説明

UV変性の水不溶性殺生物剤の送達用の安定な水性懸濁濃縮物

1種以上のアニオン重合分散剤と、任意に複素環式ビニルラクタムの好ましくはホモポリマーおよび/またはコポリマーである共分散剤とを好ましくは0.1:1〜1:0.1の重量比で具える固体ポリマー分散剤と、UV変性の水不溶性殺生物活性剤と、該活性剤を保管および/または太陽光もしくはUV放射線への暴露において安定化するためのUV遮断剤またはUV吸収剤とを含む安定な水性懸濁濃縮物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水不溶性活性化学薬品用の送達システムに関し、より詳しくは、UV変性、水不溶性殺生物活性濃縮物を太陽光とUV放射線の分解作用に対し安定化させるための該濃縮物の安定な水性懸濁濃縮物に関する。
【背景技術】
【0002】
数多くの送達システムおよび製剤が、ヨードプロパルギルブチルカルバメート(IPBC)のようなほぼ水不溶性の殺生物活性化学薬品の水性懸濁液を提供するために提案されている。たとえば、特許文献1にはハロプロパルギル化合物と、部分加水分解ポリビニルアルコールとの水性分散液が開示されている。しかし、かかる活性分散液は、保管および/またはUV放射線への暴露による分解に対し非常に影響を受けやすい。特に、IPBCの分解は、通常黄色または茶色の副生成物の形成をもたらす。すなわち、当該組成物は抗菌性保護を要する特定のシステム、特に白色水性塗料での使用に不適当である。
【0003】
特許文献2〜6に示されるように、例えば液体溶媒中でUV吸収体および/または有機エポキシドを用いてIPBC含有殺生物組成物を安定化するための種々の方法および組成物が開示されている。特許文献7には、IPBC安定化のために種々のグリコールキャリアの使用が教示されている。しかしながら、これら文献のいずれも、UV放射線への暴露で黄変がない水性分散液として安定なIPBC組成物を提供するものではない。
【0004】
特許文献8には、水不溶性農業用活性化学薬品用の分散剤として、部分中和アルキルビニルエーテル−マレイン酸半エステルコポリマーの使用が開示されている。特許文献9には、アニオン重合懸濁剤と複素環式ビニルラクタムのホモおよび/またはコポリマーとの混合物を含有する水不溶性化学薬品用の水性懸濁濃縮物が開示されている。
【特許文献1】米国特許第6,506,794号明細書
【特許文献2】米国特許第4,276,211号明細書
【特許文献3】米国特許第4,552,885号明細書
【特許文献4】米国特許第5,938,825号明細書
【特許文献5】米国特許第6,059,991号明細書
【特許文献6】米国特許第6,140,370号明細書
【特許文献7】米国特許第6,616,740号明細書
【特許文献8】米国特許第6,156,803号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2004/0024099号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、製剤中へ及び基材上に安定化形態でUV変性殺生物活性剤の送達用の該活性剤の安定な水性懸濁濃縮物を提供することにある。
【0006】
本発明の特定の目的は、生物活性を保持しながら、保管および/または太陽光またはUV放射線への暴露による分解や着色を実質的に受けないような安定な濃縮物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示するのは安定な水性懸濁濃縮物であり、これは1種以上のアニオン重合分散剤と、任意に複素環式ビニルラクタムの好ましくはホモポリマーおよび/またはコポリマーである共分散剤とを好ましくは0.1:1〜1:0.1の重量比で具える固体ポリマー分散剤と、UV変性の水不溶性殺生物活性剤と、該活性剤を保管および/または太陽光もしくはUV放射線への暴露において安定化するためのUV遮断剤またはUV吸収剤とを含む。
【0008】
前記安定な水性懸濁濃縮物は、防黴剤または防腐剤である殺生物剤を含むのが好ましい。
【0009】
前記殺生物剤は、ハロプロパルギル化合物、イソチアゾロン、トリアゾール、フタルイミド、カルバミン酸ベンズイミダゾールまたはテトラクロロイソフタロニトリルであるのが最も好ましく;特に、ヨードプロパルギルブチルカルバメート(IPBC)、ベンズイソチアゾロン(BIT)、プロピコナゾール、N−(トリクロロメチルチオ)フタルイミド、メチルベンズイミダゾール−2−イルカルバメートまたはテトラクロロイソフタロニトリルである。
【0010】
前記UV遮断剤または吸収剤は、二酸化チタン、酸化亜鉛、スチルベン類、UV遮断無機物およびその混合物であるのが適している。前記UV吸収剤は、好適な置換基を有する芳香族酸または脂肪酸のエステル、芳香族ケトン、トリアジン類とすることができ、これらは通常市販されている。
【0011】
本発明の一実施態様において、安定な水性懸濁濃縮物は、ビニルピロリドンのホモポリマーまたはコポリマーを備える共分散剤、およびメチルビニルエーテル−マレイン酸半エステルのイオン誘導体であるアニオン分散剤を含有する。
【0012】
本発明の特徴は、前記懸濁濃縮物が50℃で30日間の保管による分解を本質的に示さず、また太陽光またはUV放射線への暴露による変色または黄変を実質的に示さないことである。
【0013】
本発明は、さらに、前記安定な水性懸濁濃縮物を含む組成物、たとえば塗料組成物;または塗膜組成物、コンクリート、レンガ、アスファルト、砂利、金属等のような建築材料;若しくはパーソナルケア組成物を備える。
【0014】
本発明の他の特徴は、前述した懸濁濃縮物だけで被覆した基材を備える物品、たとえば基材が木材である物品の提供である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の固体重合分散剤組成物における主要な分散剤は、アルキルビニルエーテル/マレイン酸半エステルコポリマーのナトリウム塩(登録商標:Easy-Sperse)(ISP社)、リグノスルフォネートまたはこれらの金属塩、たとえばPOLYFON(登録商標)またはREAX(登録商標)(Westvaco社);スルホン化ナフタレン/ホルムアルデヒド凝縮物、たとえばMORWET(登録商標)(Witco社);UFOXANE(登録商標)またはMARESPERSE(登録商標)(Lignotech社);α−オレフィン/マレイン酸コポリマー、色素親和性基を有する高分子量ブロックコポリマー、たとえばDISPERBYCK(BYK Chemie社)または疎水性化合物を水に分散し得るポリアクリレート、およびそれらの混合物のようなアニオン重合分散剤である。アニオンポリマーのモノマーは、繰り返し単位モル当たり1〜4個のアニオン部位を含むのが望ましい。
【0016】
本発明の組成物における任意の共分散剤はビニルラクタムであり、これは環上もしくはビニル基において低アルキル(C1〜C4アルキル)で任意に置換されたビニルピロリドンまたはビニルカプロラクタムのホモポリマーか、あるいはこれらホモポリマーの混合物であるのが適している。或いはまた、共分散剤は、ビニルピロリドンおよび/またはビニルカプロラクタムのコポリマー、たとえばビニルピロリドン/ビニルカプロラクタムコポリマー、ビニルピロリドン/酢酸ビニル、ビニルピロリドン/アクリル酸、ビニルピロリドン/アクリレート、ビニルピロリドンおよびブタン、またはビニルピロリドンおよびC14−C24のα−オレフィンとすることができる。前記ビニルラクタム共分散剤は一般に、約10〜約120のフィケンチャーのK値に一致する約5,000〜約100,000の重量平均分子量を有する。共分散剤は、天然に存在するケイ酸塩、アタクレイ、ベントナイト、珪藻土及びモンモリロナイトから選択した粘土であってもよい。固体分散剤混合物において、前記ラクタムポリマーが活性水不溶性成分の少なくとも一部に巻きつき、表面を覆って、該不溶活性成分に固有な疎水特性を保持しながらその表面疎水性を減じることができる。また、前記ラクタム被覆物が主分散剤のアニオンと協働して優れた安定性の組成物を提供し、他の方法では懸濁しない異種の疎水性種用の高荷重活性組成物を可能にすることができる。本発明の固体混合物における共分散剤ラクタムポリマーの使用は、刺激特性および/または発泡性を減じる主アニオン重合分散剤成分の低濃度の使用を可能とする。また、該固体混合物におけるラクタムポリマーの存在は、いくつもの他の不相溶なアニオン重合分散剤の使用を可能にする。
【0017】
本発明に係る組成物の活性成分は、粒状の実質的に水不溶性UV変性殺生物化合物若しくは疎水性化合物又はかかる化合物の混合物であり、好ましくはハロプロパルギル化合物、イソチアゾロン、トリアゾール、フタルイミド、カルバミン酸ベンズイミダゾール、テトラクロロイソフタロニトリル等のような殺生物剤である。
【0018】
これら殺生物剤化合物のいくつかは、塗料、木材、パーソナルケア製剤のような製品に使用したときに、特定の保管条件および/または変色を伴う太陽光またはUV放射線への暴露により顕著な分解を通常示す。
【0019】
「実質的に不溶性」という語に関しては、あらゆる実用的な目的に応じて、水中での前記化合物の溶解性が、化合物の生体利用性を向上させるか、または過剰量の溶媒の使用を回避するように、水中での溶解性または分散性のいずれかを増強するためにいくらかの変更をすることなく、スプレー式やディップ式の使用において実用可能な化合物とするのに不充分であることを意味する。低い水溶性を有する化合物としては、通常、室温条件で水100グラムあたり1グラム未満の溶解性を有する化合物が挙げられる。
【0020】
代表的な「実質的に不溶性」の殺生物剤としては、ヨードプロパルギルブチルカルバメート(IPBC)、ベンズイソチアゾロン(BIT)、プロピコナゾール、N−(トリクロロメチルチオ)フタルイミド、メチルベンズイミダゾール−2−イルカルバメート、テトラクロロイソフタロニトリル、2−n−オクチル−3−イソチアゾロン、ジブロモニトリロプロピオンアミド(DBNPA)、2−(チオシアノメチルチオ)ベンゾチアゾール(TCMTB)、テブコナゾール、トリブチル安息香酸スズ、パラベン、2,5−ジメチル−N−シクロヘキシル−N−メトキシ−3−フランカルボキシアミド、5−エトキシ−3−トリクロロメチル−1,2,4−チアジアゾール、3−(2−メチルピペリジノ)プロピル3,4−ジクロロベンゾエート、N,N’−(1,4−ピペラジンジイルビス(2,2,2−トリクロロ)エチリデン)ビスホルムアミド、テトラメチルチウラムジスルフィド、0−エチル−S,S,ジフェニル−ジチオホスフェート、5,10−ジヒドロ−5,10−ジオキソナフト(2,3,9)−p−ジチイン−2,3−ジカルボニトリル、α−2−[(4−クロロフェニル)エチル]−α−(1,1−ジメチルエチル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1−エタノール3−(3,4−ジクロロフェニル)1,1−ジメチルウレア、N−トリデシル−2,6−ジメチルモルフォリンおよび4−N−ドデシル−2,6−ジメチルモルフォリンが挙げられる。
【0021】
「UV変性」の語に関しては、あらゆる実用的な目的に応じて、活性成分が自然太陽光または露光した人工光のあらゆる部分の吸収に対して影響を受けやすいことを意味する。一般に、不飽和、特に共役した部分、および芳香族または複素環式成分を含むいかなる活性成分も、最終的に変色分解または活性損失を引き起こし得るような放射線の吸収を受けるであろう。
【0022】
本発明において、UV遮断剤および/またはUV吸収剤は、放射スペクトル成分の好適な活性部分の非常に大きな変更をもたらすであろう化合物を含む。
【0023】
本発明は、環境的に使いやすく、有機溶媒および従来の乳化剤のない懸濁濃縮物を提供する。水性懸濁濃縮物は、スペクトルの活性を強化するための多数の活性成分を用いて形成することができる。該濃縮物は水で容易に希釈することができる。野外からの地下水中の高含量塩は、希釈の安定性に影響を及ぼさない。前記懸濁濃縮物は、以下に述べるように、標準的な方法によって容易に製造することができる。
【0024】
市販品Easy-Sperse(登録商標、International Specialty Products Inc.)は、本発明の固体組成物におけるアニオン重合分散剤として用いるのに適している。Easy-Sperseは、約25%の固形分と約6,000cpsの粘度を有するメチルビニルエーテル/マレイン酸半エステル(エチル/ブチル)コポリマーの部分中和(NaOH)水溶液である。
【0025】
前記組成物における任意の共分散剤は、ポリビニルピロリドン(20〜40%固形分)の水溶液であるのが適している。主分散剤および共分散剤の溶液/スラリーは、これら成分の重量比が0.1:1〜1:0.1、好ましくは1:0.5〜1:5、最も好ましくは1:1〜1:4である。該溶液/スラリーは、必要に応じて水で希釈して、たとえば3,000〜6,000cpsの噴霧乾燥に特に適した粘度をもたらすことができる。次いで、前記溶液/スラリーを約300−480°Fの入口温度および150−270°Fの出口温度で適当に噴霧乾燥する。噴霧乾燥処理の製品は、UV変性の水不溶性殺生物活性剤の送達用に適した固体重合分散剤濃縮物である。しかしながら、主分散剤および共分散剤の双方とも固体として入手可能な場合、これら成分の単純な造粒だけが所望の固体濃縮物を得るために必要である。
【0026】
次いで、活性物質を適当な量で添加し、所要に応じて無水条件下で水感知活性剤用に処理し、湿潤性粉末、水分散性顆粒および錠剤のような固体送達システムにすることができる。所望により、固形物を希釈水の水性媒体中で用いて、水性または懸濁製剤にすることができる。該製剤を疎水性表面に塗布するか、又はシート上にプリントすることもできる。
【0027】
本発明の製品は、次の理由で商業上の観点から有利である。特に前記懸濁濃縮物は、50℃で30日間の保管で本質的に分解を示さず、また太陽光またはUV放射線への暴露で実質的に変色または黄変しない。
【0028】
また、本発明の固体組成物は、成分を単純に均質化し、湿式粉砕することによるか、または押出成形によって効率的に調製することができる。該組成物は、高速ミキサー中で約30分〜1時間混合することによって所望量の水で希釈することができる。
【0029】
本発明の組成物は、少なくとも1年以上安定性を保持しながら、その混合物中に90%までの活性物質を添合することができる。希釈すると、前記活性成分は懸濁安定性を4時間以上保持しながら、希釈混合物中に10ppm〜50%の濃度を有することができる。アニオン分散剤とラクタムポリマーとの組み合わせは、どちらかの成分単独の分散能和を著しく上回るという相乗的懸濁効果を有する。
【0030】
本発明を一般的に記載すべく、好ましい実施態様、および本発明の濃縮物または製剤の従来技術との比較例を示した以下の実施例について述べる。
【実施例】
【0031】
実施例1
本発明の固体重合分散濃縮物の調製
72gのEasy-Sperse(登録商標)溶液(固形分24.8%)を176gのPVP K−30(固形分30.5%)と混合し、次いで室温で1時間均質化し、室温で一晩覆いの中で濃縮し、続いて80℃で2時間真空オーブン(10mmHg未満)で乾燥させた。生成した固体製品は、159℃のTgおよび1%未満の結合水および1:3のEasy-Sperse(登録商標)対PVPの重量比を有していた。
【0032】
実施例2
固体重合分散濃縮物の噴霧乾燥による調製
240KgのEasy-Sperse(登録商標)溶液(固形分26%)と720gのPVP K−30(固形分36.6%)とを混合して、120°Fまで加熱し、次いで600lbsの水で希釈した。生成した溶液を、410°Fの入口温度および265°Fの出口温度を有する市販噴霧乾燥器に供給した。固形物が、20メッシュのふるいを通過した粉末形状で得られた。全体で7%の(結合)水を有する700lbsの乾燥物質が得られた。Easy-Sperse(登録商標)対PVPの重量比は1:4であった。
【0033】
実施例3
重量比1:1で実施例1および2を繰り返した。同様の結果が得られた。
【0034】
実施例4
重量比1:2で実施例1および2を繰り返した。同様の結果が得られた。
【0035】
実施例5
Easy-Sperse(登録商標)溶液の代わりに固体Morwet(登録商標)D−425と、1:1の重量比の固形物を製造するPVP溶液とを用いて実施例1を繰り返した。
【0036】
実施例6
実施例5を1:3の重量比で繰り返して同様の結果を得た。
【0037】
実施例7
Morwet(登録商標)D−425の代わりに固体Reax(登録商標)100Mを用いて実施例5を繰り返し、同様の結果を得た。
【0038】
実施例8
Morwet(登録商標)D−425の代わりに固体Reax(登録商標)100Mを用いて実施例6を繰り返し、同様の結果を得た。
【0039】
実施例9
固体分散剤と殺生物活性剤との混合物
700gの商用IPBC活性剤を、V−ミキサー中で実施例2の80gの重合分散剤及び220gの市販の二酸化チタンと混合した。この予混合固体を用いて活性剤の湿潤性粉末、懸濁濃縮物、水分散性顆粒および錠剤を調製した。
【0040】
実施例10
700gの商用BIT活性剤を、V−ミキサー中で実施例2の80gの重合分散剤及び220gの市販の二酸化チタンと混合した。この予混合固体を用いて活性剤の湿潤性粉末、懸濁濃縮物、水分散性顆粒および錠剤を調製した。
【0041】
実施例11
300gの商用IPBCを、V−ミキサー中で実施例6の70gの重合分散剤/バインダー組成物及び100gの市販の二酸化チタンと混合した。この装填材料を用いて押出顆粒および錠剤を調製した。
【0042】
実施例12
実施例11の装填材料100gを水(10〜20g)と混練りすることによってペーストにし、これを最高速度の実験用最上押出機で押出した。押出し物を70℃のオーブンで8時間乾燥した。該押出し物は、0.1%〜2.0%の有用レベルIPBC濃度で水に分散することができた。
【0043】
実施例13
実施例12の押出し物50gを1.5gの架橋ポリビニルピロリドン(Polyclar(登録商標)ATF)と混合し、実験用錠剤プレス機中で粉末を2.5トンの圧力で圧搾することにより数個の錠剤を作製した。各錠剤は、約1.86gのIPBCを含有する約3gの重量であった。各錠剤を186gの水に分散させ、約10分間穏やかな攪拌を行って1%のIPBC懸濁液を生成することにより、水性懸濁液を調製した。
【0044】
実施例14
次の実施例15A〜15Dに示した殺生物剤の懸濁濃縮物を調製するのに用いる手順を下記に簡潔に記述する。
【0045】
このようにして調製した殺生物懸濁濃縮物の組成は、重量の適切および好適範囲で、活性成分:5〜50%、好ましくは10〜40%;重合分散剤:0.2〜8%、好ましくは1〜5%、UV遮断剤:0.2〜20%、好ましくは2〜10%、増粘剤:0.05〜0.4%、好ましくは0.1〜0.3%、湿潤剤:0〜1.0%、好ましくは0〜0.5%、消泡剤:0.05〜0.4%、好ましくは0.1〜0.3%、防腐剤:0〜0.5%、好ましくは0〜0.2%と、100%までの水を含む。
【0046】
一般的手順:
コールズ(Cowles)ミキサー付きの容器に所要量の約80%の水を加え、続いて湿潤剤、分散剤、UV遮断剤および活性成分を加えた。500rpmで30分間混合した。消泡剤および増粘剤を上記混合物および残余の水に加え、2000rpmでさらに30分間混合した。かかる装填材料をバスケットミルに圧送し、所定の粒径、通常約10ミクロン平均粒径(ヘグマン値(Hegman rating)6〜7)に粉砕した。
【0047】
使用した増粘剤は、通常天然ゴム、Kelzan(登録商標)のような炭水化物、Carbopol(登録商標、ポリアクリレート)のような合成高分子のような低濃度域で添加した際高い粘度を付与する市販の水溶性ポリマーである。湿潤剤は高速粉砕中の摩擦を減じるのに用いられ、通常Surfynol(登録商標)シリーズまたはN−オクチルピロリドンのような低い動的表面張力を有する低発泡有機液体である。用いる防腐剤は、例えばNuosept(登録商標)シリーズ、Karhon(登録商標)、Proxel(登録商標)等の約1〜5年間の適度な保管中に水性媒体での生体成長を制御し得る市販の登録済みの有機化合物である。
【0048】
実施例15A
約200gの市販のIPBCを用いて実施例14に記載した一般的手順によって1Kgの水性懸濁濃縮物を調製した。IPBC220gを、Easy-Sperse(登録商標)P 20 重合分散剤25g及び脱イオン水600gと混合した。この装填材料を低速のミキサーに投入し、続いて30分間高速で混合した。混合処理中、1.0gのSurfynol(登録商標)104E を1.0gのSag 30 とともに添加した。装填材料を実施例14におけるように処理した。次いで、懸濁濃縮物を別途調製した122gの1%Kelzan(登録商標)原液と混合し、続いて水の残余量(53g)を添加して22%IPBC濃縮物を作製した。
【0049】
実施例15B
酸化亜鉛50gを水とともに初期固体混合物に含め、最後に水53gの代わりに3gの補給水を用いた以外実施例15Aを繰り返した。
【0050】
実施例15C
二酸化チタンを酸化亜鉛の代わりに用いた以外実施例15Bを繰り返した。
【0051】
実施例15D
200gの代わりに400gのIPBCを、25gの代わりに40gのEasy-Sperse(登録商標)P 20を、600gの代わりに400gの初期水を、また23gの補給水を用いて実施例15Cを繰り返した。
【0052】
実施例15E
Disperbyck 190をEasy-Sperseの代わりに用いた以外実施例15Cを繰り返した。
【0053】
実施例15A、15Bおよび15Cに記載した懸濁濃縮物をUV光暴露による黄変について評価した。結果を実施例16に示す。実施例15Cおよび15Eを促進された保管安定性について評価した。これらの結果を実施例17に示す。実施例15Dを塗料の添加剤として評価した。これらの結果を実施例18に示す。
【0054】
実施例16
【表1】

【0055】
実施例17
水性懸濁濃縮物のIPBCの安定性
実施例15Cおよび15Eに記載したIPBC分散剤を30日間50℃に熱老化した。生成したIPBCのレベルを逆相HPLCで決定した。試料15Cで検出されたIPBCのレベルは21.54±0.06%で、懸濁濃縮物の調整直後のゼロ時間で分析した試料と同じレベルであった。試料15Eで検出されたIPBCのレベルは20.34±0.2%で、ゼロ時間で分析した試料と同じレベルであった。
【0056】
実施例18
実施例15Dにおける40%IPBC懸濁濃縮物の効果を、「塗膜の抵抗および関連する4週間発達促進した寒天プレートによる菌汚損への塗膜の測定」と題されるASTM D5590に従って、強度が同程度の市販のIPBC製剤と比較した。結果を表2に示す。成長の評価を7日ごとに0〜10の尺度で行い、「0」は菌成長の完全な欠如に相当し、「10」は菌による完全な被覆に相当する。混合された接種菌液は、黒色アスペルギルス菌(Aspergillus niger)および青かび(Penicillium funiculosum)を含んでいた。
【0057】
【表2】

【0058】
実施例19
1Kgの水性懸濁濃縮物を実施例15Cの手順に従って、BITで調製した。
【0059】
実施例20
実施例19に記載したBIT分散剤の効果を、「微生物による攻撃に対する容器内の乳濁塗料の抵抗」と題されるASTM D2574に従って、同様の強度の市販BIT製剤と比較した。結果を表3に示す。成長の評価を1、2、3、および6日後に行い、各バクテリア試料において、尺度「1」は10cfu/ml未満、「2」は11〜100cfu/ml、「3」は101〜1,000cfu/mlおよび「4」は1,000cfu/mlを超える。混合されたバクテリア接種菌液は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、エンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae)、枯草菌(Bacillus subtilis)、巨大菌(Bacillus megaterium)およびバチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)からなる。試料Iの最終濃度は1.52×106cfu/mlおよび試料IIは1.56×107cfu/mlであった。
【0060】
【表3】

【0061】
実施例21
IPBCの代わりにプロピコナゾールを用いて実施例15を繰り返した。同様の結果が得られた。
【0062】
実施例22
1:2の重量比でIPBCとプロピコナゾールとの組み合わせを用いて実施例19を繰り返した。同様の結果が得られた。
【0063】
実施例23
IPBCの代わりにフォルペットを用いて実施例15を繰り返した。同様の結果が得られた。
【0064】
実施例24
クロロフタロニルを用いて実施例15を繰り返した。同様の結果が得られた。
【0065】
本発明は、その特定の態様への詳細な言及で記載されているが、当業者の間で変更や改良がなされるかもしれないことが理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上のアニオン重合分散剤を具える固体ポリマー分散剤と、UV変性の水不溶性殺生物活性剤と、該活性剤を保管および/または太陽光もしくはUV放射線への暴露において安定化するためのUV遮断剤またはUV吸収剤とを含むことを特徴とする安定な水性懸濁濃縮物。
【請求項2】
前記固体ポリマー分散剤が、さらに共分散剤を具える請求項1に記載の安定な水性懸濁濃縮物。
【請求項3】
前記共分散剤が、複素環式ビニルラクタムのホモポリマーおよび/またはコポリマーである請求項2に記載の安定な水性懸濁濃縮物。
【請求項4】
前記アニオン重合分散剤と前記共分散剤とが、0.1:1〜1:0.1の重量比で存在する請求項2に記載の安定な水性懸濁濃縮物。
【請求項5】
前記アニオン重合分散剤が、アルキルビニルエーテル/マレイン酸半エステルコポリマーのナトリウム塩、リグノスルフォネートまたはその金属塩、スルホン化ナフタレン/ホルムアルデヒド凝縮物、α−オレフィン/マレイン酸コポリマー、ポリアクリル酸塩およびこれらの混合物からなる群より選ばれる請求項1に記載の安定な水性懸濁濃縮物。
【請求項6】
前記殺生物活性剤が防黴剤である請求項1に記載の安定な水性懸濁濃縮物。
【請求項7】
前記殺生物活性剤が防腐剤である請求項1に記載の安定な水性懸濁濃縮物。
【請求項8】
前記防黴剤が、ハロプロパルギル化合物、イソチアゾロン、トリアゾール、フタルイミド、カルバミン酸ベンズイミダゾールまたはテトラクロロイソフタロニトリルである請求項6に記載の安定な水性懸濁濃縮物。
【請求項9】
前記殺生物活性剤が、ヨードプロパルギルブチルカルバメートである請求項1に記載の安定な水性懸濁濃縮物。
【請求項10】
前記防腐剤が、ベンズイソチアゾロンである請求項7に記載の安定な水性懸濁濃縮物。
【請求項11】
前記UV遮断剤が、二酸化チタン、酸化亜鉛、スチルベン、UV遮断無機物またはその混合物である請求項1に記載の安定な水性懸濁濃縮物。
【請求項12】
前記共分散剤が、ビニルピロリドンのホモポリマーまたはコポリマーと、メチルビニルエーテル−マレイン酸半エステルのイオン誘導体とを具える請求項2に記載の安定な水性懸濁濃縮物。
【請求項13】
前記共分散剤が、天然に存在するケイ酸塩、アタクレイ、ベントナイト、珪藻土及びモンモリロナイトから選択した粘土である請求項2に記載の安定な水性懸濁濃縮物。
【請求項14】
50℃で30日間の保管で本質的に分解を示さず、また太陽光またはUV放射線への暴露で実質的に変色または黄変しない請求項1に記載の安定な水性懸濁濃縮物。
【請求項15】
請求項1に記載の濃縮物を含有する組成物。
【請求項16】
請求項1に記載の濃縮物を含有する塗料組成物。
【請求項17】
請求項1に記載の濃縮物を含有するパーソナルケア組成物。
【請求項18】
請求項1に記載の懸濁濃縮物で被覆した基材を備える製品。
【請求項19】
前記基材が木材である請求項18に記載の製品。
【請求項20】
1種以上のアニオン重合分散剤を具える固体ポリマー分散剤と、UV変性の水不溶性殺生物活性剤と、該活性剤を保管および/または太陽光もしくはUV放射線への暴露において安定化するためのUV遮断剤またはUV吸収剤とを含むことを特徴とする安定な水分散性固体。

【公表番号】特表2009−533329(P2009−533329A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−501608(P2009−501608)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【国際出願番号】PCT/US2007/007432
【国際公開番号】WO2007/112091
【国際公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(596121138)アイエスピー インヴェストメンツ インコーポレイテッド (24)
【氏名又は名称原語表記】ISP INVESTMENTS INC.
【Fターム(参考)】