WT1特異的免疫療法のための組成物および方法
【課題】白血病および癌の予防および治療のための改善された方法についての当該分野における必要性を満たし、そしてさらに他の関連する利点を提供すること
【解決手段】ネイティブのWT1の免疫原性部分あるいは1以上の置換、欠失、付加および/または挿入において異なるその改変体を含む、ポリペプチドであって、このような改変により、該改変体のWT1特異的抗血清および/またはT細胞株もしくはクローンと反応する能力が実質的に減少しておらず、ここで該ポリペプチドは、ネイティブのWT1ポリペプチド内に存在する16以下の連続するアミノ酸残基を含む、ポリペプチド。
【解決手段】ネイティブのWT1の免疫原性部分あるいは1以上の置換、欠失、付加および/または挿入において異なるその改変体を含む、ポリペプチドであって、このような改変により、該改変体のWT1特異的抗血清および/またはT細胞株もしくはクローンと反応する能力が実質的に減少しておらず、ここで該ポリペプチドは、ネイティブのWT1ポリペプチド内に存在する16以下の連続するアミノ酸残基を含む、ポリペプチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、一般に悪性疾患(例えば、白血病および癌)の免疫療法に関する。より詳細には、本発明は、WT1に対する免疫応答を惹起または増強するための組成物、ならびに悪性疾患を予防および/または処置するためのそのような組成物の使用に関連する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
癌および白血病は、米国内および世界中で重大な健康問題である。そのような疾患の検出および処置における前進がなされてきたが、ワクチンまたは癌および白血病の予防または処置のための他の普遍的に首尾良い方法は、現在のところ利用可能ではない。疾患の管理は、現在のところ、早期診断および攻撃的な処置の組合せに依存し、これは、種々の処置(例えば、手術、放射線治療、化学療法およびホルモン療法)のうちの1つ以上を含み得る。特定の癌のための処置方針は、頻繁には、特定の腫瘍マーカーの分析を含む種々の予後変数に基づいて選択される。しかし、確立されたマーカーの使用は、頻繁には、解釈するのが困難な結果を導き、そして多くの癌患者において高い致死率が観察され続けている。
【0003】
免疫療法は、癌および白血病の処置および生存率を実質的に改善する能力を有する。最近のデータによって、白血病は、骨髄移植の状況下での免疫療法(例えば、ドナーリンパ球注入)によって治癒され得ることが実証される。そのような治療は、腫瘍関連抗原(TAA)に対する免疫応答の惹起または増強を含み得る。しかし、現在までのところ、比較的わずかなTAAが既知であり、そしてそのような抗原に対する免疫応答の惹起は、まれに例外が存在するが、治療的に有益であるとは示されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、白血病および癌の予防および治療のための改善された方法についての当該分野における必要性が存在する。本発明は、これらの必要性を満たし、そしてさらに他の関連する利点を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
簡潔に述べると、本発明は、疾患(例えば、白血病および癌)の診断および治療のための組成物および方法を提供する。1つの局面において、本発明は、ネイティブのWT1の免疫原性部分またはその改変体(これは、抗原特異的抗血清および/またはT細胞株もしくはクローンと反応するその改変体の能力が実質的に減少されないように、1つ以上の置換、欠失、付加および/または挿入で異なる)を含むポリペプチドを提供する。特定の実施態様において、このポリペプチドは、ネイティブWT1ポリペプチドの16を超えない連続したアミノ酸残基を含む。他の実施態様において、このポリペプチドは、ネイティブのWT1ポリペプチドのアミノ酸残基1〜174の免疫原性部分またはその改変体を含み、ここでこのポリペプチドは、ネイティブのWT1ポリペプチドのアミノ酸175〜449内に存在する16を超えない連続するアミノ酸残基を含む。この免疫原性部分は、好ましくはMHCクラスI分子および/またはMHCクラスII分子に結合する。特定の実施態様において、このポリペプチドは、以下からなる群から選択される配列を含む:(a)表II〜XLVIのうちの任意の1つ以上において示される配列、(b)前述の配列の改変体(これは、抗原特異的抗血清および/またはT細胞株もしくはクローンと反応するそ
の改変体の能力が実質的に減少されないように、1つ以上の置換、欠失、付加および/または挿入で異なる)、および(c)上記のポリペプチドの模倣物(抗原特異的抗血清および/またはT細胞株もしくはクローンと反応するその模倣物の能力が実質的に減少されないような)。
【0006】
他の実施態様において、このポリペプチドは、以下からなる群から選択される配列を含む:
【0007】
【化1】
(b)前述の配列の改変体(これは、抗原特異的抗血清および/またはT細胞株もしくはクローンと反応するその改変体の能力が実質的に減少されないように、1つ以上の置換、欠失、付加および/または挿入で異なる)、および(c)上記のポリペプチドの模倣物(抗原特異的抗血清および/またはT細胞株もしくはクローンと反応するその模倣物の能力が実質的に減少されないような)。模倣物は、1つ以上のアミノ酸模倣物と組み合わせてアミノ酸を含み得るか、または完全に非ペプチド模倣物であり得る。
【0008】
さらなる局面において、本発明は、WT1タンパク質の免疫原性部分の改変体を含むポリペプチドを提供し、ここでこの改変体は、抗原特異的抗血清および/またはT細胞株もしくはクローンと反応するその改変体の能力がネイティブのWT1タンパク質と比較して増強されるように、その免疫原性部分内の1〜3アミノ酸位置での置換に起因して、その免疫原性部分とは異なる。
【0009】
本発明はさらに、上記のWT1ポリペプチドをコードするWT1ポリヌクレオチドを提供する。
【0010】
他の局面において、本発明は、薬学的組成物およびワクチンを提供する。薬学的組成物は、薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤と組み合わせて、上記のポリペプチドもしくは模倣物および/または以下のうちの1つ以上を含み得る:(i)WT1ポリヌクレオチド;(ii)WT1ポリペプチドに特異的に結合するその抗体または抗原結合フラグメント;(iii)WT1ポリペプチドと特異的に反応するT細胞、あるいは(iv)WT1ポリペプチドを発現する抗原提示細胞。ワクチンは、上記のポリペプチドおよび/または以下のうちの1つ以上を含む:(i)WT1ポリヌクレオチド;(ii)WT1ポリペプチドを発現する抗原提示細胞、または(iii)抗イディオタイプ抗体、および非特異的免疫応答エンハンサー。特定の実施態様において、ネイティブのWT1ポリペプチドの23未満の連続するアミノ酸残基、好ましくは17未満のアミノ酸残基が、そのような薬学的組成物およびワクチン内に使用されるWT1ポリペプチド内に存在する。免疫応答エンハンサーは、アジュバントであり得る。好ましくは、免疫応答エンハンサーは、T細胞応答を増強する。
【0011】
本発明はさらに、患者に上記の薬学的組成物またはワクチンを投与することを含む、患者において免疫応答を増強または誘導するための方法を提供する。特定の実施態様において、患者はヒトである。
【0012】
本発明はさらに、患者に上記の薬学的組成物またはワクチンを投与することを含む、患者において悪性疾患の発達を阻害するための方法を提供する。悪性疾患としては、白血病(例えば、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病および慢性骨髄性白血病)および癌(例えば、乳癌、肺癌、甲状腺癌もしくは胃腸癌、または黒色腫)が挙げられるがそれらに限定されない。患者は、悪性疾患に罹患していてよいが、罹患している必要はなく、そしてこの薬学的組成物またはワクチンの投与は、そのような疾患の発病(onset)を阻害し得るか、または既存の疾患の進行および/もしくは転移を阻害し得る。
【0013】
本発明はさらに、他の局面において、骨髄および/もしくは末梢血またはその画分からWT1を発現する細胞を除去するための方法を提供する。この方法は、骨髄、末梢血または骨髄もしくは末梢血の画分と、WT1ポリペプチドと特異的に反応するT細胞とを接触させる工程を含み、ここでこの接触させる工程は、骨髄、末梢血または画分中の骨髄性細胞またはリンパ性細胞の数の10%未満、好ましくは5%未満およびより好ましくは1%未満までのWT1陽性細胞の除去を可能にするに十分な条件および時間で行われる。骨髄、末梢血および画分は、WT1発現と関連する疾患に罹患する患者から得られ得るか、またはそのような疾患に罹患しないヒトもしくは非ヒト哺乳動物から得られ得る。
【0014】
関連する局面において、本発明は、上記のように調製された骨髄、末梢血または骨髄もしくは末梢血の画分を患者に投与する工程を含む、患者における悪性疾患の発達を阻害するための方法を提供する。そのような骨髄、末梢血または画分は、自家(autologous)であり得るか、または関連するもしくは関連しないヒトもしくは非ヒト動物(例えば、同系または同種異系)に由来し得る。
【0015】
他の局面において、本発明は、T細胞の刺激(または、プライミング(priming))および/または拡大(expansion)を可能にするに十分な条件下および時間でWT1ポリペプチドとT細胞とを接触させることを含む、T細胞刺激および/または拡大のための方法を提供する。そのようなT細胞は、自家、同種異系、同系または関連しないWT1特異的細胞であり得、そしてインビトロまたはインビボで刺激され得る。特定の実施態様において、拡大されたT細胞は、骨髄、末梢血または骨髄もしくは末梢血の画分内に存在し、そしてクローン性(clonal)であり得る(が、その必要はない)。特定の実施態様において、T細胞は、刺激および/または拡大の間に哺乳動物中に存在し得る。WT1特異的T細胞は、例えば、ドナーリンパ球注入において使用され得る。
【0016】
関連する局面において、上記で調製されたT細胞を患者に投与する工程を含む、患者における悪性疾患の発達を阻害するための方法が提供される。そのようなT細胞は、特定の実施態様において、自家、同系または同種異系であり得る。
【0017】
本発明はさらに、他の局面において、患者におけるWT1発現と関連する悪性疾患のための免疫または治療の有効性をモニタリングするための方法を提供する。そのような方法は、患者における抗体、CD4+T細胞および/またはCD8+T細胞応答をモニタリングすることに基づく。特定のそのような局面において、方法は、以下の工程を包含し得る:(a)以下(i)WT1ポリペプチド;(ii)WT1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または(iii)WT1ポリペプチドを発現する抗原提示細胞、のうちの1つ以上とともに第1の生物学的サンプルをインキュベートする工程であって、ここでこの第1の生物学的サンプルは、治療または免疫の前に患者から得られ、そしてここでこのインキュベーションは、免疫複合体が形成するのを可能にする条件下および時間で行われる、工程;(b)WT1ポリペプチドと、WT1ポリペプチドに特異的に結合する生物学的サンプルにおける抗体との間に形成される免疫複合体を検出する工程;(c)治療または免疫の後に、同じ患者から得られる第2の生物学的サンプルを用いて、工程(a)およ
び(b)を反復する工程;ならびに(d)第1および第2の生物学的サンプルにおいて検出される免疫複合体の数を比較する工程、およびそれから、この患者におけるこの治療または免疫の有効性をモニタリングする工程。
【0018】
上記の方法の特定の実施態様において、この検出する工程は以下を含む:(a)この免疫複合体に結合し得る検出試薬とともにこの免疫複合体をインキュベートする工程であって、ここでこの検出試薬はレポーター基を含む、工程、(b)非結合検出試薬を除去する工程、および(c)このレポーター基の存在または非存在を検出する工程。この検出試薬は、例えば、WT1ポリペプチドに特異的に結合する抗体に結合し得る第2の抗体またはその抗原結合フラグメントまたは分子(例えば、プロテインA)を含み得る。他の実施態様において、レポーター基は、WT1ポリペプチドに結合し、そして検出する工程は、非結合WT1ポリペプチドを除去する工程、およびその後にこのレポーター基の存在または非存在を検出する工程を包含する。
【0019】
さらなる局面において、患者におけるWT1発現と関連する悪性疾患のための免疫または治療の有効性をモニタリングするための方法は、以下の工程を包含し得る:(a)以下(i)WT1ポリペプチド;(ii)WT1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または(iii)WT1ポリペプチドを発現する抗原提示細胞、のうちの1つ以上とともに第1の生物学的サンプルをインキュベートする工程であって、ここでこの第1の生物学的サンプルは、CD4+T細胞および/またはCD8+T細胞を含み、そして治療または免疫の前に患者から得られ、そしてここでこのインキュベーションは、T細胞の特異的な活性化、増殖および/または溶解を可能にするに十分な条件下および時間で行われる、工程;(b)T細胞の活性化、増殖および/または溶解の量を検出する工程;(c)CD4+および/またはCD8+T細胞を含む第2の生物学的サンプルを用いて、工程(a)および(b)を反復する工程であって、ここでこの第2の生物学的サンプルは、治療または免疫後に同じ患者から得られる、工程;ならびに(d)第1および第2の生物学的サンプル中のT細胞の活性化、増殖および/または溶解の量を比較する工程、およびそれからこの患者におけるこの治療または免疫の有効性をモニタリングする工程。
【0020】
本発明はさらに、患者におけるWT1発現と関連する悪性疾患の発達を阻害するための方法を提供する。この方法は、以下の工程を包含する:(a)以下(i)WT1ポリペプチド;(ii)WT1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または(iii)WT1ポリペプチドを発現する抗原提示細胞、のうちの1つ以上とともに、患者から単離されたCD4+および/またはCD8+T細胞を、そのT細胞が増殖するようにインキュベートする工程;ならびに(b)増殖されたT細胞の有効量をこの患者に投与する工程、およびそれからこの患者における悪性疾患の発達を阻害する工程。特定の実施態様において、T細胞をインキュベートする工程は、1回以上反復され得る。
【0021】
他の局面においては、本発明は、患者内でのWT1発現に関連する悪性疾患の発達を阻害するための方法を提供し、これは以下の工程を包含する:(a)患者から単離されたCD4+および/またはCD8+T細胞を一つ以上の(i)WT1ポリペプチド;(ii)WT1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または(iii)WT1ポリペプチドを発現する抗原提示細胞とともにインキュベートし、その結果このT細胞が増殖する工程;(b)増殖した一つ以上の細胞をクローニングする工程;および(c)患者に対してクローン化したT細胞の効果的な量を投与する工程。
【0022】
他の局面においては、方法が、患者内でのWT1発現に関連する悪性疾患の存在または非存在を決定するために提供され、これは以下の工程を包含する:(a)患者から単離されたCD4+および/またはCD8+T細胞を一つ以上の(i)WT1ポリペプチド;(ii)WT1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または(iii)WT1ポリペ
プチドを発現する抗原提示細胞とともにインキュベートする工程;および(b)T細胞の特異的な活性化の存在または非存在を検出し、それからWT1発現に関連する悪性疾患の存在または非存在を決定する工程。ある実施態様においては、検出の工程は、T細胞の増殖の存在または非存在を検出する工程を含む。
【0023】
さらなる局面においては、本発明は、患者内でのWT1発現に関連する悪性疾患の存在または非存在を決定するための方法を提供し、これは以下の工程を包含する:(a)患者から得られた生物学的なサンプルを一つ以上の(i)WT1ポリペプチド;(ii)WT1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または(iii)WT1ポリペプチドを発現する抗原提示細胞とともにインキュベートする工程であって、ここで、このインキュベーションは、免疫複合体が形成されるのを可能にするに十分な条件下でかつそれに十分な時間で行われる工程;および(b)WT1ポリペプチドとWT1ポリペプチドと特異的に結合する生物学的なサンプル中の抗体との間に形成される免疫複合体を検出し、それからWT1発現に関連する悪性疾患の存在または非存在を決定する工程。
【0024】
さらに、本発明は以下を提供する:
(項目1)ネイティブのWT1の免疫原性部分あるいは1以上の置換、欠失、付加および/または挿入において異なるその改変体を含む、ポリペプチドであって、このような改変により、該改変体のWT1特異的抗血清および/またはT細胞株もしくはクローンと反応する能力が実質的に減少しておらず、ここで該ポリペプチドは、ネイティブのWT1ポリペプチド内に存在する16以下の連続するアミノ酸残基を含む、ポリペプチド。
(項目2)前記免疫原性部分が、MHCクラスI分子に結合する、項目1に記載のポリペプチド。
(項目3)前記免疫原性部分が、MHCクラスII分子に結合する、項目1に記載のポリペプチド。
(項目4)項目1に記載のポリペプチドであって、該ポリペプチドが、以下:
(a)表II〜XLVIの1以上に列挙される配列;
(b)1以上の置換、欠失、付加および/または挿入において異なる該配列の改変体であって、このような改変により、該改変体の抗原特異的抗血清および/またはT細胞株もしくはクローンと反応する能力が実質的に減少されていない、改変体;ならびに
(c)該配列の模倣物であって、該模倣物の抗原特異的抗血清および/またはT細胞株もしくはクローンと反応する能力が実質的に減少されていない、模倣物、
からなる群より選択される配列を含む、ポリペプチド。
(項目5)項目1に記載のポリペプチドであって、該ポリペプチドが、以下:
(a)ALLPAVPSL(配列番号34)、GATLKGVAA(配列番号88)、CMTWNQMNL(配列番号49および258)、SCLESQPTI(配列番号199および296)、SCLESQPAI(配列番号198)、NLYQMTSQL(配列番号147および284)、ALLPAVSSL(配列番号35および255)、RMFPNAPYL(配列番号185および293);
(b)1以上の置換、欠失、付加および/または挿入において異なる該配列の改変体であって、このような改変により、該改変体の抗原特異的抗血清および/またはT細胞株もしくはクローンと反応する能力が実質的に減少されていない、改変体;ならびに
(c)該配列の模倣物であって、該模倣物の抗原特異的抗血清および/またはT細胞株もしくはクローンと反応する能力が実質的に減少されていない、模倣物、
からなる群より選択される配列を含む、ポリペプチド。
(項目6)前記ポリペプチドが、ネイティブのWT1ポリペプチドの4〜16の連続するアミノ酸を含む、項目1に記載のポリペプチド。
(項目7)前記ポリペプチドが、ネイティブのWT1ポリペプチドの8〜10の連続するアミノ酸を含む、項目1に記載のポリペプチド。
(項目8)ネイティブのWT1ポリペプチドの免疫原性部分あるいは1以上の置換、欠失
、付加および/または挿入において異なるその改変体のアミノ酸残基1〜174を含む、ポリペプチドであって、このような改変により、該改変体のWT1特異的T細胞株またはクローンと反応する能力が実質的に減少しておらず、ここで該ポリペプチドは、該ネイティブのWT1ポリペプチドのアミノ酸175〜449内に存在する16以下の連続するアミノ酸残基を含む、ポリペプチド。
(項目9)免疫原性部分内の1位のアミノ酸と3位のアミノ酸との間での置換において異なるWT1の免疫原性部分の改変体を含むポリペプチドであって、この置換により、該改変体のWT1特異的抗血清および/またはT細胞株もしくはクローンと反応する能力が、ネイティブのWT1に比べて増強されている、ポリペプチド。
(項目10)WT1ポリペプチドの免疫原性部分の模倣物であって、ここで少なくとも1つのアミノ酸残基がアミノ酸ではない化合物によって置換されており、このような置換により、該模倣物の抗原特異的抗血清および/またはT細胞株もしくはクローンと反応する能力が減少されていない、模倣物。
(項目11)項目1に記載のポリペプチドを、薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤と組み合わせて含む、薬学的組成物。
(項目12)前記ポリペプチドが、ネイティブのWT1ポリペプチドの4〜16の連続するアミノ酸を含む、項目11に記載の薬学的組成物。
(項目13)前記ポリペプチドが、ネイティブのWT1ポリペプチドの8〜16の連続するアミノ酸を含む、項目11に記載の薬学的組成物。
(項目14)項目8に記載のポリペプチドを、薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤と組み合わせて含む、薬学的組成物。
(項目15)項目1に記載のポリペプチドを、非特異的免疫応答エンハンサーと組み合わせて含む、ワクチン。
(項目16)前記ポリペプチドが、ネイティブのWT1ポリペプチドの4〜16の連続するアミノ酸を含む、項目15に記載のワクチン。
(項目17)前記ポリペプチドが、ネイティブのWT1ポリペプチドの8〜10の連続するアミノ酸を含む、項目15に記載のワクチン。
(項目18)前記免疫応答エンハンサーがアジュバントである、項目15に記載のワクチン。
(項目19)項目8に記載のポリペプチドを、非特異的免疫応答エンハンサーと組み合わせて含む、ワクチン。
(項目20)前記免疫応答エンハンサーがアジュバントである、項目19に記載のワクチン。
(項目21)以下を含む、ワクチン:
(a)WT1ポリペプチドであって、該ポリペプチドは、ネイティブのWT1の免疫原性部分あるいは1以上の置換、欠失、付加および/または挿入において異なるその改変体を含む、ポリペプチドであって、このような改変により、該改変体の抗原特異的T細胞株またはクローンと反応する能力が実質的に減少していない、WT1ポリペプチド;ならびに
(b)患者におけるT細胞応答を優先的に増強する、非特異的免疫応答エンハンサー。(項目22)項目21に記載のワクチンであって、前記免疫応答エンハンサーが、Montanide ISA50、Seppic MONTANIDE ISA 720、サイトカイン(例えば、GM−CSF、Flat3−リガンド)、ミクロスフェア、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDA)ベースのアジュバント、AS−1、AS−2、Ribi Adjuvantシステムベースのアジュバント、QS21、サポニンベースのアジュバント、マイクロフルイダイズされた形態のSyntexアジュバント、MV、ddMV、免疫刺激複合体(iscom)ベースのアジュバント、および不活性化毒素からなる群より選択される、ワクチン。
(項目23)項目10に記載の模倣物を、薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤と組み合わせて含む、薬学的組成物。
(項目24)項目10に記載の模倣物を、非特異的免疫応答エンハンサーと組み合わせて含む、ワクチン。
(項目25)項目1または項目8に記載のポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド。
(項目26)以下を含む、薬学的組成物:
(a)WT1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであって、該ポリペプチドは、ネイティブのWT1の免疫原性部分あるいは1以上の置換、欠失、付加および/または挿入において異なるその改変体を含む、ポリペプチドであって、このような改変により、該改変体の抗原特異的抗体および/またはT細胞株もしくはクローンと反応する能力が実質的に減少していない、ポリヌクレオチド;ならびに
(b)薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤。
(項目27)以下を含む、薬学的組成物:
(a)WT1ポリペプチドに特異的に結合する、抗体またはその抗原結合フラグメント;および
(b)薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤。
(項目28)以下を含む、薬学的組成物:
(a)WT1ポリペプチドと特異的に反応する、T細胞;および
(b)薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤。
(項目29)以下を含む、薬学的組成物:
(a)以下を発現する、抗原提示細胞:
(i)ネイティブのWT1の免疫原性部分あるいは1以上の置換、欠失、付加および/または挿入において異なるその改変体を含む、WT1ポリペプチドであって、このような改変により、該改変体の抗原特異的抗体および/またはT細胞株もしくはクローンと反応する能力が実質的に減少していない、WT1ポリペプチド;ならびに
(b)薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤。
(項目30)以下を含む、ワクチン:
(a)WT1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであって、該ポリペプチドは、ネイティブのWT1の免疫原性部分あるいは1以上の置換、欠失、付加および/または挿入において異なるその改変体を含む、ポリペプチドであって、このような改変により、該改変体の抗原特異的抗体および/またはT細胞株もしくはクローンと反応する能力が実質的に減少していない、ポリヌクレオチド;ならびに
(b)非特異的免疫応答エンハンサー。
(項目31)以下を含む、ワクチン:
(a)以下を発現する、抗原提示細胞:
(i)ネイティブのWT1の免疫原性部分あるいは1以上の置換、欠失、付加および/または挿入において異なるその改変体を含む、WT1ポリペプチドであって、このような改変により、該改変体の抗原特異的抗体および/またはT細胞株もしくはクローンと反応する能力が実質的に減少していない、WT1ポリペプチド;ならびに
(b)非特異的免疫応答エンハンサー。
(項目32)以下を含む、ワクチン:
(a)WT1の免疫原性部分に特異的に結合する抗体によって特異的に結合される、抗イディオタイプ抗体またはその抗原結合フラグメント;および
(b)非特異的免疫応答エンハンサー。
(項目33)前記免疫応答エンハンサーがアジュバントである、項目30〜32のいずれか1項に記載のワクチン。
(項目34)前記免疫応答エンハンサーが、患者におけるT細胞応答を優先的に増強する、項目30〜32のいずれか1項に記載のワクチン。
(項目35)ヒト患者において免疫応答を増強または誘導するための方法であって、該方法は、患者に、以下:
(a)WT1ポリペプチドであって、該ポリペプチドは、ネイティブのWT1の免疫原
性部分あるいは1以上の置換、欠失、付加および/または挿入において異なるその改変体を含む、ポリペプチドであって、このような改変により、該改変体の抗原特異的抗体および/またはT細胞株もしくはクローンと反応する能力が実質的に減少していない、WT1ポリペプチド;ならびに
(b)生理学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤、
を含む薬学的組成物を投与し、それにより、該ヒト患者において、WT1またはWT1を発現する細胞に特異的な免疫応答を増強または誘導する工程を包含する、方法。
(項目36)患者において免疫応答を増強または誘導するための方法であって、該方法は、患者に、項目11、14、23または26〜29のいずれか1項に記載の薬学的組成物を投与する工程を包含する、方法。
(項目37)ヒト患者において免疫応答を増強または誘導するための方法であって、該方法は、患者に、以下:
(a)WT1ポリペプチドであって、該ポリペプチドは、ネイティブのWT1の免疫原性部分あるいは1以上の置換、欠失、付加および/または挿入において異なるその改変体を含む、ポリペプチドであって、このような改変により、該改変体の抗原特異的抗体および/またはT細胞株もしくはクローンと反応する能力が実質的に減少していない、WT1ポリペプチド;ならびに
(b)非特異的免疫応答エンハンサー、
を含むワクチンを投与し、それにより、該ヒト患者において、WT1またはWT1を発現する細胞に特異的な免疫応答を増強または誘導する工程を包含する、方法。
(項目38)患者において免疫応答を増強または誘導するための方法であって、該方法は、患者に、項目15、19、21、24または30〜32のいずれか1項に記載のワクチンを投与し、それにより、該患者において、WT1またはWT1を発現する細胞に特異的な免疫応答を増強または誘導する工程を包含する、方法。
(項目39)ヒト患者においてWT1発現に関連する悪性疾患の発達を阻害するための方法であって、該方法は、ヒト患者に、以下:
(a)WT1ポリペプチドであって、該ポリペプチドは、ネイティブのWT1の免疫原性部分あるいは1以上の置換、欠失、付加および/または挿入において異なるその改変体を含む、ポリペプチドであって、このような改変により、該改変体の抗原特異的抗体および/またはT細胞株もしくはクローンと反応する能力が実質的に減少していない、WT1ポリペプチド;ならびに
(b)生理学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤、
を含む薬学的組成物を投与し、それにより該ヒト患者における該WT1発現に関連する悪性疾患の発達を阻害する工程を包含する、方法。
(項目40)患者においてWT1発現に関連する悪性疾患の発達を阻害するための方法であって、該方法は、患者に、項目11、14、23または26〜29のいずれか1項に記載の薬学的組成物を投与し、それにより該患者における該悪性疾患の発達を阻害する工程を包含する、方法。
(項目41)ヒト患者においてWT1発現に関連する悪性疾患の発達を阻害するための方法であって、該方法は、患者に、以下:
(a)WT1ポリペプチドであって、該ポリペプチドは、ネイティブのWT1の免疫原性部分あるいは1以上の置換、欠失、付加および/または挿入において異なるその改変体を含む、ポリペプチドであって、このような改変により、該改変体の特異的抗体および/またはT細胞株もしくはクローンと反応する能力が実質的に減少していない、WT1ポリペプチド;ならびに
(b)非特異的免疫応答エンハンサー、
を含むワクチンを投与し、それにより該患者における該悪性疾患の発達を阻害する工程を包含する、方法。
(項目42)患者においてWT1発現に関連する悪性疾患の発達を阻害するための方法であって、該方法は、患者に、項目15、19、21、24または30〜32のいずれか1
項に記載のワクチンを投与し、それにより該患者における該悪性疾患の発達を阻害する工程を包含する、方法。
(項目43)前記悪性疾患が白血病である、項目39または項目41に記載の方法。
(項目44)前記白血病が、急性骨髄性白血病、急性リンパ球性白血病、または慢性骨髄性白血病である、項目43に記載の方法。
(項目45)前記悪性疾患が癌である、項目39または41に記載の方法。
(項目46)前記癌が、乳房、肺、甲状腺または胃腸の癌または黒色腫である、項目45に記載の方法。
(項目47)前記悪性疾患が白血病である、項目40に記載の方法。
(項目48)前記白血病が、急性骨髄性白血病、急性リンパ球性白血病、または慢性骨髄性白血病である、項目47に記載の方法。
(項目49)前記悪性疾患が癌である、項目40に記載の方法。
(項目50)前記癌が、乳房、肺、甲状腺または胃腸の癌または黒色腫である、項目49に記載の方法。
(項目51)前記悪性疾患が白血病である、項目42に記載の方法。
(項目52)前記白血病が、急性骨髄性白血病、急性リンパ球性白血病、または慢性骨髄性白血病である、項目51に記載の方法。
(項目53)前記悪性疾患が癌である、項目42に記載の方法。
(項目54)前記癌が、乳房、肺、甲状腺または胃腸の癌または黒色腫である、項目53に記載の方法。
(項目55)項目39に記載の方法であって、前記薬学的組成物が、WT1ポリペプチドを含み、該WT1ポリペプチドが、表II〜XLVIの1以上に列挙される配列、ならびに1以上の置換、欠失、付加および/または挿入において異なる該配列の改変体であって、このような改変により、該改変体の抗原特異的抗血清および/またはT細胞株もしくはクローンと反応する能力が減少していない、改変体、からなる群より選択される配列を含む、方法。
(項目56)項目39に記載の方法であって、前記薬学的組成物が、ALLPAVPSL(配列番号34)、GATLKGVAA(配列番号88)、CMTWNQMNL(配列番号49および258)、SCLESQPTI(配列番号199および296)、SCLESQPAI(配列番号198)、NLYQMTSQL(配列番号147および284)、ALLPAVSSL(配列番号35および255)、RMFPNAPYL(配列番号185および293)からなる群より選択される配列を含むWT1ポリペプチド、ならびに1以上の置換、欠失、付加および/または挿入において異なる該配列の改変体であって、このような改変により、該改変体の抗原特異的抗血清および/またはT細胞株もしくはクローンと反応する能力が減少されていない、改変体、を含む、方法。
(項目57)項目41に記載の方法であって、前記ワクチンが、WT1ポリペプチドを含み、該WT1ポリペプチドが、表II〜XLVIの1以上に列挙される配列、ならびに1以上の置換、欠失、付加および/または挿入において異なる該配列の改変体であって、このような改変により、該改変体の抗原特異的抗血清および/またはT細胞株もしくはクローンと反応する能力が減少していない、改変体、からなる群より選択される配列を含む、方法。
(項目58)項目41に記載の方法であって、前記ワクチンが、ALLPAVPSL(配列番号34)、GATLKGVAA(配列番号88)、CMTWNQMNL(配列番号49および258)、SCLESQPTI(配列番号199および296)、SCLESQPAI(配列番号198)、NLYQMTSQL(配列番号147および284)、ALLPAVSSL(配列番号35および255)、RMFPNAPYL(配列番号185および293)からなる群より選択される配列を含むWT1ポリペプチド、ならびに1以上の置換、欠失、付加および/または挿入において異なる該配列の改変体であって、このような改変により、該改変体の抗原特異的抗血清および/またはT細胞株もしくはクローンと反応する能力が減少されていない、改変体、を含む、方法。
(項目59)骨髄、末梢血、または骨髄もしくは末梢血の画分から、WT1を発現する細胞を除去するための方法であって、該方法は、骨髄、末梢血、または骨髄もしくは末梢血の画分をWT1ポリペプチドと特異的に反応するT細胞と接触させる工程を包含し、ここで、該接触させる工程が、骨髄、末梢血、または骨髄もしくは末梢血の画分中の骨髄性細胞またはリンパ細胞の数の10%未満へのWT1陽性細胞の除去を可能にする条件下でそれを可能にするに十分な時間行われる、方法。
(項目60)患者においてWT1発現と関連する悪性疾患の発達を阻害するための方法であって、該方法は、患者に、項目59に記載の方法に従って調製された骨髄、末梢血、または骨髄もしくは末梢血の画分を投与する工程を包含する、方法。
(項目61)前記骨髄、末梢血または画分が、自己由来である、項目60に記載の方法。(項目62)前記骨髄、末梢血または画分が、同系または同種異系である、項目60に記載の方法。
(項目63)T細胞を刺激および/または拡大するための方法であって、該方法は、T細胞を、WT1ポリペプチド、WT1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および/またはWT1ポリペプチドを発現する抗原提示細胞と、T細胞の刺激および/または拡大を可能にする条件でそれを可能にするに十分な時間接触させる工程を包含する、方法。(項目64)前記T細胞が、骨髄、末梢血または骨髄もしくは末梢血の画分内に存在する、項目63に記載の方法。
(項目65)前記骨髄、末梢血または画分が、WT1発現と関連する悪性疾患に罹患した患者から得られる、項目63に記載の方法。
(項目66)前記骨髄、末梢血または画分が、WT1発現と関連する悪性疾患に罹患していない哺乳動物から得られる、項目63に記載の方法。
(項目67)前記T細胞が、拡大の前にクローニングされる、項目63に記載の方法。
(項目68)哺乳動物においてT細胞を刺激および/または拡大するための方法であって、該方法は、哺乳動物に、以下:
(a)以下の1以上:
(i)WT1ポリペプチド;
(ii)WT1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(iii)WT1ポリペプチドを発現する抗原提示細胞;
ならびに
(b)生理学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤;
を含む薬学的組成物を投与し、それにより、哺乳動物においてT細胞を刺激および/または拡大する工程、を包含する、方法。
(項目69)哺乳動物においてT細胞を刺激および/または拡大するための方法であって、該方法は、哺乳動物に、以下:
(a)以下の1以上:
(i)WT1ポリペプチド;
(ii)WT1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(iii)WT1ポリペプチドを発現する抗原提示細胞;
ならびに
(b)非特異的免疫応答エンハンサー;
を含むワクチンを投与し、それにより、哺乳動物においてT細胞を刺激および/または拡大する工程、を包含する、方法。
(項目70)患者においてWT1発現と関連する悪性疾患の発達を阻害するための方法であって、該方法は、患者に、項目63に記載の方法に従って調製されたT細胞を投与する工程を包含する、方法。
(項目71)項目70に記載の方法であって、前記骨髄、末梢血または画分が、WT1発現と関連する悪性疾患に罹患する患者から得られる、方法。
(項目72)項目70に記載の方法であって、前記骨髄、末梢血または画分が、WT1発現と関連する悪性疾患に罹患していない哺乳動物から得られる、方法。
(項目73)患者においてWT1発現と関連する悪性疾患のための免疫化または治療の効果をモニターするための方法であって、該方法は、以下の工程:
(a)以下:
(i)WT1ポリペプチド;
(ii)WT1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(iii)WT1ポリペプチドを発現する抗原提示細胞、
の1以上とともに第1の生物学的サンプルをインキュベートする工程であって、ここで、該第1の生物学的サンプルが、治療または免疫化の前に患者から得られ、そしてここで、該インキュベーションが、免疫複合体を形成させる条件下でそれを可能にするに十分な時間行われる、工程;
(b)該WT1ポリペプチドに特異的に結合する、該生物学的サンプル中の該WT1ポリペプチドと抗体との間に形成される免疫複合体を検出する工程;
(c)治療または免疫化の後に該患者から得られる第2の生物学的サンプルを使用して、工程(a)および(b)を繰り返す工程;ならびに
(d)該第1の生物学的サンプルおよび該第2の生物学的サンプルにおいて検出された免疫複合体の数を比較して、それから該患者における治療または免疫化の効果をモニターする工程、
を包含する、方法。
(項目74)項目73に記載の方法であって、前記検出する工程が、(a)前記免疫複合体を、該免疫複合体に結合し得る検出試薬とともにインキュベートする工程であって、ここで該検出試薬がレポーター基を含む、工程、(b)結合していない検出試薬を除去する工程、ならびに(c)該レポーター基の存在または非存在を検出する工程、を包含する、方法。
(項目75)前記検出試薬が、前記WT1ポリペプチドに特異的に結合する抗体に結合し得る、第2の抗体またはその抗原結合フラグメントを含む、項目74に記載の方法。
(項目76)前記検出試薬がプロテインAを含む、項目74に記載の方法。
(項目77)前記レポーター基が、放射性同位体、蛍光基、発光基、酵素、ビオチン、および色素粒子からなる群より選択される、項目74に記載の方法。
(項目78)レポーター基が前記WT1ポリペプチドに結合し、そして前記検出する工程が、結合していないWT1ポリペプチドを除去し、続いて該レポーター基の存在または非存在を検出する工程を包含する、項目73に記載の方法。
(項目79)患者においてWT1発現と関連する悪性疾患のための免疫化または治療の効果をモニターするための方法であって、該方法は、以下の工程:
(a)以下:
(i)WT1ポリペプチド;
(ii)WT1ポリペプチドをコードするWT1ポリヌクレオチド;または
(iii)WT1ポリペプチドを発現する抗原提示細胞、
の1以上とともに第1の生物学的サンプルをインキュベートする工程であって、ここで、該生物学的サンプルが、CD4+および/もしくはCD8+ T細胞を含み、かつ治療または免疫化の前に患者から得られ、そしてここで、該インキュベーションが、T細胞の特異的活性化、増殖および/もしくは溶解を可能にする条件下でそれを可能にするに十分な時間行われる、工程;
(b)該T細胞の活性化、増殖および/もしくは溶解の量を検出する工程;
(c)CD4+および/もしくはCD8+ T細胞を含む第2の生物学的サンプルを使用して、工程(a)および(b)を繰り返す工程であって、ここで該第2の生物学的サンプルが治療または免疫化の後に該患者から得られる、工程;ならびに
(d)該第1の生物学的サンプルおよび該第2の生物学的サンプル中のT細胞の活性化、増殖および/または溶解の量を比較して、それから該患者における治療または免疫化の効果をモニターする工程、
を包含する、方法。
(項目80)前記悪性疾患が、癌または白血病である、項目73または項目79に記載の方法。
(項目81)患者においてWT1発現と関連する悪性疾患の発達を阻害するための方法であって、該方法は、以下の工程:
(a)以下:
(i)WT1ポリペプチド;
(ii)WT1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(iii)WT1ポリペプチドを発現する抗原提示細胞、
の1以上とともに、患者から単離されたCD4+T細胞をインキュベートする工程であって、その結果、該T細胞が増殖する、工程;ならびに
(b)該患者に、有効量の該増殖したT細胞を投与し、それから該患者における悪性疾患の発達を阻害する、工程、
を包含する、方法。
(項目82)前記悪性疾患が、癌または白血病である、項目81に記載の方法。
(項目83)前記T細胞をインキュベートする工程が、1回以上繰り返される、項目81に記載の方法。
(項目84)患者においてWT1発現と関連する悪性疾患の発達を阻害するための方法であって、該方法は、以下の工程:
(a)以下:
(i)WT1ポリペプチド;
(ii)WT1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(iii)WT1ポリペプチドを発現する抗原提示細胞、
の1以上とともに、患者から単離されたCD4+T細胞をインキュベートする工程であって、その結果、該T細胞が増殖する、工程;
(b)WT1ポリペプチドの存在下で増殖した1以上の細胞をクローニングする工程;ならびに
(c)該患者に、有効量の該クローニングしたT細胞を投与する、工程、
を包含する、方法。
(項目85)前記悪性疾患が、癌または白血病である、項目84に記載の方法。
(項目86)患者においてWT1発現と関連する悪性疾患の発達を阻害するための方法であって、該方法は、以下の工程:
(a)以下:
(i)WT1ポリペプチド;
(ii)WT1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(iii)WT1ポリペプチドを発現する抗原提示細胞、
の1以上とともに、患者から単離されたCD8+T細胞をインキュベートする工程であって、その結果、該T細胞が増殖する、工程;ならびに
(b)該患者に、有効量の該増殖したT細胞を投与し、それから該患者における悪性疾患の発達を阻害する、工程、
を包含する、方法。
(項目87)前記悪性疾患が、癌または白血病である、項目86に記載の方法。
(項目88)前記T細胞をインキュベートする工程が、1回以上繰り返される、項目86に記載の方法。
(項目89)患者においてWT1発現と関連する悪性疾患の発達を阻害するための方法であって、該方法は、以下の工程:
(a)以下:
(i)WT1ポリペプチド;
(ii)WT1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(iii)WT1ポリペプチドを発現する抗原提示細胞、
の1以上とともに、患者から単離されたCD8+T細胞をインキュベートする工程であっ
て、その結果、該T細胞が増殖する、工程;
(b)WT1ポリペプチドの存在下で増殖した1以上の細胞をクローニングする工程;ならびに
(c)該患者に、有効量の該クローニングしたT細胞を投与する、工程、
を包含する、方法
(項目90)前記悪性疾患が、癌または白血病である、項目89に記載の方法。
(項目91)患者においてWT1発現と関連する悪性疾患の存在または非存在を決定するための方法であって、該方法は、以下の工程:
(a)以下:
(i)WT1ポリペプチド;
(ii)WT1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(iii)WT1ポリペプチドを発現する抗原提示細胞、
の1以上とともに、患者から単離されたCD4+T細胞をインキュベートする工程;ならびに
(b)該T細胞の特異的活性化の存在または非存在を検出し、それからWT1発現と関連する悪性疾患の存在または非存在を決定する、工程、
を包含する、方法。
(項目92)前記悪性疾患が、癌または白血病である、項目91に記載の方法。
(項目93)前記検出する工程が、前記T細胞の増殖の存在または非存在を検出する工程を包含する、項目91に記載の方法。
(項目94)患者においてWT1発現と関連する悪性疾患の存在または非存在を検出するための方法であって、該方法は、以下の工程:
(a)以下:
(i)WT1ポリペプチド;
(ii)WT1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(iii)WT1ポリペプチドを発現する抗原提示細胞、
の1以上とともに、患者から単離されたCD8+T細胞をインキュベートする工程;ならびに
(b)該T細胞の特異的活性の存在または非存在を検出し、それからWT1発現と関連する悪性疾患の存在または非存在を決定する、工程、
を包含する、方法。
(項目95)前記悪性疾患が、癌または白血病である、項目94に記載の方法。
(項目96)前記検出する工程が、細胞溶解活性の生成の存在または非存在を検出する工程を包含する、項目94に記載の方法。
(項目97)患者においてWT1発現と関連する悪性疾患の存在または非存在を決定するための方法であって、該方法は、以下の工程:
(a)以下:
(i)WT1ポリペプチド;
(ii)WT1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(iii)WT1ポリペプチドを発現する抗原提示細胞、
の1以上とともに、患者から得られた生物学的サンプルをインキュベートする工程であって、該インキュベーションが、免疫複合体を形成させる条件下でそれを可能にするに十分な時間行われる工程;ならびに
(b)該W1ポリペプチドと該WT1ポリペプチドに特異的に結合する生物学的サンプル中の抗体との間で形成される免疫複合体を検出し、それから、WT1発現と関連する悪性疾患の存在または非存在を決定する、工程、
を包含する、方法。
(項目98)前記悪性疾患が、癌または白血病である、項目97に記載の方法。
(項目99)項目97に記載の方法であって、前記検出する工程が、(a)前記免疫複合体を、該免疫複合体に結合し得る検出試薬とともにインキュベートする工程であって、こ
こで該検出試薬がレポーター基を含む、工程、(b)結合していない検出試薬を除去する工程、ならびに(c)該レポーター基の存在または非存在を検出する工程、を包含する、方法。
(項目100)前記検出試薬が、前記WT1ポリペプチドに特異的に結合する抗体に結合し得る、第2の抗体またはその抗原結合フラグメントを含む、項目99に記載の方法。
(項目101)前記検出試薬がプロテインAを含む、項目99に記載の方法。
(項目102)前記レポーター基が、放射性同位体、蛍光基、発光基、酵素、ビオチン、および色素粒子からなる群より選択される、項目99に記載の方法。
(項目103)前記レポーター基が前記WT1ポリペプチドに結合し、そして前記検出する工程が、結合していないWT1ポリペプチドを除去し、続いて該レポーター基の存在または非存在を検出する工程を包含する、項目97に記載の方法。
(項目104)活性な治療用物質として使用するための、項目1〜9のいずれか1項に記載のポリペプチド。
(項目105)患者において免疫応答を増強または誘導するための医薬の製造における使用のための、項目1〜9のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【0025】
本発明のこれらおよび他の局面は、下述する詳細な説明および添付する図面を参照すれば明白になる。本明細書中に開示されたすべての参考文献は、各々が個々に援用されたかのようにその全体が参考として本明細書中に援用されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
(発明の詳細な説明)
上述のように、本発明は、一般に、悪性疾患の免疫療法および診断のための組成物および方法に関する。本明細書中に記載される組成物としては、WT1ポリペプチド、WT1ポリヌクレオチド、WT1ポリペプチドを発現する抗原提示細胞(APC、例えば、樹状細胞)、薬剤(例えば、WT1ポリペプチドに結合する抗体)および/またはWT1に特異的な免疫系細胞(例えば、T細胞)が挙げられ得る。本発明のWT1ポリペプチドは、一般に、ウィルムス腫瘍遺伝子産物(WT1)またはその改変体の少なくとも一部を含む。本発明の核酸配列は、一般に、このようなポリペプチドの全てもしくは一部をコードするDNA配列またはRNA配列、あるいはこのような配列に相補的であるDNA配列またはRNA配列を含む。抗体は、一般に、免疫系タンパク質またはその抗原結合フラグメントであり、これは、WT1ポリペプチドの一部に結合し得る。このような組成物内で使用され得るT細胞は、一般に、WT1ポリペプチドに特異的であるT細胞(例えば、CD4+および/またはCD8+)である。本明細書中に記載される特定の方法は、さらに、本明細書中に提供されるようなWT1ポリペプチドを発現する抗原提示細胞を使用する。
【0027】
本発明は、ウィルムス腫瘍(WT)遺伝子産物(例えば、WT1)に対して惹起される免疫応答が、WT1遺伝子の発現の増加によって特徴付けられる悪性疾患を患う患者に、予防的利益および/または治療的利益を提供し得るという発見に基づく。このような疾患としては、白血病(例えば、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ性白血病(ALL)および小児期ALL)、ならびに多くの癌(例えば、肺、乳房、甲状腺および胃腸の癌、ならびに黒色腫)が挙げられるが、これらに限定されない。WT1遺伝子は、元々、ウィルムス腫瘍を有する患者の染色体11p13における細胞性欠失に基づいて同定および単離された(Callら、米国特許第5,350,840号を参照のこと)。この遺伝子は10のエキソンからなり、そしてジンクフィンガー転写因子をコードし、そしてマウスWT1タンパク質およびヒトWT1タンパク質の配列は、図1および配列番号319〜320に提供される。
【0028】
(WT1ポリペプチド)
本発明の文脈において、WT1ポリペプチドは、本明細書に記載される場合、ネイティ
ブWT1(すなわち、遺伝的に改変されていない生物によって発現されるWT1タンパク質)またはその改変体の少なくとも免疫原性部分を含むポリペプチドである。WT1ポリペプチドは、これがネイティブタンパク質またはその改変体の少なくとも免疫原性部分を含む限り、任意の長さであり得る。言い換えると、WT1ポリペプチドは、オリゴペプチド(すなわち、ペプチド結合によって連結される比較的少数のアミノ酸残基(例えば、8〜10残基)からなる)、全長WT1タンパク質(例えば、ヒトまたは非ヒト動物(例えば、マウス)内に存在する)あるいは中間のサイズのポリペプチドであり得る。特定の実施態様において、ネイティブWT1ポリペプチドの少数の連続するアミノ酸残基を含むWT1ポリペプチドの使用が、好ましい。このようなポリペプチドは、T細胞応答の生成が所望される特定の使用のために好ましい。例えば、このようなWT1ポリペプチドは、ネイティブWT1ポリペプチドの、23未満の連続するアミノ酸残基、好ましくは18以下の連続するアミノ酸残基、そしてより好ましくは15以下の連続するアミノ酸残基を含み得る。ネイティブWT1ポリペプチドの連続する9つのアミノ酸残基を含むポリペプチドは、一般に、このような目的のために適切である。ネイティブタンパク質由来のさらなる配列および/または異種配列は、任意のWT1ポリペプチド内に存在し得、そしてこのような配列は、(必要ではないが)さらなる免疫原性特性または抗原性特性を保有し得る。本明細書中に提供されるようなポリペプチドは、さらに、他のポリペプチドまたは非ポリペプチド化合物と(共有結合的にかまたは非共有結合的に)会合され得る。
【0029】
「免疫原性部分」は、本明細書中で使用される場合、B細胞表面抗原レセプターおよび/またはT細胞表面抗原レセプターによって認識される(すなわち、特異的に結合される)ポリペプチドの部分である。特定の好ましい免疫原性部分は、MHCクラスI分子またはMHCクラスII分子に結合する。本明細書中で使用される場合、免疫原性部分は、このような結合が当該分野で公知の任意のアッセイを使用して検出可能である場合、MHCクラスI分子またはMHCクラスII分子「に結合する」といわれる。例えば、ポリペプチドがMHCクラスIに結合する能力は、125Iで標識されたβ2ミクログロブリン(β
2m)のMHCクラスI/β2m/ペプチドヘテロ三量体複合体への取り込みを促進する能力をモニターすることによって間接的に評価され得る(Parkerら、J.Immunol.152:163,1994を参照のこと)。あるいは、当該分野で公知の機能的ペプチド競合アッセイが、使用され得る。特定の免疫原性部分は、表II〜XIVの1つ以上に列挙される1つ以上の配列を有する。代表的な免疫原性部分には、以下が挙げられるが、これらに限定されない:RDLNALLPAVPSLGGGG(ヒトWT1残基6〜22;配列番号1)、PSQASSGQARMFPNAPYLPSCLE(ヒトおよびマウスWT1残基117〜139;それぞれ、配列番号2および3)、GATLKGVAAGSSSSVKWTE(ヒトWT1残基244〜262;配列番号4)、GATLKGVAA(ヒトWT1残基244〜252;配列番号88)、CMTWNQMNL(ヒトおよびマウスWT1残基235〜243;それぞれ、配列番号49および258)、SCLESQPTI(マウスWT1残基136〜144;配列番号296)、SCLESQPAI(ヒトWT1残基136〜144;配列番号198);NLYQMTSQL(ヒトおよびマウスWT1残基225〜233;それぞれ、配列番号147および284);ALLPAVSSL(マウスWT1残基10〜18;配列番号255);またはRMFPNAPYL(ヒトおよびマウスWT1残基126〜134;それぞれ、配列番号185および293)。さらなる免疫原性部分は、本明細書中に提供され、そしてその他は、一般に、周知の技術(例えば、Paul、Fundamental Immunology、第3版、243〜247(Raven Press,1993)およびその中に引用される参考文献において要約される技術)を使用して同定され得る。免疫原性部分を同定するための代表的な技術としては、抗原特異的抗血清および/またはT細胞株もしくはクローンと反応する能力についてのポリペプチドのスクリーニングが挙げられる。ネイティブWT1ポリペプチドの免疫原性部分は、(例えば、ELISAおよび/またはT細胞反応性アッセイにおいて)実質的に全長WT1の反応性以上であるレベルで、このような抗血清および
/またはT細胞と反応する部分である。言い換えると、免疫原性部分は、全長ポリペプチドの反応性に類似するかまたはそれよりも大きなレベルで、このようなアッセイにおいて反応し得る。このようなスクリーニングは、一般に、HarlowおよびLane、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring
Harbor Laboratory、1998に記載されるような、当業者に周知の方法を使用して実施され得る。
【0030】
あるいは、免疫原性部分は、Tsitesプログラム(RothbardおよびTayler、EMBO J.7:93〜100、1988;Deavinら、Mol.Immunol.33:145〜155、1996を参照のこと)のようなコンピュータ分析を使用して同定され得、このコンピュータ分析は、Th応答を誘発する可能性を有するペプチドモチーフについて検索する。マウスクラスI MHCまたはクラスII MHCおよびヒトクラスI MHCまたはクラスII MHCへの結合について適切なモチーフを有するCTLペプチドは、BIMAS(Parkerら、J.Immunol.152:163、1994)および他のHLAペプチド結合予測分析に従って同定され得る。免疫原性を確認するために、ペプチドは、HLA A2トランスジェニックマウスモデル、および/または樹状細胞、線維芽細胞もしくは末梢血細胞を使用するインビトロ刺激アッセイを使用して、試験され得る。
【0031】
上述のように、組成物は、ネイティブWT1タンパク質の改変体を含み得る。ポリペプチド「改変体」は、本明細書中で使用される場合、1つ以上の置換、欠失、付加および/または挿入においてネイティブポリペプチドと異なり、その結果、そのポリペプチドの免疫原性が保持されている(すなわち、この改変体が抗原特異的抗血清および/またはT細胞株もしくはクローンと反応する能力は、ネイティブポリペプチドに対して実質的に減少されない)、ポリペプチドである。言い換えると、改変体が抗原特異的抗血清および/またはT細胞株もしくはクローンと反応する能力は、ネイティブポリペプチドに対して増強され得るかまたは不変であり得るか、あるいはネイティブポリペプチドに対して50%未満、そして好ましくは20%未満減少され得る。このような改変体は、一般に、本明細書中に記載されるように、上記のポリペプチド配列の1つを改変すること、および改変されたポリペプチドと抗血清および/またはT細胞との反応性を評価することによって、同定され得る。本発明の文脈において、WT1ポリペプチドの免疫原性部分内の比較的少数の置換(例えば、1〜3)は、ポリペプチドが免疫応答を誘発する能力を増強するように作用し得ることが、見出されている。適切な置換は、一般に、上記のようにコンピュータプログラムを使用することによって同定され得、そしてその効果は、本明細書中に記載されるように、改変されたポリペプチドと抗血清および/またはT細胞との反応性に基づいて確認される。従って、特定の好ましい実施態様において、WT1ポリペプチドは、免疫原性部分内の1〜3アミノ酸残基が置換され、その結果、抗原特異的抗血清および/またはT細胞株もしくはクローンと反応する能力が、改変されていないポリペプチドに対するその能力よりも統計学的に大きい、改変体を含む。このような置換は、好ましくは、このポリペプチドMHC結合部位内に位置され、これは、上記の通りに同定され得る。好ましい置換は、MHCクラスI分子またはMHCクラスII分子への結合を増加させる。
【0032】
特定の改変体は、保存的置換を含む。「保存的置換」は、あるアミノ酸が類似の特性を有する別のアミノ酸に置換されることであり、その結果、ペプチド化学の当業者は、そのポリペプチドの二次構造および疎水性の性質が実質的に変化していないことを予測する。アミノ酸置換は、一般に、残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性および/または両親媒性の性質における類似性に基づいてなされ得る。例えば、負に荷電したアミノ酸としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられ;正に荷電したアミノ酸としては、リジンおよびアルギニンが挙げられ;そして類似の疎水性値を有する荷電していない極性ヘッド(head)基を持つアミノ酸としては、ロイシン、イソロイシンおよびバリン;
グリシンおよびアラニン;アスパラギンおよびグルタミン;ならびにセリン、スレオニン、フェニルアラニンおよびチロシン、が挙げられる。保存的変化を示し得るアミノ酸の他の基としては、以下が挙げられる:(1)ala、pro、gly、glu、asp、gln、ser、thr;(2)cys、ser、tyr、thr;(3)val、ile、leu、met、ala、phe;(4)lys、arg、his;および(5)phe、tyr、trp、his。改変体はまた(または、あるいは改変体は)非保存的変化を含む。改変体はまた(または、あるいは改変体は)、例えば、このポリペプチドの免疫原性、二次構造および疎水性性質に対して最小の影響を有するアミノ酸の欠失または付加によって改変され得る。
【0033】
上述のように、WT1ポリペプチドは、翻訳と同時(co−translationally)または翻訳後(post−translationally)にタンパク質の移動を指向するタンパク質のN末端において、シグナル(またはリーダー)配列に結合体化され得る。ポリペプチドはまた(または、あるいはポリペプチドは)、このポリペプチド(例えば、ポリ−His)の合成、精製または同定の容易さのために、あるいはこのポリペプチドの固体支持体への結合を増強するために、リンカーもしくは他の配列に結合体化され得る。例えば、ポリペプチドは、免疫グロブリンのFc領域に結合体化され得る。
【0034】
WT1ポリペプチドは、任意の種々の周知技術を使用して調製され得る。本明細書中に記載されるようなWT1ポリヌクレオチドによってコードされる組換えポリペプチドは、このポリヌクレオチドから容易に調製され得る。一般に、当業者に公知の任意の種々の発現ベクターを使用して、組換えWT1ポリペプチドを発現し得る。発現は、組換えポリペプチドをコードするDNA分子を含む発現ベクターを用いて形質転換されたか、またはこの発現ベクターを用いてトランスフェクトされた、任意の適切な宿主細胞において達成され得る。適切な宿主細胞としては、原核生物細胞、酵母細胞および高等真核生物細胞が挙げられる。好ましくは、使用される宿主細胞は、E.coli細胞株、酵母細胞株または哺乳動物細胞株(例えば、COSもしくはCHO)である。組換えタンパク質または組換えポリペプチドを培養培地へ分泌する適切な宿主/ベクター系からの上清は、まず、市販のフィルターを使用して濃縮され得る。次いで、この濃縮物は、適切な精製マトリクス(例えば、アフィニティーマトリクスまたはイオン交換樹脂)に適用され得る。最終的に、1つ以上の逆相HPLC工程を使用して、組換えポリペプチドをさらに精製し得る。このような技術を使用して、ネイティブポリペプチドまたはその改変体を調製し得る。例えば、ネイティブポリペプチドの改変体をコードするポリヌクレオチドは、一般に、標準的な変異誘発技術(例えば、オリゴヌクレオチド部位特異的変異誘発)を使用して調製され得、そしてDNA配列の切片は、短縮型ポリペプチドの調製を許容するように除去され得る。
【0035】
特定の部分および他の改変体はまた、当業者に周知の技術を使用する合成手段によって生成され得る。例えば、約500未満のアミノ酸、好ましくは約100未満のアミノ酸、そしてより好ましくは約50未満のアミノ酸を有するポリペプチドが、合成され得る。ポリペプチドは、メリーフィールド固相合成法(アミノ酸が、生長するアミノ酸鎖に連続的に付加される)のような任意の商業的に利用可能な固相技術を使用して合成され得る。Merrifield、J.Am.Chem.Soc.85:2149〜2146、1963を参照のこと。ポリペプチドの自動化合成のための装置は、Applied BioSystems,Inc.(Foster City,CA)のような供給業者から市販されており、そして製造業者の指示書に従って操作され得る。
【0036】
一般に、本明細書中に記載されるようなポリペプチドおよびポリヌクレオチドが、単離される。「単離された」ポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、その元々の環境から取り出されたものである。例えば、その天然系に共存するいくつかまたは全ての材料から分
離される場合に、天然に存在するタンパク質が、単離される。好ましくは、このようなポリペプチドは、少なくとも約90%純粋、より好ましくは少なくとも約95%純粋、そして最も好ましくは少なくとも約99%純粋である。例えば、天然の環境の一部でないベクター中にクローニングされる場合に、ポリヌクレオチドは、単離されたとみなされる。
【0037】
さらなる局面において、本発明は、WT1ポリペプチドの模倣物を提供する。このような模倣物は、1つ以上のアミノ酸模倣物と連結したアミノ酸を含み得るか(すなわち、W
T1タンパク質内の1つ以上のアミノ酸が、アミノ酸模倣物により置換され得る)または全体的に非ペプチド模倣物であり得る。アミノ酸模倣物はアミノ酸と立体配置的に類似する化合物であるが故に、そのアミノ酸模倣物は、抗原特異的抗血清および/またはT細胞株またはクローンと反応する能力を実質的に減少させずにWT1ポリペプチド内のアミノ酸と置換され得る。非ペプチド模倣物はアミノ酸を含まない化合物であり、そしてWT1ポリペプチドと類似する全体的な配座を有するが故に、WT1特異的抗血清および/またはT細胞株またはクローンと反応する模倣物の能力は、WT1ポリペプチドの能力と比較して実質的に減少されない。このような模倣物は、ペプチド配列の三次元構造を評価する標準的な技術(例えば、核磁気共鳴技術および計算的技術)に基づき設計され得る。WT1ポリペプチドの1つ以上の側鎖官能基が、必ずしも同じサイズまたは容積を有しないが、類似の化学的および/または物理的特性(類似する生物学的応答を産生する)を有する基により置換される1模倣物が設計され得る。本明細書中に記載される実施態様において、模倣物が、WT1ポリペプチドに置換され得ることが理解されるべきである。
【0038】
(WT1ポリヌクレオチド)
本明細書中に記載されるWT1ポリペプチドをコードする任意のポリヌクレオチドは、本発明により含まれるWT1ポリヌクレオチドである。このようなポリヌクレオチドは、一本鎖(コードまたはアンチセンス)または二本鎖であり得、そしてDNA(ゲノム、cDNAまたは合成)またはRNA分子であり得る。さらなるコード配列または非コード配列が、本発明のポリヌクレオチド内に存在し得るが、存在する必要はなく、そしてポリヌクレオチドは、他の分子および/または支持物質に連結され得るが、連結される必要はない。
【0039】
WT1ポリヌクレオチドは、ネイティブなWT1タンパク質をコードし得るか、または本明細書中に記載されるWT1の改変体をコードし得る。ポリヌクレオチド改変体は、ネイティブなWT1タンパク質と比較して、コードされるポリペプチドの免疫原性が減少されないような1つ以上の置換、付加、欠失、および/または挿入を含み得る。コードされるポリペプチドの免疫原性に対する効果は、一般的に本明細書中に記載されるように評価され得る。好ましい改変体は、ネイティブなWT1配列の免疫原性部分をコードするヌクレオチド位置、わずか20%、好ましくは、わずか10%でヌクレオチド置換、欠失、挿入および/または付加を含む。特定の改変体は、ネイティブな遺伝子またはその一部と実質的に相同的である。このようなポリヌクレオチド改変体は、WT1ポリペプチド(または相補配列)をコードする天然に存在するDNA配列と、中程度のストリンジェント条件下でハイブリダイズし得る。適切な中程度のストリンジェントな条件は以下を含む;5×SSC、0.5%SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)の溶液での前洗浄;50℃〜65℃、5×SSCにおける一晩のハイブリダイゼーション;続いて、それぞれ0.1%SDS含有2×SSC、0.5×SSC、および0.2×SSCを用いた65℃で20分間の2回の洗浄。このようにハイブリダイズするDNA配列はまた、本発明の範囲内である。
【0040】
遺伝コードの縮重の結果として、WT1ポリペプチドをコードする多くのヌクレオチド配列が存在することが当業者に明らかである。いくつかのこれらのポリヌクレオチドは、任意のネイティブな遺伝子のヌクレオチド配列に対して最小の相同性を有する。それにも
かかわらず、コドン使用頻度における差異に起因して変動するポリヌクレオチドが、特に本発明により意図される。
【0041】
一旦、上記のようにWT1の免疫原性部分が同定されると、WT1ポリヌクレオチドが、任意の種々の技術を使用して調製され得る。例えば、WT1ポリヌクレオチドが、WT1を発現する細胞から調製されるcDNAから増幅され得る。このようなポリヌクレオチドは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を介して増幅され得る。このアプローチのために、配列特異的プライマーが、免疫原性部分の配列に基づいて設計され得、そして購入され得るか、または合成され得る。例えば、ヒトWT1遺伝子のPCR増幅のための適切なプライマーには以下が挙げられる:第1工程−P118:1434−1414:5’GAGAGTCAGACTTGAAAGGAGT3’(配列番号5)およびP135:5’CTGAGCCTCAGCAAATGGGC3’(配列番号6);第2工程−P136:5’GAGCATGCATGGGCTCCGACGTGCGGG3’(配列番号7)およびP137:5’GGGGTACCCACTGAACGGTCCCCGA3’(配列番号8)。マウスWT1遺伝子のPCR増幅のためのプライマーには以下が挙げられる:第1工程−P138:5’TCCGAGCCGCACCTCATG3’(配列番号9)およびP139:5’GCCTGGGATGCTGGACTG3’(配列番号10);第2工程−P140:5’GAGCATGCGATGGGTTCCGACGTGCGG3’(配列番号11)およびP141:5’GGGGTACCTCAAAGCGCCACGTGGAGTTT3’(配列番号12)。
【0042】
次いで、増幅された部分を使用して、全長遺伝子が、周知の技術を使用してヒトゲノムDNAライブラリーまたは適切なcDNAライブラリーから単離され得る。あるいは、全長遺伝子が、複数のPCRフラグメントから構築され得る。WT1ポリヌクレオチドはまた、オリゴヌクレオチド成分を合成し、そして完全なポリヌクレオチドを産生するために共に成分を連結することにより調製され得る。
【0043】
WT1ポリヌクレオチドはまた、当該分野において公知の任意の方法によって合成され得、その方法には化学合成が挙げられる(例えば、固層ホスホラミダイト化学合成)。ポリヌクレオチド配列における改変はまた、標準的な変異誘発技術(例えば、オリゴヌクレオチド指向性、部位特異的変異誘発(Adelmanら、DNA 2:183、1983を参照のこと)、を使用して導入され得る。あるいは、DNAが適切なRNAポリメラーゼプロモーター(例えば、T7またはSP6)とともにベクターに組み込まれる場合、RNA分子は、WT1ポリペプチドをコードするDNA配列のインビトロまたはインビボでの転写により産生され得る。特定の部分を使用して、本明細書中に記載されるような、コードされるポリペプチドを調製し得る。さらに、またはあるいは、コードされるポリペプチドがインビボで産生されるように、患者に対して一部が投与され得る(例えば、WT1ポリペプチドをコードするcDNA構築物を有する樹状細胞のような抗原提示細胞をトランスフェクトし、そしてそのトランスフェクトされた細胞を患者に投与することにより)。
【0044】
WT1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは一般的に、インビトロまたはインビボにおいてそのポリペプチドを産生するために使用され得る。コード配列に相補的なWT1ポリヌクレオチド(すなわち、アンチセンスポリヌクレオチド)はまた、プローブとしてまたはWT1発現を阻害するために使用され得る。アンチセンスRNAに転写され得るcDNA構築物もまた、組織の細胞に導入され、アンチセンスRNAの産生を促進し得る。
【0045】
任意のポリヌクレオチドがさらに改変され、インビボにおける安定性を増加し得る。可能な改変には以下が挙げられるが、これらに限定されない;5’および/または3’末端
における隣接配列の付加;骨格におけるホスホジエステラーゼ結合に代わるホスホロチオネートまたは2’O−メチルの使用;および/または非伝統的な塩基(例えば、イノシン、キューオシン、ワイブトシン)、ならびにアデニン、シチジン、グアニン、チミン、およびウリジンのアセチル形態、メチル形態、チオ形態および他の改変形態の包含。
【0046】
本明細書中に記載されるようなヌクレオチド配列が、確立された組換えDNA技術を使用して、種々の他のヌクレオチド配列に結合され得る。例えば、ポリヌクレオチドは、任意の種々のクローニングベクターにクローン化され得る、そのベクターには、プラスミド、ファージミド、λファージ誘導体およびコスミドが挙げられる。特定の目的のベクターには、発現ベクター、複製ベクター、プローブ産生ベクターおよび配列決定ベクターが挙げられる。一般的には、ベクターは、少なくとも1つの生物体において機能的な複製起点、都合のよい制限エンドヌクレアーゼ部位および1つ以上の選択マーカーを含む。他のエレメントは、所望される用途に依存し、そして当業者において明らかである。
【0047】
特定の実施態様において、ポリヌクレオチドは、哺乳動物の細胞に入り、そしてそこで発現することを可能にするように処方され得る。以下に記載されるように、このような処方物は、治療目的のために特に有用である。当業者は、標的細胞においてポリヌクレオチドの発現を達成するための多くの方法が存在すること、および任意の適切な方法が使用され得ることを理解する。例えば、ポリヌクレオチドがウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルスまたはワクシニアウイルスまたは他にポックスウイルス(例えば鳥類ポックスウイルス))に組み込まれ得る。DNAをこのようなべクターに組み込むための技術は、当業者において周知である。さらにレトロウイルスベクターは、選択マーカー(形質導入された細胞の同定または選択を援助するために)についての遺伝子および/またはベクターを標的特異的にするための標的部分(例えば、特定の標的細胞上のレセプターに対するリガンドをコードする遺伝子)を伝達または組み込み得る。標的化はまた、当業者において公知の方法により、抗体を使用して達成され得る。例えば、腫瘍防御および養子免疫療法実験(腫瘍あるいは白血病増殖阻害またはこのような細胞の溶解を実証するため)を実施するために使用され得るWT1陽性腫瘍モデルを樹立する際の使用のために、そのようなベクター内のcDNA構築物を使用して、ヒトまたは動物細胞株にトランスフェクトし得る。
【0048】
ポリヌクレオチドについての他の治療的処方物は、コロイド分散系(例えば、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフィア、ビーズ)および脂質ベースの系(水中油(oil−in−water)、エマルジョン、ミセル、混合ミセルおよびリポソームが挙げられる)を含む。インビトロおよびインビボにおける送達ビヒクルとして使用するために好ましいコロイド系はリポソームである(すなわち、人工膜小胞)。このような系の調製および使用は、当該分野において周知である。
【0049】
(抗体およびそのフラグメント)
本発明は、さらにWT1ポリペプチドに特異的に結合する結合薬剤(例えば、抗体、およびその抗原結合フラグメント)を提供する。本明細書中で使用されるように、薬剤がWT1ポリペプチドと検出可能なレベル(例えば、ELISA内)で反応し、類似の条件下で、関連しないタンパク質と検出可能に反応しない場合、薬剤は「特異的に結合する」と言われる。本明細書中で使用される場合、「結合」とは、「複合体」が形成されるような2つの別々の分子間の非共有結合的会合を言う。結合する能力は、例えは、その複合体の形成についての結合定数を決定することにより評価され得る。この結合定数は、その複合体の濃度をその成分濃度の積で除算して得られた値である。一般的に、複合体形成についての結合定数が約103L/molを超える場合、2つの化合物は、本発明の文脈中にお
いて「結合する」と言われる。この結合定数は、当該分野において周知の方法を使用して決定され得る。
【0050】
上記の要求を満足する任意の薬剤が結合薬剤となり得る。好ましい実施態様において、結合薬剤は、抗体であるか、またはその抗原結合フラグメントである。特定の抗体が、例えば、Santa Cruz Biotechnology(Santa Cruz,CA)から商業的に入手可能である。あるいは、抗体は、当業者に公知の任意の種々の技術により調製され得る。例えば、HarlowおよびLane,Antibodies:A
Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,1988を参照のこと。一般的に、抗体は、細胞培養技術により産生され得、その技術には本明細書中に記載されるようなモノクローナル抗体の産生、または組換え抗体の産生を可能にするために、適切な細菌細胞宿主または哺乳動物細胞宿主に抗体遺伝子をトランスフェクトすることによるものが挙げられる。1つの技術において、ポリペプチドを含む免疫原は、初めに任意の広範な種々の哺乳動物に注射される(マウス、ラット、ウサギ、ヒツジまたはヤギ)。この工程において、本発明のポリペプチドは改変を伴わずに免疫原として作用し得る。あるいは、特に比較的短いポリペプチドに対して、ポリペプチドがキャリアタンパク質(例えば、ウシ血清アルブミンまたはキーホールリンペットヘモシアニン)に結合される場合、優れた免疫応答が誘発され得る。この免疫原は、好ましくは、1つ以上のブースター免疫を組み込んだ予め決定されたスケジュールに従って、動物宿主に注射され、そしてこの動物は定期的に採血される。次いで、このペプチドに対して特異的なポリクローナル抗体は、そのような抗血清から、例えば適切な固形支持体と結合されたポリペプチドを使用するアフィニティークロマトグラフィーによって精製され得る。
【0051】
目的の抗原性ポリペプチドに対して特異的なモノクローナル抗体が、例えば、KohlerおよびMilstein(Eur.J.Immunol.6:511−519、1976)の技術およびそのさらに改善された技術を使用して調製され得る。手短に言うと、これらの方法は、所望される特異性(すなわち、目的のポリペプチドとの反応性)を有する抗体を産生し得る不死細胞株の調製を含む。このような細胞株が、例えば、上記のように免疫化された動物から得られた脾臓細胞から産生され得る。次いで、この脾臓細胞は、例えば、ミエローマ細胞融合パートナー(好ましくは、この免疫化された動物と同系である)との融合により不死化される。種々の融合技術が使用され得る。例えば、脾臓細胞およびミエローマ細胞を数分間非イオン性界面活性剤と組み合わせ、次いで、ハイブリッド細胞の増殖を支持するが、ミエローマ細胞の増殖は支持しない選択培地上に低密度でプレートし得る。好ましい選択技術はHAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)選択を使用する。十分な時間(通常、約1〜2週間)の後、ハイブリッドのコロニーが観察される。単一コロニーが選択され、そしてその培養上清が、そのポリペプチドに対する結合活性について試験される。高い反応性および特異性を有するハイブリドーマが好ましい。
【0052】
モノクローナル抗体が、増殖するハイブリドーマコロニーの上清から単離され得る。さらに、種々の技術(例えば、適切な脊椎動物宿主(例えば、マウス)の腹腔内へのハイブリドーマ細胞株の注入)が、収率を増強するために使用される。次いで、モノクローナル抗体が腹水または血液から収集され得る。混入物は、従来の技術(例えば、クロマトグラフィー、ゲルろ過、沈澱および抽出)によって抗体から除去され得る。本発明のポリペプチドは、精製プロセス(例えば、アフィニティークロマトグラフィー工程)において使用され得る。
【0053】
特定の実施態様において、抗体の抗原結合フラグメントの使用が好まれ得る。そのようなフラグメントには、Fabフラグメントが挙げれるが、これは標準的な技術を使用して調製され得る。手短に言うと、免疫グロブリンが、プロテインAビーズカラム上のアフィニティークロマトグラフィーにより、ウサギ血清から精製され得(HarlowおよびL
ane、Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory、1988)、そしてFabフラグメントおよびFcフラグメントを産生するためにパパインにより消化され得る。FabフラグメントおよびFcフラグメントが、プロテインAビーズカラム上のアフィニティークロマトグラフィーにより分離され得る。
【0054】
モノクローナル抗体およびそのフラグメントは、1以上の治療剤に結合され得る。この点に関して適切な薬剤は、例えば、自己骨髄をインビトロでパージするために使用され得る、放射性トレーサーおよび化学療法剤を含む。代表的な治療剤は、放射性核種、分化誘導剤、薬物、毒素、およびそれらの誘導体を含む。好ましい放射性核種は、90Y、123I
、125I、131I、186Re、188Re、211At、および212Biを含む。好ましい薬物は、メトトレキセート、ならびにピリミジンアナログおよびプリンアナログを含む。好ましい分化誘導剤は、ホルボールエステルおよび酪酸を含む。好ましい毒素は、リシン、アブリン、ジフテリア毒素、コレラ毒素、ゲロニン(gelonin)、Pseudomonas外毒素、Shigella毒素、およびアメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質を含む。診断目的については、放射性薬剤の結合が、転移の追跡を容易にするためか、またはWT1−陽性腫瘍の位置を決定するために、使用され得る。
【0055】
治療剤は、直接的または間接的(例えば、リンカー基を通じて)のいずれかで、適切なモノクローナル抗体に結合(例えば、共有結合)され得る。薬剤と抗体との間の直接的な反応は、各々が他方と反応し得る置換基を保有する場合に可能である。例えば、一方に対する求核基(例えば、アミノ基またはスルフヒドリル基)は、カルボニル含有基(例えば、無水物または酸ハライド)と、または他方に対する良好な脱離基(例えば、ハライド)を含むアルキル基と反応することが可能であり得る。
【0056】
あるいは、治療剤および抗体をリンカー基を通じて結合させることが所望され得る。リンカー基は、結合能力を妨害することを回避するために、薬剤から抗体を離すスペーサーとして機能し得る。リンカー基はまた、薬剤または抗体上の置換基の化学反応性を増大させるように働き得、それにより結合効率を増大させる。化学反応性における増大はまた、薬剤、または薬剤上の官能基の使用を容易にし得るが、これは、そうでなければ可能ではない。
【0057】
種々の二官能性試薬または多官能性試薬(ホモ官能性およびヘテロ官能性の両方)(例えば、Pierce Chemical Co.、Rockford、ILのカタログに記載されるもの)が、リンカー基として用いられ得ることは、当業者に明らかである。結合は、例えば、アミノ基、カルボキシル基、スルフヒドリル基または酸化した糖質残基を通じてもたらされ得る。このような方法論を記載している多数の参考文献(例えば、Rodwellらに対する米国特許第4,671,958号)が存在する。
【0058】
本発明の免疫結合体の抗体部分を含まないときに治療剤がより強力である場合、細胞中へのインタナリゼーションの間またはその際に切断可能であるリンカー基を使用することが所望され得る。多くの異なる切断可能なリンカー基が、記載されている。これらのリンカー基からの薬剤の細胞内放出についての機構は、ジスルフィド結合の還元による切断(例えば、Spitlerに対する米国特許第4,489,710号)、光不安定結合の照射による切断(例えば、Senterらに対する米国特許第4,625,014号)、誘導体化されたアミノ酸側鎖の加水分解による切断(Kohnらに対する米国特許第4,638,045号)、血清補体媒介加水分解による切断(例えば、Rodwellらに対する米国特許第4,671,958号)、および酸触媒加水分解による切断(例えば、Blattlerらに対する米国特許第4,569,789号)を含む。
【0059】
1よりも多くの薬剤を抗体に結合させることが所望され得る。1つの実施態様では、薬剤の複数の分子が、1つの抗体分子に結合され得る。別の実施態様では、1よりも多い型の薬剤が、1つの抗体に結合され得る。特定の実施態様にも関わらず、1よりも多い薬剤を有する免疫結合体が、種々の様式で調製され得る。例えば、1よりも多い薬剤が、抗体分子に直接的に結合され得るか、または付着のために複数の部位を提供するリンカーが、使用され得る。あるいは、キャリアが使用され得る。キャリアは、種々の様式において薬剤を保有し得、この様式は、直接的かまたはリンカー基を通じてかのいずれかでの共有結合を含む。適切なキャリアは、アルブミンのようなタンパク質(例えば、Katoらに対する米国特許第4,507,234号)、ペプチドおよびアミノデキストランのようなポリサッカリド(Shihらに対する米国特許第4,699,784号)を含む。キャリアはまた、非共有結合によってか、またはリポソームビヒクル内でのカプセル化によって薬剤を保有し得る(例えば、米国特許第4,429,008号および同第4,873,088号)。放射性核種薬剤に特異的なキャリアは、放射性ハロゲン化低分子およびキレート化合物を含む。例えば、米国特許第4,735,792号は、代表的な放射性ハロゲン化低分子およびそれらの合成を開示している。放射性核種キレートは、金属、または金属酸化物、放射性核種を結合するためにドナー原子として窒素原子および硫黄原子を含むキレート化合物を含むキレート化合物から形成され得る。例えば、Davisonらに対する米国特許第4,673,562号は、代表的なキレート化合物およびそれらの合成を開示している。
【0060】
抗体および免疫結合体について、種々の投与経路が使用され得る。代表的には、投与は、静脈内、筋肉内、皮下、または切除された腫瘍のベッドにおいてである。抗体/免疫結合体の正確な用量は、使用される抗体、腫瘍上の抗原密度、および抗体のクリアランスの速度に依存して変動することが明らかである。
【0061】
また、WT1の免疫原性部分を模倣する抗イディオタイプ抗体が、本明細書中に提供される。このような抗体は、周知の技術を使用して、WT1の免疫原性部分に特異的に結合する、抗体、またはその抗原結合フラグメントに対して惹起され得る。WT1の免疫原性部分を模倣する抗イディオタイプ抗体は、本明細書中に記載されるように、WT1の免疫原性部分に特異的に結合する、抗体、またはその抗原結合フラグメントに結合する抗体である。
【0062】
(T細胞)
免疫治療組成物はまた、またはあるいは、WT1に特異的なT細胞を含む。このような細胞は、一般に、標準的な手順を使用して、インビトロまたはエキソビボで調製され得る。例えば、T細胞は、市販の細胞懸濁系(例えば、CellPro Inc.Bothell WAから入手可能なCEPRATETM系)を使用して、哺乳動物(例えば、患者)の骨髄、末梢血あるいは骨髄または末梢血の画分内に存在し得る(またはそれらから単離され得る)(米国特許第5,240,856号;米国特許第5,215,926号;WO89/06280;WO91/16116およびWO92/07243もまた参照のこと)。あるいは、T細胞は、関連しているかまたは関連していない、ヒト、非ヒト動物、細胞株または培養物に由来し得る。
【0063】
T細胞は、WT1ポリペプチド、WT1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および/またはWT1ポリペプチドを発現する抗原提示細胞(APC)で刺激され得る。このような刺激は、WT1ポリペプチドに特異的であるT細胞の生成を許容するに十分な条件下および時間で行われる。好ましくは、WT1ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、抗原特異的T細胞の生成を容易にする、送達ビヒクル(例えば、ミクロスフェア)内に存在する。簡潔には、T細胞は、慣用的な技術によって(例えば、末梢血リンパ球のFicoll/Hypaque密度勾配遠心分離によって)、患者または関連しているかも
しくは関連していないドナーから単離され得、WT1ポリペプチドとインキュベートされる。例えば、T細胞は、WT1ポリペプチド(例えば、5μg〜25μg/ml)または匹敵する量のWT1ポリペプチドを合成している細胞とともに、37℃で2〜9日間(代表的には4日間)インビトロでインキュベートされ得る。コントロールとして働くWT1ポリペプチドの非存在下で、T細胞サンプルの別々のアリコートをインキュベートすることが所望され得る。
【0064】
T細胞は、このT細胞がWT1ポリペプチドでコーティングされているか、またはこのようなポリペプチドをコードする遺伝子を発現している標的細胞を殺傷する場合に、WT1ポリペプチドに特異的であるとみなされる。T細胞の特異性は、任意の種々の標準的な技術を使用して評価され得る。例えば、クロム放出アッセイまたは増殖アッセイにおいては、陰性コントロールと比較して、溶解および/または増殖における2倍を超える上昇の刺激指数は、T細胞特異性を示す。このようなアッセイは、例えば、Chenら、Cancer Res.54:1065〜1070、1994に記載されるように行われ得る。あるいは、T細胞の増殖の検出が、種々の公知の技術によって達成され得る。例えば、T細胞増殖は、DNA合成の上昇した速度を測定することによって(例えば、トリチウム化チミジンでT細胞の培養物をパルス標識し、そしてDNA中に取り込まれたトリチウム化チミジンの量を測定することによって)検出され得る。T細胞増殖を検出する他の様式は、インターロイキン−2(IL−2)産生、Ca2+フラックス、または色素(例えば、3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニル−テトラゾリウム)の取り込みにおける上昇を測定することを包含する。あるいは、リンホカイン(例えば、インターフェロンγ)の合成が、測定され得るか、またはWT1ポリペプチドに応答し得るT細胞の相対数が、定量され得る。サイトカイン放出(例えば、TNFまたはIFN−γ)のレベルにおける2倍の上昇がT細胞活性化を示す標準的なサイトカインアッセイを使用して測定した場合に、WT1ポリペプチド(200ng/ml〜100μg/ml、
好ましくは100ng/ml〜25μg/ml))との3〜7日間の接触は、T細胞の増殖において少なくとも2倍の上昇を生じるはずであり、そして/または上記のような2〜3時間の接触は、T細胞の活性化を生じるはずである(Coliganら、Current Protocols in Immunology、第1巻、Wiley Interscience(Greene 1998)を参照のこと)。WT1特異的T細胞は、標準的な技術を使用して拡大され得る。好ましい実施態様において、このT細胞は、患者または関連しているか、もしくは関連していないドナーに由来し、そして刺激および拡大の後に患者に投与される。
【0065】
WT1ポリペプチド、ポリヌクレオチド、またはWT1発現APCに応答して活性化されたT細胞は、CD4+および/またはCD8+であり得る。CD4+またはCD8+T細胞の特異的活性化が、種々の様式で検出され得る。特異的T細胞活性化を検出するための方法は、T細胞の増殖、サイトカイン(例えば、リンホカイン)の産生、または細胞溶解性活性の生成(すなわち、WT1に特異的な細胞傷害性T細胞の生成)を検出することを包含する。CD4+T細胞については、特異的T細胞活性化を検出するために好ましい方法
は、T細胞の増殖の検出である。CD8+細胞については、特異的T細胞活性化を検出す
るために好ましい方法は、細胞溶解性活性の生成の検出である。
【0066】
治療目的については、WT1ポリペプチド、ポリヌクレオチド、またはAPCに応答して増殖するCD4+T細胞またはCD8+T細胞は、インビトロまたはインビボのいずれかで数の上では増殖され得る。インビトロでのこのようなT細胞の増殖は、種々の様式で達成され得る。例えば、T細胞は、T細胞増殖因子(例えば、インターロイキン−2)、および/またはWT1ポリペプチドを合成する刺激性細胞を添加してか、または添加することなく、WT1ポリペプチドに再び曝露され得る。刺激性細胞の添加は、CD8+T細胞
応答を生成する場合に好ましい。T細胞は、WT1ポリペプチドでの断続的な再刺激に応
答する特異性を保持することで、インビトロで多数に増殖され得る。簡潔には、一次的なインビトロ刺激(IVS)については、多数のリンパ球(例えば、4×107よりも多い
)が、ヒト血清を含む培地を有するフラスコ中に置かれ得る。WT1ポリペプチド(例えば、10μg/mlでのペプチド)が、破傷風毒素(例えば、5μg/ml)とともに、直接的に添加され得る。次いで、これらのフラスコが、インキュベートされ得る(例えば、37℃で7日間)。第2のIVSについては、次いで、T細胞が収集され、そして2〜3×107の照射された末梢血単核細胞を有する新しいフラスコ中に置かれる。WT1ポ
リペプチド(例えば、10μg/ml)が、直接的に添加される。これらのフラスコが、37℃で7日間インキュベートされる。第2のIVSの2日および4日後に、2〜5ユニットのインターロイキン−2(IL−2)が、添加され得る。第3のIVSについては、T細胞は、ウェル中に置かれ得、そしてこのペプチドでコーティングされた、個体独自のEBV形質転換B細胞で刺激され得る。IL−2が、各々の周期の2日目および4日目に添加され得る。これらの細胞が特異的な細胞傷害性T細胞であることが示されるとすぐに、これらは、2、4および6日目により多いIL−2(20ユニット)を用いて、10日の刺激周期を使用して拡大され得る。
【0067】
あるいは、WT1ポリペプチドの存在下で増殖する1以上のT細胞が、クローニングによって、数の上で拡大され得る。細胞をクローニングするための方法は、当該分野において公知であり、そして限界希釈を含む。応答性T細胞は、密度勾配遠心分離およびヒツジ赤血球細胞ロゼッティングにより感作された患者の末梢血から精製され得、そして照射された自己充填細胞(autologous filler cell)の存在下で名目上の抗原で刺激することによって培養物中で樹立され得る。CD4+T細胞株を生成するた
めに、WT1ポリペプチドが、抗原性刺激として使用され、そしてエプスタイン−バーウイルスでの感染により不死化された自己末梢血リンパ球(PBL)またはリンパ芽球腫細胞株(LCL)は、抗原提示細胞として使用される。CD8+T細胞株を生成するために
、WT1ポリペプチドを産生する発現ベクターでトランスフェクトされた自己抗原提示細胞が、刺激性細胞として使用され得る。樹立されたT細胞株は、1×106の照射された
PBL細胞またはLCL細胞および組換えインターロイキン−2(rIL−2)(50U/ml)を有する96ウェル平底プレートにおける1ウェルあたり0.5の細胞の頻度で、刺激されたT細胞をプレートすることによって抗原刺激の2〜4日後にクローニングされ得る。樹立されたクローン増殖を有するウェルは、最初のプレーティングのおよそ2〜3週間あとに同定され、そして自己抗原提示細胞の存在下で適切な抗原で再刺激され、次いで続いて、抗原刺激の2〜3日後での低用量のrIL2(10U/ml)の添加によって拡大され得る。T細胞クローンは、およそ2週間毎の抗原およびrIL2での定期的な再刺激によって24ウェルプレートにおいて維持され得る。
【0068】
特定の実施態様では、同種異系T細胞が、インビボおよび/またはインビトロでプライムされ得る(すなわち、WT1に感作される)。このようなプライミングは、WT1ポリペプチド、このようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたはこのようなポリペプチドを産生する細胞と、T細胞とを、T細胞をプライムすることを許容する条件下および時間で、接触させることによって達成され得る。一般に、T細胞は、例えば、本明細書中に記載される標準的な増殖、クロム放出および/またはサイトカイン放出アッセイにより測定されるように、WT1ポリペプチドとの接触がT細胞の増殖および/または活性化を生じる場合に、プライムされるとみなされる。陰性コントロールと比較して、増殖または溶解における2倍よりも大きい上昇、およびサイトカインレベルにおける3倍よりも大きい上昇の刺激指数は、T細胞特異性を示す。インビトロでプライムされた細胞は、例えば、骨髄移植において、またはドナーリンパ球注入として、用いられ得る。
【0069】
(薬学的組成物およびワクチン)
特定の局面において、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、抗体および/またはT細胞が
、薬学的組成物またはワクチンに組み込まれ得る。あるいは、薬学的組成物は、WT1ポリヌクレオチドでトランスフェクトされた抗原提示細胞(例えば、樹状細胞)を含み得、この結果、この抗原提示細胞は、WT1ポリペプチドを発現する。薬学的組成物は、1以上のこのような化合物または細胞、および薬理学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤を含む。特定のワクチンは、1以上のそのような化合物または細胞、および非特異的免疫応答エンハンサー(例えば、アジュバントまたはリポソーム(これらの中に化合物が取り込まれる))を含み得る。薬学的組成物およびワクチンは、送達系(例えば、米国特許第4,897,268号および同第5,075,109号に開示される生分解性ミクロスフェアのような)をさらに含み得る。本発明の範囲内の薬学的組成物およびワクチンはまた、生物学的に活性または不活性であり得る、他の化合物を含み得る。
【0070】
特定の実施態様において、薬学的組成物およびワクチンは、患者(例えば、ヒト)においてWT1ポリペプチドに特異的なT細胞応答を誘発するように設計される。一般的に、T細胞応答は、比較的短いポリペプチド(例えば、ネイティブWT1ポリペプチドの23未満の連続アミノ酸残基、好ましくは4〜16の連続残基、より好ましくは、8〜16の連続残基、およびなおより好ましくは、8〜10の連続残基を含む)を介して支持され得る。あるいは、またはさらに、ワクチンは、T細胞応答を優先的に増強する非特異的免疫応答エンハンサーを含み得る。換言すると、この免疫応答エンハンサーは、WT1ポリペプチドに対するT細胞応答のレベルを、抗体応答が増強される量より比例的により多い量に増強し得る。例えば、標準的なオイルベースのアジュバント(例えば、CFA)と比較する場合、T細胞応答を優先的に増強する免疫応答エンハンサーは、WT1ネガティブコントロール細胞株に比べて増殖性T細胞応答を少なくとも2倍、溶解性応答を少なくとも10%、および/またはT細胞の活性化を少なくとも2倍増強し得るが、抗体応答を検出可能に増強しない。WT1ポリペプチドに対するT細胞応答または抗体応答が増強される量は、一般的に、当該分野で公知の任意の代表的技術(例えば、本明細書中に提供される技術)を使用して決定され得る。
【0071】
薬学的組成物またはワクチンは、上記のようなポリペプチドの1以上をコードするDNAを含み得、その結果、このポリペプチドはインサイチュで生成される。上記のように、DNAは、当業者に公知の種々の送達系のいずれかの中に存在し得、これらの送達系としては、核酸発現系、細菌発現系およびウイルス発現系ならびに哺乳動物発現系が挙げられる。適切な核酸発現系は、患者における発現に必要なDNA配列、cDNA配列またはRNA配列(例えば、適切なプロモーターおよび終結シグナル)を含む。細菌送達系は、細菌(例えば、Bacillus−Calmette−Guerrin)の投与を含み、その細菌は、その細胞表面上でポリペプチドの免疫原性部分を発現する。好ましい実施態様において、DNAは、ウイルス発現系(例えば、ワクシニアウイルスまたは他のポックスウイルス、レトロウイルス、あるいはアデノウイルス)を使用して導入され得、これらの発現系は、非病原性(欠損性)の複製コンピテントなウイルスの使用を含み得る。このような発現系にDNAを組み込むための技術は、当業者に周知である。このDNAはまた、例えば、Ulmerら、Science 259:1745−1749、1993に記載され、そしてCohen,Science 259:1691−1692、1993に総説されるように、「裸」であり得る。裸のDNAの取り込みは、生分解性ビーズ上にこのDNAをコートすることによって増加され得、このビーズは、細胞に効率的に輸送される。
【0072】
上記のように、薬学的組成物またはワクチンは、WT1ポリペプチドを発現する抗原提示細胞を含み得る。治療目的のために、本明細書中に記載されるように、抗原提示細胞は、好ましくは、自己の樹状細胞である。このような細胞は、Reevesら、Cancer Res.56:5672−5677,1996;Tutingら、J.Immunol.160:1139−1147,1998;およびNairら、Nature Bio
technol.16:364−369,1998に記載のような、標準的な技術を使用して調製およびトランスフェクトされ得る。抗原提示細胞の表面上のWT1ポリペプチドの発現は、本明細書中に記載のような、インビトロ刺激および標準的な増殖、ならびにクロム放出アッセイによって確証され得る。
【0073】
当業者に公知の任意の適切なキャリアは、本発明の薬学的組成物において使用され得るが、キャリアの型は、投与形態に依存して変化する。本発明の組成物は、任意の適切な投与形式(例えば、局所的投与、経口投与、経鼻投与、静脈内投与、頭蓋内投与、腹腔内投与、皮下投与または筋肉内投与を含む)について処方され得る。非経口投与(例えば、皮下注射)のために、キャリアは、好ましくは、水、生理食塩水、アルコール、脂肪、ワックスまたは緩衝液を含む。経口投与のために、上記のキャリアのいずれか、または固体キャリア(例えば、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロース、および炭酸マグネシウム)が、使用され得る。生分解性ミクロスフェア(例えば、ポリ乳酸ポリグリコール酸)もまた、本発明の薬学的組成物のためにキャリアとして使用され得る。特定の局所適用のために、周知の成分を使用するクリームまたはローションのような処方物が、好ましい。
【0074】
このような組成物はまた、緩衝液(例えば、中性の緩衝化生理食塩水またはリン酸緩衝化生理食塩水)、炭水化物(例えば、グルコース、マンノース、スクロースまたはデキストラン)、マンニトール、タンパク質、ポリペプチドまたはアミノ酸(例えば、グリシン)、抗酸化剤、キレート剤(例えば、EDTAまたはグルタチオン)、アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム)および/または保存剤を含み得る。あるいは、本発明の組成物は、凍結乾燥物として処方され得る。化合物はまた、周知の技術を使用してリポソーム内にカプセル化され得る。
【0075】
任意の種々の非特異的免疫応答エンハンサー(例えば、アジュバント)が、本発明のワクチンにおいて使用され得る。多くのアジュバントは、迅速な異化から抗原を保護するように設計された物質(例えば、水酸化アルミニウムまたは鉱油)、および免疫応答の刺激物質(例えば、リピドA、Bortadella pertussisまたはMycobacterium tuberculosis誘導タンパク質)を含む。適切な非特異的免疫応答エンハンサーとしては、以下が挙げられる:ミョウバンベースのアジュバント(例えば、Alhydrogel、Rehydrogel、リン酸アルミニウム、Algammulin、水酸化アルミニウム);オイルベースのアジュバント(フロイントアジュバント(FA)、Specol、RIBI、TiterMax、Montanide ISA50またはSeppic MONTANIDE ISA 720);サイトカイン(例えば、GM−CSFまたはFlat3リガンド);ミクロスフェア;非イオン性ブロックコポリマーベースのアジュバント;ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDA)ベースのアジュバントAS−1、AS−2(Smith Kline Beecham);Ribi Adjuvant系ベースのアジュバント:QS21(Aquila);サポニンベースのアジュバント(粗サポニン、サポニンQuil A);ムラミルジペプチド(MDP)ベースのアジュバント(例えば、SAF(微小流動体化(microfluidized)形態のSyntexアジュバント(SAF−m)));ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDA);ヒト補体ベースのアジュバントm.vaccaeおよび誘導体;免疫刺激複合体(iscom)ベースのアジュバント;不活性化毒素;および弱毒化した感染因子(例えば、M.tuberculosis)。
【0076】
上記のように、特定の実施態様において、免疫応答エンハンサーは、WT1ポリペプチドに対するT細胞応答(例えば、CD4+および/またはCD8+)を優先的に誘発または増強する、それらの能力について選択される。このような免疫応答エンハンサーは、当該
分野で周知であり、そしてこれには、以下が挙げられる(しかし、これらに限定されない):Montanide ISA50、Seppic MONTANIDE ISA 720、サイトカイン(例えば、GM−CSFまたはFlat3リガンド)、ミクロスフェア、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDA)ベースのアジュバント、AS−1(Smith Kline Beecham)、AS−2(Smith Kline Beecham)、Ribi Adjuvant系ベースのアジュバント、QS21(Aquila)、サポニンベースのアジュバント(粗サポニン、サポニンQuil A)、微小流動体化形態のSyntexアジュバント(SAF−m)、MV、ddMV(Genesis)、免疫刺激複合体(iscom)ベースのアジュバントおよび不活性化毒素。
【0077】
本明細書中に記載される組成物およびワクチンは、徐放性処方物(すなわち、投与後に化合物の緩やかな放出をもたらす、カプセルまたはスポンジのような処方物)の一部として投与され得る。このような処方物は、一般的に、周知の技術を使用して調製され得、そして例えば、経口、直腸または皮下の埋め込みによるか、または所望の標的部位への埋め込みによって投与され得る。徐放性処方物は、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、抗体または細胞を含み得、これらは、キャリアマトリックス中に分散されるか、そして/または速度制御性の膜に囲まれたリザーバ内に含まれる。このような処方物内での使用のためのキャリアは、生体適合性であり、そしてまた生分解性であり得;好ましくは、処方物は、比較的一定レベルの活性成分の放出を提供する。徐放性処方物内に含まれる活性化合物の量は、埋め込み部位、速度および予想される放出時間、ならびに処置または予防されるべき状態の性質に依存する。
【0078】
(悪性疾患の治療)
本発明のさらなる局面において、本明細書中に記載の組成物およびワクチンは、悪性疾患(例えば、進行性または転移性の疾患、あるいは小さい腫瘍負荷(例えば、最小の残留性疾患)によって特徴付けられる疾患)の発症を阻害するために使用され得る。一般的に、このような方法は、WT1発現に関連する疾患を予防、遅延または処置するために使用され得る。換言すると、本明細書中に提供される治療方法は、既存のWT1関連疾患を処置するために使用され得るか、あるいは疾患を有さない患者において、またはWT1発現に未だ関連付けられていない疾患に罹患している患者において、このような疾患の発症を予防または遅延させるために使用され得る。
【0079】
本明細書中で使用される場合、疾患の経過の間のいくつかの時点で疾患細胞(例えば、腫瘍細胞)が、その同じ組織の正常細胞より高レベルでWT1ポリペプチドを検出可能に生成する場合、その疾患は、「WT1発現に関連する」。WT1発現の悪性疾患との関連は、WT1が腫瘍上に存在することを必要としない。例えば、WT1の過剰発現は、腫瘍の開始に関連し得るが、そのタンパク質の発現は、その後消失し得る。あるいは、WT1発現の増加によって特徴付けられない悪性疾患は、後の時点で、WT1発現の増加によって特徴付けられる疾患に進行し得る。従って、疾患細胞が、増加レベルのWT1を先に発現したか、現在発現するか、または後に発現することが予想される任意の悪性疾患は、「WT1発現に関連する」するとみなされる。
【0080】
免疫治療は、任意の種々の技術を使用して実行され得、ここで、本明細書中に提供される化合物または細胞は、患者からWT1発現細胞を除去するように機能する。このような除去は、WT1またはWT1を発現する細胞に特異的な患者における免疫応答を増強または誘導する結果として生じ得る。あるいは、WT1発現細胞は、エキソビボで除去され得る(例えば、自己骨髄、末梢血、あるいは骨髄または末梢血の画分の処置によって)。骨髄または末梢血の画分は、当該分野の任意の標準的技術を使用して得られ得る。
【0081】
このような方法において、薬学的組成物およびワクチンは、患者に投与され得る。本明細書中で使用される場合、「患者」とは、任意の温血動物(好ましくは、ヒト)をいう。患者は、悪性疾患に罹患していてもよいし、していなくてもよい。従って、上記の薬学的組成物およびワクチンは、疾患の発生を予防するために(すなわち、予防的に)使用され得るか、または疾患に罹患した患者を処置するために(例えば、既存の疾患の進行および/または転移を、予防または遅延させるために)使用され得る。疾患に罹患した患者は、最小の残留性疾患(例えば、完全または部分的寛解における白血病患者中の低い腫瘍負荷、または外科的な放射線療法および/または化学療法後の腫瘍負荷の減少後の癌患者)を有し得る。このような患者は、再発を阻害するために免疫化され得る(すなわち、再発を予防または遅延させるか、あるいは再発の重篤度を低下させる)。特定の好ましい実施態様において、患者は、白血病(例えば、AML、CML、ALLまたは幼少期ALL)、脊髄形成異常症候群(MDS)または癌(例えば、胃腸癌、肺癌、甲状腺癌または乳癌、あるいは黒色腫)に罹患し、ここで、白血病の癌は、WT1陽性(すなわち、本明細書中に提供されるような、抗WT1抗体と検出可能に反応するか、または本明細書中に記載されるように、RT−PCRによって検出可能なレベルでWT1 mRNAを発現する)か、またはWT1発現細胞に対する自己免疫疾患に罹患する。
【0082】
本明細書中に提供される組成物は、単独か、あるいは手術、照射、化学療法および/または骨髄移植(自己、同系、同種異系または無関係の)のような従来の治療レジメンと組み合わせて使用され得る。以下により詳細に議論されるように、本明細書中に提供される結合剤およびT細胞は、自己性の幹細胞をパージするために使用され得る。このようなパージング(purging)は、例えば、骨髄移植あるいは血液またはその成分の輸血の前に有益であり得る。本明細書中に提供される結合剤、T細胞、抗原提示細胞(APC)および組成物は、さらに、インビトロおよび/またはインビボで、自己、同系、同種異系または無関係のWT1特異的T細胞を、拡大および刺激(または初回刺激)するために使用され得る。このようなWT1特異的T細胞は、例えば、ドナーリンパ球注入において使用され得る。
【0083】
投与の経路および頻度、ならびに投薬量は、個体間で変化し、そして標準的な技術を使用して容易に確立され得る。一般的に、薬学的組成物およびワクチンは、注射によって(例えば、皮内、筋肉内、静脈内または皮下)か、鼻内(例えば、吸入によって)にか、または経口的に投与され得る。いくつかの腫瘍において、薬学的組成物またはワクチンは、局所的に(例えば、直腸鏡検査(rectocoloscopy)、胃鏡検査、ビデオ内視鏡検査(videoendoscopy)、血管造影または当該分野で公知の他の方法によって)投与され得る。好ましくは、1〜10用量が、52週の期間にわたって投与され得る。好ましくは、6用量が、1ヶ月間隔で投与され、そしてブースターワクチン接種が、その後定期的に与えられ得る。代替的プロトコルは、個々の患者に適切であり得る。適切な用量は、上記のように投与される場合に、基底(すなわち、未処置)レベルより少なくとも10〜50%大きい、抗腫瘍免疫応答を促進し得る化合物の量である。このような応答は、患者における抗腫瘍抗体を測定することによってか、またはインビトロで患者の腫瘍細胞を殺傷し得る細胞溶解性エフェクター細胞のワクチン依存性の生成によってモニターされ得る。このようなワクチンはまた、非ワクチン接種患者と比較した場合に、ワクチン接種した患者において改善された臨床結果(例えば、より頻繁な完全または部分的寛解、あるいはより長い無疾患および/または全体敵生存)を導く免疫応答を引き起こし得るべきである。一般的に、1以上のポリペプチドを含む薬学的組成物およびワクチンについて、1用量に存在する各ポリペプチドの量は、約100μg〜5mgの範囲である。適切な用量サイズは、患者のサイズに伴って変化するが、代表的には、約0.1mL〜5mLの範囲である。
【0084】
一般的には、適切な投薬量および治療レジメは、治療的および/または予防的利点を提
供するに十分な量で活性な化合物を提供する。このような応答は、改善された臨床的な結果(例えば、より頻繁な完全または部分的寛解、またはより長く疾患がないこと、および/もしくは全体的な生存)を達成することによって、処置されていない患者と比較して処置された患者においてモニターされ得る。前から存在するWT1に対する免疫応答の増加は、一般的に、改善された臨床的な結果と相関する。このような免疫応答は、一般的に、標準的な増殖、細胞毒性、またはサイトカインアッセイを使用して評価され得る。これらは、処置の前後に患者から得られたサンプルを使用して実行され得る。
【0085】
さらなる局面において、WT1発現と関連する悪性疾患の発症を阻害するための方法は、上記のように、WT1ポリペプチドまたはWT1発現APCに対する応答において活性化された自系のT細胞の投与を包含する。このようなT細胞は、CD4+および/または
CD8+であり得、そして上記のように増殖され得る。T細胞は、悪性疾患の発症を阻害
するに有効な量で個体に投与され得る。代表的には、約1×109〜1×1011T細胞/
M2が、静脈内、腔内、または切除された腫瘍のベッド中で投与される。細胞の数および
投与の頻度が患者の応答に依存することは、当業者に明白である。
【0086】
特定の実施態様において、T細胞は、自系の骨髄移植の前に刺激され得る。このような刺激は、インビボまたはインビトロで生じ得る。インビトロの刺激については、患者から得られた骨髄および/または末梢血(または骨髄もしくは末梢血の画分)は、上記のようなT細胞の刺激を可能にするに十分な条件下および時間の間、WT1ポリペプチド、WT1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および/またはWT1ポリペプチドを発現するAPCと接触され得る。次いで、骨髄、末梢血幹細胞、および/またはWT1特異的T細胞は、標準的な技術を使用して患者に投与され得る。
【0087】
関連する実施態様において、関連するドナーまたは関連しないドナーのT細胞は、同系または同種異系の(関連するかまたは関連しない)骨髄移植の前に刺激され得る。このような刺激は、インビボまたはインビトロで起こり得る。インビトロの刺激については、関連するドナーまたは関連しないドナーから得られた骨髄および/または末梢血(または骨髄もしくは末梢血の画分)は、上記のようなT細胞の刺激を可能にするに十分な条件下および時間の間、WT1ポリペプチド、WT1ポリヌクレオチド、および/またはWT1ポリペプチドを発現するAPCと接触され得る。次いで、骨髄、末梢血幹細胞、および/またはWT1特異的T細胞は、標準的な技術を使用して患者に投与され得る。
【0088】
他の実施態様において、本明細書中に記載されるWT1特異的T細胞は、自系の骨髄、末梢血、または骨髄もしくは末梢血の画分(例えば、患者への投与前のCD34+富化末
梢血)からWT1を発現する細胞を取り除くために使用され得る。このような方法は、WT1を発現する細胞を、骨髄または末梢血中での骨髄細胞またはリンパ細胞の総数に対して10%未満まで、好ましくは5%未満まで、そしてより好ましくは1%未満までの減少させることを可能にするに十分な条件下で、またはそれを可能にするに十分な時間、骨髄またはPBをそのようなT細胞と接触されることによって実行され得る。このような細胞が取り除かれた程度は、例えば、定性的および定量的PCR分析、形態学、免疫組織化学、およびFACS分析のような標準的な方法によって容易に決定され得る。次いで、骨髄またはPB(またはそれらの画分)は、標準的な技術を使用して、患者に投与され得る。
【0089】
(診断的方法)
本発明はさらに、WT1発現と関連する悪性疾患を検出するための方法、およびそのような疾患のための免疫または治療の有効性をモニタリングするための方法を提供する。このような方法は、WT1タンパク質に特異的な免疫応答がこのような疾患に罹患した患者において検出され得、そしてこのような免疫応答を増強する方法は、予防的または治療的利点を提供し得るという、本発明における発見に基づく。
【0090】
WT1発現に関連する悪性疾患の存在または非存在を決定するために、患者は、WT1に特異的なT細胞のレベルについて試験され得る。特定の方法において、患者から単離されたCD4+および/またはCD8+T細胞を含む生物学的サンプルは、WT1ポリペプチド、WT1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および/またはWT1ポリペプチドを発現するAPCとともにインキュベートされ得、そして本明細書中に記載されるように、T細胞の特異的活性化の存在または非存在が検出される。適切な生物学的サンプルには、単離されたT細胞が含まれるが、これには限定されない。例えば、T細胞は、慣用的な技術によって(例えば、末梢血リンパ球のFicoll/Hypaque密度勾配遠心分離によって)患者から単離され得る。T細胞は、インビトロで、WT1ポリペプチド(例えば、5〜25μg/ml)と37℃で、2〜9日間(代表的には4日間)インキュベートされ得る。コントロールとして機能するために、WT1ポリペプチドの非存在下でT細胞サンプルの別のアリコートをインキュベートさせることが所望され得る。CD4+
T細胞については、活性化は、好ましくはT細胞の増殖を評価することによって検出される。CD8+T細胞については、活性化は、好ましくは細胞溶解活性を評価することによ
って検出される。疾患を有しない患者における、少なくとも2倍多い増殖のレベルおよび/または少なくとも20%多い細胞溶解性活性のレベルは、WT1発現に関連する悪性疾患の存在を示す。増殖のレベルおよび/または細胞溶解性活性と、治療に対する予想された応答との間のさらなる相関は、当該分野で周知の方法を用いて作製され得る。特に、より高い抗体応答、増殖応答、および/または溶解性応答を示す患者は、治療に対するより高い応答を示すことが予測され得る。
【0091】
他の方法において、患者から得られた生物学的サンプルは、WT1に特異的な抗体のレベルについて試験される。生物学的サンプルは、免疫複合体を形成するに十分な条件下および時間の間、WT1ポリペプチド、WT1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および/またはWT1ポリペプチドを発現するAPCとともにインキュベートされる。次いで、WT1ポリペプチドに特異的に結合する生物学的サンプル中でWT1ポリペプチドと抗体との間に形成された免疫複合体が、検出される。このような方法における使用のための生物学的サンプルは、抗体を含むことが予想される患者から得られた任意のサンプルであり得る。適切な生物学的サンプルには、血液、血清、腹水、骨髄、胸水、および脳脊髄液を含む。
【0092】
生物学的サンプルは、ポリペプチドと、WT1に特異的な抗体との間で免疫複合体を形成するに十分な条件下および時間の間、反応混合液中で、WT1ポリペプチドとともにインキュベートされる。例えば、生物学的サンプルおよびWT1ポリペプチドは、4℃で24〜38時間インキュベートされ得る。
【0093】
インキュベーション後、反応混合液は、免疫複合体の存在について試験される。WT1ポリペプチドと、生物学的サンプル中に存在する抗体との間に形成された免疫複合体の検出は、種々の公知の技術(例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)および酵素結合免疫吸着検定法(ELISA))によって達成され得る。適切なアッセイは、当該分野で周知であり、そして科学文献および特許文献に十分に記載される(例えば、HarlowおよびLane、Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,1988)。使用され得るアッセイには、以下が含まれるがこれらに限定されない:Davidら(米国特許第4,376,110号)の二重モノクローナル抗体サンドウィッチイムノアッセイ技術;モノクローナル−ポリクローナル抗体サンドウィッチアッセイ(Wideら、KirkhamおよびHunter編,Radioimmunoassay Mathods,E.and
S.Livingstone,Edinburgh,1970);Gordonらの「western blot」法(米国特許第4,452,901号);標識したリガンド
の免疫沈降(Brownら、J.Biol.Chem.255:4980−4983,1980);例えば、RainesおよびRoss(J.Biol.Chem.257:5154−5160,1982)によって記載される酵素結合免疫吸着検定法(ELISA);蛍光色素の使用を含む免疫細胞化学技術(Brooksら、Clin,Exp.Immunol.39:477,1980);および活性の中和(Bowen−Popeら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81;2396−2400,1984)。他のイムノアッセイには以下の米国特許に記載されるものが含まれるが、これらに限定されない:米国特許第3,817,827号;同第3,850,752号;同第3,901,654号;同第3,935,074号;同第3,984,533号;同第3,996,345号;同第4,034,074号;および同第4,098,876号。
【0094】
検出目的のために、WT1ポリペプチドは、標識されるか、または標識されないかのいずれかであり得る。標識されないWT1ポリペプチドは、凝集アッセイにおいて、または免疫複合体に結合する標識された検出試薬(例えば、WT1ポリペプチドに特異的に結合する抗体に結合し得る、抗免疫グロブリン、プロテインG、プロテインA、もしくはレクチンおよび二次抗体、またはそれらの抗原結合フラグメント)と組み合わせて使用され得る。WT1ポリペプチドが標識される場合、レポーター基は、当該分野で公知の、任意の適切なレポーター基であり得、これらは、放射性同位元素、蛍光基、発光基、酵素、ビオチン、および色素粒子であり得る。
【0095】
特定のアッセイにおいて、標識していないWT1ポリペプチドは、固体支持体上に固定化される。この固体支持体は、ポリペプチドが結合され得る、当業者にとって公知の任意の物質であり得る。例えば、この固体支持体は、マイクロタイタープレート中の試験ウェルまたはニトロセルロースもしくは他の適切なメンブレンであり得る。あるいは、その支持体は、ビーズまたはディスク(例えば、ガラス、ガラス繊維、ラテックス、または、ポリスチレンもしくはポリビニルクロライドのようなプラスチック材料)であり得る。この支持体はまた、磁気粒子または光ファイバーセンサー(例えば、米国特許第5,359,681号に開示されるもののような)であり得る。ポリペプチドは、特許文献および科学文献に十分に記載される、当業者に公知である種々の技術を用いて、固体支持体上に固定化され得る。本発明の文脈において、用語「固定化」とは、非共有結合的な結合(例えば、吸着)および共有結合的な結合(これは、抗原と支持体上の官能基との間の直接的な連結であり得るか、または架橋剤による連結であり得る)の両方をいう。マイクロタイタープレート中のウェルまたはメンブレンへの吸着による固定化が好ましい。このような場合において、吸着は、適切な緩衝液中で、適切な時間の間、WT1ポリペプチドを固体支持体と接触されることによって達成され得る。接触時間は温度によって変動し得るが、代表的には、約1時間と約1日間との間である。一般的に、プラスチックマイクロタイタープレート(例えば、ポリスチレンまたはポリビニルクロライド)のウェルを、約10ng〜約10μg、および好ましくは約100ng〜約1μgの量の範囲のポリペプチドと接触させることが、適切な量のポリペプチドを固定化するために十分である。
【0096】
固定化後に、支持体上の残存するタンパク質結合部位は、代表的にはブロックされる。当業者に公知である任意の適切なブロッキング剤(例えば、ウシ血清アルブミン、Tween20TM(Sigma Chemical Co.,St.Louis,MO)、熱不活化正常ヤギ血清(NGS)、またはBLOTTO(脱脂粉乳の緩衝化溶液であり、これはまた、保存剤、塩、および消泡剤も含む))。次いで、その支持体は、特異的な抗体を含むことが疑われる生物学的サンプルとともにインキュベートされる。そのサンプルは、巧みに適用され得るか、または、より頻繁には、それは、通常、少量(重量で0.1%〜5.0%)のタンパク質(例えば、BSA、NGS、またはBLOTTO)を含む緩衝溶液中で希釈され得る。一般的に、適切な接触時間(すなわち、インキュベーション時間)は、そのような抗体を含むサンプル中でWT1を特異的に結合する抗体の存在を検出する
に十分である時間の間である。好ましくは、その接触時間は、結合した抗体と結合していない抗体との間の平衡において達成される、少なくとも約95%の結合である結合のレベルを達成するに十分である。当業者は、平衡を達成するに十分な時間が、時間の間にわたって生じる結合のレベルをアッセイすることによって容易に決定され得ることを理解する。室温においては、約30分間のインキュベーション時間が一般的に十分である。
【0097】
次いで、結合していないサンプルは、適切な緩衝液(例えば、0.1% Tween20TMを含むPBS)で固体支持体を洗浄することによって除去され得る。次いで、免疫複合体を結合し、そしてレポーター基を含む検出試薬が添加され得る。その検出試薬は、結合抗体を検出するに十分な時間の間、免疫複合体とともにインキュベートされる。適切な時間の長さは、一般的に、時間の間にわたって生じる結合のレベルをアッセイすることによって決定され得る。次いで、結合していない検出試薬が除去され、そして結合した検出試薬が、レポーター基を用いて検出される。レポーター基を検出するために用いられる方法は、レポーター基の性質に依存する。放射活性基については、シンチレーション計数またはオートラジオグラフィー法が一般に適切である。分光学的な方法は、色素、発光基、および蛍光基を検出するために使用され得る。ビオチンは、異なるレポーター基(一般に、放射活性基もしくは蛍光基、または酵素)に結合されたアビジンを用いて検出され得る。酵素レポーター基(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼ、およびグルコースオキシダーゼ)は、一般に、基質の添加(一般に、特定の時間の間)によって検出され得、続いて、反応生成物の分光学的分析または他の分析によって検出され得る。利用される特定の方法に関わらず、バックグラウンド(すなわち、疾患を有しない個体から得られた生物学的サンプルについて観察されたレベル)よりも少なくとも2倍大きい結合した検出試薬のレベルは、WT1発現に関連する悪性疾患の存在を示す。
【0098】
一般的に、免疫または治療の有効性をモニタリングするための方法は、患者におけるWT1に特異的な抗体またはT細胞のレベルの変化をモニタリングする工程を含む。抗体レベルがモニタリングされる方法は、以下の工程を含み得る:(a)患者から得られた生物学的サンプルを、治療および免疫の前に、WT1ポリペプチドとともにインキュベートする工程、ここで、このインキュベーションは、免疫複合体が形成するに十分な条件下および時間の間、行われる;(b)WT1ポリペプチドと、WT1ポリペプチドに特異的に結合する、生物学的サンプル中の抗体との間で形成された免疫複合体を検出する工程;(c)治療または免疫後の患者から取られた第2の生物学的サンプルを用いて、工程(a)および(b)とを反復する工程;ならびに(d)第1および第2の生物学的サンプル中で検出される免疫複合体の数を比較する工程。あるいは、WT1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたはWT1ポリペプチドを発現するAPCが、WT1ポリペプチドの代わりに利用され得る。このような方法において、ポリヌクレオチドによってコードされるか、またはAPCによって発現されWT1ポリペプチドと、生物学的サンプル中の抗体との間の免疫複合体が検出される。
【0099】
T細胞活性化および/またはWT1特異的前駆体の数をモニターする方法は、以下の工
程を包含し得る:(a)治療または免疫前の患者から得られたCD4+細胞および/またはCD8+細胞を含む第1の生物学的サンプル(例えば、骨髄、末梢血、またはそれらの画分)を、WT1ポリペプチドと共にインキュベートする工程であって、T細胞の特異的な活性化、増殖、および/または溶解を可能にするに十分な条件および時間で、このインキュベーションを実施する、工程;(b)T細胞の活性化、増殖、および/または溶解の量を検出する工程;(c)CD4+ T細胞および/またはCD8+ T細胞を含み、かつ治療または免疫後の同一患者から採取された第2の生物学的サンプルを使用して、工程(a)および工程(b)を繰り返す工程;ならびに(d)第1の生物学的サンプルおよび第2の生物学的サンプルにおける、T細胞の活性化、増殖、および/または溶解の量を比
較する工程。あるいは、WT1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、またはWT1ポリペプチドを発現するAPCを、WT1ポリペプチドの代わりに使用し得る。
【0100】
このような方法における使用のための生物学的サンプルは、抗体、CD4+ T細胞および/またはCD8+ T細胞を含むことが予期される患者から得られる任意のサンプルであり得る。適切な生物学的サンプルとしては、血液、血清、腹水、骨髄、胸水、および脳脊髄液が挙げられる。第1の生物学的サンプルは、治療もしくは免疫の開始前に、または治療もしくはワクチン接種レジメンを通した途中(part way)で獲得され得る。第2の生物学的サンプルは、類似の様式であるが、さらなる治療または免疫後の時点で獲得されるべきである。第2の生物学的サンプルは、第1の生物学的サンプルの単離と第2の生物学的サンプルの単離との間に、少なくとも一部の治療または免疫が行われるという条件で、治療もしくは免疫の完了時またはその途中で獲得され得る。
【0101】
両方のサンプルについてのインキュベーション工程および検出工程を、一般に、上記のように実施し得る。第1のサンプルと相対的な第2のサンプルにおける免疫複合体の数の統計的に有意な増加は、首尾よい治療または免疫を反映する。
【0102】
以下の実施例は例示のために提供され、制限のためではない。
【0103】
(実施例)
(実施例1)
(血液学的悪性疾患を有する患者における、WT1に対する免疫応答の同定)
本実施例は、血液学的悪性疾患を有する患者において存在する免疫応答の同定を例証する。
【0104】
患者において予め存在するWT1特異的抗体応答を評価するため、AML、ALL、CMLおよび重篤な再生不良性貧血を有する患者の血清を、ウェスタンブロット分析を用いて分析した。ヒト白血病性細胞株K562(American
Type Culture Collection、Manassas、VA)由来のWT1を免疫沈降する能力について、血清を試験した。各々の場合において、免疫沈降物をゲル電気泳動により分離し、メンブレンに転写し、そして抗WT−1抗体であるWT180(Santa Cruz Biotechnology,Inc.、Santa Cruz、CA)でプローブした。このウェスタンブロット分析は、血液学的悪性疾患を有する患者において強力なWT1特異的抗体を同定した。AMLを有する患者についての結果を示す代表的なウェスタンブロットを、図2に示す。この患者の血清を使用して生成された免疫沈降物中の52kDタンパク質を、WT1特異的抗体により認識した。52kDタンパク質は、陽性コントロールと同じサイズに移動した。
【0105】
(実施例2)
(WT1を発現する細胞株で免疫したマウスにおける、WT1に対する抗体の同定)
本実施例は、インビボでWT1特異的抗体応答を誘導するための、WT1を発現する細胞の使用を例証する。
【0106】
白血病を有する患者において存在するWT1に対する抗体の検出は、WT1に対する免疫を誘発するために、WT1タンパク質に対して免疫することが可能であることを強力に暗示した。WT1に対する免疫がワクチン接種により生成され得るか否かを試験するために、TRAMP−C(B6起源のWT1陽性腫瘍細胞株)をマウスに注射した。簡潔には、雄性B6マウスを、皮下で5×106TRAMP−C細胞により免疫し、そして3週間
の間隔で5×106細胞により2回追加免疫した。最後の免疫の3週間後に血清を獲得し
、そして脾臓の単一細胞懸濁物を、25μMのβ−2−メルカプトエタノール、200ユ
ニット/mlのペニシリン、10mMのL−グルタミン、および10%のウシ胎仔血清を有するRPMI 1640培地(GIBCO)中で調製した。
【0107】
TRAMP−Cに対する免疫後に、免疫した動物におけるWT1特異的抗体応答が検出可能であった。代表的なウェスタンブロットを図3に示す。これらの結果は、WT1タンパク質に対する免疫が、WT1タンパク質に対する免疫応答を誘発し得ることを示す。
【0108】
(実施例3)
WT1ペプチドで免疫したマウスにおけるThおよび抗体応答の同定)
本実施例は、WT1ペプチドでの免疫が、WT1に特異的な免疫応答を誘発する能力を例証する。
【0109】
Abおよび増殖性T細胞応答を誘発するために適切なペプチドを、Th応答を誘発する能力を有するペプチドモチーフについて検索するTsitesプログラム(RothbardおよびTaylor、EMBO J.7:93−100、1988;Deavinら、Mol.Immunol.33:145−155、1996)に従って同定した。表1に示されるペプチドを、合成および配列決定した。
【0110】
【表1】
免疫のために、ペプチドを以下のようにグループ分けした:
群A:p6−22ヒト:1ml中に10.9mg(10μl=100μg)
p117−139ヒト/マウス:1ml中に7.6mg(14μl=100μg)
p244−262ヒト:1ml中に4.6mg(22μl=100μg)群B:p287−301ヒト/マウス:1ml中に7.2mg(14μl=100μg)
マウスp299−313;1ml中に6.6mg(15μl=100μg)
p421−435ヒト/マウス:1ml中に3.3mg(30μl=100μg)コントロール:(FBLペプチド 100μg)+CFA/IFA
コントロール:(CD45ペプチド 100μg)+CFA/IFA。
【0111】
群Aは、WT1のアミノ末端部分内に存在するペプチド(エキソン1)を含んだ。そして群Bは、他のDNA結合タンパク質に対する配列相同性を有する4つのジンクフィンガー領域を含むカルボキシ末端内に存在するペプチドを含んだ。群Bの中で、p287−301およびp299−313は、エキソン7(ジンクフィンガー1)由来であり、そしてp421−435は、エキソン10(ジンクフィンガーIV)由来であった。
【0112】
B6マウスを、WT1ペプチドの群またはコントロールペプチドで免疫した。ペプチドを、注射のために1mlの滅菌水中に溶解し、そしてB6マウスを3週間の間隔で3回免疫した。使用したアジュバントは、CFA/IFA、GM−CSF、およびMontinideであった。次いで、WT1に特異的な抗体の存在を、実施例1および2に記載のように決定し、そして増殖性T細胞応答を、標準的なチミジン取りこみアッセイを使用して評価した。このアッセイでは、細胞を抗原の存在下で培養し、そして取りこまれた放射能を測定することにより、増殖を評価した(Chenら、Cancer Res.54:1065−1070、1994)。詳細には、リンパ球を、1ウェルあたり2×105細胞
にて96ウェルプレート中で培養し、このウェルは4×105の照射した(3000ラド
)同系脾臓細胞および明示されたペプチドを有した。
【0113】
群Aとして明示されたペプチドの群によるマウスの免疫は、WT1に対する抗体応答を誘発した(図4)。ワクチンBに対する免疫後に全く抗体は検出されず、これはワクチンBでの免疫からのヘルパーT細胞応答の欠如と一致する。P117−139は、増殖性T細胞応答を誘発した(図5A〜5C)。刺激指数(SI)は、8と72との間を変動した。他のペプチド(P6−22およびP299−313)もまた、増殖性T細胞応答を誘発することが示された。P6−22での免疫は2.3の刺激指数(SI)を生じ、そしてP299−313での免疫は3.3のSIを生じた。陽性コントロールは、ConA刺激したT細胞、ならびに既知の抗原(例えば、CD45およびFBL)で刺激したT細胞、および同種異系T細胞株(DeBruijnら、Eur.J.Immunol.21:2963−2970、1991)を含んだ。
【0114】
図6Aおよび6Bは、ワクチンA(図6A)およびワクチンB(図6B)において各3つのペプチドについて観察された増殖性応答を示す。ワクチンAは、3と8との間(バルク線)を変動する刺激指数(SI)で、免疫ペプチドp6−22およびp117−139に対する増殖性T細胞応答を誘発した。p244−262に対する増殖応答は検出されなかった(図6A)。
【0115】
引き続くインビトロ刺激を、p6−22およびp117−139のみを使用する単一ペプチド刺激として実施した。p117−139でのワクチンA特異的T細胞株の刺激は、p6−22に対する応答を伴わずに、p117−139に対する増殖を生じた(図7A)。この株由来のクローンは、p117−139に特異的であった(図7B)。対照的に、p6−22でのワクチンA特異的T細胞株の刺激は、p117−139に対する応答を伴わずに、p6−22に対する増殖を生じた(図7C)。この株由来のクローンは、p6−22に特異的であった(図7D)。
【0116】
これらの結果は、WT1ペプチドでのワクチン接種が、WT1タンパク質に対する抗体応答および免疫ペプチドに対する増殖性T細胞応答を誘発し得ることを示す。
【0117】
(実施例4:WT1ペプチドで免疫したマウスにおけるCTL応答の誘導)
本実施例は、WT1ペプチドのCTL免疫を誘発する能力を例示する。
【0118】
クラスI MHCへの結合に適切なモチーフを有するペプチド(9マー)を、BIMAS HLAペプチド結合予測分析(Parkerら、J.Immunol.152:16
3,1994)を用いて同定した。このような分析で同定したペプチドを、表II〜XLIVに示す。これらの表の各々において、スコアは、示したMHC分子に対するペプチドの理論的結合親和性(解離の半減期)を反映する。
【0119】
Th応答を誘発する能力を有するペプチドモチーフを検索する、Tsitesプログラム(RothbardおよびTaylor,EMBO J. 7:93−100,1988;Deavinら、Mol.Immunol.33:145−155,1996)を用いて同定したペプチドを、図8Aおよび8B、ならびに表XLVにさらに示す。
【0120】
(表II:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA A1に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0121】
【表2】
(表III:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA A 0201に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0122】
【表3】
(表IV:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA A 0205に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0123】
【表4】
(表V:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA A24に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0124】
【表5】
(表VI:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA A3に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0125】
【表6】
(表VII:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA A68.1に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0126】
【表7】
(表VIII:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA A 1101に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0127】
【表8】
(表IX:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA A 3101に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0128】
【表9】
(表X:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA A 3302に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0129】
【表10】
(表XI:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA B14に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0130】
【表11】
(表XII:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA B40に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0131】
【表12】
(表XIII:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA B60に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0132】
【表13】
(表XIV:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA B61に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0133】
【表14】
(表XV:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA B62に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0134】
【表15】
(表XVI:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA B7に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0135】
【表16】
(表XVII:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA B8に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0136】
【表17】
(表XVIII:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA B 2702に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0137】
【表18】
(表XIX:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA B 2705に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0138】
【表19】
(表XX:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA B 3501に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0139】
【表20】
(表XXI:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA B 3701に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0140】
【表21】
(表XXII:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA B 3801に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0141】
【表22】
(表XXIII:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA B 3901に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0142】
【表23】
(表XXIV:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA B 3902に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0143】
【表24】
(表XXV:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA B 4403に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0144】
【表25】
(表XXVI:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA B 5101に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0145】
【表26】
(表XXVII:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA B 5102に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0146】
【表27】
(表XXVIII:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA B 5201に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0147】
【表28】
(表XXIX:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA B 5801に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0148】
【表29】
(表XXX:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA CW0301に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0149】
【表30】
(表XXXI:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA CW0401に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0150】
【表31】
(表XXXII:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA CW0602に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0151】
【表32】
(表XXXIII:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA CW0702に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0152】
【表33】
(表XXXIV:ヒトWT1ペプチドのマウスMHC クラスI Dbに対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0153】
【表34】
(表XXXV:ヒトWT1ペプチドのマウスMHC クラスI Ddに対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0154】
【表35】
(表XXXVI:ヒトWT1ペプチドのマウスMHC クラスI Kbに対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0155】
【表36】
(表XXXVII:ヒトWT1ペプチドのマウスMHC クラスI Kdに対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0156】
【表37】
(表XXXVIII:ヒトWT1ペプチドのマウスMHC クラスI Kkに対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0157】
【表38】
(表XXXIX:ヒトWT1ペプチドのマウスMHC クラスI Ldに対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0158】
【表39】
(表XL:ヒトWT1ペプチドのウシHLA A20に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0159】
【表40】
(表XLI:マウスWT1ペプチドのマウスMHC クラスI A 0201に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0160】
【表41】
(表XLII:マウスWT1ペプチドのマウスMHC クラスI Dbに対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0161】
【表42】
(表XLIII:マウスWT1ペプチドのマウスMHC クラスI Kbに対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0162】
【表43】
(表XLIV:マウスWT1ペプチドのマウスMHC クラスI Kdに対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0163】
【表44】
(表XLV:ヘルパーT細胞応答を誘発し得るヒトWT1ペプチドについての、T部位ペプチド結合予測分析の結果)
【0164】
【表45】
特定のCTLペプチド(表XLVIに示す)を、さらなる研究のために選択した。表XLVI中に各ペプチドについて、BIMAS HLAペプチド結合予測分析を用いて得られたスコアを、提供する。
【0165】
(表XLVI:WT1ペプチド配列およびHLAペプチド結合予測)
【0166】
【表46】
C57B1/6マウスMHCに結合するペプチドを、Ljunggrenら、Nature 346:476−480,1990に記載されるように、白血病細胞株RMA−Sを用いて確認した。簡単には、RMA−S細胞を、1%FCSを補充した完全培地中で26℃にて7時間培養した。合計106のRMA−S細胞を、24ウェルプレートの各ウェ
ルに添加し、そして単独か、または指定したペプチド(25μg/ml)と共にのいずれかで26℃にて16時間インキュベートし、そして完全培地中で37℃にてさらに3時間インキュベートした。次いで、細胞を3度洗浄し、そしてフルオレセインイソチオシアネート結合体化抗Db抗体または抗Kb抗体(PharMingen,San Diego,CA)で染色した。標識した細胞を2度洗浄し、再懸濁し、そして1%パラホルムアルデヒドを有する500μlのPBS中で固定し、そしてフローサイトメーター(Becton−Dickinson FACSCalibur(登録商標))において蛍光強度について分析した。RMA−S細胞の表面上でのDbまたはKb分子の増加の割合を、培地単独でインキュベートした細胞の蛍光強度と比較した、ペプチドと共にインキュベートした細胞の平均蛍光強度の増加により測定した。
【0167】
マウスをマウスクラスI MHCに結合し得るペプチドで免疫した。免疫の後、脾臓細胞をインビトロで刺激し、そしてWT1ペプチドと共にインキュベートした標的を溶解す
る能力について試験した。CTLを、標準的なクロム放出アッセイ(Chenら、Cancer Res.54:1065−1070,1994)で評価した。106の標的細胞
を37℃にて150μCiのナトリウム51Crと共に90分間、特定のペプチドの存在下または非存在下でインキュベートした。細胞を3回洗浄し、そして5%ウシ胎仔血清を有するRPMI中に再懸濁した。このアッセイのために、104の51Cr標識化標的細胞を
、U底96ウェルプレートにおいて200μlの最終容量で異なる濃度のエフェクター細胞と共にインキュベートした。上清を、37℃にて4〜7時間後に取り除き、そして特異的溶解の%を、以下の式により決定した:
比溶解の割合=100×(実験の放出−自発的放出)(最大の放出−自発的放出)。
【0168】
表XLVIIに示される結果は、いくつかのWT1ペプチドが、CTLを生成するために不可欠であるクラスI MHC分子に結合し得ることを示す。さらに、このペプチドのいくつかは、クロム放出アッセイを用いて決定されるように、ペプチド特異的CTL(図9Aおよび9B)を誘発し得た。CTLペプチドである、p10−18ヒト、p136−144ヒト、p136−144マウスおよびp235−243に対する免疫の後、ペプチド特異的CTL株を産生し、そしてクローンを樹立した。これらの結果は、ペプチド特異的CTLがWT1を発現する悪性細胞を死滅させ得ることを示す。
【0169】
(表XLVII:WT1 CTLペプチドのマウスB6クラスI抗原に対する結合)
【0170】
【表47】
(実施例5:マウスにおいてWT1特異的CTLを誘発するためのWT1ポリペプチドの使用)
本実施例は、WT1陽性腫瘍細胞株を死滅させ得るCTL免疫を誘発するための、代表的なWT1ポリペプチドの能力を示す。
【0171】
クラスI MHCおよびクラスII MHCに結合するために適切なモチーフを有するペプチドである、p117−139を、TSITESおよびBIMAS
HLAペプチド結合予測分析を用いて上記のように同定した。マウスを、実施例3に記載されるように免疫した。免疫の後、脾臓細胞をインビトロで刺激し、そしてWT1ペプチド、ならびにWT1陽性腫瘍細胞および陰性腫瘍細胞と共にインキュベートした標的を溶解する能力について試験した。CTLを、標準的なクロム放出アッセイで評価した。図10A〜10Dに示されるこの結果は、P117が、WT1陽性腫瘍細胞を死滅させ得るWT1特異的CTLを誘発し得るが、WT1陰性細胞の死滅は観察されなかったことを示す。これらの結果は、ペプチド特異的CTLが、実際にWT1を発現する悪性細胞を死滅
させること、およびワクチンおよびT細胞治療が、WT1を発現する悪性腫瘍に対して有効であることを実証する。
【0172】
類似の免疫を、9マーのクラスI MHC結合ペプチドである、p136−144、p225−233、p235−243、ならびに23マーペプチドである、p117−139を用いて行った。免疫の後、脾臓細胞をインビトロで4つのペプチドの各々を用いて刺激し、そしてWT1ペプチドと共にインキュベートした標的を溶解する能力について試験した。CTLは、p136−144、p235−243、およびp117−139に特異的に生成されたが、p225−233については生成されなかった。p235−243およびp117−139についてのCTLデータを、図11Aおよび図11Bに示す。ペプチドp136−144およびp225−233についてのデータは示さない。
【0173】
CTL溶解は、標的WT1ペプチドが、腫瘍細胞クラスI MHC分子に関連して、内因的にプロセスおよび提示されることを要求する。上記のWT1ペプチド特異的CTLを、WT1陽性腫瘍細胞株 対 WT1陰性腫瘍細胞株を溶解する能力について試験した。p235−243に特異的なCTLは、p235−243ペプチドともにインキュベートした標的を溶解したが、WT1タンパク質を発現した細胞株を溶解することに失敗した(図11A)。著しく対照的に、p117−139に特異的なCTLは、p117−139ペプチドと共にインキュベートした標的を溶解し、そしてWT1を発現する悪性細胞もまた溶解した(図11B)。陰性コントロールとして、p117−139に特異的なCTLは、WT1陰性EL−4(本明細書中でE10ともいわれる)を溶解しなかった。
【0174】
WT1特異的溶解の特異性を、非放射性標的阻害によって確認した(図12A〜12B)。エフェクター細胞を、種々のエフェクター:標的比で、96ウェルU底プレートにプレートした。10倍過剰(放射性標的と比べて)の51Cr標識を有さない示されたペプチドをコートした標的を、添加した。最終的に、1ウェルあたり104の51Cr標識化標的
細胞を添加し、そしてプレートを37℃にて4時間インキュベートした。1ウェルあたりの総容量は、200μlであった。
【0175】
p117−139特異的CTLによるTRAMP−Cの溶解を、関連性のあるペプチドp117−139と共にインキュベートしたEL−4によって、58%〜36%をブロックしたが、無関係なペプチドと共にインキュベートしたEL−4ではブロックしなかった(図12A)。同様に、BLK−SV40の溶解は、関連性のあるペプチドp117−139と共にインキュベートしたEL−4によって、18%〜0%をブロックした(図12B)。結果は、WT1ペプチド特異的CTLが、プロセスしたWT1の認識により、悪性の細胞を特異的に死滅させることを確認する。
【0176】
推定のCTLモチーフを有するいくつかのセグメントは、p117−139内に含まれる。CTLエピトープの正確な配列を決定するために、p117−139内の全ての潜在的な9マーペプチドを合成した(表XLVIII)。これらのペプチドの2つ(p126−134およびp130−138)は、H−2bクラスI分子に結合することを示した(
表XLVIII)。p117−139での免疫により生成したCTLは、p126−134およびp130−138と共にインキュベートした標的を溶解したが、p117−139内の他の9マーペプチドでは溶解しなかった(図13A)。
【0177】
p117−139特異的CTL株を、p126−134またはp130−138のいずれかで再刺激した。p126−134またはp130−138で再刺激した後、両方のT細胞株は、ペプチド比溶解を実証したが、p130−138特異的CTLのみが、WT1陽性腫瘍細胞株の溶解を示した(図13Bおよび13C)。従って、p130−138は、天然でプロセスされるエピトープであるように思われる。
【0178】
(表XLVIII:p117−139内のWT1 CTL 9マーペプチドのマウスB6クラスI抗原に対する結合)
【0179】
【表48】
(実施例6:マウス腫瘍細胞株におけるWT1特異的mRNAの同定)
本実施例は、細胞および細胞株においてWT1特異的mRNAを検出するための、RT−PCRの使用を例示する。
【0180】
単核細胞を、密度勾配遠心分離により単離し、そして直ちに凍結し、そしてWT1特異的mRNAの存在についてRT−PCRにより分析するまで、−80℃で保存した。RT−PCRを、一般に、Fraizerら、Blood 86:4704−4706,1995に記載されるように行った。総RNAを、標準的な手順に従って107の細胞から抽
出した。RNAペレットを、25μLジエチルピロカルボネート処理した水に再懸濁し、そして逆転写に直接用いた。ジンクフィンガー領域(エキソン7〜10)を、330bpのマウスcDNAとしてPCRにより増幅した。増幅を、熱サイクラーにおいて、PCRの1回、または、必要な場合、連続した2回の間、行った。50μlの総反応容量において、AmpliTaq DNA Polymerase(Perkin Elmer C
etus,Norwalk,CT)、2.5mM MgCl2、および20pmolの各
プライマーを用いた。PCR産物の20μLのアリコートを、臭化エチジウムで染色した2%アガロースゲル上で電気泳動した。このゲルを、Polaroidフィルム(Polaroid 667,Polaroid Ltd.Hertfordshire,England)で写真撮影した。KwokおよびHiguchi、Nature 339:237−238,1989の推奨に従って、相互汚染に対する予防策を取った。陰性コントロールは、各実験において、cDNAの代わりに水を含有するcDNA試薬およびPCR試薬混合物を含んだ。偽陰性を避けるために、インタクトなRNAおよび適切なcDNA産生の存在を、各サンプルについて、β−アクチンプライマーを用いるコントロールPCRによって評価した。これらのプライマーで増幅されなかったサンプルを、分析から除いた。
【0181】
マウス細胞株における、WT1の増幅のためのプライマーは、以下であった:P115:1458−1478:5’ CCC AGG CTG CAA TAA GAG ATA 3’(順方向プライマー;配列番号21);およびP116:1767−1787:5’ ATG TTG TGA TGG CGG ACC AAT 3’(逆方向プライマー;配列番号22)(Inoueら、Blood 88:2267−2278,1996;Fraizerら、Blood
86:4704−4706,1995を参照のこと)。
【0182】
コントロール反応に用いたβアクチンプライマーは、以下であった:5’ GTG GGG CGC CCC AGG CAC CA 3’(センスプライマー;配列番号23);および5’ GTC CTT AAT GTC ACG CAC GAT TTC 3’(アンチセンスプライマー;配列番号24)。
【0183】
ヒトWT1を増幅するのに使用するためのプライマーは、以下を含む:P117:954−974:5’ GGC ATC TGA GAC CAG TGA
GAA 3’(配列番号25);およびP118:1434−1414:5’
GAG AGT CAG ACT TGA AAG CAGT 3’(配列番号5)。ネスティッドRT−PCRについて、プライマーは、以下であり得る:P119:1023−1043:5’ GCT GTC CCA CTT ACA GAT GCA 3’(配列番号26);およびP120:1345−1365:5’ TCA AAG CGC CAG CTG GAG TTT 3’(配列番号27)。
【0184】
表XLVIIIは、マウス腫瘍細胞株のWT1 PCR分析の結果を示す。表IVにおいて、(+++)は、RT−PCRの第1工程における、強いWT1 PCR増幅産物を示し、(++)は、WT1 RT−PCRの第1工程により検出可能であるWT1増幅産物を示し、(+)は、WT1 RT PCRの第2工程においてのみ検出可能である、産物を示し、そして(−)は、WT1 PCR陰性を示す。
【0185】
(表XLIX:マウス腫瘍細胞株におけるWT1 mRNAの検出)
【0186】
【表49】
前述から、本発明の特定の実施態様は、例示の目的のために本明細書中に記載されたが、種々の改変は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、なされ得ることが理解される。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲による場合を除き、限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0187】
【図1】図1は、マウス(MO)およびヒト(HU)のWT1タンパク質配列(それぞれ配列番号320および319)の比較を示す。
【図2】図2は、血液学的な悪性疾患(AML)を伴う患者におけるWT1特異的抗体の検出を図示するウエスタンブロットである。レーン1は、分子量マーカーを示す;レーン2は、陽性コントロール(WT1特異的抗体と共に免疫沈降されたWT1陽性ヒト白血病細胞株)を示す;レーン3は、陰性コントロール(マウス血清と共に免疫沈降されたWT1陽性細胞株)を示す;そしてレーン4は、AMLを伴う患者の血清と共に免疫沈降されたWT1陽性細胞株を示す。レーン2〜4に関して、免疫沈降は、ゲル電気泳動によって分離され、そしてWT1特異的抗体によってプローブされた。
【図3】図3は、TRAMP−C(WT1陽性腫瘍細胞株)を用いて免疫されたB6マウスにおけるWT1特異的抗体応答の検出を図示するウエスタンブロットである。レーン1、3および5は、分子量マーカーを示し、そしてレーン2、4および6は、WT1特異的陽性コントロール(N180、Santa Cruz Biotechnology、WT1タンパク質のN末端領域の180アミノ酸におよぶポリペプチド、ウエスタンブロット上で52kDに移動する)を示す。用いた一次抗体は、レーン2においてはWT180であり、レーン4においては免疫していないB6マウスの血清であり、そしてレーン6においては免疫したB6マウスの血清である。
【図4】図4は、代表的なWT1ペプチドを用いて免疫されたマウスにおけるWT1特異的抗体の検出を図示するウエスタンブロットである。レーン1、3および5は、分子量マーカーを示し、そしてレーン2、4および6は、WT1特異的陽性コントロール(N180、Santa Cruz Biotechnology、WT1タンパク質のN末端領域の180アミノ酸におよぶポリペプチド、ウエスタンブロット上で52kDに移動する)を示す。用いた一次抗体は、レーン2においてはWT180であり、レーン4においては免疫していないB6マウスの血清であり、そしてレーン6においては免疫したB6マウスの血清である。
【図5】図5A〜5Cは、代表的なWT1ペプチドを用いて免疫されたマウスにおける増殖性T細胞応答の刺激を図示するグラフである。チミジン取り込みアッセイを、表示されたように一つのT細胞株および二つの異なるクローンを用いて実施し、そして結果を、cpmとして表現した。X軸上に示すコントロールは、抗原なし(Agなし)およびB6/培地であり;用いられた抗原はヒトp6〜22(p1)、ヒトp117〜139(p2)またはヒトp244〜262(p3)であった。
【図6】図6Aおよび6Bは、代表的なWT1ペプチドを用いて免疫されたマウスにおける増殖性T細胞応答の刺激を図示するヒストグラムである。三回目の免疫の三週間後に、ワクチンAまたはワクチンBを接種したマウスの脾臓細胞を、培地のみ(培地)または脾臓細胞および培地(B6/抗原なし)、ペプチドp6〜22(p6)、p117〜139(p117)、p244〜262(p244)(ワクチンA;図6A)またはp287〜301(p287)、p299〜313(p299)、p421〜435(p421)(ワクチンB;図6B)を適用したB6脾臓細胞および無関係の25μg/mlのコントロールペプチド(無関係のペプチド)を適用した脾臓細胞とともに培養し、そして(3H)チミジン取り込みによって96時間後に増殖についてアッセイした。棒は、コントロール(抗原を伴わないB6脾臓細胞)の平均値によって除算した実験ウェルの平均値として計算された刺激指数(SI)を示す。
【図7】図7A〜7Dは、p117〜139およびp6〜22に特異的な増殖性T細胞株およびクローンの産生を図示したヒストグラムである。インビボの免疫に続いて、最初のインビトロでの三回の刺激(IVS)を、それぞれワクチンAまたはBの三つのペプチドすべてを用いて実施した。引き続くIVSを、二つの関連したペプチドp117〜139およびp6〜22のみを用いた単一ペプチド刺激として実施した。クローンを、示すようにp6〜22特異的T細胞株およびp117〜139特異的T細胞株の両方から誘導した。T細胞を、培地のみ(培地)または脾臓細胞および培地(B6/抗原なし)、25μg/mlのペプチドp6〜22(p6)、p117〜139(p117)または無関係のコントロールペプチド(無関係のペプチド)を適用したB6脾臓細胞を用いて培養し、そして(3H)チミジン取り込みによって96時間後に増殖についてアッセイした。棒は、コントロール(抗原を伴わないB6脾臓細胞)の平均値によって除算された実験ウェルの平均値として計算された刺激指数(SI)を示す。
【図8A】図8Aおよび8Bは、Th応答を誘発する能力を有するペプチドについてヒトWT1(配列番号319)のTSITES分析の結果を示す。「A」と示された領域は、ブロックのAMPHI中間点であり、「R」は、Rothbard/Taylorモチーフにマッチする残基を示し、「D」は、IAdモチーフにマッチする残基を示し、そして「d」は、IEdモチーフにマッチする残基を示す。
【図8B】図8Aおよび8Bは、Th応答を誘発する能力を有するペプチドについてヒトWT1(配列番号319)のTSITES分析の結果を示す。「A」と示された領域は、ブロックのAMPHI中間点であり、「R」は、Rothbard/Taylorモチーフにマッチする残基を示し、「D」は、IAdモチーフにマッチする残基を示し、そして「d」は、IEdモチーフにマッチする残基を示す。
【図9】図9Aおよび9Bは、WT1ペプチドを用いて免疫されたマウスにおけるWT1ペプチド特異的CTLの誘発を図示するグラフである。図9Aは、同種異系細胞株による標的細胞の溶解を図示し、そして図9Bは、ペプチドでコートされた細胞株の溶解を示す。各々の場合において、%溶解(標準的クロム放出アッセイによって決定されたような)は、三つの示したエフェクター:標的の比において示される。結果は、リンパ腫細胞(LSTRAおよびE10)ならびにE10+p235〜243(E10+P235)について提供される。E10細胞はまた、本明細書中でEL−4細胞とも呼ばれる。
【図10A】図10Aは、WT1ペプチドP117を用いたB6マウスのワクチン接種に引き続き、WT1陽性腫瘍細胞株を殺傷するがWT1陰性細胞株を殺傷しないWT1ペプチド特異的CTLの誘発を図示するグラフである。図10Aは、免疫しないB6マウスのT細胞がWT1陽性腫瘍細胞株を殺傷しないことを図示する。各々の場合において、%溶解(標準的クロム放出アッセイによって決定されたような)は、三つの示したエフェクター:標的の比において示される。結果は、リンパ腫細胞(E10)、前立腺ガン細胞(TRAMP−C)、形質転換された繊維芽細胞株(BLK−SV40)ならびにE10+P117について提供される。
【図10B】図10Bは、WT1ペプチドP117を用いたB6マウスのワクチン接種に引き続き、WT1陽性腫瘍細胞株を殺傷するがWT1陰性細胞株を殺傷しないWT1ペプチド特異的CTLの誘発を図示するグラフである。図10Bは、同種異系細胞株による標的細胞の溶解を図示する。各々の場合において、%溶解(標準的クロム放出アッセイによって決定されたような)は、三つの示したエフェクター:標的の比において示される。結果は、リンパ腫細胞(E10)、前立腺ガン細胞(TRAMP−C)、形質転換された繊維芽細胞株(BLK−SV40)ならびにE10+P117について提供される。
【図10C】図10Cは、WT1ペプチドP117を用いたB6マウスのワクチン接種に引き続き、WT1陽性腫瘍細胞株を殺傷するがWT1陰性細胞株を殺傷しないWT1ペプチド特異的CTLの誘発を図示するグラフである。図10Cは、異なる二つの実験におけるWT1陰性細胞株と比べたWT1陽性腫瘍細胞株の溶解を実証する。さらに、図10Cは、ペプチドにコートされた細胞株(関連したWT1ペプチドP117によってコートされたWT1陰性細胞株E10)の溶解を示す。各々の場合において、%溶解(標準的クロム放出アッセイによって決定されたような)は、三つの示したエフェクター:標的の比において示される。結果は、リンパ腫細胞(E10)、前立腺ガン細胞(TRAMP−C)、形質転換された繊維芽細胞株(BLK−SV40)ならびにE10+P117について提供される。
【図10D】図10Dは、WT1ペプチドP117を用いたB6マウスのワクチン接種に引き続き、WT1陽性腫瘍細胞株を殺傷するがWT1陰性細胞株を殺傷しないWT1ペプチド特異的CTLの誘発を図示するグラフである。図10Dは、異なる二つの実験におけるWT1陰性細胞株と比べたWT1陽性腫瘍細胞株の溶解を実証する。さらに、図10Dは、ペプチドにコートされた細胞株(関連したWT1ペプチドP117によってコートされたWT1陰性細胞株E10)の溶解を示す。各々の場合において、%溶解(標準的クロム放出アッセイによって決定されたような)は、三つの示したエフェクター:標的の比において示される。結果は、リンパ腫細胞(E10)、前立腺ガン細胞(TRAMP−C)、形質転換された繊維芽細胞株(BLK−SV40)ならびにE10+P117について提供される。
【図11】図11Aおよび11Bは、WT1陽性腫瘍細胞を溶解する代表的なペプチドP117〜139特異的CTLの能力を図示したヒストグラムである。三回目の免疫の三週間後に、ペプチドp235〜243またはp117〜139を接種したマウスの脾臓細胞を、関連するペプチドを用いてインビトロにおいて刺激し、そしてWT1ペプチドならびにWT1陽性および陰性腫瘍細胞と共にインキュベートされた標的を溶解する能力について試験した。棒は、25:1のE:T比で三連で実施されたクロム放出アッセイにおける平均%比溶解を示す。図11Aは、示すように、WT1陰性細胞株EL−4(EL−4、WT1陰性);関連する(免疫ならびに再刺激のために用いた)ペプチドp235〜243(EL−4+p235)を適用したEL−4;関連するペプチドp117〜139を適用したEL−4(EL−4+p117)、p126〜134を適用したEL−4(EL−4+p126)またはp130〜138を適用したEL−4(EL−4+p130)ならびにWT1陽性腫瘍細胞BLK−SV40(BLK−SV40、WT1陽性)およびTRAMP−C(TRAMP−C、WT1陽性)に対するp235〜243特異的T細胞株の細胞傷害性の活性を示す。図11Bは、示すように、EL−4;関連するペプチドP117〜139を適用したEL−4(EL−4+p117)および無関連のペプチドp123〜131を適用したEL−4(EL−4+p123)、またはp128〜136を適用したEL−4(EL−4+p128);BLK−SV40およびTRAMP−Cに対するp117〜139特異的T細胞株の細胞傷害性の活性を示す。
【図12】図12Aおよび12Bは、非放射性標的阻害によって実証されたような、WT1陽性腫瘍細胞の溶解の特異性を図示するヒストグラムである。棒は、25:1のE:T比で三連で実施されたクロム放出アッセイにおける平均%比溶解を示す。図12Aは、示すように、WT1陰性細胞株EL−4(EL−4、WT1陰性);WT1陽性腫瘍細胞株TRAMP−C(TRAMP−C、WT1陽性);51Cr標識をしない関連するペプチドp117〜139を適用した10倍過剰(放射性標的と比べて)のEL−4細胞とともにインキュベートされたTRAMP−C細胞(TRAMP−C+p117非放射性標的)および51Cr標識をしない無関連のペプチドを適用したEL−4細胞とともにインキュベートされたTRAMP−C細胞(TRAMP−C+無関係の非放射性標的)に対するp117〜139特異的T細胞株の細胞傷害性の活性を示す。図12Bは、示すように、WT1陰性細胞株EL−4(EL−4、WT1陰性);WT1陽性腫瘍細胞株BLK−SV40(BLK−SV40、WT1陽性);関連する非放射性標的とともにインキュベートされたBLK−SV40細胞(BLK−SV40+p117非放射性標的)および無関連の非放射性標的とともにインキュベートされたBLK−SV40細胞(BLK−SV40+無関係の非放射性標的)に対するp117〜139特異的T細胞株の細胞傷害性の活性を示す。
【図13】図13A〜13Cは、p117〜139内の9マーCTLエピトープの評価を示すヒストグラムである。p117〜139腫瘍特異的CTL株を、アミノ酸117〜139内に適切なH−2bクラスI結合モチーフを含むかまたは欠如するペプチドに対して試験し、続いてp126〜134またはp130〜138を用いて再刺激した。棒は、25:1のE:T比で三連で実施されたクロム放出アッセイにおける平均%比溶解を示す。図13Aは、WT1陰性細胞株EL−4(EL−4、WT1陰性)およびペプチドp117〜139を適用したEL−4細胞(EL−4+p117)、ペプチドp119〜127を適用したEL−4細胞(EL−4+p119)、ペプチドp120〜128を適用したEL−4細胞(EL−4+p120)、ペプチドp123〜131を適用したEL−4細胞(EL−4+p123)、ペプチドp126〜134を適用したEL−4細胞(EL−4+p126)、ペプチドp128〜136を適用したEL−4細胞(EL−4+p128)およびペプチドp130〜138を適用したEL−4細胞(EL−4+p130)に対するp117〜139特異的T細胞株の細胞傷害性の活性を示す。図13Bは、WT1陰性細胞株EL−4、p117〜139を適用したEL−4細胞(EL−4+p117)、p126〜134を適用したEL−4細胞(EL−4+p126)およびWT1陽性腫瘍細胞株TRAMP−Cに対してp126〜134を用いた再刺激後のCTL株の細胞傷害性の活性を示す。図13Cは、EL−4、p117〜139を適用したEL−4細胞(EL−4+p117)、p130〜138を適用したEL−4細胞(EL−4+p130)およびWT1陽性腫瘍細胞株TRAMP−Cに対してp130〜138を用いた再刺激後のCTL株の細胞傷害性の活性を示す。
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、一般に悪性疾患(例えば、白血病および癌)の免疫療法に関する。より詳細には、本発明は、WT1に対する免疫応答を惹起または増強するための組成物、ならびに悪性疾患を予防および/または処置するためのそのような組成物の使用に関連する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
癌および白血病は、米国内および世界中で重大な健康問題である。そのような疾患の検出および処置における前進がなされてきたが、ワクチンまたは癌および白血病の予防または処置のための他の普遍的に首尾良い方法は、現在のところ利用可能ではない。疾患の管理は、現在のところ、早期診断および攻撃的な処置の組合せに依存し、これは、種々の処置(例えば、手術、放射線治療、化学療法およびホルモン療法)のうちの1つ以上を含み得る。特定の癌のための処置方針は、頻繁には、特定の腫瘍マーカーの分析を含む種々の予後変数に基づいて選択される。しかし、確立されたマーカーの使用は、頻繁には、解釈するのが困難な結果を導き、そして多くの癌患者において高い致死率が観察され続けている。
【0003】
免疫療法は、癌および白血病の処置および生存率を実質的に改善する能力を有する。最近のデータによって、白血病は、骨髄移植の状況下での免疫療法(例えば、ドナーリンパ球注入)によって治癒され得ることが実証される。そのような治療は、腫瘍関連抗原(TAA)に対する免疫応答の惹起または増強を含み得る。しかし、現在までのところ、比較的わずかなTAAが既知であり、そしてそのような抗原に対する免疫応答の惹起は、まれに例外が存在するが、治療的に有益であるとは示されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、白血病および癌の予防および治療のための改善された方法についての当該分野における必要性が存在する。本発明は、これらの必要性を満たし、そしてさらに他の関連する利点を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
簡潔に述べると、本発明は、疾患(例えば、白血病および癌)の診断および治療のための組成物および方法を提供する。1つの局面において、本発明は、ネイティブのWT1の免疫原性部分またはその改変体(これは、抗原特異的抗血清および/またはT細胞株もしくはクローンと反応するその改変体の能力が実質的に減少されないように、1つ以上の置換、欠失、付加および/または挿入で異なる)を含むポリペプチドを提供する。特定の実施態様において、このポリペプチドは、ネイティブWT1ポリペプチドの16を超えない連続したアミノ酸残基を含む。他の実施態様において、このポリペプチドは、ネイティブのWT1ポリペプチドのアミノ酸残基1〜174の免疫原性部分またはその改変体を含み、ここでこのポリペプチドは、ネイティブのWT1ポリペプチドのアミノ酸175〜449内に存在する16を超えない連続するアミノ酸残基を含む。この免疫原性部分は、好ましくはMHCクラスI分子および/またはMHCクラスII分子に結合する。特定の実施態様において、このポリペプチドは、以下からなる群から選択される配列を含む:(a)表II〜XLVIのうちの任意の1つ以上において示される配列、(b)前述の配列の改変体(これは、抗原特異的抗血清および/またはT細胞株もしくはクローンと反応するそ
の改変体の能力が実質的に減少されないように、1つ以上の置換、欠失、付加および/または挿入で異なる)、および(c)上記のポリペプチドの模倣物(抗原特異的抗血清および/またはT細胞株もしくはクローンと反応するその模倣物の能力が実質的に減少されないような)。
【0006】
他の実施態様において、このポリペプチドは、以下からなる群から選択される配列を含む:
【0007】
【化1】
(b)前述の配列の改変体(これは、抗原特異的抗血清および/またはT細胞株もしくはクローンと反応するその改変体の能力が実質的に減少されないように、1つ以上の置換、欠失、付加および/または挿入で異なる)、および(c)上記のポリペプチドの模倣物(抗原特異的抗血清および/またはT細胞株もしくはクローンと反応するその模倣物の能力が実質的に減少されないような)。模倣物は、1つ以上のアミノ酸模倣物と組み合わせてアミノ酸を含み得るか、または完全に非ペプチド模倣物であり得る。
【0008】
さらなる局面において、本発明は、WT1タンパク質の免疫原性部分の改変体を含むポリペプチドを提供し、ここでこの改変体は、抗原特異的抗血清および/またはT細胞株もしくはクローンと反応するその改変体の能力がネイティブのWT1タンパク質と比較して増強されるように、その免疫原性部分内の1〜3アミノ酸位置での置換に起因して、その免疫原性部分とは異なる。
【0009】
本発明はさらに、上記のWT1ポリペプチドをコードするWT1ポリヌクレオチドを提供する。
【0010】
他の局面において、本発明は、薬学的組成物およびワクチンを提供する。薬学的組成物は、薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤と組み合わせて、上記のポリペプチドもしくは模倣物および/または以下のうちの1つ以上を含み得る:(i)WT1ポリヌクレオチド;(ii)WT1ポリペプチドに特異的に結合するその抗体または抗原結合フラグメント;(iii)WT1ポリペプチドと特異的に反応するT細胞、あるいは(iv)WT1ポリペプチドを発現する抗原提示細胞。ワクチンは、上記のポリペプチドおよび/または以下のうちの1つ以上を含む:(i)WT1ポリヌクレオチド;(ii)WT1ポリペプチドを発現する抗原提示細胞、または(iii)抗イディオタイプ抗体、および非特異的免疫応答エンハンサー。特定の実施態様において、ネイティブのWT1ポリペプチドの23未満の連続するアミノ酸残基、好ましくは17未満のアミノ酸残基が、そのような薬学的組成物およびワクチン内に使用されるWT1ポリペプチド内に存在する。免疫応答エンハンサーは、アジュバントであり得る。好ましくは、免疫応答エンハンサーは、T細胞応答を増強する。
【0011】
本発明はさらに、患者に上記の薬学的組成物またはワクチンを投与することを含む、患者において免疫応答を増強または誘導するための方法を提供する。特定の実施態様において、患者はヒトである。
【0012】
本発明はさらに、患者に上記の薬学的組成物またはワクチンを投与することを含む、患者において悪性疾患の発達を阻害するための方法を提供する。悪性疾患としては、白血病(例えば、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病および慢性骨髄性白血病)および癌(例えば、乳癌、肺癌、甲状腺癌もしくは胃腸癌、または黒色腫)が挙げられるがそれらに限定されない。患者は、悪性疾患に罹患していてよいが、罹患している必要はなく、そしてこの薬学的組成物またはワクチンの投与は、そのような疾患の発病(onset)を阻害し得るか、または既存の疾患の進行および/もしくは転移を阻害し得る。
【0013】
本発明はさらに、他の局面において、骨髄および/もしくは末梢血またはその画分からWT1を発現する細胞を除去するための方法を提供する。この方法は、骨髄、末梢血または骨髄もしくは末梢血の画分と、WT1ポリペプチドと特異的に反応するT細胞とを接触させる工程を含み、ここでこの接触させる工程は、骨髄、末梢血または画分中の骨髄性細胞またはリンパ性細胞の数の10%未満、好ましくは5%未満およびより好ましくは1%未満までのWT1陽性細胞の除去を可能にするに十分な条件および時間で行われる。骨髄、末梢血および画分は、WT1発現と関連する疾患に罹患する患者から得られ得るか、またはそのような疾患に罹患しないヒトもしくは非ヒト哺乳動物から得られ得る。
【0014】
関連する局面において、本発明は、上記のように調製された骨髄、末梢血または骨髄もしくは末梢血の画分を患者に投与する工程を含む、患者における悪性疾患の発達を阻害するための方法を提供する。そのような骨髄、末梢血または画分は、自家(autologous)であり得るか、または関連するもしくは関連しないヒトもしくは非ヒト動物(例えば、同系または同種異系)に由来し得る。
【0015】
他の局面において、本発明は、T細胞の刺激(または、プライミング(priming))および/または拡大(expansion)を可能にするに十分な条件下および時間でWT1ポリペプチドとT細胞とを接触させることを含む、T細胞刺激および/または拡大のための方法を提供する。そのようなT細胞は、自家、同種異系、同系または関連しないWT1特異的細胞であり得、そしてインビトロまたはインビボで刺激され得る。特定の実施態様において、拡大されたT細胞は、骨髄、末梢血または骨髄もしくは末梢血の画分内に存在し、そしてクローン性(clonal)であり得る(が、その必要はない)。特定の実施態様において、T細胞は、刺激および/または拡大の間に哺乳動物中に存在し得る。WT1特異的T細胞は、例えば、ドナーリンパ球注入において使用され得る。
【0016】
関連する局面において、上記で調製されたT細胞を患者に投与する工程を含む、患者における悪性疾患の発達を阻害するための方法が提供される。そのようなT細胞は、特定の実施態様において、自家、同系または同種異系であり得る。
【0017】
本発明はさらに、他の局面において、患者におけるWT1発現と関連する悪性疾患のための免疫または治療の有効性をモニタリングするための方法を提供する。そのような方法は、患者における抗体、CD4+T細胞および/またはCD8+T細胞応答をモニタリングすることに基づく。特定のそのような局面において、方法は、以下の工程を包含し得る:(a)以下(i)WT1ポリペプチド;(ii)WT1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または(iii)WT1ポリペプチドを発現する抗原提示細胞、のうちの1つ以上とともに第1の生物学的サンプルをインキュベートする工程であって、ここでこの第1の生物学的サンプルは、治療または免疫の前に患者から得られ、そしてここでこのインキュベーションは、免疫複合体が形成するのを可能にする条件下および時間で行われる、工程;(b)WT1ポリペプチドと、WT1ポリペプチドに特異的に結合する生物学的サンプルにおける抗体との間に形成される免疫複合体を検出する工程;(c)治療または免疫の後に、同じ患者から得られる第2の生物学的サンプルを用いて、工程(a)およ
び(b)を反復する工程;ならびに(d)第1および第2の生物学的サンプルにおいて検出される免疫複合体の数を比較する工程、およびそれから、この患者におけるこの治療または免疫の有効性をモニタリングする工程。
【0018】
上記の方法の特定の実施態様において、この検出する工程は以下を含む:(a)この免疫複合体に結合し得る検出試薬とともにこの免疫複合体をインキュベートする工程であって、ここでこの検出試薬はレポーター基を含む、工程、(b)非結合検出試薬を除去する工程、および(c)このレポーター基の存在または非存在を検出する工程。この検出試薬は、例えば、WT1ポリペプチドに特異的に結合する抗体に結合し得る第2の抗体またはその抗原結合フラグメントまたは分子(例えば、プロテインA)を含み得る。他の実施態様において、レポーター基は、WT1ポリペプチドに結合し、そして検出する工程は、非結合WT1ポリペプチドを除去する工程、およびその後にこのレポーター基の存在または非存在を検出する工程を包含する。
【0019】
さらなる局面において、患者におけるWT1発現と関連する悪性疾患のための免疫または治療の有効性をモニタリングするための方法は、以下の工程を包含し得る:(a)以下(i)WT1ポリペプチド;(ii)WT1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または(iii)WT1ポリペプチドを発現する抗原提示細胞、のうちの1つ以上とともに第1の生物学的サンプルをインキュベートする工程であって、ここでこの第1の生物学的サンプルは、CD4+T細胞および/またはCD8+T細胞を含み、そして治療または免疫の前に患者から得られ、そしてここでこのインキュベーションは、T細胞の特異的な活性化、増殖および/または溶解を可能にするに十分な条件下および時間で行われる、工程;(b)T細胞の活性化、増殖および/または溶解の量を検出する工程;(c)CD4+および/またはCD8+T細胞を含む第2の生物学的サンプルを用いて、工程(a)および(b)を反復する工程であって、ここでこの第2の生物学的サンプルは、治療または免疫後に同じ患者から得られる、工程;ならびに(d)第1および第2の生物学的サンプル中のT細胞の活性化、増殖および/または溶解の量を比較する工程、およびそれからこの患者におけるこの治療または免疫の有効性をモニタリングする工程。
【0020】
本発明はさらに、患者におけるWT1発現と関連する悪性疾患の発達を阻害するための方法を提供する。この方法は、以下の工程を包含する:(a)以下(i)WT1ポリペプチド;(ii)WT1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または(iii)WT1ポリペプチドを発現する抗原提示細胞、のうちの1つ以上とともに、患者から単離されたCD4+および/またはCD8+T細胞を、そのT細胞が増殖するようにインキュベートする工程;ならびに(b)増殖されたT細胞の有効量をこの患者に投与する工程、およびそれからこの患者における悪性疾患の発達を阻害する工程。特定の実施態様において、T細胞をインキュベートする工程は、1回以上反復され得る。
【0021】
他の局面においては、本発明は、患者内でのWT1発現に関連する悪性疾患の発達を阻害するための方法を提供し、これは以下の工程を包含する:(a)患者から単離されたCD4+および/またはCD8+T細胞を一つ以上の(i)WT1ポリペプチド;(ii)WT1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または(iii)WT1ポリペプチドを発現する抗原提示細胞とともにインキュベートし、その結果このT細胞が増殖する工程;(b)増殖した一つ以上の細胞をクローニングする工程;および(c)患者に対してクローン化したT細胞の効果的な量を投与する工程。
【0022】
他の局面においては、方法が、患者内でのWT1発現に関連する悪性疾患の存在または非存在を決定するために提供され、これは以下の工程を包含する:(a)患者から単離されたCD4+および/またはCD8+T細胞を一つ以上の(i)WT1ポリペプチド;(ii)WT1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または(iii)WT1ポリペ
プチドを発現する抗原提示細胞とともにインキュベートする工程;および(b)T細胞の特異的な活性化の存在または非存在を検出し、それからWT1発現に関連する悪性疾患の存在または非存在を決定する工程。ある実施態様においては、検出の工程は、T細胞の増殖の存在または非存在を検出する工程を含む。
【0023】
さらなる局面においては、本発明は、患者内でのWT1発現に関連する悪性疾患の存在または非存在を決定するための方法を提供し、これは以下の工程を包含する:(a)患者から得られた生物学的なサンプルを一つ以上の(i)WT1ポリペプチド;(ii)WT1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または(iii)WT1ポリペプチドを発現する抗原提示細胞とともにインキュベートする工程であって、ここで、このインキュベーションは、免疫複合体が形成されるのを可能にするに十分な条件下でかつそれに十分な時間で行われる工程;および(b)WT1ポリペプチドとWT1ポリペプチドと特異的に結合する生物学的なサンプル中の抗体との間に形成される免疫複合体を検出し、それからWT1発現に関連する悪性疾患の存在または非存在を決定する工程。
【0024】
さらに、本発明は以下を提供する:
(項目1)ネイティブのWT1の免疫原性部分あるいは1以上の置換、欠失、付加および/または挿入において異なるその改変体を含む、ポリペプチドであって、このような改変により、該改変体のWT1特異的抗血清および/またはT細胞株もしくはクローンと反応する能力が実質的に減少しておらず、ここで該ポリペプチドは、ネイティブのWT1ポリペプチド内に存在する16以下の連続するアミノ酸残基を含む、ポリペプチド。
(項目2)前記免疫原性部分が、MHCクラスI分子に結合する、項目1に記載のポリペプチド。
(項目3)前記免疫原性部分が、MHCクラスII分子に結合する、項目1に記載のポリペプチド。
(項目4)項目1に記載のポリペプチドであって、該ポリペプチドが、以下:
(a)表II〜XLVIの1以上に列挙される配列;
(b)1以上の置換、欠失、付加および/または挿入において異なる該配列の改変体であって、このような改変により、該改変体の抗原特異的抗血清および/またはT細胞株もしくはクローンと反応する能力が実質的に減少されていない、改変体;ならびに
(c)該配列の模倣物であって、該模倣物の抗原特異的抗血清および/またはT細胞株もしくはクローンと反応する能力が実質的に減少されていない、模倣物、
からなる群より選択される配列を含む、ポリペプチド。
(項目5)項目1に記載のポリペプチドであって、該ポリペプチドが、以下:
(a)ALLPAVPSL(配列番号34)、GATLKGVAA(配列番号88)、CMTWNQMNL(配列番号49および258)、SCLESQPTI(配列番号199および296)、SCLESQPAI(配列番号198)、NLYQMTSQL(配列番号147および284)、ALLPAVSSL(配列番号35および255)、RMFPNAPYL(配列番号185および293);
(b)1以上の置換、欠失、付加および/または挿入において異なる該配列の改変体であって、このような改変により、該改変体の抗原特異的抗血清および/またはT細胞株もしくはクローンと反応する能力が実質的に減少されていない、改変体;ならびに
(c)該配列の模倣物であって、該模倣物の抗原特異的抗血清および/またはT細胞株もしくはクローンと反応する能力が実質的に減少されていない、模倣物、
からなる群より選択される配列を含む、ポリペプチド。
(項目6)前記ポリペプチドが、ネイティブのWT1ポリペプチドの4〜16の連続するアミノ酸を含む、項目1に記載のポリペプチド。
(項目7)前記ポリペプチドが、ネイティブのWT1ポリペプチドの8〜10の連続するアミノ酸を含む、項目1に記載のポリペプチド。
(項目8)ネイティブのWT1ポリペプチドの免疫原性部分あるいは1以上の置換、欠失
、付加および/または挿入において異なるその改変体のアミノ酸残基1〜174を含む、ポリペプチドであって、このような改変により、該改変体のWT1特異的T細胞株またはクローンと反応する能力が実質的に減少しておらず、ここで該ポリペプチドは、該ネイティブのWT1ポリペプチドのアミノ酸175〜449内に存在する16以下の連続するアミノ酸残基を含む、ポリペプチド。
(項目9)免疫原性部分内の1位のアミノ酸と3位のアミノ酸との間での置換において異なるWT1の免疫原性部分の改変体を含むポリペプチドであって、この置換により、該改変体のWT1特異的抗血清および/またはT細胞株もしくはクローンと反応する能力が、ネイティブのWT1に比べて増強されている、ポリペプチド。
(項目10)WT1ポリペプチドの免疫原性部分の模倣物であって、ここで少なくとも1つのアミノ酸残基がアミノ酸ではない化合物によって置換されており、このような置換により、該模倣物の抗原特異的抗血清および/またはT細胞株もしくはクローンと反応する能力が減少されていない、模倣物。
(項目11)項目1に記載のポリペプチドを、薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤と組み合わせて含む、薬学的組成物。
(項目12)前記ポリペプチドが、ネイティブのWT1ポリペプチドの4〜16の連続するアミノ酸を含む、項目11に記載の薬学的組成物。
(項目13)前記ポリペプチドが、ネイティブのWT1ポリペプチドの8〜16の連続するアミノ酸を含む、項目11に記載の薬学的組成物。
(項目14)項目8に記載のポリペプチドを、薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤と組み合わせて含む、薬学的組成物。
(項目15)項目1に記載のポリペプチドを、非特異的免疫応答エンハンサーと組み合わせて含む、ワクチン。
(項目16)前記ポリペプチドが、ネイティブのWT1ポリペプチドの4〜16の連続するアミノ酸を含む、項目15に記載のワクチン。
(項目17)前記ポリペプチドが、ネイティブのWT1ポリペプチドの8〜10の連続するアミノ酸を含む、項目15に記載のワクチン。
(項目18)前記免疫応答エンハンサーがアジュバントである、項目15に記載のワクチン。
(項目19)項目8に記載のポリペプチドを、非特異的免疫応答エンハンサーと組み合わせて含む、ワクチン。
(項目20)前記免疫応答エンハンサーがアジュバントである、項目19に記載のワクチン。
(項目21)以下を含む、ワクチン:
(a)WT1ポリペプチドであって、該ポリペプチドは、ネイティブのWT1の免疫原性部分あるいは1以上の置換、欠失、付加および/または挿入において異なるその改変体を含む、ポリペプチドであって、このような改変により、該改変体の抗原特異的T細胞株またはクローンと反応する能力が実質的に減少していない、WT1ポリペプチド;ならびに
(b)患者におけるT細胞応答を優先的に増強する、非特異的免疫応答エンハンサー。(項目22)項目21に記載のワクチンであって、前記免疫応答エンハンサーが、Montanide ISA50、Seppic MONTANIDE ISA 720、サイトカイン(例えば、GM−CSF、Flat3−リガンド)、ミクロスフェア、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDA)ベースのアジュバント、AS−1、AS−2、Ribi Adjuvantシステムベースのアジュバント、QS21、サポニンベースのアジュバント、マイクロフルイダイズされた形態のSyntexアジュバント、MV、ddMV、免疫刺激複合体(iscom)ベースのアジュバント、および不活性化毒素からなる群より選択される、ワクチン。
(項目23)項目10に記載の模倣物を、薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤と組み合わせて含む、薬学的組成物。
(項目24)項目10に記載の模倣物を、非特異的免疫応答エンハンサーと組み合わせて含む、ワクチン。
(項目25)項目1または項目8に記載のポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド。
(項目26)以下を含む、薬学的組成物:
(a)WT1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであって、該ポリペプチドは、ネイティブのWT1の免疫原性部分あるいは1以上の置換、欠失、付加および/または挿入において異なるその改変体を含む、ポリペプチドであって、このような改変により、該改変体の抗原特異的抗体および/またはT細胞株もしくはクローンと反応する能力が実質的に減少していない、ポリヌクレオチド;ならびに
(b)薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤。
(項目27)以下を含む、薬学的組成物:
(a)WT1ポリペプチドに特異的に結合する、抗体またはその抗原結合フラグメント;および
(b)薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤。
(項目28)以下を含む、薬学的組成物:
(a)WT1ポリペプチドと特異的に反応する、T細胞;および
(b)薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤。
(項目29)以下を含む、薬学的組成物:
(a)以下を発現する、抗原提示細胞:
(i)ネイティブのWT1の免疫原性部分あるいは1以上の置換、欠失、付加および/または挿入において異なるその改変体を含む、WT1ポリペプチドであって、このような改変により、該改変体の抗原特異的抗体および/またはT細胞株もしくはクローンと反応する能力が実質的に減少していない、WT1ポリペプチド;ならびに
(b)薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤。
(項目30)以下を含む、ワクチン:
(a)WT1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであって、該ポリペプチドは、ネイティブのWT1の免疫原性部分あるいは1以上の置換、欠失、付加および/または挿入において異なるその改変体を含む、ポリペプチドであって、このような改変により、該改変体の抗原特異的抗体および/またはT細胞株もしくはクローンと反応する能力が実質的に減少していない、ポリヌクレオチド;ならびに
(b)非特異的免疫応答エンハンサー。
(項目31)以下を含む、ワクチン:
(a)以下を発現する、抗原提示細胞:
(i)ネイティブのWT1の免疫原性部分あるいは1以上の置換、欠失、付加および/または挿入において異なるその改変体を含む、WT1ポリペプチドであって、このような改変により、該改変体の抗原特異的抗体および/またはT細胞株もしくはクローンと反応する能力が実質的に減少していない、WT1ポリペプチド;ならびに
(b)非特異的免疫応答エンハンサー。
(項目32)以下を含む、ワクチン:
(a)WT1の免疫原性部分に特異的に結合する抗体によって特異的に結合される、抗イディオタイプ抗体またはその抗原結合フラグメント;および
(b)非特異的免疫応答エンハンサー。
(項目33)前記免疫応答エンハンサーがアジュバントである、項目30〜32のいずれか1項に記載のワクチン。
(項目34)前記免疫応答エンハンサーが、患者におけるT細胞応答を優先的に増強する、項目30〜32のいずれか1項に記載のワクチン。
(項目35)ヒト患者において免疫応答を増強または誘導するための方法であって、該方法は、患者に、以下:
(a)WT1ポリペプチドであって、該ポリペプチドは、ネイティブのWT1の免疫原
性部分あるいは1以上の置換、欠失、付加および/または挿入において異なるその改変体を含む、ポリペプチドであって、このような改変により、該改変体の抗原特異的抗体および/またはT細胞株もしくはクローンと反応する能力が実質的に減少していない、WT1ポリペプチド;ならびに
(b)生理学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤、
を含む薬学的組成物を投与し、それにより、該ヒト患者において、WT1またはWT1を発現する細胞に特異的な免疫応答を増強または誘導する工程を包含する、方法。
(項目36)患者において免疫応答を増強または誘導するための方法であって、該方法は、患者に、項目11、14、23または26〜29のいずれか1項に記載の薬学的組成物を投与する工程を包含する、方法。
(項目37)ヒト患者において免疫応答を増強または誘導するための方法であって、該方法は、患者に、以下:
(a)WT1ポリペプチドであって、該ポリペプチドは、ネイティブのWT1の免疫原性部分あるいは1以上の置換、欠失、付加および/または挿入において異なるその改変体を含む、ポリペプチドであって、このような改変により、該改変体の抗原特異的抗体および/またはT細胞株もしくはクローンと反応する能力が実質的に減少していない、WT1ポリペプチド;ならびに
(b)非特異的免疫応答エンハンサー、
を含むワクチンを投与し、それにより、該ヒト患者において、WT1またはWT1を発現する細胞に特異的な免疫応答を増強または誘導する工程を包含する、方法。
(項目38)患者において免疫応答を増強または誘導するための方法であって、該方法は、患者に、項目15、19、21、24または30〜32のいずれか1項に記載のワクチンを投与し、それにより、該患者において、WT1またはWT1を発現する細胞に特異的な免疫応答を増強または誘導する工程を包含する、方法。
(項目39)ヒト患者においてWT1発現に関連する悪性疾患の発達を阻害するための方法であって、該方法は、ヒト患者に、以下:
(a)WT1ポリペプチドであって、該ポリペプチドは、ネイティブのWT1の免疫原性部分あるいは1以上の置換、欠失、付加および/または挿入において異なるその改変体を含む、ポリペプチドであって、このような改変により、該改変体の抗原特異的抗体および/またはT細胞株もしくはクローンと反応する能力が実質的に減少していない、WT1ポリペプチド;ならびに
(b)生理学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤、
を含む薬学的組成物を投与し、それにより該ヒト患者における該WT1発現に関連する悪性疾患の発達を阻害する工程を包含する、方法。
(項目40)患者においてWT1発現に関連する悪性疾患の発達を阻害するための方法であって、該方法は、患者に、項目11、14、23または26〜29のいずれか1項に記載の薬学的組成物を投与し、それにより該患者における該悪性疾患の発達を阻害する工程を包含する、方法。
(項目41)ヒト患者においてWT1発現に関連する悪性疾患の発達を阻害するための方法であって、該方法は、患者に、以下:
(a)WT1ポリペプチドであって、該ポリペプチドは、ネイティブのWT1の免疫原性部分あるいは1以上の置換、欠失、付加および/または挿入において異なるその改変体を含む、ポリペプチドであって、このような改変により、該改変体の特異的抗体および/またはT細胞株もしくはクローンと反応する能力が実質的に減少していない、WT1ポリペプチド;ならびに
(b)非特異的免疫応答エンハンサー、
を含むワクチンを投与し、それにより該患者における該悪性疾患の発達を阻害する工程を包含する、方法。
(項目42)患者においてWT1発現に関連する悪性疾患の発達を阻害するための方法であって、該方法は、患者に、項目15、19、21、24または30〜32のいずれか1
項に記載のワクチンを投与し、それにより該患者における該悪性疾患の発達を阻害する工程を包含する、方法。
(項目43)前記悪性疾患が白血病である、項目39または項目41に記載の方法。
(項目44)前記白血病が、急性骨髄性白血病、急性リンパ球性白血病、または慢性骨髄性白血病である、項目43に記載の方法。
(項目45)前記悪性疾患が癌である、項目39または41に記載の方法。
(項目46)前記癌が、乳房、肺、甲状腺または胃腸の癌または黒色腫である、項目45に記載の方法。
(項目47)前記悪性疾患が白血病である、項目40に記載の方法。
(項目48)前記白血病が、急性骨髄性白血病、急性リンパ球性白血病、または慢性骨髄性白血病である、項目47に記載の方法。
(項目49)前記悪性疾患が癌である、項目40に記載の方法。
(項目50)前記癌が、乳房、肺、甲状腺または胃腸の癌または黒色腫である、項目49に記載の方法。
(項目51)前記悪性疾患が白血病である、項目42に記載の方法。
(項目52)前記白血病が、急性骨髄性白血病、急性リンパ球性白血病、または慢性骨髄性白血病である、項目51に記載の方法。
(項目53)前記悪性疾患が癌である、項目42に記載の方法。
(項目54)前記癌が、乳房、肺、甲状腺または胃腸の癌または黒色腫である、項目53に記載の方法。
(項目55)項目39に記載の方法であって、前記薬学的組成物が、WT1ポリペプチドを含み、該WT1ポリペプチドが、表II〜XLVIの1以上に列挙される配列、ならびに1以上の置換、欠失、付加および/または挿入において異なる該配列の改変体であって、このような改変により、該改変体の抗原特異的抗血清および/またはT細胞株もしくはクローンと反応する能力が減少していない、改変体、からなる群より選択される配列を含む、方法。
(項目56)項目39に記載の方法であって、前記薬学的組成物が、ALLPAVPSL(配列番号34)、GATLKGVAA(配列番号88)、CMTWNQMNL(配列番号49および258)、SCLESQPTI(配列番号199および296)、SCLESQPAI(配列番号198)、NLYQMTSQL(配列番号147および284)、ALLPAVSSL(配列番号35および255)、RMFPNAPYL(配列番号185および293)からなる群より選択される配列を含むWT1ポリペプチド、ならびに1以上の置換、欠失、付加および/または挿入において異なる該配列の改変体であって、このような改変により、該改変体の抗原特異的抗血清および/またはT細胞株もしくはクローンと反応する能力が減少されていない、改変体、を含む、方法。
(項目57)項目41に記載の方法であって、前記ワクチンが、WT1ポリペプチドを含み、該WT1ポリペプチドが、表II〜XLVIの1以上に列挙される配列、ならびに1以上の置換、欠失、付加および/または挿入において異なる該配列の改変体であって、このような改変により、該改変体の抗原特異的抗血清および/またはT細胞株もしくはクローンと反応する能力が減少していない、改変体、からなる群より選択される配列を含む、方法。
(項目58)項目41に記載の方法であって、前記ワクチンが、ALLPAVPSL(配列番号34)、GATLKGVAA(配列番号88)、CMTWNQMNL(配列番号49および258)、SCLESQPTI(配列番号199および296)、SCLESQPAI(配列番号198)、NLYQMTSQL(配列番号147および284)、ALLPAVSSL(配列番号35および255)、RMFPNAPYL(配列番号185および293)からなる群より選択される配列を含むWT1ポリペプチド、ならびに1以上の置換、欠失、付加および/または挿入において異なる該配列の改変体であって、このような改変により、該改変体の抗原特異的抗血清および/またはT細胞株もしくはクローンと反応する能力が減少されていない、改変体、を含む、方法。
(項目59)骨髄、末梢血、または骨髄もしくは末梢血の画分から、WT1を発現する細胞を除去するための方法であって、該方法は、骨髄、末梢血、または骨髄もしくは末梢血の画分をWT1ポリペプチドと特異的に反応するT細胞と接触させる工程を包含し、ここで、該接触させる工程が、骨髄、末梢血、または骨髄もしくは末梢血の画分中の骨髄性細胞またはリンパ細胞の数の10%未満へのWT1陽性細胞の除去を可能にする条件下でそれを可能にするに十分な時間行われる、方法。
(項目60)患者においてWT1発現と関連する悪性疾患の発達を阻害するための方法であって、該方法は、患者に、項目59に記載の方法に従って調製された骨髄、末梢血、または骨髄もしくは末梢血の画分を投与する工程を包含する、方法。
(項目61)前記骨髄、末梢血または画分が、自己由来である、項目60に記載の方法。(項目62)前記骨髄、末梢血または画分が、同系または同種異系である、項目60に記載の方法。
(項目63)T細胞を刺激および/または拡大するための方法であって、該方法は、T細胞を、WT1ポリペプチド、WT1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および/またはWT1ポリペプチドを発現する抗原提示細胞と、T細胞の刺激および/または拡大を可能にする条件でそれを可能にするに十分な時間接触させる工程を包含する、方法。(項目64)前記T細胞が、骨髄、末梢血または骨髄もしくは末梢血の画分内に存在する、項目63に記載の方法。
(項目65)前記骨髄、末梢血または画分が、WT1発現と関連する悪性疾患に罹患した患者から得られる、項目63に記載の方法。
(項目66)前記骨髄、末梢血または画分が、WT1発現と関連する悪性疾患に罹患していない哺乳動物から得られる、項目63に記載の方法。
(項目67)前記T細胞が、拡大の前にクローニングされる、項目63に記載の方法。
(項目68)哺乳動物においてT細胞を刺激および/または拡大するための方法であって、該方法は、哺乳動物に、以下:
(a)以下の1以上:
(i)WT1ポリペプチド;
(ii)WT1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(iii)WT1ポリペプチドを発現する抗原提示細胞;
ならびに
(b)生理学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤;
を含む薬学的組成物を投与し、それにより、哺乳動物においてT細胞を刺激および/または拡大する工程、を包含する、方法。
(項目69)哺乳動物においてT細胞を刺激および/または拡大するための方法であって、該方法は、哺乳動物に、以下:
(a)以下の1以上:
(i)WT1ポリペプチド;
(ii)WT1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(iii)WT1ポリペプチドを発現する抗原提示細胞;
ならびに
(b)非特異的免疫応答エンハンサー;
を含むワクチンを投与し、それにより、哺乳動物においてT細胞を刺激および/または拡大する工程、を包含する、方法。
(項目70)患者においてWT1発現と関連する悪性疾患の発達を阻害するための方法であって、該方法は、患者に、項目63に記載の方法に従って調製されたT細胞を投与する工程を包含する、方法。
(項目71)項目70に記載の方法であって、前記骨髄、末梢血または画分が、WT1発現と関連する悪性疾患に罹患する患者から得られる、方法。
(項目72)項目70に記載の方法であって、前記骨髄、末梢血または画分が、WT1発現と関連する悪性疾患に罹患していない哺乳動物から得られる、方法。
(項目73)患者においてWT1発現と関連する悪性疾患のための免疫化または治療の効果をモニターするための方法であって、該方法は、以下の工程:
(a)以下:
(i)WT1ポリペプチド;
(ii)WT1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(iii)WT1ポリペプチドを発現する抗原提示細胞、
の1以上とともに第1の生物学的サンプルをインキュベートする工程であって、ここで、該第1の生物学的サンプルが、治療または免疫化の前に患者から得られ、そしてここで、該インキュベーションが、免疫複合体を形成させる条件下でそれを可能にするに十分な時間行われる、工程;
(b)該WT1ポリペプチドに特異的に結合する、該生物学的サンプル中の該WT1ポリペプチドと抗体との間に形成される免疫複合体を検出する工程;
(c)治療または免疫化の後に該患者から得られる第2の生物学的サンプルを使用して、工程(a)および(b)を繰り返す工程;ならびに
(d)該第1の生物学的サンプルおよび該第2の生物学的サンプルにおいて検出された免疫複合体の数を比較して、それから該患者における治療または免疫化の効果をモニターする工程、
を包含する、方法。
(項目74)項目73に記載の方法であって、前記検出する工程が、(a)前記免疫複合体を、該免疫複合体に結合し得る検出試薬とともにインキュベートする工程であって、ここで該検出試薬がレポーター基を含む、工程、(b)結合していない検出試薬を除去する工程、ならびに(c)該レポーター基の存在または非存在を検出する工程、を包含する、方法。
(項目75)前記検出試薬が、前記WT1ポリペプチドに特異的に結合する抗体に結合し得る、第2の抗体またはその抗原結合フラグメントを含む、項目74に記載の方法。
(項目76)前記検出試薬がプロテインAを含む、項目74に記載の方法。
(項目77)前記レポーター基が、放射性同位体、蛍光基、発光基、酵素、ビオチン、および色素粒子からなる群より選択される、項目74に記載の方法。
(項目78)レポーター基が前記WT1ポリペプチドに結合し、そして前記検出する工程が、結合していないWT1ポリペプチドを除去し、続いて該レポーター基の存在または非存在を検出する工程を包含する、項目73に記載の方法。
(項目79)患者においてWT1発現と関連する悪性疾患のための免疫化または治療の効果をモニターするための方法であって、該方法は、以下の工程:
(a)以下:
(i)WT1ポリペプチド;
(ii)WT1ポリペプチドをコードするWT1ポリヌクレオチド;または
(iii)WT1ポリペプチドを発現する抗原提示細胞、
の1以上とともに第1の生物学的サンプルをインキュベートする工程であって、ここで、該生物学的サンプルが、CD4+および/もしくはCD8+ T細胞を含み、かつ治療または免疫化の前に患者から得られ、そしてここで、該インキュベーションが、T細胞の特異的活性化、増殖および/もしくは溶解を可能にする条件下でそれを可能にするに十分な時間行われる、工程;
(b)該T細胞の活性化、増殖および/もしくは溶解の量を検出する工程;
(c)CD4+および/もしくはCD8+ T細胞を含む第2の生物学的サンプルを使用して、工程(a)および(b)を繰り返す工程であって、ここで該第2の生物学的サンプルが治療または免疫化の後に該患者から得られる、工程;ならびに
(d)該第1の生物学的サンプルおよび該第2の生物学的サンプル中のT細胞の活性化、増殖および/または溶解の量を比較して、それから該患者における治療または免疫化の効果をモニターする工程、
を包含する、方法。
(項目80)前記悪性疾患が、癌または白血病である、項目73または項目79に記載の方法。
(項目81)患者においてWT1発現と関連する悪性疾患の発達を阻害するための方法であって、該方法は、以下の工程:
(a)以下:
(i)WT1ポリペプチド;
(ii)WT1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(iii)WT1ポリペプチドを発現する抗原提示細胞、
の1以上とともに、患者から単離されたCD4+T細胞をインキュベートする工程であって、その結果、該T細胞が増殖する、工程;ならびに
(b)該患者に、有効量の該増殖したT細胞を投与し、それから該患者における悪性疾患の発達を阻害する、工程、
を包含する、方法。
(項目82)前記悪性疾患が、癌または白血病である、項目81に記載の方法。
(項目83)前記T細胞をインキュベートする工程が、1回以上繰り返される、項目81に記載の方法。
(項目84)患者においてWT1発現と関連する悪性疾患の発達を阻害するための方法であって、該方法は、以下の工程:
(a)以下:
(i)WT1ポリペプチド;
(ii)WT1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(iii)WT1ポリペプチドを発現する抗原提示細胞、
の1以上とともに、患者から単離されたCD4+T細胞をインキュベートする工程であって、その結果、該T細胞が増殖する、工程;
(b)WT1ポリペプチドの存在下で増殖した1以上の細胞をクローニングする工程;ならびに
(c)該患者に、有効量の該クローニングしたT細胞を投与する、工程、
を包含する、方法。
(項目85)前記悪性疾患が、癌または白血病である、項目84に記載の方法。
(項目86)患者においてWT1発現と関連する悪性疾患の発達を阻害するための方法であって、該方法は、以下の工程:
(a)以下:
(i)WT1ポリペプチド;
(ii)WT1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(iii)WT1ポリペプチドを発現する抗原提示細胞、
の1以上とともに、患者から単離されたCD8+T細胞をインキュベートする工程であって、その結果、該T細胞が増殖する、工程;ならびに
(b)該患者に、有効量の該増殖したT細胞を投与し、それから該患者における悪性疾患の発達を阻害する、工程、
を包含する、方法。
(項目87)前記悪性疾患が、癌または白血病である、項目86に記載の方法。
(項目88)前記T細胞をインキュベートする工程が、1回以上繰り返される、項目86に記載の方法。
(項目89)患者においてWT1発現と関連する悪性疾患の発達を阻害するための方法であって、該方法は、以下の工程:
(a)以下:
(i)WT1ポリペプチド;
(ii)WT1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(iii)WT1ポリペプチドを発現する抗原提示細胞、
の1以上とともに、患者から単離されたCD8+T細胞をインキュベートする工程であっ
て、その結果、該T細胞が増殖する、工程;
(b)WT1ポリペプチドの存在下で増殖した1以上の細胞をクローニングする工程;ならびに
(c)該患者に、有効量の該クローニングしたT細胞を投与する、工程、
を包含する、方法
(項目90)前記悪性疾患が、癌または白血病である、項目89に記載の方法。
(項目91)患者においてWT1発現と関連する悪性疾患の存在または非存在を決定するための方法であって、該方法は、以下の工程:
(a)以下:
(i)WT1ポリペプチド;
(ii)WT1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(iii)WT1ポリペプチドを発現する抗原提示細胞、
の1以上とともに、患者から単離されたCD4+T細胞をインキュベートする工程;ならびに
(b)該T細胞の特異的活性化の存在または非存在を検出し、それからWT1発現と関連する悪性疾患の存在または非存在を決定する、工程、
を包含する、方法。
(項目92)前記悪性疾患が、癌または白血病である、項目91に記載の方法。
(項目93)前記検出する工程が、前記T細胞の増殖の存在または非存在を検出する工程を包含する、項目91に記載の方法。
(項目94)患者においてWT1発現と関連する悪性疾患の存在または非存在を検出するための方法であって、該方法は、以下の工程:
(a)以下:
(i)WT1ポリペプチド;
(ii)WT1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(iii)WT1ポリペプチドを発現する抗原提示細胞、
の1以上とともに、患者から単離されたCD8+T細胞をインキュベートする工程;ならびに
(b)該T細胞の特異的活性の存在または非存在を検出し、それからWT1発現と関連する悪性疾患の存在または非存在を決定する、工程、
を包含する、方法。
(項目95)前記悪性疾患が、癌または白血病である、項目94に記載の方法。
(項目96)前記検出する工程が、細胞溶解活性の生成の存在または非存在を検出する工程を包含する、項目94に記載の方法。
(項目97)患者においてWT1発現と関連する悪性疾患の存在または非存在を決定するための方法であって、該方法は、以下の工程:
(a)以下:
(i)WT1ポリペプチド;
(ii)WT1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(iii)WT1ポリペプチドを発現する抗原提示細胞、
の1以上とともに、患者から得られた生物学的サンプルをインキュベートする工程であって、該インキュベーションが、免疫複合体を形成させる条件下でそれを可能にするに十分な時間行われる工程;ならびに
(b)該W1ポリペプチドと該WT1ポリペプチドに特異的に結合する生物学的サンプル中の抗体との間で形成される免疫複合体を検出し、それから、WT1発現と関連する悪性疾患の存在または非存在を決定する、工程、
を包含する、方法。
(項目98)前記悪性疾患が、癌または白血病である、項目97に記載の方法。
(項目99)項目97に記載の方法であって、前記検出する工程が、(a)前記免疫複合体を、該免疫複合体に結合し得る検出試薬とともにインキュベートする工程であって、こ
こで該検出試薬がレポーター基を含む、工程、(b)結合していない検出試薬を除去する工程、ならびに(c)該レポーター基の存在または非存在を検出する工程、を包含する、方法。
(項目100)前記検出試薬が、前記WT1ポリペプチドに特異的に結合する抗体に結合し得る、第2の抗体またはその抗原結合フラグメントを含む、項目99に記載の方法。
(項目101)前記検出試薬がプロテインAを含む、項目99に記載の方法。
(項目102)前記レポーター基が、放射性同位体、蛍光基、発光基、酵素、ビオチン、および色素粒子からなる群より選択される、項目99に記載の方法。
(項目103)前記レポーター基が前記WT1ポリペプチドに結合し、そして前記検出する工程が、結合していないWT1ポリペプチドを除去し、続いて該レポーター基の存在または非存在を検出する工程を包含する、項目97に記載の方法。
(項目104)活性な治療用物質として使用するための、項目1〜9のいずれか1項に記載のポリペプチド。
(項目105)患者において免疫応答を増強または誘導するための医薬の製造における使用のための、項目1〜9のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【0025】
本発明のこれらおよび他の局面は、下述する詳細な説明および添付する図面を参照すれば明白になる。本明細書中に開示されたすべての参考文献は、各々が個々に援用されたかのようにその全体が参考として本明細書中に援用されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
(発明の詳細な説明)
上述のように、本発明は、一般に、悪性疾患の免疫療法および診断のための組成物および方法に関する。本明細書中に記載される組成物としては、WT1ポリペプチド、WT1ポリヌクレオチド、WT1ポリペプチドを発現する抗原提示細胞(APC、例えば、樹状細胞)、薬剤(例えば、WT1ポリペプチドに結合する抗体)および/またはWT1に特異的な免疫系細胞(例えば、T細胞)が挙げられ得る。本発明のWT1ポリペプチドは、一般に、ウィルムス腫瘍遺伝子産物(WT1)またはその改変体の少なくとも一部を含む。本発明の核酸配列は、一般に、このようなポリペプチドの全てもしくは一部をコードするDNA配列またはRNA配列、あるいはこのような配列に相補的であるDNA配列またはRNA配列を含む。抗体は、一般に、免疫系タンパク質またはその抗原結合フラグメントであり、これは、WT1ポリペプチドの一部に結合し得る。このような組成物内で使用され得るT細胞は、一般に、WT1ポリペプチドに特異的であるT細胞(例えば、CD4+および/またはCD8+)である。本明細書中に記載される特定の方法は、さらに、本明細書中に提供されるようなWT1ポリペプチドを発現する抗原提示細胞を使用する。
【0027】
本発明は、ウィルムス腫瘍(WT)遺伝子産物(例えば、WT1)に対して惹起される免疫応答が、WT1遺伝子の発現の増加によって特徴付けられる悪性疾患を患う患者に、予防的利益および/または治療的利益を提供し得るという発見に基づく。このような疾患としては、白血病(例えば、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ性白血病(ALL)および小児期ALL)、ならびに多くの癌(例えば、肺、乳房、甲状腺および胃腸の癌、ならびに黒色腫)が挙げられるが、これらに限定されない。WT1遺伝子は、元々、ウィルムス腫瘍を有する患者の染色体11p13における細胞性欠失に基づいて同定および単離された(Callら、米国特許第5,350,840号を参照のこと)。この遺伝子は10のエキソンからなり、そしてジンクフィンガー転写因子をコードし、そしてマウスWT1タンパク質およびヒトWT1タンパク質の配列は、図1および配列番号319〜320に提供される。
【0028】
(WT1ポリペプチド)
本発明の文脈において、WT1ポリペプチドは、本明細書に記載される場合、ネイティ
ブWT1(すなわち、遺伝的に改変されていない生物によって発現されるWT1タンパク質)またはその改変体の少なくとも免疫原性部分を含むポリペプチドである。WT1ポリペプチドは、これがネイティブタンパク質またはその改変体の少なくとも免疫原性部分を含む限り、任意の長さであり得る。言い換えると、WT1ポリペプチドは、オリゴペプチド(すなわち、ペプチド結合によって連結される比較的少数のアミノ酸残基(例えば、8〜10残基)からなる)、全長WT1タンパク質(例えば、ヒトまたは非ヒト動物(例えば、マウス)内に存在する)あるいは中間のサイズのポリペプチドであり得る。特定の実施態様において、ネイティブWT1ポリペプチドの少数の連続するアミノ酸残基を含むWT1ポリペプチドの使用が、好ましい。このようなポリペプチドは、T細胞応答の生成が所望される特定の使用のために好ましい。例えば、このようなWT1ポリペプチドは、ネイティブWT1ポリペプチドの、23未満の連続するアミノ酸残基、好ましくは18以下の連続するアミノ酸残基、そしてより好ましくは15以下の連続するアミノ酸残基を含み得る。ネイティブWT1ポリペプチドの連続する9つのアミノ酸残基を含むポリペプチドは、一般に、このような目的のために適切である。ネイティブタンパク質由来のさらなる配列および/または異種配列は、任意のWT1ポリペプチド内に存在し得、そしてこのような配列は、(必要ではないが)さらなる免疫原性特性または抗原性特性を保有し得る。本明細書中に提供されるようなポリペプチドは、さらに、他のポリペプチドまたは非ポリペプチド化合物と(共有結合的にかまたは非共有結合的に)会合され得る。
【0029】
「免疫原性部分」は、本明細書中で使用される場合、B細胞表面抗原レセプターおよび/またはT細胞表面抗原レセプターによって認識される(すなわち、特異的に結合される)ポリペプチドの部分である。特定の好ましい免疫原性部分は、MHCクラスI分子またはMHCクラスII分子に結合する。本明細書中で使用される場合、免疫原性部分は、このような結合が当該分野で公知の任意のアッセイを使用して検出可能である場合、MHCクラスI分子またはMHCクラスII分子「に結合する」といわれる。例えば、ポリペプチドがMHCクラスIに結合する能力は、125Iで標識されたβ2ミクログロブリン(β
2m)のMHCクラスI/β2m/ペプチドヘテロ三量体複合体への取り込みを促進する能力をモニターすることによって間接的に評価され得る(Parkerら、J.Immunol.152:163,1994を参照のこと)。あるいは、当該分野で公知の機能的ペプチド競合アッセイが、使用され得る。特定の免疫原性部分は、表II〜XIVの1つ以上に列挙される1つ以上の配列を有する。代表的な免疫原性部分には、以下が挙げられるが、これらに限定されない:RDLNALLPAVPSLGGGG(ヒトWT1残基6〜22;配列番号1)、PSQASSGQARMFPNAPYLPSCLE(ヒトおよびマウスWT1残基117〜139;それぞれ、配列番号2および3)、GATLKGVAAGSSSSVKWTE(ヒトWT1残基244〜262;配列番号4)、GATLKGVAA(ヒトWT1残基244〜252;配列番号88)、CMTWNQMNL(ヒトおよびマウスWT1残基235〜243;それぞれ、配列番号49および258)、SCLESQPTI(マウスWT1残基136〜144;配列番号296)、SCLESQPAI(ヒトWT1残基136〜144;配列番号198);NLYQMTSQL(ヒトおよびマウスWT1残基225〜233;それぞれ、配列番号147および284);ALLPAVSSL(マウスWT1残基10〜18;配列番号255);またはRMFPNAPYL(ヒトおよびマウスWT1残基126〜134;それぞれ、配列番号185および293)。さらなる免疫原性部分は、本明細書中に提供され、そしてその他は、一般に、周知の技術(例えば、Paul、Fundamental Immunology、第3版、243〜247(Raven Press,1993)およびその中に引用される参考文献において要約される技術)を使用して同定され得る。免疫原性部分を同定するための代表的な技術としては、抗原特異的抗血清および/またはT細胞株もしくはクローンと反応する能力についてのポリペプチドのスクリーニングが挙げられる。ネイティブWT1ポリペプチドの免疫原性部分は、(例えば、ELISAおよび/またはT細胞反応性アッセイにおいて)実質的に全長WT1の反応性以上であるレベルで、このような抗血清および
/またはT細胞と反応する部分である。言い換えると、免疫原性部分は、全長ポリペプチドの反応性に類似するかまたはそれよりも大きなレベルで、このようなアッセイにおいて反応し得る。このようなスクリーニングは、一般に、HarlowおよびLane、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring
Harbor Laboratory、1998に記載されるような、当業者に周知の方法を使用して実施され得る。
【0030】
あるいは、免疫原性部分は、Tsitesプログラム(RothbardおよびTayler、EMBO J.7:93〜100、1988;Deavinら、Mol.Immunol.33:145〜155、1996を参照のこと)のようなコンピュータ分析を使用して同定され得、このコンピュータ分析は、Th応答を誘発する可能性を有するペプチドモチーフについて検索する。マウスクラスI MHCまたはクラスII MHCおよびヒトクラスI MHCまたはクラスII MHCへの結合について適切なモチーフを有するCTLペプチドは、BIMAS(Parkerら、J.Immunol.152:163、1994)および他のHLAペプチド結合予測分析に従って同定され得る。免疫原性を確認するために、ペプチドは、HLA A2トランスジェニックマウスモデル、および/または樹状細胞、線維芽細胞もしくは末梢血細胞を使用するインビトロ刺激アッセイを使用して、試験され得る。
【0031】
上述のように、組成物は、ネイティブWT1タンパク質の改変体を含み得る。ポリペプチド「改変体」は、本明細書中で使用される場合、1つ以上の置換、欠失、付加および/または挿入においてネイティブポリペプチドと異なり、その結果、そのポリペプチドの免疫原性が保持されている(すなわち、この改変体が抗原特異的抗血清および/またはT細胞株もしくはクローンと反応する能力は、ネイティブポリペプチドに対して実質的に減少されない)、ポリペプチドである。言い換えると、改変体が抗原特異的抗血清および/またはT細胞株もしくはクローンと反応する能力は、ネイティブポリペプチドに対して増強され得るかまたは不変であり得るか、あるいはネイティブポリペプチドに対して50%未満、そして好ましくは20%未満減少され得る。このような改変体は、一般に、本明細書中に記載されるように、上記のポリペプチド配列の1つを改変すること、および改変されたポリペプチドと抗血清および/またはT細胞との反応性を評価することによって、同定され得る。本発明の文脈において、WT1ポリペプチドの免疫原性部分内の比較的少数の置換(例えば、1〜3)は、ポリペプチドが免疫応答を誘発する能力を増強するように作用し得ることが、見出されている。適切な置換は、一般に、上記のようにコンピュータプログラムを使用することによって同定され得、そしてその効果は、本明細書中に記載されるように、改変されたポリペプチドと抗血清および/またはT細胞との反応性に基づいて確認される。従って、特定の好ましい実施態様において、WT1ポリペプチドは、免疫原性部分内の1〜3アミノ酸残基が置換され、その結果、抗原特異的抗血清および/またはT細胞株もしくはクローンと反応する能力が、改変されていないポリペプチドに対するその能力よりも統計学的に大きい、改変体を含む。このような置換は、好ましくは、このポリペプチドMHC結合部位内に位置され、これは、上記の通りに同定され得る。好ましい置換は、MHCクラスI分子またはMHCクラスII分子への結合を増加させる。
【0032】
特定の改変体は、保存的置換を含む。「保存的置換」は、あるアミノ酸が類似の特性を有する別のアミノ酸に置換されることであり、その結果、ペプチド化学の当業者は、そのポリペプチドの二次構造および疎水性の性質が実質的に変化していないことを予測する。アミノ酸置換は、一般に、残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性および/または両親媒性の性質における類似性に基づいてなされ得る。例えば、負に荷電したアミノ酸としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられ;正に荷電したアミノ酸としては、リジンおよびアルギニンが挙げられ;そして類似の疎水性値を有する荷電していない極性ヘッド(head)基を持つアミノ酸としては、ロイシン、イソロイシンおよびバリン;
グリシンおよびアラニン;アスパラギンおよびグルタミン;ならびにセリン、スレオニン、フェニルアラニンおよびチロシン、が挙げられる。保存的変化を示し得るアミノ酸の他の基としては、以下が挙げられる:(1)ala、pro、gly、glu、asp、gln、ser、thr;(2)cys、ser、tyr、thr;(3)val、ile、leu、met、ala、phe;(4)lys、arg、his;および(5)phe、tyr、trp、his。改変体はまた(または、あるいは改変体は)非保存的変化を含む。改変体はまた(または、あるいは改変体は)、例えば、このポリペプチドの免疫原性、二次構造および疎水性性質に対して最小の影響を有するアミノ酸の欠失または付加によって改変され得る。
【0033】
上述のように、WT1ポリペプチドは、翻訳と同時(co−translationally)または翻訳後(post−translationally)にタンパク質の移動を指向するタンパク質のN末端において、シグナル(またはリーダー)配列に結合体化され得る。ポリペプチドはまた(または、あるいはポリペプチドは)、このポリペプチド(例えば、ポリ−His)の合成、精製または同定の容易さのために、あるいはこのポリペプチドの固体支持体への結合を増強するために、リンカーもしくは他の配列に結合体化され得る。例えば、ポリペプチドは、免疫グロブリンのFc領域に結合体化され得る。
【0034】
WT1ポリペプチドは、任意の種々の周知技術を使用して調製され得る。本明細書中に記載されるようなWT1ポリヌクレオチドによってコードされる組換えポリペプチドは、このポリヌクレオチドから容易に調製され得る。一般に、当業者に公知の任意の種々の発現ベクターを使用して、組換えWT1ポリペプチドを発現し得る。発現は、組換えポリペプチドをコードするDNA分子を含む発現ベクターを用いて形質転換されたか、またはこの発現ベクターを用いてトランスフェクトされた、任意の適切な宿主細胞において達成され得る。適切な宿主細胞としては、原核生物細胞、酵母細胞および高等真核生物細胞が挙げられる。好ましくは、使用される宿主細胞は、E.coli細胞株、酵母細胞株または哺乳動物細胞株(例えば、COSもしくはCHO)である。組換えタンパク質または組換えポリペプチドを培養培地へ分泌する適切な宿主/ベクター系からの上清は、まず、市販のフィルターを使用して濃縮され得る。次いで、この濃縮物は、適切な精製マトリクス(例えば、アフィニティーマトリクスまたはイオン交換樹脂)に適用され得る。最終的に、1つ以上の逆相HPLC工程を使用して、組換えポリペプチドをさらに精製し得る。このような技術を使用して、ネイティブポリペプチドまたはその改変体を調製し得る。例えば、ネイティブポリペプチドの改変体をコードするポリヌクレオチドは、一般に、標準的な変異誘発技術(例えば、オリゴヌクレオチド部位特異的変異誘発)を使用して調製され得、そしてDNA配列の切片は、短縮型ポリペプチドの調製を許容するように除去され得る。
【0035】
特定の部分および他の改変体はまた、当業者に周知の技術を使用する合成手段によって生成され得る。例えば、約500未満のアミノ酸、好ましくは約100未満のアミノ酸、そしてより好ましくは約50未満のアミノ酸を有するポリペプチドが、合成され得る。ポリペプチドは、メリーフィールド固相合成法(アミノ酸が、生長するアミノ酸鎖に連続的に付加される)のような任意の商業的に利用可能な固相技術を使用して合成され得る。Merrifield、J.Am.Chem.Soc.85:2149〜2146、1963を参照のこと。ポリペプチドの自動化合成のための装置は、Applied BioSystems,Inc.(Foster City,CA)のような供給業者から市販されており、そして製造業者の指示書に従って操作され得る。
【0036】
一般に、本明細書中に記載されるようなポリペプチドおよびポリヌクレオチドが、単離される。「単離された」ポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、その元々の環境から取り出されたものである。例えば、その天然系に共存するいくつかまたは全ての材料から分
離される場合に、天然に存在するタンパク質が、単離される。好ましくは、このようなポリペプチドは、少なくとも約90%純粋、より好ましくは少なくとも約95%純粋、そして最も好ましくは少なくとも約99%純粋である。例えば、天然の環境の一部でないベクター中にクローニングされる場合に、ポリヌクレオチドは、単離されたとみなされる。
【0037】
さらなる局面において、本発明は、WT1ポリペプチドの模倣物を提供する。このような模倣物は、1つ以上のアミノ酸模倣物と連結したアミノ酸を含み得るか(すなわち、W
T1タンパク質内の1つ以上のアミノ酸が、アミノ酸模倣物により置換され得る)または全体的に非ペプチド模倣物であり得る。アミノ酸模倣物はアミノ酸と立体配置的に類似する化合物であるが故に、そのアミノ酸模倣物は、抗原特異的抗血清および/またはT細胞株またはクローンと反応する能力を実質的に減少させずにWT1ポリペプチド内のアミノ酸と置換され得る。非ペプチド模倣物はアミノ酸を含まない化合物であり、そしてWT1ポリペプチドと類似する全体的な配座を有するが故に、WT1特異的抗血清および/またはT細胞株またはクローンと反応する模倣物の能力は、WT1ポリペプチドの能力と比較して実質的に減少されない。このような模倣物は、ペプチド配列の三次元構造を評価する標準的な技術(例えば、核磁気共鳴技術および計算的技術)に基づき設計され得る。WT1ポリペプチドの1つ以上の側鎖官能基が、必ずしも同じサイズまたは容積を有しないが、類似の化学的および/または物理的特性(類似する生物学的応答を産生する)を有する基により置換される1模倣物が設計され得る。本明細書中に記載される実施態様において、模倣物が、WT1ポリペプチドに置換され得ることが理解されるべきである。
【0038】
(WT1ポリヌクレオチド)
本明細書中に記載されるWT1ポリペプチドをコードする任意のポリヌクレオチドは、本発明により含まれるWT1ポリヌクレオチドである。このようなポリヌクレオチドは、一本鎖(コードまたはアンチセンス)または二本鎖であり得、そしてDNA(ゲノム、cDNAまたは合成)またはRNA分子であり得る。さらなるコード配列または非コード配列が、本発明のポリヌクレオチド内に存在し得るが、存在する必要はなく、そしてポリヌクレオチドは、他の分子および/または支持物質に連結され得るが、連結される必要はない。
【0039】
WT1ポリヌクレオチドは、ネイティブなWT1タンパク質をコードし得るか、または本明細書中に記載されるWT1の改変体をコードし得る。ポリヌクレオチド改変体は、ネイティブなWT1タンパク質と比較して、コードされるポリペプチドの免疫原性が減少されないような1つ以上の置換、付加、欠失、および/または挿入を含み得る。コードされるポリペプチドの免疫原性に対する効果は、一般的に本明細書中に記載されるように評価され得る。好ましい改変体は、ネイティブなWT1配列の免疫原性部分をコードするヌクレオチド位置、わずか20%、好ましくは、わずか10%でヌクレオチド置換、欠失、挿入および/または付加を含む。特定の改変体は、ネイティブな遺伝子またはその一部と実質的に相同的である。このようなポリヌクレオチド改変体は、WT1ポリペプチド(または相補配列)をコードする天然に存在するDNA配列と、中程度のストリンジェント条件下でハイブリダイズし得る。適切な中程度のストリンジェントな条件は以下を含む;5×SSC、0.5%SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)の溶液での前洗浄;50℃〜65℃、5×SSCにおける一晩のハイブリダイゼーション;続いて、それぞれ0.1%SDS含有2×SSC、0.5×SSC、および0.2×SSCを用いた65℃で20分間の2回の洗浄。このようにハイブリダイズするDNA配列はまた、本発明の範囲内である。
【0040】
遺伝コードの縮重の結果として、WT1ポリペプチドをコードする多くのヌクレオチド配列が存在することが当業者に明らかである。いくつかのこれらのポリヌクレオチドは、任意のネイティブな遺伝子のヌクレオチド配列に対して最小の相同性を有する。それにも
かかわらず、コドン使用頻度における差異に起因して変動するポリヌクレオチドが、特に本発明により意図される。
【0041】
一旦、上記のようにWT1の免疫原性部分が同定されると、WT1ポリヌクレオチドが、任意の種々の技術を使用して調製され得る。例えば、WT1ポリヌクレオチドが、WT1を発現する細胞から調製されるcDNAから増幅され得る。このようなポリヌクレオチドは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を介して増幅され得る。このアプローチのために、配列特異的プライマーが、免疫原性部分の配列に基づいて設計され得、そして購入され得るか、または合成され得る。例えば、ヒトWT1遺伝子のPCR増幅のための適切なプライマーには以下が挙げられる:第1工程−P118:1434−1414:5’GAGAGTCAGACTTGAAAGGAGT3’(配列番号5)およびP135:5’CTGAGCCTCAGCAAATGGGC3’(配列番号6);第2工程−P136:5’GAGCATGCATGGGCTCCGACGTGCGGG3’(配列番号7)およびP137:5’GGGGTACCCACTGAACGGTCCCCGA3’(配列番号8)。マウスWT1遺伝子のPCR増幅のためのプライマーには以下が挙げられる:第1工程−P138:5’TCCGAGCCGCACCTCATG3’(配列番号9)およびP139:5’GCCTGGGATGCTGGACTG3’(配列番号10);第2工程−P140:5’GAGCATGCGATGGGTTCCGACGTGCGG3’(配列番号11)およびP141:5’GGGGTACCTCAAAGCGCCACGTGGAGTTT3’(配列番号12)。
【0042】
次いで、増幅された部分を使用して、全長遺伝子が、周知の技術を使用してヒトゲノムDNAライブラリーまたは適切なcDNAライブラリーから単離され得る。あるいは、全長遺伝子が、複数のPCRフラグメントから構築され得る。WT1ポリヌクレオチドはまた、オリゴヌクレオチド成分を合成し、そして完全なポリヌクレオチドを産生するために共に成分を連結することにより調製され得る。
【0043】
WT1ポリヌクレオチドはまた、当該分野において公知の任意の方法によって合成され得、その方法には化学合成が挙げられる(例えば、固層ホスホラミダイト化学合成)。ポリヌクレオチド配列における改変はまた、標準的な変異誘発技術(例えば、オリゴヌクレオチド指向性、部位特異的変異誘発(Adelmanら、DNA 2:183、1983を参照のこと)、を使用して導入され得る。あるいは、DNAが適切なRNAポリメラーゼプロモーター(例えば、T7またはSP6)とともにベクターに組み込まれる場合、RNA分子は、WT1ポリペプチドをコードするDNA配列のインビトロまたはインビボでの転写により産生され得る。特定の部分を使用して、本明細書中に記載されるような、コードされるポリペプチドを調製し得る。さらに、またはあるいは、コードされるポリペプチドがインビボで産生されるように、患者に対して一部が投与され得る(例えば、WT1ポリペプチドをコードするcDNA構築物を有する樹状細胞のような抗原提示細胞をトランスフェクトし、そしてそのトランスフェクトされた細胞を患者に投与することにより)。
【0044】
WT1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは一般的に、インビトロまたはインビボにおいてそのポリペプチドを産生するために使用され得る。コード配列に相補的なWT1ポリヌクレオチド(すなわち、アンチセンスポリヌクレオチド)はまた、プローブとしてまたはWT1発現を阻害するために使用され得る。アンチセンスRNAに転写され得るcDNA構築物もまた、組織の細胞に導入され、アンチセンスRNAの産生を促進し得る。
【0045】
任意のポリヌクレオチドがさらに改変され、インビボにおける安定性を増加し得る。可能な改変には以下が挙げられるが、これらに限定されない;5’および/または3’末端
における隣接配列の付加;骨格におけるホスホジエステラーゼ結合に代わるホスホロチオネートまたは2’O−メチルの使用;および/または非伝統的な塩基(例えば、イノシン、キューオシン、ワイブトシン)、ならびにアデニン、シチジン、グアニン、チミン、およびウリジンのアセチル形態、メチル形態、チオ形態および他の改変形態の包含。
【0046】
本明細書中に記載されるようなヌクレオチド配列が、確立された組換えDNA技術を使用して、種々の他のヌクレオチド配列に結合され得る。例えば、ポリヌクレオチドは、任意の種々のクローニングベクターにクローン化され得る、そのベクターには、プラスミド、ファージミド、λファージ誘導体およびコスミドが挙げられる。特定の目的のベクターには、発現ベクター、複製ベクター、プローブ産生ベクターおよび配列決定ベクターが挙げられる。一般的には、ベクターは、少なくとも1つの生物体において機能的な複製起点、都合のよい制限エンドヌクレアーゼ部位および1つ以上の選択マーカーを含む。他のエレメントは、所望される用途に依存し、そして当業者において明らかである。
【0047】
特定の実施態様において、ポリヌクレオチドは、哺乳動物の細胞に入り、そしてそこで発現することを可能にするように処方され得る。以下に記載されるように、このような処方物は、治療目的のために特に有用である。当業者は、標的細胞においてポリヌクレオチドの発現を達成するための多くの方法が存在すること、および任意の適切な方法が使用され得ることを理解する。例えば、ポリヌクレオチドがウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルスまたはワクシニアウイルスまたは他にポックスウイルス(例えば鳥類ポックスウイルス))に組み込まれ得る。DNAをこのようなべクターに組み込むための技術は、当業者において周知である。さらにレトロウイルスベクターは、選択マーカー(形質導入された細胞の同定または選択を援助するために)についての遺伝子および/またはベクターを標的特異的にするための標的部分(例えば、特定の標的細胞上のレセプターに対するリガンドをコードする遺伝子)を伝達または組み込み得る。標的化はまた、当業者において公知の方法により、抗体を使用して達成され得る。例えば、腫瘍防御および養子免疫療法実験(腫瘍あるいは白血病増殖阻害またはこのような細胞の溶解を実証するため)を実施するために使用され得るWT1陽性腫瘍モデルを樹立する際の使用のために、そのようなベクター内のcDNA構築物を使用して、ヒトまたは動物細胞株にトランスフェクトし得る。
【0048】
ポリヌクレオチドについての他の治療的処方物は、コロイド分散系(例えば、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフィア、ビーズ)および脂質ベースの系(水中油(oil−in−water)、エマルジョン、ミセル、混合ミセルおよびリポソームが挙げられる)を含む。インビトロおよびインビボにおける送達ビヒクルとして使用するために好ましいコロイド系はリポソームである(すなわち、人工膜小胞)。このような系の調製および使用は、当該分野において周知である。
【0049】
(抗体およびそのフラグメント)
本発明は、さらにWT1ポリペプチドに特異的に結合する結合薬剤(例えば、抗体、およびその抗原結合フラグメント)を提供する。本明細書中で使用されるように、薬剤がWT1ポリペプチドと検出可能なレベル(例えば、ELISA内)で反応し、類似の条件下で、関連しないタンパク質と検出可能に反応しない場合、薬剤は「特異的に結合する」と言われる。本明細書中で使用される場合、「結合」とは、「複合体」が形成されるような2つの別々の分子間の非共有結合的会合を言う。結合する能力は、例えは、その複合体の形成についての結合定数を決定することにより評価され得る。この結合定数は、その複合体の濃度をその成分濃度の積で除算して得られた値である。一般的に、複合体形成についての結合定数が約103L/molを超える場合、2つの化合物は、本発明の文脈中にお
いて「結合する」と言われる。この結合定数は、当該分野において周知の方法を使用して決定され得る。
【0050】
上記の要求を満足する任意の薬剤が結合薬剤となり得る。好ましい実施態様において、結合薬剤は、抗体であるか、またはその抗原結合フラグメントである。特定の抗体が、例えば、Santa Cruz Biotechnology(Santa Cruz,CA)から商業的に入手可能である。あるいは、抗体は、当業者に公知の任意の種々の技術により調製され得る。例えば、HarlowおよびLane,Antibodies:A
Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,1988を参照のこと。一般的に、抗体は、細胞培養技術により産生され得、その技術には本明細書中に記載されるようなモノクローナル抗体の産生、または組換え抗体の産生を可能にするために、適切な細菌細胞宿主または哺乳動物細胞宿主に抗体遺伝子をトランスフェクトすることによるものが挙げられる。1つの技術において、ポリペプチドを含む免疫原は、初めに任意の広範な種々の哺乳動物に注射される(マウス、ラット、ウサギ、ヒツジまたはヤギ)。この工程において、本発明のポリペプチドは改変を伴わずに免疫原として作用し得る。あるいは、特に比較的短いポリペプチドに対して、ポリペプチドがキャリアタンパク質(例えば、ウシ血清アルブミンまたはキーホールリンペットヘモシアニン)に結合される場合、優れた免疫応答が誘発され得る。この免疫原は、好ましくは、1つ以上のブースター免疫を組み込んだ予め決定されたスケジュールに従って、動物宿主に注射され、そしてこの動物は定期的に採血される。次いで、このペプチドに対して特異的なポリクローナル抗体は、そのような抗血清から、例えば適切な固形支持体と結合されたポリペプチドを使用するアフィニティークロマトグラフィーによって精製され得る。
【0051】
目的の抗原性ポリペプチドに対して特異的なモノクローナル抗体が、例えば、KohlerおよびMilstein(Eur.J.Immunol.6:511−519、1976)の技術およびそのさらに改善された技術を使用して調製され得る。手短に言うと、これらの方法は、所望される特異性(すなわち、目的のポリペプチドとの反応性)を有する抗体を産生し得る不死細胞株の調製を含む。このような細胞株が、例えば、上記のように免疫化された動物から得られた脾臓細胞から産生され得る。次いで、この脾臓細胞は、例えば、ミエローマ細胞融合パートナー(好ましくは、この免疫化された動物と同系である)との融合により不死化される。種々の融合技術が使用され得る。例えば、脾臓細胞およびミエローマ細胞を数分間非イオン性界面活性剤と組み合わせ、次いで、ハイブリッド細胞の増殖を支持するが、ミエローマ細胞の増殖は支持しない選択培地上に低密度でプレートし得る。好ましい選択技術はHAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)選択を使用する。十分な時間(通常、約1〜2週間)の後、ハイブリッドのコロニーが観察される。単一コロニーが選択され、そしてその培養上清が、そのポリペプチドに対する結合活性について試験される。高い反応性および特異性を有するハイブリドーマが好ましい。
【0052】
モノクローナル抗体が、増殖するハイブリドーマコロニーの上清から単離され得る。さらに、種々の技術(例えば、適切な脊椎動物宿主(例えば、マウス)の腹腔内へのハイブリドーマ細胞株の注入)が、収率を増強するために使用される。次いで、モノクローナル抗体が腹水または血液から収集され得る。混入物は、従来の技術(例えば、クロマトグラフィー、ゲルろ過、沈澱および抽出)によって抗体から除去され得る。本発明のポリペプチドは、精製プロセス(例えば、アフィニティークロマトグラフィー工程)において使用され得る。
【0053】
特定の実施態様において、抗体の抗原結合フラグメントの使用が好まれ得る。そのようなフラグメントには、Fabフラグメントが挙げれるが、これは標準的な技術を使用して調製され得る。手短に言うと、免疫グロブリンが、プロテインAビーズカラム上のアフィニティークロマトグラフィーにより、ウサギ血清から精製され得(HarlowおよびL
ane、Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory、1988)、そしてFabフラグメントおよびFcフラグメントを産生するためにパパインにより消化され得る。FabフラグメントおよびFcフラグメントが、プロテインAビーズカラム上のアフィニティークロマトグラフィーにより分離され得る。
【0054】
モノクローナル抗体およびそのフラグメントは、1以上の治療剤に結合され得る。この点に関して適切な薬剤は、例えば、自己骨髄をインビトロでパージするために使用され得る、放射性トレーサーおよび化学療法剤を含む。代表的な治療剤は、放射性核種、分化誘導剤、薬物、毒素、およびそれらの誘導体を含む。好ましい放射性核種は、90Y、123I
、125I、131I、186Re、188Re、211At、および212Biを含む。好ましい薬物は、メトトレキセート、ならびにピリミジンアナログおよびプリンアナログを含む。好ましい分化誘導剤は、ホルボールエステルおよび酪酸を含む。好ましい毒素は、リシン、アブリン、ジフテリア毒素、コレラ毒素、ゲロニン(gelonin)、Pseudomonas外毒素、Shigella毒素、およびアメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質を含む。診断目的については、放射性薬剤の結合が、転移の追跡を容易にするためか、またはWT1−陽性腫瘍の位置を決定するために、使用され得る。
【0055】
治療剤は、直接的または間接的(例えば、リンカー基を通じて)のいずれかで、適切なモノクローナル抗体に結合(例えば、共有結合)され得る。薬剤と抗体との間の直接的な反応は、各々が他方と反応し得る置換基を保有する場合に可能である。例えば、一方に対する求核基(例えば、アミノ基またはスルフヒドリル基)は、カルボニル含有基(例えば、無水物または酸ハライド)と、または他方に対する良好な脱離基(例えば、ハライド)を含むアルキル基と反応することが可能であり得る。
【0056】
あるいは、治療剤および抗体をリンカー基を通じて結合させることが所望され得る。リンカー基は、結合能力を妨害することを回避するために、薬剤から抗体を離すスペーサーとして機能し得る。リンカー基はまた、薬剤または抗体上の置換基の化学反応性を増大させるように働き得、それにより結合効率を増大させる。化学反応性における増大はまた、薬剤、または薬剤上の官能基の使用を容易にし得るが、これは、そうでなければ可能ではない。
【0057】
種々の二官能性試薬または多官能性試薬(ホモ官能性およびヘテロ官能性の両方)(例えば、Pierce Chemical Co.、Rockford、ILのカタログに記載されるもの)が、リンカー基として用いられ得ることは、当業者に明らかである。結合は、例えば、アミノ基、カルボキシル基、スルフヒドリル基または酸化した糖質残基を通じてもたらされ得る。このような方法論を記載している多数の参考文献(例えば、Rodwellらに対する米国特許第4,671,958号)が存在する。
【0058】
本発明の免疫結合体の抗体部分を含まないときに治療剤がより強力である場合、細胞中へのインタナリゼーションの間またはその際に切断可能であるリンカー基を使用することが所望され得る。多くの異なる切断可能なリンカー基が、記載されている。これらのリンカー基からの薬剤の細胞内放出についての機構は、ジスルフィド結合の還元による切断(例えば、Spitlerに対する米国特許第4,489,710号)、光不安定結合の照射による切断(例えば、Senterらに対する米国特許第4,625,014号)、誘導体化されたアミノ酸側鎖の加水分解による切断(Kohnらに対する米国特許第4,638,045号)、血清補体媒介加水分解による切断(例えば、Rodwellらに対する米国特許第4,671,958号)、および酸触媒加水分解による切断(例えば、Blattlerらに対する米国特許第4,569,789号)を含む。
【0059】
1よりも多くの薬剤を抗体に結合させることが所望され得る。1つの実施態様では、薬剤の複数の分子が、1つの抗体分子に結合され得る。別の実施態様では、1よりも多い型の薬剤が、1つの抗体に結合され得る。特定の実施態様にも関わらず、1よりも多い薬剤を有する免疫結合体が、種々の様式で調製され得る。例えば、1よりも多い薬剤が、抗体分子に直接的に結合され得るか、または付着のために複数の部位を提供するリンカーが、使用され得る。あるいは、キャリアが使用され得る。キャリアは、種々の様式において薬剤を保有し得、この様式は、直接的かまたはリンカー基を通じてかのいずれかでの共有結合を含む。適切なキャリアは、アルブミンのようなタンパク質(例えば、Katoらに対する米国特許第4,507,234号)、ペプチドおよびアミノデキストランのようなポリサッカリド(Shihらに対する米国特許第4,699,784号)を含む。キャリアはまた、非共有結合によってか、またはリポソームビヒクル内でのカプセル化によって薬剤を保有し得る(例えば、米国特許第4,429,008号および同第4,873,088号)。放射性核種薬剤に特異的なキャリアは、放射性ハロゲン化低分子およびキレート化合物を含む。例えば、米国特許第4,735,792号は、代表的な放射性ハロゲン化低分子およびそれらの合成を開示している。放射性核種キレートは、金属、または金属酸化物、放射性核種を結合するためにドナー原子として窒素原子および硫黄原子を含むキレート化合物を含むキレート化合物から形成され得る。例えば、Davisonらに対する米国特許第4,673,562号は、代表的なキレート化合物およびそれらの合成を開示している。
【0060】
抗体および免疫結合体について、種々の投与経路が使用され得る。代表的には、投与は、静脈内、筋肉内、皮下、または切除された腫瘍のベッドにおいてである。抗体/免疫結合体の正確な用量は、使用される抗体、腫瘍上の抗原密度、および抗体のクリアランスの速度に依存して変動することが明らかである。
【0061】
また、WT1の免疫原性部分を模倣する抗イディオタイプ抗体が、本明細書中に提供される。このような抗体は、周知の技術を使用して、WT1の免疫原性部分に特異的に結合する、抗体、またはその抗原結合フラグメントに対して惹起され得る。WT1の免疫原性部分を模倣する抗イディオタイプ抗体は、本明細書中に記載されるように、WT1の免疫原性部分に特異的に結合する、抗体、またはその抗原結合フラグメントに結合する抗体である。
【0062】
(T細胞)
免疫治療組成物はまた、またはあるいは、WT1に特異的なT細胞を含む。このような細胞は、一般に、標準的な手順を使用して、インビトロまたはエキソビボで調製され得る。例えば、T細胞は、市販の細胞懸濁系(例えば、CellPro Inc.Bothell WAから入手可能なCEPRATETM系)を使用して、哺乳動物(例えば、患者)の骨髄、末梢血あるいは骨髄または末梢血の画分内に存在し得る(またはそれらから単離され得る)(米国特許第5,240,856号;米国特許第5,215,926号;WO89/06280;WO91/16116およびWO92/07243もまた参照のこと)。あるいは、T細胞は、関連しているかまたは関連していない、ヒト、非ヒト動物、細胞株または培養物に由来し得る。
【0063】
T細胞は、WT1ポリペプチド、WT1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および/またはWT1ポリペプチドを発現する抗原提示細胞(APC)で刺激され得る。このような刺激は、WT1ポリペプチドに特異的であるT細胞の生成を許容するに十分な条件下および時間で行われる。好ましくは、WT1ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、抗原特異的T細胞の生成を容易にする、送達ビヒクル(例えば、ミクロスフェア)内に存在する。簡潔には、T細胞は、慣用的な技術によって(例えば、末梢血リンパ球のFicoll/Hypaque密度勾配遠心分離によって)、患者または関連しているかも
しくは関連していないドナーから単離され得、WT1ポリペプチドとインキュベートされる。例えば、T細胞は、WT1ポリペプチド(例えば、5μg〜25μg/ml)または匹敵する量のWT1ポリペプチドを合成している細胞とともに、37℃で2〜9日間(代表的には4日間)インビトロでインキュベートされ得る。コントロールとして働くWT1ポリペプチドの非存在下で、T細胞サンプルの別々のアリコートをインキュベートすることが所望され得る。
【0064】
T細胞は、このT細胞がWT1ポリペプチドでコーティングされているか、またはこのようなポリペプチドをコードする遺伝子を発現している標的細胞を殺傷する場合に、WT1ポリペプチドに特異的であるとみなされる。T細胞の特異性は、任意の種々の標準的な技術を使用して評価され得る。例えば、クロム放出アッセイまたは増殖アッセイにおいては、陰性コントロールと比較して、溶解および/または増殖における2倍を超える上昇の刺激指数は、T細胞特異性を示す。このようなアッセイは、例えば、Chenら、Cancer Res.54:1065〜1070、1994に記載されるように行われ得る。あるいは、T細胞の増殖の検出が、種々の公知の技術によって達成され得る。例えば、T細胞増殖は、DNA合成の上昇した速度を測定することによって(例えば、トリチウム化チミジンでT細胞の培養物をパルス標識し、そしてDNA中に取り込まれたトリチウム化チミジンの量を測定することによって)検出され得る。T細胞増殖を検出する他の様式は、インターロイキン−2(IL−2)産生、Ca2+フラックス、または色素(例えば、3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニル−テトラゾリウム)の取り込みにおける上昇を測定することを包含する。あるいは、リンホカイン(例えば、インターフェロンγ)の合成が、測定され得るか、またはWT1ポリペプチドに応答し得るT細胞の相対数が、定量され得る。サイトカイン放出(例えば、TNFまたはIFN−γ)のレベルにおける2倍の上昇がT細胞活性化を示す標準的なサイトカインアッセイを使用して測定した場合に、WT1ポリペプチド(200ng/ml〜100μg/ml、
好ましくは100ng/ml〜25μg/ml))との3〜7日間の接触は、T細胞の増殖において少なくとも2倍の上昇を生じるはずであり、そして/または上記のような2〜3時間の接触は、T細胞の活性化を生じるはずである(Coliganら、Current Protocols in Immunology、第1巻、Wiley Interscience(Greene 1998)を参照のこと)。WT1特異的T細胞は、標準的な技術を使用して拡大され得る。好ましい実施態様において、このT細胞は、患者または関連しているか、もしくは関連していないドナーに由来し、そして刺激および拡大の後に患者に投与される。
【0065】
WT1ポリペプチド、ポリヌクレオチド、またはWT1発現APCに応答して活性化されたT細胞は、CD4+および/またはCD8+であり得る。CD4+またはCD8+T細胞の特異的活性化が、種々の様式で検出され得る。特異的T細胞活性化を検出するための方法は、T細胞の増殖、サイトカイン(例えば、リンホカイン)の産生、または細胞溶解性活性の生成(すなわち、WT1に特異的な細胞傷害性T細胞の生成)を検出することを包含する。CD4+T細胞については、特異的T細胞活性化を検出するために好ましい方法
は、T細胞の増殖の検出である。CD8+細胞については、特異的T細胞活性化を検出す
るために好ましい方法は、細胞溶解性活性の生成の検出である。
【0066】
治療目的については、WT1ポリペプチド、ポリヌクレオチド、またはAPCに応答して増殖するCD4+T細胞またはCD8+T細胞は、インビトロまたはインビボのいずれかで数の上では増殖され得る。インビトロでのこのようなT細胞の増殖は、種々の様式で達成され得る。例えば、T細胞は、T細胞増殖因子(例えば、インターロイキン−2)、および/またはWT1ポリペプチドを合成する刺激性細胞を添加してか、または添加することなく、WT1ポリペプチドに再び曝露され得る。刺激性細胞の添加は、CD8+T細胞
応答を生成する場合に好ましい。T細胞は、WT1ポリペプチドでの断続的な再刺激に応
答する特異性を保持することで、インビトロで多数に増殖され得る。簡潔には、一次的なインビトロ刺激(IVS)については、多数のリンパ球(例えば、4×107よりも多い
)が、ヒト血清を含む培地を有するフラスコ中に置かれ得る。WT1ポリペプチド(例えば、10μg/mlでのペプチド)が、破傷風毒素(例えば、5μg/ml)とともに、直接的に添加され得る。次いで、これらのフラスコが、インキュベートされ得る(例えば、37℃で7日間)。第2のIVSについては、次いで、T細胞が収集され、そして2〜3×107の照射された末梢血単核細胞を有する新しいフラスコ中に置かれる。WT1ポ
リペプチド(例えば、10μg/ml)が、直接的に添加される。これらのフラスコが、37℃で7日間インキュベートされる。第2のIVSの2日および4日後に、2〜5ユニットのインターロイキン−2(IL−2)が、添加され得る。第3のIVSについては、T細胞は、ウェル中に置かれ得、そしてこのペプチドでコーティングされた、個体独自のEBV形質転換B細胞で刺激され得る。IL−2が、各々の周期の2日目および4日目に添加され得る。これらの細胞が特異的な細胞傷害性T細胞であることが示されるとすぐに、これらは、2、4および6日目により多いIL−2(20ユニット)を用いて、10日の刺激周期を使用して拡大され得る。
【0067】
あるいは、WT1ポリペプチドの存在下で増殖する1以上のT細胞が、クローニングによって、数の上で拡大され得る。細胞をクローニングするための方法は、当該分野において公知であり、そして限界希釈を含む。応答性T細胞は、密度勾配遠心分離およびヒツジ赤血球細胞ロゼッティングにより感作された患者の末梢血から精製され得、そして照射された自己充填細胞(autologous filler cell)の存在下で名目上の抗原で刺激することによって培養物中で樹立され得る。CD4+T細胞株を生成するた
めに、WT1ポリペプチドが、抗原性刺激として使用され、そしてエプスタイン−バーウイルスでの感染により不死化された自己末梢血リンパ球(PBL)またはリンパ芽球腫細胞株(LCL)は、抗原提示細胞として使用される。CD8+T細胞株を生成するために
、WT1ポリペプチドを産生する発現ベクターでトランスフェクトされた自己抗原提示細胞が、刺激性細胞として使用され得る。樹立されたT細胞株は、1×106の照射された
PBL細胞またはLCL細胞および組換えインターロイキン−2(rIL−2)(50U/ml)を有する96ウェル平底プレートにおける1ウェルあたり0.5の細胞の頻度で、刺激されたT細胞をプレートすることによって抗原刺激の2〜4日後にクローニングされ得る。樹立されたクローン増殖を有するウェルは、最初のプレーティングのおよそ2〜3週間あとに同定され、そして自己抗原提示細胞の存在下で適切な抗原で再刺激され、次いで続いて、抗原刺激の2〜3日後での低用量のrIL2(10U/ml)の添加によって拡大され得る。T細胞クローンは、およそ2週間毎の抗原およびrIL2での定期的な再刺激によって24ウェルプレートにおいて維持され得る。
【0068】
特定の実施態様では、同種異系T細胞が、インビボおよび/またはインビトロでプライムされ得る(すなわち、WT1に感作される)。このようなプライミングは、WT1ポリペプチド、このようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたはこのようなポリペプチドを産生する細胞と、T細胞とを、T細胞をプライムすることを許容する条件下および時間で、接触させることによって達成され得る。一般に、T細胞は、例えば、本明細書中に記載される標準的な増殖、クロム放出および/またはサイトカイン放出アッセイにより測定されるように、WT1ポリペプチドとの接触がT細胞の増殖および/または活性化を生じる場合に、プライムされるとみなされる。陰性コントロールと比較して、増殖または溶解における2倍よりも大きい上昇、およびサイトカインレベルにおける3倍よりも大きい上昇の刺激指数は、T細胞特異性を示す。インビトロでプライムされた細胞は、例えば、骨髄移植において、またはドナーリンパ球注入として、用いられ得る。
【0069】
(薬学的組成物およびワクチン)
特定の局面において、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、抗体および/またはT細胞が
、薬学的組成物またはワクチンに組み込まれ得る。あるいは、薬学的組成物は、WT1ポリヌクレオチドでトランスフェクトされた抗原提示細胞(例えば、樹状細胞)を含み得、この結果、この抗原提示細胞は、WT1ポリペプチドを発現する。薬学的組成物は、1以上のこのような化合物または細胞、および薬理学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤を含む。特定のワクチンは、1以上のそのような化合物または細胞、および非特異的免疫応答エンハンサー(例えば、アジュバントまたはリポソーム(これらの中に化合物が取り込まれる))を含み得る。薬学的組成物およびワクチンは、送達系(例えば、米国特許第4,897,268号および同第5,075,109号に開示される生分解性ミクロスフェアのような)をさらに含み得る。本発明の範囲内の薬学的組成物およびワクチンはまた、生物学的に活性または不活性であり得る、他の化合物を含み得る。
【0070】
特定の実施態様において、薬学的組成物およびワクチンは、患者(例えば、ヒト)においてWT1ポリペプチドに特異的なT細胞応答を誘発するように設計される。一般的に、T細胞応答は、比較的短いポリペプチド(例えば、ネイティブWT1ポリペプチドの23未満の連続アミノ酸残基、好ましくは4〜16の連続残基、より好ましくは、8〜16の連続残基、およびなおより好ましくは、8〜10の連続残基を含む)を介して支持され得る。あるいは、またはさらに、ワクチンは、T細胞応答を優先的に増強する非特異的免疫応答エンハンサーを含み得る。換言すると、この免疫応答エンハンサーは、WT1ポリペプチドに対するT細胞応答のレベルを、抗体応答が増強される量より比例的により多い量に増強し得る。例えば、標準的なオイルベースのアジュバント(例えば、CFA)と比較する場合、T細胞応答を優先的に増強する免疫応答エンハンサーは、WT1ネガティブコントロール細胞株に比べて増殖性T細胞応答を少なくとも2倍、溶解性応答を少なくとも10%、および/またはT細胞の活性化を少なくとも2倍増強し得るが、抗体応答を検出可能に増強しない。WT1ポリペプチドに対するT細胞応答または抗体応答が増強される量は、一般的に、当該分野で公知の任意の代表的技術(例えば、本明細書中に提供される技術)を使用して決定され得る。
【0071】
薬学的組成物またはワクチンは、上記のようなポリペプチドの1以上をコードするDNAを含み得、その結果、このポリペプチドはインサイチュで生成される。上記のように、DNAは、当業者に公知の種々の送達系のいずれかの中に存在し得、これらの送達系としては、核酸発現系、細菌発現系およびウイルス発現系ならびに哺乳動物発現系が挙げられる。適切な核酸発現系は、患者における発現に必要なDNA配列、cDNA配列またはRNA配列(例えば、適切なプロモーターおよび終結シグナル)を含む。細菌送達系は、細菌(例えば、Bacillus−Calmette−Guerrin)の投与を含み、その細菌は、その細胞表面上でポリペプチドの免疫原性部分を発現する。好ましい実施態様において、DNAは、ウイルス発現系(例えば、ワクシニアウイルスまたは他のポックスウイルス、レトロウイルス、あるいはアデノウイルス)を使用して導入され得、これらの発現系は、非病原性(欠損性)の複製コンピテントなウイルスの使用を含み得る。このような発現系にDNAを組み込むための技術は、当業者に周知である。このDNAはまた、例えば、Ulmerら、Science 259:1745−1749、1993に記載され、そしてCohen,Science 259:1691−1692、1993に総説されるように、「裸」であり得る。裸のDNAの取り込みは、生分解性ビーズ上にこのDNAをコートすることによって増加され得、このビーズは、細胞に効率的に輸送される。
【0072】
上記のように、薬学的組成物またはワクチンは、WT1ポリペプチドを発現する抗原提示細胞を含み得る。治療目的のために、本明細書中に記載されるように、抗原提示細胞は、好ましくは、自己の樹状細胞である。このような細胞は、Reevesら、Cancer Res.56:5672−5677,1996;Tutingら、J.Immunol.160:1139−1147,1998;およびNairら、Nature Bio
technol.16:364−369,1998に記載のような、標準的な技術を使用して調製およびトランスフェクトされ得る。抗原提示細胞の表面上のWT1ポリペプチドの発現は、本明細書中に記載のような、インビトロ刺激および標準的な増殖、ならびにクロム放出アッセイによって確証され得る。
【0073】
当業者に公知の任意の適切なキャリアは、本発明の薬学的組成物において使用され得るが、キャリアの型は、投与形態に依存して変化する。本発明の組成物は、任意の適切な投与形式(例えば、局所的投与、経口投与、経鼻投与、静脈内投与、頭蓋内投与、腹腔内投与、皮下投与または筋肉内投与を含む)について処方され得る。非経口投与(例えば、皮下注射)のために、キャリアは、好ましくは、水、生理食塩水、アルコール、脂肪、ワックスまたは緩衝液を含む。経口投与のために、上記のキャリアのいずれか、または固体キャリア(例えば、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロース、および炭酸マグネシウム)が、使用され得る。生分解性ミクロスフェア(例えば、ポリ乳酸ポリグリコール酸)もまた、本発明の薬学的組成物のためにキャリアとして使用され得る。特定の局所適用のために、周知の成分を使用するクリームまたはローションのような処方物が、好ましい。
【0074】
このような組成物はまた、緩衝液(例えば、中性の緩衝化生理食塩水またはリン酸緩衝化生理食塩水)、炭水化物(例えば、グルコース、マンノース、スクロースまたはデキストラン)、マンニトール、タンパク質、ポリペプチドまたはアミノ酸(例えば、グリシン)、抗酸化剤、キレート剤(例えば、EDTAまたはグルタチオン)、アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム)および/または保存剤を含み得る。あるいは、本発明の組成物は、凍結乾燥物として処方され得る。化合物はまた、周知の技術を使用してリポソーム内にカプセル化され得る。
【0075】
任意の種々の非特異的免疫応答エンハンサー(例えば、アジュバント)が、本発明のワクチンにおいて使用され得る。多くのアジュバントは、迅速な異化から抗原を保護するように設計された物質(例えば、水酸化アルミニウムまたは鉱油)、および免疫応答の刺激物質(例えば、リピドA、Bortadella pertussisまたはMycobacterium tuberculosis誘導タンパク質)を含む。適切な非特異的免疫応答エンハンサーとしては、以下が挙げられる:ミョウバンベースのアジュバント(例えば、Alhydrogel、Rehydrogel、リン酸アルミニウム、Algammulin、水酸化アルミニウム);オイルベースのアジュバント(フロイントアジュバント(FA)、Specol、RIBI、TiterMax、Montanide ISA50またはSeppic MONTANIDE ISA 720);サイトカイン(例えば、GM−CSFまたはFlat3リガンド);ミクロスフェア;非イオン性ブロックコポリマーベースのアジュバント;ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDA)ベースのアジュバントAS−1、AS−2(Smith Kline Beecham);Ribi Adjuvant系ベースのアジュバント:QS21(Aquila);サポニンベースのアジュバント(粗サポニン、サポニンQuil A);ムラミルジペプチド(MDP)ベースのアジュバント(例えば、SAF(微小流動体化(microfluidized)形態のSyntexアジュバント(SAF−m)));ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDA);ヒト補体ベースのアジュバントm.vaccaeおよび誘導体;免疫刺激複合体(iscom)ベースのアジュバント;不活性化毒素;および弱毒化した感染因子(例えば、M.tuberculosis)。
【0076】
上記のように、特定の実施態様において、免疫応答エンハンサーは、WT1ポリペプチドに対するT細胞応答(例えば、CD4+および/またはCD8+)を優先的に誘発または増強する、それらの能力について選択される。このような免疫応答エンハンサーは、当該
分野で周知であり、そしてこれには、以下が挙げられる(しかし、これらに限定されない):Montanide ISA50、Seppic MONTANIDE ISA 720、サイトカイン(例えば、GM−CSFまたはFlat3リガンド)、ミクロスフェア、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDA)ベースのアジュバント、AS−1(Smith Kline Beecham)、AS−2(Smith Kline Beecham)、Ribi Adjuvant系ベースのアジュバント、QS21(Aquila)、サポニンベースのアジュバント(粗サポニン、サポニンQuil A)、微小流動体化形態のSyntexアジュバント(SAF−m)、MV、ddMV(Genesis)、免疫刺激複合体(iscom)ベースのアジュバントおよび不活性化毒素。
【0077】
本明細書中に記載される組成物およびワクチンは、徐放性処方物(すなわち、投与後に化合物の緩やかな放出をもたらす、カプセルまたはスポンジのような処方物)の一部として投与され得る。このような処方物は、一般的に、周知の技術を使用して調製され得、そして例えば、経口、直腸または皮下の埋め込みによるか、または所望の標的部位への埋め込みによって投与され得る。徐放性処方物は、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、抗体または細胞を含み得、これらは、キャリアマトリックス中に分散されるか、そして/または速度制御性の膜に囲まれたリザーバ内に含まれる。このような処方物内での使用のためのキャリアは、生体適合性であり、そしてまた生分解性であり得;好ましくは、処方物は、比較的一定レベルの活性成分の放出を提供する。徐放性処方物内に含まれる活性化合物の量は、埋め込み部位、速度および予想される放出時間、ならびに処置または予防されるべき状態の性質に依存する。
【0078】
(悪性疾患の治療)
本発明のさらなる局面において、本明細書中に記載の組成物およびワクチンは、悪性疾患(例えば、進行性または転移性の疾患、あるいは小さい腫瘍負荷(例えば、最小の残留性疾患)によって特徴付けられる疾患)の発症を阻害するために使用され得る。一般的に、このような方法は、WT1発現に関連する疾患を予防、遅延または処置するために使用され得る。換言すると、本明細書中に提供される治療方法は、既存のWT1関連疾患を処置するために使用され得るか、あるいは疾患を有さない患者において、またはWT1発現に未だ関連付けられていない疾患に罹患している患者において、このような疾患の発症を予防または遅延させるために使用され得る。
【0079】
本明細書中で使用される場合、疾患の経過の間のいくつかの時点で疾患細胞(例えば、腫瘍細胞)が、その同じ組織の正常細胞より高レベルでWT1ポリペプチドを検出可能に生成する場合、その疾患は、「WT1発現に関連する」。WT1発現の悪性疾患との関連は、WT1が腫瘍上に存在することを必要としない。例えば、WT1の過剰発現は、腫瘍の開始に関連し得るが、そのタンパク質の発現は、その後消失し得る。あるいは、WT1発現の増加によって特徴付けられない悪性疾患は、後の時点で、WT1発現の増加によって特徴付けられる疾患に進行し得る。従って、疾患細胞が、増加レベルのWT1を先に発現したか、現在発現するか、または後に発現することが予想される任意の悪性疾患は、「WT1発現に関連する」するとみなされる。
【0080】
免疫治療は、任意の種々の技術を使用して実行され得、ここで、本明細書中に提供される化合物または細胞は、患者からWT1発現細胞を除去するように機能する。このような除去は、WT1またはWT1を発現する細胞に特異的な患者における免疫応答を増強または誘導する結果として生じ得る。あるいは、WT1発現細胞は、エキソビボで除去され得る(例えば、自己骨髄、末梢血、あるいは骨髄または末梢血の画分の処置によって)。骨髄または末梢血の画分は、当該分野の任意の標準的技術を使用して得られ得る。
【0081】
このような方法において、薬学的組成物およびワクチンは、患者に投与され得る。本明細書中で使用される場合、「患者」とは、任意の温血動物(好ましくは、ヒト)をいう。患者は、悪性疾患に罹患していてもよいし、していなくてもよい。従って、上記の薬学的組成物およびワクチンは、疾患の発生を予防するために(すなわち、予防的に)使用され得るか、または疾患に罹患した患者を処置するために(例えば、既存の疾患の進行および/または転移を、予防または遅延させるために)使用され得る。疾患に罹患した患者は、最小の残留性疾患(例えば、完全または部分的寛解における白血病患者中の低い腫瘍負荷、または外科的な放射線療法および/または化学療法後の腫瘍負荷の減少後の癌患者)を有し得る。このような患者は、再発を阻害するために免疫化され得る(すなわち、再発を予防または遅延させるか、あるいは再発の重篤度を低下させる)。特定の好ましい実施態様において、患者は、白血病(例えば、AML、CML、ALLまたは幼少期ALL)、脊髄形成異常症候群(MDS)または癌(例えば、胃腸癌、肺癌、甲状腺癌または乳癌、あるいは黒色腫)に罹患し、ここで、白血病の癌は、WT1陽性(すなわち、本明細書中に提供されるような、抗WT1抗体と検出可能に反応するか、または本明細書中に記載されるように、RT−PCRによって検出可能なレベルでWT1 mRNAを発現する)か、またはWT1発現細胞に対する自己免疫疾患に罹患する。
【0082】
本明細書中に提供される組成物は、単独か、あるいは手術、照射、化学療法および/または骨髄移植(自己、同系、同種異系または無関係の)のような従来の治療レジメンと組み合わせて使用され得る。以下により詳細に議論されるように、本明細書中に提供される結合剤およびT細胞は、自己性の幹細胞をパージするために使用され得る。このようなパージング(purging)は、例えば、骨髄移植あるいは血液またはその成分の輸血の前に有益であり得る。本明細書中に提供される結合剤、T細胞、抗原提示細胞(APC)および組成物は、さらに、インビトロおよび/またはインビボで、自己、同系、同種異系または無関係のWT1特異的T細胞を、拡大および刺激(または初回刺激)するために使用され得る。このようなWT1特異的T細胞は、例えば、ドナーリンパ球注入において使用され得る。
【0083】
投与の経路および頻度、ならびに投薬量は、個体間で変化し、そして標準的な技術を使用して容易に確立され得る。一般的に、薬学的組成物およびワクチンは、注射によって(例えば、皮内、筋肉内、静脈内または皮下)か、鼻内(例えば、吸入によって)にか、または経口的に投与され得る。いくつかの腫瘍において、薬学的組成物またはワクチンは、局所的に(例えば、直腸鏡検査(rectocoloscopy)、胃鏡検査、ビデオ内視鏡検査(videoendoscopy)、血管造影または当該分野で公知の他の方法によって)投与され得る。好ましくは、1〜10用量が、52週の期間にわたって投与され得る。好ましくは、6用量が、1ヶ月間隔で投与され、そしてブースターワクチン接種が、その後定期的に与えられ得る。代替的プロトコルは、個々の患者に適切であり得る。適切な用量は、上記のように投与される場合に、基底(すなわち、未処置)レベルより少なくとも10〜50%大きい、抗腫瘍免疫応答を促進し得る化合物の量である。このような応答は、患者における抗腫瘍抗体を測定することによってか、またはインビトロで患者の腫瘍細胞を殺傷し得る細胞溶解性エフェクター細胞のワクチン依存性の生成によってモニターされ得る。このようなワクチンはまた、非ワクチン接種患者と比較した場合に、ワクチン接種した患者において改善された臨床結果(例えば、より頻繁な完全または部分的寛解、あるいはより長い無疾患および/または全体敵生存)を導く免疫応答を引き起こし得るべきである。一般的に、1以上のポリペプチドを含む薬学的組成物およびワクチンについて、1用量に存在する各ポリペプチドの量は、約100μg〜5mgの範囲である。適切な用量サイズは、患者のサイズに伴って変化するが、代表的には、約0.1mL〜5mLの範囲である。
【0084】
一般的には、適切な投薬量および治療レジメは、治療的および/または予防的利点を提
供するに十分な量で活性な化合物を提供する。このような応答は、改善された臨床的な結果(例えば、より頻繁な完全または部分的寛解、またはより長く疾患がないこと、および/もしくは全体的な生存)を達成することによって、処置されていない患者と比較して処置された患者においてモニターされ得る。前から存在するWT1に対する免疫応答の増加は、一般的に、改善された臨床的な結果と相関する。このような免疫応答は、一般的に、標準的な増殖、細胞毒性、またはサイトカインアッセイを使用して評価され得る。これらは、処置の前後に患者から得られたサンプルを使用して実行され得る。
【0085】
さらなる局面において、WT1発現と関連する悪性疾患の発症を阻害するための方法は、上記のように、WT1ポリペプチドまたはWT1発現APCに対する応答において活性化された自系のT細胞の投与を包含する。このようなT細胞は、CD4+および/または
CD8+であり得、そして上記のように増殖され得る。T細胞は、悪性疾患の発症を阻害
するに有効な量で個体に投与され得る。代表的には、約1×109〜1×1011T細胞/
M2が、静脈内、腔内、または切除された腫瘍のベッド中で投与される。細胞の数および
投与の頻度が患者の応答に依存することは、当業者に明白である。
【0086】
特定の実施態様において、T細胞は、自系の骨髄移植の前に刺激され得る。このような刺激は、インビボまたはインビトロで生じ得る。インビトロの刺激については、患者から得られた骨髄および/または末梢血(または骨髄もしくは末梢血の画分)は、上記のようなT細胞の刺激を可能にするに十分な条件下および時間の間、WT1ポリペプチド、WT1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および/またはWT1ポリペプチドを発現するAPCと接触され得る。次いで、骨髄、末梢血幹細胞、および/またはWT1特異的T細胞は、標準的な技術を使用して患者に投与され得る。
【0087】
関連する実施態様において、関連するドナーまたは関連しないドナーのT細胞は、同系または同種異系の(関連するかまたは関連しない)骨髄移植の前に刺激され得る。このような刺激は、インビボまたはインビトロで起こり得る。インビトロの刺激については、関連するドナーまたは関連しないドナーから得られた骨髄および/または末梢血(または骨髄もしくは末梢血の画分)は、上記のようなT細胞の刺激を可能にするに十分な条件下および時間の間、WT1ポリペプチド、WT1ポリヌクレオチド、および/またはWT1ポリペプチドを発現するAPCと接触され得る。次いで、骨髄、末梢血幹細胞、および/またはWT1特異的T細胞は、標準的な技術を使用して患者に投与され得る。
【0088】
他の実施態様において、本明細書中に記載されるWT1特異的T細胞は、自系の骨髄、末梢血、または骨髄もしくは末梢血の画分(例えば、患者への投与前のCD34+富化末
梢血)からWT1を発現する細胞を取り除くために使用され得る。このような方法は、WT1を発現する細胞を、骨髄または末梢血中での骨髄細胞またはリンパ細胞の総数に対して10%未満まで、好ましくは5%未満まで、そしてより好ましくは1%未満までの減少させることを可能にするに十分な条件下で、またはそれを可能にするに十分な時間、骨髄またはPBをそのようなT細胞と接触されることによって実行され得る。このような細胞が取り除かれた程度は、例えば、定性的および定量的PCR分析、形態学、免疫組織化学、およびFACS分析のような標準的な方法によって容易に決定され得る。次いで、骨髄またはPB(またはそれらの画分)は、標準的な技術を使用して、患者に投与され得る。
【0089】
(診断的方法)
本発明はさらに、WT1発現と関連する悪性疾患を検出するための方法、およびそのような疾患のための免疫または治療の有効性をモニタリングするための方法を提供する。このような方法は、WT1タンパク質に特異的な免疫応答がこのような疾患に罹患した患者において検出され得、そしてこのような免疫応答を増強する方法は、予防的または治療的利点を提供し得るという、本発明における発見に基づく。
【0090】
WT1発現に関連する悪性疾患の存在または非存在を決定するために、患者は、WT1に特異的なT細胞のレベルについて試験され得る。特定の方法において、患者から単離されたCD4+および/またはCD8+T細胞を含む生物学的サンプルは、WT1ポリペプチド、WT1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および/またはWT1ポリペプチドを発現するAPCとともにインキュベートされ得、そして本明細書中に記載されるように、T細胞の特異的活性化の存在または非存在が検出される。適切な生物学的サンプルには、単離されたT細胞が含まれるが、これには限定されない。例えば、T細胞は、慣用的な技術によって(例えば、末梢血リンパ球のFicoll/Hypaque密度勾配遠心分離によって)患者から単離され得る。T細胞は、インビトロで、WT1ポリペプチド(例えば、5〜25μg/ml)と37℃で、2〜9日間(代表的には4日間)インキュベートされ得る。コントロールとして機能するために、WT1ポリペプチドの非存在下でT細胞サンプルの別のアリコートをインキュベートさせることが所望され得る。CD4+
T細胞については、活性化は、好ましくはT細胞の増殖を評価することによって検出される。CD8+T細胞については、活性化は、好ましくは細胞溶解活性を評価することによ
って検出される。疾患を有しない患者における、少なくとも2倍多い増殖のレベルおよび/または少なくとも20%多い細胞溶解性活性のレベルは、WT1発現に関連する悪性疾患の存在を示す。増殖のレベルおよび/または細胞溶解性活性と、治療に対する予想された応答との間のさらなる相関は、当該分野で周知の方法を用いて作製され得る。特に、より高い抗体応答、増殖応答、および/または溶解性応答を示す患者は、治療に対するより高い応答を示すことが予測され得る。
【0091】
他の方法において、患者から得られた生物学的サンプルは、WT1に特異的な抗体のレベルについて試験される。生物学的サンプルは、免疫複合体を形成するに十分な条件下および時間の間、WT1ポリペプチド、WT1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および/またはWT1ポリペプチドを発現するAPCとともにインキュベートされる。次いで、WT1ポリペプチドに特異的に結合する生物学的サンプル中でWT1ポリペプチドと抗体との間に形成された免疫複合体が、検出される。このような方法における使用のための生物学的サンプルは、抗体を含むことが予想される患者から得られた任意のサンプルであり得る。適切な生物学的サンプルには、血液、血清、腹水、骨髄、胸水、および脳脊髄液を含む。
【0092】
生物学的サンプルは、ポリペプチドと、WT1に特異的な抗体との間で免疫複合体を形成するに十分な条件下および時間の間、反応混合液中で、WT1ポリペプチドとともにインキュベートされる。例えば、生物学的サンプルおよびWT1ポリペプチドは、4℃で24〜38時間インキュベートされ得る。
【0093】
インキュベーション後、反応混合液は、免疫複合体の存在について試験される。WT1ポリペプチドと、生物学的サンプル中に存在する抗体との間に形成された免疫複合体の検出は、種々の公知の技術(例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)および酵素結合免疫吸着検定法(ELISA))によって達成され得る。適切なアッセイは、当該分野で周知であり、そして科学文献および特許文献に十分に記載される(例えば、HarlowおよびLane、Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,1988)。使用され得るアッセイには、以下が含まれるがこれらに限定されない:Davidら(米国特許第4,376,110号)の二重モノクローナル抗体サンドウィッチイムノアッセイ技術;モノクローナル−ポリクローナル抗体サンドウィッチアッセイ(Wideら、KirkhamおよびHunter編,Radioimmunoassay Mathods,E.and
S.Livingstone,Edinburgh,1970);Gordonらの「western blot」法(米国特許第4,452,901号);標識したリガンド
の免疫沈降(Brownら、J.Biol.Chem.255:4980−4983,1980);例えば、RainesおよびRoss(J.Biol.Chem.257:5154−5160,1982)によって記載される酵素結合免疫吸着検定法(ELISA);蛍光色素の使用を含む免疫細胞化学技術(Brooksら、Clin,Exp.Immunol.39:477,1980);および活性の中和(Bowen−Popeら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81;2396−2400,1984)。他のイムノアッセイには以下の米国特許に記載されるものが含まれるが、これらに限定されない:米国特許第3,817,827号;同第3,850,752号;同第3,901,654号;同第3,935,074号;同第3,984,533号;同第3,996,345号;同第4,034,074号;および同第4,098,876号。
【0094】
検出目的のために、WT1ポリペプチドは、標識されるか、または標識されないかのいずれかであり得る。標識されないWT1ポリペプチドは、凝集アッセイにおいて、または免疫複合体に結合する標識された検出試薬(例えば、WT1ポリペプチドに特異的に結合する抗体に結合し得る、抗免疫グロブリン、プロテインG、プロテインA、もしくはレクチンおよび二次抗体、またはそれらの抗原結合フラグメント)と組み合わせて使用され得る。WT1ポリペプチドが標識される場合、レポーター基は、当該分野で公知の、任意の適切なレポーター基であり得、これらは、放射性同位元素、蛍光基、発光基、酵素、ビオチン、および色素粒子であり得る。
【0095】
特定のアッセイにおいて、標識していないWT1ポリペプチドは、固体支持体上に固定化される。この固体支持体は、ポリペプチドが結合され得る、当業者にとって公知の任意の物質であり得る。例えば、この固体支持体は、マイクロタイタープレート中の試験ウェルまたはニトロセルロースもしくは他の適切なメンブレンであり得る。あるいは、その支持体は、ビーズまたはディスク(例えば、ガラス、ガラス繊維、ラテックス、または、ポリスチレンもしくはポリビニルクロライドのようなプラスチック材料)であり得る。この支持体はまた、磁気粒子または光ファイバーセンサー(例えば、米国特許第5,359,681号に開示されるもののような)であり得る。ポリペプチドは、特許文献および科学文献に十分に記載される、当業者に公知である種々の技術を用いて、固体支持体上に固定化され得る。本発明の文脈において、用語「固定化」とは、非共有結合的な結合(例えば、吸着)および共有結合的な結合(これは、抗原と支持体上の官能基との間の直接的な連結であり得るか、または架橋剤による連結であり得る)の両方をいう。マイクロタイタープレート中のウェルまたはメンブレンへの吸着による固定化が好ましい。このような場合において、吸着は、適切な緩衝液中で、適切な時間の間、WT1ポリペプチドを固体支持体と接触されることによって達成され得る。接触時間は温度によって変動し得るが、代表的には、約1時間と約1日間との間である。一般的に、プラスチックマイクロタイタープレート(例えば、ポリスチレンまたはポリビニルクロライド)のウェルを、約10ng〜約10μg、および好ましくは約100ng〜約1μgの量の範囲のポリペプチドと接触させることが、適切な量のポリペプチドを固定化するために十分である。
【0096】
固定化後に、支持体上の残存するタンパク質結合部位は、代表的にはブロックされる。当業者に公知である任意の適切なブロッキング剤(例えば、ウシ血清アルブミン、Tween20TM(Sigma Chemical Co.,St.Louis,MO)、熱不活化正常ヤギ血清(NGS)、またはBLOTTO(脱脂粉乳の緩衝化溶液であり、これはまた、保存剤、塩、および消泡剤も含む))。次いで、その支持体は、特異的な抗体を含むことが疑われる生物学的サンプルとともにインキュベートされる。そのサンプルは、巧みに適用され得るか、または、より頻繁には、それは、通常、少量(重量で0.1%〜5.0%)のタンパク質(例えば、BSA、NGS、またはBLOTTO)を含む緩衝溶液中で希釈され得る。一般的に、適切な接触時間(すなわち、インキュベーション時間)は、そのような抗体を含むサンプル中でWT1を特異的に結合する抗体の存在を検出する
に十分である時間の間である。好ましくは、その接触時間は、結合した抗体と結合していない抗体との間の平衡において達成される、少なくとも約95%の結合である結合のレベルを達成するに十分である。当業者は、平衡を達成するに十分な時間が、時間の間にわたって生じる結合のレベルをアッセイすることによって容易に決定され得ることを理解する。室温においては、約30分間のインキュベーション時間が一般的に十分である。
【0097】
次いで、結合していないサンプルは、適切な緩衝液(例えば、0.1% Tween20TMを含むPBS)で固体支持体を洗浄することによって除去され得る。次いで、免疫複合体を結合し、そしてレポーター基を含む検出試薬が添加され得る。その検出試薬は、結合抗体を検出するに十分な時間の間、免疫複合体とともにインキュベートされる。適切な時間の長さは、一般的に、時間の間にわたって生じる結合のレベルをアッセイすることによって決定され得る。次いで、結合していない検出試薬が除去され、そして結合した検出試薬が、レポーター基を用いて検出される。レポーター基を検出するために用いられる方法は、レポーター基の性質に依存する。放射活性基については、シンチレーション計数またはオートラジオグラフィー法が一般に適切である。分光学的な方法は、色素、発光基、および蛍光基を検出するために使用され得る。ビオチンは、異なるレポーター基(一般に、放射活性基もしくは蛍光基、または酵素)に結合されたアビジンを用いて検出され得る。酵素レポーター基(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼ、およびグルコースオキシダーゼ)は、一般に、基質の添加(一般に、特定の時間の間)によって検出され得、続いて、反応生成物の分光学的分析または他の分析によって検出され得る。利用される特定の方法に関わらず、バックグラウンド(すなわち、疾患を有しない個体から得られた生物学的サンプルについて観察されたレベル)よりも少なくとも2倍大きい結合した検出試薬のレベルは、WT1発現に関連する悪性疾患の存在を示す。
【0098】
一般的に、免疫または治療の有効性をモニタリングするための方法は、患者におけるWT1に特異的な抗体またはT細胞のレベルの変化をモニタリングする工程を含む。抗体レベルがモニタリングされる方法は、以下の工程を含み得る:(a)患者から得られた生物学的サンプルを、治療および免疫の前に、WT1ポリペプチドとともにインキュベートする工程、ここで、このインキュベーションは、免疫複合体が形成するに十分な条件下および時間の間、行われる;(b)WT1ポリペプチドと、WT1ポリペプチドに特異的に結合する、生物学的サンプル中の抗体との間で形成された免疫複合体を検出する工程;(c)治療または免疫後の患者から取られた第2の生物学的サンプルを用いて、工程(a)および(b)とを反復する工程;ならびに(d)第1および第2の生物学的サンプル中で検出される免疫複合体の数を比較する工程。あるいは、WT1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたはWT1ポリペプチドを発現するAPCが、WT1ポリペプチドの代わりに利用され得る。このような方法において、ポリヌクレオチドによってコードされるか、またはAPCによって発現されWT1ポリペプチドと、生物学的サンプル中の抗体との間の免疫複合体が検出される。
【0099】
T細胞活性化および/またはWT1特異的前駆体の数をモニターする方法は、以下の工
程を包含し得る:(a)治療または免疫前の患者から得られたCD4+細胞および/またはCD8+細胞を含む第1の生物学的サンプル(例えば、骨髄、末梢血、またはそれらの画分)を、WT1ポリペプチドと共にインキュベートする工程であって、T細胞の特異的な活性化、増殖、および/または溶解を可能にするに十分な条件および時間で、このインキュベーションを実施する、工程;(b)T細胞の活性化、増殖、および/または溶解の量を検出する工程;(c)CD4+ T細胞および/またはCD8+ T細胞を含み、かつ治療または免疫後の同一患者から採取された第2の生物学的サンプルを使用して、工程(a)および工程(b)を繰り返す工程;ならびに(d)第1の生物学的サンプルおよび第2の生物学的サンプルにおける、T細胞の活性化、増殖、および/または溶解の量を比
較する工程。あるいは、WT1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、またはWT1ポリペプチドを発現するAPCを、WT1ポリペプチドの代わりに使用し得る。
【0100】
このような方法における使用のための生物学的サンプルは、抗体、CD4+ T細胞および/またはCD8+ T細胞を含むことが予期される患者から得られる任意のサンプルであり得る。適切な生物学的サンプルとしては、血液、血清、腹水、骨髄、胸水、および脳脊髄液が挙げられる。第1の生物学的サンプルは、治療もしくは免疫の開始前に、または治療もしくはワクチン接種レジメンを通した途中(part way)で獲得され得る。第2の生物学的サンプルは、類似の様式であるが、さらなる治療または免疫後の時点で獲得されるべきである。第2の生物学的サンプルは、第1の生物学的サンプルの単離と第2の生物学的サンプルの単離との間に、少なくとも一部の治療または免疫が行われるという条件で、治療もしくは免疫の完了時またはその途中で獲得され得る。
【0101】
両方のサンプルについてのインキュベーション工程および検出工程を、一般に、上記のように実施し得る。第1のサンプルと相対的な第2のサンプルにおける免疫複合体の数の統計的に有意な増加は、首尾よい治療または免疫を反映する。
【0102】
以下の実施例は例示のために提供され、制限のためではない。
【0103】
(実施例)
(実施例1)
(血液学的悪性疾患を有する患者における、WT1に対する免疫応答の同定)
本実施例は、血液学的悪性疾患を有する患者において存在する免疫応答の同定を例証する。
【0104】
患者において予め存在するWT1特異的抗体応答を評価するため、AML、ALL、CMLおよび重篤な再生不良性貧血を有する患者の血清を、ウェスタンブロット分析を用いて分析した。ヒト白血病性細胞株K562(American
Type Culture Collection、Manassas、VA)由来のWT1を免疫沈降する能力について、血清を試験した。各々の場合において、免疫沈降物をゲル電気泳動により分離し、メンブレンに転写し、そして抗WT−1抗体であるWT180(Santa Cruz Biotechnology,Inc.、Santa Cruz、CA)でプローブした。このウェスタンブロット分析は、血液学的悪性疾患を有する患者において強力なWT1特異的抗体を同定した。AMLを有する患者についての結果を示す代表的なウェスタンブロットを、図2に示す。この患者の血清を使用して生成された免疫沈降物中の52kDタンパク質を、WT1特異的抗体により認識した。52kDタンパク質は、陽性コントロールと同じサイズに移動した。
【0105】
(実施例2)
(WT1を発現する細胞株で免疫したマウスにおける、WT1に対する抗体の同定)
本実施例は、インビボでWT1特異的抗体応答を誘導するための、WT1を発現する細胞の使用を例証する。
【0106】
白血病を有する患者において存在するWT1に対する抗体の検出は、WT1に対する免疫を誘発するために、WT1タンパク質に対して免疫することが可能であることを強力に暗示した。WT1に対する免疫がワクチン接種により生成され得るか否かを試験するために、TRAMP−C(B6起源のWT1陽性腫瘍細胞株)をマウスに注射した。簡潔には、雄性B6マウスを、皮下で5×106TRAMP−C細胞により免疫し、そして3週間
の間隔で5×106細胞により2回追加免疫した。最後の免疫の3週間後に血清を獲得し
、そして脾臓の単一細胞懸濁物を、25μMのβ−2−メルカプトエタノール、200ユ
ニット/mlのペニシリン、10mMのL−グルタミン、および10%のウシ胎仔血清を有するRPMI 1640培地(GIBCO)中で調製した。
【0107】
TRAMP−Cに対する免疫後に、免疫した動物におけるWT1特異的抗体応答が検出可能であった。代表的なウェスタンブロットを図3に示す。これらの結果は、WT1タンパク質に対する免疫が、WT1タンパク質に対する免疫応答を誘発し得ることを示す。
【0108】
(実施例3)
WT1ペプチドで免疫したマウスにおけるThおよび抗体応答の同定)
本実施例は、WT1ペプチドでの免疫が、WT1に特異的な免疫応答を誘発する能力を例証する。
【0109】
Abおよび増殖性T細胞応答を誘発するために適切なペプチドを、Th応答を誘発する能力を有するペプチドモチーフについて検索するTsitesプログラム(RothbardおよびTaylor、EMBO J.7:93−100、1988;Deavinら、Mol.Immunol.33:145−155、1996)に従って同定した。表1に示されるペプチドを、合成および配列決定した。
【0110】
【表1】
免疫のために、ペプチドを以下のようにグループ分けした:
群A:p6−22ヒト:1ml中に10.9mg(10μl=100μg)
p117−139ヒト/マウス:1ml中に7.6mg(14μl=100μg)
p244−262ヒト:1ml中に4.6mg(22μl=100μg)群B:p287−301ヒト/マウス:1ml中に7.2mg(14μl=100μg)
マウスp299−313;1ml中に6.6mg(15μl=100μg)
p421−435ヒト/マウス:1ml中に3.3mg(30μl=100μg)コントロール:(FBLペプチド 100μg)+CFA/IFA
コントロール:(CD45ペプチド 100μg)+CFA/IFA。
【0111】
群Aは、WT1のアミノ末端部分内に存在するペプチド(エキソン1)を含んだ。そして群Bは、他のDNA結合タンパク質に対する配列相同性を有する4つのジンクフィンガー領域を含むカルボキシ末端内に存在するペプチドを含んだ。群Bの中で、p287−301およびp299−313は、エキソン7(ジンクフィンガー1)由来であり、そしてp421−435は、エキソン10(ジンクフィンガーIV)由来であった。
【0112】
B6マウスを、WT1ペプチドの群またはコントロールペプチドで免疫した。ペプチドを、注射のために1mlの滅菌水中に溶解し、そしてB6マウスを3週間の間隔で3回免疫した。使用したアジュバントは、CFA/IFA、GM−CSF、およびMontinideであった。次いで、WT1に特異的な抗体の存在を、実施例1および2に記載のように決定し、そして増殖性T細胞応答を、標準的なチミジン取りこみアッセイを使用して評価した。このアッセイでは、細胞を抗原の存在下で培養し、そして取りこまれた放射能を測定することにより、増殖を評価した(Chenら、Cancer Res.54:1065−1070、1994)。詳細には、リンパ球を、1ウェルあたり2×105細胞
にて96ウェルプレート中で培養し、このウェルは4×105の照射した(3000ラド
)同系脾臓細胞および明示されたペプチドを有した。
【0113】
群Aとして明示されたペプチドの群によるマウスの免疫は、WT1に対する抗体応答を誘発した(図4)。ワクチンBに対する免疫後に全く抗体は検出されず、これはワクチンBでの免疫からのヘルパーT細胞応答の欠如と一致する。P117−139は、増殖性T細胞応答を誘発した(図5A〜5C)。刺激指数(SI)は、8と72との間を変動した。他のペプチド(P6−22およびP299−313)もまた、増殖性T細胞応答を誘発することが示された。P6−22での免疫は2.3の刺激指数(SI)を生じ、そしてP299−313での免疫は3.3のSIを生じた。陽性コントロールは、ConA刺激したT細胞、ならびに既知の抗原(例えば、CD45およびFBL)で刺激したT細胞、および同種異系T細胞株(DeBruijnら、Eur.J.Immunol.21:2963−2970、1991)を含んだ。
【0114】
図6Aおよび6Bは、ワクチンA(図6A)およびワクチンB(図6B)において各3つのペプチドについて観察された増殖性応答を示す。ワクチンAは、3と8との間(バルク線)を変動する刺激指数(SI)で、免疫ペプチドp6−22およびp117−139に対する増殖性T細胞応答を誘発した。p244−262に対する増殖応答は検出されなかった(図6A)。
【0115】
引き続くインビトロ刺激を、p6−22およびp117−139のみを使用する単一ペプチド刺激として実施した。p117−139でのワクチンA特異的T細胞株の刺激は、p6−22に対する応答を伴わずに、p117−139に対する増殖を生じた(図7A)。この株由来のクローンは、p117−139に特異的であった(図7B)。対照的に、p6−22でのワクチンA特異的T細胞株の刺激は、p117−139に対する応答を伴わずに、p6−22に対する増殖を生じた(図7C)。この株由来のクローンは、p6−22に特異的であった(図7D)。
【0116】
これらの結果は、WT1ペプチドでのワクチン接種が、WT1タンパク質に対する抗体応答および免疫ペプチドに対する増殖性T細胞応答を誘発し得ることを示す。
【0117】
(実施例4:WT1ペプチドで免疫したマウスにおけるCTL応答の誘導)
本実施例は、WT1ペプチドのCTL免疫を誘発する能力を例示する。
【0118】
クラスI MHCへの結合に適切なモチーフを有するペプチド(9マー)を、BIMAS HLAペプチド結合予測分析(Parkerら、J.Immunol.152:16
3,1994)を用いて同定した。このような分析で同定したペプチドを、表II〜XLIVに示す。これらの表の各々において、スコアは、示したMHC分子に対するペプチドの理論的結合親和性(解離の半減期)を反映する。
【0119】
Th応答を誘発する能力を有するペプチドモチーフを検索する、Tsitesプログラム(RothbardおよびTaylor,EMBO J. 7:93−100,1988;Deavinら、Mol.Immunol.33:145−155,1996)を用いて同定したペプチドを、図8Aおよび8B、ならびに表XLVにさらに示す。
【0120】
(表II:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA A1に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0121】
【表2】
(表III:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA A 0201に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0122】
【表3】
(表IV:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA A 0205に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0123】
【表4】
(表V:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA A24に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0124】
【表5】
(表VI:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA A3に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0125】
【表6】
(表VII:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA A68.1に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0126】
【表7】
(表VIII:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA A 1101に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0127】
【表8】
(表IX:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA A 3101に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0128】
【表9】
(表X:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA A 3302に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0129】
【表10】
(表XI:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA B14に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0130】
【表11】
(表XII:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA B40に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0131】
【表12】
(表XIII:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA B60に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0132】
【表13】
(表XIV:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA B61に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0133】
【表14】
(表XV:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA B62に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0134】
【表15】
(表XVI:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA B7に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0135】
【表16】
(表XVII:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA B8に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0136】
【表17】
(表XVIII:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA B 2702に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0137】
【表18】
(表XIX:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA B 2705に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0138】
【表19】
(表XX:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA B 3501に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0139】
【表20】
(表XXI:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA B 3701に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0140】
【表21】
(表XXII:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA B 3801に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0141】
【表22】
(表XXIII:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA B 3901に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0142】
【表23】
(表XXIV:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA B 3902に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0143】
【表24】
(表XXV:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA B 4403に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0144】
【表25】
(表XXVI:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA B 5101に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0145】
【表26】
(表XXVII:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA B 5102に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0146】
【表27】
(表XXVIII:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA B 5201に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0147】
【表28】
(表XXIX:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA B 5801に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0148】
【表29】
(表XXX:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA CW0301に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0149】
【表30】
(表XXXI:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA CW0401に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0150】
【表31】
(表XXXII:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA CW0602に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0151】
【表32】
(表XXXIII:ヒトWT1ペプチドのヒトHLA CW0702に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0152】
【表33】
(表XXXIV:ヒトWT1ペプチドのマウスMHC クラスI Dbに対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0153】
【表34】
(表XXXV:ヒトWT1ペプチドのマウスMHC クラスI Ddに対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0154】
【表35】
(表XXXVI:ヒトWT1ペプチドのマウスMHC クラスI Kbに対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0155】
【表36】
(表XXXVII:ヒトWT1ペプチドのマウスMHC クラスI Kdに対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0156】
【表37】
(表XXXVIII:ヒトWT1ペプチドのマウスMHC クラスI Kkに対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0157】
【表38】
(表XXXIX:ヒトWT1ペプチドのマウスMHC クラスI Ldに対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0158】
【表39】
(表XL:ヒトWT1ペプチドのウシHLA A20に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0159】
【表40】
(表XLI:マウスWT1ペプチドのマウスMHC クラスI A 0201に対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0160】
【表41】
(表XLII:マウスWT1ペプチドのマウスMHC クラスI Dbに対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0161】
【表42】
(表XLIII:マウスWT1ペプチドのマウスMHC クラスI Kbに対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0162】
【表43】
(表XLIV:マウスWT1ペプチドのマウスMHC クラスI Kdに対する結合についての、BIMAS HLAペプチド結合予測分析の結果)
【0163】
【表44】
(表XLV:ヘルパーT細胞応答を誘発し得るヒトWT1ペプチドについての、T部位ペプチド結合予測分析の結果)
【0164】
【表45】
特定のCTLペプチド(表XLVIに示す)を、さらなる研究のために選択した。表XLVI中に各ペプチドについて、BIMAS HLAペプチド結合予測分析を用いて得られたスコアを、提供する。
【0165】
(表XLVI:WT1ペプチド配列およびHLAペプチド結合予測)
【0166】
【表46】
C57B1/6マウスMHCに結合するペプチドを、Ljunggrenら、Nature 346:476−480,1990に記載されるように、白血病細胞株RMA−Sを用いて確認した。簡単には、RMA−S細胞を、1%FCSを補充した完全培地中で26℃にて7時間培養した。合計106のRMA−S細胞を、24ウェルプレートの各ウェ
ルに添加し、そして単独か、または指定したペプチド(25μg/ml)と共にのいずれかで26℃にて16時間インキュベートし、そして完全培地中で37℃にてさらに3時間インキュベートした。次いで、細胞を3度洗浄し、そしてフルオレセインイソチオシアネート結合体化抗Db抗体または抗Kb抗体(PharMingen,San Diego,CA)で染色した。標識した細胞を2度洗浄し、再懸濁し、そして1%パラホルムアルデヒドを有する500μlのPBS中で固定し、そしてフローサイトメーター(Becton−Dickinson FACSCalibur(登録商標))において蛍光強度について分析した。RMA−S細胞の表面上でのDbまたはKb分子の増加の割合を、培地単独でインキュベートした細胞の蛍光強度と比較した、ペプチドと共にインキュベートした細胞の平均蛍光強度の増加により測定した。
【0167】
マウスをマウスクラスI MHCに結合し得るペプチドで免疫した。免疫の後、脾臓細胞をインビトロで刺激し、そしてWT1ペプチドと共にインキュベートした標的を溶解す
る能力について試験した。CTLを、標準的なクロム放出アッセイ(Chenら、Cancer Res.54:1065−1070,1994)で評価した。106の標的細胞
を37℃にて150μCiのナトリウム51Crと共に90分間、特定のペプチドの存在下または非存在下でインキュベートした。細胞を3回洗浄し、そして5%ウシ胎仔血清を有するRPMI中に再懸濁した。このアッセイのために、104の51Cr標識化標的細胞を
、U底96ウェルプレートにおいて200μlの最終容量で異なる濃度のエフェクター細胞と共にインキュベートした。上清を、37℃にて4〜7時間後に取り除き、そして特異的溶解の%を、以下の式により決定した:
比溶解の割合=100×(実験の放出−自発的放出)(最大の放出−自発的放出)。
【0168】
表XLVIIに示される結果は、いくつかのWT1ペプチドが、CTLを生成するために不可欠であるクラスI MHC分子に結合し得ることを示す。さらに、このペプチドのいくつかは、クロム放出アッセイを用いて決定されるように、ペプチド特異的CTL(図9Aおよび9B)を誘発し得た。CTLペプチドである、p10−18ヒト、p136−144ヒト、p136−144マウスおよびp235−243に対する免疫の後、ペプチド特異的CTL株を産生し、そしてクローンを樹立した。これらの結果は、ペプチド特異的CTLがWT1を発現する悪性細胞を死滅させ得ることを示す。
【0169】
(表XLVII:WT1 CTLペプチドのマウスB6クラスI抗原に対する結合)
【0170】
【表47】
(実施例5:マウスにおいてWT1特異的CTLを誘発するためのWT1ポリペプチドの使用)
本実施例は、WT1陽性腫瘍細胞株を死滅させ得るCTL免疫を誘発するための、代表的なWT1ポリペプチドの能力を示す。
【0171】
クラスI MHCおよびクラスII MHCに結合するために適切なモチーフを有するペプチドである、p117−139を、TSITESおよびBIMAS
HLAペプチド結合予測分析を用いて上記のように同定した。マウスを、実施例3に記載されるように免疫した。免疫の後、脾臓細胞をインビトロで刺激し、そしてWT1ペプチド、ならびにWT1陽性腫瘍細胞および陰性腫瘍細胞と共にインキュベートした標的を溶解する能力について試験した。CTLを、標準的なクロム放出アッセイで評価した。図10A〜10Dに示されるこの結果は、P117が、WT1陽性腫瘍細胞を死滅させ得るWT1特異的CTLを誘発し得るが、WT1陰性細胞の死滅は観察されなかったことを示す。これらの結果は、ペプチド特異的CTLが、実際にWT1を発現する悪性細胞を死滅
させること、およびワクチンおよびT細胞治療が、WT1を発現する悪性腫瘍に対して有効であることを実証する。
【0172】
類似の免疫を、9マーのクラスI MHC結合ペプチドである、p136−144、p225−233、p235−243、ならびに23マーペプチドである、p117−139を用いて行った。免疫の後、脾臓細胞をインビトロで4つのペプチドの各々を用いて刺激し、そしてWT1ペプチドと共にインキュベートした標的を溶解する能力について試験した。CTLは、p136−144、p235−243、およびp117−139に特異的に生成されたが、p225−233については生成されなかった。p235−243およびp117−139についてのCTLデータを、図11Aおよび図11Bに示す。ペプチドp136−144およびp225−233についてのデータは示さない。
【0173】
CTL溶解は、標的WT1ペプチドが、腫瘍細胞クラスI MHC分子に関連して、内因的にプロセスおよび提示されることを要求する。上記のWT1ペプチド特異的CTLを、WT1陽性腫瘍細胞株 対 WT1陰性腫瘍細胞株を溶解する能力について試験した。p235−243に特異的なCTLは、p235−243ペプチドともにインキュベートした標的を溶解したが、WT1タンパク質を発現した細胞株を溶解することに失敗した(図11A)。著しく対照的に、p117−139に特異的なCTLは、p117−139ペプチドと共にインキュベートした標的を溶解し、そしてWT1を発現する悪性細胞もまた溶解した(図11B)。陰性コントロールとして、p117−139に特異的なCTLは、WT1陰性EL−4(本明細書中でE10ともいわれる)を溶解しなかった。
【0174】
WT1特異的溶解の特異性を、非放射性標的阻害によって確認した(図12A〜12B)。エフェクター細胞を、種々のエフェクター:標的比で、96ウェルU底プレートにプレートした。10倍過剰(放射性標的と比べて)の51Cr標識を有さない示されたペプチドをコートした標的を、添加した。最終的に、1ウェルあたり104の51Cr標識化標的
細胞を添加し、そしてプレートを37℃にて4時間インキュベートした。1ウェルあたりの総容量は、200μlであった。
【0175】
p117−139特異的CTLによるTRAMP−Cの溶解を、関連性のあるペプチドp117−139と共にインキュベートしたEL−4によって、58%〜36%をブロックしたが、無関係なペプチドと共にインキュベートしたEL−4ではブロックしなかった(図12A)。同様に、BLK−SV40の溶解は、関連性のあるペプチドp117−139と共にインキュベートしたEL−4によって、18%〜0%をブロックした(図12B)。結果は、WT1ペプチド特異的CTLが、プロセスしたWT1の認識により、悪性の細胞を特異的に死滅させることを確認する。
【0176】
推定のCTLモチーフを有するいくつかのセグメントは、p117−139内に含まれる。CTLエピトープの正確な配列を決定するために、p117−139内の全ての潜在的な9マーペプチドを合成した(表XLVIII)。これらのペプチドの2つ(p126−134およびp130−138)は、H−2bクラスI分子に結合することを示した(
表XLVIII)。p117−139での免疫により生成したCTLは、p126−134およびp130−138と共にインキュベートした標的を溶解したが、p117−139内の他の9マーペプチドでは溶解しなかった(図13A)。
【0177】
p117−139特異的CTL株を、p126−134またはp130−138のいずれかで再刺激した。p126−134またはp130−138で再刺激した後、両方のT細胞株は、ペプチド比溶解を実証したが、p130−138特異的CTLのみが、WT1陽性腫瘍細胞株の溶解を示した(図13Bおよび13C)。従って、p130−138は、天然でプロセスされるエピトープであるように思われる。
【0178】
(表XLVIII:p117−139内のWT1 CTL 9マーペプチドのマウスB6クラスI抗原に対する結合)
【0179】
【表48】
(実施例6:マウス腫瘍細胞株におけるWT1特異的mRNAの同定)
本実施例は、細胞および細胞株においてWT1特異的mRNAを検出するための、RT−PCRの使用を例示する。
【0180】
単核細胞を、密度勾配遠心分離により単離し、そして直ちに凍結し、そしてWT1特異的mRNAの存在についてRT−PCRにより分析するまで、−80℃で保存した。RT−PCRを、一般に、Fraizerら、Blood 86:4704−4706,1995に記載されるように行った。総RNAを、標準的な手順に従って107の細胞から抽
出した。RNAペレットを、25μLジエチルピロカルボネート処理した水に再懸濁し、そして逆転写に直接用いた。ジンクフィンガー領域(エキソン7〜10)を、330bpのマウスcDNAとしてPCRにより増幅した。増幅を、熱サイクラーにおいて、PCRの1回、または、必要な場合、連続した2回の間、行った。50μlの総反応容量において、AmpliTaq DNA Polymerase(Perkin Elmer C
etus,Norwalk,CT)、2.5mM MgCl2、および20pmolの各
プライマーを用いた。PCR産物の20μLのアリコートを、臭化エチジウムで染色した2%アガロースゲル上で電気泳動した。このゲルを、Polaroidフィルム(Polaroid 667,Polaroid Ltd.Hertfordshire,England)で写真撮影した。KwokおよびHiguchi、Nature 339:237−238,1989の推奨に従って、相互汚染に対する予防策を取った。陰性コントロールは、各実験において、cDNAの代わりに水を含有するcDNA試薬およびPCR試薬混合物を含んだ。偽陰性を避けるために、インタクトなRNAおよび適切なcDNA産生の存在を、各サンプルについて、β−アクチンプライマーを用いるコントロールPCRによって評価した。これらのプライマーで増幅されなかったサンプルを、分析から除いた。
【0181】
マウス細胞株における、WT1の増幅のためのプライマーは、以下であった:P115:1458−1478:5’ CCC AGG CTG CAA TAA GAG ATA 3’(順方向プライマー;配列番号21);およびP116:1767−1787:5’ ATG TTG TGA TGG CGG ACC AAT 3’(逆方向プライマー;配列番号22)(Inoueら、Blood 88:2267−2278,1996;Fraizerら、Blood
86:4704−4706,1995を参照のこと)。
【0182】
コントロール反応に用いたβアクチンプライマーは、以下であった:5’ GTG GGG CGC CCC AGG CAC CA 3’(センスプライマー;配列番号23);および5’ GTC CTT AAT GTC ACG CAC GAT TTC 3’(アンチセンスプライマー;配列番号24)。
【0183】
ヒトWT1を増幅するのに使用するためのプライマーは、以下を含む:P117:954−974:5’ GGC ATC TGA GAC CAG TGA
GAA 3’(配列番号25);およびP118:1434−1414:5’
GAG AGT CAG ACT TGA AAG CAGT 3’(配列番号5)。ネスティッドRT−PCRについて、プライマーは、以下であり得る:P119:1023−1043:5’ GCT GTC CCA CTT ACA GAT GCA 3’(配列番号26);およびP120:1345−1365:5’ TCA AAG CGC CAG CTG GAG TTT 3’(配列番号27)。
【0184】
表XLVIIIは、マウス腫瘍細胞株のWT1 PCR分析の結果を示す。表IVにおいて、(+++)は、RT−PCRの第1工程における、強いWT1 PCR増幅産物を示し、(++)は、WT1 RT−PCRの第1工程により検出可能であるWT1増幅産物を示し、(+)は、WT1 RT PCRの第2工程においてのみ検出可能である、産物を示し、そして(−)は、WT1 PCR陰性を示す。
【0185】
(表XLIX:マウス腫瘍細胞株におけるWT1 mRNAの検出)
【0186】
【表49】
前述から、本発明の特定の実施態様は、例示の目的のために本明細書中に記載されたが、種々の改変は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、なされ得ることが理解される。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲による場合を除き、限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0187】
【図1】図1は、マウス(MO)およびヒト(HU)のWT1タンパク質配列(それぞれ配列番号320および319)の比較を示す。
【図2】図2は、血液学的な悪性疾患(AML)を伴う患者におけるWT1特異的抗体の検出を図示するウエスタンブロットである。レーン1は、分子量マーカーを示す;レーン2は、陽性コントロール(WT1特異的抗体と共に免疫沈降されたWT1陽性ヒト白血病細胞株)を示す;レーン3は、陰性コントロール(マウス血清と共に免疫沈降されたWT1陽性細胞株)を示す;そしてレーン4は、AMLを伴う患者の血清と共に免疫沈降されたWT1陽性細胞株を示す。レーン2〜4に関して、免疫沈降は、ゲル電気泳動によって分離され、そしてWT1特異的抗体によってプローブされた。
【図3】図3は、TRAMP−C(WT1陽性腫瘍細胞株)を用いて免疫されたB6マウスにおけるWT1特異的抗体応答の検出を図示するウエスタンブロットである。レーン1、3および5は、分子量マーカーを示し、そしてレーン2、4および6は、WT1特異的陽性コントロール(N180、Santa Cruz Biotechnology、WT1タンパク質のN末端領域の180アミノ酸におよぶポリペプチド、ウエスタンブロット上で52kDに移動する)を示す。用いた一次抗体は、レーン2においてはWT180であり、レーン4においては免疫していないB6マウスの血清であり、そしてレーン6においては免疫したB6マウスの血清である。
【図4】図4は、代表的なWT1ペプチドを用いて免疫されたマウスにおけるWT1特異的抗体の検出を図示するウエスタンブロットである。レーン1、3および5は、分子量マーカーを示し、そしてレーン2、4および6は、WT1特異的陽性コントロール(N180、Santa Cruz Biotechnology、WT1タンパク質のN末端領域の180アミノ酸におよぶポリペプチド、ウエスタンブロット上で52kDに移動する)を示す。用いた一次抗体は、レーン2においてはWT180であり、レーン4においては免疫していないB6マウスの血清であり、そしてレーン6においては免疫したB6マウスの血清である。
【図5】図5A〜5Cは、代表的なWT1ペプチドを用いて免疫されたマウスにおける増殖性T細胞応答の刺激を図示するグラフである。チミジン取り込みアッセイを、表示されたように一つのT細胞株および二つの異なるクローンを用いて実施し、そして結果を、cpmとして表現した。X軸上に示すコントロールは、抗原なし(Agなし)およびB6/培地であり;用いられた抗原はヒトp6〜22(p1)、ヒトp117〜139(p2)またはヒトp244〜262(p3)であった。
【図6】図6Aおよび6Bは、代表的なWT1ペプチドを用いて免疫されたマウスにおける増殖性T細胞応答の刺激を図示するヒストグラムである。三回目の免疫の三週間後に、ワクチンAまたはワクチンBを接種したマウスの脾臓細胞を、培地のみ(培地)または脾臓細胞および培地(B6/抗原なし)、ペプチドp6〜22(p6)、p117〜139(p117)、p244〜262(p244)(ワクチンA;図6A)またはp287〜301(p287)、p299〜313(p299)、p421〜435(p421)(ワクチンB;図6B)を適用したB6脾臓細胞および無関係の25μg/mlのコントロールペプチド(無関係のペプチド)を適用した脾臓細胞とともに培養し、そして(3H)チミジン取り込みによって96時間後に増殖についてアッセイした。棒は、コントロール(抗原を伴わないB6脾臓細胞)の平均値によって除算した実験ウェルの平均値として計算された刺激指数(SI)を示す。
【図7】図7A〜7Dは、p117〜139およびp6〜22に特異的な増殖性T細胞株およびクローンの産生を図示したヒストグラムである。インビボの免疫に続いて、最初のインビトロでの三回の刺激(IVS)を、それぞれワクチンAまたはBの三つのペプチドすべてを用いて実施した。引き続くIVSを、二つの関連したペプチドp117〜139およびp6〜22のみを用いた単一ペプチド刺激として実施した。クローンを、示すようにp6〜22特異的T細胞株およびp117〜139特異的T細胞株の両方から誘導した。T細胞を、培地のみ(培地)または脾臓細胞および培地(B6/抗原なし)、25μg/mlのペプチドp6〜22(p6)、p117〜139(p117)または無関係のコントロールペプチド(無関係のペプチド)を適用したB6脾臓細胞を用いて培養し、そして(3H)チミジン取り込みによって96時間後に増殖についてアッセイした。棒は、コントロール(抗原を伴わないB6脾臓細胞)の平均値によって除算された実験ウェルの平均値として計算された刺激指数(SI)を示す。
【図8A】図8Aおよび8Bは、Th応答を誘発する能力を有するペプチドについてヒトWT1(配列番号319)のTSITES分析の結果を示す。「A」と示された領域は、ブロックのAMPHI中間点であり、「R」は、Rothbard/Taylorモチーフにマッチする残基を示し、「D」は、IAdモチーフにマッチする残基を示し、そして「d」は、IEdモチーフにマッチする残基を示す。
【図8B】図8Aおよび8Bは、Th応答を誘発する能力を有するペプチドについてヒトWT1(配列番号319)のTSITES分析の結果を示す。「A」と示された領域は、ブロックのAMPHI中間点であり、「R」は、Rothbard/Taylorモチーフにマッチする残基を示し、「D」は、IAdモチーフにマッチする残基を示し、そして「d」は、IEdモチーフにマッチする残基を示す。
【図9】図9Aおよび9Bは、WT1ペプチドを用いて免疫されたマウスにおけるWT1ペプチド特異的CTLの誘発を図示するグラフである。図9Aは、同種異系細胞株による標的細胞の溶解を図示し、そして図9Bは、ペプチドでコートされた細胞株の溶解を示す。各々の場合において、%溶解(標準的クロム放出アッセイによって決定されたような)は、三つの示したエフェクター:標的の比において示される。結果は、リンパ腫細胞(LSTRAおよびE10)ならびにE10+p235〜243(E10+P235)について提供される。E10細胞はまた、本明細書中でEL−4細胞とも呼ばれる。
【図10A】図10Aは、WT1ペプチドP117を用いたB6マウスのワクチン接種に引き続き、WT1陽性腫瘍細胞株を殺傷するがWT1陰性細胞株を殺傷しないWT1ペプチド特異的CTLの誘発を図示するグラフである。図10Aは、免疫しないB6マウスのT細胞がWT1陽性腫瘍細胞株を殺傷しないことを図示する。各々の場合において、%溶解(標準的クロム放出アッセイによって決定されたような)は、三つの示したエフェクター:標的の比において示される。結果は、リンパ腫細胞(E10)、前立腺ガン細胞(TRAMP−C)、形質転換された繊維芽細胞株(BLK−SV40)ならびにE10+P117について提供される。
【図10B】図10Bは、WT1ペプチドP117を用いたB6マウスのワクチン接種に引き続き、WT1陽性腫瘍細胞株を殺傷するがWT1陰性細胞株を殺傷しないWT1ペプチド特異的CTLの誘発を図示するグラフである。図10Bは、同種異系細胞株による標的細胞の溶解を図示する。各々の場合において、%溶解(標準的クロム放出アッセイによって決定されたような)は、三つの示したエフェクター:標的の比において示される。結果は、リンパ腫細胞(E10)、前立腺ガン細胞(TRAMP−C)、形質転換された繊維芽細胞株(BLK−SV40)ならびにE10+P117について提供される。
【図10C】図10Cは、WT1ペプチドP117を用いたB6マウスのワクチン接種に引き続き、WT1陽性腫瘍細胞株を殺傷するがWT1陰性細胞株を殺傷しないWT1ペプチド特異的CTLの誘発を図示するグラフである。図10Cは、異なる二つの実験におけるWT1陰性細胞株と比べたWT1陽性腫瘍細胞株の溶解を実証する。さらに、図10Cは、ペプチドにコートされた細胞株(関連したWT1ペプチドP117によってコートされたWT1陰性細胞株E10)の溶解を示す。各々の場合において、%溶解(標準的クロム放出アッセイによって決定されたような)は、三つの示したエフェクター:標的の比において示される。結果は、リンパ腫細胞(E10)、前立腺ガン細胞(TRAMP−C)、形質転換された繊維芽細胞株(BLK−SV40)ならびにE10+P117について提供される。
【図10D】図10Dは、WT1ペプチドP117を用いたB6マウスのワクチン接種に引き続き、WT1陽性腫瘍細胞株を殺傷するがWT1陰性細胞株を殺傷しないWT1ペプチド特異的CTLの誘発を図示するグラフである。図10Dは、異なる二つの実験におけるWT1陰性細胞株と比べたWT1陽性腫瘍細胞株の溶解を実証する。さらに、図10Dは、ペプチドにコートされた細胞株(関連したWT1ペプチドP117によってコートされたWT1陰性細胞株E10)の溶解を示す。各々の場合において、%溶解(標準的クロム放出アッセイによって決定されたような)は、三つの示したエフェクター:標的の比において示される。結果は、リンパ腫細胞(E10)、前立腺ガン細胞(TRAMP−C)、形質転換された繊維芽細胞株(BLK−SV40)ならびにE10+P117について提供される。
【図11】図11Aおよび11Bは、WT1陽性腫瘍細胞を溶解する代表的なペプチドP117〜139特異的CTLの能力を図示したヒストグラムである。三回目の免疫の三週間後に、ペプチドp235〜243またはp117〜139を接種したマウスの脾臓細胞を、関連するペプチドを用いてインビトロにおいて刺激し、そしてWT1ペプチドならびにWT1陽性および陰性腫瘍細胞と共にインキュベートされた標的を溶解する能力について試験した。棒は、25:1のE:T比で三連で実施されたクロム放出アッセイにおける平均%比溶解を示す。図11Aは、示すように、WT1陰性細胞株EL−4(EL−4、WT1陰性);関連する(免疫ならびに再刺激のために用いた)ペプチドp235〜243(EL−4+p235)を適用したEL−4;関連するペプチドp117〜139を適用したEL−4(EL−4+p117)、p126〜134を適用したEL−4(EL−4+p126)またはp130〜138を適用したEL−4(EL−4+p130)ならびにWT1陽性腫瘍細胞BLK−SV40(BLK−SV40、WT1陽性)およびTRAMP−C(TRAMP−C、WT1陽性)に対するp235〜243特異的T細胞株の細胞傷害性の活性を示す。図11Bは、示すように、EL−4;関連するペプチドP117〜139を適用したEL−4(EL−4+p117)および無関連のペプチドp123〜131を適用したEL−4(EL−4+p123)、またはp128〜136を適用したEL−4(EL−4+p128);BLK−SV40およびTRAMP−Cに対するp117〜139特異的T細胞株の細胞傷害性の活性を示す。
【図12】図12Aおよび12Bは、非放射性標的阻害によって実証されたような、WT1陽性腫瘍細胞の溶解の特異性を図示するヒストグラムである。棒は、25:1のE:T比で三連で実施されたクロム放出アッセイにおける平均%比溶解を示す。図12Aは、示すように、WT1陰性細胞株EL−4(EL−4、WT1陰性);WT1陽性腫瘍細胞株TRAMP−C(TRAMP−C、WT1陽性);51Cr標識をしない関連するペプチドp117〜139を適用した10倍過剰(放射性標的と比べて)のEL−4細胞とともにインキュベートされたTRAMP−C細胞(TRAMP−C+p117非放射性標的)および51Cr標識をしない無関連のペプチドを適用したEL−4細胞とともにインキュベートされたTRAMP−C細胞(TRAMP−C+無関係の非放射性標的)に対するp117〜139特異的T細胞株の細胞傷害性の活性を示す。図12Bは、示すように、WT1陰性細胞株EL−4(EL−4、WT1陰性);WT1陽性腫瘍細胞株BLK−SV40(BLK−SV40、WT1陽性);関連する非放射性標的とともにインキュベートされたBLK−SV40細胞(BLK−SV40+p117非放射性標的)および無関連の非放射性標的とともにインキュベートされたBLK−SV40細胞(BLK−SV40+無関係の非放射性標的)に対するp117〜139特異的T細胞株の細胞傷害性の活性を示す。
【図13】図13A〜13Cは、p117〜139内の9マーCTLエピトープの評価を示すヒストグラムである。p117〜139腫瘍特異的CTL株を、アミノ酸117〜139内に適切なH−2bクラスI結合モチーフを含むかまたは欠如するペプチドに対して試験し、続いてp126〜134またはp130〜138を用いて再刺激した。棒は、25:1のE:T比で三連で実施されたクロム放出アッセイにおける平均%比溶解を示す。図13Aは、WT1陰性細胞株EL−4(EL−4、WT1陰性)およびペプチドp117〜139を適用したEL−4細胞(EL−4+p117)、ペプチドp119〜127を適用したEL−4細胞(EL−4+p119)、ペプチドp120〜128を適用したEL−4細胞(EL−4+p120)、ペプチドp123〜131を適用したEL−4細胞(EL−4+p123)、ペプチドp126〜134を適用したEL−4細胞(EL−4+p126)、ペプチドp128〜136を適用したEL−4細胞(EL−4+p128)およびペプチドp130〜138を適用したEL−4細胞(EL−4+p130)に対するp117〜139特異的T細胞株の細胞傷害性の活性を示す。図13Bは、WT1陰性細胞株EL−4、p117〜139を適用したEL−4細胞(EL−4+p117)、p126〜134を適用したEL−4細胞(EL−4+p126)およびWT1陽性腫瘍細胞株TRAMP−Cに対してp126〜134を用いた再刺激後のCTL株の細胞傷害性の活性を示す。図13Cは、EL−4、p117〜139を適用したEL−4細胞(EL−4+p117)、p130〜138を適用したEL−4細胞(EL−4+p130)およびWT1陽性腫瘍細胞株TRAMP−Cに対してp130〜138を用いた再刺激後のCTL株の細胞傷害性の活性を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネイティブのWT1の免疫原性部分あるいは1以上の置換、欠失、付加および/または挿入において異なるその改変体を含む、ポリペプチド。
【請求項1】
ネイティブのWT1の免疫原性部分あるいは1以上の置換、欠失、付加および/または挿入において異なるその改変体を含む、ポリペプチド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−69172(P2008−69172A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−279673(P2007−279673)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【分割の表示】特願2006−227215(P2006−227215)の分割
【原出願日】平成11年9月30日(1999.9.30)
【出願人】(397069329)コリクサ コーポレイション (38)
【出願人】(501128416)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【分割の表示】特願2006−227215(P2006−227215)の分割
【原出願日】平成11年9月30日(1999.9.30)
【出願人】(397069329)コリクサ コーポレイション (38)
【出願人】(501128416)
【Fターム(参考)】
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