VLAN経路設計方法及びその装置
【課題】部分的に冗長化が完結したレイヤ2ネットワーク上でのVLANの経路設計及び必要な情報の管理を容易化すること。
【解決手段】グラフ生成部14により、ネットワーク構成情報記憶部11、装置設定情報記憶部12及び拠点情報記憶部13からネットワーク構成情報、装置設定情報及び拠点情報を読み出し、冗長化の範囲を表す冗長ノードと、L2ネットワークを構成する装置を表す装置ノードと、冗長ノードとその冗長化の範囲に属する装置ノードとを接続する辺とからなるグラフを生成し、経路設計用の情報を生成し、拠点を表す拠点ノードを生成して前記グラフに追加することで、部分的な冗長化を考慮した経路設計及び情報の管理を容易とする。
【解決手段】グラフ生成部14により、ネットワーク構成情報記憶部11、装置設定情報記憶部12及び拠点情報記憶部13からネットワーク構成情報、装置設定情報及び拠点情報を読み出し、冗長化の範囲を表す冗長ノードと、L2ネットワークを構成する装置を表す装置ノードと、冗長ノードとその冗長化の範囲に属する装置ノードとを接続する辺とからなるグラフを生成し、経路設計用の情報を生成し、拠点を表す拠点ノードを生成して前記グラフに追加することで、部分的な冗長化を考慮した経路設計及び情報の管理を容易とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広域イーサネット(登録商標)サービス等で使用されるレイヤ2ネットワーク、特に部分的に冗長化が完結したレイヤ2ネットワークに接続された複数の通信拠点間を結ぶVLANの経路を設計し、その経路情報を管理するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
レイヤ2(以下、L2)スイッチを通信ケーブルによって接続することで構成された物理的なネットワークであるL2ネットワーク上で、複数の論理的なネットワークを構築する技術として、VLAN(Virtual LAN)がある。VLANを利用することで、L2ネットワーク上でブロードキャストドメインを論理的に構築し、L2ネットワークに接続された同一通信グループの2以上の通信拠点(以下、拠点)を、一つのブロードキャストドメインとして取り扱うことができる。これにより、L2ネットワークを複数の通信グループで効率的に利用できる。
【0003】
VLANには、拠点とL2スイッチとをつなぐアクセスリンク、及びL2スイッチ間をつなぐトランクリンクの概念がある。アクセスリンクとは拠点とL2ネットワークとを接続する経路であり、トランクリンクとは通信グループ毎の論理的な経路である。VLANを利用するには、拠点毎のアクセスリンクと全ての拠点をつなぐトランクリンクを設計し、L2スイッチ又はこれに準ずる装置に設定を行う必要がある。
【0004】
これら経路の設計・設定作業は通信グループ毎に行う。経路は、ツリー状(ループを持たない)であることや、装置及びトランクリンクの残VID数を考慮し、さらに帯域保障を行う場合は装置及びトランクリンクの残帯域を考慮する必要がある。
【0005】
障害に強いL2ネットワークを構築するには冗長化が必要になる。障害が発生しても、冗長化により障害部分を迂回することで通信を維持できる。L2ネットワークで物理的に冗長な構造を取るとループ構造になってしまうため、フレームが循環して重大な問題となる。
【0006】
この問題に対しては、物理的な構造上に論理的なツリー構造を動的に設定することでループを回避する。障害発生時には論理的な構造を自動的に変更することで障害を回避できる。これらを自動的に実現するプロトコルとして、STP(Spanning Tree Protocol)やERP(Ethernet(登録商標) Ring Protection)が存在する。STPは網目状のネットワークを構築し、その上でループが発生しないように一部のリンクを遮断することで冗長化を実現する。ERPはリング状のネットワークを構築し、リング上でループが発生しないようにリングの一部を遮断することで冗長化を実現する。
【0007】
前述のVLAN上で冗長化(STP)を同時に実現する仕組みとして、MSTP(Multiple Spanning Tree Protocol)がある。冗長化を考慮した上でVLANの経路を設定する作業は煩雑であるが、MSTPでは通信グループ毎の経路が装置と一対一で対応しているため、ネットワークのトポロジを直接提示しても、オペレータがそのトポロジ上で経路を設計することは容易だった。
【0008】
図1は従来のVLAN経路設計装置を示すもので、ネットワーク構成情報記憶部1、装置設定情報記憶部2、拠点情報記憶部3、経路設計部4、装置設定部5及び制御部6から構成されている。
【0009】
制御部6は外部からの指示により、経路設計部4に経路の設計を指示する。経路設計部4はネットワーク構成情報記憶部1、装置設定情報記憶部2及び拠点情報記憶部3にそれぞれ記憶・保持されたネットワーク構成情報、装置設定情報及び拠点情報を基に、新規経路及び装置の設定情報を設計する。また、制御部6は新規経路を実際のネットワークで有効にするために、装置設定部5に装置の設定を指示する。装置設定部5は、経路設計部4が設計した装置設定情報を実際の装置に対して設定する。これにより新規経路が有効になる。また、装置設定部5では、実際の装置の設定を変更するとともに、装置設定情報記憶部2における装置設定情報を更新する。
【0010】
ネットワーク構成情報、装置設定情報及び拠点情報について、図1では静的に保持するものとしているが、必要に応じて、実際のネットワークから情報を収集する情報収集部を設けても良い。
【0011】
ネットワーク構成情報はL2ネットワークの構成を表す情報であって、当該L2ネットワークを構成する装置毎の利用可能帯域、接続相手装置等に関する情報からなっている。装置設定情報はL2ネットワークを構成する個々の装置に対する設定情報であって、装置単位の、当該装置に設定された通信グループ毎の割り当て帯域、VID等に関する情報からなっている。拠点情報はL2ネットワークに接続される拠点に関する情報であって、当該拠点毎の通信グループ、接続装置等に関する情報からなっている。
【0012】
拠点を新設・削除する場合や経路の変更を行う場合に、経路設計部4での経路設計が必要になる。経路設計部4では、拠点を新設する場合は新規の拠点と既存経路(既存の拠点間を接続する経路)とを接続する新しい経路を導出し、この経路をネットワークに反映する装置設定情報を生成する。既存経路が存在しない場合は、単純に拠点間を接続する経路を導出する。拠点を削除する場合は拠点の削除により不要となる経路を導出し、これをネットワークに反映する装置設定情報を生成する。また、何らかの理由で拠点間を結ぶ経路を変更したい場合も、要求に応じて経路を導出し、この経路をネットワークに反映する装置設定情報を生成する。このように、要求に合わせた経路を導出し、この経路を実際のネットワークに反映する装置設定情報を生成する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第3938582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
比較的小規模なネットワークでは前述のMSTP等の技術を利用することにより、L2ネットワーク全体を対象として冗長化とVLANの共存が可能である。しかし、大規模なネットワークでは、ネットワーク全体を冗長化の対象とすると、障害発生時の自動切り替え時間がネットワークの大きさに比例して大きくなる。また、一部の障害がネットワーク全体に影響を及ぼしやすくなる。
【0015】
これらを解決するには、冗長化の範囲を小さくする必要がある。このため、単純に冗長化技術を使っただけでは、大規模かつ障害発生時の切り替えが早いL2ネットワークを構築できない。この問題に対しては、小規模なL2ネットワークに完結した冗長化を施し、冗長化が完結した小規模なL2ネットワークを相互に連結することで解決できる。ERPを用いた場合は、1つのリングが1つの冗長化が完結した小規模なL2ネットワークに対応する。
【0016】
図2は冗長化が完結した小規模なL2ネットワークを組み合わせたL2ネットワークの一例を示すものである。符号a〜lで示されるL2スイッチの様々な組合せ、即ちL2スイッチ(a,b,c)、(c,d,i)、(d,e)、(h,i,g,f)、(d,j,k)及び(b,h,l)の組合せで局所的(部分的)な冗長化がなされている。図2のネットワーク構成をトポロジで表現すると、図3に示すようになる。
【0017】
冗長化がなされているため、例えばL2スイッチ(a,b,c)の組合せで冗長化された部分(以下、冗長ドメイン)[ア]では、装置間の配線に一箇所障害が発生しても通信可能である。また、経路切り替えの影響は冗長ドメイン[ア]外には波及しない。なお、冗長ドメイン間を接続するL2スイッチ(例えばb,c,d,...)については故障による影響が大きいため、多重化したほうが良い。
【0018】
図4に示すようにL2ネットワークに拠点を追加、具体的にはL2スイッチa,fに拠点としてLAN1,2をそれぞれ接続し、この2つのLANをVLANによってつなぐには、次の設定を行う必要がある。
【0019】
即ち、L2スイッチ(a,b,c)、(c,d,i)及び(h,i,g,f)による冗長ドメイン[ア]、[ウ]及び[オ]をフレームが通過するため、L2スイッチa,b,c,d,h,i,g,fに設定を行う必要がある。設定は、それぞれの冗長ドメイン[ア]、[ウ]及び[オ]内で使用されるVIDを決定し、それに基づき各L2スイッチを設定する。図4の例では冗長ドメイン[ア]、[ウ]及び[オ]で同じ1000番のVIDを利用するものとする。
【0020】
このとき、L2スイッチaではポート1をVID1000番のアクセスポートとして設定し、ポート3,4の冗長化されたトランクポートにVID1000番のフレームの通過許可設定を行う。L2スイッチbではポート3,4の冗長化されたトランクポートにVID1000番のフレームの通過許可設定を行う。L2スイッチcではポート1,2とポート3,4のそれぞれの冗長化されたトランクポートにVID1000番のフレームの通過許可設定を行い、ポート1,2とポート3,4との間でのVID1000番のフレームの通過を可能とする。L2スイッチcがポート1,2とポート3,4との間でのフレーム通過時にVIDを変換する機能を有する場合は、冗長ドメイン[ア]と[ウ]とで異なるVIDを割り振ることも可能である。
【0021】
このように、部分的に冗長化が完結したL2ネットワーク上では、拠点間を結ぶVLANの経路が装置の単純なトポロジのみで決まらない。経路を設計するときには、部分的な冗長化を考慮した上で経路を設計する必要がある。このため、経路を決定するオペレータに大きな負担を与えることが課題となる。
【0022】
実際の経路設計では、さらに残VID数や残帯域(リンク及び装置)を考慮して経路を設計する必要がある。部分的に冗長化が完結したL2ネットワーク上では、残VID数や残帯域は一台の装置の情報のみで決まらず、冗長化された範囲の全ての装置の兼ね合いにより決まる。このため、図3、図4のトポロジ表示では経路設計を行うオペレータの負担は非常に大きなものとなる。
【0023】
本発明では、部分的に冗長化が完結したL2ネットワーク上でのVLANの経路設計及び必要な情報の管理を容易に行うことができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明では前記課題を解決するため、部分的に冗長化が完結したL2ネットワークの構造を、冗長化の範囲を表す冗長ノードと装置を表す装置ノードとを用いたグラフとして表現し、このグラフ上に経路設定に必要な各種の情報を表示可能とする。このグラフ上で手動または自動により経路設計を行い、この情報を基に装置の具体的な設定を生成する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、部分的に冗長化が完結したL2ネットワークの構造を、装置ノード及び冗長ノードからなるグラフとして表現し、このグラフに経路設定に必要な各種の情報を併せて持たせることで、部分的な冗長化を考慮した経路設計及び情報の管理が容易となる。また、このグラフを利用することで、アルゴリズムによる自動的な経路設計やグラフから装置設定情報を自動的に生成することも容易に出来る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】従来のVLAN経路設計装置の一例を示す構成図
【図2】部分的に冗長化が完結したレイヤ2ネットワークの一例を示す説明図
【図3】図2のレイヤ2ネットワークのトポロジの一例を示す説明図
【図4】拠点を追加した場合のレイヤ2ネットワークのトポロジの一例を示す説明図
【図5】本発明のVLAN経路設計装置の実施の形態の一例を示す構成図
【図6】レイヤ2ネットワークの一例を示す説明図
【図7】ネットワーク構成情報の一例を示す説明図
【図8】装置設定情報の一例を示す説明図
【図9】拠点情報の一例を示す説明図
【図10】経路設計用のグラフの基本構造の生成手順を示す流れ図
【図11】経路設計用のグラフの基本構造の一例を示す説明図
【図12】残VID情報の生成手順を示す流れ図
【図13】残VID情報の一例を示す説明図
【図14】経路設計用の情報を併せて提示したグラフの一例を示す説明図
【図15】図6のレイヤ2ネットワークに拠点を追加した例を示す説明図
【図16】拠点ノードの追加手順を示す流れ図
【図17】拠点ノードを追加したグラフの一例を示す説明図
【図18】拠点間を結ぶVLANの経路を設定したグラフの一例を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0027】
図5は本発明のVLAN経路設計装置の実施の形態の一例を示すもので、ネットワーク構成情報記憶部11、装置設定情報記憶部12、拠点情報記憶部13、グラフ生成部14、経路設計部15、装置設定部16及び制御部17から構成されている。
【0028】
ネットワーク構成情報記憶部11は、L2ネットワークの構成を表すネットワーク構成情報を記憶・保持している。装置設定情報記憶部12は、L2ネットワークを構成する個々の装置に対する装置設定情報を記憶・保持している。拠点情報記憶部13は、L2ネットワークに接続された拠点に関する拠点情報を記憶・保持している。
【0029】
グラフ生成部14は、前記ネットワーク構成情報、装置設定情報及び拠点情報に基づいてオペレータに提示する経路設計用のグラフを生成、即ち冗長化の範囲を表す冗長ノードと、L2ネットワークを構成する装置を表す装置ノードと、冗長ノードとその冗長化の範囲に属する装置ノードとを接続する辺とからなるグラフを生成し、経路設計用の情報を生成し、拠点を表す拠点ノードを生成して前記グラフに追加する。
【0030】
経路設計部15は、前記グラフ上で拠点ノード間を結ぶVLANの経路を設定し、当該設定に対応する装置設定情報を生成する。装置設定部16は、前記装置設定情報を装置に対して設定するとともに、当該装置設定情報により装置設定情報記憶手段を更新する。制御部17は、前述した各部を制御する。
【0031】
本発明のVLAN経路設計方法の特徴は、ネットワークの構造を、部分的な冗長化を考慮した上でグラフ化し、そのグラフ上で経路設計を行うことである。ネットワーク構成情報、装置設定情報及び拠点情報からグラフ生成部14が経路設計用のグラフを生成し、そのグラフを基に経路設計部15により経路を設計する。
【0032】
本発明のVLAN経路設計方法を説明するために、図6に示すようなL2ネットワーク(トポロジ表示)を仮定する。ここで、L2ネットワークはL2スイッチ又はこれに準ずる装置(以下、装置)をイーサネット(登録商標)ケーブル等の通信ケーブルで接続することで構成されているものとする。各装置は(a,b,c)、(c,d,i)、(d,e)、(h,i,g,f)、(d,j,k)及び(b,h,l)の組合せで局所的な冗長化がなされている。
【0033】
図7はネットワーク構成情報の一例、ここでは図6のL2ネットワークに対応する例を示すもので、L2ネットワークを構成する装置毎の各種の情報、即ち装置ID、装置帯域、ポート番号、ポート帯域、アクセスリンクフラグ、相手装置ID、相手装置ポート番号、リンク帯域、及び冗長ドメインID(の各領域)から構成されている。
【0034】
装置ID領域には装置を識別するIDが記録され、装置帯域領域には装置が処理できる最大帯域が記録されている。また、ポート番号領域には装置の各ポートを識別する番号が記録され、ポート帯域領域には装置の各ポートが処理できる最大の帯域が記録されている。また、アクセスリンクフラグにはポート毎の用途がアクセスリンク用であるかそうでない(トランクリンク用である)かを示すフラグ(アクセスリンク用であれば「1」、トランクリンク用であれば「0」)が記録されている。
【0035】
また、相手装置ID領域には用途がトランクリンク用であるポートに接続された当該トランクリンクを構成する相手装置の装置IDが記録され、相手装置ポート番号には用途がトランクリンク用であるポートに接続された当該トランクリンクを構成する相手装置のポート番号が記録されている。また、リンク帯域領域には用途がトランクリンク用である各ポートの最大帯域が記録され、冗長ドメインID領域には用途がトランクリンク用であるポートについてそのトランクリンクが属する冗長ドメインを識別するIDが記録されている。
【0036】
図8は装置設定情報の一例、ここでは図6中の装置aに対応する例を示すもので、当該装置に設定された通信グループ毎の各種の情報、即ち設定番号、割り当て装置帯域、ポート番号、利用フラグ、割り当てポート帯域、アクセスリンクフラグ、及びVID(の各領域)から構成されている。なお、実際にはL2ネットワークを構成する装置の数に対応する数の装置設定情報が備えられる。
【0037】
設定番号領域には設定された通信グループを識別する番号が記録され、割り当て装置帯域領域は通信グループが装置内で保障される最大の帯域が記録されている。また、ポート番号領域には装置の各ポートを識別する番号が記録され、利用フラグ領域には装置の各ポートをその通信グループが利用するか否かを示すフラグ(利用する場合は「1」、利用しない場合は「0」)が記録されている。
【0038】
また、割り当てポート帯域領域にはその通信グループが利用する場合のポート毎の保障される最大の帯域が記録され、アクセスリンクフラグ領域にはその通信グループが利用する場合のポート毎の用途がアクセスリンク用であるかそうでない(トランクリンク用である)かを示すフラグ(アクセスリンク用であれば「1」、トランクリンク用であれば「0」)が記録されている。
【0039】
また、VID領域にはその通信グループが利用する場合のポート毎の使用されるVIDが記録される。VID領域は同じ冗長ドメインに属しているポートは同じVIDに属している必要がある、装置がVID変換機能を有しており、冗長ドメインが違うポートであれば異なるVIDを指定することも可能である。
【0040】
図9は拠点情報の一例、ここでは図6のL2ネットワークに接続される拠点に対応する例を示すもので、当該拠点毎の各種の情報、即ち拠点ID、通信グループID、接続装置ID、接続装置ポート番号、割り当て帯域(の各領域)から構成されている。
【0041】
拠点ID領域には接続される拠点を識別するIDが記録され、通信グループID領域には拠点毎の所属する通信グループのIDが記録されている。また、接続装置ID領域には拠点毎の接続先の装置のIDが記録され、接続装置ポート番号には拠点毎の接続先の装置のポート番号が記録され、割り当て帯域には拠点毎の保障される最大の帯域が記録されている。
【0042】
本発明ではこれら3つの情報に基づいてオペレータに提示する経路設計用のグラフを生成する。
【0043】
まず、グラフ生成部14により経路設計用のグラフの基本構造を生成する。図10はグラフ生成部14における経路設計用のグラフの基本構造の生成手順を示すものである。
【0044】
即ち、グラフ生成部14は、ネットワーク構成情報記憶部11からネットワーク構成情報を読み出し、当該ネットワーク構成情報内の全ての冗長ドメインIDに対応する(冗長化の範囲を表す)冗長ノードを生成する(ステップs1〜s4)。詳細には、ネットワーク構成情報内の冗長ドメインIDをMとして(s1)、冗長ドメインIDがMの冗長ノードがグラフ上に未生成か否かを判定し(s2)、生成済みであればこれをネットワーク構成情報内の全ての冗長ドメインIDについて繰り返す(s4)。一方、未生成であれば冗長ドメインIDがMの冗長ノードを生成し(s3)、これをネットワーク構成情報内の全ての冗長ドメインIDについて繰り返す(s4)。
【0045】
次に、グラフ生成部14は、前記ネットワーク構成情報内の全ての装置IDに対応する(L2ネットワークを構成する装置を表す)装置ノードを生成する(ステップs5〜s7,s14)。詳細には、ネットワーク構成情報内の装置IDをNとして(s5)、ネットワーク構成情報から装置IDがNの情報を取り出し(s6)、装置IDがNの装置ノードを生成し(s7)、これをネットワーク構成情報内の全ての装置IDについて繰り返す(s14)。
【0046】
また、この際、グラフ生成部14は、前記ネットワーク構成情報内の全ての装置IDに対応する装置についてそのポートに冗長ドメインIDが設定されている場合、当該装置IDに対応する装置ノードと当該冗長ドメインIDに対応する冗長ノードとを辺で接続する(ステップs8〜s13)。詳細には、ネットワーク構成情報内の装置IDがNの装置のポート番号をiとして(s8)、ネットワーク構成情報から装置IDがNでポート番号がiのポートが属する冗長ドメインIDをLとして取り出し(s9)、Lが設定されているか否かを判定し(s10)、設定されていなければこれをネットワーク構成情報内の全てのポート番号について繰り返す(s13)。一方、設定されていれば更にグラフ上で装置IDがMの装置ノードと冗長ドメインIDがLの冗長ノードが未接続か否かを判定し(s11)、接続済みであればこれをネットワーク構成情報内の全てのポート番号について繰り返す(s13)。また一方、未接続であれば装置IDがMの装置ノードと冗長ドメインIDがLの冗長ノードを辺で接続し(s12)、これをネットワーク構成情報内の全てのポート番号について繰り返す(s13)。
【0047】
このようにして生成された経路設計用のグラフの基本構造の一例、ここでは図6のレイヤ2ネットワークに対応する経路設計用のグラフの基本構造を図11に示す。
【0048】
なお、上記説明では、ネットワーク構成情報内の全ての冗長ドメインID及び全ての装置IDについて処理しているが、ネットワーク構成情報の所定の範囲(例えば、オペレータが表示を希望した範囲)内の冗長ドメインIDや装置IDについて処理するものとしても良い。
【0049】
次に、グラフ生成部14により経路設計用の情報を生成し、これをグラフのノードに併せて提示する。経路設計に必要となる情報は多種多様なものが存在するが、全てを網羅的に表すことはできないため、ここでは残VID情報と残帯域情報についてのみ記述する。残VID情報は冗長ドメイン(冗長ノード)毎の利用可能なVIDのリストであり、残帯域情報は冗長ドメイン内での利用可能な帯域と装置(装置ノード)の処理可能な帯域である。
【0050】
図12はグラフ生成部14における経路設計用の情報、ここでは残VID情報の生成手順を示すものである。
【0051】
即ち、グラフ生成部14は、ネットワーク構成情報記憶部11からネットワーク構成情報を読み出すとともに装置設定情報記憶部12から装置設定情報を読み出し、残VID情報の全ての領域を未使用で初期化し(ステップs21)、ネットワーク構成情報内の全ての装置IDに対応する装置について冗長ドメインIDが設定されている全てのポートに関し、その装置IDに対応する装置設定情報内の該当するポートに設定されたVID及び前記冗長ドメインIDに対応する残VID情報の領域を使用済みに設定する(ステップs22〜s31)。
【0052】
詳細には、グラフ生成部14は、残VID情報の全ての領域を未使用で初期化し(ステップs21)、ネットワーク構成情報内の装置IDをNとし(s22)、ネットワーク構成情報内の装置IDがNの装置のポート番号をiとして(s23)、ネットワーク構成情報から装置IDがNでポート番号がiのポートが属する冗長ドメインIDをMとして取り出し(s24)、Mが設定されているか否かを判定し(s25)、設定されていなければこれをネットワーク構成情報内の全てのポート番号について繰り返し(s30)、さらにネットワーク構成情報内の全ての装置IDについて繰り返す(s31)。
【0053】
一方、グラフ生成部14は、Mが設定されていれば装置IDがNの装置に対応する装置設定情報内の設定済み設定番号をjとして(s26)、装置IDがNの装置に対応する装置設定情報から設定番号がjでポート番号がiのVIDをLとして取り出し(s27)、残VID情報の冗長ドメインIDがM、VIDがLに対応する領域を使用済みに設定し(s28)、これを全ての設定番号について繰り返す(s29)。また、前記同様に、これをネットワーク構成情報内の全てのポート番号について繰り返し(s30)、さらにネットワーク構成情報内の全ての装置IDについて繰り返す(s31)。
【0054】
このようにして生成された残VID情報の一例を図13に示す。
【0055】
なお、上記説明では、ネットワーク構成情報内の全ての装置IDについて処理しているが、前記同様にネットワーク構成情報の所定の範囲(例えば、オペレータが表示を希望した範囲)内の装置IDについて処理するものとしても良い。
【0056】
次に残帯域情報の生成規則を示す。冗長ノードの残帯域は、冗長ノードに対応する冗長ドメインを構成する装置及びトランクリンクの未割り当ての帯域の中で最低の値により決まる。詳細には、冗長ドメインに属する装置全てについて未割り当ての装置帯域を調べ、さらに冗長ドメインに属するトランクリンク全てについて未割り当てのリンク帯域を調べ、それら未割り当ての帯域の中で最低の値を冗長ノードの残帯域とする。装置ノードの残帯域は、装置ノードに対応する装置の未割り当ての装置帯域により決まる。装置が冗長ドメイン内と冗長ドメイン間の処理それぞれで独立な装置帯域を有する場合は、冗長ノードの残帯域生成時には冗長ドメイン内の装置帯域を考慮し、装置ノードの残帯域生成時には冗長ドメイン間の装置帯域を考慮する。
【0057】
このようにして生成された経路設計用の情報を併せてオペレータに提示したグラフの一例を図14に示す(但し、ここでは残VID情報として「残VID数」を表示し、装置ノードに対する表示は省略している。)。
【0058】
経路設計を行う場合、まず、オペレータが制御部17を介してグラフ生成部14に対し、経路設計を行いたい通信グループのIDを指定して、当該通信グループの拠点を表す拠点ノードをグラフに追加する。
【0059】
これは例えば、図6のL2ネットワークにおいて図15に示すような拠点1,2、即ち図9に示した拠点情報のうち通信グループID=001に所属する拠点ID=001,002の拠点1,2を表す拠点ノードを、図11または図14のグラフに追加することを意味する。なお、拠点情報は制御部17を介して、予め拠点情報記憶部13に格納されているものとする。
【0060】
図16はグラフ生成部14における拠点ノードの追加手順を示すものである。
【0061】
即ち、グラフ生成部14は、オペレータから処理対象の通信グループIDが指定される(s41)と、拠点情報記憶部13から拠点情報を読み出し、当該拠点情報内の全ての拠点IDのうち、その通信グループIDが前記処理対象の通信グループIDと一致する拠点IDに対応して拠点ノードを生成し、当該拠点IDに対応する接続装置IDの装置ノードと辺で接続する(ステップs42〜s47)。
【0062】
詳細には、処理対象の通信グループIDの指定をLとして受け付ける(s41)と、拠点情報内の拠点IDをMとして(s42)、拠点情報から拠点IDがMの拠点の通信グループIDをN、接続装置IDをOとして取り出し(s43)、処理対象の通信グループの通信グループID:Lと通信グループID:Nとが一致するか否かを判定し(s44)、一致しなければこれを拠点情報内の全ての拠点IDについて繰り返す(s47)。一方、一致すれば拠点IDがMの拠点ノードをグラフ上に生成し(s45)、拠点IDがMの拠点ノードと装置IDがOの装置ノードとを辺で接続した(s46)上で、これを拠点情報内の全ての拠点IDについて繰り返す(s47)。
【0063】
このようにして追加された拠点ノードを、経路設計に必要な各種の情報と併せてオペレータに提示したグラフの一例を図17に示す。
【0064】
なお、上記説明では、拠点情報内の全ての拠点IDについて処理しているが、拠点情報の所定の範囲(例えば、オペレータが表示を希望した範囲)内の拠点IDについて処理するものとしても良い。
【0065】
オペレータへグラフを表示する場合において、各ノードの配置方法に制限はない。また、経路設計用の情報の提示方法としては、図14、図17に示したようにノードに対してふきだしで表示させても良いし、ノードに対してオペレータがクリック等の操作をした時のみ表示させても良く、表示方法に制限はない。
【0066】
図17のグラフにより、オペレータは拠点1と拠点2を接続する経路として、「1−a−ア−c−ウ−i−オ−f−2」、「1−a−ア−b−カ−h−オ−f−2」の2経路があることが簡単に分かる。前者と後者の違いは冗長ドメイン[ウ]を通るか、冗長ドメイン[カ]を通るかの違いである。どちらの経路も残VID数(その冗長ドメインで使用可能なVIDの数)は十分残っているが、冗長ドメイン[ウ]の残帯域が少ないため、冗長ドメイン[カ]を通る経路を利用した方が良いことが分かる。
【0067】
オペレータからの指示もしくは自動で経路設計部15により、拠点1,2間の経路を設定した状態を示すのが図18である。図18では設定した経路を太線で表示し、この通信グループに冗長ドメイン毎に割り当てられたVIDをふきだしで表示している。この設計の過程により、オペレータは経路がループしていないことや、割り当てたVIDが利用可能であることが分かる。また、この際、経路設計部15より生成された装置設定情報は、装置設定部16により、実際の装置に対して設定されるとともに、装置設定情報記憶部12を更新する。
【0068】
オペレータがこの設計を元に装置の設定を行う場合は次の情報を読み取ることが出来る。
【0069】
第一に、経路が通過する冗長ノードに隣接する装置ノードに対応する装置に対して、冗長化を実現する設定を行う必要があることが分かる。図18の冗長ノード[オ]では、装置h,i,g,fの装置にVIDが1001のフレームを冗長ドメインに属するポート間で通過させる設定を行う必要がある。
【0070】
第二に、経路が通過する装置ノードに対応する装置に対して、冗長ドメイン間を繋ぐ設定を行う必要がある。図18の装置hでは、冗長ドメイン[カ]と冗長ドメイン[オ]を繋ぐために、装置hの冗長ドメイン[カ]に属するポートと冗長ドメイン[オ]に属するポート間でフレームを通過させる設定を行う必要がある。また、冗長ドメイン[カ]と冗長ドメイン[オ]ではこの通信グループに割り当てられているVIDが違うため、装置hをフレームが通過する時にVIDが変換されるように設定する必要がある。
【0071】
第三に、拠点が接続された装置ノードに対応する装置には、アクセスリンクの設定を行う必要がある。図18の装置fでは、冗長ドメイン[オ]から流れてきたフレームを、VLANタグを取り除いて拠点2が接続されたポートへ流す処理及びその逆の処理を行うために、装置fの拠点2が接続されたポートの設定を行う必要がある。
【0072】
このように、図7、図8、図9の各種の情報をそのままオペレータが利用した場合や、図15のように単純にネットワークのトポロジを表現した場合と比較して、経路の設計及び設定に必要な情報の把握が非常に簡単にできる。また、本発明のグラフではアルゴリズムによる自動設計も容易である。
【0073】
なお、本発明は、周知のコンピュータに媒体もしくは通信回線を介して、図10、図12、図16のフローチャートに示された手順を備えるプログラムをインストールすることによっても実現可能である。
【符号の説明】
【0074】
11:ネットワーク構成情報記憶部、12:装置設定情報記憶部、13:拠点情報記憶部、14:グラフ生成部、15:経路設計部、16:装置設定部、17:制御部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、広域イーサネット(登録商標)サービス等で使用されるレイヤ2ネットワーク、特に部分的に冗長化が完結したレイヤ2ネットワークに接続された複数の通信拠点間を結ぶVLANの経路を設計し、その経路情報を管理するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
レイヤ2(以下、L2)スイッチを通信ケーブルによって接続することで構成された物理的なネットワークであるL2ネットワーク上で、複数の論理的なネットワークを構築する技術として、VLAN(Virtual LAN)がある。VLANを利用することで、L2ネットワーク上でブロードキャストドメインを論理的に構築し、L2ネットワークに接続された同一通信グループの2以上の通信拠点(以下、拠点)を、一つのブロードキャストドメインとして取り扱うことができる。これにより、L2ネットワークを複数の通信グループで効率的に利用できる。
【0003】
VLANには、拠点とL2スイッチとをつなぐアクセスリンク、及びL2スイッチ間をつなぐトランクリンクの概念がある。アクセスリンクとは拠点とL2ネットワークとを接続する経路であり、トランクリンクとは通信グループ毎の論理的な経路である。VLANを利用するには、拠点毎のアクセスリンクと全ての拠点をつなぐトランクリンクを設計し、L2スイッチ又はこれに準ずる装置に設定を行う必要がある。
【0004】
これら経路の設計・設定作業は通信グループ毎に行う。経路は、ツリー状(ループを持たない)であることや、装置及びトランクリンクの残VID数を考慮し、さらに帯域保障を行う場合は装置及びトランクリンクの残帯域を考慮する必要がある。
【0005】
障害に強いL2ネットワークを構築するには冗長化が必要になる。障害が発生しても、冗長化により障害部分を迂回することで通信を維持できる。L2ネットワークで物理的に冗長な構造を取るとループ構造になってしまうため、フレームが循環して重大な問題となる。
【0006】
この問題に対しては、物理的な構造上に論理的なツリー構造を動的に設定することでループを回避する。障害発生時には論理的な構造を自動的に変更することで障害を回避できる。これらを自動的に実現するプロトコルとして、STP(Spanning Tree Protocol)やERP(Ethernet(登録商標) Ring Protection)が存在する。STPは網目状のネットワークを構築し、その上でループが発生しないように一部のリンクを遮断することで冗長化を実現する。ERPはリング状のネットワークを構築し、リング上でループが発生しないようにリングの一部を遮断することで冗長化を実現する。
【0007】
前述のVLAN上で冗長化(STP)を同時に実現する仕組みとして、MSTP(Multiple Spanning Tree Protocol)がある。冗長化を考慮した上でVLANの経路を設定する作業は煩雑であるが、MSTPでは通信グループ毎の経路が装置と一対一で対応しているため、ネットワークのトポロジを直接提示しても、オペレータがそのトポロジ上で経路を設計することは容易だった。
【0008】
図1は従来のVLAN経路設計装置を示すもので、ネットワーク構成情報記憶部1、装置設定情報記憶部2、拠点情報記憶部3、経路設計部4、装置設定部5及び制御部6から構成されている。
【0009】
制御部6は外部からの指示により、経路設計部4に経路の設計を指示する。経路設計部4はネットワーク構成情報記憶部1、装置設定情報記憶部2及び拠点情報記憶部3にそれぞれ記憶・保持されたネットワーク構成情報、装置設定情報及び拠点情報を基に、新規経路及び装置の設定情報を設計する。また、制御部6は新規経路を実際のネットワークで有効にするために、装置設定部5に装置の設定を指示する。装置設定部5は、経路設計部4が設計した装置設定情報を実際の装置に対して設定する。これにより新規経路が有効になる。また、装置設定部5では、実際の装置の設定を変更するとともに、装置設定情報記憶部2における装置設定情報を更新する。
【0010】
ネットワーク構成情報、装置設定情報及び拠点情報について、図1では静的に保持するものとしているが、必要に応じて、実際のネットワークから情報を収集する情報収集部を設けても良い。
【0011】
ネットワーク構成情報はL2ネットワークの構成を表す情報であって、当該L2ネットワークを構成する装置毎の利用可能帯域、接続相手装置等に関する情報からなっている。装置設定情報はL2ネットワークを構成する個々の装置に対する設定情報であって、装置単位の、当該装置に設定された通信グループ毎の割り当て帯域、VID等に関する情報からなっている。拠点情報はL2ネットワークに接続される拠点に関する情報であって、当該拠点毎の通信グループ、接続装置等に関する情報からなっている。
【0012】
拠点を新設・削除する場合や経路の変更を行う場合に、経路設計部4での経路設計が必要になる。経路設計部4では、拠点を新設する場合は新規の拠点と既存経路(既存の拠点間を接続する経路)とを接続する新しい経路を導出し、この経路をネットワークに反映する装置設定情報を生成する。既存経路が存在しない場合は、単純に拠点間を接続する経路を導出する。拠点を削除する場合は拠点の削除により不要となる経路を導出し、これをネットワークに反映する装置設定情報を生成する。また、何らかの理由で拠点間を結ぶ経路を変更したい場合も、要求に応じて経路を導出し、この経路をネットワークに反映する装置設定情報を生成する。このように、要求に合わせた経路を導出し、この経路を実際のネットワークに反映する装置設定情報を生成する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第3938582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
比較的小規模なネットワークでは前述のMSTP等の技術を利用することにより、L2ネットワーク全体を対象として冗長化とVLANの共存が可能である。しかし、大規模なネットワークでは、ネットワーク全体を冗長化の対象とすると、障害発生時の自動切り替え時間がネットワークの大きさに比例して大きくなる。また、一部の障害がネットワーク全体に影響を及ぼしやすくなる。
【0015】
これらを解決するには、冗長化の範囲を小さくする必要がある。このため、単純に冗長化技術を使っただけでは、大規模かつ障害発生時の切り替えが早いL2ネットワークを構築できない。この問題に対しては、小規模なL2ネットワークに完結した冗長化を施し、冗長化が完結した小規模なL2ネットワークを相互に連結することで解決できる。ERPを用いた場合は、1つのリングが1つの冗長化が完結した小規模なL2ネットワークに対応する。
【0016】
図2は冗長化が完結した小規模なL2ネットワークを組み合わせたL2ネットワークの一例を示すものである。符号a〜lで示されるL2スイッチの様々な組合せ、即ちL2スイッチ(a,b,c)、(c,d,i)、(d,e)、(h,i,g,f)、(d,j,k)及び(b,h,l)の組合せで局所的(部分的)な冗長化がなされている。図2のネットワーク構成をトポロジで表現すると、図3に示すようになる。
【0017】
冗長化がなされているため、例えばL2スイッチ(a,b,c)の組合せで冗長化された部分(以下、冗長ドメイン)[ア]では、装置間の配線に一箇所障害が発生しても通信可能である。また、経路切り替えの影響は冗長ドメイン[ア]外には波及しない。なお、冗長ドメイン間を接続するL2スイッチ(例えばb,c,d,...)については故障による影響が大きいため、多重化したほうが良い。
【0018】
図4に示すようにL2ネットワークに拠点を追加、具体的にはL2スイッチa,fに拠点としてLAN1,2をそれぞれ接続し、この2つのLANをVLANによってつなぐには、次の設定を行う必要がある。
【0019】
即ち、L2スイッチ(a,b,c)、(c,d,i)及び(h,i,g,f)による冗長ドメイン[ア]、[ウ]及び[オ]をフレームが通過するため、L2スイッチa,b,c,d,h,i,g,fに設定を行う必要がある。設定は、それぞれの冗長ドメイン[ア]、[ウ]及び[オ]内で使用されるVIDを決定し、それに基づき各L2スイッチを設定する。図4の例では冗長ドメイン[ア]、[ウ]及び[オ]で同じ1000番のVIDを利用するものとする。
【0020】
このとき、L2スイッチaではポート1をVID1000番のアクセスポートとして設定し、ポート3,4の冗長化されたトランクポートにVID1000番のフレームの通過許可設定を行う。L2スイッチbではポート3,4の冗長化されたトランクポートにVID1000番のフレームの通過許可設定を行う。L2スイッチcではポート1,2とポート3,4のそれぞれの冗長化されたトランクポートにVID1000番のフレームの通過許可設定を行い、ポート1,2とポート3,4との間でのVID1000番のフレームの通過を可能とする。L2スイッチcがポート1,2とポート3,4との間でのフレーム通過時にVIDを変換する機能を有する場合は、冗長ドメイン[ア]と[ウ]とで異なるVIDを割り振ることも可能である。
【0021】
このように、部分的に冗長化が完結したL2ネットワーク上では、拠点間を結ぶVLANの経路が装置の単純なトポロジのみで決まらない。経路を設計するときには、部分的な冗長化を考慮した上で経路を設計する必要がある。このため、経路を決定するオペレータに大きな負担を与えることが課題となる。
【0022】
実際の経路設計では、さらに残VID数や残帯域(リンク及び装置)を考慮して経路を設計する必要がある。部分的に冗長化が完結したL2ネットワーク上では、残VID数や残帯域は一台の装置の情報のみで決まらず、冗長化された範囲の全ての装置の兼ね合いにより決まる。このため、図3、図4のトポロジ表示では経路設計を行うオペレータの負担は非常に大きなものとなる。
【0023】
本発明では、部分的に冗長化が完結したL2ネットワーク上でのVLANの経路設計及び必要な情報の管理を容易に行うことができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明では前記課題を解決するため、部分的に冗長化が完結したL2ネットワークの構造を、冗長化の範囲を表す冗長ノードと装置を表す装置ノードとを用いたグラフとして表現し、このグラフ上に経路設定に必要な各種の情報を表示可能とする。このグラフ上で手動または自動により経路設計を行い、この情報を基に装置の具体的な設定を生成する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、部分的に冗長化が完結したL2ネットワークの構造を、装置ノード及び冗長ノードからなるグラフとして表現し、このグラフに経路設定に必要な各種の情報を併せて持たせることで、部分的な冗長化を考慮した経路設計及び情報の管理が容易となる。また、このグラフを利用することで、アルゴリズムによる自動的な経路設計やグラフから装置設定情報を自動的に生成することも容易に出来る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】従来のVLAN経路設計装置の一例を示す構成図
【図2】部分的に冗長化が完結したレイヤ2ネットワークの一例を示す説明図
【図3】図2のレイヤ2ネットワークのトポロジの一例を示す説明図
【図4】拠点を追加した場合のレイヤ2ネットワークのトポロジの一例を示す説明図
【図5】本発明のVLAN経路設計装置の実施の形態の一例を示す構成図
【図6】レイヤ2ネットワークの一例を示す説明図
【図7】ネットワーク構成情報の一例を示す説明図
【図8】装置設定情報の一例を示す説明図
【図9】拠点情報の一例を示す説明図
【図10】経路設計用のグラフの基本構造の生成手順を示す流れ図
【図11】経路設計用のグラフの基本構造の一例を示す説明図
【図12】残VID情報の生成手順を示す流れ図
【図13】残VID情報の一例を示す説明図
【図14】経路設計用の情報を併せて提示したグラフの一例を示す説明図
【図15】図6のレイヤ2ネットワークに拠点を追加した例を示す説明図
【図16】拠点ノードの追加手順を示す流れ図
【図17】拠点ノードを追加したグラフの一例を示す説明図
【図18】拠点間を結ぶVLANの経路を設定したグラフの一例を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0027】
図5は本発明のVLAN経路設計装置の実施の形態の一例を示すもので、ネットワーク構成情報記憶部11、装置設定情報記憶部12、拠点情報記憶部13、グラフ生成部14、経路設計部15、装置設定部16及び制御部17から構成されている。
【0028】
ネットワーク構成情報記憶部11は、L2ネットワークの構成を表すネットワーク構成情報を記憶・保持している。装置設定情報記憶部12は、L2ネットワークを構成する個々の装置に対する装置設定情報を記憶・保持している。拠点情報記憶部13は、L2ネットワークに接続された拠点に関する拠点情報を記憶・保持している。
【0029】
グラフ生成部14は、前記ネットワーク構成情報、装置設定情報及び拠点情報に基づいてオペレータに提示する経路設計用のグラフを生成、即ち冗長化の範囲を表す冗長ノードと、L2ネットワークを構成する装置を表す装置ノードと、冗長ノードとその冗長化の範囲に属する装置ノードとを接続する辺とからなるグラフを生成し、経路設計用の情報を生成し、拠点を表す拠点ノードを生成して前記グラフに追加する。
【0030】
経路設計部15は、前記グラフ上で拠点ノード間を結ぶVLANの経路を設定し、当該設定に対応する装置設定情報を生成する。装置設定部16は、前記装置設定情報を装置に対して設定するとともに、当該装置設定情報により装置設定情報記憶手段を更新する。制御部17は、前述した各部を制御する。
【0031】
本発明のVLAN経路設計方法の特徴は、ネットワークの構造を、部分的な冗長化を考慮した上でグラフ化し、そのグラフ上で経路設計を行うことである。ネットワーク構成情報、装置設定情報及び拠点情報からグラフ生成部14が経路設計用のグラフを生成し、そのグラフを基に経路設計部15により経路を設計する。
【0032】
本発明のVLAN経路設計方法を説明するために、図6に示すようなL2ネットワーク(トポロジ表示)を仮定する。ここで、L2ネットワークはL2スイッチ又はこれに準ずる装置(以下、装置)をイーサネット(登録商標)ケーブル等の通信ケーブルで接続することで構成されているものとする。各装置は(a,b,c)、(c,d,i)、(d,e)、(h,i,g,f)、(d,j,k)及び(b,h,l)の組合せで局所的な冗長化がなされている。
【0033】
図7はネットワーク構成情報の一例、ここでは図6のL2ネットワークに対応する例を示すもので、L2ネットワークを構成する装置毎の各種の情報、即ち装置ID、装置帯域、ポート番号、ポート帯域、アクセスリンクフラグ、相手装置ID、相手装置ポート番号、リンク帯域、及び冗長ドメインID(の各領域)から構成されている。
【0034】
装置ID領域には装置を識別するIDが記録され、装置帯域領域には装置が処理できる最大帯域が記録されている。また、ポート番号領域には装置の各ポートを識別する番号が記録され、ポート帯域領域には装置の各ポートが処理できる最大の帯域が記録されている。また、アクセスリンクフラグにはポート毎の用途がアクセスリンク用であるかそうでない(トランクリンク用である)かを示すフラグ(アクセスリンク用であれば「1」、トランクリンク用であれば「0」)が記録されている。
【0035】
また、相手装置ID領域には用途がトランクリンク用であるポートに接続された当該トランクリンクを構成する相手装置の装置IDが記録され、相手装置ポート番号には用途がトランクリンク用であるポートに接続された当該トランクリンクを構成する相手装置のポート番号が記録されている。また、リンク帯域領域には用途がトランクリンク用である各ポートの最大帯域が記録され、冗長ドメインID領域には用途がトランクリンク用であるポートについてそのトランクリンクが属する冗長ドメインを識別するIDが記録されている。
【0036】
図8は装置設定情報の一例、ここでは図6中の装置aに対応する例を示すもので、当該装置に設定された通信グループ毎の各種の情報、即ち設定番号、割り当て装置帯域、ポート番号、利用フラグ、割り当てポート帯域、アクセスリンクフラグ、及びVID(の各領域)から構成されている。なお、実際にはL2ネットワークを構成する装置の数に対応する数の装置設定情報が備えられる。
【0037】
設定番号領域には設定された通信グループを識別する番号が記録され、割り当て装置帯域領域は通信グループが装置内で保障される最大の帯域が記録されている。また、ポート番号領域には装置の各ポートを識別する番号が記録され、利用フラグ領域には装置の各ポートをその通信グループが利用するか否かを示すフラグ(利用する場合は「1」、利用しない場合は「0」)が記録されている。
【0038】
また、割り当てポート帯域領域にはその通信グループが利用する場合のポート毎の保障される最大の帯域が記録され、アクセスリンクフラグ領域にはその通信グループが利用する場合のポート毎の用途がアクセスリンク用であるかそうでない(トランクリンク用である)かを示すフラグ(アクセスリンク用であれば「1」、トランクリンク用であれば「0」)が記録されている。
【0039】
また、VID領域にはその通信グループが利用する場合のポート毎の使用されるVIDが記録される。VID領域は同じ冗長ドメインに属しているポートは同じVIDに属している必要がある、装置がVID変換機能を有しており、冗長ドメインが違うポートであれば異なるVIDを指定することも可能である。
【0040】
図9は拠点情報の一例、ここでは図6のL2ネットワークに接続される拠点に対応する例を示すもので、当該拠点毎の各種の情報、即ち拠点ID、通信グループID、接続装置ID、接続装置ポート番号、割り当て帯域(の各領域)から構成されている。
【0041】
拠点ID領域には接続される拠点を識別するIDが記録され、通信グループID領域には拠点毎の所属する通信グループのIDが記録されている。また、接続装置ID領域には拠点毎の接続先の装置のIDが記録され、接続装置ポート番号には拠点毎の接続先の装置のポート番号が記録され、割り当て帯域には拠点毎の保障される最大の帯域が記録されている。
【0042】
本発明ではこれら3つの情報に基づいてオペレータに提示する経路設計用のグラフを生成する。
【0043】
まず、グラフ生成部14により経路設計用のグラフの基本構造を生成する。図10はグラフ生成部14における経路設計用のグラフの基本構造の生成手順を示すものである。
【0044】
即ち、グラフ生成部14は、ネットワーク構成情報記憶部11からネットワーク構成情報を読み出し、当該ネットワーク構成情報内の全ての冗長ドメインIDに対応する(冗長化の範囲を表す)冗長ノードを生成する(ステップs1〜s4)。詳細には、ネットワーク構成情報内の冗長ドメインIDをMとして(s1)、冗長ドメインIDがMの冗長ノードがグラフ上に未生成か否かを判定し(s2)、生成済みであればこれをネットワーク構成情報内の全ての冗長ドメインIDについて繰り返す(s4)。一方、未生成であれば冗長ドメインIDがMの冗長ノードを生成し(s3)、これをネットワーク構成情報内の全ての冗長ドメインIDについて繰り返す(s4)。
【0045】
次に、グラフ生成部14は、前記ネットワーク構成情報内の全ての装置IDに対応する(L2ネットワークを構成する装置を表す)装置ノードを生成する(ステップs5〜s7,s14)。詳細には、ネットワーク構成情報内の装置IDをNとして(s5)、ネットワーク構成情報から装置IDがNの情報を取り出し(s6)、装置IDがNの装置ノードを生成し(s7)、これをネットワーク構成情報内の全ての装置IDについて繰り返す(s14)。
【0046】
また、この際、グラフ生成部14は、前記ネットワーク構成情報内の全ての装置IDに対応する装置についてそのポートに冗長ドメインIDが設定されている場合、当該装置IDに対応する装置ノードと当該冗長ドメインIDに対応する冗長ノードとを辺で接続する(ステップs8〜s13)。詳細には、ネットワーク構成情報内の装置IDがNの装置のポート番号をiとして(s8)、ネットワーク構成情報から装置IDがNでポート番号がiのポートが属する冗長ドメインIDをLとして取り出し(s9)、Lが設定されているか否かを判定し(s10)、設定されていなければこれをネットワーク構成情報内の全てのポート番号について繰り返す(s13)。一方、設定されていれば更にグラフ上で装置IDがMの装置ノードと冗長ドメインIDがLの冗長ノードが未接続か否かを判定し(s11)、接続済みであればこれをネットワーク構成情報内の全てのポート番号について繰り返す(s13)。また一方、未接続であれば装置IDがMの装置ノードと冗長ドメインIDがLの冗長ノードを辺で接続し(s12)、これをネットワーク構成情報内の全てのポート番号について繰り返す(s13)。
【0047】
このようにして生成された経路設計用のグラフの基本構造の一例、ここでは図6のレイヤ2ネットワークに対応する経路設計用のグラフの基本構造を図11に示す。
【0048】
なお、上記説明では、ネットワーク構成情報内の全ての冗長ドメインID及び全ての装置IDについて処理しているが、ネットワーク構成情報の所定の範囲(例えば、オペレータが表示を希望した範囲)内の冗長ドメインIDや装置IDについて処理するものとしても良い。
【0049】
次に、グラフ生成部14により経路設計用の情報を生成し、これをグラフのノードに併せて提示する。経路設計に必要となる情報は多種多様なものが存在するが、全てを網羅的に表すことはできないため、ここでは残VID情報と残帯域情報についてのみ記述する。残VID情報は冗長ドメイン(冗長ノード)毎の利用可能なVIDのリストであり、残帯域情報は冗長ドメイン内での利用可能な帯域と装置(装置ノード)の処理可能な帯域である。
【0050】
図12はグラフ生成部14における経路設計用の情報、ここでは残VID情報の生成手順を示すものである。
【0051】
即ち、グラフ生成部14は、ネットワーク構成情報記憶部11からネットワーク構成情報を読み出すとともに装置設定情報記憶部12から装置設定情報を読み出し、残VID情報の全ての領域を未使用で初期化し(ステップs21)、ネットワーク構成情報内の全ての装置IDに対応する装置について冗長ドメインIDが設定されている全てのポートに関し、その装置IDに対応する装置設定情報内の該当するポートに設定されたVID及び前記冗長ドメインIDに対応する残VID情報の領域を使用済みに設定する(ステップs22〜s31)。
【0052】
詳細には、グラフ生成部14は、残VID情報の全ての領域を未使用で初期化し(ステップs21)、ネットワーク構成情報内の装置IDをNとし(s22)、ネットワーク構成情報内の装置IDがNの装置のポート番号をiとして(s23)、ネットワーク構成情報から装置IDがNでポート番号がiのポートが属する冗長ドメインIDをMとして取り出し(s24)、Mが設定されているか否かを判定し(s25)、設定されていなければこれをネットワーク構成情報内の全てのポート番号について繰り返し(s30)、さらにネットワーク構成情報内の全ての装置IDについて繰り返す(s31)。
【0053】
一方、グラフ生成部14は、Mが設定されていれば装置IDがNの装置に対応する装置設定情報内の設定済み設定番号をjとして(s26)、装置IDがNの装置に対応する装置設定情報から設定番号がjでポート番号がiのVIDをLとして取り出し(s27)、残VID情報の冗長ドメインIDがM、VIDがLに対応する領域を使用済みに設定し(s28)、これを全ての設定番号について繰り返す(s29)。また、前記同様に、これをネットワーク構成情報内の全てのポート番号について繰り返し(s30)、さらにネットワーク構成情報内の全ての装置IDについて繰り返す(s31)。
【0054】
このようにして生成された残VID情報の一例を図13に示す。
【0055】
なお、上記説明では、ネットワーク構成情報内の全ての装置IDについて処理しているが、前記同様にネットワーク構成情報の所定の範囲(例えば、オペレータが表示を希望した範囲)内の装置IDについて処理するものとしても良い。
【0056】
次に残帯域情報の生成規則を示す。冗長ノードの残帯域は、冗長ノードに対応する冗長ドメインを構成する装置及びトランクリンクの未割り当ての帯域の中で最低の値により決まる。詳細には、冗長ドメインに属する装置全てについて未割り当ての装置帯域を調べ、さらに冗長ドメインに属するトランクリンク全てについて未割り当てのリンク帯域を調べ、それら未割り当ての帯域の中で最低の値を冗長ノードの残帯域とする。装置ノードの残帯域は、装置ノードに対応する装置の未割り当ての装置帯域により決まる。装置が冗長ドメイン内と冗長ドメイン間の処理それぞれで独立な装置帯域を有する場合は、冗長ノードの残帯域生成時には冗長ドメイン内の装置帯域を考慮し、装置ノードの残帯域生成時には冗長ドメイン間の装置帯域を考慮する。
【0057】
このようにして生成された経路設計用の情報を併せてオペレータに提示したグラフの一例を図14に示す(但し、ここでは残VID情報として「残VID数」を表示し、装置ノードに対する表示は省略している。)。
【0058】
経路設計を行う場合、まず、オペレータが制御部17を介してグラフ生成部14に対し、経路設計を行いたい通信グループのIDを指定して、当該通信グループの拠点を表す拠点ノードをグラフに追加する。
【0059】
これは例えば、図6のL2ネットワークにおいて図15に示すような拠点1,2、即ち図9に示した拠点情報のうち通信グループID=001に所属する拠点ID=001,002の拠点1,2を表す拠点ノードを、図11または図14のグラフに追加することを意味する。なお、拠点情報は制御部17を介して、予め拠点情報記憶部13に格納されているものとする。
【0060】
図16はグラフ生成部14における拠点ノードの追加手順を示すものである。
【0061】
即ち、グラフ生成部14は、オペレータから処理対象の通信グループIDが指定される(s41)と、拠点情報記憶部13から拠点情報を読み出し、当該拠点情報内の全ての拠点IDのうち、その通信グループIDが前記処理対象の通信グループIDと一致する拠点IDに対応して拠点ノードを生成し、当該拠点IDに対応する接続装置IDの装置ノードと辺で接続する(ステップs42〜s47)。
【0062】
詳細には、処理対象の通信グループIDの指定をLとして受け付ける(s41)と、拠点情報内の拠点IDをMとして(s42)、拠点情報から拠点IDがMの拠点の通信グループIDをN、接続装置IDをOとして取り出し(s43)、処理対象の通信グループの通信グループID:Lと通信グループID:Nとが一致するか否かを判定し(s44)、一致しなければこれを拠点情報内の全ての拠点IDについて繰り返す(s47)。一方、一致すれば拠点IDがMの拠点ノードをグラフ上に生成し(s45)、拠点IDがMの拠点ノードと装置IDがOの装置ノードとを辺で接続した(s46)上で、これを拠点情報内の全ての拠点IDについて繰り返す(s47)。
【0063】
このようにして追加された拠点ノードを、経路設計に必要な各種の情報と併せてオペレータに提示したグラフの一例を図17に示す。
【0064】
なお、上記説明では、拠点情報内の全ての拠点IDについて処理しているが、拠点情報の所定の範囲(例えば、オペレータが表示を希望した範囲)内の拠点IDについて処理するものとしても良い。
【0065】
オペレータへグラフを表示する場合において、各ノードの配置方法に制限はない。また、経路設計用の情報の提示方法としては、図14、図17に示したようにノードに対してふきだしで表示させても良いし、ノードに対してオペレータがクリック等の操作をした時のみ表示させても良く、表示方法に制限はない。
【0066】
図17のグラフにより、オペレータは拠点1と拠点2を接続する経路として、「1−a−ア−c−ウ−i−オ−f−2」、「1−a−ア−b−カ−h−オ−f−2」の2経路があることが簡単に分かる。前者と後者の違いは冗長ドメイン[ウ]を通るか、冗長ドメイン[カ]を通るかの違いである。どちらの経路も残VID数(その冗長ドメインで使用可能なVIDの数)は十分残っているが、冗長ドメイン[ウ]の残帯域が少ないため、冗長ドメイン[カ]を通る経路を利用した方が良いことが分かる。
【0067】
オペレータからの指示もしくは自動で経路設計部15により、拠点1,2間の経路を設定した状態を示すのが図18である。図18では設定した経路を太線で表示し、この通信グループに冗長ドメイン毎に割り当てられたVIDをふきだしで表示している。この設計の過程により、オペレータは経路がループしていないことや、割り当てたVIDが利用可能であることが分かる。また、この際、経路設計部15より生成された装置設定情報は、装置設定部16により、実際の装置に対して設定されるとともに、装置設定情報記憶部12を更新する。
【0068】
オペレータがこの設計を元に装置の設定を行う場合は次の情報を読み取ることが出来る。
【0069】
第一に、経路が通過する冗長ノードに隣接する装置ノードに対応する装置に対して、冗長化を実現する設定を行う必要があることが分かる。図18の冗長ノード[オ]では、装置h,i,g,fの装置にVIDが1001のフレームを冗長ドメインに属するポート間で通過させる設定を行う必要がある。
【0070】
第二に、経路が通過する装置ノードに対応する装置に対して、冗長ドメイン間を繋ぐ設定を行う必要がある。図18の装置hでは、冗長ドメイン[カ]と冗長ドメイン[オ]を繋ぐために、装置hの冗長ドメイン[カ]に属するポートと冗長ドメイン[オ]に属するポート間でフレームを通過させる設定を行う必要がある。また、冗長ドメイン[カ]と冗長ドメイン[オ]ではこの通信グループに割り当てられているVIDが違うため、装置hをフレームが通過する時にVIDが変換されるように設定する必要がある。
【0071】
第三に、拠点が接続された装置ノードに対応する装置には、アクセスリンクの設定を行う必要がある。図18の装置fでは、冗長ドメイン[オ]から流れてきたフレームを、VLANタグを取り除いて拠点2が接続されたポートへ流す処理及びその逆の処理を行うために、装置fの拠点2が接続されたポートの設定を行う必要がある。
【0072】
このように、図7、図8、図9の各種の情報をそのままオペレータが利用した場合や、図15のように単純にネットワークのトポロジを表現した場合と比較して、経路の設計及び設定に必要な情報の把握が非常に簡単にできる。また、本発明のグラフではアルゴリズムによる自動設計も容易である。
【0073】
なお、本発明は、周知のコンピュータに媒体もしくは通信回線を介して、図10、図12、図16のフローチャートに示された手順を備えるプログラムをインストールすることによっても実現可能である。
【符号の説明】
【0074】
11:ネットワーク構成情報記憶部、12:装置設定情報記憶部、13:拠点情報記憶部、14:グラフ生成部、15:経路設計部、16:装置設定部、17:制御部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部分的に冗長化が完結したL2ネットワークに接続された拠点間を結ぶVLANの経路を設計する方法であって、
グラフ生成手段が、ネットワーク構成情報記憶手段からL2ネットワークを構成する装置毎の各種の情報からなるネットワーク構成情報を読み出し、冗長化の範囲を表す冗長ノードと、L2ネットワークを構成する装置を表す装置ノードと、冗長ノードとその冗長化の範囲に属する装置ノードとを接続する辺とからなるグラフを生成する工程と、
グラフ生成手段が、ネットワーク構成情報記憶手段からL2ネットワークを構成する装置毎の各種の情報からなるネットワーク構成情報を読み出すとともに装置設定情報記憶手段からL2ネットワークを構成する個々の装置に対する装置設定情報を読み出し、経路設計用の情報を生成する工程と、
グラフ生成手段が、拠点情報記憶手段からL2ネットワークに接続された拠点に関する拠点情報を読み出し、拠点を表す拠点ノードを生成して前記グラフに追加する工程と、
経路設計手段が、前記グラフ上で拠点ノード間を結ぶVLANの経路を設定し、当該設定に対応する装置設定情報を生成する工程と、
装置設定手段が、前記装置設定情報を装置に対して設定するとともに、当該装置設定情報により装置設定情報記憶手段を更新する工程とを含む
ことを特徴とするVLAN経路設計方法。
【請求項2】
グラフ生成工程は、
ネットワーク構成情報内の冗長ドメインIDに対応する冗長ノードを生成する工程と、
前記ネットワーク構成情報内の装置IDに対応する装置ノードを生成する工程と、
前記ネットワーク構成情報内の装置IDに対応する装置についてそのポートに冗長ドメインIDが設定されている場合、当該装置IDに対応する装置ノードと当該冗長ドメインIDに対応する冗長ノードとを辺で接続する工程とを含む
ことを特徴とする請求項1に記載のVLAN経路設計方法。
【請求項3】
情報生成工程は、
残VID情報の領域を未使用で初期化する工程と、
ネットワーク構成情報内の装置IDに対応する装置について冗長ドメインIDが設定されているポートに関し、その装置IDに対応する装置設定情報内の該当するポートに設定されたVID及び前記冗長ドメインIDに対応する残VID情報の領域を使用済みに設定する工程とを含む
ことを特徴とする請求項1に記載のVLAN経路設計方法。
【請求項4】
拠点ノード追加工程は、
処理対象の通信グループIDの指定を受け付ける工程と、
拠点情報内の拠点IDのうち、その通信グループIDが前記処理対象の通信グループIDと一致する拠点IDに対応して拠点ノードを生成し、当該拠点IDに対応する接続装置IDの装置ノードと辺で接続する工程とを含む
ことを特徴とする請求項1に記載のVLAN経路設計方法。
【請求項5】
部分的に冗長化が完結したL2ネットワークに接続された拠点間を結ぶVLANの経路を設計するVLAN経路設計装置であって、
L2ネットワークを構成する装置毎の各種の情報からなるネットワーク構成情報を記憶するネットワーク構成情報記憶手段と、
L2ネットワークを構成する個々の装置に対する装置設定情報を記憶する装置設定情報記憶手段と、
L2ネットワークに接続された拠点に関する拠点情報を記憶する拠点情報記憶手段と、
ネットワーク構成情報記憶手段、装置設定情報記憶手段及び拠点情報記憶手段からネットワーク構成情報、装置設定情報及び拠点情報を読み出し、冗長化の範囲を表す冗長ノードと、L2ネットワークを構成する装置を表す装置ノードと、冗長ノードとその冗長化の範囲に属する装置ノードとを接続する辺とからなるグラフを生成し、経路設計用の情報を生成し、拠点を表す拠点ノードを生成して前記グラフに追加するグラフ生成手段と、
前記グラフ上で拠点ノード間を結ぶVLANの経路を設定し、当該設定に対応する装置設定情報を生成する経路設計手段と、
前記装置設定情報を装置に対して設定するとともに、当該装置設定情報により装置設定情報記憶手段を更新する装置設定手段とを備えた
ことを特徴とするVLAN経路設計装置。
【請求項6】
グラフ生成手段は、
ネットワーク構成情報内の冗長ドメインIDに対応する冗長ノードを生成する手段と、
前記ネットワーク構成情報内の装置IDに対応する装置ノードを生成する手段と、
前記ネットワーク構成情報内の装置IDに対応する装置についてそのポートに冗長ドメインIDが設定されている場合、当該装置IDに対応する装置ノードと当該冗長ドメインIDに対応する冗長ノードとを辺で接続する手段とを含む
ことを特徴とする請求項5に記載のVLAN経路設計装置。
【請求項7】
グラフ生成手段は、
残VID情報の領域を未使用で初期化する手段と、
ネットワーク構成情報内の装置IDに対応する装置について冗長ドメインIDが設定されているポートに関し、その装置IDに対応する装置設定情報内の該当するポートに設定されたVID及び前記冗長ドメインIDに対応する残VID情報の領域を使用済みに設定する手段とを含む
ことを特徴とする請求項5に記載のVLAN経路設計装置。
【請求項8】
グラフ生成手段は、
処理対象の通信グループIDの指定を受け付ける手段と、
拠点情報内の拠点IDのうち、その通信グループIDが前記処理対象の通信グループIDと一致する拠点IDに対応して拠点ノードを生成し、当該拠点IDに対応する接続装置IDの装置ノードと辺で接続する手段とを含む
ことを特徴とする請求項5に記載のVLAN経路設計装置。
【請求項9】
コンピュータに、請求項1乃至4のいずれかに記載のVLAN経路設計方法の各処理工程を実行させるためのプログラム。
【請求項1】
部分的に冗長化が完結したL2ネットワークに接続された拠点間を結ぶVLANの経路を設計する方法であって、
グラフ生成手段が、ネットワーク構成情報記憶手段からL2ネットワークを構成する装置毎の各種の情報からなるネットワーク構成情報を読み出し、冗長化の範囲を表す冗長ノードと、L2ネットワークを構成する装置を表す装置ノードと、冗長ノードとその冗長化の範囲に属する装置ノードとを接続する辺とからなるグラフを生成する工程と、
グラフ生成手段が、ネットワーク構成情報記憶手段からL2ネットワークを構成する装置毎の各種の情報からなるネットワーク構成情報を読み出すとともに装置設定情報記憶手段からL2ネットワークを構成する個々の装置に対する装置設定情報を読み出し、経路設計用の情報を生成する工程と、
グラフ生成手段が、拠点情報記憶手段からL2ネットワークに接続された拠点に関する拠点情報を読み出し、拠点を表す拠点ノードを生成して前記グラフに追加する工程と、
経路設計手段が、前記グラフ上で拠点ノード間を結ぶVLANの経路を設定し、当該設定に対応する装置設定情報を生成する工程と、
装置設定手段が、前記装置設定情報を装置に対して設定するとともに、当該装置設定情報により装置設定情報記憶手段を更新する工程とを含む
ことを特徴とするVLAN経路設計方法。
【請求項2】
グラフ生成工程は、
ネットワーク構成情報内の冗長ドメインIDに対応する冗長ノードを生成する工程と、
前記ネットワーク構成情報内の装置IDに対応する装置ノードを生成する工程と、
前記ネットワーク構成情報内の装置IDに対応する装置についてそのポートに冗長ドメインIDが設定されている場合、当該装置IDに対応する装置ノードと当該冗長ドメインIDに対応する冗長ノードとを辺で接続する工程とを含む
ことを特徴とする請求項1に記載のVLAN経路設計方法。
【請求項3】
情報生成工程は、
残VID情報の領域を未使用で初期化する工程と、
ネットワーク構成情報内の装置IDに対応する装置について冗長ドメインIDが設定されているポートに関し、その装置IDに対応する装置設定情報内の該当するポートに設定されたVID及び前記冗長ドメインIDに対応する残VID情報の領域を使用済みに設定する工程とを含む
ことを特徴とする請求項1に記載のVLAN経路設計方法。
【請求項4】
拠点ノード追加工程は、
処理対象の通信グループIDの指定を受け付ける工程と、
拠点情報内の拠点IDのうち、その通信グループIDが前記処理対象の通信グループIDと一致する拠点IDに対応して拠点ノードを生成し、当該拠点IDに対応する接続装置IDの装置ノードと辺で接続する工程とを含む
ことを特徴とする請求項1に記載のVLAN経路設計方法。
【請求項5】
部分的に冗長化が完結したL2ネットワークに接続された拠点間を結ぶVLANの経路を設計するVLAN経路設計装置であって、
L2ネットワークを構成する装置毎の各種の情報からなるネットワーク構成情報を記憶するネットワーク構成情報記憶手段と、
L2ネットワークを構成する個々の装置に対する装置設定情報を記憶する装置設定情報記憶手段と、
L2ネットワークに接続された拠点に関する拠点情報を記憶する拠点情報記憶手段と、
ネットワーク構成情報記憶手段、装置設定情報記憶手段及び拠点情報記憶手段からネットワーク構成情報、装置設定情報及び拠点情報を読み出し、冗長化の範囲を表す冗長ノードと、L2ネットワークを構成する装置を表す装置ノードと、冗長ノードとその冗長化の範囲に属する装置ノードとを接続する辺とからなるグラフを生成し、経路設計用の情報を生成し、拠点を表す拠点ノードを生成して前記グラフに追加するグラフ生成手段と、
前記グラフ上で拠点ノード間を結ぶVLANの経路を設定し、当該設定に対応する装置設定情報を生成する経路設計手段と、
前記装置設定情報を装置に対して設定するとともに、当該装置設定情報により装置設定情報記憶手段を更新する装置設定手段とを備えた
ことを特徴とするVLAN経路設計装置。
【請求項6】
グラフ生成手段は、
ネットワーク構成情報内の冗長ドメインIDに対応する冗長ノードを生成する手段と、
前記ネットワーク構成情報内の装置IDに対応する装置ノードを生成する手段と、
前記ネットワーク構成情報内の装置IDに対応する装置についてそのポートに冗長ドメインIDが設定されている場合、当該装置IDに対応する装置ノードと当該冗長ドメインIDに対応する冗長ノードとを辺で接続する手段とを含む
ことを特徴とする請求項5に記載のVLAN経路設計装置。
【請求項7】
グラフ生成手段は、
残VID情報の領域を未使用で初期化する手段と、
ネットワーク構成情報内の装置IDに対応する装置について冗長ドメインIDが設定されているポートに関し、その装置IDに対応する装置設定情報内の該当するポートに設定されたVID及び前記冗長ドメインIDに対応する残VID情報の領域を使用済みに設定する手段とを含む
ことを特徴とする請求項5に記載のVLAN経路設計装置。
【請求項8】
グラフ生成手段は、
処理対象の通信グループIDの指定を受け付ける手段と、
拠点情報内の拠点IDのうち、その通信グループIDが前記処理対象の通信グループIDと一致する拠点IDに対応して拠点ノードを生成し、当該拠点IDに対応する接続装置IDの装置ノードと辺で接続する手段とを含む
ことを特徴とする請求項5に記載のVLAN経路設計装置。
【請求項9】
コンピュータに、請求項1乃至4のいずれかに記載のVLAN経路設計方法の各処理工程を実行させるためのプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−49643(P2011−49643A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194185(P2009−194185)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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