水中照明体および水中照明装置
【課題】水中で光を収束させて明度を高め、水中で光を広範囲に照射して集魚効果を高め、水中深度が深く高圧がかかる環境下でも充分使用に耐える水中照明装置を提供する。
【解決手段】基板4に搭載した多数のLED5と、多数のLED5を収容する収納ケース3とからなり、収納ケース3は、ブロック体の裏面から多数の収納孔8を同一方向に穿孔して、天井部11と側壁部9を残したものであり、各収納孔8は、収容するLED5の直径とほぼ同じか、わずかに大きい内径を有し、LED5を挿入したとき天面部11との間に空気室12が形成されている。皿状の外カバー2内に、収納ケース3を配置し、収納ケース3の各収納孔8内に、基板に保持された多数のLED5を挿入した状態で、収納ケース3および基板4の外周と外カバー2の内周との間に、エポキシ樹脂30を充填している。
【解決手段】基板4に搭載した多数のLED5と、多数のLED5を収容する収納ケース3とからなり、収納ケース3は、ブロック体の裏面から多数の収納孔8を同一方向に穿孔して、天井部11と側壁部9を残したものであり、各収納孔8は、収容するLED5の直径とほぼ同じか、わずかに大きい内径を有し、LED5を挿入したとき天面部11との間に空気室12が形成されている。皿状の外カバー2内に、収納ケース3を配置し、収納ケース3の各収納孔8内に、基板に保持された多数のLED5を挿入した状態で、収納ケース3および基板4の外周と外カバー2の内周との間に、エポキシ樹脂30を充填している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中照明体および水中照明装置に関するものである。さらに詳しくは、水中や海中で、集魚、その他の用途に利用できる水中照明体とそれを用いた水中照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水中照明装置の代表的な用途である集魚灯は、その歴史が古く、大正時代の石油灯やアセチレン灯を用いた集魚灯から、昭和に入ると集魚灯は電化された電球タイプのものに代わっていった。その電球も当初はタングステンフィラメント形式の白熱灯であったが、電気/光変換効率が低く、発熱が大きく、寿命が短いなどの欠点があった。そのため、1970年代の後半から電力効率の良いハロゲンランプに取って代わるようになった。このハロゲンランプは白熱灯の一種であるが、球内に不活性ガスとともにハロゲン元素またはハロゲン化合物を封入することにより、ランプ寿命を大幅に延ばすとともに光束の減衰を少なくしたものであった。さらに1980年に入るとより更に光力の大きいメタルハライド灯が主流を占めるようになり、今日に至っている。
【0003】
図10はメタルハライド灯を集魚灯に用いた魚法を示している。100は、魚船から海中に吊り降ろされたメタルハライド灯である(A図参照)。このメタルハライド灯100は、球体101がガラス製なので、損傷しにくいように外面を金属製のフレーム101で囲って保護する構造となっている(B図参照)。
魚労中は、(A)図に示すように、深度200m位までの海中に入れて使用する。このとき海中の魚は、光の届かない暗い部分(符号bのアミカケ部分)から光で明るくなった部分(符号aのアミカケ部分)に近寄ってきて、半径Rが50m位の所に集まり、そこから内側には近寄らない。これは、メタルハライド灯100が光の外に熱も大量に発生させて、海中温度が上昇することによると云われている。したがって、漁獲効果は光の到達距離が大きく明るい割には、期待される程大きくないのである。
【0004】
ところで、発熱量を少なくできる発光器としてLED(発光ダイオード)が知られており、LEDを用いた水中照明装置も存在している。
そのような公知技術の一例として特開2001−357703(特許文献1)がある。この従来例は、浴槽内の水中に光を照射できるLEDによる発光部を凹レンズで覆ったものである。この凹レンズは広い範囲にLEDからの光を照射させることができるが、光が拡散すると、明度が低くなるので、集魚用には適さない。あくまでも浴槽などの演出用でしかない。
他の従来技術としては、特開2003−178602(特許文献2)がある。これは水中用の投光器であり、円筒容器状に形成された本体部と、短円筒容器状に形成された前面カバーとがヒートシンクを介して一体的に結合されている。そして、前面カバーは透明な樹脂で形成されてレンズとして構成されており、前面カバー内の灯室は、シールリングにより内部の液密性が保持されている。また、灯室の内部には円板状をして複数個のLEDを実装したLED基板が内装され、それぞれ発光したときの光はレンズである前面カバーを透過して照射されるようになっている。
しかし、この前面カバーは、ガラスカバーであり、光を拡散したり収束させる機能はないものである。
【0005】
【特許文献1】特開2001−357703号
【特許文献2】特開2003−178602号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、水中で光を収束させて明度を高めうる水中照明灯を提供することを目的とする。また、水中で光を広範囲に照射して集魚効果を高める水中照明装置を提供することを目的とする。
さらに、水中深度が深く高圧がかかる環境下でも充分使用に耐える水中照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明の水中照明体は、多数のLEDと、該多数のLEDを収容する収納ケースとからなり、該収納ケースは、ブロック体の裏面から多数の収納孔を穿孔して、天井部と側壁部を残したものであり、各収納孔は、収容するLEDの直径とほぼ同じか、わずかに大きい内径を有し、LEDを挿入したとき天面部との間に空気室が形成されるものであることを特徴とする。
第2発明の水中照明体は、第1発明において、前記LEDは、先端部にドーム状に形成された樹脂カバーを有していることを特徴とする。
第3発明の水中照明体は、第1発明において、前記LEDは、基板に支持されており、該基板上に固定された多数のLEDが前記収納ケースの各収納孔に嵌合するように配置されていることを特徴とする。
第4発明の水中照明体は、第3発明において、皿状の外カバーを用い、該外カバー内に、前記収納ケースを配置し、該収納ケースの各収納孔内に、基板に保持された多数のLEDを挿入した状態で、前記収納ケースおよび前記基板の外周と前記外カバーの内周との間に、合成樹脂を充填したことを特徴とする。
第5発明の水中照明装置は、前記水中照明体を2個用い、いずれも発光面を外側にし、非発光面を合せ面にして一体化して水中照明器具を構成し、該水中照明器具を2以上組合せて、四方向以上に発光面が向くように配置したことを特徴とする。
第6発明の水中照明装置は、前記水中照明体を複数個用い、筒状多面体のフレームの外周面に、発光面を外側にして取付けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
第1発明によれば、多数のLEDを収納ケースの多数の収納孔に入れると、各LEDを同一方向に固定できるので、各LEDの照射する光を同一方向に束ねることができる。また、LEDを収納ケースに収納した際に、収納孔内でLEDの頂面と収納ケースの天井部との間に空気室が生じるので、この空気層があることにより、直接水中にLEDが没する場合に生ずる光の拡散が生じず、発光した光を集中させて同一方向を照射できるので、照度が明るくなる。
第2発明によれば、LEDから出る光がドーム状の樹脂カバーと空気層との界面において、照射方向前方に向くよう屈折するので、発光した光が同一方向に集中し、水中においても明るい照度を確保することができる。
第3発明によれば、多数のLEDが基板上に固定されており、しかも各収納孔に嵌合する位置に配置されているので、ユニットとして取扱えるので、組立てが容易に行える。
第4発明によれば、LEDを収納ケース内に入れて、耐圧性を付与すると共に、基板も含めた電気部品は外カバー内で収納ケースと基板の外周に充填した合成樹脂によって密封し耐水性を付与しているので、相当水深の深い水圧の高い所でも使用が可能である。
第5発明によれば、水中照明体を背中合せに結合したことから、光を外向きかつ対称的に発光することができ、外向き対称的に発光する水中照明体を2以上組合せるので、四方あるいは八方に光を照射することでできる。
第6発明によれば、筒状多面体の外表面に複数の水中照明体を取付けたので、照射方向が多方向となり、多面体の数が多いと全周方向をまんべんなく照射することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る水中照明体の断面図である。図2は図1の水中照明体の要部拡大断面図である。図3は水中照明体の外観斜視図である。図4は水中照明体の分解斜視図である。図5は水中照明体の分解断面図である。図6は水中照明体の平面図である。
【0010】
本発明の水中照明装置Aは、複数個の水中照明体1を以って構成されている。そこで、まず、水中照明体1の構成を説明する。
図3は、水中照明体1を斜め上方から見た斜視図であり、これには外カバー2と収納ケース3(点線図示)が示されているが、水中照明体1は、図4に示すように、大きくは三つの部材から構成されている。すなわち、外カバー2と収納ケース3以外に、基板4に多数のLED5が固定されたLED搭載基板6からなる。
【0011】
上記の三つの部材を、図4および図5に基づき説明する。
まず、LED搭載基板6の詳細を説明する。基板4は、公知のプリント基板、すなわちガラス繊維やエポキシ樹脂等の非通電性材質からなる適当な大きさの基板である。この基板4には、多数のLED5が縦と横に整列されて、かつ適当な間隔をあけて取付けられている。したがって、基板4の表面には、多数のLED5がマトリクス状に配置されている。なお、各LED5の足は、基板4に設けた銅製回路4C(図2参照)の孔に挿入されて互いに接続され、かつ導電コード7に接続されている。
【0012】
前記収納ケース3は、六面立方体のブロックであり、耐衝撃性と、透明性を有し剛性の高い材料、例えば、ポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂で作成されている。この収納ケース3の裏面からは、天井部11に向けて多数の収納孔8が穿孔されている。この収納孔8の穿孔位置は、前記LED搭載基板6上のLED5の縦横の配列位置と同じであり、収納孔8の数はLED5の数と同じである。したがって、収納孔8もマトリクス状に形成されている。
前記収納孔8の内径はLED5の外径と、同じかわずかに大きい程度であり、隣接する収納孔8,8同士の間には、側壁9が形成されている。
そして、収納孔8の深さhは、LED5の高さより大きいが、ブロックの高さHより小さくなっており、この結果、各収納孔8の上面には天井部11が形成されている。
【0013】
前記外カバー2は、概ね皿状の部材であり、耐衝撃性に富み透明性が高く剛性の高い材料であるポリカーボネート樹脂から作成されている。この外カバー2は碗部21と、その周縁のフランジ部22を備えており、碗部21の内部には、適当な仕切り部材23で凹所24が形成されている。
前記収納ケース3は、仕切り部材23で画定された凹所24内に嵌合するようになっている。
【0014】
上記の水中照明体1を組立てる際は、図1に示すように、LED搭載基板6の各LED5を収納ケース3の各収納孔8内に嵌合するように組合せる。そして、外カバー2の内面にエポキシ樹脂30を厚めに塗布し、収納ケース3の上面を外カバー2の内面に向けて圧着する。これにより、先に塗布していたエポキシ樹脂30で収納ケース3の天面が外カバー2の内面に接着される。そして、さらに収納ケース3の周囲と外カバー2(あるいはその仕切り部材23)との間の隙間にエポキシ樹脂30を充填し、かつ基板4の底面にも厚く塗布する。このようにして、エポキシ樹脂30が固形化すると、外カバー2内に収納ケース3が固定されて、水中照明体1が完成する。
【0015】
図1のように組立てられた状態で、各LED5は、剛性部材である収納ケース3と外カバー2により二重に保護されている。そして、収納ケース3と外カバー2は、共に耐衝撃性の高い樹脂で作成されており、剛性が非常に高いので、外圧とくに水中での耐圧力に強く、水深200m位までの使用が可能となる。
また、収納ケース3の周囲と基板4の裏面上にもエポキシ樹脂30を充填し、外カバー2との間に隙間が生じないようにしている。このため、耐圧性も向上しつつ、海水の浸入を完全に防止できるので、電気系統がショートすることはない。
【0016】
また、前記各LED5は、収納ケース3内の各収納孔8内において、側壁9と接触した状態で保持されることから、全てのLED5が必ず前方へ向けられる。そして、図6に示すように、マトリクス状に配置された多数のLED5が全て前方を向くことにより、各LED5の発する光は前方へのみ向けられることになり、深海のように暗い所でも明るく照射することができることとなる。
【0017】
図2に示すように、LED5は、発光チップ51の上面をドーム状の樹脂カバー52で覆われており、発光チップ51の下には足53が付いている。この足53は既述のごとく基板4に設けられた銅製回路4Cの孔を貫いており、この足53によって、LED5が基板4に固定されている。
前記収納孔8の内部においては、樹脂カバー52の頂部と天井部11との間には空気室12が形成されており、その内部には空気が入っている。この空気室12の内部は、既述のごとく、エポキシ樹脂30で被覆され密封されているので、海水が浸入することもなく、内圧が高くなることもない。
そして、発光チップ51から発光した光は、樹脂カバー52から出て空気層に入るときに屈折するが、樹脂カバー52がドーム状であることにより、屈折後の照射方向は、ほぼ前方を向くことになる。このため、LED5の発光量の全てが前方を向き、拡散しないので、海中を明るく照射することができる。
【0018】
つぎに、前記水中照明体1を用いた水中照明装置Aを説明する。
図7は本発明の一実施形態に係る水中照明装置の外観図である。図8は本発明の他の実施形態に係る水中照明装置の説明図である。図9は本発明の水中照明装置を集魚灯として利用する場合の説明図である。
【0019】
(水中照明装置の一実施形態)
図7において、61は水中照明装置Aのフレーム、62は魚船から吊下げるロープ、63は重錘である。この実施形態は、上下に4段に水中照明器具a1〜a4を設けている。そして、各段の水中照明器具aは、2個の水中照明体1、1を結合して形成されている。
すなわち、水中照明器具aは、水中照明体1を2個用い、いずれも前面すなわち発光側を外側にして、裏面すなわち非発光側を合せ面にして、一体に結合している。結合の手段は任意であり、外カバー2のフランジ22を利用して、ボルト止めするなどの手段を用いればよい。
このような水中照明体1を2個組合せた水中照明器具aを、例えば最上段a1を左右に照らすようにし、2段目a2前後に照らすようにすれば、海中で四方を照射することができる。図示の例では、さらに3段目a3を左右に照らし、4段目a4を前後に照らすようにしているが、これを上方2段a1,a2に対し、45°照射角度を変えると、八方に直接照射することができ、より均等に周囲を照らすことができる。
【0020】
(水中照明装置の他の実施形態)
図8において、71は水中照明装置Aのフレームである。このフレーム71は12面体の筒状部材であり、上部に吊環72が結合され、底面の一部には取付板73が取付けられている。
この筒状のフレーム71の外表面には、複数個の水中照明体1が発光面を外側に向けて取付けられている。水中照明体1の取付数は、図示では上下3段であるが、これに限らず、2段以下でも4段以上でもよい。そして、水中照明体1の数が多いほど照度が明るくなる。また、多面体の数も図示では、12面体であるが、11面以下でもよく、13面以上であってもよい。そして、面体数が多いほど、全周方向にまんべんなく光を照射することができる。
さらに、フレーム71の底面にも水中照明体1を取付けておくと、下方にも光を照射することができる。したがって、水中照明装置Aを船上から上下させたり、上に引き上げるときも、下方を照らすことができ集魚効果を高めることができる。
【0021】
つぎに、図9に基づき、本発明の水中照明装置Aの利点を説明する。
水中照明装置Aを魚船などの船Sから吊下げる。海中に吊り降す水深は魚獲したい魚種によって変わるが、本発明の水中照明装置Aは、耐圧性も耐水性も高いので、200mの深度でも集魚が可能である。
そして、光を照射した場合、LEDの光量は明るく、各水中照明体は前方に向けて光を束ねて照らすので、海中を充分明るくすることができる。しかも、LEDは、発熱しないので、照射領域の海中温度が通常より上昇しないことから、魚にストレスを与えず、このため水中照明装置Aの近くまで魚が近寄ってくる。
この現象は、長年メタルハライド灯で漁をしていた漁師も驚くほどであり、魚が集中してくるせいで、魚獲作業が極めて容易になり、少ない労力で多くの魚獲効果を達成できることとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る水中照明体の断面図である。
【図2】図1の水中照明体の要部拡大断面図である。
【図3】水中照明体の外観斜視図である。
【図4】水中照明体の分解斜視図である。
【図5】水中照明体の分解断面図である。
【図6】水中照明体の平面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る水中照明装置の外観図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係る水中照明装置の説明図であり、(A)図は上から見た斜視図、(B)図は下から見た斜視図である。
【図9】本発明の水中照明装置を集魚灯として利用する場合の説明図である。
【図10】(A)図は従来のメタルハライドランプ式の集魚灯の使用状態説明図、(B)はメタルハライドランプの斜視図である。
【符号の説明】
【0023】
1 水中照明体
2 外カバー
3 収納ケース
4 基板
5 LED
6 LED搭載基板
8 収納孔
9 側壁
11 天井部
12 空気室
51 発光チップ
52 樹脂カバー
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中照明体および水中照明装置に関するものである。さらに詳しくは、水中や海中で、集魚、その他の用途に利用できる水中照明体とそれを用いた水中照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水中照明装置の代表的な用途である集魚灯は、その歴史が古く、大正時代の石油灯やアセチレン灯を用いた集魚灯から、昭和に入ると集魚灯は電化された電球タイプのものに代わっていった。その電球も当初はタングステンフィラメント形式の白熱灯であったが、電気/光変換効率が低く、発熱が大きく、寿命が短いなどの欠点があった。そのため、1970年代の後半から電力効率の良いハロゲンランプに取って代わるようになった。このハロゲンランプは白熱灯の一種であるが、球内に不活性ガスとともにハロゲン元素またはハロゲン化合物を封入することにより、ランプ寿命を大幅に延ばすとともに光束の減衰を少なくしたものであった。さらに1980年に入るとより更に光力の大きいメタルハライド灯が主流を占めるようになり、今日に至っている。
【0003】
図10はメタルハライド灯を集魚灯に用いた魚法を示している。100は、魚船から海中に吊り降ろされたメタルハライド灯である(A図参照)。このメタルハライド灯100は、球体101がガラス製なので、損傷しにくいように外面を金属製のフレーム101で囲って保護する構造となっている(B図参照)。
魚労中は、(A)図に示すように、深度200m位までの海中に入れて使用する。このとき海中の魚は、光の届かない暗い部分(符号bのアミカケ部分)から光で明るくなった部分(符号aのアミカケ部分)に近寄ってきて、半径Rが50m位の所に集まり、そこから内側には近寄らない。これは、メタルハライド灯100が光の外に熱も大量に発生させて、海中温度が上昇することによると云われている。したがって、漁獲効果は光の到達距離が大きく明るい割には、期待される程大きくないのである。
【0004】
ところで、発熱量を少なくできる発光器としてLED(発光ダイオード)が知られており、LEDを用いた水中照明装置も存在している。
そのような公知技術の一例として特開2001−357703(特許文献1)がある。この従来例は、浴槽内の水中に光を照射できるLEDによる発光部を凹レンズで覆ったものである。この凹レンズは広い範囲にLEDからの光を照射させることができるが、光が拡散すると、明度が低くなるので、集魚用には適さない。あくまでも浴槽などの演出用でしかない。
他の従来技術としては、特開2003−178602(特許文献2)がある。これは水中用の投光器であり、円筒容器状に形成された本体部と、短円筒容器状に形成された前面カバーとがヒートシンクを介して一体的に結合されている。そして、前面カバーは透明な樹脂で形成されてレンズとして構成されており、前面カバー内の灯室は、シールリングにより内部の液密性が保持されている。また、灯室の内部には円板状をして複数個のLEDを実装したLED基板が内装され、それぞれ発光したときの光はレンズである前面カバーを透過して照射されるようになっている。
しかし、この前面カバーは、ガラスカバーであり、光を拡散したり収束させる機能はないものである。
【0005】
【特許文献1】特開2001−357703号
【特許文献2】特開2003−178602号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、水中で光を収束させて明度を高めうる水中照明灯を提供することを目的とする。また、水中で光を広範囲に照射して集魚効果を高める水中照明装置を提供することを目的とする。
さらに、水中深度が深く高圧がかかる環境下でも充分使用に耐える水中照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明の水中照明体は、多数のLEDと、該多数のLEDを収容する収納ケースとからなり、該収納ケースは、ブロック体の裏面から多数の収納孔を穿孔して、天井部と側壁部を残したものであり、各収納孔は、収容するLEDの直径とほぼ同じか、わずかに大きい内径を有し、LEDを挿入したとき天面部との間に空気室が形成されるものであることを特徴とする。
第2発明の水中照明体は、第1発明において、前記LEDは、先端部にドーム状に形成された樹脂カバーを有していることを特徴とする。
第3発明の水中照明体は、第1発明において、前記LEDは、基板に支持されており、該基板上に固定された多数のLEDが前記収納ケースの各収納孔に嵌合するように配置されていることを特徴とする。
第4発明の水中照明体は、第3発明において、皿状の外カバーを用い、該外カバー内に、前記収納ケースを配置し、該収納ケースの各収納孔内に、基板に保持された多数のLEDを挿入した状態で、前記収納ケースおよび前記基板の外周と前記外カバーの内周との間に、合成樹脂を充填したことを特徴とする。
第5発明の水中照明装置は、前記水中照明体を2個用い、いずれも発光面を外側にし、非発光面を合せ面にして一体化して水中照明器具を構成し、該水中照明器具を2以上組合せて、四方向以上に発光面が向くように配置したことを特徴とする。
第6発明の水中照明装置は、前記水中照明体を複数個用い、筒状多面体のフレームの外周面に、発光面を外側にして取付けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
第1発明によれば、多数のLEDを収納ケースの多数の収納孔に入れると、各LEDを同一方向に固定できるので、各LEDの照射する光を同一方向に束ねることができる。また、LEDを収納ケースに収納した際に、収納孔内でLEDの頂面と収納ケースの天井部との間に空気室が生じるので、この空気層があることにより、直接水中にLEDが没する場合に生ずる光の拡散が生じず、発光した光を集中させて同一方向を照射できるので、照度が明るくなる。
第2発明によれば、LEDから出る光がドーム状の樹脂カバーと空気層との界面において、照射方向前方に向くよう屈折するので、発光した光が同一方向に集中し、水中においても明るい照度を確保することができる。
第3発明によれば、多数のLEDが基板上に固定されており、しかも各収納孔に嵌合する位置に配置されているので、ユニットとして取扱えるので、組立てが容易に行える。
第4発明によれば、LEDを収納ケース内に入れて、耐圧性を付与すると共に、基板も含めた電気部品は外カバー内で収納ケースと基板の外周に充填した合成樹脂によって密封し耐水性を付与しているので、相当水深の深い水圧の高い所でも使用が可能である。
第5発明によれば、水中照明体を背中合せに結合したことから、光を外向きかつ対称的に発光することができ、外向き対称的に発光する水中照明体を2以上組合せるので、四方あるいは八方に光を照射することでできる。
第6発明によれば、筒状多面体の外表面に複数の水中照明体を取付けたので、照射方向が多方向となり、多面体の数が多いと全周方向をまんべんなく照射することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る水中照明体の断面図である。図2は図1の水中照明体の要部拡大断面図である。図3は水中照明体の外観斜視図である。図4は水中照明体の分解斜視図である。図5は水中照明体の分解断面図である。図6は水中照明体の平面図である。
【0010】
本発明の水中照明装置Aは、複数個の水中照明体1を以って構成されている。そこで、まず、水中照明体1の構成を説明する。
図3は、水中照明体1を斜め上方から見た斜視図であり、これには外カバー2と収納ケース3(点線図示)が示されているが、水中照明体1は、図4に示すように、大きくは三つの部材から構成されている。すなわち、外カバー2と収納ケース3以外に、基板4に多数のLED5が固定されたLED搭載基板6からなる。
【0011】
上記の三つの部材を、図4および図5に基づき説明する。
まず、LED搭載基板6の詳細を説明する。基板4は、公知のプリント基板、すなわちガラス繊維やエポキシ樹脂等の非通電性材質からなる適当な大きさの基板である。この基板4には、多数のLED5が縦と横に整列されて、かつ適当な間隔をあけて取付けられている。したがって、基板4の表面には、多数のLED5がマトリクス状に配置されている。なお、各LED5の足は、基板4に設けた銅製回路4C(図2参照)の孔に挿入されて互いに接続され、かつ導電コード7に接続されている。
【0012】
前記収納ケース3は、六面立方体のブロックであり、耐衝撃性と、透明性を有し剛性の高い材料、例えば、ポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂で作成されている。この収納ケース3の裏面からは、天井部11に向けて多数の収納孔8が穿孔されている。この収納孔8の穿孔位置は、前記LED搭載基板6上のLED5の縦横の配列位置と同じであり、収納孔8の数はLED5の数と同じである。したがって、収納孔8もマトリクス状に形成されている。
前記収納孔8の内径はLED5の外径と、同じかわずかに大きい程度であり、隣接する収納孔8,8同士の間には、側壁9が形成されている。
そして、収納孔8の深さhは、LED5の高さより大きいが、ブロックの高さHより小さくなっており、この結果、各収納孔8の上面には天井部11が形成されている。
【0013】
前記外カバー2は、概ね皿状の部材であり、耐衝撃性に富み透明性が高く剛性の高い材料であるポリカーボネート樹脂から作成されている。この外カバー2は碗部21と、その周縁のフランジ部22を備えており、碗部21の内部には、適当な仕切り部材23で凹所24が形成されている。
前記収納ケース3は、仕切り部材23で画定された凹所24内に嵌合するようになっている。
【0014】
上記の水中照明体1を組立てる際は、図1に示すように、LED搭載基板6の各LED5を収納ケース3の各収納孔8内に嵌合するように組合せる。そして、外カバー2の内面にエポキシ樹脂30を厚めに塗布し、収納ケース3の上面を外カバー2の内面に向けて圧着する。これにより、先に塗布していたエポキシ樹脂30で収納ケース3の天面が外カバー2の内面に接着される。そして、さらに収納ケース3の周囲と外カバー2(あるいはその仕切り部材23)との間の隙間にエポキシ樹脂30を充填し、かつ基板4の底面にも厚く塗布する。このようにして、エポキシ樹脂30が固形化すると、外カバー2内に収納ケース3が固定されて、水中照明体1が完成する。
【0015】
図1のように組立てられた状態で、各LED5は、剛性部材である収納ケース3と外カバー2により二重に保護されている。そして、収納ケース3と外カバー2は、共に耐衝撃性の高い樹脂で作成されており、剛性が非常に高いので、外圧とくに水中での耐圧力に強く、水深200m位までの使用が可能となる。
また、収納ケース3の周囲と基板4の裏面上にもエポキシ樹脂30を充填し、外カバー2との間に隙間が生じないようにしている。このため、耐圧性も向上しつつ、海水の浸入を完全に防止できるので、電気系統がショートすることはない。
【0016】
また、前記各LED5は、収納ケース3内の各収納孔8内において、側壁9と接触した状態で保持されることから、全てのLED5が必ず前方へ向けられる。そして、図6に示すように、マトリクス状に配置された多数のLED5が全て前方を向くことにより、各LED5の発する光は前方へのみ向けられることになり、深海のように暗い所でも明るく照射することができることとなる。
【0017】
図2に示すように、LED5は、発光チップ51の上面をドーム状の樹脂カバー52で覆われており、発光チップ51の下には足53が付いている。この足53は既述のごとく基板4に設けられた銅製回路4Cの孔を貫いており、この足53によって、LED5が基板4に固定されている。
前記収納孔8の内部においては、樹脂カバー52の頂部と天井部11との間には空気室12が形成されており、その内部には空気が入っている。この空気室12の内部は、既述のごとく、エポキシ樹脂30で被覆され密封されているので、海水が浸入することもなく、内圧が高くなることもない。
そして、発光チップ51から発光した光は、樹脂カバー52から出て空気層に入るときに屈折するが、樹脂カバー52がドーム状であることにより、屈折後の照射方向は、ほぼ前方を向くことになる。このため、LED5の発光量の全てが前方を向き、拡散しないので、海中を明るく照射することができる。
【0018】
つぎに、前記水中照明体1を用いた水中照明装置Aを説明する。
図7は本発明の一実施形態に係る水中照明装置の外観図である。図8は本発明の他の実施形態に係る水中照明装置の説明図である。図9は本発明の水中照明装置を集魚灯として利用する場合の説明図である。
【0019】
(水中照明装置の一実施形態)
図7において、61は水中照明装置Aのフレーム、62は魚船から吊下げるロープ、63は重錘である。この実施形態は、上下に4段に水中照明器具a1〜a4を設けている。そして、各段の水中照明器具aは、2個の水中照明体1、1を結合して形成されている。
すなわち、水中照明器具aは、水中照明体1を2個用い、いずれも前面すなわち発光側を外側にして、裏面すなわち非発光側を合せ面にして、一体に結合している。結合の手段は任意であり、外カバー2のフランジ22を利用して、ボルト止めするなどの手段を用いればよい。
このような水中照明体1を2個組合せた水中照明器具aを、例えば最上段a1を左右に照らすようにし、2段目a2前後に照らすようにすれば、海中で四方を照射することができる。図示の例では、さらに3段目a3を左右に照らし、4段目a4を前後に照らすようにしているが、これを上方2段a1,a2に対し、45°照射角度を変えると、八方に直接照射することができ、より均等に周囲を照らすことができる。
【0020】
(水中照明装置の他の実施形態)
図8において、71は水中照明装置Aのフレームである。このフレーム71は12面体の筒状部材であり、上部に吊環72が結合され、底面の一部には取付板73が取付けられている。
この筒状のフレーム71の外表面には、複数個の水中照明体1が発光面を外側に向けて取付けられている。水中照明体1の取付数は、図示では上下3段であるが、これに限らず、2段以下でも4段以上でもよい。そして、水中照明体1の数が多いほど照度が明るくなる。また、多面体の数も図示では、12面体であるが、11面以下でもよく、13面以上であってもよい。そして、面体数が多いほど、全周方向にまんべんなく光を照射することができる。
さらに、フレーム71の底面にも水中照明体1を取付けておくと、下方にも光を照射することができる。したがって、水中照明装置Aを船上から上下させたり、上に引き上げるときも、下方を照らすことができ集魚効果を高めることができる。
【0021】
つぎに、図9に基づき、本発明の水中照明装置Aの利点を説明する。
水中照明装置Aを魚船などの船Sから吊下げる。海中に吊り降す水深は魚獲したい魚種によって変わるが、本発明の水中照明装置Aは、耐圧性も耐水性も高いので、200mの深度でも集魚が可能である。
そして、光を照射した場合、LEDの光量は明るく、各水中照明体は前方に向けて光を束ねて照らすので、海中を充分明るくすることができる。しかも、LEDは、発熱しないので、照射領域の海中温度が通常より上昇しないことから、魚にストレスを与えず、このため水中照明装置Aの近くまで魚が近寄ってくる。
この現象は、長年メタルハライド灯で漁をしていた漁師も驚くほどであり、魚が集中してくるせいで、魚獲作業が極めて容易になり、少ない労力で多くの魚獲効果を達成できることとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る水中照明体の断面図である。
【図2】図1の水中照明体の要部拡大断面図である。
【図3】水中照明体の外観斜視図である。
【図4】水中照明体の分解斜視図である。
【図5】水中照明体の分解断面図である。
【図6】水中照明体の平面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る水中照明装置の外観図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係る水中照明装置の説明図であり、(A)図は上から見た斜視図、(B)図は下から見た斜視図である。
【図9】本発明の水中照明装置を集魚灯として利用する場合の説明図である。
【図10】(A)図は従来のメタルハライドランプ式の集魚灯の使用状態説明図、(B)はメタルハライドランプの斜視図である。
【符号の説明】
【0023】
1 水中照明体
2 外カバー
3 収納ケース
4 基板
5 LED
6 LED搭載基板
8 収納孔
9 側壁
11 天井部
12 空気室
51 発光チップ
52 樹脂カバー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数のLEDと、該多数のLEDを収容する収納ケースとからなり、
該収納ケースは、ブロック体の裏面から多数の収納孔を穿孔して、天井部と側壁部を残したものであり、各収納孔は、収容するLEDの直径とほぼ同じか、わずかに大きい内径を有し、LEDを挿入したとき天面部との間に空気室が形成されるものである
ことを特徴とする水中照明体。
【請求項2】
前記LEDは、先端部にドーム状に形成された樹脂カバーを有している
ことを特徴とする請求項1記載の水中照明体。
【請求項3】
前記LEDは、基板に支持されており、該基板上に固定された多数のLEDが前記収納ケースの各収納孔に嵌合するように配置されている
ことを特徴とする請求項1記載の水中照明体。
【請求項4】
皿状の外カバーを用い、
該外カバー内に、前記収納ケースを配置し、該収納ケースの各収納孔内に、基板に保持された多数のLEDを挿入した状態で、
前記収納ケースおよび前記基板の外周と前記外カバーの内周との間に、合成樹脂を充填した
ことを特徴とする請求項3記載の水中照明体。
【請求項5】
前記水中照明体を2個用い、いずれも発光面を外側にし、非発光面を合せ面にして一体化して水中照明器具を構成し、
該水中照明器具を2以上組合せて、四方向以上に発光面が向くように配置した
ことを特徴とする水中照明装置。
【請求項6】
前記水中照明体を複数個用い、筒状多面体のフレームの外周面に、発光面を外側にして取付けた
ことを特徴とする水中照明装置。
【請求項1】
多数のLEDと、該多数のLEDを収容する収納ケースとからなり、
該収納ケースは、ブロック体の裏面から多数の収納孔を穿孔して、天井部と側壁部を残したものであり、各収納孔は、収容するLEDの直径とほぼ同じか、わずかに大きい内径を有し、LEDを挿入したとき天面部との間に空気室が形成されるものである
ことを特徴とする水中照明体。
【請求項2】
前記LEDは、先端部にドーム状に形成された樹脂カバーを有している
ことを特徴とする請求項1記載の水中照明体。
【請求項3】
前記LEDは、基板に支持されており、該基板上に固定された多数のLEDが前記収納ケースの各収納孔に嵌合するように配置されている
ことを特徴とする請求項1記載の水中照明体。
【請求項4】
皿状の外カバーを用い、
該外カバー内に、前記収納ケースを配置し、該収納ケースの各収納孔内に、基板に保持された多数のLEDを挿入した状態で、
前記収納ケースおよび前記基板の外周と前記外カバーの内周との間に、合成樹脂を充填した
ことを特徴とする請求項3記載の水中照明体。
【請求項5】
前記水中照明体を2個用い、いずれも発光面を外側にし、非発光面を合せ面にして一体化して水中照明器具を構成し、
該水中照明器具を2以上組合せて、四方向以上に発光面が向くように配置した
ことを特徴とする水中照明装置。
【請求項6】
前記水中照明体を複数個用い、筒状多面体のフレームの外周面に、発光面を外側にして取付けた
ことを特徴とする水中照明装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2006−134593(P2006−134593A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−319226(P2004−319226)
【出願日】平成16年11月2日(2004.11.2)
【出願人】(593126019)高木綱業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月2日(2004.11.2)
【出願人】(593126019)高木綱業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】
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