説明

X線発生装置及びX線検査装置

【課題】絶縁油の膨張、収縮を緩衝する弾性部材が破断したことを検知できるとともに、運転の続行可否を判断できるX線発生装置及びX線検査装置を得る。
【解決手段】開口部を有しており、X線管を内包し支持する容器と、該容器内に充填され、X線管を浸漬して、絶縁する第1の絶縁油と、前記開口部を閉塞するように取り付けられたベローズとを含むX線発生装置であって、前記開口部及び前記ベローズの外部と第1の外部容器、管18、第2の外部容器19とによって形成された空間を内部に有し、前記空間に気体及び第2の絶縁油20が貯留されている貯留器を備えている。第2の外部容器19は、第2の絶縁油20液面を外部から目視できる透明部19aと、透明部19aの側部に設けられ、第2の絶縁油20液面位置を読み取る目盛り19b、19b、19c、19c、19d、19dとを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線管を冷却する絶縁油の油圧を調整する油圧調整機構を有したX線発生装置、及び、このX線発生装置を備えたX線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、絶縁油を充填した容器内において高電圧で使用されるX線管を有したX線発生装置及びX線検査装置として、下記特許文献1に代表されるような技術が公知となっている。なお、特許文献1のものは、X線管を収納し、内部に絶縁油を充填した管容器と、前記絶縁油が出入りする絶縁油穴に通じる側と空気が出入りする空気穴に通じる側とに内部空間が弾性部材で仕切られたベローズ収納容器とを具備したX線管装置において、前記ベローズ収納容器の空気穴が、前記絶縁油に濡れ難い材料の絶縁油遮断層を有するフィルターで封止されていることを特徴とするX線管装置である。
【0003】
【特許文献1】特開2001−307668号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のものにおいては、経年劣化などによりベローズが破れた場合、該破損したことを確認することが困難であるだけでなく、X線管を収容している容器から、絶縁油が外部に排出されてしまい、X線管を十分に冷却できなくなるおそれがあった。その結果として、X線発生装置の運転をそのまま続行していいかどうかの判断は困難であった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、経年劣化などにより前記弾性部材が破断した際、該破損したことを容易に検知できるとともに、運転の続行可否を容易に判断できるX線発生装置及びX線検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明は、開口部を有しており、X線管を内包し支持する容器と、前記容器内に充填され、前記X線管を浸漬して、絶縁する絶縁油と、前記絶縁油の膨張、収縮を緩衝するために前記開口部を閉塞するように取り付けられた弾性部材とを含むX線発生装置であって、前記開口部及び前記弾性部材の外部とともに形成した空間を内部に有している貯留器を備えており、前記貯留器が、外部から前記空間内を目視できる透明部を有しているものである。なお、前記透明部又は前記透明部の側部に、前記貯留器の高さ方向に沿って目盛りが設けられていることが好ましい。
【0007】
(2) 上記(1)のX線発生装置においては、前記貯留器が、前記開口部及び前記弾性部材の外部と接続されている孔を有した第1の外部容器と、前記第1の外部容器に管を介して連通している第2の外部容器とを有していることが好ましい。
【0008】
(3) 別の観点として、上記(1)のX線発生装置においては、前記開口部が、前記容器の側部に設けられ、前記貯留器が、前記開口部及び前記弾性部材の外部と接続されている孔を有した外部容器を有しているものであってもよい。
【0009】
上記(1)〜(3)の構成によれば、貯留器内の空間を、外部から容易に視認できる。これにより、前記弾性部材が破損した際には、前記絶縁油が前記貯留器内に流入していることを検知できる。つまり、前記弾性部材の破損を検知できるものとなる。また、前記透明部又は前記透明部の側部に前記目盛りが設けられており、予め前記貯留器内に気体しか封入されていないような場合には、前記容器から漏れ出た前記絶縁油の量を検知できる。その結果として、前記弾性部材が破れてしまった後の前記容器内の絶縁油量を検知できるので、装置の運転を続行してもよいかどうかの判断材料として用いることができる。
【0010】
(4) 上記(2)のX線発生装置においては、前記開口部が、前記容器の側部に設けられ、前記管の他端が、前記第1の外部容器の上部に接続されていることが好ましい。
【0011】
上記(4)の構成によれば、前記X線管の発熱によって前記第1の絶縁油が熱膨張し、前記弾性部材が破れ、前記第1の外部容器内が前記第1の絶縁液で満たされた場合に、前記第2の外部容器に前記第1の絶縁液が流れ込むようにすることができる。また、前記第2の外部容器内に排出される前記第1の絶縁液の量を最小にすることができるので、前記容器内の前記第1の絶縁液の温度が低温になって、前記第1の外部容器内における前記第1の絶縁液の一部が前記容器内に戻っても、さほど影響を受けないようにすることができる。また、前記管の他端が前記第1の外部容器の上部以外に接続される場合に比べて、前記第2の外部容器内に排出された前記第1の絶縁液の量を、適切に確認できる。
【0012】
(5) 上記(4)のX線発生装置においては、前記第1の外部容器が、中心軸を水平として前記容器の側部に設けられた丸筒状容器であることが好ましい。
【0013】
上記(5)の構成によれば、内部曲面において負荷される圧力を放射状に分散することができるので、前記第1の外部容器に過大な圧力をかけないようにすることができ、他の形状の容器に比べて、前記第1の外部容器の寿命を延ばすことができる。
【0014】
(6) 上記(1)〜(5)のX線発生装置においては、運転前において、前記空間内が前記容器内と同程度の圧力となるように調整されていることが好ましい。
【0015】
上記(6)の構成によれば、前記容器内の圧力を安定させやすくなるので、より安全な運転を行うことができるX線発生装置を提供できる。
【0016】
(7) 上記(1)〜(6)のX線発生装置においては、前記気体が不活性ガスであることが好ましい。
【0017】
上記(7)の構成によれば、仮に前記弾性部材が破れたとしても、前記第1の絶縁油の酸化をも防止できる。
【0018】
(8) 本発明のX線検査装置は、上記(1)〜(7)のいずれか1つのX線発生装置を備えているものである。
【0019】
上記(8)の構成によれば、上記(1)〜(7)のX線発生装置の効果を有したX線検査装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
<第1実施形態>
以下、図面を用いて、本発明の実施形態に係るX線発生装置について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係るX線発生装置を搭載したX線検査装置の斜視概略図である。図2は、図1のX線発生装置の断面図である。ここで、図1におけるX線発生装置1は、設置位置を示すための大まかな概略図を表示したものであり、詳細な概略図は図2に示したものである。
【0021】
図1に示されるX線検査装置100は、X線を発生するX線発生装置1と、X線発生装置1を内部に有したX線発生装置収納部2と、X線発生装置収納部2の下部に連設され、基台と一体化しているX線検査部3と、X線検査部3内に設けられ、物品を搬送するベルトコンベア4と、X線発生装置1及びベルトコンベア4の下部に設けられているX線検出器5とを備えているものである。
【0022】
X線発生装置収納部2は、X線発生装置1を取り囲んで密封する金属製の筐体であり、正面側(図1中の手前側)においては、水平方向に片開きする扉2aを有している。この扉2aには、X線検査装置の運転中におけるX線の感度調整などの設定ができるタッチパネル2bが設けられている。
【0023】
X線検査部3は、側方の左面及び右面に、検査する物品を通過させるための入口3a及び出口3bが形成されている。これら入口3a及び出口3bそれぞれの内側には、複数枚のX線漏洩防止カーテン(図示せず)が取り付けられており、X線発生装置1から照射されるX線が外部に漏洩しないようになっている。
【0024】
ベルトコンベア4は、駆動モータ(図示せず)により駆動され、入口3aから搬入された検査する物品を出口3bへ搬送することができるものである。
【0025】
X線検出器5は、検査する物品に曝射されたX線の透過量から金属屑,骨などの異物が含まれているか否かを検出することができるものである。
【0026】
X線発生装置1は、図2に示すように、略直方体をなし、側部に開口部10aを有した金属製の容器10と、容器10内に設けられた台11と、台11の上に取りつけられたX線管12と、容器10内に充填され、X線管12を浸漬して冷却する第1の絶縁油13と、開口部10aを密閉するように固定部材14によって固定されたベローズ15と、開口部10aの外部に接続された貯留器16とを備えている。
【0027】
ベローズ15は、樹脂などの弾性部材からなり、フランジ部を縁に有したカップ状の部材である。固定部材14は、リング状部材であり、ベローズ15のフランジ部を容器10の開口部10a周囲に押しつけるように、容器10に取り外し可能な状態で固定されているものである。
【0028】
貯留器16は、開口部10aの外部に設けられた第1の外部容器17と、第1の外部容器17に管18を介して連通している第2の外部容器19と、第1の外部容器17及び管18に充填されているとともに、第2の外部容器19に封入されている第2の絶縁油20とを備えている。
【0029】
第1の外部容器17は、一端に蓋部を有し、他端の孔17aの周囲にフランジ部を有し、中心軸を鉛直方向に対して垂直となるように設けられている丸筒状部材である。
【0030】
管18は、柔軟な樹脂からなるものであり、第1の外部容器17の曲面部のうち上部に設けられている。また、第2の外部容器19を設置する位置によって、適当な長さのものが選ばれる。ここで、一変形例として、管18は金属からなるものであってもよい。
【0031】
第2の外部容器19は、樹脂又はガラスなどの透明な材料からなる窓部19aを有した筒状部材であり、内部には第1の外部容器17及び管18に充填されている第2の絶縁油20が、気体とともに封入されている。窓部19aの側部には、第2の絶縁油20液面の通常位置を示した目盛り19b、19b(図3(a)参照)と、運転時の第2の絶縁油20液面位置の目盛り19c、19c(図3(b)参照)と、ベローズ15破断時の第2の絶縁油20液面位置の目盛り19d、19d(図3(c)参照)とが設けられている。ここで、運転時の第2の絶縁油20液面位置は、ベローズ15が劣化する前にX線発生装置1を運転し、予め第2の絶縁油20液面の最大上昇位置を測定することによって得ることができる。また、ベローズ15破断時の第2の絶縁油20液面位置は、ベローズ15を破断させた状態でX線発生装置1を運転し、予め第2の絶縁油20液面の最大上昇位置を測定することによって得ることができる。また、第2の外部容器19に封入されている気体の例としては、少量であれば空気でもかまわないが、絶縁油の酸化を防止することを考慮して、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどの不活性ガスであることが好ましい。
【0032】
なお、容器10内における第1の絶縁油13の最上位の高さ位置と、第2の外部容器19における第2の絶縁油20の最上位の高さ位置とは、位置21になるように調整されている。これにより、容器10内の圧力を安定させやすくなるので、より安全な運転を行うことができるX線発生装置1を提供できる。また、運転前において、前記空間内が大気圧程度の圧力となるように調整されている。これにより、さらに容器10内の圧力を安定させやすくなるので、より安全な運転を行うことができるX線発生装置1を提供できる。
【0033】
ここで、第2の絶縁油20は、第1の絶縁油13と同様のものであってもよいが、異なる種類のものであってもよい。ただし、第2の絶縁油20と第1の絶縁油13とが異なる種類のものである場合には、ベローズ15が破れた際、第1の絶縁油13と第2の絶縁油20とは混合することになるので、その際に化学反応などを起こさない組み合わせが選ばれている。
【0034】
次に、本実施形態に係るX線発生装置1の動作について説明する。まず、X線検査装置100においてX線発生装置1の運転が開始されると、X線管12からX線がベルトコンベア4によって搬送された検査対象の物品に発せられ、X線検出器5によって該物品に曝射されたX線の透過量から金属屑,骨などの異物が含まれているか否かを検出する。このとき、X線管12は熱を発することになるが、第1の絶縁油13によって該熱が吸収され、第1の絶縁油13が膨張する。この第1の絶縁油13の膨張によって増加した圧力は、ベローズ15の変形及び貯留器16によって緩衝される。具体的に述べると、第1の絶縁油13の膨張によって増加した圧力は、ベローズ15の変形によって、第1の外部容器17内の第2の絶縁油20、管18内の第2の絶縁油20、第2の外部容器19内の第2の絶縁油20の順に伝達される。そして、第2の外部容器19内の第2の絶縁油20の液面が上昇し(図3(b)の目盛り19c、19c)、第2の外部容器19内の気体が圧縮されることによって緩衝される。
【0035】
なお、X線検査装置100においてX線発生装置1の運転が停止されると、X線管12からの発熱が停止され、第1の絶縁油13が外部冷却されることにより元の体積まで収縮するので、ベローズ15が元の形状に戻るとともに、第2の外部容器19内の第2の絶縁油20の液面が、元の高さ位置(図3(a)の目盛り19b、19b)まで戻ることになる。このとき、ベローズ15によって、第2の絶縁油20は容器10内に入り込むことはないので、第1の絶縁油13と混合することはない。したがって、仮に第2の絶縁油20が酸化していたり、第2の絶縁油20にほこりなどが入っていたりしても、第2の絶縁油20が第1の絶縁油13に影響を与えることがない。
【0036】
次に、X線検査装置100においてX線発生装置1を運転している最中に、ベローズ15が破れた場合のX線発生装置1の動作について説明する。まず、X線検査装置100においてX線発生装置1の運転が開始されると、X線管12からX線がベルトコンベア4によって搬送された検査対象の物品に発せられ、X線検出器5によって該物品に曝射されたX線の透過量から金属屑,骨などの異物が含まれているか否かを検出する。このとき、X線管12は熱を発することになるが、第1の絶縁油13によって該熱が吸収され、第1の絶縁油13が膨張する。この第1の絶縁油13の膨張によって増加した圧力は、ベローズ15を通過して、貯留器16によって緩衝される。具体的に述べると、第1の絶縁油13の膨張によって増加した圧力は、ベローズ15を通過して、第1の外部容器17内の第2の絶縁油20、管18内の第2の絶縁油20、第2の外部容器19内の第2の絶縁油20の順に伝達される。そして、第2の外部容器19内の第2の絶縁油20の液面が上昇し(図3(c)の目盛り19d、19dの位置参照)、第2の外部容器19内の気体が圧縮されることによって緩衝される。また、このとき、ベローズ15が破れているので、第1の絶縁油13と第2の絶縁油20とは混合される。
【0037】
なお、X線検査装置100においてX線発生装置1の運転が停止されると、X線管12からの発熱が停止され、第1の絶縁油13が外部冷却されることにより元の体積まで収縮するので、第2の外部容器19内の第2の絶縁油20の液面は、元の高さ位置(図3(a)の目盛り19b、19bの位置)まで戻ることになる。ただし、ベローズ15は破れているので、第1の絶縁油13と第2の絶縁油20とはさらに混合することになるが、第2の外部容器19内の気体に不活性ガスを使用して、第2の絶縁油20の酸化などを防止しておけば、特に問題は発生せず、所定期間(例えば、(a)ベローズ15の寿命期間、(b)社内規定で決めた期間、など)、X線発生装置1のメンテナンスを行わずにX線検査装置100を安全に運転することが可能である。もちろん、第2の外部容器19内の気体が空気であったとしても、該空気の量が少ないので、絶縁油の酸化が進行しにくいことから、従来よりも長い所定期間(例えば、(a)絶縁油の寿命を考慮した期間、(b)社内規定で決めた期間、など)、X線発生装置1のメンテナンスを行わずにX線検査装置100を安全に運転することが可能である。
【0038】
本実施形態によれば、第2の絶縁油20の液面位置を、外部から容易に視認できる。これにより、ベローズ15が破損した際には、第2の絶縁油20が貯留器16内に流入していることを検知できる。つまり、ベローズ15の破損を検知できるものとなる。また、弾性部材であるベローズ15が破損する前の運転時において、第1の絶縁油13が最大膨張したときの第2の絶縁油20の液面位置を予め測定し、該位置を目盛り19c、19cとして記しておけば、ベローズ15が破損した際、目盛り19c、19cの位置よりも大幅に高い位置まで液面上昇することが明らかであるので、ベローズ15が破損したことを容易に検知できる。特に、予め、ベローズ15を破損させた状態で運転した際の液面位置を測定し、該位置を目盛り19d、19dとして記しておくことで、ベローズ15が破損した際の液面位置を把握しておくことができる。これにより、ベローズ15の破損を容易に検知できるだけでなく、ベローズ15の交換タイミングを破損前の一定期間とせずとも、実際のベローズ15の破損に合わせて交換すればよいものとできる。したがって、従来ではベローズ15の寿命前に必ず交換する必要があったのが、寿命を迎えてから交換できるようになるので、従来よりも、ベローズ15の交換メンテナンス間隔を大幅に長期化できたX線発生装置1を提供できる。
【0039】
また、従来のベローズなどの弾性部材だけの場合に比べて、より容器10内の絶縁油の膨張、収縮を緩衝できる。また、ベローズ15の外部が空間(第1の外部容器17、管18、及び第2の外部容器19の内部空間)になっているので、ゴミが入りづらく且つ第1の絶縁油13に触れる気体の量を少なくできるので、第1の絶縁油13の酸化を抑制することができる。したがって、第1の絶縁油13の膨張、収縮を緩衝しつつ、第1の絶縁油13の酸化による絶縁耐電圧の劣化を抑制することができ、油内放電を抑制することができる。また、前記空間(第1の外部容器17、管18、及び第2の外部容器19の内部空間)中の第2の絶縁油20は、ベローズ15が劣化し破損しない限り、第1の絶縁油13のような絶縁耐電圧の劣化を考慮しないでいいので、酸素を含む気体と触れていても、さほど差し支えない。なお、仮にベローズ15が劣化し破損した際には、第2の絶縁油20が混合して第1の絶縁油13が多少劣化することもあるが、破損後からでも所定期間は、安全に運転を持続できるX線発生装置1を提供できる。これにより、従来よりも、絶縁油の交換メンテナンス間隔を大幅に長期化できるX線発生装置1を提供できる。
【0040】
さらに、開口部10aが、容器10の側部に設けられ、管18の他端が、第1の外部容器17の上部に接続されているので、X線管12の発熱によって第1の絶縁油13が熱膨張し、ベローズ15が破れ、第1の外部容器17内が第1の絶縁液13で満たされた場合に、第2の外部容器19に第1の絶縁液13が流れ込むようにすることができる。また、第2の外部容器19内に排出される第1の絶縁液13の量を最小にすることができるので、容器10内の第1の絶縁液13の温度が低温になって、第1の外部容器17内における第1の絶縁液13の一部が容器10内に戻っても、さほど影響を受けないようにすることができる。また、管18の他端が第1の外部容器17の上部以外に接続される場合に比べて、第2の外部容器19内に排出された第1の絶縁液13の量を適切に確認できる。
【0041】
加えて、第1の外部容器17が、中心軸を水平として容器10の側部に設けられた丸筒状容器であるので、内部曲面において負荷される圧力を放射状に分散することができるので、第1の外部容器17に過大な圧力をかけないようにすることができ、他の形状の容器に比べて、第1の外部容器17の寿命を延ばすことができる。
【0042】
<第2実施形態>
次に、図4、図5を用いて、本発明の第2実施形態に係るX線発生装置について説明する。なお、上記実施形態と異なる部分についてのみ説明し、同様の部分に関しては、説明を省略する。特に、符号40〜48の部分は、順に、第1実施形態の符号10〜17、20と同様であるので、説明を省略する。
【0043】
X線発生装置31は、第1実施形態で示したX線検査装置100に係るX線発生装置1の代わりに用いることができるものであり、第1実施形態の貯留器16の代わりに貯留器46が用いられている点で、第1実施形態に係るX線発生装置1と異なっている。
【0044】
貯留器46は、孔47aと、樹脂又はガラスなどの透明な材料からなる窓部47b(図5参照)とを有した筒状の外部容器47である。孔47aは、容器40の開口部40a及びベローズ45の外部側に接続されている。また、窓部47bの側部には、第2の絶縁油48液面の通常位置を示した目盛り(図5(a)参照)と、運転時の第2の絶縁油48液面位置の目盛り47d、47d(図5(b)参照)と、ベローズ45破断時の第2の絶縁油48液面位置の目盛り47e、47e(図5(c)参照)とが設けられている。ここで、運転時の第2の絶縁油48液面位置は、ベローズ45が劣化する前にX線発生装置31を運転し、予め第2の絶縁油48液面の最大上昇位置を測定することによって得ることができる。また、ベローズ45破断時の第2の絶縁油48液面位置は、ベローズ45を破断させた状態でX線発生装置31を運転し、予め第2の絶縁油48液面の最大上昇位置を測定することによって得ることができる。
【0045】
X線発生装置31の運転前において、外部容器47内の第2の絶縁油48の液面高さ位置は、図4に示すように、容器10内の第1の絶縁油43の最上位の液面の位置と、略同一になっている。
【0046】
次に、本実施形態に係るX線発生装置31の動作について説明する。まず、X線検査装置においてX線発生装置31の運転が開始されると、X線管42からX線がベルトコンベアによって搬送された検査対象の物品に発せられ、X線検出器によって該物品に曝射されたX線の透過量から金属屑,骨などの異物が含まれているか否かを検出する。このとき、X線管42は熱を発することになるが、第1の絶縁油43によって該熱が吸収され、第1の絶縁油43が膨張する。この第1の絶縁油43の膨張によって増加した圧力は、ベローズ45の変形及び貯留器46によって緩衝される。具体的に述べると、第1の絶縁油43の膨張によって増加した圧力は、ベローズ45の変形によって、外部容器47内の第2の絶縁油48に伝達される。そして、外部容器47内の第2の絶縁油48の液面が上昇し(図5(b)の目盛り47d、47dの位置参照)、外部容器47内の気体が圧縮されることによって緩衝される。
【0047】
なお、X線検査装置においてX線発生装置31の運転が停止されると、X線管42からの発熱が停止され、第1の絶縁油43が外部冷却されることにより元の体積まで収縮するので、ベローズ45が元の形状に戻るとともに、外部容器47内の第2の絶縁油48の液面が、元の高さ位置(図5(a)の目盛り47c、47cの位置)まで戻ることになる。このとき、ベローズ45によって、第2の絶縁油48は容器40内に入り込むことはないので、第1の絶縁油43と混合することはない。したがって、仮に第2の絶縁油48が酸化していたり、第2の絶縁油48にほこりなどが入っていたりしても、第2の絶縁油48が第1の絶縁油43に影響を与えることがない。
【0048】
次に、X線検査装置においてX線発生装置31を運転している最中に、ベローズ45が破れた場合のX線発生装置31の動作について説明する。まず、X線検査装置においてX線発生装置31の運転が開始されると、X線管42からX線がベルトコンベアによって搬送された検査対象の物品に発せられ、X線検出器によって該物品に曝射されたX線の透過量から金属屑,骨などの異物が含まれているか否かを検出する。このとき、X線管42は熱を発することになるが、第1の絶縁油43によって該熱が吸収され、第1の絶縁油43が膨張する。この第1の絶縁油43の膨張によって増加した圧力は、ベローズ45を通過して、貯留器46によって緩衝される。具体的に述べると、第1の絶縁油43の膨張によって増加した圧力は、ベローズ45を通過して、外部容器47内の第2の絶縁油48の順に伝達される。そして、外部容器47内の第2の絶縁油48の液面が上昇し(図5(c)の目盛り47e、47eの位置参照)、外部容器47内の気体が圧縮されることによって緩衝される。また、このとき、ベローズ45が破れているので、第1の絶縁油43と第2の絶縁油48とは混合される。
【0049】
なお、X線検査装置においてX線発生装置31の運転が停止されると、X線管42からの発熱が停止され、第1の絶縁油43が外部冷却されることにより元の体積まで収縮するので、外部容器47内の第2の絶縁油48の液面は、元の高さ位置(図5(a)の目盛り47c、47cの位置)まで戻ることになる。ただし、ベローズ45は破れているので、第1の絶縁油43と第2の絶縁油48とはさらに混合することになるが、外部容器47内の気体に不活性ガスを使用して、第2の絶縁油48の酸化などを防止しておけば、特に問題は発生せず、所定期間(例えば、(a)ベローズ45の寿命期間、(b)社内規定で決めた期間、など)、X線発生装置31のメンテナンスを行わずにX線検査装置を安全に運転することが可能である。もちろん、外部容器47内の気体が空気であったとしても、該空気の量が少ないので、絶縁油の酸化が進行しにくいことから、従来よりも長い所定期間(例えば、(a)絶縁油の寿命を考慮した期間、(b)社内規定で決めた期間、など)、X線発生装置31のメンテナンスを行わずにX線検査装置を安全に運転することが可能である。
【0050】
本実施形態によれば、第2の絶縁油48の液面位置を、外部から容易に視認できる。これにより、ベローズ45が破損した際には、第2の絶縁油48が貯留器46内に流入していることを検知できる。つまり、ベローズ45の破損を検知できるものとなる。また、弾性部材であるベローズ45が破損する前の運転時において、第1の絶縁油43が最大膨張したときの第2の絶縁油48の液面位置を予め測定し、該位置を目盛り47d、47dとして記しておけば、ベローズ45が破損した際、目盛り47d、47dの位置よりも大幅に高い位置まで液面上昇することが明らかであるので、ベローズ45が破損したことを容易に検知できる。特に、予め、ベローズ45を破損させた状態で運転した際の液面位置を測定し、該位置を目盛り47e、47eとして記しておくことで、ベローズ45が破損した際の液面位置を把握しておくことができる。これにより、ベローズ45の破損を容易に検知できるだけでなく、ベローズ45の交換タイミングを破損前の一定期間とせずとも、実際のベローズ45の破損に合わせて交換すればよいものとできる。したがって、従来ではベローズ45の寿命前に必ず交換する必要があったのが、寿命を迎えてから交換できるようになるので、従来よりも、ベローズ45の交換メンテナンス間隔を大幅に長期化できたX線発生装置31を提供できる。
【0051】
また、以下のような効果を奏することができる。すなわち、従来のベローズなどの弾性部材だけの場合に比べて、より容器40内の絶縁油の膨張、収縮を緩衝できる。また、ベローズ45の外部が空間(外部容器47の内部空間)になっているので、ゴミが入りづらく且つ第1の絶縁油43に触れる気体の量を少なくできるので、第1の絶縁油43の酸化を抑制することができる。したがって、第1の絶縁油43の膨張、収縮を緩衝しつつ、第1の絶縁油43の酸化による絶縁耐電圧の劣化を抑制することができ、油内放電を抑制することができる。また、前記空間(外部容器47の内部空間)中の第2の絶縁油48は、ベローズ45が劣化し破損しない限り、第1の絶縁油43のような絶縁耐電圧の劣化を考慮しないでいいので、酸素を含む気体と触れていても、さほど差し支えない。なお、仮にベローズ45が劣化し破損した際には、第2の絶縁油48が混合して第1の絶縁油43が多少劣化することもあるが、破損後からでも所定期間は、安全に運転を持続できるX線発生装置31を提供できる。これにより、従来よりも、絶縁油の交換メンテナンス間隔を大幅に長期化できるX線発生装置31を提供できる。また、第1実施形態のものよりも、簡素な構成とすることができる。
【0052】
なお、本発明は、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で設計変更できるものであり、上記実施形態又は変形例に限定されるものではない。例えば、各実施形態における第1の絶縁油が封入されている容器の開口部は、外部容器を取り付けることができる位置及びX線管からのX線照射を阻害しない位置であれば、どこに設けられていてもよい。
【0053】
また、第1実施形態においては、第1の外部容器17として、丸筒状部材を用いたが、これに限られず、角筒状部材など他の形状の筒状部材であってもよい。
【0054】
また、第1実施形態における第2の外部容器19、及び、第2実施形態における外部容器47については、全体が透明又は半透明の材料からなるものであってもよい。なお、透明又は半透明の材料としては、樹脂、ガラスなどの他、透明又は半透明の材料であって絶縁油を貯留することができるものであれば、どのようなものでもよい。
【0055】
また、第1実施形態における第2の外部容器19に設けた各目盛り、及び、第2実施形態における外部容器47に設けた各目盛りは、各窓部の側部に設けたが、各窓部自体に目盛りシールなどを貼り付ける、若しくは、各窓部自体に目盛りを形成してもよい。
【0056】
また、上記各実施形態においては、第2の絶縁油を用いたものとしているが、この第2の絶縁油を用いずに、各貯留器内の空間の中を気体で満たすだけとしてもよい。このとき、前記空間内が容器内と同程度の圧力となるように調整されていることが好ましい。これにより、容器内の圧力を安定させやすくなるので、安全な運転を行うことができるX線発生装置を提供できる。また、X線管の発熱によって第1の絶縁油が熱膨張し、弾性部材が破れた際、貯留器における空間内に流入してきた第1の絶縁油の液面位置を、外部から容易に視認できる。したがって、弾性部材が破損した際には、第1の絶縁油が貯留器内に流入していることを検知できる。つまり、弾性部材の破損を検知できるものとなる。また、このときにおいても、透明部又は透明部の側部に目盛りが設けられていると、容器から漏れ出た第1の絶縁油の量を検知できる。その結果として、弾性部材が破れてしまった後の容器内の絶縁油量を検知できるので、装置の運転を続行してもよいかどうかの判断材料として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1実施形態に係るX線発生装置を搭載したX線検査装置の斜視概略図である。
【図2】図1のX線発生装置の断面図である。
【図3】図1のX線発生装置における第2の外部容器の窓部側の側面図であって、(a)が第2の絶縁油の液面の通常位置を示したもの、(b)が運転時の第2の絶縁油の液面位置を示したもの、(c)がベローズ破断時の第2の絶縁油の液面位置を示したものである。
【図4】本発明の第2実施形態に係るX線発生装置の断面図である。
【図5】図4のX線発生装置における外部容器の窓部側の側面図であって、(a)が第2の絶縁油の液面の通常位置を示したもの、(b)が運転時の第2の絶縁油の液面位置を示したもの、(c)がベローズ破断時の第2の絶縁油の液面位置を示したものである。
【符号の説明】
【0058】
1、31 X線発生装置
2 X線発生装置収納部
2a 扉
2b タッチパネル
3 X線検査部
3a 入口
3b 出口
4 ベルトコンベア
5 X線検出器
10、40 容器
10a、40a 開口部
11、41 台
12、42 X線管
13、43 第1の絶縁油
14、44 固定部材
15、45 ベローズ
16、46 貯留器
17 第1の外部容器
17a、47a 孔
18 管
19 第2の外部容器
19b、19b、19c、19c、19d、19d、47c、47c、47d、47d、47e、47e 目盛り
20、48 第2の絶縁油
21 位置
47 外部容器
100 X線検査装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有しており、X線管を内包し支持する容器と、前記容器内に充填され、前記X線管を浸漬して、絶縁する絶縁油と、前記絶縁油の膨張、収縮を緩衝するために前記開口部を閉塞するように取り付けられた弾性部材とを含むX線発生装置であって、
前記開口部及び前記弾性部材の外部とともに形成した空間を内部に有している貯留器を備え、
前記貯留器が、外部から前記空間内を目視できる透明部を有しており、
前記透明部又は前記透明部の側部に、前記貯留器の高さ方向に沿って目盛りが設けられていることを特徴とするX線発生装置。
【請求項2】
前記貯留器が、前記開口部及び前記弾性部材の外部と接続されている孔を有した第1の外部容器と、前記第1の外部容器に管を介して連通している第2の外部容器とを有していることを特徴とする請求項1に記載のX線発生装置。
【請求項3】
前記開口部が、前記容器の側部に設けられ、
前記管の他端が、前記第1の外部容器の上部に接続されていることを特徴とする請求項2に記載のX線発生装置。
【請求項4】
前記第1の外部容器が、中心軸を水平として前記容器の側部に設けられた丸筒状容器であることを特徴とする請求項3に記載のX線発生装置。
【請求項5】
前記開口部が、前記容器の側部に設けられ、
前記貯留器が、前記開口部及び前記弾性部材の外部と接続されている孔を有した外部容器を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載のX線発生装置。
【請求項6】
運転前において、前記空間内が前記容器内と同程度の圧力となるように調整されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のX線発生装置。
【請求項7】
前記気体が不活性ガスであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のX線発生装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のX線発生装置を備えていることを特徴とするX線検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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