説明

X線CT装置

【課題】 スキャナガントリ部へのX線管の取付け作業が作業者の労力を要さずに行う。
【解決手段】 被検体にX線を照射するX線管101を搭載し前記被検体の周囲を回転するスキャナガントリ部100を備えたX線CT装置であって、前記スキャナガントリ部100は、前記X線源101を前記スキャナガントリ部100に取り付けるに際して、前記スキャナガントリ部100の回転軌道が描く円の接線方向と直交するX線源101の二辺の一辺を位置決めする固定位置決め部材203と、前記X線源の二辺の他辺を位置決めすると共に、可動範囲を調整する調整部材205、206、207、208を具備する可動位置決め部材204と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線CT装置に係り、特にスキャンガントリ部にX線源を取り付ける機構部の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
X線源は現在のところX線管で実現されている。X線管は、積算使用時間や積算スキャン数により性能の劣化が起きるため交換する必要がある。X線管の重量は数十キログラムにもなるため、X線管の交換時の落下を防止するため安全対策を講じる必要がある。上記安全対策を講じた公知技術の一例は、特許文献1に開示される。
【0003】
特許文献1には、ドラム状の回転ベース(スキャナガントリ部)のガイドレールにX線管のガイド部材を取り付けられたX線管の取付け機構が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-116641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、次の未解決な点がある。スキャナガントリ部のガイドレールの寸法がX線管をスキャナガントリ部に取り付けるだけしかない。つまり、特許文献1では、ガイドレールがX線管を取り付ける寸法しかないのだから、ガイドレールへのX線管の挿入が完了するまで、作業者はX線CT装置の設置室の床から鉛直方向にX線管を持ち上げた状態を維持しなければならない。このため、作業者にとってはX線管を持ち上げる作業に係る労力が必要であるという問題が特許文献1において未解決であった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、スキャナガントリ部へのX線管の取付け作業が作業者の労力を要さずに行うことが可能な機構を有するX線CT装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るX線CT装置は、被検体にX線を照射するX線源を搭載し前記被検体の周囲を回転するスキャナガントリ部を備えたX線CT装置であって、前記スキャナガントリ部は、前記X線源を前記スキャナガントリ部に取り付けるに際して、前記スキャナガントリ部の回転軸と平行な方向の前記X線源の二辺のうちの一辺を位置決めする固定位置決め部材と、前記X線源の二辺のうちの他辺を位置決めすると共に、可動範囲を調整する調整部材を具備する可動位置決め部材と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スキャナガントリ部へのX線管の取付け作業が作業者の労力を要さずに行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の全体構成を説明するための図
【図2】本発明の全体構成を説明する斜視図
【図3】X線管装置位置決め機構の詳細を示す平面図
【図4】X線管装置を取外した状態を示す平面図
【図5】本発明の第2の実施の形態を説明する平面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を適用してなるX線CT装置について図を用いて説明する。
図1は本発明を適用したX線CT装置1の全体構成図である。X線CT装置1はスキャンガントリ部100と操作卓120とを備える。
【0011】
スキャンガントリ部100は、X線管101と、回転円盤(フレーム)102と、コリメータ103と、X線検出器106と、データ収集装置107と、寝台105と、ガントリ制御装置108と、寝台制御装置109と、X線制御装置110と、を備えている。X線管101は寝台105上に載置された被検体にX線を照射する装置である。コリメータ103はX線管101から照射されるX線の放射範囲を制限する装置である。回転円盤102は、寝台105上に載置された被検体が入る開口部104を備えるとともに、X線管101とX線検出器106を搭載し、被検体の周囲を回転するものである。
【0012】
X線検出器106は、X線管101と対向配置され被検体を透過したX線を検出することにより透過X線の空間的な分布を計測する装置であり、多数のX線検出素子を回転円盤(フレーム)102の回転方向に配列したもの、若しくは回転円盤(フレーム)102の回転方向と回転軸方向との2次元に配列したものである。データ収集装置107は、X線検出器106で検出されたX線量をデジタルデータとして収集する装置である。ガントリ制御装置108は回転円盤(フレーム)102の回転を制御する装置である。寝台制御装置109は、寝台105の上下前後動を制御する装置である。X線制御装置110はX線管101に入力される電力を制御する装置である。
【0013】
操作卓120は、入力装置121と、画像演算装置122と、表示装置125と、記憶装置123と、システム制御装置124とを備えている。入力装置121は、被検体氏名、検査日時、撮影条件などを入力するための装置であり、具体的にはキーボードやポインティングデバイスである。画像演算装置122は、データ収集装置107から送出される計測データを演算処理してCT画像再構成を行う装置である。表示装置125は、画像演算装置122で作成されたCT画像を表示する装置であり、具体的にはCRT(Cathode-Ray Tube)や液晶ディスプレイ等である。記憶装置123は、データ収集装置107で収集したデータ及び画像演算装置122で作成されたCT画像の画像データを記憶する装置であり、具体的にはHDD(Hard Disk Drive)等である。システム制御装置124は、これらの装置及びガントリ制御装置108と寝台制御装置109とX線制御装置110を制御する装置である。
【0014】
入力装置121から入力された撮影条件、特にX線管電圧やX線管電流などに基づきX線制御装置110がX線管101に入力される電力を制御することにより、X線管101は撮影条件に応じたX線を被検体に照射する。X線検出器106は、X線管101から照射され被検体を透過したX線を多数のX線検出素子で検出し、透過X線の分布を計測する。回転円盤102はガントリ制御装置108により制御され、入力装置121から入力された撮影条件、特に回転速度などに基づいて回転する。寝台105は寝台制御装置109によって制御され、入力装置121から入力された撮影条件、特にらせんピッチなどに基づいて動作する。
【0015】
X線管101からのX線照射とX線検出器106による透過X線分布の計測が回転円盤102の回転とともに繰り返されることにより、様々な角度からの投影データが取得される。取得された様々な角度からの投影データは画像演算装置122に送信される。画像演算装置122は送信された様々な角度からの投影データを逆投影処理することによりCT画像を再構成する。再構成して得られたCT画像は表示装置125に表示される。
【実施例1】
【0016】
実施例1では、特に可動位置決め部材204の可動範囲がスキャナガントリ部100の回転軸と平行な方向に移動する例を説明する。
【0017】
本発明の実施例1について図2〜図4を用いて説明する。
図2は本発明を適用したX線CT装置の回転部の構成を示す斜視図である。図3は本発明の詳細を示す平面図である。図4はX線管101を回転フレーム102から取外した状態を示す平面図である。
【0018】
固定位置決め部材203、可動位置決め部材204は、図4に示すように、回転フレーム102の内周側に設けられる。X線管101は固定位置決め部材203、可動位置決め部材204に沿って回転フレーム102の回転軸の方向にスライドさせることで、回転フレーム102にX線管101が取り付けられる。
【0019】
固定位置決め部材203、可動位置決め部材204、棒材205の材質は、鉄材、SUSなどを用いる。
【0020】
X線管101は固定位置決め部材203、可動位置決め部材204に挟まれた状態で回転フレーム102に対して位置決めされる。そして、位置決めされたX線管101は、回転フレーム102とボルトで取り付けられる。
【0021】
可動位置決め部材204は、SUS板や鉄板でできた板材に長細く設けられた溝206と、溝206に係合される棒材205と、板材の端部に設けられるバネ材208とを有している。溝206の長細く設ける方向は回転フレーム102の回転軸の方向と平行であり、回転軸の直交方向に数ミリメートル分をX線管101の寸法Wよりも拡げることが可能に雲形となっている。ここでは、溝206の形状は雲形として説明する。雲形は実施例の一例であり、溝206の形状は例えば階段型であってもよい。つまり、溝206は、機能として可動位置決め部材204の取り付け位置をX線管101の寸法Wよりも拡げる機能を有していればよい。棒材205は、溝206の長細い方向に沿ってスライド可能となっている。
【0022】
次に実施例1の動作について説明する。
まず、図4に示すように、固定位置決め部材203と可動位置決め部材204の隙間は、X線管101を挿入する前に、X線管101の寸法Wより拡がった状態になる。つまり、固定位置決め部材203と可動位置決め部材204の隙間はX線管101の寸法Wよりも十分大きくなる。そして、可動位置決め部材204は固定位置決め部材203に近づいた状態において前記隙間がX線管101の寸法Wと一致するよう取付けられている。可動位置決め部材204の端部には突起207が設けられている。突起207はX線管101を回転フレーム102に挿入する際にX線管101と接する。バネ材208は可動位置決め部材204をX線管101の挿入の反対方向へ押すよう回転フレーム102に取り付けられている。
【0023】
前記の通り、固定位置決め部材203と可動位置決め部材204の間の隙間はX線管101の寸法Wより十分大きくなるため、X線管101の取付けの際にはX線管101を作業性良く回転フレームに挿入することができる。
【0024】
X線管101を回転フレーム102に挿入していくと、図3に示すように、X線管101が図3に示す突起207と接触し、可動位置決め部材204はX線管101を挿入するに従ってX線管101の挿入方向にスライドする。このとき、可動位置決め部材204は溝206に沿って固定位置決め部材203に近づく方向にもスライドし、可動位置決め部材204がX線管101を固定位置決め部材203が有る方向に押し付ける。
【0025】
前記の通り、固定位置決め部材203と可動位置決め部材204の隙間はX線管101の寸法Wと一致するため、X線管101を挿入することでX線管101は固定位置決め部材203、可動位置決め部材204によって所定の位置に設置され、位置決めされる。
【0026】
以上説明した実施例1では、被検体にX線を照射するX線管101を搭載し前記被検体の周囲を回転するスキャナガントリ部100を備えたX線CT装置であって、前記スキャナガントリ部100は、X線管101を前記スキャナガントリ部100に取り付けるに際して、前記スキャナガントリ部100の回転軌道が描く円の接線方向と直交するX線源101の二辺の一辺を位置決めする固定位置決め部材203と、前記X線源の二辺の他辺を位置決めすると共に、可動範囲を調整する調整部材を具備する可動位置決め部材204と、を備えるので、X線管101を固定位置決め部材203と可動位置決め部材204の間に挿入するだけで、スキャナガントリ部へのX線管の取付けのための位置決め作業が作業者の労力を要さずに行うことができることができる。
【0027】
また、実施例1の特有の効果は、図4に示すように、X線管101を固定位置決め部材203と可動位置決め部材204の間に挿入する前に、可動位置決め部材204は、X線管101の挿入方向にバネ材208が延びることによって突出している。これによって、可動位置決め部材204がX線管101のガイド機能を果たすことができる。そして、X線管101を可動位置決め部材204に沿って挿入し、次に固定位置決め部材203に挿入することが可能となる。さらにX線管101を簡便回転フレーム102に取付けることができ、X線管101の交換作業の工数を低減することができる。
【実施例2】
【0028】
実施例2では、特に板状で形成される可動位置決め部材204の回転中心205aを中心として回転移動する例を説明する。
【0029】
本発明の実施例2について図2、図5を用いて説明する。
なお、実施例2では実施例1で既に説明した重複部分は繰り返しの説明を省略する。
図5は本発明の第2の実施の形態を説明する平面図である。
【0030】
可動位置決め部材204は、図5に示すように、回転中心軸205aが設けられ、回転可能となっている。一方、可動位置決め部材204の端部は、溝206bを介して棒材205bと係合される。可動位置決め部材204は、X線管101を取り付けるためのガイドとして棒材205bを介して溝206に沿ってスライド可能に回転フレーム102に取付けられている。溝206bは可動位置決め部材204をスライド可能にしている。このとき、可動位置決め部材204が固定位置決め部材203と離れた状態では固定位置決め部材203と可動位置決め部材204の隙間はX線管101の寸法Wより十分大きくなる。そして、可動位置決め部材204は固定位置決め部材203に近づいた状態において前記隙間がX線管101の寸法Wと一致するよう取付けられている。可動位置決め部材204の端部には突起207が設けられている。突起207はX線管101を回転フレーム102に挿入する際にX線管101と接する。バネ材208は可動位置決め部材204をX線管101の挿入時に押すよう回転フレーム102に取り付けられている。
【0031】
X線管101を回転フレーム102に挿入していくと、図5に示すように、X線管101が図3に示す突起207と接触し、可動位置決め部材204はX線管101を挿入するに従って反時計方向に回転移動する。このとき、可動位置決め部材204は溝206に沿って固定位置決め部材203に近づく方向に回転移動し、固定位置決め部材203と可動位置決め部材204の隙間はX線管101の寸法Wと一致するため、X線管101を挿入することでX線管101は固定位置決め部材203、可動位置決め部材204によって所定の位置に設置され、位置決めされる。
【0032】
以上説明した実施例2では、実施例1と同じ効果があるだけでなく、実施例2の特有の効果は、図5に示すように、X線管101を固定位置決め部材203と可動位置決め部材204の間に挿入する前には、可動位置決め部材204を押し広げることができるため、さらにX線管101を簡便回転フレーム102に取付けることができ、X線管101の交換作業の工数を低減することができる。
以上、本発明の実施例を述べたが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
例えば、バネ材は可動位置決め部材を可動できるように弾力を与えればよいので、ゴムや板バネなど公知のあらゆる弾性体であってもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 X線CT装置、100 スキャンガントリ部、101 X線管、102 回転円盤(フレーム)、103 コリメータ、104 開口部、105 寝台、106 X線検出器、107 データ収集装置、108 ガントリ制御装置、109 寝台制御装置、110 X線制御装置、120 操作卓、121 入力装置、122 画像演算装置、123 記憶装置、124 システム制御装置、125 表示装置、
203 固定位置決め部材、204 可動位置決め部材、205 棒材、206 溝、207 突起、208 バネ材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体にX線を照射するX線源を搭載し前記被検体の周囲を回転するスキャナガントリ部を備えたX線CT装置であって、前記スキャナガントリ部は、前記X線源を前記スキャナガントリ部に取り付けるに際して、前記スキャナガントリ部の回転軌道が描く円の接線方向と直交する前記X線源の二辺の一辺を位置決めする固定位置決め部材と、前記X線源の二辺の他辺を位置決めすると共に、可動範囲を調整する調整部材を具備する可動位置決め部材と、を備えたことを特徴とするX線CT装置。
【請求項2】
請求項1に記載のX線CT装置であって、前記調整部材は、棒材、溝及び弾性材を具備したことを特徴とするX線CT装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のX線CT装置であって、前記可動位置決め部材は、中心部が回動可能に前記スキャナガントリ部の回転フレームへ取り付けられることを特徴とするX線CT装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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