説明

UV硬化性オーバーコート組成物による光沢の制御方法

【課題】オーバーコートの塗布による、画像光沢の制御方法を提供する。
【解決手段】画像の光沢を制御する方法は、画像の所望とする光沢を決定する工程と、決定された所望の光沢に基づいて、オーバーコート組成物に含まれる、少なくとも1つの硬化性ワックスの量を設定する工程と、前記設定量の少なくとも1つの前記硬化性ワックスを含むよう、前記オーバーコート組成物を調製する工程と、前記オーバーコート組成物を被印刷物上に塗布する工程と、前記オーバーコート組成物を十分に硬化させるため、放射線を当てる工程と、を含み、前記オーバーコート組成物は、少なくとも1つのゲル化剤と、少なくとも1つの硬化性モノマーと、少なくとも1つの硬化性ワックスと、必要に応じて少なくとも1つの光開始剤とを含み、前記オーバーコート組成物は、放射線を当てると硬化する、ことを特徴とする方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、UV硬化性オーバーコートの塗布による、画像光沢の制御方法を示す。このUV硬化性オーバーコートは、硬化性ワックス成分を含むものである。
【背景技術】
【0002】
本UV硬化性オーバーコートは多くの長所を備えており、例えば、下に印刷した画像に画像耐久性を与え、同時に、オーバーコート組成物中の硬化性ワックスの量または被印刷物に塗布するオーバーコート組成物の量のいずれかにより、あるいはその両方によって、画像光沢を制御することができる。その他の長所も本件の記述から明らかとなろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7,276,614号
【特許文献2】米国特許第7,279,587号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
デジタルカラー印刷を行うプリンタは業務用印刷市場に広まり続けており、これらのプリンタで作成する画像の画像耐久性およびドキュメントオフセットは、改良を続ける上で取り組まなければならない課題となっている。画像耐久性やドキュメントオフセットの改良を図る代表的な方法は、オーバーコートまたはオーバープリントワニスの塗布である。
【0005】
画像耐久性およびドキュメントオフセットに加え、オーバーコート組成物は画像の光沢にも影響を与える。しばしば、オーバーコート組成物は光沢に悪影響を及ぼし、例えば、画像に望まれる光沢を変えて、一般に、画像をより艶消しの外観にしてしまう。
【0006】
更に、画像耐久性を与えるためだけでなく、画像光沢の制御にも使用できる、デジタル的に塗布可能なUV硬化性インキも求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施の形態では、画像の光沢を制御する方法が記載され、前記方法は、画像の所望とする光沢を決定する工程と、決定された所望の光沢に基づいて、オーバーコート組成物に含まれる、少なくとも1つの硬化性ワックスの量を設定する工程と、前記設定量の少なくとも1つの前記硬化性ワックスを含むよう、前記オーバーコート組成物を調製する工程と、前記オーバーコート組成物を被印刷物上に塗布する工程と、前記オーバーコート組成物を十分に硬化させるため、放射線を当てる工程と、を含み、前記オーバーコート組成物は、少なくとも1つのゲル化剤と、少なくとも1つの硬化性モノマーと、少なくとも1つの硬化性ワックスと、必要に応じて少なくとも1つの光開始剤とを含み、前記オーバーコート組成物は、放射線を当てると硬化する、方法である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
UV硬化性オーバーコート組成物を用いて画像の光沢を制御する方法を述べる。このオーバーコート組成物は、少なくとも1つのゲル化剤と、少なくとも1つの硬化性モノマーと、少なくとも1つの硬化性ワックスと、必要に応じて少なくとも1つの光開始剤とを含むものである。画像の光沢は、(1)オーバーコート組成物中の少なくとも1つの硬化性ワックスの量の設定および/または調節、または、(2)被印刷物上に塗布するオーバーコート組成物の量の設定および/または調節、のいずれか、あるいはその両方により、オーバーコート組成物を用いて制御する。これらの変数の一方または両方を適切に制御することで、最終的な画像を所望の光沢、例えば、画像を形成する前に決定しておいた所望の光沢にほぼ等しい光沢を持つものとすることができる。“ほぼ等しい光沢”とは、例えば、少なくともオーバーコート組成物を塗布した画像部分での画像光沢が、所望の光沢の約10%以内、望ましくは約5%以内、または約2%以内であることを指す。
【0009】
オーバーコート組成物は、少なくとも1つのゲル化剤と、少なくとも1つの硬化性モノマーと、少なくとも1つの硬化性ワックスと、必要に応じて少なくとも1つの光開始剤とを含む、放射線硬化性、特にUV硬化性の組成物である。このオーバーコート組成物には、必要に応じて、安定剤、界面活性剤、または他の添加剤も加えることができる。オーバーコート組成物は、殆ど、例えば、全く着色剤を含まないことが好ましい。
【0010】
オーバーコート組成物は、約50℃から約120℃の温度で塗布する。塗布温度において、オーバーコート組成物は、約5から約16cPの粘度を持つ。ここに示す粘度値は、1s−1の剪断速度において円錐および平板法(cone and plate technique)を用いて求める。このように、このオーバーコート組成物は、インクジェットによる塗布など、オーバーコート組成物をデジタル的に塗布可能な装置での使用に非常に適している。
【0011】
少なくとも1つのゲル化剤は、少なくとも、所望の温度範囲内でオーバーコート組成物の粘度を増大させるよう作用する。例えば、ゲル化剤は、ゲル化剤のゲル点より低い温度、例えば、オーバーコート組成物の塗布温度より低い温度において、オーバーコート組成物内で固体状のゲルを形成する。例えば、固体状の相におけるオーバーコート組成物の粘度範囲は、約10から約10cPである。一般にゲル相中では、固体状相と液相とが共存しており、固体状相が液相全体に3次元網目構造を形成し、液相が巨視的レベルで流動するのを防いでいる。温度をオーバーコート組成物のゲル点以上または以下に変化させると、オーバーコート組成物はゲル状態と液体状態との間で熱的な可逆転移を示す。
【0012】
オーバーコート組成物がゲル状態である温度は、例えば、およそ約15℃から約55℃である。ゲルオーバーコート組成物は、約60℃から約90℃の温度で液化する。塗布温度での液体状態からゲル状態へ冷却すると、オーバーコート組成物の粘度は著しく増大する。粘度は、粘性率の値で少なくとも3桁増大する。
【0013】
放射線硬化性オーバーコート組成物における使用に適したゲル化剤としては、硬化性アミドと硬化性ポリアミド−エポキシアクリラート成分とポリアミド成分とを含む硬化性ゲル化剤、硬化性エポキシ樹脂とポリアミド樹脂とを含む硬化性複合ゲル化剤、これらの混合物などが挙げられる。オーバーコート組成物にゲル化剤を加えると、オーバーコート組成物が冷えるにつれてオーバーコート組成物の粘度が急激に増大するため、被印刷物へ過剰に浸透させることなく、オーバーコート組成物を被印刷物(その上に画像がある、またはない)に被覆できる。紙などの多孔性の被印刷物に液体が過剰に浸透すると、被印刷物の不透明性に好ましくない低下が起こることがある。硬化性ゲル化剤は、オーバーコート組成物の少なくとも1つのモノマーの硬化にも関与することがある。酸素はラジカル重合の阻害剤であるため、ゲル化剤を加えて粘度を増大させると、オーバーコート中への酸素の拡散も少なくなる。
【0014】
オーバーコート組成物における使用に適したゲル化剤は、シリコーン油をその上に載せた被印刷物の上にオーバーコート組成物を用いた場合に、ぬれ性を高めるため、両親媒性であっても良い。両親媒性とは、分子中に極性部分と非極性部分の両方を備えた分子をいう。例えば、ゲル化剤は、長い非極性炭化水素鎖と、極性アミド結合とを含むことができる。
【0015】
使用に適したアミドゲル化剤としては、米国特許第7,276,614号および米国特許第7,279,587号に記載のものが挙げられる。
【0016】
米国特許第7,279,587号に記載のように、アミドゲル化剤は次の式で示される化合物であっても良い。
【0017】
【化1】


式中、
は、(i)、(ii)、(iii)、または(iv)である。
【0018】
(i)約1から約12個の炭素原子を含むアルキレン基(アルキレン基は、直鎖および分枝、飽和および不飽和、環式および非環式、置換および非置換アルキレン基などの2価の脂肪族基またはアルキル基であり、アルキレン基中に、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素などのヘテロ原子が存在しても、存在していなくても良い)
(ii)約1から約15個の炭素原子を含むアリーレン基(アリーレン基は、置換および非置換アリーレン基などの2価の芳香族基またはアリール基であり、アリーレン基中に、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素などのヘテロ原子が存在しても、存在していなくても良い)
(iii)約6から約32個の炭素原子を含むアリールアルキレン基(アリールアルキレン基は、置換および非置換アリールアルキレン基などの2価のアリールアルキル基であり、アリールアルキレン基のアルキル部分は、直鎖または分枝、飽和または不飽和、環式または非環式とすることができ、アリールアルキレン基のアリールまたはアルキル部分のいずれかに、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素などのヘテロ原子が存在しても、存在していなくても良い)
(iv)約5から約32個の炭素原子を含むアルキルアリーレン基(アルキルアリーレン基は、置換および非置換アルキルアリーレン基などの2価のアルキルアリール基であり、アルキルアリーレン基のアルキル部分は、直鎖または分枝、飽和または不飽和、環式または非環式とすることができ、アルキルアリーレン基のアリールまたはアルキル部分のいずれかに、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素などのヘテロ原子が存在しても、存在していなくても良い)
このとき、置換アルキレン、アリーレン、アリールアルキレン、およびアルキルアリーレン基上の置換基は、ハロゲン原子、シアノ基、ピリジン基、ピリジニウム基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基、カルボニル基、チオカルボニル基、スルフィド基、ニトロ基、ニトロソ基、アシル基、アゾ基、ウレタン基、ウレア基、これらを混ぜ合わせたもの(但し、これらに限定しない)などであり、2つ以上の置換基が互いに結合して環を形成していても良い。
【0019】
およびR’はそれぞれ互いに独立して、(i)、(ii)、(iii)、または(iv)である。
【0020】
(i)約1から約54個の炭素原子を含むアルキレン基
(ii)約5から約15個の炭素原子を含むアリーレン基
(iii)約6から約32個の炭素原子を含むアリールアルキレン基
(iv)約6から約32個の炭素原子を含むアルキルアリーレン基
このとき、置換アルキレン、アリーレン、アリールアルキレン、およびアルキルアリーレン基上の置換基は、ハロゲン原子、シアノ基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基、カルボニル基、チオカルボニル基、ホスフィン基、ホスホニウム基、ホスファート基、ニトリル基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、アシル基、酸無水物基、アジド基、アゾ基、シアナト基、ウレタン基、ウレア基、これらを混ぜ合わせたものなどであり、2つ以上の置換基が互いに結合して環を形成していても良い。
【0021】
およびR’はそれぞれ互いに独立して、(a)または(b)のいずれかである。
【0022】
(a)光開始基、例えば、
次の式で示される、1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オンから誘導した基、
【化2】


次の式で示される、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンから誘導した基、
【化3】


次の式で示される、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンから誘導した基、
【化4】


次の式で示される、N,N−ジメチルエタノールアミン、またはN,N−ジメチルエチレンジアミンから誘導した基、
【化5】


など。
【0023】
(b)次の、(i)、(ii)、(iii)、または(iv)である基。
(i)約2から約100個の炭素原子を含むアルキル基(直鎖および分枝、飽和および不飽和、環式および非環式、置換および非置換アルキル基などであり、アルキル基中に、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素などのヘテロ原子が存在しても、存在していなくても良い)
(ii)約5から約100個の炭素原子を含むアリール基(置換および非置換アリール基などであり、アリール基中に、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素などのヘテロ原子が存在しても、存在していなくても良い)
(iii)約5から約100個の炭素原子を含むアリールアルキル基(置換および非置換アリールアルキル基などであり、アリールアルキル基のアルキル部分は、直鎖または分枝、飽和または不飽和、環式または非環式とすることができ、アリールアルキル基のアリールまたはアルキル部分のいずれかに、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素などのヘテロ原子が存在しても、存在していなくても良い)
(iv)約5から約100個の炭素原子を含むアルキルアリール基(置換および非置換アルキルアリール基などであり、アルキルアリール基のアルキル部分は、直鎖または分枝、飽和または不飽和、環式または非環式とすることができ、アルキルアリール基のアリールまたはアルキル部分のいずれかに、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素などのヘテロ原子が存在しても、存在していなくても良い)
このとき、置換アルキル、アリールアルキル、およびアルキルアリール基上の置換基は、ハロゲン原子、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基、カルボニル基、チオカルボニル基、スルフィド基、ホスフィン基、ホスホニウム基、ホスファート基、ニトリル基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、アシル基、酸無水物基、アジド基、アゾ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、カルボキシラート基、カルボン酸基、ウレタン基、ウレア基、これらを混ぜ合わせたものなどであり、2つ以上の置換基が互いに結合して環を形成していても良い。
【0024】
XおよびX’はそれぞれ互いに独立して、酸素原子、または式−NR−で示される基であって、式中、Rは、(i)、(ii)、(iii)、(iv)、または(v)である。
【0025】
(i)水素原子。
(ii)約5から約100個の炭素原子を含む、直鎖および分枝、飽和および不飽和、環式および非環式、置換および非置換アルキル基などのアルキル基であり、アルキル基中に、ヘテロ原子が存在しても、存在していなくても良い。
(iii)約5から約100個の炭素原子を含む、置換および非置換アリール基などのアリール基であり、アリール基中に、ヘテロ原子が存在しても、存在していなくても良い。
(iv)約5から約100個の炭素原子を含む、置換および非置換アリールアルキル基などのアリールアルキル基であり、アリールアルキル基のアルキル部分は、直鎖または分枝、飽和または不飽和、環式または非環式とすることができ、アリールアルキル基のアリールまたはアルキル部分のいずれかに、ヘテロ原子が存在しても、存在していなくても良い。
(v)約5から約100個の炭素原子を含む、置換および非置換アルキルアリール基などのアルキルアリール基であり、アルキルアリール基のアルキル部分は、直鎖または分枝、飽和または不飽和、環式または非環式とすることができ、アルキルアリール基のアリールまたはアルキル部分のいずれかに、ヘテロ原子が存在しても、存在していなくても良い。
このとき、置換アルキル、アリール、アリールアルキル、およびアルキルアリール基上の置換基は、ハロゲン原子、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基、カルボニル基、チオカルボニル基、スルファート基、スルホナート基、スルホン酸基、スルフィド基、スルホキシド基、ホスフィン基、ホスホニウム基、ホスファート基、ニトリル基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホン基、アシル基、酸無水物基、アジド基、アゾ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、カルボキシラート基、カルボン酸基、ウレタン基、ウレア基、これらを混ぜ合わせたものなどであり、2つ以上の置換基が互いに結合して環を形成していても良い。
【0026】
上記の具体的な適当な置換基およびゲル化剤は、米国特許第7,279,587号および米国特許第7,276,614号に更に述べられているため、本件では更に詳しくは述べない。
【0027】
実施の形態において、ゲル化剤は、(I)、(II)、および(III)の混合物であっても良い。
【0028】
(I)は、
【化6】


(II)は、
【化7】


(III)は、
【化8】


式中、−C3456+a−は、分枝アルキレン基を示している。このアルキレン基は不飽和基や環状基を含んでいても良く、aは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12の整数である。
【0029】
実施の形態において、ゲル化剤は、例えば、硬化性エポキシ樹脂とポリアミド樹脂とから成る複合ゲル化剤であっても良い。適当な複合ゲル化剤は、同一出願人による、米国特許出願第2007/0120921号に記載されている。
【0030】
複合ゲル化剤中のエポキシ樹脂成分は、適当なエポキシ基含有材料であればどのようなものでも良い。実施の形態において、エポキシ基を含む成分としては、ポリフェノール系エポキシ樹脂またはポリオール系エポキシ樹脂のいずれか、あるいはその混合物の、ジグリシジルエーテル類が挙げられる。つまり、実施の形態において、エポキシ樹脂は、分子の末端に置かれた2つのエポキシ官能基を持っている。実施の形態のポリフェノール系エポキシ樹脂は、2つまでのグリシジルエーテル末端基を持つビスフェノールA−コ−エピクロロヒドリン樹脂である。ポリオール系エポキシ樹脂は、2つまでのグリシジルエーテル末端基を持つジプロピレングリコール−コ−エピクロロヒドリン樹脂とすることができる。適当なエポキシ樹脂は、約200から約800の範囲の質量平均分子量を持つものである。市販品として入手可能なエポキシ樹脂は、例えば、DER 383などの、ダウ・ケミカル社(Dow Chemical Corp)製のビスフェノールA系エポキシ樹脂、あるいは、DER 736などの、ダウ・ケミカル社製のジプロピレングリコール系樹脂である。別の入手源からのエポキシ系材料、例えば、植物または動物由来のエポキシ化トリグリセリド脂肪酸エステル類、例えば、エポキシ化亜麻仁油、菜種油など、またはその混合物なども使用できる。植物油由来のエポキシ化合物、例えば、ペンシルベニア州フィラデルフィア、アルケマ社(Arkema Inc.)製のVIKOFLEX類なども使用できる。このように、エポキシ樹脂成分は、不飽和カルボン酸類や他の不飽和試薬との化学反応により、アクリラートまたは(メタ)アクリラート、ビニルエーテル、アリルエーテルなどで官能化されている。例えば、樹脂の末端エポキシド基は、この化学反応で開環し、(メタ)アクリル酸とのエステル化反応によって(メタ)アクリル酸エステルに変換される。
【0031】
エポキシ−ポリアミド複合ゲル化剤のポリアミド成分としては、適当であればどのようなポリアミド材料も使用できる。実施の形態において、ポリアミドは、例えば、天然由来のもの(例えば、ヤシ油、菜種油、ヒマシ油など。またこれらの混合物)から得た重合脂肪酸や、オレイン酸、リノール酸などのC−18不飽和酸材料を二量体化して調製した、炭化水素“ダイマー酸”として一般に知られている重合脂肪酸と、ジアミン(例えば、エチレンジアミンなどのアルキレンジアミン類、DYTEK(登録商標)シリーズのジアミン類、ポリ(アルキレンオキシ)ジアミン類、等)などのポリアミンとから誘導したポリアミド樹脂、あるいは、ポリエステル−ポリアミド類やポリエーテル−ポリアミド類などのポリアミド類の共重合体から成るものである。ゲル化剤の調製に、1つ以上のポリアミド樹脂を用いても良い。市販品として入手可能なポリアミド樹脂としては、例えば、コグニス・コーポレーション(Cognis Corporation)(前ヘンケル・コーポレーション(Henkel Corp.))製の、VERSAMIDシリーズのポリアミド類、特に、VERSAMID 335、VERSAMID 338、VERSAMID 795、およびVERSAMID 963が挙げられる。これらはいずれも、低分子量、低アミン数のものである。アリゾナ・ケミカル・カンパニー(Arizona Chemical Company)製のSYLVAGEL(登録商標)ポリアミド樹脂や、ポリエーテル−ポリアミド樹脂などのその変性物も使用できる。アリゾナ・ケミカル・カンパニー製のSYLVAGEL(登録商標)樹脂の組成は、次の一般式を持つポリアルキレンオキシジアミンポリアミド類として示されている。
【0032】
【化9】


式中、Rは、少なくとも17個の炭素を含むアルキル基であり、Rは、ポリアルキレンオキシドを含み、Rは、C−6炭素環基を含み、nは、少なくとも1の整数である。
【0033】
ゲル化剤は、例えば、同一出願人による、米国特許出願第2007/0120924号に開示のような、硬化性ポリアミド−エポキシアクリラート成分とポリアミド成分とを含むものであっても良い。硬化性ポリアミド−エポキシアクリラートは、その中に少なくとも1つの官能基を含むことにより硬化する。市販のポリアミド−エポキシアクリラートは、コグニス(Cognis)製のPHOTOMER(登録商標)RM370である。硬化性ポリアミド−エポキシアクリラートは、硬化性エポキシ樹脂とポリアミド樹脂とから成る硬化性複合ゲル化剤として先に示した構造のものから選んでも良い。
【0034】
オーバーコート組成物は、適当な量、例えば、オーバーコート組成物の約1から約50質量%のゲル化剤を含んでいる。
【0035】
オーバーコート組成物の少なくとも1つの硬化性モノマーの例としては、プロポキシル化ネオペンチルグリコール=ジアクリラート(サートマー(Sartomer)製のSR−9003など)、ジエチレングリコール=ジアクリラート、トリエチレングリコール=ジアクリラート、ヘキサンジオール=ジアクリラート、ジプロピレングリコール=ジアクリラート、トリプロピレングリコール=ジアクリラート、アルコキシル化ネオペンチルグリコール=ジアクリラート、イソデシル=アクリラート、トリデシル=アクリラート、イソボルニル=アクリラート、プロポキシル化トリメチロールプロパン=トリアクリラート、エトキシル化トリメチロールプロパン=トリアクリラート、ジトリメチロールプロパン=テトラアクリラート、ジペンタエリトリトール=ペンタアクリラート、エトキシル化ペンタエリトリトール=テトラアクリラート、プロポキシル化グリセロール=トリアクリラート、イソボルニル=メタクリラート、ラウリル=アクリラート、ラウリル=メタクリラート、ネオペンチルグリコールプロポキシル化メチルエーテル=モノアクリラート、イソデシル=メタクリラート、カプロラクトン=アクリラート、2−フェノキシエチル=アクリラート、イソオクチル=アクリラート、イソオクチル=メタクリラート、ブチル=アクリラート、これらの混合物などが挙げられる。
【0036】
“硬化性モノマー”には、硬化性オリゴマー類も含まれるものとし、これもオーバーコート組成物に用いることができる。
【0037】
実施の形態において、硬化性モノマーは、プロポキシル化ネオペンチルグリコール=ジアクリラート(サートマー製のSR−9003など)と、ジペンタエリトリトール=ペンタアクリラート(サートマー製のSR399LVなど)の両方を含んでいる。ペンタアクリラートを加えると、ジアクリラートに比べ、より官能性が与えられて反応性が高くなるため有利である。しかし、ペンタアクリラートの量が多すぎると塗布温度における組成物の粘度に悪影響を及ぼすことがあるため、オーバーコート組成物中での量は制限する必要がある。このため、ペンタアクリラートは、組成物の10質量%まで、例えば、組成物の0.5から5質量%とする。
【0038】
実施の形態において、硬化性モノマーは、オーバーコート組成物中に、例えば、オーバーコート組成物の約20から約95質量%の量で加えられている。
【0039】
オーバーコート組成物には必要に応じて、硬化、例えば、UV硬化を開始するため、少なくとも1つの光開始剤を更に加えても良い。配合物の硬化性成分の硬化を開始するには、放射線、例えば、UV光線を吸収する、どのような光開始剤も使用できるが、硬化の際にあまり黄色に着色しない光開始剤が望ましい。
【0040】
オーバーコート組成物に含まれる光開始剤の総量は、例えば、オーバーコート組成物の約0から約15質量%である。実施の形態において、例えば、硬化エネルギー源として電子線を用いる場合、組成物に光開始剤を加えなくても良い。
【0041】
オーバーコート組成物は更に、少なくとも1つの硬化性ワックスを含んでいても良い。硬化性ワックスは、後に示すようにオーバーコート組成物で覆った画像の光沢を制御するために用いられる。ワックスは、室温、具体的には25℃で固体である。つまり、ワックスを加えると、塗布温度から冷めるにつれてオーバーコート組成物の粘度が増大し易くなる。このように、オーバーコート組成物が被印刷物ににじむのを防ぐ上で、ワックスはゲル化剤の助けとなる。
【0042】
硬化性ワックスは、他の成分と混和性で、硬化性モノマーと重合してポリマーを生成するものであればどのようなワックス成分であっても良い。“ワックス”の語には、例えば、一般にワックス類と呼ばれる、様々な天然材料、変性した天然材料、合成材料が含まれる。
【0043】
硬化性ワックス類の適当な例としては、硬化性の基を含む、または硬化性基で官能化したワックス類が挙げられる(但し、これらに限定しない)。硬化性基としては、例えば、アクリラート、メタクリラート、アルケン、アリルエーテル、エポキシド、オキセタンなどが挙げられる。これらのワックス類は、カルボン酸やヒドロキシルなどの変換可能な官能基を備えたワックスの反応によって合成可能である。本件に示す硬化性ワックス類は、開示されているモノマー(類)と共に硬化することができる。
【0044】
硬化性基で官能化できるヒドロキシル末端化ポリエチレンワックス類の適当な例としては、例えば、CH−(CH−CHOHの構造を持つ炭素鎖(鎖長nは混合物であって、平均鎖長は、約16から約50の範囲とすることができる)と、同様の平均鎖長の直鎖低分子量ポリエチレンとの混合物が挙げられる。このようなワックス類の適当な例としては、例えば、それぞれおよそ375、460、550、700g/molに等しいMを持つ、UNILIN(登録商標)350、UNILIN(登録商標)425、UNILIN(登録)550、UNILIN(登録)700などの、UNILIN(登録商標)シリーズの材料が挙げられる。これらのワックス類はいずれも、ベーカー・ペトロライト(Baker-Petrolite)より市販されている。2,2−ジアルキル−1−エタノール類であることを特徴とする、ゲルベアルコール類も適当な化合物である。代表的なゲルベアルコール類としては、約16から約36個の炭素を含むものが挙げられ、その多くは、ニュージャージー州ニューアーク、Jarchem Industries Inc.より市販されている。デラウェア州ニューカッスル、Uniqema製の、PRIPOL(登録商標)2033(次の式で示される異性体や他の分枝型異性体を含むC−36ダイマージオール混合物であって、不飽和基や環状基を含んでいても良い)も使用できる。
【0045】
【化10】

【0046】
このような種類のC36ダイマージオール類に関する情報は、例えば、“Dimer Acids”Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology, Vol. 8, 4th Ed.(1992), pp. 223 to 237に更に示されている。これらのアルコール類を、UV硬化性部分を備えたカルボン酸類と反応させて、反応性エステル類を生成することができる。このような酸類の例としては、シグマ・アルドリッチ社(Sigma-Aldrich Co.)製の、アクリルおよびメタクリル酸類が挙げられる。
【0047】
硬化性の基で官能化できる、カルボン酸末端化ポリエチレンワックス類の適当な例としては、CH−(CH−COOHの構造を持つ炭素鎖(鎖長nは混合物であって、平均鎖長は約16から約50)と、同様の平均鎖長の直鎖低分子量ポリエチレンとの混合物が挙げられる。このようなワックス類の適当な例としては、それぞれおよそ390、475、565、および720g/molに等しいMを持つ、UNICID(登録商標)350、UNICID(登録商標)425、UNICID(登録商標)550、およびUNICID(登録商標)700が挙げられる(ただし、これらに限定しない)。その他の適当なワックス類は、CH−(CH−COOHの構造を持つもの、例えば、n=14であるヘキサデカン酸またはパルミチン酸、n=15であるヘプタデカン酸またはマルガリン酸またはダツル酸(daturic acid)、n=16であるオクタデカン酸またはステアリン酸、n=18であるエイコサン酸またはアラキン酸、n=20であるドコサン酸またはベヘン酸、n=22であるテトラコサン酸またはリグノセリン酸、n=24であるヘキサコサン酸またはセロチン酸、n=25であるヘプタコサン酸またはカルボセリン酸、n=26であるオクタコサン酸またはモンタン酸、n=28であるトリアコンタン酸またはメリシン酸、n=30であるドトリアコンタン酸またはラクセロン酸、n=31であるトリトリアコンタン酸またはセロメリシン酸(ceromelissic acid)またはプシリン酸(psyllic acid)、n=32であるテトラトリアコンタン酸またはゲド酸(geddic acid)、n=33であるペンタトリアコンタン酸またはセロプラスチン酸(ceroplastic acid)などである。2,2−ジアルキルエタン酸類であることを特徴とするゲルベ酸類も適当な化合物である。代表的なゲルベ酸類としては、16から36個の炭素を含むものが挙げられ、その多くは、ニュージャージー州ニューアーク、Jarchem Industries Inc.より市販されている。デラウェア州ニューカッスル、Uniqema製の、PRIPOL(登録商標)1009(次の式で示される異性体や他の分枝異性体を含むC−36ダイマー酸混合物であって、不飽和基や環状基を含んでいても良い)も使用できる。
【0048】
【化11】

【0049】
このような種類のC36ダイマー酸類に関する情報は、例えば、“Dimer Acids” Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology, Vol. 8, 4th Ed. (1992), pp. 223 to 237 に更に示されている。これらのカルボン酸類を、UV硬化性部分を備えたアルコール類と反応させて、反応性エステルを生成することができる。このようなアルコール類の例としては、シグマ・アルドリッチ社製の2−アリルオキシエタノール、次の式で示される、サートマー社製のSR495B、
【化12】


および、次の式で示される、サートマー社製のCD572(R=H、n=10)およびSR604(R=Me(メチル)、n=4)が挙げられる(但し、これらに限定しない)。
【化13】

【0050】
硬化性ワックスは、オーバーコート組成物中に、例えば、オーバーコート組成物の約0.1から約30質量%、例えば、オーバーコート組成物の約0.5から約20質量%または約0.5から15質量%の量で加えることができる。加える硬化性ワックスの量は、オーバーコート組成物が画像に与える光沢に影響するため、オーバーコート組成物によって与えられる所望の光沢に応じて、決定、設定、および/または調節する。
【0051】
オーバーコート組成物には、必要に応じて抗酸化安定剤も加えることができる。オーバーコート組成物に必要に応じて加えられる抗酸化剤は、画像の酸化を防ぎ、またインキ製造工程の加熱部分におけるインキ成分の酸化も防止する。
【0052】
オーバーコート組成物には更に、一般的な添加剤を必要に応じて加え、これら一般的な添加剤による公知の機能的長所を伸ばしても良い。このような添加剤としては、例えば、消泡剤、界面活性剤、スリップおよびレベリング剤などが挙げられる。
【0053】
オーバーコート組成物は、ほぼ無色である。“ほぼ無色”とは、硬化後のオーバーコート組成物が、殆どまたは完全に光透過性または透明であることをいう。このため、組成物は、顔料、染料、またはこれらの混合物などの着色剤を殆ど含んでいない。本件に記載のオーバーコート組成物は、硬化しても黄色くならず、殆どまたは完全に光透過性または透明のままである。つまり、L値、または、k、c、m、yに、測定可能な変化は殆どまたは全く認められない。“殆ど黄色くならない”または“殆どまたは完全に光透過性または透明”とは、オーバーコート組成物の硬化の際の色の変化または着色が、約15%以下、例えば、約10%以下または約5%以下、例えば、約0%であることを指す。
【0054】
実施の形態において、本件に記載のオーバーコート組成物は、硬化性モノマーと硬化性ワックスとゲル化剤とを、約75℃から約150℃の温度において、均一になるまで、例えば、約0.1時間から約3時間混ぜ合わせて調製する。混合物が均一になったら光開始剤を加える。あるいは、硬化性モノマーと硬化性ワックスとゲル化剤と光開始剤とを直接混ぜ合わせても良い。
【0055】
上記のオーバーコート組成物を用いて光沢を制御する方法において、組成物中の硬化性ワックスの量を変えて、オーバーコート組成物が与える光沢を変えることができる。例えば、オーバーコート組成物に含まれる硬化性ワックスが5質量%以下であると、このオーバーコート組成物の塗布により、下に印刷されている画像または被印刷物の光沢が増大し(画像をより光沢性にする)、一方、オーバーコート組成物中の硬化性ワックスの量を増すと、被覆した画像の光沢が減少する(最初の光沢の増加、および/または、下に印刷されている画像または被印刷物と比較して、画像の光沢を下げ、またはよりつや消しにする)。
【0056】
このように、硬化性ワックスのこの特性を利用して、例えば、まず、最終画像の所望の光沢を決定し、次に、決定した所望の光沢に応じて、オーバーコート組成物に含まれる少なくとも1つの硬化性ワックスの量を設定し、設定量の少なくとも1つの硬化性ワックスを含むようオーバーコート組成物を調製することで、画像の光沢を制御することができる。次に、このオーバーコート組成物を被印刷物上に塗布、例えば、紙などの被印刷物上に予め形成しておいた画像またはその一部に塗布し、あるいは、被印刷物またはその一部に直接塗布し、塗布した組成物に適当な放射線を当てて硬化することができる。得られる最終画像を、画像耐久性と、所望の光沢にほぼ等しい光沢の、両方を備えるよう作ることができる。
【0057】
実施の形態において、オーバーコート組成物に加える少なくとも1つの硬化性ワックスの量の設定は、予め決定した所望の光沢を、オーバーコートする画像の色(所定の色)に関する記入項目と、オーバーコート組成物中の少なくとも1つの硬化性ワックスの量を変えた場合にこのオーバーコート組成物で得られる光沢に関する記入項目とを含む、照合表と照らし合わせることで行うことができる。このような照合表は、以下の実施例に含まれている。照合表は、指定の塗布量で様々な異なる色に与えられる光沢に関し、オーバーコート組成物を予め評価しておくことで得られる。
【0058】
様々な照合表に関する情報は、データベースに納められており、これを元に、コンピュータなどの計算機で、所望の光沢とするために必要な硬化性ワックスの推定量を求め、こうして得たものを用いて、オーバーコート組成物に含まれる硬化性ワックスの量を設定する。照合表が所定の色または硬化性ワックス量に関して正確な記入項目を含んでいない場合には、これが有益なことがある。
【0059】
硬化性ワックスの量に加え、被印刷物および/または被印刷物上の印刷画像に塗布するオーバーコート組成物の量も、最終画像の光沢に影響する。一般に、使用するオーバーコート組成物の量が多いと最終画像の光沢レベルは低下する。この情報は、最終画像の光沢の制御にも利用できる。つまり、予め定められた所望の光沢を、塗布するオーバーコート組成物の量を変えた記入項目を更に含む、上記のような照合表と照らし合わせることで、塗布するオーバーコート組成物の量の設定が行える。このような照合表も、以下の実施例に含まれている。照合表は、様々な異なるコーティング量で様々な異なる色に与えられる光沢に関して、オーバーコート組成物を予め評価しておくことで得られる。先と同様に、照合表のデータベースと計算機を用いて、オーバーコート組成物の塗布量を求めることができる。
【0060】
このように、本件の方法は、オーバーコート組成物を塗布した後の最終画像の光沢を制御するものである。光沢の第1の制御は、例えば、100%の相対密度で被印刷物/画像上に被覆する場合、組成物に含まれるワックスの量と、この組成物で得られる光沢とを相関させ、オーバーコート組成物を配合することによって行う。オーバーコート配合物は、装置に供給する前に調製することが多いが、使用直前に必要量のワックスを残りのオーバーコート組成物に加えて混合し、装置中で配合することもできる。それぞれ含まれるワックス量の異なる、複数の異なるオーバーコート組成物を収容するように装置を作り、連続印刷作業(print runs)や個別印刷作業(separate print jobs)の間に、必要に応じて光沢を変えられるようにしても良い。
【0061】
光沢に対する第2の制御は、供給するオーバーコート組成物の量を制御することで行う。その長所は、装置中に収容するオーバーコート組成物の種類をより少なく、可能であればたった1種類としても、オーバーコート組成物の塗布量を調節することで、得られる光沢の調節が可能であることである。
【0062】
オーバーコート組成物は、画像が印刷される被印刷物上に直接塗布しても、および/または、被印刷物上に予め形成した画像の上に直接塗布しても良い。つまり、オーバーコート組成物は、(1)被印刷物上に形成された少なくとも1つの印刷画像の一部(全体より小さい部分)または全体の上に、(2)被印刷物の1つ以上の部分の上、および被印刷物の全印刷可能部分(印刷可能部分とは、印刷装置で画像を形成することのできる被印刷物の部分)より小さい部分の上、あるいは、(3)被印刷物の全印刷可能部分のほぼ全体に塗布することができる。オーバーコート組成物を、被印刷物の全体より小さい部分、または被印刷物上の画像に塗布すると、可変性の光沢特性を備えた最終画像を得ることができる。
【0063】
本組成物を、画像、その一部、被印刷物、および/またはその一部に被覆する場合、様々な解像度で塗布することが可能である。例えば、組成物を、印刷ハーフトーンドットの解像度で、画像の区分点の解像度で、または、画像の区分点より幾分低い解像度で、被印刷物の非画像領域に組成物を多少オーバーラップさせて、塗布することができる。典型的な組成物被覆量は、約5から約50ピコリットルの量のドロップサイズである。組成物は、例えば、圧電型や音響型インクジェット印刷(但し、これらに限定しない)などのドロップオンデマンドインクジェット印刷等の、公知のインクジェット印刷技術を用いた画像形成法のどの段階においても、少なくとも1つの経路から画像上に塗布することが可能である。組成物の塗布は、画像形成に使用した情報と同じ情報を用いて制御できるため、画像とオーバーコート組成物の作成にデジタルファイルは1つしか必要ない。つまり、オーバーコート組成物は、完全にデジタル化できる。
【0064】
オーバーコート組成物の塗布後、オーバーコート組成物を、例えば、2008年1月31日出願の米国特許出願第12/023,979号に開示のような、接触または非接触レベリングによって、平滑化しても良い。
【0065】
塗布後、ゲル化剤の特長を生かすため、一般に、オーバーコートを組成物のゲル化点以下に冷却する。次に、組成物に放射線(硬化エネルギー)を当てて、組成物を硬化させる。例えば、紫外光、電子ビームエネルギーなど、適当な硬化エネルギー源に当てると、光開始剤がエネルギーを吸収して、ゲル状のオーバーコート組成物を硬化した保護用オーバーコートに変える反応が始まる。適当な硬化エネルギー源を当てるとオーバーコート組成物の粘度は更に増大して硬くなり、固体となる。組成物中のモノマーおよびワックス、また必要に応じたゲル化剤は、光開始剤をUV光に当てると重合してポリマー網目構造を形成する官能基を含んでいる。光開始剤がない場合、電子ビーム放射を当ててこれらの官能基を重合させても良い。このポリマー網目構造は、印刷画像に、例えば、耐久性、熱および光安定性、ひっかきおよび汚れ抵抗性を与える。
【0066】
本組成物の放射線硬化性成分の架橋を開始するエネルギー源としては、化学線、例えば、スペクトルの紫外または可視領域に波長を持つ放射線、加速粒子、例えば、電子ビーム放射、熱、例えば、熱線または赤外線などが使用できる。実施の形態において、架橋の開始と速度の制御に優れていることから、エネルギーは化学線である。適当な化学線源としては、水銀ランプ、キセノンランプ、炭素アークランプ、タングステンフィラメントランプ、レーザー、発光ダイオード、太陽光などが挙げられる。
【0067】
紫外線、特に、UV光下、高速コンベヤ(例えば、約20から約70m/分)を備えた中圧水銀ランプからの紫外線が好ましく、この場合、約200から約500nmの波長のUV線を、約1秒間以下照射する。実施の形態において、高速コンベアの速度は約15から約35m/分で、約200から約450nmの波長のUV光を、約10から約50ミリ秒(ms)間照射する。UV光源の発光スペクトルは一般に、UV開始剤の吸収スペクトルと重なっている。必要に応じて用いられる硬化装置としては、UV光を収束または拡散させるためのレフレクタや、UV光源からの熱を除くための冷却装置が挙げられる(但し、これらに限定しない)。
【0068】
被印刷物は、印刷の最終用途に応じて、適当などのような被印刷物も使用できる。代表的な被印刷物としては、普通紙、コート紙、プラスチックス、ポリマー系フィルム、加工セルロース系材料、木材、電子写真用被印刷物、セラミックス、繊維、金属、およびこれらの混合物が挙げられ、必要に応じて、その上に被覆した添加剤も含まれる。
【0069】
トナー系画像を被覆する場合、まず、定着したトナー系印刷物を作り、次に、オーバーコート組成物を入れたインクジェットプリンタにかける。トナー系印刷物は、適当な従来の電子写真技術またはそのバリエーションを用いて作成可能である。
【0070】
同様に、インク系画像を被覆する場合、まず、インク系画像を作成し、次に、オーバーコート組成物を入れたインクジェットプリンタにかける。インクジェットプリンタを用いてインク系画像を作成する場合、次に、インク系画像を、オーバーコート組成物を入れた別のインクジェットプリンタにかけるか、あるいは、インクジェットインクを、組成物と同じインクジェットプリンタに収容しておくことができる。こうして、インクジェットインク画像の作成後、組成物を無色透明な液体として、被印刷物および/または画像上に塗布する。オーバーコート組成物をインク系画像、特に、インクジェットプリンタを用いて作成した画像に被覆する場合、画像は、適当な従来の手法またはそのバリエーションを用いて作成可能である。
【0071】
開示の内容を、以下の実施例で更に説明する。別途指示のない限り、部および割合は質量比である。
【実施例】
【0072】
表1に示す成分および量を含むオーバーコート組成物を、成分を全て混ぜ合わせて調製した。次に、このオーバーコート組成物を、示されている装置で示されているカラー画像に塗布し、光沢を評価した。結果を、表2の照合表にまとめた。
【0073】
【表1】

【0074】
上記のオーバーコート組成物のそれぞれを、電子写真(DC12)または固体インクジェット(Phaser 8400)で4200紙上に作成した青色、赤色、および黄色画像の上にKプルーフ(K-proof)した。オーバーコート画像の光沢値は、BYK Gardner製のマイクロTRI光沢計を用いて60度で測定し、コートしていない画像の光沢と比較した。結果を、次の表2にまとめた。光沢は、オーバーコートを用いていない画像のオリジナル光沢と比較した、保持された光沢の割合として示す。
【0075】
【表2】

【0076】
一般的に、この結果は、硬化性ワックスの濃度と、保持された光沢とが逆比例することを示している。その効果は、最初に最も高い光沢値を示していた赤色画像パッチで最も著しい。マット効果も、Phaser8400画像ではより大きい。
【0077】
塗布したオーバーコートの量も、観測された光沢に影響する。この実施例では、K−プルーフは、100、80、および60%密度の相対量でオーバーコート組成物を被覆した。相対密度は、互いに相対的に求め、100%密度のコーティングは、およそ4から5ミクロンの厚さを持つ。実施例として赤色に着色したパッチを用いた場合、一般に、オーバーコート量が高いと、保持された光沢は低下する。結果を、表3の照合表にまとめた。
【0078】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像の光沢を制御する方法であって、
画像の所望とする光沢を決定する工程と、
決定された所望の光沢に基づいて、オーバーコート組成物に含まれる、少なくとも1つの硬化性ワックスの量を設定する工程と、
前記設定量の少なくとも1つの前記硬化性ワックスを含むよう、前記オーバーコート組成物を調製する工程と、
前記オーバーコート組成物を被印刷物上に塗布する工程と、
前記オーバーコート組成物を十分に硬化させるため、放射線を当てる工程と、
を含み、
前記オーバーコート組成物は、少なくとも1つのゲル化剤と、少なくとも1つの硬化性モノマーと、少なくとも1つの硬化性ワックスと、必要に応じて少なくとも1つの光開始剤とを含み、
前記オーバーコート組成物は、放射線を当てると硬化する、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
画像の光沢を制御する方法であって、
画像の所望とする光沢を決定する工程と、
少なくとも1つのゲル化剤と、少なくとも1つの硬化性モノマーと、少なくとも1つの硬化性ワックスと、必要に応じて少なくとも1つの光開始剤とを含むオーバーコート組成物を準備する工程と、
決定された所望の光沢にほぼ等しい光沢を備えた画像を得るため、(a)前記オーバーコート組成物中の少なくとも1つの硬化性ワックスの量、および、(b)被印刷物上に塗布する前記オーバーコート組成物の厚さ、の1つ以上を設定する工程と、
前記オーバーコート組成物を被印刷物上に塗布する工程と、
前記オーバーコート組成物を十分に硬化させるため、放射線を当てる工程と、
を含み、
前記オーバーコート組成物は、放射線を当てると硬化する、
ことを特徴とする方法。

【公開番号】特開2010−792(P2010−792A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−144983(P2009−144983)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】