説明

UVインプリント用アクリルフィルム、その積層体及びUVインプリント用アクリルフィルムの製造方法

【課題】 UV硬化樹脂と密着性の優れ、かつ耐光性に優れたUVインプリント用アクリルフィルム及びそのフィルムにUV硬化樹脂を積層した積層体を得ること
【解決手段】 アクリルフィルム(I)の少なくとも一方の表面に凹凸形状が付与され、かつヘイズが1%以上であるUVインプリント用アクリルフィルム、その積層体及びUVインプリント用アクリルフィルムの製造方法。
得られるフィルムにUV硬化樹脂が積層された積層体は光学性能に優れ、かつ効率的に生産することが可能になり、産業上有用である

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はUVインプリント用アクリルフィルム、その積層体及びUVインプリント用アクリルフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、急速に発展しているディスプレイの分野では、拡散や集光、反射防止などさまざまな機能を持ったフィルムが使用されている。これらフィルムの表面には、ナノ〜ミクロンサイズの微細な凹凸形状を有するフィルムが使用されている。
【0003】
表面に微細な凹凸形状を付与する方法としては、微細な凹凸形状に対応する金型を用いて熱可塑性樹脂に熱、圧力を掛けて形状を転写する熱インプリント方式、UV硬化樹脂を用いて金型に圧力をかけてUV光を照射して形状を転写するUVインプリント方式などの方法が知られている(非特許文献1)。
【0004】
なかでも、UVインプリント方式は、加熱・冷却による線膨張の影響を受けないため、精度の高いパターン転写が可能である。また、加熱・冷却時間が省略できる点から高いスループットが期待できる。
【0005】
UVインプリント方式で用いられる基材としては、従来、ポリエステルやポリカーボネートが使用されている(特許文献1)。しかしながら、上記特許文献1に記載のフィルムは、透明性、複屈折等の光学性能が十分でなく、また、アクリル系のUV硬化樹脂を使用した場合はフィルム基材とUV硬化樹脂との屈折率が異なる。さらに、耐光性が十分でないため、UV照射した際にフィルムが変色し易い。特に液晶表示装置(LCD)等の光学分野で用いられる拡散フィルム、反射防止フィルムなどの高い光学性能を必要とする場合は、透明性、複屈折、屈折率差、変色が光学性能低下の原因になる。
一方、アクリルフィルムを基材として用い、UVインプリント方式によって微細加工を施したレンズフィルムが開示されている(特許文献2)。このようなレンズフィルムは、上述したUV照射の際の問題点は解決できるが、通常アクリルフィルムはUV硬化樹脂との密着性が悪いという問題があった。
しかしながら、ロール・トゥ・ロール方法にて上記アクリルフィルムにUV硬化樹脂を塗工、UV照射を連続的に実施する際、塗工から照射までの時間が短いため、UV硬化樹脂がアクリルフィルムに浸透し難く、アクリルフィルムとUV硬化樹脂の密着性が十分得られない。特に、ナノサイズの微細な形状やアスペクト比の大きい形状をUVインプリントする場合は、金型とUV硬化樹脂との接着強度が高くなるため、アクリルフィルムとUV硬化樹脂の密着性が悪いと、UV硬化樹脂が剥がれるという問題が生じる。
そのため、特許文献2においては、アクリルフィルムの材料として、単独でのガラス転移温度が60℃以下である重合体を用いることにより密着性を向上させている。
しかしながら、ガラス転移温度が低い重合体を添加して、Tダイ法にてフィルムを作成する場合、フィルムにタダレが発生し易く、このためフィルム外観が損なわれ、光学性能が低下する可能性がある。
さらに、特許文献2記載のアクリルフィルムは、添加しているゴム粒子の量が少なく、ロール・トゥ・ロール方法にてアクリルフィルムにUV硬化樹脂を塗工、UV照射を連続的に実施する際、機械強度の不足により、アクリルフィルムが途中で破断してしまう可能性もある。
一方、フィルムとUV硬化樹脂との密着性を向上する手法として、UV硬化樹脂を積層するフィルム基材に凹凸形状を付け、UV硬化樹脂とフィルム基材が接する表面積を増やす方法が知られている。しかしながら、アクリルフィルムはUV硬化樹脂との密着性が著しく悪く、フィルムに単に凹凸形状を付与しただけでは、十分な密着性が得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−262958号公報
【特許文献2】特開2006−91847号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】ナノインプリント応用事例集(2007) 19頁〜24頁株式会社情報機構 発行者 谷口 彰敏
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、UV硬化樹脂と密着性の優れ、かつ耐光性に優れたUVインプリント用アクリルフィルム及びそのフィルムにUV硬化樹脂が積層された積層体を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、アクリルフィルム(I)の少なくとも一方の表面に凹凸形状が付与され、かつヘイズが1%以上であるUVインプリント用アクリルフィルム、その積層体及びUVインプリント用アクリルフィルムの製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、UV硬化樹脂との密着性が非常に良く、UV硬化液を塗工、ロール・トゥ・ロール方法にてUV照射を連続的に実施することができるアクリルフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について具体的に説明する。

(UVインプリント)
本発明におけるUVインプリントとは、UV硬化型樹脂を用いて微細形状を付与する方法である。例えば、微細構造を有する金型を用い、アクリルフィルムの表面あるいは金型表面にUV硬化樹脂を展延した後、フィルム表面を金型に密着させ、UV線を照射させることにより、フィルム表面にUV硬化型樹脂の硬化物からなる微細形状を転写する方法である。

(UVインプリント用アクリルフィルム)
UVインプリント用アクリルフィルムとは、UVインプリントする際のUV硬化樹脂を塗布するフィルム基材をいう。
【0012】
本発明におけるUVインプリント用アクリルフィルムは、アクリルフィルム(I)の少なくとも一方の表面に凹凸形状を付与したフィルムであり、ヘイズが1%以上であることが必要である。ヘイズが1%以上の場合、UV硬化樹脂と接する表面積が増え、UV硬化樹脂との密着性が良好になる。
【0013】
また、凹凸形状を付与した後のアクリルフィルムのヘイズと凹凸形状を付与する前のアクリルフィルムとのヘイズの差(以下、ヘイズ差という)は、凹凸が深く、緻密に形成されていると大きくなる。このため、ヘイズ差が高い程、UV硬化樹脂と接する表面積が増え、UV硬化樹脂との密着性が良好になる。
ヘイズ差が1%よりも小さいと、凹凸が浅く、散漫に形成されており、UV硬化樹脂と十分な密着性が得られない。より好ましくは、ヘイズ差が3%以上、最も好ましくは、ヘイズ差が5%以上である。一方、ヘイズ差が30%よりも大きいと、凹凸が非常に深く入り、アクリルフィルムの強度が下がり、脆くなる傾向にある。
凹凸形状は、ヘイズ差が1%以上になれば良く、算術平均粗さRaが0.5μm以上であることが好ましい。より好ましくは、Raが1.0μm以上、最も好ましくは、2.0μm以上である。
このようなヘイズ及びヘイズ差とするためには、後述するスクラッチブラスト処理等の凹凸形状付与の条件を適宜変えることにより達成することができる。
【0014】
本発明におけるUVインプリント用アクリルフィルムは、JIS K6251に準拠して測定した引張破断伸度が5%以上であることが好ましい。ロール・トゥ・ロール方法にて、連続的にUVインプリントをする場合に、フィルムの引張伸度が5%よりも低いと、途中で破断してしまう可能性がある。より好ましくは10%以上、最も好ましくは20%以上である。

(凹凸形状付与の方法)
アクリルフィルム表面への凹凸形状付与は、UV硬化液を積層する少なくとも一方の面であれば良い。
凹凸形状の付与方法は、特に限定されないが、例えば、ブラスト処理、エンボス加工、コロナ処理、プラズマ処理等が挙げられる。
ブラスト処理とは、フィルム表面を削り凹凸形状を形成するであり、例えば、フィルム表面に砂を当てて表面を削るサンドブラスト、鋭角な針等でフィルム表面を引掻き凹凸形状を付与するスクラッチブラスト、ヘアーライン等の種類がある。
エンボス加工とは、溶融状態の熱可塑性樹脂を鏡面ロールと表面に凹凸形状を付与したエンボスロールで挟み込み、その後、冷却して凹凸形状を形成させる方法である。
本発明においては、ヘイズが1%以上である必要があり、上記凹凸形状の付与方法のなかで、ブラスト処理、エンボス加工は、ヘイズ差が大きくなる傾向にある。特に、スクラッチブラスト、ヘアーライン等は、凹凸が深く、緻密な形状を付与することができる、凹凸形状の付与方法として好ましい。

(アクリルフィルム(I))
本発明におけるアクリルフィルム(I)は、凹凸形状を付与する前のアクリルフィルムを指し、アクリル樹脂(A)とゴム含有重合体(B)とを含有する樹脂組成物(C)からなるフィルムである。
本発明におけるアクリルフィルム(I)は、JIS K7244−4に準拠して測定した動的粘弾性の損失係数tanδが80℃以上110℃以下であることが好ましい。tanδが110℃以下の場合、UV硬化樹脂がアクリルフィルムに浸透し易くなり、UV硬化樹脂との密着性が非常に良好になる傾向にある。より好ましくは105℃以下である。110℃より高いと、UV硬化樹脂がアクリルフィルムに浸透し難くなり、凹凸形状を付与させてもUV硬化樹脂と十分な密着性が得られない場合がある。
一方、アクリルフィルム(I)は、その動的粘弾性の損失係数tanδの値が80℃以上であることが好ましい。動的粘弾性の損失係数tanδの値が80℃よりも低いと、耐熱性が低下する場合がある。
【0015】
本発明におけるアクリルフィルム(I)は、JIS K 7361−1に準拠して測定した全光線透過率が90%以上であり、JIS K 7136に準拠して測定したヘイズが2%以下であることが好ましい。全光線透過率が90%以上、及びヘイズが2%未満の場合には、透明性が良好でし、拡散フィルム、反射防止フィルム等の光学フィルムに求められる光学性能が良好となる。より好ましくは、全光線透過率が91%以上、ヘイズが1.5%以下であり、最も好ましくは、全光線透過率が92%以上、ヘイズが1.0%以下である。
【0016】
本発明におけるアクリルフィルム(I)の365nmでのUV透過率は10%以上であることが好ましい。UVインプリントをする際、通常、アクリルフィルムの表面あるいは金型表面にUV硬化樹脂を展延した後、フィルム表面を金型に密着させ、フィルム側からUVを照射させることにより、フィルム表面にUV硬化型樹脂の硬化物からなる微細形状を付与した層を形成する。この時、アクリルフィルム(I)の透過率が10%以上の場合には、アクリルフィルム側からUVを照射した場合に、UV硬化樹脂を硬化させることができる。より好ましくはUV透過率が50%以上、最も好ましくは70%以上である。

(アクリル樹脂組成物(C))
アクリル樹脂組成物(C)は、アクリル樹脂(A)0〜80質量%とゴム含有重合体(B)20〜100質量%を含有するものであることが好ましい。ゴム含有重合体の量が少なすぎると、引張強度が低下し連続的にUVインプリントすることが困難になる。また、動的粘弾性の損失係数tanδの値が大きくなり、UV硬化樹脂との密着性が低下する傾向にある。さらに、アクリルフィルムの表面にスクラッチブラストをする際に、フィルムが欠けたり、割れたりする可能性がある。

(アクリル樹脂(A))
アクリル樹脂(A)は、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレートを50〜100質量%と、これと共重合可能な他のビニル単量体に由来する単位0〜50質量%(これら構成単位の合計100質量%)と、からなるホモポリマーあるいはコポリマーである。
【0017】
炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレートとしては、メチルメタクリレートが最も好ましい。
【0018】
コポリマーとする場合、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレートと共重合可能な他のビニル単量体としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、プロピルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレート;ブチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルメタクリレート等のアルキルメタクリレート;スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルシアン化合物等が挙げられる。
【0019】
上記のアルキルメタクリレート、アルキルアクリレート、またはこれら以外の単量体は、必要に応じてそれらを2種以上用いることができる。
【0020】
アクリル樹脂(A)は、先に述べた単量体成分を、通常公知の懸濁重合法、乳化重合法、塊状重合法等の方法により重合させることにより製造することができる。
【0021】
アクリル樹脂(A)は、三菱レイヨン(株)製「ダイヤナールBRシリーズ」、三菱レイヨン(株)製「アクリペット」として工業的に入手可能である。

(ゴム含有重合体(B))
本発明で使用するゴム含有重合体(B)は2段以上で重合されれば良く、3段で重合されても4段で重合されても良い。例えば、特開2008−208197号公報、特開2007−327039号公報、特開2006−289672号公報等に掲載されているようなゴム含有重合体が挙げられる。
なお、本発明において「ゴム重合体」とは、重合体を構成する単量体または単量体混合物のガラス転移温度(Tg)が25℃未満の重合体を指す。Tgは、ポリマーハンドブック[Polymer HandBook(J.Brandrup、Interscience、1989)]に記載されている値を用いてFOXの式から算出することができる。
本発明のゴム含有重合体(B)の具体例として、下記重合体(B−I)を挙げる。重合体(I)は、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート及び/または炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート及びグラフト交叉剤を少なくとも構成成分としてなる単量体(I−A)を重合して得られたゴム重合体の存在下に、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレートを少なくとも構成成分としてなる単量体(I−B)を重合して得られた重合体である。ここで、それぞれの単量体(I−A)、(I−B)は、重合する際に、一括で重合することもできるし、2段階以上に分けて重合することもできる。
また、本発明のゴム含有重合体(B)の具体例として、下記重合体(B−II)を挙げる。重合体(B−II)とは、(1)炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート及び/または炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート及びグラフト交叉剤を少なくとも構成成分としてなる単量体(II−A)を重合して得られた重合体の存在下、(2)炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート及び/または炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート及びグラフト交叉剤を少なくとも構成成分としてなる、単量体(II−A)とは異なる組成の単量体(II−B)を重合してゴム重合体を得て、その存在下に(3)炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレートを少なくとも構成成分としてなる単量体(II−C)を重合して得られた重合体である。
【0022】
さらに、本発明のゴム含有重合体(B)の具体例として、下記重合体(B−III)を挙げる。重合体(B−III)は、(1)炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート及び/または炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート及びグラフト交叉剤を少なくとも構成成分としてなる単量体(III−A)を重合して重合体を得、その存在下、(2)炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート及びグラフト交叉剤を少なくとも構成成分としてなる単量体(III−B)を重合してゴム重合体を得、その存在下で(3)炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート及び/または炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート及びグラフト交叉剤を少なくとも構成成分としてなる単量体(III−C)を重合し、さらに(4)炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレートを少なくとも構成成分としてなる単量体(III−D)を重合して得られた重合体である。
【0023】
本発明のゴム含有重合体(B)は、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート、炭素数1〜4のアルキルメタクリレートとともに、必要に応じて、これと共重合可能なビニル単量体、多官能性単量体を使用することもできる。ここで、UV光によるゴム重合体の劣化を低減させるために、スチレン、アルキル置換スチレン等のベンゼン環を含まないものが好ましい。
【0024】
本発明に用いられるゴム含有重合体(B)において、使用されるアルキルメタクリレート50質量%以上を含有する単量体または単量体混合物の量は、アクリルフィルムの引張強度の観点からゴム重合体100質量部に対し、60質量部以上であることが好ましい。60質量部未満の場合、ゴム含有重合体(B)の分散性が低下し、得られるアクリルフィルムの透明性が低下する傾向にある。より好ましくは100質量部以上、さらに好ましくは150質量部以上である。また、その上限は、連続UVインプリントする際に必要となる引張強度の観点から400質量部以下である。
【0025】
ここで、本発明に用いられるゴム含有重合体(B)においては、その中に含有される各段の単量体または単量体混合物の屈折率差が0.05以下であることが好ましい。より好ましくは0.03以下である。屈折率差が0.05以下になるように、各段を形成する単量体の種類及び質量%を選択することにより、透明性が高いアクリルフィルムを得ることができる。例えば、3段重合体の場合、各段の単量体の屈折率をna、nb、ncとした場合、na−ncの絶対値、nb−ncの絶対値、na−nbの絶対値が0.02以下であることが好ましい。
なお、ここで言う屈折率は、「POLYMER HANDBOOK」(Wiley Interscience社)に記載されている、20℃におけるホモポリマーの屈折率の値(ポリメチルメタクリレート1.489、ポリn−ブチルアクリレート1.466、ポリスチレン1.591、ポリメチルアクリレート1.476等)を用いた。また、共重合体の屈折率についてはその体積比率により算出することができる。その際に用いる比重は、ポリメチルメタクリレート0.9360、ポリn−ブチルアクリレート0.8998、ポリスチレン0.9060、ポリメチルアクリレート0.9564等である。

(ゴム含有重合体(B)の製造方法)
ゴム含有重合体(B)の製造法としては逐次多段重合法が最も適した重合法である。製造は、特にこれに制限されることはなく、例えば、乳化重合後、それぞれの重合体の重合時に懸濁重合系に転換させる乳化懸濁重合法によっても行うことができる。
【0026】
乳化液を調製する際に使用される界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系またはノニオン系の界面活性剤が使用でき、特にアニオン系の界面活性剤が好ましい。アニオン系界面活性剤としては、ロジン石鹸;オレイン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、N−ラウロイルザルコシン酸ナトリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム系等のカルボン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩;ジオクチルスルフォコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム系等のスルホン酸塩;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸ナトリウム系等のリン酸エステル塩;ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸ナトリウム系等のリン酸エステル塩等が挙げられる。このうち、特に昨今問題となっている内分泌かく乱化学物質からの生態系保全の点から、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸ナトリウム系等のリン酸エステル塩が好ましい。
【0027】
上記界面活性剤の好ましい具体例としては、三洋化成工業社製の「NC−718」、東邦化学工業社製の「フォスファノールLS−529」、「フォスファノールRS−610NA」、「フォスファノールRS−620NA」、「フォスファノールRS−630NA」、「フォスファノールRS−640NA」、「フォスファノールRS−650NA」、「フォスファノールRS−660NA」、花王社製の「ラテムルP−0404」、「ラテムルP−0405」、「ラテムルP−0406」、「ラテムルP−0407」等(いずれも商品名)が挙げられる。
【0028】
また、乳化液を調製する方法としては、水中に単量体を仕込んだ後、界面活性剤を投入する方法、水中に界面活性剤を仕込んだ後、単量体を投入する方法、単量体中に界面活性剤を仕込んだ後、水を投入する方法等が挙げられる。このうち、水中に単量体を仕込んだ後界面活性剤を投入する方法、及び水中に界面活性剤を仕込んだ後単量体を投入する方法がゴム含有重合体(B)を得る方法としては好ましい。
【0029】
また、ゴム含有重合体(B)を構成する第一段目の重合体を与える単量体を、水及び界面活性剤と混合して調製した乳化液を調製するための混合装置としては、攪拌翼を備えた攪拌機;ホモジナイザー、ホモミキサー等の各種強制乳化装置;膜乳化装置等が挙げられる。
【0030】
また、調製する乳化液としては、W/O型、O/W型のいずれの分散構造でもよく、特に水中に単量体の油滴が分散したO/W型で、分散相の油滴の直径が100μm以下であることが好ましい。
【0031】
使用する重合開始剤としては、公知のものが使用できる。その添加方法は、水相、単量体相のいずれか片方、または双方に添加する方法を採用できる。特に好ましい重合開始剤としては、過酸化物、アゾ系開始剤、または酸化剤・還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤が挙げられる。この中でさらにレドックス系開始剤が好ましく、特に硫酸第一鉄・エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩・ロンガリット・ヒドロパーオキサイドを組み合わせたスルホキシレート系開始剤が好ましい。
【0032】
ゴム含有重合体(B)は、上述の方法で製造した重合体ラテックスからゴム含有重合体を回収することによって製造することができる。重合体ラテックスからゴム含有重合体(B)を回収する方法としては特に限定されないが、塩析または酸析凝固、あるいは噴霧乾燥、凍結乾燥等の方法が挙げられ、粉状で回収される。

(ゴム含有重合体(B)の粒子径)
本発明のゴム含有重合体(B)の質量平均粒子径は、0.01〜0.5μmである。光学用アクリルフィルムの透明性の観点から、好ましくは0.3μm以下、より好ましくは0.15μm以下である。

(助剤)
本発明で用いられる樹脂組成物(C)は、必要に応じて一般の配合剤、例えば、紫外線吸収剤、安定剤、滑剤、加工助剤、可塑剤、耐衝撃助剤または離型剤等を含むことができる。ただし、紫外線吸収剤に関しては、アクリルフィルムの365nmでのUV透過率が10%以上になる範囲で含むことが好ましい。

(コンパウンド)
配合剤の添加方法としては、本発明の光学用アクリルフィルムを成形する際に、成形機に樹脂組成物(C)とともに供給する方法と、予め樹脂組成物(C)に配合剤を添加した混合物を各種混練機にて混練混合する方法がある。後者の方法に使用する混練機としては、通常の単軸押出機、二軸押出機、バンバリミキサー、ロール混練機等が挙げられる。

(アクリルフィルムの製造方法)
本発明の光学用アクリルフィルムを製造する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、公知の溶融流延法、Tダイ法、インフレーション法等の溶融押出法等が挙げられる、このうち経済性の点でTダイ法がもっとも好ましい。
【0033】
アクリルフィルムの厚さは、フィルム物性の点で10〜500μmが好ましい。アクリルフィルムの厚さが10〜500μmであると、適度な剛性となるため、ロール・トゥ・ロール方法によるUVインプリントが容易となり、さらに製膜性が安定してフィルムの製造が容易となる。アクリルフィルムの厚さは、15〜400μmがより好ましく、20〜300μmがさらに好ましい。

(UVインプリント方法)
UVインプリント方法とは、UV硬化型樹脂を用いて微細形状を付与する方法である。例えば、微細構造を有する金型を用い、アクリルフィルムの表面あるいは金型表面にUV硬化樹脂を展延した後、フィルム表面を金型に密着させ、フィルム側からUV線を照射させることにより、フィルム表面にUV硬化型樹脂の硬化物からなる微細形状を付与した層を形成する。この金型は、平板状のものを用いても良いし、ロール状のものを用いても良い。一連の工程を連続的に行うには、ロール状の金型を用いることが好ましい。
【0034】
UV硬化型樹脂は、特に限定されないが、アクリル系のものが用いられ、UV線照射によりラジカル種を発生する光重合開始剤を添加して使用するのが良い。液晶表示装置(LCD)等の光学分野で用いられる拡散フィルム、反射防止フィルムなどは、高い光学性能を必要とすることから、可視光波長(380〜800nm)に吸収の少ないアクリル系の硬化樹脂を用いることが好ましい。
【0035】
UVインプリントで用いる金型形状は、アクリルフィルムの形状に相応する反転形状のパターンを金型に有する。形状としては、ナノ〜ミクロンサイズのもので、例えば、プリズムパターン、ドットパターン、モスアイパターン等が挙げられる。
【実施例】
【0036】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中の「部」は「質量部」を、を表す。また、参考例中の略号は以下のとおりである。
メチルメタクリレート:MMA
メチルアクリレート:MA
n−ブチルアクリレート:BA
スチレン:St
アリルメタクリレート:AMA
1,3−ブチレングリコールジメタクリレート:BD
t−ブチルハイドロパーオキサイド:tBH
クメンハイドロパーオキサイド:CHP
n−オクチルメルカプタン:nOM
乳化剤(1):モノ−n−ドデシルオキシテトラオキシエチレンリン酸ナトリウム[商品名;フォスファノールRS−610NA、東邦化学(株)製]
乳化剤(2):モノ(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)リン酸40質量%とジ(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)リン酸60質量%との混合物の水酸化ナトリウム部分中和物[商品名;フォスファノールLO529、東邦化学(株)製]

また、実施例及び比較例において調製したゴム含有重合体(B)の評価、アクリルフィルム(I)、凹凸形状を付与したアクリルフィルムの諸物性の測定は、以下の試験法により実施した。

(1)ゴム含有重合体(B)の重量平均粒子径
乳化重合にて得られたゴム含有重合体(B)のポリマーラテックスを大塚電子(株)製の光散乱光度計DLS−700を用い、動的光散乱法で測定して求めた。

(2)アクリルフィルム(I)の動的粘弾性
JIS K7244−4に準拠して、測定周波数0.1Hzの条件で損失係数tanδを測定した。

(3)アクリルフィルム(I)の全光線透過率
JIS K7361−1に準拠して測定した。

(4)アクリルフィルム(I)のヘイズ
JIS K7136に準拠して測定した。

(5)アクリルフィルム(I)のUV透過率
紫外線可視分光光度計V−630(日本分光(株)社製)にて200nm〜400nmの透過率を測定した。

(6)アクリルフィルム(I)の耐熱性試験
JIS K7133に準拠して、加熱温度100℃、加熱時間10分間の加熱寸法変化を測定した。なお、加熱寸法変化の評価を以下の基準で示した。
【0037】
○;寸法変化が1%未満
×;寸法変化が1%以上

(7)凹凸形状を付与したアクリルフィルムのヘイズ
JIS K7136に準拠して測定した。
【0038】
なお、ヘイズ差は、凹凸形状を付与したアクリルフィルムのヘイズから凹凸形状を付与する前のアクリルフィルムのヘイズを差し引いくことにより求めた。

(8)凹凸形状を付与したアクリルフィルムの引張破断伸度
JIS K6251に準拠して、試験速度50mm/minにて200μmのアクリルフィルムの破断伸度を測定した。

(9)凹凸形状を付与したアクリルフィルムの算術平均粗さRa
超深度形状測定顕微鏡VK―8500((株)キーエンス製)を用いて、10倍の対物レンズを使用し、凹凸形状を付与したアクリルフィルムの算術平均粗さRaを測定した。

(10)アクリルフィルムとUV硬化樹脂との積層体の剥離試験
JIS K5400に準拠して、1mm間隔の100格子を用いて碁盤目剥離試験を行った。

(11)アクリルフィルムとUV硬化樹脂との積層体の密着性試験
100m長のアクリルフィルムを用いて、ロール・トゥ・ロール方法のUVインプリントを行い、工程通過中にUV硬化樹脂がアクリルフィルムから剥がれるかどうかを観察した。なお、密着性の評価を以下の基準で示した。

6;工程通過中にUV硬化樹脂とアクリルフィルムの剥がれが全くない
5;工程通過中にUV硬化樹脂とアクリルフィルムの剥がれが若干あり、剥がれは全体の1%未満である
4;工程通過中にUV硬化樹脂とアクリルフィルムの剥がれが若干あり、剥がれは全体の1%以上5%未満である
3;工程通過中にUV硬化樹脂とアクリルフィルムの剥がれがややあり、剥がれは全体の5%以上10%未満である
2;工程通過中にUV硬化樹脂とアクリルフィルムの剥がれがあり、剥がれは全体の10%以上30%未満である
1;UV硬化樹脂とアクリルフィルムの剥がれが非常にあり、工程通過が困難

(実施例1)
(1)ゴム含有重合体(B−I)の調製 ;
攪拌機を備えた容器に脱イオン水10.8部を仕込んだ後、MMA0.3部、BA4.5部、BD0.2部、AMA0.05部、CHP0.025部からなる単量体混合物(Tgは−48℃)を投入し、室温下にて攪拌混合した。ついで、乳化剤(東邦化学工業(株)製:フォスファノールRS610NA)1.1部を攪拌しながら上記容器に投入し、再度攪拌を20分間継続し、乳化液を調製した。
【0039】
つぎに、冷却器付き重合容器内に脱イオン水139.2部を投入し、75℃に昇温し、さらに、イオン交換水5部にソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.20部、硫酸第一鉄0.0001部、EDTA0.0003部を加えて調製した混合物を該重合容器内に一括投入した。ついで、窒素下で攪拌しながら、乳化液を8分間にわたり該重合容器に滴下した後、15分間反応を継続させ、重合を完結させてゴム重合体を得た。
続いて、MMA1.5部、BA22.5部BD1.0部、AMA0.25部からなる単量体混合物(Tgは−48℃)をCHP0.016部とともに90分にわたり該重合容器に滴下した後、60分間反応を継続させ、ゴム重合体を得た。
【0040】
続いて、MMA6.0部、BA4.0部、AMA0.075部からなる単量体混合物(Tgは20℃)をCHP0.0125部とともに45分間にわたり該重合容器に滴下した後、60分間反応を継続させ、重合体を得た。
【0041】
ついで、MMA55.2部、BA4.8部、nOM0.192部、tBH0.075部からなる単量体混合物(Tgは84℃)を140分間にわたり該重合容器に滴下した後、60分間反応を継続させ、ゴム含有重合体(B−I)のラテックスを得た。重合後測定した質量平均粒子径は0.12μmであった。
【0042】
得られたゴム含有重合体(B−I)のラテックスを、濾材にSUS製のメッシュ(平均目開き62μm)を取り付けた振動型濾過装置を用い濾過した後、酢酸カルシウム3.5部を含む水溶液中で塩析させ、水洗回収後、乾燥し、粉体状のゴム含有重合体(B−I)を得た。

(2)アクリルフィルムの製造;
ゴム含有重合体(B−I)100部と抗酸化剤としてチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製イルガノックス1076(商品名)0.1部をヘンシェルミキサーを用いて混合し、この混合物を230℃に加熱した脱気式押出機(池貝鉄工(株)製PCM−30)に供給し、混練してペレットを得た。
上記の方法で製造したペレットを80℃で一昼夜乾燥し、この乾燥ペレットを、300mm幅のTダイを取り付けた40mmφのノンベントスクリュー型押出機(L/D=26)に供給して、200μm厚みのアクリルフィルムを作製した。その際の条件は、シリンダー温度200〜240℃、Tダイ温度250℃、冷却ロール温度85℃であった。
上記の方法で製造したアクリルフィルムのtanδのピーク温度、UV透過率、全光線透過率、耐熱性及びヘイズについての評価結果を表1に示す。

(3)アクリルフィルムへの凹凸形状付与
表面に凹凸形状を持つブラシロールを用いるスクラッチブラスト処理によって、アクリルフィルム表面を連続的に削った。凹凸形状はフィルムの流れ方向と平行に付いた。算術平均粗さRa、ヘイズ、引張伸度(MD方向、TD方向)についての評価結果を表1に示す。

(4)アクリルフィルムとUV硬化樹脂の積層体の製造(製造方法1)
温度15℃、湿度30%の条件下にて、アクリルフィルムとアクリル系UV硬化樹脂液(三菱レイヨン(株)社製 MP−107(商品名))をピッチ50m、山谷25μm(頂点角90°)のプリズム形状が刻まれている金型との間に、UV硬化樹脂を介在させ、30秒後に、アクリルフィルムの表面からUV照射してUV硬化樹脂を硬化させた。このとき、スクラッチブラスト処理をした面がUV硬化樹脂に接するようにアクリルフィルム配置し、また、高圧水銀ランプを使用し、照射量500mJ/cm(測定機器;アイグラフィックス社製 EYE UV METER)の条件下でUV照射を行った。
【0043】
アクリルフィルムとUV硬化樹脂との碁盤目剥離試験結果を表1に示す。

(5)アクリルフィルムとUV硬化樹脂の積層体の製造(製造方法2)
頂角90度のプリズム形状を連続的に基材フィルムに転写させるための溝が、側部の円周に沿って50μmピッチで多数配列された金属製のロール金型と、ゴム製ニップロールとの間に、スクラッチブラスト処理をしたアクリルフィルムを導入した。このとき、スクラッチブラスト処理された面を活性エネルギー線硬化性樹脂に接するように設置した。
アクリルフィルムが導入された状態において、UV硬化性樹脂(三菱レイヨン(株)社製 MP−107(商品名))を、ロール金型とアクリルフィルムの間に供給しながら、アクリルフィルムを約5m/minの速度で移動させた。この時、ロール金型はこれに合わせて回転しており、ロール金型とアクリルフィルムとの間に挟まれたUV硬化樹脂は、120W/cmの高圧水銀灯を光源としたUV照射装置に到達したところで、照射量約500mJ/cm(測定機器;アイグラフィックス社製 EYE UV METER)のUV照射により硬化した。UV照射による硬化後、ロール金型から離型し、積層体を得た。
【0044】
100m長の積層体を作成したところ、工程通過中に、一部UV硬化樹脂とアクリルフィルムの剥離が見られた。この評価結果を、表1に示す。

(実施例2〜4)
アクリルフィルムへのスクラッチブラスト処理の条件を変更した以外は実施例1と同様の方法で試験と行った。
これらの評価結果を、表1に示す。

(実施例5)
(1)ゴム含有重合体(B−II)の調製 ;
攪拌機を備えた容器に脱イオン水10.8部を仕込んだ後、MMA0.3部、BA4.45部、BD0.2部、AMA0.05部、CHP0.025部からなる単量体混合物(Tgは−48℃)を投入し、室温下にて攪拌混合した。ついで、乳化剤(東邦化学工業(株)製:フォスファノールRS610NA)1.3部を攪拌しながら上記容器に投入し、再度攪拌を20分間継続し、乳化液を調整した。
【0045】
つぎに、冷却器付き重合容器内に脱イオン水139.2部を投入し、75℃に昇温し、さらに、イオン交換水5部にソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.20部、硫酸第一鉄0.0001部、EDTA0.0003部を加えて調製した混合物を該重合容器に滴下した後、15分間反応を継続させ、重合を完結させてゴム重合体を得た。
【0046】
続いて、MMA9.5部、BA14.25部、BD1.0部、AMA0.25部からなる単量体混合物(Tgは−10℃)をCHP0.016部とともに90分間にわたり該重合容器に滴下した後、60分間反応を継続させ、ゴム重合体を得た。
【0047】
続いて、MMA5.96部、MA3.97部、AMA0.07部からなる単量体混合物(Tgは60℃)をCHP0.0125部とともに45分間にわたり該重合容器に滴下した後、60分間反応を継続させ、重合体を形成させた。
【0048】
ついで、MMA57部、MA3部、nOM0.264部、tBH0.075部からなる単量体混合物(Tgは99℃)を140分間にわたり該重合容器に滴下した後、60分間反応を継続させ、ゴム含有重合体(B−II)のラテックスを得た。重合後測定した質量平均粒子径は0.11μmであった。
【0049】
得られたゴム含有重合体(B−II)の重合体ラテックスを、ゴム含有重合体(B−I)と同様の方法で濾過した後、酢酸カルシウム3.5部を含む水溶液中で塩析させ、水洗回収後、乾燥し、粉体状のゴム含有重合体(B−II)を得た。

(2)アクリルフィルムの製造;
ゴム含有重合体(B−II)を75部、「アクリペットVH」を25部とした以外は実施例1と同様の方法でアクリルフィルムを得た。このアクリルフィルムのtanδのピーク温度、UV透過率、全光線透過率、耐熱性についての評価結果を下記の表1に示す。

(3)アクリルフィルムへの凹凸形状の付与及び積層体の製造
実施例1と同様の方法で、アクリルフィルムへの凹凸形状の付与、積層体の製造及び試験を行った。
【0050】
これらの評価結果を表1に示す。

(比較例1)
アクリルフィルムにスクラッチブラスト処理しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法で、積層体を製造し、試験を行った。
これらの評価結果を、表1に示す。
【0051】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、UV硬化樹脂との密着性に優れ、かつ耐光性に優れたUVインプリント用アクリルフィルムを提供し、したがってそのフィルムにUV硬化樹脂が積層された積層体は光学性能に優れ、かつ効率的に生産することが可能になり、産業上有用である。
【0053】
特に積層体は、薄型の液晶ディスプレイ、フラットパネルディスプレイ、プラズマディスプレイ、携帯電話ディスプレイ、携帯電話キーパッド照明、パソコンキーボード照明、その他看板などに用いられる導光板に適用できる。
【0054】
また、導光板用途の他に、電気・電子部品、光学フィルター、自動車部品、機械機構部品、OA機器・家電機器などのハウジングおよびそれらの部品類、一般雑貨など、透明性が要求される種々の分野に適用可能である。具体的には、フレネルレンズ、偏光フィルム、偏光子保護フィルム、位相差フィルム、光拡散フィルム、視野角拡大フィルム、反射フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、輝度向上フィルム、プリズムシート、マイクロレンズアレイ、タッチパネル用導電フィルム、道路標識などに用いられる反射材などに適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリルフィルム(I)の少なくとも一方の表面に凹凸形状が付与され、かつヘイズが1%以上であるUVインプリント用アクリルフィルム。
【請求項2】
アクリルフィルム(I)の全光線透過率が90%以上、ヘイズが2%以下及び365nmでのUV透過率が10%以上である請求項1のUVインプリント用アクリルフィルム。
【請求項3】
アクリルフィルム(I)のJIS K7244−4に準拠して測定した動的粘弾性の損失係数tanδのピーク温度が80℃〜110℃の範囲にある請求項1または2記載のUVインプリント用アクリルフィルム
【請求項4】
JIS K6251に準拠して測定した引張破断伸度が5%以上である請求項1〜3記載のUVインプリント用アクリルフィルム
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のUVインプリント用アクリルフィルムの凹凸形状が付与された面にUV硬化樹脂が積層された積層体
【請求項6】
光学フィルムである請求項5記載の積層体
【請求項7】
アクリルフィルム(I)にスクラッチブラストすることにより請求項1記載のUVインプリント用アクリルフィルムを製造する方法
【請求項8】
アクリルフィルム(I)の少なくとも一方の表面に凹凸形状を付与し、凹凸形状を付与した後のフィルムのヘイズと凹凸形状を付与する前のフィルムのヘイズとの差が1%以上であるUVインプリント用アクリルフィルムを製造する方法。

【公開番号】特開2010−196026(P2010−196026A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46124(P2009−46124)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】