説明

包材供給体

【課題】包材の巻戻りを抑えた包材供給体を提供する。
【解決手段】包材供給体1は、ラップフィルム3Fを巻き回したロール3を有底箱体状のカートン本体4に収容している。このカートン本体4には、本体正面壁4Fに対向な蓋体正面壁5Fを有し、カートン本体4の開口を開閉する蓋体5が連結されている。蓋体正面壁5Fには、カートン本体4から引き出されたラップフィルム3Fを切断するための切断刃6が取り付けられている。そして、カートン本体4には、切断刃6が差し込まれる差込面3Faが裏面3Fbよりも内側に位置するようにラップフィルム3Fが巻き回されたロール3が収容される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラップフィルムやアルミニウム箔、クッキングシートなどの包材が巻き回されたロールがカートンに収容されてなる包材供給体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ラップフィルム、アルミニウム箔、クッキングシートなどの包材が巻き回されてなるロールは、取り扱い性や安全衛生の改善を図るために、ロールを収容する板紙製の箱体であるカートンに収容された状態で広く利用されている。図4は、包材が巻き回されてなる円筒状のロールと上記カートンとから構成された包材供給体の断面構造の一例を示す断面図である。
【0003】
図4に示されるように、包材供給体11を構成するカートン本体14の内部には、包材13Fが巻き回された円筒状のロール13が収容されている。カートン12は、包材13Fの引き出し口となる開口を有してロール13を収容する有底箱体状のカートン本体14と、カートン本体14の引き出し口を開閉するようにカートン本体14に連結された蓋体15とから構成されている。カートン12を構成する蓋体15は、カートン本体14の本体背面壁14Bに連結されるとともに引き出し口を開閉する蓋体頂壁15Tと、蓋体頂壁15Tに連結されるとともにカートン本体14の本体正面壁14Fを外側から覆う蓋体正面壁15Fとから構成されている。また、蓋体正面壁15Fには、カートン本体14の引き出し口から引き出された包材13Fを切断するための切断刃16が取り付けられている。
【0004】
上述した包材供給体11において所定の長さの包材13Fがロールから切り取られる際には、下記(イ)〜(ハ)の作業が順に実施される。
(イ)まず、一方の手によってカートン本体14が把持されて、カートン本体14に収容された包材13Fが他方の手によって引き出し口から引き出される。
(ロ)次いで、カートン本体14の本体正面壁14Fと蓋体正面壁15Fとの間に包材13Fが挟入された後、切断刃16の取り付けられた蓋体正面壁15Fの一部が一方の手の親指などによってカートン本体14の本体正面壁14Fに押さえ付けられて、カートン本体14の本体正面壁14Fと蓋体正面壁15Fによって包材13Fが挟持される。
(ハ)そして、カートン本体14を把持する一方の手によって、ロール13の中心軸が回転中心となるようにカートン12がロール13の周方向に回されて、カートン本体14から引き出された包材13Fに切断刃16の歯先が差し込まれて包材13Fの切断が開始される。
【0005】
上記(ロ)の作業においては、後続する(ハ)の作業にて切断刃の歯先が包材13Fに円滑に差し込まれるように、カートン本体14の本体正面壁14Fと蓋体正面壁15Fとによって包材13Fが挟持されて、包材13Fと切断刃16との相対的な位置が固定されている。そこで、包材13Fと切断刃16との相対的な位置がより確実に固定されるように、特許文献1に記載のように、包材13Fを剥離可能に粘着する粘着層が本体正面壁14Fに設けられるという提案がなされている。本体正面壁14Fに上述した粘着層が設けられる構成であれば、カートン本体14から引き出された包材13Fが再びカートン本体14内に巻き戻ってしまうことが抑えられるため、上記(ハ)の作業においては、切断刃16の歯先が包材13Fに対して、より円滑に差し込まれるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−265839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、上記(イ)の作業においては、図4に示されるように、包材13Fの引き出しにともなって本体正面壁14F側にロール13が移動することによって、ロール13の外周面が本体正面壁14Fに当接する状態で包材13Fが引き出される。そのため、上記(イ)〜(ロ)の作業によって包材13Fを切断した後にカートン12内でロール13が移動する際、ロール13はまず、図4に二点鎖線で示す矢印のように転動して本体正面壁14Fから離れようとする。この転動はロール13から引き出されている包材13Fによって妨害されるため、包材13Fには、図4に太矢印で示されるように、引き出された包材13Fをカートン12内に巻戻そうとする力が作用することになる。このような力によって包材13Fの巻戻りが起きてしまうと、次に包材供給体11を使用する時には、まず巻戻った包材13Fの先端を見つけ出し、次いでその先端をロール13から剥離させた上で包材13Fをカートン本体から引き出す必要がある。特に、包材13Fがポリ塩化ビニリデン等の樹脂からなるラップフィルムである場合には、包材13Fの肉厚も数十μm以下と非常に薄いものであるため、巻戻った包材13Fの先端を探し出すことはもとより、該先端をロール13から剥離させることもかなりの労力が必要とされていた。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、包材の巻戻りを抑えることが可能な包材供給体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、包材が巻き回されたかたちの円筒状のロールと、天面に開口を有する有底箱体状に形成されて前記ロールが収容されたカートン本体と、前記カートン本体の背面壁である本体背面壁に連結されて前記開口を開閉する蓋体頂壁と、前記蓋体頂壁に連結されて前記カートン本体の正面壁である本体正面壁を前記カートン本体の外側から覆う蓋体正面壁とを有する蓋体と、前記開口を構成する前記本体正面壁の頂縁を介して前記ロールの外周面から前記本体正面壁と前記蓋体正面壁との間に引き出された前記包材を切断するために前記蓋体正面壁に取り付けられた切断刃とを備える包材供給体であって、前記ロールは、前記切断刃が差し込まれる差込面が当該差込面の裏面よりも内側に位置するように前記包材が巻き回されており、前記ロールの外周面における前記包材の引き出し開始点が、前記ロールの外周面における前記本体正面壁側であって、かつ、前記カートン本体の底壁側であることを要旨とする。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、切断刃が差し込まれる差込面が当該差込面の裏面よりも内側に位置するように包材が巻き回されることから、包材をカートンから引き出す際、ロールに巻き回されている包材のうち、カートン本体の底壁に臨む包材が本体背面壁に臨む包材よりも先に引き出し開始点に到達する。すなわち、包材が引き出される際のロールの回転方向と、本体正面壁から離れるようにロールが転動する際のロールの回転方向とが同じになる。そのためロールは、包材切断後に本体正面壁から離れるように転動する際、ロールに巻き回されている包材の一部を、既に引き出されている包材に連なるように剥がしながら転動することが可能である。つまりロールは、該ロールから引き出されている包材の長さをカートン内で延長させながら転動することが可能である。これにより、ロールから引き出されている包材によって、本体正面壁から離れるようなロールの転動が妨害され難くなる。その結果、包材切断後のロールの転動が円滑に行われることから、カートンから引き出された包材の巻戻りを抑えることが可能となる。また、ロールの外周面における包材の引き出し開始点が、ロールの外周面における本体正面側であって、かつ、カートン本体の底壁側に配置される。そして、上記の位置に配置された引き出し開始点から本体正面壁の頂縁を介して本体正面壁と蓋体正面壁との間に包材が引き出されるようになる。
すなわち、カートン本体から引き出される包材は、カートン本体内における底壁側から蓋体頂壁側へ一旦引き回された後に、本体正面壁の頂壁で折り返されて、カートン本体外における蓋体頂壁側から底壁側へと引き回される。こうした構成によれば、本体正面壁の頂縁における折り返しがない構成に比べて、本体正面壁の頂縁と包材との間に、包材を巻戻そうとする力に対して、より大きな摩擦力を作用させることができる。それゆえに、包材の巻戻りを抑えることが可能である。
【0011】
請求項2に記載の発明において、前記本体正面壁は、前記カートン本体の底壁に連結された外側壁と、前記外側壁に連結されて該外側壁に重なるように折り返された内側壁とを有し、前記本体正面壁の頂縁は、前記外側壁と前記内側壁との折り曲げ箇所であることを要旨とする。
【0012】
包材供給体を構成するカートンは通常、裁断加工された1枚の板紙を適宜折り曲げて接合することにより形成されている。そのため、本体正面壁の頂縁が板紙の裁断面で構成されるとなると、本体正面壁の頂縁には、例えば「ばり」のような突起物が形成される虞がある。本体正面壁の頂縁にこのような突起物があると、本体正面壁の頂縁に摺接しながら引き出される包材が、引き出した方向に沿って裂けやすくなる。この点、請求項2に記載の発明によれば、本体正面壁の頂縁は内側壁と外側壁との折り曲げ箇所で構成される。それゆえに、本体正面壁の頂縁には突起物等が形成され難くなるため、該突起物に起因する包材の縦裂けを抑えることもできる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、前記開口から引き出される前記包材を剥離可能に保持する包材保持部が前記本体正面壁の前記蓋体正面壁側に設けられていることを要旨とする。
請求項3に記載の発明によれば、引き出された包材が包材保持部に保持されることにより包材の巻戻りを抑えることができる。また、ロールに対して該ロールを移動させるような外力が作用すると、ロールにおける引き出し開始点から本体正面壁の頂縁に連なる包材には、上記した外力に基づく第1の張力が作用する。また、本体正面壁の頂縁から包材保持部に連なる包材には第1の張力に基づく第2の張力が作用する。この第2の張力は、本体正面壁と包材との間に作用する摩擦力が大きくなるほど第1の張力よりも小さくなる。つまり、本体正面壁の頂縁と包材との間に作用する摩擦力が大きくなることによって、本体正面壁の頂縁から包材保持部に連なる包材に作用する第2の張力が第1の張力よりも確実に小さくなる。そして、包材保持部と包材との間に作用する摩擦力よりも第2の張力が大きくならない以上、包材は包材保持部に保持され続ける。つまり、本体正面壁と包材との間に作用する摩擦力が大きくなることによって、包材を包材保持部から剥離させることに必要とされる第1の張力が大きくなる。それゆえ、包材の巻戻りをさらに抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を具体化した包材供給体の斜視構造を示す斜視図。
【図2】図1におけるA−A線に沿った断面図。
【図3】図1におけるA−A線に沿った断面図。
【図4】従来例における包材供給体の断面構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した一実施の形態の包材供給体について図1〜図3を参照して説明する。図1は、包材供給体における開封前の斜視構造を示す斜視図である。図2は、図1のA−A線に沿った断面図であって、開封後の包材供給体を用いて包材を切断した直後の状態を示す図である。図3は、図1のA−A線に沿った断面図であって、包材が切断されたロールが本体正面壁から離れるように移動している状態を示す図である。
【0016】
図1に示されるように、包材供給体1は、コートボール紙等の板紙が該板紙に設けられた罫線で折り曲げられることにより形成された直方体状のカートン2と、ポリ塩化ビニリデン等の包材としてのラップフィルム3Fがペーパーコア3Cにロール状に巻き回されてなるロール3とから構成されている。
【0017】
カートン2は、天面が開口した有底箱体状に形成されて内部に上記ロール3を収容したカートン本体4と、カートン本体4に連結されてカートン本体4の開口を覆う蓋体5とから構成されている。
【0018】
カートン本体4は、底壁4BTの前後両端縁に立設された前後一対の側壁である本体正面壁4F及び本体背面壁4Bと、同底壁4BTの左右両端縁に立設された左右一対の端壁4SL,4SRとから構成されている。図2に示されるように本体正面壁4Fは、底壁4BTから立設された外側壁4Faと、カートン本体4の内側に該外側壁4Faに重なるように本体正面壁4Fの頂縁4Ft(上端縁)で折り曲げられた内側壁4Fbとを有している。そして、本体正面壁4Fの頂縁4Ftと、本体背面壁4B及び2つの端壁4SL,4SRの各上端縁とによって、カートン本体4の開口が構成されている。カートン本体4の本体正面壁4Fには、カートン本体4の開口側であって、ロール3の軸方向Aの中央付近に、包材保持部としての粘着層4Fcが設けられている。粘着層4Fcは、カートン本体4の開口から引き出されたラップフィルム3Fが後述する蓋体正面壁5Fの裏面とカートン本体4の本体正面壁4Fの表面との間に挟まれることでラップフィルム3Fを粘着させる。そして、ラップフィルム3Fの切断後において、ロール3に連なっているラップフィルム3Fが当該ロール3へ巻戻りすることを抑えることで、次に使用する際のラップフィルム3Fの引き出しを容易に行うことが可能になる。
【0019】
蓋体5は、本体背面壁4Bの上端縁に回動可能に連結されてカートン本体4の開口を覆う蓋体頂壁5Tと、カートン本体4の本体正面壁4Fを外側から覆うかたちに蓋体頂壁5Tに連結された蓋体正面壁5Fと、蓋体5の端壁である蓋体端壁5SL,5SRとから構成されている。
【0020】
蓋体正面壁5Fは、底壁4BT側の端部において、軸方向Aの全幅にわたり複数の接着ポイント4Fdを介してカートン本体4の本体正面壁4Fに接着されている。また蓋体正面壁5Fにおける上下方向の略中央には、軸方向Aの全幅にわたるミシン目線5Fmが穿設されている。ミシン目線5Fmは、頂点が底側に向く略V字状を呈して軸方向Aにおける中央が同V字の頂点になるかたちに構成されている。ミシン目線5Fmの切断の方向は、上記V字に沿う方向、つまり蓋体正面壁5Fを上下方向で2分割することに適した方向である。ミシン目線5Fmの下側右端には、ミシン目線5Fmに沿った蓋体正面壁5Fの切断を開始するための開封端5Eが設けられている。
【0021】
そして、開封端5Eがカートン本体4の本体正面壁4Fから前側に引っ張られると、軸方向Aに沿って右端から左端に向けてミシン目線5Fmが切断される。こうしたミシン目線5Fmの切断によって、本体正面壁4Fに接着されていた下側部分と、蓋体頂壁5Tに連続する上側部分とに蓋体正面壁5Fが2分割される。上下方向に2分割されてなる蓋体正面壁5Fの上側先端は、ミシン目線5Fmの形状と同じく、頂点が下方に向く略V字状を呈して軸方向Aにおける中央が同V字の頂点になるかたちに形成される。そして蓋体正面壁5Fが上下方向で2分割されることによって、上記接着ポイント4Fdによるカートン2の強制的な封止が解除される。また、蓋体正面壁5Fが2分割された状態から、蓋体頂壁5Tが本体正面壁4Fから離れる方向へ回動することによって、カートン2が開封されて、カートン2に収容されたラップフィルム3Fが引き出し可能となる。
【0022】
蓋体正面壁5Fにおけるミシン目線5Fmとカートン本体4における本体正面壁4Fと
の間には、蓋体正面壁5Fの裏面に切断刃6が接着されている。軸方向Aに延びる切断刃6は、頂点が底側に向く略V字状を呈して軸方向Aにおける中央が同V字の頂点になるように、つまり、切断刃6はミシン目線5Fmと相似形に構成されている。そして、蓋体正面壁5Fが上下方向で2分割されて蓋体正面壁5Fの下側部分がカートン本体4から取り除かれることによって、上記切断刃6の刃先が蓋体正面壁5Fの上側部分から露出するようになる。こうした構成からなる切断刃6によれば、カートン本体4の内側から本体正面壁4Fに沿って引き出されたラップフィルム3Fが、軸方向Aの中央から切断刃6に差し込まれることとなるため、ラップフィルム3Fの切断が、軸方向Aの中央から端部に向けて進行するようになる。
【0023】
蓋体正面壁5Fにおける切断刃6の上側にあって、軸方向Aの中央には、蓋体正面壁5Fの外表面から正面側に突出する複数の正面凸部FPが設けられている。正面凸部FPは、正面凸部FPに触れた使用者に対して、切断刃6におけるロール3の軸方向Aの中央、つまり切断刃6における切断の開始位置を該使用者の触覚を通して示すことになる。なお、正面凸部FPは、カートン2を組立てるためにコートボール紙等の板紙を裁断した後、あるいは、裁断と同時に、蓋体正面壁5Fの裏面に相当する部分を押し上げて浮かせたり、蓋体正面壁5Fの表面に相当する部分に特殊なインクを付着させたりして凸部を形成する、いわゆるエンボス加工により形成するのが好適である。
【0024】
そして、ラップフィルム3Fが切断される際、まずは、カートン2が開封された状態から、一方の手でカートン本体4に対して蓋体5を回動させた後、他方の手でラップフィルム3Fの先端部分が把持されて当該ラップフィルム3Fがカートン本体4の開口から引き出される。次いで、一方の手でカートン2の中央部が握られるとともに、同じく一方の手の親指で上記正面凸部FPが本体正面壁4Fに押し当られる。続いて、引き出されたラップフィルム3Fの一部が蓋体正面壁5Fと本体正面壁4Fとに挟まれた状態で、カートン2がロール3の周方向Rに捻られる。これによって、切断刃6における軸方向Aの中央の各歯がラップフィルム3Fの差込面3Fa(図2参照)に差し込まれ、カートン2が更に捻られることによって、ラップフィルム3Fがその軸方向の全幅にわたり切断される。つまり、切断刃6における軸方向Aの中央から両端に向けて当該ラップフィルム3Fの切断が進められる。
【0025】
ところで、図2に示されるように、本実施形態のカートン2には、切断刃6が差し込まれる差込面3Faが差込面3Faの裏面3Fbよりも内側に位置するようにラップフィルム3Fが巻き回された状態でロール3が収容されている。こうした構成によれば、ラップフィルム3Fをカートン2から引き出す際、ロール3に巻き回されているラップフィルム3Fのうち、底壁4BTに臨むラップフィルム3Fが本体背面壁4Bに臨むラップフィルム3Fよりも先に引き出し開始点3Tに到達する。すなわち、ラップフィルム3Fが引き出される際のロール3の回転方向と、本体正面壁4Fから離れるようにロール3が転動する際のロール3の回転方向とが同じになる。そのため、図3に二点鎖線で示す矢印のように本体正面壁4Fから離れるようにロール3が移動する際に、ロール3に巻き回されているラップフィルム3Fの一部を、既に引き出されているラップフィルム3Fに連なるように剥がしながら転動させることが可能である。つまりロール3は、該ロール3から引き出されているラップフィルム3Fの長さをカートン2内で延長させながら転動することが可能である。これにより、ロール3から引き出されているラップフィルム3Fによって、本体正面壁4Fから離れるようなロール3の転動が妨害され難くなる。その結果、本体正面壁4Fから離れるようなロール3の転動が円滑に行われることから、ラップフィルム3Fの巻戻りを抑えることが可能となる。
【0026】
また、ロール3の外周面におけるラップフィルム3Fの引き出し開始点3Tが、ロール3の外周面における本体正面壁4F側であって、かつ、カートン本体4の底壁4BT側と
なるように、ロール3が収容されている。こうした構成によれば、上述のように配置された引き出し開始点3Tから本体正面壁4Fの頂縁4Ftを介して本体正面壁4Fと蓋体正面壁5Fとの間にラップフィルム3Fが引き出されるようになる。すなわち、カートン本体4から引き出されるラップフィルム3Fは、カートン本体4の内側において底壁4BT側から蓋体頂壁5T側へ一旦引き回された後に、本体正面壁4Fの頂縁4Ftで折り返されて、カートン本体4の外側において蓋体頂壁5T側から底壁4BT側へと引き回される。
【0027】
一方、ロール3の外周面におけるラップフィルム3Fの引き出し開始点3Tが、ロール3の外周面における蓋体頂壁5T側、あるいは本体背面壁4B側となるように、ロール3が収容された場合には、上述した図4に示されるように、差込面3Faが裏面3Fbよりも外側に配置される。このような包材供給体においては、本体正面壁4Fの頂縁4Ftから蓋体頂壁5Tに沿うように、同頂縁4Ftにおいてラップフィルム3Fが折り返されることになる。
【0028】
これら2つのラップフィルム3Fの折り返しの態様において、引き出し開始点3T(13T)と頂縁4Ft(14Ft)とを結ぶ線と本体正面壁4Fとのなす角度を比較すると、本体正面壁4Fに沿うようにラップフィルム3Fが折り返される本実施形態の方がその角度を小さくできる。そのため、本体正面壁4Fの頂縁4Ftにおいて、ラップフィルム3Fと該頂縁4Ftとの間に、ラップフィルム3Fを巻戻そうとする力に対して、より大きな摩擦力を作用させることができる。それゆえに、ラップフィルム3Fの巻戻りを抑えることが可能である。
【0029】
また、本実施形態ではラップフィルム3Fの先端の一部が、粘着層4Fcに粘着固定されている。粘着層4Fcからラップフィルム3Fを剥離させるためには、粘着層4Fcとラップフィルム3Fとの間に作用する粘着力よりも大きな力をラップフィルム3Fに作用させることが必要である。ロール3に対して外力が作用すると、引き出し開始点3Tと頂縁4Ftとを結ぶラップフィルム3Fに、上記外力に基づく張力(以下、第1の張力T1という。)が作用する。また、頂縁4Ftと粘着層4Fcとを結ぶラップフィルム3Fには、上記第1の張力T1に基づく張力(以下、第2の張力T2という。)が作用する。第2の張力T2は、頂縁4Ftにおける摩擦力が無い状態であれば、第1の張力T1と等しくなる一方、頂縁4Ftにおける摩擦力が大きくなるほど、第1の張力T1よりも小さくなる。つまり、本体正面壁4Fとラップフィルム3Fとの間に、より大きな摩擦力を作用させることで、上記第2の張力T2を小さくすることができる。本実施形態の包材供給体1においては、本体正面壁4Fとラップフィルム3Fとの間に、より大きな摩擦力を作用させることができるため、上記第1の張力T1に対して上記第2の張力T2をより小さくすることができる。それゆえ、粘着層4Fcからラップフィルム3Fが剥離し難くなる結果、ラップフィルム3Fの巻戻りをより抑えることができる。
【0030】
また、本実施形態の包材供給体1において、ラップフィルム3Fを頂縁4Ftに摺接させることなくカートン本体4からラップフィルム3Fを引き出すともなれば、蓋体5を大きく回動させなければならないため、ラップフィルム3Fを頂縁4Ftに摺接させながら該ラップフィルム3Fを引き出す方式が自ずと選択されるようになる。そして、頂縁4Ftとの摩擦力がラップフィルム3Fに作用するため、勢いよくラップフィルム3Fが引き出されること、つまりラップフィルム3Fが過剰に引き出されること、それを抑えることができる。それゆえ、ラップフィルム3Fの無駄な消費を抑えることもできる。
【0031】
ここで、本体正面壁4Fが外側壁4Faのみで構成された場合には、本体正面壁4Fの頂縁4Ftが板紙の裁断面で構成されることになる。そのため、板紙の裁断加工にともなう例えば「ばり」のような突起物が本体正面壁4Fの頂縁4Ftに形成される虞がある。
本体正面壁4Fの頂縁4Ftにこうした突起物があると、頂縁4Ftに摺接するラップフィルム3Fが、引き出した方向に沿って裂けやすくなる。この点、本実施形態では、外側壁4Faと内側壁4Fbとの折り曲げ箇所によって本体正面壁4Fが構成されている。この構成によれば、本体正面壁4Fの頂縁4Ftが板紙の折り曲げ加工により形成されることから、本体正面壁4Fの頂縁4Ftに突起物が形成され難くなる。その結果、本体正面壁4Fの頂縁4Ftを摺動させながらラップフィルム3Fを引き出したとしても、該ラップフィルム3Fの縦裂けを抑えることができる。
【0032】
以上説明したように、本実施形態における包材供給体1によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態によれば、本体正面壁4Fから離れるようにロール3が転動する際の回転方向と、ラップフィルム3Fが引き出される際のロール3の回転方向とが同じなる。そのため、本体正面壁4Fから離れるようにロール3が転動する際に、ロール3に巻き回されているラップフィルム3Fの一部を、既に引き出されているラップフィルム3Fに連なるように剥がしながら転動させることが可能である。つまりロール3は、該ロール3から引き出されているラップフィルム3Fの長さをカートン2内で延長させながら転動することが可能である。これにより、ロール3から引き出されているラップフィルム3Fによって、本体正面壁4Fから離れるようなロール3の転動が妨害され難くなる。その結果、本体正面壁4Fから離れるようなロール3の転動が円滑に行われることから、ラップフィルム3Fの巻戻りを抑えることが可能となる。
【0033】
(2)上記実施形態によれば、カートン本体4から引き出されるラップフィルム3Fが、本体正面壁4Fの頂縁4Ftで該本体正面壁4Fに沿うように折り返されることになる。その結果、ロール3と頂縁4Ftとを結ぶラップフィルム3Fと本体正面壁4Fとのなす角度が小さくなるため、頂縁4Ftとラップフィルム3Fとの間に、ラップフィルム3Fを巻戻そうとする力に対して、より大きな摩擦力を作用させることができる。それゆえに、ラップフィルム3Fの巻戻りを抑えることができる。
【0034】
(3)また、本体正面壁4Fとラップフィルム3Fとの間により大きな摩擦力を作用させることで、頂縁4Ftと粘着層4Fcとを結ぶラップフィルム3Fに作用する第2の張力T2を小さくすることができる。これにより、粘着層4Fcからラップフィルム3Fが剥離し難くなるため、ラップフィルム3Fの巻戻りを、さらに生じ難くすることができる。
【0035】
(4)上記実施形態の包材供給体1によれば、本体正面壁4Fの頂縁4Ftに摺接しながらカートン本体4からラップフィルム3Fが引き出される。こうした構成によれば、ラップフィルム3Fの引き出し時においても、ラップフィルム3Fと頂縁4Ftとの間に摩擦力が作用するため、ラップフィルム3Fの過剰な引き出しを抑えることができる。それゆえに、ラップフィルム3Fの無駄な消費を抑えることもできる。
【0036】
(5)上記実施形態では、外側壁4Faと内側壁4Fbとの折り曲げ箇所によって本体正面壁4Fを構成した。こうした構成によれば、カートン本体4から引き出されるラップフィルム3Fの縦裂けを抑えることができる。
【0037】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することもできる。
・上記実施形態の本体正面壁4Fの頂縁4Ftは、外側壁4Faと内側壁4Fbとの折り曲げ箇所によって構成されている。これを変更して、本体正面壁4Fの頂縁4Ftに突起物が十分に形成され難い構成であれば、例えば外側壁4Faの切断面によって頂縁4Ftを構成することもできる。こうした構成であっても、上記(1)〜(4)に準ずる効果を得ることができる。
【0038】
・上記実施形態では、カートン本体4の本体正面壁4Fに粘着層4Fcを設ける構成を説明したが、最表層にラップフィルムと実質的に同一材料からなる自己密着性フィルム層を有する積層構造の包材保持部形成用ラベルを用いても、上記(1)〜(5)に準ずる効果を得ることができる。
【0039】
・上記実施形態では、カートン本体4の本体正面壁4Fに粘着層4Fcを設ける構成を説明したが、粘着層4Fcを有しない包材供給体であっても、上記(1)(3)(4)に準ずる効果を得ることができる。
【0040】
・上記実施形態では、ポリ塩化ビニルデンなどからなるラップフィルム3Fを包材として具体化したが、包材は、例えばその他の樹脂からなるラップフィルムやアルミニウム箔、クッキングシートであってもよい。
【0041】
・上記実施形態では、ロール3の軸方向Aにおける中央がカートン本体4の底壁4BTに最も近い位置に位置するV字形状の切断刃6を有する包材供給体1に具体化した。これに限らず、例えば直線状の切断刃を有する包材供給体に具体化してもよい。
【符号の説明】
【0042】
A…軸方向、R…周方向、FP…前面凸部、1…包材供給体、2…カートン、3…ロール、3C…ペーパーコア、3F…ラップフィルム、3Fa…差込面、3Fb…裏面、3T…引き出し開始点、4…カートン本体、4B…本体背面壁、4BT…底壁、4F…本体正面壁、4Fa…外側壁、4Fb…内側壁、4Fc…粘着層、4Fd…接着ポイント、4SL…端壁、4SR…端壁、5…蓋体、5E…開封端、5F…蓋体正面壁、5T…蓋体頂壁、5Fm…ミシン目線、5SL…蓋体端壁、5SR…蓋体端壁、6…切断刃。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
包材が巻き回されたかたちの円筒状のロールと、
天面に開口を有する有底箱体状に形成されて前記ロールが収容されたカートン本体と、
前記カートン本体の背面壁である本体背面壁に連結されて前記開口を開閉する蓋体頂壁と、前記蓋体頂壁に連結されて前記カートン本体の正面壁である本体正面壁を前記カートン本体の外側から覆う蓋体正面壁とを有する蓋体と、
前記開口を構成する前記本体正面壁の頂縁を介して前記ロールの外周面から前記本体正面壁と前記蓋体正面壁との間に引き出された前記包材を切断するために前記蓋体正面壁に取り付けられた切断刃と
を備える包材供給体であって、
前記ロールは、
前記切断刃が差し込まれる差込面が当該差込面の裏面よりも内側に位置するように前記包材が巻き回されており、前記ロールの外周面における前記包材の引き出し開始点が、前記ロールの外周面における前記本体正面壁側であって、かつ、前記カートン本体の底壁側である
ことを特徴とする包材供給体。
【請求項2】
前記本体正面壁は、
前記カートン本体の底壁に連結された外側壁と、
前記外側壁に連結されて該外側壁に重なるように折り返された内側壁とを有し、
前記本体正面壁の頂縁は、
前記外側壁と前記内側壁との折り曲げ箇所である
ことを特徴とする請求項1に記載の包材供給体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の包材供給体であって、
前記開口から引き出される前記包材を剥離可能に保持する包材保持部が前記本体正面壁の前記蓋体正面壁側に設けられている
ことを特徴とする包材供給体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−251721(P2011−251721A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125806(P2010−125806)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】