説明

X線発生装置及びそれを用いたX線撮影装置

【課題】絶縁性液体が充填された収納容器内に透過型X線管が保持部材で保持された構成において、ターゲットの熱を速やかに放熱でき、長時間安定してX線を発生可能な信頼性の高いX線発生装置及びそれを用いたX線撮影装置を提供する。
【解決手段】胴部内に配置された電子源に対向する一端に電子の照射によりX線を発生させるターゲットを備えて内部が密閉された筒形のX線管が、絶縁性液体が充填された収納容器内で、周囲に絶縁性液体の流路を残して胴部を保持部材によって保持されたX線発生装置であって、電子源とターゲットの前記対向方向における保持部材と前記一端の端面の外周との距離が、保持部材よりも前記一端側のX線管の外面に接する前記流路の最小幅の2倍以上であることを特徴とするX線発生装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線発生装置及びX線撮影装置に関し、特に絶縁性液体が充填された収納容器内に保持部材で保持された透過型X線管を備えるX線発生装置及びそれを用いたX線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子源から放出された電子をターゲットに照射することによりX線を発生させるX線発生装置として、密閉された内部に電子源とターゲットを配置したX線管を備えるX線発生装置が知られている。X線管内に配置される電子源としては、従来からフィラメント等の熱電子源が用いられている。熱電子源には、ブラウン管用の電子源として用いられる含浸型熱陰極電子放出素子等のように小型のものもある。熱電子源を用いたX線管では、高温に加熱した熱電子源から放出された熱電子の電子束の一部を、ウエネルト電極、引出し電極、加速電極及びレンズ電極を通して高エネルギーに加速する。それと同時に所望の形状に電子束が成形された後、成形された電子束をタングステン等の金属で構成されたターゲットに照射してX線を発生させる。
【0003】
しかし、電子束を高エネルギーに加速しターゲットに照射してX線を発生させる際、ターゲットでは、ターゲットに衝突する電子のエネルギーの約1%以下がX線となり、残りの約99%以上が熱となる。このときターゲットで発生した熱は放射熱として放熱されるが、ターゲットは真空中にあるため放熱が十分に行われないことがある。放熱量が少ない場合にはターゲットの温度が上昇し、ターゲットを支持するターゲット基板を用いている場合にはターゲット基板が溶融することがあり、ターゲット基板を用いない場合にはターゲットが溶融することがある。このため、ターゲットで発生した熱を速やかに放熱する必要があった。
【0004】
特許文献1には、収納容器内にX線管を備え、収納容器とX線管の間に電気絶縁油を充填し、ターゲットで発生した熱を電気絶縁油に伝えてターゲットの放熱効果を高める技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−025792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電気絶縁油が充填された収納容器内に透過型X線管が保持部材で保持されたX線発生装置では、ターゲットの発熱により温められた電気絶縁油の対流が保持部材によって妨げられて流速が低下し、ターゲットの熱を速やかに放熱できない場合があった。速やかに放熱できないと、電気絶縁油が60℃以上の温度になって発泡、熱分解することにより電気絶縁油の電気絶縁性が低下し、これにより放電が発生してX線管が破損するおそれがあった。そして、放電によりX線管が破損すると、長時間安定してX線を発生させることができないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、絶縁性液体が充填された収納容器内に透過型X線管が保持部材で保持された構成において、ターゲットの熱を速やかに放熱でき、長時間安定してX線を発生可能な信頼性の高いX線発生装置及びそれを用いたX線撮影装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、胴部内に配置された電子源に対向する一端に電子の照射によりX線を発生させるターゲットを備えて内部が密閉された筒形のX線管が、絶縁性液体が充填された収納容器内で、周囲に前記絶縁性液体の流路を残して前記胴部を保持部材によって保持されたX線発生装置であって、
前記電子源と前記ターゲットの前記対向方向における前記保持部材と前記一端の端面の外周との距離が、前記保持部材よりも前記一端側の前記X線管の外面に接する前記流路の最小幅の2倍以上であることを特徴とするX線発生装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、絶縁性液体が充填された収納容器内に配置された透過型X線管を、X線管の周囲に流路を残して保持部材によって保持し、保持部材を透過型X線管のターゲットを備える一端の端面の外周から一定距離L以上離れた位置に配置する。このように配置することにより、絶縁性液体の対流が保持部材によって妨げられることなく、絶縁性液体による冷却効果が高いX線管保持構造となり、ターゲットの熱を速やかに放熱できる。これにより、絶縁性液体の電気絶縁性の低下を防止し、放電の発生を抑制できるため、長時間安定してX線を発生可能な信頼性の高いX線発生装置及びそれを用いたX線撮影装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態のX線発生装置の断面模式図である。
【図2】第1の実施形態のX線発生装置の他の例の断面模式図である。
【図3】一定距離Lと絶縁性液体の温度との関係を示すグラフである。
【図4】第2の実施形態のX線発生装置の断面模式図である。
【図5】第3の実施形態のX線発生装置の断面模式図である。
【図6】第4の実施形態のX線発生装置の断面模式図である。
【図7】第4の実施形態のX線発生装置の他の例の断面模式図である。
【図8】本発明のX線発生装置を用いたX線撮影装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のX線発生装置及びX線撮影装置を具体的な実施形態により説明する。
【0012】
〔第1の実施形態〕
図1(a)は本実施形態のX線発生装置11を図1(b)のB−B’を含む平面で切断したときの断面模式図、図1(b)は本実施形態のX線発生装置11を図1(a)のA−A’を含む平面で切断したときの断面模式図である。
【0013】
本実施形態のX線発生装置11は、収納容器12、絶縁性液体13、X線管14、電子源15、第1制御電極16、第2制御電極17、ターゲット18、ターゲット基板19、遮蔽部材20、保持部材21、電源回路22から構成されている。
【0014】
収納容器12は、X線管14等の部材を収納するための容器である。収納容器12内には絶縁性液体13が充填されている。絶縁性液体13が充填された収納容器内に、収納容器12の内面に固定された保持部材21によって胴部を保持された筒形のX線管14が収納されている。X線管14の周囲は絶縁性液体13の流路になっている。この流路はX線管14の外面と保持部材21に接する流路であり、絶縁性液体13がX線管14の周囲を循環可能な流路である。収納容器12の材料としては鉄、ステンレス、鉛、真鍮、銅等の金属が使用可能である。収納容器12内への絶縁性液体13の注入は、収納容器12の一部に絶縁性液体13の注入口(不図示)を設けることにより、その注入口から行うことができる。また、駆動中のX線発生装置11で絶縁性液体13の温度が上昇し膨張したときに収納容器12内の圧力が上昇するのを避けるため、必要に応じて収納容器12の一部に弾性部材を用いた圧力調整口(不図示)を設置する。
【0015】
絶縁性液体13は、電気絶縁性が高く、冷却能力の高いものが良い。また、ターゲット18が発熱により高温になりその熱が絶縁性液体13に伝わるため熱による変質の少ないものが好ましく、絶縁性液体13の流れやすさの観点からすると低粘度のものが好ましい。例えば電気絶縁油、フッ素系の絶縁性液体等が使用可能である。
【0016】
X線管14は、筒形の形状をしており、筒形の両端がそれぞれ塞がれ内部が密閉された容器である。筒形の胴部内には電子源15が配置され、電子源15に対向する筒形の一端にはターゲット18が備えられており、ターゲット18は透過型X線管のX線取り出し窓になっている。電子源15から放出された電子はターゲット18に照射され、ターゲット18でX線が発生し、発生したX線がX線取り出し窓から外部に放出される。本実施形態のX線管14は円筒形の一端を、ターゲット18、ターゲット基板19及び遮蔽部材20からなるターゲット側端壁25で塞ぎ、円筒形の他端を電子源側端壁27で塞いだ構成としているが、この構成に限定されるわけではない。X線管14の形状は角筒形等でも良い。また、内部の真空度を、一般的に電子源15が駆動できる1×10-4Pa以下に保つため、X線管14内には、駆動中のX線管14で放出されるガスを吸収するバリウムゲッタ、NEG、小型イオンポンプ(不図示)等を配置しても良い。X線管14の材料としては電気絶縁性が高く、高真空維持が可能であり、かつ耐熱性の高いものが好ましい。例えばアルミナ、耐熱ガラス等が使用可能である。電子源15としてはフィラメント、含浸型カソード、電界放出型素子等が使用可能である。
【0017】
ターゲット18は、電子源15に対向してターゲット基板19の電子源側の面に配置されターゲット基板19によって支持されている。ターゲット18の材料としてはタングステン、モリブデン等の金属が使用可能である。
【0018】
ターゲット基板19は、ターゲット18から発生し不要な方向に放射されるX線を吸収する機能と、ターゲット基板19の熱拡散板の機能を持つ筒形の遮蔽部材20に銀ろう付け等で接合されている。遮蔽部材20の形状は円筒形でも良いし、角筒形等でも良い。電子源15から放出された電子は遮蔽部材20の電子源15に近い開口部を通ってターゲット18に照射され、ターゲット18でX線が発生し全方向にX線が放射される。ターゲット基板19を透過したX線は遮蔽部材20の電子源15から遠い開口部を通って外部に放出される。図1(a)では遮蔽部材20の電子源15から遠い開口部がターゲット基板19よりも外方に位置している。この構成にするとターゲット18から外方に向かって放射されたX線を遮蔽部材20の内壁で遮蔽できる点でより好ましい。図2は本実施形態の他の例である。図2の各部材は図1(a)と同じ部材であり、図2の構成は遮蔽部材20の形状以外は図1(a)と同じ構成である。図2では遮蔽部材20の電子源15に近い開口部がターゲット18よりも内方に位置している。この構成にするとターゲット18から内方に向かって放射されたX線を遮蔽部材20の内壁で遮蔽できる点でより好ましい。本実施形態ではターゲット18を支持するターゲット基板19が筒形の遮蔽部材20に接合された構成をとるため、X線発生時にターゲット18で発生した熱はターゲット基板19、遮蔽部材20に伝わり、その後絶縁性液体13、X線管14に伝わる。なお、ターゲット基板19は設けなくても良い。ターゲット基板19を設けない場合には、ターゲット18を筒形の遮蔽部材20に銀ろう付け等で接合する。この場合、ターゲット18で発生した熱は絶縁性液体13、遮蔽部材20に伝わり、その後X線管14に伝わる。ターゲット基板19の材料としては熱伝導率が高く、X線吸収能力の低いものが良い。例えばSiC、ダイヤモンド、カーボン、薄膜無酸素銅、ベリリウム等が使用可能である。遮蔽部材20の材料としてはX線吸収能力の高いものが良い。例えばタングステン、モリブデン、無酸素銅、鉛、タンタル等の金属が使用可能である。
【0019】
保持部材21は、X線管14の胴部を保持するためのものである。X線管14のターゲット18を備える一端の端面(以下、「ターゲット側端壁25の端面」ともいう。)と、X線管14のターゲット18を備えていない一端の端面(以下、「電子源側端壁27の端面」ともいう。)からほぼ等距離付近の胴部を固定している。図1(a)(b)ではX線管14が胴部の二箇所で保持部材21によって保持されているが、X線管14は少なくとも胴部の一箇所以上で保持部材21によって保持されていれば良い。保持部材21の材料としては本実施形態のように保持部材21を接地電位とする場合には、導電性を有するものが良い。例えば鉄、ステンレス、真鍮、銅等の導電性部材や、エンジニアリングプラスチック、セラミック等の絶縁性部材が使用可能である。但し、保持部材21として導電性を有していない部材を用い、保持部材21で接地しなくても良い。また、保持部材21と収納容器12が共に熱伝導性を有し互いに接触している場合には、ターゲット18で発生した熱が絶縁性液体13から放熱できるだけではない。この場合、ターゲット18で発生した熱がX線管14に伝わった後、保持部材21、収納容器12に伝わり収納容器12からも放熱できる点でより好ましい。
【0020】
第1制御電極16は、電子源15で発生した電子を引き出すためのものであり、第2制御電極17は、ターゲット18における電子の焦点径を制御するためのものである。本実施形態のように第1制御電極16と第2制御電極17を設けた場合、第1制御電極16によって形成される電界により電子源15から放出された電子束23は、第2制御電極17の電位制御により集束される。ターゲット18の電位は電子源15に対して正電位となっているため、第2制御電極17を通過した電子束23はターゲット18に引き寄せられてターゲット18に衝突しX線24を発生する。電子束23のON/OFF制御は、第1制御電極16の電圧で制御する。第1制御電極16の材料としてはステンレス、モリブデン、鉄等が使用可能である。
【0021】
電源回路22は、X線管14に接続され(配線不図示)、電子源15、第1制御電極16、第2制御電極17及びターゲット18に電気を供給するためものであり、本実施形態では収納容器12内に配置しているが、収納容器12の外に配置しても良い。
【0022】
人体等のX線撮影を行う場合、ターゲット18は電子源15の電位に対して電位が+30kV〜150kV程度高くなっている。この電位差はターゲット18から発生するX線が人体を透過し、有効に撮影に寄与するために必要な加速電位差である。
【0023】
本実施形態のX線発生装置11は、ターゲット18と電子源15との電位差Vを20kV〜160kVとすると、ターゲット18に+V/2、電子源15に−V/2の電位を与え、保持部材21で接地した、中点接地型の電源方式を採用している。これは、絶縁性液体13の絶縁破壊距離から考えて、一般的に収納容器12が小型化できるからである。また、本実施形態は中点接地型でなくても良いが、中点接地型にするとグランドに対するターゲット18の電圧及び電子源15の電圧の絶対値を小さくすることができるため、陽極接地型等と比べて電源回路22を小規模にできる点でより好ましい。中点で接地しなくても、例えばX線管14の両端から離れた位置に保持部材21を配置し、その位置で接地した場合でも陽極接地型等と比べると電源回路22を小規模にできる。
【0024】
上記構成のX線発生装置11を駆動すると、X線管14ではターゲット18を備える一端での発熱が大きい。即ちターゲット18で発生した熱がターゲット基板19、遮蔽部材20へと伝わるためターゲット側端壁25での発熱が大きい。例えばX線発生装置11を150W程度の出力で駆動した場合、遮蔽部材20表面の最高温度は200℃以上になると推定される。
【0025】
従って、絶縁性液体13の対流による冷却効果を高めるためには、ターゲット側端壁25の周辺の流路抵抗を下げることが必要である。本発明者らは、保持部材をターゲット側端壁25の端面の外周から一定距離L以上離すことで、ターゲット18の発熱により温められた絶縁性液体13が保持部材側に向かって対流する流路が確保され、絶縁性液体13の対流による冷却効果が高まることを見出した。これによりターゲット側端壁25の周辺の流路抵抗が下がり、ターゲット18の熱を速やかに放熱できる。この一定距離Lとは、互いに対向する電子源15とターゲット18の対向方向における保持部材21とターゲット側端壁25の端面の外周との距離である。保持部材21よりもX線管14のターゲットを備える一端側における、X線管14の外面と収納容器12の内面の互いに対向する面を結ぶ距離(図1(a)(b)ではL1〜L8、図2ではL2、L5、L6)のうち最短距離をLsとすると、“L≧2×Ls”である。この最短距離Lsは、保持部材21よりもX線管14のターゲット18を備える一端側における、X線管14の外面に接する流路の最小幅ということもできる。例えばターゲット18の電位と電子源15の電位差Vを20kV〜160kVとすると、最短距離Lsは1mm〜20mmが好ましい。一定距離Lを最短距離Lsの2倍以上とした場合に絶縁性液体13の対流による冷却効果が高まることについて図3を用いて説明する。
【0026】
図3は一定距離Lと、ターゲット側端壁25近傍に配置した温度センサ26により測定された絶縁性液体13の温度との関係を示すグラフである。図3で示すように、一定距離LがLs、1.5×Lsの場合には経時的に温度上昇が見られるが、一定距離Lが2×Ls、2.5×Lsの場合には一定時間経つと温度上昇がほとんど見られない。このことから、一定距離Lが最短距離Lsの2倍以上であれば絶縁性液体13の対流が良く、冷却効果が高まることが分かる。
【0027】
以上より、本実施形態によれば、上記構成をとるため絶縁性液体13の対流を妨げることなく、絶縁性液体13による冷却効果が高いX線管保持構造となり、ターゲット18の熱を速やかに放熱できる。これにより、長時間安定してX線を発生可能な信頼性の高いX線発生装置を実現できる。
【0028】
〔第2の実施形態〕
図4(a)は本実施形態のX線発生装置11を図4(b)のB−B’を含む平面で切断したときの断面模式図、図4(b)は本実施形態のX線発生装置11を図4(a)のA−A’を含む平面で切断したときの断面模式図である。図4(c)は図4(b)とは異なる保持部材21を用いた例である。
【0029】
本実施形態のX線発生装置11は、X線管14と保持部材21を嵌合させている点が第1の実施形態と異なる。この点を除いては、第1の実施形態と同じ部材を用い、第1の実施形態と同じ構成としているため、X線管14と保持部材21以外の各部材についての説明、及びX線発生装置11の構成についての説明は省略する。
【0030】
X線管14の保持部材21との当接部にはくさび状の凸部41を有し、保持部材21のX線管14との当接部には凸部41と嵌合する形状を有しており、両者を嵌合させることによってX線管14の胴部を保持している。本実施形態ではX線管14と保持部材21を嵌合させているため、より安定してX線管14を保持できる点でより好ましい。図4(a)(b)ではX線管14が胴部の二箇所で保持部材21によって保持されているが、X線管14は少なくとも胴部の一箇所以上で保持部材21によって保持されていれば良く、図4(c)のように胴部の三箇所で保持部材21によって保持されても良い。図4(b)のように二箇所のうちの一箇所でX線管14と保持部材21が接触する領域を大きくする場合、又は図4(c)のように三箇所で保持する場合には、より安定してX線管14を保持できる。
【0031】
以上より、本実施形態によれば、上記構成をとるため第1の実施形態と同様の効果が得られると共に、より安定してX線管14を保持できる。
【0032】
〔第3の実施形態〕
図5(a)は本実施形態のX線発生装置11を図5(b)のB−B’を含む平面で切断したときの断面模式図、図5(b)は本実施形態のX線発生装置11を図5(a)のA−A’を含む平面で切断したときの断面模式図である。
【0033】
本実施形態のX線発生装置11は、保持部材21が収納容器12の一部になっている点が第1の実施形態と異なる。この点を除いては、第1の実施形態と同じ部材を用い、第1の実施形態と同じ構成としているため、収納容器12と保持部材21以外の各部材についての説明、及びX線発生装置11の構成についての説明は省略する。
【0034】
保持部材21は収納容器12の一部である。図5(a)(b)では収納容器12の内面の一部に設けられた凸部が保持部材21になっている。保持部材21としては例えば板厚0.1mm〜3mmのステンレス等が使用可能である。このように、本実施形態では収納容器12と保持部材21を別々に設ける必要がない。また、本実施形態では保持部材21が収納容器12の一部になっているため、収納容器12が熱伝導性を有する場合には、ターゲット18で発生した熱がX線管14に伝わった後、収納容器12に伝わり収納容器12からも放熱できる点でより好ましい。
【0035】
以上より、本実施形態によれば、上記構成をとるため第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0036】
〔第4の実施形態〕
図6(a)は本実施形態のX線発生装置11を図6(b)のB−B’を含む平面で切断したときの断面模式図、図6(b)は本実施形態のX線発生装置11を図6(a)のA−A’を含む平面で切断したときの断面模式図である。図7(a)(b)は図6(a)(b)とは異なる冷却装置を用いた例である。
【0037】
本実施形態のX線発生装置11は、筒形のX線管14の断面が略四角形状である点と、収納容器12に冷却装置が設けられている点が第3の実施形態と異なる。この点を除いては、第3の実施形態と同じ部材を用い、第3の実施形態と同じ構成としているため、X線管14、収納容器12、冷却装置以外の各部材についての説明、及びX線発生装置11の構成についての説明は省略する。
【0038】
X線管14の断面は略四角形状であるが、円形状等でも良い。収納容器12は熱伝導性を有し、収納容器12には冷却装置として空冷装置61が設けられている。図6(a)(b)では保持部材21である収納容器12の内面の一部に設けられた凸部に空冷装置61が設けられており、空冷装置61は冷却フィンと空冷フィンを組み合わせたものである。保持部材21としては例えば板厚0.2mm〜5mmの銅等が使用可能である。本実施形態では収納容器12に冷却装置が設けられているため、収納容器12の冷却も行うことができ、X線管14を冷却する能力が向上する点でより好ましい。図7(a)のように液冷装置71を用いた場合、又は図7(b)のようにヒートパイプ72と空冷装置61を組み合わせて用いた場合にも同様の効果が得られる。
【0039】
以上より、本実施形態によれば、上記構成をとるため第3の実施形態と同様の効果が得られると共に、X線管14を冷却する能力を向上できる。
【0040】
〔第5の実施形態〕
図8を用いて本発明のX線発生装置を用いたX線撮影装置について説明する。図8は本実施形態のX線撮影装置の構成図である。このX線撮影装置はX線発生装置11、X線検出器81、X線検出信号処理部82、X線撮影装置制御部83、電子源駆動部84、電子源ヒーター制御部85、制御電極電圧制御部86及びターゲット電圧制御部87を備えている。X線発生装置11としては例えば第1〜第4の実施形態のX線発生装置が好適に用いられる。
【0041】
X線検出器81は、X線検出信号処理部82を介してX線撮影装置制御部83に接続されている。X線撮影装置制御部83の出力信号は、電子源駆動部84、電子源ヒーター制御部85、制御電極電圧制御部86、ターゲット電圧制御部87を介してX線発生装置11の各端子に接続されている。
【0042】
X線発生装置11でX線を発生させると、大気中に放出されたX線は、被検体(不図示)を透過してX線検出器81に検出され、被検体のX線透過画像が得られる。得られたX線透過画像は表示部(不図示)に表示させることができる。
【0043】
以上より、本実施形態によれば、第1〜第4の実施形態の効果を奏するX線発生装置を用いるため長時間安定してX線を発生可能な信頼性の高いX線撮影装置が実現できる。
【符号の説明】
【0044】
11:X線発生装置、12:収納容器、13:絶縁性液体、14:X線管、15:電子源、18:ターゲット、19:ターゲット基板、21:保持部材、23:電子束、24:X線、25:X線管のターゲット側端壁、27:X線管の電子源側端壁、61:空冷装置、71:液冷装置、72:ヒートパイプ、81:X線検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴部内に配置された電子源に対向する一端に電子の照射によりX線を発生させるターゲットを備えて内部が密閉された筒形のX線管が、絶縁性液体が充填された収納容器内で、周囲に前記絶縁性液体の流路を残して前記胴部を保持部材によって保持されたX線発生装置であって、
前記電子源と前記ターゲットの前記対向方向における前記保持部材と前記一端の端面の外周との距離が、前記保持部材よりも前記一端側の前記X線管の外面に接する前記流路の最小幅の2倍以上であることを特徴とするX線発生装置。
【請求項2】
前記X線管が、前記X線管と前記保持部材を嵌合させることによって保持されていることを特徴とする請求項1に記載のX線発生装置。
【請求項3】
前記保持部材と前記収納容器が、共に熱伝導性を有し互いに接触していることを特徴とする請求項1又は2に記載のX線発生装置。
【請求項4】
前記保持部材が前記収納容器の一部であることを特徴とする請求項1に記載のX線発生装置。
【請求項5】
前記収納容器の一部とは、前記収納容器の内面の一部に設けられた凸部であることを特徴とする請求項4に記載のX線発生装置。
【請求項6】
前記収納容器が熱伝導性を有することを特徴とする請求項4又は5に記載のX線発生装置。
【請求項7】
前記収納容器が冷却装置を備えていることを特徴とする請求項6に記載のX線発生装置。
【請求項8】
前記保持部材が、導電性を有し接地されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のX線発生装置。
【請求項9】
前記絶縁性液体が電気絶縁油であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のX線発生装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載のX線発生装置と、該X線発生装置から放出され被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、を有することを特徴とするX線撮影装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−221864(P2012−221864A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88806(P2011−88806)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】