説明

X線管装置

【課題】 本発明の目的は、冷却を小型化し、その冷却が必要なX線管の部分の冷却効率を向上させることが可能なX線管装置を提供することにある。
【解決手段】 本発明のX線管装置は、X線管を管容器に収容したX線管装置において、前記管容器をフランジ8により複数の室に分割し、その分割された室毎に異なる冷却法にて、それぞれ冷却する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線照射時に発生される熱の放出特性を向上させたX線管装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線管装置は、X線照射時に大量の熱が発生し、その放出には様々な手法が用いられている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2004-103568号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記、[特許文献1]では、管容器内のX線管とステータの間に冷媒循環路を設け、さらに、その冷媒を循環させるためのポンプを配置した結果、X線管装置が大きく、重くなり、X線管装置を搭載するX線撮影装置が、X線管装置の移動する軌道内にある物と、X線管装置との接触を避ける必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の目的は、冷却器を小型化し、その冷却が必要なX線管の部分の冷却効率を向上させることが可能なX線管装置を提供することにある。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、特にその冷却が必要なX線管の部分の冷却効率を向上させることができる。
X線管を管容器に収容したX線管装置において、前記管容器を複数の室に分割し、その分割された室毎に異なる冷却法にて、それぞれ冷却する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の第1の実施形態について、陽極接地型のX線管装置の場合を例にとり図1の概略構造図を参照して説明する。管容器1内部にはX線管2が収納されている。X線管2は真空外囲器3などから構成され、真空外囲器3の一部にX線用出力窓4が設けられている。真空外囲器3は中央部の最も径が大きいセンターバルブ5と、センターバルブ5の両端にセンターバルブ5よりも径が小さい陰極バルブ6及び陽極バルブ7などから構成され、センターバルブ5と陽極バルブ7は管軸を中心にして配置し、陰極バルブ6は管軸からずれて配置している。
【0007】
また、陽極バルブ7のセンターバルブ5に近い側にはフランジ8を例えば、ろう付けや溶接といった手段で接合し配置している。X線管2はフランジ8により、例えばOリング9を用いてシールして管容器1に固定され、管容器1内を陽極ユニット10とアースユニット11の2つのユニットに分割する。また、センターバルブ5には陽極ターゲット12が配置され、陰極バルブ6には陰極13が配置されている。陰極13は絶縁性の陰極支持体14によって支持され、陰極支持体14が陰極バルブ6に固定され、陰極バルブ6は陰極支持体14の端部を管容器1の外側に配置して管容器1に固定されている。陽極ターゲット12は回転子のロータ15と締結されて回転体を構成し、この回転体は回転支持機構16と締結され、回転可能に支持され、端部が陽極バルブ7に固定されている。
【0008】
陽極ユニット10には陽極バルブ7を囲む位置に誘導電磁界を発生するステータ17を配置する。ステータ17のコイルには誘導磁界発生時に約500Vの電圧が印加されるため、絶縁が必要となる。従って陽極ユニット10には絶縁性の冷媒、例えば絶縁油18を充填する。一方、アースユニット11には、アース電位のセンターバルブ5や陰極バルブ6が配置されるため、アースユニット11の冷媒19として、陽極ユニット10と同様に絶縁油18、または熱伝導率が絶縁油18よりも高い冷媒を充填し、さらに2本のホース20によって冷却器21を連結する。冷却器21は循環ポンプ22や熱交換器23などから構成され、循環ポンプ22は、アースユニット11の冷媒19を、アースユニット11及び冷却器21間を結んで循環させる。熱交換器23は、X線管2の冷却によって温度が上昇したアースユニット11の冷媒19の熱を放出させる。
【0009】
上記した構成において、ステータ17が発生する誘導電磁界により陽極ターゲット12が回転し、高電圧が印加された陰極13から放出された熱電子が陽極ターゲット12の焦点に衝突してX線を発生する。このとき、入力の約99%が熱エネルギーに変換されるために陽極ターゲット12の温度が上昇する。また、ステータ17はコイルに流れる電流によって発熱する。陽極ユニット10の冷媒である絶縁油18は、ステータ17の発熱や陽極ターゲット12の熱により温度上昇するが、管容器1の陽極ユニット10表面から約40℃の外気(空気)へ放熱する。アースユニット11は、陽極ターゲット12の熱により、アースユニット11の冷媒19の温度も上昇する。しかし、アースユニット11から冷却器21へ送られたアースユニット11の冷媒19は、外気との間で熱交換器23により熱交換され、熱を外部に放出し、管容器1へ戻されるが、図2に示すように冷媒と外気との温度差ΔTが大きいほど、冷却効率が向上する。
【0010】
上記した本実施形態によれば、例えば陽極ユニット10のステータ17や陽極ターゲット12から陽極バルブ7への熱伝導による熱が百数十Wあった場合、管容器1の陽極ユニット10表面からの放熱により絶縁油18の温度を従来技術と同等の80℃以下とすることが可能である。これにより絶縁性能を維持、絶縁油18の熱劣化を防止することが可能となる。またアースユニット11の冷媒19の温度を例えば従来技術よりも15℃上げて95℃とし、外気との温度差ΔTを55℃として使用すると、冷却効率を約40%向上させることが可能となる。或いは従来通りの冷却率で使用する場合、熱交換器23を小さくすることができるため、冷却器21も小型にすることが可能となる。
【0011】
次に本発明の第2〜4の実施形態について図3〜5により説明する。
図3〜5は第1の実施形態おいて、回転陽極X線管装置の使用頻度が高く、陽極ユニット10への入熱が増加した場合に、陽極ユニット10の放熱特性を向上させる手段である。図3の第2の実施形態は管容器1の陽極ユニット10側表面に熱の放出用のヒートシンク25を配置したもの、図4の第3の実施形態は陽極ユニット10に冷却器21より小型の冷却器26を配置したもの、図5の第4の実施形態は管容器1の陽極ユニット10側表面にペルチェ素子29などの熱電素子を配置したものである。例えば回転陽極X線管装置の使用頻度が高く、陽極ユニット10への熱が第1の実施形態の場合より多い場合、第2〜4の実施形態により陽極ユニット10の放熱特性を向上させることで、絶縁油18の温度を従来技術と同等の80℃以下にすることが可能となる。これにより絶縁性能を維持、絶縁油18の熱劣化を防止することが可能となる。
【0012】
次に第5の実施形態について図6により説明する。図6は陰極13に負の高電圧、陽極30に正の高電圧を印加して使用する中性点接地型のX線管装置の場合についてである。X線管2の真空外囲器3の陰極側及び陽極側に陰極フランジ31及び陽極フランジ32を設ける。X線管2は陰極フランジ31、陽極フランジ32により、例えばOリング9を用いてシールして管容器1に固定、支持され、管容器1内を陰極ユニット33、アースユニット11及び陽極ユニット10の3つのユニットに分割する。この時、陽極フランジ32の形状を真空外囲器3の陽極ターゲット12の裏面と対向する部位が、アースユニット11の冷媒19に接するような折り返しを設けた形状とする。陰極13及び陽極30には、高電圧が印加されるため絶縁が必要となる。従って陰極ユニット33、陽極ユニット11には、絶縁性の冷媒、例えば絶縁油18を充填する。
【0013】
また、アースユニット11はアース電位のため絶縁が不要となるため、アースユニット11の冷媒19として絶縁油18、または熱伝導率が絶縁油18よりも高い冷媒を充填し、さらに2本のホース20によって冷却器21を連結する。X線管2動作時には、陰極ユニット33の入力はフィラメントの数十Wの発熱とアースユニット11からの熱伝導があるが入力は少ないので、絶縁油18の温度は性能安定動作温度以下の約60℃である。また陽極ユニット10は、第1の実施形態と同様で、80℃以下とすることが可能であり、陰極ユニット33、陽極ユニット10ともに絶縁性能を維持、絶縁油18の熱劣化を防止することが可能となる。またアースユニット11の冷媒19の温度も、第1の実施形態と同様で、従来技術よりも高温で使用することが可能となる。
以上により、第1の実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。また陰極ユニット33、或いは陽極ユニット11においては、上記の第2〜4の実施形態を適用することも可能である。
また、上記実施形態では、回転陽極型のX線管で説明した固定陽極型であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明における第1の実施形態を表す断面図。
【図2】冷媒と外気の温度差と冷却率の関係を表す図。
【図3】本発明における第2の実施形態を表す断面図。
【図4】本発明における第3の実施形態を表す断面図。
【図5】本発明における第4の実施形態を表す断面図。
【図6】本発明における第5の実施形態を表す断面図。
【符号の説明】
【0015】
1 管容器、2 X線管、3 真空外囲器、4 X線用出力窓、5 センターバルブ、6 陰極バルブ、7 陽極バルブ、8 フランジ、9 Oリング、10 陽極ユニット、11 アースユニット、12 陽極ターゲット、13 陰極、14 陰極支持体、15 ロータ、16 回転支持機構、17 ステータ、18 絶縁油、19 アースユニットの冷媒、20 ホース、21 冷却器、22 循環ポンプ、23 熱交換器、24 放射窓、25 ヒートシンク、26 小型の冷却器、27 小型の循環ポンプ、28 小型の熱交換器、29 ペルチェ素子、30 陽極、31 陰極フランジ、32 陽極フランジ、33 陰極ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線管を管容器に収容したX線管装置において、
前記管容器を複数の室に分割し、その分割された室毎に異なる冷却法にて、それぞれ冷却することを特徴とするX線管装置。
【請求項2】
上記複数の室の分割は、絶縁が要又は不要であることで分割するこを特徴とする請求項1に記載のX線管装置。
【請求項3】
上記絶縁を要するX線管の陽極が配置される第1の室と、
上記絶縁を要しないX線管の陰極の配置される第2の室とにそれぞれ冷媒を充填し、
前記第2の室に熱交換器を含む冷却装置、放熱材、熱電対の少なくとも1つを配置することを特徴とする請求項2に記載のX線管装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−48640(P2007−48640A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−232725(P2005−232725)
【出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】