説明

ホットメルト樹脂組成物

【課題】複雑な形状を有する電気電子部品用として耐ブロッキング性が良好な封止用ホットメルト樹脂組成物を提供する。
【解決手段】粘着防止剤が、表面に付着してなるホットメルト樹脂組成物であって、前記粘着防止剤の主成分が植物由来の粒子であり、前記粒子の平均粒子径が5〜40μmであり、前記粒子の表面がシリコーンコーティングされてなる、ホットメルト樹脂組成物。植物由来の粒子の融点が、180℃以上である前記のホットメルト樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットメルト樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車、電化製品等の分野において使用されている、回路基板、コネクター、LED等の電気電子部品は、信頼性のある性能・機能を発揮するために、熱、埃、水分等から保護される必要があり、その目的を達成する為に外部との電気絶縁性は必須とされる。特に電気絶縁体となる樹脂(封止材)等を、回路基板等複雑な形状を有する電気電子部品に封止する時は、その形状に追随できなければならず、その為に被覆時の樹脂粘度を下げるのが一般的になっている。
【0003】
これまで上記封止材として、反応性の液状樹脂、例えば2液のエポキシ樹脂などが一般的に使用されてきた(例えば特許文献1,2参照)。これは主剤と硬化剤をある一定の割合に混合して、低い粘度でモールディングし、加熱することで硬化反応を促進させ、完全に固化させるものである。モールディングの封止方法としてはエポキシ樹脂に浸漬して引き上げるディッピング、枠の中に流し込む注型、表面に盛るようにして封止するポッティングなどがある。しかしこの方法では、2液の混合比率を精密に調整する必要があり、また混合後は使用可能期間が短い等の問題点がある。また、硬化のための養生期間を必要とするので、生産性が低いという問題もある。さらに、硬化による樹脂収縮による応力が、例えば電気電子部品と導線を接合するハンダ部分等の物理的強度の弱いところに集中して、その部分が剥離するという問題もあった。
【0004】
そのような問題点を含みながら使用されてきた2液エポキシ樹脂に代わるモールディング用樹脂として、ホットメルト樹脂が挙げられる。ホットメルト樹脂は、加温溶融させるだけでモールディング時の粘度を下げることができ、冷却、固化して性能を発現するので、生産性が大幅に向上する。加えて、一般に熱可塑の樹脂を使用するので、製品としての寿命を終えた後も、加熱して樹脂を溶融除去することで、部材のリサイクルが容易に可能となる。
【0005】
封止材用としては種々の素材への高い接着性を発現するポリアミド系やポリエステル系のホットメルト樹脂が提案されている(例えば特許文献3、4参照)。ポリアミド系ホットメルト樹脂は粘度が低く、低圧での注入が可能なため、汎用の金型が使用できる利点があり、また、収縮性が低く、優れた接着性を有するため、リード線やケーブル等との接着性を向上させ、防水性と電気絶縁性を得ることができる。
【0006】
しかし、ポリアミド系ホットメルト樹脂は吸湿性が高いため、外部から徐々に吸湿することで重要な特性である電気絶縁性が経時で低下したり、封止物が腐食する場合がある。さらに熱安定性が悪く、加熱中、溶融表面に皮貼りや炭化物が発生するため、成形物の品質低下を招きやすく、色調変化も大きい等の問題を有している。一方ポリエステル系は、加水分解しやすいため高温高湿下での長期耐久性に問題があり、絶縁性が低下する。
【0007】
そこで、連続して加熱使用する際にも、色調変化、炭化物の発生が少なく、しかも電気電子部品等への電気絶縁性、熱伝導性、長期信頼性、耐加水分解性、生産性等の種々の性能を併せ持ったオレフィン系のホットメルト樹脂が提案されている。
しかし、オレフィン系ホットメルト樹脂は熱可塑性であることから、高温条件下において成形したホットメルト樹脂は、互いに粘着しやすく、取り扱い性の点から、耐ブロッキング性が課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公平6−68012号公報
【特許文献2】特開2000−239349号公報
【特許文献3】特開2002−356552号公報
【特許文献4】特許第4534115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、複雑な形状を有する電気電子部品用として耐ブロッキング性が良好な封止用ホットメルト樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決すべく鋭意検討を行い、その結果、ホットメルト樹脂の成形品表面にシリコーンコーティングされた澱粉である粘着防止剤を均一に塗すことで耐ブロッキング性を向上させることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下に関する。
(1) 粘着防止剤が、表面に付着してなるホットメルト樹脂組成物であって、前記粘着防止剤の主成分が植物由来の粒子であり、前記粒子の平均粒子径が5〜40μmであり、前記粒子の表面がシリコーンコーティングされてなる、ホットメルト樹脂組成物。
(2) 植物由来の粒子の融点が、180℃以上である(1)に記載のホットメルト樹脂組成物。
(3) シリコーンコーティングが、メチル基を有するシラン化合物によりなされた、(1)又は(2)に記載のホットメルト樹脂組成物。
(4) 植物由来の粒子が、澱粉の粒子である(1)〜(3)いずれかに記載のホットメルト樹脂組成物。
【発明の効果】
【0012】
複雑な形状を有する電気電子部品用として好適な、電気絶縁性、熱伝導性、耐ブロッキング性が良好な封止用ホットメルト樹脂組成物を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
本発明のホットメルト樹脂組成物は、粘着防止剤が表面に付着してなるホットメルト樹脂組成物であって、前記粘着防止剤の主成分が植物由来の粒子であり、前記粒子の平均粒子径が5〜40μmであり、前記粒子の表面がシリコーンコーティングされている。
従って、本発明のホットメルト樹脂組成物は、通常、粘着防止剤が表面に付着している状態で固体状であるが、その形状は特に限定しない。また、保管状態、あるいは、常温(25℃)以下で固体状であることが好ましい。また、粘着防止剤はホットメルト樹脂組成物の表面に付着しているが、さらに、ホットメルト樹脂組成物内に含まれていてもよい。
【0014】
本発明に使用される粘着防止剤としては、粘着防止機能を有する材料(粒子)であれば、特に限定しないが、例えば、シリコーン処理澱粉、シリコーン未処理澱粉等の植物由来の粒子、シリコーン処理炭酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、水酸化アルミニウム、チタン白、タルク等の無機物の粒子が挙げられる。なお、シリコーン処理とは、粒子の表面がシリコーンコーティングされていることをいう。
【0015】
また、粘着防止剤の主成分は、植物由来の粒子であり、主成分としては、一般的に、50質量%以上であり、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上である。植物由来の粒子が、粘着防止剤中、50質量%未満では、十分な耐ブロッキング性の効果が発揮できないおそれがある。
【0016】
また、本発明に使用される植物由来の粒子としては、その平均粒子径が5〜40μmであり、その表面がシリコーンコーティングされている。平均粒子径は、例えば、レーザ回折式粒度分布測定法等に測定可能である。また、平均粒子径は、10〜35μmが好ましく、10〜25μmがより好ましい。平均粒子径が5μm未満では、十分な耐ブロッキング性の効果が発揮できないおそれがあり、また、40μmを超えると、ホットメルト樹脂組成物への粘着防止剤の付着が不十分になるおそれがある。
【0017】
また、主成分である植物由来の粒子の表面がシリコーンコーティングされているが、シリコーンコーティングされていない場合は、十分な耐ブロッキング性の効果が発揮できないおそれがある。植物由来の粒子の表面のシリコーンコーティングに使用されるシリコーンコーティング剤としては、例えば、下記一般式(1)で表されるシラン化合物が挙げられる。
Si(OR ・・・・(1)
式(1)中、Rは炭素数1〜3のアルキル基、炭素数2もしくは3のアルケニル基、又はフェニル基、Rは炭素数1〜3のアルキル基、炭素数2もしくは3のアシル基、又は炭素数3〜5のアルコキシアルキル基を表し、R及びRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
さらに、一般式(1)においてRがメチル基、エチル基及びフェニル基から選択される基であり、Rがメチル基及びエチル基から選択される基であるシラン化合物であることが好ましく、特に、R及びRが、メチル基であることが好ましい。よって、植物由来の粒子表面がメチル基を有したシラン化合物でシリコーンコーティングされたものが好ましい。
【0018】
植物由来の粒子としては、融点が180℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましい。なお、融点の上限は特に限定しないが、通常、300℃程度である。融点が180℃未満では、ホットメルト樹脂組成物表面の粘着防止剤が温度や水分により侵され易くなり、耐ブロッキング性が低下する傾向がある。
【0019】
植物由来の粒子とは、植物を原料とした粒子であり、例えば、澱粉の粒子、木炭粉末、花粉等が挙げられるが、耐ブロッキング性、コスト等の点から澱粉の粒子が好ましい。
さらに、植物を原料より選ばれる1種の材料又は2種以上の混合物を振動ミル、ボールミルなどを用いて粉砕し、粒子としてもよい。例えば、レハロースまたはトレハロースと、水溶性タンパク質、微生物由来の多糖類、植物由来の多糖類、デンプンおよびデンプン部分分解物、糖アルコールから選ばれる1種又は2種以上の混合物を用いて造粒することにより得られる。
【0020】
本発明において使用しうる植物原料としては、乾燥野菜類、乾燥穀類、スパイス類、ハーブ類または緑茶、紅茶、コーヒーなどの嗜好品類、脱脂粉乳等の乳製品粉末、粉末香料を例示することができる。また、本発明で使用しうる乾燥野菜類としては、例えば、ハクサイ、キャベツ、ホウレン草などの葉菜類の乾燥品;タマネギ、ジャガイモ、レンコンなどの茎菜類の乾燥品;ニンジン、ゴボウ、サツマイモなどの根菜類の乾燥品;トマト、キュウリ、ナスなどの果菜類の乾燥品;カリフラワー、ブロッコリーなどの花菜類の乾燥品;ワラビ、ツクシ、キノコなどの山菜類の乾燥品;その他の野菜類及びこれらの加工調理品の乾燥品などを例示することができる。また、本発明で使用しうる乾燥穀類としては、例えば、米、麦、トウモロコシ、ソバなどの乾燥品及びその他の穀類及びこれらの加工調理品の乾燥品などを例示することができる。
【0021】
使用できる植物由来の粒子(市販品)としては、ニッカリコAS−100、ニッカリコAS−300(ニッカ株式会社製、商品名)等を挙げることができる。
ニッカリコAS−100は、メチル基を有したシラン化合物でシリコーンコーティングされた、平均粒子径10〜25μmの澱粉の粒子であり、その融点は、180℃以上である。ニッカリコAS−300は、メチル基を有したシラン化合物でシリコーンコーティングされた、平均粒子径15〜35μmの澱粉の粒子であり、その融点は、180℃以上である。なお、前記澱粉の粒子の融点は、澱粉の粒子を乾燥機等で加熱し、融解の有無により、判断した。その結果、180℃において、融解は認められなかった。
【0022】
ホットメルト樹脂組成物の表面に、粘着防止剤を付着させる方法としては特に限定しないが、例えば、ホットメルト樹脂組成物を円柱状に成形し、粘着防止剤の中で、ディッピング(浸漬)してもよく、あるいは、円柱状にしたホットメルト樹脂組成物に、粘着防止剤を降り掛けてもよい。粘着防止剤を均一に付着させることにより、ホットメルト樹脂組成物の耐ブロッキング性が向上する。
【0023】
本発明のホットメルト樹脂組成物の表面において、粘着防止剤の付着量は、0.1〜5mg/cmであることが好ましく、1〜4mg/cmであることがより好ましい。粘着防止剤の付着量が0.1mg/cm未満であると表面に均一に付着せず、耐ブロッキング性が不十分となることがある。また、粘着防止剤の付着量が5mg/cmを超えても、耐ブロッキング性の効果は向上せず、むしろ、過剰な粘着防止剤により、周辺を汚染するおそれがある。
付着量の測定方法としては、種々な方法が挙げられるが、例えば、粘着防止剤を付着させる必要な部分の表面積が明確なサンプル(ホットメルト樹脂組成物)の質量を予め測定しておき、このサンプルの必要な部分に粘着防止剤を付着させて、改めて付着後の質量を測定する。そして、質量差をサンプルの表面積で割り、付着量を算出する。
【0024】
本発明のホットメルト樹脂組成物は、一般的に、各種ポリオレフィン樹脂、ワックス、充填材、酸化防止剤及び接着付与剤等を含んでいる。また、本発明のホットメルト樹脂組成物は、封止材用として好適であるため、以下、封止用ホットメルト樹脂組成物と表すこともある。
【0025】
ポリオレフィン樹脂としては、例えば低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−酢ビ共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、マレイン酸変性ポリプロピレン、マレイン酸変性ポリエチレン等が挙げられる。その中で、接着強度、耐久性を得るためには、結晶性が低い、もしくは非晶性のものが好ましく、通常、ホットメルト樹脂組成物に使用されるものであれば特別な制約はない。
【0026】
市販品としては、「ベストプラスト703」(エボニック・デグサ・ジャパン株式会社製、商品名:重量平均分子量34,000)、「ベストプラスト708」(エボニック・デグサ・ジャパン株式会社製、商品名:重量平均分子量75,000)、「ベストプラスト792」(エボニック・デグサ・ジャパン株式会社製、商品名:重量平均分子量118,000)、「ベストプラスト308」(エボニック・デグサ・ジャパン株式会社製、商品名:重量平均分子量49,000)、「ベストプラスト408」(エボニック・デグサ・ジャパン株式会社製、商品名:重量平均分子量48,000)、「レクスタックRT2780」(米国レキセン社製、商品名、ブテン−1共重合体)、「レクスタックRT2585」「レクスタックRT2315」(米国レキセン社製、商品名、プロピレン−エチレン共重合体などが挙げられる。
【0027】
また、ホットメルト樹脂組成物の耐加水分解性や樹脂硬度の特性を持たせる為にポリオレフィン樹脂の一部を重量平均分子量が100,000〜200,000の高分子量ポリプロピレンに置換えて使用しても良い。
【0028】
市販品としては、「ノバテックFX4FB、ノバテックPP、ウィンテック、ニューコン、ニューストレン、ニューフォーマー、ファンクスター」(日本ポリケム株式会社製、商品名、「ノバテック」「ウィンテック」「ニューストレン」「ニューフォーマー」は登録商標)、「アドマー、タフマー」(三井化学株式会社製、商品名)、「プライムポリプロ、モストロン−L、プライムモールド−E、ポリファイン、プライムTPO」(株式会社プライムポリマー製、「プライムポリプロ」は登録商標)、「サンアロマー」(サンアロマー株式会社製、商品名、登録商標)、「フローブレン」(住友精化株式会社製、商品名、登録商標)などが挙げられる。
【0029】
接着付与剤としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族/芳香族混合型石油樹脂、フェノール変性脂肪族/芳香族混合型石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂、水素化石油樹脂などの石油系樹脂;ロジン酸、不均化ロジン酸、水添ロジン酸、ロジン酸のグリセリンエステル、ロジン酸のペンタエリスリトールエステルなどのロジン酸エステル系樹脂;テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、芳香族変性水添テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂(テルペンフェノール系樹脂)、アルキルフェノール変性テルペン樹脂などのテルペン系樹脂;スチレン樹脂;キシレン樹脂、フェノール変性キシレン樹脂、アルキルフェノール変性キシレン樹脂などのキシレン系樹脂;ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂などのフェノール系樹脂などを挙げることができる。これらの接着付与剤は、単独で使用してもよく、2種類以上併用してもよい。
【0030】
また、初期接着性、表面タック低減を改善するために、高軟化点の樹脂や結晶化度の高い樹脂などを使用することが好ましく、特に、基材に対する接着性の点から、テルペンフェノール系樹脂、テルペン樹脂などのテルペン系樹脂、脂肪族系石油樹脂が好ましい。
【0031】
市販品としては、「マルカレッツS110A」(脂肪族系石油樹脂、丸善石油化学株式会社製、「マルカレッツ」は登録商標)、「YSポリスターT−145」(テルペンフェノール樹脂、ヤスハラケミカル株式会社製、商品名)、「クリアロンP125」(水添テルペン樹脂、ヤスハラケミカル株式会社製、商品名、「クリアロン」は登録商標)、「クリアロンP150」(水添テルペン樹脂、ヤスハラケミカル株式会社製商品名、登録商標)、「アルコンP140」(脂環式系水添石油樹脂、荒川化学株式会社製、商品名)、「アルコンSM10」(部分水添石油樹脂、荒川化学株式会社製、商品名)、「アイマーブS100」(部分水添石油樹脂、出光興産株式会社製、商品名、「アイマーブ」は登録商標)などが挙げられる。
【0032】
ワックスとしては、通常、重量平均分子量が20,000以下であり、180℃での溶融粘度が500mPa・s以下であれば特に問題はない。
【0033】
市販品としては、「ビスコール550P、660P」(三洋化成工業株式会社製、商品名、「ビスコール」は登録商標)、「ハイワックス200P、NP055、NP105」(三井化学株式会社製、商品名)などを挙げることができる。ポリオレフィン系ワックスは、融点が120℃以上、好ましくは120〜170℃、さらに融点が130〜160℃の結晶性ワックスがより好ましく、これらのポリオレフィン系ワックスは、単独で使用してもよく、2種類以上併用してもよい。さらに、ポリオレフィン系ワックスとしては、ポリプロピレン系ワックス、ポリエチレン系ワックスなどがあり、特に融点が120〜170℃のポリプロピレン系ワックスが好ましい。融点が120℃未満の場合、樹脂表面にタックが生じるおそれがあり、融点が170℃を超える場合、流動性低下による作業性低下のおそれがある。融点が120〜170℃のポリプロピレン系ワックスとしては、具体的にはビスコール660P(三洋化成工業株式会社製商品名、「ビスコール」は登録商標)が挙げられる。
【0034】
充填材としては、特に限定されないが、電気絶縁性、吸湿性、線膨張係数低減、熱伝導性向上及び強度向上の効果があり、たとえば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア等の粉体、又はこれらを球形化したビーズ、ガラス繊維等が挙げられる。さらに、電気絶縁性、熱伝導性、難燃効果のある充填材成分としては水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、その金属水和物、複合金属水酸化物、ホウ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛などが挙げられる。
【0035】
これらの充填材成分は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、電気絶縁性、熱伝導性、難燃性の向上低減の観点から、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムの金属水和物が好ましい。
【0036】
市販品としては、ホウ酸亜鉛は「FB−290、FB−500」(U.S.Borax社製商品名)、「FRZ−500C」(水澤化学工業株式会社製商品名)等が、モリブデン酸亜鉛は「KEMGARD911B、911C、1100」(Sherwin−Williams社製、商品名)等が各々市販品として入手可能である。また、水酸化アルミニウムの金属水和物としては、「B73」(日本軽金属株式会社製、商品名)、「C−31」(住友化学株式会社製、商品名)、水酸化マグネシウムの金属水和物としては、「マグラックスST1」(新鉱工業株式会社製商品名:ステアリン酸1%処理品)、「キスマ1」(協和化学工業株式会社製、商品名)などが挙げられる。
【0037】
さらに、封止用ホットメルト樹脂組成物には、必要に応じて、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩等の離型剤、カップリング剤、シリコーンオイルやシリコーンゴム粉末等の応力緩和剤、カーボンブラック等の顔料または染料、酸化防止剤(老化防止剤)、紫外線吸収剤、界面活性剤、ノンハロゲン、ノンアンチモンの難燃剤等を適量配合しても良い。
【0038】
酸化防止剤(老化防止剤)としては、フェノール系、有機イオウ系、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、有機リン系ヒンダートフェノール系、アミン系などが挙げられる。例えば、フェノール系酸化防止剤としてペンタエリトリイルテトラキス−3−(3,5−ジ−ターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(SONGNOX1010、SONGWON IND.製商品名)及びn−オクタデシル−3−(3,5−ジ−ターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(SONGNOX1076、SONGWON INDUSTRIAL社製、商品名)と、リン系酸化防止剤としてトリス(2,4−ジ−ターシャリーブチルフェニル)ホスファイト(SONGNOX1680、SONGWON INDUSTRIAL社製商品名)などがある。
【0039】
封止用ホットメルト樹脂組成物は、各種原材料を均一に分散混合できるのであれば、いかなる手法を用いても調製できるが、一般的な手法として、所定の配合量の原材料をミキサー等によって十分混合した後、ミキシングロール、押出機、らいかい機、プラネタリミキサ等によって混合又は溶融混練し、必要に応じて脱泡する方法等を挙げることができる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明にかかる実施例および比較例について説明するが、本発明は該実施例により何ら制限されるものではない。
【0041】
(実施例1〜2、比較例1〜13)
[オレフィン系ホットメルト樹脂組成物]
窒素導入口を備えた加熱ニーダーを170〜200℃に加温し、ポリオレフィン樹脂として「ベストプラスト703」(エボニック・デグサ・ジャパン株式会社製、商品名、「ベストプラスト」は登録商標:重量平均分子量34,000)59質量部、高分子量ポリプロピレンとして「ノバテックFX4FB」(日本ポリケム株式会社製、商品名)4質量部、接着付与剤(テルペンフェノール系樹脂)として「YSポリスターT−145」(ヤスハラケミカル株式会社製、商品名、軟化点145℃)27質量部、ポリオレフィン系ワックス成分として「ビスコール660P」(三洋化成工業株式会社製、商品名、「ビスコール」は登録商標、軟化点145℃)15質量部、充填材成分として「マグラックスST1」(新鉱工業株式会社製、商品名:ステアリン酸1%処理品、水酸化マグネシウムの金属水和物)35質量部、酸化防止剤として「SONGNOX1010」(SONGWON INDUSTIAL社製、商品名)0.3質量部、「SONGNOX1680」(SONGWON INDUSTRIAL社製、商品名)0.3質量部を投入し、均一に溶融混練することにより、オレフィン系ホットメルト樹脂組成物を得た。
【0042】
〔耐ブロッキング性〕
前記オレフィン系ホットメルト樹脂組成物を、エクストルーダーを用い、圧力5〜15bar(500〜1500kPa)、温度180℃の条件で、直径4mm、長さ15mmの円柱形状に成形した。
成形したオレフィン系ホットメルト樹脂組成物を、表1及び表2に示した粘着防止剤中に、それぞれディッピング(浸漬)を行い、ホットメルト樹脂組成物の表面に粘着防止剤が均一に付着したものを、耐ブロッキング性の試験サンプルとした。なお、表1及び表2に示した粘着防止剤において、使用した材料は、記載された材料が主成分(90質量%以上)である。
また、ホットメルト樹脂組成物の表面に付着した粘着防止剤の付着量は、実施例1、2いずれも3.7mg/cmであった。なお、比較例1〜13のホットメルト樹脂組成物の表面に付着した粘着防止剤の付着量は、3〜5mg/cmの範囲であった。付着量は、ホットメルト樹脂組成物の質量を予め測定しておき、粘着防止剤を付着させて、改めて付着後の質量を測定した。そして、質量差をホットメルト樹脂組成物の表面積で割り、付着量を算出した。
試験サンプル5本を輪ゴムで束にし、試験サンプルの表面同士を接触させ、50℃乾燥機下で3日間エージングを行った。その後、試験サンプル5本の輪ゴムを外して耐ブロッキング性を、以下に示す基準で評価した。評価結果を表3及び表4に示した。
○;力をかけずに試験サンプル同士が容易に分離する。
△;軽く力をかけると試験サンプル同士が分離する(サンプルの表面剥離はなし)。
×;試験サンプル同士が固着している(分離するとサンプルの表面剥離あり)。
【0043】
〔電気絶縁性〕
130℃に加熱したプレス機に離型紙で挟んだホットメルト樹脂組成物をセットし、加圧プレスすることで1mm厚のシートを作製した。100mm×100mmサイズのシートを5枚作製し、ASTM D149に準拠して、ヤマヨ試験器製絶縁破壊試験装置YST−243−100RHOを用いて23℃シリコーン油中で絶縁破壊電圧を測定した。結果を表3及び表4に示した。
【0044】
〔熱伝導率〕
ホットメルト樹脂組成物の1mm厚シートを作製し、23℃下で京都電子工業製QTM‐500を用いて測定した。結果を表3及び表4に示した。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
【表3】

【0048】
【表4】

【0049】
実施例1〜2に示したように、粘着防止剤として、主成分が植物由来の粒子(澱粉の粒子)であり、粒子の平均粒子径が5〜40μmであり、粒子の表面がシリコーンコーティングされてなる、ニッカリコAS−100、AS−300(ニッカ株式会社製、商品名)を用いた場合において、オレフィン系ホットメルト樹脂組成物の耐ブロッキング性が、良好な結果であることがわかる。
【0050】
本発明により、複雑な形状を有し、かつ電気電子部品用の封止用オレフィン系樹脂組成物として、電子電気部品等への電気絶縁性、熱伝導率の特性を併せ持つ、また、溶融粘度、軟化点、及び成形後の耐ブロッキング性が良好であり、耐熱性、耐加水分解性の性能から長期信頼性が良好であるホットメルト樹脂組成物を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着防止剤が、表面に付着してなるホットメルト樹脂組成物であって、前記粘着防止剤の主成分が植物由来の粒子であり、前記粒子の平均粒子径が5〜40μmであり、前記粒子の表面がシリコーンコーティングされてなる、ホットメルト樹脂組成物。
【請求項2】
植物由来の粒子の融点が、180℃以上である請求項1に記載のホットメルト樹脂組成物。
【請求項3】
シリコーンコーティングが、メチル基を有するシラン化合物によりなされた、請求項1又は2に記載のホットメルト樹脂組成物。
【請求項4】
植物由来の粒子が、澱粉の粒子である請求項1〜3いずれかに記載のホットメルト樹脂組成物。

【公開番号】特開2013−35954(P2013−35954A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173814(P2011−173814)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000233170)日立化成ポリマー株式会社 (75)
【Fターム(参考)】