24時間、形質移入した。プラスミドは、QiagenのEndofree Maxiprepプラスミドキットで調製された。トランスフェクション後、細胞は14時間、TLR4アゴニストで刺激し清澄した上清は、 NF-кB活性化を定量するSEAP活性についてアッセイして(SEAP Reporter Assay Kit-InvivoGen)、NF-кB活性化およびルシフェラーゼ活性 (Promega)および供給されたプロトコールに従ってトランスフェクション効率を基準化する。
【0045】
エンドサイトーシスに対するCRX−547シグナル伝達の依存性:ジナソア阻害
分化したTHP−1マクロファージ (20 ng/mL PMAを用いて48-ウェルプレート内に5E5/ウェル)は、無血清THP−1溶媒中で60分間エンドサイトーシスに対する低分子阻害剤であるジナソア10 uMで予め処理した。アゴニストの指定濃度で8時間、刺激する前に溶媒は0.45mLのTHP−1溶媒に変更する。上清は採取され、Luminexプラットフォームを用いてマルチプレックスサンドイッチELISA (R&D Systems) によりサイトカイン/ケモカイン解析の前に80℃で貯蔵される。
【0046】
ウェスタンブロット法
ウェスタンブロットおよびリン酸―ウェスタンブロットタンパク質解析では、細胞はCell Lysis Buffer (Cell Signaling Technology, Danvers, MA) と併せた Protease Inhibitor Cocktail (Sigma, St. Louism MO)で溶解する。標準的な方法を使ってPVDF膜 (Millipore) 上でウェスタンブロットを実施する。バンドはECL Advance Western Blot kit (GE Healthcare, Piscataway, NJ)で検出する。二次Anti-Rabbit HRP抗体はKPL, (Gaithersburg, MD)から得ることができる。Anti-β actin, anti-IRF-3, anti-phospho-IRF-3 (Ser396)およびanti-IRAK1抗体は、Cell Signaling Technology (Danvers, MA)から得ることができる。
【0047】
マウスの血清サイトカイン/ケモカインの誘発
実験開始時の年齢は7週から9週である雌のBALB/cまたはC57Bl/6マウスをCharles River Laboratories, USAから入手した。賦形剤 (0.2%グリセロール) に200 uL のアゴニストまたは賦形剤単独でマウスに腹腔内注射した。血清試料は注射2時間または6時間後に取り出され、Luminexプラットフォームを用いて、マルチプレックスサンドイッチELISA (Invitrogen) によりサイトカイン/ケモカインの誘発に関する試験をした。Public Health ServiceおよびInstitutional Animal Care and Use Committee at GlaxoSmithKline Biologicals, Hamilton, Montanaが確立したガイドラインに従ってすべての動物を用いる。
【0048】
ウサギを用いた毒性試験
3匹のウサギの群(NZW−Western Oregon Rabbit Company, Philomath, OR)は0日、7日、14日目に1mLの希釈したAGP,またはMPLコントロールをIMで接種した。AGPの2つの投与が評価される。体重、体温、臨床症状およびDraizeスコア について全ての動物をモニターする。これらの動物は最終投与後一週間で屠殺する。血液学分析と臨床化学検査のため処理前、第2回接種後2日目、および犠牲にした時に血液を採取する。注射部位および主要臓器の病理組織検査を標準的な治療法で実施する。Public Health ServiceおよびInstitutional Animal Care and Use Committee at GlaxoSmithKline Biologicals, Hamilton, Montanaが確立したガイドラインに従ってすべての動物を用いる。
【実施例】
【0049】
実施例1
L−異性体(CRX527)との比較における合成リピッドA模倣物(CRX547)のD−異性体投与による類似したレベルのTRIF依存的サイトカイン、一方さらに低いレベルのMyD88依存的サイトカイン
ヒトの新鮮な末梢血単核細胞(PBMC)からのサイトカイン誘発に対するS. minnesota Re595 LPS, CRX-547およびCRX-527の影響を比較した場合、CRX−527とLPSは類似したレベルのサイトカインTNFα およびケモカインMIP-1α (図2A)を誘発する。または、CRX−547は有意に低いレベルのTNFαとMIP-1αを誘発するが、ケモカインIT−10とRANTESは同程度であった(図2B)。
【0050】
TNFαとMIP-1αの発現はTLR4アダプターであるMyD88を介したシグナル伝達に依存する一方でIP−10とRANTESの発現はTLR4アダプターであるTRIF/TICAM-1を介したシグナル伝達に依存する(Hoebe et al, Kawai et al)。ヒトの新鮮な全血、培養ヒト単球、ヒト単球由来マクロファージ、およびヒト単球由来樹状細胞における同じ組み合わせのMyD88依存的およびTRIF依存的サイトカインの誘発についてアゴニストを比較した場合、類似のパターンが認められる(データを示さず)。
【0051】
実施例2
CRX−547は、単球由来樹状細胞におけるより低いレベルのIL−12p70およびIL−23を誘発する。
【0052】
炎症性サイトカインの誘発および樹状細胞(DC)の成熟は、アジュバントワクチンを投与する間、強い免疫反応を高めることに寄与する。従って、ヒトDCにIL−12p70を誘発するCRX527とCRX−547の能力を比較する。IL−12p70の誘発はTh1ヘルパーT細胞系列の発達を促し、細胞媒介性免疫応答を促す(Goriely, Neurath, and Goldman 81-86;Gutcher and Becher 1119-27)。IL-12p70 の発現がMyD88およびTRIFシグナル依存であると示されたので(Goriely, Neurath, and Goldman 81-86)、CRX547処理に対するDC応答が消失するか否かが確認される。CRX−527およびLPSと比較した場合有意に減少しているが、CRX−547はヒト単球由来DCからのIL−12p70応答を誘発し得る(Error!Reference source not found.3A)。
【0053】
または、DCにおける炎症性メディエーターであるIL−23の発現は全面的にMyD88依存的である (Re and Strominger 37692-99;Goriely, Neurath, and Goldman 81-86)。樹状細胞のCRX−527とCRX−547処理によるIL−23の誘発を比較した場合、IL−23発現は事実上CRX−547処理細胞におけるベースラインまで下がる(Error!Reference source not found.3B)。
【0054】
実施例3
サイトカイン誘発のMyD88およびTRIF依存性
ドミナントネガティブ変異体構築物の発現がMyD88を介するシグナル伝達を抑制するのに使われる場合、MyD88依存的サイトカインであるTNFαのCRX−527での誘発は有意に減少し、TRIF依存的サイトカインであるRANTESの誘発はほんの僅か減少する一方で、MyD88依存的サイトカインのCRX−547誘発はMyD88のノックダウンにより影響を受けない([066]4A)。
【0055】
または、TRIFの発現を同様の方法を用いてノックダウンさせた場合に、CRX−527とCRX−547の両方によるTRIF依存的サイトカインの誘発は同様の程度減少する([066]4B)。
【0056】
また、AGP、CRX−527およびCRX−547のMyD88/TRIF シグナル伝達特異性は、エンドサイトーシス依存性により区別し得る。最近、2つのグループ(Kagan et al. 361-68;Tanimura et al. 94-99)が、TLR4受容体複合体の内部移行後にTLR4のTRIF依存的シスシグナル伝達下流がエンドソーム/リソソームから開始される一方でTLR4のMyD88依存的シスシグナル伝達下流は細胞膜から開始することを報告した。Kaganらは、エンドサイトーシス阻害剤のDynasoreを使ってMyD88依存的サイトカインではなくTRIF依存的サイトカインの誘発が抑制されることを示した。従って、以下に示されるようにDynasoreは、CRX−527およびCRX−547によるサイトカイン/ケモカイン誘発のMyD88およびTRIF依存性を比較するのに使われる。
【0057】
Dynasoreを用いたエンドサイトーシスの抑制によりヒトPBMC由来マクロファージにおけるCRX−527およびCRX−547によるTRIF依存的RANTES誘発を抑制する一方で、未処理細胞と比べてMyD88依存的MIP-1αの誘発は僅かに増加する。これらの結果は、TLR4の下流のCRX−527およびCRX−547によるTRIF依存的サイトカイン誘発は、エンドサイトーシス後の同様のシグナル伝達機序により起こることを示唆している。
【0058】
実施例4
CRX−547はCRX−527と比べた場合、有意に低いレベルのNFκB の核移行および転写活性の誘発し、同等かまたはそれ以上に高いレベルのIRF−3核移行を誘発する。
【0059】
TNFαおよびIL-1βを含めた多くの炎症性サイトカインの発現は、NFκBの活性化および核移行に依存する。TLR4受容体複合体のMyD88依存的およびTRIF依存的シグナル伝達下流の両方が、転写因子であるNFκBの活性化および核移行を誘発する。しかしながら、TRIF依存的シグナル伝達を介してNFκB活性化が後で誘発され、かつ、それはMyD88依存的シグナル伝達を介する活性化と比べてかなり低い程度である(Yamamoto et. al. 2002)。
【0060】
インターフェロン応答因子−3(IRF−3)は、TRIF依存的TLR4シグナル伝達経路の下流で活性化する転写因子である(Yamamoto et al. 640-43)。IRF−3リン酸化により、IRF−3の二量体化、核移行、ならびにI型インターフェロン(IFNβ)およびインターフェロン誘導性遺伝子の転写の誘発を生じる(Honda, Takaoka, and Taniguchi 349-60;Tailor, Tamura, and Ozato 134-40)。画像ストリームは、ラベルした転写因子と核特異的染料(DRAK−4)で染色された細胞核の共局在の定量化によりNFκBとIRF-3の両方の核移行を測定できる(Beum et al. 90-99;George et al. 117-29;Arechiga et al. 7800-04)。
【0061】
CRX−527およびCRX−547により開始したシグナルを比較するために、CRX−527およびCRX−547の処理によるNFκBおよびIRF-3の核移行の誘発は、画像ストリーム解析を用いてヒト単球細胞株であるMonoMac6 (MM6) において比較した。Error!Reference source not found.6は、CRX−527およびCRX−547で刺激されたMM6細胞のゲーティングストラテジーを示す。
【0062】
CRX−547と比べると、CRX−527はより初期のNFκB 核移行(刺激後、早ければ5分後)を誘発する。CRX−547活性で誘発されるNFκB 核移行は、ある特定閾値(この場合は50%前後)以上には決して達しない一方で、CRX−527による刺激では30分でほぼ100%のNFκBが核移行する(Error!Reference source not found.7)。AGPのいずれも投与量依存的に機能するように見える。CRX−537であるかCRX−547であるかの刺激に関わらず、高いバックグラウンドレベルのIRF3核移行が存在し、これはTRIFを介したシグナル伝達を示唆する(データは示さず)。初期のNFκB活性はMyD88シグナル伝達パターンを示しているので、このデータはCRX−527はMyD88を介して情報伝達するがCRX−547はMyD88シグナル伝達の誘発において作用が弱いことを示す。
【0063】
CRX−527とCRX−547での核移行の差異が転写活性化の上昇と言い換えられることを確認するために、ヒトTLR4, MD-2, CD14およびNFкBレポタープラスミドで形質移入したHEK293 細胞内でのCRX−527およびCRX−547誘発NFκB活性化を比較する。核移行アッセイにあるようにCRX−527およびLPSは、CRX−547と比べて NF-κB プロモータの有意に高い活性化を誘発することが示されている((Error!Reference source not found.8)。
【0064】
実施例5
CRX−547はCRX−527によるMyD88依存的サイトカイン誘発を抑制する。
【0065】
CRX−527は、サイトカインおよびケモカインを誘発する転写因子の活性化に導くTLR4/MD2受容体複合体を介して情報伝達する。固定濃度のCRX−527またはLPSを添加する前に、CRX−547の濃度を高めて一次ヒト付着単球に添加した場合、MyD88依存的サイトカインであるTNFαの誘発は抑制される一方で、TRIF依存的ケモカインであるMCP−1の誘発は、より高い濃度のCRX−547にて相加的に増大する(Error!Reference source not found.)。TNFα 誘発を抑制するのに必要なCRX−547の濃度はCRX−527およびLPSの固定濃度と同じ範囲にあり、これはCRX−547がTLR4複合体への結合についてCRX−527およびLPSと競合し得るが、結合時のTRIF経路を介したシグナル伝達を主として誘発することを示唆する。
【0066】
CRX−547は、単球細胞におけるTLR4のMyD88依存的サイトカイン/ケモカイン下流の誘発に対して、CRX−527およびLPSと比較して部分的アゴニストであるように見えるので、単球細胞をCRX−527で処理した場合にCRX−547を含ませることはサイトカイン/ケモカイン誘発を抑制し得るし、CRX−547によるTRIF選択的シグナル伝達の作用メカニズムについて洞察を与える。この目的のために、一次ヒト単球をCRX−547の増加濃度下でCRX−527の用量範囲内で処理する。
【0067】
得られる用量反応曲線は4−パラメーターロジスティック方程式に適合する。図10Aは、CRX−527誘発TNFαについての容量反応曲線に対する 0 uM、0.000016 uM、0.004 uM、および0.1 uMのCRX-547の効果を示す。
【0068】
部分的アゴニストとして予測されていたように、CRX−547の濃度の増加により、TNFα誘導曲線をX軸に沿ってシフトする一方で、当該曲線の基礎レベル(下位の漸近線)が、CRX−527の非存在下におけるCRX−547の反応レベルまで増加する。CRX−547の濃度の対数に対してのCRX−547の各濃度についての対数 EC50 移動(DR−1)をプロットする(Schild回帰)と、CRX−547およびCRX−527の用量応答曲線から計算したCRX−547についてのEC50 と、計算による親和性(Kbapp)とを比較することができる。この値は、CRX−547の親和性がCRX−547のとCRX−527の両方のEC50 値に近づくことを確認し、CRX−547はTLF4受容体複合体での結合とMyD88依存的シグナル(TNFα 誘発を生む)について効果的にCRX−527と競合することを示唆している(図10B)。
【0069】
同様に、図11は、CRX−527またはLPSの固定濃度を添加するとともに、CRX−547の濃度を高めて一次ヒト付着単球に添加した場合、MyD88依存的サイトカインであるTNFαの誘発は抑制されることを示している。TNFαの誘発を抑制するのに必要とされるCRX−547の濃度はCRX−527およびLPSの固定濃度(100 nM)と同じ範囲 (IC50CRX-527: 48±30 nM/IC50LPS: 18±12) であり、これはCRX−547がTLR4複合体との結合においてCRX−527とLPSと競合することを示す。
【0070】
CRX−547が、一定のCRX−527で処理された細胞におけるNFκB核移行を拮抗するかを決定するために、CRX−547の投与を増やしつつMM6細胞を20分、35分および2時間刺激する(図12)。同時にAGPが添加された時にはCRX−547は、最大値の投与量のCRX−527で誘発されたNFκB核移行を拮抗した。CRX−547が一定であり、CRX−527でスパイクされた場合、CRX−527刺激はCRX−547単独でのNFκB核移行の最大作用を克服できる。このデータは、CRX−547とCRX−527はTLR4受容体複合体での結合について競合しMyD88依存的シグナル伝達を抑制することを示す。
【0071】
実施例6
ヒトTLR4の明らかなTRIFバイアスアゴニズムを持つCRX−547の類似体
AGPファミリーの中の類似体を評価するために、類似パターンのサイトカイン/ケモカイン誘発について、化合物を試験する。エステル連結二次アシル鎖を持つ、セリルAGP、CRX−527およびCRX−547のLとDの異性体対を、エーテル連結二次アシル鎖、化合物1aおよび1b(Error!Reference source not found.1に示す化合物)、リード候補AGPの潜在的安定性強化修飾を持つセリル類縁体と比較した。興味深いことに、1bにおいて、分子を修飾してエステル結合二次アシル鎖ではなくエーテル結合二次アシル鎖を有することにより、、MyD88依存的シグナル伝達の誘発についてL異性体に比べてD異性体において実質的な有効性を回復する(図13)。エーテル結合D異性体によるMyD88有効性救済の機序的な根拠は不明である。
【0072】
実施例7
CRX−527またはCRX−547で、またはCRX−527もしくはCRX−547で刺激されたMM6で刺激された一次ヒト単球のリン酸―ウェスタンブロット解析
セリン/トレオニンキナーゼであるIRAK−1の分解はMyD88依存的TLR4シグナル伝達の下流で起こる一方で、TRIF依存的TLR4シグナル伝達はIRF−3活性化を起こす(Yamamoto et al. 6668-72;Yamamoto et al. 640-43)。一次ヒト単球は示された時間、CRX−547かCRX−527のいずれかで刺激され、細胞分解溶解物をMyD88経路―活性化キナーゼ、IRAK−1およびTRIF経路―活性化転写因子IRF−3(リン酸―IRF−3および総IRF−3)のレベルについて、ウェスタンブロットにて解析する。β−アクチンの値はローディング対照として使用される。CRX−527で刺激した単球はIRAK−1が急激に減少する一方で、CRX−547で刺激した細胞ではこのタンパク質の分解の遅れ、減少が示された(Error!Reference source not found.4)。
【0073】
TLR4連結後のMyD88対TRIFシグナル伝達におけるMAPKシグナル伝達分子の役割は複雑である。なぜなら、p38が両方の経路に関係しているからである。しかしながら、p38リン酸化のTRIF経路のインディケータとしての役割は文献に示されている。LPS刺激の後のp38のリン酸化はTRIF-/- マウス由来のマクロファージ内で減少する一方で、TRIF+/+ マクロファージはp38の持続性リン酸化を示し、これはTLR4連結後のTRIFがp38のリン酸化状態の維持に役割をはたすことを示唆した(Thomas et al. 31119-30)。p38のリン酸化状態がCRX−527対CRX−547での刺激後に異なることを決定するために、MM6細胞からの細胞分解溶解物をウェスタンブロット解析する。活性化の類似した動態を示したが、CRX−547と比較した場合のCRX−527の刺激はp38のリン酸化状態を僅かに増加させる(図15)。
【0074】
MAPK経路および下流の転写因子はTLRアゴニストにより別個に調節される。IRAK4およびIκBαの分解はTLR4シグナル伝達後のMyD88を示す一方で、TRIF媒介性TLR4シグナル伝達はIRF3活性化を起こす(Yamamoto et al. 6668-72;Yamamoto et al. 640-43)。MM6は示された時間、CRX−527かCRX−527(10ng/ml) のいずれかにより刺激される。細胞分解溶解物は採取されβ−アクチンをローディング対照として使用してMyD88経路タンパク質、リン酸―IκBα、総IκBα、IRAK4,およびTRIF経路タンパク質、リン酸−p38、総IRF3およびリン酸IRF3のウェスタンブロット解析が実施される。CRX−527で刺激したMM6細胞では総IκBαおよびIRAK4が急激に減少した一方で、CRX−547で刺激した細胞はMyD88誘発シグナル伝達タンパク質両方の分解は遅れるか、少ない。TRIF媒介性シグナル伝達タンパク質、リン酸―p38、総p38、IRF3およびリンーIRF3においては、これらの2つのAGPの違いは僅かであると認められる。
【0075】
実施例8
マウスにおけるMyD88およびTRIF依存的シグナル伝達の評価
一次ヒト細胞の結果とは対照的に BALB/cマウスに静脈投与した後CRX−547はマウス血清中に同様のレベルのMyD88依存的サイトカインを誘発する。この反応がBALB/cマウスに特異的でないことを確認するために、C57/BL/6マウスにおいて血清サイトカイン誘発の同様の試験を実施する(Error!Reference source not found.)。BALB/cマウスに認められる場合と比べて、選択したサイトカインについてCRX−547による相対的な誘発は僅かに小さいが(示していない)、動態(投与後2時間または6時間で誘発)およびサイトカイン誘発の強度はMyD88依存的 (TNFα, IL-10) およびTRIF依存的(RANTES, IP-10, MIG) サイトカイン/ケモカインについてはCRX−527およびCRX−547と類似している。さらに、関心がもたれているものは、試験されたMyD88依存的サイトカインの誘発が投与後6時間よりも2時間において常に高い値である一方で、TRIF依存的サイトカインの誘発は各アゴニストの6時間で高く、これは二つの経路を介したサイトカインの誘発の異なる動態を示唆する。この現象は、多くのTRIF依存的サイトカインの誘発について従来から認められている初期のIFNβ誘発およびオートクリン/パラクリン活性の必要性(Perry et al. 407-22)、または、エンドサイトーシスの必要性によるTRIF依存的シグナルの遅れ(Kagan et al. 361-68)で説明できる。
【0076】
LおよびD異性体AGPによるin vitroにおけるMyD88およびTRIF依存的サイトカイン/サイトカイン誘発を試験したいくつかの実施例(下記の実施例12-14を参照)。マウスPBMCでのサイトカイン誘発、マウスのマクロファージ細胞株RAW264.7でのサイトカイン誘発、および muTLR4/muMD2―形質移入HEK293細胞での NFкB活性誘発を含む各ケースにおいて、セリルAGPのD異性体は、本明細書に開示されたヒト系で示されたのと同じTRIFシグナル伝達バイアスは示さない。
【0077】
実施例9
CRX−547シグナル伝達の種特異性(マウス対ヒト)についての受容体の基礎
TRIFバイアス状態でのシグナル伝達について、CRX−547、CRX−527のD異性体での2つのAGP異性体における異なるシグナル伝達パターンが注目される一方で、CRX−527はMyD88およびTRIF依存的経路の両方を介して情報伝達する。研究の初期の段階では、ヒトの細胞で認められマウスでは認められないのでCRX−547TRIFバイアスシグナル伝達は種依存的と思われた。この明かな相違を取り上げるために、ヒトおよびマウスのTLR4-、MD-2-、および CD14-形質移入HEK293細胞ならびにこれらの組み合せを用いて受容体/共受容体の必要性ならびにAGPシグナルについての受容体の種特異性を試験する。
【0078】
huTLR4、huMD-2、およびhuCD14で形質移入された、ならびにCRX−547で刺激されているHEK293細胞はCRX−527とLPSと比べてNFκBリポータ活性を少なく誘発する一方で、muTLR4-、muMD-2-、およびmuCD14-形質移入HEK293細胞におけるCRX−547により誘発される活性レベルはCRX−527およびLPSに類似してる(Error!Reference source not found.)。CRX−547によるシグナルの誘発について、この解析はマウスTLR4受容体複合体を好むことを示す。この種特異性の理由がTLR4自身なのか別の補助受容体成分なのかをはっきりするために、解析にはヒトおよびマウスTLR4受容体成分の組み合せを発現するHEK293細胞を含める。
【0079】
Error!Reference source not found.8に示すように、ヒトHEK293細胞がTLR4およびマウスMD−2の組み合せで形質移入された場合、CRX−527とCRX−547の間にプロモータ活性の誘導についての大きな相対差が残ることは、この相違がヒトTLR4でのCRX−527とCRX−547の相互作用における相違からくることを示唆する。HEK293細胞がマウスTLR4とヒトMD−2との組み合せで形質移入された場合、CRX−527とCRX−547が類似のレベルのプロモータ活性を誘発していることは、活性の差がAGP/TLR4接触面での相互作用の相違からきていることを示唆する。これらの結果は、アシル鎖の長さおよびMuroiらが認めた分子のMD−2との相互作用の差を発生させた組成物における修飾の影響とは異なる(Muroi, M and Tanamoto, K. (2006). J. Biol. Chem. 281. p5484-5491)。
【0080】
注目すべきは、活性のレベルは同系の受容体成分を有する複合体が存在する時(huTLR4/huMD2, muTLR4/muMD2)よりもキメラ複合体(huTLR4/muMD2, muTLR4/huTLR4)において全体的により低いということであり、これは、種間キメラがこの系では最適に機能していないことを示唆する。CRX−547の意図する種特異性に寄与する特定の残基を解明するにはさらなる生化学的解析が必要となる。
【0081】
実施例10
筋肉内投与によるリード候補AGPを使ったウサギ毒性試験
CRX−527、524、547および化合物1の毒性は、AGPのみを筋肉内投与したウサギで評価する。3匹のウサギの群に、0日目、7日目、14日目に1mLの希釈AGP,またはMPL対照をIMにてワクチン接種した。高用量(25 μg)と低用量(5 μg)の2つのAGPを評価した。体重、体温、臨床症状およびDraizeスコア について全ての動物をモニターする。これらの動物は最終投与後一週間で犠牲にする。血液学分析と臨床化学検査のため処理前、第2回接種後2日目、および犠牲にした時に血液を採取する。注射部位および主要臓器の病理組織検査を実施する。
【0082】
第2回目と第3回目のワクチン接種した間のMPL群を除いて、全ての動物は試験の期間を通して体重増加を示した(図19)。賦形剤対照群含めてワクチン摂取後の温度変化± 〜1°Cが見られる(図20)。ウサギの体温は正常な範囲にある。賦形剤対照群を含めたすべての群について Draize scoreで最小注射部位反応が見られ、ワクチン接種の回数が増えるに従い反応は減少した(図21)。CRX−524を除き、アジュバント高投与群のすべてで針痕に沿った筋肉が白色に変色した個所および注射部位にて病変が見られる。CRX−527および化合物1に病変が認められるが低用量のCRX−524または−547の治療群はこの限りでない。
【0083】
血液学分析では、低用量および高用量のCRX−527ならびに低用量のCRX−524と化合物1を投与したウサギで9日目 (2 days post-2°) に顆粒球増加症の傾向が認められ、これは21日目(7 days post-3°)までに消失する。AGPは好中球を引き寄せることが知られている。ワクチン接種後の臨床化学的値が注目される傾向は認めなかった。
【0084】
筋病変がみられない低用量のCRX−547を例外として、主に好塩基球およびマクロファージ筋炎を含む注射部位での炎症は、全ての処置群において唯一偶発所見でない(図2225)。高用量のCRX−527において筋炎が最も一貫して最大である。さらに、直近の2回の注射による注射部位と筋炎が一致しており、これは炎症反応の一過的な特性を示す(データは示さず)。
【0085】
CRX−547は高用量でのみ最小毒性であり、CRX−524、−527および化合物1は低パワー (n=3 ウサギ/群)で中程度の毒性であるような全体的な印象である。病理所見は一過性である。
【0086】
実施例11
CRX−527とCRX−547処理に反応するサイトカイン遺伝子発現
ヒト細胞におけるサイトカイン/ケモカイン分泌の誘発についてCRX−527とCRX−547を比べるために、そしてさらに観察された相違点の原因となるシグナル伝達機序を解明するために、CRX−527とCRX−547により誘発された遺伝子発現をマイクロアレイ技術を使い評価した。最初の実験は、qPCRを使ったMyD88およびTRIF依存的サイトカイン遺伝子誘発の時間経過解析を含む。この解析は、両方のアゴニストについてMyD88およびTRIF依存的サイトカイン/ケモカイン遺伝子の誘発は処理後1-2時間で検出可能となり、処理後3時間で確固としたレベルへ上昇し、処理後6時間でベースラインレベル近傍へ下降することを示している(データは示さず)。MyD88およびTRIF依存的サイトカイン/ケモカインの両方の誘発については処理後3時間で最高値となる傾向があり、MyD88およびTRIF依存的誘発の間の実質的な動態的差異は遺伝子発現のレベルでは動作しないことを示唆する。動態的パターンの1つの例外はIFNβ誘発であるが、これはCRX−547かCRX−527処理かのいずれかで1時間処理後すでに最高値を示す状態にあり、その後低下する。
【0087】
本解析においてCRX−547と比べてCRX−527はより大きなMyD88依存的サイトカイン/ケモカイン遺伝子発現を誘発するのみでなく、より大きなTRIF依存的サイトカイン/ケモカイン遺伝子発現を誘発する。この現象は、TRIF依存的サイトカイン/ケモカイン分泌での2つのアゴニストが類似しているサイトカイン/ケモカインタンパク質分泌について認められるパターンと相関しない。このデータは、他の因子がCRX−527およびCRX−547により誘発されてTRIF依存的サイトカイン/ケモカイン分泌のレベルに影響を与えていることを示唆する。1つの可能性として、CRX−527と比べてCRX−547処理が誘発するより大きなTRIF依存的遺伝子mRNA 安定性がある。この遺伝子のレベルは処理後6時間でほぼベースラインまで減少しているが(データは示さず)、3時間から6時間のmRNAのレベルはまだ試験が終了していない。
【0088】
in vitroマウス系
実施例12 in vitroサイトカイン誘発
上述のとおり、より少ないCRX−547によるTRIFバイアスが、マウスのPBMCを用いるサイトカイン誘発実験、マウスの細胞株(RAW264.7)およびHEK293形質移入試験(データは示さず)において示唆される。拡張した投与範囲を使い、エステル連結脂肪アシル鎖ではなくエーテルを用いる追加のLおよびD異性体対、化合物1aおよび1bを試験してRAW264.7細胞におけるCRX−547およびCRX−527によるサイトカインのさらなる比較を提供する(図1)。さらに、種特異性の現象に対するより大きな機序の理解を取得するために、キメラヒト/マウスTLR4受容体複合体で形質移入された細胞においてCRX−547により誘発されたシグナル伝達を比較した。さらに、そのような種―特異的TLR4アンタゴニスト/アゴニスト活性が、リピッドIVaである4つの一次アシル鎖のみの大腸菌からのリピッドA前駆体について報告されており(Muroi, Ohnishi, and Tanamoto 3546-50;Muroi and Tanamoto 5484-91)、この活性はマウスでのTLR4補助受容体MD-2の構造上の違いに起因した。
【0089】
マウス血液由来のPBMCがCRX−527またはCRX−547で処理した後にMyD88サイトカインの同様なプロファイルを有するかを調べるために、市販されているBALB/cマウスからの血液をCRX−527またはCRX−547を用いて試験をする(図24)。試験を行った2群間ではレベルは同様と思われる。
【0090】
マウス細胞においてLおよびD異性体間の効力の共通性をより比較し確認するために、RAW264.7(マクロファージ)細胞を、MyD88(TNFα) およびTRIF依存的(IP-10)産生のためにアッセイしたCRX−527,CRX−547、化合物1aおよび1bならびに上清を用いてより広い投与範囲で刺激した。この範囲ではCRX−547よりもCRX−527がTNFαおよびIP-10の産生を誘発する能力がより高い。このマウス細胞株については、TRIFおよびMyD88依存的サイトカインの両方に対するCRX−547の誘発はCRX−527に比べて能力が低い。このデータは、ヒト細胞株におけるMyD88依存的サイトカインの誘発についてCRX−527とCRX−547の活性の差異は一般的にマウス細胞株に比べてかなり大きいのであるが、CRX−547の種特異的活性は明確ではなく、このことは、CRX−547のマウスとヒトのTLR4/MD2受容体複合体との相互作用において主要な差異が存在することを示唆している。
【0091】
化合物1aおよび1bはマウスとヒトの細胞株において同じレベルのTRIFおよびMyD88依存的サイトカインを誘発するが、アグリコンセリル基のL異性体からD異性体までの変化と合わせたエステル連結脂肪酸鎖からエーテル連結脂肪酸鎖まで変化がヒト細胞中のD異性体の活性を救済するを示唆している。AGP上の荷電基の相対的位置をこれらの修飾の両方が変えるので、この差異は分子のTLR4/MD2受容体複合体との相互作用における差異と関連し得る。
【0092】
TLR4刺激の後のMyD88依存的シグナル伝達がTRIF依存的シグナルよりも先であり、かつ、MyD88とTRIFの両方がNFκB経路の活性化により下流TNFα産生を誘発し得るために、LおよびD異性体で刺激した後のサイトカイン産生について初期の時点を試験をする。刺激を4時間した後、CRX−527の方がRAW264.7細胞でのTNFαおよび IP-10産生を誘発する能力が僅かに高いように見える(図27と28)。
【0093】
実施例13 マウスRAW264.7細胞のウェスタンブロット解析
RAW264.7細胞でのTRIF対MyD88における主要なタンパク質シグナル伝達分子のリン酸化(活性化)状態を測るために、細胞は予備活性化(10 -7M PMAを用いて)し10ng/mlのAGPで刺激した。細胞分解溶解物は、0、15m、30m、45m、60m、120m、240mで調製した。MM6細胞の結果と同様に、CRX−547と比べてIκBα の分解がCRX−527での刺激の後は早く進んだ(Error!Reference source not found.17)。驚くべきことに、CRX−547の刺激はより高いIκBαリン酸化とIRF3リン酸化をもたらす。これらの細胞の増加した反応性は単球細胞の成熟状態を向上させると知られるPMAでの予備活性化によると思われ、CRX−547はリン酸―IκBαおよびリン酸―IRF3の発現を誘発する。IRF3はTRIF媒介性シグナル伝達を経て誘発される。また、総IRF3タンパク質の量はCRX−547で処理された細胞においてより高い。(注記:実験回数は一回であり、負荷コントロール(βactin)は不均一な負荷の可能性を示唆する。)
実施例14 RNA干渉解析
RNA干渉(RNAi)は、TLR2,TLR4およびMyD88のTLRシグナル伝達経路に含まれる特異的遺伝子の発現を破壊するのに利用される。RAW264.7 siRNA細胞株は市販されているプラスミド (Invivogen)を使って調製される。このプラスミドはZeocin選択マーカー、GFPをコードする配列およびノックダウン用のshRNAをコードする配列を含む。細胞が一度効率的に形質移入すると、安定した細胞株が抗生物質選択を経て生じる。培養物の精度は、培養系内のGFP+細胞で決定される。また、無関係なプラスミドも対照として安定的に細胞を形質移入するのに使われる。図30は、同系のsiRNAの安定的な形質移入体においてのMyD88とTRIFのノックダウンを示す。図30Aは、サイトカイン−再生実験の前にGFP陽性細胞のパーセンテージが3つのすべての細胞株において96%以上であることを示す。図30Bは、LPSでの刺激が無関係の対照と比べてタンパク質のレベルが低下しているのでMyD88とTRIFについて首尾よくノックダウンした証拠を示す。
【0094】
LおよびD異性体による刺激の後、TRIFまたはMyD88がサイトカイン応答に必要であるかを測定するために、安定的に形質移入した siRNA細胞株を20時間(MM6力価アッセイに類似するアッセイで)または4時間(MyD88誘発サイトカイン応答を捉えるため)刺激し、細胞の上清はTNFα (MyD88)およびIP-10 (TRIF)についてアッセイした。刺激後の20時間において、無関係な対照であるLUC細胞株は、wt RAW264.7細胞が以前に示したものと類似のIP−10誘発パターンを示す。TRIFノックダウン細胞において、IP−10レベルが無関係な対照で認められた応答と同じ用量応答にならないことは、TRIFはAGP刺激の後、効率的なIP−10応答を必要としていることを示唆する。TRIFが無傷の場合(MyD88ノックダウン細胞株において)、IP−10レベルは用量反応を示し、総ケモカインは無関係な対照(LUC)を超えて上昇する。他のアッセイ系(ヒトおよびマウス系を含む)は、LとD異性体の両方ともがTRIF媒介性サイトカインを誘発するに効率的であるという仮説を支持する。
MyD88(TNFαの初期放出)およびTRIF(NFκBの遅延活性化によるTNFαの遅延放出)の両方でコントロールされるTNFαにおいて、CRX−527はCRX−547と比べて、無関係な対照においてより能力がある(図31)。MyD88またはTRIFのいずれかがノックダウンしている場合、CRX−547を超えるCRX−527の効力の増加が認められる。TNFαがMyD88とTRIFの両方で誘発するので、20時間の時点ではCRX−527またはCRX−547の刺激の後のシグナル経路間を十分に区別できない。総合すると、このデータは試験された時間枠内でTNFαはMyD88を必要としないか、または、MyD88のsiRNAのノックダウンがTNFαを抑制するのに十分でないという2つの可能性を示唆する。TRIFシグナル単独がTNFαを誘発できるとう仮説はある程度裏付けられ、つまり、この誘発はTRIF媒介性シグナル伝達によるものである得る。従って、TNFα誘発はMyD88とTRIF媒介性シグナル伝達の両方によるものである得る。化合物1aおよびCRX−679は両方のアッセイ系において20時間で同等の反応性を持つ。
【0095】
MyD88のTNFα産生の要件をより良く区別するために、siRNAノックダウン細胞株をAGP刺激を4時間した後、TNFαの産生に関して試験した(図35)。刺激後の4時間でCRX−527およびCRX−547は無関係な対照細胞株(LUC)においてTNFαを同様に誘発することを示した。力価の差異およびTNFα産生のピークは、TNFα産生がMyD88の誘発に限定されるTRIFのノックダウン細胞において増強された。MyD88のノックダウンは2つのAGP間の同様なレベルのTNFα産生を生じる。総合すると、このデータはAGPによる刺激の後のTNFα産生の誘発を早期に行うMyD88の要件を示している。さらに、CRX−527は同一投与量のCRX−547よりもTNFαを誘発する能力が強い。化合物1aおよび1bは同様なサイトカインのパターンを生じる。RAW264.7細胞を用いて刺激した4時間後のIP−10レベルは非常に低いので siRNA 細部株はIP−10レベルについてアッセイしなかった。
【0096】
参考文献
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CRX547を含むリピッドA模倣物組成物をヒトに投与することを含む、CRX547含まないリピッドA模倣物組成物をヒトに投与した場合に誘発されるMyD88依存的サイトカインのレベルを減少させる方法。
【請求項2】
CRX547をリピッドAアジュバント組成物へ組み込むことを含む、より低いレベルのIL-12p70およびIL-23の誘発が可能なヒトリピッドA模倣物アジュバント組成物を製造する方法。
【請求項3】
CRX527により誘発されるNF-κB活性のレベルおよびIRF−3レベルと比較した場合に、有意に低いレベルのNF-κB活性、および同等か、またはより高いレベルのIRF3をヒト系において誘発する方法であって、該方法がCRX547を投与することを含む、上記方法。
【請求項4】
第二合成リピッドA模倣物を第一のリピッドA模倣物と共に投与することを含む、該第一のリピッドA模倣物によるMyD88依存的サイトカイン誘発を抑制する方法であって、該第二リピッドA模倣物がCRX547である、上記方法。
【請求項5】
合成リピッドA模倣物を投与することを含む、TRIF依存的シグナル伝達を選択的に誘発する方法。
【請求項6】
TLR4受容体複合体を介する有意なTRIF依存的シグナル伝達を誘発する一方で、AGP CRX527を含む組成物により誘発されるMyD88依存的シグナル伝達のポテンシャルを有意に低減する方法であって、該方法が該組成物内のCRX547をCRX527に置換することを含む、上記方法。
【請求項7】
ヒト細胞にCRX547に投与することを含む、CRX527により誘発されるレベルと比較してより低いレベルのIL-12p70およびIL-23をヒト細胞に誘発する方法。
【請求項8】
CRX547を投与することを含む、ヒト細胞においてCRX527により誘発した同等か、またはより高いレベルのIRF3ではあるが、より低いレベルのNF-κB活性を有意に活性する方法。
【請求項9】
アジュバント組成物にCRX547を組み入れるステップを含む、リピッドA模倣物アジュバント組成物の治療係数を向上させる方法。
【請求項10】
アジュバント組成物がCRX547ではない少なくとも1つのAGPを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項11】
ヒトにおけるリピッドA模倣物に対するTRIFバイアス応答を誘発するためのCRX547の使用。
【請求項12】
ヒトにおけるリピッドA模倣物に対するTRIFバイアス応答の誘発において使用するためのCRX547。
【請求項13】
ヒトにおけるTRIFバイアス応答の誘発において使用するためのCRX547。
【請求項14】
ヒトにおける免疫反応を向上させるのに使用するためのCRX547を含むリピッドA模倣物組成物であって、CRX547を含まないリピッドA模倣物組成物と比較して、TRIF依存的サイトカインが増加し、MyD88依存的サイトカインは減少する、上記組成物。
【請求項15】
ヒトにおいて免疫反応を向上させるのに使用するためのCRX547を含むリピッドA模倣物組成物であって、CRX547を含まないリピッドA模倣物組成物と比較して、NF-κB活性は減少するが、同等またはより高いレベルのIRF3が認められる、上記組成物。
【請求項16】
ヒトにおいて免疫反応を向上させるのに使用するためのCRX547を含むリピッドA模倣物組成物であって、CRX547を含まないリピッドA模倣物組成物と比べて、IL-12p70およびIL-23のレベルは低下する、上記組成物。
【請求項17】
ヒトにおいて免疫反応を向上させるのに使用するための、CRX547であって、該免疫反応においてCRX547を含まないリピッドA模倣物組成物と比べてIL-12p70およびIL-23レベルは低下する、上記CRX547。
【請求項18】
CRX547を含まないリピッドA模倣物組成物がCRX527を含む、請求項17に記載のCRX547。
【請求項19】
抗原をさらに含むCRX547を含む、請求項18に記載のリピッドA模倣物組成物。
【請求項1】
CRX547を含むリピッドA模倣物組成物をヒトに投与することを含む、CRX547含まないリピッドA模倣物組成物をヒトに投与した場合に誘発されるMyD88依存的サイトカインのレベルを減少させる方法。
【請求項2】
CRX547をリピッドAアジュバント組成物へ組み込むことを含む、より低いレベルのIL-12p70およびIL-23の誘発が可能なヒトリピッドA模倣物アジュバント組成物を製造する方法。
【請求項3】
CRX527により誘発されるNF-κB活性のレベルおよびIRF−3レベルと比較した場合に、有意に低いレベルのNF-κB活性、および同等か、またはより高いレベルのIRF3をヒト系において誘発する方法であって、該方法がCRX547を投与することを含む、上記方法。
【請求項4】
第二合成リピッドA模倣物を第一のリピッドA模倣物と共に投与することを含む、該第一のリピッドA模倣物によるMyD88依存的サイトカイン誘発を抑制する方法であって、該第二リピッドA模倣物がCRX547である、上記方法。
【請求項5】
合成リピッドA模倣物を投与することを含む、TRIF依存的シグナル伝達を選択的に誘発する方法。
【請求項6】
TLR4受容体複合体を介する有意なTRIF依存的シグナル伝達を誘発する一方で、AGP CRX527を含む組成物により誘発されるMyD88依存的シグナル伝達のポテンシャルを有意に低減する方法であって、該方法が該組成物内のCRX547をCRX527に置換することを含む、上記方法。
【請求項7】
ヒト細胞にCRX547に投与することを含む、CRX527により誘発されるレベルと比較してより低いレベルのIL-12p70およびIL-23をヒト細胞に誘発する方法。
【請求項8】
CRX547を投与することを含む、ヒト細胞においてCRX527により誘発した同等か、またはより高いレベルのIRF3ではあるが、より低いレベルのNF-κB活性を有意に活性する方法。
【請求項9】
アジュバント組成物にCRX547を組み入れるステップを含む、リピッドA模倣物アジュバント組成物の治療係数を向上させる方法。
【請求項10】
アジュバント組成物がCRX547ではない少なくとも1つのAGPを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項11】
ヒトにおけるリピッドA模倣物に対するTRIFバイアス応答を誘発するためのCRX547の使用。
【請求項12】
ヒトにおけるリピッドA模倣物に対するTRIFバイアス応答の誘発において使用するためのCRX547。
【請求項13】
ヒトにおけるTRIFバイアス応答の誘発において使用するためのCRX547。
【請求項14】
ヒトにおける免疫反応を向上させるのに使用するためのCRX547を含むリピッドA模倣物組成物であって、CRX547を含まないリピッドA模倣物組成物と比較して、TRIF依存的サイトカインが増加し、MyD88依存的サイトカインは減少する、上記組成物。
【請求項15】
ヒトにおいて免疫反応を向上させるのに使用するためのCRX547を含むリピッドA模倣物組成物であって、CRX547を含まないリピッドA模倣物組成物と比較して、NF-κB活性は減少するが、同等またはより高いレベルのIRF3が認められる、上記組成物。
【請求項16】
ヒトにおいて免疫反応を向上させるのに使用するためのCRX547を含むリピッドA模倣物組成物であって、CRX547を含まないリピッドA模倣物組成物と比べて、IL-12p70およびIL-23のレベルは低下する、上記組成物。
【請求項17】
ヒトにおいて免疫反応を向上させるのに使用するための、CRX547であって、該免疫反応においてCRX547を含まないリピッドA模倣物組成物と比べてIL-12p70およびIL-23レベルは低下する、上記CRX547。
【請求項18】
CRX547を含まないリピッドA模倣物組成物がCRX527を含む、請求項17に記載のCRX547。
【請求項19】
抗原をさらに含むCRX547を含む、請求項18に記載のリピッドA模倣物組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
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【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【公表番号】特表2012−513478(P2012−513478A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−543683(P2011−543683)
【出願日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【国際出願番号】PCT/US2009/069465
【国際公開番号】WO2010/075545
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(305060279)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (169)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【国際出願番号】PCT/US2009/069465
【国際公開番号】WO2010/075545
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(305060279)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (169)
【Fターム(参考)】
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