説明

個人線量計

【課題】個人線量計に適した振動モータの取り付けを実現する。
【解決手段】振動モータ30と放射線センサ20が、伸長された電子回路基板50の一方端と他方端に互いに比較的離れて設けられる。そのため、振動モータ30の振動が放射線センサ20に伝わり難くなり、振動モータ30の振動が放射線センサ20の検出機能に及ぼす影響を比較的小さく抑えることができる。また、振動モータ30側が作業員の胸ポケット内に挿入され、さらに振動モータ30が作業員の体表面側に向けられるため、振動モータ30の振動が作業員に伝わりやすくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個人線量計に関する。
【背景技術】
【0002】
個人線量計は、原子力発電所などにおいて作業員の被曝を管理するために利用される。個人線量計は、一般に、作業員の胸ポケットに装着され、その内部に設けられた放射線センサによって放射線を検出する。そして、個人線量計は、それを装着した作業員や被曝の管理者などに、放射線の検出結果を伝える何らかの手段を備えている。特許文献1には、表示部を備えた個人線量計が記載されており、例えばその表示部に放射線の検出結果が表示される。
【0003】
また、放射線の線量が非常に多い現場で利用され、作業員などに確実にその検出結果を伝えたい場合には、個人線量計が、例えば特許文献2に記載される振動モータなどを利用した伝達手段を備えていることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−243380号公報
【特許文献2】特開2007−209132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
個人線量計に振動モータを設ける場合には、振動モータの振動が利用者に的確に伝わるとともに、振動モータの振動が例えば放射線センサの検出機能に悪影響を及ぼさないことが望ましい。このように、個人線量計に振動モータを設ける場合には、一般的な携帯端末とは異なる個人線量計に特有の事情を考慮した設計が望ましい。
【0006】
本発明は、このような背景において成されたものであり、その目的は、個人線量計に適した振動モータの取り付けを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的にかなう好適な個人線量計は、放射線を検出する放射線センサと、放射線の検出結果に応じて振動する振動モータと、一方端から他方端まで伸長された基板とを有し、前記放射線センサは、前記一方端において基板に接続され、前記振動モータは、前記他方端において基板に設けられる、ことを特徴とする。
【0008】
この個人線量計によれば、振動モータと放射線センサが、伸長された基板の一方端と他方端に互いに比較的離れて設けられる。そのため、例えば、振動モータと放射線センサが互いに近接して設けられる場合に比べて、振動モータの振動が放射線センサに伝わり難くなり、振動モータの振動が放射線センサの検出機能に及ぼす影響を比較的小さく抑えることができる。また、例えば、振動モータが設けられた他方端側を利用者の胸ポケット内に挿入することにより、振動モータの振動が利用者に伝わりやすくなる。なお、例えば、細長いペンシル型の個人線量計とすることにより、胸ポケットへの挿入が容易になるなど使いやすさが向上し、また、比較的邪魔になりにくくなる。
【0009】
望ましい具体例において、前記個人線量計は、放射線の検出結果に応じて音を出すブザーをさらに有し、前記ブザーと前記振動モータが前記基板を挟み込むようにして、基板の一方面にブザーが配置されて他方面に振動モータが配置される、ことを特徴とする。
【0010】
望ましい具体例において、前記個人線量計は、前記振動モータを支えるモータホルダをさらに有し、前記振動モータは、その外形が円盤状であり、前記モータホルダは、円盤状の前記振動モータを収容して当該振動モータをその外周側から支える収容部を備える、ことを特徴とする。
【0011】
望ましい具体例において、前記個人線量計は、前記振動モータが前記モータホルダの収容部から取り外された状態で、前記収容部の内径が前記振動モータの外径よりも小さい、ことを特徴とする。
【0012】
望ましい具体例において、前記個人線量計は、前記モータホルダは、直接的または間接的に当該個人線量計の筐体に接触して前記振動モータの振動を当該筐体に伝える突起部を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、個人線量計に適した振動モータの取り付けが実現される。例えば、本発明の好適な態様によれば、振動モータの振動が放射線センサの検出機能に及ぼす影響を比較的小さく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施において好適な個人線量計の斜視図である。
【図2】図1に示す個人線量計の断面図である。
【図3】図2に示す断面図における振動モータ近傍の部分拡大図である。
【図4】振動モータの近傍を部分的に示した上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の好適な実施形態を説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施において好適な個人線量計10の斜視図である。この個人線量計10は、原子力発電所等において作業員の被曝を管理するためのものであり、例えば作業者の胸ポケットなどに装着される。
【0017】
図1に示す個人線量計10は、本体12とキャップ14とにより構成されている。キャップ14は本体12に対して着脱自在に装着される。本体12とキャップ14とに跨ってバッテリーとしての電池を収容する収納室が形成されている。本体12の内部には放射線センサ20が設けられている。具体的には電子基板上に放射線センサが設けられている。符号16は表示器を表しており、符号18はボタン群を表している。本体12の裏面側にはクリップが設けられている。
【0018】
図2は、図1に示す個人線量計10の断面図である。この個人線量計10は、放射線センサ20と振動モータ30とブザー40を備えている。放射線センサ20は、放射線を検出するセンサである。放射線センサ20によって検出された放射線の検出結果は、表示器16に表示され、これにより、個人線量計10を装着した作業員や被曝を管理する管理者に検出結果が伝えられる。例えば積算線量当量(mSv:ミリシーベルト)や線量当量率(μSv/h:マイクロシーベルトパーアワー)などの数値が表示器16に表示される。
【0019】
なお、数値等を表示する表示器16に加えて、色等により計測状態を知らせるLED等の表示デバイスが設けられてもよい。また、放射線の検出結果に応じて、LEDの色等を変化させてもよい。
【0020】
さらに、放射線の検出結果に応じて振動モータ30とブザー40も作動する。例えば、放射線センサ20によって検出された放射線の検出結果が、設定された閾値を超えた場合に振動モータ30が振動し、個人線量計10を装着した作業員に検出結果が伝えられる。また、放射線の検出結果が設定された閾値を超えた場合に、ブザー40が音を発して作業員に検出結果が伝えられる。なお、振動モータ30を作動させる閾値とブザー40を作動させる閾値は、互いに同じ値であってもよいし互いに異なる値が設定されてもよい。さらに、それらの閾値をユーザが適宜な値に設定できるようにしてもよい。また、段階的に閾値を設けて、振動や音の態様を段階的に切り替えるようにしてもよい。もちろん、振動モータ30の振動とブザー40の音とLEDの色とを適宜に組み合わせて、放射線の検出結果を作業員に知らせるようにしてもよい。
【0021】
放射線センサ20と振動モータ30とブザー40は、電子回路基板50に設けられる。電子回路基板50は、ペンシル型(棒状)である個人線量計10の全体形状に適合するように、細長く伸長された形状である。そして、その電子回路基板50の一方端に放射線センサ20が接続されて他方端に振動モータ30とブザー40が設けられる。振動モータ30とブザー40は、電子回路基板50を挟み込むようにして、電子回路基板50の表面側に振動モータ30が配置されて裏面側にブザー40が配置される。なお、振動モータ30は、モータホルダ32によって支えられつつ、電子回路基板50に配置される。
【0022】
電子回路基板50とそれに取り付けられた放射線センサ20や振動モータ30などは筐体100に収容される。電子回路基板50とそれに取り付けられた放射線センサ20や振動モータ30などが、シールド袋に包み込まれて、筐体100に収容されてもよい。その場合のシールド袋は、例えば導電性部材でメッシュ状に形成される。
【0023】
なお、図2において、符号60は、電池を収容する収容室を表している。また、筐体100の裏面側にはクリップ110が設けられている。
【0024】
利用の際には、個人線量計10の表面側が作業員の体表面側に向けられ、個人線量計10の振動モータ30側が作業員のポケットの奥に挿入される。そして、ポケットの入り口側でクリップ110と筐体100がポケットを挟み込み、個人線量計10が作業員のポケットに装着される。
【0025】
図2に示す構成においては、振動モータ30と放射線センサ20が、伸長された電子回路基板50の一方端と他方端に互いに比較的離れて設けられる。そのため、例えば、振動モータ30と放射線センサ20とを近接して配置する場合に比べて、振動モータ30の振動が放射線センサ20に伝わり難くなり、振動モータ30の振動が放射線センサ20の検出機能に及ぼす影響を比較的小さく抑えることができる。なお、振動モータ30と放射線センサ20を互いに遠ざけて配置しているものの、それらの間には表示器16などの比較的大きなデバイスが配置されており、筐体100内の無駄なスペースを極力抑えた極めて効率的な配置が実現されている。また、振動モータ30側が作業員の胸ポケット内に挿入され、さらに振動モータ30が作業員の体表面側に向けられるため、振動モータ30の振動が作業員に伝わりやすくなる。
【0026】
図3は、図2に示す断面図における振動モータ30近傍の部分拡大図である。振動モータ30は、ブザー40が配置される反対面(図2の表面側)において電子回路基板50上に配置される。なお、振動モータ30と電子回路基板50の間には、例えばゴム等により板状に形成された土台を挿入することが望ましい。振動モータ30は、モータホルダ32に支えられつつ電子回路基板50上に設けられる。
【0027】
モータホルダ32は、その一部が電子回路基板50内に挿入されて電子回路基板50上に固定されて振動モータ30を支えている。さらに、モータホルダ32は、振動モータ30を支える機能に加え、振動モータ30の振動を筐体100に伝える機能も備えている。
【0028】
振動モータ30の振動は、まず振動モータ30に接触するモータホルダ32に伝わる。そのモータホルダ32は、振動モータ30の振動を筐体100に伝える突起部Pを備えている。そして、モータホルダ32の突起部Pが、シールド袋などを介して間接的に筐体100に接触して、振動モータ30の振動を筐体100に伝える。なお、突起部Pが直接的に筐体100に接触して筐体100に振動を伝えてもよい。
【0029】
このように、モータホルダ32を介して、振動モータ30の振動が比較的効率よく筐体100に伝えられる。なお、振動モータ30から電子回路基板50を介して筐体100に伝えらる振動の成分が存在してもよい。
【0030】
図4は、振動モータ30の近傍を部分的に示した上面図である。振動モータ30は、その外形が円盤状であり、その内部に偏心回転する回転体を備え、その回転体が回転運動することにより外部に振動を伝える。モータホルダ32は、円盤状の振動モータ30を収容して振動モータ30をその外周側から支える収容部を備えている。つまり図4において振動モータ30を配置した部分がモータホルダ32の収容部である。モータホルダ32は、振動モータ30の外周の全域を取り囲む形状であってもよいし、振動モータ30の外周の一部を露出した形状であってもよい。
【0031】
また、振動モータ30がモータホルダ32の収容部から取り外された状態において、収容部の内径は振動モータ30の外径よりも小さく設計される。これにより、モータホルダ32の収容部に振動モータ30が収容された際に、モータホルダ32の収容部により振動モータ30が外周から締め付けられる。また、その締め付けにより、振動モータ30とモータホルダ32が密着し、振動モータ30の振動が効率よくモータホルダ32に伝えられる。そして、モータホルダ32に設けられた突起部Pから筐体に振動が伝えられる。
【0032】
なお、図4には、電池を収容する収容室60も示されている。その収容室60に収容された図示しない電池から、マイナス端子62とプラス端子64を介して、電子回路基板50に電力が供給される。
【0033】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、上述した実施形態は、あらゆる点で単なる例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。本発明は、その本質を逸脱しない範囲で各種の変形形態を包含する。
【符号の説明】
【0034】
10 個人線量計、20 放射線センサ、30 振動モータ、32 モータホルダ、40 ブザー、50 電子回路基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を検出する放射線センサと、
放射線の検出結果に応じて振動する振動モータと、
一方端から他方端まで伸長された基板と、
を有し、
前記放射線センサは、前記一方端において基板に接続され、
前記振動モータは、前記他方端において基板に設けられる、
ことを特徴とする個人線量計。
【請求項2】
請求項1に記載の個人線量計において、
放射線の検出結果に応じて音を出すブザーをさらに有し、
前記ブザーと前記振動モータが前記基板を挟み込むようにして、基板の一方面にブザーが配置されて他方面に振動モータが配置される、
ことを特徴とする個人線量計。
【請求項3】
請求項1または2に記載の個人線量計において、
前記振動モータを支えるモータホルダをさらに有し、
前記振動モータは、その外形が円盤状であり、
前記モータホルダは、円盤状の前記振動モータを収容して当該振動モータをその外周側から支える収容部を備える、
ことを特徴とする個人線量計。
【請求項4】
請求項3に記載の個人線量計において、
前記振動モータが前記モータホルダの収容部から取り外された状態で、前記収容部の内径が前記振動モータの外径よりも小さい、
ことを特徴とする個人線量計。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の個人線量計において、
前記モータホルダは、直接的または間接的に当該個人線量計の筐体に接触して前記振動モータの振動を当該筐体に伝える突起部を備える、
ことを特徴とする個人線量計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−108864(P2013−108864A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254685(P2011−254685)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(390029791)日立アロカメディカル株式会社 (899)
【Fターム(参考)】