説明

水洗大便器

【課題】下方フロートスイッチによる貯水タンクの洗浄水の水位の誤検出を確実に防止することができる水洗大便器を提供する。
【解決手段】本発明の水洗大便器1は、便器本体2と、この便器本体を洗浄するための洗浄水を貯水する貯水タンク20と、この貯水タンク内の水を吸引して便器本体に供給する加圧ポンプ22と、貯水タンクと加圧ポンプを接続するポンプ給水路38と、貯水タンク内の上方に設けられ洗浄水の水位が第1水位(L1)を越えたときONとなる上方フロートスイッチ52と、貯水タンク内の下方に設けられ、支持軸54b及びこの支持軸に沿って上下動するフロート54cを備え、洗浄水の水位が第2水位(L2)より低下したときONとなる下方フロートスイッチ54と、加圧ポンプ駆動時に貯水タンク内に生じる下方フロートスイッチへ向けて上方から下方に流れる洗浄水の流れを抑制するする水流抑制手段56,58,60,62,64,66と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗大便器に係り、特に、貯水タンク内の洗浄水を加圧ポンプにより吸引して便器を洗浄する水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、便器の高さを低くするために、貯水タンクを不要とし、水道水の給水圧を直接利用して、洗浄水を便器に直接供給するようにした、所謂、タンクレス便器が使用されている。
しかしながら、このようなタンクレス便器は、水道水の給水圧が低い地域では、洗浄不良を起す恐れがあるので、このような問題を解決するため、例えば、特許文献1に記載されたような、貯水タンクを設け、この貯水タンク内の洗浄水を加圧ポンプにより吸引して便器に供給するようにした新しいタイプの水洗大便器が提案されている。
【0003】
この特許文献1の水洗大便器には、貯水タンク内の水位が満水になったときONとなり貯水タンク内への給水を停止するための上方フロートスイッチと、貯水タンク内の洗浄水が加圧ポンプにより吸引された水位が低下してONとなり加圧ポンプを停止するための下方フロートスイッチとが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-2075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の特許文献1に記載された水洗大便器においては、貯水タンクの容量を極力小さくして意匠性を向上させるために、下方フロートスイッチが、貯水タンク内に配置された加圧ポンプの給水口より若干高い位置に近接して設けられている。このため、加圧ポンプで貯水タンクの洗浄水を吸引して便器へ供給するとき、貯水タンク内の洗浄水が上方から給水口へ向って流れ、その水流により、下方フロートスイッチが押し下げられて、誤検知をして、加圧ポンプが停止してしまうという問題が発生することがある。
加圧ポンプが停止してしまうと、洗浄水の便器への供給も行えなくなるので、この下方フロートスイッチの誤検知を確実に防止する必要がある。
【0006】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、下方フロートスイッチによる貯水タンクの洗浄水の水位の誤検出を確実に防止することができる水洗大便器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の水洗大便器は、便器本体と、この便器本体を洗浄するための洗浄水を貯水する貯水タンクと、この貯水タンク内の水を吸引して上記便器本体に供給する加圧ポンプと、貯水タンクと上記加圧ポンプを接続するポンプ給水路と、貯水タンク内の上方に設けられ洗浄水の水位が所定の第1水位(L1)を越えたときONとなる上方フロートスイッチと、貯水タンク内の下方に設けられ、支持軸及びこの支持軸に沿って上下動するフロートを備え、洗浄水の水位が所定の第2水位(L2)より低下したときONとなる下方フロートスイッチと、加圧ポンプ駆動時に貯水タンク内に生じる下方フロートスイッチへ向けて上方から下方に流れる洗浄水の流れを抑制する水流抑制手段と、を有することを特徴としている。
このように構成された本発明においては、加圧ポンプが駆動され貯水タンク内の洗浄水を吸引して便器本体へ供給するとき、加圧ポンプの吸引力により、貯水タンク内の洗浄水の水流は、上方から下方に向けて流れるが、水流抑制手段により、下方フロートスイッチへ向けて上方から下方に流れる洗浄水の流れは抑制される。この結果、本発明によれば、下方フロートスイッチへ向けて上方から下方に流れる洗浄水の流れがフロートの浮力に打ち勝ってフロートを押し下げることにより生じる下方フロートスイッチの水位の誤検知を確実に防止することができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、水流抑制手段は、下方フロートスイッチの近傍且つ真上にほぼ水平に取り付けられた平板状部材である。
このように構成された本発明においては、水流抑制手段を下方フロートスイッチの近傍且つ真上にほぼ水平に取り付けられた平板状部材とすることにより、簡易な構造により、下方フロートスイッチへ向けて上方から下方に流れる洗浄水の流れがフロートの浮力に打ち勝ってフロートを押し下げることにより生じる下方フロートスイッチの水位の誤検知を確実に防止することができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、水流抑制手段は、下方フロートスイッチの支持軸の上端にほぼ水平方向に取り付けられた板状部材である。
このように構成された本発明においては、水流抑制手段を下方フロートスイッチの支持軸の上端にほぼ水平方向に取り付けられた板状部材とすることにより、簡易な構造により、下方フロートスイッチへ向けて上方から下方に流れる洗浄水の流れがフロートの浮力に打ち勝ってフロートを押し下げることにより生じる下方フロートスイッチの水位の誤検知を確実に防止することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、ポンプ給水路は上記貯水タンク内に配置された給水口を備え、下方フロートスイッチはポンプ給水路の給水口と離れて配置され、水流抑制手段は、給水口と下方フロートスイッチの間に形成され、下方フロートスイッチから給水口に向けて流れる流れの速度を貯水タンクの上方の領域よりも低下させる水流速度低下手段である。
このように構成された本発明においては、水流速度低下手段により、下方フロートスイッチから給水口に向けて流れる流れの速度が貯水タンクの上方の領域よりも遅くなるので、これにより、下方フロートスイッチの上方の洗浄水の流れが給水口に向う斜め方向の流れとなり、その結果、下方フロートに作用する水流がフロートの浮力に打ち勝ってフロートを押し下げることにより生じる下方フロートスイッチの水位の誤検知を確実に防止することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、水流速度低下手段は、ポンプ給水路の給水口と下方フロートスイッチとの間で貯水タンクの下方部位に形成された流路幅狭部である。
このように構成された本発明においては、ポンプ給水路の給水口と下方フロートスイッチとの間で貯水タンクの下方部位に流路幅狭部を形成したので、下方フロートスイッチから給水口に向けて流れる流れの速度が遅くなり、これにより、下方フロートスイッチの上方の洗浄水の流れが給水口に向う斜め方向の流れとなり、その結果、下方フロートスイッチに作用する水流がフロートの浮力に打ち勝ってフロートを押し下げることにより生じる下方フロートスイッチの水位の誤検知を確実に防止することができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、水流速度低下手段は、ポンプ給水路の給水口と下方フロートスイッチとの間に上方へ延び且つその側方に狭い流路を形成するように配置された遮蔽板である。
このように構成された本発明においては、ポンプ給水路の給水口と下方フロートスイッチとの間に上方へ延び且つその側方に狭い流路を形成する遮蔽板を配置したので、下方フロートスイッチから給水口に向けて流れる流れの速度が遮蔽板の狭い流路で遅くなり、これにより、下方フロートスイッチの上方の洗浄水の流れが給水口に向う斜め方向の流れとなり、その結果、下方フロートに作用する水流がフロートの浮力に打ち勝ってフロートを押し下げることにより生じる下方フロートスイッチの水位の誤検知を確実に防止することができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、下方フロートスイッチは、ポンプ給水路の給水口よりも上方に位置し、貯水タンクの底面が下方フロートスイッチからポンプ給水路の給水口に向けて下方に傾斜している。
このように構成された本発明においては、水流速度低下手段により、下方フロートスイッチから給水口に向けて流れる流れの速度が遅くなるが、貯水タンクの底面を下方フロートスイッチからポンプ給水路の給水口に向けて下方に傾斜させることにより、流れの速度が遅くても、洗浄水を給水口にスムーズに流入させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の水洗大便器によれば、下方フロートスイッチによる貯水タンクの洗浄水の水位の誤検出を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態による水洗大便器を示す側面図である。
【図2】図1の水洗大便器の平面図である。
【図3】本発明の第1実施形態による水洗大便器を示す全体構成図である。
【図4】本発明の第1実施形態による水洗大便器の基本動作を示すタイムチャートである。
【図5】本発明の第1実施形態による水洗大便器の貯水タンクを示す拡大断面図である。
【図6】図5のVI−VI線に沿って見た平面図である。
【図7】本発明の第2実施形態による水洗大便器の下方フロートスイッチと水流遮蔽板を示す正面図である。
【図8】本発明の第3実施形態による水洗大便器の貯水タンクを示す断面斜視図である。
【図9】図8のIX−IX線に沿う断面図である。
【図10】図8の正面図である。
【図11】本発明の第4実施形態による水洗大便器の貯水タンクを示す正面断面図である。
【図12】図11の平面断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態による水洗大便器を説明する。
先ず、図1乃至図4により、本発明の第1実施形態による水洗大便器の基本構造を説明する。図1は、本発明の第1実施形態による水洗大便器を示す側面図であり、図2は、図1の水洗大便器の平面図であり、図3は、本発明の第1実施形態による水洗大便器を示す全体構成図であり、図4は、本発明の第1実施形態による水洗大便器の基本動作を示すタイムチャートである。
【0017】
図1及び図2に示すように、本発明の実施形態による水洗大便器1は、便器本体2と、この便器本体2の上面に配置された便座4と、便座4を覆うように配置されたカバー6と、便器本体2の後方上部に配置された局部洗浄装置8と、を備えている。さらに、便器本体2の後方には、機能部10が配置されており、この機能部10はサイドパネル11により覆われている。
【0018】
便器本体2には、汚物を受けるボウル部12と、このボウル部12の底部から延びる排水トラップ管路14と、排水トラップ管路14の下端に接続された配水管15と、ジェット吐水を行うジェット吐水口16と、リム吐水を行うリム吐水口18が形成されている。
ジェット吐水口16は、ボウル部12の底部に形成されており、排水トラップ管路14の入口に指向してほぼ水平に配置され、洗浄水を排水トラップ管路14に向けて吐水するようになっている。リム吐水口18は、ボウル部12の左側上部後方に形成されており、ボウル部12の上縁に沿って洗浄水を吐出するようになっている。
【0019】
本実施形態による水洗大便器1は、洗浄水を供給する水道に直結されており、水道の給水圧力によりリム吐水口18から洗浄水が吐出される。また、ジェット吐水に関しては、後述するように、機能部10に内蔵された貯水タンク20に貯水された洗浄水を加圧ポンプ22により吸引して大流量でジェット吐水口16から吐出させるようになっている。
【0020】
次に、図3により、本実施形態による水洗大便器1の機能部10を説明する。図3に示すように、機能部10には、水道から洗浄水が供給される給水路24が設けられ、この給水路24には、主な機器として、定流量弁26、ダイヤフラム式の電磁開閉弁28、給水路切替弁30がそれぞれ設けられている。
給水路切替弁30の下流側には、リム吐水口18に洗浄水を供給するためのリム側給水路32、及び、貯水タンク20に洗浄水を供給するためのタンク側給水路34が接続されている。
【0021】
ここで、定流量弁26を通過した洗浄水は、電磁開閉弁28を通って、給水路切替弁30により、リム側であるリム給水路32からリム吐水口18へ、又は、タンク側であるタンク側給水路34から貯水タンク20に供給されるようになっている。
これらの電磁開閉弁28の開閉操作、及び、給水路切替弁30の切替操作は、機能部10のコントローラ36により制御される。
【0022】
貯水タンク20と加圧ポンプ22との間にはそれらを接続するポンプ給水路38が設けられており、このポンプ給水路38の上流端には給水口40が形成されている。また、加圧ポンプ22とジェット吐水口16との間にはそれらを接続するジェット給水路42が設けられている。ここで、加圧ポンプ22は、貯水タンク20に貯水された洗浄水を吸引して、ジェット吐水口16から吐出させるためのものである。加圧ポンプ22の回転数や作動時間等は、機能部10に設けられたコントローラ36により制御される。
また、ポンプ給水路38の貯水タンク20内に位置する部分には、逆止弁であるジェット吐水用フラッパー弁44及び水抜栓46が設けられている。
【0023】
さらに、貯水タンク20の後述する上方フロートスイッチ52よりも上方位置に、その一端が開口し、他端がジェット給水路42に接続されたオーバーフロー流路48が設けられている。このオーバーフロー流路48には、逆止弁であるフラッパー弁50が取り付けられている。
【0024】
次に、貯水タンク20の内部には、上方フロートスイッチ52、及び、下方フロートスイッチ54が配置されている。上方フロートスイッチ52は、貯水タンク20内の水位が所定の上方位置L1に達するとオン(ON)に切り替わり、コントローラ36はこれを検知して、電磁開閉弁28を閉鎖させる。下方フロートスイッチ54は、貯水タンク20内の水位が所定の下方水位L2まで低下するとオン(ON)に切り替わり、コントローラ36はこれを検知して、加圧ポンプ22を停止させる。
【0025】
次に、図4により、本実施形態による水洗大便器の基本動作を説明する。なお、このタイムチャートでは、リム吐水の動作を省略している。ここで、本実施形態においては、満水時の水位が、ウォーターフローラインWFL(図3参照)となっている。
【0026】
先ず、図4に示すように、満水状態において、t1で示す時刻で加圧ポンプ22が作動し、ジェット吐水が開始される。このとき、貯水タンク20内の水位がウォーターフローラインWFLを下回る。次に、加圧ポンプ22が作動中でジェット吐水が行われているとき(時刻t2)、貯水タンク20内の水位が上方フロートスイッチ52を下回り、上方フロートスイッチ52がONからOFFとなる。
【0027】
次に、t3で示す時刻において、下方フロートスイッチ54がOFFからONになると、加圧ポンプ22が停止するとともにジェット吐水が終了する。なお、加圧ポンプ22の流量は70L/minと多い。従って、便器に供給する水量を一定に保つには時間制御では難しく、下方フロートスイッチ54による検知により、加圧ポンプ22を停止させるようにしている。ここで、貯水タンク20内の水位は、加圧ポンプ22の作動慣性量により下方フロートスイッチ54よりも下方の位置であるウォーターデッドラインWDLとなる。
【0028】
その後、t4で示す時刻において、電磁開閉弁28が作動(OFF→ON)して、貯水タンク20への給水が開始される。このとき、貯水タンク20内の水位は、ウォーターデッドラインWDLである。そして、電磁開閉弁28が作動して所定時間後のt5の時刻に、下方フロートスイッチ54がONからOFFとなる。
【0029】
その後、貯水タンク20内の水位が上方フロートスイッチ52の位置まで上昇すると、上方フロートスイッチ52がONとなり、電磁開閉弁28が停止する。その後、t7の時刻において、水位が満水状態であるウォーターフローラインWFLとなり、一連の洗浄動作が終了する。
【0030】
次に、図5及び図6により、本実施形態の貯水タンク20の内部構造を説明する。図5は、本発明の第1実施形態による水洗大便器の貯水タンクを示す拡大断面図であり、図6は、図5のVI−VI線に沿って見た平面図である。
先ず、図6に示すように、ポンプ給水路38の上流側は、貯水タンク20内に延びており、このポンプ給水路38の給水口40、ジェット吐水用フラッパー弁44及び水抜栓46は、貯水タンク20の下端部付近の高さ、即ち、下方フロートスイッチ54よりも下方の位置に、配置されている。
【0031】
次に、下方フロートスイッチ54の構造を説明する。下方フロートスイッチ54は、貯水タンク20の底面に取り付けられるベース部54aと、このベース部54aから上方に延びる支持軸54bと、この支持軸54bに挿入されて浮力により支持軸54bに沿って上下動するフロート54cと、支持軸54bの上端に取り付けられたストッパー54dと、フロート54cの内周面に埋め込まれたマグネット54eと、支持軸54bに埋め込まれたリードスイッチ54fとを備えている。
【0032】
この下方フロートスイッチ54は、貯水タンク20に洗浄水が満たされている状態では、フロート54cの上端がH1の位置(最高位)にあり、加圧ポンプを駆動させて貯水タンク20内の洗浄水を便器本体2へ供給して水位が低下したときには、フロート54cの上端は、図5に示すH2の位置(最低位)まで下がり、マグネット54eがリードスイッチ54fをONさせ、それにより、コントローラ36が加圧ポンプ22の駆動が停止させ、洗浄水の便器本体1への供給が停止するようになっている。
【0033】
次に、図5及び図6に示すように、下方フロートスイッチ54の近傍で且つ真上には、貯水タンク20内に位置するポンプ給水路38の外周部に、平板状部材である水流遮蔽板56がほぼ水平な状態で取り付けられている。なお、この水流遮蔽板56は、ポンプ給水路38に取り付けられているが、これ以外に、貯水タンク20の内壁に取り付けるようにしても良い。
【0034】
次に、本発明の第1実施形態による作用(動作)を説明する。本実施形態による水洗大便器における基本動作は上述した通りであるので、ここでは、加圧ポンプを駆動させて、貯水タンク内の洗浄水を便器本体へ供給する際の動作を説明する。
先ず、加圧ポンプ22により、貯水タンク20内の満水状態の洗浄水を吸引して、便器本体1のジェット吐水口16への給水を開始するときには、ポンプ給水路38の給水口40の上方の水域は洗浄水が強く引き込まれて水位が低下するが、下方フロートスイッチ54の近傍の真上には、水流遮蔽板56が設けられているため、水流は、直接、下方フロートスイッチ54には作用せず、そのため、フロート54cの浮力に打ち勝つような流れは形成し難くなっている。即ち、水流遮蔽板56により、下方フロートスイッチ54へ向けて上方から下方に流れる洗浄水の流れは抑制(低減)される。この結果、本実施形態によれば、下方フロートスイッチ54へ向けて上方から下方に流れる洗浄水の流れがフロート54cの浮力に打ち勝ってフロート54cを押し下げることにより生じる下方フロートスイッチ54の水位の誤検知を確実に防止することができる。
【0035】
次に、図7により、本発明の第2実施形態による水洗大便器を説明する。図7は、本発明の第2実施形態による水洗大便器の下方フロートスイッチと水流遮蔽板を示す正面図である。なお、第2実施形態においては、第1実施形態と同一部分には同一符号を付し、それらの説明は省略する。
図7に示すように、第2実施形態による水洗大便器においては、第1実施形態におけるポンプ給水路38に取り付けられた水流遮蔽板56の代わりに、板状部材である水流遮蔽板58を、下方フロートスイッチ54の支持軸54bの上端にほぼ水平方向に取り付けている。
【0036】
この第2実施形態によれば、水流遮蔽板58を下方フロートスイッチ54の支持軸54bの上端に取り付けたので、フロート54cのストッパーの役割を兼ねている。また、水流遮蔽板58を下方フロートスイッチ54に取り付けたので、貯水タンク20への取り付けが容易となる。
【0037】
さらに、第2実施形態においても、加圧ポンプ22により、貯水タンク20内の満水状態の洗浄水を吸引して、便器本体1のジェット吐水口16への給水を開始するときには、ポンプ給水路38の給水口40の上方の水域は洗浄水が強く引き込まれて水位が低下するが、下方フロートスイッチ54の支持軸54bの上端にほぼ水平方向に水流遮蔽板58が取り付けられているため、水流は、直接、下方フロートスイッチ54には作用せず、そのため、フロート54cの浮力に打ち勝つような流れは形成し難くなっている。即ち、水流遮蔽板58により、下方フロートスイッチ54へ向けて上方から下方に流れる洗浄水の流れは抑制(低減)される。この結果、本実施形態によれば、下方フロートスイッチ54へ向けて上方から下方に流れる洗浄水の流れがフロート54cの浮力に打ち勝ってフロート54cを押し下げることにより生じる下方フロートスイッチ54の水位の誤検知を確実に防止することができる。
【0038】
次に、図8乃至図10により、本発明の第3実施形態を説明する。図8は本発明の第3実施形態による水洗大便器の貯水タンクを示す断面斜視図であり、図9は図8のIX−IX線に沿う断面図であり、図10は図8の正面図である。なお、第3実施形態においても、第1実施形態と同一部分には同一符号を付し、それらの説明は省略する。
【0039】
図8乃至図10に示すように、貯水タンク20は、前面壁20a、後面壁20b、側面壁20c、底面壁20dを備えている。後面壁20bの長手方向中央で下方側には、貯水タンク20の平面断面形状をコ字形状(凹形状)とするための直方体形状の突出部60が形成され、これにより、貯水タンク20が平面視で、両側部の幅W1に対して、流路幅W2が狭くなるような流路幅狭部(水流速度低下手段)62を形成している。また、下方フロートスイッチ54は、ポンプ給水路38の給水口40から離れて配置され、下方フロートスイッチ54とポンプ給水路38の給水口40との間に流路幅狭部(水流速度低下手段)62が形成されるようになっている。さらに、貯水タンク20の底面壁20dを下方フロートスイッチ54からポンプ給水路38の給水口40に向けて下方に傾斜させている。
【0040】
第3実施形態による水洗大便器においても、加圧ポンプ22により、貯水タンク20内の満水状態の洗浄水を吸引して、便器本体1のジェット吐水口16への給水を開始するときには、先ず、矢印A1として示すように、給水口40から離れた水域の水流が下方斜め方向に流れ、次に、ポンプ給水路38の給水口40の上方から、洗浄水が強く引き込まれて水位が低下するが、下方フロースイッチ54の近傍の水流は、矢印A2として示すように、給水口40に向う斜め方向の流れとなり、流路幅狭部62において貯水タンク20の上方の領域に比べて速度が遅くなる。
【0041】
このように、本実施形態の水洗大便器においては、ポンプ給水路38の給水口40と下方フロートスイッチ54との間で貯水タンク20の下方部位に流路幅狭部62を形成したので、下方フロートスイッチ54から給水口40に向けて流れる流れの速度が貯水タンク20の上方の領域に比べて遅くなり、これにより、下方フロートスイッチ54の上方の洗浄水の流れが給水口40に向う斜め方向の流れとなり、その結果、下方フロートスイッチ54に作用する水流がフロート54cの浮力に打ち勝ってフロート54cを押し下げることにより生じる下方フロートスイッチ54の水位の誤検知を確実に防止することができる。
【0042】
さらに、本実施形態においては、水路幅狭部62により、下方フロートスイッチ54から給水口40に向けて流れる流れの速度が遅くなるが、貯水タンク20の底面壁20dを下方フロートスイッチ54からポンプ給水路38の給水口40に向けて下方に傾斜させることにより、流れの速度が遅くても、洗浄水を給水口40にスムーズに流入させることができる。また、底壁面20dを傾斜させ洗浄水を給水口40にスムーズに流入できることで、貯水タンク20内の水位を一様に降下させることが可能となり、加圧ポンプ22のエア噛みの不具合を解消できる。これは、底壁面20dが平坦であると、給水口40側の水が下方フロートスイッチ54側に比べて給水し易くなり、給水口40側の水位が下がりやすい傾向となり、そのため、下フロートスイッチ54がONにならない状態で、給水口40付近の水が少なくなり加圧ポンプ22が空気を吸い込んでしまうというエア噛みの不具合が発生するからである。
【0043】
次に、図11及び図12により、本発明の第4実施形態を説明する。図11は本発明の第4実施形態による水洗大便器の貯水タンクを示す正面断面図であり、図12は図11の平面断面図である。なお、第4実施形態においては、第3実施形態と同一部分には同一符号を付し、それらの説明は省略する。
【0044】
図11及び図12に示すように、第4実施形態においても、貯水タンク20は、第3実施形態と同様に、前面壁20a、後面壁20b、側面壁20c、底面壁20dを備えている。また、下方フロートスイッチ54は、ポンプ給水路38の給水口40から離れて配置され、さらに、貯水タンク20の底面壁20dを下方フロートスイッチ54からポンプ給水路38の給水口40に向けて下方に傾斜させている。さらに、貯水タンク20の底面壁20dの長手方向中央には、上方に延びる遮蔽板(水流速度低下手段)64が設けられている。この遮蔽板64の側方である前面壁20aと後面壁20bと間には、それぞれ、狭い幅W3の流路66が形成されている。
【0045】
第4実施形態による水洗大便器においても、加圧ポンプ22により、貯水タンク20内の満水状態の洗浄水を吸引して、便器本体1のジェット吐水口16への給水を開始するときには、先ず、矢印B1として示すように、給水口40から離れた水域の水流が下方斜め方向に流れ、次に、ポンプ給水路38の給水口40の上方から、洗浄水が強く引き込まれて水位が低下するが、下方フロースイッチ54の近傍の水流は、矢印B2として示すように、給水口40に向う斜め方向の流れとなり、遮蔽板64により形成された流路66において速度が遅くなる。
【0046】
このように、本実施形態の水洗大便器においては、ポンプ給水路38の給水口40と下方フロートスイッチ54との間の底面壁20dに上方へ延びる遮蔽板64を設けて狭い流路66を形成したので、その狭い流路66で、下方フロートスイッチ54から給水口40に向けて流れる流れの速度が遅くなり、これにより、下方フロートスイッチ54の上方の洗浄水の流れが給水口40に向う斜め方向の流れとなり、その結果、下方フロートスイッチ54に作用する水流がフロート54cの浮力に打ち勝ってフロート54cを押し下げることにより生じる下方フロートスイッチ54の水位の誤検知を確実に防止することができる。
【0047】
さらに、第4実施形態においても、遮蔽板64により、下方フロートスイッチ54から給水口40に向けて流れる流れの速度が遅くなるが、貯水タンク20の底面壁20dを下方フロートスイッチ54からポンプ給水路38の給水口40に向けて下方に傾斜させることにより、流れの速度が遅くても、洗浄水を給水口40にスムーズに流入させることができる。
【符号の説明】
【0048】
1 水洗大便器
2 便座本体
20 貯水タンク
22 加圧ポンプ
36 コントローラ
38 ポンプ給水路
40 給水口
42 ジェット給水路
52 上方フロートスイッチ
54 下方フロートスイッチ
54b 支持軸
54c フロート
56,58 水流遮蔽板
60 突出部
62 流路幅狭部
64 遮蔽板
66 流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器本体と、
この便器本体を洗浄するための洗浄水を貯水する貯水タンクと、
この貯水タンク内の水を吸引して上記便器本体に供給する加圧ポンプと、
上記貯水タンクと上記加圧ポンプを接続するポンプ給水路と、
上記貯水タンク内の上方に設けられ洗浄水の水位が所定の第1水位(L1)を越えたときONとなる上方フロートスイッチと、
上記貯水タンク内の下方に設けられ、支持軸及びこの支持軸に沿って上下動するフロートを備え、洗浄水の水位が所定の第2水位(L2)より低下したときONとなる下方フロートスイッチと、
上記加圧ポンプ駆動時に上記貯水タンク内に生じる下方フロートスイッチへ向けて上方から下方に流れる洗浄水の流れを抑制する水流抑制手段と、
を有することを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
上記水流抑制手段は、上記下方フロートスイッチの近傍且つ真上にほぼ水平に取り付けられた平板状部材である請求項1に記載の水洗大便器。
【請求項3】
上記水流抑制手段は、上記下方フロートスイッチの支持軸の上端にほぼ水平方向に取り付けられた板状部材である請求項1に記載の水洗大便器。
【請求項4】
上記ポンプ給水路は上記貯水タンク内に配置された給水口を備え、上記下方フロートスイッチはポンプ給水路の給水口と離れて配置され、上記水流抑制手段は、給水口と下方フロートスイッチの間に形成され、下方フロートスイッチから給水口に向けて流れる流れの速度を貯水タンクの上方の領域よりも低下させる水流速度低下手段である請求項1に記載の水洗大便器。
【請求項5】
上記水流速度低下手段は、上記ポンプ給水路の給水口と上記下方フロートスイッチとの間で貯水タンクの下方部位に形成された流路幅狭部である請求項4に記載の水洗大便器。
【請求項6】
上記水流速度低下手段は、上記ポンプ給水路の給水口と上記下方フロートスイッチとの間に上方へ延び且つその側方に狭い流路を形成するように配置された遮蔽板である請求項4に記載の水洗大便器。
【請求項7】
上記下方フロートスイッチは、上記ポンプ給水路の給水口よりも上方に位置し、貯水タンクの底面が下方フロートスイッチからポンプ給水路の給水口に向けて下方に傾斜している請求項4乃至6の何れか1項に記載の水洗大便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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