説明

X線撮影装置

【課題】画像を適正に露出することが可能なX線撮影装置を提供することを目的とする。
【解決手段】X線撮影装置1において、第1,2領域抽出部29,30は、取得された画像の中央に位置する大きさの異なる2つの領域A,Bを抽出する。第1,2平均画素値算出部31,32は、抽出された領域A,Bごとに平均画素値を算出する。X線条件設定部37は、抽出された複数の領域のいずれかの平均画素値に基づいてX線管5で照射するX線条件を設定する。このとき比較選択部33は、領域A,Bごとに算出された平均画素値を比較して最小の平均画素値を選択する。最小の平均画素値を選択することで、従来とは逆であるX線条件がより高くなるように設定されることとなる。しかしながら、最小の平均画素値を選択することで、領域A,Bを正しく選択することができ、見たい部分が適正に露出された画像を取得することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線撮影装置の透視においてX線自動露出制御によりX線画像の明るさを適正にする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のX線撮影装置は、被検体にX線を照射するX線管と、被検体を透過したX線を検出するX線検出器とを備えている。X線管から照射されたX線は、被検体を透過してX線検出器に入射し、X線検出器はX線像の濃淡に応じてX線検出信号を出力する。このX線検出信号に基づいて画像を取得している。また、X線撮影装置は、自動露出制御部を備えている。自動露出制御部は、透視撮影中にX線検出器で検出して取得した画像から、画像の明るさ(輝度)が適正となるX線条件を求めて、X線管から照射されるX線を調整する(例えば特許文献1参照)。
【0003】
従来のX線撮影装置における自動露出制御の動作は、具体的には次のように行われる。図8に示すように、画像の中央に大きさの異なる2つの固定の領域A,Bを予め設定する。取得した透視画像の領域A,Bから2つの領域A,Bそれぞれの平均画像値を算出して比較する。2つの領域A,Bのうち、X線条件がより低く抑えられる方、すなわち、平均画素値が高い方を制御値として採用し、採用された領域の平均画素値が目標画素値となるようにX線条件を設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−268699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
平均画素値が高い方を制御値として採用しているのは、被検体へのX線の被曝量を低く抑えたいとの考えによる。しかしながら、異なる大きさの2つの領域のうち、面積が小さい方の領域Bが図8の脚部の間や肺野などの輝度が高い部分に位置すると、領域Bが採用されてX線条件がより抑えられるように制御されるので、画像が暗く(低輝度)なってしまい見たい部分が見にくくなってしまう問題がある。この場合、例えば図8では、領域Bに脚部の一部を含むように被検体を移動させている。また、操作者が手動でX線条件を1段階上げるなどの調整を行っている。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、画像を適正に露出することが可能なX線撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。すなわち、本発明に係るX線撮影装置は、被検体にX線を照射するX線照射部と、被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、前記X線検出器の出力に基づいて取得された画像から、前記画像の中央に位置する大きさの異なる複数の領域を抽出する領域抽出部と、抽出された領域ごとに画素値の代表値を算出する代表値算出部と、算出された領域ごとの代表値を比較して最小の代表値を選択する比較選択部と、選択された代表値に基づいて前記X線照射部で照射するX線条件を設定するX線条件設定部と、を備えていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明に係るX線撮影装置によれば、領域抽出部は、取得された画像の中央に位置する大きさの異なる複数の領域を抽出し、代表値算出部は、抽出された領域ごとに画素値の代表値を算出する。X線条件設定部は、抽出された複数の領域のいずれかの代表値に基づいてX線照射部で照射するX線条件を設定する。このとき、比較選択部は、領域ごとに算出された代表値を比較して最小の代表値を選択する。最小の代表値を選択することで、従来とは逆であるX線条件がより高くなるように設定されることとなる。しかしながら、最小の代表値を選択することで、領域を正しく選択することができ、見たい部分が適正に露出された画像を取得することができる。
【0009】
また、本発明に係るX線撮影装置において、前記比較選択部で選択された代表値の領域のうち、予め設定された値以下の画素が予め設定された割合の領域以上で存在するかを判定し、存在する場合には他方の領域の代表値を選択する判定選択部を備えていることが好ましい。すなわち、選択した代表値の領域に、例えばコリメータ等の金属やペースメーカなどX線を遮蔽する物体を含んでいる場合、例えば、それらを含んでいない場合よりも代表値が低い値となる。そのため、X線条件を高く上げ過ぎて設定されてしまう。判定は、選択された代表値の領域のうち、予め設定された値以下の画素が予め設定された割合の領域以上で存在するか否かで行われる。存在する場合には、コリメータ等を含んでいるものとして判定され、他方の領域の代表値を選択するようになっている。これにより、X線条件を高く上げ過ぎてしまうことを防止している。よって、領域を正しく選択することができ、見たい部分が適正に露出された画像を取得することができる。
【0010】
また、本発明に係るX線撮影装置において、前記領域抽出部は、前記X線検出器の出力に基づいて時間的に連続して取得された画像から領域を抽出することが好ましい。すなわち、時間的に連続して取得された透視画像から領域を抽出しているので、見たい部分が適正に露出された透視画像を取得することができる。
【0011】
また、本発明に係るX線撮影装置において、前記領域抽出部は、前記X線検出器の出力に基づいて取得された画像から2つの領域を抽出することが好ましい。すなわち、領域数が少なければ、領域の選択を比較的速く行うことができるので、取得する画像への応答を速くすることができる。また、構成を簡単にすることができる。
【0012】
また、本発明に係るX線撮影装置において、前記領域の少なくとも1つは、長方形であることが好ましい。それにより、領域を正しく選択することができるとともに、領域から算出され、X線条件を設定するための代表値を適正に取得することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るX線撮影装置によれば、領域抽出部は、取得された画像の中央に位置する大きさの異なる複数の領域を抽出し、代表値算出部は、抽出された領域ごとに画素値の代表値を算出する。X線条件設定部は、抽出された複数の領域のいずれかの代表値に基づいてX線照射部で照射するX線条件を設定する。このとき、比較選択部は、領域ごとに算出された代表値を比較して最小の代表値を選択する。最小の代表値を選択することで、従来とは逆であるX線条件がより高くなるように設定されることとなる。しかしながら、最小の代表値を選択することで、領域を正しく選択することができ、見たい部分が適正に露出された画像を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例に係るX線撮影装置のブロック図である。
【図2】抽出領域の説明に供する図である。
【図3】領域にコリメータを含む場合の動作の説明に供する図である。
【図4】判定選択部の説明に供する図である。
【図5】実施例に係るX線撮影装置の自動露出制御の動作を示すフローチャートである。
【図6】領域の平均画素値のいずれかを選択する動作の説明に供する図である。
【図7】変形例に係る抽出領域の説明に供する図である。
【図8】従来装置の動作の説明に供する図である。
【実施例】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。図1は、実施例に係るX線撮影装置のブロック図であり、図2は、抽出領域の説明に供する図である。図3は、領域にコリメータを含む場合の動作の説明に供する図であり、図4は、判定選択部の説明に供する図である。
【0016】
図1を参照する。X線撮影装置1は、被検体Mを載置する天板3と、被検体MにX線を照射するX線管5と、被検体Mを挟んでX線管5と対向して配置され、被検体Mを透過したX線を検出するフラットパネル型X線検出器(以下、適宜「FPD」と称する)7とを備えている。なお、X線管5は本発明におけるX線照射部に相当し、FPD7はX線検出器に相当する。
【0017】
X線管5は、その照射口に、X線の照射野を調整するコリメータ9が取り付けられている。X線管5は、X線管制御部11によりX線照射に必要な制御が実行される。X線管制御部11は、X線管5の管電圧や管電流を発生させる高電圧発生部13を有している。X線管制御部11は、後述する入力部23や自動露出制御部27などで設定された管電圧や管電流や照射時間等のX線条件に応じてX線管5からX線を照射させている。X線はパルス状に照射され、フレームレートは、例えば30fps、15fps、7.5fpsおよび3.75fpsであり、時間的に連続した透視画像の取得が行われるようになっている。
【0018】
また、X線撮影装置1は、FPD7から出力されたX線検出信号をアナログ値からディジタル値に変換するA/D変換器15と、A/D変換器15でディジタル変換されたX線検出信号に基づく画像に対して種々の処理を行う画像処理部17と、X線撮影装置1の各構成を統括的に制御する主制御部19とを備えている。また、X線撮影装置1は、画像処理部17で処理された画像を表示する表示部21と、操作者が入力設定や各種操作を行う入力部23と、処理された画像を記憶するメモリ部25とを備えている。
【0019】
主制御部19は、中央演算処理装置(CPU)などで構成されている。主制御部21は、天板3、X線管5、FPD7等を任意の位置に移動させたり、コリメータ9の照射野を変更するようにさせたりする移動機構を制御している。表示部21は、液晶モニタ等で構成される。入力部23は、キーボードやマウス等で構成される。メモリ部25は、ROM(Read-only Memory)、RAM(Random-Access Memory)またはハードディスク等の記憶媒体で構成される。
【0020】
また、X線撮影装置1は、FPD7から出力されて取得した透視画像から、X線管5から照射するX線の管電圧や管電流の条件(X線条件)を設定する自動露出制御部27を備えている。自動露出制御部27は、第1領域抽出部29,第2領域抽出部30,第1平均画素値算出部31,第2平均画素値算出部32,比較選択部33,判定選択部35およびX線条件設定部37を備えている。なお、第1領域抽出部29および第2領域抽出部30は、本発明における領域抽出部に相当する。第1平均画素値算出部31および第2平均画素値算出部32は、本発明における代表値算出部に相当する。
【0021】
第1領域抽出部29および第2領域抽出部30は、FPD7の出力に基づいて取得された画像から、画像のほぼ中央に位置する大きさの異なる2つの領域を抽出する。図2に示すように、第1領域抽出部29は、画面の中央に位置する正方形の領域Aを抽出し、第2領域抽出部30は、領域Aより小さい面積であり、画面の中央に位置する縦長の長方形の領域Bを抽出する。領域A,Bは、予め設定されており、固定の領域である。なお、カテーテル操作のための撮影や造影剤を服用して胃などの消化管の撮影などに応じて領域A,Bの大きさ等を変更するようにしてもよい。また、領域A,Bの形状は、正方形や長方形に限定されず、例えば円形など他の形状であってもよい。領域Bは、領域Aからはみ出してもよい。
【0022】
第1平均画素値算出部31および第2平均画素値算出部32は、抽出された領域ごとに画素値の平均値(平均画素値)を算出する。第1平均画素値算出部31は、第1領域抽出部29で画像から抽出された領域Aの画素値から平均画素値を算出する。同様に、第2平均画素値算出部32は、第2領域抽出部30で画像から抽出された領域Bの画素値から平均画素値を算出する。
【0023】
比較選択部33は、算出された領域ごとの平均画素値を比較して最小の平均画素値を選択する。比較選択部33は、領域Aの平均画素値と領域Bの平均画素値とを比較して、小さい方の平均画素値を選択する。
【0024】
判定選択部35は、比較選択部33で選択された平均画素値の領域のうち、予め設定された値以下(未満)の画素が予め設定された割合の領域以上で(領域を越えて)存在するかを判定し、存在する場合には他方の領域の平均画素値を選択する。図3に示すように、選択された平均画素値の領域A,B内にコリメータ等の金属やペースメーカなどX線を遮蔽する物体がある場合、低輝度部分の画素値が占める割合が多くなり、平均画素値がより小さくなってしまう。なお、図3では、領域Aにコリメータが存在する。その場合には、判定選択部35は、他方の領域Bの平均画素値を選択する。すなわち、判定選択部35は、図4に示すように、予め設定された画素値(符号P)以下の画素が、選択された平均画素値の領域Aで、予め設定された割合(例えば領域の10%)を占めるかどうかを判定する。占める場合は、他方の例えば領域Bを選択する。なお、領域Bにペースメーカ等が存在する場合は、領域Aを選択する。
【0025】
X線条件設定部37は、比較選択部33または判定選択部35で選択された平均画素値に基づいてX線管5で照射するX線条件を設定する。X線条件の設定は、選択された平均画素値と画素値の適正な平均値である目標画素値(目標値)とを比較して、選択された平均画素値の領域が適正な平均画素値になるように管電圧や管電流の設定値が与えられる。管電圧や管電流の設定値は、例えば変換テーブルにより求められる。なお、管電流は、管電圧に連動して変化するようになっている。
【0026】
X線条件設定部37で設定された管電圧や管電流、すなわち、自動露出制御部27から出力された管電圧や管電流のX線条件は、X線管制御部11に送信される。X線管制御部11は、送信されたX線条件に基づいてX線管5からX線を照射させる。
【0027】
<X線撮影装置1の動作>
次に、X線撮影装置1の自動露出制御についてフローチャートに沿って説明する。図5は、実施例に係るX線撮影装置の自動露出制御の動作を示すフローチャートである。図6は、領域の平均画素値のいずれかを選択する動作の説明に供する図である。
【0028】
被検体Mを天板3に載置させ、天板3、X線管5およびFPD7を任意の位置に移動させる。X線管制御部11は、管電圧や管電流のX線条件線条件に基づいて、X線管5から被検体Mに向けてX線を照射し、透視撮影を行う。
【0029】
〔ステップS01〕画像の取得
被検体Mを透過したX線をFPD7で検出する。FPD7から出力されたX線検出信号は、A/D変換器15によりアナログ値からディジタル値に変換され、画像処理部17により必要な種々の処理(例えばオフセット補正)が行われる。このようにして、あるフレームの透視画像が取得される。
【0030】
〔ステップS02〕領域の抽出
取得した画像から領域A,Bを抽出する。すなわち、第1領域抽出部29および第2領域抽出部30は、FPD7の出力に基づいて取得された画像から、画像の中央に位置する大きさの異なる2つの領域A,Bを抽出する。
【0031】
〔ステップS03〕各領域の平均画素値の算出
第1平均画素値算出部31および第2平均画素値算出部32は、抽出された領域A,Bごとに平均画素値を算出する。
【0032】
〔ステップS04〕平均画素値のいずれかの選択
比較選択部33は、領域Aの平均画素値と領域Bの平均画素値とを比較して、小さい方の平均画素値を選択する。
【0033】
図6を参照する。領域A,Bの平均画素値が符号a、bで示すものとし、a<bであるものとする。また、領域Aの平均画素値が符号aであり、領域Bの平均画素値が符号bであっても、その逆であってもよいものとする。図6(a)に示すように、目標値に対して、領域A,Bの平均画素値a,bが共に高い場合は、目標値との差が小さい、すなわちX線条件をより下げない方aを選択する。図6(b)に示すように、目標値を挟んで領域A,Bの平均画素値a,bが存在する場合は、X線条件を上げる方aを選択する。また、図6(c)に示すように、目標値に対して、領域A,Bの平均画素値a,bが共に小さい場合は、目標値との差が大きい、すなわちX線条件をより上げる方aを選択する。すなわち、比較選択部33は、領域A,Bの平均画素値a,bを比較して、小さい方の平均画素値aを選択している。なお、従来装置は、大きい方の平均画素値bを選択している。
【0034】
〔ステップS05〕選択された平均画素値を有する領域が適正であるか否かの判定
判定選択部35は、比較選択部33で選択された平均画素値の領域が適正であるか否かを判定する。判定は、選択された平均画素値を有する領域が、予め設定された値以下の画素が予め設定された割合の領域以上で存在するか否かで行われる。存在しない場合、すなわち適正である場合は、ステップS07へ進む。また、存在する場合、すなわち適正でない場合は、ステップS06へ進む。
【0035】
〔ステップS06〕他方の領域の平均画素値の選択
選択された平均画素値を有する領域が、予め設定された値以下の画素が予め設定された割合の領域以上で存在する場合、すなわち適正でない場合は、コリメータ等の金属やペースメーカなどX線を遮蔽する物体が領域内にあるものとして判定する。例えば領域Aが適正でないと判定された場合は、他方である領域Bを選択する。
【0036】
〔ステップS07〕X線条件設定
X線条件設定部37は、比較選択部33(ステップS05)または判定選択部35(ステップS06)で選択された平均画素値に基づいてX線管5で照射するX線条件を設定する。平均画素値と目標値との関係から変換テーブル等により、管電圧や管電流のX線条件が設定される。
【0037】
〔ステップS08〕X線照射
設定されたX線条件は、X線管制御部11に送信される。X線管制御部11は、送信されたX線条件に基づいてX線管5からX線を照射させる。
【0038】
本実施例に係るX線撮影装置1によれば、第1領域抽出部29および第2領域抽出部30は、取得した画像の中央に位置する大きさの異なる2つの領域A,Bを抽出する。第1平均画素値算出部31および第2平均画素値算出部32は、抽出された領域A,Bごとに画素値の平均値を算出する。X線条件設定部37は、抽出された2つの領域A,Bのいずれかの平均画素値に基づいてX線管5で照射するX線条件を設定する。このとき、比較選択部33は、領域A,Bごとに算出された平均画素値を比較して最小の平均画素値を選択する。最小の平均画素値を選択することで、従来とは逆であるX線条件がより高くなるように設定されることとなる。しかしながら、最小の平均画素値を選択することで、領域A,Bを正しく選択することができ、見たい部分が適正に露出された画像を取得することができる。
【0039】
すなわち、図8において、従来、比較選択部33は、領域A,Bの平均画素値のうち平均画素値が高い方の領域Bを選択していた。この場合、見たい部分である被検体Mの脚部ではなく、脚部の間の領域Bに基づき、X線条件設定部37によりX線条件が設定されていた。それにより、脚部が暗い画像となっていた。この場合、従来では、脚部の位置を領域Bに一部を含むように移動している。また、操作者が手動で適正な画像になるようにX線条件を1段階上げるなどの調整を行っている。しかしながら、本実施例では、領域A,Bの平均画素値のうち平均画素値が低い方(最小の平均画素値)の領域Aを選択している。そのため、脚部分を含んだ領域Aに基づき、X線条件が設定される。すなわち、平均画素値が低い方の領域を選択することにより、適正な領域を選択することができる。それにより、図8に示すように、脚部が画像の中央から外れていても、見たい部分が適正に露出された画像を取得することができる。
【0040】
また、選択した平均画素値の領域に、例えばコリメータ等の金属やペースメーカなどX線を遮蔽する物体を含んでいる場合(図3)、例えば、平均画素値がそれらを含んでいない場合よりも低い値となる。そのため、X線条件を高く上げ過ぎて設定されてしまう。判定は、選択された平均画素値の領域のうち、予め設定された値以下の画素が予め設定された割合の領域以上で存在するか否かで行われる。存在する場合には、コリメータ等を含んでいるものとして判定され、他方の領域の代表値を選択するようになっている。これにより、X線条件を高く上げ過ぎてしまうことを防止している。よって、領域を正しく選択することができ、見たい部分が適正に露出された画像を取得することができる。
【0041】
また、第1領域抽出部29および第2領域抽出部30は、FPD7の出力に基づいて時間的に連続して取得された画像から領域A,Bを抽出している。すなわち、時間的に連続して取得された透視画像から領域A,Bを抽出しているので、見たい部分が適正に露出された透視画像を取得することができる。
【0042】
また、第1領域抽出部29および第2領域抽出部30は、FPD7の出力に基づいて取得された画像から2つの領域を抽出している。すなわち、領域数が少なければ、領域の選択を比較的速く行うことができるので、取得する画像への応答を速くすることができる。また、構成を簡単にすることができる。
【0043】
また、領域A,Bの少なくとも1つ(すなわち領域B)は、長方形である。それにより、領域を正しく選択することができるとともに、領域から算出された、X線条件を設定するための代表値を適正に取得することができる。例えば、図3に示すように、コリメータが画像の左右方向で移動して、画像の一部に含まれる場合があるとする。被検体Mは縦長であるので縦長の長方形にすることにより、画像の左右方向からのコリメータが領域内に含まれることを抑制するとともに、領域Bから算出される平均画素値を適正なものとすることができる。なお、コリメータが画像の上下方向に移動する場合は、領域Bを横長の長方形にしてもよく、コリメータが画像の上下左右方向に移動する場合は、領域Bは正方形にしてもよい。
【0044】
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0045】
(1)上述した実施例では、第1平均画素値算出部31および第2平均画素値算出部32は、代表値として画素値の平均値を算出していたがこれに限定されない。例えば、画素値の中央値であってもよい。
【0046】
(2)上述した実施例では、画像から抽出する領域は2つに限定されない。すなわち、3個以上の領域を抽出するようにしてもよい。例えば、図7に示すように、画像の中央に位置する大きさの異なる3つの領域C,D,Eを抽出するとする。仮に領域Cにコリメータを含み、判定選択部35で適正でないと判定された場合には、領域Cの内側の領域D,Eの平均画素値のいずれかでX線条件を設定するようにしてもよい。また、3個以上の領域を抽出する場合などは、比較と判定を繰り返すように構成してもよい。
【0047】
(3)上述した実施例では、動画撮影である透視におけるX線条件の設定(自動露出制御)であったが、静止画撮影にも適用させてもよい。例えば、連続または1枚撮りで透視を行い、自動露出制御部27により透視用のX線条件を設定する。この条件を例えばテーブル変換により静止画撮影用のX線条件に変換して設定し、静止画撮影を行うようにしてもよい。
【0048】
(4)上述した実施例では、判定選択部35で例えば領域Aにコリメータが存在して適正でないと判定する場合、領域Bを選択していた。しかしながら、さらに領域Bに対しても判定するように構成してもよい。例えば、領域Aにペースメーカが存在する場合には、領域A,Bともに、算出された平均画素値が適正でないことになる。この場合は、例えば、通常より抑えたX線条件を与えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 … X線撮影装置
5 … X線管
7 … フラットパネル型X線検出器(FPD)
9 … コリメータ
11 … X線管制御部
19 … 主制御部
27 … 自動露出制御部
29 … 第1領域抽出部
30 … 第2領域抽出部
31 … 第1平均画素値算出部
32 … 第2平均画素値算出部
33 … 比較選択部
35 … 判定選択部
37 … X線条件設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体にX線を照射するX線照射部と、
被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、
前記X線検出器の出力に基づいて取得された画像から、前記画像の中央に位置する大きさの異なる複数の領域を抽出する領域抽出部と、
抽出された領域ごとに画素値の代表値を算出する代表値算出部と、
算出された領域ごとの代表値を比較して最小の代表値を選択する比較選択部と、
選択された代表値に基づいて前記X線照射部で照射するX線条件を設定するX線条件設定部と、
を備えていることを特徴とするX線撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載のX線撮影装置において、
前記比較選択部で選択された代表値の領域のうち、予め設定された値以下の画素が予め設定された割合の領域以上で存在するかを判定し、存在する場合には他方の領域の代表値を選択する判定選択部を備えていることを特徴とするX線撮影装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のX線撮影装置において、
前記領域抽出部は、前記X線検出器の出力に基づいて時間的に連続して取得された画像から領域を抽出することを特徴とするX線撮影装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のX線撮影装置において、
前記領域抽出部は、前記X線検出器の出力に基づいて取得された画像から2つの領域を抽出することを特徴とするX線撮影装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のX線撮影装置において、
前記領域の少なくとも1つは、長方形であることを特徴とするX線撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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