説明

scyllo−イノシトールを調製するための方法

本発明は、scyllo−イノシトールを製作するための方法に関する。具体的に、本発明は、生物変換工程を使用してmyo−イノシトールをscyllo−イノシトールに変換するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2010年2月15日に出願された米国仮出願第61/304,581号の優先権を主張し、この内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明は、scyllo−イノシトールを製作するための方法に関する。具体的に、本発明は、生物変換工程を使用してmyo−イノシトールをscyllo−イノシトールに変換するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
scyllo−イノシトール(1)[CAS登録番号488−59−5]は、種々の天然源中に存在することが見出されているヘキサヒドロシクロヘキサンの9個の立体異性体の1つである。しかし、広汎に使用されている栄養補助食品myo−イノシトール(2)[CAS登録番号87−89−8]に比べると、ほんの少量しか存在しない(Martinez−Castroら、Food Chem.2004年、第87巻、325頁)。scyllo−イノシトール(1)はまた、種々の哺乳類の組織中に存在し(Shermanら、Biochemistry、1968年、第7巻、819頁)、アルツハイマー病を患っている個人の脳には高濃度で存在する(Michaelisら、NMR Biomed.、1993年、第6巻、105頁;Griffithら、同書、2007年、第20巻、709頁)。さらに、scyllo−イノシトール(1)は、アルツハイマー病を患っている個人に蓄積する老人斑の神経毒成分(例えば、Aβ42ペプチド)の大部分と相互作用することができ、この二次構造に変化を誘発し、小さなAβ−オリゴマーを安定化し、フィブリル形成を完全に阻止することが実証されている(McLaurinら、J.Mol.Biol.、1998年、第278巻、183頁;McLaurinら、同書、2000年、第275巻、18495頁;Feniliら、同書、2007年、第85巻、603頁およびWO2004/075882)。
【0004】
【化1】

【0005】
これらの研究成果の結果、scyllo−イノシトール(1)は、現在、アルツハイマー病の治療におけるこの効力を評価しこの有用性を決定するためのさらなる臨床試験が行われている(Wolfson、Chem.Biol.、2008年、89頁)。
【0006】
scyllo−イノシトール(1)を調製するための種々の方法が報告されている。調製方法の1つは、アセトバクター・サブオキシダンス(Acetobacter suboxydans)を使用してmyo−イノシトール(2)から調製された2,4,6/3,5−ペンタヒドロキシシクロヘキサノン(meso−2−イノソース)の酵素的手法(Kluyverら、Rec.Trav.Chim.Pays−Bas.、1939年、第58巻、956頁)に基づいており、他の調製方法は、酸性媒体中でのナトリウムアマルガム試薬によるmeso−2−イノソースの還元を経由し、続いて分離するもの(Posternak、Helv.Chim.Acta、1941年、第24巻、1045頁)または水素化ホウ素ナトリウム還元剤を使用する収率の低いもの(Reymond、Helv.Chim.Acta、1957年、第40巻、492頁)である。他の調製方法は、低収率でヘキサヒドロキシベンゼンから出発することに基づいており(Angyalら、J.Chem.Soc.、1957年、3682頁)、またはコンズリトールを原料として利用すること(Nakajimaら、Chem.Ber.1959年、第92巻、173頁)に基づいている。追加の調製方法は、イオン交換樹脂上での分離(Sasakiら、Carbohydrate Res.、1987年、第167巻、171頁)、錯体形成によるクロマトグラフ分離(Sasakiら、Carbohydrate Res.、1988年、第183巻、1頁)またはシリカHPLCカラム上での化学的分離(Ghias−ud−dinら、J.Chromatogr.、1981年、第211巻、295頁)による。さらなる方法は、myo−イノシトール(2)から出発し、酸化を経由し続いて、得られたmyo−イノソースペンタアセテートを還元および加水分解する(Kohneら、Liebigs Ann.Chem.、1985年、第4巻、866頁;DE1985/3405663)が、他の方法は、myo−イノシトール(2)から出発し、塩基性の条件下でラネーニッケルを使用して平衡化することを経由(Hussonら、Carbohydrate Res.、1998年、第307巻、163頁)し、他の方法は、6−O−アセチル−5−エノピラノシドから出発して一連の環化付加反応のためのパラジウム触媒を組み込む(Takahashiら、J.Org.Chem.、2001年、第66巻、2705頁)。追加の調製方法は、スルホネート基を使用する選択的保護を経由し、続いて酸化および還元をする、myo−イノシトール(2)の使用により実証された(Sarmahら、Carbohydrate Res.、2003年、第338巻、998頁)。代替法として、scyllo−イノソース(3)を経由して、調製方法は、シュードモス(Pseudomos)およびアセトバクター(Acetobacter)を使用してmyo−イノシトール(2)から出発することを含む(Kenjiら、JP2003/102492)。他の調製方法は、ベンゾキノンから調製されたコンズリトールから出発するもの(Bolckら、Eur.J.Org.Chem.、2003年、第10巻、1958頁)、有機シリル基を保護に使用し、次いで化学的もしくは酵素的な還元を行う(Kenjiら、JP2003/107287ことに基づく、またはscyllo−イノソース(3)の酵素的還元(Kenjiら、WO2005/035774)を経由してmyo−イノシトール(2)から調製されたscyllo−イノソース(3)を経由するもの、またはmyo−イノシトール(2)から(Cruzら、WO2007/119108)のものを含む。
【0007】
これらの中では、限られた方法のみが、大きなスケールで、特に、医薬用途に適した高品質でのscyllo−イノシトール(1)の調製に適している。しかし、Kenjiら(WO2005/035774)により記述された方法は、アセトバクター属に属する微生物を使用するmyo−イノシトール(2)のscyllo−イノソース(3)への変換、続いてscyllo−イノソース(3)のscyllo−イノシトール(1)への酵素的還元に基づいているものであるが、キログラムスケールの操作に適していることが示された。
【0008】
上の段落に記述した方法では、myo−イノシトール(2)が最初にscyllo−イノソース(3)に変換され、次いでそれが大きな百分率でscyllo−イノシトール(1)に変換されるが、大部分のscyllo−イノソース(3)が未反応のまま残り、結果的に混合物をもたらす。さらに、この変換においては、多量のscyllo−クエルシトール(6)も、副生成物として形成される。所望のscyllo−イノシトール(1)を未反応のscyllo−イノソース(3)および副生成物のscyllo−クエルシトール(6)の混合物から分離するために、Kenjiら(WO2005/035774)は、最初に細胞を分離し、続いてscyllo−イノシトール(1)をscyllo−イノシトール−ジボレート−ジナトリウム複合体(SBC塩、5)に化学的に変換し、続いてメタノールと水との混合物中で塩酸を使用して加水分解した。この変換は、SBC塩(5)の形成のためにホウ酸の使用(Weissbach、J.Am.Chem.Soc.、1957年、第23巻、329頁およびGrainger、Acta Cryst.、1981年、第B37巻、563頁)、および単に装置を腐食させるだけでなく有害な煙霧に対する安全確保のために特別の操作手順を必要とする濃塩酸の使用を必要とする。加えて、scyllo−イノシトール(1)の原体中の関連物質不純物である、いかなる残留量のD−およびL−chiro−イノシトール(7および8)の両方の形成または存在も判定されていない。
【0009】
【化2】

【0010】
さらに、この方法は、SBC塩(5)への化学的選択的誘導体化のために、scyllo−イノシトール(1)の回収中にホウ酸を使用することを必要とするため、ホウ酸を引き続きのステップで、最終原体中の適当レベルにまでICHおよび規制ガイドラインに従って除去することが重要となる。加えて、生物変換ステップの終了時に多量で存在する未反応のscyllo−イノソース(3)が、塩基および熱分解により破壊されるという事実により、この操作に起因する潜在的な収率損失は不可避である。それゆえ、試薬、全体収率および生成物の品質確保に関して、scyllo−イノシトール(1)の改善された製作方法に対する必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2004/075882号
【特許文献2】独国特許発明第1985/3405663号明細書
【特許文献3】特開2003/102492号公報
【特許文献4】特開2003/107287号公報
【特許文献5】国際公開第2005/035774号
【特許文献6】国際公開第2007/119108号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Martinez−Castroら、Food Chem.2004年、第87巻、325頁
【非特許文献2】Shermanら、Biochemistry、1968年、第7巻、819頁
【非特許文献3】Michaelisら、NMR Biomed.、1993年、第6巻、105頁
【非特許文献4】Griffithら、同書、2007年、第20巻、709頁
【非特許文献5】McLaurinら、J.Mol.Biol.、1998年、第278巻、183頁
【非特許文献6】McLaurinら、同書、2000年、第275巻、18495頁
【非特許文献7】Feniliら、同書、2007年、第85巻、603頁
【非特許文献8】Wolfson、Chem.Biol.、2008年、89頁
【非特許文献9】Kluyverら、Rec.Trav.Chim.Pays−Bas.、1939年、第58巻、956頁
【非特許文献10】Posternak、Helv.Chim.Acta、1941年、第24巻、1045頁
【非特許文献11】Reymond、Helv.Chim.Acta、1957年、第40巻、492頁
【非特許文献12】Angyalら、J.Chem.Soc.、1957年、3682頁
【非特許文献13】Nakajimaら、Chem.Ber.1959年、第92巻、173頁
【非特許文献14】Sasakiら、Carbohydrate Res.、1987年、第167巻、171頁
【非特許文献15】Sasakiら、Carbohydrate Res.、1988年、第183巻、1頁
【非特許文献16】Ghias−ud−dinら、J.Chromatogr.、1981年、第211巻、295頁
【非特許文献17】Kohneら、Liebigs Ann.Chem.、1985年、第4巻、866頁
【非特許文献18】Hussonら、Carbohydrate Res.、1998年、第307巻、163頁
【非特許文献19】Takahashiら、J.Org.Chem.、2001年、第66巻、2705頁
【非特許文献20】Sarmahら、Carbohydrate Res.、2003年、第338巻、998頁
【非特許文献21】Bolckら、Eur.J.Org.Chem.、2003年、第10巻、1958頁
【非特許文献22】Weissbach、J.Am.Chem.Soc.、1957年、第23巻、329頁
【非特許文献23】Grainger、Acta Cryst.、1981年、第B37巻、563頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の要旨)
本発明は、scyllo−イノシトール(1)の調製のための効率的で安全な手法を提供する。本発明のある実施形態において、scyllo−イノシトールは以下の方法に従って製造される。
【0014】
【化3】

【0015】
他の実施形態において、本発明は、(a)scyllo−イノソース(3)およびscyllo−イノシトール(1)を製造するために、myo−イノシトール(2)を生物変換工程に掛けるステップ;(b)ステップ(a)で製造されたscyllo−イノソースおよびscyllo−イノシトールを塩基性化合物と反応させ、加熱してscyllo−イノソースを分解し細胞集団を溶解するステップ;(c)ステップ(b)のscyllo−イノシトールをscyllo−イノシトール−ジボレート−ジナトリウム塩複合体に、ホウ酸および水酸化ナトリウムを使用して変換するステップ;(d)粗scyllo−イノシトールを製造するために、scyllo−イノシトール−ジボレート−ジナトリウム塩複合体を加水分解するステップ;ならびに(e)結晶性scyllo−イノシトールを製造するために、粗scyllo−イノシトールを結晶化させるステップを含む、scyllo−イノシトール(1)を調製するための方法を含む。ステップ(a)の生物変換は発酵を含んでもよく、これによって発酵は、myo−イノシトールをscyllo−イノシトールに変換することができる微生物により促進される。myo−イノシトールをscyllo−イノシトールに変換することができる微生物は、アセトバクター・セレビシエ(Acetobacter cerevisiae)、アセトバクター・マロルム(Acetobacter malorum)、アセトバクター・オレアネンシス(Acetobacter orleanensis)、アセトバクター・インドネシエンシス(Acetobacter indonesiensis)、アセトバクター・オリエンタリス(Acetobacter orientalis)、アセトバクター・アセチ(Acetobacter aceti)、アセトバクター・リケファシエンス(Acetobacter liquefaciens)、アセトバクター・パスツリアナス(Acetobacter pasteurianus)、アセトバクター・ハンセニイ(Acetobacter hansenii)、バークホルデリア・アンドロポゴニス(Burkholderia andropogonis)、バークホルデリア・カリオフィリ(Burkholderia caryophylli)およびバークホルデリア・グラミニス(Burkholderia graminis)を含む。一般に、myo−イノシトールをscyllo−イノシトールに変換することができる微生物は、凍結乾燥されたまたは凍結された培養物の形態で提供される。本方法のステップ(a)は、約20℃から約40℃の範囲の温度で実行される。他の実施形態において、ステップ(a)は、約26℃から約30℃の範囲の温度で実行される。
【0016】
ステップ(b)の塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウムおよびこれらの組合せを含み得る。ステップ(b)で発酵混合物に添加される塩基性化合物の量は、一般に、発酵混合物のpHを約10から約13の範囲の水準にまで高めるのに十分な量である。他の実施形態において、ステップ(b)で発酵混合物に添加される塩基性化合物の量は、発酵混合物のpHを約12から約13の範囲の水準にまで高めるのに十分な量である。ステップ(b)の加熱工程は、典型的には、発酵混合物の温度を高めるために、蒸気を直接注入することを含み、温度は約100℃から約150℃の範囲の水準にまで高められる。他の実施形態において、発酵混合物の温度は、約115℃から約130℃の範囲の水準にまで高められる。追加の実施形態において、ステップ(b)で製造された反応混合物は、約80℃未満の温度にまで引き続いて冷却され得る。
【0017】
ステップ(c)の反応は、典型的には、約60℃から約80℃の範囲の温度で実行される。ステップ(c)の反応混合物中に組み込まれる水酸化ナトリウムの量は、一般に、約8.5から約11の範囲のpHを確立するのに十分である。他の実施形態において、ステップ(c)の反応混合物中に組み込まれる水酸化ナトリウムの量は、約9.5から約10.5の範囲のpHを確立するのに十分である。ステップ(c)は、反応混合物を30℃未満の温度にまで引き続いて冷却することをさらに含み得る。ステップ(c)で製造されたscyllo−イノシトール−ジボレート−ジナトリウム塩複合体は、ステップ(d)に先立って、水平スクロールデカンターを引き続いて通過してもよい。
【0018】
ステップ(d)において、scyllo−イノシトール−ジボレート−ジナトリウム塩複合体と水との組合せは、硫酸の添加に先立って、約30℃から約50℃の範囲の温度にまで加熱される。他の実施形態において、ステップ(d)におけるscyllo−イノシトール−ジボレート−ジナトリウム塩複合体と水との組合せは、硫酸の添加に先立って、約36℃から約43℃の範囲の温度にまで加熱される。ステップ(d)におけるscyllo−イノシトール−ジボレート−ジナトリウム塩複合体と水との組合せに添加される硫酸の量は、pHを約2から約3.5の範囲の水準にまで低下させるのに十分である。ステップ(d)の反応生成物は、約15℃から約26℃の範囲の温度にまで引き続いて冷却され得る。他の実施形態において、ステップ(d)の反応生成物は、約18℃から約24℃の範囲の温度にまで引き続いて冷却されてもよい。
【0019】
ステップ(e)は、典型的には、水をステップ(d)で製造された粗scyllo−イノシトールに添加すること、続いて反応混合物を加熱すること、および結晶性scyllo−イノシトールの製造のために引き続いて冷却することを含む。具体的に、水をステップ(d)で製造された粗scyllo−イノシトールに添加することに引き続いて、水と粗scyllo−イノシトールとの反応混合物は、約70℃から約100℃の範囲の温度にまで加熱される。他の実施形態において、水とscyllo−イノシトールとの反応混合物は、約85℃から約95℃の範囲の温度にまで加熱されてもよい。ステップ(e)で製造された水と粗scyllo−イノシトールとの反応混合物は、約8℃から約16℃の範囲の温度にまで引き続いて冷却される。一般には、冷却後、ステップ(e)で製造された粗scyllo−イノシトールと水との溶液は、結晶性scyllo−イノシトールを製造するために、固体ろ過または遠心分離のいずれかによる固体分離工程および乾燥に掛けられる。ある実施形態において、固体分離工程は、バスケット遠心分離およびスクロールデカンター遠心分離を含み得る。さらに、他の実施形態において、乾燥工程は、熱空気を流動床ドライヤー、トレイドライヤー、タンブルドライヤー、およびユニドライヤー中で使用することを含み得る。
【0020】
さらなる実施形態において、本発明は、以下のステップに従う、scyllo−イノシトール−ジボレート−ジナトリウム塩複合体中間体を製造することなく、myo−イノシトールを製造するための方法を含む。
【0021】
【化4】

【0022】
具体的に、本発明は、(a)scyllo−イノソース(3)およびscyllo−イノシトール(1)を製造するために、myo−イノシトール(2)を生物変換工程に掛けるステップ;(b)ステップ(a)で製造されたscyllo−イノソースおよびscyllo−イノシトールを塩基性化合物と反応させ、加熱してscyllo−イノソースを分解し細胞集団を溶解するステップ;ならびに(c)結晶性scyllo−イノシトールを製造するために、粗scyllo−イノシトールを結晶化させるステップを含む、scyllo−イノシトール(1)を調製するための方法を含む。ステップ(a)の生物変換は発酵を含んでもよく、これによって発酵は、myo−イノシトールをscyllo−イノシトールに変換することができる微生物により促進される。myo−イノシトールをscyllo−イノシトールに変換することができる微生物は、アセトバクター・セレビシエ、アセトバクター・マロルム、アセトバクター・オレアネンシス、アセトバクター・インドネシエンシス、アセトバクター・オリエンタリス、アセトバクター・アセチ、アセトバクター・リケファシエンス、アセトバクター・パスツリアナス、アセトバクター・ハンセニイ、バークホルデリア・アンドロポゴニス、バークホルデリア・カリオフィリおよびバークホルデリア・グラミニスを含む。一般に、myo−イノシトールをscyllo−イノシトールに変換することができる微生物は、凍結乾燥され冷凍された培養物の形態で提供される。本発明のステップ(a)は、約20℃から約40℃の範囲の温度で実行される。他の実施形態において、ステップ(a)は、約26℃から約30℃の範囲の温度で実行される。
【0023】
ステップ(b)の塩基性化合物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウムおよびこれらの組合せを含み得る。ステップ(b)で発酵混合物に添加される塩基性化合物の量は、一般には、発酵混合物のpHを約10から約13の範囲の水準にまで高めるのに十分な量である。他の実施形態において、ステップ(b)で発酵混合物に添加される塩基性化合物の量は、発酵混合物のpHを約12から約13の範囲の水準にまで高めるのに十分な量である。ステップ(b)の加熱工程は、典型的には、発酵混合物の温度を高めるために蒸気を直接注入することを含み、温度が、約100℃から約150℃の範囲の水準にまで高められる。他の実施形態において、発酵混合物の温度は、約115℃から約130℃の範囲の水準にまで高められる。追加の実施形態において、ステップ(b)で製造された反応混合物は、約80℃未満の温度にまで引き続いて冷却されてもよい。
【0024】
ステップ(c)は、典型的には、水をステップ(b)で製造された粗scyllo−イノシトールに添加すること、続いて反応混合物を加熱すること、および結晶性scyllo−イノシトールを製造するために引き続いて冷却することを含む。ステップ(c)で製造された水と粗scyllo−イノシトールとの反応混合物は、約8℃から約16℃の範囲の温度にまで引き続いて冷却される。一般に、冷却後、ステップ(c)で製造された粗scyllo−イノシトールと水との溶液は、結晶性scyllo−イノシトールの製造のために、固体ろ過または遠心分離のどちらかによる固体分離工程および乾燥に掛けられる。ある実施形態において、固体分離工程は、バスケット遠心分離およびスクロールデカンター遠心分離を含み得る。さらに、他の実施形態において、乾燥工程は、熱空気を流動床ドライヤー、トレイドライヤー、タンブルドライヤー、およびユニドライヤー中で使用することを含み得る。
【0025】
本発明の他の利点は、以下の詳細な説明を付属している図面と関連して考慮しながら参照することによってよりよく理解されることになるので、容易に認識されよう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の商業的スケールでの方法を示す図である。具体的に、図1は、以下のステップ、生物変換のステップ;発酵混合物に適用される塩基および熱ストレスによる分解のステップ;scyllo−イノシトール−ジボレート−ジナトリウム塩複合体を製造するためのホウ酸および水酸化ナトリウムとの反応のステップ;粗scyllo−イノシトールを製造するための硫酸および水との反応によるscyllo−イノシトール−ジボレート−ジナトリウム塩複合体の加水分解のステップならびに結晶性scyllo−イノシトールを製造するための粗scyllo−イノシトールの結晶化のステップによる、myo−イノシトールをscyllo−イノシトールに変換するための方法を示す。
【図2】本発明の生物変換を実行するための1つの可能な方法を示す図である。具体的に、図2は、作業用ストックバイアル(単数または複数)が解凍され培地を含有するフラスコ(単数または複数)中に播種され、培養物を繁殖させるように撹拌下でインキュベートされる工程を示す。フラスコ(単数または複数)またはこの一部は、成長培地を含有する種発酵槽に播種するのに使用され、細胞集団をさらに繁殖させるためにインキュベートされる。1つの種発酵槽またはこの一部は、myo−イノシトールを含む製造培地を含有する製造発酵槽に播種するのに使用される。スペアとして用意された余分な種発酵槽は廃棄される。発酵のサイクルは、scyllo−イノソース(3)中間体を経由してmyo−イノシトール(2)のscyllo−イノシトール(1)への生物変換を完了するために無菌条件で実行される。発酵時間の終了時に、myo−イノシトール(2)は消費され、中間体scyllo−イノソース(3)は、g/lの量で存在し、生成物scyllo−イノシトール(1)は、発酵ビール中の主生成物である。
【図3】製造発酵槽中への播種に先立って培養物が成長するにつれて、図2に記載した種発酵槽でモニターした典型的な反応パラメーターを示す図である。具体的に、図3は、空気流量、背圧、CER(二酸化炭素発生率二酸化炭素発生率)、DO(溶存酸素)、OUR(酸素取り入れ速度)、pH、撹拌、RQ(呼吸係数、CER/OUR)、および温度などのパラメーターを示す。
【図4】培養物がmyo−イノシトールを生物変換し所定の時間反応するにつれて、図2に記載した種発酵槽でモニターした典型的な反応パラメーターを示す図である。具体的に、図4は、空気流量、背圧、CER(二酸化炭素発生率)、DO(溶存酸素)、OUR(酸素取り入れ速度)、pH、撹拌、温度および重量などのパラメーターを示す。
【図5】出発物質であるmyo−イノシトール(MI)の最終生成物scyllo−イノシトール(SI)への変換の高速液体クロマトグラフィ分析を示す図である。具体的に、図5は、scyllo−イノシトールが時間とともにどのように製造されるか、ならびにmyo−イノシトールならびにscyllo−イノソース(SIS)およびscyllo−クエルシトール(SQ)などのその他の全ての不要な副生成物がどのように最少量で製造されるかを示す。
【図6】scyllo−イノシトール−ジボレート−ジナトリウム塩複合体中間体が発生することなく、scyllo−イノシトールをmyo−イノシトールから製造するためのパイロットスケールの方法を示す図である。
【図7】scyllo−イノシトール−ジボレート−ジナトリウム塩複合体中間体が発生することなく、scyllo−イノシトールをmyo−イノシトールから製造するための実験室スケールの方法を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、scyllo−イノシトールをmyo−イノシトールから製造するためのより効率的で安全な方法に関する。本方法はまた、当技術分野で現在公知のscyllo−イノシトールの方法により典型的に製造される不要な副生成物の製造を最少とする。ある実施形態において、本発明は以下の方法を含む。
【0028】
【化5】

【0029】
示されているように、本発明は、(a)scyllo−イノソースおよびscyllo−イノシトールを製造するために、myo−イノシトールを生物変換工程に掛けるステップ;(b)ステップ(a)で製造されたscyllo−イノソースおよびscyllo−イノシトールを塩基性化合物および熱を用いて反応させて、scyllo−イノソースを分解し細胞集団を溶解するステップ;(c)scyllo−イノシトール−ジボレート−ジナトリウム塩複合体を製造するために、ステップ(b)のscyllo−イノシトールを、ホウ酸および水酸化ナトリウムで変換するステップ;(d)粗scyllo−イノシトールを製造するために、scyllo−イノシトール−ジボレート−ジナトリウム塩複合体を加水分解するステップ;ならびに(e)結晶性scyllo−イノシトールを製造するために、粗scyllo−イノシトールを結晶化させるステップを含む、scyllo−イノシトール(1)を調製するための方法を対象とする。本方法は、バッチ法または連続法のいずれかとして行われてもよい。
【0030】
ステップ(a)の生物変換工程は、一般に、化学反応を実行するために、生きている生物、しばしば微生物を使用するものとして記述され得る。本発明において、微生物は、myo−イノシトールをscyllo−イノシトールに変換することができる発酵混合物を作るために使用される。変換工程は、scyllo−イノシトールおよびscyllo−イノソースを含む複数の生成物の混合物を製造し得ると理解される。scyllo−イノソースは、scyllo−イノシトールの構造誘導体であり、これは長時間反応させると最終生成物のscyllo−イノシトールに変換し得る。本発明の目的は、本発明の方法により製造されるscyllo−イノシトールの量を最大化することであるが、myo−イノシトールが消費された後もいくらかの残留scyllo−イノソースが残存し得ると理解される。「残留」scyllo−イノソースと言う用語は、一般には、myo−イノシトールの初期量の約5重量%から約15重量%の範囲の量のscyllo−イノソースを含むと定義される。
【0031】
様々な微生物が、所望の属種に依存して、myo−イノシトールをscyllo−イノソースおよびscyllo−イノシトールに変換するのに使用し得ると理解される。生物変換ステップ中に組み込まれ得る微生物の適切な例としては、アセトバクター・セレビシエ、アセトバクター・マロルム、アセトバクター・オレアネンシス、アセトバクター・インドネシエンシス、アセトバクター・オリエンタリス、アセトバクター・アセチ、アセトバクター・リケファシエンス、アセトバクター・パスツリアナス、アセトバクター・ハンセニイ、バークホルデリア・アンドロポゴニス、バークホルデリア・カリオフィリおよびバークホルデリア・グラミニスならびにこれらの組合せが含まれるが、これらに限られない。ある実施形態において、生物変換工程中に組み込まれる微生物は、アセトバクター属種を含む。選択される微生物に関係なく、微生物は、前もってフリーズドライされた凍結乾燥された属種を含んでもよく、これは典型的には、冷凍温度で保存される。さらに、典型的には、−70℃以下の温度で保存される冷凍バイアルが使用される。冷凍バイアルがステップ(a)の生物変換工程中に組み込まれる場合、微生物は、フラスコの培地中への導入に先立って解凍されるべきである。ステップ(a)の生物変換工程は、典型的には、約20℃から約40℃の範囲の温度で実行される。他の実施形態において、ステップ(a)は、約26℃から約30℃の範囲の温度で実行される。さらなる実施形態において、ステップ(a)は、約28℃の温度で実行される。
【0032】
ステップ(a)の温度範囲に加えて、生物変換工程は、典型的には、約5から約9のpH範囲で始められる。ある実施形態において、発酵工程の開始時の初期のpHは、約7である。pHの水準は、酸性の副生成物が製造されるにつれて、発酵工程の間に高まり得るまたは低下し得ると理解される。pHの水準が、発酵工程の完結までにpH4未満の水準にまで低下することは珍しいことではない。発酵工程の長さは、変換されるmyo−イノシトールの量、ならびに生物変換工程のために選択される微生物のタイプに依存して変化し得る。
【0033】
当業者ならば、生物変換工程は、当技術分野で公知の任意の発酵工程を利用し得ることが理解されよう。ある実施形態において、微生物は、製造発酵工程に直接播種してもよく、これによって、myo−イノシトールは直ちに変換される。他の実施形態において、ステップ(a)は、フラスコおよび種発酵槽繁殖段階ならびに製造発酵段階を含む培養物の増殖のいくつかの段階を含み得る。この工程では、微生物は、1個または複数の種発酵槽タンク中に組み込まれ、設定された長さの時間、培地上で成長させられる。種発酵槽中での成長は、それがmyo−イノシトールを生物変換し所望の最終生成物の製造を開始することができる製造発酵槽に播種するのに引き続いて使用される十分な量の微生物を展開する。図2に1つの例示実施形態が示されており、図2は、十分な培養物集団を展開するためにフラスコ(単数または複数)および種発酵槽(単数または複数)が使用される系を示す。スペアとして設定され得る余分なフラスコおよび種発酵槽は廃棄される。種発酵槽は次いで、製造発酵槽に播種するために使用される。一方で、種発酵槽に組み込まれる特定の条件は、所望の生成物に依存して変化し得るが、図3は、種発酵槽中に組み込まれるパラメーターに関する1つの例示的な種プロファイルを提供し、パラメーターには空気流量、背圧、CER(二酸化炭素発生率)、DO(溶存酸素)、OUR(酸素取り入れ速度)、pH、撹拌、RQ(呼吸係数、CER/OUR)、および温度が含まれる。さらに、図4は、1つの例示的な実施形態を示し、これによってグラフは、空気流量、背圧、CER(二酸化炭素発生率)、DO(溶存酸素)、OUR(酸素取り入れ速度)、pH、撹拌、温度および重量を含む製造発酵槽タンクの種々のパラメーターを示す。さらに、図5は、ステップ(a)に類似の典型的な発酵工程についての高速液体クロマトグラフィ(HPLC)分析を示す。具体的に、図5で示されたように、myo−イノシトールは、scyllo−イノソースおよびscyllo−クエルシトールを含む他の副生成物を発酵の間に最少量しか形成せず、scyllo−イノシトールに変換される。当業者ならば、「最少量の副生成物」という用語が、myo−イノシトールの初期量の約10−15%未満の量の副生成物を含むと解釈される得ることが理解されよう。
【0034】
本方法のステップ(b)は、ステップ(a)で製造されたscyllo−イノソースおよびscyllo−イノシトールを塩基性化合物と反応させ、加熱して残留scyllo−イノソースを分解することを含む。一般に、ステップ(b)に使用される塩基性化合物は、発酵混合物のpHを所望の水準にまで上昇させることができる任意の化合物を含み得る。ステップ(b)の塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ホウ素ナトリウム、炭酸カルシウムおよびこれらの組合せを含み得るが、これらに限られない。本方法のステップ(b)は、一般に、約10から約14の範囲のpH水準で実行される。他の実施形態において、ステップ(b)は、一般に、約12から約13の範囲のpH水準で実行される。それゆえ、ステップ(b)の反応中に組み込まれる塩基性化合物は、典型的には、pHを所望の水準にまで上昇させるのに十分な量で添加される。このように、反応ステップ(b)中に組み込まれる塩基性化合物の量は、当業者により容易に決定され得る。
【0035】
ステップ(b)の加熱工程は、典型的には、scyllo−イノソースおよび反応細胞集団の分解を促進するために反応温度を高めることができる任意の工程を含む。反応混合物を加熱する手段は、設備の製作制限に依存して変化し得る。ある実施形態において、発酵混合物の温度を高めるために直接蒸気を注入することが使用され得る。他の実施形態において、ステップ(b)は、反応温度を高めるために熱交換器を組み込んでもよい。使用される加熱機構に関係なく、発酵混合物の温度は、約100℃から約150℃の範囲の水準にまで高められる。他の実施形態において、ステップ(b)の発酵混合物の温度は、一般には、約115℃から約130℃の範囲の水準にまで高められる。さらなる実施形態において、発酵混合物の温度は、一般には、約120℃から約125℃の範囲の水準にまで高められる。
【0036】
ステップ(b)の発酵混合物を十分な時間反応させた後に、発酵混合物は、ステップ(c)の反応物の組込みに先立って冷却され得る。一般には、ステップ(b)は、約5分から約60分の間実行される。さらに、ある実施形態において、ステップ(b)の発酵混合物は、約90℃未満の温度にまで冷却される。他の実施形態において、ステップ(b)の混合物は、約80℃未満の温度にまで冷却される。
【0037】
ステップ(c)の反応は、scyllo−イノシトール−ジボレート−ジナトリウム塩複合体を製造するために実行される。具体的に、ステップ(b)で製造されたscyllo−イノシトールは、上述したscyllo−イノシトール−ジボレート−ジナトリウム塩複合体を製造するためにホウ酸および水酸化ナトリウムと反応させられる。一般に、ステップ(c)で使用されるホウ酸の量は、約1.5から約4の範囲のホウ酸対scyllo−イノシトールのモル比をもたらすのに十分である。他の実施形態において、ホウ酸対scyllo−イノシトールのモル比は、約2から約3.5の範囲である。さらなる実施形態において、ホウ酸対scyllo−イノシトールのモル比は、約2.5から約3の範囲である。重要なことには、本発明のステップ(c)は、塩化ナトリウムをscyllo−イノシトールからscyllo−イノシトール−ジボレート−ジナトリウム塩複合体への変換に組み込まない。塩化ナトリウムは、ステンレス鋼および他の装置の表面に対して腐食性であることが公知である。このため、この腐食性試薬の除去は、本方法の効率を改善する。ステップ(c)は、典型的には、約60℃から約80℃の範囲の温度で実行される。ステップ(c)の反応混合物中に組み込まれる水酸化ナトリウムの量は、一般に、約8.5から約11の範囲のpHを確立するのに十分である。他の実施形態において、ステップ(c)の混合物中に組み込まれる水酸化ナトリウムの量は、一般に、約9.5から約10.5の範囲のpHを確立するのに十分である。このように、反応ステップ(c)中に組み込まれる水酸化ナトリウムの量は、当業者によって容易に決定され得る。ステップ(c)は、30℃未満の温度にまで混合物を引き続いて冷却することをさらに含み得る。
【0038】
ステップ(c)で製造されたscyllo−イノシトール−ジボレート−ジナトリウム塩複合体は、典型的には、ステップ(d)に先立って、反応混合物中に残存する液体から分離されることに留意されたい。この工程は、scyllo−イノシトール−ジボレート−ジナトリウム塩複合体(SBC塩)および溶媒の混合物ではなく、むしろscyllo−イノシトール−ジボレート−ジナトリウム塩複合体のみを含む反応生成物をもたらす。scyllo−イノシトール−ジボレート−ジナトリウム塩複合体の分離は重要であり、この理由は、溶媒が典型的には、生成物収率に悪影響を与え得る不純物の多くを含有するためである。それゆえ、溶媒部分を排除し固体のscyllo−イノシトール−ジボレート−ジナトリウム塩複合体のみを製造することによって、本方法は、より純粋な生成物をより大きな生成物収率で製造することができる。scyllo−イノシトール−ジボレート−ジナトリウム塩複合体の分離は、当技術分野で現在公知の任意の方法によって実行されてもよい。ある実施形態において、scyllo−イノシトール−ジボレート−ジナトリウム塩複合体は、scyllo−イノシトール−ジボレート−ジナトリウム塩複合体が反応混合物の洗浄または乾燥の必要がなく分離されてさらなるコスト効率が提供されるように、水平スクロールデカンターを通過する。
【0039】
scyllo−イノシトール−ジボレート−ジナトリウム塩複合体が分離されると、ステップ(c)の生成物は、粗scyllo−イノシトールを製造するために加水分解される。ステップ(d)において、scyllo−イノシトール−ジボレート−ジナトリウム塩複合体は水と混合され、約30℃から約50℃の範囲の温度にまで加熱される。一般には、ステップ(d)で添加される水の量は、SBC塩1キログラム当り水約1リットルからSBC塩1キログラム当り水約7リットルの範囲である。他の実施形態おいて、水は、ステップ(d)で、SBC塩1キログラム当り約3から約5リットルの範囲の量で添加される。さらなる実施形態において、水は、SBC塩1キログラム当り約4リットルの量で添加される。加えて、scyllo−イノシトール−ジボレート−ジナトリウム塩複合体と水との組合せは、約36℃から約43℃の範囲の温度にまで加熱される。本方法が、加水分解工程に有機溶媒を組み込まないが、代わりに主要溶媒として水に頼っていることに留意するのは重要である。有機溶媒は、本方法での使用後の溶媒の廃棄に由来する潜在的な環境汚染に関する問題を引き起こす。溶媒として水を使用することは、有機溶媒の廃棄に伴う汚染問題を排除する。
【0040】
指定された温度範囲が達成されると、scyllo−イノシトール−ジボレート−ジナトリウム塩複合体の加水分解を誘発するために、鉱酸がscyllo−イノシトール−ジボレート−ジナトリウム塩複合体と水との組合せに添加される。上記の反応スキームは、硫酸の使用を示すが、当業者ならば、加水分解を誘発し得る任意の鉱酸を使用し得ることが理解されよう。鉱酸としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、次亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸、過ヨウ素酸、硫酸、フルオロ硫酸、硝酸、リン酸、フルオロアンチモン酸、フルオロホウ酸、ヘキサフルオロホウ酸、およびクロム酸が含まれるが、これらに限られない。ある実施形態において、鉱酸は、塩酸、硫酸、およびリン酸を含む。さらなる実施形態において、鉱酸は、硫酸を含む。ステップ(d)でのscyllo−イノシトール−ジボレート−ジナトリウム塩複合体と水との組合せに添加される鉱酸の量は、一般には、pHを4未満の水準にまで低下させるのに十分な量である。ある実施形態において、混合物に添加される鉱酸の量は、pHを約2から約3.5の範囲の水準にまで低下させるのに十分な量である。このように、反応ステップ(d)中に組み込まれる鉱酸の量は、当業者により容易に決定され得る。
【0041】
ステップ(d)の反応生成物は、約15℃から約26℃の範囲の温度にまで引き続いて冷却され得る。他の実施形態において、ステップ(d)の反応生成物は、約18℃から約24℃の範囲の温度にまで引き続いて冷却され得る。冷却工程が完了すると、ステップ(d)の反応生成物は、余分な水を反応混合物から除去するためにろ過工程に掛けられ得る。ろ過工程は、当技術分野で公知のもののいずれかを含んでもよく、特に、遠心分離を含んでもよい。ステップ(d)の反応生成物は、一般に、反応が完結した後乾燥されないことに留意されたい。代わりに、粗scyllo−イノシトールが、ステップ(d)の反応から形成されたウエットケーキとして、ステップ(e)で処理される。乾燥工程は、単に処理時間を増加させるだけでなく、いくらかの生成物の損失を結果としてもたらす。
【0042】
ステップ(e)は、典型的には、水をステップ(d)で製造された粗scyllo−イノシトールに添加すること、続いて反応混合物を加熱すること、および結晶性scyllo−イノシトールを製造するために引き続いて冷却することを含む。一般に、水は粗scyllo−イノシトールに、粗scyllo−イノシトール1キログラム当り水約6から約20リットルの範囲の量で添加される。他の実施形態において、水は粗scyllo−イノシトールに、粗scyllo−イノシトール1キログラム当り水約12から約18リットルの範囲の量で添加される。さらなる実施形態において、水は粗scyllo−イノシトールに、粗scyllo−イノシトール1キログラム当り水約15から約17リットルの範囲の量で添加される。水をステップ(d)で製造された粗scyllo−イノシトールに添加することに引き続いて、水と粗scyllo−イノシトールとの反応混合物は、約70℃から約100℃の範囲の温度にまで加熱される。他の実施形態において、水とscyllo−イノシトールとの反応混合物は、約85℃から約95℃の範囲の温度にまで加熱されてもよい。ステップ(e)で製造された水と粗scyllo−イノシトールとの反応混合物は、約0℃から約25℃の範囲の温度にまで引き続いて冷却される。他の実施形態において、ステップ(e)で製造された水と粗scyllo−イノシトールとの反応混合物は、約8℃から約16℃の範囲の温度にまで引き続いて冷却される。一般に、冷却後、ステップ(e)で製造された粗scyllo−イノシトールと水との溶液は、固体ろ過または遠心分離のどちらかによる固体分離工程、および結晶性scyllo−イノシトールを製造するための乾燥に掛けられる。一般に、固体分離工程としては、当技術分野で公知の任意の工程を含み得る。ある実施形態において、固体分離工程は、バスケット遠心分離およびスクロールデカンター遠心分離を含む。遠心分離は、所望の化合物を単離するための、複数の前置および一次フィルターの使用を含んでもよい。さらに、乾燥工程は、当技術分野で現在公知の乾燥のための任意の工程を含んでもよい。ある実施形態において、乾燥方法は、熱空気を流動床ドライヤー、トレイドライヤー、タンブルドライヤーおよびユニドライヤー中で使用することを含む。
【0043】
この実施形態に記載したように、scyllo−イノシトールを製造するための方法は、当技術分野で公知の方法に比較して複数の利益を提供する。この実施形態の方法は、廃棄に困難さがあり環境に悪影響を与え得る有機溶媒を使用する必要がない。さらに、本実施形態の方法はまた、塩化ナトリウムなどの特定の腐食性反応物を使用する必要はない。これらの利益に加えて、本方法は、scyllo−イノシトールの予想外の高収率をもたらす。一般に、本方法は、本方法で使用したmyo−イノシトールの初期量に基づいて、約20%から約50%の範囲のscyllo−イノシトールの収率をもたらす。他の実施形態において、scyllo−イノシトールの収率は、本方法で使用したmyo−イノシトールの初期量に基づいて、約25%から約35%の範囲である。
【0044】
別の実施形態において、本発明は、粗scyllo−イノシトールを生物変換ステップで作りscyllo−イノソースを塩基性化合物および熱への曝露によって引き続いて分解し続いて化合物を結晶化させるような、scyllo−イノシトール−ジボレート−ジナトリウム塩複合体が形成されない方法を包含する。この実施形態は以下の各ステップで例示される。
【0045】
【化6】

【0046】
例示されているように、この実施形態は、(a)scyllo−イノソースおよびscyllo−イノシトールを製造するために、myo−イノシトールを生物変換工程に掛けるステップ;(b)ステップ(a)で製造されたscyllo−イノソースおよびscyllo−イノシトールを塩基性化合物および熱を用いて反応させてscyllo−イノソースを分解するステップ;ならびに(c)結晶性scyllo−イノシトールを製造するために、粗scyllo−イノシトールを結晶化させるステップを含む、scyllo−イノシトール(1)を調製するための方法を含む。本発明のこの実施形態は、図6および7に例示されている。本実施形態のステップ(a)および(c)は、前述した実施形態のステップ(a)および(e)に、それぞれ類似していることに留意されたい。それゆえ、ステップ(a)および(e)に関係しているパラメーターおよび考慮事項は、本実施形態のステップ(a)および(c)それぞれに対して参照され、本明細書に組み込まれている。
【0047】
本実施形態のステップ(b)は、scyllo−イノソースの分解のための工程を対象とする。前の実施形態と同様に、scyllo−イノソースの分解のために使用される塩基性化合物は、一般に、反応混合物のpHを高めることができるものである。組み込まれ得る塩基性化合物の適切な例としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ホウ素ナトリウム、炭酸カルシウムおよびこれらの組合せが含まれるが、これらに限られない。ある実施形態において、塩基性化合物は、水酸化ナトリウムを含む。さらなる実施形態において、塩基性化合物は、水素化ホウ素ナトリウムを含む。
【0048】
ステップ(b)の反応の温度およびpH範囲は、一般に、scyllo−イノソースを分解するために利用される塩基性化合物に依存する。scyllo−イノシトール−ジボレート−ジナトリウム塩複合体を形成しないでscyllo−イノシトールを製造するための方法のある実施形態において、水酸化ナトリウムは、ステップ(b)の塩基性化合物として利用され、反応混合物のpHは、約12から約13の範囲の水準にまで高められる。この実施形態において、反応混合物の温度は、約100℃から約150℃の範囲の水準にまで、特に、約115℃から約130℃の範囲の温度にまで高められる。
【0049】
scyllo−イノシトール−ジボレート−ジナトリウム塩複合体を形成しないでscyllo−イノシトールを製造するための方法の他の実施形態において、水素化ホウ素ナトリウムが、ステップ(b)に使用される塩基性化合物として選択されてもよい。この実施形態において、反応混合物は、典型的には、約6から約8の範囲のpH水準までに調節される。水素化ホウ素ナトリウムは反応混合物に、約50℃から約70℃の範囲の温度で添加され得る。他の実施形態において、水素化ホウ素ナトリウムは反応混合物に、約60℃の温度で添加してもよい。その後、scyllo−イノシトール、scyllo−イノソースおよび水素化ホウ素ナトリウムの得られた混合物は、硫酸を使用して、約3.5以下のpH水準にまで酸性化される。酸性化された反応混合物は、次いで、約80℃から約100℃の範囲の温度にまで加熱され得る。ある実施形態において、酸性化された反応混合物は、約90℃の温度にまで加熱され得る。特定のこの実施形態は、図7に例示されている。
【0050】
ステップ(b)で使用される塩基性化合物に関係なく、ステップ(b)の反応混合物を加熱した後、これはステップ(c)の結晶化工程の準備のために引き続いて冷却される。ステップ(b)の反応混合物は、約0℃から約25℃の範囲の温度にまで冷却され得る。他の実施形態において、ステップ(b)の反応混合物は、約8℃から約16℃の範囲の温度にまで引き続いて冷却される。
【0051】
前の実施形態よりも少ない工程ステップを組み込んでいる本実施形態は、有機酸または特定の腐食性反応物を使用しないscyllo−イノシトールを製造するための方法を提供する。従来技術で公知の方法に対するこれらの変更は、より効率的で環境に注意を払ったscyllo−イノシトールを製造する方法を提供する。
【0052】
本発明の化合物および方法は、以下の実施例を参照してよりよく理解されるが、これらの実施例は、本発明の範囲の例示として意図しているものであり、本発明の範囲を限定するものではない。それぞれの実施例は、種々の中間体化合物を調製する少なくとも1つの方法を例示し、方法全体において利用される各中間体をさらに例示している。これらは、特定の好ましい実施形態であり、これらの実施形態は本発明の範囲を限定することを意図していない。反対に、本発明は、特許請求の範囲内に含まれ得るような全ての代替、変形および均等物を含み、反応条件、使用する試薬、ならびに生物変換および合成経路の順序の適切な操作を含む通常の実験操作、反応条件に適合し得る任意の化学官能基の保護、およびこの方法の反応順序中の適切な時点での脱保護は、本発明の範囲に含まれる。
【実施例】
【0053】
[実施例1]
myo−イノシトール(2)のscyllo−イノシトール(1)への変換およびscyllo−イノソース(3)および細胞集団の分解
【0054】
【化7】

【0055】
細胞バンクおよび作業用ストックは、培養物および凍結保護剤(単数および複数)を含有する20mlのバイアル中で、凍結乾燥アセトバクター属種から作製し、−70℃以下の温度で保存した。作業用ストックを解凍し、4Lフラスコ中で1.5リットルフラスコ培地に播種する。次いでこれを240±10rpmで約24時間、28±2℃の温度でインキュベートする。光学濃度(OD)および残留グルコースを測定した。フラスコまたはこの一部を、細胞集団の繁殖のために、0.01から0.1%で種発酵槽に播種するのに使用する。種発酵槽を、24−30時間のサイクルで、28℃、約150rpmの撹拌、および約1VVMのエアレーションで制御する。種発酵槽またはこの一部を、myo−イノシトール(2)の2500Kgスケールで、1−5%で、製造発酵槽に播種するのに使用する。発酵条件は以下のようである。温度:28℃、撹拌:50rpm、エアレーション:0.5VVM、0−5時間、および1VVMへの勾配、および背圧:0.5psig。pHは制御せず、開始時の約7の出発pHから発酵の終了時の4未満に下がるのをモニターする。発酵サイクルは、scyllo−イノソース(3)中間体を経由してmyo−イノシトール(2)のscyllo−イノシトール(1)への生物変換を完了するために、無菌条件で5日間実行した。5日間の発酵時間の終了時に、myo−イノシトール(2)は消費され、scyllo−イノソース(3)は約10−15g/Lで存在し、生成物scyllo−イノシトール(1)は約55−60g/Lと測定される。細胞集団、scyllo−イノシトール(1)および少量のscyllo−イノソース(3)を含有する得られた発酵ブロスのpHを、25%水酸化ナトリウム水溶液を使用して約12−13にまで調節し、ブロスを、120−125℃にまで、10分以上の間、蒸気を使用して加熱した。得られた暗褐色のストレスを与えたブロスを80℃未満の温度にまで冷却し、ストレスを与えたブロスの試料について、存在するscyllo−イノシトール(1)の量をg/L単位で決定するために試験した。アッセイに基づいて、scyllo−イノシトールの総量は、ストレスを与えたブロス中に1377Kg存在すると推定された。
【0056】
[実施例2]
ストレスを与えたブロス中のscyllo−イノシトール(1)のscyllo−イノシトール−ジボレート−ジナトリウム塩複合体(SBC塩、5)への選択的変換および水平スクロールデカンターを使用する分離
【0057】
【化8】

【0058】
別のSS反応器中で、1323Kgのホウ酸(2.8当量)を、2065Lの水[scyllo−イノシトール(1)1Kg当り1.5L]中に懸濁させ、60℃以内の温度にまで加熱した。得られたスラリーを、塩基−熱ストレスを与えたブロスおよびscyllo−イノシトール(1)を含有する発酵容器に移した。追加量の水[1377L、scyllo−イノシトール(1)1Kg当り1.0L]をホウ酸反応器へ加え、60℃以上の温度にまで加熱し、ストレスを与えたブロスを含有する発酵容器へ溶液を移した。ストレスを与えたブロス、scyllo−イノシトール(1)およびホウ酸を含有する発酵容器中の内容物の総体積は、32500Lと測定され、これは、ストレスを与えたブロス中のscyllo−イノシトール(1)1Kg当り4Lであるステージ−3の出発体積を維持するために、水1914Lを添加することにより34414Lにさらに調節された。混合物の温度を60−80℃にまで調節し、混合物のpHを9.5−10.5にまで調節するために、25%水酸化ナトリウム水溶液を、撹拌下、1時間以上にわたって加えた。scyllo−イノシトール−ジボレート−ジナトリウム塩複合体(SBC塩、5)を含有する得られたスラリーを、反応混合物の温度を60−80℃の間に維持しながら、3時間以上の間混合し、次いで30℃より低い温度にまで冷却した。
【0059】
別のSS反応容器中で、水2753L[scyllo−イノシトール(1)1Kg当り2.0L]を取り、15−25℃の温度で穏やかに混合した。発酵反応容器からのscyllo−イノシトール−ジボレート−ジナトリウム塩複合体(SBC塩、5)スラリーを、液体からscyllo−イノシトール−ジボレート−ジナトリウム塩複合体(SBC塩、5)を分離するために、固体を別のSS反応容器中の混合水(2753L)中へ直接落としながら、約2200RPMで、流速20−100L/hで水平スクロールデカンター(CA−225)に通過させた。水平スクロールデカンター(CA−225)からの暗褐色の液体廃棄物を、scyllo−イノシトール−ジボレート−ジナトリウム塩複合体(SBC塩、5)の固体が存在しないことを確認するために、定期的に検査した。発酵反応器からの全てのスラリーが通過し全てのscyllo−イノシトール−ジボレート−ジナトリウム塩複合体(SBC塩、5)が分離されSS反応容器中の水中へ落とされるまで、固体が存在しないことを確実にするために、水平スクロールデカンターのRPMおよびスラリー流速を、必要に応じて、調節した。
【0060】
[実施例3]
scyllo−イノシトール−ジボレート−ジナトリウム塩複合体(SBC塩、5)のscyllo−イノシトール(1)への加水分解および粗scyllo−イノシトール(1)の単離
【0061】
【化9】

【0062】
水中にscyllo−イノシトール−ジボレート−ジナトリウム塩複合体(SBC塩、5)を含有するSS反応容器に、追加量の水[2753L、[scyllo−イノシトール(1)1Kg当り2.0L]を加え、混合物を36−43℃の温度にまで加熱した。この懸濁液に、激しい撹拌下で、温度を36−43℃の間に維持しながら、濃硫酸を1時間以上にわたってゆっくりと加え、SBC塩懸濁液のpHを、2.0−3.5にまで調節した。硫酸の添加完了後および2.0−3.5の安定pHが達成された後、得られたscyllo−イノシトール(1)のスラリーを、温度を36−43℃の間に維持しながら、4時間以上の間、混合した。混合物を18−24℃の温度にまで冷却し、粗scyllo−イノシトール(1)を、バスケット遠心分離によるろ過により、ウエットケーキ(1746Kg)として単離し、ドラム中に粗生成物として集めた。それぞれ約3−4個のドラムからの粗scyllo−イノシトール(1)生成物の複数の複合試料を、乾燥減量(LOD)について試験し、次のステージに進む前の乾燥量基準でのscyllo−イノシトール(1)を1370Kgと計算した。
【0063】
[実施例4]
粗scyllo−イノシトール(1)ウエットケーキの結晶化およびscyllo−イノシトール(1)の単離
【0064】
【化10】

【0065】
粗scyllo−イノシトール(1)ウエットケーキを結晶化させ、乾燥し、少しずつ粉砕し、粗scyllo−イノシトール(1)の全てのサブバッチの処理が完了するまで、scyllo−イノシトール(1)生成物をブレンダー中に入れた。このようにして、粗scyllo−イノシトール(1)ウエットケーキの乾燥重量に基づいて最大220Kgを、純水3600L[粗scyllo−イノシトール(1)1Kg当り16.5L]を含有するSS反応容器に加え、懸濁液を、85−95℃にまで、15分以上の間、全ての固体が溶解するまで加熱した。得られた透明で熱いscyllo−イノシトール(1)−水の溶液を、前置および一次フィルターのセット[綿の(1μm規格)デプス前置フィルター、続いて2つの孔径の膜を有するポリエーテルスルホン(PES)フィルター(絶対孔径1.0μmおよび絶対孔径0.22μm)]に通して別のSS結晶化容器中へろ過した。ろ過が完了した後、SS結晶化容器中の透明な褐色の溶液を、85−95℃にまで、10分以上の間加熱し、徐々に3時間以上にわたって8−16℃にまで冷却した。得られたスラリーを遠心分離によりろ過し、無色のscyllo−イノシトール(1)ウエットケーキを、遠心分離1回当り冷純水100L以下で洗浄した。湿ったscyllo−イノシトール(1)を、流動床ドライヤー(FBD)中で1時間以上の間、入口空気温度90℃で熱空気を使用して、scyllo−イノシトール(1)の複合試料が1.0w/w以上の限度で乾燥減量(LOD)試験を満足するまで乾燥した。乾燥されたscyllo−イノシトール(1)生成物は、−840μmの篩を含むComilを使用して粉砕し、全てのサブバッチをBeardsley & Piperブレンダー中に統合する。統合したscyllo−イノシトール(1)生成物は、30RPMで15分以上の間ブレンドし、scyllo−イノシトール(1)生成物の試料を、1.5w/w%以上の限界で乾燥減量(LOD)試験について試験する。生成物は次いで、ポリ内装ドラムに包装して、scyllo−イノシトール(1)の722.6Kgを全体収率28.9%で得た。scyllo−イノシトールは、バスケット遠心分離によりろ過した。
【0066】
[実施例5]
myo−イノシトール(2)のscyllo−イノシトール(1)への変換、SISおよび細胞集団の分解ならびに粗scyllo−イノシトール(1)の直接単離
【0067】
【化11】

【0068】
作業用ストックを解凍し、4Lフラスコ中で1.5リットルフラスコ培地に播種する。これを240±10rpmで約24時間、28±2℃の温度でインキュベートする。光学濃度(OD)および残留グルコースを測定した。フラスコまたはこの一部を、細胞集団の繁殖のために、0.01から0.1%で種発酵槽に播種するのに使用する。種発酵槽を、24−30時間のサイクルで、28℃、約150rpmの撹拌、および約1VVMのエアレーションで制御する。種発酵槽またはこの一部を、myo−イノシトール(2)の40Kgスケールで、1−5%で、製造発酵槽に播種するのに使用する。発酵条件は以下のようである。温度:28℃、撹拌:100rpm、エアレーション:0.5VVM、0−5時間、および1VVMへの勾配、ならびに背圧:0.5psig。pHは制御せず、開始時の約7の出発pHから発酵の終了時の4未満に下がるのをモニターする。発酵サイクルは、scyllo−イノソース(3)中間体を経由してmyo−イノシトール(2)のscyllo−イノシトール(1)への生物変換を完了するために、無菌条件で5日間実行した。5日の発酵時間の終了時に、myo−イノシトール(2)は消費され、scyllo−イノソース(3)は約10−15g/Lで存在し、生成物scyllo−イノシトール(1)は約55−60g/Lと測定される。発酵ブロスのpHを、水酸化ナトリウム溶液を使用して約12−13にまで調節し、混合物を120−125℃にまで10分以上の間加熱した。得られたストレスブロスを4時間以上にわたって15℃未満にまで冷却した。得られたスラリーをバスケット遠心分離によりろ過し、ウエットケーキを冷水(8kg)で洗浄して、薄茶色の結晶性の湿った固体として、scyllo−イノシトール(1)17.6kgを得た。
【0069】
[実施例6]
粗scyllo−イノシトール(1)ウエットケーキの結晶化およびscyllo−イノシトール(1)の単離
【0070】
【化12】

【0071】
粗scyllo−イノシトール(1)ウエットケーキ(乾燥重量に基づいて12.9kgおよび11.0kg)を、水(179kg)を含有する反応器に加え、懸濁液を90℃以上にまで、15分以上の間加熱した。得られた透明な溶液を、0.2μmメンブランフィルターに通して圧力下でろ過した。ろ過した溶液を3時間以上にわたって15℃未満にまで冷却し、得られたスラリーを遠心分離によりろ過しウエットケーキを冷水(1.5kg)で洗浄して、無色(白色)の結晶性の湿った固体として17.6kgのscyllo−イノシトール(1)を得た。湿ったscyllo−イノシトール(1)を100−104℃での真空オーブン中で12時間以上の間乾燥して、4.75kgの乾燥scyllo−イノシトール(1)を製造した。
【0072】
[実施例7]
myo−イノシトール(2)のscyllo−イノシトール(1)への変換および粗scyllo−イノシトール(1)の単離
【0073】
【化13】

【0074】
実施例1で記述したようにして調製された発酵ブロス(2.2L)の一部を、60℃にまで加熱し、pHを約7にまで水酸化ナトリウム溶液を使用して調節した。水素化ホウ素ナトリウム(14.98g)を分割して添加し、混合物を60℃で3時間以上の間保った。得られた混合物を、硫酸を使用してpH3.5以下にまで酸性化し、90℃にまで15分以上の間加熱して、透明な溶液を形成し、次いで15℃未満にまで4時間以上にわたって冷却した。得られたスラリーをろ過し、ウエットケーキを冷水(0.1kg)で洗浄して、薄茶色の結晶性の湿った固体として0.082kgのscyllo−イノシトール(1)を得た。
【0075】
[実施例8]
粗scyllo−イノシトール(1)ウエットケーキの結晶化およびscyllo−イノシトール(1)の単離
【0076】
【化14】

【0077】
粗scyllo−イノシトール(1)ウエットケーキ(乾燥重量に基づいて0.082kgおよび0.081kg)を、水(1.35kg)を含有したガラス反応器に加え、懸濁液を90℃以上にまで15分以上の間加熱した。得られた透明な溶液を、0.2μmのメンブランフィルターに通してポンプを使用してろ過した。ろ過された溶液を15℃未満にまで3時間以上にわたって冷却し、得られたスラリーをろ過し、ウエットケーキを冷水(0.05Kg)で洗浄して、湿ったscyllo−イノシトール(1)を得、これを100−104℃での真空オーブン中で、12時間以上にわたって乾燥して、白色の結晶性固体として、0.047kgのscyllo−イノシトール(1)を得た。
【0078】
前述した詳細な説明および付随の実施例は単に例示的なものであり、本発明の範囲に対する限定ととらえるべきではなく、本発明の範囲は付随の特許請求の範囲およびこの均等物によってのみ定義されることが理解される。開示された実施形態に対する種々の変更および修正は、当業者にとって明白である。このような変更および修正は、化学構造、置換基、誘導体、中間体、合成、処方および/または本発明の使用方法に関するものを制限なく含めて、本発明の精神および範囲から逸脱することなくなされ得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
【化1】

のステップを含む、scyllo−イノシトール(1)を調製するための方法。
【請求項2】
a.scyllo−イノソースおよびscyllo−イノシトールを製造するために、myo−イノシトールを生物変換工程に掛けるステップ;
b.ステップ(a)で製造されたscyllo−イノソースおよびscyllo−イノシトールを塩基性化合物および熱を用いて反応させて、scyllo−イノソースを分解し細胞集団を溶解するステップ;
c.scyllo−イノシトール−ジボレート−ジナトリウム塩複合体を製造するために、ステップ(b)のscyllo−イノシトールを、ホウ酸および水酸化ナトリウムで変換するステップ;
d.粗scyllo−イノシトールを製造するために、scyllo−イノシトール−ジボレート−ジナトリウム塩複合体を硫酸および水で加水分解するステップ;ならびに
e.結晶性scyllo−イノシトールを製造するために、粗scyllo−イノシトールを結晶化させるステップ
を含む、scyllo−イノシトール(1)を調製するための方法。
【請求項3】
生物変換工程が発酵ブロスを作ることを含み、これによって発酵が、myo−イノシトールをscyllo−イノシトールに変換することができる微生物により促進される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
myo−イノシトールをscyllo−イノシトールに変換することができる微生物が、アセトバクター・セレビシエ(Acetobacter cerevisiae)、アセトバクター・マロルム(Acetobacter malorum)、アセトバクター・オレアネンシス(Acetobacter orleanensis)、アセトバクター・インドネシエンシス(Acetobacter indonesiensis)、アセトバクター・オリエンタリス(Acetobacter orientalis)、アセトバクター・アセチ(Acetobacter aceti)、アセトバクター・リケファシエンス(Acetobacter liquefaciens)、アセトバクター・パスツリアナス(Acetobacter pasteurianus)、アセトバクター・ハンセニイ(Acetobacter hansenii)、バークホルデリア・アンドロポゴニス(Burkholderia andropogonis)、バークホルデリア・カリオフィリ(Burkholderia caryophylli)、およびバークホルデリア・グラミニス(Burkholderia graminis)を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
myo−イノシトールをscyllo−イノシトールに変換することができる微生物が、凍結乾燥されたおよび/または凍結された培養物を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(a)が、約20℃から約40℃の範囲の温度で実行される、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(a)が、約26℃から約30℃の範囲の温度で実行される、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(b)の塩基性化合物が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウムおよびこれらの組合せを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(b)で発酵ブロスに添加される塩基性化合物の量が、発酵ブロスのpHを約10から約13の範囲の水準にまで高めるのに十分な量である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(b)で発酵ブロスに添加される塩基性化合物の量が、発酵ブロスのpHを約12から約13の範囲の水準にまで高めるのに十分な量である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(b)が、発酵ブロスの温度を高めるために蒸気を直接注入することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
発酵ブロスの温度が、約100℃から約150℃の範囲の水準にまで高められる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
発酵ブロスの温度が、約115℃から約130℃の範囲の水準にまで高められる、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
発酵ブロスが、約100℃から約150℃の範囲の温度にまで加熱された後、ブロスが約80℃未満の温度にまで冷却される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(c)の反応が、約60℃から約80℃の範囲の温度で実行される、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
ステップ(c)のブロス中に組み込まれる水酸化ナトリウムの量が、約8.5から約11の範囲のpHを確立するのに十分である、請求項2に記載の方法。
【請求項17】
ステップ(c)のブロス中に組み込まれる水酸化ナトリウムの量が、約9.5から約10.5の範囲のpHを確立するのに十分である、請求項2に記載の方法。
【請求項18】
ステップ(c)が、ブロスを30℃未満の温度にまで引き続いて冷却することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
ステップ(c)で製造されたscyllo−イノシトール−ジボレート−ジナトリウム塩複合体が、ステップ(d)に先立って、水平スクロールデカンターを通過する、請求項2に記載の方法。
【請求項20】
ステップ(d)におけるscyllo−イノシトール−ジボレート−ジナトリウム塩複合体と水との組合せが、硫酸の添加に先立って、約30℃から約50℃の範囲の温度にまで加熱される、請求項2に記載の方法。
【請求項21】
ステップ(d)におけるscyllo−イノシトール−ジボレート−ジナトリウム塩複合体と水との組合せが、硫酸の添加に先立って、約36℃から約43℃の範囲の温度にまで加熱される、請求項2に記載の方法。
【請求項22】
ステップ(d)におけるscyllo−イノシトール−ジボレート−ジナトリウム塩複合体と水との組合せに添加される硫酸の量が、pHを約2から約3.5の範囲の水準にまで低下させるのに十分である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
ステップ(d)の反応生成物が、約15℃から約26℃の範囲の温度にまで引き続いて冷却される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
ステップ(d)の反応生成物が、約18℃から約24℃の範囲の温度にまで引き続いて冷却される、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
ステップ(e)が、水を粗scyllo−イノシトールに添加すること、続いて反応混合物を加熱すること、および結晶性scyllo−イノシトールの製造のために引き続いて冷却することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項26】
水をステップ(d)で製造された粗scyllo−イノシトールに添加することに引き続いて、水と粗scyllo−イノシトールとの反応混合物が、約70℃から約100℃の範囲の温度にまで加熱される、請求項2に記載の方法。
【請求項27】
水をステップ(d)で製造された粗scyllo−イノシトールに添加することに引き続いて、水とscyllo−イノシトールとの反応混合物が、約85℃から約95℃の範囲の温度にまで加熱される、請求項2に記載の方法。
【請求項28】
ステップ(e)で製造された水と粗scyllo−イノシトールとの反応混合物が、約8℃から約16℃の範囲の温度にまで引き続いて冷却される、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
ステップ(e)で製造された粗scyllo−イノシトールと水との冷却された溶液が、結晶性scyllo−イノシトールを製造するために、固体分離工程および乾燥に掛けられる、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
固体分離工程が、バスケット遠心分離およびスクロールデカンター遠心分離を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
乾燥工程が、熱空気を流動床ドライヤー、トレイドライヤー、タンブルドライヤー、およびユニドライヤー中で使用することを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
【化2】

のステップを含む、scyllo−イノシトール(1)を調製するための方法。
【請求項33】
a.scyllo−イノソースおよびscyllo−イノシトールを製造するために、myo−イノシトールを生物変換工程に掛けるステップ;
b.ステップ(a)で製造されたscyllo−イノソースおよびscyllo−イノシトールを塩基性化合物および熱を用いて反応させて、scyllo−イノソースを分解し細胞集団を溶解するステップ
c.結晶性scyllo−イノシトールを製造するために、粗scyllo−イノシトールを結晶化させるステップ
を含む、scyllo−イノシトール(1)を調製するための方法。
【請求項34】
生物変換ステップが発酵混合物を作ることを含み、これによって発酵が、myo−イノシトールをscyllo−イノシトールに変換することができる微生物により促進される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
myo−イノシトールをscyllo−イノシトールに変換することができる微生物が、アセトバクター・セレビシエ、アセトバクター・マロルム、アセトバクター・オレアネンシス、アセトバクター・インドネシエンシス、アセトバクター・オリエンタリス、アセトバクター・アセチ、アセトバクター・リケファシエンス、アセトバクター・パスツリアナス、アセトバクター・ハンセニイ、バークホルデリア・アンドロポゴニス、バークホルデリア・カリオフィリ、およびバークホルデリア・グラミニスを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
myo−イノシトールをscyllo−イノシトールに変換することができる微生物が、凍結乾燥された培養物および冷凍された培養物を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
ステップ(a)が、約20℃から約40℃の範囲の温度で実行される、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
ステップ(a)が、約26℃から約30℃の範囲の温度で実行される、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
ステップ(b)の塩基性化合物が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、炭酸カルシウムおよびこれらの組合せを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項40】
ステップ(b)の塩基性化合物が、水酸化ナトリウムを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
ステップ(b)で発酵混合物に添加される塩基性化合物の量が、発酵混合物のpHを約10から約13の範囲の水準にまで高めるのに十分な量である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
ステップ(b)で発酵混合物に添加される塩基性化合物の量が、発酵混合物のpHを約12から約13の範囲の水準にまで高めるのに十分な量である、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
ステップ(b)の塩基性化合物が、水素化ホウ素ナトリウムを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
ステップ(b)で発酵混合物に添加される塩基性化合物の量が、発酵混合物のpHを約6から約8の範囲の水準にまで高めるのに十分な量である、請求項40に記載の方法。
【請求項45】
ステップ(b)が、発酵混合物の温度を高めるために蒸気を直接注入することを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項46】
発酵混合物の温度が、約100℃から約150℃の範囲の水準にまで高められる、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
発酵混合物の温度が、約115℃から約130℃の範囲の水準にまで高められる、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
発酵混合物の温度が、約50℃から約70℃の範囲の水準にまで高められる、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
発酵混合物の温度が、約85℃から約95℃の範囲の水準にまで高められる、請求項45に記載の方法。
【請求項50】
ステップ(b)の反応生成物が、約15℃から約26℃の範囲の温度にまで引き続いて冷却される、請求項33に記載の方法。
【請求項51】
ステップ(b)の反応生成物が、約18℃から約24℃の範囲の温度にまで引き続いて冷却される、請求項33に記載の方法。
【請求項52】
ステップ(b)が、発酵混合物を硫酸の添加により引き続いて酸性化することをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項53】
発酵混合物に添加される硫酸の量が、発酵混合物のpHを約3.5以下の水準にまで低下させるのに十分な量である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
発酵混合物のpHが、約3.5以下の水準にまで低下した後、発酵混合物が約80℃から約100℃の範囲の温度にまで引き続いて加熱される、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
ステップ(c)が、水を粗scyllo−イノシトールに添加すること、続いて反応混合物を加熱すること、および結晶性scyllo−イノシトールを製造するために引き続いて冷却することを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項56】
水をステップ(b)で製造された粗scyllo−イノシトールに添加することに引き続いて、水と粗scyllo−イノシトールとの反応混合物が、80℃を超える温度にまで加熱される、請求項33に記載の方法。
【請求項57】
ステップ(c)で製造された水と粗scyllo−イノシトールとの反応混合物が、約8℃から約16℃の範囲の温度にまで引き続いて冷却される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
ステップ(e)で製造された粗scyllo−イノシトールと水との冷却された溶液が、結晶性scyllo−イノシトールの製造のために、固体分離工程および乾燥に掛けられる、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
固体分離工程が、バスケット遠心分離およびスクロールデカンター遠心分離を含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
乾燥工程が、熱空気を流動床ドライヤー、トレイドライヤー、タンブルドライヤー、およびユニドライヤー中で使用することを含む、請求項58に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−519380(P2013−519380A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553072(P2012−553072)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【国際出願番号】PCT/US2011/024731
【国際公開番号】WO2011/100670
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(512212195)アッヴィ・インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】