ZSM−5型ゼオライトの合成方法
【課題】本発明は、極めて少ない量の構造規定剤を使用してZSM-5型ゼオライトを合成する方法を提供することを課題とする。
【解決手段】ケイ素(Si)源とアルミニウム(Al)源と構造規定剤とアルカリ金属水酸化物と水とを含む水溶液と、界面活性剤を含む有機溶媒とを混合し、エマルションを調製する工程;及び
前記エマルションを水熱処理する工程;
を含むZSM-5型ゼオライトの合成方法であって、
構造規定剤/(Si+Al)のモル比が0.001〜0.03であり、
アルカリ金属水酸化物/(Si+Al)のモル比が0.05〜0.28である、
ZSM-5型ゼオライトの合成方法により上記課題を解決することができる。
【解決手段】ケイ素(Si)源とアルミニウム(Al)源と構造規定剤とアルカリ金属水酸化物と水とを含む水溶液と、界面活性剤を含む有機溶媒とを混合し、エマルションを調製する工程;及び
前記エマルションを水熱処理する工程;
を含むZSM-5型ゼオライトの合成方法であって、
構造規定剤/(Si+Al)のモル比が0.001〜0.03であり、
アルカリ金属水酸化物/(Si+Al)のモル比が0.05〜0.28である、
ZSM-5型ゼオライトの合成方法により上記課題を解決することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はZSM-5型ゼオライトの合成方法、及び前記方法により得られるZSM-5型ゼオライトに関する。
【背景技術】
【0002】
ゼオライトはM2/nO・Al2O3・xSiO2・yH2O(M=Na、K、Ca、Baなどの金属であり、nは原子価であり、x及びyは係数である)の一般式で表され、三次元網目構造を有するテクトアルミノケイ酸塩である。代表的なゼオライトとしては方沸石(立方晶系)、魚眼石(正方晶系)、菱沸石(三方晶系)、ソーダ沸石(斜方晶系)、輝沸石、束沸石、濁沸石(共に単斜晶系)などが挙げられる。ゼオライトは塩基性火山岩の空洞や脈、熱水鉱脈などに産し、長石類やかすみ石の変質生成物、続成作用による堆積岩中の自生鉱物として産出するが、工業的な合成物もあり、紙の充填材、土壌改良、分子ふるい、吸湿剤、触媒及びそのキャリヤーなどとして利用されている。
【0003】
合成ゼオライトの中でもZSM-5型ゼオライトはアルコールや石油などの炭化水素の接触分解触媒、特にガソリン留分を多く得るための石油用の触媒として利用することができる。ZSM-5型ゼオライト触媒の合成法としては、シリカ原料(ケイ素源)、アルミナ原料(アルミニウム源)、及びテトラアルキルアンモニウム水酸化物などの構造規定剤を含む水溶液を有機溶媒に添加してエマルションを形成し、これを水熱処理する方法が知られている(特許文献1)。特許文献1の方法で使用されるような構造規定剤はゼオライトの構造を決定付けるために必要な成分であるが、ゼオライトの合成後にはゼオライトの細孔内空隙を活用できるように構造規定剤を燃焼除去する必要がある。構造規定剤は高価であるにも関わらず消耗品であるため、多量に使用すると合成コストが高くなるという問題点がある。
【0004】
ゼオライトを合成する際に構造規定剤を使用しない方法も知られている(特許文献2)。特許文献2はシリカ成分(ケイ素源)、アルミニウム成分(アルミニウム源)及び遷移金属種成分からなる含水酸化物を水酸化ナトリウムと混合して水熱合成することにより、構造規定剤を使用せずにゼオライトを合成する方法を開示している。しかしながら、特許文献2で開示している方法はモルデナイト型のゼオライトを合成するための方法であり、この型のゼオライトを合成するために種々の合成条件を限定している。従って、特許文献2の方法を用いてZSM-5型ゼオライトを合成することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−225682号公報
【特許文献2】特開2005−112686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ZSM-5型ゼオライトを合成するための従来の方法論では高価な構造規定剤が大量に必要とされており、合成コストが高くなるという問題点が存在した。そのため、本発明は従来の方法よりも極めて少ない量の構造規定剤を使用してもZSM-5型ゼオライトを合成することのできる方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために本発明者が鋭意検討した結果、アルカリ金属水酸化物を所定の量で使用することによって構造規定剤の量を低減できることを見出した。また、本発明によれば粒子径が1μm未満の微細なZSM-5型ゼオライトを合成することが可能である。更に、異なる型のゼオライトを形成することなく、ZSM-5型ゼオライトのみを合成することができる。
【0008】
すなわち、本発明は以下を包含する。
(1)ケイ素(Si)源とアルミニウム(Al)源と構造規定剤とアルカリ金属水酸化物と水とを含む水溶液と、界面活性剤を含む有機溶媒とを混合し、エマルションを調製する工程;及び
前記エマルションを水熱処理する工程;
を含むZSM-5型ゼオライトの合成方法であって、
構造規定剤/(Si+Al)のモル比が0.001〜0.03であり、
アルカリ金属水酸化物/(Si+Al)のモル比が0.05〜0.28である、
ZSM-5型ゼオライトの合成方法。
(2)アルカリ金属水酸化物/水のモル比が0.002〜0.01である、(1)に記載の方法。
(3)前記界面活性剤のHLBが3〜8である、(1)又は(2)に記載の方法。
(4)前記界面活性剤がポリオキシエチレン(2)オレイルエーテルである、(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5)前記構造規定剤がテトラアルキルアンモニウム水酸化物である、(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載の方法により得られるZSM-5型ゼオライト。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、極めて少ない量の構造規定剤でZSM-5型ゼオライトを合成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は実施例1で得られたゼオライトのX線回折を示す。
【図2】図2は実施例1で得られたゼオライトのSEM画像を示す。
【図3】図3は実施例1で得られたゼオライトのSEM画像を示す。
【図4】図4は実施例2で得られたゼオライトのX線回折を示す。
【図5】図5は実施例2で得られたゼオライトのSEM画像を示す。
【図6】図6は実施例2で得られたゼオライトのSEM画像を示す。
【図7】図7は実施例3で得られたゼオライトのX線回折を示す。
【図8】図8は実施例4で得られたゼオライトのX線回折を示す。
【図9】図9は実施例5で得られたゼオライトのX線回折を示す。
【図10】図10は実施例6で得られたゼオライトのX線回折を示す。
【図11】図11は実施例6で得られたゼオライトのSEM画像を示す。
【図12】図12は実施例6で得られたゼオライトのSEM画像を示す。
【図13】図13は比較例1で得られたゼオライトのX線回折を示す。
【図14】図14は比較例2で得られたゼオライトのX線回折を示す。
【図15】図15は比較例3で得られたゼオライトのX線回折を示す。
【図16】図16は比較例4で得られたゼオライトのX線回折を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明によるZSM-5型ゼオライトの合成方法は:
(i)ケイ素(Si)源とアルミニウム(Al)源と構造規定剤とアルカリ金属水酸化物と水とを含む水溶液と、界面活性剤を含む有機溶媒とを混合し、エマルションを調製する工程;及び
(ii)前記エマルションを水熱処理する工程;
を含む。
【0012】
1.ZSM-5型ゼオライトの構成成分
ZSM-5型ゼオライトは主にケイ素(Si)及びアルミニウム(Al)から構成されており、本発明において、ケイ素はケイ素源により供給し、アルミニウムはアルミニウム源により供給する。
【0013】
「ケイ素源」とは、ケイ素を含有する化合物であり、ゼオライトの構成成分となりうる原料を意味する。ケイ素源としてはゼオライトの構成成分となりうるものであれば特に限定されない。例えば、テトラアルキルオルソシリケート、シリカ、シリカゲル、熱分解法シリカ、沈降シリカ、コロイダルシリカ、水ガラス、湿式シリカ、無定形シリカ、ヒュームドシリカ、ケイ酸ナトリウム、カオリナイト、珪藻土、ケイ酸アルミニウムなどを挙げることができる。これらの中でもテトラアルキルオルソシリケートを使用することが好ましく、具体的にはテトラメチルオルソシリケート、テトラエチルオルソシリケート、テトラプロピルオルソシリケート、テトラブチルオルソシリケートなどを挙げることができる。
【0014】
「アルミニウム源」とは、アルミニウムを含有する化合物であり、ゼオライトの構成成分となりうる原料を意味する。アルミニウム源としてはゼオライトの構成成分となりうるものであれば特に限定されない。例えば、アルミン酸塩、酸化アルミニウム、オキシ水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミニウム塩(塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウムなど)、アルミニウムアルコキシド、アルミナホワイト、フッ化アルミニウムなどを挙げることができる。これらの中でもアルミン酸塩を使用することが好ましく、アルミン酸ナトリウムを使用することが特に好ましい。
【0015】
ZSM-5型ゼオライトの構成成分として、ケイ素及びアルミニウム以外の金属原子を任意成分として含んでいてもよい。例えば、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、銀(Ag)などを含んでいてもよい。
【0016】
2.構造規定剤
「構造規定剤」とはゼオライトの構造を決定するために必要な高価な化合物である。しかしながら、ゼオライトを合成した後には、構造規定剤を除去してゼオライトの細孔を形成する必要がある。そのため、構造規定剤の使用量を低く抑えることが望ましい。
【0017】
本発明において使用する構造規定剤としては特に限定されず、公知の様々の構造規定剤を使用することができる。例えば、テトラアルキルアンモニウム水酸化物、テトラアルキルアンモニウムハロゲン化物などを使用することができる。具体的には水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAOH)、水酸化テトラプロピルアンモニウム(TPAOH)、水酸化テトラブチルアンモニウム(TBAOH)、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAOH)、塩化テトラメチルアンモニウム(TMACl)、臭化テトラプロピルアンモニウム(TPABr)などを挙げることができる。
【0018】
本発明においては以下で詳述するアルカリ金属水酸化物の使用量を所定の範囲内にすることで構造規定剤の使用量を低減することができる。本発明における構造規定剤の使用量は、構造規定剤/(Si+Al)のモル比で0.001〜0.03であり、好ましくは0.002〜0.025であり、特に好ましくは0.003〜0.02である。
【0019】
3.アルカリ金属水酸化物
アルカリ金属水酸化物はpH調整剤として使用する。また、シリカ源及びアルミニウム源を加水分解するために使用することができる。アルカリ金属水酸化物としては特に限定されず、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどを使用することができる。
【0020】
アルカリ金属水酸化物を、Si及びAlの量に対して一定の範囲で使用することで構造規定剤の使用量を低減することができる。また、アルカリ金属水酸化物を適切な量で使用することにより、加水分解した上記原料のゾルを水中に均一に分散させてゲル化させることができる。
【0021】
本発明におけるアルカリ金属水酸化物の使用量は、アルカリ金属水酸化物/(Si+Al)のモル比で0.05〜0.28であり、好ましくは0.07〜0.28であり、特に好ましくは0.09〜0.28である。
【0022】
また、構造規定剤の使用量を低減する観点から、上記工程(i)における水溶液中のアルカリ金属水酸化物の濃度を一定の範囲に限定することが好ましい。具体的にはアルカリ金属水酸化物/水のモル比が0.002〜0.01であることが好ましく、0.003〜0.01であることが特に好ましい。
【0023】
4.界面活性剤
界面活性剤は、上記工程(i)において調製するエマルションを安定化するために使用する。本発明において使用する界面活性剤としては特に限定されず、公知の様々なものを使用することができる。例えば、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤及び両イオン性界面活性剤を使用することができる。これらの具体例としては以下のものを挙げることができる。
【0024】
非イオン性界面活性剤:ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、メタローズ、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、トリスチリルフェノールエトキシレートフォスフェートエステル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ジアルキルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノールなど;
陰イオン性界面活性剤:ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルナフタレン硫酸ナトリウム、ジアルキルベンゼンアルキル、サルフェート、スルホネ−トなど;
陽イオン性界面活性剤:ジアルキルベンゼンアルキルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムブロマイド、セチルピリジニウムブロマイド、ドデシルベンジルトリエチルアンモニウムクロライド、ラウリルアミン酢酸、ステアリルアミンアセテート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライドなど;
両イオン性界面活性剤:ラウリルジメチルアミンオキサイドなど。
【0025】
特に、エマルションを安定化するために親油性の高い界面活性剤、具体的にはHLB値が3〜14の界面活性剤を使用することが好ましく、HLB値が3〜8の界面活性剤を使用することがより好ましく、ポリオキシエチレン(2)オレイルエーテルを使用することが更に好ましい。ここで、()内の数字はオキシエチレン基の繰り返し単位数を意味する。これらの界面活性剤は単独で使用してもよいし、2種以上を併用して使用してもよい。
【0026】
界面活性剤を加える有機溶媒としては、水と混和しないものであれば特に限定されず、様々なものを使用することが可能である。例えば、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、エーテル、ハロゲン化炭化水素、エステルなどを使用することができる。これらの具体例としては以下のものを挙げることができる。
【0027】
脂肪族炭化水素:n-ヘキサン、イソヘキサン、n-ヘプタン、イソヘプタン、流動パラフィン、n-オクテン、イソオクテン、ガソリン、灯油、ベンジン、ミネラルスピリットなど;
脂環式炭化水素:シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロノナンなど;
芳香族炭化水素:ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、n-プロピルベンゼン、クメン、メシチレン、テトラリン、スチレンなど;
エーテル:ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテルなど;
ハロゲン化炭化水素:塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン、トリクロロエタン、トリクロロエチレンなど;
エステル:酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n-アミル、酢酸イソアミル、乳酸n-ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸n-ブチルなど。
【0028】
これらの中でも脂環式炭化水素を使用することが好ましく、シクロヘキサンを使用することが特に好ましい。これらの有機溶媒は単独で使用してもよいし、2種以上を併用して使用してもよい。
【0029】
5.エマルション調製工程(i)
ケイ素源、アルミニウム源、構造規定剤、アルカリ金属水酸化物、及び水を混合する。その後、上記原料を必要に応じて加水分解・ゾル化し、引き続きゲル化する。
【0030】
加水分解の条件は特に制限されず、使用する原料に応じて適宜変更することができる。加水分解によりエタノールなどの両親媒性の物質が生成する場合には、エマルションを調製する前にこれを除去することが好ましい。除去の方法としては如何なる方法を用いてもよく、例えば加熱除去や減圧除去する方法などを挙げることができる。
【0031】
ゲルを均一且つ安定に分散させるために上記原料を含む混合液を予備混合することが好ましい。予備混合の条件は特に制限されないが、30〜90℃、特に40〜70℃の温度条件で100〜3000rpm、特に300〜1500rpmで10分〜10時間、特に30分〜5時間撹拌することが好ましい。
【0032】
界面活性剤を含む有機溶媒と、上記水溶液とを混合する。有機溶媒中の界面活性剤の濃度は特に制限されないが、0.01〜1.00mol/lであることが好ましく、0.1〜0.6mol/lであることが特に好ましい。
【0033】
上記有機溶媒と水溶液との混合方法は特に制限されないが、有機溶媒に水溶液を滴下することが好ましい。また、滴下する際に有機溶媒を撹拌しておくことが好ましい。調製したエマルションを更に高速で撹拌することも微細なエマルションを得る観点から好ましい。
【0034】
6.水熱処理工程(ii)
工程(i)で調製したエマルションを水熱処理することにより、ZSM-5型ゼオライトを合成する。本発明における「水熱処理」とは調製したエマルションを加熱処理することを意味する。水熱処理は常圧条件下で行ってもよいし、加圧条件下で行ってもよい。
【0035】
水熱処理は50〜300℃で行うことが好ましく、100〜200℃で行うことが更に好ましい。また、水熱処理は1〜250時間行うことが好ましく、10〜100時間行うことが更に好ましい。
【0036】
水熱処理を行うことによりZSM-5型ゼオライトを合成することができる。本発明により得られるZSM-5型ゼオライトは粒径が1μm未満の結晶性微粒子である。ゼオライトの型は、X線回折により決定することができる。ゼオライトの粒径はSEMにより決定することができる。
【0037】
合成したZSM-5型ゼオライトを高温、例えば、400〜600℃で焼成することにより構造規定剤及び界面活性剤を除去することができ、ゼオライトの細孔を形成することができる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではない。
【0039】
実施例1
アルミン酸ナトリウム(0.6 g)及び水酸化ナトリウム(0.4 g)を水に溶解した。この溶液に40%含有テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド水溶液(0.15 g)を添加し、全体で50 mlとなるように純水で希釈した。この溶液にテトラエチルオルソシリケート(18 g)を添加し、撹拌しながら50℃で1時間維持して前駆体溶液を調製した。
【0040】
シクロヘキサン(50 ml)にポリオキシエチレン(2)オレイルエーテル(8.9 g)を溶解した。この溶液に前駆体溶液(5 ml)を混合し、分散させた。この混合溶液を160℃で50時間撹拌しながら水熱処理し、ZSM-5型の結晶性微粒子を得た。
【0041】
実施例2
40%含有テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド水溶液を0.75 g使用した以外は実施例1と同様の操作を行った。図4のX線回折が示すように、ZSM-5型ゼオライトが得られた。
【0042】
実施例3
水酸化ナトリウムを0.8 g使用した以外は実施例1と同様の操作を行った。図7のX線回折が示すように、ZSM-5型ゼオライトが得られた。
【0043】
実施例4
水酸化ナトリウムを1.0 g使用した以外は実施例1と同様の操作を行った。図8のX線回折が示すように、ZSM-5型ゼオライトが得られた。
【0044】
実施例5
水酸化ナトリウムを1.1 g使用した以外は実施例1と同様の操作を行った。図9のX線回折が示すように、ZSM-5型ゼオライトが得られた。
【0045】
実施例6
ポリオキシエチレン(2)オレイルエーテルの代わりにポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル(HLB値:約15)を8.9 g使用した以外は実施例1と同様の操作を行った。実施例1〜5と同様にZSM-5型ゼオライトが得られたが、図11及び12に示すように粒子の形状がやや不規則であった。実施例6で得られたゼオライトの粒子径は数百nmであり、実施例1及び2と比べて大きかった。
【0046】
比較例1
アルミン酸ナトリウム(0.6 g)及び水酸化ナトリウム(0.2 g)を水に溶解した。この溶液を全体で50 mlとなるように純水で希釈した。この溶液にテトラエチルオルソシリケート(18 g)を添加し、撹拌しながら50℃で1時間維持して前駆体溶液を調製した。
【0047】
シクロヘキサン(50 ml)にポリオキシエチレン(2)オレイルエーテル(8.9 g)を溶解した。この溶液に前駆体溶液(5 ml)を混合し、分散させた。この混合溶液を160℃で50時間撹拌しながら水熱処理した。図13のX線回折が示すように、ゼオライトの結晶は十分に成長していなかった。
【0048】
比較例2
水酸化ナトリウムを0.4 g使用した以外は比較例1と同様の操作を行った。図14のX線回折が示すように、ゼオライトの結晶は十分に成長していなかった。
【0049】
比較例3
アルミン酸ナトリウム(0.6 g)及び水酸化ナトリウム(0.2 g)を水に溶解した。この溶液に40%含有テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド水溶液を0.15 g添加し、全体で50 mlとなるように純水で希釈した。その後の操作は比較例1と同様に行った。図15のX線回折が示すように、ゼオライトの結晶は十分に成長していなかった。
【0050】
比較例4
水酸化ナトリウムを1.2 g使用した以外は実施例1と同様の操作を行った。図16のX線回折が示すように、ゼオライトの結晶は十分に成長していなかった。
【技術分野】
【0001】
本発明はZSM-5型ゼオライトの合成方法、及び前記方法により得られるZSM-5型ゼオライトに関する。
【背景技術】
【0002】
ゼオライトはM2/nO・Al2O3・xSiO2・yH2O(M=Na、K、Ca、Baなどの金属であり、nは原子価であり、x及びyは係数である)の一般式で表され、三次元網目構造を有するテクトアルミノケイ酸塩である。代表的なゼオライトとしては方沸石(立方晶系)、魚眼石(正方晶系)、菱沸石(三方晶系)、ソーダ沸石(斜方晶系)、輝沸石、束沸石、濁沸石(共に単斜晶系)などが挙げられる。ゼオライトは塩基性火山岩の空洞や脈、熱水鉱脈などに産し、長石類やかすみ石の変質生成物、続成作用による堆積岩中の自生鉱物として産出するが、工業的な合成物もあり、紙の充填材、土壌改良、分子ふるい、吸湿剤、触媒及びそのキャリヤーなどとして利用されている。
【0003】
合成ゼオライトの中でもZSM-5型ゼオライトはアルコールや石油などの炭化水素の接触分解触媒、特にガソリン留分を多く得るための石油用の触媒として利用することができる。ZSM-5型ゼオライト触媒の合成法としては、シリカ原料(ケイ素源)、アルミナ原料(アルミニウム源)、及びテトラアルキルアンモニウム水酸化物などの構造規定剤を含む水溶液を有機溶媒に添加してエマルションを形成し、これを水熱処理する方法が知られている(特許文献1)。特許文献1の方法で使用されるような構造規定剤はゼオライトの構造を決定付けるために必要な成分であるが、ゼオライトの合成後にはゼオライトの細孔内空隙を活用できるように構造規定剤を燃焼除去する必要がある。構造規定剤は高価であるにも関わらず消耗品であるため、多量に使用すると合成コストが高くなるという問題点がある。
【0004】
ゼオライトを合成する際に構造規定剤を使用しない方法も知られている(特許文献2)。特許文献2はシリカ成分(ケイ素源)、アルミニウム成分(アルミニウム源)及び遷移金属種成分からなる含水酸化物を水酸化ナトリウムと混合して水熱合成することにより、構造規定剤を使用せずにゼオライトを合成する方法を開示している。しかしながら、特許文献2で開示している方法はモルデナイト型のゼオライトを合成するための方法であり、この型のゼオライトを合成するために種々の合成条件を限定している。従って、特許文献2の方法を用いてZSM-5型ゼオライトを合成することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−225682号公報
【特許文献2】特開2005−112686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ZSM-5型ゼオライトを合成するための従来の方法論では高価な構造規定剤が大量に必要とされており、合成コストが高くなるという問題点が存在した。そのため、本発明は従来の方法よりも極めて少ない量の構造規定剤を使用してもZSM-5型ゼオライトを合成することのできる方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために本発明者が鋭意検討した結果、アルカリ金属水酸化物を所定の量で使用することによって構造規定剤の量を低減できることを見出した。また、本発明によれば粒子径が1μm未満の微細なZSM-5型ゼオライトを合成することが可能である。更に、異なる型のゼオライトを形成することなく、ZSM-5型ゼオライトのみを合成することができる。
【0008】
すなわち、本発明は以下を包含する。
(1)ケイ素(Si)源とアルミニウム(Al)源と構造規定剤とアルカリ金属水酸化物と水とを含む水溶液と、界面活性剤を含む有機溶媒とを混合し、エマルションを調製する工程;及び
前記エマルションを水熱処理する工程;
を含むZSM-5型ゼオライトの合成方法であって、
構造規定剤/(Si+Al)のモル比が0.001〜0.03であり、
アルカリ金属水酸化物/(Si+Al)のモル比が0.05〜0.28である、
ZSM-5型ゼオライトの合成方法。
(2)アルカリ金属水酸化物/水のモル比が0.002〜0.01である、(1)に記載の方法。
(3)前記界面活性剤のHLBが3〜8である、(1)又は(2)に記載の方法。
(4)前記界面活性剤がポリオキシエチレン(2)オレイルエーテルである、(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5)前記構造規定剤がテトラアルキルアンモニウム水酸化物である、(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載の方法により得られるZSM-5型ゼオライト。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、極めて少ない量の構造規定剤でZSM-5型ゼオライトを合成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は実施例1で得られたゼオライトのX線回折を示す。
【図2】図2は実施例1で得られたゼオライトのSEM画像を示す。
【図3】図3は実施例1で得られたゼオライトのSEM画像を示す。
【図4】図4は実施例2で得られたゼオライトのX線回折を示す。
【図5】図5は実施例2で得られたゼオライトのSEM画像を示す。
【図6】図6は実施例2で得られたゼオライトのSEM画像を示す。
【図7】図7は実施例3で得られたゼオライトのX線回折を示す。
【図8】図8は実施例4で得られたゼオライトのX線回折を示す。
【図9】図9は実施例5で得られたゼオライトのX線回折を示す。
【図10】図10は実施例6で得られたゼオライトのX線回折を示す。
【図11】図11は実施例6で得られたゼオライトのSEM画像を示す。
【図12】図12は実施例6で得られたゼオライトのSEM画像を示す。
【図13】図13は比較例1で得られたゼオライトのX線回折を示す。
【図14】図14は比較例2で得られたゼオライトのX線回折を示す。
【図15】図15は比較例3で得られたゼオライトのX線回折を示す。
【図16】図16は比較例4で得られたゼオライトのX線回折を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明によるZSM-5型ゼオライトの合成方法は:
(i)ケイ素(Si)源とアルミニウム(Al)源と構造規定剤とアルカリ金属水酸化物と水とを含む水溶液と、界面活性剤を含む有機溶媒とを混合し、エマルションを調製する工程;及び
(ii)前記エマルションを水熱処理する工程;
を含む。
【0012】
1.ZSM-5型ゼオライトの構成成分
ZSM-5型ゼオライトは主にケイ素(Si)及びアルミニウム(Al)から構成されており、本発明において、ケイ素はケイ素源により供給し、アルミニウムはアルミニウム源により供給する。
【0013】
「ケイ素源」とは、ケイ素を含有する化合物であり、ゼオライトの構成成分となりうる原料を意味する。ケイ素源としてはゼオライトの構成成分となりうるものであれば特に限定されない。例えば、テトラアルキルオルソシリケート、シリカ、シリカゲル、熱分解法シリカ、沈降シリカ、コロイダルシリカ、水ガラス、湿式シリカ、無定形シリカ、ヒュームドシリカ、ケイ酸ナトリウム、カオリナイト、珪藻土、ケイ酸アルミニウムなどを挙げることができる。これらの中でもテトラアルキルオルソシリケートを使用することが好ましく、具体的にはテトラメチルオルソシリケート、テトラエチルオルソシリケート、テトラプロピルオルソシリケート、テトラブチルオルソシリケートなどを挙げることができる。
【0014】
「アルミニウム源」とは、アルミニウムを含有する化合物であり、ゼオライトの構成成分となりうる原料を意味する。アルミニウム源としてはゼオライトの構成成分となりうるものであれば特に限定されない。例えば、アルミン酸塩、酸化アルミニウム、オキシ水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミニウム塩(塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウムなど)、アルミニウムアルコキシド、アルミナホワイト、フッ化アルミニウムなどを挙げることができる。これらの中でもアルミン酸塩を使用することが好ましく、アルミン酸ナトリウムを使用することが特に好ましい。
【0015】
ZSM-5型ゼオライトの構成成分として、ケイ素及びアルミニウム以外の金属原子を任意成分として含んでいてもよい。例えば、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、銀(Ag)などを含んでいてもよい。
【0016】
2.構造規定剤
「構造規定剤」とはゼオライトの構造を決定するために必要な高価な化合物である。しかしながら、ゼオライトを合成した後には、構造規定剤を除去してゼオライトの細孔を形成する必要がある。そのため、構造規定剤の使用量を低く抑えることが望ましい。
【0017】
本発明において使用する構造規定剤としては特に限定されず、公知の様々の構造規定剤を使用することができる。例えば、テトラアルキルアンモニウム水酸化物、テトラアルキルアンモニウムハロゲン化物などを使用することができる。具体的には水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAOH)、水酸化テトラプロピルアンモニウム(TPAOH)、水酸化テトラブチルアンモニウム(TBAOH)、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAOH)、塩化テトラメチルアンモニウム(TMACl)、臭化テトラプロピルアンモニウム(TPABr)などを挙げることができる。
【0018】
本発明においては以下で詳述するアルカリ金属水酸化物の使用量を所定の範囲内にすることで構造規定剤の使用量を低減することができる。本発明における構造規定剤の使用量は、構造規定剤/(Si+Al)のモル比で0.001〜0.03であり、好ましくは0.002〜0.025であり、特に好ましくは0.003〜0.02である。
【0019】
3.アルカリ金属水酸化物
アルカリ金属水酸化物はpH調整剤として使用する。また、シリカ源及びアルミニウム源を加水分解するために使用することができる。アルカリ金属水酸化物としては特に限定されず、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどを使用することができる。
【0020】
アルカリ金属水酸化物を、Si及びAlの量に対して一定の範囲で使用することで構造規定剤の使用量を低減することができる。また、アルカリ金属水酸化物を適切な量で使用することにより、加水分解した上記原料のゾルを水中に均一に分散させてゲル化させることができる。
【0021】
本発明におけるアルカリ金属水酸化物の使用量は、アルカリ金属水酸化物/(Si+Al)のモル比で0.05〜0.28であり、好ましくは0.07〜0.28であり、特に好ましくは0.09〜0.28である。
【0022】
また、構造規定剤の使用量を低減する観点から、上記工程(i)における水溶液中のアルカリ金属水酸化物の濃度を一定の範囲に限定することが好ましい。具体的にはアルカリ金属水酸化物/水のモル比が0.002〜0.01であることが好ましく、0.003〜0.01であることが特に好ましい。
【0023】
4.界面活性剤
界面活性剤は、上記工程(i)において調製するエマルションを安定化するために使用する。本発明において使用する界面活性剤としては特に限定されず、公知の様々なものを使用することができる。例えば、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤及び両イオン性界面活性剤を使用することができる。これらの具体例としては以下のものを挙げることができる。
【0024】
非イオン性界面活性剤:ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、メタローズ、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、トリスチリルフェノールエトキシレートフォスフェートエステル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ジアルキルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノールなど;
陰イオン性界面活性剤:ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルナフタレン硫酸ナトリウム、ジアルキルベンゼンアルキル、サルフェート、スルホネ−トなど;
陽イオン性界面活性剤:ジアルキルベンゼンアルキルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムブロマイド、セチルピリジニウムブロマイド、ドデシルベンジルトリエチルアンモニウムクロライド、ラウリルアミン酢酸、ステアリルアミンアセテート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライドなど;
両イオン性界面活性剤:ラウリルジメチルアミンオキサイドなど。
【0025】
特に、エマルションを安定化するために親油性の高い界面活性剤、具体的にはHLB値が3〜14の界面活性剤を使用することが好ましく、HLB値が3〜8の界面活性剤を使用することがより好ましく、ポリオキシエチレン(2)オレイルエーテルを使用することが更に好ましい。ここで、()内の数字はオキシエチレン基の繰り返し単位数を意味する。これらの界面活性剤は単独で使用してもよいし、2種以上を併用して使用してもよい。
【0026】
界面活性剤を加える有機溶媒としては、水と混和しないものであれば特に限定されず、様々なものを使用することが可能である。例えば、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、エーテル、ハロゲン化炭化水素、エステルなどを使用することができる。これらの具体例としては以下のものを挙げることができる。
【0027】
脂肪族炭化水素:n-ヘキサン、イソヘキサン、n-ヘプタン、イソヘプタン、流動パラフィン、n-オクテン、イソオクテン、ガソリン、灯油、ベンジン、ミネラルスピリットなど;
脂環式炭化水素:シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロノナンなど;
芳香族炭化水素:ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、n-プロピルベンゼン、クメン、メシチレン、テトラリン、スチレンなど;
エーテル:ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテルなど;
ハロゲン化炭化水素:塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン、トリクロロエタン、トリクロロエチレンなど;
エステル:酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n-アミル、酢酸イソアミル、乳酸n-ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸n-ブチルなど。
【0028】
これらの中でも脂環式炭化水素を使用することが好ましく、シクロヘキサンを使用することが特に好ましい。これらの有機溶媒は単独で使用してもよいし、2種以上を併用して使用してもよい。
【0029】
5.エマルション調製工程(i)
ケイ素源、アルミニウム源、構造規定剤、アルカリ金属水酸化物、及び水を混合する。その後、上記原料を必要に応じて加水分解・ゾル化し、引き続きゲル化する。
【0030】
加水分解の条件は特に制限されず、使用する原料に応じて適宜変更することができる。加水分解によりエタノールなどの両親媒性の物質が生成する場合には、エマルションを調製する前にこれを除去することが好ましい。除去の方法としては如何なる方法を用いてもよく、例えば加熱除去や減圧除去する方法などを挙げることができる。
【0031】
ゲルを均一且つ安定に分散させるために上記原料を含む混合液を予備混合することが好ましい。予備混合の条件は特に制限されないが、30〜90℃、特に40〜70℃の温度条件で100〜3000rpm、特に300〜1500rpmで10分〜10時間、特に30分〜5時間撹拌することが好ましい。
【0032】
界面活性剤を含む有機溶媒と、上記水溶液とを混合する。有機溶媒中の界面活性剤の濃度は特に制限されないが、0.01〜1.00mol/lであることが好ましく、0.1〜0.6mol/lであることが特に好ましい。
【0033】
上記有機溶媒と水溶液との混合方法は特に制限されないが、有機溶媒に水溶液を滴下することが好ましい。また、滴下する際に有機溶媒を撹拌しておくことが好ましい。調製したエマルションを更に高速で撹拌することも微細なエマルションを得る観点から好ましい。
【0034】
6.水熱処理工程(ii)
工程(i)で調製したエマルションを水熱処理することにより、ZSM-5型ゼオライトを合成する。本発明における「水熱処理」とは調製したエマルションを加熱処理することを意味する。水熱処理は常圧条件下で行ってもよいし、加圧条件下で行ってもよい。
【0035】
水熱処理は50〜300℃で行うことが好ましく、100〜200℃で行うことが更に好ましい。また、水熱処理は1〜250時間行うことが好ましく、10〜100時間行うことが更に好ましい。
【0036】
水熱処理を行うことによりZSM-5型ゼオライトを合成することができる。本発明により得られるZSM-5型ゼオライトは粒径が1μm未満の結晶性微粒子である。ゼオライトの型は、X線回折により決定することができる。ゼオライトの粒径はSEMにより決定することができる。
【0037】
合成したZSM-5型ゼオライトを高温、例えば、400〜600℃で焼成することにより構造規定剤及び界面活性剤を除去することができ、ゼオライトの細孔を形成することができる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではない。
【0039】
実施例1
アルミン酸ナトリウム(0.6 g)及び水酸化ナトリウム(0.4 g)を水に溶解した。この溶液に40%含有テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド水溶液(0.15 g)を添加し、全体で50 mlとなるように純水で希釈した。この溶液にテトラエチルオルソシリケート(18 g)を添加し、撹拌しながら50℃で1時間維持して前駆体溶液を調製した。
【0040】
シクロヘキサン(50 ml)にポリオキシエチレン(2)オレイルエーテル(8.9 g)を溶解した。この溶液に前駆体溶液(5 ml)を混合し、分散させた。この混合溶液を160℃で50時間撹拌しながら水熱処理し、ZSM-5型の結晶性微粒子を得た。
【0041】
実施例2
40%含有テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド水溶液を0.75 g使用した以外は実施例1と同様の操作を行った。図4のX線回折が示すように、ZSM-5型ゼオライトが得られた。
【0042】
実施例3
水酸化ナトリウムを0.8 g使用した以外は実施例1と同様の操作を行った。図7のX線回折が示すように、ZSM-5型ゼオライトが得られた。
【0043】
実施例4
水酸化ナトリウムを1.0 g使用した以外は実施例1と同様の操作を行った。図8のX線回折が示すように、ZSM-5型ゼオライトが得られた。
【0044】
実施例5
水酸化ナトリウムを1.1 g使用した以外は実施例1と同様の操作を行った。図9のX線回折が示すように、ZSM-5型ゼオライトが得られた。
【0045】
実施例6
ポリオキシエチレン(2)オレイルエーテルの代わりにポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル(HLB値:約15)を8.9 g使用した以外は実施例1と同様の操作を行った。実施例1〜5と同様にZSM-5型ゼオライトが得られたが、図11及び12に示すように粒子の形状がやや不規則であった。実施例6で得られたゼオライトの粒子径は数百nmであり、実施例1及び2と比べて大きかった。
【0046】
比較例1
アルミン酸ナトリウム(0.6 g)及び水酸化ナトリウム(0.2 g)を水に溶解した。この溶液を全体で50 mlとなるように純水で希釈した。この溶液にテトラエチルオルソシリケート(18 g)を添加し、撹拌しながら50℃で1時間維持して前駆体溶液を調製した。
【0047】
シクロヘキサン(50 ml)にポリオキシエチレン(2)オレイルエーテル(8.9 g)を溶解した。この溶液に前駆体溶液(5 ml)を混合し、分散させた。この混合溶液を160℃で50時間撹拌しながら水熱処理した。図13のX線回折が示すように、ゼオライトの結晶は十分に成長していなかった。
【0048】
比較例2
水酸化ナトリウムを0.4 g使用した以外は比較例1と同様の操作を行った。図14のX線回折が示すように、ゼオライトの結晶は十分に成長していなかった。
【0049】
比較例3
アルミン酸ナトリウム(0.6 g)及び水酸化ナトリウム(0.2 g)を水に溶解した。この溶液に40%含有テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド水溶液を0.15 g添加し、全体で50 mlとなるように純水で希釈した。その後の操作は比較例1と同様に行った。図15のX線回折が示すように、ゼオライトの結晶は十分に成長していなかった。
【0050】
比較例4
水酸化ナトリウムを1.2 g使用した以外は実施例1と同様の操作を行った。図16のX線回折が示すように、ゼオライトの結晶は十分に成長していなかった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素(Si)源とアルミニウム(Al)源と構造規定剤とアルカリ金属水酸化物と水とを含む水溶液と、界面活性剤を含む有機溶媒とを混合し、エマルションを調製する工程;及び
前記エマルションを水熱処理する工程;
を含むZSM-5型ゼオライトの合成方法であって、
構造規定剤/(Si+Al)のモル比が0.001〜0.03であり、
アルカリ金属水酸化物/(Si+Al)のモル比が0.05〜0.28である、
ZSM-5型ゼオライトの合成方法。
【請求項2】
アルカリ金属水酸化物/水のモル比が0.002〜0.01である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記界面活性剤のHLBが3〜8である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記界面活性剤がポリオキシエチレン(2)オレイルエーテルである、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記構造規定剤がテトラアルキルアンモニウム水酸化物である、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の方法により得られるZSM-5型ゼオライト。
【請求項1】
ケイ素(Si)源とアルミニウム(Al)源と構造規定剤とアルカリ金属水酸化物と水とを含む水溶液と、界面活性剤を含む有機溶媒とを混合し、エマルションを調製する工程;及び
前記エマルションを水熱処理する工程;
を含むZSM-5型ゼオライトの合成方法であって、
構造規定剤/(Si+Al)のモル比が0.001〜0.03であり、
アルカリ金属水酸化物/(Si+Al)のモル比が0.05〜0.28である、
ZSM-5型ゼオライトの合成方法。
【請求項2】
アルカリ金属水酸化物/水のモル比が0.002〜0.01である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記界面活性剤のHLBが3〜8である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記界面活性剤がポリオキシエチレン(2)オレイルエーテルである、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記構造規定剤がテトラアルキルアンモニウム水酸化物である、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の方法により得られるZSM-5型ゼオライト。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−31009(P2012−31009A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171752(P2010−171752)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000173522)財団法人ファインセラミックスセンター (147)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000173522)財団法人ファインセラミックスセンター (147)
【Fターム(参考)】
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