説明

X線CT装置

【課題】大口径の開口が設けられた薄型の架台を有するX線CT装置を提供する。
【解決手段】X線CT装置は、架台の開口に被検体を体軸方向に通し、開口中心に対向配置されたX線管及びX線検出部を被検体の体軸回りに回転させ、X線管から照射され、被検体を透過しX線検出部により検出されたX線を基に撮影画像を取得し、回転リング及びベアリングを有する。回転リングは、開口の周方向に沿うようにリング状に形成され、その内周面側にX線管及びX線検出部が設けられる回転リングと、ベアリングは、回転リングの外周面側と前記架台との間に設けられ、回転リングを開口の周方向に回転させるように支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、被検体の体軸回りにX線管及びX線検出器を回転させ、前記X線管から照射され、被検体を透過し前記X線検出器により検出されたX線を基に撮影画像を取得するX線CT装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT装置は架台を有し、架台には被検体を体軸方向に通すための開口(ドーム)が設けられている(例えば、特許文献1)。
【0003】
X線撮影をするとき、被検体を開口に通し、投光器から被検体に光を照射する。光が被検体の所定位置に照射されるように、術者は開口を通して被検体にアクセスして、被検体の位置合わせをする。
【0004】
被検体を位置合わせをするとき、被検体と開口との間の隙間が大きいほど、術者が被検体にアクセスし易くなる。そのため、開口は大口径であることが好ましい。一般的なX線CT装置の開口の口径は大きいもので800[mm]程度である。
【0005】
被検体を位置合わせをするとき、被検体の頭部が開口の奥まった位置となる。このため、投光器から頭部に照射された光が見え難く、頭部の位置合わせが困難であった。また、頭部の穿刺手術をするとき、開口の奥まった位置で術具の操作するため、操作が困難となっていた。一般的なX線CT装置の架台は、その正面から背面までの長さ(厚さ)は1000[mm]程度である。
【0006】
なお、開口を大口径にすれば、頭部の位置合わせ、及び、穿刺手術の操作が困難でなく、X線撮影を容易にすることができる。また、架台の厚さを薄くすれば、被検体の頭部が開口の入口から奥まった位置にならず、頭部の位置合わせ、及び、穿刺手術が容易になる。
【0007】
したがって、X線撮影を容易にするため、大口径の開口が設けられた薄型の架台を有するX線CT装置が要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−160468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来のX線CT装置において、架台に大口径の開口を設け、薄型にするためには、以下の問題点がある。
【0010】
架台に回転ベースが収容されている。回転ベースにはX線管及びX線検出部が対向配置されている。回転ベースの内周側にはベアリングが設けられている。ベアリングにより、回転ベースが回転するように架台に支持されている。このように、ベアリングが回転ベースの内周側に設けられているため、ベアリングの分だけ、開口の口径が小さくなり、開口を大口径にする際に支障となるという問題点があった。
【0011】
また、X線管から照射されるX線は、絞りによって所定の照射野に照射される。この照射野の中にベアリングが入らないように、ベアリングは回転ベースの手前側または奥側に配置されている。ベアリングが回転ベースの手前側または奥側に配置するために、ベアリングの分だけ、架台の厚さが増し、架台を薄型にするときに支障となるという問題点があった。
【0012】
この実施形態は、上記の問題を解決するものであり、大口径の開口が設けられた薄型の架台を有するX線CT装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、実施形態に係るX線CT装置は、架台の開口に被検体を体軸方向に通し、開口中心に対向配置されたX線管及びX線検出部を被検体の体軸回りに回転させ、X線管から照射され、被検体を透過しX線検出部により検出されたX線を基に撮影画像を取得し、回転リング及びベアリングを有する。回転リングは、開口の周方向に沿うようにリング状に形成され、その内周面側にX線管及びX線検出部が設けられる回転リングと、ベアリングは、回転リングの外周面側と架台との間に設けられ、回転リングを開口の周方向に回転させるように支持する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】一実施形態に係るX線CT装置の斜視図である。
【図2】回転リング及び固定リングの一部を破断して示した断面図である。
【図3】スタンドの断面図である。
【図4】軸部材の断面図である。
【図5】架台の傾きを略水平に倒した角度にしたときのX線CT装置の斜視図である。
【図6】図5に示すX線CT装置の概念図である。
【図7】架台の側面図である。
【図8】架台の正面図である。
【図9】架台を略水平に倒して低い位置に移動させたときのX線CT装置の斜視図である。
【図10】図9に示すX線CT装置の概念図である。
【図11】看護師が被検体の頭部に近づいた様子を示す図である。
【図12】穿刺手術の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、このX線CT装置の各種実施形態について各図を参照して説明する。
【0016】
[第1の実施形態]
第1の実施形態に係るX線CT装置について図1及び図2を参照して説明する。
図1はX線CT装置の斜視図である。図1に示すように、X線CT装置1は、被検体を体軸方向に通すための開口1aと、開口1aを間にして対向配置されるX線管2及びX線検出器3とを有している。X線管2から照射され、被検体を透過しX線検出器3により検出されたX線を基に撮影画像が取得される。なお、以下の説明において、体軸方向と直交する水平方向をX方向、上下方向及び高さ方向をY方向、体軸方向(厚さ方向)をZ方向という場合がある。X方向からZ方向を図1に示す。
【0017】
X線CT装置は、開口1aがその中央に形成された架台10と、回転リング20と、固定リング30と、スタンド40とを有している。
【0018】
(架台)
架台10には回転リング20及び固定リング30が収容されている。回転リング20は固定リング30に対し相対的に回転するものであり、固定リング30は架台10と一体的に設けられている。
【0019】
回転リング20及び固定リング30の配置の態様によっては、架台10が厚さ(Z方向の長さ)、及び、開口1aの口径の大きさが変わる。薄型で、大口径の開口1aが設けられる架台10にするために、回転リング20及び固定リング30等を次のように構成する。
【0020】
(回転リング)
回転リング20について図1及び図2を参照して説明する。
回転リング20は、開口1aの周方向に沿うようにリング状に形成されている。回転リング20の内周側には、X線管2及びX線検出器3が設けられている。
【0021】
図2は回転リング20及び固定リング30の一部を破断して示した断面図である。図2に示すように、回転リング20を開口1aの周方向に回転させるように固定リング30に支持するためのベアリング21が設けられている。
【0022】
ベアリング21は回転リング20の外周側に配置されている(図2参照)。回転リング20の外周側とは、X線管2及びX線検出器3が設けられている位置に対して開口1aの中心側とは反対側をいう。このような位置にベアリング21を配置することにより、開口1aを大口径にするとき、ベアリング21が支障とならない。
【0023】
また、ベアリング21は回転リング20の直径方向(Y方向)に配置されている。ベアリング21を回転リング20の幅方向(図2でZ方向)の中に収まるように配置したので、ベアリング21の位置を回転リング20に対しその幅方向(Z方向)に配置した厚型の架台に対し、架台10を薄型にすることができる。
【0024】
(固定リング)
固定リング30について図1及び図2を参照して説明する。図2に示すように、固定リング30は、回転リング20の外周側であって、回転リング20の厚さに相当する範囲に収まるように配置されている。このように固定リング30を配置することにより、架台10を薄型にするとき、固定リング30が支障とならない。回転リング20を駆動するためのモータ31が、回転リング20と固定リング30との間の隙間に設けられている。モータ31は、回転リング20に設けられているロータ33と、ロータ33の外周に沿うように架台10の内部(固定リング30)に設けられているステータ32とを有する。このようにモータ31を配置することにより、架台10を薄型にするとき、モータ31が支障とならない。
【0025】
回転リング20に対して同心円状に配置された環状の電路とブラシを介して電力や信号を固定リング30との間で伝達するためのスリップリング35が設けられている。スリップリング35は、回転リング20に設けられているX線管2の厚さ(図2でZ方向の長さ)に相当する範囲に収まれるように配置されている。スリップリング35が設けられた位置と反対側の回転リング20及び固定リング30にはデータ伝送ユニット36が設けられている。
【0026】
以上のように、回転リング20、固定リング30、ベアリング21、及び、モータ31を構成することにより、薄型で、大口径の開口1aが設けられた架台10にすることが可能となる。
【0027】
大口径の開口1aが設けられる薄型の架台10では、架台10が薄型であるため、被検体の頭部をX線撮影するとき、被検体の頭部を開口1aの入口近くに位置させることが可能となり、投光器(図示省略)から照射され被検体の頭部にあたっている光を開口1aの入口から容易に見ることができる。また、開口1aが大口径であるため、被検体の体が大きくても、被検体と開口との間に十分な隙間を確保することが可能となり、隙間を通して被検体に容易にアクセスすることが可能となる。それにより、被検体を簡単に位置合わせして、X線撮影することが可能となる。また、穿刺手術において、開口の入口近くで術具を操作するため、操作性を大幅に向上させることが可能となる。
【0028】
さらに、図11を基にX線撮影について説明する。図11は看護師が被検体の頭部に近づいた様子を示す図である。図11に示すように、架台10が薄型であるため、寝台に載置され開口1aに通された被検体の頭部等が開口1aの入口(正面側の入口)近傍にあるので、看護師が開口1aの入口から被検体の頭部等に簡単にアクセスすることが可能となり、簡単に位置決めすることが可能となる。また、開口1aを大口径にしたので、位置決めをさらに簡単にすることが可能となる。
【0029】
さらに、図12を基に穿刺手術について説明する。図12は、穿刺手術の状態を示す図である。図12に示すように、架台10が薄型であるため、寝台に載置され開口1aに通された被検体の頭部等が開口1aの入口(背面側の入口)近傍にあるので、術者は架台10の背面側から被検体の頭部等に簡単にアクセスすることが可能となり、穿刺手術において、開口1aの入口近くで術具を操作することで、操作性を大幅に向上させることが可能となる。また、開口1aを大口径にしたので、操作性をさらに向上させることが可能となる。
【0030】
[第2の実施形態]
上記第1の実施形態では、大口径の開口1aが設けられる薄型の架台10を有するX線CT装置の構成について説明した。
【0031】
次に、架台10を大きなチルト角度で傾かせることが可能なX線CT装置の第2の実施形態について図1〜図6を参照して説明する。なお、第2の実施形態では、第1実施形態の構成と同じ部位には同じ番号を付してその説明を省略する。
【0032】
第2の実施形態に係るX線CT装置は、スタンド40、軸部材51、チルト機構50、及び、動力伝達手段60(図5参照)を有している。スタンド40は、軸部材51回りに架台10を開口1aの前方(正面側)及び後方(背面側)にそれぞれ傾けるように支持する。
【0033】
(スタンド)
先ず、スタンド40について図1、図3、及び、図5を参照して説明する。
【0034】
図5は架台10を略水平に倒したときのX線CT装置の斜視図である。図5に示すように、スタンド40は、一対の支柱41と、支柱41の下端部同士を連結したベース部42とを有する。支柱41は箱形に形成されている。スタンド40は、軸部材51を中心にして、架台10を略垂直に起立した角度(図1参照)と略水平に倒した角度(図5参照)との間に傾けるように支持する。
【0035】
図3はスタンド40の断面図であって、架台10を省略して示している。図3に示すように、支柱41の内部には軸受け手段43及びチルト機構50が収納されている。
【0036】
スタンド40の厚さ(Z方向の長さ)は、架台10の厚さとほぼ同一である(図1参照)。それにより、術者や看護師が架台10の斜め側方位置から開口1aに近づくときに、スタンド40が邪魔にならず、作業性の低下を防止することが可能となる。
【0037】
(軸部材)
次に、軸部材51について説明する。図4は軸部材51の断面図である。図4に示すように、軸部材51は中空軸部51aを有している。中空軸部51aには外部から電力線W及び信号線(図示省略)が通され、電力線Wは連通口51bを通ってスリップリング35に電気的に接続されている。スリップリング35は、回転リング20及び固定リング30にそれぞれ設けられた電気接点同士が、回転リング20を回転させたとき、相互にスリップしながら電気的接続を保つように形成されている。
【0038】
図3に示すように、支柱41にはブラケット52が設けられ、ブラケット52に軸受け手段43及びブロック53がそれぞれ固定されている。ブロック53に動力伝達手段60が設けられている。なお、軸部材51及びブラケット52は両方の支柱41に設けられているが、動力伝達手段60は一方の支柱41に設けられている。
【0039】
軸部材51は、軸受け手段43に回転するように支持されている。電力線W及び信号線が軸部材51の中空軸部51aに通っているため、架台10を傾動させたとき、電力線W及び信号線が軸部材51の中空軸部51a内で多少捻れるだけである。したがって、架台10をたとえば一回転(360度回転)以上させることも可能となる。
【0040】
(チルト機構、動力伝達手段)
次に、チルト機構50について図3を参照して説明する。
チルト機構50は、モータ61の動力を軸部材51に伝達することにより、軸部材51を中心に架台10を傾けて、架台10の傾き角度を可変する動力伝達手段60を有し、可変した傾き角度に架台10を位置決めする。
【0041】
動力伝達手段60は、モータ61の動力により駆動されるウォーム62と、ウォーム62に噛み合い、軸部材51と同軸に固定されるホイールギア63と、を有する。モータ61はブロック53に固定されるこの発明の「動力源」の一例である。また、ウォーム62及びホイールギア63が、この発明の「第1ギア」及び「第2ギア」の一例である。
【0042】
ウォーム62を回転し続けると、ホイールギア63及び軸部材51も回転し続けるため、架台10も傾き続ける。したがって、架台10をたとえば一回転(360度回転)以上させることも可能となる。ウォーム62及びホイールギア63は、架台10を傾けるときの架台からの荷重に耐えられるように形成される。
【0043】
(動作)
次に、架台10の動作について図1、図5及び図6を参照して説明する。図1に示すように、架台10の傾きが起立した角度にあるとき、モータ61によりウォーム62を正方向または逆方向に回転させると、ホイールギア63及び軸部材51を正方向または逆方向に回転させる。軸部材51の回転に応じて、架台10の傾きが大きくなり、最終的に水平に倒した角度になる(図5参照)。
【0044】
以上のように、モータ61の動力がウォーム62からホイールギア63に伝達されることにより、ホイールギア63と一体的に軸部材51を回転させて、架台10を傾けることができる。架台10はいずれの傾き角度にあっても、ホイールギア63がウォーム62に噛み合っていて、ホイールギア63を回転させようとしてもウォーム62が回転しないため、架台10はいずれの傾き角度にあっても、その傾き角度に保持される。
【0045】
図6は図5に示すX線CT装置の概念図である。図6に示すように、架台10の開口aは高い位置にある。このときの開口1aは、真っ直ぐに立った状態(立位状態)の被検体の肺野の位置と同じ高さになる。そのため、被検体の肺野のX線撮影をすることが可能となる。架台10の傾きを起立した角度から水平に倒した角度にすることが可能なチルト機構50を設けたので、一つのX線CT装置で、臥位状態及び立位状態の被検体のX線撮影をすることが可能となる。
【0046】
また、架台10を薄型にしたので、それに応じて架台10が軽量となり、架台10を傾けるとき大きな力を必要としない。そのため、大型のモータ61が不要となり、チルト機構50が小型となり、支柱41の厚さ等を大きくせずに済み、薄型にすることが可能となる。
【0047】
第2の実施形態に係る架台10の動作と対比するために、架台10を傾かせるための従来技術について説明する。従来のチルト機構は、架台10を駆動するためのシリンダーを有し、シリンダーのピストンが架台10に連結され、ピストンの往復移動により、架台10を前方または後方に傾けていた。架台10の傾き角度(チルト角度)は、それぞれ30度程度と小さかった。そのため、30度以上の傾き角度が必要なX線撮影をすることができなかった。また、頭部や肺野を撮影するときでも、患者を寝台に寝かせる必要があり、X線撮影に時間がかかっていた。
【0048】
これに対し、第2の実施形態では、軸部材51を中心にして係る架台10を大きなチルト角度で傾かせることが可能である。
【0049】
以上のように架台10を傾けるときの中心である軸部材51は、回転中の回転リング20の揺れを防止する機能も有している。
【0050】
次に、揺れを防止する機能を有する軸部材51について図7及び図8を参照して説明する。
【0051】
図7は架台10の側面図、図8は架台10の正面図である。図7及び図8に示すように、一対の軸部材51は、開口1aを中心にして向かい合うように架台10の両外側部に固定されている。各軸部材51は、その軸方向Cが略水平方向(X方向)、かつ、回転リング20の重心Gを向くように形成されている。なお、図7及び図8に回転リング20の回転中心軸Aを示す。
【0052】
ここで、回転リング20の重心Gについて説明する。回転リング20には、X線管2及びX線検出器3、高電圧発生器4、冷却器5、及び、ウエイト6、制御器(図示省略)、モータ31等が装備されている。これらの装備された部品及び回転リング20は一体的に回転する。回転リング20の重心Gとは、一体的に回転する回転リング20及び装備品を含む全部の部品の重心をいう。なお、回転リング20に設けられるウエイト6の配置及び重さは、回転リング20の回転中心軸Aの上に重心Gが位置するように設定される。
【0053】
仮に、軸部材51の軸方向Cが回転リング20の重心Gに向いていないと、回転リング20が回転中に、軸部材51を中心とする揺れが生じ、この揺れがX線撮影で取得される撮影画像の品質を低下させる要因となるため、回転リング20の揺れを防止するための機構を設ける必要がある。
【0054】
これに対し、軸部材51の軸方向Cが回転リング20の重心Gに向いていると、回転リング20が回転中に、軸部材51を中心とする揺れを生じさせず、撮影画像の品質を低下させず、回転リング20の揺れを防止するための機構を設ける必要もない。
【0055】
[第3の実施形態]
第2の実施形態では、被検体を架台10の開口1aに対して相対的に移動させることで、被検体の各部位をX線撮影することが可能となる。しかし、被検体が撮影部位に応じた姿勢をとる必要があるため、被検体が煩わしく感じる。被検体に対し煩わしさ感じさせないためには、架台10を被検体に対して上下方向に移動させる高さ調整機構を設ければよい。
【0056】
次に、第3の実施形態に係る高さ調整機構70ついて、図1、図3、及び、図5〜図10を参照して説明する。第3の実施形態では、第1の実施形態の構成と同じ部位に同じ番号を付してその説明を省略する。なお、図1は、第1の実施形態を説明するための図、並びに、図3、図5及び図6は、第2の実施形態を説明するための図であるが、第3実施形態を説明するための図でもある。
【0057】
図3に示すように、架台10を高さ調整するために、支柱41の立壁41aに固定されるレール部材45と、レール部材45に沿って上下方向に案内されるスライダ54とを有している。ここで、レール部材45がこの発明の「案内手段」の一例である。
【0058】
スライダ54をレール部材45に沿って上方または下方に移動させると、軸部材51、ブラケット52、ブロック53、及び、軸受け手段43が一体的に上方または下方に移動する。それにより、架台10が上方または下方に移動する。支柱41の立壁41aには上下方向を長手方向とした長穴41cが設けられている(図9参照)。軸部材51は長穴41c内を上方または下方に移動する。
【0059】
(高さ調整機構)
高さ調整機構70は、ブラケット52に設けられ、ねじ穴を有し、ねじ穴の中心軸が上下方向に向けられるナット部材71と、支柱41に設けられ、ナット部材71に螺合するスクリュー部材72と、スクリュー部材72を正方向及び逆方向に回転させるモータ73とを有している。ナット部材71とスクリュー部材72とは、両者間でボールが転がり回転するようにしたボールネジの構造となっている。スクリュー部材72の上端部は、支柱41の頂部41bに回転可能に支持され、スクリュー部材72の下端部は、モータ73の出力軸に連結されている。モータ73は、支柱41の立壁41aに固定されている。
【0060】
モータ73を回転させることにより、スクリュー部材72を正方向または逆方向に回転させると、ナット部材71、ブラケット52、ブロック53、及び、軸受け手段43が一体的に上下方向に移動する。それにより、架台10が上方または下方に移動する。
【0061】
モータの回転を停止させると、架台10が停止し、かつ、その停止位置に架台10を維持する。
【0062】
図6は、立位状態の被検体の肺野の高さに位置している架台10の開口1aを示している。架台10をこの位置に維持して、被検体の肺野の回りに回転リング20を回転させ、X線管2からX線を照射すると、肺野を透過しX線検出器3により検出されX線を基に、肺野のX線画像を取得することが可能となる。
【0063】
次に、被検体の頭部のX線画像を取得するためには、被検体を寝台7に着座させ、架台10を下方へ移動させるようにモータ73を正方向または逆方向に回転させる。
【0064】
図9は架台を略水平に倒して低い位置に移動させたときのX線CT装置の斜視図である。図10は図9に示すX線CT装置の概念図である。図9及び図10に示すように、架台10の開口1aの高さが、着座状態の被検体の頭部の位置になったとき、モータ73の回転を停止させると、架台10が停止し、かつ、その停止位置に架台10を維持する。
【0065】
架台10をこの位置に維持して、被検体の頭部の回りに回転リング20を回転させ、X線管2からX線を照射すると、頭部を透過しX線検出器3により検出されX線を基に、頭部のX線画像を取得することが可能となる。
【0066】
第3の実施形態では、架台10の開口1aを着座状態の被検体の頭部の高さ位置に自動的に移動させるため、X線撮影を容易に行うことが可能となる。また、頭部のX線撮影では、被検体は単に寝台7に座るだけなので、被検体に煩わしさを感じさせない。
【0067】
第3の実施形態では、ナット部材71をブラケット52に設け、スクリュー部材72を支柱41に設けたが、ナット部材71を支柱41に設け、スクリュー部材72をブラケット52に設けてもよい。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、書き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるととともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0069】
1 X線CT装置 1a 開口 2 X線管 3 X線検出器
4 高電圧発生器 5 冷却器 6 ウエイト 7 寝台
10 架台
20 回転リング 21 ベアリング
30 固定リング 31 モータ 32 ステータ 33 ロータ
35 スリップリング 36 データ伝送ユニット
40 スタンド 41 支柱 41a 立壁 41b 頂部 41c 長穴
42 ベース部 43 軸受け手段 45 案内手段
50 チルト機構 51 軸部材 52 ブラケット 53 ブロック
54 スライダ
60 動力伝達手段 61 モータ 62 第1ギア 63 第2ギア
70 高さ調整機構 71 ナット部材 72 スクリュー部材 73 モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架台の開口に被検体を体軸方向に通し、開口中心に対向配置されたX線管及びX線検出部を被検体の体軸回りに回転させ、前記X線管から照射され、被検体を透過し前記X線検出部により検出されたX線を基に撮影画像を取得するX線CT装置において、
前記開口の周方向に沿うようにリング状に形成され、その内周面側に前記X線管及び前記X線検出部が設けられる回転リングと、
前記回転リングの外周面側と前記架台との間に設けられ、前記回転リングを前記開口の周方向に回転させるように支持するベアリングと、
を有する、
ことを特徴とするX線CT装置。
【請求項2】
前記架台内に前記回転リングを駆動させるためのモータをさらに有し、
前記モータは、前記回転リングの外周面側に固定されるロータと、前記ロータの外周側に配され、前記架台に固定されるステータとを有することを特徴とする請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項3】
スタンドと、
前記スタンドに支持される軸部材と、
前記軸部材と同軸に固定されるホイールギアと、前記ホイールギアに噛み合い、前記動力により駆動されるウォームとを含む動力伝達手段を備え、前記軸部材を中心に前記架台を略垂直に起立した角度と略水平に倒した角度との間に傾け、当該傾けた角度に架台を位置決めするチルト機構と、
前記架台内に設けられ、前記回転リングを駆動させるためのモータと、
をさらに有し、
前記軸部材は、前記架台に固定され、前記モータに電力を供給する電力線、及び、前記X線検出部からの信号線を通すための中空軸部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項4】
スタンドと、
前記スタンドに支持される軸部材と、
前記軸部材を中心に前記架台を略垂直に起立した角度と前記開口の前方または後方に倒した角度との間に傾け、当該傾けた角度に前記架台を位置決めするチルト機構と、
をさらに有し、
前記軸部材は、その軸方向が略水平方向であって、前記回転リングの重心に向くように前記架台に設けられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のX線CT装置。
【請求項5】
前記チルト機構を前記スタンドの高位置と低位置との間に移動させることにより、前記架台の高さを調整する高さ調整機構をさらに有することを特徴とする請求項3または請求項4に記載のX線CT装置。
【請求項6】
前記高さ調整機構は、前記スタンドまたは前記チルト機構の一方に設けられたスクリュー部材と、前記スタンドまたは前記チルト機構の他方に設けられ、前記スクリュー部材に螺合しながら高さ方向に移動するナット部材とを有することを特徴とする請求項5に記載のX線CT装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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