説明

p−キシレンの製造方法

【課題】 エチレンを出発原料とし、触媒と接触させp−キシレンを製造する方法において、p−キシレン選択率の高い製造方法の提供を課題とする。
【解決方法】 エチレンを主成分とする原料を反応器中で、好ましくは気相で、触媒と接触させ、p−キシレンを製造する方法において、前記触媒の活性成分がゼオライトであり、かつ前記ゼオライトの外表面の酸量が、前記ゼオライト全体の酸量に対し、1%以下であることを特徴とするp−キシレンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレンを含む原料を、触媒と接触させp−キシレンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
p−キシレンは、キシレン異性体のうち、ポリエステルのモノマーであるテレフタル酸の原料として使用される点で最も重要なものである。
p−キシレンは通常、ナフサを改質処理し、その後芳香族抽出或いは分留して得られるC8芳香族炭化水素混合物、又は、ナフサの熱分解により副生する分解ガソリンを芳香族抽出或いは分留して得られるC8芳香族炭化水素混合物などから製造される。このC8芳香族炭化水素混合物原料の組成は広範囲に変わり、通常エチルベンゼンを10〜40重量%、p−キシレンを12〜25重量%、m−キシレンを30〜50重量%、o−キシレンを12〜25重量%含み、所望のp−キシレンは混合物原料中の含有量が少ない。そのため引き続く精製分離工程の効率が低いという欠点があった。
【0003】
一方従来から、脂肪族炭化水素などの芳香族炭化水素以外の炭化水素原料から芳香族炭化水素を製造する技術が検討されている。例えば主原料としてパラフィンを用いたもの、プロピレンやブテン等の炭素数3以上のオレフィン類を主原料とするもの、天然ガスを改質し得られる水素/一酸化炭素混合ガスより得られるメタノール、ジメチルエーテルを原料とするものなどが種々検討されてきた。
しかし、これらの芳香族炭化水素製造法は原料の調達に難がある、または芳香族収率が低い等、実用性に乏しいものであり、p−キシレンの製造方法としては不向きであった。
【0004】
p-キシレンの製造方法としては、エチレンを原料として用いる方法も検討されている。エチレンを原料として用いる方法として、ケイ素を含む化合物で表面を処理したゼオライトを触媒とし、p−キシレンが製造される技術の検討もなされている。
しかし、その殆どはトルエンのメタノールによるメチル化反応、あるいは、トルエンの不均化反応、稀にエチルベンゼンのアルキル化反応、エチルベンゼンの不均化反応において、p−キシレンが副次的に得られているに過ぎない。
エチレンを原料として用いて、p−キシレンを製造する方法として、非特許文献1、2ではGa−ZSM−5を触媒に用い、反応混合ガス中のエチレン濃度が5モル%という非常に低濃度での検討結果が記載されている。しかし、芳香族収率の高い領域では、m−キシレンの選択率が高く、p−キシレン選択率は低く、実用性にはいまだ乏しいものであった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Journal of Catalysis, 205(2002), p398-403
【非特許文献2】Microporous and Mesoporous Materials 51(2002), p203-210
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のように、従来の技術では、エチレン原料からの芳香族炭化水素収率、p−キシレン選択率は十分ではなく、また、芳香族炭化水素収率の上昇とともにp−キシレンの選択率は低下するため、高いp−キシレン収率は達成できなかった。
【0007】
本発明は、かかる従来技術の欠点が解決された、エチレンを出発原料とし、p−キシレン選択率の高い製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために、鋭意検討を重ねた結果、外表面の酸量が全体の酸量に対して少ないゼオライトを触媒の活性成分とすることによって、高い選択率、及び収率でエチレンを含む原料からp−キシレンを製造できることを見出し、本発明に至った。
【0009】
すなわち、本発明の第1の要旨は、エチレンを主成分とする原料を反応器中で触媒と接触させ、p−キシレンを製造する方法において、前記触媒の活性成分がゼオライトであり、かつ前記ゼオライトの外表面の酸量が、前記ゼオライト全体の酸量に対し、1%以下であることを特徴とするp−キシレンの製造方法に存する。
【0010】
第2の要旨は、前記製造方法において、ゼオライトが、周期表第IIIb族に属する元素よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する結晶性シリケート類である方法に存する。
【0011】
第3の要旨は、前記製造方法において、周期表第IIIb族に属する元素が、Al及び/またはGaである方法に存する。
第4の要旨は、前記製造方法において、ゼオライトの細孔直径が、0.5nm以上、0.75nm以下である方法に存する。
【0012】
第5の要旨は、前記製造方法において、ゼオライトが、酸素の10員環チャンネル構造を有する方法に存する。
第6の要旨は、前記製造方法において、ゼオライトの構造が、MFI構造である方法に存する。
【0013】
第7の要旨は、前記製造方法において、ゼオライトが元素としてAlを含有し、かつSiO/Alモル比が5以上、1000以下である方法に存する。
第8の要旨は、前記製造方法において、ゼオライトが元素としてGaを含有し、かつSiO/Gaモル比が5以上、1000以下である方法に存する。
【0014】
第9の要旨は、前記製造方法において、ゼオライトが、ゼオライトの外表面をシリル化したものである方法に存する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、エチレンを含む原料を反応器中で触媒と接触させることにより、p−キシレンを高い選択率、及び高い収率で製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を実施するための代表的な態様を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の形態に限定されるものではない。
【0017】
本発明のp−キシレンの製造方法は、ゼオライトを活性成分に有する触媒(以下これを、「ゼオライト触媒」ということがある。)に、エチレンを含む原料を、好ましくは気相で接触させてp−キシレンを製造する反応において、前記ゼオライトの後述する外表面酸量が、後述するゼオライト全体の酸量の1%以下であるゼオライトを用いることに特徴を有するものである。
【0018】
ここで、ゼオライト触媒に、エチレンを含む原料を接触させると、カルボカチオンを中間体として芳香族化合物が生成する、具体的には、下記(i)〜(iv)の反応が連続的に起こることで生成するものと推測される。
(i)エチレンがゼオライト触媒の酸点に吸着されることでエチルカチオンが発生し、このカチオンとエチレンが二量化反応を起こす。
(ii)引き続く三量化反応、更に四量化反応により、C8オレフィンが生成する。
(iii)C8オレフィンから脱水素化反応により、C8ジエン、さらに脱水素反応を伴う閉環反応が起こり、C8芳香族炭化水素(例えばキシレン異性体混合物やエチルベンゼン)が生成する。
(iv)C8芳香族炭化水素から不均化反応、脱アルキル化反応により、ベンゼン、トルエン、C9芳香族炭化水素等が生成する。
推定ではあるが、このとき外表面酸量を低下させた本発明において用いられるゼオライト触媒では、ゼオライト細孔特有の形状選択性によりC8芳香族炭化水素が生成し(iii)、さらに外表面の酸点上で起こる副反応(iv)が抑制されることにより、p−キシレンが選択的に、収率よく得られるものと考えられる。
【0019】
まず、本発明で用いる触媒(1)について、次に、本発明のキシレンの製造方法(2)について、その詳細を説明する。
【0020】
(1)触媒
本発明で用いる触媒は、活性成分としてゼオライトを有し、エチレンからp−キシレンを生成させる能力を有するものを意味する。
活性成分であるゼオライトは、そのまま触媒として反応に用いても良いし、反応に不活性な物質やバインダーを用いて、造粒・成型して、或いはこれらを混合して反応に用いても良い。該反応に不活性な物質やバインダーとしては、アルミナまたはアルミナゾル、シリカ、シリカゲル、石英、およびそれらの混合物等が挙げられる。
これらの物質との混合により触媒全体のコスト削減、触媒再生時の熱遮蔽補助用熱シンクとしての作用に有効であり、また、触媒の高密度化、触媒強度増加に効果的でもある。
本発明で用いられるゼオライトは、次に述べる物性等を有するものである。
【0021】
(1−1)ゼオライト
ゼオライトとは、四面体構造をもつTO単位(Tは中心原子)がO原子を共有して三次元的に連結し、開かれた規則的なミクロ細孔を形成している結晶性物質を指す。具体的には国際ゼオライト学会(International Zeolite Association;以下これを「IZA」ということがある。)の構造委員会データ集に記載のあるケイ酸塩、リン酸塩、ゲルマニウム酸塩、ヒ酸塩等が含まれる。
【0022】
(1−2)構造
本発明で用いるゼオライトの細孔直径は、特に限定されるものではないが、通常0.5nm以上であり、通常0.75nm以下、好ましくは0.65nm以下の細孔直径を持つものである。
ここで言う細孔直径とは、International Zeolite Association(IZA)が定める結晶学的な細孔(チャネル)直径(Crystallographic free diameter of the channels)をいう。細孔の形状は特に限定されるものではないが、その断面形状が真円形の場合は、その平均直径を意味し、またその形状が楕円形の場合は、長径を意味する。
【0023】
該ゼオライトの細孔直径が前記下限値未満では、生成した芳香族炭化水素類のゼオライトの外表面結晶への拡散障壁が高くなり気相への脱離が困難な場合があり、エチレンから高収率でキシレンをはじめとする芳香族炭化水素を製造することが困難な場合がある。
【0024】
該ゼオライトの細孔直径が前記上限値超過では、炭素数9以上の芳香族、および複数の芳香族環を有する多環芳香族のような副生成物が多くなる傾向があり、エチレンから高収率でp−キシレンを製造することが困難な場合がある。
【0025】
本発明に用いられるゼオライトの細孔を構成する酸素数としては、特に限定されるものではないが、通常、酸素の10員環または12員環を含む構造を有するものが好ましく、中でも10員環を含む構造を有するものが好ましい。
ここで、酸素10員環または12員環を含む構造とは、ゼオライトのもつ細孔がTO単位(但し、TはSi、P、Ge、Al、Ga等を示す。)10個または12個からなる環構造を意味する。
またゼオライトが有する細孔の種類は特に限定されるものではなく、異なる酸素数の細孔が混在していてもよく、また同じ酸素数と大きさを有する細孔が1種類であっても、同じ酸素数であるが異なる大きさの細孔が2種類以上のものが混在していてもよい。
酸素10員環を含みかつ酸素10員環以下の細孔だけを有するゼオライトとしては、具体的にはInternational Zeolite Association(IZA)が規定するコードで表すと、例えば、AEL、AFO、EUO、FER、MEL、MFI、MTT、MWW、TONなどが挙げられ、中でも、MFI、MWWが好ましく、更に好ましくはMFIである。
また、酸素12員環を含みかつ酸素12員環以下の細孔だけを有するゼオライトとしては、AFI、ATO、BEA、CON、FAU、GME、LTL、MOR、MTW、OFFなどが挙げられる。
【0026】
本発明に用いられるゼオライトを構成する元素は、特に限定されるものではないが、その骨格中にSiと、周期表第IIIb族に属する元素のうちから選ばれる少なくとも1種の元素を含む結晶性シリケート類が好ましい。前記周期表第IIIb族に属する元素はAl、Gaが好ましく、AlとGa両方を含有するものが更に好ましい。
【0027】
ゼオライトのフレームワーク密度は特に限定されず、好ましくは18以下、より好ましくは17以下であり、下限は、通常13以上、好ましくは14以上である。
ここで、フレームワーク密度(単位:T/nm)とは、ゼオライトの単位体積(1nm)当たりに存在するT原子(ゼオライトの骨格を構成する原子のうち、酸素以外の原子)の個数を意味し、この値はゼオライトの構造により決まる。
【0028】
(1−3)組成
ゼオライト骨格中の周期表第IIIb族に属する元素の近傍には、電荷バランスを保つため、Na+などのカチオンが存在する。このカチオンは容易に別のカチオンと交換可能であり、存在する場所をイオン交換サイトという。
本発明において用いられるゼオライトは、通常、イオン交換サイトがプロトンであるプロトン交換型が用いられるが、イオン交換サイトの元素の一部がNa、K等のアルカリ金属、Mg、Ca等のアルカリ土類金属やその他の金属元素に交換されていてもよい。また、結晶性アルミノシリケート類においては、これを構成するAl原子の一部を他の金属原子で置換されたものでもよい。
【0029】
イオン交換サイトの一部が金属元素で置換される以外に、Na、K等のアルカリ金属;Mg、Ca等のアルカリ土類金属;Cr、Cu、Ni、Fe、Mo、W、Pt、Re等の遷移金属に金属担持されていてもよい。ここで、金属担持は、通常、平衡吸着法、蒸発乾固法、ポアフィリング法等の含浸法で行うことができる。
【0030】
ゼオライトが結晶性シリケート類の場合、SiO/M(但し、MはAl、Ga、Fe、Ti、Bなど3価の元素を示す。以下、ヘテロ元素ということがある。)モル比は、好ましくは5以上、より好ましくは10以上であり、上限は、通常1000以下である。この値が低すぎると触媒の耐久性が低下する傾向があり、また高すぎても触媒活性が低下する傾向がある。
【0031】
上記結晶性シリケート類がAlを含む結晶性アルミノシリケートの場合、SiO/Alのモル比は、これを構成するAl原子の一部をスチーミングや酸処理等により脱Alさせ、高SiO/Al比にしたものも用いることができる。
通常、SiO/Alのモル比が5以上、好ましくは10以上、より好ましくは30以上であり、通常1000以下であり、好ましくは500以下、より好ましくは150以下のものである。SiO/Alのモル比は上記の方法以外にも、合成時にAl量をコントロールすることで、含有Al量を調節することができる。
【0032】
上記結晶性アルミノシリケートのSiO/Alモル比が前記下限未満では、触媒の耐久性が低下する傾向がある。また、SiO/Alのモル比が前記上限超過では触媒活性が低下する傾向がある。
【0033】
上記結晶性シリケート類がGaを含む結晶性ガロシリケートの場合、SiO/Gaモル比は通常5以上、好ましくは10以上、より好ましくは30以上であり、通常1000以下、好ましくは500以下、より好ましくは150以下である。
触媒活性成分としての結晶性ガロシリケートのSiO/Gaモル比が前記下限未満では、触媒の耐久性が低下するため好ましくない場合がある。また、SiO/Gaのモル比が前記上限超過では触媒活性が低下してしまう場合がある。
【0034】
Gaを含有させる方法は特には限定されず、結晶性シリケート合成時にGa化合物原料を加える、あるいは、上記結晶性アルミノシリケート類を構成するAl原子の一部、または全部をGa元素で置換する、あるいは結晶性シリケート類に含浸、担持する等公知の方法によりGaを含有させることができる。
【0035】
(1−4)酸量
本発明において用いられるゼオライトの外表面の酸量(以下、外表面酸量ということがある)は、前記ゼオライトの全体の酸量(以下、全体酸量ということがある)に対して1%以下である。好ましくは0.8%以下であり、より好ましくは0.7%以下、更に好ましくは0.6%以下である。下限は特に限定されるものではなく、少なければ少ないほど良いが、通常0.01%以上である。
【0036】
外表面酸量が全体酸量に対して前記上限を超過する場合、ゼオライトの外表面の酸点(以下、外表面酸点ということがある)が多く存在するため、ゼオライトの細孔から高い選択率で生成したp−キシレンが外表面酸点上で再び反応を起こしてしまい、熱的平衡組成に近い炭素数6から8の芳香族炭化水素の分布となり、p−キシレンの選択率が低下するため好ましくない。この外表面酸点で起こる副反応を抑制するために、外表面酸量を全体酸量に対し、1%以下になるよう調整することが必要である。
【0037】
ここでゼオライトの外表面酸量とは、ゼオライトの外表面に存在する酸点の総量を示す。外表面酸量とは、4−メチルキノリンをゼオライト表面の酸点に吸着させ、次いで昇温により吸着した4−メチルキノリンを触媒から脱離させたときの触媒重量当たりの4−メチルキノリン量を測定することにより得られる値をいう。具体的に外表面酸量とは、前処理として真空下500℃で1時間乾燥させた後、200℃の減圧条件下で4-メチルキノリン蒸気と接触吸着させ、200℃での排気、及びヘリウム流通により余剰4-メチルキノリンを除いて得られたゼオライトの、昇温速度10℃/分の昇温脱離法により求めた30〜900℃におけるゼオライト単位重量当たりの4-メチルキノリンの脱離量をいう。
4−メチルキノリンは、ゼオライト細孔内に入らない大きさのプローブ分子である。そのため外表面の酸点のみに吸着されるため、外表面酸量を測定することができる。
外表面酸量は特に限定されるものではなく、少なければ少ないほど良く、下限は特にない。
【0038】
またゼオライトの全体酸量とは、ピリジンをゼオライト表面およびゼオライト内部両方の酸点に吸着させ、次いで昇温により吸着したピリジンを触媒から脱離させたときの触媒重量当たりのピリジン量を測定することにより得られる値をいう。具体的に全体酸量とは、前処理として真空下500℃で1時間乾燥させた後、200℃の減圧条件下でピリジン蒸気と接触吸着させ、200℃、ヘリウム流通により余剰ピリジンを除いて得られたゼオライトの、昇温速度10℃/分の昇温脱離法により求めた30〜800℃におけるゼオライト単位重量当たりのピリジンの脱離量をいう。
【0039】
ピリジンはゼオライト細孔内にも入る大きさのプローブ分子である。そのため外表面および細孔内の酸点いずれにも吸着されるため、全体酸量を測定することができる。
全体酸量は、通常4.8mmol/g以下、好ましくは2.8mmol/g以下が好ましい。また、下限は、通常0.15mmol/g以上、好ましくは0.30mmol/g以上である。酸量が多すぎると、コーク付着による失活が速くなり、ゼオライトを構成しているAlが骨格から抜けやすくなるため、酸点当たりの酸強度が弱くなる傾向がある。酸量が少なすぎると、反応の活性点が少なくなるため、エチレンの転化率が低下する傾向がある。
【0040】
(1−5)全体酸量に対する外表面酸量の割合の低下方法
全体酸量に対する外表面酸量の割合を低下させる方法は特に限定されないが、それ自体既知の通常用いられる方法、例えば、ゼオライトをゼオライト細孔内に入らない大きさを有し、且つ表面酸点と反応する物質で処理する方法、具体的には、シリル化剤等の化合物で処理する方法(シリル化)、エチレンジアミン等のアミン類で処理する方法等が挙げられる。またゼオライト合成の際にゲル組成等を制御することにより、ゼオライト結晶内部に酸量が多く、かつゼオライト結晶外部に酸量の少ないゼオライトとなるように合成する方法等も挙げられる。以下にシリル化を一例に処理方法を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に何ら限定されるものではない。
【0041】
(シリル化)
ゼオライト外表面のシリル化を行うことにより、全酸量に対する外表面酸点の割合を低下させることができる。シリル化の方法は特に限定されるものではなく、それ自体既知の方法を用いればよいが、アルコキシシランを用いた液相シリル化、またはクロロシランを用いた気相シリル化が用いられる。
【0042】
シリル化剤として具体的にはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等の4級のアルコキシシラン、トリメトキシメチルシラン、トリエトキシメチルシラン等の3級のシラン、ジメトキジメチルシシラン、ジエトキシジメチルシラン等の2級アルコキシシラン、メトキシトリメチルシラン、エトキシトリメチルシラン等の1級のアルコキシシラン等が挙げられる。またテトラクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン等のクロロシランなどが使用できる。これらのうち好ましいのは、アルコキシシランではテトラエトキシシランであり、クロロシランではテトラクロロシランである。
【0043】
液相でシリル化する場合では、アルコキシシランを用いるのが好ましく、テトラエトキシシランを用いることがより好ましい。
液相シリル化法で使用する溶媒は特に限定されず、例えば、ベンゼン、トルエン、ヘキサメチルジシロキサン等の有機溶媒や水等が挙げられる。
【0044】
液相シリル化法において、処理溶液中のシリル化剤/ゼオライトの量比(mol/mol)は、通常5以下、好ましくは3以下であり、下限は、通常0.05以上、好ましくは0.1以上である。この値が高すぎると、過剰なシリル化によって、細孔が閉塞する傾向あり、低すぎるとシリル化が不十分で外表面酸量の低下ができない場合もある。
【0045】
シリル化の温度は、シリル化剤や溶媒の種類によるが、通常140℃以下、好ましくは120℃以下であり、下限は、通常20℃以上、好ましくは40℃以上である。処理温度が高すぎると、液の蒸発によって、シリル化が効率的に起こらない場合があり、温度が低すぎるとシリル化の反応速度が遅くなる傾向がある。
【0046】
シリル化の処理時間は、通常0.5時間以上、好ましくは2時間以上であり、処理時間の上限は特にない。処理時間が短すぎると十分なシリル化が起こらず、外表面酸量の低下が不十分となる場合もある。
具体的に液相でシリル化する方法として、テトラエトキシシランを用いて行う方法が好ましく、ゼオライトに、溶媒のヘキサメチルジシロキサン、シリル化剤のテトラエトキシシランを加えて100℃で撹拌下、6時間のリフラックス処理を行い、処理後、濾過によって固液を分離し、100℃で6時間乾燥することによりシリル化ゼオライトを得ることができる。
【0047】
気相シリル化法においては、蒸着したシリカの重量が、ゼオライトに対して、通常20重量%以下、好ましくは18重量%以下となるように行う。蒸着量の下限は、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上である。この値が高すぎると、過剰なシリル化によって、細孔が閉塞する傾向があり、低すぎるとシリル化が不十分で、外表面酸量の低下ができない場合もある。
【0048】
気相シリル化の温度は、通常20℃以上、好ましくは100℃以上であり、上限は、通常500℃以下、好ましくは400℃以下である。温度が高すぎると、シリル化剤の分解やゼオライトの骨格の崩壊が起こりやすくなる傾向があり、処理温度が低すぎるとシリル化反応が進行し難い場合がある。
【0049】
処理時間は、通常0.5時間以上、好ましくは3時間以上であり、処理時間の上限は特にない。処理時間が短すぎると十分なシリル化が起こらず、外表面酸量の低下が不十分となる場合もある。
具体的に気相でシリル化する方法として、クロロシランを用いる方法が好ましく、ゼオライトを、ヘリウム流通下、シリル化剤のクロロシランで300℃、3時間処理してシリル化ゼオライトを得ることができる。
【0050】
(1−6)ゼオライトの調製方法
上記したゼオライトは、それ自体既知の通常用いられる方法、例えば水熱合成法、すなわち、シリカ原料、ヘテロ元素源、およびアルカリ(土類)金属元素源を含む結晶前駆体の水性ゲルを調製し、これを加熱する方法等で合成することができる。また、水熱合成後に、上記のとおり、必要に応じて、酸量の低下処理、含浸や担持等の修飾により組成を変えることも可能である。
本発明で用いるゼオライトは、上記物性や組成を有しているものであれば良く、いずれの方法で調製されたものであってもよい。また市販のゼオライトを使用することも可能である。
【0051】
(2)p−キシレンの製造方法
本発明のp−キシレンの製造方法は、上記のゼオライトを含む触媒を用い、エチレンからp−キシレンを生成させることに特徴を有するものである。この製造方法において、p−キシレンは、それ自体既知の方法、すなわち、エチレンを含む原料を、適当な反応条件下、適当な反応器中で、上記触媒と接触させる方法により生成させることができる。
【0052】
(2−1)エチレンを含む原料
本発明において用いられる原料としては、エチレンを含むものであればよく、特に限定されるものではない。例えば、石油供給源から接触分解法または蒸気分解法等により製造されるもの、石炭のガス化により得られる水素/一酸化炭素混合ガスを原料としてフィッシャートロプシュ合成を行うことにより得られたもの、エタンの脱水素または酸化脱水素で得られたもの、プロピレンのメタセシス反応およびホモロゲーション反応により得られるもの、メタノール及び/又はジメチルエーテル等のオキシジェネート原料から固体酸触媒との接触反応によって得られるもの、対応するアルコール(エタノール)の脱水反応から得られるもの等、公知の各種方法により得られるものを任意に用いることができる。このとき各種製造方法に起因するエチレン以外を任意に混合した状態のものをそのまま使用してもよいし、精製したエチレンを用いてもよく、精製したエチレンを用いるのがよい。
【0053】
アルコールの脱水により得る場合、アルコールは植物由来のアルコール類の改質反応により得られるもの、発酵法により得られるもの、再循環プラスチックや都市廃棄物等の有機物質から得られるもの等が挙げられる。尚、ゼオライト内の酸点により、エタノールは容易に脱水されてエチレンに変換されるため、エタノールを直接反応器に導入する場合も本発明に包含する。
【0054】
また、本発明の方法によりp−キシレンを製造する際、反応器出口ガスに含まれるエチレンをリサイクルしてもよい。リサイクルする成分としては、通常エチレンだが、その他の芳香族炭化水素類を分離した後のオレフィン、パラフィンをリサイクルしてエチレン源としてもよい。
【0055】
(2−2)反応条件
(2−2−1)基質濃度
反応器に供給する全供給成分中のエチレンの濃度(即ち、基質濃度)に関して特に制限はないが、通常全供給成分中、1体積%以上、好ましくは5体積%以上であり、通常90体積%以下であり、好ましくは50体積%以下である。
基質濃度が前記下限未満では反応速度が遅くなるため、多量の触媒が必要となり、反応器が大きくなりすぎる傾向がある。また、基質濃度が前記上限超過では触媒への負荷が高くなりすぎ活性が得られにくくなる傾向がある。従って、このような基質濃度となるように、必要に応じて以下に記載する希釈剤でエチレンを希釈することが好ましい。
【0056】
反応器内に供給する成分としては、エチレンの他に、ヘリウム、アルゴン、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、水、メタン、パラフィン類やオレフィン類等の炭化水素類、および、それらの混合物など、反応に不活性な気体を任意に存在させることができる。
【0057】
(2−2−2)反応温度
本発明の方法における反応温度は特に限定されるものではないが、通常200℃以上、好ましくは300℃以上であり、通常700℃以下、好ましくは600℃以下である。反応温度が前記下限未満では、反応速度が低くなる傾向となり、さらに目的生成物の収率も低下する傾向がある。一方で反応温度が前記上限超過では、芳香族中のキシレン、更にはキシレン中のp−キシレン選択率が低下し、目的生成物の収率が低下する傾向があり、かつ触媒の安定性が低下する場合がある。
【0058】
(2−2−3)反応圧力
本発明の方法における反応圧力は特に限定されるものではないが、通常0.1kPa(絶対圧、以下同様)以上、好ましくは7kPa以上、より好ましくは50kPa以上であり、通常10MPa以下、好ましくは5MPa以下である。反応圧力が前記下限未満では、反応速度が遅くなる傾向があり、また、反応圧力が前記上限超過では炭素数9以上の高沸点芳香族炭化水素等の好ましくない副生成物の生成量が増え、目的生成物の収率が低下する傾向がある。
【0059】
(2−2−4)空間速度
空間速度は特に制限されるものではないが、通常0.01Hr−1から500Hr−1の間であり、0.1Hr−1から100Hr−1の範囲が好ましい。空間速度が高すぎると反応器出口ガス中のエチレンが多くなり、芳香族炭化水素収率が低くなる場合がある。また、空間速度が低すぎると、キシレン中のm−キシレンが増加し、目的とするp−キシレン収率が低下する場合がある。
【0060】
なおここで言う空間速度とは、触媒(触媒活性成分)の重量当たりの反応原料であるエチレンの流量(単位時間当たりの重量)であり、ここで触媒の重量とは触媒の造粒・成型に使用する不活性成分やバインダーを含まない触媒活性成分(ゼオライト)の重量である。
【0061】
(2−2−5)転化率
エチレン転化率は特に制限されず、通常20%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上であり、上限は特に限定されないが、通常80%以上であり、高ければ高いほどよい。
【0062】
本発明の製造方法における反応温度、WHSV(重量空間速度)等の反応条件としては、公知の方法に従い任意に設定可能であるが、反応系からの流出成分に未反応エチレンが多量に存在すると、エチレンの利用率を上げるために少なくとも一部を反応器にリサイクルして反応原料として再利用エチレンをリサイクルする必要性が生じ、そのための設備も必要となりコストがかかる。そのため、上記各種反応条件には原料エチレンを高い転化率で反応させる条件を採用するのが好ましい。
(2−2−6)選択率
本発明の製造方法で得られるC8芳香族成分中のp−キシレンの選択率は、高い方が好ましいが、通常30%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上である。
【0063】
(2−3)その他反応条件
(2−3−1)反応様式
本発明の製造方法における反応様式は、特に限定されるものではないが、供給原料が反応域において気相であることが好ましく、具体的には流動床反応装置、移動床反応装置又は固定床反応装置を用いた公知の気相反応プロセスを適用することができる。また、バッチ式、半連続式又は連続式のいずれの形態でも行われ得るが、連続式で行うのが好ましく、その方法は、単一の反応器を用いた方法でも良いし、直列又は並列に配置された複数の反応器を用いた方法でもよい。
【0064】
(2−3−2)触媒再生
本発明の方法を継続するに従って、触媒が反応器内でコーキングを起こし反応活性が低下することとなる。この場合には触媒を反応器から抜き出し、例えば酸素含有雰囲気中で蓄積したコークを酸化することにより、その全て又は一部を取り除き、触媒を再生することができる。このように再生された触媒は、再び反応器に導入されるが、こういった触媒の抜き出し及び再導入という観点からは、固定床より移動床型反応器又は流動床型反応器を用いたプロセスの方が操作は簡便であり好ましい。
【0065】
(2−3−3)反応生成物
反応器出口ガス(反応器流出物)としては、反応生成物であるp−キシレン、未反応エチレン、副生成物および希釈剤を含む混合ガスが得られる。該混合ガス中のp−キシレンの濃度は、通常1重量%以上、好ましくは2重量%以上であり、上限は、通常95重量%以下、好ましくは80重量%以下である。
上記反応器出口ガス(反応器流出物)から目的とする芳香族化合物を単離する場合には、公知の分離・精製設備に導入され、それぞれの成分に応じ、回収、精製、リサイクル、排出の処理を受ければよい。
【実施例】
【0066】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0067】
酸量の測定は、各々下記の条件に基づき日本ベル社製TP5500を用いて行った。
(外表面酸量の測定方法)
1.(試料の前処理)
試料を、500℃において60分間、真空脱気し、10Paで処理する。
2.(4-メチルキノリンの吸着)
200℃、10Paの条件で4-メチルキノリンを4回に分けて導入し、飽和蒸気圧にて15分間ずつ吸着させる。
3.(物理吸着除去)
酸点以外へ物理吸着した4-メチルキノリンを除去するため、200℃にて60分間真空脱気を実施する。この時、系の圧力は0.8Pa以下である。
4.(昇温脱離)
約0.013MPaのヘリウムを50mL/分で流通させながら、30℃から900℃まで10℃/分で昇温し、脱離した4−メチルキノリンのマススペクトル(m/z=78)を測定する。
5.(解析および酸量の導出)
前記測定によって得られるマス強度のチャートの面積から触媒重量あたりの外表面酸量(mmol/g)を決定する。
【0068】
スペクトルにおいてピークが1つの場合には全面積を外表面酸量の計算に用いるが、ピークが2つ以上の場合には最も高温側のピークの面積だけを使用して酸量を計算する。(低温側のピークは上記物理吸着除去工程においても除去できなかった物理吸着が含まれるためである。)最も高温側のピークの面積は、Davidson-Fletcher-Powell法(DFP法)を用いてスペクトルをガウス分布をもつ波形に分離することにより求められる。ピーク面積を酸量に換算する係数は、一定量のピリジンを同装置にパルス導入した際に測定されるマス強度(m/z=78)によって検量した値を用いる。
【0069】
(全体酸量の測定方法)
1.(試料の前処理)
試料を、500℃において60分間、真空脱気し、10Paで処理する。
2.(ピリジンの吸着)
200℃、10Paの条件でピリジンを4回に分けて導入し、飽和蒸気圧下、15分間ずつ吸着させる。
3.(物理吸着除去)
酸点以外へ物理吸着したピリジンを除去するため、200℃にて30分間ヘリウムを50mL/分で流通させる。
4.(昇温脱離)
約0.013MPaのヘリウムを50mL/分で流通させながら、30℃から800℃まで10℃/分で昇温し、脱離したピリジンのマススペクトル(m/z=79)を測定する。
5.(解析および酸量の導出)
測定によって得られるマス強度のチャートの面積から触媒重量あたりの全体の酸量(mmol/g)を決定する。
【0070】
スペクトルにおいて200℃以下のピークを除いた高温側のピークの面積だけを使用して酸量を計算する。(200℃以下のピークは上記物理吸着除去工程においても除去できなかった物理吸着が含まれるため。)200℃以下のピークを除いたピーク面積は、Davidson-Fletcher-Powell法(DFP法)を用いてスペクトルをガウス分布をもつ波形に分離することにより求められる。ピーク面積を酸量に換算する係数は、一定量のピリジンを同装置にパルス導入した際に測定されるマス強度(m/z=78)によって検量した値を用いる。
なお、以下の実施例及び比較例において、各炭化水素の転化率や選択率は、測定値から、次の式により算出した値である。なお、下記の各式において、各炭化水素の「由来カーボンモル流量(mol/Hr)」とは、各炭化水素を構成する炭素原子のモル流量を意味する。
【0071】
エチレン転化率(%)=〔[反応器入り口エチレン流量(mol/Hr)−反応器出口エチレン流量(mol/Hr)]/反応器入り口エチレン流量(mol/Hr)〕×100
芳香族合計選択率(%)=〔反応器出口芳香族由来カーボンモル流量(mol/Hr)/[反応器出口総カーボンモル流量(mol/Hr)−反応器出口エチレン由来カーボンモル流量(mol/Hr)]〕×100
C8芳香族合計選択率(%)=〔反応器出口C8芳香族由来カーボンモル流量(mol/Hr)/[反応器出口総カーボンモル流量(mol/Hr)−反応器出口エチレン由来カーボンモル流量(mol/Hr)]〕×100
エチルベンゼン選択率(%)=〔反応器出口エチルベンゼン由来カーボンモル流量(mol/Hr)/反応器出口C8芳香族由来カーボンモル流量(mol/Hr)〕×100
p−キシレン選択率(%)=〔反応器出口p−キシレン由来カーボンモル流量(mol/Hr)/反応器出口C8芳香族由来カーボンモル流量(mol/Hr)〕×100
m−キシレン選択率(%)=〔反応器出口m−キシレン由来カーボンモル流量(mol/Hr)/反応器出口C8芳香族由来カーボンモル流量(mol/Hr)〕×100
o-キシレン選択率(%)=〔反応器出口o−キシレン由来カーボンモル流量(mol/Hr)/反応器出口C8芳香族由来カーボンモル流量(mol/Hr)〕×100
【0072】
<触媒調製>
<調製例1>
水ガラス3号((株)キシダ化学製)103gに、蒸留水106mlにテトラプロピルアンモニウムブロミド12.8gを溶解したA液を攪拌しながら加え、続いて蒸留水100mlに硝酸アルミニウム7.65g、硝酸ガリウム8.00g、濃硫酸7.1gを溶かしたB液も同様に攪拌しながら加えた。2時間攪拌の後、オートクレーブに移し、2時間で180℃まで昇温し、引き続き180℃で40時間保持した。放冷した後、固形物を取り出し、ろ過、水洗した。乾燥により得られた結晶性ゼオライトを空気流通下、550℃で焼成した。陽イオンをNH4で置換するため、1M硝酸アンモニウム水溶液に浸し、80℃で1時間加熱攪拌し、冷却後、ろ過、洗浄した。このイオン交換を2回繰り返すことでNH4型ゼオライトに変換した。さらに、空気気流下、500℃で焼成することでプロトン型とした。得られたゼオライトはXRD(X-ray diffraction 、X線回折)法による分析及びICP−AES(Inductively Coupled Plasma-Atomic Emission Spectrometry,誘導結合プラズマ発光分光分析)法による元素分析により、MFI構造(細孔直径は、0.55nmと0.56nm)を有するアルミノガロシリケート(SiO/Al=50(モル比)、SiO/Ga=52(モル比))であることを確認した。
【0073】
<調製例2>
MFI構造を有するプロトン型のアルミノガロシリケート(SiO/Al=50(モル比)、SiO/Ga=52(モル比))に対してテトラエトキシシランでシリル化を行った。アルミノガロシリケート0.42gに対して、溶媒のヘキサメチルジシロキサン4.2ml、シリル化剤のテトラエトキシシラン1.05mlを加えて100℃で撹拌下、6時間のリフラックス処理を行った。処理後、濾過によって固液を分離し、得られたアルミノガロシリケートを100℃で6時間乾燥した。
【0074】
<酸量測定>
調製例1,2のアルミノガロシリケートについて、外表面酸量、全酸量をそれぞれ、4-メチルキノリン−TPD(temperature-programmed desorption、昇温脱離)法、ピリジン−TPD法により測定した。測定は前記記載の方法に従い行なった。
このように導出された(外表面酸量)/(全酸量)の値を表1に示した。
【0075】
(実施例1)
反応は、常圧固定床流通反応装置を用い、内径6mmの石英製反応管に、調製例2の触媒100mgと石英砂400mgの混合物を充填した。エチレン13%、窒素87%の混合ガスをエチレンの空間速度が2.0Hr−1となるように反応器に供給し、425℃、0MPaG(ゲージ圧)で反応を行った。反応開始後0.25時間後にガスクロマトグラフィーで生成物の分析を行った。結果を表1に示した。
【0076】
(比較例)
調製例1の触媒を用いたこと以外は、実施例1と同様に反応を行った。得られた結果を表1に示した。
以上のように、全酸量に対する外表面酸量を1%以下にすることで、p-キシレンを高い選択率で合成することができた。
【0077】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の製造方法により、テレフタル酸製造の原料としてキシレン異性体の中で最も重要なp−キシレンを、エチレンを含む原料から高い選択率で製造することができる。またC8芳香族化合物内でのp−キシレン選択率の高い製造方法により、精製分離工程の効率を向上させることができる点で有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンを主成分とする原料を反応器中で触媒と接触させ、p−キシレンを製造する方法において、前記触媒の活性成分がゼオライトであり、かつ前記ゼオライトの外表面の酸量が、前記ゼオライト全体の酸量に対し、1%以下であることを特徴とするp−キシレンの製造方法。
【請求項2】
ゼオライトが、周期表第IIIb族に属する元素よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する結晶性シリケート類である請求項1に記載のp−キシレンの製造方法。
【請求項3】
周期表第IIIb族に属する元素がAl及び/またはGaである請求項2に記載のp−キシレンの製造方法。
【請求項4】
ゼオライトの細孔直径が、0.5nm以上、0.75nm以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載のp−キシレンの製造方法。
【請求項5】
ゼオライトが、酸素の10員環チャンネル構造を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載のp−キシレンの製造方法。
【請求項6】
ゼオライトの構造が、MFI構造である請求項1〜5のいずれか1項に記載のp−キシレンの製造方法。
【請求項7】
ゼオライトが元素としてAlを含有し、かつSiO/Alモル比が5以上、1000以下である請求項1〜6のいずれか1項に記載のp−キシレンの製造方法。
【請求項8】
ゼオライトが元素としてGaを含有し、かつSiO/Gaモル比が5以上、1000以下である請求項1〜6のいずれか1項に記載のp−キシレンの製造方法。
【請求項9】
ゼオライトが、ゼオライトの外表面をシリル化したものである請求項1〜8のいずれか1項に記載のp−キシレンの製造方法。

【公開番号】特開2011−79815(P2011−79815A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201542(P2010−201542)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】