説明

pH感受性グラフトコポリマー

疎水性主鎖および酸性モノマーを含むグラフト鎖を含む、pH依存性膨潤/溶解特性を示すグラフトコポリマー(P)。本グラフトコポリマー(P)は、胃において一般的である酸性pHにて膨潤または溶解せず、これらは腸領域で一般的である中性付近にて膨潤/溶解する。グラフトコポリマー(P)は、薬物送達製剤の開発に、特に経口薬物送達製剤に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、pH依存性挙動を示す、式1
【化1】

のグラフトコポリマー(P)に関するものである。
【0002】
本発明はさらに、胃腸管に沿ったpHの変化に応答するように設計された、式1のグラフトコポリマー(P)に関するものである。
【背景技術】
【0003】
経口薬送達系のためのpH感受性ポリマーが幅広く研究されている。これらのポリマーは、胃腸管のpHの変動に応答して、溶解状態から折畳み状態へのおよび折畳み状態から溶解状態への可逆的変換を受けることができる。現在市場で入手できるpH感受性ポリマーは、オイドラギットL、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートおよびポリビニルアセテートフタレートである。これらのポリマーは酸性pH条件下では溶解性ではなく、中性およびアルカリ性媒体中で急速に溶解する。これらのポリマーは、胃における酸性pH条件で薬物を保護しなければならない投薬形のための腸溶コーティングとして使用される。中性pH付近でのポリマーの急速溶解は、腸における薬物の持続放出でのその有用性を制限する。
【0004】
薬物送達用途のための新たなpH感受性ポリマーを開発する多くの試みがなされてきた。手法の1つは、pH感受性挙動を導入するための天然および合成ポリマーの機能性修飾である。Wu et al.がpH感受性ポリマーを取得するためにセルロース修飾を開示した、特許出願米国特許第5,811,121号が参照され得る。セルロースのアセトアセチル化は、置換度に応じて一連のセルロースアセトアセテートエステルを生じた。これらのポリマーは、酸性条件にて不溶性であるが、7.5よりも高いpHにてただちに溶解するものとされている。正確な溶解pHは、置換度に依存する。
【0005】
カルボキシル基のエタノールによる部分エステル化によるポリ(スチレン−alt−マレイン酸無水物)コポリマーの修飾が記載されている、雑誌「Xiaolin Lai,Chengdong Sun,Hua Tian,Wenjun Zhao and Lin Gao,International Journal of Pharmaceutics,352,66−73,2008」が参照され得る。修飾されたポリマーは6.0よりも低いpHでは溶解しないが、6.4よりも高いpHではただちに溶解する。エリスロマイシン錠剤にポリマーをコーティングすることによって、酸性pH条件での薬物放出が抑制され、中性付近のpH条件で急速に放出された。
【0006】
Eichel et al.が腸溶ポリマーの酢酸フタル酸セルロースを塩化ステアリルで修飾して中性付近のpHでのその溶解を制御した、特許出願米国特許第 4,983,401が参照され得る。修飾腸溶ポリマーは、胃で見出されるpHでは疎水性のままであり、腸のpH条件では親水性になるが不溶性のままである。フタル酸基を含むポリマー、たとえば酢酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび酢酸フタル酸ポリビニルに関連する問題は、その貯蔵安定性である。貯蔵時にフタル酸基は加水分解を受けて、フタル酸残留物を残す。これによりpHに対するポリマーの予測できない溶解挙動が引き起こされる。
【0007】
ハイドロゲルは、薬物送達系の開発のために最も頻繁に調査された系である。薬物の持続放出のためのpH感受性ハイドロゲルについて記載されている、雑誌「Hasan Basan,Menemse Guemuesderelioglu and Tevfik Orbey,International Journal of Pharmaceutics,245,191−198,2002」が参照され得る。薬物のジクロフェナクナトリウムの存在下でのアクリル酸、2−ヒドロキシエチルメタクリレートおよびエチレングリコールジメタクリレートの共重合によって、pH感受性薬物送達デバイスが提供された。しかし架橋の存在により、これらの材料は薬物のコーティングには不適切になる。
【0008】
カチオン性グアーガムおよびポリアクリル酸をベースとする高分子電解質ハイドロゲル組成物について記載された、雑誌「Yihong Huang,Huiqun Yu and Chaobo Xiao,Carbohydrate Polymers,69,774−783,2007」が参照され得る。カチオン性グアーガム、アクリル酸モノマー、薬物および光開始剤の水溶液をUV照射に曝露させた。薬物放出は、酸性および中性媒体の両方で実質的であった。
【0009】
グルタルアルデヒドによって架橋された、ポリビニルアルコールおよびポリアクリル酸の相互貫入網目を使用するマイクロスフィアの形で調製されたpH感受性ポリマー組成物について記載されている、雑誌「Mahaveer D.Kurkuri and Tejraj M.Aminabhavi,Journal of Controlled Release,96,9−20,2004」が参照され得る。薬物はマイクロスフィアの調製中に包含される。マイクロスフィアは、中性付近のpH条件よりも低い酸性pH条件で膨潤した。ハイドロゲルは、薬物の存在下で調製され得る。しかしモノマー混合物内の薬物の溶解度、薬物安定性、重合中の薬物と反応性モノマーとの間で考えられる反応および薬物担持ハイドロゲルからの未反応モノマーの除去によって、当業界でのこれらの材料の有用性が制限された。
【0010】
Shin et al.によって記載されたように、精製ハイドロゲルを薬物溶液に浸漬することによっても薬物を担持させることができる、雑誌「Heung Soo Shin,So Yeon Kim and Young Moo Lee,J Appl Polym Sci 65,685−693,1997」が参照され得る。pHおよび温度感受性相互貫入網目ハイドロゲルは、ポリビニルアルコールの存在下でのアクリル酸およびメチレンビスアクリルアミドの共重合によって得られる。薬物担持は、薬物溶液中でハイドロゲルに吸収させることで達成された。ハイドロゲルはpH7.0にて、25時間の期間にわたって、薬物1.5〜2.0mgを放出することができた。
【0011】
ジメタクリル酸テトラ(エチレングリコール)を架橋剤として使用した、メタクリル酸とモノメタクリル酸ポリ(エチレングリコール)との共重合によって得たpH感受性架橋粒子を浸漬することによる薬物担持 雑誌「Oya Sipahigil,Ayla Gursoy,Fulya Cakalagaoglu and Imer Okar,International Journal of Pharmaceutics,311,130−138,2006」が参照され得る。薬物担持粒子は、pH1.2にて薬物放出を抑制し、5.8〜7.4のpH範囲で10時間まで薬物を放出することができた。しかし薬物担持は、わずか約0.54〜2.09%であり、溶液の薬物濃度を上昇させることによって上昇させることができなかった。必要な賦形剤の量が非常に多くなり、規制要件を満足し得ないため、このように低い薬物担持は医薬投薬形では明らかに許容されない。
【0012】
上の開示から、吸収法による薬物担持は、達成可能な薬物担持が要求される薬物含有量よりはるかに少ないため、有効ではないことが明らかである。担持を向上させるために薬物溶解ならびにハイドロゲル膨潤が達成されねばならないため、薬物担持用媒体の選択は制限される。最も重要なことには、ハイドロゲルは溶媒に不溶性であり、ハイドロゲルは多様な投薬形を得るためのプロセス技法の多くに好適でない。膨潤したハイドロゲルの乾燥によって、多大なエネルギーが必要となり、生産速度が制限され、薬物安定性に悪影響が及ぶ。
【0013】
機能性モノマーとしてのN−イソプロピルアクリルアミドおよびメタクリル酸と架橋剤としてのジメタクリル酸テトラエチレングリコールを共重合した、雑誌「Ricardo G.Sousa,Alberto Prior−Cabanillas,Isabel Quijada−Garrido and Jose M.Barrales−Rienda,Journal of Controlled Release,102,595−606,2005」が参照され得る。薬物は、薬物溶液中にハイドロゲルを浸漬することによって担持された。ポリマー中に存在するカルボキシル基と薬物のカチオン性基との間の相互作用により、担持が17%まで向上した。そのため薬物担持の向上は、薬物の塩基性に依存する。系は、架橋ポリマーのすべての制限も被る。
【0014】
薬物−高分子電解質複合体について記載されている、雑誌「Jose M.Comejo−Bravo,Maria E.Flores−Guillen,Eder Lugo−Medina and Angel Licea−Claverie,International Journal of Pharmaceutics,305,52−60,2005」が参照され得る。複合体は、メタクリル酸ポリカルボキシアルキルおよびカチオン性薬物を含むイオン性複合体である。約75%の薬物担持が水性沈殿法によって達成された。薬物放出は、酸性pH条件で抑制され、pH7.4にて維持された。上で記述したように、このような組成物の有用性は、特異的な薬物−ポリマー系に制限される。
【0015】
局所薬物送達用途のための生体接着性グラフトコポリマー組成物が開示され、疎水性マクロモノマーの調製およびグラフトポリマーを生じるための該マクロモノマーとアクリル酸の共重合を含む、特許出願米国特許第5770627号が参照され得る。中性およびアルカリ性条件でのポリマーの溶解は組成物に依存する。しかし酸性pH条件でのポリマーの膨潤または溶解挙動は開示されなかった。製剤は、ポリマーをリン酸緩衝生理食塩水に溶解させることと、カチオン性薬物溶液と混合して薬物−高分子電解質複合体を生じることとによって開発された。
【0016】
上の記載から、薬物担持は、高分子電解質と薬物との複合体化によって向上できることが明らかである。しかし本手法は、ポリマーおよび薬物が反対の電荷を含有する系に制限される。本質的に非イオン性であり、ポリマーと複合体を形成できない薬物が多数ある。
【0017】
薬物送達系開発のためのpH感受性グラフトコポリマーの利用について記載している報告がいくつかある。1つのこのようなポリマー組成物であるアクリルアミドグラフトグアーガムについて記載された、雑誌「Udaya S.Toti and Tejraj M.Aminabhavi,Journal of Controlled Release,95,567−577,2004」が参照され得る。ポリアクリルアミドグラフト鎖の加水分解は、ポリアクリル酸グラフト鎖をもたらす。アクリルアミドがグラフトされたグアーガムは、8時間にわたって薬物の塩酸ジルチアゼムを放出するが、アクリル酸がグラフトされたグアーガムは薬物を12時間まで放出する。薬物およびポリマーのみを含む製剤は、0.1N HCL溶液中で27%までの薬物放出を示し、薬物の残りはpH7.4リン酸緩衝溶液中で放出された。グラフトコポリマーは、pH依存性薬物放出を示さなかった。
【0018】
pH感受性グラフトコポリマー組成物について記載された、雑誌「Meifang Huang,Xin Jin,Yu Li and Yue’e Fang,Reactive & Functional Polymers,66,1041−1046,2006」が参照され得る。ポリマーは、各種のレベルアクリル酸を含むグラフトコポリマーを得るために、マレオイルキトサンにアクリル酸モノマーをグラフトすることによって調製された。これらのポリマーは4.0よりも低いpHならびにより高いpH10にて膨潤するが、6〜8のpH範囲では脱膨潤する。
【0019】
薬物のpH依存性透過率を示したポリマー組成物について記載された、雑誌「Young Moo Lee,Sung Yoon Ihm,Jin Kie Shim,Jin Hong Kim,Chong Soo Cho and Yong Kiel Sung,Polymer,36,81−85,1995」が参照され得る。ポリアミド膜の表面は、プラズマ重合および紫外線照射技法を使用して、アクリル酸およびメタクリル酸などの機能性モノマーで修飾された。膜の透過は、各種のpHで薬物リボフラビンを使用して研究した。リボフラビンの透過は、アクリル酸グラフト膜ではpH4〜5から、およびメタクリル酸膜ではpH6〜7からそれぞれ低下する。pH範囲4〜5および6〜7のこの低い透過率によって、胃腸管のpHが1.8〜7.4で変化する(various)、経口薬物送達での本ポリマーの利用が制限される。
【0020】
ポリエステルのフマル酸不飽和へのアクリル酸のグラフト化によって得られたアクリル酸グラフトポリエステル水分散性コーティング組成物について記載されている、雑誌「Toshiyuki Shimizu,Shinya Higashiura and Masakatsu Ohguchi,Journal of Applied Polymer Science,72,1817−1825,1999」が参照され得る。グラフト化後の不飽和の変換は約50%であった。アクリル酸モノマーのフマル酸不飽和に対する反応性は低かったため、エチルアクリレートがコモノマーとして使用された。不飽和の完全変換が達成された。しかし、アクリル酸が部分的にエチルアクリレートによって置き換えられていたため、アクリル酸の達成可能な包含は制限されていた。未反応不飽和基も、これらの材料を溶媒に不溶性にする処理の間に架橋をもたらすことが可能であり、よって薬物をコーティングするための溶媒に溶解させることができない。
【0021】
親水性モノマーの包含を増加させるために、別の手法について記載されている、雑誌「Toshiyuki Shimizu,Shinya Higashiura and Masakatsu Ohguchi,Journal of Applied Polymer Science,74,1395−1403,1999」が参照され得る。スチレンおよびマレイン酸無水物モノマーを不飽和ポリエステルと共重合させた。この手法は親水性モノマーの包含を向上させることができるが、グラフト化反応後にポリエステル中に存在する不飽和の変換はわずか60%までであった。遊離不飽和を有するポリマーが処理のいずれかの段階で重合を受けやすく、このことが架橋を生じることが公知である。またこれらのポリマーのpH依存性溶解および薬物送達系の開発でのその有用性は、報告されていない。
【0022】
上の開示からオイドラギットLなどのpH感受性ランダムコポリマーは、中性付近pHで急速な溶解を受けるが、酸性pH条件下ではその完全性を保持することが明らかである。上の説明に記載したグラフトコポリマーは、胃腸管に沿ったpHの変動に応答した遅延溶解を受けない。ゆえに、胃腸管のpHの変化に応答して膨潤/溶解する溶媒溶解性pH感受性ポリマーに対する要求がある。本発明は、このようなポリマー組成物について記載する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明の主な目的は、pH依存性挙動を示すグラフトコポリマー(P)を提供することである。
【0024】
本発明の別の目的は、胃腸管に沿ったpHの変化に応答するように設計された、式1のグラフトコポリマー(P)を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
したがって本発明は、pH依存性挙動を示す、式1
【化2】

のグラフトコポリマー(P)であって、
(i)式P[A(x)(y)(z)](ジオール(A)、ジカルボン酸または酸無水物(B)およびペンダント不飽和基を含有するモノマー(C)を含み、(x)=37〜46モル%、(y)=49〜55モル%、(z)=5〜8モル%である)を有する主鎖と;
(ii)酸性モノマーのポリマー(D)であるグラフト(「w」は、「w」が22〜56%であるような、前記グラフトコポリマーの総重量の重量パーセントである)とを含む、
式1のグラフトコポリマー(P)を提供する。
【0026】
本発明の実施形態において、主鎖はポリ(エステル−エーテル)またはポリエステルである。
【0027】
本発明の別の実施形態において、ジオールは、脂肪族ジオール、脂環式ジオールおよび芳香族ジオールから成る群より選択される。
【0028】
本発明のまた別の実施形態において、脂肪族ジオールは、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール(M〜200)、ポリエチレングリコール(M〜400)、ポリエチレングリコール(M〜1000)、ポリエチレングリコール(M〜2000)、1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオールおよび1,12−ドデカンジオールから成る群より選択される。
【0029】
本発明のまた別の実施形態において、脂環式ジオールは1,4−シクロヘキサンジメタノールである。
【0030】
本発明のまた別の実施形態において、芳香族ジオールは、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートである。
【0031】
本発明のなお別の実施形態において、ジカルボン酸は、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸およびドデカン2酸から成る群より選択される。
【0032】
本発明のまた別の実施形態において、酸無水物は、コハク酸無水物およびフタル酸無水物から選択される。
【0033】
本発明のなお別の実施形態において、ペンダント不飽和基を含有するモノマーは、エポキシモノマーまたはジオールモノマーである。
【0034】
本発明のまた別の実施形態において、エポキシモノマーは、グリシジルメタクリレートおよびグリシジルアクリレートから選択される。
【0035】
本発明のなお別の実施形態において、ジオールモノマーは、トリメチロールプロパンモノメタクリレートおよびトリメチロールプロパンモノアクリレートから選択される。
【0036】
本発明のまた別の実施形態において、酸性モノマーは、アクリル酸およびメタクリル酸から選択されるカルボン酸である。
【0037】
本発明のまた別の実施形態において、グラフトコポリマーを調製する方法は、
(i)モノマー(C)、チタン(IV)ブトキシドおよびヒドロキノンを2口丸底フラスコ内で10〜15分間撹拌するステップと;
(ii)不飽和ポリエステルまたは不飽和ポリ(エステル−エーテル)を得るために、ジオール(A)、ジカルボン酸または酸無水物(B)を添加して、温度を45分間にわたって160〜170℃に上昇させ、5〜7時間の終りに170mmHgの真空を印加して、反応を3〜5時間継続するステップと;
(iii)ステップ(ii)で得た不飽和ポリエステルまたは不飽和ポリ(エステル−エーテル)をクロロホルムに溶解させて、冷メタノール中で沈殿させるステップと;
(iv)不飽和ポリエステルまたは不飽和ポリ(エステル−エーテル)を得るために、濾過して、メタノールで洗浄し、20〜25時間乾燥するステップと;
(v)ステップ(iv)で得たままの不飽和ポリエステルまたは不飽和ポリ(エステル−エーテル)、酸性モノマーおよびアゾビスイソブチロニトリルをジメチルホルムアミドに溶解させ、続いて窒素でパージして、60〜70℃にて18〜22時間重合させるステップと;
(Vi)グラフトコポリマーを得るために、濃縮、沈殿および乾燥するステップと;
を含む。
【0038】
本発明のまた別の実施形態において、グラフトコポリマーは、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフランから選択される有機溶媒ならびにクロロホルム−メタノール、クロロホルム−エタノール、1,2−ジクロロメタン−メタノールおよび1,2−ジクロロメタン−エタノールから選択される有機溶媒の混合物に可溶である。
【0039】
本発明のまた別の実施形態において、pH感受性グラフトコポリマーは、4.7よりも高いpHにて膨潤または溶解する。
【0040】
本発明のまた別の実施形態において、pH感受性グラフトコポリマーは、4.7よりも高いpHにて膨潤および溶解する。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明は、式1
【化3】

を有する、pH感受性グラフトコポリマーであって;
(i)式P[A(x)(y)(z)]((A)ジオール、(B)ジカルボン酸または酸無水物および(C)ペンダント不飽和基(pendent unsaturation)を含有するモノマーを含み、(x)=37〜46モル%、(y)=49〜55モル%、(z)=5〜8モル%)を有する主鎖と;
(ii)「w」が22〜56%であるような前記pH感受性グラフトコポリマーの総重量の「w」重量パーセントを含む、酸性モノマーのポリマー(D)であるグラフト;
を含む、式1のpH感受性グラフトコポリマーを提供する。
【0042】
主鎖はポリエステルまたはポリ(エステル−エーテル)である。
【0043】
ジオール(A)は、脂肪族ジオール、脂環式ジオールおよび芳香族ジオールを含む群から選択される。脂肪族ジオールは、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール(M〜200)、ポリエチレングリコール(M〜400)、ポリエチレングリコール(M〜1000)、ポリエチレングリコール(M〜2000)、1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール,1,3−ブタンジオール,1,2−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオールおよび1,12−ドデカンジオールから選択される。脂環式ジオールは、1,4−シクロヘキサンジメタノールである。芳香族ジオールは、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートである。
【0044】
ジカルボン酸または酸無水物(B)は、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン2酸、コハク酸無水物およびフタル酸無水物から選択される。
【0045】
ペンダント不飽和基を含有するモノマー(C)は、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレートおよびトリメチロールプロパンモノアクリレートから選択される。
【0046】
酸性モノマー(D)は、アクリル酸およびメタクリル酸から選択される。
【0047】
pH感受性グラフトコポリマーの開発は:(a)不飽和ポリエステルまたは不飽和ポリ(エステル−エーテル)、すなわち主鎖の合成のステップおよび(b)酸性モノマーとのそのグラフト共重合のステップを含む。主鎖は、ジオール(A)、ジカルボン酸または酸無水物(B)およびペンダント不飽和基を有するモノマー(C)の溶融重縮合によって調製され、式P[A(x)(y)(z)]を有する不飽和ポリエステルまたは不飽和ポリ(エステル−エーテル)の形の主鎖を生じる。反応は、チタン(IV)ブトキシドおよびヒドロキノンの存在下で行われる。
【0048】
主鎖は、フリーラジカル共重合によって各種の重量比を使用して、酸性モノマーによってグラフトされる。反応は、アゾビスイソブチロニトリルの存在下にて有機溶媒中で行われる。得られたグラフトコポリマーは、そのすべてがグラフト化反応の間に利用されるので、遊離不飽和基を含有しない。合成されたグラフトコポリマーは、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフランなどの有機溶媒ならびにクロロホルム−メタノール、クロロホルム−エタノール、1,2−ジクロロメタン−メタノールおよび1,2−ジクロロメタン−エタノールなどの有機溶媒の混合物に可溶である。
【0049】
本発明の一態様において、式1のpH感受性グラフトコポリマーは:
i.モノマー(C)、チタン(IV)ブトキシドおよびヒドロキノンを2口丸底フラスコ内で15分間撹拌するステップと;
ii.不飽和ポリエステルまたは不飽和ポリ(エステル−エーテル)を得るために、ジオール(A)、ジカルボン酸または酸無水物(B)を添加して、温度を45分間にわたって170℃に上昇させ、6時間の終りに170mmHgの真空を印加して、反応を4時間継続するステップと;
iii.ステップ(ii)で得たままの不飽和ポリエステルまたは不飽和ポリ(エステル−エーテル)をクロロホルムに溶解させ、冷メタノール中で沈殿させるステップと;
iv.不飽和ポリエステルまたは不飽和ポリ(エステル−エーテル)を得るために、濾過して、メタノールで洗浄し、24時間乾燥させるステップと;
v.ステップ(iv)で得たままの不飽和ポリエステルまたは不飽和ポリ(エステル−エーテル)酸性モノマーおよびアゾビスイソブチロニトリルをジメチルホルムアミドに溶解させ、続いて窒素でパージして、65℃にて20時間重合させるステップと;
vi.グラフトコポリマーを得るために、濃縮、沈殿および乾燥するステップと;
を含む方法によって調製される。
【0050】
膨潤度は、フィルム形の試料を使用して決定した。ポリマーフィルムは、溶液キャスト法によって調製した。フィルムの厚さおよび直径はそれぞれ200μmおよび2cmであった。ポリマーフィルムの膨潤度は、フィルムを最初の2時間は0.1N HClに、続いてpH6.8リン酸緩衝溶液に入れることによって決定した。一定間隔でフィルムを取り出し、ティッシュペーパーでふき取って表面の過剰な水を除去して、秤量した。フィルムの膨潤度(DS)は、等式
DS=[(W−W)]/Wd]×100
を使用して計算し、式中、WおよびWは、それぞれポリマーの膨潤重量および乾燥重量である。
【0051】
本発明のグラフトコポリマーを、本明細書に記載するようなそのpH依存性挙動について試験した。実施例1〜10に見られるように、グラフトコポリマーは時間に対して、膨潤から崩壊/溶解を示した。時間に対する膨潤度の低下は、ポリマーの溶解を示す。膨潤度が−100%に近づくとき、ポリマーは完全に溶解する。
【0052】
以下の実施例は、本発明をさらに例証するために提示されている。物質および方法の両方に対する多くの修飾が、本発明の目的および意図から逸脱することなく実施できることが、当業者に明らかになる。続く実施例は、本明細書で上に記載したまたは下で請求するような本発明の範囲を制限することを意図するものではない。
【0053】
実施例において、ジオール、酸無水物、2塩基酸、不飽和モノマーおよび酸性モノマーは、以下の省略形によって記載される。
【0054】
1,2 ED−1,2エタンジオール、1,4 BD−1,4 ブタンジオール、1,6 HD−1,6 ヘキサンジオール、1,12 DD−1,12 ドデカンジオール、DEG−ジエチレングリコール、TEG−トリエチレングリコール、PEG−ポリエチレングリコール(M〜400)、1,4 CD−1,4シクロヘキサンジメタノール、BHET−ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート、SA−コハク酸、SEB−セバシン酸(Sebasic acid)、AA−アジピン酸、DDA−ドデカン2酸、FA−フマル酸、IA−イタコン酸、PA−フタル酸無水物、AGE−アリルグリシジルエーテル、TMPAE−トリメチロールプロパンモノアリルエーテル、GMA−グリシジルメタクリレート、TMPA−トリメチロールプロパンモノアクリレート、TMPMA−トリメチロールプロパンモノメタクリレート、MAA−メタクリル酸およびAAc−アクリル酸。
【0055】
[比較実施例1]
本実施例は、下式
【化4】

のグラフトコポリマーの調製を開示する。これは、(a)不飽和ポリエステルP[1,4 BD−SA−FA]の調製および(b)前記不飽和ポリエステルでのMAAとのグラフト共重合を含む。
【0056】
A.不飽和ポリエステルの調製
チタン(IV)ブトキシドおよびヒドロキノンを使用して、不飽和ポリエステルを1,4 BD、SAおよびFAの溶融重縮合によって調製した。反応は、窒素含有袋および水冷凝縮器を装備した2口丸底フラスコ内で行った。フラスコに1,4 BD 10.900g(0.1209モル)、SA 11.712g(0.0991モル)、FA 2.527g(0.0217モル)、チタン(IV)ブトキシド0.025g(7.3481×10−05モル)およびヒドロキノン0.200g(1.8163×10−03モル)を投入した。フラスコの温度を45分間にわたって170℃まで上昇させた。反応の6時間後、170mmHgの真空を印加して、反応をさらに4時間続けた。得られたポリエステルをクロロホルムに溶解して、冷メタノール中で沈殿させた。沈殿を濾過して、沈殿をメタノールで2回洗浄し、次に24時間空気乾燥させた。不飽和ポリエステル中の1,4 BD、SAおよびFAのモル組成を、H NMRスペクトルのピーク積分値によって決定した。不飽和ポリエステルの重量平均分子量を、Styragelカラムおよび溶離溶媒としてのテトラヒドロフランを1ml/分の速度で使用して、ゲル透過クロマトグラフィーによって決定した。ポリスチレンを標準として使用した。不飽和ポリエステルのモル組成およびその重量平均分子量はそれぞれ、49:43:8(1,4 BD:SA:FA)および8486gmol−1であった。
【0057】
B.グラフトコポリマーの調製
グラフトコポリマーを溶液重合によって調製した。不飽和ポリエステルP[1,4 BD−SA−FA]、MAAおよび1%重量/重量のフリーラジカル開始剤アゾビスイソブチロニトリルをジメチルホルムアミドに溶解させた。窒素によってパージした後に、重合を65℃にて20分間行った。ポリマー溶液を回転蒸発器によって濃縮した。ポリマーを冷水中で沈殿させて、真空下で室温にて乾燥させた。供給中の不飽和ポリエステルのMAAに対する重量比を変動させることによって、4つの異なるレベルのMAAを包含するように前記グラフトコポリマーを調製した。グラフトコポリマーのMAA含有率は24、26、27および30重量%であった。グラフトコポリマーのH NMRスペクトルは、グラフト化反応の間に不飽和基が完全には利用されないことを示した。貯蔵時に遊離不飽和基が重合して、架橋ポリマー網目が生じた。架橋ポリマーは、普通の有機溶媒およびその混合物に溶解しなかった。
【0058】
[比較実施例2]
本実施例は、下式
【化5】

のグラフトコポリマーの調製を開示する。これは、(a)不飽和ポリエステルP[1,4 BD−SA−IA]の調製および(b)前記不飽和ポリエステルでのMAAとのグラフト共重合を含む。
【0059】
A.不飽和ポリエステルの調製
チタン(IV)ブトキシドおよびヒドロキノンを使用して、不飽和ポリエステルを1,4 BD、SAおよびIAの溶融重縮合によって調製した。反応は、窒素含有袋および水冷凝縮器を装備した2口丸底フラスコ内で行った。フラスコに1,4 BD 8.660g(0.0960モル)、SA 9.078g(0.0768モル)、IA 2.500g(0.0192モル)、チタン(IV)ブトキシド0.020g(5.8785×10−05モル)およびヒドロキノン0.100g(9.0818×l0−04モル)を投入した。フラスコの温度を45分間にわたって170℃まで上昇させた。反応の6時間後、170mmHgの真空を印加して、反応をさらに4時間続けた。得られたポリエステルをクロロホルムに溶解して、冷メタノール中で沈殿させた。沈殿を濾過して、沈殿をメタノールで2回洗浄し、次に24時間空気乾燥させた。不飽和ポリエステル中の1,4 BD、SAおよびIAのモル組成を、H NMRスペクトルのピーク積分値によって決定した。不飽和ポリエステルの重量平均分子量を、Styragelカラムおよび溶離溶媒としてのテトラヒドロフランを1ml/分の速度で使用して、ゲル透過クロマトグラフィーによって決定した。ポリスチレンを標準として使用した。不飽和ポリエステルのモル組成およびその重量平均分子量はそれぞれ、49:45:6(1,4 BD:SA:IA)および5500gmol−1であった。
【0060】
B.グラフトコポリマーの調製
グラフトコポリマーを溶液重合によって調製した。不飽和ポリエステルP[1,4 BD−SA−IA]、MAAおよび1%重量/重量のフリーラジカル開始剤アゾビスイソブチロニトリルをジメチルホルムアミドに溶解させた。窒素によってパージした後に、重合を65℃にて20分間行った。ポリマー溶液を回転蒸発器によって濃縮した。ポリマーを冷水中で沈殿させて、真空下で室温にて乾燥させた。供給中の不飽和ポリエステルのMAAに対する重量比を変動させることによって、4つの異なるレベルのMAAを包含するように前記グラフトコポリマーを調製した。グラフトコポリマーのMAA含有率は27、30、32および38重量%であった。グラフトコポリマーのH NMRスペクトルは、グラフト化反応の間に不飽和基が完全には利用されないことを示した。貯蔵時に遊離不飽和基が重合して、架橋ポリマー網目が生じた。架橋ポリマーは、普通の有機溶媒およびその混合物に溶解しなかった。
【0061】
[比較実施例3]
本実施例は、下式
【化6】

のグラフトコポリマーの調製を開示する。これは、(a)不飽和ポリエステルP[1,4 BD−SA−AGE]の調製および(b)前記不飽和ポリエステルでのMAAとのグラフト共重合を含む。
【0062】
A.不飽和ポリエステルの調製
チタン(IV)ブトキシドおよびヒドロキノンを使用して、不飽和ポリエステルを1,4 BD、SAおよびAGEの溶融重縮合によって調製した。反応は、窒素含有袋および水冷凝縮器を装備した2口丸底フラスコ内で行った。フラスコにAGE 3.199g(0.0280モル)、ヒドロキノン0.200g(1.8163×10−03モル)およびチタン(IV)ブトキシド0.025g(7.3481×10−05モル)を投入し、次に15分間撹拌した。これの1,4 BD 8.00g(0.0887モル)およびSA 13.793g(0.1168モル)を添加して、温度を45分間にわたって170℃まで上昇させた。反応の6時間後、170mmHgの真空を印加して、反応をさらに4時間続けた。得られたポリエステルをクロロホルムに溶解して、冷メタノール中で沈殿させた。沈殿を濾過して、沈殿をメタノールで2回洗浄し、次に24時間空気乾燥させた。不飽和ポリエステル中の1,4 BD、SAおよびAGEのモル組成を、H NMRスペクトルのピーク積分値によって決定した。不飽和ポリエステルの重量平均分子量を、Styragelカラムおよび溶離溶媒としてのテトラヒドロフランを1ml/分の速度で使用して、ゲル透過クロマトグラフィーによって決定した。ポリスチレンを標準として使用した。不飽和ポリエステルのモル組成およびその重量平均分子量はそれぞれ、40:51:9(1,4 BD:SA:AGE)および4100gmol−1であった。
【0063】
B.グラフトコポリマーの調製
グラフトコポリマーを溶液重合によって調製した。不飽和ポリエステルP[1,4 BD−SA−AGE]、MAAおよび1%重量/重量のフリーラジカル開始剤アゾビスイソブチロニトリルをジメチルホルムアミドに溶解させた。窒素によってパージした後に、重合を65℃にて20分間行った。ポリマー溶液を回転蒸発器によって濃縮した。ポリマーを冷水中で沈殿させて、真空下で室温にて乾燥させた。供給中の不飽和ポリエステルのMAAに対する重量比を変動させることによって、4つの異なるレベルのMAAを包含するように前記グラフトコポリマーを調製した。グラフトコポリマーのMAA含有率は13、13、14および15重量%であった。グラフトコポリマーのH NMRスペクトルは、グラフト化反応の間に不飽和基が完全には利用されないことを示した。貯蔵時に遊離不飽和基が重合して、架橋ポリマー網目が生じた。架橋ポリマーは、普通の有機溶媒およびその混合物に溶解しなかった。
【0064】
[比較実施例4]
本実施例は、下式
【化7】

のグラフトコポリマーの調製を開示する。これは、(a)不飽和ポリエステルP[1,4 BD−SA−TMPAE]の調製および(b)前記不飽和ポリエステルでのMAAとのグラフト共重合を含む。
【0065】
A.不飽和ポリエステルの調製
チタン(IV)ブトキシドおよびヒドロキノンを使用して、不飽和ポリエステルを1,4 BD、SAおよびTMPAEの溶融重縮合によって調製した。反応は、窒素含有袋および水冷凝縮器を装備した2口丸底フラスコ内で行った。フラスコにTMPAE 7.023g(0.0403モル)、ヒドロキノン0.400g(3.6327×10−3モル)およびチタン(IV)ブトキシド0.050g(1.4696×10−4モル)を投入して、次に15分間撹拌した。これに1,4 BD 16.550g(0.1836モル)およびSA 26.446g(0.2239モル)を添加して、温度を45分間にわたって170℃まで上昇させた。反応の6時間後、170mmHgの真空を印加して、反応をさらに4時間続けた。得られたポリエステルをクロロホルムに溶解して、冷メタノール中で沈殿させた。沈殿を濾過して、沈殿をメタノールで2回洗浄し、次に24時間空気乾燥させた。不飽和ポリエステル中の1,4 BD、SAおよびTMPAEのモル組成を、H NMRスペクトルのピーク積分値によって決定した。不飽和ポリエステルの重量平均分子量を、Styragelカラムおよび溶離溶媒としてのテトラヒドロフランを1ml/分の速度で使用して、ゲル透過クロマトグラフィーによって決定した。ポリスチレンを標準として使用した。不飽和ポリエステルのモル組成およびその重量平均分子量はそれぞれ、41:51:8(1,4 BD:SA:TMPAE)および6708gmol−1であった。
【0066】
B.グラフトコポリマーの調製
グラフトコポリマーを溶液重合によって調製した。不飽和ポリエステルP[1,4 BD−SA−TMPAE]、MAAおよび1%重量/重量のフリーラジカル開始剤アゾビスイソブチロニトリルをジメチルホルムアミドに溶解させた。窒素によってパージした後に、重合を65℃にて20分間行った。ポリマー溶液を回転蒸発器によって濃縮した。ポリマーを冷水中で沈殿させて、真空下で室温にて乾燥させた。供給中の不飽和ポリエステルのMAAに対する重量比を変動させることによって、4つの異なるレベルのMAAを包含するように前記グラフトコポリマーを調製した。グラフトコポリマーのMAA含有率は10、11、13および16重量%であった。グラフトコポリマーのH NMRスペクトルは、グラフト化反応の間に不飽和基が完全には利用されないことを示した。貯蔵時に遊離不飽和基が重合して、架橋ポリマー網目が生じた。架橋ポリマーは、普通の有機溶媒およびその混合物に溶解しなかった。
【実施例1】
【0067】
本実施例は、下式
【化8】

のグラフトコポリマーの調製を開示する。これは、(a)不飽和ポリエステルP[1,2 ED−SA−GMA]の調製および(b)前記不飽和ポリエステルでのMAAとのグラフト共重合を含む。
【0068】
A.不飽和ポリエステルの調製
チタン(IV)ブトキシドおよびヒドロキノンを使用して、不飽和ポリエステルを1,2 ED、SAおよびGMAの溶融重縮合によって調製した。反応は、窒素含有袋および水冷凝縮器を装備した2口丸底フラスコ内で行った。フラスコにGMA 3.424g(0.0240モル)、ヒドロキノン0.160g(1.4530×10−03モル)およびチタン(IV)ブトキシド0.020g(5.8768×10−05モル)を投入して、次に15分間撹拌した。これに1,2 ED 4.735g(0.0762モル)およびSA 11.851g(0.1003モル)を添加して、温度を45分間にわたって170℃まで上昇させた。反応の6時間後、170mmHgの真空を印加して、反応をさらに4時間続けた。得られたポリエステルをクロロホルムに溶解して、冷メタノール中で沈殿させた。沈殿を濾過して、沈殿をメタノールで2回洗浄し、次に24時間空気乾燥させた。不飽和ポリエステル中の1,2 ED、SAおよびGMAのモル組成を、H NMRスペクトルのピーク積分値によって決定した。不飽和ポリエステルの重量平均分子量を、Styragelカラムおよび溶離溶媒としてのテトラヒドロフランを1ml/分の速度で使用して、ゲル透過クロマトグラフィーによって決定した。ポリスチレンを標準として使用した。不飽和ポリエステルのモル組成およびその重量平均分子量はそれぞれ、42:53:5(1,2 ED:SA:GMA)および5851gmol−1であった。
【0069】
B.グラフトコポリマーの調製
グラフトコポリマーを溶液重合によって調製した。不飽和ポリエステルP[1,2 ED−SA−GMA]、MMAおよび1%重量/重量のフリーラジカル開始剤アゾビスイソブチロニトリルをジメチルホルムアミドに溶解させた。窒素によってパージした後に、重合を65℃にて20分間行った。ポリマー溶液を回転蒸発器によって濃縮した。ポリマーを冷水中で沈殿させて、真空下で室温にて乾燥させた。供給中の不飽和ポリエステルのMAAに対する重量比を変動させることによって、4つの異なるレベルのMAAを包含するように前記グラフトコポリマーを調製した。グラフトコポリマーのMAA含有率ならびに0.1N HClおよびpH6.8リン酸緩衝溶液中でのその膨潤/溶解挙動を表1にまとめる。グラフトコポリマーは遊離不飽和基を含有せず、普通の有機溶媒およびその混合物に溶解した。
【0070】
【表1】

【実施例2】
【0071】
本実施例は、下式
【化9】

のグラフトコポリマーの調製を開示する。これは、(a)不飽和ポリエステルP[1,4 BD−SEB−TMPA]の調製および(b)前記不飽和ポリエステルでのMAAとのグラフト共重合を含む。
【0072】
A.不飽和ポリエステルの調製
チタン(IV)ブトキシドおよびヒドロキノンを使用して、不飽和ポリエステルを1,4 BD、SEBおよびTMPAの溶融重縮合によって調製した。反応は、窒素含有袋および水冷凝縮器を装備した2口丸底フラスコ内で行った。フラスコにTMPA 7.156g(0.0380モル)、ヒドロキノン30.500g(4.5409×10−03モル)およびチタン(IV)ブトキシド0.050g(1.4692×10−04モル)を投入して、次に15分間撹拌した。これに1,4 BD 10.830g(0.1203モル)およびSEB 32.03g(0.1584モル)を添加して、温度を45分間にわたって170℃まで上昇させた。反応の6時間後、170mmHgの真空を印加して、反応をさらに4時間続けた。得られたポリエステルをクロロホルムに溶解して、冷メタノール中で沈殿させた。沈殿を濾過して、沈殿をメタノールで2回洗浄し、次に24時間空気乾燥させた。不飽和ポリエステル中の1,4 BD、SEBおよびTMPAのモル組成を、H NMRスペクトルのピーク積分値によって決定した。不飽和ポリエステルの重量平均分子量を、Styragelカラムおよび溶離溶媒としてのテトラヒドロフランを1ml/分の速度で使用して、ゲル透過クロマトグラフィーによって決定した。ポリスチレンを標準として使用した。不飽和ポリエステルのモル組成およびその重量平均分子量はそれぞれ、41:52:7(1,4 BD:SEB:TMPA)および19627gmol−1であった。
【0073】
B.グラフトコポリマーの調製
グラフトコポリマーを溶液重合によって調製した。不飽和ポリエステルP[1,4 BD−SEB−TMPA]、MAAおよび1%重量/重量のフリーラジカル開始剤アゾビスイソブチロニトリルをジメチルホルムアミドに溶解させた。窒素によってパージした後に、重合を65℃にて20分間行った。ポリマー溶液を回転蒸発器によって濃縮した。ポリマーを冷水中で沈殿させて、真空下で室温にて乾燥させた。供給中の不飽和ポリエステルのMAAに対する重量比を変動させることによって、4つの異なるレベルのMAAを包含するように前記グラフトコポリマーを調製した。グラフトコポリマーのMAA含有率ならびに0.1N HClおよびpH6.8リン酸緩衝溶液中でのその膨潤/溶解挙動を表2にまとめる。グラフトコポリマーは遊離不飽和基を含有せず、普通の有機溶媒およびその混合物に溶解した。
【0074】
【表2】

【実施例3】
【0075】
本実施例は、下式
【化10】

のグラフトコポリマーの調製を開示する。これは、(a)不飽和ポリエステルP[1,6 HD−SA−GMA]の調製および(b)前記不飽和ポリエステルでのMAAとのグラフト共重合を含む。
【0076】
A.不飽和ポリエステルの調製
チタン(IV)ブトキシドおよびヒドロキノンを使用して、不飽和ポリエステルを1,6 HD、SAおよびGMAの溶融重縮合によって調製した。反応は、窒素含有袋および水冷凝縮器を装備した2口丸底フラスコ内で行った。フラスコにGMA 8.764g(0.0616モル)、ヒドロキノン0.500g(4.5409×10−03モル)およびチタン(IV)ブトキシド0.050g(1.4692×10−04モル)を投入して、次に15分間撹拌した。これに1,6 HD 17.00g(0.1438モル)およびSA 24.269g(0.2055モル)を添加して、温度を45分間にわたって170℃まで上昇させた。反応の6時間後、170mmHgの真空を印加して、反応をさらに4時間続けた。得られたポリエステルをクロロホルムに溶解して、冷メタノール中で沈殿させた。沈殿を濾過して、沈殿をメタノールで2回洗浄し、次に24時間空気乾燥させた。不飽和ポリエステル中の1,6 HD、SAおよびGMAのモル組成を、H NMRスペクトルのピーク積分値によって決定した。不飽和ポリエステルの重量平均分子量を、Styragelカラムおよび溶離溶媒としてのテトラヒドロフランを1ml/分の速度で使用して、ゲル透過クロマトグラフィーによって決定した。ポリスチレンを標準として使用した。不飽和ポリエステルのモル組成およびその重量平均分子量はそれぞれ、37:55:8(1,6 HD:SA:GMA)および24027gmol−1であった。
【0077】
B.グラフトコポリマーの調製
グラフトコポリマーを溶液重合によって調製した。不飽和ポリエステルP[1,6 HD−SA−GMA]、MAAおよび1%重量/重量のフリーラジカル開始剤アゾビスイソブチロニトリルをジメチルホルムアミドに溶解させた。窒素によってパージした後に、重合を65℃にて20時間行った。ポリマー溶液を回転蒸発器によって濃縮した。ポリマーを冷水中で沈殿させて、真空下で室温にて乾燥させた。供給中の不飽和ポリエステルのMAAに対する重量比を変動させることによって、4つの異なるレベルのMAAを包含するように前記グラフトコポリマーを調製した。グラフトコポリマーのMAA含有率ならびに0.1N HClおよびpH6.8リン酸緩衝溶液中でのその膨潤/溶解挙動を表3にまとめる。グラフトコポリマーは遊離不飽和基を含有せず、普通の有機溶媒およびその混合物に溶解した。
【0078】
【表3】

【実施例4】
【0079】
本実施例は、下式
【化11】

のグラフトコポリマーの調製を開示する。これは、(a)不飽和ポリエステルP[1,12 DD−AA−GMA]の調製および(b)前記不飽和ポリエステルでのMAAとのグラフト共重合を含む。
【0080】
A.不飽和ポリエステルの調製
チタン(IV)ブトキシドおよびヒドロキノンを使用して、不飽和ポリエステルを1,12 DD、AAおよびGMAの溶融重縮合によって調製した。反応は、窒素含有袋および水冷凝縮器を装備した2口丸底フラスコ内で行った。フラスコにGMA 0.647g(4.554×10−03モル)、ヒドロキノン0.030g(2.7245×10−04モル)およびチタン(IV)ブトキシド0.005g(1.4692×10−05モル)を投入して、次に15分間撹拌した。これに1,12 DD 2.150g(0.0106モル)およびAA 2.218g(0.0151モル)を添加して、温度を45分間にわたって170℃まで上昇させた。反応の6時間後、170mmHgの真空を印加して、反応をさらに4時間続けた。得られたポリエステルをクロロホルムに溶解して、冷メタノール中で沈殿させた。沈殿を濾過して、沈殿をメタノールで2回洗浄し、次に24時間空気乾燥させた。不飽和ポリエステル中の1,12 DD、AAおよびGMAのモル組成を、H NMRスペクトルのピーク積分値によって決定した。不飽和ポリエステルの重量平均分子量を、Styragelカラムおよび溶離溶媒としてのテトラヒドロフランを1ml/分の速度で使用して、ゲル透過クロマトグラフィーによって決定した。ポリスチレンを標準として使用した。不飽和ポリエステルのモル組成およびその重量平均分子量はそれぞれ、43:50:7(1,12 DD:AA:GMA)および19410gmol−1であった。
【0081】
B.グラフトコポリマーの調製
グラフトコポリマーを溶液重合によって調製した。不飽和ポリエステルP[1,12 DD−AA−GMA]、MAAおよび1%重量/重量のフリーラジカル開始剤アゾビスイソブチロニトリルをジメチルホルムアミドに溶解させた。窒素によってパージした後に、重合を65℃にて20時間行った。ポリマー溶液を回転蒸発器によって濃縮した。ポリマーを冷水中で沈殿させて、真空下で室温にて乾燥させた。供給中の不飽和ポリエステルのMAAに対する重量比を変動させることによって、4つの異なるレベルのMAAを包含するように前記グラフトコポリマーを調製した。グラフトコポリマーのMAA含有率ならびに0.1N HClおよびpH6.8リン酸緩衝溶液中でのその膨潤/溶解挙動を表4にまとめる。グラフトコポリマーは遊離不飽和基を含有せず、普通の有機溶媒およびその混合物に溶解した。
【0082】
【表4】

【実施例5】
【0083】
本実施例は、下式
【化12】

のグラフトコポリマーの調製を開示する。これは、(a)不飽和ポリ(エステル−エーテル)P[DEG−DDA−TMPMA]の調製および(b)前記不飽和ポリ(エステル−エーテル)でのMAAとのグラフト共重合を含む。
【0084】
A.不飽和ポリ(エステル−エーテル)の調製
チタン(IV)ブトキシドおよびヒドロキノンを使用して、不飽和ポリ(エステル−エーテル)をDEG、DDAおよびTMPMAの溶融重縮合によって調製した。反応は、窒素含有袋および水冷凝縮器を装備した2口丸底フラスコ内で行った。フラスコにTMPMA 3.416g(0.0168モル)、ヒドロキノン0.180g(1.6347×10−03モル)およびチタン(IV)ブトキシド0.030g(8.8152×10−05モル)を投入して、次に15分間撹拌した。これにDEG 7.170g(0.0675モル)およびDDA 19.441g(0.0844モル)を添加して、温度を45分間にわたって170℃まで上昇させた。反応の6時間後、170mmHgの真空を印加して、反応をさらに4時間続けた。得られたポリ(エステル−エーテル)をクロロホルムに溶解して、冷メタノール中で沈殿させた。沈殿を濾過して、沈殿をメタノールで2回洗浄し、次に24時間空気乾燥させた。不飽和ポリ(エステル−エーテル)中のDEG、DDAおよびTMPMAのモル組成を、H NMRスペクトルのピーク積分値によって決定した。不飽和ポリ(エステル−エーテル)の重量平均分子量を、Styragelカラムおよび溶離溶媒としてのテトラヒドロフランを1ml/分の速度で使用して、ゲル透過クロマトグラフィーによって決定した。ポリスチレンを標準として使用した。不飽和(エステル−エーテル)のモル組成およびその重量平均分子量はそれぞれ、42:52:6(DEG:DDA:TMPMA)および9520gmol−1であった。
【0085】
B.グラフトコポリマーの調製
グラフトコポリマーを溶液重合によって調製した。不飽和ポリ(エステル−エーテル)P[DEG−DDA−TMPMA]、MAAおよび1%重量/重量のフリーラジカル開始剤アゾビスイソブチロニトリルをジメチルホルムアミドに溶解させた。窒素によってパージした後に、重合を65℃にて20分間行った。ポリマー溶液を回転蒸発器によって濃縮した。ポリマーを冷水中で沈殿させて、真空下で室温にて乾燥させた。供給中の不飽和ポリ(エステル−エーテル)のMAAに対する重量比を変動させることによって、4つの異なるレベルのMAAを包含するように前記グラフトコポリマーを調製した。グラフトコポリマーのMAA含有率ならびに0.1N HClおよびpH6.8リン酸緩衝溶液中でのその膨潤/溶解挙動を表5にまとめる。グラフトコポリマーは遊離不飽和基を含有せず、普通の有機溶媒およびその混合物に溶解した。
【0086】
【表5】

【実施例6】
【0087】
本実施例は、下式
【化13】

のグラフトコポリマーの調製を開示する。これは、(a)不飽和ポリ(エステル−エーテル)P[TEG−SEB−GMA]の調製および(b)前記不飽和ポリ(エステル−エーテル)でのMAAとのグラフト共重合を含む。
【0088】
A.不飽和ポリ(エステル−エーテル)の調製
チタン(IV)ブトキシドおよびヒドロキノンを使用して、不飽和ポリ(エステル−エーテル)をTEG、SEBおよびGMAの溶融重縮合によって調製した。反応は、窒素含有袋および水冷凝縮器を装備した2口丸底フラスコ内で行った。フラスコにGMA 6.095g(0.0428モル)、ヒドロキノン0.500g(4,5409×10−03モル)およびチタン(IV)ブトキシド0.050g(1.4692×10−04モル)を投入して、次に15分間撹拌した。これにTEG 15.020g(0.1モル)およびSEB 28.908g(0.1429モル)を添加して、温度を45分間にわたって170℃まで上昇させた。反応の6時間後、170mmHgの真空を印加して、反応をさらに4時間続けた。得られたポリ(エステル−エーテル)をクロロホルムに溶解して、冷メタノール中で沈殿させた。沈殿を濾過して、沈殿をメタノールで2回洗浄し、次に24時間空気乾燥させた。不飽和ポリ(エステル−エーテル)中のTEG、SEBおよびGMAのモル組成を、H NMRスペクトルのピーク積分値によって決定した。不飽和ポリ(エステル−エーテル)の重量平均分子量を、Styragelカラムおよび溶離溶媒としてのテトラヒドロフランを1ml/分の速度で使用して、ゲル透過クロマトグラフィーによって決定した。ポリスチレンを標準として使用した。不飽和(エステル−エーテル)のモル組成およびその重量平均分子量はそれぞれ、40:52:8(TEG:SEB:GMA)および11258gmol−1であった。
【0089】
B.グラフトコポリマーの調製
グラフトコポリマーを溶液重合によって調製した。不飽和ポリ(エステル−エーテル)P[TEG−SEB−GMA]、MAAおよび1%重量/重量のフリーラジカル開始剤アゾビスイソブチロニトリルをジメチルホルムアミドに溶解させた。窒素によってパージした後に、重合を65℃にて20分間行った。ポリマー溶液を回転蒸発器によって濃縮した。ポリマーを冷水中で沈殿させて、真空下で室温にて乾燥させた。供給中の不飽和ポリ(エステル−エーテル)のMAAに対する重量比を変動させることによって、4つの異なるレベルのMAAを包含するように前記グラフトコポリマーを調製した。グラフトコポリマーのMAA含有率ならびに0.1N HClおよびpH6.8リン酸緩衝溶液中でのその膨潤/溶解挙動を表6にまとめる。グラフトコポリマーは遊離不飽和基を含有せず、普通の有機溶媒およびその混合物に溶解した。
【0090】
【表6】

【実施例7】
【0091】
本実施例は、下式
【化14】

のグラフトコポリマーの調製を開示する。これは、(a)不飽和ポリ(エステル−エーテル)P[PEG−SA−GMA]の調製および(b)前記不飽和ポリ(エステル−エーテル)でのMAAとのグラフト共重合を含む。
【0092】
A.不飽和ポリ(エステル−エーテル)の調製
チタン(IV)ブトキシドおよびヒドロキノンを使用して、不飽和ポリ(エステル−エーテル)をPEG(M〜400)、SAおよびGMAの溶融重縮合によって調製した。反応は、窒素含有袋および水冷凝縮器を装備した2口丸底フラスコ内で行った。フラスコにGMA 2.908g(0.0204モル)、ヒドロキノン0.180g(1.6347×10−03モル)およびチタン(IV)ブトキシド0.030g(8.8152×10−05モル)を投入し、次に15分間撹拌した。これにPEG 19.100g(0.0477モル)およびSA 8.055g(0.0682モル)を添加して、温度を45分間にわたって170℃まで上昇させた。反応の6時間後、170mmHgの真空を印加して、反応をさらに4時間続けた。得られたポリ(エステル−エーテル)をグラフト共重合に直接使用した。不飽和ポリ(エステル−エーテル)中のPEG、SAおよびGMAのモル組成を、H NMRスペクトルのピーク積分値によって決定した。不飽和ポリ(エステル−エーテル)の重量平均分子量を、Styragelカラムおよび溶離溶媒としてのテトラヒドロフランを1ml/分の速度で使用して、ゲル透過クロマトグラフィーによって決定した。ポリスチレンを標準として使用した。不飽和(エステル−エーテル)のモル組成およびその重量平均分子量はそれぞれ、43:49:8(PEG:SA:GMA)および8432gmol−1であった。
【0093】
B.グラフトコポリマーの調製
グラフトコポリマーを溶液重合によって調製した。不飽和ポリ(エステル−エーテル)P[PEG−SA−GMA]、MAAおよび1%重量/重量のフリーラジカル開始剤アゾビスイソブチロニトリルをジメチルホルムアミドに溶解させた。窒素によってパージした後に、重合を65℃にて20時間行った。ポリマー溶液を回転蒸発器によって濃縮した。ポリマーを冷水中で沈殿させて、真空下で室温にて乾燥させた。供給中の不飽和ポリ(エステル−エーテル)のMAAに対する重量比を変動させることによって、4つの異なるレベルのMAAを包含するように前記グラフトコポリマーを調製した。グラフトコポリマーのMAA含有率ならびに0.1N HClおよびpH6.8リン酸緩衝溶液中でのその膨潤/溶解挙動を表7にまとめる。グラフトコポリマーは遊離不飽和基を含有せず、普通の有機溶媒およびその混合物に溶解した。
【0094】
【表7】

【実施例8】
【0095】
本実施例は、下式
【化15】

のグラフトコポリマーの調製を開示する。これは、(a)不飽和ポリエステルP[1,4 CD−PA−TMPMA]の調製および(b)前記不飽和ポリエステルでのMAAとのグラフト共重合を含む。
【0096】
A.不飽和ポリエステルの調製
チタン(IV)ブトキシドおよびヒドロキノンを使用して、不飽和ポリエステルを1,4 CD、PAおよびTMPMAの溶融重縮合によって調製した。反応は、窒素含有袋および水冷凝縮器を装備した2口丸底フラスコ内で行った。フラスコにTMPMA 2.407g(0.0119モル)、ヒドロキノン0.200g(1.8163×10−03モル)およびチタン(IV)ブトキシド0.025g(5.8768×l0−05モル)を投入し、次に15分間撹拌した。これに1,4 CD 7.820g(0.0542モル)およびPA 9.795g(0.0661モル)を添加して、温度を45分間にわたって170℃まで上昇させた。反応の6時間後、170mmHgの真空を印加して、反応をさらに4時間続けた。得られたポリエステルをクロロホルムに溶解して、冷メタノール中で沈殿させた。沈殿を濾過して、沈殿をメタノールで2回洗浄し、次に24時間空気乾燥させた。不飽和ポリエステル中の1,4 CD、PAおよびTMPMAのモル組成を、H NMRスペクトルのピーク積分値によって決定した。不飽和ポリエステルの重量平均分子量を、Styragelカラムおよび溶離溶媒としてのテトラヒドロフランを1ml/分の速度で使用して、ゲル透過クロマトグラフィーによって決定した。ポリスチレンを標準として使用した。不飽和ポリエステルのモル組成およびその重量平均分子量はそれぞれ、46:49:5(1,4 CD:PA:TMPMA)および2652gmol−1であった。
【0097】
B.グラフトコポリマーの調製
グラフトコポリマーを溶液重合によって調製した。不飽和ポリエステルP[1,4 CD−PA−TMPMA]、メタクリル酸および1%重量/重量のフリーラジカル開始剤アゾビスイソブチロニトリルをジメチルホルムアミドに溶解させた。窒素によってパージした後に、重合を65℃にて20時間行った。ポリマー溶液を回転蒸発器によって濃縮した。ポリマーを冷水中で沈殿させて、真空下で室温にて乾燥させた。供給中の不飽和ポリエステルのMAAに対する重量比を変動させることによって、4つの異なるレベルのMAAを包含するように前記グラフトコポリマーを調製した。グラフトコポリマーのMAA含有率ならびに0.1N HClおよびpH6.8リン酸緩衝溶液中でのその膨潤/溶解挙動を表8にまとめる。グラフトコポリマーは遊離不飽和基を含有せず、普通の有機溶媒およびその混合物に溶解した。
【0098】
【表8】

【実施例9】
【0099】
本実施例は、下式
【化16】

のグラフトコポリマーの調製を開示する。これは、(a)不飽和ポリエステルP[1,4 CD−AA−GMA]の調製および(b)前記不飽和ポリエステルでのAAcとのグラフト共重合を含む。
【0100】
A.不飽和ポリエステルの調製
チタン(IV)ブトキシドおよびヒドロキノンを使用して、不飽和ポリエステルを1,4 CD、AAおよびGMAの溶融重縮合によって調製した。反応は、窒素含有袋および水冷凝縮器を装備した2口丸底フラスコ内で行った。フラスコにGMA 6.869g(0.0483モル)、ヒドロキノン0.500g(4.5409×10−03モル)およびチタン(IV)ブトキシド0.050g(1.4692×10−04モル)を投入して、次に15分間撹拌した。これに1,4 CD 17.920g(0.1242モル)およびAA 25.221g(0.1725モル)を添加して、温度を45分間にわたって170℃まで上昇させた。反応の6時間後、170mmHgの真空を印加して、反応をさらに4時間続けた。得られたポリエステルをクロロホルムに溶解して、冷メタノール中で沈殿させた。沈殿を濾過して、沈殿をメタノールで2回洗浄し、次に24時間空気乾燥させた。不飽和ポリエステル中の1,4 CD、AAおよびGMAのモル組成を、H NMRスペクトルのピーク積分値によって決定した。不飽和ポリエステルの重量平均分子量を、Styragelカラムおよび溶離溶媒としてのテトラヒドロフランを1ml/分の速度で使用して、ゲル透過クロマトグラフィーによって決定した。ポリスチレンを標準として使用した。不飽和ポリエステルのモル組成およびその重量平均分子量はそれぞれ、40:54:6(1,4 CD:AA:GMA)および10344gmol−1であった。
【0101】
B.グラフトコポリマーの調製
グラフトコポリマーを溶液重合によって調製した。不飽和ポリエステルP[1,4 CD−AA−GMA]、AAcおよび1%重量/重量のフリーラジカル開始剤アゾビスイソブチロニトリルをジメチルホルムアミドに溶解させた。窒素によってパージした後に、重合を65℃にて20時間行った。ポリマー溶液を回転蒸発器によって濃縮した。ポリマーを冷水中で沈殿させて、真空下で室温にて乾燥させた。供給中の不飽和ポリエステルのAAcに対する重量比を変動させることによって、4つの異なるレベルのAAcを包含するように前記グラフトコポリマーを調製した。グラフトコポリマーのAAc含有率ならびに0.1N HClおよびpH6.8リン酸緩衝溶液中でのその膨潤/溶解挙動を表9にまとめる。グラフトコポリマーは遊離不飽和基を含有せず、普通の有機溶媒およびその混合物に溶解した。
【0102】
【表9】

【実施例10】
【0103】
本実施例は、下式
【化17】

のグラフトコポリマーの調製を開示する。これは、(a)不飽和ポリエステルP[BHET−DDA−GMA]の調製および(b)前記不飽和ポリエステルでのMAAとのグラフト共重合を含む。
【0104】
A.不飽和ポリエステルの調製
チタン(IV)ブトキシドおよびヒドロキノンを使用して、不飽和ポリエステルBHET、DDAおよびGMAの溶融重縮合によって調製した。反応は、窒素含有袋および水冷凝縮器を装備した2口丸底フラスコ内で行った。フラスコにGMA 3.731g(0.0262モル)、ヒドロキノン0.500g(4.5409×10−03モル)およびチタン(IV)ブトキシド0.050g(1.4692×10−04モル)を投入して、次に15分間撹拌した。これにBHET 21.135g(0.0831モル)およびDDA 25.190g(0.1093モル)を添加して、温度を45分間にわたって170℃まで上昇させた。反応の6時間後、170mmHgの真空を印加して、反応をさらに4時間続けた。得られたポリエステルをクロロホルムに溶解して、冷メタノール中で沈殿させた。沈殿を濾過して、沈殿をメタノールで2回洗浄し、次に24時間空気乾燥させた。不飽和ポリエステル中のBHET、DDAおよびGMAのモル組成を、H NMRスペクトルのピーク積分値によって決定した。不飽和ポリエステルの重量平均分子量を、Styragelカラムおよび溶離溶媒としてのテトラヒドロフランを1ml/分の速度で使用して、ゲル透過クロマトグラフィーによって決定した。ポリスチレンを標準として使用した。不飽和ポリエステルのモル組成およびその重量平均分子量はそれぞれ、41:52:7(BHET:DDA:GMA)および11784gmol−1であった。
【0105】
B.グラフトコポリマーの調製
グラフトコポリマーを溶液重合によって調製した。不飽和ポリエステルP[BHET−DDA−GMA]、MAAおよび1%重量/重量のフリーラジカル開始剤アゾビスイソブチロニトリルをジメチルホルムアミドに溶解させた。窒素によってパージした後に、重合を65℃にて20時間行った。ポリマー溶液を回転蒸発器によって濃縮した。ポリマーを冷水中で沈殿させて、真空下で室温にて乾燥させた。供給中の不飽和ポリエステルのMAAに対する重量比を変動させることによって、4つの異なるレベルのMAAを包含するように前記グラフトコポリマーを調製した。グラフトコポリマーのMAA含有率ならびに0.1N HClおよびpH6.8リン酸緩衝溶液中でのその膨潤/溶解挙動を表10にまとめる。グラフトコポリマーは遊離不飽和基を含有せず、普通の有機溶媒およびその混合物に溶解した。
【0106】
【表10】

【0107】
本発明が上の例証的な実施例の詳細事項に制限されないことと、本発明がその本質的な属性から逸脱することなく他の具体的な形で実現され得ることが当業者に明らかとなり、そのため本実施形態および実施例があらゆる点で例証的であり、制限的でないと見なされ、上の記載よりもむしろ、添付請求項が参照され、請求項の均等物の意味および範囲に含まれるすべての変化はそのため、本発明に含まれるものとすることが所望である。
【0108】
本発明の利点
・本発明のグラフトコポリマーは、pH依存性挙動を示す。
・本発明の溶媒溶解性pH感受性ポリマー(P)は、中性付近および中性を超えるpHでは膨潤およびまたは溶解して、酸性pHでは折畳み状態のままである。
・pH依存性グラフトコポリマー(P)は、医薬投薬形の保護コーティング材料として、および長期放出製剤の開発における賦形剤として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
pH依存性挙動を示す、式1
【化1】

のグラフトコポリマー(P)であって:
a.式P[A(x)(y)(z)](ジオール(A)、ジカルボン酸または酸無水物(B)およびペンダント不飽和基を含有するモノマー(C)を含み、(x)=37〜46モル%、(y)=49〜55モル%、(z)=5〜8モル%である)を有する主鎖と;
b.酸性モノマーのポリマー(D)であるグラフト(「w」は、「w」が22〜56%であるような、前記グラフトコポリマーの総重量の重量パーセントである)とを含む、
式1のグラフトコポリマー(P)。
【請求項2】
前記主鎖が、ポリ(エステル−エーテル)またはポリエステルである、請求項1に記載のグラフトコポリマー。
【請求項3】
前記ジオールが、脂肪族ジオール、脂環式ジオールおよび芳香族ジオールから成る群より選択される、請求項1に記載のグラフトコポリマー。
【請求項4】
前記脂肪族ジオールが、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール(M〜200)、ポリエチレングリコール(M〜400)、ポリエチレングリコール(M〜1000)、ポリエチレングリコール(M〜2000)、1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール,1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオールおよび1,12−ドデカンジオールから成る群より選択される、請求項3に記載のグラフトコポリマー。
【請求項5】
前記脂環式ジオールが、1,4−シクロヘキサンジメタノールである、請求項3に記載のグラフトコポリマー。
【請求項6】
前記芳香族ジオールが、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートである、請求項3に記載のグラフトコポリマー。
【請求項7】
前記ジカルボン酸が、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸およびドデカン2酸から成る群より選択される、請求項1に記載のグラフトコポリマー。
【請求項8】
前記酸無水物が、コハク酸無水物およびフタル酸無水物から選択される、請求項1に記載のグラフトコポリマー。
【請求項9】
ペンダント不飽和基を含有する前記モノマーが、エポキシモノマーまたはジオールモノマーである、請求項1に記載のグラフトコポリマー。
【請求項10】
前記エポキシモノマーが、グリシジルメタクリレートおよびグリシジルアクリレートから選択される、請求項9に記載のグラフトコポリマー。
【請求項11】
前記ジオールモノマーが、トリメチロールプロパンモノメタクリレートおよびトリメチロールプロパンモノアクリレートから選択される、請求項9に記載のグラフトコポリマー。
【請求項12】
前記酸性モノマーが、アクリル酸およびメタクリル酸から選択されるカルボン酸である、請求項1に記載のグラフトコポリマー。
【請求項13】
i.モノマー(C)、チタン(IV)ブトキシドおよびヒドロキノンを2口丸底フラスコ内で10〜15分間撹拌するステップと;
ii.不飽和ポリエステルまたは不飽和ポリ(エステル−エーテル)を得るために、ジオール(A)、ジカルボン酸または酸無水物(B)を添加して、温度を45分間にわたって160〜170℃に上昇させ、5〜7時間の終りに170mmHgの真空を印加して、反応を3〜5時間継続するステップと;
iii.ステップ(ii)で得た不飽和ポリエステルまたは不飽和ポリ(エステル−エーテル)をクロロホルムに溶解させて、冷メタノール中で沈殿させるステップと;
iv.不飽和ポリエステルまたは不飽和ポリ(エステル−エーテル)を得るために、濾過して、メタノールで洗浄し、20〜25時間乾燥させるステップと;
v.ステップ(iv)で得たままの不飽和ポリエステルまたは不飽和ポリ(エステル−エーテル)、酸性モノマーおよびアゾビスイソブチロニトリルをジメチルホルムアミドに溶解させ、続いて窒素でパージして、60〜70℃にて18〜22時間重合させるステップと;
vi.グラフトコポリマーを得るために、濃縮、沈殿および乾燥するステップと;
を含む、請求項1に記載のグラフトコポリマーの調製方法。
【請求項14】
前記グラフトコポリマーが、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフランから選択される有機溶媒ならびにクロロホルム−メタノール,クロロホルム−エタノール、1,2−ジクロロメタン−メタノールおよび1,2−ジクロロメタン−エタノールから選択される有機溶媒の混合物に可溶である、請求項1に記載のグラフトコポリマー。
【請求項15】
前記pH感受性グラフトコポリマーが、4.7よりも高いpHにて膨潤または溶解する、請求項1に記載のグラフトコポリマー。
【請求項16】
前記pH感受性グラフトコポリマーが、4.7よりも高いpHにて膨潤および溶解する、請求項1に記載のグラフトコポリマー。

【公表番号】特表2012−519769(P2012−519769A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−553540(P2011−553540)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【国際出願番号】PCT/IB2010/000460
【国際公開番号】WO2010/103366
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(511110762)カウンシル・オヴ・サイエンティフィック・アンド・インダストリアル・リサーチ (7)
【Fターム(参考)】