説明

ToTV抵抗性植物

本発明は、トマトトラドウィルス(ToTV)に対する抵抗性を与える遺伝子の少なくとも1の対立遺伝子をゲノム内に有するトマト植物であって、該ウィルスが、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbHに、2004年11月24日に、寄託者参照番号ToTV−E01(DSM 16999)下で寄託された上記トマト植物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ウィルス抵抗性植物及びそのような植物を生産する方法に関する。特に、該方法は、トマトトラドウィルス(Tomato torrado virus)(ToTV)に抵抗性である植物、そのような植物を生産する方法、並びに、このようにして得られた植物及び植物部分に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
トマト ソラヌム リコペルシクム(Solanum lycopersicum)(以前はリコペルシコン エスクレントゥム(Lycopersicon esculentum))は、多くのウィルス種に対して感受性である。最も有名なトマトウィルスのいくつかは、トマト黄化えそウィルス(TSWV;トスポウィルス属);ペピーノモザイクウィルス(PepMV;ポテクスウィルス属)、及びトマト黄化葉巻ウィルス(TYLCV;ベゴモウィルス属)を包含する。これらの病気が植物に対して与える被害は、葉の変色及び壊死病斑から、ひどい作物損失及び植物の死に及ぶ。
【0003】
抵抗性植物を提供する能力は、商業上の育種者にとって最も重要であり、及び、経済的に最も被害を与えるウィルスのいくつかについては、抵抗性植物品種が作られている。しかしながら、時々、作物にかなりの被害を与えうる新たなウィルスが出現する。
【0004】
1996年に、1993年以来米国及びイタリアにおいてトマト植物へ感染してきて新しいトマトウィルスが報告され、そして、トマト感染性クロロシスウィルス(Tomato infectious chlorosis virus)(TICV;クリニウィルス属;Duffusら、1996)と命名された。同じ属の他の新しいトマトウィルスが1998年に報告された。このウィルスは、1989年以来、米国においてトマト植物に感染してきたことが示され、及び、トマトクロロシスウィルス(Tomato chlorisis virus)(ToCV;Wislerら、1998)と命名された。これらの新しいウィルスの両方ともが、非常に効果的な病気伝染媒介動物である昆虫、コナジラミにより蔓延されると分かった。
【0005】
一般に、部分的には、新しい株又は新しいウィルスを作る為の、種々のウィルスの組み換えの結果として、既知のウィルスの地理的分布は増すであろうこと及び新しいウィルスが現れ続けるであろうことが考えられている。抵抗性栽培品種の開発は、これらの病気の成功裏の管理において重要な役割を果たすことができる。
【0006】
最近、いずれかの既知のウィルスに帰することができない症状(地域的には病気「トラド(torrado)」として知られる)を引き起こす新しいウィルスが、スペインからのトマト植物について発見された。該植物は、葉に壊死病斑を及び果実に褐色環(brown ring)を示し、及び減じられた成長を示した。血清学的試験(ELISA)は、ペピーノモザイクウィルス(PepMV)の存在を示唆した。実際に、電子顕微鏡調査は、ポテクスウィルスに典型的な桿状粒子を明らかにした。しかしながら、球状の形をしたウィルス粒子も、感染した葉組織において発見された。本発明者らは、PepMVとの複合体から新しいウィルスを分離することができた。該新しいウィルスは、暫定的にトマトトラドウィルス(ToTV)と命名され、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbHに、2004年11月24日に、寄託者参照番号ToTV−E01(DSM 16999)で寄託され、及び、「トラド」(スペイン)、「marchitez」又は「チョコレート」(メキシコ及びガテマラ)として知られる、トマトに感染する病気の原因因子である。該ウィルスは、ソラヌム属の他の属におけるトマト、特にはトウガラシ種(ペッパー)及び白ナス(Solanum melongena)(ナスビ)において引き起こされる病徴(disease symptom)と同様の病徴を引き起こすこともできると考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在は、この新しいウィルスに対する特定の抵抗性を宿すと知られる植物はなく、一方でそのような抵抗性植物を開発するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは今、ToTVに対して抵抗性であるトマト植物を発見した。彼らは、該植物の該ウィルスへの曝露に際して病徴が不在のままであったこと及び、ウィルス粒子又はウィルスRNAがこれらの植物において検出されることができなかったことを発見した。以下に示されるとおり、この応答は、抵抗性として定義される。そのような植物は、該新しいウィルスに対して抵抗性である栽培されたトマトの商業上有益な品種の開発において、特には抵抗性形質の原因であり又は抵抗性形質に関連し及び交配の間に植物の間で交換される遺伝因子が育種プロセスの間に追跡され及びモニターされうるときに、中枢の重要性を有する。そのようなモニタリングは、育種の効率を改善するのに役立ち、及び、新たに開発された抵抗性品種についての製品化までの時間を非常に改善することができる。交配実験を通じて、ToTVに対する抵抗性の原因である遺伝子がホモ接合的に抵抗性植物に存在する一方で、ヘテロ接合的な植物はToTV感染に対して感受性であることが発見された。すなわち、ToTV抵抗性は、劣性遺伝子により与えられることが発見された。さらに、その対立遺伝子の両方の型を含む植物、すなわちヘテロ接合性植物は等しく植物育種者に有用であり、なぜならそれらは、ホモ接合性の子孫植物を生産する為の交配及び自殖において親として用いられうるからである。
【0009】
それ故に、第1の局面において、本発明は、トマトトラドウィルス(ToTV)に対する抵抗性を与える遺伝子の少なくとも1の対立遺伝子をゲノム内に有するトマト植物に関係し、該ウィルスは、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbHに、2004年11月24日に寄託参照番号ToTV−E01(DSM 16999)で寄託された。ToTV抵抗性トマト植物は、これまで知られていなかった。
【0010】
続く実験に際して、本発明者らは、これらのToTV抵抗性トマト植物における抵抗性が、多くのAFLPマーカーに密接に連鎖することを発見した。何らの理論にとらわれることを望まないで、及びゲノム上のこれらのマーカーのほとんどの位置がまだ決定されていないという事実にもかかわらず、該形質の原因である該遺伝子は、4番染色体上に位置すると考えられる。それ故に、該第1の局面の好ましい実施態様において、トマトトラドウィルス(ToTV)に抵抗性を与える遺伝子を含む該対立遺伝子は、AFLPマーカーP14/M49−F−282、P11/M35−F−216、P21/M61−F−583、P25/M51−F−131、P15/M49−F−330、及び/又はP13/M38−F−311/313、好ましくはAFLPマーカーP14/M49−F−282、P11/M35−F−216及び/又はP13/M38−F−311/313、最も好ましくはAFLPマーカーP11/M35−F−216及び/又はP13/M38−F−311/313に連鎖するゲノム領域に位置する。
【0011】
該第1の局面の好ましい実施態様において、該対立遺伝子は、4番染色体上に位置し、好ましくはAFLPマーカーP14/M49−F−282及びP11/M35−F216の間に置かれるゲノム領域内に置かれる。
【0012】
該第1の局面の他の好ましい実施態様において、該対立遺伝子は、ホモ接合型で存在し、これは該抵抗性の表現型を発現する植物を結果する。
【0013】
該第1の局面のさらに他の好ましい実施態様において、該トマト植物は、ソラヌム リコペルシクム(Solanum lycopersicum)種の植物であり、好ましくは栽培トマト植物である。
【0014】
該第1の局面のさらに他の好ましい実施態様において、該抵抗性は、該ウィルスの少なくとも最小感染性用量への該植物の曝露に際して、ToTVによる感染の確立に対する抵抗性として表現される。当業者は、感受性植物に対する通例の実験により、該最小有効用量が決定されうることを理解するであろう。
【0015】
該第1の局面のさらに他の好ましい実施態様において、該植物は、ToTVによる感染を含む抵抗性バイオアッセイにおいて同定され、又はここで該植物は、該ToTV抵抗性遺伝子の該対立遺伝子に連鎖する少なくとも1の分子マーカーの存在についてのスクリーニングにより同定される。
【0016】
該第1の局面のさらに他の好ましい実施態様において、該植物は、該ToTV抵抗性遺伝子の該対立遺伝子に連鎖する少なくとも1の分子マーカーの存在についてのスクリーニングを含む方法により作られる。
【0017】
さらなる局面において、本発明は、本発明の植物に由来する植物部分に関する。植物部分の例は、花粉、胚珠、葉、胚、根、根端、葯、花、果実、茎、芽及び種子からの単独の細胞及び組織、並びに、花粉、胚珠、葉、胚、根、根端、葯、花、果実、茎、芽、接ぎ穂、根茎、種子、プロトプラスト、カルス及び同様物を包含するがこれらに限定されない。好ましくは、該部分は、果実又は種子である。植物部分の他の好ましい実施態様は、小胞子、花粉、胚珠、葉、胚、根、根端、葯、花、果実、茎芽、茎、芽、接ぎ穂、根茎、プロトプラスト、カルス及び成長点組織及び同様物のような好ましい部分を含む栄養繁殖の為の部分を含む。
【0018】
さらなる局面において、本発明は、本明細書において定義されるとおりのトマトトラドウィルス(ToTV)に対して抵抗性であるトマト植物を選抜する方法に関係し、該方法は、
a)該ウィルスの接種原を用意すること、
b)該接種原へとトマト植物を曝露すること、
c)十分なインキュベーション時間を許すこと、そして、
d)該インキュベーション時間の経過後に該トマト植物において感染が確立しないときに、該植物を選抜すること、
の段階を含む。
【0019】
さらなる局面において、本発明は、本明細書において定義されるとおりのトマトトラドウィルス(ToTV)に対する抵抗性を与える遺伝子の少なくとも1の対立遺伝子をゲノム内に有するトマト植物を選抜する方法に関係し、該方法は、AFLPマーカーP14/M49−F−282、P11/M35−F−216、P21/M61−F−583、P25/M51−F−131、P15/M49−F−330、及び/又はP13/M38−F−311/313、好ましくはAFLPマーカーP14/M49−F−282、P11/M35−F−216及び/又はP13/M38−F−311/313、最も好ましくはAFLPマーカーP11/M35−F−216及び/又はP13/M38−F−311/313に連鎖するゲノム領域の存在について、トマト植物のゲノムDNAをスクリーニングする段階を含む。
【0020】
さらなる局面において、本発明は、トマト植物の生産のための方法であって、本発明に従うトマト植物を選抜する方法を実施することにより、本明細書において定義されるとおりのトマトトラドウィルス(ToTV)に対する抵抗性を与える(遺伝子の)少なくとも1の対立遺伝子をゲノム内に有する植物を選抜すること及び該選抜された植物とそれ自身又は他のトマト植物とを交配して種子を生産すること、そして該種子をトマト植物に育成することを含む上記方法に関係する。
【0021】
さらなる局面において、本発明は、本明細書において定義されるとおりのトマトトラドウィルス(ToTV)に対して抵抗性であるトマト植物の生産のための方法であって、
a)該トマトトラドウィルス(ToTV)に対する抵抗性を与える遺伝子の少なくとも1の対立遺伝子をゲノム内に有する植物を、本発明に従うトマト植物を選抜する方法を実施することにより選抜すること、
b)該選抜された植物と他のトマト植物と又はそれ自身とを交配して種子を生産すること、
c)該種子をトマト植物に育成して子孫植物を生産すること、
d)任意的に、段階b)及びc)の交配段階及び育成段階を繰り返すこと、そして、
e)該対立遺伝子がホモ接合型で存在する植物を、該子孫植物のうちから選抜すること、
の段階を含む上記方法に関係する。
【0022】
該方法の好ましい実施態様において、段階e)における選抜は、AFLPマーカーP14/M49−F−282、P11/M35−F−216、P21/M61−F−583、P25/M51−F−131、P15/M49−F−330、及び/又はP13/M38−F−311/313、好ましくはAFLPマーカーP14/M49−F−282、P11/M35−F−216及び/又はP13/M38−F−311/313、最も好ましくはAFLPマーカーP11/M35−F−216及び/又はP13/M38−F−311/313に連鎖する該ゲノム領域のホモ接合的存在について該子孫植物のDNAをスクリーニングすることにより実施される。代わりに、段階e)における選抜は、該ToTVウィルスを用いる抵抗性バイオアッセイ又は本明細書において記載されるような任意の他の適当な方法により実施される。
【0023】
該方法の他の好ましい実施態様において、該トマト植物は、ソラヌム リコペルシクム(Solanum lycoperisicum)種の植物であり、より好ましくは栽培トマト植物である。
【0024】
さらに他の局面において、本発明は、本発明に従う方法により得られるトマト植物、及び、該新しく且つ独創的なトマト植物に由来する植物部分、好ましくは果実又は種子に関する。該植物部分は、代替的な好ましい実施態様において、栄養繁殖(vegetative propagation)に適当な植物部分を含む。
【0025】
さらに他の局面において、本発明は、
−ToTV抵抗性トマト植物を選抜する為に、又は、
−ToTV感受性トマト品種に、ToTVに対する抵抗性を、該品種における該抵抗性対立遺伝子の存在の頻度を増加することにより与える為に、
ToTVに対する抵抗性を与える対立遺伝子を使用する方法に関係し、該対立遺伝子は、トマトの4番染色体上のAFLPマーカーP14/M49−F−282、P11/M35−F−216、P21/M61−F−583、P25/M51−F−131、P15/M49−F−330、P13/M38−F−311/313及び/又はCOSII/CAPSマーカーC2_At5g25900、好ましくはAFLPマーカーP14/M49−F−282、P11/M35−F−216及び/又はP13/M38−F−311/313、最も好ましくはAFLPマーカーP11/M35−F−216及び/又はP13/M38−F−311/313及び/又はCOSII/CAPSマーカーC2_At5g25900に連鎖するゲノム領域内に位置する。
【0026】
さらに他の局面において、本発明は、該植物の収量の増大の為に及び/又は、ToTV感染から結果する該植物における収量損失を防ぐ為に、ToTV抵抗性植物を使用する方法に関係し、ここで該ToTV抵抗性植物は、トマトの4番染色体上のAFLPマーカーP14/M49−F−282、P11/M35−F−216、P21/M61−F−583、P25/M51−F−131、P15/M49−F−330、P13/M38−F−311/313及び/又はCOSII/CAPSマーカーC2_At5g25900、好ましくはAFLPマーカーP14/M49−F−282、P11/M35−F−216及び/又はP13/M38−F−311/313、最も好ましくはAFLPマーカーP11/M35−F−216及び/又はP13/M38−F−311/313及び/又はCOSII/CAPSマーカーC2_At5g25900に連鎖するゲノム領域内に置かれる対立遺伝子のホモ接合的存在により特徴付けられる。
【0027】
さらに他の局面において、本発明は、ToTV抵抗性植物を生産する為に、又は、植物又は植物の集団において、トラド病(torrado disease)(又はmarchitez又はチョコレート斑点病などの関連する病気)の発生を防ぐ為に、本発明のToTV抵抗性植物の種子を使用する方法に関係する。
【0028】
さらに他の局面において、本発明は、ToTVに対する抵抗性を与える又はToTVに対する抵抗性を与える対立遺伝子についてホモ接合性である少なくとも1の対立遺伝子を含む植物を、ToTV抵抗性トマト植物として又は該対立遺伝子のホモ接合的存在から生じるToTV抵抗性表現型を他の植物に備えることを目的とした育種プログラムにおいて親の植物として使用する方法に関係し、ここで該対立遺伝子は、トマトの4番染色体上のAFLPマーカーP14/M49−F−282、P11/M35−F−216、P21/M61−F−583、P25/M51−F−131、P15/M49−F−330、P13/M38−F−311/313及び/又はCOSII/CAPSマーカーC2_At5g25900、好ましくはAFLPマーカーP14/M49−F−282、P11/M35−F−216及び/又はP13/M38−F−311/313、最も好ましくはAFLPマーカーP11/M35−F−216及び/又はP13/M38−F−311/313及び/又はCOSII/CAPSマーカーC2_At5g25900に連鎖するゲノム領域内に位置する。
【0029】
さらに他の局面において、本発明は、植物においてToTVに対する抵抗性を与える対立遺伝子の存在を検出する為に、マーカーP11/M35−F−216、P13/M38−F−311/313及び/又はC2_At5g25900を使用する方法に関係する。そのような使用方法は一般に、抵抗性対立遺伝子に関係するヌクレオチド多型の存在を明らかにするために、DNAを単離すること、該単離されたDNAをマーカー特異的プライマーにより増幅すること、及び、任意的に該増幅されたDNA断片を消化することの後に、塩基対における予測された長さについて該増幅されたDNA断片をチェックすることのような段階を含む核酸検出方法を含むだろう。
【0030】
本発明の上記使用の局面の好ましい実施態様において、該植物は好ましくはトマト植物であり、最も好ましくは商業上有用なトマト植物、例えば本明細書においてとりわけ記載されるような商業上望ましい特性を含むトマト植物など、の植物である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、4番染色体を表し、且つ、多くのよく知られたマーカーの最も新しい位置を示す、トマトゲノムの模式的な地図を示す。
【図2】図2は、実施例2において記載されるとおりの、ToTV抵抗性のための抵抗性対立遺伝子の存在又は不在を示すための、特定の制限酵素により消化されたPCR断片を有するアガロースゲルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
好ましい実施態様の説明
本明細書において用いられるときに、語「対立遺伝子」は、1つの遺伝子の1以上の選択的な型のいずれかを意味し、該対立遺伝子の全てが、少なくとも1の形質又は特徴に関係する。二倍体細胞又は生物において、或る遺伝子の2の対立遺伝子が、1対の相同染色体上の対応する座位を占める。本発明は、1以上の遺伝子を(調節配列をも)含みうるゲノム領域を同定する為の段階を含む方法に関係するので、「対立遺伝子」の代わりに「ハプロタイプ」(すなわち染色体セグメントの対立遺伝子)ということが、いくつかの例ではより正確であり、しかしながら、それらの例において、語「対立遺伝子」は、語「ハプロタイプ」を含むと理解されるべきである。
【0033】
「遺伝子」は、本明細書において、染色体上の特定の位置を占め且つ生物における特定の特徴又は形質についての遺伝子の指令を含むDNAの配列から成る遺伝性単位として定義される。
【0034】
「座位」は、本明細書において、或る遺伝子が或る種の染色体上で占める位置として定義される。
【0035】
本明細書において用いられるときに、語「ヘテロ接合性」は、相同染色体上の対応する座位で、異なる対立遺伝子が存在するときに、存在する遺伝子の状態をいう。
【0036】
本明細書において用いられるときに、語「ホモ接合性」は、相同染色体上の対応する座位で、同一の対立遺伝子が存在するときに、存在する遺伝子の状態をいう。
【0037】
本明細書において用いられるときに、語「分子マーカー」は、核酸配列の特徴における差異を視覚化する為の方法において用いられる指標をいう。そのような指標の例は、制限断片長多型(RFLP)マーカー、増幅断片長多型(AFLP)マーカー、1塩基多型(SNP)、マイクロサテライトマーカー(例えばSSR)、配列により特徴付けられた増幅された領域(SCAR)マーカー、開裂された増幅された多型配列(CAPS)マーカー又はアイソザイムマーカー又は、特定の遺伝子の位置及び染色体の位置を定義する、本明細書において記載されるマーカーの組合せである。
【0038】
本明細書において用いられるときに、語「トマト」は、Lycopersicon cerasiforme、Lycopersicon cheesmanii、 Lycopersicon chilense、Lycopersicon chmielewskii、Lycopersicon esculentum(又は Solanum lycopersicum)、Lycopersicon hirsutum、Lycopersicon parviflorum、Lycopersicon pennellii, Lycopersicon peruvianum, Lycopersicon pimpinellifolium、又はSolanum lycopersicoidesを含むがこれらに限定されないトマト属(Lycopersicon)のいずれかの植物、系統又は集団を意味する。現代のトマトの野生近縁種は、L. pennellii、 L. hirsutum、 L. peruvianum、 L. chilense、 L. parviflorum、L. chmielewskii、L. cheesmanii、L. cerasiforme及びL. pimpinellifoliumのようにトマト属(Lycopersicon)に分類されていた。過去数年にわたり、トマト研究者及び植物学者の間で、これらの種の名称を再分類するかどうかが議論されてきた。現代のトマトについての新たに提案された学名は、ソラヌム リコペルシコン(Solanum lycopersicon)である。同様に、野生種の名前が変更されうる。L. pennelliiはSolanum pennelliiになりうるし、L. hirsutumはS.habrochaitesになりうるし、L.peruvianumはS.'N peruvianum'及びS.'Callejon de Huayles'、S.peruvianum、並びにS.corneliomuelleriに分けられうるし、L.parviflorumはS.neorickiiになりうるし、L. chmielewskiiはS.chmielewskiiになりうるし、L. chilenseはS. chilenseになりうるし、L. cheesmaniaeはS.cheesmaniae又はS.galapagenseになりうるし、及び、L. pimpinellifoliumはS. pimpinellifoliumになりうる(Solanacea Genome Network (2005) Spooner and Knapp; http://www.sgn.cornell.edu/help/about/solanum_nomenclature.html)。
【0039】
本発明に従う植物は自然に存在する。しかしながら、それが技術的な過程の結果として同定されてた。本発明は、そのような植物を同定することの2つの原理方法を開示する。第1の方法において、該植物は、(当技術分野における機械的な接種又は曝露による)本明細書に定義されるとおりのトマトトラドウィルス(ToTV)の有効用量への候補植物の曝露を含む抵抗性バイオアッセイを用いることにより同定される。該候補植物が病気(その症状は、植物材料の特には葉の火傷状の完全な壊死及び植物の死に終わる壊死病斑及び/又は果実上の壊死斑点の同心円状の環を含む)にならないままであるときに、該植物は抵抗性であるといわれる。この方法を用いることにより同定される植物は、トマトトラドウィルス(ToTV)に対する抵抗性を与える遺伝子を含む2つの対立遺伝子を含み、そして、結果として該形質についてホモ接合性である。
【0040】
語「ToTVに対する抵抗性」は、寄託された株ToTV−E01(DSM16999)を含むToTV、並びに近縁のウィルスに対する抵抗性を含むことが意図される。本発明の文脈における近縁のウィルスは、ToTVと同じ分類学的な属に属するウィルスだけでなく、本明細書に記載される抵抗性対立遺伝子により与えられる抵抗性が対するところのウィルスとして定義されうる。
【0041】
本発明の植物は、ToTVに対する抵抗性を与える少なくとも1の遺伝子を含む。該遺伝子の座位は、本明細書において同定されるとおりの多くのAFLPマーカーに連鎖する。しかしながら、トマトのゲノム地図上のこれらAFLPマーカーの多くの位置はいまだ知られていない。それ故に、ゲノムにおける該遺伝子の位置は、完全に確実というわけではない。マーカーP14/M49−F−282は推定上、4番染色体上に位置するので、該座位が4番染色体上に位置することが強力に示唆される。公に知られているマーカーの位置とP14/M49−F−282の位置とを比較するときに、該遺伝子が、CT264(Tomato EXPEN 2000 位置86cM)及びマーカーTG163(Tomato EXPEN 2000 135cM)の近くに境界が位置する領域内に置かれることが分かる。本発明の植物は、すなわち、4番染色体上に、マーカーCT264とTG163との間の位置に位置するToTV抵抗性遺伝子を有することにおいて特徴付けられうる。
【0042】
抵抗性の植物と感受性の植物とを含む実験上のトマト集団において存在するマーカーのより詳細な分析において、2つのマーカー(COSII/CAPSマーカー C2_At5g25900(実施例を参照されたい)及び、P13/M38−F−311/313といわれる2対立遺伝子のマーカー)が、該集団のうちで多型性であり、且つ、抵抗性対立遺伝子の存在又は不在に非常に相関することが発見された。これらのマーカーは、トマトの4番染色体上に置かれ、及び、これらのマーカーが約3cMの距離で隔てられていることが、組み換え頻度から計算されることができた。C2_At5g2590の位置は、図1において提供される。C2_At5g25900に対するP13/M38−F−311/313の位置は、既知の地図上の位置を有する他の多型性マーカーの、試験された集団内における不在の故に、確立されることができなかった。それ故に、今までのところは、トマトにおいてToTVに対する抵抗性を与える遺伝子は、多型性マーカーC2_At5g25900(特には、MseIにより消化されたときに、420bp及び260bpの断片を生成するマーカー、このマーカーは抵抗性対立遺伝子と連鎖する)及びP13/M38−F−311/313(特には、P13/M38−F−313、これは抵抗性対立遺伝子と連鎖する)により特徴付けられる領域と関連することが結論付けられ、該領域は約3cM、より好ましくは0〜10cM、さらにより好ましくは0〜3.6cM、最も好ましくは3cM未満の遺伝的距離を表す、4番染色体上のDNAの長さを覆う。
【0043】
当業者は、トマトの遺伝子地図上の、2のマーカーの互いに対する方向性を認識することができるであろう(例えば、図2におけるときと同様に、第3のマーカーへの夫々の距離が決定されうるとき)。そのような実験は、当業者がよく理解できる。
【0044】
本発明の植物は、「marchitez」の名称によりメキシコにおいて知られるトマト病を引き起こすウィルス因子に対して抵抗性であることが分かる。このウィルス因子は、アクセス番号DSM 16999下で寄託され且つ名称トマトトラドウィルス(ToTV)を与えられたものと同じであると考えられる。アクセス番号DSM 16999で寄託されたToTVウィルスに対する抵抗性と連鎖する、本明細書において記載されたとおりのマーカーもまた、「marchitez」に対する抵抗性と連鎖することが分かった。それ故に、本明細書において定義されるとおりの該植物は、「トラド」に対して並びに「marchitez」に対して抵抗性である。すなわち、本明細書において記載されるときの該植物は、
−寄託されたウィルスToTV DSM 1699により引き起こされる症状と同じ又は同様の症状を有する、トマト植物における病気を結果する、病気の原因因子である全てのウィルスに対する抵抗性を与え、
−ToTV(その分類学上の順位付けは、なお決定される必要がある)の分類群と同じ分類群に属する全ての植物ウィルス、好ましくは同じ科の、より好ましくは同じ属の、さらにより好ましくは同じ種の植物ウィルスに対する抵抗性を与え、
−ToTV DSM 16999に対する抵抗性を与える。
【0045】
自然において本発明の植物を同定する代替的な方法において、該植物は、該ToTV抵抗性遺伝子の該少なくとも1の対立遺伝子に連鎖する少なくとも1の分子マーカーの存在についてスクリーニングすることにより同定される。本発明は今、そのようなスクリーニングアッセイにおける使用に適する種々のAFLPマーカーを開示する。なぜなら、それらはトマト植物内の抵抗性遺伝子の存在と種々の程度で連鎖することが分かったからである。適当な分子マーカーは、AFLPマーカーP14/M49−F−282、P11/M35−F−216、P21/M61−F−583、P25/M51−F−131、P15/M49−F−330、及びP13/M38−F−311/313から成る群から選択され、好ましくはAFLPマーカーP14/M49−F−282、P11/M35−F−216及びP13/M38−F−311/313から成る群から選択され、最も好ましくはAFLPマーカーP11/M35−F−216及びP13/M38−F−311/313から成る群から選択されうる。実施例は、これらのマーカーと該抵抗性形質との間の連関をより詳細に記載する。
【0046】
本発明はさらに、ToTV抵抗性植物又はその部分を同定する方法に関係する。ToTV抵抗性植物を同定することの種々の可能性がある。そのような方法の実施態様の第1の設定において、活性な/感染性のウィルス又は完全長感染性クローンが用いられうる一方で、代替的な実施態様において、ウィルス検出手段だけが用いられる。
【0047】
活性な/感染性のウィルスを用いてToTV抵抗性植物を同定する方法の第1の段階は、植物又は植物部分、例えば葉又は茎部分などをToTVの感染性用量に曝露することを含み、この目的は感染を達成することである。該曝露は、多くの場合に、物理的な接触の確立を含みうる。感染性用量は、植物の間及び試験されるToTV分離株の間でさまざまである。理論上は、約1〜10の量から約500〜5000の該ウィルスのウィルス粒子又はその核酸の量が十分であろう。この方法における感染は、精製されたウィルス粒子又はウィルス核酸の、健康な植物に対する機械的な接種により、又は、例えば、感染した植物に対する曝露を介した受動的な接種により、達成されうる。
【0048】
代替的に、感染は、例えば、
−ToTVに感染した根茎上に健康な接ぎ穂を育成すること、又はその逆;
−該ウィルスを含有する伝染ベクター(感染した植物、例えばネナシカズラ類のような寄生植物を含む)へ健康な植物を曝露すること;
−ToTVウィルスゲノムのコーディング領域を宿す発現ベクターを健康な植物へと導入すること;
−ToTVウィルスゲノムのコーディング領域を宿す発現ベクターを含むアグロバクテリウム ツメファシエンス株などの、土壌伝染性クローンの使用
により達成されうる。
【0049】
本発明の文脈において、植物又は植物部分を、ToTVの感染性用量に曝露する方法は、いずれかの特定の方法に限定されない。
【0050】
述べられたとおり、感染は、健康な植物に対する該ウィルスの機械的な接種を含みうる。例えば、冒された葉の一部が、感染されるべき植物の葉へと、直接にこすりつけられうる。代替的な手順において、接種原が例えば、ウィルス含有性植物組織を、好ましくは症状を示す若い葉を、乳鉢と乳棒により、又は任意の他の適当なタイプのホモジナイザーにより、例えば接種に適当な緩衝液(例えば、0.03M ホスフェート緩衝液、pH7.7)中で粉砕することにより、調製されうる。粉砕後、得られたホモジネート(植物液(sap))は好ましくは、例えばチーズクロスを通じて、ろ過される。該植物液は、次に、例えば葉を或る量の該植物液と穏やかに接触させることにより、接種となる。該葉は好ましくは、より低く表皮を損傷する為に及び該ウィルスの進入を増強する為に、予め処理される。これは例えば、該葉にカーボランダム粉を予め振りかけることにより達成されうる。過度に傷つけることは好ましくは回避される。好ましくは、炭化ケイ素の顕微鏡的に小さな角のある粒子(400〜500メッシュ)を有するカーボランダム粉が用いられる。カーボランダム粉は、該植物液に直接的に添加もされてよく、この場合、該予備処理は省略される。該植物液は、例えば、人差し指により、該植物液により浸された泡又は布のパッド、又は、粉砕の為に用いられた乳棒、ガラススパチュラ、硬いブラシ、又はスプレーガンによってさえ適用されうる。接種後、該葉は好ましくはすぐに、水で洗浄される。
【0051】
ToTV抵抗性植物を同定する方法の第2段階は、該曝露後に、i)該植物又は植物部分における病徴が不在なままであるか又は発現が遅らされるか又は重症度において少なくとも減少されるか又は感受性の/又は敏感な対照植物に対して局在化され、及び/又はii)ToTVウィルス又はToTVゲノム配列が該植物又は植物部分において存在しないか又はToTVウィルスの存在が、該植物において、感受性の対照植物と比較して少なくとも量的に減少されるときに、ToTV抵抗性植物として該植物を同定することを含む。本明細書において用いられときに、語「局在化される」は、該接種された葉に限定されることを意味する。
【0052】
感染した植物における、ToTVにより誘発された病徴の進展を測定することは量的な方法により実施されてよく、例えば識別できる(例えば、視認できる)病徴の進展の為に必要とされる期間が記録され、又は質的な方法により実施されてよく、或る期間が経過した後に、該植物が症状の発現について検査され、且つ、該症状の存在又は重症度が指摘される。
【0053】
ToTVにより誘発された病徴の進展を測定することに加えて又はそれの代替として、検出されるべきToTV抵抗性のタイプに依存して、該ウィルスの存在が、該植物又は植物部分において検出される。該試験植物におけるウィルスの不在を検出する為に、任意の方法が原理上は使用されうる。例えば、本発明に従うToTV特異的抗体、プライマーセット又はプローブが用いられるところの方法が採用されうる。代替的に、該試験植物の一部が、ウィルスが該試験植物中に存在するか又は不在かどうかを確立する為に、感受性の指標植物(例えばN.hesperis ‘67A’)との接触に付されうる。当業者は、該植物細胞中のウィルスの存在だけが確立される必要があるので、伝染性ベクター、耐性試験植物及び抵抗性試験植物を区別する為に、そのような方法にとって、該植物の表面を浄化することが重要であることを理解するであろう。
【0054】
ToTV抵抗性植物を同定する方法の第2段階を実施することにおいて、以下の結果が得られうる。もし、成功裏の接種後(例えば、感受性及び敏感性の対照植物における感染を結果するだろう条件下での、植物−ウィルス接触の確立後)、
i)病徴が不在のままである;又は、ウィルス粒子又はウィルスRNAが検出されることができない:該植物は抵抗性である;
ii)病徴が重症度において遅らされ又は減少される;又はウィルス粒子若しくはウィルスRNAの全身的に低い力価が検出されることができる:該植物は部分的に抵抗性である;
iii)病徴が重度であるが、局在的なままであり、接種された葉に限定され且つ、接種された組織を超えて全身的に広がらない;又はウィルス粒子又はウィルスRNAが局所的にだけ検出されうる:該植物は過敏性である;
iv)もし病徴が不在であるならば、及びウィルス粒子又はウィルスRNAが検出されることができるならば:該植物は耐性である。
v)もし該植物が病徴を進展し且つ高い全身的なウィルス力価を有するならば、該植物は感受性且つ敏感性である。そのような植物の例は、本発明のウィルスが単離された該植物である。これらの植物は、本発明の方法において適当な対照植物として役立ちうる。
【0055】
抵抗性植物を生産する為に、及び植物衛生の観点から、結果i)、ii)及びiii)だけが、関心のあるものと考えられうる。症状の無い作物及び製品の生産に適する植物を得る為に、結果iv)も、特定の商業上の関心のあるものでありうる。
【0056】
ToTV抵抗性植物を同定する方法の代替的な実施態様において、ウィルス検出手段だけが用いられる。例えば、ToTV抵抗性植物は、当技術分野において、症状を示す植物のうちで症状の無い植物を観察すること又は同定すること及びウィルス検出方法を実施することにより該植物内のウィルスの不在を決定することにより同定されうる。そのような方法が実施されるとき、ToTV選択性のポリヌクレオチド又は抗体が用いられることが好ましい。好ましくは、ToTV抵抗性植物を同定する方法は、ウィルス又はウィルス選択性のポリヌクレオチド又は抗体のいずれかの使用を要求する。
【0057】
本発明は今、さらに、推定上のToTV抵抗性遺伝子と連鎖するマーカーのホモ接合的な存在を決定することにより、ToTV抵抗性植物を同定するさらなる方法を開示し、そのマーカーについて、いくつかの例が提供される。
【0058】
本発明はさらに、ToTV抵抗性植物又はその部分を生産する方法に関係する。いったんToTV抵抗性植物が同定されると、この植物は遺伝物質の供与体植物として役立ってよく、該遺伝物質は、該遺伝物質を受容体植物に備える為に、該供与体植物から該受容体植物に移動される。遺伝物質の供与体植物から受容体植物への移動は、当技術分野において既知の任意の適当な方法により起こりうる。該遺伝物質は、大抵の場合、ゲノムの物質であろう。しかしながら、該供与体植物のゲノムの、少なくとも抵抗性付与性部分が移動されることが重要である。供与体植物のゲノムのどの部分がToTV抵抗性を与えるかを決定する方法の不在において、該移動は、完全な染色体を移動することにより適当に起こりうる。好ましくは、該ToTV抵抗性植物は、抵抗性子孫植物を生産する為の交配において、雄性又は雌性の親植物として役目を果たし、該子孫植物はそれにより、該抵抗性供与体から遺伝物質を受け取り、そして該受容体植物として振舞う。交配における感受性の親は、厳密な意味で、必ずしも受容体植物である必要はないが、そのような感受性の親は本明細書において語「受容体植物」に含まれもするであろう。
【0059】
ToTV抵抗性植物を生産する方法において、プロトプラスト融合も、抵抗性を与えるゲノム物質の、供与体植物から受容体植物への移動の為に、すなわち該植物の交配の様式として、用いられることができる。プロトプラスト融合は、2以上のプロトプラスト(細胞壁が酵素的処理により除去されている細胞)の間で一つの二核性細胞又は多核性細胞を生産する為の、誘発された融合又は自発的な融合であり、例えば体細胞ハイブリダイゼーションである。自然に交配されることができない植物種により得られさえしうる該融合された細胞は、形質の所望の組み合わせを示すハイブリッド植物へと組織培養される。より特には、第1のプロトプラストが、ToTVによる感染に対する抵抗性を示すトマト植物又は他の植物の系統から得られうる。例えば、ToTV抵抗性トマト系統からのプロトプラストが用いられうる。第2のプロトプラストが、感受性の第2の植物系統から、任意的に他の植物種又は品種から、好ましくは同じ植物種又は品種から得られてよく、これは商業上望ましい特徴、例えば病気抵抗性、昆虫抵抗性、有益な果実特徴などを含むがこれらに限定されない。該プロトプラストは次に、従来のプロトプラスト融合手順を用いて融合され、これは交配を作る為の当技術分野において知られいている。
【0060】
代替的に、胚救出が、抵抗性を与えるゲノム物質の、供与体植物から受容体植物への移動において、すなわち、該植物の交配の様式として、採用されうる。胚救出は、植物が生存可能な種子を生産しないところの交配種から胚を単離する為の手順として用いられることができる。このプロセスにおいて、植物の受精した子房又は未成熟種子が、組織培養されて、新たな植物を形成する(この方法は、Pierik、1999、において詳細に記載される)。
【0061】
ToTV抵抗性植物を生産する方法はすなわち、1の実施態様において、本明細書において記載されるとおりの、ToTV抵抗性供与体植物又は該抵抗性遺伝子の少なくとも1の対立遺伝子を含む植物(キャリア植物)を同定すること、及び、該ToTV抵抗性供与体植物又は該キャリア植物を受容体植物と交配することの段階を含む。その後、さらなる交配及び自殖により、該ウィルスに対し抵抗性であるホモ接合性植物が得られうる。
【0062】
ToTV抵抗性植物を生産する方法はさらに、前に記載されたとおりのToTV抵抗性植物を同定する方法を実施することにより、子孫植物から抵抗性植物を選抜する段階を含む。
【0063】
好ましくは、該受容体植物は、ソラヌム リコペルシクム(Solanum lycoperisicum)種のトマト植物であり、より好ましくは商業上望ましい特徴を有するS.lycopersicum植物である。該受容体植物は、ToTV感受性植物、ToTV敏感性植物又はToTV抵抗性植物でありうる。上記で説明されたとおり、該植物の選択は、該抵抗性形質が劣性であるという事実により決定される。当業者は、そのような問題を解決するために利用できる種々の方法論に気づく。
【0064】
また、本発明の1の局面は、本発明の方法により得られるToTV抵抗性植物又はその部分である。
【0065】
ToTV抵抗性植物を生産する1の方法は、ToTV抵抗性供与体植物又はホモ接合型で該抵抗性遺伝子を有する植物から、受容体植物へと、該植物の交配により、抵抗性を与える核酸配列の浸透性交雑(introgression)による該移動を含みうる。
【0066】
系統育種といわれる1の方法において、ToTVに対する抵抗性を示す供与体植物(ホモ接合性)は、例えば病気抵抗性、昆虫抵抗性、有益な果実特徴などであるがこれらに限定されない商業上望ましい特徴を好ましくは示す受容体植物と交配されうる。該得られた植物集団(Fハイブリッドを表す)は、次に、自家授粉され、そして、種子(F種子)をまくことが許される。該F種子から育成された該F植物は、次に、ToTVに対する抵抗性について又は該抵抗性遺伝子と連鎖するマーカーのホモ接合的存在について、スクリーニングされる。すなわち、該子孫集団が、多くの方法でスクリーニングされることができる。
【0067】
トランスジェニック方法による、ToTV抵抗性トマト植物の生産
【0068】
本発明の他の局面に従い、本明細書において同定されるとおりのToTV抵抗性遺伝子と連鎖するマーカーの少なくとも1つを含む核酸(好ましくはDNA)配列が、ToTV抵抗性トマト植物の生産の為に用いられうる。いったん適当な供与体トマト植物において同定されると、ToTV抵抗性の為の遺伝子を含む該核酸配列は、利用できる任意の方法により、適当な受容体植物へと移動されうる。例えば、該核酸配列は、ToTV抵抗性供与体トマト植物と感受性受容体トマト植物との交配により(すなわち浸透性交雑により)、形質転換により、プロトプラスト融合により、倍加半数体技術により又は胚救出により又は任意の他の核酸移動系により、移動されてよく、任意的に該遺伝子ヘテロ接合又はホモ接合を含む及び/又はToTV抵抗性を示す子孫植物の選抜が続く。移動のトランスジェニック方法のために、ToTV抵抗性の為の遺伝子を含む核酸配列は、当技術分野において知られる方法を用いることにより該供与体植物から単離されてよく、及び、このようにして単離された核酸配列は、トランスジェニック方法により、例えばベクターの手段により、配偶子中において又は、該核酸配列により覆われた弾道的粒子などの、任意の他の適当な移動因子において、該受容体植物へと移動されうる。
【0069】
植物形質転換は一般に、植物細胞中で機能するであろう発現ベクターの構築を含む。本発明において、そのようなベクターは、ToTV抵抗性の為の遺伝子を含む核酸配列を含み、該ベクターは、プロモーターなどの調節エレメントの制御下にある又は動作可能に連結されているToTV抵抗性付与性遺伝子を含みうる。該発現ベクターは、1以上のそのような動作可能に連結された遺伝子/調節エレメントの組み合わせを含んでよく、ただし該組み合わせ中に含まれる該遺伝子の少なくとも1つがToTV抵抗性をコードすることを条件とする。該ベクターは、プラスミドの形態にあってよく、及び、単独で又は他のプラスミドとの組み合わせにおいて、用いられてよく、アグロバクテリウム形質転換系などの当技術分野において既知の形質転換方法を用いて、ToTVに対して抵抗性であるトランスジェニック植物を提供する。
【0070】
発現ベクターは、負の選択により(選択マーカー遺伝子を含まない細胞の成長を抑制することにより)又は正の選択により(マーカー遺伝子によりコードされる産物についてのスクリーニングにより)回復されるべきマーカー含有性形質転換細胞を許す調節エレメント(プロモーターなど)と操作可能に連結された、少なくとも1つのマーカー遺伝子を含むことができる。植物形質転換について、多くの一般に用いられる選択可能マーカー遺伝子は、当技術分野において知られており、及び、例えば、抗生物質又は除草剤でありうる選択的化学物質を代謝的に解毒する酵素をコードする遺伝子、又は該インヒビターに非感受性である変化された標的をコードする遺伝子を含みうる。いくつかの正の選択方法が、当技術分野において知られており、例えばマンノース選択である。代わりに、マーカーの無い形質転換が、言及されたマーカー遺伝子無しの植物を得る為に用いられることができ、そのための技術は当技術分野で知られている。
【0071】
植物に発現ベクターを導入する1つの方法は、アグロバクテリウムの自然の形質転換系に基づく(例えば、Horschら、1985、を参照されたい)。A.tumefaciens及びA.rhizogenesは、遺伝子的に植物細胞を形質転換する植物病原性土壌バクテリアである。A.tumefaciens及びA.rhizogenesのTi及びRiプラスミドは夫々、植物の遺伝子的な形質転換に関与する遺伝子を運ぶ(例えばKado、1991、を参照されたい)。植物組織に発現ベクターを導入する方法は、直接の感染又は、アグロバクテリウム ツメファシエンスを有する植物細胞の共培養を含む(Horschら、1985)。アグロバクテリウムベクター系の記載及びアグロバクテリウムにより媒介される遺伝子移動の方法は、Gruber及びCrosby、1993、並びにMoloneyら、1989により提供される。、米国特許出願公開第5,591,616号明細書も参照されたい。植物発現ベクター及びレポーター遺伝子及び形質転換プロトコルの概括的な説明及びアグロバクテリウムベクター系及びアグロバクテリウムにより媒介される遺伝子移動の方法の説明は、Gruber及びCrosby、1993において見られる。植物組織を培養する一般的な方法は例えば、Mikiら、1993、により及びPhillipsら、1988、により提供される。分子クローニング技術及び適当な発現ベクターについての適切な参照ハンドブックは、Sambrook及びRussell(2001)である。
【0072】
発現ベクターを植物へと導入する他の方法は、微粒子により媒介される形質転換に基づき、ここでDNAは微粒子の表面上で運ばれる。該発現ベクターは、微粒子を、植物細胞壁及び膜を貫通するのに十分である300〜600m/sの速さへと加速する微粒子銃装置により、植物組織へと導入される(Sanfordら、1987、1993;Sanford、1988、1990;Kleinら、1988、1992を参照されたい)。DNAを植物へ導入する他の方法は、標的細胞の超音波処理を介する(Zhangら、1991、を参照されたい)。代わりに、リポソーム又はスフェロプラスト融合が、植物に発現ベクターを導入する為に用いられてきた(例えばDeshayesら、1985、及びChristouら、1987、を参照されたい)。CaCl沈殿物、ポリビニルアルコール又はポリ−L−オルニチンを用いた、プロトプラストへのDNAの直接の取り込みもまた報告されている(例えば、Hainら、1985、及びDraperら、1982、を参照されたい)。プロトプラストと全細胞及び組織とのエレクトロポレーションもまた記載されている(D’Halluinら、1992、及びLaursenら、1994)。
【0073】
トマト標的組織の形質転換に続き、当技術分野では現在よく知られた再生及び選択の方法を用いて、上記で記載された選択可能マーカー遺伝子の発現が、形質転換された細胞、組織及び/又は植物の優先的な選択を許す。本明細書において定義されたとおりのマーカーもまた、その目的の為に用いられうる。
【0074】
非トランスジェニック方法による、ToTV抵抗性トマト植物の生産
【0075】
ToTV抵抗性トマト植物を生産するための代替的な実施態様において、プロトプラスト融合が、供与体植物から受容体植物への核酸の移動の為に用いられうる。プロトプラスト融合は、一つの二核性細胞又は多核性細胞を作る為の2以上のプロトプラスト(細部壁が酵素的処理により除去されている細胞)の間の、体細胞ハイブリダイゼーションなどの、誘発された又は自発的な融合である。自然には交配され得ない植物種によってさえ得られうる該融合された細胞は、形質の所望の組み合わせを示すハイブリッド植物へと組織培養される。より特には、第1のプロトプラストは、ToTVによる感染に対する抵抗性を示すトマト植物系統又は他の植物系統から得られうる。例えば、実施例において示されるとおりの任意の抵抗性系統のからのプロトプラストが用いられうる。第2のプロトプラストは、第2のトマト品種又は他の植物品種から、好ましくは病気抵抗性、昆虫抵抗性、有益な果実特徴などであるがこれらに限定されない商業上望ましい特徴を含むトマト系統から得られうる。該プロトプラストは、次に、慣用のプロトプラスト融合手順を用いて融合され、これは、当技術分野において知られている。
【0076】
代替的に、胚救出が、供与体植物から受容体植物への抵抗性遺伝子の移動において採用されうる。胚救出は、植物が生存可能な種子を作らないところの交配物から胚を単離する為の手順として用いられうる。このプロセスにおいて、植物の受精した子房又は未成熟種子が、組織培養されて、新たな植物を形成する(Pierik、1999)。
【0077】
本発明は、ToTV抵抗性トマト植物を生産する方法であって、上記で記載されたとおりの本発明に従う供与体トマト植物において、ToTVに対する抵抗性に関連する対立遺伝子の存在を検出する方法を実施すること、及び、このようにして検出された該対立遺伝子を含む核酸配列を、該供与体植物からToTV感受性受容体トマト植物へと移動することの段階を含む上記方法にも関係する。該核酸配列の移動は、本明細書において前に記載された方法のいずれかにより実施されうる。
【0078】
そのような方法の好ましい実施態様は、ToTV抵抗性供与体トマト植物からToTV感受性受容体トマト植物への、該植物の交配による、該核酸配列の浸透性交雑による移動を含む。この移動は、すなわち、従来の育種技術を用いることにより、適当に達成されうる。該ToTV抵抗性遺伝子は好ましくは、マーカー利用育種(marker-assisted breeding、MAS)を用いることにより、商業的トマト品種へと浸透交雑される。マーカー利用育種又はマーカー利用選抜は、所望の形質をコードする遺伝子の1以上を含むそれらの子孫植物の同定及び選抜の為の1以上の分子マーカーの使用を含む。本例において、そのような同定及び選抜は好ましくは、本明細書において同定されるとおりの抵抗性遺伝子に関連するマーカーの選抜に基づく。
【0079】
ToTV抵抗性トマト植物及び種子
【0080】
本発明の方法により得られるToTV抵抗性トマト植物又はその部分も、本発明の局面である。
【0081】
本発明のToTV抵抗性トマト植物は、自殖性、ハイブリッド、半数体、二ゲノム性半数体、単為結実性又はトランスジェニックのような任意の遺伝子タイプでありうる。さらに、本発明の植物は、該抵抗性形質についてヘテロ接合性又はホモ接合性であってよく、好ましくはホモ接合性であってよい。本発明において同定される対立遺伝子は、ToTV抵抗性植物を提供する為に任意の植物へと移動されうるが、本発明の方法及び植物は好ましくは、Salanaceae科の植物、より好ましくはトマトに関する。
【0082】
自殖性のToTV抵抗性トマト植物系統が、反復の選抜及び戻し交配、自家受粉及び/又は二ゲノム性半数体の技術、又は親系統を作る為に用いられる任意の他の技術を用いて開発されうる。選抜及び戻し交配の方法において、ToTV抵抗性は、反復親と第1の供与体植物(反復親と異なり、且つ、本明細書において「非反復親」といわれる)とを交配することにより、標的受容体植物(反復親と呼ばれる)へと浸透交雑されうる。該反復親は、ToTVに対して非抵抗性であるか又はToTVに対する低い水準の抵抗性を有する植物であり、且つ、商業上望ましい特徴を有し、例えば病気抵抗性、昆虫抵抗性、有益な果実特徴などを有するがこれらに限定されない。該非反復親は、ToTV抵抗性を示し、且つ、ToTV抵抗性をコードする核酸配列を含む。該非反復親は、該反復親と交雑受精する任意の植物品種又は自殖系統であってよい。該反復親と非反復親との間の交雑から結果する子孫は、該反復親に戻し交配される。得られた植物集団は次にスクリーニングされる。該集団は、多くのさまざまな方法でスクリーニングされうる。例えば、該集団は、本明細書において前に記載されたとおりの抵抗性バイオアッセイ又は圃場スクリーニングを用いてスクリーニングされうる。ToTV抵抗性表現型を示すFハイブリッド植物は、ToTV抵抗性をコードする必須の核酸配列を含み、且つ、商業上望ましい特徴を有し、次に、該トマト植物がだんだんと自殖になることを許す為に多くの世代数にわたり(最大で5、6、7又は8世代)選抜されそして自家授粉(selfing)されそして選抜される。連続した自家授粉及び選抜のこの過程は、2〜5以上の世代について実施されうる。そのような育種及び選抜の結果は、ToTV抵抗性に関連する遺伝子並びに商業上の関心ある形質に関連する他の遺伝子について遺伝的にホモ接合性である系統の生産である。バイオアッセイの表現型病理学スクリーニングの代わりに、MASが、ToTV抵抗性をコードする核酸配列を含むそれらの子孫を同定する為に、本明細書で前に記載された分子マーカー、ハイブリダイゼーションプローブ又はポリヌクレオチドの1以上を用いて実施されうる。代わりに、MASが、該定量的バイオアッセイから得られる結果を確認する為に用いられうる。いったん適切な選抜がなされると、該過程が繰り返される。該反復親への戻し交配及びToTV抵抗性についての選抜の過程は、約5以上の世代について繰り返される。この過程から結果する子孫は、ToTV抵抗性をコードする1以上の遺伝子についてヘテロ接合性である。最後の戻し交配世代が次に、ToTV抵抗性について、ホモ接合的に純粋な育種子孫を提供する為に自家授粉される。
【0083】
本明細書において記載される該ToTV抵抗性自殖トマト系統は、ToTV抵抗性ハイブリッド植物を形成する為の追加の交配において用いられうる。例えば、本発明の第1のToTV抵抗性自殖トマト植物が、病気抵抗性、昆虫抵抗性、望ましい果実特徴などであるがこれらに限定されない商業上望ましい形質を有する第2の自殖トマト植物と交配されうる。この第2の自殖トマト系統は、ToTV抵抗性であってよく又はなくてもよいが、好ましくは、子孫植物の少なくとも50%がToTV抵抗性表現型を発現するように、本明細書において定義されるマーカーと連鎖するように、ToTV抵抗性のための少なくとも1の対立遺伝子を有する。より好ましくは、該第2の自殖トマト系統は、ToTV抵抗性でもあり、その結果該抵抗性表現型は、交配にもかかわらず保存される。このようにして、本発明の第1のToTV抵抗性自殖トマト植物が、該第2の自殖トマト植物系統へと追加の遺伝性形質を浸透性交雑する為に用いられうる。
【0084】
本発明の他の局面は、ToTV抵抗性トマト植物へ育成されうる種子を生産する方法に関する。1の実施態様において、該方法は、本発明のToTV抵抗性トマト植物を提供すること、該ToTV抵抗性植物と他のToTV抵抗性トマト植物とを交配すること、及び、植えられたときにToTV抵抗性ハイブリッドトマト植物を生産する、該交配から結果する種子を集めることの段階を含む。
【0085】
他の実施態様において、該方法は、本発明のToTV抵抗性トマト植物を提供すること、該ToTV抵抗性植物とソラヌム リコペルシクム(Sloanum lycopersicum)植物とを交配すること、該交配から結果する種子を集めること、該種子を植物へと再生すること、本明細書において記載された方法のいずれかによりToTV抵抗性植物を選抜すること、該選抜された植物を十分な世代数について自己交配して、該植物にToTV抵抗性を与える対立遺伝子について固定された植物を得ること、このようにして得られた植物と所望の表現型形質を有するS.lycopersicum植物とを、十分な世代数について戻し交配をしてToTV抵抗性であり且つ所望の表現型形質を有するS.lycopersicum植物を得ること、及び、植えられたときにToTV抵抗性であるトマト植物を生産する、該最後の戻し交配から結果する植物から生産された種子を集めることを含む。
【0086】
例証として、且つ限定されず、本発明の実施例が今与えられるであろう。
【0087】
実施例
【実施例1】
【0088】
トマト中のToTV抵抗性遺伝子と連鎖するマーカーの同定
【0089】
この実験の目的は、Bulk Segregant Analysis(BSA;Michelmore、R.W.、I.Paran及びR.V.Kesseli、1991、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:9828−9832)の使用により、トマト内の、ToTV抵抗性と連鎖するAFLPマーカーを同定することである。
【0090】
ToTV抵抗性は、一遺伝子性の劣勢に遺伝される形質であることが発見された。該分析が、F2トマト栽培品種交配の150の植物について実施され、そのF3植物が表現型検査された。信頼性ある表現型の測定の為に、F3植物についての表現型検査が、F2植物のサブセットについて数回繰り返された。繰り返された表現型検査により得られル結果に基づき、18の個体が、信頼性よく抵抗性であるとして示され、且つ、9の植物が信頼性よく感受性であると示された。これらの植物が、BSAの為に用いられた。これらの個体からの表現型情報が、表1に掲げられる。
【0091】
マーカー同定及び検証
【0092】
マーカー命名法
【0093】
AFLPプライマーの組合せが一般に示されるコード、例えばP14/M49−F−282、ここでP及びMは、一般のPstI及びMseIプライマー配列又は普遍的プライマー(Vosら、1995;Baiら、2003)であり、2桁拡張コードにより示されるとおりの、2又は3の追加の選択の塩基が続く。2桁拡張コードは、以下のとおりである:11:AA;13:AG;14:AT;15:CA;21:GG;25:TG;35:ACA;38:ACT;49:CAG;51:CCA;61:CTG。282は、得られた多型断片の塩基対における近似されたサイズである(与えられたサイズ±2塩基対)。該サイズは、普通は四捨五入されるが、少数でも与えられうる。この断片は、調査された植物において増幅された。プライマー及びアダプター配列は、Baiら、2003によって詳細に記載される。
【0094】
マーカーTG163(Expen 2000;SOL Genomic Network;http://www.sgn.cornell.edu/index.pl)は、以下の配列の順方向及び逆方向のプライマーからなる:

【0095】
生物学的材料
【0096】
総数で300のF2植物の葉の材料が、評価の為に利用できた。このうち、150の植物全数が、これらのF2個体に由来するF3植物の表現型に基づき表現型検査された。ゲノムDNAが、これらの150の表現型検査された植物の葉の材料から単離され(表1)、及び、AFLPフィンガープリンティングの為のPstI/MseIテンプレートがこれらのDNA試料から作られた。その後、試験フィンガープリントが、全ての植物について、プライマーの組合せP14/M50の使用により作られた。
【0097】
個体についてのBSA及び検証
【0098】
BSAが、ToTVに対して抵抗性である10の個体を有する1のバルクについて、及び、ToTVに対して感受性である9の個体を有する1のバルクについて、96のプライマーの組合せのスクリーニングにより開始された(表2)。このスクリーニングは、3の候補マーカー(P11/M54−F−233/235(2対立遺伝子性)、P14/M49−F−282及びP15/M49−F−330)の同定を結果し、これは、次に、32の個体(18の利用可能なToTV抵抗性個体、9のToTV感受性個体及び表現型があいまいさを残さず評価されることができなかった5の個体の合計からなる)について検証された。このスクリーニングに基づき、マーカーP14/M49−F−282が、ToTV抵抗性遺伝子に最も密接に連鎖するマーカーであると分かった。
【0099】
第2のBSAが実施され、ここでは96のプライマーの組合せが、Rバルク及びSバルク(今、夫々、9及び9の個体からなる)についてスクリーニングされた。このスクリーニングは、2の候補マーカー(P21/M61−F−583及びP25/M51−F−131)の同定を結果し、これは、前のBSAスクリーニングからの1のマーカー(P15/M49−F−330)と一緒に、32の前述された個体について検証された(表3)。追加のスクリーニングされたマーカーのいずれもが、第1のBSAのラウンドで同定された最もよく連鎖するマーカーP14/M49−F−282より密接に連鎖しないことがわかった。
【0100】
マーカーP14/M49−F−282は、最も密接に連鎖するマーカーであるとわかったので、このマーカーを、全ての150の表現型検査された個体に対してスクリーニングすることを決定した。その結果が表5に提示される。全部で17の組み換え体が同定された(表4)。表現型は、3つのクラスに分類された:
− 抵抗性(A)=全体の感染率が25%未満である
− 分離性(H)=全体の感染率が25〜75%である
− 感受性(B)=全体の感染率が75%超である
【0101】
マーカーP14/M49−F−282の遺伝子型との組合せにおける分類に基づき、全部で28の組み換え体が同定され、これは該マーカーと該ToTV抵抗性遺伝子との間のおおよそ9.5cMの距離に対応する。これは、枠(9cM)の計算されたサイズに従っており、ここで該ToTV抵抗性遺伝子は、マーカーP14/M49−F−282とP11/M35−F−216との間に位置する(表3)。この計算は、BSAの為に用いられた系統に基づき、及び、最も信頼性よく表現型検査されたと考えられた。
【0102】
試験された全てのマーカーのうち最も密接に連鎖するとみえるマーカーP14/M49−F−282は該座位から、なおかなり大きな距離であったので、より密接に連鎖するマーカーが望まれた。それ故に、第3のBSAスクリーニングが実施され、ここでは72のプライマーの組合せがスクリーニングされ、スクリーニングされたプライマーの組合せの総数を263へともたらした。この第3のスクリーニングにおいて、(6つのプライマーの組合せにおいて)9つの候補マーカーが同定され、これらは8の抵抗性個体及び8の感受性個体に対して検証された(表3)。2のマーカー(P11/M35−F−216及び2対立遺伝子性マーカーP13/M38−F−311/313)が、最も密接に連鎖するとみえた。マーカーP11/M35−216の位置が現在では仮のものであることが強調されるべきであり、なぜならその位置がただ一つの組み換え体に基づくからである。該2のマーカーP11/M35−F−216及びP13/M38−F−311/313が次に、17の組み換え体と18の抵抗性及び感受性個体を含む、表現型の情報が利用可能でない個体のより大きな集団についてスクリーニングされた(表5)。
【0103】
マーカーP13/M38−F−311は、該敏感な対立遺伝子と連鎖する。該プライマーの間で増幅される該311−塩基対断片は、以下の配列(311塩基のうち278が信頼性よく決定された):

を有する。
【0104】
マーカーP13/M38−F−313は、該抵抗性対立遺伝子と連鎖する。該プライマーの間で増幅される該313塩基対断片は以下の配列(313塩基のうち284が信頼性よく決定された):

を有する。
【0105】
マーカーP11/M35−F−216は、該抵抗性表現型と連鎖する。該プライマーの間で増幅される該216塩基対断片は、以下の配列(216塩基のうち185が信頼性よく決定された):

を有する。
【0106】
生殖質系統に対する、2つの候補連鎖マーカーのスクリーニング
【0107】
該2のマーカーP11/M35−F−216及びP13/M38−F−311/313が、ToTV抵抗性と密接に連鎖するとして同定された。遺伝子とマーカーの間の距離を決定することが困難であることが注目されるべきであり、なぜなら該表現型の解釈は該計算された距離に対して大きな影響を有するからである。これらのマーカーは、83の個体の生殖質の集団についてスクリーニングされた。このスクリーニングに基づき、マーカーP11/M35−F−216は、90.4%の予測値を有するとみえ、及び、マーカーP13/M38−F−311/313は、96.4%の予測値を有するとみえる(表6)。
【0108】
トマトゲノム上のToTV抵抗性の位置
【0109】
トマトマーカーの専売のゲノムマップとの組合せにおける実験的な証拠は、マーカーP14/M49−F−282が4番染色体上に位置することを示唆した。それ故に、ToTV抵抗性の遺伝的根拠は、4番染色体上に位置することが予測される。4番染色体上の2の隣接するマーカーが発見された:2対立遺伝子性マーカーP13/M38−F−311/313及びCOSII/CAPSマーカーC2_At5g25900(実施例2を参照されたい)。このCOSII/CAPSマーカーは、MseIにより消化されたときに、該敏感性(ホモ接合性の感受性)表現型が夫々360bp及び260bpの2の断片を提供し、一方で(ホモ接合性)抵抗性表現型が夫々420bp及び260bpの2の断片を提供し、3つ全ての断片を示す植物は両方の対立遺伝子を有し且つヘテロ接合性である(すなわち感受性である)(全ての3つのタイプの植物からなる試験集団の、消化されたPCR産物を示す代表的なゲルについての図2を参照されたい;泳動は下から上である、サイズマーカーは、100、200、300bp等の断片を示す)。
【0110】
Lycopersicon中のCOSII/CAPSマーカーC2_At5g25900についてのunigene配列(ID:SGN−U228314、2004年6月30日のデータに基づく;2007年4月5日のUnigene SGN−U332034)は:

である。
【0111】
結論
【0112】
抵抗性及び感受性個体の2つのバルクについての、総数263のPstI/MesIプライマー組合せのスクリーニングにより、全部で4つのマーカー(1つは2対立遺伝子性)が、ToTV抵抗性と連鎖するとみえた。該マーカーと該ToTV抵抗性遺伝子との間の距離は、決定することが困難であるが、マーカーP14/M49−F−282の翻訳された表現型及び遺伝子型に基づき、該距離は9.5cMと見積もられる。これは、9cMである該枠の計算されたサイズに従い、9cM内に該ToTV抵抗性遺伝子が位置する。この計算は、最も信頼性よく表現型検査されたと考えられる系統に基づく。
【0113】
マーカーP11/M35−F−216及びP13/M38−F−311/313(2対立遺伝子性)が、83の生殖質個体に対して検証された。このスクリーニングに基づき、該マーカーが夫々、90.4%及び96.4%の予測値を有する。逸脱する系統の発生は、ToTV座位での対立遺伝子の変異又は組み換えにより説明されうる。
【0114】
該ToTV抵抗性遺伝子は、4番染色体上のマーカーP14/M49−F−282の存在により示唆されるとおり、4番染色体上に最も位置しそうである。
【0115】
263のプライマー組合せの使用により同定された、候補連鎖マーカーの比較的高い数に基づき、該ToTV抵抗性遺伝子は、野生のトマトの接近からの浸透性交雑でありそうである。
【0116】


表1 F2個体及びToTV抵抗性についての表現型の総括。表現型は、これらのF2個体に由来するF3植物に基づくことに注目されたい。
【0117】

表1の続き
【0118】



【0119】


表3 BSAの使用により同定されたマーカーの総括、及び、これは次に、32のF2植物についてスクリーニングされる。マーカーは、最もよく期待された順に順序付けられる。マーカーP11/M35−F−216が正確に置かれるかどうかが疑問視される。
【0120】


表4 マーカーP14/M49−F−282<N>に基づくDe Ruiter種子により選択された組み換え体。
【0121】


表5 3つの最もよく連鎖するマーカーの使用により産生されたデータ。マーカーP14/M49−F−282は、150の表現型系統についてスクリーニングされ、及び、マーカーP11/M35−F−216及び2対立遺伝子性P13/M38−F−311/313はサブセットについてスクリーニングされた。
【0122】

表6 ToTV抵抗性と連鎖する2の候補マーカーの、83の生殖質系統についてのスクリーニングにより産生されたデータ。
【実施例2】
【0123】
ToTVについての劣性の抵抗性を検出する為の、マーカーC2_At5g25900及び制限酵素MseIの使用
【0124】
試料:
試験集団の夫々の植物からのトマト組織のDNA試料が、標準の調製技術を用いることにより調製された(マイクロプレップ、例えばFulton TM, Chunwongse J, and Tanksley SD. (1995) Microprep Protocol for Extraction of DNA from Tomato and other Herbaceous Plants. Plant Molecular Biology Reporter 13 (3): 207-209.)。
【0125】
PCR化学薬品は以下である:
−dNTP’s(2mM ストック)(Amersham Bioscience)
−SuperThermポリメラーゼ(Integro)
−順方向プライマー(10ng/μl)

−逆方向プライマー(10ng/μl)

−10×PCRバッファー 25mM MgCl
−ローディングバッファー
−エチジウムブロマイド(10mg/ml)
−1×TE
−0.5×TBE(Duchefa)
−制限酵素MseI(New England Biolabs)
【0126】
PCR混合物は(試料当たり)以下から成る
2.0 μl 10×PCRバッファー(25mM MgCl
2.0 μl dNTP’s混合物(2mMの夫々のdNTP’s)
3.0 μl 順方向プライマー(10ng/μl)
3.0 μl 逆方向プライマー(10ng/μl)
0.05 μl SuperThermポリメラーゼ
8.95 μl H
1.1 μl テンプレートDNA
【0127】
PCRサーモサイクラーのプロファイルは以下のとおりであった:
94℃で3分;(94℃で30秒、65℃で1分及び72℃で1分)について32サイクル;4℃での保持
【0128】
該PCR産物は、製造者の指示に従いMseIにより消化された。電気泳動は、1.5%アガロースゲル中で実施された。
【0129】
マーカースコア
スコア1=360bp+260bp =ホモ接合性感受性
スコア2=420bp+360bp+260bp=ヘテロ接合性
スコア3=420bp+260bp=ホモ接合性抵抗性
表現型は、ハイブリッドから独立にスコア化された。
【0130】
結果と考察
ゲルの写真が図2に提示され、全部で3の植物のタイプからなる試験集団の消化されたPCR産物を示す;泳動は下から上であり、マーカーは100、200、300bp等の断片を示す)。
【0131】

【0132】

【0133】

【0134】
マーカーC2_At5g25900は、86の系統において最初に試験された。これらの系統のうち3つが分析されることができず、なぜなら明らかでない表現型又はマーカー無しが結果するからである(表IIIにおいて「不明」を参照されたい)。
−10系統が、スコア「2」を与えるとき、表現型はヘテロ接合性感受性であった。
−24系統が、スコア「1」を与えるとき、表現型はホモ接合性感受性であった。
−45系統が、スコア「3」を与えるとき、表現型はホモ接合性抵抗性であった。
−マーカースコアは、試験された材料の95%において、観察された表現型と一致する。
【0135】
結論
【0136】
該マーカーは、信頼性よく(95%の精度)、表現型の予測の為に及び抵抗性対立遺伝子の検出の為に用いられうることが結論付けられた。
【0137】
マーカーC2_At5g25900と該抵抗性対立遺伝子との間の遺伝的距離は部分的に位置づけられた。このマーカーに基づき、該データは決定的でなく、及び、該遺伝子との距離は0〜10cMの範囲の間に信頼性よく決定されることだけができた。
【0138】
同じ試料がマーカーP13/M38−F−311/313について試験されたとき、55の試料のうち全部で2の組み換え体が説明されることができ、0cM〜3.6cMのこのマーカーと該抵抗性遺伝子の間の連鎖を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トマトトラドウィルス(ToTV)に対する抵抗性を与える遺伝子の少なくとも1の対立遺伝子をゲノム内に有する植物であって、該ウィルスがDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbHに、2004年11月24日に、寄託者参照番号ToTV−E01(DSM 16999)下で寄託された、上記植物。
【請求項2】
該植物が、ソラナセアエ(Solanaceae)属の植物であり、より好ましくはトマト植物である、請求項1に記載の植物。
【請求項3】
該植物が、ソラヌム リコペルシクム(Solanum lycopersicum)種の植物である、請求項1に記載の植物。
【請求項4】
該対立遺伝子が、AFLPマーカーP14/M49−F−282、P11/M35−F−216、P21/M61−F−583、P25/M51−F−131、P15/M49−F−330、P13/M38−F−311/313及び/又はCOSII/CAPSマーカーC2_At5g25900に連鎖し、好ましくはAFLPマーカーP14/M49−F−282、P11/M35−F−216及び/又はP13/M38−F−311/313に連鎖し、最も好ましくはAFLPマーカーP11/M35−F−216及び/又はP13/M38−F−311/313及び/又はCOSII/CAPSマーカーC2_At5g25900に連鎖するゲノム領域内に位置する、請求項3に記載の植物。
【請求項5】
該対立遺伝子が、4番染色体上に位置し、好ましくはAFLPマーカーP14/M49−F−282及びP11/M35−F−216の間、さらにより好ましくはAFLPマーカーP13/M38−F−311/313及びCOSII/CAPSマーカーC2_At5g25900の間に位置するゲノム領域内に位置する、請求項4に記載の植物。
【請求項6】
該対立遺伝子がホモ接合型で存在する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の植物。
【請求項7】
該抵抗性が、感染の確立に対する抵抗性として表される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の植物。
【請求項8】
該植物が、請求項1において定義されたとおりのトマトトラドウィルス(ToTV)による感染を含む抵抗性バイオアッセイにおいて同定され、任意的に該ToTV抵抗性遺伝子の該対立遺伝子と連鎖する少なくとも1の分子マーカーの存在についてスクリーニングすることを含む方法が続く、請求項1〜7のいずれか1項に記載の植物。
【請求項9】
該植物が、該ToTV抵抗性遺伝子の該対立遺伝子に連鎖する少なくとも1の分子マーカーの存在についてスクリーニングすることを含む方法により生産され、任意的に請求項1に定義されたとおりのトマトトラドウィルス(ToTV)による感染を含む抵抗性バイオアッセイが続く、請求項1〜8のいずれか1項に記載の植物。
【請求項10】
該少なくとも1の分子マーカーが、AFLPマーカーP14/M49−F−282、P11/M35−F−216、P21/M61−F−583、P25/M51−F−131、P15/M49−F−330、及びP13/M38−F−311/313並びにCOSII/CAPSマーカーC2_At5g25900から成る群から選ばれ、好ましくはAFLPマーカーP14/M49−F−282、P11/M35−F−216及びP13/M38−F−311/313並びにCOSII/CAPSマーカーC2_At5g25900から成る群から選ばれ、最も好ましくはAFLPマーカーP11/M35−F−216及びP13/M38−F−311/313及び/又はCOSII/CAPSマーカーC2_At5g25900から成る群から選ばれる、請求項9に記載の植物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の植物に由来する植物部分。
【請求項12】
該部分が果実又は種子である、請求項10に記載の植物部分。
【請求項13】
請求項1に定義されたとおりのトマトトラドウィルス(ToTV)に対して抵抗性である植物を選抜する方法であって、
a)該ウィルスの接種原を用意すること、
b)植物を該接種原に曝すこと、
c)十分なインキュベーション時間を許すこと、そして
d)該インキュベーション時間の経過後に、該植物において感染が確立しない場合に該植物を選抜すること、
の段階を含む上記方法。
【請求項14】
請求項1に定義されたとおりのトマトトラドウィルス(ToTV)に対する抵抗性を与える遺伝子の少なくとも1の対立遺伝子をゲノム内に有する植物を選抜する方法であって、AFLPマーカーP14/M49−F−282、P11/M35−F−216、P21/M61−F−583、P25/M51−F−131、P15/M49−F−330、及び/又はP13/M38−F−311/313及び/又はCOSII/CAPSマーカーC2_At5g25900に連鎖し、好ましくはAFLPマーカーP14/M49−F−282、P11/M35−F−216及び/又はP13/M38−F−311/313及び/又はCOSII/CAPSマーカーC2_At5g25900に連鎖し、最も好ましくはAFLPマーカーP11/M35−F−216及び/又はP13/M38−F−311/313及び/又はCOSII/CAPSマーカーC2_At5g25900に連鎖するゲノム領域の存在について植物のゲノムDNAをスクリーニングすることの段階を含む上記方法。
【請求項15】
請求項13又は14の方法を実施することにより、請求項1に定義されたとおりのトマトトラドウィルス(ToTV)に対する抵抗性を与える遺伝子の少なくとも1の対立遺伝子をゲノム内に有する植物を選抜すること及び該選抜された植物とそれ自身と又は他の植物とを交配して種子を生産すること、そして該種子を植物へと育成することを含む、植物の生産方法。
【請求項16】
請求項1に定義されたとおりのトマトトラドウィルス(ToTV)に対して抵抗性である植物の生産方法であって、
a)該トマトトラドウィルス(ToTV)に対する抵抗性を与える遺伝子の少なくとも1の対立遺伝子をゲノム内に有する植物を、請求項13又は14の方法を実施することにより選抜すること、
b)該選抜された植物と他の植物と又はそれ自身とを交配して種子を生産すること、
c)該種子を植物へと育成して子孫植物を生産すること、
d)任意的に段階b)及び段階c)の交配段階及び育成段階を繰り返すこと、そして、
e)該子孫植物のうちから該対立遺伝子がホモ接合型で存在する植物を選抜すること、
の段階を含む上記方法。
【請求項17】
段階e)における該選抜が、AFLPマーカーP14/M49−F−282、P11/M35−F−216、P21/M61−F−583、P25/M51−F−131、P15/M49−F−330、及び/又はP13/M38−F−311/313及び/又はCOSII/CAPSマーカーC2_At5g25900に連鎖し、好ましくはAFLPマーカーP14/M49−F−282、P11/M35−F−216及び/又はP13/M38−F−311/313及び/又はCOSII/CAPSマーカーC2_At5g25900に連鎖し、最も好ましくはAFLPマーカーP11/M35−F−216及び/又はP13/M38−F−311/313及び/又はCOSII/CAPSマーカーC2_At5g25900に連鎖する該ゲノム領域のホモ接合的存在について該子孫植物のDNAをスクリーニングすることにより実施される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
段階e)における該選抜が、該ウィルスを用いる抵抗性バイオアッセイにより実施される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
該植物が、ソラナセアエ属、より好ましくはトマト植物、さらにより好ましくはソラヌム リコペルシクム種の植物である、請求項13〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
請求項13〜20のいずれか1項に記載の方法により得られる植物。
【請求項21】
該植物が、ソラナセアエ属、より好ましくはトマト植物、さらにより好ましくはソラヌム リコペルシクム種の植物である、請求項20に記載の植物。
【請求項22】
請求項21に記載の植物に由来する植物部分。
【請求項23】
該部分が果実又は種子である、請求項22に記載の植物部分。
【請求項24】
−ToTV抵抗性トマト植物を選抜する為に、又は
−ToTV感受性トマト品種内にToTVに対する抵抗性を、該品種内の抵抗性対立遺伝子の存在の頻度を増加することにより与える為に、
ToTVに対する抵抗性を与える対立遺伝子を使用する方法であって、
該対立遺伝子が、トマトの4番染色体上のAFLPマーカーP14/M49−F−282、P11/M35−F−216、P21/M61−F−583、P25/M51−F−131、P15/M49−F−330、P13/M38−F−311/313及び/又はCOSII/CAPSマーカーC2_At5g25900に連鎖し、好ましくはAFLPマーカーP14/M49−F−282、P11/M35−F−216及び/又はP13/M38−F−311/313に連鎖し、最も好ましくはAFLPマーカーP11/M35−F−216及び/又はP13/M38−F−311/313及び/又はCOSII/CAPSマーカーC2_At5g25900に連鎖するゲノム領域の中に位置する上記方法。
【請求項25】
植物の収量を増大する為に及び/又は、ToTV感染から結果する、植物における収量損失を防ぐ為に、ToTV抵抗性植物を使用する方法であって、該ToTV抵抗性植物が、トマトの4番染色体上のAFLPマーカーP14/M49−F−282、P11/M35−F−216、P21/M61−F−583、P25/M51−F−131、P15/M49−F−330、P13/M38−F−311/313及び/又はCOSII/CAPSマーカーC2_At5g25900に連鎖し、好ましくはAFLPマーカーP14/M49−F−282、P11/M35−F−216及び/又はP13/M38−F−311/313に連鎖し、最も好ましくはAFLPマーカーP11/M35−F−216及び/又はP13/M38−F−311/313及び/又はCOSII/CAPSマーカーC2_At5g25900に連鎖するゲノム領域内に位置する対立遺伝子のホモ接合的存在により特徴付けられる上記方法。
【請求項26】
ToTV抵抗性植物を生産する為に又は植物又は植物の集団におけるトラド病(又はmarchitez病又はチョコレート斑点病などの関連する病気)の発生を防ぐ為に、ToTV抵抗性植物の種子を使用する方法であって、該植物が請求項1〜11、20又は21のいずれか1項において定義される上記方法。
【請求項27】
ToTVに対する抵抗性を与える少なくとも1の対立遺伝子を含む植物又はToTVに対する抵抗性を与える対立遺伝子についてホモ接合性である植物を、ToTV抵抗性トマト植物として又は該対立遺伝子のホモ接合的存在から結果するToTV抵抗性表現型を他の植物に備えることを目的とした育種プログラムにおいて親植物として使用する方法であって、該対立遺伝子が、トマトの4番染色体上のAFLPマーカーP14/M49−F−282、P11/M35−F−216、P21/M61−F−583、P25/M51−F−131、P15/M49−F−330、P13/M38−F−311/313及び/又はCOSII/CAPSマーカーC2_At5g25900に連鎖し、好ましくはAFLPマーカーP14/M49−F−282、P11/M35−F−216及び/又はP13/M38−F−311/313に連鎖し、最も好ましくはAFLPマーカーP11/M35−F−216及び/又はP13/M38−F−311/313及び/又はCOSII/CAPSマーカーC2_At5g25900に連鎖するゲノム領域内に位置する上記方法。
【請求項28】
植物においてToTVに対する抵抗性を与える対立遺伝子の存在を検出する為に、AFLPマーカーP13/M38−F−311/313、P11/M35−F−216及び/又はCOSII/CAPSマーカーC2_At5g25900を使用する方法。
【請求項29】
該植物がトマト植物である、請求項24〜28のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−538618(P2009−538618A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513079(P2009−513079)
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【国際出願番号】PCT/NL2007/050260
【国際公開番号】WO2007/139386
【国際公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(508352573)デ ルイター シーズ アール アンド ディー ビー.ブイ. (1)
【Fターム(参考)】