説明

Vリブベルト用幅裁機

【課題】Vリブベルトのスラブの蛇行に影響されることなく、ベルトスラブの幅裁断を正確に行う。
【解決手段】第1テーブル14を固定部に対して水平方向ガイドレール16に沿って移動可能とする。第2テーブル15を第1テーブル14に対して垂直方向ガイドレール19に沿って移動可能とする。第2テーブル15にアーム部材22を介して円盤状の刃12を取り付ける。第3テーブル24を第2テーブルに対して垂直方向ガイドレール26に沿って移動可能とする。溝付ロール23を保持する溝付ロール保持部25を、第3テーブル24において回転ローラ11の回転軸Xに沿って滑動自在に保持する。溝付ロール23をスラブSに押し当て、位置ズレを検出し、第1テーブル14の位置を補正する。第1テーブル14の水平移動を自由にし、溝付ロール23と刃12の相対位置を固定して両者を走行するスラブSに押し当ててスラブSを裁断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラブ状のVリブベルトをリブに沿って所定の幅に裁断する幅裁機に関する。
【背景技術】
【0002】
Vリブベルトは、円筒状に成型されたベルトスラブを、リブ面を外側にしてローラに懸架し、幅裁機によりリブ溝に沿って所定幅で切断することにより得られる。幅裁機による裁断では、従来目視により刃先をV溝の谷間に合わせて位置決めしていた。しかし、目視による方法では、十分な幅精度が得られないうえに生産効率が低いという問題がある。このような問題に対して、ベルトスラブのリブ面に嵌合するズレ検出用ロールをリブ面に押し当て、ベルトスラブのローラ軸方向へのズレ量を検出し、ズレ検出用ロールをベルトスラブから離接した後、検出されたズレ量分刃先を移動して裁断を行う構成が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−058255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成では、ベルトスラブは案内ロールによりローラ軸方向への移動が規制され、ベルトスラブの蛇行が防止されているので、ズレ量は一定と考えられている。しかし、案内ロールによりベルトスラブの軸方向への揺れを完全に抑えることはできないので、高い精度での幅裁を行うには、特許文献1の構成では十分ではない。
【0005】
本発明は、Vリブベルトのスラブの蛇行に影響されることなく、ベルトスラブの幅裁断を正確に行うことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のVリブベルト用幅裁機は、回転ローラにリブ面を外側に向けて掛け回されたVリブベルトのスラブをリブに沿って裁断するVリブベルト用幅裁機であって、スラブを裁断するための刃と、リブと噛み合う溝が形成された溝付ロールと、溝付ロールの溝をリブに噛み合わせた状態で回転ローラを回転させるとき、リブの蛇行に合わせて刃を溝付ロールと一体的に回転ローラの軸方向に沿って揺動することを特徴としている。
【0007】
Vリブベルト用幅裁機は更に、刃と溝付ロールをローラの軸方向に垂直な方向に移動するための第1縦移動機構と、刃に対して溝付ロールを回転ローラの軸方向に垂直な方向に独立して移動可能な第2縦移動機構と、刃と溝付ロールを一体的に回転ローラの軸方向に沿って揺動可能な揺動用横移動機構とを備えることが好ましく、溝付ロールおよび刃は、第1および第2縦移動機構を用いてスラブに押し当てられ、溝付ロールおよび刃は、揺動用横移動機構によりリブの蛇行に合わせて軸方向に沿って一体的に揺動する。
【0008】
またVリブベルト用幅裁機は、例えば、固定部に保持されるとともに固定部に対して軸方向に移動される第1テーブルと、第1テーブルを固定部に対して軸方向に移動するための第1横移動機構と、第1テーブルに保持されるとともに第1縦移動機構により第1テーブルに対して垂直な方向に移動される第2テーブルとを備える。
【0009】
Vリブベルト用幅裁機は更に、溝付ロールの溝とリブの軸方向の位置ズレ量を測定する位置ズレ測定手段と、測定された位置ズレ量に基づき、溝付ロールおよび刃を第1横移動機構により軸方向に移動して位置ズレを補正する位置補正手段とを備えることが好ましい。このとき、リブベルト用幅裁機は、溝付ロールを刃とは独立に垂直な方向に移動する第2縦移動機構を備えることが好ましい。また、Vリブベルト用幅裁機は、溝付ロールを第1テーブルとは独立に軸方向に移動する第2横移動機構を備え、位置ズレ量は第2横移動機構による横移動量から測定されることが好ましい。Vリブベルト用幅裁機は更に、第2縦移動機構により第2テーブルに対して垂直な方向に移動される第3テーブルを備え、溝付ロールは第3テーブルと一体的に垂直な方向に移動される。
【0010】
第2横移動機構は、例えば回転ローラによるスラブの回転周期よりも低い周期の揺動に対してのみ応答する周波数特性を有し、第1横移動機構が揺動用横移動機構である。また、第2横移動機構は、第3テーブルと溝付ロールの間に介装され、刃が第2テーブルに一体的に設けられる。位置ズレ測定手段は、例えば溝付ロールの第3テーブルに対する横移動量を測定する。
【0011】
Vリブベルト用幅裁機は更に、第3テーブルを第2縦移動機構を介して保持する第4テーブルを備え、第4テーブルは、溝付ロールを第1テーブルとは独立に軸方向に移動する第2横移動機構を介して第2テーブルに保持され、刃は第4テーブルに一体的に設けられ、溝付ロールは第3テーブルに一体的に設けられる。また例えば第2横移動機構が、揺動用横移動機構である。
【0012】
位置ズレ測定手段は、例えば第1横移動機構および第1縦動機構をロックした状態で第2縦移動機構を駆動して溝付ロールの溝をスラブのリブに押し当て、溝とリブが噛み合った状態で位置ズレ量を測定する。
【0013】
また第2横移動機構は、所定のダンピング特性を備えるショックアブソーバを備える。また、刃は、スラブ走行方向における溝付ロールの下流側に隣接して配置されることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
以上のように本発明によれば、Vリブベルトのスラブの蛇行に影響されることなく、ベルトスラブの幅裁断を正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態のVリブベルト用幅裁機の正面図である。
【図2】図1のVリブベルト用幅裁機の左側からの側面図である。
【図3】Vリブベルト用幅裁機の電気的な構成を示すブロック図である。
【図4】第1実施形態のVリブベルトのスラブ裁断処理のフローチャートである。
【図5】第2実施形態のVリブベルト用幅裁機の側面図である。
【図6】図5のVリブベルト用幅裁機の第1テーブル、第2テーブルを除いた正面図である。
【図7】第2実施形態のVリブベルトのスラブ裁断処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施形態であるVリブベルト用幅裁機の正面図であり、図2はVリブベルト用幅裁機の側面図である。
【0017】
Vリブベルト用幅裁機10は、VリブベルトのスラブSが掛け回される回転ローラ11とともに用いられる。スラブSは、リブ面を外側に向けて回転ローラ11に掛け回され、Vリブベルト用幅裁機10は、回転円盤状の刃12を用いて回転ローラ11上を走行するスラブSをリブに沿って所定の幅で裁断する。そのためにVリブベルト用幅裁機10は、刃12を回転ローラ11の回転軸X(X軸方向)に沿って移動する横移動機構と、刃12を回転軸Xの垂直方向(Y軸方向)に移動する縦移動機構を備える。なお、回転軸Xは、水平面内に配置される。
【0018】
また第1実施形態のVリブベルト用幅裁機10は、固定部13、すなわち回転ローラ11に対して回転軸Xに沿って横移動可能な第1テーブル14と、第1テーブル14に対して回転軸Xの垂直方向に縦移動可能な第2テーブル15を備え、刃12は、第2テーブル15と一体的に取り付けられる。すなわち、第1実施形態では、固定部13と第1テーブル14との間には第1横移動機構が設けられ、第1テーブル14と第2テーブル15との間には第1縦移動機構が設けられる。
【0019】
より具体的には、第1テーブル14の背面側に配置される固定部13には、例えば一対の水平方向ガイドレール16が設けられ、第1テーブル14は、水平方向ガイドレール16によって滑動自在に保持される。また、第1テーブル14の水平方向の移動は、ボールネジ機構を用いて水平方向ガイドレール16に沿って行われる。すなわち、第1テーブル14の背面には、水平方向ガイドレール16に平行なネジ軸17に螺合されたボールネジナット18が設けられ、ネジ軸17とナット18の間の相対回転により第1テーブル14が、回転軸Xに沿って横方向(水平方向)に移動される。なお、本実施形態では、第1テーブル14にナット18を回転するためのX軸方向移動用のサーボモータ18Mが設けられる。
【0020】
一方、第1テーブル14の正面側には、第1縦移動機構として例えば一対の垂直方向ガイドレール19が設けられ、第2テーブル15は、その裏面側において垂直方向ガイドレール19に滑動自在に保持される。第2テーブル15は、第1テーブル14と第2テーブル15の間に設けられる例えばボールネジ機構などの移動機構を用いて垂直ガイドレール19に沿って回転ローラ11の回転軸Xに垂直なY軸方向に移動される(例えば鉛直方向)。なお、図1、2に示される例では、第1テーブル14の頂部中央に設けられたY軸方向移動用のサーボモータ20Mによってネジ軸21が回転され、第2テーブル15が第1テーブル14に対してY軸方向(上下方向)に移動される。
【0021】
また、第2テーブル15には、アーム部材22が固定され、アーム部材22には、円盤状の刃12が保持される。すなわち、刃12は、アーム部材22を介して第2テーブル15に対してその位置(回転を除き)が固定され、第2テーブル15とともに一体的に移動される。なお、刃12は、回転ローラ11の回転軸Xに垂直に配置される。
【0022】
更に、Vリブベルト用幅裁機10は、回転ローラ11に掛け回されたスラブSの複数のリブと噛み合う複数のV字溝を備える溝付ロール23と、溝付ロール23を回転ローラ11の回転軸X(X軸方向)に沿って移動する第2横移動機構と、溝付ロール23を回転軸Xの垂直方向(本実施形態ではY軸方向)に移動する第2縦移動機構とを備える。なお、本実施形態において、刃12はスラブSの走行における溝付ロール23の下流側に隣接して配置される。
【0023】
第1実施形態では、溝付ロール23は、第2横移動機構および第2縦移動機構により、刃12とは独立に横移動および縦移動を行うことが可能な構成とされる。例えば、Vリブベルト用幅裁機10は、第2テーブル15に対して縦移動可能な第3テーブル24と、この第3テーブル24に対して横移動可能な溝付ロール保持部25とを備える。すなわち、第2テーブル15の正面側には、第2縦移動機構として例えば一対の垂直方向ガイドレール26が設けられ、第3テーブル24はその裏面側において、垂直方向ガイドレール26に滑動自在に保持される。そして第2テーブル15の頂部に設けられた例えば昇降シリンダ26Mにフローティングジョイント26Jを介して連結され、昇降シリンダ26Mにより、第3テーブル24は垂直方向ガイドレール26に沿ってY軸方向に移動される。
【0024】
また、第3テーブル24の正面には、溝付ロール保持部25を保持するための例えば対面する一対のプレート27が設けられる。プレート27には、第2横移動機構としてシャフト28(例えば上下一対)が横方向(X軸方向)に沿って懸架され、シャフト28には、溝付ロール保持部25に摺動自在に取り付けられる。これにより、溝付ロール保持部25は、第3テーブル24(第2テーブル15)に対して横方向(X軸方向)に滑動自在に保持される。なお、図2は、図1のVリブベルト用幅裁機10を図面左側から見た側面図であり、本図においては、溝付ロール部材25が見えるように、左側のプレート27が切り取られている。
【0025】
溝付ロール保持部25は、両プレート27の間に配置され、溝付ロール23は、溝付ロール保持部25の下端に、回転自在に取り付けられ、その回転軸はX軸に沿って配置される。また、溝付ロール保持部25は、プレート27の各々に取り付けられたショックアブソーバ29により両側から把持され、シャフト28による横方向(X軸方向)の移動におけるの周波数特性が規定される。更に、第1実施形態では、第3テーブル24に対する溝付ロール保持部25、すなわち溝付ロール23の横方向(X軸方向)の相対的な位置を検出する位置測定センサ30Sが、例えば図1の右側のプレート27に設けられる。
【0026】
なお、図3にVリブベルト用幅裁機10の電気的な構成を示すブロック図を示す。Vリブベルト用幅裁機10は、例えば固定部にコントローラ31を備え、サーボモータ18M、サーボモータ20M、昇降シリンダ26Mの駆動はコントローラによって制御される。また位置測定センサ30Sの検知信号は、コントローラ31に入力され、後述するように、第1横移動機構による横移動(X軸方向移動)を行うためのサーボモータ18Mの制御に使用される。なお、コントローラ31は、操作スイッチ32の操作に基づいて駆動される。
【0027】
次に図4のフローチャートを参照して、第1実施形態のスラブ裁断処理について説明する。なお、本処理はコントローラにおいて実行される。
【0028】
操作スイッチ32の操作によりスラブ裁断処理が開始され、ステップS100において、第1横移動機構の動力であるサーボモータ18Mがロックされるとともに、溝付ロール23のみをスラブSに押し当てるために、第2縦移動機構を構成する昇降シリンダ26Mが駆動され、第3テーブル24が溝付ロール保持部25、溝付ロール23と一体的にスラブSに向けて移動する。スラブSのリブ位置と溝付ロール23の溝の位置には通常ズレが存在するので、溝付ロール23がスラブSに押し付けられると、溝付ロール23には、溝がスラブSのリブとピッタリと噛み合うようにX軸方向への力が掛かる。溝付ロール保持部25は、一対の第2横移動機構を構成するシャフト28によりX軸方向に滑動自在に保持されるので、X軸方向の力が掛かると溝付ロール23はショックアブソーバ29のダンピング力に抗しながらもゆっくりと溝付ロール保持部25とともに一体的にX軸方向に移動する。
【0029】
溝付ロール23が完全にスラブSのリブに噛み合わされると、ステップS102において、溝付ロール保持部25の第3テーブル24(第1、第2テーブル14、15)に対するX軸方向の位置ズレ量、すなわち溝付ロール23のX軸方向の位置ズレ量が位置測定センサ30Sにより検出される。なお、溝付ロール23がスラブSのリブと完全に噛み合ったか否かの判定は、例えば昇降シリンダ26Mの操作量から判定されるが、別途センサを設ける構成とすることもできる。
【0030】
ステップS104では、昇降シリンダ26Mが駆動され、溝付ロール23が回転ローラ11に掛け回されたスラブSのリブ面から離接される。本実施形態において溝付ロール保持部25は、左右のショックアブソーバ29から付勢力も受けており、溝付ロール23がスラブSから離接され、リブ面との噛み合いによるX軸方向の規制が解かれると、溝付ロール保持部25は、ショックアブソーバ29の付勢力により、シャフト28に沿ってX軸方向に元の釣合いの位置まで戻される。
【0031】
次に、ステップS106において、第1横移動機構を構成するX軸方向移動用のサーボモータ18Mが回転駆動され、第1テーブル14が位置測定センサ30Sにより検出された位置ズレ量分だけ、水平方向ガイドレール16に沿ってX軸方向に移動される。すなわち、第1テーブル14、第2テーブル15、刃12、第3テーブル24、溝付ロール保持部25、溝付ロール23が位置ズレ量分だけ一体的にX軸方向に移動され、スラブSのリブ溝と刃12、溝付ロール23との間のベルト幅方向(X軸方向)のズレが修正される。
【0032】
ステップS108では、Y軸方向移動用のサーボモータ26Mが回転駆動され、第3テーブル24がスラブSに向けて垂直方向ガイドレール26に沿ってY軸方向に移動される。すなわち、溝付ロール23がスラブSのリブ溝とピッタリと噛み合うまで、第3テーブル24、溝付ロール保持部25、溝付ロール23が一体的にY軸方向に移動される。
【0033】
ステップS110では、まずX軸方向移動用のサーボモータ18Mへの電力供給が停止され、サーボモータ18Mのロックが解除される。その後、第2テーブル15がY軸に沿って下降され、刃12のエッジが回転ローラ11の外周面高さに達するまでスラブSに押し込まれる(図2には、このときの溝付ロール23、刃12の位置が破線で描かれる)。またこのとき同時に、第3テーブル24が第2テーブル15に対してY軸に沿って上昇され、溝付ロール23の位置がスラブSを押さえた位置に保持される。更に、刃12がスラブSの背面まで切り込まれた状態で、回転ローラ11がスラブSの一周分回転されて一本のVリブベルトがスラブSから裁断される。通常スラブSは、回転ローラ11の上を僅かに蛇行して走行するが、溝付ロール23の複数の溝がスラブSのリブと噛み合っているため、溝付ロール23は、スラブSの蛇行に合わせてX軸方向に力を受ける。
【0034】
このとき、サーボモータ18Mのロックは解除され、第1テーブル14は水平方向ガイドレール16に沿ってX軸方向に自由に移動可能とされていることから、第1テーブル14は溝付ロール23からの力を受けて、蛇行するスラブSのリブに沿って一体的にX軸方向に移動する。なお、本実施形態において、ショックアブソーバ29によるダンピングは、スラブSの蛇行により発生する溝付ロール23のX軸方向へのスラスト力の周期に対して反応しないように設定され、溝付ロール23に掛かるスラスト力は略全てショックアブソーバ29を介して、第3テーブル24、第2テーブル15、第1テーブル14へと伝達される。
【0035】
したがって、溝付ロール23がスラブSの蛇行に合わせてX軸方向に揺動すると、第2テーブル15(アーム部材22)に取り付けられた刃12が、溝付ロール23と一体的にX軸方向に揺動する。すなわち、刃12は、スラブSの蛇行に合わせてX軸方向に揺動し、スラブSの蛇行に影響されることなくVリブベルトが裁断される。なお、ダンピング特性の適切な設定が難しい場合などには、例えばステップS104が終了する段階でショックアブソーバ29をロックする構成とすることもできる(刃12と溝付ローラ23との間の相対位置を固定できる構成であればよい)。
【0036】
次にステップS112において、スラブSの次の裁断処理を終了するか否かが判定される。例えば、既に規定数の裁断が行われている場合には、このスラブ裁断処理は終了する。一方、裁断が規定数に達しておらず、裁断を継続すると判定された場合には、ステップS114において第1縦移動機構のサーボモータ20Mが回転駆動され、第2テーブル15および第3テーブル24が垂直ガイドレール19に沿ってスラブSから離接する方向に移動される。したがって、刃12および溝付ロール23がスラブSから離接する。
【0037】
ステップS116では、X軸方向移動用のサーボモータ18Mがロックされた後、回転駆動され、第1テーブル14が、水平方向ガイドレール16に沿ってVリブベルトのベルト幅分X軸方向に移動される。その後処理はステップS108に戻り、以下同様にステップS112において裁断処理を終了すると判定されるまでこのスラブ裁断処理が繰り返し継続される。
【0038】
以上のように、第1実施形態によれば、回転ローラに掛け回されたVリブベルトのスラブの蛇行に合わせて裁断用の刃が移動されるので、スラブの蛇行に影響されることなくVリブベルトの幅裁断を正確に行うことができる。また、第1実施形態では、リブに対する刃の位置の補正を行うことができるので、溝付ロールに形成されたリブ形状に対応する溝がスラブのリブに正確に噛み合わせられ、より正確な裁断が可能である。
【0039】
次に図5、図6を参照して、第2実施形態のVリブベルト用幅裁機について説明する。なお、図5は、第2実施形態のVリブベルト用幅裁機の側面図であり、図6は、第1実施形態における第1テーブルに対応する構成を省略した第2実施形態のVリブベルト用幅裁機の正面図である。なお、図5において回転ローラ11やスラブSは省略されている。
【0040】
第2実施形態のVリブベルト用幅裁機40における、固定部13、第1テーブル14、第2テーブル15の間の構成は、第1実施形態のVリブベルト用幅裁機10の構成と基本的に同じである。第1実施形態との違いは、第2テーブル15に取り付けられる構成に関してである。すなわち、第2テーブル15には、第2横移動機構を介して第4テーブル41が設けられ、第4テーブル41に第2縦移動機構を介して第3テーブル42が取り付けられる。
【0041】
第4テーブル41は、第2テーブル15との間に直動機構として設けられる例えば一対のクロスローラウェイ43を介して、回転ローラ11の軸方向であるX軸方向に沿って摺動自在に支持される。また、第2テーブル15には、一対のダンパ44と一対のスプリングプランジャ45が、第2テーブル15の両側に設けられた保持部材46によって保持される。一対のダンパ44は、X軸方向に沿って同軸的に配列され、これと平行に一対のスプリングプランジャ45も、X軸方向に沿って同軸的に配列される。
【0042】
第4テーブル41の裏面には、一対の突起47が設けられ、各突起47の外側面にはダンパ44の先端がそれぞれ当接する(図6では左側突起のみ図示)。また、第4テーブル41の裏面には更に、一対の突起48が設けられ、各突起48の外側面にはスプリングプランジャ45の先端がそれぞれ当接する(図6では左側突起のみ図示)。すなわち、第4テーブル41は、突起47、48を介して、ダンパ44およびスプリングプランジャ45によってX軸方向に沿って挟まれる。また、第2実施形態のダンパ44およびスプリングプランジャ45のダンピング係数およびバネ定数は、第4テーブル41の第2テーブル15に対する運動が、スラブSの回転周期以下の周波数の高いX軸方向の運動に十分に追従するように選択される。更に、第2テーブル15には、位置測定センサ30Sが設けられ、第2テーブル15に対する第4テーブル41のX軸方向の位置が測定される。
【0043】
なお、図5の側面図では、第2テーブル15に設けられる保持部材46、ダンパ44、スプリングプランジャ45が省略されている。一方、図6では、第2テーブル15の構成のうち、保持部材46、ダンパ44、スプリングプランジャ45、および位置測定センサ30Sのみが図示される。
【0044】
第4テーブル41には、アーム部材49を介して刃12が取り付けられるとともに、第4テーブル41の頂部には昇降シリンダ26Mが設けられる。昇降シリンダ26Mには、フローティングジョイント26J、連結部材50を介して第3テーブル42が連結される。第4テーブル41の表面にはY軸方向に沿った一対の垂直方向ガイドレール26が設けられ、第3テーブル42は、その裏面に設けられ、垂直方向ガイドレール26に滑動自在に係合されるアダプタプレート51により、第4テーブル41に対してY軸方向に沿って摺動自在に保持される。
【0045】
次に図7のフローチャートを参照して、第2実施形態のスラブ裁断処理について説明する。なお、本処理はコントローラにおいて実行される。
【0046】
第2実施形態では、スラブ裁断処理を開始するに先立ち、回転ローラ11(図1参照)の回転(スラブSの走行)が開始され、操作スイッチ32の操作により図7のスラブ裁断処理が開始される。ステップS200では、第1横移動機構の動力であるサーボモータ18Mがロックされるとともに、溝付ロール23のみをスラブSに押し当てるために、第2縦移動機構を構成する昇降シリンダ26Mが駆動され、第3テーブル42が溝付ロール23と一体的にスラブSに向けて移動する。スラブSのリブ位置と溝付ロール23の溝の位置には通常ズレが存在するので、溝付ロール23がスラブSに押し付けられると、溝付ロール23には、溝がスラブSのリブとピッタリと噛み合うようにX軸方向への力が掛かる。溝付ロール23が設けられた第3テーブル42を保持する第4テーブル41は、第2横移動機構を構成する一対のクロスローラウェイ43によりX軸方向に滑動自在に保持されるので、X軸方向の力が掛かると溝付ロール23は、第3および第4テーブル42、41と一体的にダンパ44およびスプリングプランジャ45のダンピング力に抗しながらもゆっくりとX軸方向に移動する。
【0047】
溝付ロール23が完全にスラブSのリブに噛み合わされると、ステップS202において、第4テーブル41の第2テーブル15(第1テーブル14)に対するX軸方向の位置ズレ量、すなわち溝付ロール23のX軸方向の位置ズレ量が位置測定センサ30Sにより検出される。なお、溝付ロール23がスラブSのリブと完全に噛み合ったか否かの判定は、例えば昇降シリンダ26Mの操作量から判定されるが、別途センサを設ける構成とすることもできる。
【0048】
ステップS204では、昇降シリンダ26Mが駆動され、溝付ロール23が回転ローラ11に掛け回されたスラブSのリブ面から離接される。溝付ロール23がスラブSから離接され、リブ面との噛み合いによるX軸方向の規制が解かれると、第4テーブル41は、スプリングプランジャ45の付勢力により、クロスローラウェイ43に沿ってX軸方向に元の釣合いの位置まで戻される。
【0049】
次に、ステップS206において、第1横移動機構を構成するX軸方向移動用のサーボモータ18Mが回転駆動され、第1テーブル14が位置測定センサ30Sにより検出された位置ズレ量分だけ、水平方向ガイドレール16に沿ってX軸方向に移動される。すなわち、第1テーブル14、第2テーブル15、第4テーブル41、刃12、第3テーブル42、溝付ロール23が位置ズレ量分だけ一体的にX軸方向に移動され、スラブSのリブ溝と刃12、溝付ロール23との間のベルト幅方向(X軸方向)のズレが修正される。
【0050】
ステップS208では、Y軸方向移動用のサーボモータ26Mが回転駆動され、第3テーブル42がスラブSに向けて垂直方向ガイドレール26に沿ってY軸方向に移動される。すなわち、溝付ロール23がスラブSのリブ溝とピッタリと噛み合うまで、第3テーブル42、溝付ロール23が一体的にY軸方向に移動される。
【0051】
ステップS210では、第2テーブル15がY軸に沿って下降され、刃12のエッジが回転ローラ11の外周面高さに達するまでスラブSに押し込まれる。またこのとき同時に、第3テーブル42が第2テーブル15(第4テーブル41)に対してY軸に沿って上昇され、溝付ロール23の位置がスラブSを押さえた位置に保持される。なお、このとき回転ローラ11は回転されており、刃12がスラブSの背面まで切り込まれた状態で、回転ローラ11がスラブSの一周分回転されると、一本のVリブベルトがスラブSから裁断される。通常スラブSは、回転ローラ11の上を僅かに蛇行して走行するが、溝付ロール23の複数の溝がスラブSのリブと噛み合っているため、溝付ロール23は、スラブSの蛇行に合わせてX軸方向に力を受ける。
【0052】
このとき、第4テーブル41は、スラブSの回転周期に合わせてクロスローラウェイ43に沿ってX軸方向に移動可能とされていることから、第4テーブル41は溝付ロール23からの力を受けて、蛇行するスラブSのリブに沿って一体的にX軸方向に移動する。
【0053】
したがって、溝付ロール23がスラブSの蛇行に合わせてX軸方向に揺動すると、第4テーブル41に取り付けられた刃12が、溝付ロール23と一体的にX軸方向に揺動する。すなわち、刃12は、スラブSの蛇行に合わせてX軸方向に揺動し、スラブSの蛇行に影響されることなくVリブベルが裁断される。
【0054】
次にステップS212において、スラブSの次の裁断処理を終了するか否かが判定される。例えば、既に規定数の裁断が行われている場合には、このスラブ裁断処理は終了する。一方、裁断が規定数に達しておらず、裁断を継続すると判定された場合には、ステップS214において第1縦移動機構のサーボモータ20Mが回転駆動され、第2テーブル15、第4テーブル41、および第3テーブル42が垂直ガイドレール19に沿ってスラブSから離接する方向に移動される。したがって、刃12および溝付ロール23がスラブSから離接する。
【0055】
ステップS216では、X軸方向移動用のサーボモータ18Mが回転駆動され、第1テーブル14が、水平方向ガイドレール16に沿ってVリブベルトのベルト幅分X軸方向に移動される。その後処理はステップS208に戻り、以下同様にステップS212において裁断処理を終了すると判定されるまでこのスラブ裁断処理が繰り返し継続される。
【0056】
以上のように構成された第2実施形態のVリブベルト用幅裁機40においても、第1実施形態と同様の制御を行うことにより同様の効果を得ることができる。また、第2実施形態では、スラブの蛇行により揺動するのが刃が設けられた第4テーブルと、溝付ロールが設けられた第3テーブルのみなので、第1実施形態に比べ揺動時の慣性を小さく抑えられる。
【0057】
なお、回転ローラを幅裁機の一部として構成することも可能であり、スラブ裁断処理時の回転ローラの回転をVリブベルト用幅裁機のコントローラによって開始・制御してもよいが、回転ローラをVリブベルト用幅裁機とは独立した構成とし、その回転を別途制御する構成としてもよい。
【0058】
また、本実施形態で用いられた動力機構や移動機構は一例であってサーボモータや油圧シリンダの他にも従来周知の様々な動力機構を用いることができ、ボールネジ機構以外の移動機構を用いることも可能である。蛇行以外のリブと刃の位置ズレが問題とならないときには、溝付ロールを第2テーブルに直接取付け、第2横移動機構を省略することも可能である。
【符号の説明】
【0059】
10、40 Vリブベルト用幅裁機
11 回転ローラ
12 刃
13 固定部
14 第1テーブル
15 第2テーブル
16 垂直方向ガイドレール
17 ネジ軸
18 ナット
18M X軸方向移動用サーボモータ
19 垂直方向ガイドレール
20M Y軸方向移動用サーボモータ
22 アーム部材
23 溝付ロール
24、42 第3テーブル
25 溝付ロール保持部
26 垂直方向ガイドレール
26M 昇降シリンダ
27 プレート
28 シャフト
29 ショックアブソーバ
30S 位置測定センサ
41 第4テーブル
43 クロスローラウェイ
44 ダンパ
45 スプリングプランジャ
S スラブ
X 回転軸


【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転ローラにリブ面を外側に向けて掛け回されたVリブベルトのスラブをリブに沿って裁断するVリブベルト用幅裁機であって、
前記スラブを裁断するための刃と、
前記リブと噛み合う溝が形成された溝付ロールと、
前記溝付ロールの溝を前記リブに噛み合わせた状態で前記回転ローラを回転させるとき、前記リブの蛇行に合わせて前記刃を前記溝付ロールと一体的に前記回転ローラの軸方向に沿って揺動する
ことを特徴とするVリブベルト用幅裁機。
【請求項2】
前記刃と前記溝付ロールをローラの軸方向に垂直な方向に移動するための第1縦移動機構と、
前記刃に対して前記溝付ロールを前記回転ローラの軸方向に垂直な方向に独立して移動可能な第2縦移動機構と、
前記刃と前記溝付ロールを一体的に前記回転ローラの軸方向に沿って揺動可能な揺動用横移動機構とを備え、
前記溝付ロールおよび前記刃が前記第1および第2縦移動機構を用いて前記スラブに押し当てられ、前記溝付ロールおよび前記刃が、前記揺動用横移動機構により前記リブの蛇行に合わせて前記軸方向に沿って一体的に揺動する
ことを特徴とする請求項1に記載のVリブベルト用幅裁機。
【請求項3】
固定部に保持されるとともに前記固定部に対して前記軸方向に移動される第1テーブルと、
前記第1テーブルを前記固定部に対して前記軸方向に移動するための第1横移動機構と、
前記第1テーブルに保持されるとともに前記第1縦移動機構により前記第1テーブルに対して前記垂直な方向に移動される第2テーブルとを備える
ことを特徴とする請求項2に記載のVリブベルト用幅裁機。
【請求項4】
前記溝付ロールの溝と前記リブの軸方向の位置ズレ量を測定する位置ズレ測定手段と、測定された前記位置ズレ量に基づき、前記溝付ロールおよび前記刃を前記第1横移動機構により前記軸方向に移動して位置ズレを補正する位置補正手段とを備えることを特徴とする請求項3に記載のVリブベルト用幅裁機。
【請求項5】
前記位置ズレ測定手段が、前記第2縦移動機構により前記溝付ロールを前記スラブに押し当てたときの前記溝付ロールの横移動量から前記位置ズレ量を測定することを特徴とする請求項4に記載のVリブベルト用幅裁機。
【請求項6】
前記溝付ロールを前記第1テーブルとは独立に前記軸方向に移動する第2横移動機構を備え、前記位置ズレ量が前記第2横移動機構による前記横移動量から測定されることを特徴とする請求項5に記載のVリブベルト用幅裁機。
【請求項7】
前記第2縦移動機構により前記第2テーブルに対して前記垂直な方向に移動される第3テーブルを備え、前記溝付ロールが前記第3テーブルと一体的に前記垂直な方向に移動されることを特徴とする請求項6に記載のVリブベルト用幅裁機。
【請求項8】
前記第2横移動機構が、前記回転ローラによる前記スラブの回転周期よりも低い周期の揺動に対してのみ応答する周波数特性を有し、前記第1横移動機構が前記揺動用横移動機構であることを特徴とする請求項7に記載のVリブベルト用幅裁機。
【請求項9】
前記第2横移動機構が前記第3テーブルと前記溝付ロールの間に介装され、前記刃が前記第2テーブルに一体的に設けられることを特徴とする請求項8に記載のVリブベルト用幅裁機。
【請求項10】
前記位置ズレ測定手段が、前記溝付ロールの前記第3テーブルに対する前記横移動量を測定することを特徴とする請求項9に記載のVリブベルト用幅裁機。
【請求項11】
前記第3テーブルを前記第2縦移動機構を介して保持する第4テーブルを備え、前記第4テーブルが、前記溝付ロールを前記第1テーブルとは独立に前記軸方向に移動する第2横移動機構を介して前記第2テーブルに保持され、前記刃が前記第4テーブルに一体的に設けられ、前記溝付ロールが前記第3テーブルに一体的に設けられることを特徴とする請求項7に記載のVリブベルト用幅裁機。
【請求項12】
前記第2横移動機構が前記揺動用横移動機構であることを特徴とする請求項11に記載のVリブベルト用幅裁機。
【請求項13】
前記位置ズレ測定手段が、前記第1横移動機構および前記第1縦動機構をロックした状態で前記第2縦移動機構を駆動して前記溝付ロールの溝を前記スラブのリブに押し当て、前記溝と前記リブが噛み合った状態で前記位置ズレ量を測定することを特徴とする請求項7に記載のVリブベルト用幅裁機。
【請求項14】
前記第2横移動機構が所定のダンピング特性を備えるショックアブソーバを備えることを特徴とする請求項8に記載のVリブベルト用幅裁機。
【請求項15】
前記刃が、前記スラブ走行方向における前記溝付ロールの下流側に隣接して配置されることを特徴とする請求項1〜14の何れか一項に記載のVリブベルト用幅裁機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−212793(P2011−212793A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83380(P2010−83380)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000115245)ゲイツ・ユニッタ・アジア株式会社 (101)