UV安定化されたタンパク質−ポリマー組成物
【課題】ポリマーコーティング及び物質中に酵素を安定化するための組成物及び方法の提供。
【解決手段】タンパク質−ポリマー組成物及びそれらの製造方法が提供される。ここで、当該組成物は、紫外光により誘発される風化や関連する酵素活性の低下に対する改善された抵抗性を有する。立体障害のあるアミンと紫外光吸収剤の両方を少なくとも5質量%の濃度で組み込むことによって、UV安定化酵素活性を有する硬化性の又は硬化した組成物が生じ、当該組成物を、改善された汚れ除去特性を有する生物活性コーティングとして使用できる。
【解決手段】タンパク質−ポリマー組成物及びそれらの製造方法が提供される。ここで、当該組成物は、紫外光により誘発される風化や関連する酵素活性の低下に対する改善された抵抗性を有する。立体障害のあるアミンと紫外光吸収剤の両方を少なくとも5質量%の濃度で組み込むことによって、UV安定化酵素活性を有する硬化性の又は硬化した組成物が生じ、当該組成物を、改善された汚れ除去特性を有する生物活性コーティングとして使用できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、活性物質を含むコーティング組成物及び紫外(UV)線による風化作用(weathering)から活性物質を保護するための方法に関する。具体的な実施態様において、本発明は、ポリマーコーティング及び基材中に酵素を安定化するための組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの屋外表面は、例えば鳥の排泄物、樹脂及び昆虫の体などの天然源に由来する汚れ(stain)や傷害(insult)を被ることがある。その結果、汚れは、しばしば、製品の外観を悪化させる不快な跡を表面に残す。これらの傷害は、例えば、汚れの存在を除去するのが困難で、運転者の視界が減少するために潜在的に危険なボディパネルやガラスなどの自動車の表面で特に邪魔である。
【0003】
セルフクリーニングコーティングは、表面上の汚染を防止する1つの方法として提案されている。伝統的なセルフクリーニングコーティング及び表面は、典型的には、無機物質を運び去るための水の転動及び広がりに基づく。これらは、無機汚れを除去することについてある程度の効果を示すが、コーティングの表面下に深く拡散しうる様々なタイプの有機ポリマー、脂肪、油及びタンパク質から成る生物源に由来する汚れをクリーニングする効果は低い。先行技術のアプローチは、適切なナノコンポジットを含むポリマーコーティングにより表面に疎水性、疎油性及び超両疎媒性が付与される「ロータス(lotus)効果」を利用して、表面への汚れの付着を減らし、その除去を促進することを目的とする。1つの代表的なコーティングは、良好なロールオフ特性と非常に高い水と油の接触角を有するフッ素とケイ素のナノコンポジットを含む。サンドブラストガラスのような粗い表面に対して使用された場合、ナノコーティングはフィラーとして機能して耐汚染性をもたらすことができる。これらの「消極的」技術の欠点は、ロータス効果が表面粗さに基づくため、それらが高光沢表面での使用に最適でないということである。
【0004】
光触媒コーティングは、有機汚れのセルフクリーニングを促進するのに有望である。太陽光への暴露によって、TiO2などの光触媒は、有機汚れを化学的に分解し、分解された有機汚れは、その後、超親水性表面上に形成された水シートによって洗い流される。一例として、光触媒TiO2が、米国特許出願公開第2009/104086号明細書において、指紋の積極的分解を促進するために使用された。この技術の主な欠点は、TiO2によるポリマーコーティングの酸化減損のために無機表面に使用することが限られていることである。この技術も、適合性に関する問題、すなわちTiO2が汚れだけでなく塗装中のポリマー樹脂も酸化するという問題から、自動車コーティングに対して最適とは言えない。
【0005】
酵素含有コーティングは、特に、例えば虫汚れや鳥の糞などの生物的汚れ物質を対象とすることができる。しかし、ポリマーベースの酵素含有コーティングは、風化によるポリマーの分解を被り、先行技術は、ポリマー材料自体の構造における光分解反応、光酸化反応又は他の開裂生成化学反応をもたらす。環境傷害(environmental insults)の結果、色の変化、チョーキング、コーティング層の分離、亀裂生成、又は光沢の減少が生じる。これらの反応は、一般的に、過酷な環境における継続的使用の長い時間スケールで起こる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、表面上又はコーティング中の有機汚れの長期的な積極的除去を積極的に促進し、メンテナンスクリーニングの必要性を最小限に抑えることができる新規な材料やコーティングが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明についての以下の概要は、本発明に特有の革新的な特徴のいくつかの理解を容易にするために提示するもので、完全な説明を意図しない。本発明の様々な形態の完全な理解は、明細書全体、特許請求の範囲、図面及び要約書を理解することにより得られるであろう。
【0008】
紫外線によりもたらされる風化に対する酵素の安定性が改善されたタンパク質−ポリマー組成物が提供される。組成物は、ポリマー樹脂、架橋剤、生物活性酵素、少なくとも2種の紫外光安定剤を含む。少なくとも1種の光安定剤は、立体障害のあるアミンであり、少なくとも1種の光安定剤は紫外線(UV)吸収剤である。UV吸収剤は5質量%を超える濃度で存在する。
【0009】
立体障害のあるアミンは、必要に応じて1質量%で存在することができる。いくつかの実施態様は、立体障害のあるアミンとして2,4−ビス[N−ブチル−N−(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ]−6−(2−ヒドロキシエチルアミン)−1,3,5−トリアジンが挙げられる。UV吸収剤も含まれる。予期せず、立体障害のあるアミンの存在が、タンパク質−ポリマー組成物に組み込まれた場合に、UV吸収剤とともに相乗的に機能して酵素機能を保護する。いくつかの実施態様において、UV吸収剤は、380nmを超える波長で10%のカットオフを有する。必要に応じて、UV吸収剤は、280ナノメートルから380ナノメートルまでの波長範囲で透過率の10%以下の帯域阻止率を有する。これは、酵素機能の最大限の保護が図られた組成物をもたらす。UV吸収剤の質量%は5%を超えるが、いくつかの実施態様は、8質量%以上の最終濃度でUV吸収剤を含む。
【0010】
ポリマー樹脂と界面活性剤と非水性有機溶剤と立体障害のあるアミンとUV吸収剤との混合物を用意する工程、ここで、UV吸収剤は、UV吸収剤が少なくとも5質量%存在する最終組成物を生じるのに十分な量で存在する;単離された生物活性酵素を含み、界面活性剤を実質的に含まない水溶液を混合物と混合してエマルジョンを生成させる工程;及びエマルジョンを架橋剤と混合して硬化性のUV安定化されたタンパク質−ポリマー組成物を生成させる工程を含む、UV安定化されたタンパク質−ポリマーコンポジット材料の製造方法も提供される。
【0011】
紫外線による風化のために活性が低下することに対して酵素を安定させるための方法も提供される。当該方法は、タンパク質が酵素であるタンパク質−ポリマー組成物に少なくとも2種の紫外光安定剤を加えることを含む。少なくとも1種の光安定剤は立体障害のあるアミンであり、少なくとも1種の光安定剤はUV吸収剤であり、UV吸収剤は5質量%を超える濃度で存在する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、コーティングの一実施態様で使用するためのタンパク質−ポリマー組成物の製造方法の概略図である。
【0013】
【図2】図2は、コーティングが様々なレベル及びタイプの耐候試験に曝される前及び後のタンパク質−ポリマーコーティングにおけるサーモリシン及びα−アミラーゼの活性を示す。
【0014】
【図3】図3は、タンパク質−ポリマー組成物の波長依存性のある酵素の感受性を示す。
【0015】
【図4】図4は、本発明の実施態様で使用されるいくつかの光安定剤の化学構造を示す。
【0016】
【図5A】図5Aは、いくつかのUV吸収剤の透過スペクトルを示す図である。
【図5B】図5Bは、いくつかのUV吸収剤の透過スペクトルを示す図である。
【図5C】図5Cは、いくつかのUV吸収剤の透過スペクトルを示す図である。
【図5D】図5Dは、いくつかのUV吸収剤の透過スペクトルを示す図である。
【0017】
【図6】図6は、酵素フリー又はα−アミラーゼを含有するポリマーコーティングにおける様々な濃度でのチヌビン400の透過スペクトルを示す。
【0018】
【図7】図7は、タンパク質−ポリマー組成物中の2種のUV吸収剤の透過スペクトルを示す。
【0019】
【図8】図8は、タンパク質−ポリマー組成物における酵素安定化についてのUV吸収剤の濃度依存性を示す。
【0020】
【図9】図9は、耐候試験前及び後の本発明の2つの実施態様に係るタンパク質−ポリマー組成物の比活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施態様についての以下の記載は、本質的に単なる例示であり、決して本発明の範囲、その用途又は使用を限定することを意図したものではない。本発明の用途又は使用はもちろん変わりうる。本発明を、本明細書に含まれる非限定的な定義及び用語との関係で説明する。これらの定義及び用語は、本発明の範囲又は実施に対する限定として機能するものではなく、たんに例示及び説明の目的で示す。
【0022】
本明細書に開示される発明は、積極的な汚れの除去を促進するか又はコーティングもしくは表面への環境もしくは生体物質の付着を防ぐために、酵素の触媒活性に基づく。先行技術は、長い時間スケールや厳しい風化条件で紫外光からポリマーコーティング自体への損傷を防ぐために、ポリマーコーティング材料に紫外線安定剤などの抗風化剤を加える。これら及び他の従来の研究者は、ポリマー材料を損傷するとは予想されない短い時間スケールでの風化は、組み込まれた酵素の活性に対して実質的に効果がないであろうと想定した。これらの想定は、コーティングが風化剤として熱にさらされた場合に組み込まれた酵素が安定であることの研究に基づく。驚くべきことに、従来技術によって行われた想定とは対照的に、本願発明者は、熱とは異なり、ポリマーコーティング又は基材に組み込まれた酵素は、コーティング自体に目に見える構造上の損傷をもたらさない紫外線に暴露された場合に、活性低下を示すことを発見した。さらに、この活性低下の原因となる紫外光の波長範囲は狭い帯域幅を有し、すべてのUV光が酵素活性の低下について等しくはない。例えば、中間紫外光及び短波長の可視光はポリマーに組み込まれた酵素の活性にほとんど影響を及ぼさないのに対し、近紫外光(280nm〜400nm)への暴露は、わずか48時間の屋外耐候試験後に70%も酵素活性を減少させる。
【0023】
特定のUV保護剤を含むタンパク質含有ポリマーコーティング又は基材が提供される。タンパク質は、コーティング又は基材の中又は上に固定化され、生物又は環境汚れ成分のより小さい分子への分解を触媒する。生成物の分子は、表面又はコーティングに対する付着性の強さがより低く、水、空気、又は他の流体で穏やかにすすぐことにより、表面又はコーティングからの生体物質の除去が促進される。従って、本発明は、表面からの汚れのUV安定化活性除去のための組成物及び方法として有用性がある。
【0024】
本明細書の説明はコーティングに向けられているが、本明細書に記載の材料は、機能的な汚れ除去の促進のためにコーティングを必要としない基材又は物品であってもよい。このように、本明細書中で使用される単語「コーティング」とは、1つ以上の基材の表面上に積層のために使用可能である材料を意味するか、基材材料自体を含むことができる。本明細書に開示される方法及び組成物は、一般的に、たんに例示のためだけに、コーティングと関連付けられたタンパク質と呼ばれる。当業者は、説明は基材自体にも等しく適用可能であると理解する。
【0025】
本発明の組成物は、有機汚れの1又は2以上の成分を分解することのできる酵素活性タンパク質を含むコーティングを含む。具体的な実施態様において、有機汚れは、生物物質、例えば昆虫、場合によって昆虫の体、植物に由来するもの、または環境に由来するものに基づく。
【0026】
本明細書中で定義される生物汚れは、生物の有機汚れ、又は生物が基材もしくはコーティングに接触した後に残る残留物である。生物汚れは、コーティングが昆虫の体に接触したあとに残る跡又は残留物に限られない。生物汚れの他の供給源は、例えば、昆虫の羽、脚又は他の付属器官;鳥の排泄物;指紋又はコーティングに生物が接触した後に残る残留物;又は有機汚れの他の供給源、例えば環境などである。
【0027】
本明細書中で使用されるタンパク質とは、例えばペプチド(すなわち、アミノ酸3〜100個)、ポリペプチド(すなわち、アミノ酸101個以上)、又は天然、合成もしくは他の誘導体アミノ酸の組み合わせなどのペプチド結合を有する組成物を意味する。タンパク質は、連続的な分子配列で3個以上の長さでアミノ酸を有する分子であり、必要に応じて、生物のゲノムによってコード化された生物学的に生成するタンパク質分子の長さに応じた長さである。タンパク質の例としては、酵素、抗体、受容体、輸送タンパク質、構造タンパク質、又はそれらの組み合わせが挙げられる。タンパク質は、例えばリガンド、薬物、基質、抗原又はハプテンなどの別の物質と特異的に相互作用することが可能である。
【0028】
タンパク質は、場合によって、基質分子を変換して生成物を生成する活性を有し、酵素と呼ばれる。酵素は、場合によって、生物活性酵素である。生物活性酵素は、生物又は食品中に見出される分子中の化学結合を切断することが可能である。酵素は、必要に応じて、例えば細菌プロテアーゼ又はその類似体などのペプチド結合を切断することが可能であるプロテアーゼである。酵素として機能するタンパク質は、場合によって、単離された遺伝子によりコード化された野生型のアミノ酸配列、かかる配列の機能的等価物又はそれらの組み合わせと同一である。タンパク質は、それが自然界にある生物に見出されるタンパク質の配列と一致するアミノ酸配列を有する場合に、「野生型」として呼ばれる。タンパク質は、場合によって、野生型酵素と機能的に等価なものであると理解されており、かかる機能的に等価なものとしては、例えば野生型タンパク質の配列及び/又は構造の配列及び/又は構造類似体が挙げられ、酵素として機能する。機能的に等価な酵素は、野生型酵素と類似の又は同じ酵素特性、例えば野生型酵素のEC分類の化学反応を触媒する特性などを有することがあり、及び/又は他の酵素特性、例えば、配列及び/又は構造により野生型と関連する酵素の化学反応を触媒する特性などを有することがある。酵素は、酵素の野生型形態(例えば、EC分類に使用される反応)によって触媒される反応を触媒するその機能的等価物を包含する。たとえば、用語「アミラーゼ」は、反応速度の増加、反応速度の低下、基質選択性の変化、基質結合アフィニティの増加又は低下などによりその活性が変わりうるアミラーゼ活性を有するアミラーゼの任意の機能的等価物を包含する。機能的等価物の例としては、野生型酵素配列への突然変異、例えば、配列トランケーション、アミノ酸置換、アミノ酸修飾、及び/又は融合タンパクなどが挙げられ、変更された配列は酵素として機能する。
【0029】
本明細書において用語「誘導された」は、タンパク質の前駆体源を指す。タンパク質は、原始タンパク質の野生型及び/又は機能的等価物を包含することがあると理解されている。用語「誘導された」は、野生型及び機能的等価物の両方を包含する。例えば、ヒト(Homo sapiens)の酵素のコード配列は、細菌で突然変異及び組換えが起こることがあるが、その酵素は、単離されたかどうか及び/又は他の細菌の細胞物質を含むかどうかにかかわらず、ヒトから「誘導された」酵素である。別の一例では、例えば、内因性生物源から単離された野生型酵素、例えばシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)から単離されたシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)リパーゼはシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)から「誘導された」酵素である。
【0030】
いくつかの場合において、タンパク質は、様々な配列のハイブリッド、例えば哺乳類のアミラーゼと非哺乳類のアミラーゼとの融合体であり、得られたタンパク質は、両方の供給源から誘導されたものであると考えられる。タンパク質は、野生型又は機能的に等価な形態で単離、誘導又は製造することができる。
【0031】
タンパク質−ポリマー組成物の成分としてタンパク質は、必要に応じて、オキシドレダクターゼ(EC1)、トランスフェラーゼ(EC2)、ヒドロラーゼ(EC3)、リアーゼ(EC4)、イソメラーゼ(EC5)又はリガーゼ(EC6)の活性を有する酵素である。これらのカテゴリーのいずれかの酵素を、本発明の実施態様に係るタンパク質−ポリマーコンポジット材料に含めることができる。酵素として機能するタンパク質の代表例は米国特許出願公開2010/0210745号明細書に含まれており、その内容は引用により本明細書に援用する。
【0032】
いくつかの実施態様において、含まれる酵素は、ヒドロラーゼ、例えばグルコシダーゼ、プロテアーゼ又はリパーゼなどである。特定のグルコシダーゼの非限定的な例としては、アミラーゼ、キチナーゼ及びリソチームが挙げられる。特定のプロテアーゼの非限定的な例としては、トリプシン、キモトリプシン、サーモリシン、スブチリシン、パパイン、エラスターゼ及びプラスミノーゲンが挙げられる。リパーゼの非限定的な例としては、膵リパーゼとリポ蛋白リパーゼが挙げられる。
【0033】
アミラーゼはタンパク質−ポリマー組成物のいくつかの実施態様において存在する酵素である。アミラーゼはデンプンを分解する活性を有する。幾つかのタイプのアミラーゼが本発明において使用可能であり、かかるアミラーゼとしては、例えばオリゴ糖及び多糖における(1−>4)−α−D−グルコシド結合のエンドヒドロリシスをもたらすα−アミラーゼ(EC 3.2.1.1)などが挙げられる。α−アミラーゼは、例えば、枯草菌(Bacillus subtilis)に由来し、ジェンバンク(Genbank)登録番号:ACM91731で見出される配列又はその類似体を有する。一具体例は、Sigma−Aldrich Co.(ミズーリー州セントルイス)から入手可能な枯草菌に由来するα−アミラーゼである。さらなるα−アミラーゼとしては、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)(登録番号:AAA22227)、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)(登録番号:CAA31220)、ヒト(Homo sapiens)(登録番号:BAA14130)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)(登録番号:ADE44086)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)(登録番号:CAA01355)、又は他の生物、あるいはそれらの類似体から誘導されたものが挙げられる。β−アミラーゼ、γ−アミラーゼ、又は様々な生物に由来する様々な類似体は、タンパク質−ポリマー組成物で同様に使用可能であることが理解されている。
【0034】
本発明において使用可能なタンパク質の他の例としては、メタロプロテアーゼ、例えば細菌のサーモリシン様プロテアーゼのM4族を構成するものが挙げられ、当該サーモリシンはプロトタイププロテアーゼ(EC 3.4.24.27)又はその類似体である。プロテアーゼは、必要に応じて、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)(バチルス・サーモプロテオリティクス・バール・ロッコ(Bacillus thermoproteolyticus Var. Rokko))から誘導された細菌の中性サーモリシン様プロテアーゼ(TLP)(例えば、Amano Enzyme U.S.A.,Co.(イリノイ州エルジン)から商品名「Thermoase C160」として販売)、又はその類似体である。プロテアーゼは、必要に応じて、de Kreig他,J Biol Chem, 2000; 275(40): 31115-20(その内容は引用により本明細書に援用する)に掲載された任意のプロテアーゼであることができる。プロテアーゼの具体例としては、当該分野で公知のものの中でも特に、バチルス・セレウス(Bacillis cereus)(登録番号:P05806)、ラクトバチルスsp(Lactobacillis sp.)(登録番号:Q48857)、バチルス・メガテリウム(Bacillis megaterium)(登録番号:Q00891)、バチルスsp(Bacillis sp)(登録番号:Q59223)、アリシクロバチルス・アシドカルダリアウス(Alicyclobacillis acidocaldarious)(登録番号:Q43880)、バチルス・カルドリティカス(Bacillis caldolyticus)(登録番号:P23384)、バチルス・サーモプロテオリティカス(Bacillis thermoproteolyticus)(登録番号:P00800)、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)(登録番号:P43133)、枯草菌(登録番号:P06142)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)(登録番号:P06832)、リステリア・モノサイトゲネス(Lysteria monocytogenes)(登録番号:P34025、P23224)に由来するサーモリシン様プロテアーゼが挙げられる。
【0035】
本明細書に記載した各登録番号の配列は引用により本明細書に援用する。本発明において実施可能な任意のタンパク質のクローニング、発現及び精製の方法は、当該技術分野で通常実施されている方法、例えば下記文献に開示されている方法によって達成可能である:Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, 第1-3巻, Sambrook他編, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989; Current Protocols in Molecular Biology, Ausubel他編, Greene Publishing and Wiley-Interscience, New York, 1992 (定期的に更新);及び Short Protocols in Molecular Biology, Ausubel他編, 第52版, Wiley-Interscience, New York, 2002、それらの各々の内容は引用により本明細書に援用する。
【0036】
アミラーゼ酵素の具体例は、例えば、1000U/g以上のプロテアーゼ活性を有する。ここで、(1)U(単位)はZulkowskyの非タンパク質消化生成物形態ジャガイモ澱粉(例えば、190℃でグリセロールにより処理された澱粉;Ber. Deutsch. Chem. Ges, 1880; 13: 1395)をもたらす酵素の量として定義される)。例えば、プロテアーゼは1,000U/g〜500,000U/g又はそれ以上の活性を有する。より低いプロテアーゼ活性も使用可能であることが理解されている。
【0037】
タンパク質は、場合によって、1つ以上の補助因子イオン又は補助因子タンパク質と関連して機能する。補助因子イオンは、例えば、亜鉛、コバルト又はカルシウムである。
【0038】
タンパク質は、必要に応じて、野生型タンパク質の類似体である。タンパク質の類似体は、野生型タンパク質と同様の条件に置かれた場合に、同じ基質に対して、野生型酵素のある程度の活性を有するアミノ酸配列を有する。類似体は、場合によって、野生型タンパク質の活性の500%、250%、200%、150%、110%、99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、85%、80%、75%、70%、60%、50%、25%、10%、5%、又はこれらの間の任意の数値若しくはこれらの間の数値範囲を有する。類似体を生成するために野生型タンパク質に対するいかなる修飾も使用できる。具体的には、類似体を生成するために、配列又は配列の任意の構成要素に対するアミノ酸置換、付加、欠失、架橋、ジスルフィド結合の除去若しくは追加、あるいは他の変更を使用できる。類似体は、場合によって、2以上の野生型タンパク質、そのフラグメント、又はその配列類似体の配列を含む融合タンパク質である。
【0039】
タンパク質活性のスクリーニング方法は、当該技術分野で知られており、広く使用されている。具体的には、その酵素又は類似体の活性のスクリーニングは、例えば、酵素又はその類似体を酵素の天然又は合成基質に接触させること及び基質の酵素的開裂を測定することを含む。この目的のための例示的な基質としては、プロテアーゼにより開裂して、当該技術分野で知られている方法により容易に測定されるフォリン陽性アミノ酸及びペプチド(チロシンとして計算)を遊離するカゼインが挙げられる。Bachem AG(スイス国ブーベンドルフ)から得た合成基質フリルアクリロイルトリペプチド3−(2−フリルアクリロイル)−L−グリシル−L−ロイシン−L−アラニンは同様に使用可能である。α−アミラーゼの例示的な基質としては、例えば澱粉を構成するアミロース又はアミロペクチンなどの長鎖炭水化物が挙げられる。α−アミラーゼ活性の他のスクリーニング方法としては、Fischer及びStein, Biochem. Prep., 1961, 8, 27-33の比色アッセイが挙げられ、その内容は引用により本明細書に援用する。当業者は、さまざまな材料の中又は上に存在する酵素による酵素活性のスクリーニング方法を容易に思い描くことができることが理解されている。
【0040】
タンパク質又はその類似体に存在するアミノ酸は、一般的なアミノ酸であるアラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、スレオニン、バリン、トリプトファン及びチロシン;並びにあまり一般的ではない天然アミノ酸、修飾アミノ酸又はそのような合成化合物、例えばα−アスパラギン、2−アミノブタン酸又は2−アミノ酪酸、4−アミノ酪酸、2−アミノカプリン酸(2−アミノデカン酸)、6−アミノカプロン酸、α−グルタミン、2−アミノヘプタン酸、6−アミノヘキサン酸、α−アミノイソ酪酸(2−アミノアラニン)、3−アミノイソ酪酸、β−アラニン、アロ−ヒドロキシリシン、アロ−イソロイシン、4−アミノ−7−メチルヘプタン酸、4−アミノ−5−フェニルペンタン酸、2−アミノピメリン酸、γ−アミノ−β−ヒドロキシベンゼンペンタン酸、2−アミノスベリン酸、2−カルボキシアゼチジン、β−アラニン、β−アスパラギン酸、ビフェニルアラニン、3,6−ジアミノヘキサン酸、ブタン酸、シクロブチルアラニン、シクロヘキシルアラニン、シクロヘキシルグリシン、N5−アミノカルボニルオルニチン、シクロペンチルアラニン、シクロプロピルアラニン、3−スルホアラニン、2,4−ジアミノブタン酸、ジアミノプロピオン酸、2,4−ジアミノ酪酸、ジフェニルアラニン、N、N−ジメチルグリシン、ジアミノピメリン酸、2,3−ジアミノプロパン酸、S−エチルチオシステイン、N−エチルアスパラギン、N−エチルグリシン、4−アザ−フェニルアラニン、4−フルオロ−フェニルアラニン、γ−グルタミン酸、γ−カルボキシグルタミン酸、ヒドロキシ酢酸、ピログルタミン酸、ホモアルギニン、ホモシステイン酸、ホモシステイン、ホモヒスチジン、2−ヒドロキシイソバリン酸、ホモフェニルアラニン、ホモロイシン、ホモプロリン、ホモセリン、ホモセリン、2−ヒドロキシペンタン酸、5−ヒドロキシリジン、4−ヒドロキシプロリン、2−カルボキシオクタヒドロインドール、3−カルボキシイソキノリン、イソバリン、2−ヒドロキシプロパン酸(乳酸)、メルカプト酢酸、メルカプトブタン酸、サルコシン、4−メチル−3−ヒドロキシプロリン、メルカプトプロパン酸、ノルロイシン、ニペコチン酸、ノルチロシン、ノルバリン、ω−アミノ酸、オルニチン、ペニシラミン(3−メルカプトバリン)、2−フェニルグリシン、2−カルボキシピペリジン、サルコシン(N−メチルグリシン)、2−アミノ−3−(4−スルホフェニル)プロピオン酸、1−アミノ−1−カルボキシシクロペンタン、3−チエニルアラニン、ε−N−トリメチルリシン、3−チアゾリルアラニン、チアゾリジン4−カルボン酸、α−アミノ−2,4−ジオキソピリミジンプロパン酸及び2−ナフチルアラニンが挙げられる。タンパク質は、場合によって、3〜約1000アミノ酸を有するか、又は約150〜350,000ダルトンの範囲内の分子量を有する。
【0041】
タンパク質は、例えば細胞又は生物からの単離、化学合成、核酸配列の発現、タンパク質の部分加水分解など、当該技術分野で知られている種々の方法のいずれによっても得られる。ペプチド合成の化学的方法は当該技術分野で知られており、かかる方法としては、固相ペプチド合成及び溶液相ペプチド合成、又はHackeng, TM他, Proc Natl Acad Sci USA, 1997; 94(15): 7845-50(その内容は引用により本明細書に援用する)に記載の方法が挙げられる。タンパク質は、天然又は非天然タンパク質であることができる。用語「天然」は、細胞、組織又は生物の内因性タンパク質を意味し、対立遺伝子変異体を包含する。非天然タンパク質は、合成物であるか、又はその天然の関連する生物とは別に生成され、あるいは修飾されたものであり、未修飾の細胞、組織又は生物で見い出されない。
【0042】
修飾及び変更は、タンパク質の構造で行うことができ、野生型タンパク質(例えば、保存的アミノ酸置換)と同様の特徴を有する分子を得ることができる。例えば、有意な活性な低下なしに又は必要に応じて未修飾タンパク質の活性を低下又は増加させるために、ある配列中の特定のアミノ酸を他のアミノ酸に置き換えることができる。ポリペプチドの生物学的機能活性を決めるのはポリペプチド配列の相互作用能力及び性質であるため、特定のアミノ酸配列の置換をタンパク質配列で行うことができ、それでもなお、同様な又は他の所望の特性を有するタンパク質を得ることができる。
【0043】
このような変更を行う際に、アミノ酸の疎水性親水性指数を考慮することができる。タンパク質にインタラクティブな生物学的機能を付与する際の疎水性親水性アミノ酸指数の重要性は、当該技術分野で一般的に理解されている。特定のアミノ酸を類似の疎水性親水性指数又はスコアを有する他のアミノ酸に置換して同様の生物学的活性を有するタンパク質をもたらすことができること知られている。各アミノ酸は、その疎水性及び電荷特性に基づいて、疎水性親水性指数が割り当てられている。これらの指標は、次のとおりである。イソロイシン(+4.5)、バリン(+4.2)、ロイシン(3.8)、フェニルアラニン(2.8)、システイン/システイン(+2.5)、メチオニン(+1.9)、アラニン(+1.8)、グリシン(−0.4)、スレオニン(−0.7)、セリン(−0.8)、トリプトファン(−0.9)、チロシン(−1.3)、プロリン(−1.6)、ヒスチジン(−3.2)、グルタメート(−3.5)、グルタミン(−3.5)、アスパルテート(−3.5)、アスパラギン(−3.5)、リジン(−3.9)及びアルギニン(−4.5)。
【0044】
アミノ酸の相対的な疎水性親水性特性が、得られるタンパク質の二次的構造を決め、その二次的構造が、他の分子、例えば酵素、基質、受容体、抗体、抗原、補助因子などとのタンパク質の相互作用を決めると考えられている。当該技術分野では、アミノ酸を同様な疎水性親水性指数を有する別のアミノ酸と置換することができ、機能的に等価なタンパク質が得られることが知られている。このような変更では、疎水性親水性指数が±2以内のアミノ酸、±1以内のアミノ酸及び±0.5以内のアミノ酸を使用する置換が必要に応じて使用される。
【0045】
アミノ酸の置換は親水性に基づいて行うこともできる。以下の親水性値がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0)、リジン(+3.0)、アスパルテート(+3.0±1)、グルタメート(+3.0±1)、セリン(+0.3)、アスパラギン(+0.2)、グルタミン(+0.2)、グリシン(0)、プロリン(−0.5±1)、スレオニン(−0.4)、アラニン(−0.5)、ヒスチジン(−0.5)、システイン(−1.0)、メチオニン(−1.3)、バリン(−1.5)、ロイシン(−1.8)、イソロイシン(−1.8)、チロシン(−2.3)、フェニルアラニン(−2.5)、トリプトファン(−3.4)。アミノ酸を同様の親水性値を有する別のアミノ酸と置き換え、酵素的に等価なタンパク質を得られることが判る。このような変更では、親水性値が±2以内、±1以内、±0.5以内にあるアミノ酸の置換が必要に応じて使用される。
【0046】
アミノ酸置換は、必要に応じて、アミノ酸側鎖の置換基の相対的な類似性、例えばそれらの疎水性、親水性、電荷、大きさなどに基づく。上記の様々な特徴をとる典型的な置換は当業者によく知られており、例えば(元の残渣:典型的な置換)(Ala: Gly, Ser)、(Arg: Lys)、(Asn: Gln, His)、(Asp: Glu, Cys, Ser)、(Gln: Asn)、(Glu: Asp)、(Gly: Ala)、(His: Asn, Gln)、(Ile: Leu, Val)、(Leu: Ile, Val)、(Lys: Arg)、(Met: Leu, Tyr)、(Ser: Thr)、(Thr: Ser)、(Tip: Tyr)、(Tyr: Trp, Phe)及び(Val: Ile, Leu)が挙げられる。従って、この開示の実施態様は、タンパク質の機能的又は生物学的等価物を意図する。特に、タンパク質の実施態様は、野生型タンパク質の配列を、約50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、又はこれらの間の任意の値又は範囲を有する類似体を含むことができる。
【0047】
低減又は改善された酵素活性を有するタンパク質を製造する場合に、上記の特徴を必要に応じて考慮する。具体的には、酵素中の基質結合部位、エキソサイト、補助因子結合部位、触媒部位又は他の部位における置換は、基質に対する酵素の活性を変更することがある。かかる置換を検討する際、他の知られている天然又は非天然タンパク質の配列を考慮することができる。具体的には、バチルス・リケニフォルミス(Bacillis licheniformis)α−アミラーゼのL134RとS320Aの突然変異は、酸性条件下での酵素の触媒活性を14倍向上させる。Liu他, Appl Microbiol Biotechnol, 2008; 80:795-803。別の例として、サーモリシンにおけるAsp213の対応する突然変異は、例えばMiki, Y他(Journal of Molecular Catalysis B: Enzymatic, 1996; 1: 191-199)によって行われたもののように実施可能である。必要に応じて、L144Sのサーモリシンにおける置換を、単独で又はG8C/N60C/S65Pの置換の置換とともに、野生型酵素を介して触媒効率を5〜10倍高めるために実施可能である。Yasukawa, K,及びInouye, K, Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - Proteins & Proteomics, 2007; 1774:1281-1288の内容は引用により本明細書に援用する。N116D、Q119R、D150E及びQ225R並びに他の突然変異のバチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)に由来する細菌中性プロテアーゼにおける突然変異も同様に触媒活性を増加させる。De Kreig, A他, J. Biol. Chem., 2002; 277:15432-15438の内容は引用により本明細書に援用する。De Kreigは、数回の置換、例えばプロテアーゼの触媒活性を減少又は増加させる複数の置換なども教示している(Id.及びDe Kreig, Eur J Biochem, 2001; 268(18):4985-4991、その内容は引用により本明細書に援用する)。これら又は他の部位における他の置換は、必要に応じて、酵素活性に影響を与える。例えばDe Kreig, Eur J Biochem, 2001; 268(18):4985-4991(この参考文献も引用により本明細書に援用する)に記載されている方法によって、部位特異的な突然変異を誘発し、その後にタンパク質の活性をスクリーニングすることは、当業者のレベル及び常套的慣行の範囲内である。
【0048】
タンパク質は、必要に応じて、組換え体である。タンパク質をコードする核酸配列をクローニング、合成又は他の取得方法は当該技術分野で知られており、一般的に広く使用されており、本発明のタンパク質−ポリマー組成物中に存在するアミラーゼ又は他のタンパク質にも等しく適用される。同様に、細胞のトランスフェクションとタンパク質発現の方法は、同様に当該技術分野で知られており、本発明に適用可能である。
【0049】
タンパク質は、関連付けられるタグ、修飾、例えば融合タンパク質におけるような他のタンパク質、又は当該技術分野で認識されている他の修飾又は組み合わせと共発現されることがある。例示的なタグとしては、6xHis、FLAG、ビオチン、ユビキチン、又はSUMOが挙げられる。タグは、例えば当該技術分野で知られている酵素により開裂可能な酵素開裂配列を介してα−アミラーゼ又は関連タンパク質をリンクすることによるなどで開裂可能であり、タグとしては例えばファクターXa、トロンビン、Lifesensors,Inc.(ペンシルバニア州マルバーン)から入手可能なSUMOstar(登録商標)タンパク質、又はトリプシンなどのタンパク質が挙げられる。さらに、化学的開裂は、適切な開裂可能なリンカーと同様に使用可能であることが判っている。
【0050】
タンパク質の発現は、例えば、核酸配列の転写と、核酸配列又はその類似体から転写されたRNAの翻訳とから行われる。核酸配列の類似体は、タンパク質に翻訳されるときにタンパク質類似体を生成する任意の配列である。タンパク質の発現は、必要に応じて、例えば大腸菌(E. coli)、Hela細胞、又はチャイニーズハムスター卵巣細胞などの、細胞ベースの系で実施される。細胞フリー発現系を同様に使用可能であることが判っている。
【0051】
これは、タンパク質の多くの類似体が使用可能であり、例えばタンパク質の機能を増加、減少又は変更しないアミノ酸の置換、変更、修飾又は他のアミノ酸の変更などで本発明の範囲内であることが判っている。いくつかの翻訳後の修飾も同様に本発明の範囲内にあると考えられ、例えば非天然アミノ酸の組み込み、リン酸化、グリコシル化、例えばビオチンなどのペンダント基、蛍光団、ルミフォア(lumiphores)、放射性基、抗原、又は他の分子の付加が本発明の範囲内にあると考えられる。
【0052】
本発明の組成物は、基材自体に又はコーティング材料中に組み込まれた1種又は2種以上のタンパク質を含む。当該タンパク質は、必要に応じて、基材又はコーティング材料に非共有結合的に結合され及び/又は共有結合的に結合されるか、或いはそうでなければ、例えば表面への結合により又は製造中に基材/コーティング材料との混合により基材又はコーティング材料と組み合わされる。いくつかの実施態様において、タンパク質は、タンパク質と基材又はコーティング材料の1又は2種以上の成分との間の直接共有結合相互作用か、あるいは例えば米国特許出願公開第2008/0119381号明細書(その内容は引用により本明細書に援用する)に記載されているように連結部分を介する結合によって、基材又はコーティング材料に共有結合的に結合される。
【0053】
タンパク質を基材又はコーティングと結合させる幾つかの方法があり、それらの方法のうちの1つは共有結合の利用を伴う。具体的には、タンパク質の遊離アミン基を、基材の活性基に共有結合させることができる。かかる活性基としては、アルコール、チオール、アルデヒド、カルボン酸、酸無水物、エポキシ、エステル、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。タンパク質を組み込むこの方法は独特の利点を提供する。第1に、共有結合は、タンパク質を基材に永久的につなぎ、それらを最終的な組成物の一体部分とし、タンパク質の開裂はもしあったとしてもかなり少ない。第2に、共有結合は酵素の機能寿命の延長をもたらす。タンパク質は、通常、それらのポリペプチド鎖のアンフォールディングのために経時的に活性を失う。共有結合は、かかるアンフォールディングを効果的に制限し、そのためタンパク質の寿命を向上させる。タンパク質の寿命は、典型的には、遊離している又は物理的に吸着されたタンパク質の活性低下量と共有結合的に固定化されたタンパク質の活性低下量を経時的に比較することにより求めることができる。
【0054】
タンパク質は、必要に応じて、ポリマー網目構造全体にわたって均一に分散され実質的に均一なタンパク質プラットフォームを生成する。そうすることで、タンパク質を、まず、重合性基で修飾することができる。修飾されたタンパク質を、界面活性剤の存在下で有機溶剤に可溶化し、その結果、例えば、有機溶液中でメチルメタクリレート(MMA)又はスチレンなどのモノマーとその後の重合を行うことができる。得られた組成物は、場合によって、網目構造全体に均一に分散されたタンパク質分子を含む。
【0055】
タンパク質は、必要に応じて、基材の表面に付着する。約100%の表面被覆率に対応するタンパク質の付着は100〜1000nmの直径を有するポリスチレン粒子によって達成した。
【0056】
材料にタンパク質を付着させる化学的方法は、タンパク質及びその材料の構成成分中に存在する官能基に応じて当然異なる。多くのそのような方法が存在する。例えば、他の物質にタンパク質(酵素など)を付着させる方法は、O'Sullivan他, Methods in Enzymology, 1981; 73:147-166 及びErlanger, Methods in Enzymology, 1980; 70:85-104(それぞれ、引用により本明細書に援用する)に記載されている。
【0057】
タンパク質は、必要に応じて、基材上に積層されたコーティング中に存在し、タンパク質は、必要に応じて、タンパク質と基質材料との間の相互作用について記載した機構と同様に、コーティング材料中に捕捉されているか、コーティング材料と混合されているか、修飾されてコーティング材料中に組み込まれているか、又はコーティング上に積層されている。
【0058】
タンパク質と相互作用させて活性基質又はコーティングを形成するのに使用できる材料としては例えば有機ポリマー材料が挙げられる。これらの材料とタンパク質の組み合わせは、基材材料又はコーティングとして使用されるタンパク質−ポリマーコンポジット材料を形成する。
【0059】
タンパク質−ポリマーコンポジット材料の製造方法としては、例えば、タンパク質と非水性有機溶剤系ポリマーの水溶液を使用して酵素的に活性な有機溶剤系タンパク質−ポリマーコンポジット材料を生成させることを含む。
【0060】
タンパク質−ポリマーコンポジット材料の製造方法は、例えば、タンパク質及びタンパク質−ポリマーコンポジット材料の機能を低下させるタンパク質の大きな凝集体の形成とは対照的に、硬化前の溶剤系樹脂中のタンパク質の分散体により特徴付けられる。タンパク質は、必要に応じて、分散したタンパク質が他のタンパク質と会合せず及び/又は会合したタンパク質の比較的小さな粒子を形成するようにタンパク質−ポリマーコンポジット材料中に分散される。具体的には、タンパク質−ポリマーコンポジット材料中のリパーゼの平均粒子サイズは、10μm未満(平均直径)、例えば1ナノメートル〜10μm(この範囲内の任意の値を含む)である。
【0061】
硬化性のタンパク質−ポリマー組成物は、必要に応じて、二成分型溶剤系(2K SB)組成物である。必要に応じて、1つの成分系(1K)を同様に使用可能である。具体的には、タンパク質は、コーティング材料、例えばラテックス又はエナメルペイント、ワニス、ポリウレタンゲル、又は他のコーティング材料などの中に捕捉される。ペイント中に酵素を組み込む具体例は米国特許第5,998,200号明細書に示されており、その内容は引用により本明細書に援用する。
【0062】
二成分系では、2つの成分は、必要に応じて、使用直前、例えば生物活性クリアコートなどのタンパク質含有コーティングを形成するために基材に硬化性のタンパク質−ポリマー組成物を適用する直前に混合される。概説すると、第1成分は架橋性ポリマー樹脂を含み、第2成分は架橋剤を含む。従って、エマルジョンは架橋性樹脂を含む第1成分であり、架橋剤は、硬化性のタンパク質−ポリマー組成物を生成するために混合される第2成分である。
【0063】
本発明の方法及び組成物に含まれるポリマー樹脂は、コーティング又は基材組成物、例えばクリアコート組成物において有用な任意のフィルム形成性ポリマーであることができる。ポリマーは、例えば、アミノプラスト、メラミンホルムアルデヒド、カルバメート、ポリウレタン、ポリアクリレート、エポキシ、ポリカーボネート、アルキド、ビニル、ポリアミド、ポリオレフィン、フェノール樹脂、ポリエステル、ポリシロキサン、及びこれら又は他のポリマーのいずれかの組み合わせが挙げられる。
【0064】
特定の実施態様では、ポリマー樹脂は架橋性である。具体的には、架橋性ポリマーは、架橋性ポリマーに特徴的な官能基を有する。かかる官能基の例としては、例えばアセトアセテート基、酸基、アミン基、カルボキシル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、イソシアネート基、シラン基、ビニル基、他の使用可能な官能基、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0065】
架橋剤は、必要に応じて、組成物中に含まれる。選択された特定の架橋剤は、使用される個々のポリマー樹脂に依存する。架橋剤の非限定的な例としては、例えば、イソシアネート官能基、エポキシ官能基、アルデヒド官能基及び酸官能基などの官能基を有する化合物が挙げられる。
【0066】
タンパク質−ポリマーコンポジット材料の特定の実施態様においては、ポリマー樹脂はヒドロキシル官能性アクリルポリマーであり、架橋剤はポリイソシアネートである。
【0067】
ポリイソシアネート、必要に応じてジイソシアネートは、本発明の実施態様に係るヒドロキシル官能性アクリルポリマーと反応させる架橋剤である。脂肪族ポリイソシアネートは、例えば自動車クリアコート用途などのクリアコート用途のためのタンパク質−ポリマーコンポジット材料の製造方法で使用される任意のポリイソシアネートである。脂肪族ポリイソシアネートの非限定的な例としては、1,4−ブチレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,2−ジイソシアナトプロパン、1,3−ジイソシアナトプロパン、エチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、1,4−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、ジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネートのイソシアヌレート、メチレンビス−4,4’−イソシアナトシクロヘキサン、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート、イソホロンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート、p−フェニレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、トルエンジイソシアネートのイソシアヌレート、トリフェニルメタン4,4’,4’’−トリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、及びメタキシレンジイソシアネートが挙げられる。
【0068】
硬化方法手段は、当該技術分野で知られている時間、熱、紫外光、又は他の硬化方法手段などの、従来の硬化性ポリマー組成物に典型的に使用されるものである。
【0069】
本発明の実施態様において使用されるタンパク質−ポリマーコンポジット材料は、必要に応じて、熱硬化したタンパク質−ポリマーコンポジット材料である。例えば、基材又はコーティング材料は、必要に応じて、熱硬化により硬化される。熱重合開始剤が必要に応じて硬化性組成物に含まれる。熱重合開始剤としては、例えば、フリーラジカル開始剤、例えば有機過酸化物及びアゾ化合物などが挙げられる。有機過酸化物熱開始剤の例としては、例えば、過酸化ベンゾイル、ジクミルペルオキシド、ラウリルペルオキシドが挙げられる。典型的なアゾ化合物熱開始剤は2,2’−アゾビスイソブチロニトリルである。
【0070】
本発明の実施態様に係る方法において従来の硬化温度及び硬化時間を使用できる。例えば、特定の温度又は特定の硬化条件下での硬化時間は、架橋剤の官能基が硬化前に存在する全体の5%未満に減少するという基準により決定される。架橋剤の官能基を、FT−IR又は他の適当な方法によって定量的に評価することができる。例えば、本発明のポリウレタンタンパク質−ポリマーコンポジットの場合の特定の温度又は特定の硬化条件下での硬化時間は、架橋剤の官能基NCOが硬化前に存在する全体の5%未満に減少するという基準により決定することができる。NCO基はFT−IRにより定量的に評価することができる。個々の樹脂について硬化の程度を評価するためのさらなる方法は当該技術分野でよく知られている。具体的には、硬化は、溶媒の蒸発、あるいは化学放射線、例えば紫外線、電子ビーム、マイクロ波、可視光、赤外線又はガンマ線などへの暴露を含むことができる。
【0071】
1又は2種以上の添加剤を、必要に応じて、タンパク質−ポリマーコンポジット材料及び/又は有機溶剤とポリマー樹脂の混合物、タンパク質水溶液、エマルジョン、及び/又は硬化性組成物の特性を変更するために含まれる。かかる添加剤の具体例としては、光安定剤、例えばUV吸収剤又はラジカルスカベンジャー、可塑剤、湿潤剤、防腐剤、界面活性剤、滑剤、顔料、フィラー、及び耐へたり性(sag resistance)を向上させる添加剤を含む。
【0072】
光安定剤としては、UV吸収剤及びラジカルスカベンジャーが挙げられる。UV吸収剤は、UV光を吸収してそのエネルギーを熱に変換し、熱は材料を介して散逸される。UV吸収剤の具体例としては、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、ヒドロキシフェニルトリアジン、シュウ酸アニリド、黄色酸化鉄、又はそれらの組み合わせが挙げられる。UV吸収剤のさらなる例は、米国特許第5,559,163号明細書に見られ、その内容は引用により本明細書に援用する。本発明者らは、ベンゾトリアゾールは、一般的に、最も効果的なUV波長吸収範囲を示し、吸収したUV光を熱に変換することを発見した。本発明のいくつかの実施態様は、下記構造:
【化1】
を有する[3−2h−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル)]−プロピオン酸のC7−9エステルの混合物であるUV吸収剤TUNUVIN 384−2(本明細書においてチヌビン384−2)、下記構造:
【化2】
を有するTINUVIN 1130(3−[3−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロパン酸メチル)(本明細書においてチヌビン1130)、又は下記構造:
【化3】
を有するUV416(2−(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)エチルアクリレート)(本明細書においてUV416)を含む。
【0073】
ラジカルスカベンジャー光安定剤(例えば、立体障害のあるアミン光スカベンジャー(HALS))はフリーラジカルと化学的に反応する。HALSの例としては、デカン二酸のエステル誘導体、例えばHALS I[ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)エステル](これは非酸触媒コーティングにおいて使用できる)など、及び/又はHALS II[ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−イソオクチルオキシ−4−ピペリジニル)エステル](これは酸触媒コーティングに用いることができる)などが挙げられる。
【0074】
本発明者らは、本発明の組成物で使用可能なUV吸収剤又はHALSの選択を制限する2つの予期しない発見をした。第1に、全てのUV吸収剤を使用可能である。UV吸収剤は様々なカットオフ波長(UV吸収剤が入射光の10未満を透過し、入射光の90%吸収する波長)を有する。典型的なカットオフ波長(10%透過の波長)は、370nm以上でなくてはならず、必要に応じて380nm以上であり、材料中に上記濃度で存在する場合には必要に応じて390nm以下である。第2の重要な発見は、その機能的なUV吸収剤は、タンパク質−ポリマー組成物における酵素活性を保護するために、少なくとも1種のHALSの存在を必要とすることである。これらの要件のいずれも、先行の研究者によって認識されなかった。その理由は、特に、先行の技術者は、ポリマー構造自体をUV安定化することに関心を示したが、ポリマー構造中に含まれる酵素を安定化するための要件を理解することに失敗したからである。ポリマー構造を安定化させることは、ポリマー構造内での酵素活性を安定化させることと一致しない。これは、当該技術分野で使用されている光安定剤を組み込んだ最も一般的なコーティング及び基材のポリマー材料は、4質量%未満のUV安定剤の以前の好ましい濃度に少なくとも起因して、酵素を安定化させることに使用できないことに見られる。
【0075】
本発明者らは、タンパク質−ポリマーコーティング又は基材中に酵素を安定化するのに効果的なUV吸収剤の濃度(最終的な乾燥質量の%)は、5%以上、必要に応じて5.001%〜15%、必要に応じて6〜10%、必要に応じて7%〜9%、必要に応じて8%以上、又はそれらの間の任意の値又は範囲であることを予期せず見出した。幾つかの実施態様において、UV吸収剤の単独又は組み合わせは、5%以上、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、18%以上、又はそれらの間の任意の値又は範囲の最終的な全乾燥質量%を構成するように存在する。
【0076】
少なくとも1種のHALSが、本発明のタンパク質−ポリマー組成物中に存在する必要がある。HALSの濃度は必要に応じて0.01%〜3%、又はその間の任意の値又は範囲である。幾つかの実施態様では、HALSの濃度は最終的な乾燥質量で1%である。
【0077】
2K溶剤系(SB)ポリウレタン(PU)コーティングの一典型例は、1%のHALSチヌビン152(2,4−ビス[N−ブチル−N−(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ]−6−(2−ヒドロキシエチルアミン)−1,3,5−トリアジン)(チヌビン152)を、最終乾燥質量の5%以上のカットオフ370nm未満のUV吸収剤、例えばヒドロキシフェニルトリアジンとともに含む。
【0078】
タンパク質−ポリマー組成物の製造方法は、例えば、タンパク質及びタンパク質−ポリマーコンポジット材料の機能を低下させるタンパク質の大きな凝集体の形成とは対照的に、硬化前の溶剤系樹脂中のタンパク質の分散体により特徴付けられる。タンパク質は、必要に応じて、分散したタンパク質が他のタンパク質と会合せず及び/又は会合したタンパク質の比較的小さな粒子を形成するようにタンパク質−ポリマーコンポジット材料中に分散される。具体的には、タンパク質−ポリマーコンポジット材料中のアミラーゼの平均粒子サイズは、10μm未満(平均直径)、例えば1ナノメートル〜10μm(それらの間の任意の値又は範囲を含む)である。
【0079】
タンパク質を含む基質又はコーティングとして有用な組成物を形成する方法は、例示的に図1にフロー図の如く示されている。図1に示されているように、タンパク質−ポリマー組成物は、ポリマー樹脂と、界面活性剤と、非水性有機溶剤と、立体障害のあるアミン及びUV吸収剤を含む少なくとも2種の光安定剤との混合物を用意することにより形成できる。UV吸収剤は、UV吸収剤が少なくとも5質量%である最終組成物をもたらすのに十分な量で混合物中に存在する。混合物の成分を混合しエマルジョンを生成させる。実質的に界面活性剤を含まず単離された酵素を含む水溶液を上記混合物と混合してエマルションを生成させる。次に、例えば架橋剤を、上記エマルションと混合して硬化性組成物を生成させる。硬化性組成物を次に硬化させて、タンパク質−ポリマーコンポジット材料を形成させることができる。
【0080】
ポリマー樹脂又はポリマー樹脂の混合物は、1種又は2種以上のポリマー樹脂と溶媒と界面活性剤の混合物の約10〜90質量%の範囲内の量で存在する。本発明の一実施態様において、上記混合物の約20〜60質量%の範囲内の量でポリマー樹脂又はポリマー樹脂の混合物が存在する。1又は2種以上のポリマー樹脂の希釈剤として使用される溶媒は典型的には上記混合物の約1〜50質量%の範囲内の量で存在する。本発明の一実施態様において、1又は2種以上のポリマー樹脂の希釈剤として使用される溶媒は上記混合物の約2〜30質量%の範囲内の量で存在する。界面活性剤は、典型的には、上記混合物の約0.1〜5質量%の範囲内の量で存在する。本発明の実施態様では、1又は2種以上のポリマー樹脂の希釈剤として使用される溶媒は、上記混合物の約0.2〜4質量%の範囲内の量で存在する。
【0081】
用語「界面活性剤」は、界面活性剤を溶解させた液体の表面張力を減少させるか、又は2種の液体間もしくは液体と固体間の界面張力を減少させる界面活性剤を意味する。使用される界面活性剤は、例えばK. R. Lange, Surfactants: A Practical Handbook, Hanser Gardner Publications, 1999; 及び R.M. Hill, Silicone Surfactants, CRC Press, 1999(引用により本明細書に援用する)に記載されているような、両性、シリコーン系、フッ素系、アニオン性、カチオン性及び非イオン性の界面活性剤などのいかなる種類のものであることができる。アニオン性界面活性剤の例としては、例えば、アルキルスルホネート、アルキルアリールスルホネート、アルキルサルフェート、アルキル及びアリールジスルホネート、スルホン化脂肪酸、ヒドロキシアルカノールのサルフェート、スルホコハク酸エステル、ポリエトキシル化アルカノール及びアルキルフェノールのサルフェート及びスルホネートが挙げられる。カチオン性界面活性剤の例としては、第四級界面活性剤及びアミンオキシドが挙げられる。非イオン性界面活性剤の例としては、アルコキシレート、アルカノールアミド、ソルビトール又はマンニトールの脂肪酸エステル、及びアルキルグルカミドが挙げられる。シリコーン系界面活性剤の例としては、シロキサンポリオキシアルキレンコポリマーが挙げられる。
【0082】
幾つかの実施態様において、界面活性剤を生物活性タンパク質水溶液に意図的に添加せず、生物活性タンパク質水溶液は界面活性剤を実質的に含まない。用語「実質的に含まない」は、生物活性タンパク質水溶液中に界面活性剤が全く存在しないこと又はほぼ全く存在しないことを指す。
【0083】
特定の実施態様において、−0.5〜2の範囲内又はそれらの間の任意の値又は範囲内のlogPを有する非水性有機溶剤が使用される。本発明の実施態様では、−0.5〜−2の範囲内又はそれらの間の任意の値又は範囲内のlogPを有する非水性有機溶剤を、例えばポリマー樹脂の粘度を調節するためにポリマー樹脂用の希釈剤として使用される。
【0084】
用語「logP」は物質の分配係数を指す。物質のlogPは、n−オクタノール中の物質の溶解度と水中の物質の溶解度との比の10を底とする対数である。多くの有機溶剤のLogP値は、例えば、Leo A, Hansch C, 及びElkins D (1971). "Partition coefficients and their uses". Chem Rev 71 (6): 525-616. に記載されているように知られている。LogP値は、例えばSangster, James (1997). Octanol-Water Partition Coefficients: Fundamentals and Physical Chemistry, Vol. 2 of Wiley Series in Solution Chemistry. Chichester: John Wiley & Sons Ltd.に記載されているように計算できる。
【0085】
表1は、logP値の、組み込まれたタンパク質の活性の保持及びアクリルポリオール樹脂との混和性とのlogP値の相関を示す。
【表1】
【0086】
この関係は、溶剤系タンパク質−ポリマーコンポジット材料中に組み込まれた生物活性タンパク質は、広範な溶剤で類似した初期の比活性を有していたことを示す。しかし、安定性の点では、−0.5〜−2の範囲内のlogP値を有する溶剤は、本明細書に記載の方法で使用され、103℃での半減期によって示されるように最適なタンパク質安定性を有する溶剤型コーティングへのタンパク質の取り込みを可能にする。3.5以上のlogPを有する溶剤、例えばヘキサン及びイソオクタンなどは、本発明の二成分溶剤系(2K SB)ポリマー−タンパク質コンポジットを製造する方法の実施態様で使用されるポリアクリレートポリオール樹脂と混和性でない。
【0087】
幾つかの実施態様は、−0.5〜−2の範囲内のlogPを有する非水性有機溶剤の使用を含むが、樹脂及び生物活性タンパク質と混和性である場合、より低い又はより高いlogPを有する溶剤も使用できる。
【0088】
−0.5〜2の範囲のlogP値を有する溶剤の非限定的な例として、メチルエチルケトン(0.29)、酢酸エチル(0.7)、メチルイソブチルケトン(1.31)、酢酸ブチル(1.7)及び表2に掲載されている他の溶媒が挙げられる。
【0089】
−0.5〜−2の範囲内のlogPを有する非水性有機溶剤は、ポリマー樹脂と混和性であり、本発明の方法で使用されるべき選択された架橋剤と実質的に反応しない任意の溶剤であることができる。ポリアクリレートポリオールポリマー樹脂及びポリイソシアネート架橋剤と非混和性である非水性有機溶剤の例は、脂肪族炭化水素、並びにヒドロキシル基及び/又はアミノ基を有する非水性有機溶剤である。従って、幾つかの実施態様では、脂肪族炭化水素の非水性有機溶剤とヒドロキシル基及び/又はアミノ基を有する非水性有機溶剤は、本発明の方法で使用されるポリマー樹脂と混和性でないとして除外される。
【表2】
【0090】
本発明の実施態様に係る硬化性のタンパク質−ポリマー組成物としては、2つの成分が使用直前、例えば生物活性クリアコートなどの生物活性コーティングを形成するために基材に硬化性のタンパク質−ポリマー組成物を適用する直前に必要に応じて混合される二成分溶剤系(2K SB)組成物が挙げられる。概説明したように、第1成分は、酵素及び少なくとも2種の光安定剤とともに架橋性ポリマー樹脂を含み、第2成分は架橋剤を含む。
【0091】
典型的には、コーティングを適用して、乾燥した場合に約1〜500ミクロンの範囲内の厚さを有するコーティングを生成させるが、より厚い又はより薄いコーティングが所望の用途に応じて使用できる。
【0092】
硬化性組成物の適用は、例えばスプレーコーティング、ディップコーティング、フローコーティング、ローラーコーティング、ブラシコーティングなどのさまざまな方法のいずれかによって達成される。
【0093】
基材はコーティングが有利に適用される種々の基材のいずれかである。例えば、基材は、シート材料である。さらなる例において、基材は、乗り物の一部、例えば乗り物のボディパネルなど、調理面、衣類、糸材、又は他の所望の材料などである。
【0094】
本発明に従って使用するのに好適な基材としては、金属基材、シリカ、基材、プラスチック基材、例えばポリエステル基材など、綿基材、及びガラス基材、又はそれらの組み合わせを組み込む基材が挙げられるが、これらに限定されない。
【0095】
基材は、必要に応じて、コーティング、例えばプライマー、プライマー−サフェーサー(primer-surfacer)、プライマー−シーラー(primer-sealer)、ベースコート、接着促進層、又はこれら又は他の表面処理コーティングの任意の組み合わせなどを含む。
【0096】
本発明の実施態様に係るタンパク質−ポリマー材料のコーティングは、基材に対する良好な接着性、環境障害に対する保護、腐食に対する保護をもたらし、さらにタンパク質の活性特性を提供する。従って、特定の実施態様では、タンパク質−ポリマー材料のコーティングは、多くの用途、例えば酵素に対する基質、または受容体、抗体もしくはレクチンに対する配位子である分析物の検出などで有用な基材上に酵素活性を提供する。特定の実施態様では、コーティングは、ステイン生成物質の1又は2種以上の成分の酵素消化によりステイニングに対する抵抗性をもたらす。
【0097】
タンパク質−ポリマー組成物が生体物質と接触して生物学的ステインを生成する場合、酵素または酵素の組み合わせはステインまたはその成分と接触する。接触によって、タンパク質の酵素活性を、ステインの構成成分と相互作用及び酵素的に改変し基材またはコーティングからのその除去が改善される。
【0098】
本発明の実施態様に係る組成物中に、タンパク質は、その材料組成物の全質量の0.1から50質量%の範囲の量で含まれる。
【0099】
酵素含有基材又はコーティングは、一般的にユニット/cm2で表される表面活性を有する。例えばThermoase−160などのサーモリシンを含む基材及びコーティングは、必要に応じて、耐候試験前に0.0075ユニット/cm2を超える機能的表面活性を有する。幾つかの実施態様において、表面活性は0.0075ユニット/cm2〜0.05ユニット/cm2である。必要に応じて、表面活性は0.0075ユニット/cm2〜0.1ユニット/cm2である。必要に応じて、表面活性は0.01ユニット/cm2〜0.05ユニット/cm2である。枯草菌(Bacillis subtilis)に由来するα−アミラーゼを含有するコーティングにおいて、耐候試験前の典型的な表面活性は0.1ユニット/cm2〜1.5ユニット/cm2である。必要に応じて、表面活性は0.01ユニット/cm2〜2.5ユニット/cm2である。必要に応じて、表面活性は0.01ユニット/cm2〜3.0ユニット/cm2である。0.1ユニット/cm2〜3.0ユニット/cm2の表面活性の任意の値又は範囲を本発明において使用可能である。より高い表面活性は、酵素濃度を増加させることによって、より高い比活性を有する酵素、例えば野生型酵素の類似体などを使用することによって、あるいはポリマーとの結合中に酵素活性を安定化させることによって達成可能であることが判った。
【0100】
ステインの除去を容易にする本発明の方法は、タンパク質が活性である任意の温度で実施可能である。必要に応じて、本発明の方法は、4℃で行われる。必要に応じて、本発明の方法は25℃で行われる。必要に応じて、本発明の方法は、周囲温度で実施される。本発明の方法は、必要に応じて4℃〜125℃、又は任意の単一の温度又は範囲で実施されることが判った。
【0101】
基材の材料又は基材上のコーティング(必要に応じて、水またはほかの流動性すすぎ剤を有する)と組み合わされたタンパク質の存在は、容易に除去するために汚れを分解する。
【0102】
従来の生物学的方法を含む方法は、本明細書中に記載されている。かかる方法は当該技術分野において一般に知られており、例えばMolecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, 第1-3巻, Sambrook他編, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989; 及び Current Protocols in Molecular Biology, Ausubel他編, Greene Publishing and Wiley-Interscience, New York, 1992 (定期的に更新)などの方法論の論文に詳細に記載されている。
【実施例】
【0103】
本発明の様々な形態を、以下の非限定的な実施例により例示されている。これらの実施例は例示の目的のためのものであり、本発明の実施上の制限はない。本発明の精神及び範囲から逸脱することなく変形及び修飾を行えることが理解されるであろう。
実施例1:
【0104】
酵素ベースのポリウレタンコーティングの調製。
【0105】
材料:α−アミラーゼ、リパーゼPS、プロテアーゼN、プロテアーゼ、プロチンSD AY−10、バチルス・ステロサーモフィルスTLP(B. sterothermophilus TLP)(Thermoase C160)、及びThermoase GL30(バチルス・ステロサーモフィルスTLP(B. sterothermophilus TLP)の低活性調製物)は、AMANO Enzyme Inc.(日本国名古屋)から入手した。ポリアクリレート樹脂Desmophen A870 BA及び架橋剤ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)系多官能性脂肪族ポリイソシアネート樹脂Desmodur N 3600はBayer Corp.(ペンシルバニア州ピッツバーグ)から入手した。界面活性剤BYK−333はBYK−Chemie(コネチカット州ウォリングフォード)から入手した。1−ブタノールと1−ブチルアセテートはSigma−Aldrich Co.(米国ミズーリー州)から入手した。アルミニウムペイント試験パネルは、Q−Lab Co.(米国クリーブランド)から購入した。実験に関係する他のすべての試薬は分析グレードのものである。可視長波長パスを有するエッジフィルタはAndover Co.(ニューハンプシャー州セーラム)から入手した。UV吸収剤Tinuvin 400、328、384−2、928、1150、及びヒンダードアミン光安定剤(HALS)チヌビン152はBASF Co.(ニュージャージー州フローハムパーク)から入手した。UV吸収剤416はPharnorcia Inc.(ニュージャージー州エジソン)から購入した。当業者は、後に番号が続く名称チヌビンは供給源だけでなく、特定の化学組成を示していることを容易に理解する。このように、後に番号が続く名称チヌビンの使用は、その化合物を得ることができる供給源とは独立に特定の化合物として当業者により認識されている。
【0106】
酵素に基づく2K SB PUコーティングは、ドローダウン方法又はスプレー塗布によって調製され、酵素活性のその後の試験のために使用した。各酵素は、すべての水系(water borne)(WB)コーティングについて、50mg/mLの最終的な酵素溶液濃度に純水に溶解させた。溶剤系(solvent borne)(SB)酵素調製コーティングの場合、α−アミラーゼコーティングは酵素の200mg/mL溶液で調製したことを除き、200mg/mLの酵素を使用した。まず、1.5gのバチルス・ステロサーモフィラス(B. sterothermophilus)TLPを含む脱イオン水150mlの溶液を限外ろ過(分子量カットオフ30kDa、すべての液体を氷上に保持)により精製した。使用する場合、酵素α−アミラーゼは、最初に、まず、DI水中のα−アミラーゼ原料粉末(6.75g)を含む150mLの溶液を調製することにより精製した。原料粉末の不溶性の大きな不純物を200nmPTFEフィルターによる濾過によって除去した。ろ液は約20mg/mLのタンパク質濃度(ブラッドフォード法により測定)を有し、氷上で保持した。限外ろ過は、55psiの圧力と小さな不純物を除去するためミリポア(マサチューセッツ州ビルリカ)から得られた30kDaのカットオフを有する限外ろ過膜を使用して、300mLのAmiconセル(氷冷)を使用して実施した。限外ろ過は、各実施の後、セルに再充填して300mLに戻すことにより3回繰り返した。次に、最終的な残りの精製されたタンパク質溶液をコーティングの作製のために使用した。
【0107】
コーティング作製のドローダウン方法については、界面活性剤BYK 333を1−ブタノールで17質量%の濃度に希釈した。2K SB PUコーティングの樹脂部分は、20mLのガラスバイアル内で、2.1gのDesmophen A 870、0.5mLの1−ブチルアセテート中の任意の2種の光安定剤、及び0.1mLの界面活性剤を混合することにより調製した。UVAsとHALSは、樹脂溶液との混合前に200mg/mlの濃度になるように1−ブチルアセテートに溶解させた。光安定剤を加えたときに、各組成物は、最終乾燥質量の1%でHALSチヌビン152を含み、図4に示したUV吸収剤を1%〜18%の様々な濃度で含んでいた。ミクロスパチュラを使用して溶液を1分間混合した後、0.6mLの酵素溶液(又は酵素を含まない対照コーティング用のDI水)を加え、続いてさらに1分間混合した。この溶液を、次いで、0.8gのDesmodur N3600とともに20mLのガラスバイアルに注ぎ、1分間攪拌した。この配合によって、5質量%の酵素濃度が生じた。予め洗浄したアルミニウム試験パネルに、2ミル(50.8μm)の湿潤フィルム厚でドローダウンアプリケーターを用いて酵素含有コーティング材料をコーティングした。コーティングパネルは、80°Cで30分間ベークして、次に、室温で7日間硬化させた。
例2:
【0108】
タンパク質−ポリマーコーティングにおける波長特異的酵素不活化
【0109】
実施例1のコーティングを実施例1のドローダウン法によりアルミニウム試験パネルに適用した。試験パネルを、長波長パス(LWP)フィルタを使用してコーティングを覆うことにより、異なる波長の光に暴露した。いくつかのフィルタを、200、283、400、500又は600nmで50%透過カットオフで使用した。これは、入射光の全スペクトルを幾つかの試験波長範囲のカテゴリーに分ける:200〜283nm、283〜400nm、400〜500nm、及び500〜600nm、並びに>600nm。可視スペクトルからの光がないUV光の寄与を具体的に確認するために、試験パネルを350nmに25%透過ピーク及び80nmのバンドパスを有するフィルタで覆った。試験パネルを、キセノンランプを用いて光照射に供した。このキセノンランプは、熱及びUV光の両方への暴露が可能であることによりランプからの光が太陽光をよくまねたシステムを提供した。いくつかのパネルが、熱、湿気、及び/又はUV範囲内の光を含む光にさらされるように、パネルを耐候試験チャンバー内に配置した。異なる条件を表3に示すように基本的に同時に試験した。
【表3】
【0110】
試験パネルを、2時間ごとの24の耐候試験サイクルにさらした。ランプは、全試験期間中に、106W/m2で300〜400nmの波長範囲の紫外光を発した。各サイクルは、水噴霧の18分を含む。試験パネルを、それぞれ70℃に加熱した。各試験の終了時に対照試料(耐候試験にかけられなかった)と試験パネルを、酵素活性について分析した。
【0111】
α−アミラーゼ含有コーティングでコーティングされた試験パネルを、6.7mMの塩化ナトリウムを含む20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH 6.9)中のα−アミラーゼ基質1%w/vジャガイモ澱粉と試験パネルを反応させることによりアミド分解活性を求めることによって分析した。基質溶液(2mL)を、コーティングされた試験パネルの1つの長方形片(1.2cm×1.9cm)に加え、25℃で3分間インキュベートした。生成した還元糖の当量を、540nmでUV−VIS分光計(Cary 300−Varian Inc.、米国カリフォルニア州ウォルナットクリーク)を使用して決定した。α−アミラーゼ活性の1単位は、室温で3分間で澱粉から放出された1.0ミリグラムの還元糖(以前はマルトースに対して校正標準曲線から算出)として定義されている。コーティング内に組み込まれた酵素の活性を評価するために、コーティング表面を適度なグラインディング圧力(約0.5N)の下で、きめ細かい紙やすり(600番)で6回を前処理した。研磨後、回復した活性は、表面の酵素と同様に酵素アッセイによって決定した。
【0112】
サーモリシンを用いて調製されたコーティングを、Folin及びCiocalteau, J. Biol. Chem., 1927; 73; 627-50(引用により本明細書に援用する)に記載の方法に基本的に従って、表面のタンパク質分解活性及び組み込まれた酵素の活性に関して分析した。簡単に言えば、リン酸ナトリウム(0.05M、pH 7.5)緩衝液中の1mLの2%(w/v)カゼインを基材として、200μlの酢酸ナトリウム、5mMの酢酸カルシウム(10mM;pH 7.5)とともに使用した。基材溶液を37℃にするために3分間水浴中でプレインキュベートした。バチルス・ステロサーモフィラス(B. sterothermophilus)TLP系コーティングで被覆された1枚の試料プレート(1.2×1.9cm)を加えることによって反応を開始し、次に200rpmで10分間振盪したら、1mlの110mM三塩化酢酸(TCA)溶液を加えることによって反応を停止した。混合物を、遠心分離の前に、37℃で30分間インキュベートした。400μLのTCA可溶性画分中のチロシン等価物を、200μLの25%(v/v)のFolin-Ciocalteau試薬と1mLの0.5M炭酸ナトリウムを用いて660nmで決定した。活性の1単位は37℃で1分間あたりのチロシンの1.0μmolに相当する吸光度を生じるカゼインを加水分解する酵素の量として定義される。この結果はユニット/cm2に変換される。
【0113】
図2に示されるように、試験期間の間の熱、光及び水分への暴露によって、検出可能なα−アミラーゼ活性はゼロとなり、70%のサーモリシン活性が残った。熱及び光への暴露だけでは70%を超えるサーモリシン活性が残ったが、検出可能なα−アミラーゼ活性はほぼゼロであった。両酵素とも加熱のみのもとでは安定であった。全体的に見れば、これらのデータは、UV光に暴露されたコーティングは酵素活性の低下を示すことを示している。
【0114】
LWPカットオフフィルターで覆われた試験パネルを使用して同じ耐候試験を実施した。図3は、283〜400のUV波長が活性の低下に最も原因となることを示している。遠紫外光(200〜283nm)のみに暴露された場合のα−アミラーゼ活性は、酵素活性のわずか9%の低下を示した。近紫外領域の紫外光への曝露は、対照的に、65%の活性の低下をもたらした。可視波長(すなわち、>400nm)は13%以下の酵素活性のより低下を生じた。従って、近紫外線のUV光は、本発明のコーティング中の酵素に対して最も有害である。
例3:
【0115】
酵素の保護のための理想的なUV吸収剤の決定
【0116】
多くの様々なUV吸収剤(UVA)が当該技術分野で知られている。UV吸収剤の選択は、実施例2において酵素感受性の領域であると求められた280nm〜400nmの所望の波長範囲内のUV光を遮断するそれらの能力について試験した。図4のUV吸収剤を、実施例1のタンパク質−ポリマー組成物の厚さ30μmのフィルムに加えた場合の2%NVの添加濃度に対応する0.125mg/mlの最終濃度で酢酸ブチルに溶解させた。溶解させたUV吸収剤を光路長1cmの石英セルに入れ、UV透過について走査型分光光度計により分析した。試験したUV吸収剤の各々は、350〜400nmの範囲内のUV透過率の鋭い減少により表される類似の波長阻止パターンを示した(図5)。試験したUVAsの各々についてのカットオフ値(10%透過率)は図5Aに示されている。
【0117】
UVAの濃度が材料の吸収能力を変更するかどうかを判断するために様々な濃度のUVAsも調べた。UVAsのそれぞれを、0mg/mlから、実施例1のタンパク質−ポリマー組成物の厚さ30μmのフィルムに加えた場合の最終的な%量に対応する1mg/mlまでの範囲の濃度で酢酸ブチルに溶解させた。表4は、これらの代表的な濃度を示す。
【表4】
【0118】
例としてTinuvin 400を使用した図5B及び幾つかの試験したUVAsについてのカットオフ値(10%透過)の濃度依存性のまとめとしての図5Cに示されるように、UV吸光度の大きさは濃度に依存する。より高い濃度で試験したUVAsの各々は、より高い吸光度(右シフト)とそれに応じてより高いカットオフ波長を有する(図5C)。右シフトは、UVAの低濃度側でより顕著である(図5D)。全てのUVAsの各々について図5D中の濃度に対するカットオフ値の傾きを決定することで、表5に見られるように濃度の感受性が示された。
【表5】
【0119】
UV416は、濃度変化の感受性が最も高いと説明できる最も大きな傾き(3.2)を有し、400(2.6)が続く。BTZ基(図4)からのUVAsは同様な傾き値を有する。
実施例4〜26:
【0120】
タンパク質−ポリマーコーティングの酵素活性を保護するUV吸収剤の添加
【0121】
いくつかのUV吸収剤及びHALSを、実施例1の2パート溶剤系コーティング配合物における機能性について試験した。UVAs及びHALSを、樹脂及び酵素溶液と混合する前に、200mg/mlの濃度になるように1−ブチルアセテートに溶解させた。各組成物は、最終乾燥質量で1%のHALS TINUVIN 152を使用し、図4に示されているUV吸収剤を最終乾燥質量で1%〜18%の間の様々な濃度で使用して調製した。試験したUV吸収剤の各々は特有のカットオフ波長を有し、それらのカットオフ波長未満ではUV吸収剤により入射光の10%未満が透過した。
【0122】
図6に示されるように、すべてのUV添加剤や酵素の不在下で、クリアなPUコーティングは、可視光領域の全体で高い透過率(90%)を有し、350nmで減少し約275nmでカットオフ50%であった。UV添加剤の添加は、可視領域でのコーティングの透明度を変更しない。UVA含有コーティングのそれぞれについて、透過プロファイルの急激な減少がUV範囲内で観測された。T400の添加濃度を増加させると、溶液で観察されたのと同じ右シフトがコーティングでも観測され、カットオフ波長の右シフトをもたらした(図6)。
【0123】
300nm〜450nmの範囲を示している図6に見られるように、乾燥質量で8%の最終濃度のT400及びT384−2を含有するコーティングの透過プロファイルを5%のα−アミラーゼを含むコーティング間で400nmのエッジフィルター(対照)と比較した。8%のT384−2を含むコーティングは、392nmで50%のカットオフを有し、一方、8%のT400の場合には50%のカットオフは375nmであった(図7)。このように、同じ条件の下でコーティング中に使用された場合、UVA T384−2はT400よりもUV光をブロックする。これらのデータは、タンパク質−ポリマーコーティング中の酵素を酵素不活性化UV光の全スペクトルから保護するのにT384−2がより効果的であることを示唆している。
【0124】
酵素活性を保護するためUVAsのそれぞれの能力を、実施例2におけるように実施したコーティングの耐候試験前及び後に試験した。図8に示されているように、初期及び耐候試験の48時間後の残存活性を比較した。Tinuvin 400を含まない又はTinuvin 400を低添加量(例えば2%)で含むコーティング中の酵素は、露光のみの耐候試験によって完全に不活性化(100%活性低下)された。4%のUVA添加量は、酵素活性の92%の低下を示した。しかし、UVAsの高添加濃度(8%)で、酵素活性の大部分は保持された(耐候試験前と比較してわずか12%の低下)。T400の結果を、図7に示されるように、より高い波長カットオフを有するT384−2と比較した。T384−2を含むコーティングに組み込まれた酵素は、T400を含むコーティングよりも高い活性を保持した。このことはより長い波長のカットオフ値を有するUVAsは、酵素活性を保護するのに優れていることを示している(図9)。全体的にみれば、これらの結果は、タンパク質−ポリマーコーティングにUV添加剤を加えた場合に、耐候試験中、酵素活性が保護されたことを示している。
【0125】
本明細書に記載されているものに加えて、本発明の種々の変更は、上記の説明の当業者に明らかであろう。そのような変更は、添付の特許請求の範囲内に入ることを意図する。
【0126】
特に断らない限り、又は過度の実験なしに当業者によって合成されない限り、すべての試薬は当該分野で知られている供給源により得られることが理解されている。ヌクレオチド増幅、細胞のトランスフェクション、及びタンパク質の発現及び精製の方法も同様に当業者の水準の範囲内である。
【0127】
本明細書に記載した特許文献及び刊行物は、本発明が属する分野の当業者の水準を示す。これらの特許文献及び刊行物は、まるで各個々の出願又は刊行物が具体的かつ個別にそれらの教示の全体について引用により本明細書に援用されたかのように同程度に引用により本明細書に援用する。
【0128】
以上の説明は、本発明の特定の実施態様の例示であるが、その実施を制限するものではない。全ての均等物を含む以下の特許請求の範囲は、本発明の範囲を定義することを意図する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、活性物質を含むコーティング組成物及び紫外(UV)線による風化作用(weathering)から活性物質を保護するための方法に関する。具体的な実施態様において、本発明は、ポリマーコーティング及び基材中に酵素を安定化するための組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの屋外表面は、例えば鳥の排泄物、樹脂及び昆虫の体などの天然源に由来する汚れ(stain)や傷害(insult)を被ることがある。その結果、汚れは、しばしば、製品の外観を悪化させる不快な跡を表面に残す。これらの傷害は、例えば、汚れの存在を除去するのが困難で、運転者の視界が減少するために潜在的に危険なボディパネルやガラスなどの自動車の表面で特に邪魔である。
【0003】
セルフクリーニングコーティングは、表面上の汚染を防止する1つの方法として提案されている。伝統的なセルフクリーニングコーティング及び表面は、典型的には、無機物質を運び去るための水の転動及び広がりに基づく。これらは、無機汚れを除去することについてある程度の効果を示すが、コーティングの表面下に深く拡散しうる様々なタイプの有機ポリマー、脂肪、油及びタンパク質から成る生物源に由来する汚れをクリーニングする効果は低い。先行技術のアプローチは、適切なナノコンポジットを含むポリマーコーティングにより表面に疎水性、疎油性及び超両疎媒性が付与される「ロータス(lotus)効果」を利用して、表面への汚れの付着を減らし、その除去を促進することを目的とする。1つの代表的なコーティングは、良好なロールオフ特性と非常に高い水と油の接触角を有するフッ素とケイ素のナノコンポジットを含む。サンドブラストガラスのような粗い表面に対して使用された場合、ナノコーティングはフィラーとして機能して耐汚染性をもたらすことができる。これらの「消極的」技術の欠点は、ロータス効果が表面粗さに基づくため、それらが高光沢表面での使用に最適でないということである。
【0004】
光触媒コーティングは、有機汚れのセルフクリーニングを促進するのに有望である。太陽光への暴露によって、TiO2などの光触媒は、有機汚れを化学的に分解し、分解された有機汚れは、その後、超親水性表面上に形成された水シートによって洗い流される。一例として、光触媒TiO2が、米国特許出願公開第2009/104086号明細書において、指紋の積極的分解を促進するために使用された。この技術の主な欠点は、TiO2によるポリマーコーティングの酸化減損のために無機表面に使用することが限られていることである。この技術も、適合性に関する問題、すなわちTiO2が汚れだけでなく塗装中のポリマー樹脂も酸化するという問題から、自動車コーティングに対して最適とは言えない。
【0005】
酵素含有コーティングは、特に、例えば虫汚れや鳥の糞などの生物的汚れ物質を対象とすることができる。しかし、ポリマーベースの酵素含有コーティングは、風化によるポリマーの分解を被り、先行技術は、ポリマー材料自体の構造における光分解反応、光酸化反応又は他の開裂生成化学反応をもたらす。環境傷害(environmental insults)の結果、色の変化、チョーキング、コーティング層の分離、亀裂生成、又は光沢の減少が生じる。これらの反応は、一般的に、過酷な環境における継続的使用の長い時間スケールで起こる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、表面上又はコーティング中の有機汚れの長期的な積極的除去を積極的に促進し、メンテナンスクリーニングの必要性を最小限に抑えることができる新規な材料やコーティングが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明についての以下の概要は、本発明に特有の革新的な特徴のいくつかの理解を容易にするために提示するもので、完全な説明を意図しない。本発明の様々な形態の完全な理解は、明細書全体、特許請求の範囲、図面及び要約書を理解することにより得られるであろう。
【0008】
紫外線によりもたらされる風化に対する酵素の安定性が改善されたタンパク質−ポリマー組成物が提供される。組成物は、ポリマー樹脂、架橋剤、生物活性酵素、少なくとも2種の紫外光安定剤を含む。少なくとも1種の光安定剤は、立体障害のあるアミンであり、少なくとも1種の光安定剤は紫外線(UV)吸収剤である。UV吸収剤は5質量%を超える濃度で存在する。
【0009】
立体障害のあるアミンは、必要に応じて1質量%で存在することができる。いくつかの実施態様は、立体障害のあるアミンとして2,4−ビス[N−ブチル−N−(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ]−6−(2−ヒドロキシエチルアミン)−1,3,5−トリアジンが挙げられる。UV吸収剤も含まれる。予期せず、立体障害のあるアミンの存在が、タンパク質−ポリマー組成物に組み込まれた場合に、UV吸収剤とともに相乗的に機能して酵素機能を保護する。いくつかの実施態様において、UV吸収剤は、380nmを超える波長で10%のカットオフを有する。必要に応じて、UV吸収剤は、280ナノメートルから380ナノメートルまでの波長範囲で透過率の10%以下の帯域阻止率を有する。これは、酵素機能の最大限の保護が図られた組成物をもたらす。UV吸収剤の質量%は5%を超えるが、いくつかの実施態様は、8質量%以上の最終濃度でUV吸収剤を含む。
【0010】
ポリマー樹脂と界面活性剤と非水性有機溶剤と立体障害のあるアミンとUV吸収剤との混合物を用意する工程、ここで、UV吸収剤は、UV吸収剤が少なくとも5質量%存在する最終組成物を生じるのに十分な量で存在する;単離された生物活性酵素を含み、界面活性剤を実質的に含まない水溶液を混合物と混合してエマルジョンを生成させる工程;及びエマルジョンを架橋剤と混合して硬化性のUV安定化されたタンパク質−ポリマー組成物を生成させる工程を含む、UV安定化されたタンパク質−ポリマーコンポジット材料の製造方法も提供される。
【0011】
紫外線による風化のために活性が低下することに対して酵素を安定させるための方法も提供される。当該方法は、タンパク質が酵素であるタンパク質−ポリマー組成物に少なくとも2種の紫外光安定剤を加えることを含む。少なくとも1種の光安定剤は立体障害のあるアミンであり、少なくとも1種の光安定剤はUV吸収剤であり、UV吸収剤は5質量%を超える濃度で存在する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、コーティングの一実施態様で使用するためのタンパク質−ポリマー組成物の製造方法の概略図である。
【0013】
【図2】図2は、コーティングが様々なレベル及びタイプの耐候試験に曝される前及び後のタンパク質−ポリマーコーティングにおけるサーモリシン及びα−アミラーゼの活性を示す。
【0014】
【図3】図3は、タンパク質−ポリマー組成物の波長依存性のある酵素の感受性を示す。
【0015】
【図4】図4は、本発明の実施態様で使用されるいくつかの光安定剤の化学構造を示す。
【0016】
【図5A】図5Aは、いくつかのUV吸収剤の透過スペクトルを示す図である。
【図5B】図5Bは、いくつかのUV吸収剤の透過スペクトルを示す図である。
【図5C】図5Cは、いくつかのUV吸収剤の透過スペクトルを示す図である。
【図5D】図5Dは、いくつかのUV吸収剤の透過スペクトルを示す図である。
【0017】
【図6】図6は、酵素フリー又はα−アミラーゼを含有するポリマーコーティングにおける様々な濃度でのチヌビン400の透過スペクトルを示す。
【0018】
【図7】図7は、タンパク質−ポリマー組成物中の2種のUV吸収剤の透過スペクトルを示す。
【0019】
【図8】図8は、タンパク質−ポリマー組成物における酵素安定化についてのUV吸収剤の濃度依存性を示す。
【0020】
【図9】図9は、耐候試験前及び後の本発明の2つの実施態様に係るタンパク質−ポリマー組成物の比活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施態様についての以下の記載は、本質的に単なる例示であり、決して本発明の範囲、その用途又は使用を限定することを意図したものではない。本発明の用途又は使用はもちろん変わりうる。本発明を、本明細書に含まれる非限定的な定義及び用語との関係で説明する。これらの定義及び用語は、本発明の範囲又は実施に対する限定として機能するものではなく、たんに例示及び説明の目的で示す。
【0022】
本明細書に開示される発明は、積極的な汚れの除去を促進するか又はコーティングもしくは表面への環境もしくは生体物質の付着を防ぐために、酵素の触媒活性に基づく。先行技術は、長い時間スケールや厳しい風化条件で紫外光からポリマーコーティング自体への損傷を防ぐために、ポリマーコーティング材料に紫外線安定剤などの抗風化剤を加える。これら及び他の従来の研究者は、ポリマー材料を損傷するとは予想されない短い時間スケールでの風化は、組み込まれた酵素の活性に対して実質的に効果がないであろうと想定した。これらの想定は、コーティングが風化剤として熱にさらされた場合に組み込まれた酵素が安定であることの研究に基づく。驚くべきことに、従来技術によって行われた想定とは対照的に、本願発明者は、熱とは異なり、ポリマーコーティング又は基材に組み込まれた酵素は、コーティング自体に目に見える構造上の損傷をもたらさない紫外線に暴露された場合に、活性低下を示すことを発見した。さらに、この活性低下の原因となる紫外光の波長範囲は狭い帯域幅を有し、すべてのUV光が酵素活性の低下について等しくはない。例えば、中間紫外光及び短波長の可視光はポリマーに組み込まれた酵素の活性にほとんど影響を及ぼさないのに対し、近紫外光(280nm〜400nm)への暴露は、わずか48時間の屋外耐候試験後に70%も酵素活性を減少させる。
【0023】
特定のUV保護剤を含むタンパク質含有ポリマーコーティング又は基材が提供される。タンパク質は、コーティング又は基材の中又は上に固定化され、生物又は環境汚れ成分のより小さい分子への分解を触媒する。生成物の分子は、表面又はコーティングに対する付着性の強さがより低く、水、空気、又は他の流体で穏やかにすすぐことにより、表面又はコーティングからの生体物質の除去が促進される。従って、本発明は、表面からの汚れのUV安定化活性除去のための組成物及び方法として有用性がある。
【0024】
本明細書の説明はコーティングに向けられているが、本明細書に記載の材料は、機能的な汚れ除去の促進のためにコーティングを必要としない基材又は物品であってもよい。このように、本明細書中で使用される単語「コーティング」とは、1つ以上の基材の表面上に積層のために使用可能である材料を意味するか、基材材料自体を含むことができる。本明細書に開示される方法及び組成物は、一般的に、たんに例示のためだけに、コーティングと関連付けられたタンパク質と呼ばれる。当業者は、説明は基材自体にも等しく適用可能であると理解する。
【0025】
本発明の組成物は、有機汚れの1又は2以上の成分を分解することのできる酵素活性タンパク質を含むコーティングを含む。具体的な実施態様において、有機汚れは、生物物質、例えば昆虫、場合によって昆虫の体、植物に由来するもの、または環境に由来するものに基づく。
【0026】
本明細書中で定義される生物汚れは、生物の有機汚れ、又は生物が基材もしくはコーティングに接触した後に残る残留物である。生物汚れは、コーティングが昆虫の体に接触したあとに残る跡又は残留物に限られない。生物汚れの他の供給源は、例えば、昆虫の羽、脚又は他の付属器官;鳥の排泄物;指紋又はコーティングに生物が接触した後に残る残留物;又は有機汚れの他の供給源、例えば環境などである。
【0027】
本明細書中で使用されるタンパク質とは、例えばペプチド(すなわち、アミノ酸3〜100個)、ポリペプチド(すなわち、アミノ酸101個以上)、又は天然、合成もしくは他の誘導体アミノ酸の組み合わせなどのペプチド結合を有する組成物を意味する。タンパク質は、連続的な分子配列で3個以上の長さでアミノ酸を有する分子であり、必要に応じて、生物のゲノムによってコード化された生物学的に生成するタンパク質分子の長さに応じた長さである。タンパク質の例としては、酵素、抗体、受容体、輸送タンパク質、構造タンパク質、又はそれらの組み合わせが挙げられる。タンパク質は、例えばリガンド、薬物、基質、抗原又はハプテンなどの別の物質と特異的に相互作用することが可能である。
【0028】
タンパク質は、場合によって、基質分子を変換して生成物を生成する活性を有し、酵素と呼ばれる。酵素は、場合によって、生物活性酵素である。生物活性酵素は、生物又は食品中に見出される分子中の化学結合を切断することが可能である。酵素は、必要に応じて、例えば細菌プロテアーゼ又はその類似体などのペプチド結合を切断することが可能であるプロテアーゼである。酵素として機能するタンパク質は、場合によって、単離された遺伝子によりコード化された野生型のアミノ酸配列、かかる配列の機能的等価物又はそれらの組み合わせと同一である。タンパク質は、それが自然界にある生物に見出されるタンパク質の配列と一致するアミノ酸配列を有する場合に、「野生型」として呼ばれる。タンパク質は、場合によって、野生型酵素と機能的に等価なものであると理解されており、かかる機能的に等価なものとしては、例えば野生型タンパク質の配列及び/又は構造の配列及び/又は構造類似体が挙げられ、酵素として機能する。機能的に等価な酵素は、野生型酵素と類似の又は同じ酵素特性、例えば野生型酵素のEC分類の化学反応を触媒する特性などを有することがあり、及び/又は他の酵素特性、例えば、配列及び/又は構造により野生型と関連する酵素の化学反応を触媒する特性などを有することがある。酵素は、酵素の野生型形態(例えば、EC分類に使用される反応)によって触媒される反応を触媒するその機能的等価物を包含する。たとえば、用語「アミラーゼ」は、反応速度の増加、反応速度の低下、基質選択性の変化、基質結合アフィニティの増加又は低下などによりその活性が変わりうるアミラーゼ活性を有するアミラーゼの任意の機能的等価物を包含する。機能的等価物の例としては、野生型酵素配列への突然変異、例えば、配列トランケーション、アミノ酸置換、アミノ酸修飾、及び/又は融合タンパクなどが挙げられ、変更された配列は酵素として機能する。
【0029】
本明細書において用語「誘導された」は、タンパク質の前駆体源を指す。タンパク質は、原始タンパク質の野生型及び/又は機能的等価物を包含することがあると理解されている。用語「誘導された」は、野生型及び機能的等価物の両方を包含する。例えば、ヒト(Homo sapiens)の酵素のコード配列は、細菌で突然変異及び組換えが起こることがあるが、その酵素は、単離されたかどうか及び/又は他の細菌の細胞物質を含むかどうかにかかわらず、ヒトから「誘導された」酵素である。別の一例では、例えば、内因性生物源から単離された野生型酵素、例えばシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)から単離されたシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)リパーゼはシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)から「誘導された」酵素である。
【0030】
いくつかの場合において、タンパク質は、様々な配列のハイブリッド、例えば哺乳類のアミラーゼと非哺乳類のアミラーゼとの融合体であり、得られたタンパク質は、両方の供給源から誘導されたものであると考えられる。タンパク質は、野生型又は機能的に等価な形態で単離、誘導又は製造することができる。
【0031】
タンパク質−ポリマー組成物の成分としてタンパク質は、必要に応じて、オキシドレダクターゼ(EC1)、トランスフェラーゼ(EC2)、ヒドロラーゼ(EC3)、リアーゼ(EC4)、イソメラーゼ(EC5)又はリガーゼ(EC6)の活性を有する酵素である。これらのカテゴリーのいずれかの酵素を、本発明の実施態様に係るタンパク質−ポリマーコンポジット材料に含めることができる。酵素として機能するタンパク質の代表例は米国特許出願公開2010/0210745号明細書に含まれており、その内容は引用により本明細書に援用する。
【0032】
いくつかの実施態様において、含まれる酵素は、ヒドロラーゼ、例えばグルコシダーゼ、プロテアーゼ又はリパーゼなどである。特定のグルコシダーゼの非限定的な例としては、アミラーゼ、キチナーゼ及びリソチームが挙げられる。特定のプロテアーゼの非限定的な例としては、トリプシン、キモトリプシン、サーモリシン、スブチリシン、パパイン、エラスターゼ及びプラスミノーゲンが挙げられる。リパーゼの非限定的な例としては、膵リパーゼとリポ蛋白リパーゼが挙げられる。
【0033】
アミラーゼはタンパク質−ポリマー組成物のいくつかの実施態様において存在する酵素である。アミラーゼはデンプンを分解する活性を有する。幾つかのタイプのアミラーゼが本発明において使用可能であり、かかるアミラーゼとしては、例えばオリゴ糖及び多糖における(1−>4)−α−D−グルコシド結合のエンドヒドロリシスをもたらすα−アミラーゼ(EC 3.2.1.1)などが挙げられる。α−アミラーゼは、例えば、枯草菌(Bacillus subtilis)に由来し、ジェンバンク(Genbank)登録番号:ACM91731で見出される配列又はその類似体を有する。一具体例は、Sigma−Aldrich Co.(ミズーリー州セントルイス)から入手可能な枯草菌に由来するα−アミラーゼである。さらなるα−アミラーゼとしては、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)(登録番号:AAA22227)、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)(登録番号:CAA31220)、ヒト(Homo sapiens)(登録番号:BAA14130)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)(登録番号:ADE44086)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)(登録番号:CAA01355)、又は他の生物、あるいはそれらの類似体から誘導されたものが挙げられる。β−アミラーゼ、γ−アミラーゼ、又は様々な生物に由来する様々な類似体は、タンパク質−ポリマー組成物で同様に使用可能であることが理解されている。
【0034】
本発明において使用可能なタンパク質の他の例としては、メタロプロテアーゼ、例えば細菌のサーモリシン様プロテアーゼのM4族を構成するものが挙げられ、当該サーモリシンはプロトタイププロテアーゼ(EC 3.4.24.27)又はその類似体である。プロテアーゼは、必要に応じて、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)(バチルス・サーモプロテオリティクス・バール・ロッコ(Bacillus thermoproteolyticus Var. Rokko))から誘導された細菌の中性サーモリシン様プロテアーゼ(TLP)(例えば、Amano Enzyme U.S.A.,Co.(イリノイ州エルジン)から商品名「Thermoase C160」として販売)、又はその類似体である。プロテアーゼは、必要に応じて、de Kreig他,J Biol Chem, 2000; 275(40): 31115-20(その内容は引用により本明細書に援用する)に掲載された任意のプロテアーゼであることができる。プロテアーゼの具体例としては、当該分野で公知のものの中でも特に、バチルス・セレウス(Bacillis cereus)(登録番号:P05806)、ラクトバチルスsp(Lactobacillis sp.)(登録番号:Q48857)、バチルス・メガテリウム(Bacillis megaterium)(登録番号:Q00891)、バチルスsp(Bacillis sp)(登録番号:Q59223)、アリシクロバチルス・アシドカルダリアウス(Alicyclobacillis acidocaldarious)(登録番号:Q43880)、バチルス・カルドリティカス(Bacillis caldolyticus)(登録番号:P23384)、バチルス・サーモプロテオリティカス(Bacillis thermoproteolyticus)(登録番号:P00800)、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)(登録番号:P43133)、枯草菌(登録番号:P06142)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)(登録番号:P06832)、リステリア・モノサイトゲネス(Lysteria monocytogenes)(登録番号:P34025、P23224)に由来するサーモリシン様プロテアーゼが挙げられる。
【0035】
本明細書に記載した各登録番号の配列は引用により本明細書に援用する。本発明において実施可能な任意のタンパク質のクローニング、発現及び精製の方法は、当該技術分野で通常実施されている方法、例えば下記文献に開示されている方法によって達成可能である:Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, 第1-3巻, Sambrook他編, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989; Current Protocols in Molecular Biology, Ausubel他編, Greene Publishing and Wiley-Interscience, New York, 1992 (定期的に更新);及び Short Protocols in Molecular Biology, Ausubel他編, 第52版, Wiley-Interscience, New York, 2002、それらの各々の内容は引用により本明細書に援用する。
【0036】
アミラーゼ酵素の具体例は、例えば、1000U/g以上のプロテアーゼ活性を有する。ここで、(1)U(単位)はZulkowskyの非タンパク質消化生成物形態ジャガイモ澱粉(例えば、190℃でグリセロールにより処理された澱粉;Ber. Deutsch. Chem. Ges, 1880; 13: 1395)をもたらす酵素の量として定義される)。例えば、プロテアーゼは1,000U/g〜500,000U/g又はそれ以上の活性を有する。より低いプロテアーゼ活性も使用可能であることが理解されている。
【0037】
タンパク質は、場合によって、1つ以上の補助因子イオン又は補助因子タンパク質と関連して機能する。補助因子イオンは、例えば、亜鉛、コバルト又はカルシウムである。
【0038】
タンパク質は、必要に応じて、野生型タンパク質の類似体である。タンパク質の類似体は、野生型タンパク質と同様の条件に置かれた場合に、同じ基質に対して、野生型酵素のある程度の活性を有するアミノ酸配列を有する。類似体は、場合によって、野生型タンパク質の活性の500%、250%、200%、150%、110%、99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、85%、80%、75%、70%、60%、50%、25%、10%、5%、又はこれらの間の任意の数値若しくはこれらの間の数値範囲を有する。類似体を生成するために野生型タンパク質に対するいかなる修飾も使用できる。具体的には、類似体を生成するために、配列又は配列の任意の構成要素に対するアミノ酸置換、付加、欠失、架橋、ジスルフィド結合の除去若しくは追加、あるいは他の変更を使用できる。類似体は、場合によって、2以上の野生型タンパク質、そのフラグメント、又はその配列類似体の配列を含む融合タンパク質である。
【0039】
タンパク質活性のスクリーニング方法は、当該技術分野で知られており、広く使用されている。具体的には、その酵素又は類似体の活性のスクリーニングは、例えば、酵素又はその類似体を酵素の天然又は合成基質に接触させること及び基質の酵素的開裂を測定することを含む。この目的のための例示的な基質としては、プロテアーゼにより開裂して、当該技術分野で知られている方法により容易に測定されるフォリン陽性アミノ酸及びペプチド(チロシンとして計算)を遊離するカゼインが挙げられる。Bachem AG(スイス国ブーベンドルフ)から得た合成基質フリルアクリロイルトリペプチド3−(2−フリルアクリロイル)−L−グリシル−L−ロイシン−L−アラニンは同様に使用可能である。α−アミラーゼの例示的な基質としては、例えば澱粉を構成するアミロース又はアミロペクチンなどの長鎖炭水化物が挙げられる。α−アミラーゼ活性の他のスクリーニング方法としては、Fischer及びStein, Biochem. Prep., 1961, 8, 27-33の比色アッセイが挙げられ、その内容は引用により本明細書に援用する。当業者は、さまざまな材料の中又は上に存在する酵素による酵素活性のスクリーニング方法を容易に思い描くことができることが理解されている。
【0040】
タンパク質又はその類似体に存在するアミノ酸は、一般的なアミノ酸であるアラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、スレオニン、バリン、トリプトファン及びチロシン;並びにあまり一般的ではない天然アミノ酸、修飾アミノ酸又はそのような合成化合物、例えばα−アスパラギン、2−アミノブタン酸又は2−アミノ酪酸、4−アミノ酪酸、2−アミノカプリン酸(2−アミノデカン酸)、6−アミノカプロン酸、α−グルタミン、2−アミノヘプタン酸、6−アミノヘキサン酸、α−アミノイソ酪酸(2−アミノアラニン)、3−アミノイソ酪酸、β−アラニン、アロ−ヒドロキシリシン、アロ−イソロイシン、4−アミノ−7−メチルヘプタン酸、4−アミノ−5−フェニルペンタン酸、2−アミノピメリン酸、γ−アミノ−β−ヒドロキシベンゼンペンタン酸、2−アミノスベリン酸、2−カルボキシアゼチジン、β−アラニン、β−アスパラギン酸、ビフェニルアラニン、3,6−ジアミノヘキサン酸、ブタン酸、シクロブチルアラニン、シクロヘキシルアラニン、シクロヘキシルグリシン、N5−アミノカルボニルオルニチン、シクロペンチルアラニン、シクロプロピルアラニン、3−スルホアラニン、2,4−ジアミノブタン酸、ジアミノプロピオン酸、2,4−ジアミノ酪酸、ジフェニルアラニン、N、N−ジメチルグリシン、ジアミノピメリン酸、2,3−ジアミノプロパン酸、S−エチルチオシステイン、N−エチルアスパラギン、N−エチルグリシン、4−アザ−フェニルアラニン、4−フルオロ−フェニルアラニン、γ−グルタミン酸、γ−カルボキシグルタミン酸、ヒドロキシ酢酸、ピログルタミン酸、ホモアルギニン、ホモシステイン酸、ホモシステイン、ホモヒスチジン、2−ヒドロキシイソバリン酸、ホモフェニルアラニン、ホモロイシン、ホモプロリン、ホモセリン、ホモセリン、2−ヒドロキシペンタン酸、5−ヒドロキシリジン、4−ヒドロキシプロリン、2−カルボキシオクタヒドロインドール、3−カルボキシイソキノリン、イソバリン、2−ヒドロキシプロパン酸(乳酸)、メルカプト酢酸、メルカプトブタン酸、サルコシン、4−メチル−3−ヒドロキシプロリン、メルカプトプロパン酸、ノルロイシン、ニペコチン酸、ノルチロシン、ノルバリン、ω−アミノ酸、オルニチン、ペニシラミン(3−メルカプトバリン)、2−フェニルグリシン、2−カルボキシピペリジン、サルコシン(N−メチルグリシン)、2−アミノ−3−(4−スルホフェニル)プロピオン酸、1−アミノ−1−カルボキシシクロペンタン、3−チエニルアラニン、ε−N−トリメチルリシン、3−チアゾリルアラニン、チアゾリジン4−カルボン酸、α−アミノ−2,4−ジオキソピリミジンプロパン酸及び2−ナフチルアラニンが挙げられる。タンパク質は、場合によって、3〜約1000アミノ酸を有するか、又は約150〜350,000ダルトンの範囲内の分子量を有する。
【0041】
タンパク質は、例えば細胞又は生物からの単離、化学合成、核酸配列の発現、タンパク質の部分加水分解など、当該技術分野で知られている種々の方法のいずれによっても得られる。ペプチド合成の化学的方法は当該技術分野で知られており、かかる方法としては、固相ペプチド合成及び溶液相ペプチド合成、又はHackeng, TM他, Proc Natl Acad Sci USA, 1997; 94(15): 7845-50(その内容は引用により本明細書に援用する)に記載の方法が挙げられる。タンパク質は、天然又は非天然タンパク質であることができる。用語「天然」は、細胞、組織又は生物の内因性タンパク質を意味し、対立遺伝子変異体を包含する。非天然タンパク質は、合成物であるか、又はその天然の関連する生物とは別に生成され、あるいは修飾されたものであり、未修飾の細胞、組織又は生物で見い出されない。
【0042】
修飾及び変更は、タンパク質の構造で行うことができ、野生型タンパク質(例えば、保存的アミノ酸置換)と同様の特徴を有する分子を得ることができる。例えば、有意な活性な低下なしに又は必要に応じて未修飾タンパク質の活性を低下又は増加させるために、ある配列中の特定のアミノ酸を他のアミノ酸に置き換えることができる。ポリペプチドの生物学的機能活性を決めるのはポリペプチド配列の相互作用能力及び性質であるため、特定のアミノ酸配列の置換をタンパク質配列で行うことができ、それでもなお、同様な又は他の所望の特性を有するタンパク質を得ることができる。
【0043】
このような変更を行う際に、アミノ酸の疎水性親水性指数を考慮することができる。タンパク質にインタラクティブな生物学的機能を付与する際の疎水性親水性アミノ酸指数の重要性は、当該技術分野で一般的に理解されている。特定のアミノ酸を類似の疎水性親水性指数又はスコアを有する他のアミノ酸に置換して同様の生物学的活性を有するタンパク質をもたらすことができること知られている。各アミノ酸は、その疎水性及び電荷特性に基づいて、疎水性親水性指数が割り当てられている。これらの指標は、次のとおりである。イソロイシン(+4.5)、バリン(+4.2)、ロイシン(3.8)、フェニルアラニン(2.8)、システイン/システイン(+2.5)、メチオニン(+1.9)、アラニン(+1.8)、グリシン(−0.4)、スレオニン(−0.7)、セリン(−0.8)、トリプトファン(−0.9)、チロシン(−1.3)、プロリン(−1.6)、ヒスチジン(−3.2)、グルタメート(−3.5)、グルタミン(−3.5)、アスパルテート(−3.5)、アスパラギン(−3.5)、リジン(−3.9)及びアルギニン(−4.5)。
【0044】
アミノ酸の相対的な疎水性親水性特性が、得られるタンパク質の二次的構造を決め、その二次的構造が、他の分子、例えば酵素、基質、受容体、抗体、抗原、補助因子などとのタンパク質の相互作用を決めると考えられている。当該技術分野では、アミノ酸を同様な疎水性親水性指数を有する別のアミノ酸と置換することができ、機能的に等価なタンパク質が得られることが知られている。このような変更では、疎水性親水性指数が±2以内のアミノ酸、±1以内のアミノ酸及び±0.5以内のアミノ酸を使用する置換が必要に応じて使用される。
【0045】
アミノ酸の置換は親水性に基づいて行うこともできる。以下の親水性値がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0)、リジン(+3.0)、アスパルテート(+3.0±1)、グルタメート(+3.0±1)、セリン(+0.3)、アスパラギン(+0.2)、グルタミン(+0.2)、グリシン(0)、プロリン(−0.5±1)、スレオニン(−0.4)、アラニン(−0.5)、ヒスチジン(−0.5)、システイン(−1.0)、メチオニン(−1.3)、バリン(−1.5)、ロイシン(−1.8)、イソロイシン(−1.8)、チロシン(−2.3)、フェニルアラニン(−2.5)、トリプトファン(−3.4)。アミノ酸を同様の親水性値を有する別のアミノ酸と置き換え、酵素的に等価なタンパク質を得られることが判る。このような変更では、親水性値が±2以内、±1以内、±0.5以内にあるアミノ酸の置換が必要に応じて使用される。
【0046】
アミノ酸置換は、必要に応じて、アミノ酸側鎖の置換基の相対的な類似性、例えばそれらの疎水性、親水性、電荷、大きさなどに基づく。上記の様々な特徴をとる典型的な置換は当業者によく知られており、例えば(元の残渣:典型的な置換)(Ala: Gly, Ser)、(Arg: Lys)、(Asn: Gln, His)、(Asp: Glu, Cys, Ser)、(Gln: Asn)、(Glu: Asp)、(Gly: Ala)、(His: Asn, Gln)、(Ile: Leu, Val)、(Leu: Ile, Val)、(Lys: Arg)、(Met: Leu, Tyr)、(Ser: Thr)、(Thr: Ser)、(Tip: Tyr)、(Tyr: Trp, Phe)及び(Val: Ile, Leu)が挙げられる。従って、この開示の実施態様は、タンパク質の機能的又は生物学的等価物を意図する。特に、タンパク質の実施態様は、野生型タンパク質の配列を、約50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、又はこれらの間の任意の値又は範囲を有する類似体を含むことができる。
【0047】
低減又は改善された酵素活性を有するタンパク質を製造する場合に、上記の特徴を必要に応じて考慮する。具体的には、酵素中の基質結合部位、エキソサイト、補助因子結合部位、触媒部位又は他の部位における置換は、基質に対する酵素の活性を変更することがある。かかる置換を検討する際、他の知られている天然又は非天然タンパク質の配列を考慮することができる。具体的には、バチルス・リケニフォルミス(Bacillis licheniformis)α−アミラーゼのL134RとS320Aの突然変異は、酸性条件下での酵素の触媒活性を14倍向上させる。Liu他, Appl Microbiol Biotechnol, 2008; 80:795-803。別の例として、サーモリシンにおけるAsp213の対応する突然変異は、例えばMiki, Y他(Journal of Molecular Catalysis B: Enzymatic, 1996; 1: 191-199)によって行われたもののように実施可能である。必要に応じて、L144Sのサーモリシンにおける置換を、単独で又はG8C/N60C/S65Pの置換の置換とともに、野生型酵素を介して触媒効率を5〜10倍高めるために実施可能である。Yasukawa, K,及びInouye, K, Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - Proteins & Proteomics, 2007; 1774:1281-1288の内容は引用により本明細書に援用する。N116D、Q119R、D150E及びQ225R並びに他の突然変異のバチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)に由来する細菌中性プロテアーゼにおける突然変異も同様に触媒活性を増加させる。De Kreig, A他, J. Biol. Chem., 2002; 277:15432-15438の内容は引用により本明細書に援用する。De Kreigは、数回の置換、例えばプロテアーゼの触媒活性を減少又は増加させる複数の置換なども教示している(Id.及びDe Kreig, Eur J Biochem, 2001; 268(18):4985-4991、その内容は引用により本明細書に援用する)。これら又は他の部位における他の置換は、必要に応じて、酵素活性に影響を与える。例えばDe Kreig, Eur J Biochem, 2001; 268(18):4985-4991(この参考文献も引用により本明細書に援用する)に記載されている方法によって、部位特異的な突然変異を誘発し、その後にタンパク質の活性をスクリーニングすることは、当業者のレベル及び常套的慣行の範囲内である。
【0048】
タンパク質は、必要に応じて、組換え体である。タンパク質をコードする核酸配列をクローニング、合成又は他の取得方法は当該技術分野で知られており、一般的に広く使用されており、本発明のタンパク質−ポリマー組成物中に存在するアミラーゼ又は他のタンパク質にも等しく適用される。同様に、細胞のトランスフェクションとタンパク質発現の方法は、同様に当該技術分野で知られており、本発明に適用可能である。
【0049】
タンパク質は、関連付けられるタグ、修飾、例えば融合タンパク質におけるような他のタンパク質、又は当該技術分野で認識されている他の修飾又は組み合わせと共発現されることがある。例示的なタグとしては、6xHis、FLAG、ビオチン、ユビキチン、又はSUMOが挙げられる。タグは、例えば当該技術分野で知られている酵素により開裂可能な酵素開裂配列を介してα−アミラーゼ又は関連タンパク質をリンクすることによるなどで開裂可能であり、タグとしては例えばファクターXa、トロンビン、Lifesensors,Inc.(ペンシルバニア州マルバーン)から入手可能なSUMOstar(登録商標)タンパク質、又はトリプシンなどのタンパク質が挙げられる。さらに、化学的開裂は、適切な開裂可能なリンカーと同様に使用可能であることが判っている。
【0050】
タンパク質の発現は、例えば、核酸配列の転写と、核酸配列又はその類似体から転写されたRNAの翻訳とから行われる。核酸配列の類似体は、タンパク質に翻訳されるときにタンパク質類似体を生成する任意の配列である。タンパク質の発現は、必要に応じて、例えば大腸菌(E. coli)、Hela細胞、又はチャイニーズハムスター卵巣細胞などの、細胞ベースの系で実施される。細胞フリー発現系を同様に使用可能であることが判っている。
【0051】
これは、タンパク質の多くの類似体が使用可能であり、例えばタンパク質の機能を増加、減少又は変更しないアミノ酸の置換、変更、修飾又は他のアミノ酸の変更などで本発明の範囲内であることが判っている。いくつかの翻訳後の修飾も同様に本発明の範囲内にあると考えられ、例えば非天然アミノ酸の組み込み、リン酸化、グリコシル化、例えばビオチンなどのペンダント基、蛍光団、ルミフォア(lumiphores)、放射性基、抗原、又は他の分子の付加が本発明の範囲内にあると考えられる。
【0052】
本発明の組成物は、基材自体に又はコーティング材料中に組み込まれた1種又は2種以上のタンパク質を含む。当該タンパク質は、必要に応じて、基材又はコーティング材料に非共有結合的に結合され及び/又は共有結合的に結合されるか、或いはそうでなければ、例えば表面への結合により又は製造中に基材/コーティング材料との混合により基材又はコーティング材料と組み合わされる。いくつかの実施態様において、タンパク質は、タンパク質と基材又はコーティング材料の1又は2種以上の成分との間の直接共有結合相互作用か、あるいは例えば米国特許出願公開第2008/0119381号明細書(その内容は引用により本明細書に援用する)に記載されているように連結部分を介する結合によって、基材又はコーティング材料に共有結合的に結合される。
【0053】
タンパク質を基材又はコーティングと結合させる幾つかの方法があり、それらの方法のうちの1つは共有結合の利用を伴う。具体的には、タンパク質の遊離アミン基を、基材の活性基に共有結合させることができる。かかる活性基としては、アルコール、チオール、アルデヒド、カルボン酸、酸無水物、エポキシ、エステル、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。タンパク質を組み込むこの方法は独特の利点を提供する。第1に、共有結合は、タンパク質を基材に永久的につなぎ、それらを最終的な組成物の一体部分とし、タンパク質の開裂はもしあったとしてもかなり少ない。第2に、共有結合は酵素の機能寿命の延長をもたらす。タンパク質は、通常、それらのポリペプチド鎖のアンフォールディングのために経時的に活性を失う。共有結合は、かかるアンフォールディングを効果的に制限し、そのためタンパク質の寿命を向上させる。タンパク質の寿命は、典型的には、遊離している又は物理的に吸着されたタンパク質の活性低下量と共有結合的に固定化されたタンパク質の活性低下量を経時的に比較することにより求めることができる。
【0054】
タンパク質は、必要に応じて、ポリマー網目構造全体にわたって均一に分散され実質的に均一なタンパク質プラットフォームを生成する。そうすることで、タンパク質を、まず、重合性基で修飾することができる。修飾されたタンパク質を、界面活性剤の存在下で有機溶剤に可溶化し、その結果、例えば、有機溶液中でメチルメタクリレート(MMA)又はスチレンなどのモノマーとその後の重合を行うことができる。得られた組成物は、場合によって、網目構造全体に均一に分散されたタンパク質分子を含む。
【0055】
タンパク質は、必要に応じて、基材の表面に付着する。約100%の表面被覆率に対応するタンパク質の付着は100〜1000nmの直径を有するポリスチレン粒子によって達成した。
【0056】
材料にタンパク質を付着させる化学的方法は、タンパク質及びその材料の構成成分中に存在する官能基に応じて当然異なる。多くのそのような方法が存在する。例えば、他の物質にタンパク質(酵素など)を付着させる方法は、O'Sullivan他, Methods in Enzymology, 1981; 73:147-166 及びErlanger, Methods in Enzymology, 1980; 70:85-104(それぞれ、引用により本明細書に援用する)に記載されている。
【0057】
タンパク質は、必要に応じて、基材上に積層されたコーティング中に存在し、タンパク質は、必要に応じて、タンパク質と基質材料との間の相互作用について記載した機構と同様に、コーティング材料中に捕捉されているか、コーティング材料と混合されているか、修飾されてコーティング材料中に組み込まれているか、又はコーティング上に積層されている。
【0058】
タンパク質と相互作用させて活性基質又はコーティングを形成するのに使用できる材料としては例えば有機ポリマー材料が挙げられる。これらの材料とタンパク質の組み合わせは、基材材料又はコーティングとして使用されるタンパク質−ポリマーコンポジット材料を形成する。
【0059】
タンパク質−ポリマーコンポジット材料の製造方法としては、例えば、タンパク質と非水性有機溶剤系ポリマーの水溶液を使用して酵素的に活性な有機溶剤系タンパク質−ポリマーコンポジット材料を生成させることを含む。
【0060】
タンパク質−ポリマーコンポジット材料の製造方法は、例えば、タンパク質及びタンパク質−ポリマーコンポジット材料の機能を低下させるタンパク質の大きな凝集体の形成とは対照的に、硬化前の溶剤系樹脂中のタンパク質の分散体により特徴付けられる。タンパク質は、必要に応じて、分散したタンパク質が他のタンパク質と会合せず及び/又は会合したタンパク質の比較的小さな粒子を形成するようにタンパク質−ポリマーコンポジット材料中に分散される。具体的には、タンパク質−ポリマーコンポジット材料中のリパーゼの平均粒子サイズは、10μm未満(平均直径)、例えば1ナノメートル〜10μm(この範囲内の任意の値を含む)である。
【0061】
硬化性のタンパク質−ポリマー組成物は、必要に応じて、二成分型溶剤系(2K SB)組成物である。必要に応じて、1つの成分系(1K)を同様に使用可能である。具体的には、タンパク質は、コーティング材料、例えばラテックス又はエナメルペイント、ワニス、ポリウレタンゲル、又は他のコーティング材料などの中に捕捉される。ペイント中に酵素を組み込む具体例は米国特許第5,998,200号明細書に示されており、その内容は引用により本明細書に援用する。
【0062】
二成分系では、2つの成分は、必要に応じて、使用直前、例えば生物活性クリアコートなどのタンパク質含有コーティングを形成するために基材に硬化性のタンパク質−ポリマー組成物を適用する直前に混合される。概説すると、第1成分は架橋性ポリマー樹脂を含み、第2成分は架橋剤を含む。従って、エマルジョンは架橋性樹脂を含む第1成分であり、架橋剤は、硬化性のタンパク質−ポリマー組成物を生成するために混合される第2成分である。
【0063】
本発明の方法及び組成物に含まれるポリマー樹脂は、コーティング又は基材組成物、例えばクリアコート組成物において有用な任意のフィルム形成性ポリマーであることができる。ポリマーは、例えば、アミノプラスト、メラミンホルムアルデヒド、カルバメート、ポリウレタン、ポリアクリレート、エポキシ、ポリカーボネート、アルキド、ビニル、ポリアミド、ポリオレフィン、フェノール樹脂、ポリエステル、ポリシロキサン、及びこれら又は他のポリマーのいずれかの組み合わせが挙げられる。
【0064】
特定の実施態様では、ポリマー樹脂は架橋性である。具体的には、架橋性ポリマーは、架橋性ポリマーに特徴的な官能基を有する。かかる官能基の例としては、例えばアセトアセテート基、酸基、アミン基、カルボキシル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、イソシアネート基、シラン基、ビニル基、他の使用可能な官能基、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0065】
架橋剤は、必要に応じて、組成物中に含まれる。選択された特定の架橋剤は、使用される個々のポリマー樹脂に依存する。架橋剤の非限定的な例としては、例えば、イソシアネート官能基、エポキシ官能基、アルデヒド官能基及び酸官能基などの官能基を有する化合物が挙げられる。
【0066】
タンパク質−ポリマーコンポジット材料の特定の実施態様においては、ポリマー樹脂はヒドロキシル官能性アクリルポリマーであり、架橋剤はポリイソシアネートである。
【0067】
ポリイソシアネート、必要に応じてジイソシアネートは、本発明の実施態様に係るヒドロキシル官能性アクリルポリマーと反応させる架橋剤である。脂肪族ポリイソシアネートは、例えば自動車クリアコート用途などのクリアコート用途のためのタンパク質−ポリマーコンポジット材料の製造方法で使用される任意のポリイソシアネートである。脂肪族ポリイソシアネートの非限定的な例としては、1,4−ブチレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,2−ジイソシアナトプロパン、1,3−ジイソシアナトプロパン、エチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、1,4−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、ジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネートのイソシアヌレート、メチレンビス−4,4’−イソシアナトシクロヘキサン、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート、イソホロンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート、p−フェニレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、トルエンジイソシアネートのイソシアヌレート、トリフェニルメタン4,4’,4’’−トリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、及びメタキシレンジイソシアネートが挙げられる。
【0068】
硬化方法手段は、当該技術分野で知られている時間、熱、紫外光、又は他の硬化方法手段などの、従来の硬化性ポリマー組成物に典型的に使用されるものである。
【0069】
本発明の実施態様において使用されるタンパク質−ポリマーコンポジット材料は、必要に応じて、熱硬化したタンパク質−ポリマーコンポジット材料である。例えば、基材又はコーティング材料は、必要に応じて、熱硬化により硬化される。熱重合開始剤が必要に応じて硬化性組成物に含まれる。熱重合開始剤としては、例えば、フリーラジカル開始剤、例えば有機過酸化物及びアゾ化合物などが挙げられる。有機過酸化物熱開始剤の例としては、例えば、過酸化ベンゾイル、ジクミルペルオキシド、ラウリルペルオキシドが挙げられる。典型的なアゾ化合物熱開始剤は2,2’−アゾビスイソブチロニトリルである。
【0070】
本発明の実施態様に係る方法において従来の硬化温度及び硬化時間を使用できる。例えば、特定の温度又は特定の硬化条件下での硬化時間は、架橋剤の官能基が硬化前に存在する全体の5%未満に減少するという基準により決定される。架橋剤の官能基を、FT−IR又は他の適当な方法によって定量的に評価することができる。例えば、本発明のポリウレタンタンパク質−ポリマーコンポジットの場合の特定の温度又は特定の硬化条件下での硬化時間は、架橋剤の官能基NCOが硬化前に存在する全体の5%未満に減少するという基準により決定することができる。NCO基はFT−IRにより定量的に評価することができる。個々の樹脂について硬化の程度を評価するためのさらなる方法は当該技術分野でよく知られている。具体的には、硬化は、溶媒の蒸発、あるいは化学放射線、例えば紫外線、電子ビーム、マイクロ波、可視光、赤外線又はガンマ線などへの暴露を含むことができる。
【0071】
1又は2種以上の添加剤を、必要に応じて、タンパク質−ポリマーコンポジット材料及び/又は有機溶剤とポリマー樹脂の混合物、タンパク質水溶液、エマルジョン、及び/又は硬化性組成物の特性を変更するために含まれる。かかる添加剤の具体例としては、光安定剤、例えばUV吸収剤又はラジカルスカベンジャー、可塑剤、湿潤剤、防腐剤、界面活性剤、滑剤、顔料、フィラー、及び耐へたり性(sag resistance)を向上させる添加剤を含む。
【0072】
光安定剤としては、UV吸収剤及びラジカルスカベンジャーが挙げられる。UV吸収剤は、UV光を吸収してそのエネルギーを熱に変換し、熱は材料を介して散逸される。UV吸収剤の具体例としては、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、ヒドロキシフェニルトリアジン、シュウ酸アニリド、黄色酸化鉄、又はそれらの組み合わせが挙げられる。UV吸収剤のさらなる例は、米国特許第5,559,163号明細書に見られ、その内容は引用により本明細書に援用する。本発明者らは、ベンゾトリアゾールは、一般的に、最も効果的なUV波長吸収範囲を示し、吸収したUV光を熱に変換することを発見した。本発明のいくつかの実施態様は、下記構造:
【化1】
を有する[3−2h−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル)]−プロピオン酸のC7−9エステルの混合物であるUV吸収剤TUNUVIN 384−2(本明細書においてチヌビン384−2)、下記構造:
【化2】
を有するTINUVIN 1130(3−[3−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロパン酸メチル)(本明細書においてチヌビン1130)、又は下記構造:
【化3】
を有するUV416(2−(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)エチルアクリレート)(本明細書においてUV416)を含む。
【0073】
ラジカルスカベンジャー光安定剤(例えば、立体障害のあるアミン光スカベンジャー(HALS))はフリーラジカルと化学的に反応する。HALSの例としては、デカン二酸のエステル誘導体、例えばHALS I[ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)エステル](これは非酸触媒コーティングにおいて使用できる)など、及び/又はHALS II[ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−イソオクチルオキシ−4−ピペリジニル)エステル](これは酸触媒コーティングに用いることができる)などが挙げられる。
【0074】
本発明者らは、本発明の組成物で使用可能なUV吸収剤又はHALSの選択を制限する2つの予期しない発見をした。第1に、全てのUV吸収剤を使用可能である。UV吸収剤は様々なカットオフ波長(UV吸収剤が入射光の10未満を透過し、入射光の90%吸収する波長)を有する。典型的なカットオフ波長(10%透過の波長)は、370nm以上でなくてはならず、必要に応じて380nm以上であり、材料中に上記濃度で存在する場合には必要に応じて390nm以下である。第2の重要な発見は、その機能的なUV吸収剤は、タンパク質−ポリマー組成物における酵素活性を保護するために、少なくとも1種のHALSの存在を必要とすることである。これらの要件のいずれも、先行の研究者によって認識されなかった。その理由は、特に、先行の技術者は、ポリマー構造自体をUV安定化することに関心を示したが、ポリマー構造中に含まれる酵素を安定化するための要件を理解することに失敗したからである。ポリマー構造を安定化させることは、ポリマー構造内での酵素活性を安定化させることと一致しない。これは、当該技術分野で使用されている光安定剤を組み込んだ最も一般的なコーティング及び基材のポリマー材料は、4質量%未満のUV安定剤の以前の好ましい濃度に少なくとも起因して、酵素を安定化させることに使用できないことに見られる。
【0075】
本発明者らは、タンパク質−ポリマーコーティング又は基材中に酵素を安定化するのに効果的なUV吸収剤の濃度(最終的な乾燥質量の%)は、5%以上、必要に応じて5.001%〜15%、必要に応じて6〜10%、必要に応じて7%〜9%、必要に応じて8%以上、又はそれらの間の任意の値又は範囲であることを予期せず見出した。幾つかの実施態様において、UV吸収剤の単独又は組み合わせは、5%以上、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、18%以上、又はそれらの間の任意の値又は範囲の最終的な全乾燥質量%を構成するように存在する。
【0076】
少なくとも1種のHALSが、本発明のタンパク質−ポリマー組成物中に存在する必要がある。HALSの濃度は必要に応じて0.01%〜3%、又はその間の任意の値又は範囲である。幾つかの実施態様では、HALSの濃度は最終的な乾燥質量で1%である。
【0077】
2K溶剤系(SB)ポリウレタン(PU)コーティングの一典型例は、1%のHALSチヌビン152(2,4−ビス[N−ブチル−N−(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ]−6−(2−ヒドロキシエチルアミン)−1,3,5−トリアジン)(チヌビン152)を、最終乾燥質量の5%以上のカットオフ370nm未満のUV吸収剤、例えばヒドロキシフェニルトリアジンとともに含む。
【0078】
タンパク質−ポリマー組成物の製造方法は、例えば、タンパク質及びタンパク質−ポリマーコンポジット材料の機能を低下させるタンパク質の大きな凝集体の形成とは対照的に、硬化前の溶剤系樹脂中のタンパク質の分散体により特徴付けられる。タンパク質は、必要に応じて、分散したタンパク質が他のタンパク質と会合せず及び/又は会合したタンパク質の比較的小さな粒子を形成するようにタンパク質−ポリマーコンポジット材料中に分散される。具体的には、タンパク質−ポリマーコンポジット材料中のアミラーゼの平均粒子サイズは、10μm未満(平均直径)、例えば1ナノメートル〜10μm(それらの間の任意の値又は範囲を含む)である。
【0079】
タンパク質を含む基質又はコーティングとして有用な組成物を形成する方法は、例示的に図1にフロー図の如く示されている。図1に示されているように、タンパク質−ポリマー組成物は、ポリマー樹脂と、界面活性剤と、非水性有機溶剤と、立体障害のあるアミン及びUV吸収剤を含む少なくとも2種の光安定剤との混合物を用意することにより形成できる。UV吸収剤は、UV吸収剤が少なくとも5質量%である最終組成物をもたらすのに十分な量で混合物中に存在する。混合物の成分を混合しエマルジョンを生成させる。実質的に界面活性剤を含まず単離された酵素を含む水溶液を上記混合物と混合してエマルションを生成させる。次に、例えば架橋剤を、上記エマルションと混合して硬化性組成物を生成させる。硬化性組成物を次に硬化させて、タンパク質−ポリマーコンポジット材料を形成させることができる。
【0080】
ポリマー樹脂又はポリマー樹脂の混合物は、1種又は2種以上のポリマー樹脂と溶媒と界面活性剤の混合物の約10〜90質量%の範囲内の量で存在する。本発明の一実施態様において、上記混合物の約20〜60質量%の範囲内の量でポリマー樹脂又はポリマー樹脂の混合物が存在する。1又は2種以上のポリマー樹脂の希釈剤として使用される溶媒は典型的には上記混合物の約1〜50質量%の範囲内の量で存在する。本発明の一実施態様において、1又は2種以上のポリマー樹脂の希釈剤として使用される溶媒は上記混合物の約2〜30質量%の範囲内の量で存在する。界面活性剤は、典型的には、上記混合物の約0.1〜5質量%の範囲内の量で存在する。本発明の実施態様では、1又は2種以上のポリマー樹脂の希釈剤として使用される溶媒は、上記混合物の約0.2〜4質量%の範囲内の量で存在する。
【0081】
用語「界面活性剤」は、界面活性剤を溶解させた液体の表面張力を減少させるか、又は2種の液体間もしくは液体と固体間の界面張力を減少させる界面活性剤を意味する。使用される界面活性剤は、例えばK. R. Lange, Surfactants: A Practical Handbook, Hanser Gardner Publications, 1999; 及び R.M. Hill, Silicone Surfactants, CRC Press, 1999(引用により本明細書に援用する)に記載されているような、両性、シリコーン系、フッ素系、アニオン性、カチオン性及び非イオン性の界面活性剤などのいかなる種類のものであることができる。アニオン性界面活性剤の例としては、例えば、アルキルスルホネート、アルキルアリールスルホネート、アルキルサルフェート、アルキル及びアリールジスルホネート、スルホン化脂肪酸、ヒドロキシアルカノールのサルフェート、スルホコハク酸エステル、ポリエトキシル化アルカノール及びアルキルフェノールのサルフェート及びスルホネートが挙げられる。カチオン性界面活性剤の例としては、第四級界面活性剤及びアミンオキシドが挙げられる。非イオン性界面活性剤の例としては、アルコキシレート、アルカノールアミド、ソルビトール又はマンニトールの脂肪酸エステル、及びアルキルグルカミドが挙げられる。シリコーン系界面活性剤の例としては、シロキサンポリオキシアルキレンコポリマーが挙げられる。
【0082】
幾つかの実施態様において、界面活性剤を生物活性タンパク質水溶液に意図的に添加せず、生物活性タンパク質水溶液は界面活性剤を実質的に含まない。用語「実質的に含まない」は、生物活性タンパク質水溶液中に界面活性剤が全く存在しないこと又はほぼ全く存在しないことを指す。
【0083】
特定の実施態様において、−0.5〜2の範囲内又はそれらの間の任意の値又は範囲内のlogPを有する非水性有機溶剤が使用される。本発明の実施態様では、−0.5〜−2の範囲内又はそれらの間の任意の値又は範囲内のlogPを有する非水性有機溶剤を、例えばポリマー樹脂の粘度を調節するためにポリマー樹脂用の希釈剤として使用される。
【0084】
用語「logP」は物質の分配係数を指す。物質のlogPは、n−オクタノール中の物質の溶解度と水中の物質の溶解度との比の10を底とする対数である。多くの有機溶剤のLogP値は、例えば、Leo A, Hansch C, 及びElkins D (1971). "Partition coefficients and their uses". Chem Rev 71 (6): 525-616. に記載されているように知られている。LogP値は、例えばSangster, James (1997). Octanol-Water Partition Coefficients: Fundamentals and Physical Chemistry, Vol. 2 of Wiley Series in Solution Chemistry. Chichester: John Wiley & Sons Ltd.に記載されているように計算できる。
【0085】
表1は、logP値の、組み込まれたタンパク質の活性の保持及びアクリルポリオール樹脂との混和性とのlogP値の相関を示す。
【表1】
【0086】
この関係は、溶剤系タンパク質−ポリマーコンポジット材料中に組み込まれた生物活性タンパク質は、広範な溶剤で類似した初期の比活性を有していたことを示す。しかし、安定性の点では、−0.5〜−2の範囲内のlogP値を有する溶剤は、本明細書に記載の方法で使用され、103℃での半減期によって示されるように最適なタンパク質安定性を有する溶剤型コーティングへのタンパク質の取り込みを可能にする。3.5以上のlogPを有する溶剤、例えばヘキサン及びイソオクタンなどは、本発明の二成分溶剤系(2K SB)ポリマー−タンパク質コンポジットを製造する方法の実施態様で使用されるポリアクリレートポリオール樹脂と混和性でない。
【0087】
幾つかの実施態様は、−0.5〜−2の範囲内のlogPを有する非水性有機溶剤の使用を含むが、樹脂及び生物活性タンパク質と混和性である場合、より低い又はより高いlogPを有する溶剤も使用できる。
【0088】
−0.5〜2の範囲のlogP値を有する溶剤の非限定的な例として、メチルエチルケトン(0.29)、酢酸エチル(0.7)、メチルイソブチルケトン(1.31)、酢酸ブチル(1.7)及び表2に掲載されている他の溶媒が挙げられる。
【0089】
−0.5〜−2の範囲内のlogPを有する非水性有機溶剤は、ポリマー樹脂と混和性であり、本発明の方法で使用されるべき選択された架橋剤と実質的に反応しない任意の溶剤であることができる。ポリアクリレートポリオールポリマー樹脂及びポリイソシアネート架橋剤と非混和性である非水性有機溶剤の例は、脂肪族炭化水素、並びにヒドロキシル基及び/又はアミノ基を有する非水性有機溶剤である。従って、幾つかの実施態様では、脂肪族炭化水素の非水性有機溶剤とヒドロキシル基及び/又はアミノ基を有する非水性有機溶剤は、本発明の方法で使用されるポリマー樹脂と混和性でないとして除外される。
【表2】
【0090】
本発明の実施態様に係る硬化性のタンパク質−ポリマー組成物としては、2つの成分が使用直前、例えば生物活性クリアコートなどの生物活性コーティングを形成するために基材に硬化性のタンパク質−ポリマー組成物を適用する直前に必要に応じて混合される二成分溶剤系(2K SB)組成物が挙げられる。概説明したように、第1成分は、酵素及び少なくとも2種の光安定剤とともに架橋性ポリマー樹脂を含み、第2成分は架橋剤を含む。
【0091】
典型的には、コーティングを適用して、乾燥した場合に約1〜500ミクロンの範囲内の厚さを有するコーティングを生成させるが、より厚い又はより薄いコーティングが所望の用途に応じて使用できる。
【0092】
硬化性組成物の適用は、例えばスプレーコーティング、ディップコーティング、フローコーティング、ローラーコーティング、ブラシコーティングなどのさまざまな方法のいずれかによって達成される。
【0093】
基材はコーティングが有利に適用される種々の基材のいずれかである。例えば、基材は、シート材料である。さらなる例において、基材は、乗り物の一部、例えば乗り物のボディパネルなど、調理面、衣類、糸材、又は他の所望の材料などである。
【0094】
本発明に従って使用するのに好適な基材としては、金属基材、シリカ、基材、プラスチック基材、例えばポリエステル基材など、綿基材、及びガラス基材、又はそれらの組み合わせを組み込む基材が挙げられるが、これらに限定されない。
【0095】
基材は、必要に応じて、コーティング、例えばプライマー、プライマー−サフェーサー(primer-surfacer)、プライマー−シーラー(primer-sealer)、ベースコート、接着促進層、又はこれら又は他の表面処理コーティングの任意の組み合わせなどを含む。
【0096】
本発明の実施態様に係るタンパク質−ポリマー材料のコーティングは、基材に対する良好な接着性、環境障害に対する保護、腐食に対する保護をもたらし、さらにタンパク質の活性特性を提供する。従って、特定の実施態様では、タンパク質−ポリマー材料のコーティングは、多くの用途、例えば酵素に対する基質、または受容体、抗体もしくはレクチンに対する配位子である分析物の検出などで有用な基材上に酵素活性を提供する。特定の実施態様では、コーティングは、ステイン生成物質の1又は2種以上の成分の酵素消化によりステイニングに対する抵抗性をもたらす。
【0097】
タンパク質−ポリマー組成物が生体物質と接触して生物学的ステインを生成する場合、酵素または酵素の組み合わせはステインまたはその成分と接触する。接触によって、タンパク質の酵素活性を、ステインの構成成分と相互作用及び酵素的に改変し基材またはコーティングからのその除去が改善される。
【0098】
本発明の実施態様に係る組成物中に、タンパク質は、その材料組成物の全質量の0.1から50質量%の範囲の量で含まれる。
【0099】
酵素含有基材又はコーティングは、一般的にユニット/cm2で表される表面活性を有する。例えばThermoase−160などのサーモリシンを含む基材及びコーティングは、必要に応じて、耐候試験前に0.0075ユニット/cm2を超える機能的表面活性を有する。幾つかの実施態様において、表面活性は0.0075ユニット/cm2〜0.05ユニット/cm2である。必要に応じて、表面活性は0.0075ユニット/cm2〜0.1ユニット/cm2である。必要に応じて、表面活性は0.01ユニット/cm2〜0.05ユニット/cm2である。枯草菌(Bacillis subtilis)に由来するα−アミラーゼを含有するコーティングにおいて、耐候試験前の典型的な表面活性は0.1ユニット/cm2〜1.5ユニット/cm2である。必要に応じて、表面活性は0.01ユニット/cm2〜2.5ユニット/cm2である。必要に応じて、表面活性は0.01ユニット/cm2〜3.0ユニット/cm2である。0.1ユニット/cm2〜3.0ユニット/cm2の表面活性の任意の値又は範囲を本発明において使用可能である。より高い表面活性は、酵素濃度を増加させることによって、より高い比活性を有する酵素、例えば野生型酵素の類似体などを使用することによって、あるいはポリマーとの結合中に酵素活性を安定化させることによって達成可能であることが判った。
【0100】
ステインの除去を容易にする本発明の方法は、タンパク質が活性である任意の温度で実施可能である。必要に応じて、本発明の方法は、4℃で行われる。必要に応じて、本発明の方法は25℃で行われる。必要に応じて、本発明の方法は、周囲温度で実施される。本発明の方法は、必要に応じて4℃〜125℃、又は任意の単一の温度又は範囲で実施されることが判った。
【0101】
基材の材料又は基材上のコーティング(必要に応じて、水またはほかの流動性すすぎ剤を有する)と組み合わされたタンパク質の存在は、容易に除去するために汚れを分解する。
【0102】
従来の生物学的方法を含む方法は、本明細書中に記載されている。かかる方法は当該技術分野において一般に知られており、例えばMolecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, 第1-3巻, Sambrook他編, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989; 及び Current Protocols in Molecular Biology, Ausubel他編, Greene Publishing and Wiley-Interscience, New York, 1992 (定期的に更新)などの方法論の論文に詳細に記載されている。
【実施例】
【0103】
本発明の様々な形態を、以下の非限定的な実施例により例示されている。これらの実施例は例示の目的のためのものであり、本発明の実施上の制限はない。本発明の精神及び範囲から逸脱することなく変形及び修飾を行えることが理解されるであろう。
実施例1:
【0104】
酵素ベースのポリウレタンコーティングの調製。
【0105】
材料:α−アミラーゼ、リパーゼPS、プロテアーゼN、プロテアーゼ、プロチンSD AY−10、バチルス・ステロサーモフィルスTLP(B. sterothermophilus TLP)(Thermoase C160)、及びThermoase GL30(バチルス・ステロサーモフィルスTLP(B. sterothermophilus TLP)の低活性調製物)は、AMANO Enzyme Inc.(日本国名古屋)から入手した。ポリアクリレート樹脂Desmophen A870 BA及び架橋剤ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)系多官能性脂肪族ポリイソシアネート樹脂Desmodur N 3600はBayer Corp.(ペンシルバニア州ピッツバーグ)から入手した。界面活性剤BYK−333はBYK−Chemie(コネチカット州ウォリングフォード)から入手した。1−ブタノールと1−ブチルアセテートはSigma−Aldrich Co.(米国ミズーリー州)から入手した。アルミニウムペイント試験パネルは、Q−Lab Co.(米国クリーブランド)から購入した。実験に関係する他のすべての試薬は分析グレードのものである。可視長波長パスを有するエッジフィルタはAndover Co.(ニューハンプシャー州セーラム)から入手した。UV吸収剤Tinuvin 400、328、384−2、928、1150、及びヒンダードアミン光安定剤(HALS)チヌビン152はBASF Co.(ニュージャージー州フローハムパーク)から入手した。UV吸収剤416はPharnorcia Inc.(ニュージャージー州エジソン)から購入した。当業者は、後に番号が続く名称チヌビンは供給源だけでなく、特定の化学組成を示していることを容易に理解する。このように、後に番号が続く名称チヌビンの使用は、その化合物を得ることができる供給源とは独立に特定の化合物として当業者により認識されている。
【0106】
酵素に基づく2K SB PUコーティングは、ドローダウン方法又はスプレー塗布によって調製され、酵素活性のその後の試験のために使用した。各酵素は、すべての水系(water borne)(WB)コーティングについて、50mg/mLの最終的な酵素溶液濃度に純水に溶解させた。溶剤系(solvent borne)(SB)酵素調製コーティングの場合、α−アミラーゼコーティングは酵素の200mg/mL溶液で調製したことを除き、200mg/mLの酵素を使用した。まず、1.5gのバチルス・ステロサーモフィラス(B. sterothermophilus)TLPを含む脱イオン水150mlの溶液を限外ろ過(分子量カットオフ30kDa、すべての液体を氷上に保持)により精製した。使用する場合、酵素α−アミラーゼは、最初に、まず、DI水中のα−アミラーゼ原料粉末(6.75g)を含む150mLの溶液を調製することにより精製した。原料粉末の不溶性の大きな不純物を200nmPTFEフィルターによる濾過によって除去した。ろ液は約20mg/mLのタンパク質濃度(ブラッドフォード法により測定)を有し、氷上で保持した。限外ろ過は、55psiの圧力と小さな不純物を除去するためミリポア(マサチューセッツ州ビルリカ)から得られた30kDaのカットオフを有する限外ろ過膜を使用して、300mLのAmiconセル(氷冷)を使用して実施した。限外ろ過は、各実施の後、セルに再充填して300mLに戻すことにより3回繰り返した。次に、最終的な残りの精製されたタンパク質溶液をコーティングの作製のために使用した。
【0107】
コーティング作製のドローダウン方法については、界面活性剤BYK 333を1−ブタノールで17質量%の濃度に希釈した。2K SB PUコーティングの樹脂部分は、20mLのガラスバイアル内で、2.1gのDesmophen A 870、0.5mLの1−ブチルアセテート中の任意の2種の光安定剤、及び0.1mLの界面活性剤を混合することにより調製した。UVAsとHALSは、樹脂溶液との混合前に200mg/mlの濃度になるように1−ブチルアセテートに溶解させた。光安定剤を加えたときに、各組成物は、最終乾燥質量の1%でHALSチヌビン152を含み、図4に示したUV吸収剤を1%〜18%の様々な濃度で含んでいた。ミクロスパチュラを使用して溶液を1分間混合した後、0.6mLの酵素溶液(又は酵素を含まない対照コーティング用のDI水)を加え、続いてさらに1分間混合した。この溶液を、次いで、0.8gのDesmodur N3600とともに20mLのガラスバイアルに注ぎ、1分間攪拌した。この配合によって、5質量%の酵素濃度が生じた。予め洗浄したアルミニウム試験パネルに、2ミル(50.8μm)の湿潤フィルム厚でドローダウンアプリケーターを用いて酵素含有コーティング材料をコーティングした。コーティングパネルは、80°Cで30分間ベークして、次に、室温で7日間硬化させた。
例2:
【0108】
タンパク質−ポリマーコーティングにおける波長特異的酵素不活化
【0109】
実施例1のコーティングを実施例1のドローダウン法によりアルミニウム試験パネルに適用した。試験パネルを、長波長パス(LWP)フィルタを使用してコーティングを覆うことにより、異なる波長の光に暴露した。いくつかのフィルタを、200、283、400、500又は600nmで50%透過カットオフで使用した。これは、入射光の全スペクトルを幾つかの試験波長範囲のカテゴリーに分ける:200〜283nm、283〜400nm、400〜500nm、及び500〜600nm、並びに>600nm。可視スペクトルからの光がないUV光の寄与を具体的に確認するために、試験パネルを350nmに25%透過ピーク及び80nmのバンドパスを有するフィルタで覆った。試験パネルを、キセノンランプを用いて光照射に供した。このキセノンランプは、熱及びUV光の両方への暴露が可能であることによりランプからの光が太陽光をよくまねたシステムを提供した。いくつかのパネルが、熱、湿気、及び/又はUV範囲内の光を含む光にさらされるように、パネルを耐候試験チャンバー内に配置した。異なる条件を表3に示すように基本的に同時に試験した。
【表3】
【0110】
試験パネルを、2時間ごとの24の耐候試験サイクルにさらした。ランプは、全試験期間中に、106W/m2で300〜400nmの波長範囲の紫外光を発した。各サイクルは、水噴霧の18分を含む。試験パネルを、それぞれ70℃に加熱した。各試験の終了時に対照試料(耐候試験にかけられなかった)と試験パネルを、酵素活性について分析した。
【0111】
α−アミラーゼ含有コーティングでコーティングされた試験パネルを、6.7mMの塩化ナトリウムを含む20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH 6.9)中のα−アミラーゼ基質1%w/vジャガイモ澱粉と試験パネルを反応させることによりアミド分解活性を求めることによって分析した。基質溶液(2mL)を、コーティングされた試験パネルの1つの長方形片(1.2cm×1.9cm)に加え、25℃で3分間インキュベートした。生成した還元糖の当量を、540nmでUV−VIS分光計(Cary 300−Varian Inc.、米国カリフォルニア州ウォルナットクリーク)を使用して決定した。α−アミラーゼ活性の1単位は、室温で3分間で澱粉から放出された1.0ミリグラムの還元糖(以前はマルトースに対して校正標準曲線から算出)として定義されている。コーティング内に組み込まれた酵素の活性を評価するために、コーティング表面を適度なグラインディング圧力(約0.5N)の下で、きめ細かい紙やすり(600番)で6回を前処理した。研磨後、回復した活性は、表面の酵素と同様に酵素アッセイによって決定した。
【0112】
サーモリシンを用いて調製されたコーティングを、Folin及びCiocalteau, J. Biol. Chem., 1927; 73; 627-50(引用により本明細書に援用する)に記載の方法に基本的に従って、表面のタンパク質分解活性及び組み込まれた酵素の活性に関して分析した。簡単に言えば、リン酸ナトリウム(0.05M、pH 7.5)緩衝液中の1mLの2%(w/v)カゼインを基材として、200μlの酢酸ナトリウム、5mMの酢酸カルシウム(10mM;pH 7.5)とともに使用した。基材溶液を37℃にするために3分間水浴中でプレインキュベートした。バチルス・ステロサーモフィラス(B. sterothermophilus)TLP系コーティングで被覆された1枚の試料プレート(1.2×1.9cm)を加えることによって反応を開始し、次に200rpmで10分間振盪したら、1mlの110mM三塩化酢酸(TCA)溶液を加えることによって反応を停止した。混合物を、遠心分離の前に、37℃で30分間インキュベートした。400μLのTCA可溶性画分中のチロシン等価物を、200μLの25%(v/v)のFolin-Ciocalteau試薬と1mLの0.5M炭酸ナトリウムを用いて660nmで決定した。活性の1単位は37℃で1分間あたりのチロシンの1.0μmolに相当する吸光度を生じるカゼインを加水分解する酵素の量として定義される。この結果はユニット/cm2に変換される。
【0113】
図2に示されるように、試験期間の間の熱、光及び水分への暴露によって、検出可能なα−アミラーゼ活性はゼロとなり、70%のサーモリシン活性が残った。熱及び光への暴露だけでは70%を超えるサーモリシン活性が残ったが、検出可能なα−アミラーゼ活性はほぼゼロであった。両酵素とも加熱のみのもとでは安定であった。全体的に見れば、これらのデータは、UV光に暴露されたコーティングは酵素活性の低下を示すことを示している。
【0114】
LWPカットオフフィルターで覆われた試験パネルを使用して同じ耐候試験を実施した。図3は、283〜400のUV波長が活性の低下に最も原因となることを示している。遠紫外光(200〜283nm)のみに暴露された場合のα−アミラーゼ活性は、酵素活性のわずか9%の低下を示した。近紫外領域の紫外光への曝露は、対照的に、65%の活性の低下をもたらした。可視波長(すなわち、>400nm)は13%以下の酵素活性のより低下を生じた。従って、近紫外線のUV光は、本発明のコーティング中の酵素に対して最も有害である。
例3:
【0115】
酵素の保護のための理想的なUV吸収剤の決定
【0116】
多くの様々なUV吸収剤(UVA)が当該技術分野で知られている。UV吸収剤の選択は、実施例2において酵素感受性の領域であると求められた280nm〜400nmの所望の波長範囲内のUV光を遮断するそれらの能力について試験した。図4のUV吸収剤を、実施例1のタンパク質−ポリマー組成物の厚さ30μmのフィルムに加えた場合の2%NVの添加濃度に対応する0.125mg/mlの最終濃度で酢酸ブチルに溶解させた。溶解させたUV吸収剤を光路長1cmの石英セルに入れ、UV透過について走査型分光光度計により分析した。試験したUV吸収剤の各々は、350〜400nmの範囲内のUV透過率の鋭い減少により表される類似の波長阻止パターンを示した(図5)。試験したUVAsの各々についてのカットオフ値(10%透過率)は図5Aに示されている。
【0117】
UVAの濃度が材料の吸収能力を変更するかどうかを判断するために様々な濃度のUVAsも調べた。UVAsのそれぞれを、0mg/mlから、実施例1のタンパク質−ポリマー組成物の厚さ30μmのフィルムに加えた場合の最終的な%量に対応する1mg/mlまでの範囲の濃度で酢酸ブチルに溶解させた。表4は、これらの代表的な濃度を示す。
【表4】
【0118】
例としてTinuvin 400を使用した図5B及び幾つかの試験したUVAsについてのカットオフ値(10%透過)の濃度依存性のまとめとしての図5Cに示されるように、UV吸光度の大きさは濃度に依存する。より高い濃度で試験したUVAsの各々は、より高い吸光度(右シフト)とそれに応じてより高いカットオフ波長を有する(図5C)。右シフトは、UVAの低濃度側でより顕著である(図5D)。全てのUVAsの各々について図5D中の濃度に対するカットオフ値の傾きを決定することで、表5に見られるように濃度の感受性が示された。
【表5】
【0119】
UV416は、濃度変化の感受性が最も高いと説明できる最も大きな傾き(3.2)を有し、400(2.6)が続く。BTZ基(図4)からのUVAsは同様な傾き値を有する。
実施例4〜26:
【0120】
タンパク質−ポリマーコーティングの酵素活性を保護するUV吸収剤の添加
【0121】
いくつかのUV吸収剤及びHALSを、実施例1の2パート溶剤系コーティング配合物における機能性について試験した。UVAs及びHALSを、樹脂及び酵素溶液と混合する前に、200mg/mlの濃度になるように1−ブチルアセテートに溶解させた。各組成物は、最終乾燥質量で1%のHALS TINUVIN 152を使用し、図4に示されているUV吸収剤を最終乾燥質量で1%〜18%の間の様々な濃度で使用して調製した。試験したUV吸収剤の各々は特有のカットオフ波長を有し、それらのカットオフ波長未満ではUV吸収剤により入射光の10%未満が透過した。
【0122】
図6に示されるように、すべてのUV添加剤や酵素の不在下で、クリアなPUコーティングは、可視光領域の全体で高い透過率(90%)を有し、350nmで減少し約275nmでカットオフ50%であった。UV添加剤の添加は、可視領域でのコーティングの透明度を変更しない。UVA含有コーティングのそれぞれについて、透過プロファイルの急激な減少がUV範囲内で観測された。T400の添加濃度を増加させると、溶液で観察されたのと同じ右シフトがコーティングでも観測され、カットオフ波長の右シフトをもたらした(図6)。
【0123】
300nm〜450nmの範囲を示している図6に見られるように、乾燥質量で8%の最終濃度のT400及びT384−2を含有するコーティングの透過プロファイルを5%のα−アミラーゼを含むコーティング間で400nmのエッジフィルター(対照)と比較した。8%のT384−2を含むコーティングは、392nmで50%のカットオフを有し、一方、8%のT400の場合には50%のカットオフは375nmであった(図7)。このように、同じ条件の下でコーティング中に使用された場合、UVA T384−2はT400よりもUV光をブロックする。これらのデータは、タンパク質−ポリマーコーティング中の酵素を酵素不活性化UV光の全スペクトルから保護するのにT384−2がより効果的であることを示唆している。
【0124】
酵素活性を保護するためUVAsのそれぞれの能力を、実施例2におけるように実施したコーティングの耐候試験前及び後に試験した。図8に示されているように、初期及び耐候試験の48時間後の残存活性を比較した。Tinuvin 400を含まない又はTinuvin 400を低添加量(例えば2%)で含むコーティング中の酵素は、露光のみの耐候試験によって完全に不活性化(100%活性低下)された。4%のUVA添加量は、酵素活性の92%の低下を示した。しかし、UVAsの高添加濃度(8%)で、酵素活性の大部分は保持された(耐候試験前と比較してわずか12%の低下)。T400の結果を、図7に示されるように、より高い波長カットオフを有するT384−2と比較した。T384−2を含むコーティングに組み込まれた酵素は、T400を含むコーティングよりも高い活性を保持した。このことはより長い波長のカットオフ値を有するUVAsは、酵素活性を保護するのに優れていることを示している(図9)。全体的にみれば、これらの結果は、タンパク質−ポリマーコーティングにUV添加剤を加えた場合に、耐候試験中、酵素活性が保護されたことを示している。
【0125】
本明細書に記載されているものに加えて、本発明の種々の変更は、上記の説明の当業者に明らかであろう。そのような変更は、添付の特許請求の範囲内に入ることを意図する。
【0126】
特に断らない限り、又は過度の実験なしに当業者によって合成されない限り、すべての試薬は当該分野で知られている供給源により得られることが理解されている。ヌクレオチド増幅、細胞のトランスフェクション、及びタンパク質の発現及び精製の方法も同様に当業者の水準の範囲内である。
【0127】
本明細書に記載した特許文献及び刊行物は、本発明が属する分野の当業者の水準を示す。これらの特許文献及び刊行物は、まるで各個々の出願又は刊行物が具体的かつ個別にそれらの教示の全体について引用により本明細書に援用されたかのように同程度に引用により本明細書に援用する。
【0128】
以上の説明は、本発明の特定の実施態様の例示であるが、その実施を制限するものではない。全ての均等物を含む以下の特許請求の範囲は、本発明の範囲を定義することを意図する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー樹脂;
架橋剤;
生物活性酵素;及び
少なくとも2種の紫外光安定剤;
を含み、少なくとも1種の光安定剤が立体障害のあるアミンであり、少なくとも1種の光安定剤がUV吸収剤であり、前記UV吸収剤が5質量%を超える濃度で存在する、硬化性のタンパク質−ポリマー組成物。
【請求項2】
前記ポリマー樹脂がヒドロキシル官能化アクリレート樹脂である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記架橋剤がポリイソシアネートである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリマー樹脂と前記架橋剤がウレタン結合により共有結合的に結合されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記立体障害のあるアミンが、2,4−ビス[N−ブチル−N−(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ]−6−(2−ヒドロキシエチルアミン)−1,3,5−トリアジンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記立体障害のあるアミンが1質量%で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記UV吸収剤が380nm以上の波長で10%のカットオフを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記UV吸収剤が280ナノメートル〜380ナノメートルの波長範囲で透過率10%以下の帯域阻止率を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記UV吸収剤が8質量%以上の濃度で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記UV吸収剤が、チヌビン384−2、チヌビン328、チヌビン928、チヌビン1130又はuv416である、請求項5に記載の組成物。
【請求項11】
前記ポリマー樹脂及び前記架橋剤がウレタン結合により共有結合的に結合されている、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記UV吸収剤が8質量%以上の濃度で存在する、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
ポリマー樹脂と界面活性剤と非水性有機溶剤と立体障害のあるアミンとUV吸収剤との混合物を用意する工程、ここで、前記UV吸収剤は、前記UV吸収剤が少なくとも5質量%存在する最終組成物を生じるのに十分な量で存在する;
単離された生物活性酵素を含み、界面活性剤を実質的に含まない水溶液を、前記混合物と混合してエマルジョンを生成させる工程;及び
前記エマルジョンを架橋剤と混合して硬化性のUV安定化されたタンパク質−ポリマー組成物を生成させる工程;
を含む、UV安定化されたタンパク質−ポリマーコンポジット材料の製造方法。
【請求項14】
前記硬化性組成物を硬化させて硬化したUV安定化されたタンパク質−ポリマーコンポジット材料を生成させることをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリマー樹脂がヒドロキシル官能化アクリレート樹脂である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記架橋剤がポリイソシアネートである、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記タンパク質が酵素である、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記酵素がα−アミラーゼ又はその類似体である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記立体障害のあるアミンが、1質量%で存在する2,4−ビス[N−ブチル−N−(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ]−6−(2−ヒドロキシエチルアミン)−1,3,5−トリアジンである、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記UV吸収剤が、380nm以上の波長で10%のカットオフを有する、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記UV吸収剤が、チヌビン384−2、チヌビン328、チヌビン928、チヌビン1130又はuv416である、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
前記UV吸収剤が8質量%以上の最終濃度で存在する、請求項13に記載の方法。
【請求項23】
紫外光による風化に対してタンパク質−ポリマー硬化性組成物における酵素活性を安定化する方法であって、
タンパク質が酵素であるタンパク質−ポリマー組成物に、少なくとも2種の紫外光安定剤を加えることを含み、少なくとも1種の光安定剤が立体障害のあるアミンであり、少なくとも1種の光安定剤がUV吸収剤であり、前記UV吸収剤が5質量%を超える濃度で存在する方法。
【請求項24】
前記立体障害のあるアミンが、2,4−ビス[N−ブチル−N−(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ]−6−(2−ヒドロキシエチルアミン)−1,3,5−トリアジンである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記立体障害のあるアミンが1質量%で存在する、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記UV吸収剤が、380nm以上の波長で10%のカットオフを有する、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記UV吸収剤が8質量%以上の最終濃度を生じるように加えられる、請求項23に記載の方法。
【請求項1】
ポリマー樹脂;
架橋剤;
生物活性酵素;及び
少なくとも2種の紫外光安定剤;
を含み、少なくとも1種の光安定剤が立体障害のあるアミンであり、少なくとも1種の光安定剤がUV吸収剤であり、前記UV吸収剤が5質量%を超える濃度で存在する、硬化性のタンパク質−ポリマー組成物。
【請求項2】
前記ポリマー樹脂がヒドロキシル官能化アクリレート樹脂である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記架橋剤がポリイソシアネートである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリマー樹脂と前記架橋剤がウレタン結合により共有結合的に結合されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記立体障害のあるアミンが、2,4−ビス[N−ブチル−N−(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ]−6−(2−ヒドロキシエチルアミン)−1,3,5−トリアジンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記立体障害のあるアミンが1質量%で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記UV吸収剤が380nm以上の波長で10%のカットオフを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記UV吸収剤が280ナノメートル〜380ナノメートルの波長範囲で透過率10%以下の帯域阻止率を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記UV吸収剤が8質量%以上の濃度で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記UV吸収剤が、チヌビン384−2、チヌビン328、チヌビン928、チヌビン1130又はuv416である、請求項5に記載の組成物。
【請求項11】
前記ポリマー樹脂及び前記架橋剤がウレタン結合により共有結合的に結合されている、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記UV吸収剤が8質量%以上の濃度で存在する、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
ポリマー樹脂と界面活性剤と非水性有機溶剤と立体障害のあるアミンとUV吸収剤との混合物を用意する工程、ここで、前記UV吸収剤は、前記UV吸収剤が少なくとも5質量%存在する最終組成物を生じるのに十分な量で存在する;
単離された生物活性酵素を含み、界面活性剤を実質的に含まない水溶液を、前記混合物と混合してエマルジョンを生成させる工程;及び
前記エマルジョンを架橋剤と混合して硬化性のUV安定化されたタンパク質−ポリマー組成物を生成させる工程;
を含む、UV安定化されたタンパク質−ポリマーコンポジット材料の製造方法。
【請求項14】
前記硬化性組成物を硬化させて硬化したUV安定化されたタンパク質−ポリマーコンポジット材料を生成させることをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリマー樹脂がヒドロキシル官能化アクリレート樹脂である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記架橋剤がポリイソシアネートである、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記タンパク質が酵素である、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記酵素がα−アミラーゼ又はその類似体である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記立体障害のあるアミンが、1質量%で存在する2,4−ビス[N−ブチル−N−(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ]−6−(2−ヒドロキシエチルアミン)−1,3,5−トリアジンである、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記UV吸収剤が、380nm以上の波長で10%のカットオフを有する、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記UV吸収剤が、チヌビン384−2、チヌビン328、チヌビン928、チヌビン1130又はuv416である、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
前記UV吸収剤が8質量%以上の最終濃度で存在する、請求項13に記載の方法。
【請求項23】
紫外光による風化に対してタンパク質−ポリマー硬化性組成物における酵素活性を安定化する方法であって、
タンパク質が酵素であるタンパク質−ポリマー組成物に、少なくとも2種の紫外光安定剤を加えることを含み、少なくとも1種の光安定剤が立体障害のあるアミンであり、少なくとも1種の光安定剤がUV吸収剤であり、前記UV吸収剤が5質量%を超える濃度で存在する方法。
【請求項24】
前記立体障害のあるアミンが、2,4−ビス[N−ブチル−N−(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ]−6−(2−ヒドロキシエチルアミン)−1,3,5−トリアジンである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記立体障害のあるアミンが1質量%で存在する、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記UV吸収剤が、380nm以上の波長で10%のカットオフを有する、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記UV吸収剤が8質量%以上の最終濃度を生じるように加えられる、請求項23に記載の方法。
【図1】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5D】
【図6】
【図7】
【図9】
【図2】
【図3】
【図5C】
【図8】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5D】
【図6】
【図7】
【図9】
【図2】
【図3】
【図5C】
【図8】
【公開番号】特開2012−167276(P2012−167276A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−27559(P2012−27559)
【出願日】平成24年2月10日(2012.2.10)
【出願人】(507342261)トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド (135)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−27559(P2012−27559)
【出願日】平成24年2月10日(2012.2.10)
【出願人】(507342261)トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド (135)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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