α−ガラクトシダーゼA欠損症の治療
【課題】ファブリー病を含むα-ガラクトシダーゼA欠損症の治療のための改良されたα-ガラクトシダーゼA組成物の提供。
【解決手段】α-Gal Aの新規の薬学的組成物、α-Gal A欠損症の治療用キット、患者のためのα-Gal Aの適切な用量を選択する方法、およびこのような組成物を使用したα-Gal A欠損症の治療方法。
【解決手段】α-Gal Aの新規の薬学的組成物、α-Gal A欠損症の治療用キット、患者のためのα-Gal Aの適切な用量を選択する方法、およびこのような組成物を使用したα-Gal A欠損症の治療方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2002年4月25日提出の米国特許仮出願第60/375,584号(その内容全体が参照として本明細書に組み入れられる)の優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、ファブリー病を含むα-ガラクトシダーゼA欠損症の治療のための改良されたα-ガラクトシダーゼA組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
ファブリー病は、重篤な腎障害、被角血管種、および/または心血管の異常(心室拡大および僧帽弁閉鎖不全を含む)によって特徴付けられるX連鎖遺伝性リソソーム蓄積症である。ファブリー病はまた、末梢神経系に影響を与え、苦悶エピソード(episodes of agonizing)、先端(extremities)の灼熱痛を引き起こす。
【0004】
ファブリー病は、酵素α-ガラクトシダーゼA(α-Gal A)の欠損に起因する。ファブリー病の病態生理学的性質は十分に確立されている(リソソーム酵素α-ガラクトシダーゼA(α-Gal A)の欠乏により、体内にグロボトリアオシルセラミド(Gb3)が蓄積する)。
【0005】
疾患のX連鎖遺伝パターンにより、ファブリー病患者の大部分は男性である。重篤に罹患した女性のヘテロ接合体もしばしば認められているが、女性のヘテロ接合体は高齢期に症状が出現するようになる。ファブリー病の変異型は、左心室肥大および心臓病と相関する(Nakanoら、New Engl.J Med.333:288-293(1995)(非特許文献1))。cDNAおよびヒトα-Gal Aをコードする遺伝子が、単離および配列決定されている。ヒトα-Gal Aは、429アミノ酸ポリペプチドとして発現され、そのN末端の31アミノ酸はシグナルペプチドである。ヒト酵素は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(Desnickら、米国特許第5,356,804号(特許文献1);loannouら、J Cell Biol.119:1137(1992)(非特許文献2));昆虫細胞(Calhounら、WO 90/11353(特許文献2));およびヒト細胞(Seldenら、米国特許第6,083,725号(特許文献3)および同第6,458,574B1号(特許文献4))で発現されている。酵素代償療法は、現在使用されているファブリー病の治療方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,356,804号
【特許文献2】WO 90/11353
【特許文献3】米国特許第6,083,725号
【特許文献4】米国特許第6,458,574B1号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Nakanoら、New Engl.J Med.333:288-293(1995)
【非特許文献2】loannouら、J Cell Biol.119:1137(1992)
【発明の概要】
【0008】
発明の概要
ヒトα-Gal Aの薬物動態学および修飾プロフィール(例えば、炭水化物、リン酸、またはシアル酸化修飾)の理解により、本発明者らは、α-Gal Aの新規の薬学的組成物、α-Gal A欠損症の治療用キット、患者のためのα-Gal Aの適切な用量を選択する方法、およびこのような組成物を使用したα-Gal A欠損症の治療方法を開発した。α-Gal A調製物、試料、バッチなどの評価方法(例えば、本明細書に記載のα-Gal A組成物に関する生物学的等価物の品質管理方法および決定方法)もまた提供する。
【0009】
本明細書に記載のα-Gal Aの投与および投与ストラテジーにより、α-Gal A代替療法に必要なα-Gal Aの量およびコストを減少させ、必要な投与回数も減少させる。
【0010】
したがって、1つの局面では、本発明は、ヒトα-ガラクトシダーゼA(α-Gal A)調製物を含む薬学的組成物を特徴とする。血清または血漿クリアランス飽和レベル未満の用量で、循環血中からのα-Gal A調製物の血清クリアランスは、好ましくは、用量曲線に対するAUCの直線部上の4mL/分/kg未満、より好ましくは用量曲線に対するAUCの直線部上の約3.5、3、または2.5mL/分/kg未満である。α-Gal A調製物は、哺乳動物における循環(血清または血漿)からのクリアランスについての対比スケール式(allometric scaling equation)Y=a(BW)b(式中、Yはα-Gal Aのクリアランス速度(ml/分)であり、「a」は非特異的定数であり、BWは体重である)の指数「b」(少なくとも0.85)を有することができる。指数「b」は、好ましくは少なくとも0.88、より好ましくは少なくとも0.90、最も好ましくは少なくとも0.92または少なくとも0.94である。
【0011】
1つの態様では、α-Gal Aは、ヒト細胞(例えば、初代ヒト細胞(例えば、初代ヒト線維芽細胞または継代ヒト細胞系))から産生される。細胞および/または細胞から単離したα-Gal A調製物を、所望のグリコシル化、リン酸化、またはシアル酸化特性を有するα-Gal A調製物が得られるように修飾することができる。
【0012】
別の態様では、α-Gal Aは、非ヒト細胞(例えば、CHO細胞)から産生される。細胞および/または細胞から単離されたα-Gal A調製物を、所望のグリコシル化、リン酸化、またはシアル酸化特性を有するα-Gal A調製物が得られるように修飾することができる。
【0013】
別の局面では、本発明は、α-Gal A欠損症の治療用キットを特徴とする。キットは、(a)血清または血漿クリアランス飽和レベル未満の用量で、循環血中からのα-Gal A調製物の血清クリアランスは、好ましくは、用量曲線に対する曲線下面積(AUC)の直線部上の4mL/分/kg未満、より好ましくは用量曲線に対するAUCの直線部上の約3.5、3、または2.5mL/分/kg未満である、ヒトα-Gal A糖タンパク質調製物および(b)必要とする被験体に調製物を投与するための説明書を含む。
【0014】
キットは、約0.05mg/kg被験体体重〜2.0mg/kg被験体体重(mg/kg)の間のα-Gal A調製物の単位用量を投与するための説明書も含み得る。いくつかの態様では、キットは、0.05mg/kg〜2.0mg/kgの間、好ましくは約0.05mg/kg〜1.0mg/kgの間、より好ましくは約0.05mg/kg〜0.5mg/kgの間(例えば、0.05mg/kg〜0.3mg/kg未満の間)のα-Gal A調製物の単位用量を投与するための説明書を含む。1つの態様では、単位用量は、0.3mg/kg未満である。例えば、キットは、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、または1.0mg/kg体重のα-Gal A調製物の単位用量を投与するための説明書を含み得る。
【0015】
他の態様では、キットは、約0.1×106U/kg〜10×106U/kgの間のα-Gal A調製物の単位用量を投与するための説明書を含む。いくつかの態様では、キットは、0.1×106U/kg〜5×106U/kgの間、好ましくは約0.1×106U/kg〜3×106U/kgの間のα-Gal A調製物の単位用量を投与するための説明書を含む。例えば、キットは、約0.1、0.2、0.3、0.5、1、2、3、5、または10×106U/kgまでのα-Gal A調製物の単位用量を投与するための説明書を含み得る。
【0016】
いくつかの態様では、キットは、単位用量を7日毎に1回だけ投与するための説明書も含む。例えば、説明書は、単位用量を7日毎、10日毎、14日毎、21日毎、4週間毎、6週間毎、8週間毎、または10週間毎に1回だけ投与するための説明書を含み得る。
【0017】
別の局面では、本発明は、α-Gal A欠損症の治療用キットを特徴とする。キットは、ヒトα-Gal A糖タンパク質調製物および1つまたは複数の以下の説明書:(a)0.05mg/kg〜2.0mg/kgの間、好ましくは約0.05mg/kg〜1.0mg/kgの間、より好ましくは約0.05mg/kg〜0.5mg/kgの間(例えば、約0.05mg/kg〜0.3mg/kg未満の間)の単位用量で必要とする被験体に調製物を投与するための説明書、(b)0.1×106U/kg〜10×106U/kgの間(例えば、0.1×106U/kg〜5×106U/kgの間、好ましくは約0.1×106U/kg〜3×106U/kgの間)のα-Gal A調製物の単位用量を投与するための説明書、または(c)8週間毎、6週間毎、4週間毎、21日毎、14日毎、10日毎、または7日毎に約1回だけ調製物を投与するための説明書を含む。
【0018】
所定量の本明細書に記載のキットの試薬をコンテナにパッケージングすることができる。一般に、数2によって指定された本発明の特徴を具体化したキットを、図16に示す。キット2は、以下の主なエレメントから構成される。パッケージング4、本明細書に6として記載のα-Gal4調製物、および説明書8。任意で、キットは、さらなる薬剤10を含み得る。さらなる薬剤は、例えば、α-Gal A調製物6を溶解または希釈するための薬学的緩衝液または溶液であり得る。説明書8は、例えば、調製物6の投与方法に関する印刷物であり、適切な投薬量に関する情報を含み得る。好ましい説明書は、本明細書に記載の単位用量でα-Gal A調製物6を投与するための説明書を含む。パッケージ4は、本発明のα-Gal A調製物6を含むバイアル(または多数のバイアル)、説明書8、および任意で薬剤10を含むバイアル(または多数のバイアル)を保持するためのボックス様構造である。当業者は、それぞれの必要性に適応させるためにパッケージング4を容易に修正することができる。
【0019】
本発明はまた、α-Gal A欠損症を有する被験体の治療のためのα-Gal Aの単位用量範囲の選択方法を特徴とする。本方法は、被験体の体重を提供する(例えば、被験体の体重を量る)か、被験体、被験体の医療介護提供者、またはデータベースから被験体の体重を得る段階と、0.05mg〜2.0mgの間(例えば、0.05mg〜0.5mgの間または0.05mg〜0.3mg未満の間)のα-Gal A/kg被験体体重の範囲の値を決定する段階とを含む。選択された単位用量を使用して、被験体のα-Gal A代替療法の投薬計画を選択することができる。本方法は、1つまたは複数の基底α-Gal Aレベル(例えば、α-Gal A血清濃度);心血管機能;腎機能;肝機能;年齢、性別について被験体を評価する段階も含み得る。
【0020】
好ましい態様では、単位用量は、2×10-9Mを超えるCmax(薬物注入後の最大血清濃度)を有することによってα-Gal Aの肝臓取り込みを飽和する。
【0021】
別の局面では、本発明はまた、α-Gal A欠損症を罹患しているかそのリスクのある被験体の治療方法を特徴とする。本方法は、血清または血漿クリアランス飽和レベル未満の用量で、循環血中からの静脈内注入後のα-Gal A調製物の血清クリアランスは、好ましくは、用量曲線に対するAUCの直線部上の4mL/分/kg未満、より好ましくは用量曲線に対するAUCの直線部上の約3.5、3、または2.5mL/分/kg未満である、ヒトα-Gal A糖タンパク質調製物(例えば、上記のヒトα-Gal A糖タンパク質調製物)を必要とする被験体に投与する段階を含む。本明細書のいずれかに記載のように、単位用量の投与によりα-Gal Aの肝取り込みが飽和することが好ましい。
【0022】
好ましい態様では、調製物を、静脈内で投与するが、本明細書のいずれかに記載のように、経口、皮下、または鞘内投与のために処方することができる。
【0023】
別の局面では、本発明は、α-Gal A欠損症を罹患しているかそのリスクのある被験体の治療法を含む。本方法は、1つまたは複数の(a)〜(c):(a)約0.05mg/kg被験体体重〜2.0mg/kg被験体体重の間、好ましくは0.05mg/kg被験体体重〜1.0mg/kg被験体体重の間または0.05mg/kg被験体体重〜0.5mg/kg被験体体重の間(例えば、0.05mg/kg被験体体重〜0.3mg/kg被験体体重未満の間(例えば、約0.25、0.20、0.15、または0.1mg/kg被験体体重))の単位用量のヒトα-Gal A糖タンパク質調製物を必要とする被験体に投与する段階と、(b)0.1×106U/kg〜10×106U/kgの間(例えば、0.1×106U/kg〜5×106U/kgの間、好ましくは約0.1×106U/kg〜3×106U/kgの間)のα-Gal A調製物の単位用量のヒトα-Gal A糖タンパク質調製物を必要とする被験体に投与する段階と、(c)7日毎に1回だけ(例えば、10日毎、14日毎、21日毎、4週間毎、6週間毎、または8週間毎に1回だけ)ヒトα-Gal A糖タンパク質調製物を必要とする被験体に投与する段階とを含む。いくつかの態様では、各投与は、少なくとも7、10、14、21、30、または60日間あける。いくつかの態様では、調製物を、少なくとも8週間、16週間、24週間、36週間、48週間、またはそれ以上(例えば、少なくとも1、2、または3年間)にわたり投与する。
【0024】
1つの態様では、ヒトα-Gal A糖タンパク質調製物を、少なくとも2回、好ましくは3回、4回、5回、6回、またはそれ以上であるが、7日毎、好ましくは10日毎、より好ましくは14日毎またはそれ以上(例えば、21日毎)、4週間、6週間、7週間、8週間、またはそれ以上に1回だけ投与する。
【0025】
好ましい態様では、単位用量により、投与したα-Gal Aが肝臓を迂回して体内の他の組織が利用できるようにα-Gal Aの肝取り込みが飽和する。
【0026】
好ましい態様では、調製物を静脈内投与する。
【0027】
他の局面では、本発明は、コンテナ(例えば、ガラス製またはプラスチック製のコンテナ)または送達デバイス(例えば、シリンジ)にパッケージングされた本明細書に記載の単位用量のヒトα-Gal Aを特徴とする。単位用量は、意図される0.05mg/kg被験体体重〜2.0mg/kg被験体体重の間(例えば、0.05mg/kg被験体体重〜1.0mg/kg被験体体重の間、好ましくは0.05mg/kg被験体体重〜0.5mg/kg被験体体重の間、より好ましくは0.05mg/kg被験体体重〜0.3mg/kg被験体体重未満の間)に等価である。α-Gal A調製物の活性は、一般に、約2.0×106U/mg〜4.5×106U/mgの間である。例えば、コンテナまたは送達デバイスは、成体単位用量について2.0mg〜32.0mgの間の本明細書に記載のヒトα-Gal Aを含み得る(例えば、コンテナまたは送達デバイスは、成人用量として約2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、25、または30mgのα-Gal Aを含み得る)。
【0028】
いかなる理論にも拘束されないが、本明細書に記載のα-Gal A調製物を、マンノース-6-リン酸(M6P)受容体を介して血液から主にクリアランスすることができると考えられる。好ましい実施形態では、25%、20%、16%、14%未満(投与後40時間〜50時間の間(例えば、約44時間)で測定)のα-Gal A調製物(例えば、本明細書に記載の調製物)が被験体への投与時に肝臓に取り込まれる。血清または血漿クリアランス飽和レベル未満の用量で、循環血中からのα-Gal A調製物の血清クリアランスは、好ましくは、用量曲線に対するAUCの直線部上の4mL/分/kg未満、より好ましくは用量曲線に対するAUCの直線部上の3.5、3、または2.5mL/分/kg未満である。本明細書に記載のα-Gal A調製物は、以下の肝臓飽和曲線を示す。
mg α-Gal A/肝臓=2.1mg(1-e-用量/4.7)
(式中、用量は、典型的な75kgの患者に投与した総用量(mg)である)。変動係数(CV)は、例えば、約0.40であり得る(したがって、用量および量は患者の大小によって調整する)。
【0029】
いくつかの態様では、本明細書に記載の組成物のα-Gal A調製物、方法、およびキットを、α-Gal Aを産生するように遺伝子操作されたヒト細胞から単離する。他の態様では、α-Gal A調製物を、α-Gal Aを産生するように遺伝子操作された非ヒト細胞(例えば、CHO細胞)から単離することができる。いくつかの態様では、1つまたは複数のα-Gal A発現構築物、ヒトまたは非ヒト細胞、またはヒトまたは非ヒト細胞から単離されたα-Gal Aを、グリコシル化が変化した(例えば、グリカン、シアル酸化、またはリン酸構造が変化した)α-Gal Aが得られるように修飾することができる。例えば、ヒトα-Gal A(または精製α-Gal A)を産生するように遺伝子操作された非ヒト細胞を、ヒト細胞で産生されたα-Gal Aのグリコシル化特性を模倣するように修飾することができる。1つの態様では、1つまたは複数の外因性α-Gal A修飾酵素(例えば、グリコシダーゼ、グリコシルトランスフェラーゼ、ホスホリルトランスフェラーゼ、またはシアリルトランスフェラーゼ)を発現するように、細胞を修飾(例えば、遺伝子操作)することができる。1つの態様では、α-Gal Aコード配列を、より多いまたはより少ない(好ましくは、より多い)グリコシル化部位を有するように修飾することができる。別の態様では、細胞を、1つまたは複数のグリコシル化酵素のインヒビターまたは他のモジュレーター(例えば、キフネンシンまたはスワイノシン)に曝露することができる。さらに別の態様では、一旦細胞から単離されると、α-Gal Aを、例えば、リン酸インヒビター、キナーゼ、グリコシダーゼ、グリコシルトランスフェラーゼ、ホスホリルトランスフェラーゼ、またはシアリルトランスフェラーゼで修飾する(例えば、切断または化学修飾する)(例えば、1モルのα-Gal Aあたりのシアル酸および/またはマンノース-6-リン酸のモル数の変化による)ことができる。
【0030】
好ましい態様では、本明細書に記載のα-Gal A調製物は、トリシアル酸化およびテトラシアル酸化構造などのより高度にシアル酸化された構造と比較して、中性、モノ、およびジシアル酸化グリカン構造(組み合わせ)が豊富である。例えば、好ましいα-Gal A調製物は、1つまたは複数の、(a)少なくとも約22%の中性グリカン(例えば、少なくとも約25%または30%の中性グリカン)、(b)少なくとも約15%、20%、または25%のモノシアル酸化グリカン、(c)少なくとも35%、好ましくは少なくとも約40%、45%、または50%の中性およびモノシアル酸化グリカンの組み合わせ、(d)少なくとも約75%、76%、78%、またはそれ以上の中性、モノ、およびジシアル酸化グリカンの組み合わせ、および(e)約35%、好ましくは約25%、20%、18%未満、または約15%のトリおよびテトラシアル酸化グリカン構造の組み合わせを有する。
【0031】
好ましい態様では、本明細書に記載のα-Gal A調製物は、平均して、単量体あたり1つを超えるグリカン複合体、好ましくは単量体あたり少なくとも50%のグリカン複合体(例えば、単量体あたり平均1.5個またはそれ以上のグリカン複合体)を有する。
【0032】
好ましい態様では、本明細書に記載のα-Gal A調製物は、少なくとも5%、好ましくは少なくとも7%、10%、または15%の中性グリカンを有する。
【0033】
好ましい態様では、本明細書に記載のα-Gal A調製物は、45%未満のリン酸化グリカンを有する。例えば、調製物は、約35%、30%、25%、または20%未満のリン酸化グリカンを有する。
【0034】
好ましい態様では、本明細書に記載のα-Gal A調製物の総シアル酸化グリカン率は、約45%超(例えば、50%超または55%)である。
【0035】
好ましい態様では、α-Gal A調製物中のシアル酸とマンノース-6-リン酸の比(モル/モルに基づく)は、1.5:1超、好ましくは2:1超、より好ましくは3:1超、最も好ましくは3.5:1超またはそれ以上である。
【0036】
1つの態様では、シアル酸化グリカンとリン酸化グリカンとの比率は1超、好ましくは1.5超、より好ましくは2超(例えば、約2.5または3超)である。
【0037】
本明細書に記載のα-Gal A組成物および方法は、α-Gal A欠損症を有する個体の治療に有用である。本明細書に記載のα-Gal A組成物および方法は、費用効果があり、且つα-Gal Aの必要な投薬量および投与頻度を最小にする治療を提供する。
【0038】
別の局面では、本発明は、α-Gal A調製物、試料、バッチ、または他の組成物の種々の評価方法(例えば、分析、選択、または分類)を特徴とする。本方法を使用して、調製物または試料の構造および/または生物学的パラメーター(例えば、炭水化物組成、リン酸プロフィール、シアル酸化プロフィール、組織分布、または血清クリアランスの特徴)を決定することができる。非限定的な例として、本方法を使用して、調製物または試料が本明細書に記載のα-Gal Aの1つまたは複数の物理的または機能的特性を有するかどうかを決定する。例えば、試料α-Gal A組成物と基準α-Gal A組成物(例えば、本明細書に記載のヒトα-Gal A組成物(ヒト細胞(例えば、ヒト線維芽細胞)から調製したヒトα-Gal Aなどの所望の薬物動態学的または生物学的性質を有するα-Gal A))とを比較することができる。本方法は、特に、α-Gal A調製物の品質管理および/または生物学的等価物の研究に有用である。
【0039】
1つの局面では、本方法は、試験α-Gal A調製物を得るか提供する段階と、調製物が少なくとも1つ(好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは3つまたはそれ以上(例えば、4つ、5つ、6つ、または7つ))の以下の構造上の特徴、(1)より高度にシアル酸化された構造と比較して中性、モノシアル酸化、およびジシアル酸化グリカン構造(組み合わせ)が豊富であること(例えば、(i)少なくとも約22%の中性グリカン(例えば、少なくとも約25%または30%の中性グリカン)、(ii)少なくとも約15%、20%、または25%のモノシアル酸化グリカン、(iii)少なくとも約35%、好ましくは少なくとも約40%、45%、または50%の中性およびモノシアル酸化グリカンの組み合わせ、および/または(iv)少なくとも約75%、76%、78%、またはそれ以上の中性、モノ、およびジシアル酸化グリカンの組み合わせを有する)、(2)約35%未満、好ましくは約25%、20%、18%、または約15%未満のトリおよびテトラシアル酸化グリカン構造の組み合わせを有すること、(3)少なくとも50%、好ましくは少なくとも67%のグリカン複合体を有すること、(4)約45%未満のリン酸化グリカン、好ましくは約35%未満、より好ましくは約30%、25%、または20%未満のリン酸化グリカンを有すること、(5)約45%を超える、好ましくは約50または55%を超えるシアル酸化グリカンを有すること、(6)モル/モルに基づいたシアル酸とマンノース-6-リン酸との比が1.5:1超、好ましくは約2:1超、より好ましくは約3:1超または3.5:1超であること、および(7)シアル酸化グリカンとリン酸化グリカンの比率が1超、好ましくは1.5超、より好ましくは約2、2.5、または3超であることを有するか、および/または1つまたは複数の以下の生物学的または薬物動態学的特徴、(a)ヒト循環血中からの血清クリアランスが、用量曲線に対するAUCの直線部上の4mL/分/kg未満、より好ましくは用量曲線に対するAUCの直線部上の約3.5、3、または2.5mL/分/kg未満であること、(b)調製物が毛細血管/血管内皮細胞、腎糸球体上皮細胞(有足細胞)、糸球体間膜細胞、腎内皮細胞、心筋細胞、肝臓内皮細胞、肝臓洞様毛細血管細胞、肺細胞、および/または神経細胞に優先的にターゲティングすること、および(c)肝細胞によって取り込まれないことを有するかどうかを決定する段階とを含む。
【0040】
1つまたは複数の上記特徴を有する試験調製物を、選択するか、分類するか、処方するか、パッケージングするか、他の下流プロセシングに供することができる。例えば、このような調製物を、特定の薬学的用途のために選択することができる。試験調製物が、1つまたは複数(好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つまたはそれ以上(例えば、4つ、5つ、6つ、または7つ))の上記構造上のパラメーター(1)〜(7)を有することは、所望の薬物動態学的パラメーターまたは生物活性(1つまたは複数の生物学的または薬物動態学的特徴(a)〜(c))と正に相関する(それにより予測に使用することができる)。相関または予測情報を使用して、例えば、ファブリー病の特定の患者または特定の変異型(例えば、腎変異ファブリー病または心変異ファブリー病)のためのα-Gal A治療用調製物をデザインすることができる。相関または予測情報を記録することができる(例えば、プリントまたはコンピュータで読み取り可能な媒体)。
【0041】
いくつかの態様では、試験α-Gal A調製物または試料の生物活性または薬物動態学的パラメーターを、その炭水化物特性から予測する。他の態様では、調製物または試料の生物活性または薬物動態学的パラメーターを実験で決定する。
【0042】
決定の結果(例えば、任意の、中性、モノ、ジ、トリ、またはテトラシアル酸化グリカンまたはその組み合わせの量、グリカン複合体の量、リン酸化グリカンの量、シアル酸化グリカンの量、モル/モルベースでのシアル酸とマンノース-6-リン酸との比、またはシアル酸化グリカンとリン酸化グリカンとの比についての値であり得る)を、記録(例えば、実験記録またはデータベースなどのプリントまたはコンピュータで読み取り可能な記録)に記入することが好ましい。記録は、他の情報(調製物のための特異的試料識別子(identifier)、日付、方法のオペレーター、または酵素活性についての情報、供給源、精製方法、または調製物の生物活性など)を含み得る。記録を使用して、試験調製物に関する情報を保存または提供することができる。例えば、記録を使用して、α-Gal A調製物に関する情報またはその使用を(例えば、政府、医療介護提供者、保険会社、または患者に)、例えば、情報、マーケティング、または説明書の形態で(例えば、印刷物またはコンピュータで読み取り可能な材料(例えば、ラベル))を提供することができる。記録または記録由来の情報を使用して、例えば、薬学的用途または治療用途に適切なまたは不適切な試験調製物を同定することができる。例えば、1つまたは複数の上記構造パラメーター(1)〜(7)を有すると決定された試験α-Gal A調製物を、所望の薬物動態学的パラメーターまたは生物活性(例えば、上記パラメーター(a)〜(c))を有するかを同定することができる。
【0043】
本明細書に記載の方法を使用して、α-Gal A調製物のバッチごとの変動を比較することもできる。この場合、任意の上記の構造または薬物動態学的パラメーターを、複数のα-Gal Aバッチ(例えば、同一の精製プロトコールから作製した異なるバッチ)について評価することができる。好ましい態様では、本方法は、1つまたは複数の上記構造パラメーターまたは薬物動態学的パラメーター(1)〜(7)または(a)〜(c)と予め選択した変動範囲未満(例えば、10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは2.5%未満またはそれ未満の変動)のバッチを選択する段階を含む。複数の調製物を分析する場合(例えば、α-Gal A調製物の異なるバッチ)、決定の結果の記録への記入には、決定結果のデータセット(例えば、プリントまたはコンピュータで読み取り可能なデータセット)の作製を含み得る。データセットは、決定した構造の特徴と予測または実験的に評価された生物活性または薬物動態学的パラメーターとの相関を含み得る。
【0044】
試験すべきα-Gal A試料は、任意の細胞に由来し得るが、好ましくは哺乳動物細胞(例えば、ヒトまたは非ヒト細胞(例えば、CHO細胞))に由来する。いくつかの態様では、試料の炭水化物特性を、例えば、決定段階を行う前に、当技術分野において認識された方法(例えば、上記の糖操作、グリコシルトランスフェラーゼもしくはグリコシダーゼなどのグリコシル化酵素での処理、ホスホリルトランスフェラーゼ、シアリルトランスフェラーゼ、リン酸インヒビター、キナーゼ、もしくはグリコシル化のインヒビターでの細胞もしくは調製物の処理、または任意の上記酵素もしくは他の炭水化物修飾酵素をコードするDNAの細胞における同時発現(例えば、同時トランスフェクションによる))によって修飾した。
【0045】
試料の炭水化物特性を、当技術分野において公知の方法(例えば、イオン交換クロマトグラフィ、高速陰イオン交換(HPAE)クロマトグラフィ、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)、または質量分析)によって得ることができる。炭水化物特性の評価は、調製物のグリカンの組成、電荷、リン酸化、および/またはシアル酸化の評価を含み得る。
【0046】
別の局面では、本発明は、ヒトα-Gal A調製物(例えば、改良α-Gal A調製物)の産生方法を特徴とする。本方法は、細胞から採取したヒトα-Gal A調製物を提供する段階と、1つまたは複数(好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは3つまたはそれ以上(例えば、4つ、5つ、6つ、または7つ))の以下のパラメーター:(1)より高度にシアル酸化された構造と比較して中性、モノシアル酸化、およびジシアル酸化グリカン構造(組み合わせ)が豊富であること(例えば、(i)少なくとも約22%の中性グリカン(例えば、少なくとも約25%または30%の中性グリカン)、(ii)少なくとも約15%、20%、または25%のモノシアル酸化グリカン、(iii)少なくとも約35%、好ましくは少なくとも約40%、45%、または50%の中性およびモノシアル酸化グリカンの組み合わせ、および/または(iv)少なくとも約75%、76%、78%、またはそれ以上の中性、モノ、およびジシアル酸化グリカンの組み合わせを有する)、(2)約35%未満、好ましくは約25%、20%、18%、または約15%未満のトリおよびテトラシアル酸化グリカン構造の組み合わせを有すること、(3)少なくとも50%、好ましくは少なくとも67%のグリカン複合体を有すること、(4)約45%未満のリン酸化グリカン、好ましくは約35%未満、より好ましくは約30%、25%、または20%未満のリン酸化グリカンを有すること、(5)約45%を超える、好ましくは約50または55%を超えるシアル酸化グリカンを有すること、(6)モル/モルに基づいたシアル酸とマンノース-6-リン酸との比が1.5:1超、好ましくは約2:1超、より好ましくは約3:1超または3.5:1超であること、および(7)シアル酸化グリカンとリン酸化グリカンの比率が1超、好ましくは1.5超、より好ましくは約2、2.5、または3超であることに適合するようにα-Gal A調製物のグリカン構造を修飾する段階とを含む。グリカン構造を、当技術分野において公知の方法(例えば、糖操作(例えば、天然に存在しないグリコシル化部位を有するヒトα-Gal Aを産生するための細胞の伝子操作、および/またはグリコシダーゼ、グリコシルトランスフェラーゼ、ホスホリルトランスフェラーゼ、ホスファターゼ、またはシアリルトランスフェラーゼを産生するための細胞の遺伝子操作)、α-Gal A精製プロセス時の糖形態の選択的単離、炭水化物修飾酵素での細胞または調製物の処理、グリコシル化インヒビター(例えば、キフネンシン)での細胞または調製物の処理、および/または任意の上記酵素もしくは他の炭水化物修飾酵素をコードするDNAの細胞における同時発現(例えば、同時トランスフェクションによる))によって修飾することができる。
【0047】
好ましい態様では、本方法は、修飾後のα-Gal A調製物の1つまたは複数の炭水化物特性のパラメーター、生物活性、または薬物動態学的パラメーターを分析する(例えば、アッセイする)段階を含む。
【0048】
本発明はまた、被験体(例えば、ヒト)の治療方法を特徴とする。本方法は、異なるグリカンの特徴を有する2つまたはそれ以上のα-Gal A調製物のパネルを提供するか得る段階と、被験体の治療について1つまたは複数(好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは3つまたはそれ以上(例えば、4つ、5つ、6つ、または7つ))の上記パラメーター(1)〜(7)および/または(a)〜(c)に適合する炭水化物特性を有するα-Gal A調製物を選択する段階とを含む。
【0049】
本方法は、1回または複数回の治療的有効量の選択されたα-Gal A調製物を被験体に投与する段階も含み得る。被験体を、投与前、投与時、および/または投与後に評価することができる。例えば、被験体におけるα-Gal A調製物の組織分布または血清クリアランスを評価することができる(例えば、長期間繰り返して評価することができる)。次いで、評価の結果にしたがって調製物の用量を調整することができる。被験体を、α-Gal A調製物の投与に応答した状態(例えば、臨床状態)について評価またはモニターすることもできる。
【0050】
異なる炭水化物特性(例えば、各パラメーター(1)〜(7)またはパラメーター(1)〜(7)の異なる組み合わせ)を、異なる集団(例えば、疾患の段階または型(例えば、心臓型ファブリー病と腎臓型ファブリー病)、年齢、性別、民族的背景、または遺伝子型が異なる集団)の所望の薬物動態学的性質または他の生物学的性質に相関させることができる。
【0051】
「α-Gal A欠損症」とは、主に毛細血管内皮細胞、腎糸球体上皮細胞(有足細胞)、および糸球体間膜細胞、および/または心筋細胞中に中性糖脂質(例えば、グロボトリアオシルセラミド)が異常蓄積する患者のこの酵素の量または活性の任意の欠損症を意味する。この物質の沈積物により、重篤な神経障害性の痛み(例えば、先端異常感覚および裂傷性の痛み)、重症性の腎疾患および心血管疾患、および/または脳卒中を発症し得る。糖脂質蓄積は、典型的にはファブリー病を罹患した男性で認められる重篤な症状を誘導し得る。または、蓄積は、しばしば欠損遺伝子のいくつかのヘテロ接合性女性キャリアで認められる比較的穏やかな症状を誘導し得る。罹患個体は、平均寿命が非常に短く、通常、約40〜50年で腎臓、心臓、および/または脳血管系の合併症で死亡する。
【0052】
α-Gal A調製物の「炭水化物特性」とは、α-Gal Aの所与の調製物または試料のグリカン構造の1つまたは複数の識別特徴である。炭水化物特性は、定量的または定性的であり得る。例えば、α-Gal A調製物の炭水化物特性には、1つまたは複数の以下の識別特徴が含まれ得る。(a)高マンノースまたはハイブリッドグリカンに対する複合体の相対レベル、比率、または特定の値、(b)中性およびシアル酸化(例えば、モノシアル酸化、ジシアル酸化、トリシアル酸化、およびテトラシアル酸化)グリカン構造の相対レベル、比率、または特定の値、(c)リン酸化または非リン酸化グリカンの相対レベル、比率、または特定の値、(d)シアル酸化グリカンの相対レベル、比率、または特定の値、(e)調製物のグリカンの相対的または特異的負荷プロフィール、(f)ある負荷単糖類型と別の型との相対的または特異的比(例えば、シアル酸とマンノース-6-リン酸との比またはシアル酸化グリカンとリン酸化グリカンとの比)。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】シグナルペプチドをコードする配列を含むα-Gal AcDNAの配列(配列番号:1)を示す図である。
【図2】ヒトα-Gal Aアミノ酸配列(配列番号:2)を示す図である。
【図3A】pGA213Cの概略マップを示す。
【図3B】ターゲティング構築物pGA213Cおよび内因性α-Gal A遺伝子座を使用した相同組換えの略図である。pGA213Cを、X染色体のα-Gal A遺伝子座上の配列に対応する上記のように整列させたターゲティング配列として示す。メチオニン開始コドンATGに対する位置を、線状マップ上の数字によって示す。マウスdhfr、最近neo、およびCMVプロモーター/アルドラーゼイントロン配列を含む活性化ユニットを、DNAクローニングによって挿入された位置(-221)の上に示す。α-Gal Aコード配列を、暗くしたボックスによって示す。α-Gal A非コード配列を、薄く暗くしたボックスによって示す。大きな矢印は、dhfrおよびneo発現の転写方向を示す。
【図4】CHO細胞で作製されたα-Gal A(Fabrazyme(商標))に対するヒト細胞で作製されたα-Gal A(Replagal(商標))から放出されたグリカンを示すクロマトグラフである。両調製物を、Dionex BioLC Carbohydrate SystemでのHPAE-PADを使用して分析した。グリカンプロフィールは、Raplagal(商標)(上)およびFabrazyme(商標)(下)のグリカン鎖に有意差が存在することを示す。Fabrazyme(商標)は、Raplagal(商標)と比較して、リン酸化構造(65〜69分の溶離でピーク)およびより高度にシアル酸化した構造(56〜60分で溶離したテトラシアル酸化構造および51〜55分に溶離したトリシアル酸化構造)が豊富である。Raplagal(商標)は、中性(33〜36分でピーク)、モノシアル酸化構造(39〜44分でピーク)、およびジシアル酸化構造(45〜49分でピーク)が豊富である。
【図5】ヒト細胞で作製されたα-Gal A(Replagal(商標))およびCHO細胞で作製されたα-Gal A(Fabrazyme(商標))の細胞への内在化を示すグラフである。正常なヒト線維芽細胞を、Replagal(商標)またはFabrazyme(商標)の存在下または非存在下(対照、示さず)で多ウェル培養プレートにて6時間インキュベートした。この内在化は、マンノース-6-リン酸で阻害可能であり、内在化が主にマンノース-6-リン酸受容体を介することを示す。結果は、Replagal(商標)およびFabrazyme(商標)が線維芽細胞によって同様に内在化されないことを示す。マンノース-6-リン酸受容体媒介内在化によって、Fabrazyme(商標)はReplagal(商標)よりも迅速にクリアランスされる。
【図6】MALDI-TOF質量分析によって決定した、ヒト細胞で作製されたα-Gal A(Replagal(商標))(上)およびCHO細胞で作製されたα-Gal A(Fabrazyme(商標))(下)の分子量を示す図である。主要な広いピークの最大値は、それぞれ50,755Daおよび50,705Daであり、グリコシル化単量体の推定分子量と一致する。それぞれReplagal(商標)およびFabrazyme(商標)の低い方の分子量の糖形態を示す約48,071Daおよび47,667Daのリーディングショルダーが存在する。低い方の分子量の糖形態に相当するリーディングショルダーは、Fabrazyme(商標)のスペクトルと非常に異なる。
【図7】ヒト細胞で作製されたα-Gal A(Replagal(商標))(下)およびCHO細胞で作製されたα-Gal A(Fabrazyme(商標))(上)から放出されたグリカンの負荷プロフィールを示す図である。グリカンを、蛍光プローブで誘導体化し、GlycoSep(商標)Cカラムでのイオン交換クロマトグラフィによって比較した。結果は、Replagal(商標)は中性および一負荷グリカンの比率が高く、Fabrazyme(商標)は三負荷グリカンの比率が高いことを示す。
【図8】C4逆相カラム(Vydac)を使用した逆相HPLCによって分析したFabrazyme(商標)(上)およびReplagal(商標)(下)のクロマトグラムを示す図である。214nmで得たクロマトグラムを示す。低い方の分子量の糖形態に対応するリーディングショルダーは、Fabrazyme(商標)と非常に異なる。
【図9】1mg/kgを静脈内投与したカニクイザル由来のヒト細胞で作製されたα-Gal A(Replagal(商標))の血清濃度(U/mg)を示すグラフである。
【図10】ヒト細胞で作製されたα-Gal A(Replagal(商標))の動物モデルにおけるCmaxの用量比例を示すグラフである。
【図11】ヒト被験体における0.2mg/kgでの注入後のReplagal(商標)血漿濃度(U/ml)を示すグラフである。
【図12】ヒト細胞で作製されたα-Gal A(Replagal(商標))のマウスに対するヒトのCmaxの用量比例を示すグラフである。
【図13】ヒト細胞で作製されたα-Gal A(Replagal(商標))の動物およびヒトにおける濃度曲線下面積(AUC)の用量比例を示すグラフである。
【図14】ヒト細胞で作製されたα-Gal A調製物(Replagal(商標))のヒトにおける用量に対する肝臓分布を示すグラフである。
【図15】男性および女性のヒト被験体における0.2mg/kgでの注入後のReplagal(商標)血漿濃度(U/ml)を示すグラフである。
【図16】調製物を投与するためのバイアルにパッケージングされた本明細書に記載のα-Gal A調製物および説明書を含むキットを略図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
発明の詳細な説明
序文
α-Gal A欠損症の酵素代替療法に望ましい薬物動態学的性質を有するヒトα-Gal A調製物が得られる修飾(例えば、炭水化物の構造(例えば、グリカン、リン酸、またはシアル酸の修飾))をヒトα-Gal Aに行うことができることが発見された。例えば、ヒトα-Gal Aが産生されるように遺伝子操作されたヒト細胞から産生されたヒトα-Gal Aの調製物は、ヒトにおける循環血中からのクリアランスについての対比スケール式Y=a(BW)b(式中、Yはα-Gal Aのクリアランス速度(ml/分)であり、「a」は非特異的定数であり、BWは体重である)の指数「b」(少なくとも0.85)(好ましくは0.92まで)を有する。本明細書に記載のこのようなα-Gal A調製物を、主にM6P受容体によって取り込むことができ、非ヒト細胞(例えば、CHO細胞)で産生されたヒトα-Gal Aと比較して血清クリアランスはあまり迅速ではない。したがって、本明細書に記載のα-Gal A欠損症の治療のための薬学的組成物およびキットは、実質的に当技術分野において現在使用されているよりも少量の単位用量で投与するこのようなα-Gal A調製物を含む。例えば、いくつかの態様では、本明細書に記載のα-Gal A調製物を、0.05mg/kg体重〜2.0mg/kg体重(mg/kg)の間、好ましくは0.05mg/kg〜5mg/kgの間、より好ましくは0.05mg/kg〜0.3mg/kgの間(例えば、約0.1、0.2、0.25、0.3、0.4、または0.5mg/kg)の単位用量で投与する。単位用量は、例えば、0.1×106U/kg〜10×106U/kgの間であり得る。いくつかの態様では、α-Gal A調製物の単位用量は、0.1×106U/kg〜5×106U/kgの間、好ましくは約0.1×106U/kg〜3×106U/kgの間である。他の態様では、本明細書に記載のα-Gal A調製物を、7日毎(例えば、10日毎、14日毎、または21日毎、4週間毎、5週間毎、6週間毎、7週間毎、または8週間毎に1回だけ投与する。患者によっては、さらに低い頻度(例えば、9、10、11、12週、またはそれ以上に1回)での投与が可能であり得る。
【0055】
所望の薬物動態学は少なくとも一部はα-Gal A調製物のグリコシル化パターンに起因すると考えられる。ヒトα-Gal Aの所望の薬物動態学に必要なグリコシル化パターン(例えば、α-Gal A単量体あたり平均して少なくとも50%のグリカン複合体;シアル酸とマンノース-6-リン酸との比(モル/モルベース)は、1.5:1超、好ましくは2:1超、より好ましくは3:1超、最も好ましくは3.5:1超またはそれ以上)を、当技術分野において公知の多数の方法によって達成することができる。一定の代表的な態様を以下にまとめ、より詳細に説明する。
【0056】
ファブリー病治療のための本明細書に記載のα-Gal A調製物を任意の細胞(α-Gal A産生細胞)で産生することができる。いくつかの態様では、本明細書に記載の組成物および方法は、以下により詳細に記載した標準的な遺伝子操作技術(クローン化α-Gal A遺伝子またはcDNAの宿主細胞への移入に基づく)または遺伝子活性化を使用して産生したヒトα-Gal Aを使用する。酵素の薬物動態学的活性に重要な炭水化物修飾を提供するヒトα-Gal Aをヒト細胞中で産生することができる。
【0057】
しかし、ヒトα-Gal Aを、非ヒト細胞(例えば、CHO細胞)中で産生することもできる。非ヒト細胞中でα-Gal Aが産生される場合、1つまたは複数のα-Gal A発現構築物、非ヒト細胞、または非ヒト細胞から単離したα-Gal Aを、例えば、下記のように修飾して所望の薬物動態学的性質が得られるグリコシル化プロフィールを有するα-Gal A調製物を得る。
【0058】
ヒトα-Gal Aの産生に適切な細胞
精製ヒトα-Gal Aを、培養細胞、好ましくは遺伝子操作細胞(例えば、遺伝子操作ヒト細胞)または他の哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞)から得ることができる。昆虫細胞を使用することもできる。
【0059】
ファブリー病治療のために細胞を遺伝子修飾する場合、細胞を、従来の遺伝子操作方法または遺伝子活性化によって修飾することができる。
【0060】
従来の方法によれば、α-Gal A cDNAまたはゲノムDNA配列を含むDNA分子を、発現構築物に含め、標準的な方法(リポソーム、ポリブレン、またはDEAEデキストラン媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、微量注入、または速度駆動遺伝子銃(例えば、米国特許第6,048,729号(参照として本明細書に組み入れられる)を参照のこと)が含まれるが、これらに限定されない)によって初代細胞、二次細胞、または不死化細胞にトランスフェクトすることができる。
【0061】
または、ウイルスベクターによって遺伝情報を送達する系を使用することができる。遺伝子導入に有用であることが公知のウイルスには、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、ムウプスウイルス、ポロウイルス、レトロウイルス、シンドビスウイルス、およびワクシニアウイルス(カナリア痘瘡ウイルスなど)が含まれる。
【0062】
あるいは、細胞は、例えば、米国特許第5,641,670号;米国特許第5,733,761号;米国特許第5,968,502号;米国特許第6,200,778号;米国特許第6,214,622号;米国特許第6,063,630号;米国特許第6,187,305号;米国特許第6,270,989号;および米国特許第6,242,218号(それぞれ参照として本明細書に組み入れられる)に記載の遺伝子活性化(「GA」)アプローチを使用して遺伝子を修飾することができる。遺伝子活性化によって作製されたα-Gal Aを本明細書でGA-GALという(Seldenら、米国特許第6,083,725号および同第6,458,574B1号)。
【0063】
したがって、本明細書で使用される、細胞に関する用語「遺伝子修飾された」は、遺伝子産物をコードするDNA分子の移入および/または遺伝子産物のコード配列の発現を調節する調節エレメントの封入後に特定の遺伝子産物を発現する細胞を含むことを意味する。遺伝子ターゲティングまたは相同組換え(すなわち、特定のゲノム部位でのDNA分子の移入)によってDNA分子を導入することができる。相同組換えを使用して、欠損遺伝子自体を置換することができる(ファブリー病患者自体の細胞中の欠損α-Gal A遺伝子またはその一部を、全遺伝子またはその一部と置換することができる)。
【0064】
本明細書で使用される、用語「初代細胞」には、脊椎動物組織供給源から単離した細胞懸濁液中に存在する細胞(プレーティング前、すなわち、皿またはフラスコなどの組織培養基質に結合している)、組織由来の外植片中に存在する細胞(最初にプレートした細胞の以前の型の両方)、およびこれらのプレートした細胞由来の細胞懸濁液が含まれる。
【0065】
「二次細胞」とは、培養の全てのその後の段階の細胞をいう。すなわち、最初に、プレートした初代細胞を、培養基質から取り出し、再度プレートし(継代)、これを二次細胞といい、その後の継代の全ての細胞も同様である。
【0066】
「細胞株」とは、1回または複数回継代した二次細胞からなり、培養において有限な平均集団倍加数を示し、接触阻止足場依存性成長性を示し(懸濁培養で増殖した細胞以外)、固定されていない。
【0067】
「不死化細胞」または「連続細胞株」は、培養において寿命が見かけ上無制限の樹立細胞系由来の細胞を意味する。
【0068】
初代細胞または二次細胞の例には、線維芽細胞、上皮細胞(乳房上皮細胞および腸上皮細胞が含まれる)、リンパ球および骨髄細胞を含む血液の要素を形成する内皮細胞、グリア細胞、肝細胞、ケラチノサイト、筋細胞、神経細胞、またはこれらの細胞型の前駆体が含まれる。本方法で有用な固定化ヒト細胞系の例には、Bowes黒色腫細胞(ATCCアクセッション番号CRL 9607)、Daudi細胞(ATCCアクセッション番号CCL 213)、HeLa細胞およびHeLa細胞の誘導体(ATCCアクセッション番号CCL 2,CCL 2.1およびCCL 2.2)、HL-60細胞(ATCCアクセッション番号CCL 240)、HT-1080細胞(ATCCアクセッション番号CCL 121)、Jurkat細胞(ATCCアクセッション番号TIB 152)、KB癌細胞(ATCCアクセッション番号CCL 17)、K-562白血病細胞(ATCCアクセッション番号CCL 243)、MCF-7乳癌細胞(ATCCアクセッション番号BTH 22)、MOLT-4細胞(ATCCアクセッション番号1582)、Namalwa細胞(ATCCアクセッション番号CRL 1432)、Raji細胞(ATCCアクセッション番号CCL 86)、RPMI 8226細胞(ATCCアクセッション番号CCL 155)、U-937細胞(ATCCアクセッション番号CRL 15 93)、WI-3 8VAI 3亜系統2R4細胞(ATCCアクセッション番号CLL 75.1)、CCRF-CEM細胞(ATCCアクセッション番号CCL 119)、および2780AD卵巣癌細胞(Van der Blickら、Cancer Res.48:5927-5932,1988)、ならびに融合ヒト細胞によって産生されたヘテロハイブリドーマ細胞および別の種の細胞が含まれるが、これらに限定されない。
【0069】
α-Gal Aを分泌する細胞を産生するためのヒト細胞の遺伝子修飾後、本質的に複数の遺伝的に同一な培養初代ヒト細胞からなるクローン細胞株、または細胞が固定されている場合、本質的に複数の遺伝的に同一の固定ヒト細胞からなるクローン細胞系を作製することができる。1つの態様では、クローン細胞株またはクローン細胞系の細胞は線維芽細胞である。好ましい態様では、細胞は、二次ヒト線維芽細胞(例えば、BRS-11細胞)である。実施例1は、ヒトα-Gal Aを産生するように遺伝子操作された細胞の産生に関するさらなるガイダンスを提供する。
【0070】
遺伝子修飾後、α-Gal Aを産生および分泌する条件下で細胞を培養する。細胞が成長した培地の回収および/またはその内容物を放出させるための細胞の溶解、ならびにその後のタンパク質精製技術の適用によって、培養細胞からタンパク質を単離する。
【0071】
循環半減期、細胞取り込み、および/または適切な組織へのα-Gal Aのターゲティングの増加
本明細書に記載のデータは、α-Gal A欠損症の酵素代替療法に望ましい酵素の薬物動態学的性質が得られる修飾(例えば、炭水化物、リン酸、またはシアル酸の修飾)をヒトα-Gal Aに行うことができることを示す。このようなヒトα-Gal A調製物の1つの作製方法は、ヒト細胞からヒトα-Gal Aを産生することである。
【0072】
ヒト細胞からのα-Gal A(または、実際には任意の糖タンパク質)の産生により必ずCHO細胞で産生されたタンパク質と構造的に異なるタンパク質が得られるように、ヒトおよび非ヒト細胞(例えば、CHO細胞)のグリコシル化の特徴が異なる。理論に束縛されないが、これらの相違は、本明細書に記載の組成物および方法におけるヒトα-Gal A調製物の所望の薬物動態学に重要であると考えられる。しかし、本明細書に記載のα-Gal A調製物を、非ヒト細胞から産生することもでき、いずれかの細胞でα-Gal Aコード配列および/または精製α-Gal Aを修飾する。例えば、そのグリコシル化機構がヒトと異なる非ヒト細胞(例えば、CHO細胞)を、炭水化物代謝酵素(例えば、ヒトには存在するがCHO細胞には存在しないα-2,6-シアリルトランスフェラーゼ)を発現するように遺伝子修飾することができる。
【0073】
別の例では、細胞を、1つまたは複数の修飾グリコシル化部位を有するα-Gal Aタンパク質を発現するように遺伝子操作することができる(例えば、ヒトまたは非ヒト細胞を、1つまたは複数のさらなるN結合グリコシル化部位が付加または欠失したα-Gal Aコード配列を発現するように遺伝子操作することができる)。さらなるグリコシル化部位を、修飾されたα-Gal Aコード配列を発現する細胞(例えば、CHO細胞)中の細胞機構によってグリコシル化し、それにより循環半減期、細胞取り込みが増加し、そして/または非ヒト細胞で発現した場合に未修飾のα-Gal Aと比較して心臓、腎臓、または他の適切な組織へのターゲティングが改良されたα-Gal A調製物を得ることができる。
【0074】
α-Gal Aを、(例えば、遺伝子操作された非ヒト細胞からの単離後に)ヒト細胞中で産生されたヒトα-Gal Aと類似させるように修飾することもできる。例えば、非ヒト細胞から単離したヒトα-Gal A調製物を、被験体への投与前に(例えば、ノイラミニダーゼまたはホスファターゼを使用して)修飾する(リン酸化または切断する)ことができる。
【0075】
循環半減期、細胞取り込み、および/または組織ターゲティングを、特に、(i)α-Gal Aのリン酸化の調整、(ii)α-Gal Aのシアル酸含有量の調整、および/または(iii)シアル酸および末端ガラクトース残基の連続除去またはα-Gal A上のオリゴ糖鎖の末端ガラクトシダーゼ残基の除去によって修飾することもできる。α-Gal A調製物のシアル酸化の変化により、循環半減期、細胞取り込み、および/または外因性α-Gal Aの組織ターゲティングを増大させることができる。α-Gal A1分子あたりのシアル酸とマンノース-6-リン酸とのモル比の変化により、肝細胞の細胞取り込みと比較して、肝臓内皮細胞、肝臓洞様毛細血管細胞、毛細血管/血管内皮細胞、腎糸球体上皮細胞(有足細胞)、および糸球体間膜細胞、腎内皮細胞、肺細胞、腎細胞、神経細胞、および/または心筋細胞などの非肝細胞の細胞取り込みを改良することもできる。例えば、α-Gal A調製物中のシアル酸とマンノース-6-リン酸との好ましい比(モル/モルベース)は、1.5:1超、好ましくは2:1超、より好ましくは3:1超、最も好ましくは3.5:1超またはそれ以上である。
【0076】
グリカンのリモデリング
糖タンパク質修飾(例えば、非ヒト細胞中でα-Gal Aが産生される場合)により、肝臓およびマクロファージ以外の特定の組織中での酵素取り込みを増大させることができる(例えば、毛細血管/血管内皮細胞、腎糸球体上皮細胞(有足細胞)、糸球体間膜細胞、腎内皮細胞、肺細胞、腎細胞、神経細胞、または心筋細胞中の取り込みを増加させることができる)。糖タンパク質修飾法を使用して、35%〜85%の間、好ましくは少なくとも50%のオリゴ糖が負荷されたヒトグリコシル化α-Gal A調製物を得ることができる。
【0077】
タンパク質N-グリコシル化は、オリゴ糖構造でのタンパク質の適切なアスパラギン残基の修飾およびそれによるその性質および生物活性への影響によって機能する(Kukuruzinska & Lennon,Crit.Rev.Oral.Biol.Med.9:415-48(1998))。本明細書に記載のα-Gal A調製物は、主にグリカン複合体への1〜4個のシアル酸残基の付加、高マンノースグリカンへの1〜2個のリン酸部分の付加、またはハイブリッドグリカンへの1つのリン酸および1つのシアル酸の付加によって負電荷のオリゴ糖を高い比率で有し得る。より少量の硫酸化グリカン複合体も存在し得る。負荷構造の比率の高さは、2つの主な機能に役立つ。第1に、2,3-または2,6-結合シアル酸による最後から2番目のガラクトース残基のキャッピングにより、肝細胞上に存在するアシアロ糖タンパク質受容体による循環血中からの未熟な除去が防止される。この受容体は、末端ガラクトース残基を有する糖タンパク質を認識する。
【0078】
例えば、ヒト細胞中での産生パターンに類似させるために非ヒト細胞中で産生されたα-Gal Aのグリコシル化パターンの修飾により、酵素注入後に心臓および腎臓などの重要な標的器官により大量の血漿由来の酵素を飲食作用する機会が与えられる。第2に、高マンノースまたはハイブリッドグリカン上のMan-6-リン酸の存在により、陽イオン依存性Man-6-リン酸受容体(CI-MPR)による受容体媒介取り込みの機会が得られる。この受容体媒介取り込みは、多数の細胞(ファブリー病患者におけるGb3の主要な保存部位である血管内皮細胞が含まれる)の表面上で起こる。2つのMan-6-リン酸残基を有する酵素分子は、1つのMan-6-リン酸を有するものよりもCI-MPRに対する親和性がさらに高い。
【0079】
同一のポリペプチド内の異なるアスパラギン残基を異なるオリゴ糖構造で修飾することができ、その炭水化物部分の特徴によって種々のタンパク質が互いに区別されるという事実によってN-グリコシル化の複雑さが増大する。
【0080】
N結合グリカン鎖を含むタンパク質に対する炭水化物リモデリングのためのいくつかのアプローチを本明細書で提供する。第1に、天然に存在しないグリコシル化部位を有するヒトα-Gal Aを産生するために、細胞(例えば、非ヒト細胞)を遺伝子操作することができる(例えば、1つまたは複数のさらなるグリコシル化部位を有するα-Gal Aタンパク質を産生するために、ヒトα-Gal Aコード配列を操作することができる)。さらなるグリコシル化部位を、細胞(例えば、CHO細胞)における細胞機構によって(例えば、グリカン複合体を使用して)グリコシル化することができ、修飾されたα-Gal Aコード配列を発現し、それにより例えば非ヒト細胞中で発現した場合に未修飾α-Gal Aと比較して循環半減期、細胞取り込み、および/または組織ターゲティングが改良されたα-Gal A調製物が得られる。
【0081】
第2に、精製プロセス時の糖形態の選択的単離によって負荷α-Gal Aの比率を増加させることができる。本発明は、精製プロセス中および/または後のクロマトグラフィカラム樹脂でのα-Gal A種の分画によって高負荷且つ高分子量のα-Gal Aの糖形態の比率の増大を提供する。α-Gal Aのより高度に負荷された糖形態種ほどより多くシアル酸および/またはリン酸を含み、より高い分子量の糖形態は完全にグリコシル化された、最も高度に分岐し且つ高度に負荷した種も含む。負荷種の選択または非グリコシル化、低グリコシル化、または低シアル酸化、および/またはリン酸化α-Gal A種の除去により、調製物中のリン酸比に対してより多数のシアル酸および/またはより望ましいシアル酸を有するα-Gal A糖形態集団が得られ、それによりより良好な半減期、細胞取り込み、および/または組織ターゲティングを有し、それによりより良好な治療効率を有するα-Gal A調製物が得られる。
【0082】
α-Gal Aを精製または単離するために使用される適切なクロマトグラフィ用カラム樹脂(これに限定されない)によってこの分画プロセスを行うことができる。例えば、陽イオン交換樹脂(SP-Sepharose-Gなど)、陰イオン交換樹脂(Q-SepharoseG)、アフィニティ樹脂(ヘパリンSepharose-b、レクチンカラム)、サイズ排除カラム(Superdex 200)、および疎水性相互作用カラム(ブチルSepharose)、および当技術分野において公知の他のクロマトグラフィ用カラム樹脂(これらに限定されない)によって分画することができる。
【0083】
分子量および負荷の異なる糖形態の不均一な混合物として細胞中にα-Gal Aが産生されるので、α-Gal Aはクロマトグラフィ用樹脂から比較的広いピークで溶離される傾向がある。これらの溶離内で、使用された樹脂の性質に依存して特定の様式で糖形態が分布する。例えば、サイズ排除クロマトグラフィでは、最も巨大な糖形態は、より小さな糖形態よりも溶離プロフィールにおいてより早く溶離する傾向がある。イオン交換クロマトグラフィでは、最も負電荷の高い糖形態が負電荷の低い糖形態よりも高い親和性で正電荷の樹脂(Q-Sepharosegなど)に結合するので、溶離プロフィールのより後に溶離する傾向がある。対照的に、これらの負電荷の高い糖形態は負電荷の低い種よりも負電荷の高い樹脂(SP Sepharose8など)にあまり強固に結合することができないか、全く結合することができない。
【0084】
高度に負荷し、かつ/または高分子量のα-Gal Aの糖形態の分画および選択を、従来の遺伝子操作法または遺伝子活性化(GA)によって修飾された細胞(例えば、ヒトまたは非ヒト細胞)などの遺伝子修飾細胞など由来の任意のα-Gal A調製物に対して行うことができる。本明細書に記載のシアル酸化およびリン酸化を変化させる(例えば、シアル酸とマンノース-6-リン酸との比(モル/モルベース)が1.5:1超、好ましくは2:1超、より好ましくは3:1超、最も好ましくは3.5:1超またはそれ以上である調製物を得る)ために最適化された系で成長した細胞系に対してこれを行うことができる。
【0085】
第3の炭水化物リモデリングアプローチは、精製グリコシルトランスフェラーゼおよび適切なヌクレオチド糖ドナーを使用したさらなる末端糖残渣の結合による精製α-Gal Aに対する一定の糖形態の修飾を含み得る。この処理は、使用されるグリコシルトランスフェラーゼの受容体として作用するための適切な遊離末端糖を有する糖形態のみに影響を与える。例えば、α-2,6-シアリルトランスフェラーゼは、ヌクレオチド糖ドナーとしてCMP-シアル酸を使用して、末端Galβ1,4-GlcNAc-R受容体上のα-2,6-結合中にシアル酸を付加する。市販酵素およびその供給源となる種には、フコースα-1,3-トランスフェラーゼIII、V、およびVI(ヒト)、ガラクトースα1,3-トランスフェラーゼ(ブタ)、ガラクトースβ1,4-トランスフェラーゼ(ウシ)、マンノースα1,2-トランスフェラーゼ(酵母)、シアル酸α2,3-トランスフェラーゼ(ラット)、およびシアル酸α2,6-トランスフェラーゼ(ラット)が含まれる。反応完了後、ピロリン酸(GDP、UDP)もしくはリン酸(CMP)結合によって6炭素スペーサーを介してゲルに結合した適切なヌクレオチドからなるグリコシルトランスフェラーゼ特異的アフィニティカラムまたは当技術分野において公知の他のクロマトグラフィ法によって、グリコシルトランスフェラーゼを反応混合物から除去することができる。上記列挙のグリコシルトランスフェラーゼのうち、シアリルトランスフェラーゼは、ヒト患者の酵素代替療法のためのα-Gal Aなどの酵素の修飾に特に有用である。ヌクレオチド糖ドナーとしてのCMP-5-フルオレセイニル-ノイラミン酸とのいずれかのシアリルトランスフェラーゼの使用により、取り込みおよび組織局在を容易にモニターすることができる蛍光標識糖タンパク質が得られる。
【0086】
第4の炭水化物リモデリングアプローチは、糖操作を含み、例えば、ゴルジ装置における翻訳後プロセシングを改変するための細胞(α-Gal A産生細胞)のグリコシル化機構に影響を与える遺伝子の移入が好ましいアプローチである。
【0087】
第5の炭水化物リモデリングアプローチは、異なる糖形態の存在数を減少させるための適切なグリコシダーゼでのα-Gal Aの処理を含む。例えば、ノイラミニダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、およびβ-ヘキソサミニダーゼでのグリカン複合体鎖の連続処理により、オリゴ糖をトリマンノースコアに切断する。
【0088】
第6のグリカンリモデリングアプローチは、グリコシル化インヒビター(例えば、キフネンシン(マンノシダーゼIのインヒビター)またはスワインソニンなど)の使用を含む。このようなインヒビターを、ヒトα-Gal Aを発現する培養細胞に添加することができる。インヒビターが細胞に取り込まれ、グリコシルトランスフェラーゼおよびガラクトシダーゼなどのグリコシル化酵素を阻害し、糖構造が変化したα-Gal A分子が得られる。または、ヒトα-Gal Aを産生するように遺伝子操作した細胞を、グリコシルトランスフェラーゼおよびグリコシダーゼなどのグリコシル化酵素でトランスフェクトすることができる。
【0089】
第7のアプローチは、例えば、本明細書に記載の遺伝子操作された細胞から単離されたα-Gal A上の炭水化物構造をインビトロでリモデリングするためのグリコシル化酵素(例えば、グリコシルトランスフェラーゼまたはグリコシダーゼ)の使用を含む。
【0090】
他のグリカンリモデリングアプローチが当技術分野において公知である。
【0091】
シアル酸化変換によるα-Gal Aの半減期および/または細胞取り込みの変化
シアル酸化は、タンパク質の循環半減期および生体分布に影響を与える。タンパク質上の露呈されたガラクトース残基による肝細胞上のアシアロ糖タンパク質受容体(Ashwell受容体)によって最小のシアル酸を含むか全く含まないタンパク質が容易に内在化される。ガラクトース末端化α-Gal Aの循環半減期を、(1)α-Gal Aをノイラミニダーゼ(シアリダーゼ)と接触させて露呈した末端ガラクトシダーゼ部分を遊離することによるシアル酸の除去および(2)脱シアル酸化α-Gal Aのβ-ガラクトシダーゼとの接触による末端ガラクトシダーゼ残基の除去を連続的に行うことによって変化させることができる。得られたα-Gal A調製物は、ノイラミニダーゼおよびβ-ガラクトシダーゼに連続的に接触させていないα-Gal A調製物と比較して、オリゴ糖鎖上の末端シアル酸および/または末端ガラクトシド残基の数が減少する。または、ガラクトース末端化α-Gal Aの循環半減期を、脱シアル酸化α-Gal Aのβ-ガラクトシダーゼとの接触による末端ガラクトシド残基の除去のみによって増大させることができる。得られたα-Gal A調製物は、β-ガラクトシダーゼに接触させていないα-Gal A調製物と比較して、オリゴ糖鎖上の末端ガラクトシド残基数が減少した。好ましい態様では、ノイラミニダーゼおよびβ-ガラクトシダーゼとの連続接触後、得られたα-Gal A調製物にβ-ヘキソサミニダーゼと連続的に接触させることにより、オリゴ糖をトリマンノースコアに切断する。
【0092】
α-Gal A調製物のシアル酸含量を、(i)精製プロセス時または後の高度に負荷されており、そして/または高分子量のα-Gal A糖形態の単離、(ii)シアリルトランスフェラーゼ遺伝子またはcDNAを発現するための(従来の遺伝子操作方法または遺伝子活性化のいずれかによる)遺伝子修飾された細胞を使用したシアル酸残基の付加、または(iii)低アンモニウム環境下で酵素を発現する細胞の発酵または成長によって増加させることができる。
【0093】
リン酸化の変化による半減期および/または細胞取り込みの変化
本明細書に記載のα-Gal A調製物のリン酸化の変化により、循環半減期および調製物の所望の組織への細胞取り込みを変化させることができる。好ましい態様では、α-Gal A調製物は、45%未満のリン酸化グリカンを有する。例えば、調製物は、約35%、30%、25%、または20%未満のリン酸化グリカンを有する。α-Gal A調製物中の所望のシアル酸:マンノース-6-リン酸比(モル/モルベース)は、1.5:1超、好ましくは2:1超、より好ましくは3:1超、最も好ましくは3.5:1超またはそれ以上である。
【0094】
α-Gal A調製物のリン酸化を、(i)ホスホリルトランスフェラーゼまたはホスファターゼ遺伝子またはcDNAを発現するための(従来の遺伝子操作方法または遺伝子活性化のいずれかによる)遺伝子修飾された細胞を使用したリン酸残基の付加または除去、(ii)培養細胞へのホスファターゼ、キナーゼ、またはこれらのインヒビターの添加、または(iii)本明細書に記載の遺伝子操作細胞から産生された精製α-Gal A調製物へのホスファターゼ、キナーゼ、またはこれらのインヒビターの添加によって修飾する(例えば、増加または減少させる)ことができる。
【0095】
2つの膜結合ゴルジ酵素の協奏的作用は、リソソームプロ酵素上のMan-6-リン酸認識マーカーの作製に必要である。第1のUDP-N-アセチルグルコサミン:糖タンパク質N-アセチルグルコサミン-1-ホスホトランスフェラーゼ(GlcNAcホスホトランスフェラーゼ)は、34Å離れ、且つ高マンノース鎖に対して正確な空間関係を有する2つのリジン残基からなるリソソーム酵素上のタンパク質認識決定基を必要とする。第2のN-アセチルグルコサミン-1-ホスホジエステルa-N-アセチルグルコサミニダーゼ(ホスホジエステルα-GlcNAカーゼ)は、α-GlcNAc-リン酸結合を加水分解してMan-6-リン酸認識部位を露呈させる。当技術分野において公知の方法によってこれらの酵素を誘導または阻害して所望のリン酸化特徴(例えば、リン酸化グリカンへのシアル酸化グリカンの望ましい分配)を有するα-Gal A調製物を得ることができる。
【0096】
1つの態様では、リン酸化が変化したα-Gal A調製物を、α-Gal A産生細胞へのホスホリルトランスフェラーゼをコードするポリヌクレオチドの第1の移入または内因性ホスホリルトランスフェラーゼ遺伝子の発現を調節する相同組換えによる調節配列の移入によって得られる。次いで、α-Gal Aおよびホスホリルトランスフェラーゼが発現する培養条件下で、α-Gal A産生細胞を培養する。ポリヌクレオチドを含まない細胞で産生されたα-Gal Aと比較してリン酸化が増大したα-Gal A調製物を単離する。
【0097】
さらに別の態様では、培養細胞へのホスファターゼインヒビター(例えば、ブロモテトラミソールまたはキナーゼインヒビター)の添加によってリン酸化が変化したグリコシル化α-Gal A調製物を得る。
【0098】
本明細書に記載の方法を使用して、血清または血漿クリアランス飽和レベル未満の用量で、循環血中からのα-Gal A調製物の血清クリアランスが用量曲線に対するAUCの直線部上の好ましくは4mL/分/kg未満、より好ましくは用量曲線に対するAUCの直線部上の3.5、3、または2.5mL/分/kg未満である、α-Gal A調製物を得る。α-Gal A調製物は、哺乳動物における循環血中からのクリアランスについての対比スケール式Y=(BW)b(式中、Yはα-Gal Aの循環血中からのクリアランス(ml/分)であり、「a」は非特異的定数であり、BWは体重である)の指数「b」(少なくとも0.85)を有する。指数「b」は、好ましくは少なくとも0.88、より好ましくは少なくとも0.90、最も好ましくは少なくとも0.92または少なくとも0.94である。
【0099】
好ましい態様では、本明細書に記載のα-Gal Aは、トリシアル酸化およびテトラシアル酸化構造などのより高度にシアル酸化された構造と比較して、中性、モノ、およびジシアル酸化グリカン構造(組み合わせ)が豊富である。例えば、好ましいα-Gal A調製物は、1つまたは複数の、(a)少なくとも約22%の中性グリカン(例えば、少なくとも約25%または30%の中性グリカン)、(b)少なくとも約15%、20%、または25%のモノシアル酸化グリカン、(c)少なくとも約35%、好ましくは少なくとも約40%、45%、または50%の中性およびモノシアル酸化グリカンの組み合わせ、(d)少なくとも約75%、76%、78%、またはそれ以上の中性、モノ、およびジシアル酸化グリカンの組み合わせ、および(e)約35%、好ましくは約25%、20%、18%未満、または約15%のトリおよびテトラシアル酸化グリカン構造の組み合わせを有する。
【0100】
好ましい態様では、本明細書に記載のα-Gal A調製物は、平均して、単量体あたり1つを超えるグリカン複合体、好ましくは単量体あたり少なくとも50%のグリカン複合体(例えば、単量体あたり2個またはそれ以上のグリカン複合体)を有する。
【0101】
好ましい態様では、本明細書に記載のα-Gal A調製物は、少なくとも5%、好ましくは少なくとも7%、10%、または15%の中性グリカンを有する。
【0102】
好ましい態様では、本明細書に記載のα-Gal A調製物は、45%未満のリン酸化グリカンを有する。例えば、調製物は、約35%、30%、25%、または20%未満のリン酸化グリカンを有する。
【0103】
好ましい態様では、本明細書に記載のα-Gal A調製物の総シアル酸化グリカン率は、約45%超(例えば、50%超または55%)である。
【0104】
好ましい態様では、α-Gal A調製物中のシアル酸とマンノース-6-リン酸の比(モル/モルに基づく)は、1.5:1超、好ましくは2:1超、より好ましくは3:1超、最も好ましくは3.5:1超またはそれ以上である。
【0105】
1つの態様では、シアル酸化グリカンとリン酸化グリカンとの比は1超、好ましくは1.5超、より好ましくは2超(例えば、約2.5または3超)である。
【0106】
PEG化
他の態様では、ヒトα-Gal A調製物の循環半減期を、α-Gal Aのポリエチレングリコール(PEG)での複合体化によって増強する。好ましい態様では、テシルモノメトキシPEG(TMPEG)を使用してα-Gal A調製物を複合体化し、PEG化α-Gal Aを形成する。次いで、PEG化α-Gal Aを精製して単離されたPEG化α-Gal A調製物を得る。α-Gal AのPEG化により、タンパク質の循環半減期、細胞取り込み、および/または組織分布が増加する。
【0107】
安定にトランスフェクトされた細胞の馴化培地からのα-Gal Aの精製
培養細胞株および/または酵素を産生させるために安定にトランスフェクトされた培養細胞株の馴化培地からα-Gal Aをほぼ均一に精製することができる。クロマトグラフィ段階を使用して、培地を含むα-Gal Aからα-Gal Aを単離することができる。例えば、1つまたは複数(例えば、2、3、4、5、またはそれ以上)のクロマトグラフィ段階を使用することができる。異なるクロマトグラフィ段階は、夾雑物質からα-Gal Aを分離するための酵素の異なる物理的性質を活用する種々の分離原理を使用する。例えば、段階には、ブチルSepharoseによる疎水性相互作用クロマトグラフィ、ハイドロキシアパタイトによるイオン相互作用、Q Sepharoseによる陰イオン交換クロマトグラフィ、およびSuperdex 200によるサイズ排除クロマトグラフィが含まれ得る。サイズ排除クロマトグラフィは、精製タンパク質を処方物適合緩衝液に交換するために有効な手段として役立ち得る。
【0108】
ある精製プロセスには、第1の精製段階としてブチルSepharose(登録商標)クロマトグラフィの使用が含まれる。Source Iso(Pharmacia)、Macro-Prep(登録商標)Methyl Support(Bio-Rad)、TSKブチル(Tosohaas)、またはPhenyl Sepharose(登録商標)(Pharmacia)などの他の疎水性相互作用樹脂を使用することもできる。カラムを、比較的高濃度の塩(例えば、1M硫酸アンモニウムまたは2M塩化ナトリウム(例えば、緩衝液(pH5.6)))で平衡化することができる。精製すべき試料を、平衡化緩衝液のpHおよび塩濃度への調整によって調製することができる。試料をカラムにアプライし、カラムを平衡化緩衝液で洗浄して非結合物質を除去する。より低いイオン強度の緩衝液、水、または有効溶媒を含む水(例えば、20%エタノールまたは50%プロピレングリコール)を使用してα-Gal Aをカラムから溶離する。または、より低濃度の塩を含む平衡緩衝液および試料の使用または異なるpHの使用によって、カラムにα-Gal Aを通過させることができる。他のタンパク質がカラムに結合し、カラムに結合しないα-Gal A含有試料を精製することができる。
【0109】
別の精製段階は、α-Gal Aを精製するために陽イオン交換樹脂(例えば、SP Sepharose(登録商標)6 Fast Flow(Pharmacia)、Source 30S(Pharmacia)、CM Sepharose(登録商標)Fast Flow(Pharmacia)、Macro-Prep(登録商標)CM Support(Bio-Rad)、またはMacro-Prep(登録商標)High S Support(Bio-Rad)を使用することができる。「第1のクロマトグラフィ段階」は、クロマトグラフィカラムへの試料の第1のアプライ(試料調製に関連する全段階を除く)である。α-Gal Aは、pH4.4でカラムに結合することができる。10mM酢酸ナトリウム(pH4.4)、10mMクエン酸ナトリウム(pH4.4)、または約pH4.4で適切な緩衝能力を有する他の緩衝液などの緩衝液を使用して、カラムを平衡化することができる。精製すべき試料を、平衡化緩衝液のpHおよびイオン強度に調整する。試料をカラムにアプライし、カラムをロード後に洗浄して結合していない物質を除去する。塩化ナトリウムまたは塩化カリウムなどの塩を使用して、カラムからα-Gal Aを溶離することができる。または、より高いpHまたはより高い塩濃度とより高いpHと組み合わせた緩衝液を使用して、α-Gal Aをカラムから溶離することができる。平衡化緩衝液および試料ロード中の塩濃度の増加、より高いpHでのカラムの運転、または塩の増加とより高いpHとの組み合わせによってローディング時にα-Gal Aをカラムに通過させることもできる。
【0110】
別の精製段階は、α-Gal Aの精製のためにQ Sepharose(登録商標)6Fast Flowを使用することができる。Q Sepharose(登録商標)6 Fast Flowは、比較的強力な陰イオン交換樹脂である。DEAE Sepharose(登録商標)Fast Flow(Pharmacia)またはMacro-Prep(登録商標)DEAB(Bio-Rad)などのより弱い陰イオン交換樹脂を使用して、α-Gal Aを精製することもできる。カラムを、緩衝液(例えば、10mMリン酸ナトリウム(pH6))で平衡化する。試料のpHをpH6に調整し、試料の希釈またはダイアフィルトレーションによってイオン強度を低くする。α-Gal Aが結合する条件下で試料をカラムにアプライする。カラムを平衡化緩衝液で洗浄して、結合しない物質を除去する。塩(例えば、塩化ナトリウムまたは塩化カリウム)のアプライ、より低いpHの緩衝液のアプライ、または塩の増加とより低いpHとの組み合わせによってα-Gal Aを溶離する。ロード中の塩濃度の増加、より低いpHでのカラムの運転、または塩の増加とより低いpHとの組み合わせによってローディング時にα-Gal Aをカラムに通過させることもできる。
【0111】
別の精製段階は、α-Gal Aの精製のためにSuperdex(登録商標)200(Pharmacia)サイズ排除クロマトグラフィを使用することができる。Sephacryl(登録商標)S-200 HRまたはBio-Gel(登録商標)A-1.5mなどの他のサイズ排除クロマトグラフィ樹脂を使用して、α-Gal Aを精製することもできる。サイズ排除クロマトグラフィのための好ましい緩衝液は、0.15M塩化ナトリウムを含む25mMリン酸ナトリウム(pH6.0)である。他の処方物に適合可能な緩衝液(例えば、10mMクエン酸ナトリウムまたはクエン酸カリウム)も使用することができる。緩衝液のpHは、pH5〜pH7の間であることができ、塩(例えば、塩化ナトリウムまたは塩化ナトリウムと塩化カリウムとの混合物)を含むべきである。
【0112】
別の精製段階は、α-Gal Aの精製のためにPolybuffer Exchanger PBE94(Pharmacia)などのクロマトフォーカシング樹脂を使用することができる。カラムを、比較的高いpH(例えば、pH7またはそれ以上)で平衡化し、精製すべき試料のpHを同一のpHに調整し、試料をカラムにアプライする。pH4に調整した緩衝系(例えば、Polybuffer74(Pharmacia))を使用して、pH4などのpHへの減少pH勾配を使用してタンパク質を溶離する。
【0113】
または、免疫親和性クロマトグラフィを使用して、α-Gal Aを精製することができる。α-Gal Aに対する適切なポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体(標準的な技術を使用してα-Gal Aまたはα-Gal A配列由来のペプチドでの免疫化によって作製)を、活性化カップリング樹脂(例えば、NHS活性化Sepharose(登録商標)4 Fast Flow(Pharmacia)またはCNBr活性化Sepharose(登録商標)4 Fast Flow(Pharmacia))に固定することができる。精製すべき試料を、約pH6またはpH7で固定化抗体カラムにアプライすることができる。カラムを洗浄して、結合していない物質を除去する。親和性カラム溶離のために使用される典型的な試薬(低pH(例えば、pH3)の変性剤(例えば、塩酸グアニジンまたはチオシアネート)または有機溶媒(例えば、50%プロピレングリコールを含むpH6の緩衝液)など)を使用して、カラムからα-Gal Aを溶離する。精製手順は、α-Gal Aを精製するために、金属キレート親和性樹脂(例えば、Chelating Sepharose(登録商標)Fast Flow(Pharmacia))を使用することもできる。カラムを、金属イオン(例えば、Cu2+、Zn2+、Ca2+、Mg2+、またはCd2+)で予め荷電する。精製すべき試料を、適切なpH(例えば、pH6〜7.5)でカラムにアプライし、カラムを洗浄して結合していないタンパク質を除去する。イミダゾールもしくはヒスチジンでの競合溶離、クエン酸ナトリウムもしくは酢酸ナトリウムを使用してpHを6未満のpHに低下させること、またはEDTAもしくはEGTAなどのキレート剤の導入によって結合したタンパク質を溶離する。
【0114】
α-Gal A調製物の投与のための投薬量
本明細書に記載のα-Gal A調製物は、例えば、毛細血管内皮細胞、腎糸球体上皮細胞(有足細胞)、糸球体間膜細胞、および/または心筋細胞に対して所望の循環半減期および組織分布を示す。このような調製物を、比較的低い投薬量で投与することができる。例えば、投与単位用量は、0.05〜2.0mg/kg体重(mg/kg)であり得る。例えば、単位用量は、0.05mg/kg〜1.0mg/kgの間、0.5mg/kg〜0.5mg/kgの間、または0.5mg/kg〜0.3mg/kgの間であり得る。0.05mg/kg〜0.29mg/kgの間の単位用量が好ましい(例えば、約0.05、0.1、0.15、0.2、0.25mg/kgの単位用量)。α-Gal A調製物の比活性を2×106U/mg〜4.5×106U/mgの間と仮定すれば、これらの値は、約0.1×106U/kg〜1.3×106U/kgに相当する。好ましい単位用量により、α-Gal Aの肝臓取り込みが飽和する。
【0115】
タンパク質の定期的な反復投与は、患者の生命として考えても、長期間(例えば、数ヶ月または1、2、3年もしくはそれ以上または一生)を必要とする。しかし、本明細書に記載のα-Gal A調製物の所望の循環半減期および組織分布により、比較的長く間隔をあけて患者に単位用量を投与可能である。例えば、単位用量を、7日毎、10日毎、14日毎、21日毎、4週間毎、6週間毎、8週間毎、10週間毎、または12週間毎に1回だけ投与することができる。好ましい投与頻度は、2週間、1ヶ月、または2ヶ月である。
【0116】
治療期間中、患者の疾患の状態を評価するために、患者を臨床的にモニターすることができる。例えば、腎臓または心臓の機能または患者の全体的な健康状態(例えば、痛み)の改善によって測定された臨床的改善および例えば尿、血漿、または組織のGb3レベルの減少によって測定された実験的改善を使用して、患者の健康状態を評価することができる。治療およびモニタリング後に臨床的改善が認められる事象では、α-Gal Aの投与頻度を減少させることができる。例えば、α-Gal A調製物を毎週注射している患者は2週間毎の投与に変更することができ、α-Gal A調製物を2週間毎に注射している患者は1ヶ月毎の投与に変更することができ、α-Gal A調製物を1ヶ月毎に注射している患者は2ヵ月毎の注射に変更することができる。このような投与頻度の変更後、ファブリー病に関連する臨床的および実験的測定を評価するために、患者を、さらなる期間(例えば、数年(例えば、3年間))モニターすべきである。好ましい態様では、投与頻度を変更した場合、投薬量は変化させない。これにより、一定の薬物動態学パラメーター(例えば、最大血漿濃度(Cmax))、最大血漿濃度に対する時間(tmax)、血漿、半減期(t1/2)、および曲線下面積(AUC)によって測定した曝露が確実に各投与後に比較的一定に維持される。これらの薬物動態学パラメーターの維持により、投与頻度変更による組織へのα-Gal Aの受容体媒介取り込みレベルが比較的一定になる。
【0117】
いくつかの態様では、次の投与のタイミングに関して評価する際に、用量と決定との間で患者を臨床的に評価することができる。
【0118】
皮下注射を使用して、薬物へのより長い曝露期間を維持することができる。筋肉内注射によって投与されるα-Gal A調製物の投薬量は、皮下注射の投薬量と同一であっても異なっていてもよい。好ましい態様では、筋肉内投与量はより少なく、投与頻度は低い。α-Gal A調製物を、静脈内注射することが好ましい(例えば、静脈内ボーラス注射、低速(slow push)静脈内注射、または連続的静脈内注射)。連続的IV注入(例えば、2〜6時間超)により、特定の血中レベルを維持可能である。
【0119】
ファブリー病の異常な変異型を有する患者(例えば、主に心血管異常または腎臓関連(involvement)を示す)を、本明細書に記載の同一の投薬計画で治療することができる。必要に応じて用量を調整する。例えば、α-Gal A酵素代替療法を使用して治療した心臓の変異表現型を有する患者は、治療後に心臓の組成が変化し、心機能が改善された。この変化を、ファブリー病患者の左心室厚の増加を検出することができる標準的な心エコー検査を使用して測定することができる(Goldmanら、JAm Coll Cardiol 7:1157-1161(1986))。治療中に左心室厚の連続的心エコー測定を行うことができ、左心室厚の減少は治療応答の指標である。α-Gal A酵素代替療法を受けた患者を、心臓の核磁気共鳴画像法(MRI)に供することもできる。MRIは、所与の組織の相対的組成を評価することができる。例えば、ファブリー病患者の心MRIは、対照患者と比較して心筋内に脂質が沈積されている(Matsuiら、Ani Heart J 117:472-474.(1989))。酵素代替療法を受けた患者の連続的心MRI評価により、患者の心臓内の脂質沈積の変化を明らかにすることができる。腎臓変異表現型を有する患者にもα-Gal A酵素代替療法から利益を得ることができる。
【0120】
治療効果を、標準的な腎機能試験(24時間尿タンパク質レベル、クレアチンクリアランス、および糸球体濾過速度など)によって測定することができる。
【0121】
薬学的組成物
本明細書に記載のα-Gal A調製物は、実質的に、非α-Gal Aタンパク質(アルブミンなど)、宿主細胞によって産生された非α-Gal Aタンパク質、または動物組織もしくは流動物から単離したタンパク質を含まない。調製物は、水性または生理学的に適合可能な懸濁液または溶液の一部を含むことが好ましい。患者への所望の調製物の送達に加えて、患者の電解質および/または体積のバランスに悪影響を与えないようにキャリアまたは賦形剤は生理学的に適合可能である。非経口投与に有用な溶液を、薬学分野において任意の周知の方法によって調製することができる(例えば、REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES Gennaro,A.,ed.,Mack Pub.,1990を参照のこと)。
【0122】
坐剤および経口処方物などの非経口処方物を使用することもできる。好ましくは、処方物は、賦形剤を含む。処方物に含めることができるα-Gal Aの薬学的に許容される賦形剤は、緩衝液(クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、重炭酸緩衝液など)、アミノ酸、尿素、アルコール、アスコルビン酸、リン脂質、タンパク質(血清アルブミン、コラーゲン、およびゼラチンなど)、塩(EDTAまたはEGTAおよび塩化ナトリウムなど)、リポソーム、ポリビニルピロリドン、糖(デキストラン、マンノース、ソルビトール、およびグリセロールなど)、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコール(PEG)、グリセロール、グリシンもしくは他のアミノ酸、および脂質である。好ましい賦形剤には、マンノース、ソルビトール、グリセロール、アミノ酸、脂質、EDTA、EGTA、塩化ナトリウム、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、デキストラン、またはこれらの任意の賦形剤の組み合わせが含まれる。
【0123】
別の態様では、処方物は、非イオン性界面活性剤をさらに含む。好ましい非イオン性界面活性剤には、Polysorbate 20、Polysorbate 80、Triton X-100(商標)、Triton X-114(商標)、Nonidet P-40(商標)、Octyl a-glucoside、Octylβ-グルコシド、Brij 35、Pluronic(商標)、Poloxamer 188(a.k.a.Poloxalkol)、およびTween 20(商標)が含まれる。好ましい態様では、非イオン性界面活性剤は、Polysorbate 20またはPolysorbate 80を含む。
【0124】
好ましい処方物は、リン酸緩衝化生理食塩水(例えば、pH6)をさらに含む。α-Gal A調製物用の緩衝系には、クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液、重炭酸緩衝液、およびリン酸緩衝液(全てSigmaから市販されている)が含まれる。リン酸緩衝液は、好ましい態様である。α-Gal A調製物の好ましいpH範囲は、pH4.5〜7.4である。
【0125】
α-Gal A調製物の凍結乾燥のために、タンパク質濃度は0.1〜10mg/Lであり得る。グリシン、マンノース、アルブミン、およびデキストランなどの充填剤を、凍結乾燥混合物に添加することができる。さらに、二糖類、アミノ酸、およびPEGなどの可能な凍結防止剤を凍結乾燥混合物に添加することができる。上記の任意の緩衝液、賦形剤、および界面活性剤を添加することもできる。
【0126】
投与処方物は、所望の位置に薬剤を保持するための高粘度のグリセロールおよび他の組成物を含み得る。生体適合性ポリマー、好ましくは生体吸収性生体適合性ポリマー(例えば、ヒアルロン酸、コラーゲン、ポリ酪酸、ラクチド、およびグリコリドポリマー、およびラクチド/グリコリドコポリマーが含まれる)は、インビボでの薬剤放出の調節に有用な賦形剤であり得る。非経口投与用処方物には、口内投与のためのグリココール酸、直腸投与のためのメトキシサリチル酸、または膣投与のためのクエン酸(cutric acid)が含まれ得る。直腸投与用の坐剤を、本発明のα-Gal A調製物と室温で固体であり体温で液体であるココアバターまたは他の組成物などの非刺激性賦形剤との混合によって調製することができる。
【0127】
吸入投与用処方物は、ラクトースまたは他の賦形剤を含み得るか、ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル、グリココール酸、またはデオキシコール酸を含み得る水溶液であり得る。好ましい吸入エアゾールは、質量密度が低くサイズが大きい粒子を有することを特徴とする。質量密度が0.4g/cm3未満であり、且つ平均直径が5μmを超える粒子は、全身循環に吸入治療薬を効率よく送達させる。このような粒子を肺に吸気し、吸入した粒子がその治療ペイロードを送達するまで肺の天然のクリアランス機構を回避する(Edwardsら、Science 276:1868-1872(1997))。本発明のα-Gal A調製物を、例えば、米国特許第5,654,007号、同第5,780,014号、および同第5,814,607号(それぞれ参照として本明細書に組み入れられる)に記載の調製方法および処方物の使用によってエアゾール形態で投与することができる。
【0128】
鼻腔内投与用処方物は、点鼻薬または鼻腔内投与用ゲルの形態で投与するための油性溶液を含み得る。
【0129】
皮膚表面への局所投与用処方物を、ローション、クリーム、軟膏、またはソープなどの皮膚科学的に許容されるキャリアへのα-Gal A調製物の分散によって調製することができる。適用を局在化して除去されないようにするための皮膚上にフィルムまたは層を形成することができるキャリアが特に有用である。内部組織表面への局所投与のために、α-Gal A調製物を、液体組織接着物質または組織表面への吸着を促進することが公知の他の物質中に分散させることができる。例えば、米国特許第4,740,365号、同第4,764,378号、および同第5,780,045号(それぞれ参照として本明細書に組み入れられる)などに経粘膜薬物送達のためのいくつかの粘膜接着剤および口腔錠が記載されている。
【0130】
ヒドロキシプロピルセルロースまたはフィブリノゲン/トロンビン溶液を組み込むこともできる。または、ペクチン含有処方物などの組織コーティング溶液を使用することができる。
【0131】
本発明の調製物を、滅菌状態での維持、適切な販売および保存時の有効成分の活性の保護、および患者への投与のための調製物の便利且つ有効な可触性(accessibility)に適切なコンテナ中で提供することができる。α-Gal A調製物の注射用処方物を、ニードルおよびシリンジを使用した内容物の取り出しに適切なストッパー付きバイアル中で供給することができる。バイアルは、単回使用または複数回使用のいずれかを意図する。調製物を、予め充填したシリンジとして供給することもできる。いくつかの例では、内容物は液体処方物で供給されるが、他の場合、場合によっては標準的な希釈剤または供給された希釈剤での液体状態の再構成が必要な乾燥または凍結乾燥状態で供給される。調製物を静脈内投与用の液体として供給する場合、静脈内投与ラインまたはカテーテルへの接続に適切な滅菌バッグまたはコンテナ中に提供することができる。好ましい態様では、本発明の調製物を、所定用量の調製物を都合よく投与するデバイス中の液体または粉末の処方物で供給し、このようなデバイスの例には、皮下または筋肉内注射のためのニードルレス注射器および定量エアゾール送達デバイスが含まれる。他の例では、調製物を、徐放に適切な形態(経皮投与のために皮膚に適用されるパッチもしくは包帯または経粘膜投与のための侵食され得るデバイスなど)で供給することができる。調製物を錠剤または丸薬形態で経口投与する場合、調製物を除去可能なカバーを有するボトルで供給することができる。コンテナに調製物の型、製造者もしくは販売者の名称、適応症、推奨用量、適切な保存についての説明、または投与のための説明などの情報を含むラベルを貼ることができる。
【0132】
α-Gal A調製物の投与方法
本明細書に記載のα-Gal A調製物を、α-Gal A調製物に適合可能な任意の経路で投与することができる。精製α-Gal A調製物を、α-Gal Aタンパク質の産生が不十分であるか欠損した個体またはα-Gal A療法から利益を得ることができる個体に投与することができる。本発明の治療調製物を、任意の適切な手段によって個体に直接(例えば、局所的、注射、移植、または組織軌跡(locus)への局所投与)または全身(例えば、経口または非経口)に提供することができる。
【0133】
好ましい投与経路は静脈内である。他の投与経路は、経口もしくは非経口(皮下、動脈内、腹腔内、眼内、筋肉内、口内、直腸内、膣内、眼窩内、大脳内、皮内、頭蓋内、髄腔内、脳室内、鞘内、槽内、包内、肺内、鼻腔内、経粘膜、経皮、または吸入が含まれる)であり得る。肺内送達法、装置、および薬物調製物は、例えば、米国特許第5,785,049号、同第5,780,019号、および同第5,775,320号(それぞれ参照として本明細書に組み入れられる)に記載されている。好ましい経皮送達法は、パッチによるイオン導入送達であり、このような送達の1つの例は、米国特許第5,843,015号(参照として本明細書に組み入れられる)に教示されている。
【0134】
特に有用な投与経路は、皮下注射である。本発明のα-Gal A調製物を、全必要用量を1mlまたは2mlの1回の注射で投与することができるように処方する。1mlまたは2mlの注射体積を可能にするために、本発明のα-Gal A調製物を、1mlまたは2mlの体積で好ましい用量が送達される濃度で処方することができるか、α-Gal A調製物を、投与前に水または適切な生理学的に適合可能な緩衝液で再構成される凍結乾燥形態で処方することができる。α-Gal A調製物の皮下注射は、患者に都合がよいという利点を有する(特に自己投与)一方で、例えば静脈内投与と比較して血漿半減期も長くなる。血漿半減期の延長により、より長期にわたって有効な血漿α-Gal Aレベルが維持され、その利点は、注射したα-Gal Aへの臨床的罹患組織の曝露が増大し、その結果、このような組織へのα-Gal Aの取り込みを増大させることができることである。これにより、患者により有利な効果が得られ、そして/または投与頻度を減少させることが可能である。さらに、本明細書に記載の本発明のα-Gal A調製物を含む再充填可能な注射ペンおよびニードルレス注射デバイスなどの患者に都合よくデザインされた種々のデバイスを使用することができる。
【0135】
調製物の定期的なボーラス注射によって投与するか、外部(例えば、IVバッグ)または内部(例えば、生体腐食性移植片、生体人工器官、または移植α-Gal A産生細胞集団)であるリザーバからの静脈内または腹腔内投与によって投与することができる。例えば、米国特許第4,407,957号および同第5,798,113号(それぞれ参照として本明細書に組み入れられる)を参照のこと。肺内送達法および装置は、例えば、米国特許第5,654,007号、同第5,780,014号、および同第5,814,607号(それぞれ参照として本明細書に組み入れられる)に記載されている。他の有用な非経口送達系には、エチレン-ビニルアセテートコポリマー粒子、浸透圧ポンプ、移植可能な注入系、ポンプ送達、カプセル化細胞送達、リポソーム送達、ニードル送達注射、ニードルレス注射、噴霧器、エアゾール散布器、エレクトロポレーション、および経皮パッチが含まれる。ニードルレス注射デバイスは、米国特許第5,879,327号、同第5,520,639号、同第5,846,233号、および同第5,704,911号(その明細書は参考として本明細書に組み入れられる)に記載されている。上記の任意のα-Gal A調製物を、これらの方法で投与することができる。
【0136】
投与経路およびタンパク質の送達量を、当業者の評価能力の範囲内である因子によって決定することができる。さらに、当業者は、投与経路および治療タンパク質の投薬量は、治療投薬レベルが得られるまで所与の患者によって変化し得ることを承知している。
【0137】
本明細書で引用された全ての特許および刊行物は、参照として本明細書に組み入れられる。
【実施例】
【0138】
実施例
実施例1:α-Gal Aを送達および発現するようにデザインされた構築物の調製および使用
1.1:遺伝子活性化α-Gal A(GA-GAL)の調製
本質的に米国特許第5,733,761号(参考として本明細書に組み入れられる)に記載のGAテクノロジーを使用したヒトα-Gal Aコード配列上流の調節配列および構造DNA配列の挿入によって遺伝子活性化α-Gal A(GA-GAL)を産生した。トランスフェクトしたDNAフラグメント上に存在するDNAとヒト細胞中のα-Gal A遺伝子座上流のゲノムDNA配列との間の相同組換えの結果として、遺伝子活性化配列が正確に挿入される。遺伝子活性化配列自体は、シグナルペプチド切断部位(限定されない)までのα-Gal Aコード配列を含む。活性化α-Gal A遺伝子座を含む細胞を単離し、薬物選択に供してGA-GAL産生が増大した細胞を単離した。
【0139】
適切な遺伝子活性化配列を含むターゲティングDNAフラグメントを、エレクトロポレーションによって宿主ヒト細胞系に移入する。1つのこのような細胞系は、HT-1080(ATCC(Manassas,VA)から利用可能な認定された細胞系)である。このようなDNAフラグメントを含む遺伝子活性化プラスミド(ターゲティング構築物)pGA213Cを、図3Aに示す。このプラスミドは、宿主細胞系中の内因性α-Gal A遺伝子座の一部を活性化するようにデザインされた配列を含み、シグナルペプチドをコードする配列を含むが、ヒトα-Gal Aを含まない。ターゲティング構築物はまた、細菌のneo遺伝子およびマウスのdhfr遺伝子の発現カセットを含む。これらにより、安定に組み込まれたターゲティングフラグメント(neo遺伝子を介する)を選択し、段階的メトトレキセート(MTX)選択を使用してdhfr遺伝子をその後に選択可能である。
【0140】
さらに、pGA213Cは、相同組換えによって内因性α-Gal A遺伝子座上流の染色体配列をターゲティングするようにデザインされた配列を含む。内因性α-Gal A遺伝子座と9.6kbのpGA213CのDNAフラグメントとの間の相同組換えを、図3Bに示す。
【0141】
X染色体α-Gal A遺伝子座を使用したpGA213Cフラグメントの相同組換え時にα-Gal Aのメチオニン開始コドンと比較して-1183位から-222位までに広がる962bpのゲノム配列を欠損するようにpGA213Cを構築する。α-Gal Aコード領域上流の外因性調節配列の正確なターゲティングによってα-Gal A遺伝子座の転写活性化が起こる。得られたGA-GAL遺伝子座により、CMVプロモーターから始まり、CMVエクソン1、アルドラーゼのイントロンおよび7つのエクソン、ならびにα-Gal Aコード配列の6つのイントロンに続くように転写される。巨大な前駆体mRNAのスプライシングにより、外因性CMVエクソン(ターゲティングによって挿入)がα-Gal A転写物の全ての内因性の第1のエクソンに連結する。GA-GAL mRNAの翻訳により、31個のアミノ酸のシグナルペプチドを有するプレGA-GALが得られる。宿主細胞からの分泌の際、シグナルペプチドが除去される。正確にターゲティングされた細胞系を、GA-GAL mRNAの存在についてのポリメラーゼ連鎖反応スクリーニングによって同定する。GA-GAL mRNAを産生するクローンもまた、培養培地に酵素活性α-Gal Aを分泌することが見出された。その後、制限酵素消化およびゲノムDNAのサザンブロットハイブリッド形成分析によってターゲティング事象を確認する。
【0142】
細胞を段階的メトトレキセート(「MTX」)選択に曝露した。0.05μM MTXでの選択後、細胞クローンを単離し、0.1μM MTX選択に供した。このプロセスから、0.1μM MTXに耐性を示す細胞プールを単離し(細胞系RAG001)、培地で拡大した。
【0143】
1.2:α-Gal Aを発現させるための他の構築物の調製
2つの他の発現プラスミドpXAG-16およびpXAG-28を構築した。これらのプラスミドは、α-Gal A酵素の398アミノ酸(α-Gal Aシグナルペプチドを含まない)をコードするヒトα-Gal A cDNA、hGH遺伝子の第1のイントロンによって妨害されるヒト成長ホルモン(hon-none)(hGH)シグナルペプチドゲノムDNA配列、およびポリアデニル化シグナルを含むhGH遺伝子の非翻訳配列(UTS)を含む。プラスミドpXAG-16は、ヒトサイトメガロウイルス最初期(CMV IE)プロモーターおよび第1のイントロン(非コードエクソン配列に隣接)を有し、pXAG-28はコラーゲンIα2プロモーターおよびエクソン1によって駆動し、β-アクチン遺伝子の第1のイントロンを含むβ-アクチン遺伝子の5’UTSも含む。
【0144】
線維芽細胞中でα-Gal Aを発現させるために、二次線維芽細胞を培養し、公開された手順にしたがってトランスフェクトした(Seldenら、WO93/09222)。プラスミドpXAG-13、pXAG-16、およびpXAG-28をエレクトロポレーションによってヒト包皮線維芽細胞にトランスフェクトして安定にトランスフェクトされたクローン細胞株を作製し、得られたα-Gal A発現レベルをモニターした。正常な包皮線維芽細胞によるα-Gal Aの選択範囲は、2〜10単位/106細胞/24時間である。対照的に、以下の表に示すように、トランスフェクトされた線維芽細胞は平均発現レベルを示した。
【0145】
平均α-Gal A発現レベル(±標準偏差)
【0146】
これらのデータは、3つ全ての発現構築物が非トランスフェクション線維芽細胞の何倍もα-Gal A発現を増加させることができることを示す。α-Gal Aシグナルペプチドに連結されたα-Gal AをコードするpXAG-13で安定にトランスフェクトした線維芽細胞による発現は、シグナルペプチドがhGHシグナルペプチドであり、そのコード配列がhGH遺伝子の第1のイントロンによって妨害されるという点のみが異なるpXAG-16でトランスフェクトした線維芽細胞による発現よりも実質的に低かった。
【0147】
遺伝子治療またはα-Gal Aの精製のための材料の作製に望ましい細胞株は、数世代にわたって安定な成長および発現を示すべきである。α-Gal A発現構築物で安定にトランスフェクトされた細胞株由来のデータは、α-Gal A発現は連続継代中に安定に維持されることを示した。
【0148】
実施例2:ヒト細胞中で産生されたα-Gal AとCHO中で産生されたものとの構造の比較
この実施例は、Replagal(商標)(ヒト細胞中で産生されたα-Gal A調製物)とFabrazyme(商標)(CHO細胞中で産生されたα-Gal A調製物)の構造を比較する。調製物を、等電点、分子量、ならびに炭水化物、リン酸化、およびシアル酸化プロフィールに関して比較した。
【0149】
等電点
Replagal(商標)およびFabrazyme(商標)を、変性等電点電気泳動(5%ゲル、pH範囲3〜7、6M尿素)およびその後のウェスタンブロッティングによって分析した。調製物を、未変性等電点電気泳動(Novex5%ゲル、pH範囲3〜7)およびその後のクーマシーブルー染色によっても分析した。2つの調製物の全pI範囲は類似しているが、結合パターンの相対強度は異なっていた。これは、各調製物に存在する糖形態の電荷分布が異なることを示し、Fabrazyme(商標)はReplagal(商標)よりもより低いpI(より高い負電荷)の糖形態の比率が高い。
【0150】
分子量
Replagal(商標)およびFabrazyme(商標)を、SDS-PAGE(8〜16%ポリアクリルアミドゲル、還元試料)およびその後のクーマシーブルー染色によって分析した。調製物の分子量は類似していた。しかし、Fabrazyme(商標)の低い方の分子(約45kD)糖形態バンドはReplagal(商標)のそれとより異なり、Replagal(商標)はより広いサイズ分布を示す。
【0151】
図6では、Replagal(商標)(上)およびFabrazyme(商標)(下)の分子量を、MALDI-TOF質量分析によって決定した。主要なより広いピークの最大値は、それぞれ50,755Daおよび50,705Daであり、グリコシル化単量体の推定分子量と一致する。約48,071Daおよび47,667Daにリーディングショルダーが存在し、それぞれReplagal(商標)およびFabrazyme(商標)の低い方の糖形態の分子量を示す。低い方の分子量の糖形態に相当するリーディングショルダーは、Fabrazyme(商標)のスペクトルがさらにより異なる。
【0152】
図8は、C4逆相カラム(Vydac)を使用した逆相HPLCによって分析したFabrazyme(商標)(上)およびReplagal(商標)(下)を示す。214nmで得たクロマトグラムを示す。低い方の分子量の糖形態に相当するリーディングショルダーは、Fabrazyme(商標)でさらにより明白である。
【0153】
細胞内在化
正常なヒト線維芽細胞を、Replagal(商標)またはFabrazyme(商標)の非存在下(対照、示さず)または存在下で6時間多ウェル培養プレートにてインキュベートした。この内在化は、マンノース-6-リン酸で阻害可能であり、内在化は主にマンノース-6-リン酸受容体を介することを示す。結果は、Replagal(商標)およびFabrazyme(商標)は線維芽細胞によって同等に内在化されないことを示す。Fabrazyme(商標)は、マンノース-6-リン酸受容体媒介内在化によってReplagal(商標)より容易に内在化される(図5を参照のこと)。
【0154】
グリカン組成物および特徴分析
図7は、Replagal(商標)(下)およびFabrazyme(商標)(上)から放出されたグリカンの負荷プロフィールを示す。グリカンを、蛍光プローブで誘導体化し、GlycoSep(商標)Cカラムでのイオン交換クロマトグラフィによって比較した。結果は、Replagal(商標)は中性および一負荷グリカンの比率が高く、Fabrazyme(商標)は三負荷グリカンの比率が高いことを示す。
【0155】
表1は、グリカンのピーク領域比較を示す。図4に示すように、Replagal(商標)およびFabrazyme(商標)から放出されたグリカンを、HPAE-PADを使用して分析した。ピークを積分して、種々のピーク群の比率を定量した。表にしたデータは、Fabrazyme(商標)でリン酸化グリカンの比率が高く、Replagal(商標)で中性グリカンおよびシアル酸化グリカンの比率が高いのを証明する。
【0156】
表2は、負荷プロフィールの結果を示す。図7に記載のようにReplagal(商標)およびFabrazyme(商標)から放出されたグリカンの負荷プロフィールを誘導および分離した。CK-022およびCK-006は2つの異なるReplagal(商標)調製物であり、CK-JL012502はFabrazyme(商標)の調製物である。各産物由来のグリカンを、二連でアッセイした。表に示すように、Replagal(商標)調製物は中性または一負荷のグリカンの比率が高く、Fabrazyme(商標)は二負荷または三負荷のグリカンの比率が高い。
【0157】
表3は、脱シアル酸化プロフィールの結果を示す。図7に記載のようにReplagal(商標)およびFabrazyme(商標)から放出されたグリカンの負荷プロフィールを脱シアル酸化し、その後誘導および分離した。CK-022およびCK-006は2つの異なるReplagal(商標)調製物であり、CK-JL012502はFabrazyme(商標)の調製物である。各産物由来のグリカンを、二連でアッセイした。表に示すように、Replagal(商標)調製物は脱シアル酸化後に残存する負荷グリカンの比率が低く、Fabrazyme(商標)はリン酸化(シアリダーゼ耐性)グリカンの比率が高いことを示す。
【0158】
実施例3:ヒト細胞で作製されたα-Gal A(Replagal(商標))の薬物動態学の種間スケーリング
本実施例の目的は、動物モデルとヒトの薬物動態学的結果由来の薬物動態学パラメーターを比較することであった。
【0159】
動物(マウス、ラット、イヌ、ウサギ、およびサル)に、Replagal(商標)を1回静脈内にボーラス注射した。24時間にわたって血液試料を採取し、血清に処理し、インビトロ蛍光アッセイを使用してα-Gal A酵素活性について分析した。2-コンパートメントモデルまたは非コンパートメントモデルのいずれかを使用して血清濃度プロフィールを分析し、薬物動態学パラメーターを評価した。
【0160】
Replagal(商標)の最初の40分間の注入を受けた男性ファブリー病患者から血液試料を採取した。血液試料を、血漿または血清に処理し、α-Gal A酵素活性について分析した。非コンパートメントモデルを使用して血清濃度プロフィールを分析し、薬物動態学パラメーターを評価した。
【0161】
投与から44時間後に第I相試験の男性ファブリー病患者から肝生検を採取した。以前に記載のように(Schiffman and Bradyら(2000)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:365-370)、組織試料を処理し、α-Gal Aの投与濃度について分析した。各患者の肝臓に回収された投与量を、各肝生検中のα-Gal A濃度および患者の評価した肝重量を使用して計算した。
【0162】
Replagal(商標)は、ラット、ウサギ、およびサルにおける単回IV投与後、二相性血清評価プロフィールを有していた(図9はカニクイザルのプロフィールを示す)。Cmaxは、これら3つの動物種の用量に比例していた(図10)。Replagal(商標)はまた、40分間の注入後にファブリー病患者の二相性血清評価プロフィールを有していた(図11)。Cmaxはまた、ヒトで用量が比例していた(図12)。全ての種において、投与から24時間後までにReplagal(商標)が消失していた。0.017×106U/kg〜3.2×106U/kgの投与範囲にわたる動物およびヒトへの投与につれてAUC(曲線下面積)は直線的に増加した(図13)。U/kgの用量範囲は、ヒトにおいて0.007mg/kg〜0.2mg/kgの範囲に相当し、動物において0.0625mg/kg〜1mg/kgに相当する。
【0163】
哺乳動物の生理学的パラメーターは、体重に基づく対比スケール式Y=a(BW)bに従う(表4)。スケール式中の指数は、ほぼ1.0(例えば、血液体積)であり得るが、薬物またはタンパク質クリアランスによって0.6〜0.8の間で変化する。
【0164】
Replagal(商標)(mL/分)の対比スケール式は、マウス、ラット、ウサギ、大および小カニクイザル、およびファブリー病患者における薬物動態研究に基づいた。血清クリアランスは、指数0.92の対比スケール式に従っていた(表5)。他の製剤またはタンパク質と比較したReplagal(商標)血清クリアランスについての指数の増加は、Replagal(商標)のM6P受容体クリアランスを支持する。
【0165】
患者の肝臓で見出された投与されたReplagal(商標)の比率は、mg/kgベースでの用量の増加に伴って減少した(表6)。2つの最も低い用量(0.007mg/kgおよび0.014mg/kg)では、投与から44時間後に肝臓に回収されたReplagal(商標)の比率は、約25%〜約30%であった。対照的に、0.11mg/kgでは、Replagal(商標)は肝臓中に14%しか見出されなかった。最大製剤濃度(Cmax)がM6P受容体のKd(2×10-9M)を超えた場合、Replagal(商標)の肝臓取り込みが飽和した。これらの結果に基づいて、肝臓に取り込まれた市販のReplagal(商標)の評価投与量(0.2mg/kg)は、75mgの患者について約2mgである(図14)。残りの用量(13mg)は、肝臓以外の組織への取り込みに利用可能である。
【0166】
したがって、動物モデルにおける単回用量薬物動態学により、ファブリー病患者のReplagal(商標)薬物動態学が良好に予測された。血液からのReplagal(商標)のクリアランス機構は、主に体内全体の組織で見出されるM6P受容体を介する。Replagal(商標)の血清または血漿クリアランスについての対比スケール式の指数(0.92)は、他の製剤またはタンパク質で認められた指数よりも高い。指数の増加は、Replagal(商標)のM6P受容体クリアランスを支持する。CmaxがM6P受容体のKd(0.056mg/kgおよびそれ以上の用量)を超えた場合、ヒト肝臓受容体の飽和が認められた。
【0167】
実施例4:男性および女性ファブリー病患者におけるReplagal(商標)の薬物動態学
本評価の主な目的は、男性および女性のファブリー病患者におけるReplagal(商標)の薬物動態学特性を比較することであった。第2の目的は、Replagal(商標)およびFabrazyme(商標)で治療された患者間の薬物動態学特性を比較することであった。
【0168】
TKT006(NIH)、TKT007(UK)、およびTKT014(GERMANY)由来のReplagalを最初40分間注入した男性および女性ファブリー病患者から血液試料を採取した。血液試料を血清(TKT007試料およびTKT014試料)または血漿(TKT006試料)に処理し、インビトロ蛍光アッセイを使用してTKTでのα-ガラクトシダーゼA酵素活性について分析した。非コンパートメンタルモデルを使用して血清/血漿濃度プロフィールを分析し、薬物動態学パラメーターを評価した。
【0169】
予備投与酵素活性は、平均して、男性で1.2U/mlであり、女性で6.5U/mlであり、女性患者のキャリア状態を反映した(表7)。
【0170】
Replagal(商標)は、男性および女性のファブリー病患者の両方において単回静脈内注入後に二相性血清消失プロフィールを有し、ほとんどの患者で投与から24時間後に消失した(図15)。予測されるように、Cmaxは、40分間の注入期間の終了と一致していた。
【0171】
平均薬物動態学パラメーターは、男性および女性患者の間で類似していた(表8)。投与について標準化したAUC(曲線下面積)は、女性で僅かに高かったが(比0.51)、男性の比と統計的に異なっていた(0.43)。Replagal(商標)の絶対血清クリアランスは女性の方が低いが(177mL/分と比較して140mL/分)、体重について標準化した場合、血清クリアランスは統計的に異ならなかった(2.52mg/分/kgに対して2.10mL/分/kg)。最終消失半減期の統計的に有意な相違(男性の112分に対して女性の89分)は、女性由来のReplagal(商標)の消失の相違に起因しなかった。代わりに、女性におけるより高いベースライン酵素活性が8時間以降の投与Replagal(商標)(Tlast)の検出を困難にしていた。
【0172】
ファブリー病患者の循環由来のReplagal(商標)のクリアランスは、各患者のGFRまたはそのクリアランス機構が一致するクレアチニンクリアランスよりも急速であった(表9)。Replagal(商標)は、主に、マンノース-6-リン酸(M6P)受容体を介した組織への取り込みによって循環からクリアランスされ、タンパク質分解および腎臓での消失の起因は最小である。
【0173】
腎機能の変化が循環血中からのReplagal(商標)のクリアランスに影響を与えないことを確認するための分析を行った(表10)。第1の用量薬物動態学分析を受けたファブリー病患者のほとんどは、第1のReplagal(商標)用量を投与された場合、正常範囲であるか(80mL/分クレアチンクリアランス超)、腎機能障害は「軽度」であった(50〜80mL/分クレアチンクリアランス)。5人の患者のみが中程度および重篤なカテゴリーに含まれたが、これらの患者のReplagal(ml/分/kg)の血清クリアランスは2つのより高い腎機能カテゴリーによって確立された範囲内であった。これらのデータにより、Replagal(商標)は腎臓によって排泄されないことが示唆される。本分析において、これらは男女間での相違はなかった。
【0174】
ファブリー病患者からのFabrazyme(商標)の血清クリアランスは、Replagal(商標)で見出されたものと比較して有意に迅速であった(表11)。男性患者とほぼ同一の用量(ReplagalおよびFabrazymeについてそれぞれ0.2および0.3mg/kg)で、Fabrazyme(商標)の血清クリアランスは、Replagal(商標)の2.5mL/分/kgと比較して4mL/分/kgであった。ほぼ等価な用量での血清クリアランスのこの相違は、Replagal(商標)のヒトグリコシル化パターンと比較したFabrazyme(商標)のグリコシル化パターン(CHO細胞で産生)の相違による。より高い用量のFabrazyme(商標)(1および3mg/kg)で、クリアランス機構がFabrazyme(商標)について飽和するにつれて、血清クリアランスは約2.7および1mL/分/kgに有意に減少した。
【0175】
したがって、薬物動態学パラメーターは、Replagal(商標)を投与した男性および女性患者で類似していた。Replagal(商標)の血清クリアランスは腎機能を有意に超え(mL/分)、体内の組織および細胞へのReplagal(商標)のM6P媒介取り込みと一致していた。予測するように、予備分析は、Replagalは腎臓によって排泄されないことを示した。クリアランス飽和レベル未満の用量では、Fabrazyme(商標)血清クリアランスはReplagal(商標)と比較して有意に迅速であり、2つの製剤間のグリコシル化パターンの相違を反映する。
【0176】
(表1)
【0177】
(表2)
【0178】
(表3)
【0179】
(表4) 生理学的パラメーターおよび解剖学パラメーターの対比スケーリング(体重(BW)の関数)
式:Y=a(BW)b
Chappell and Mordenti(1991)Extrapolation of Toxicological and Pharmacological Data from Animals to Humans.In B.Testa(ed.)Advances in Drug Research,Vol.20,pp.1-116
【0180】
(表5) 薬物動態学パラメーターの対比スケーリング-指数
*Mordentiら(1991)Interspecies Scaling of Clearance and Volume Distribution Data for Five Therapeutic Proteins.Pharmaceutical Research 8:1351-1359
【0181】
(表6) ヒト肝臓中のReplagalの投与用量の比率
M6P受容体のKdは2×10-9Mである(Kornfeld Ann Rev Biochem 61:307-330,1992)。
α-ガラクトシダーゼAの半減期:
ファブリー線維芽細胞で4日間(Mayesら、Am J Hum Genet 34:602-610,1982)
マウス肝臓で2日間(Ioannouら、Am J Hum Genet 68:14-25,2001)
【0182】
(表7) α-ガラクトシダーゼA酵素活性のベースライン値
*ベースライン値が約15U/mLの男性患者1人を除く
1単位(U)を、37℃で1時間あたりの1ナノモルの4-メチルウンベリフェリル-α-D-ガラクトピラノシド加水分解と定義する。
【0183】
(表8) 第1のReplagal投与後の男性および女性のファブリー病患者間の薬物動態学の比較
( )標準偏差
NA=適用せず
NS=有意でない
Tlast=最後の検出可能なReplagal酵素活性の時間
標準化AUCは(分*U/mL)/(U/kg)の単位を有する。
【0184】
(表9) 男性および女性患者からのReplagalの血清クリアランス
( )標準偏差
N=Replagalの第1の投与後の薬物動態学パラメーターについて評価した患者数
*GFR=Replagalの第1の投与の2〜3週間前に測定した糸球体濾過速度
†女性で測定したクレアチンクリアランス
【0185】
(表10) 腎機能とReplagal血清クリアランスの比較
*クレアチニンクリアランスの評価に基づくFDAカテゴリー
【0186】
(表11) ReplagalまたはFabrazymeを投与したファブリー病患者の血清クリアランス
*Engら(2001)A Phase I/II Clinical Trial of Enzyme Replacement in Fabry Disease.Am J Hum Genet 68:711-722
†飽和血清クリアランス
【0187】
等価物
当業者は、日常的な実験のみを使用して、本明細書に記載の本発明の特定の態様の多数の等価物を認識するか確認することができる。このような等価物は、以下の特許請求の範囲に含まれることが意図される。
【0188】
本明細書に開示の全ての引例は、その全体が参照として本明細書に組み入れられる。特許請求の範囲および配列表を示す。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2002年4月25日提出の米国特許仮出願第60/375,584号(その内容全体が参照として本明細書に組み入れられる)の優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、ファブリー病を含むα-ガラクトシダーゼA欠損症の治療のための改良されたα-ガラクトシダーゼA組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
ファブリー病は、重篤な腎障害、被角血管種、および/または心血管の異常(心室拡大および僧帽弁閉鎖不全を含む)によって特徴付けられるX連鎖遺伝性リソソーム蓄積症である。ファブリー病はまた、末梢神経系に影響を与え、苦悶エピソード(episodes of agonizing)、先端(extremities)の灼熱痛を引き起こす。
【0004】
ファブリー病は、酵素α-ガラクトシダーゼA(α-Gal A)の欠損に起因する。ファブリー病の病態生理学的性質は十分に確立されている(リソソーム酵素α-ガラクトシダーゼA(α-Gal A)の欠乏により、体内にグロボトリアオシルセラミド(Gb3)が蓄積する)。
【0005】
疾患のX連鎖遺伝パターンにより、ファブリー病患者の大部分は男性である。重篤に罹患した女性のヘテロ接合体もしばしば認められているが、女性のヘテロ接合体は高齢期に症状が出現するようになる。ファブリー病の変異型は、左心室肥大および心臓病と相関する(Nakanoら、New Engl.J Med.333:288-293(1995)(非特許文献1))。cDNAおよびヒトα-Gal Aをコードする遺伝子が、単離および配列決定されている。ヒトα-Gal Aは、429アミノ酸ポリペプチドとして発現され、そのN末端の31アミノ酸はシグナルペプチドである。ヒト酵素は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(Desnickら、米国特許第5,356,804号(特許文献1);loannouら、J Cell Biol.119:1137(1992)(非特許文献2));昆虫細胞(Calhounら、WO 90/11353(特許文献2));およびヒト細胞(Seldenら、米国特許第6,083,725号(特許文献3)および同第6,458,574B1号(特許文献4))で発現されている。酵素代償療法は、現在使用されているファブリー病の治療方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,356,804号
【特許文献2】WO 90/11353
【特許文献3】米国特許第6,083,725号
【特許文献4】米国特許第6,458,574B1号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Nakanoら、New Engl.J Med.333:288-293(1995)
【非特許文献2】loannouら、J Cell Biol.119:1137(1992)
【発明の概要】
【0008】
発明の概要
ヒトα-Gal Aの薬物動態学および修飾プロフィール(例えば、炭水化物、リン酸、またはシアル酸化修飾)の理解により、本発明者らは、α-Gal Aの新規の薬学的組成物、α-Gal A欠損症の治療用キット、患者のためのα-Gal Aの適切な用量を選択する方法、およびこのような組成物を使用したα-Gal A欠損症の治療方法を開発した。α-Gal A調製物、試料、バッチなどの評価方法(例えば、本明細書に記載のα-Gal A組成物に関する生物学的等価物の品質管理方法および決定方法)もまた提供する。
【0009】
本明細書に記載のα-Gal Aの投与および投与ストラテジーにより、α-Gal A代替療法に必要なα-Gal Aの量およびコストを減少させ、必要な投与回数も減少させる。
【0010】
したがって、1つの局面では、本発明は、ヒトα-ガラクトシダーゼA(α-Gal A)調製物を含む薬学的組成物を特徴とする。血清または血漿クリアランス飽和レベル未満の用量で、循環血中からのα-Gal A調製物の血清クリアランスは、好ましくは、用量曲線に対するAUCの直線部上の4mL/分/kg未満、より好ましくは用量曲線に対するAUCの直線部上の約3.5、3、または2.5mL/分/kg未満である。α-Gal A調製物は、哺乳動物における循環(血清または血漿)からのクリアランスについての対比スケール式(allometric scaling equation)Y=a(BW)b(式中、Yはα-Gal Aのクリアランス速度(ml/分)であり、「a」は非特異的定数であり、BWは体重である)の指数「b」(少なくとも0.85)を有することができる。指数「b」は、好ましくは少なくとも0.88、より好ましくは少なくとも0.90、最も好ましくは少なくとも0.92または少なくとも0.94である。
【0011】
1つの態様では、α-Gal Aは、ヒト細胞(例えば、初代ヒト細胞(例えば、初代ヒト線維芽細胞または継代ヒト細胞系))から産生される。細胞および/または細胞から単離したα-Gal A調製物を、所望のグリコシル化、リン酸化、またはシアル酸化特性を有するα-Gal A調製物が得られるように修飾することができる。
【0012】
別の態様では、α-Gal Aは、非ヒト細胞(例えば、CHO細胞)から産生される。細胞および/または細胞から単離されたα-Gal A調製物を、所望のグリコシル化、リン酸化、またはシアル酸化特性を有するα-Gal A調製物が得られるように修飾することができる。
【0013】
別の局面では、本発明は、α-Gal A欠損症の治療用キットを特徴とする。キットは、(a)血清または血漿クリアランス飽和レベル未満の用量で、循環血中からのα-Gal A調製物の血清クリアランスは、好ましくは、用量曲線に対する曲線下面積(AUC)の直線部上の4mL/分/kg未満、より好ましくは用量曲線に対するAUCの直線部上の約3.5、3、または2.5mL/分/kg未満である、ヒトα-Gal A糖タンパク質調製物および(b)必要とする被験体に調製物を投与するための説明書を含む。
【0014】
キットは、約0.05mg/kg被験体体重〜2.0mg/kg被験体体重(mg/kg)の間のα-Gal A調製物の単位用量を投与するための説明書も含み得る。いくつかの態様では、キットは、0.05mg/kg〜2.0mg/kgの間、好ましくは約0.05mg/kg〜1.0mg/kgの間、より好ましくは約0.05mg/kg〜0.5mg/kgの間(例えば、0.05mg/kg〜0.3mg/kg未満の間)のα-Gal A調製物の単位用量を投与するための説明書を含む。1つの態様では、単位用量は、0.3mg/kg未満である。例えば、キットは、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、または1.0mg/kg体重のα-Gal A調製物の単位用量を投与するための説明書を含み得る。
【0015】
他の態様では、キットは、約0.1×106U/kg〜10×106U/kgの間のα-Gal A調製物の単位用量を投与するための説明書を含む。いくつかの態様では、キットは、0.1×106U/kg〜5×106U/kgの間、好ましくは約0.1×106U/kg〜3×106U/kgの間のα-Gal A調製物の単位用量を投与するための説明書を含む。例えば、キットは、約0.1、0.2、0.3、0.5、1、2、3、5、または10×106U/kgまでのα-Gal A調製物の単位用量を投与するための説明書を含み得る。
【0016】
いくつかの態様では、キットは、単位用量を7日毎に1回だけ投与するための説明書も含む。例えば、説明書は、単位用量を7日毎、10日毎、14日毎、21日毎、4週間毎、6週間毎、8週間毎、または10週間毎に1回だけ投与するための説明書を含み得る。
【0017】
別の局面では、本発明は、α-Gal A欠損症の治療用キットを特徴とする。キットは、ヒトα-Gal A糖タンパク質調製物および1つまたは複数の以下の説明書:(a)0.05mg/kg〜2.0mg/kgの間、好ましくは約0.05mg/kg〜1.0mg/kgの間、より好ましくは約0.05mg/kg〜0.5mg/kgの間(例えば、約0.05mg/kg〜0.3mg/kg未満の間)の単位用量で必要とする被験体に調製物を投与するための説明書、(b)0.1×106U/kg〜10×106U/kgの間(例えば、0.1×106U/kg〜5×106U/kgの間、好ましくは約0.1×106U/kg〜3×106U/kgの間)のα-Gal A調製物の単位用量を投与するための説明書、または(c)8週間毎、6週間毎、4週間毎、21日毎、14日毎、10日毎、または7日毎に約1回だけ調製物を投与するための説明書を含む。
【0018】
所定量の本明細書に記載のキットの試薬をコンテナにパッケージングすることができる。一般に、数2によって指定された本発明の特徴を具体化したキットを、図16に示す。キット2は、以下の主なエレメントから構成される。パッケージング4、本明細書に6として記載のα-Gal4調製物、および説明書8。任意で、キットは、さらなる薬剤10を含み得る。さらなる薬剤は、例えば、α-Gal A調製物6を溶解または希釈するための薬学的緩衝液または溶液であり得る。説明書8は、例えば、調製物6の投与方法に関する印刷物であり、適切な投薬量に関する情報を含み得る。好ましい説明書は、本明細書に記載の単位用量でα-Gal A調製物6を投与するための説明書を含む。パッケージ4は、本発明のα-Gal A調製物6を含むバイアル(または多数のバイアル)、説明書8、および任意で薬剤10を含むバイアル(または多数のバイアル)を保持するためのボックス様構造である。当業者は、それぞれの必要性に適応させるためにパッケージング4を容易に修正することができる。
【0019】
本発明はまた、α-Gal A欠損症を有する被験体の治療のためのα-Gal Aの単位用量範囲の選択方法を特徴とする。本方法は、被験体の体重を提供する(例えば、被験体の体重を量る)か、被験体、被験体の医療介護提供者、またはデータベースから被験体の体重を得る段階と、0.05mg〜2.0mgの間(例えば、0.05mg〜0.5mgの間または0.05mg〜0.3mg未満の間)のα-Gal A/kg被験体体重の範囲の値を決定する段階とを含む。選択された単位用量を使用して、被験体のα-Gal A代替療法の投薬計画を選択することができる。本方法は、1つまたは複数の基底α-Gal Aレベル(例えば、α-Gal A血清濃度);心血管機能;腎機能;肝機能;年齢、性別について被験体を評価する段階も含み得る。
【0020】
好ましい態様では、単位用量は、2×10-9Mを超えるCmax(薬物注入後の最大血清濃度)を有することによってα-Gal Aの肝臓取り込みを飽和する。
【0021】
別の局面では、本発明はまた、α-Gal A欠損症を罹患しているかそのリスクのある被験体の治療方法を特徴とする。本方法は、血清または血漿クリアランス飽和レベル未満の用量で、循環血中からの静脈内注入後のα-Gal A調製物の血清クリアランスは、好ましくは、用量曲線に対するAUCの直線部上の4mL/分/kg未満、より好ましくは用量曲線に対するAUCの直線部上の約3.5、3、または2.5mL/分/kg未満である、ヒトα-Gal A糖タンパク質調製物(例えば、上記のヒトα-Gal A糖タンパク質調製物)を必要とする被験体に投与する段階を含む。本明細書のいずれかに記載のように、単位用量の投与によりα-Gal Aの肝取り込みが飽和することが好ましい。
【0022】
好ましい態様では、調製物を、静脈内で投与するが、本明細書のいずれかに記載のように、経口、皮下、または鞘内投与のために処方することができる。
【0023】
別の局面では、本発明は、α-Gal A欠損症を罹患しているかそのリスクのある被験体の治療法を含む。本方法は、1つまたは複数の(a)〜(c):(a)約0.05mg/kg被験体体重〜2.0mg/kg被験体体重の間、好ましくは0.05mg/kg被験体体重〜1.0mg/kg被験体体重の間または0.05mg/kg被験体体重〜0.5mg/kg被験体体重の間(例えば、0.05mg/kg被験体体重〜0.3mg/kg被験体体重未満の間(例えば、約0.25、0.20、0.15、または0.1mg/kg被験体体重))の単位用量のヒトα-Gal A糖タンパク質調製物を必要とする被験体に投与する段階と、(b)0.1×106U/kg〜10×106U/kgの間(例えば、0.1×106U/kg〜5×106U/kgの間、好ましくは約0.1×106U/kg〜3×106U/kgの間)のα-Gal A調製物の単位用量のヒトα-Gal A糖タンパク質調製物を必要とする被験体に投与する段階と、(c)7日毎に1回だけ(例えば、10日毎、14日毎、21日毎、4週間毎、6週間毎、または8週間毎に1回だけ)ヒトα-Gal A糖タンパク質調製物を必要とする被験体に投与する段階とを含む。いくつかの態様では、各投与は、少なくとも7、10、14、21、30、または60日間あける。いくつかの態様では、調製物を、少なくとも8週間、16週間、24週間、36週間、48週間、またはそれ以上(例えば、少なくとも1、2、または3年間)にわたり投与する。
【0024】
1つの態様では、ヒトα-Gal A糖タンパク質調製物を、少なくとも2回、好ましくは3回、4回、5回、6回、またはそれ以上であるが、7日毎、好ましくは10日毎、より好ましくは14日毎またはそれ以上(例えば、21日毎)、4週間、6週間、7週間、8週間、またはそれ以上に1回だけ投与する。
【0025】
好ましい態様では、単位用量により、投与したα-Gal Aが肝臓を迂回して体内の他の組織が利用できるようにα-Gal Aの肝取り込みが飽和する。
【0026】
好ましい態様では、調製物を静脈内投与する。
【0027】
他の局面では、本発明は、コンテナ(例えば、ガラス製またはプラスチック製のコンテナ)または送達デバイス(例えば、シリンジ)にパッケージングされた本明細書に記載の単位用量のヒトα-Gal Aを特徴とする。単位用量は、意図される0.05mg/kg被験体体重〜2.0mg/kg被験体体重の間(例えば、0.05mg/kg被験体体重〜1.0mg/kg被験体体重の間、好ましくは0.05mg/kg被験体体重〜0.5mg/kg被験体体重の間、より好ましくは0.05mg/kg被験体体重〜0.3mg/kg被験体体重未満の間)に等価である。α-Gal A調製物の活性は、一般に、約2.0×106U/mg〜4.5×106U/mgの間である。例えば、コンテナまたは送達デバイスは、成体単位用量について2.0mg〜32.0mgの間の本明細書に記載のヒトα-Gal Aを含み得る(例えば、コンテナまたは送達デバイスは、成人用量として約2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、25、または30mgのα-Gal Aを含み得る)。
【0028】
いかなる理論にも拘束されないが、本明細書に記載のα-Gal A調製物を、マンノース-6-リン酸(M6P)受容体を介して血液から主にクリアランスすることができると考えられる。好ましい実施形態では、25%、20%、16%、14%未満(投与後40時間〜50時間の間(例えば、約44時間)で測定)のα-Gal A調製物(例えば、本明細書に記載の調製物)が被験体への投与時に肝臓に取り込まれる。血清または血漿クリアランス飽和レベル未満の用量で、循環血中からのα-Gal A調製物の血清クリアランスは、好ましくは、用量曲線に対するAUCの直線部上の4mL/分/kg未満、より好ましくは用量曲線に対するAUCの直線部上の3.5、3、または2.5mL/分/kg未満である。本明細書に記載のα-Gal A調製物は、以下の肝臓飽和曲線を示す。
mg α-Gal A/肝臓=2.1mg(1-e-用量/4.7)
(式中、用量は、典型的な75kgの患者に投与した総用量(mg)である)。変動係数(CV)は、例えば、約0.40であり得る(したがって、用量および量は患者の大小によって調整する)。
【0029】
いくつかの態様では、本明細書に記載の組成物のα-Gal A調製物、方法、およびキットを、α-Gal Aを産生するように遺伝子操作されたヒト細胞から単離する。他の態様では、α-Gal A調製物を、α-Gal Aを産生するように遺伝子操作された非ヒト細胞(例えば、CHO細胞)から単離することができる。いくつかの態様では、1つまたは複数のα-Gal A発現構築物、ヒトまたは非ヒト細胞、またはヒトまたは非ヒト細胞から単離されたα-Gal Aを、グリコシル化が変化した(例えば、グリカン、シアル酸化、またはリン酸構造が変化した)α-Gal Aが得られるように修飾することができる。例えば、ヒトα-Gal A(または精製α-Gal A)を産生するように遺伝子操作された非ヒト細胞を、ヒト細胞で産生されたα-Gal Aのグリコシル化特性を模倣するように修飾することができる。1つの態様では、1つまたは複数の外因性α-Gal A修飾酵素(例えば、グリコシダーゼ、グリコシルトランスフェラーゼ、ホスホリルトランスフェラーゼ、またはシアリルトランスフェラーゼ)を発現するように、細胞を修飾(例えば、遺伝子操作)することができる。1つの態様では、α-Gal Aコード配列を、より多いまたはより少ない(好ましくは、より多い)グリコシル化部位を有するように修飾することができる。別の態様では、細胞を、1つまたは複数のグリコシル化酵素のインヒビターまたは他のモジュレーター(例えば、キフネンシンまたはスワイノシン)に曝露することができる。さらに別の態様では、一旦細胞から単離されると、α-Gal Aを、例えば、リン酸インヒビター、キナーゼ、グリコシダーゼ、グリコシルトランスフェラーゼ、ホスホリルトランスフェラーゼ、またはシアリルトランスフェラーゼで修飾する(例えば、切断または化学修飾する)(例えば、1モルのα-Gal Aあたりのシアル酸および/またはマンノース-6-リン酸のモル数の変化による)ことができる。
【0030】
好ましい態様では、本明細書に記載のα-Gal A調製物は、トリシアル酸化およびテトラシアル酸化構造などのより高度にシアル酸化された構造と比較して、中性、モノ、およびジシアル酸化グリカン構造(組み合わせ)が豊富である。例えば、好ましいα-Gal A調製物は、1つまたは複数の、(a)少なくとも約22%の中性グリカン(例えば、少なくとも約25%または30%の中性グリカン)、(b)少なくとも約15%、20%、または25%のモノシアル酸化グリカン、(c)少なくとも35%、好ましくは少なくとも約40%、45%、または50%の中性およびモノシアル酸化グリカンの組み合わせ、(d)少なくとも約75%、76%、78%、またはそれ以上の中性、モノ、およびジシアル酸化グリカンの組み合わせ、および(e)約35%、好ましくは約25%、20%、18%未満、または約15%のトリおよびテトラシアル酸化グリカン構造の組み合わせを有する。
【0031】
好ましい態様では、本明細書に記載のα-Gal A調製物は、平均して、単量体あたり1つを超えるグリカン複合体、好ましくは単量体あたり少なくとも50%のグリカン複合体(例えば、単量体あたり平均1.5個またはそれ以上のグリカン複合体)を有する。
【0032】
好ましい態様では、本明細書に記載のα-Gal A調製物は、少なくとも5%、好ましくは少なくとも7%、10%、または15%の中性グリカンを有する。
【0033】
好ましい態様では、本明細書に記載のα-Gal A調製物は、45%未満のリン酸化グリカンを有する。例えば、調製物は、約35%、30%、25%、または20%未満のリン酸化グリカンを有する。
【0034】
好ましい態様では、本明細書に記載のα-Gal A調製物の総シアル酸化グリカン率は、約45%超(例えば、50%超または55%)である。
【0035】
好ましい態様では、α-Gal A調製物中のシアル酸とマンノース-6-リン酸の比(モル/モルに基づく)は、1.5:1超、好ましくは2:1超、より好ましくは3:1超、最も好ましくは3.5:1超またはそれ以上である。
【0036】
1つの態様では、シアル酸化グリカンとリン酸化グリカンとの比率は1超、好ましくは1.5超、より好ましくは2超(例えば、約2.5または3超)である。
【0037】
本明細書に記載のα-Gal A組成物および方法は、α-Gal A欠損症を有する個体の治療に有用である。本明細書に記載のα-Gal A組成物および方法は、費用効果があり、且つα-Gal Aの必要な投薬量および投与頻度を最小にする治療を提供する。
【0038】
別の局面では、本発明は、α-Gal A調製物、試料、バッチ、または他の組成物の種々の評価方法(例えば、分析、選択、または分類)を特徴とする。本方法を使用して、調製物または試料の構造および/または生物学的パラメーター(例えば、炭水化物組成、リン酸プロフィール、シアル酸化プロフィール、組織分布、または血清クリアランスの特徴)を決定することができる。非限定的な例として、本方法を使用して、調製物または試料が本明細書に記載のα-Gal Aの1つまたは複数の物理的または機能的特性を有するかどうかを決定する。例えば、試料α-Gal A組成物と基準α-Gal A組成物(例えば、本明細書に記載のヒトα-Gal A組成物(ヒト細胞(例えば、ヒト線維芽細胞)から調製したヒトα-Gal Aなどの所望の薬物動態学的または生物学的性質を有するα-Gal A))とを比較することができる。本方法は、特に、α-Gal A調製物の品質管理および/または生物学的等価物の研究に有用である。
【0039】
1つの局面では、本方法は、試験α-Gal A調製物を得るか提供する段階と、調製物が少なくとも1つ(好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは3つまたはそれ以上(例えば、4つ、5つ、6つ、または7つ))の以下の構造上の特徴、(1)より高度にシアル酸化された構造と比較して中性、モノシアル酸化、およびジシアル酸化グリカン構造(組み合わせ)が豊富であること(例えば、(i)少なくとも約22%の中性グリカン(例えば、少なくとも約25%または30%の中性グリカン)、(ii)少なくとも約15%、20%、または25%のモノシアル酸化グリカン、(iii)少なくとも約35%、好ましくは少なくとも約40%、45%、または50%の中性およびモノシアル酸化グリカンの組み合わせ、および/または(iv)少なくとも約75%、76%、78%、またはそれ以上の中性、モノ、およびジシアル酸化グリカンの組み合わせを有する)、(2)約35%未満、好ましくは約25%、20%、18%、または約15%未満のトリおよびテトラシアル酸化グリカン構造の組み合わせを有すること、(3)少なくとも50%、好ましくは少なくとも67%のグリカン複合体を有すること、(4)約45%未満のリン酸化グリカン、好ましくは約35%未満、より好ましくは約30%、25%、または20%未満のリン酸化グリカンを有すること、(5)約45%を超える、好ましくは約50または55%を超えるシアル酸化グリカンを有すること、(6)モル/モルに基づいたシアル酸とマンノース-6-リン酸との比が1.5:1超、好ましくは約2:1超、より好ましくは約3:1超または3.5:1超であること、および(7)シアル酸化グリカンとリン酸化グリカンの比率が1超、好ましくは1.5超、より好ましくは約2、2.5、または3超であることを有するか、および/または1つまたは複数の以下の生物学的または薬物動態学的特徴、(a)ヒト循環血中からの血清クリアランスが、用量曲線に対するAUCの直線部上の4mL/分/kg未満、より好ましくは用量曲線に対するAUCの直線部上の約3.5、3、または2.5mL/分/kg未満であること、(b)調製物が毛細血管/血管内皮細胞、腎糸球体上皮細胞(有足細胞)、糸球体間膜細胞、腎内皮細胞、心筋細胞、肝臓内皮細胞、肝臓洞様毛細血管細胞、肺細胞、および/または神経細胞に優先的にターゲティングすること、および(c)肝細胞によって取り込まれないことを有するかどうかを決定する段階とを含む。
【0040】
1つまたは複数の上記特徴を有する試験調製物を、選択するか、分類するか、処方するか、パッケージングするか、他の下流プロセシングに供することができる。例えば、このような調製物を、特定の薬学的用途のために選択することができる。試験調製物が、1つまたは複数(好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つまたはそれ以上(例えば、4つ、5つ、6つ、または7つ))の上記構造上のパラメーター(1)〜(7)を有することは、所望の薬物動態学的パラメーターまたは生物活性(1つまたは複数の生物学的または薬物動態学的特徴(a)〜(c))と正に相関する(それにより予測に使用することができる)。相関または予測情報を使用して、例えば、ファブリー病の特定の患者または特定の変異型(例えば、腎変異ファブリー病または心変異ファブリー病)のためのα-Gal A治療用調製物をデザインすることができる。相関または予測情報を記録することができる(例えば、プリントまたはコンピュータで読み取り可能な媒体)。
【0041】
いくつかの態様では、試験α-Gal A調製物または試料の生物活性または薬物動態学的パラメーターを、その炭水化物特性から予測する。他の態様では、調製物または試料の生物活性または薬物動態学的パラメーターを実験で決定する。
【0042】
決定の結果(例えば、任意の、中性、モノ、ジ、トリ、またはテトラシアル酸化グリカンまたはその組み合わせの量、グリカン複合体の量、リン酸化グリカンの量、シアル酸化グリカンの量、モル/モルベースでのシアル酸とマンノース-6-リン酸との比、またはシアル酸化グリカンとリン酸化グリカンとの比についての値であり得る)を、記録(例えば、実験記録またはデータベースなどのプリントまたはコンピュータで読み取り可能な記録)に記入することが好ましい。記録は、他の情報(調製物のための特異的試料識別子(identifier)、日付、方法のオペレーター、または酵素活性についての情報、供給源、精製方法、または調製物の生物活性など)を含み得る。記録を使用して、試験調製物に関する情報を保存または提供することができる。例えば、記録を使用して、α-Gal A調製物に関する情報またはその使用を(例えば、政府、医療介護提供者、保険会社、または患者に)、例えば、情報、マーケティング、または説明書の形態で(例えば、印刷物またはコンピュータで読み取り可能な材料(例えば、ラベル))を提供することができる。記録または記録由来の情報を使用して、例えば、薬学的用途または治療用途に適切なまたは不適切な試験調製物を同定することができる。例えば、1つまたは複数の上記構造パラメーター(1)〜(7)を有すると決定された試験α-Gal A調製物を、所望の薬物動態学的パラメーターまたは生物活性(例えば、上記パラメーター(a)〜(c))を有するかを同定することができる。
【0043】
本明細書に記載の方法を使用して、α-Gal A調製物のバッチごとの変動を比較することもできる。この場合、任意の上記の構造または薬物動態学的パラメーターを、複数のα-Gal Aバッチ(例えば、同一の精製プロトコールから作製した異なるバッチ)について評価することができる。好ましい態様では、本方法は、1つまたは複数の上記構造パラメーターまたは薬物動態学的パラメーター(1)〜(7)または(a)〜(c)と予め選択した変動範囲未満(例えば、10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは2.5%未満またはそれ未満の変動)のバッチを選択する段階を含む。複数の調製物を分析する場合(例えば、α-Gal A調製物の異なるバッチ)、決定の結果の記録への記入には、決定結果のデータセット(例えば、プリントまたはコンピュータで読み取り可能なデータセット)の作製を含み得る。データセットは、決定した構造の特徴と予測または実験的に評価された生物活性または薬物動態学的パラメーターとの相関を含み得る。
【0044】
試験すべきα-Gal A試料は、任意の細胞に由来し得るが、好ましくは哺乳動物細胞(例えば、ヒトまたは非ヒト細胞(例えば、CHO細胞))に由来する。いくつかの態様では、試料の炭水化物特性を、例えば、決定段階を行う前に、当技術分野において認識された方法(例えば、上記の糖操作、グリコシルトランスフェラーゼもしくはグリコシダーゼなどのグリコシル化酵素での処理、ホスホリルトランスフェラーゼ、シアリルトランスフェラーゼ、リン酸インヒビター、キナーゼ、もしくはグリコシル化のインヒビターでの細胞もしくは調製物の処理、または任意の上記酵素もしくは他の炭水化物修飾酵素をコードするDNAの細胞における同時発現(例えば、同時トランスフェクションによる))によって修飾した。
【0045】
試料の炭水化物特性を、当技術分野において公知の方法(例えば、イオン交換クロマトグラフィ、高速陰イオン交換(HPAE)クロマトグラフィ、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)、または質量分析)によって得ることができる。炭水化物特性の評価は、調製物のグリカンの組成、電荷、リン酸化、および/またはシアル酸化の評価を含み得る。
【0046】
別の局面では、本発明は、ヒトα-Gal A調製物(例えば、改良α-Gal A調製物)の産生方法を特徴とする。本方法は、細胞から採取したヒトα-Gal A調製物を提供する段階と、1つまたは複数(好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは3つまたはそれ以上(例えば、4つ、5つ、6つ、または7つ))の以下のパラメーター:(1)より高度にシアル酸化された構造と比較して中性、モノシアル酸化、およびジシアル酸化グリカン構造(組み合わせ)が豊富であること(例えば、(i)少なくとも約22%の中性グリカン(例えば、少なくとも約25%または30%の中性グリカン)、(ii)少なくとも約15%、20%、または25%のモノシアル酸化グリカン、(iii)少なくとも約35%、好ましくは少なくとも約40%、45%、または50%の中性およびモノシアル酸化グリカンの組み合わせ、および/または(iv)少なくとも約75%、76%、78%、またはそれ以上の中性、モノ、およびジシアル酸化グリカンの組み合わせを有する)、(2)約35%未満、好ましくは約25%、20%、18%、または約15%未満のトリおよびテトラシアル酸化グリカン構造の組み合わせを有すること、(3)少なくとも50%、好ましくは少なくとも67%のグリカン複合体を有すること、(4)約45%未満のリン酸化グリカン、好ましくは約35%未満、より好ましくは約30%、25%、または20%未満のリン酸化グリカンを有すること、(5)約45%を超える、好ましくは約50または55%を超えるシアル酸化グリカンを有すること、(6)モル/モルに基づいたシアル酸とマンノース-6-リン酸との比が1.5:1超、好ましくは約2:1超、より好ましくは約3:1超または3.5:1超であること、および(7)シアル酸化グリカンとリン酸化グリカンの比率が1超、好ましくは1.5超、より好ましくは約2、2.5、または3超であることに適合するようにα-Gal A調製物のグリカン構造を修飾する段階とを含む。グリカン構造を、当技術分野において公知の方法(例えば、糖操作(例えば、天然に存在しないグリコシル化部位を有するヒトα-Gal Aを産生するための細胞の伝子操作、および/またはグリコシダーゼ、グリコシルトランスフェラーゼ、ホスホリルトランスフェラーゼ、ホスファターゼ、またはシアリルトランスフェラーゼを産生するための細胞の遺伝子操作)、α-Gal A精製プロセス時の糖形態の選択的単離、炭水化物修飾酵素での細胞または調製物の処理、グリコシル化インヒビター(例えば、キフネンシン)での細胞または調製物の処理、および/または任意の上記酵素もしくは他の炭水化物修飾酵素をコードするDNAの細胞における同時発現(例えば、同時トランスフェクションによる))によって修飾することができる。
【0047】
好ましい態様では、本方法は、修飾後のα-Gal A調製物の1つまたは複数の炭水化物特性のパラメーター、生物活性、または薬物動態学的パラメーターを分析する(例えば、アッセイする)段階を含む。
【0048】
本発明はまた、被験体(例えば、ヒト)の治療方法を特徴とする。本方法は、異なるグリカンの特徴を有する2つまたはそれ以上のα-Gal A調製物のパネルを提供するか得る段階と、被験体の治療について1つまたは複数(好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは3つまたはそれ以上(例えば、4つ、5つ、6つ、または7つ))の上記パラメーター(1)〜(7)および/または(a)〜(c)に適合する炭水化物特性を有するα-Gal A調製物を選択する段階とを含む。
【0049】
本方法は、1回または複数回の治療的有効量の選択されたα-Gal A調製物を被験体に投与する段階も含み得る。被験体を、投与前、投与時、および/または投与後に評価することができる。例えば、被験体におけるα-Gal A調製物の組織分布または血清クリアランスを評価することができる(例えば、長期間繰り返して評価することができる)。次いで、評価の結果にしたがって調製物の用量を調整することができる。被験体を、α-Gal A調製物の投与に応答した状態(例えば、臨床状態)について評価またはモニターすることもできる。
【0050】
異なる炭水化物特性(例えば、各パラメーター(1)〜(7)またはパラメーター(1)〜(7)の異なる組み合わせ)を、異なる集団(例えば、疾患の段階または型(例えば、心臓型ファブリー病と腎臓型ファブリー病)、年齢、性別、民族的背景、または遺伝子型が異なる集団)の所望の薬物動態学的性質または他の生物学的性質に相関させることができる。
【0051】
「α-Gal A欠損症」とは、主に毛細血管内皮細胞、腎糸球体上皮細胞(有足細胞)、および糸球体間膜細胞、および/または心筋細胞中に中性糖脂質(例えば、グロボトリアオシルセラミド)が異常蓄積する患者のこの酵素の量または活性の任意の欠損症を意味する。この物質の沈積物により、重篤な神経障害性の痛み(例えば、先端異常感覚および裂傷性の痛み)、重症性の腎疾患および心血管疾患、および/または脳卒中を発症し得る。糖脂質蓄積は、典型的にはファブリー病を罹患した男性で認められる重篤な症状を誘導し得る。または、蓄積は、しばしば欠損遺伝子のいくつかのヘテロ接合性女性キャリアで認められる比較的穏やかな症状を誘導し得る。罹患個体は、平均寿命が非常に短く、通常、約40〜50年で腎臓、心臓、および/または脳血管系の合併症で死亡する。
【0052】
α-Gal A調製物の「炭水化物特性」とは、α-Gal Aの所与の調製物または試料のグリカン構造の1つまたは複数の識別特徴である。炭水化物特性は、定量的または定性的であり得る。例えば、α-Gal A調製物の炭水化物特性には、1つまたは複数の以下の識別特徴が含まれ得る。(a)高マンノースまたはハイブリッドグリカンに対する複合体の相対レベル、比率、または特定の値、(b)中性およびシアル酸化(例えば、モノシアル酸化、ジシアル酸化、トリシアル酸化、およびテトラシアル酸化)グリカン構造の相対レベル、比率、または特定の値、(c)リン酸化または非リン酸化グリカンの相対レベル、比率、または特定の値、(d)シアル酸化グリカンの相対レベル、比率、または特定の値、(e)調製物のグリカンの相対的または特異的負荷プロフィール、(f)ある負荷単糖類型と別の型との相対的または特異的比(例えば、シアル酸とマンノース-6-リン酸との比またはシアル酸化グリカンとリン酸化グリカンとの比)。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】シグナルペプチドをコードする配列を含むα-Gal AcDNAの配列(配列番号:1)を示す図である。
【図2】ヒトα-Gal Aアミノ酸配列(配列番号:2)を示す図である。
【図3A】pGA213Cの概略マップを示す。
【図3B】ターゲティング構築物pGA213Cおよび内因性α-Gal A遺伝子座を使用した相同組換えの略図である。pGA213Cを、X染色体のα-Gal A遺伝子座上の配列に対応する上記のように整列させたターゲティング配列として示す。メチオニン開始コドンATGに対する位置を、線状マップ上の数字によって示す。マウスdhfr、最近neo、およびCMVプロモーター/アルドラーゼイントロン配列を含む活性化ユニットを、DNAクローニングによって挿入された位置(-221)の上に示す。α-Gal Aコード配列を、暗くしたボックスによって示す。α-Gal A非コード配列を、薄く暗くしたボックスによって示す。大きな矢印は、dhfrおよびneo発現の転写方向を示す。
【図4】CHO細胞で作製されたα-Gal A(Fabrazyme(商標))に対するヒト細胞で作製されたα-Gal A(Replagal(商標))から放出されたグリカンを示すクロマトグラフである。両調製物を、Dionex BioLC Carbohydrate SystemでのHPAE-PADを使用して分析した。グリカンプロフィールは、Raplagal(商標)(上)およびFabrazyme(商標)(下)のグリカン鎖に有意差が存在することを示す。Fabrazyme(商標)は、Raplagal(商標)と比較して、リン酸化構造(65〜69分の溶離でピーク)およびより高度にシアル酸化した構造(56〜60分で溶離したテトラシアル酸化構造および51〜55分に溶離したトリシアル酸化構造)が豊富である。Raplagal(商標)は、中性(33〜36分でピーク)、モノシアル酸化構造(39〜44分でピーク)、およびジシアル酸化構造(45〜49分でピーク)が豊富である。
【図5】ヒト細胞で作製されたα-Gal A(Replagal(商標))およびCHO細胞で作製されたα-Gal A(Fabrazyme(商標))の細胞への内在化を示すグラフである。正常なヒト線維芽細胞を、Replagal(商標)またはFabrazyme(商標)の存在下または非存在下(対照、示さず)で多ウェル培養プレートにて6時間インキュベートした。この内在化は、マンノース-6-リン酸で阻害可能であり、内在化が主にマンノース-6-リン酸受容体を介することを示す。結果は、Replagal(商標)およびFabrazyme(商標)が線維芽細胞によって同様に内在化されないことを示す。マンノース-6-リン酸受容体媒介内在化によって、Fabrazyme(商標)はReplagal(商標)よりも迅速にクリアランスされる。
【図6】MALDI-TOF質量分析によって決定した、ヒト細胞で作製されたα-Gal A(Replagal(商標))(上)およびCHO細胞で作製されたα-Gal A(Fabrazyme(商標))(下)の分子量を示す図である。主要な広いピークの最大値は、それぞれ50,755Daおよび50,705Daであり、グリコシル化単量体の推定分子量と一致する。それぞれReplagal(商標)およびFabrazyme(商標)の低い方の分子量の糖形態を示す約48,071Daおよび47,667Daのリーディングショルダーが存在する。低い方の分子量の糖形態に相当するリーディングショルダーは、Fabrazyme(商標)のスペクトルと非常に異なる。
【図7】ヒト細胞で作製されたα-Gal A(Replagal(商標))(下)およびCHO細胞で作製されたα-Gal A(Fabrazyme(商標))(上)から放出されたグリカンの負荷プロフィールを示す図である。グリカンを、蛍光プローブで誘導体化し、GlycoSep(商標)Cカラムでのイオン交換クロマトグラフィによって比較した。結果は、Replagal(商標)は中性および一負荷グリカンの比率が高く、Fabrazyme(商標)は三負荷グリカンの比率が高いことを示す。
【図8】C4逆相カラム(Vydac)を使用した逆相HPLCによって分析したFabrazyme(商標)(上)およびReplagal(商標)(下)のクロマトグラムを示す図である。214nmで得たクロマトグラムを示す。低い方の分子量の糖形態に対応するリーディングショルダーは、Fabrazyme(商標)と非常に異なる。
【図9】1mg/kgを静脈内投与したカニクイザル由来のヒト細胞で作製されたα-Gal A(Replagal(商標))の血清濃度(U/mg)を示すグラフである。
【図10】ヒト細胞で作製されたα-Gal A(Replagal(商標))の動物モデルにおけるCmaxの用量比例を示すグラフである。
【図11】ヒト被験体における0.2mg/kgでの注入後のReplagal(商標)血漿濃度(U/ml)を示すグラフである。
【図12】ヒト細胞で作製されたα-Gal A(Replagal(商標))のマウスに対するヒトのCmaxの用量比例を示すグラフである。
【図13】ヒト細胞で作製されたα-Gal A(Replagal(商標))の動物およびヒトにおける濃度曲線下面積(AUC)の用量比例を示すグラフである。
【図14】ヒト細胞で作製されたα-Gal A調製物(Replagal(商標))のヒトにおける用量に対する肝臓分布を示すグラフである。
【図15】男性および女性のヒト被験体における0.2mg/kgでの注入後のReplagal(商標)血漿濃度(U/ml)を示すグラフである。
【図16】調製物を投与するためのバイアルにパッケージングされた本明細書に記載のα-Gal A調製物および説明書を含むキットを略図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
発明の詳細な説明
序文
α-Gal A欠損症の酵素代替療法に望ましい薬物動態学的性質を有するヒトα-Gal A調製物が得られる修飾(例えば、炭水化物の構造(例えば、グリカン、リン酸、またはシアル酸の修飾))をヒトα-Gal Aに行うことができることが発見された。例えば、ヒトα-Gal Aが産生されるように遺伝子操作されたヒト細胞から産生されたヒトα-Gal Aの調製物は、ヒトにおける循環血中からのクリアランスについての対比スケール式Y=a(BW)b(式中、Yはα-Gal Aのクリアランス速度(ml/分)であり、「a」は非特異的定数であり、BWは体重である)の指数「b」(少なくとも0.85)(好ましくは0.92まで)を有する。本明細書に記載のこのようなα-Gal A調製物を、主にM6P受容体によって取り込むことができ、非ヒト細胞(例えば、CHO細胞)で産生されたヒトα-Gal Aと比較して血清クリアランスはあまり迅速ではない。したがって、本明細書に記載のα-Gal A欠損症の治療のための薬学的組成物およびキットは、実質的に当技術分野において現在使用されているよりも少量の単位用量で投与するこのようなα-Gal A調製物を含む。例えば、いくつかの態様では、本明細書に記載のα-Gal A調製物を、0.05mg/kg体重〜2.0mg/kg体重(mg/kg)の間、好ましくは0.05mg/kg〜5mg/kgの間、より好ましくは0.05mg/kg〜0.3mg/kgの間(例えば、約0.1、0.2、0.25、0.3、0.4、または0.5mg/kg)の単位用量で投与する。単位用量は、例えば、0.1×106U/kg〜10×106U/kgの間であり得る。いくつかの態様では、α-Gal A調製物の単位用量は、0.1×106U/kg〜5×106U/kgの間、好ましくは約0.1×106U/kg〜3×106U/kgの間である。他の態様では、本明細書に記載のα-Gal A調製物を、7日毎(例えば、10日毎、14日毎、または21日毎、4週間毎、5週間毎、6週間毎、7週間毎、または8週間毎に1回だけ投与する。患者によっては、さらに低い頻度(例えば、9、10、11、12週、またはそれ以上に1回)での投与が可能であり得る。
【0055】
所望の薬物動態学は少なくとも一部はα-Gal A調製物のグリコシル化パターンに起因すると考えられる。ヒトα-Gal Aの所望の薬物動態学に必要なグリコシル化パターン(例えば、α-Gal A単量体あたり平均して少なくとも50%のグリカン複合体;シアル酸とマンノース-6-リン酸との比(モル/モルベース)は、1.5:1超、好ましくは2:1超、より好ましくは3:1超、最も好ましくは3.5:1超またはそれ以上)を、当技術分野において公知の多数の方法によって達成することができる。一定の代表的な態様を以下にまとめ、より詳細に説明する。
【0056】
ファブリー病治療のための本明細書に記載のα-Gal A調製物を任意の細胞(α-Gal A産生細胞)で産生することができる。いくつかの態様では、本明細書に記載の組成物および方法は、以下により詳細に記載した標準的な遺伝子操作技術(クローン化α-Gal A遺伝子またはcDNAの宿主細胞への移入に基づく)または遺伝子活性化を使用して産生したヒトα-Gal Aを使用する。酵素の薬物動態学的活性に重要な炭水化物修飾を提供するヒトα-Gal Aをヒト細胞中で産生することができる。
【0057】
しかし、ヒトα-Gal Aを、非ヒト細胞(例えば、CHO細胞)中で産生することもできる。非ヒト細胞中でα-Gal Aが産生される場合、1つまたは複数のα-Gal A発現構築物、非ヒト細胞、または非ヒト細胞から単離したα-Gal Aを、例えば、下記のように修飾して所望の薬物動態学的性質が得られるグリコシル化プロフィールを有するα-Gal A調製物を得る。
【0058】
ヒトα-Gal Aの産生に適切な細胞
精製ヒトα-Gal Aを、培養細胞、好ましくは遺伝子操作細胞(例えば、遺伝子操作ヒト細胞)または他の哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞)から得ることができる。昆虫細胞を使用することもできる。
【0059】
ファブリー病治療のために細胞を遺伝子修飾する場合、細胞を、従来の遺伝子操作方法または遺伝子活性化によって修飾することができる。
【0060】
従来の方法によれば、α-Gal A cDNAまたはゲノムDNA配列を含むDNA分子を、発現構築物に含め、標準的な方法(リポソーム、ポリブレン、またはDEAEデキストラン媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、微量注入、または速度駆動遺伝子銃(例えば、米国特許第6,048,729号(参照として本明細書に組み入れられる)を参照のこと)が含まれるが、これらに限定されない)によって初代細胞、二次細胞、または不死化細胞にトランスフェクトすることができる。
【0061】
または、ウイルスベクターによって遺伝情報を送達する系を使用することができる。遺伝子導入に有用であることが公知のウイルスには、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、ムウプスウイルス、ポロウイルス、レトロウイルス、シンドビスウイルス、およびワクシニアウイルス(カナリア痘瘡ウイルスなど)が含まれる。
【0062】
あるいは、細胞は、例えば、米国特許第5,641,670号;米国特許第5,733,761号;米国特許第5,968,502号;米国特許第6,200,778号;米国特許第6,214,622号;米国特許第6,063,630号;米国特許第6,187,305号;米国特許第6,270,989号;および米国特許第6,242,218号(それぞれ参照として本明細書に組み入れられる)に記載の遺伝子活性化(「GA」)アプローチを使用して遺伝子を修飾することができる。遺伝子活性化によって作製されたα-Gal Aを本明細書でGA-GALという(Seldenら、米国特許第6,083,725号および同第6,458,574B1号)。
【0063】
したがって、本明細書で使用される、細胞に関する用語「遺伝子修飾された」は、遺伝子産物をコードするDNA分子の移入および/または遺伝子産物のコード配列の発現を調節する調節エレメントの封入後に特定の遺伝子産物を発現する細胞を含むことを意味する。遺伝子ターゲティングまたは相同組換え(すなわち、特定のゲノム部位でのDNA分子の移入)によってDNA分子を導入することができる。相同組換えを使用して、欠損遺伝子自体を置換することができる(ファブリー病患者自体の細胞中の欠損α-Gal A遺伝子またはその一部を、全遺伝子またはその一部と置換することができる)。
【0064】
本明細書で使用される、用語「初代細胞」には、脊椎動物組織供給源から単離した細胞懸濁液中に存在する細胞(プレーティング前、すなわち、皿またはフラスコなどの組織培養基質に結合している)、組織由来の外植片中に存在する細胞(最初にプレートした細胞の以前の型の両方)、およびこれらのプレートした細胞由来の細胞懸濁液が含まれる。
【0065】
「二次細胞」とは、培養の全てのその後の段階の細胞をいう。すなわち、最初に、プレートした初代細胞を、培養基質から取り出し、再度プレートし(継代)、これを二次細胞といい、その後の継代の全ての細胞も同様である。
【0066】
「細胞株」とは、1回または複数回継代した二次細胞からなり、培養において有限な平均集団倍加数を示し、接触阻止足場依存性成長性を示し(懸濁培養で増殖した細胞以外)、固定されていない。
【0067】
「不死化細胞」または「連続細胞株」は、培養において寿命が見かけ上無制限の樹立細胞系由来の細胞を意味する。
【0068】
初代細胞または二次細胞の例には、線維芽細胞、上皮細胞(乳房上皮細胞および腸上皮細胞が含まれる)、リンパ球および骨髄細胞を含む血液の要素を形成する内皮細胞、グリア細胞、肝細胞、ケラチノサイト、筋細胞、神経細胞、またはこれらの細胞型の前駆体が含まれる。本方法で有用な固定化ヒト細胞系の例には、Bowes黒色腫細胞(ATCCアクセッション番号CRL 9607)、Daudi細胞(ATCCアクセッション番号CCL 213)、HeLa細胞およびHeLa細胞の誘導体(ATCCアクセッション番号CCL 2,CCL 2.1およびCCL 2.2)、HL-60細胞(ATCCアクセッション番号CCL 240)、HT-1080細胞(ATCCアクセッション番号CCL 121)、Jurkat細胞(ATCCアクセッション番号TIB 152)、KB癌細胞(ATCCアクセッション番号CCL 17)、K-562白血病細胞(ATCCアクセッション番号CCL 243)、MCF-7乳癌細胞(ATCCアクセッション番号BTH 22)、MOLT-4細胞(ATCCアクセッション番号1582)、Namalwa細胞(ATCCアクセッション番号CRL 1432)、Raji細胞(ATCCアクセッション番号CCL 86)、RPMI 8226細胞(ATCCアクセッション番号CCL 155)、U-937細胞(ATCCアクセッション番号CRL 15 93)、WI-3 8VAI 3亜系統2R4細胞(ATCCアクセッション番号CLL 75.1)、CCRF-CEM細胞(ATCCアクセッション番号CCL 119)、および2780AD卵巣癌細胞(Van der Blickら、Cancer Res.48:5927-5932,1988)、ならびに融合ヒト細胞によって産生されたヘテロハイブリドーマ細胞および別の種の細胞が含まれるが、これらに限定されない。
【0069】
α-Gal Aを分泌する細胞を産生するためのヒト細胞の遺伝子修飾後、本質的に複数の遺伝的に同一な培養初代ヒト細胞からなるクローン細胞株、または細胞が固定されている場合、本質的に複数の遺伝的に同一の固定ヒト細胞からなるクローン細胞系を作製することができる。1つの態様では、クローン細胞株またはクローン細胞系の細胞は線維芽細胞である。好ましい態様では、細胞は、二次ヒト線維芽細胞(例えば、BRS-11細胞)である。実施例1は、ヒトα-Gal Aを産生するように遺伝子操作された細胞の産生に関するさらなるガイダンスを提供する。
【0070】
遺伝子修飾後、α-Gal Aを産生および分泌する条件下で細胞を培養する。細胞が成長した培地の回収および/またはその内容物を放出させるための細胞の溶解、ならびにその後のタンパク質精製技術の適用によって、培養細胞からタンパク質を単離する。
【0071】
循環半減期、細胞取り込み、および/または適切な組織へのα-Gal Aのターゲティングの増加
本明細書に記載のデータは、α-Gal A欠損症の酵素代替療法に望ましい酵素の薬物動態学的性質が得られる修飾(例えば、炭水化物、リン酸、またはシアル酸の修飾)をヒトα-Gal Aに行うことができることを示す。このようなヒトα-Gal A調製物の1つの作製方法は、ヒト細胞からヒトα-Gal Aを産生することである。
【0072】
ヒト細胞からのα-Gal A(または、実際には任意の糖タンパク質)の産生により必ずCHO細胞で産生されたタンパク質と構造的に異なるタンパク質が得られるように、ヒトおよび非ヒト細胞(例えば、CHO細胞)のグリコシル化の特徴が異なる。理論に束縛されないが、これらの相違は、本明細書に記載の組成物および方法におけるヒトα-Gal A調製物の所望の薬物動態学に重要であると考えられる。しかし、本明細書に記載のα-Gal A調製物を、非ヒト細胞から産生することもでき、いずれかの細胞でα-Gal Aコード配列および/または精製α-Gal Aを修飾する。例えば、そのグリコシル化機構がヒトと異なる非ヒト細胞(例えば、CHO細胞)を、炭水化物代謝酵素(例えば、ヒトには存在するがCHO細胞には存在しないα-2,6-シアリルトランスフェラーゼ)を発現するように遺伝子修飾することができる。
【0073】
別の例では、細胞を、1つまたは複数の修飾グリコシル化部位を有するα-Gal Aタンパク質を発現するように遺伝子操作することができる(例えば、ヒトまたは非ヒト細胞を、1つまたは複数のさらなるN結合グリコシル化部位が付加または欠失したα-Gal Aコード配列を発現するように遺伝子操作することができる)。さらなるグリコシル化部位を、修飾されたα-Gal Aコード配列を発現する細胞(例えば、CHO細胞)中の細胞機構によってグリコシル化し、それにより循環半減期、細胞取り込みが増加し、そして/または非ヒト細胞で発現した場合に未修飾のα-Gal Aと比較して心臓、腎臓、または他の適切な組織へのターゲティングが改良されたα-Gal A調製物を得ることができる。
【0074】
α-Gal Aを、(例えば、遺伝子操作された非ヒト細胞からの単離後に)ヒト細胞中で産生されたヒトα-Gal Aと類似させるように修飾することもできる。例えば、非ヒト細胞から単離したヒトα-Gal A調製物を、被験体への投与前に(例えば、ノイラミニダーゼまたはホスファターゼを使用して)修飾する(リン酸化または切断する)ことができる。
【0075】
循環半減期、細胞取り込み、および/または組織ターゲティングを、特に、(i)α-Gal Aのリン酸化の調整、(ii)α-Gal Aのシアル酸含有量の調整、および/または(iii)シアル酸および末端ガラクトース残基の連続除去またはα-Gal A上のオリゴ糖鎖の末端ガラクトシダーゼ残基の除去によって修飾することもできる。α-Gal A調製物のシアル酸化の変化により、循環半減期、細胞取り込み、および/または外因性α-Gal Aの組織ターゲティングを増大させることができる。α-Gal A1分子あたりのシアル酸とマンノース-6-リン酸とのモル比の変化により、肝細胞の細胞取り込みと比較して、肝臓内皮細胞、肝臓洞様毛細血管細胞、毛細血管/血管内皮細胞、腎糸球体上皮細胞(有足細胞)、および糸球体間膜細胞、腎内皮細胞、肺細胞、腎細胞、神経細胞、および/または心筋細胞などの非肝細胞の細胞取り込みを改良することもできる。例えば、α-Gal A調製物中のシアル酸とマンノース-6-リン酸との好ましい比(モル/モルベース)は、1.5:1超、好ましくは2:1超、より好ましくは3:1超、最も好ましくは3.5:1超またはそれ以上である。
【0076】
グリカンのリモデリング
糖タンパク質修飾(例えば、非ヒト細胞中でα-Gal Aが産生される場合)により、肝臓およびマクロファージ以外の特定の組織中での酵素取り込みを増大させることができる(例えば、毛細血管/血管内皮細胞、腎糸球体上皮細胞(有足細胞)、糸球体間膜細胞、腎内皮細胞、肺細胞、腎細胞、神経細胞、または心筋細胞中の取り込みを増加させることができる)。糖タンパク質修飾法を使用して、35%〜85%の間、好ましくは少なくとも50%のオリゴ糖が負荷されたヒトグリコシル化α-Gal A調製物を得ることができる。
【0077】
タンパク質N-グリコシル化は、オリゴ糖構造でのタンパク質の適切なアスパラギン残基の修飾およびそれによるその性質および生物活性への影響によって機能する(Kukuruzinska & Lennon,Crit.Rev.Oral.Biol.Med.9:415-48(1998))。本明細書に記載のα-Gal A調製物は、主にグリカン複合体への1〜4個のシアル酸残基の付加、高マンノースグリカンへの1〜2個のリン酸部分の付加、またはハイブリッドグリカンへの1つのリン酸および1つのシアル酸の付加によって負電荷のオリゴ糖を高い比率で有し得る。より少量の硫酸化グリカン複合体も存在し得る。負荷構造の比率の高さは、2つの主な機能に役立つ。第1に、2,3-または2,6-結合シアル酸による最後から2番目のガラクトース残基のキャッピングにより、肝細胞上に存在するアシアロ糖タンパク質受容体による循環血中からの未熟な除去が防止される。この受容体は、末端ガラクトース残基を有する糖タンパク質を認識する。
【0078】
例えば、ヒト細胞中での産生パターンに類似させるために非ヒト細胞中で産生されたα-Gal Aのグリコシル化パターンの修飾により、酵素注入後に心臓および腎臓などの重要な標的器官により大量の血漿由来の酵素を飲食作用する機会が与えられる。第2に、高マンノースまたはハイブリッドグリカン上のMan-6-リン酸の存在により、陽イオン依存性Man-6-リン酸受容体(CI-MPR)による受容体媒介取り込みの機会が得られる。この受容体媒介取り込みは、多数の細胞(ファブリー病患者におけるGb3の主要な保存部位である血管内皮細胞が含まれる)の表面上で起こる。2つのMan-6-リン酸残基を有する酵素分子は、1つのMan-6-リン酸を有するものよりもCI-MPRに対する親和性がさらに高い。
【0079】
同一のポリペプチド内の異なるアスパラギン残基を異なるオリゴ糖構造で修飾することができ、その炭水化物部分の特徴によって種々のタンパク質が互いに区別されるという事実によってN-グリコシル化の複雑さが増大する。
【0080】
N結合グリカン鎖を含むタンパク質に対する炭水化物リモデリングのためのいくつかのアプローチを本明細書で提供する。第1に、天然に存在しないグリコシル化部位を有するヒトα-Gal Aを産生するために、細胞(例えば、非ヒト細胞)を遺伝子操作することができる(例えば、1つまたは複数のさらなるグリコシル化部位を有するα-Gal Aタンパク質を産生するために、ヒトα-Gal Aコード配列を操作することができる)。さらなるグリコシル化部位を、細胞(例えば、CHO細胞)における細胞機構によって(例えば、グリカン複合体を使用して)グリコシル化することができ、修飾されたα-Gal Aコード配列を発現し、それにより例えば非ヒト細胞中で発現した場合に未修飾α-Gal Aと比較して循環半減期、細胞取り込み、および/または組織ターゲティングが改良されたα-Gal A調製物が得られる。
【0081】
第2に、精製プロセス時の糖形態の選択的単離によって負荷α-Gal Aの比率を増加させることができる。本発明は、精製プロセス中および/または後のクロマトグラフィカラム樹脂でのα-Gal A種の分画によって高負荷且つ高分子量のα-Gal Aの糖形態の比率の増大を提供する。α-Gal Aのより高度に負荷された糖形態種ほどより多くシアル酸および/またはリン酸を含み、より高い分子量の糖形態は完全にグリコシル化された、最も高度に分岐し且つ高度に負荷した種も含む。負荷種の選択または非グリコシル化、低グリコシル化、または低シアル酸化、および/またはリン酸化α-Gal A種の除去により、調製物中のリン酸比に対してより多数のシアル酸および/またはより望ましいシアル酸を有するα-Gal A糖形態集団が得られ、それによりより良好な半減期、細胞取り込み、および/または組織ターゲティングを有し、それによりより良好な治療効率を有するα-Gal A調製物が得られる。
【0082】
α-Gal Aを精製または単離するために使用される適切なクロマトグラフィ用カラム樹脂(これに限定されない)によってこの分画プロセスを行うことができる。例えば、陽イオン交換樹脂(SP-Sepharose-Gなど)、陰イオン交換樹脂(Q-SepharoseG)、アフィニティ樹脂(ヘパリンSepharose-b、レクチンカラム)、サイズ排除カラム(Superdex 200)、および疎水性相互作用カラム(ブチルSepharose)、および当技術分野において公知の他のクロマトグラフィ用カラム樹脂(これらに限定されない)によって分画することができる。
【0083】
分子量および負荷の異なる糖形態の不均一な混合物として細胞中にα-Gal Aが産生されるので、α-Gal Aはクロマトグラフィ用樹脂から比較的広いピークで溶離される傾向がある。これらの溶離内で、使用された樹脂の性質に依存して特定の様式で糖形態が分布する。例えば、サイズ排除クロマトグラフィでは、最も巨大な糖形態は、より小さな糖形態よりも溶離プロフィールにおいてより早く溶離する傾向がある。イオン交換クロマトグラフィでは、最も負電荷の高い糖形態が負電荷の低い糖形態よりも高い親和性で正電荷の樹脂(Q-Sepharosegなど)に結合するので、溶離プロフィールのより後に溶離する傾向がある。対照的に、これらの負電荷の高い糖形態は負電荷の低い種よりも負電荷の高い樹脂(SP Sepharose8など)にあまり強固に結合することができないか、全く結合することができない。
【0084】
高度に負荷し、かつ/または高分子量のα-Gal Aの糖形態の分画および選択を、従来の遺伝子操作法または遺伝子活性化(GA)によって修飾された細胞(例えば、ヒトまたは非ヒト細胞)などの遺伝子修飾細胞など由来の任意のα-Gal A調製物に対して行うことができる。本明細書に記載のシアル酸化およびリン酸化を変化させる(例えば、シアル酸とマンノース-6-リン酸との比(モル/モルベース)が1.5:1超、好ましくは2:1超、より好ましくは3:1超、最も好ましくは3.5:1超またはそれ以上である調製物を得る)ために最適化された系で成長した細胞系に対してこれを行うことができる。
【0085】
第3の炭水化物リモデリングアプローチは、精製グリコシルトランスフェラーゼおよび適切なヌクレオチド糖ドナーを使用したさらなる末端糖残渣の結合による精製α-Gal Aに対する一定の糖形態の修飾を含み得る。この処理は、使用されるグリコシルトランスフェラーゼの受容体として作用するための適切な遊離末端糖を有する糖形態のみに影響を与える。例えば、α-2,6-シアリルトランスフェラーゼは、ヌクレオチド糖ドナーとしてCMP-シアル酸を使用して、末端Galβ1,4-GlcNAc-R受容体上のα-2,6-結合中にシアル酸を付加する。市販酵素およびその供給源となる種には、フコースα-1,3-トランスフェラーゼIII、V、およびVI(ヒト)、ガラクトースα1,3-トランスフェラーゼ(ブタ)、ガラクトースβ1,4-トランスフェラーゼ(ウシ)、マンノースα1,2-トランスフェラーゼ(酵母)、シアル酸α2,3-トランスフェラーゼ(ラット)、およびシアル酸α2,6-トランスフェラーゼ(ラット)が含まれる。反応完了後、ピロリン酸(GDP、UDP)もしくはリン酸(CMP)結合によって6炭素スペーサーを介してゲルに結合した適切なヌクレオチドからなるグリコシルトランスフェラーゼ特異的アフィニティカラムまたは当技術分野において公知の他のクロマトグラフィ法によって、グリコシルトランスフェラーゼを反応混合物から除去することができる。上記列挙のグリコシルトランスフェラーゼのうち、シアリルトランスフェラーゼは、ヒト患者の酵素代替療法のためのα-Gal Aなどの酵素の修飾に特に有用である。ヌクレオチド糖ドナーとしてのCMP-5-フルオレセイニル-ノイラミン酸とのいずれかのシアリルトランスフェラーゼの使用により、取り込みおよび組織局在を容易にモニターすることができる蛍光標識糖タンパク質が得られる。
【0086】
第4の炭水化物リモデリングアプローチは、糖操作を含み、例えば、ゴルジ装置における翻訳後プロセシングを改変するための細胞(α-Gal A産生細胞)のグリコシル化機構に影響を与える遺伝子の移入が好ましいアプローチである。
【0087】
第5の炭水化物リモデリングアプローチは、異なる糖形態の存在数を減少させるための適切なグリコシダーゼでのα-Gal Aの処理を含む。例えば、ノイラミニダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、およびβ-ヘキソサミニダーゼでのグリカン複合体鎖の連続処理により、オリゴ糖をトリマンノースコアに切断する。
【0088】
第6のグリカンリモデリングアプローチは、グリコシル化インヒビター(例えば、キフネンシン(マンノシダーゼIのインヒビター)またはスワインソニンなど)の使用を含む。このようなインヒビターを、ヒトα-Gal Aを発現する培養細胞に添加することができる。インヒビターが細胞に取り込まれ、グリコシルトランスフェラーゼおよびガラクトシダーゼなどのグリコシル化酵素を阻害し、糖構造が変化したα-Gal A分子が得られる。または、ヒトα-Gal Aを産生するように遺伝子操作した細胞を、グリコシルトランスフェラーゼおよびグリコシダーゼなどのグリコシル化酵素でトランスフェクトすることができる。
【0089】
第7のアプローチは、例えば、本明細書に記載の遺伝子操作された細胞から単離されたα-Gal A上の炭水化物構造をインビトロでリモデリングするためのグリコシル化酵素(例えば、グリコシルトランスフェラーゼまたはグリコシダーゼ)の使用を含む。
【0090】
他のグリカンリモデリングアプローチが当技術分野において公知である。
【0091】
シアル酸化変換によるα-Gal Aの半減期および/または細胞取り込みの変化
シアル酸化は、タンパク質の循環半減期および生体分布に影響を与える。タンパク質上の露呈されたガラクトース残基による肝細胞上のアシアロ糖タンパク質受容体(Ashwell受容体)によって最小のシアル酸を含むか全く含まないタンパク質が容易に内在化される。ガラクトース末端化α-Gal Aの循環半減期を、(1)α-Gal Aをノイラミニダーゼ(シアリダーゼ)と接触させて露呈した末端ガラクトシダーゼ部分を遊離することによるシアル酸の除去および(2)脱シアル酸化α-Gal Aのβ-ガラクトシダーゼとの接触による末端ガラクトシダーゼ残基の除去を連続的に行うことによって変化させることができる。得られたα-Gal A調製物は、ノイラミニダーゼおよびβ-ガラクトシダーゼに連続的に接触させていないα-Gal A調製物と比較して、オリゴ糖鎖上の末端シアル酸および/または末端ガラクトシド残基の数が減少する。または、ガラクトース末端化α-Gal Aの循環半減期を、脱シアル酸化α-Gal Aのβ-ガラクトシダーゼとの接触による末端ガラクトシド残基の除去のみによって増大させることができる。得られたα-Gal A調製物は、β-ガラクトシダーゼに接触させていないα-Gal A調製物と比較して、オリゴ糖鎖上の末端ガラクトシド残基数が減少した。好ましい態様では、ノイラミニダーゼおよびβ-ガラクトシダーゼとの連続接触後、得られたα-Gal A調製物にβ-ヘキソサミニダーゼと連続的に接触させることにより、オリゴ糖をトリマンノースコアに切断する。
【0092】
α-Gal A調製物のシアル酸含量を、(i)精製プロセス時または後の高度に負荷されており、そして/または高分子量のα-Gal A糖形態の単離、(ii)シアリルトランスフェラーゼ遺伝子またはcDNAを発現するための(従来の遺伝子操作方法または遺伝子活性化のいずれかによる)遺伝子修飾された細胞を使用したシアル酸残基の付加、または(iii)低アンモニウム環境下で酵素を発現する細胞の発酵または成長によって増加させることができる。
【0093】
リン酸化の変化による半減期および/または細胞取り込みの変化
本明細書に記載のα-Gal A調製物のリン酸化の変化により、循環半減期および調製物の所望の組織への細胞取り込みを変化させることができる。好ましい態様では、α-Gal A調製物は、45%未満のリン酸化グリカンを有する。例えば、調製物は、約35%、30%、25%、または20%未満のリン酸化グリカンを有する。α-Gal A調製物中の所望のシアル酸:マンノース-6-リン酸比(モル/モルベース)は、1.5:1超、好ましくは2:1超、より好ましくは3:1超、最も好ましくは3.5:1超またはそれ以上である。
【0094】
α-Gal A調製物のリン酸化を、(i)ホスホリルトランスフェラーゼまたはホスファターゼ遺伝子またはcDNAを発現するための(従来の遺伝子操作方法または遺伝子活性化のいずれかによる)遺伝子修飾された細胞を使用したリン酸残基の付加または除去、(ii)培養細胞へのホスファターゼ、キナーゼ、またはこれらのインヒビターの添加、または(iii)本明細書に記載の遺伝子操作細胞から産生された精製α-Gal A調製物へのホスファターゼ、キナーゼ、またはこれらのインヒビターの添加によって修飾する(例えば、増加または減少させる)ことができる。
【0095】
2つの膜結合ゴルジ酵素の協奏的作用は、リソソームプロ酵素上のMan-6-リン酸認識マーカーの作製に必要である。第1のUDP-N-アセチルグルコサミン:糖タンパク質N-アセチルグルコサミン-1-ホスホトランスフェラーゼ(GlcNAcホスホトランスフェラーゼ)は、34Å離れ、且つ高マンノース鎖に対して正確な空間関係を有する2つのリジン残基からなるリソソーム酵素上のタンパク質認識決定基を必要とする。第2のN-アセチルグルコサミン-1-ホスホジエステルa-N-アセチルグルコサミニダーゼ(ホスホジエステルα-GlcNAカーゼ)は、α-GlcNAc-リン酸結合を加水分解してMan-6-リン酸認識部位を露呈させる。当技術分野において公知の方法によってこれらの酵素を誘導または阻害して所望のリン酸化特徴(例えば、リン酸化グリカンへのシアル酸化グリカンの望ましい分配)を有するα-Gal A調製物を得ることができる。
【0096】
1つの態様では、リン酸化が変化したα-Gal A調製物を、α-Gal A産生細胞へのホスホリルトランスフェラーゼをコードするポリヌクレオチドの第1の移入または内因性ホスホリルトランスフェラーゼ遺伝子の発現を調節する相同組換えによる調節配列の移入によって得られる。次いで、α-Gal Aおよびホスホリルトランスフェラーゼが発現する培養条件下で、α-Gal A産生細胞を培養する。ポリヌクレオチドを含まない細胞で産生されたα-Gal Aと比較してリン酸化が増大したα-Gal A調製物を単離する。
【0097】
さらに別の態様では、培養細胞へのホスファターゼインヒビター(例えば、ブロモテトラミソールまたはキナーゼインヒビター)の添加によってリン酸化が変化したグリコシル化α-Gal A調製物を得る。
【0098】
本明細書に記載の方法を使用して、血清または血漿クリアランス飽和レベル未満の用量で、循環血中からのα-Gal A調製物の血清クリアランスが用量曲線に対するAUCの直線部上の好ましくは4mL/分/kg未満、より好ましくは用量曲線に対するAUCの直線部上の3.5、3、または2.5mL/分/kg未満である、α-Gal A調製物を得る。α-Gal A調製物は、哺乳動物における循環血中からのクリアランスについての対比スケール式Y=(BW)b(式中、Yはα-Gal Aの循環血中からのクリアランス(ml/分)であり、「a」は非特異的定数であり、BWは体重である)の指数「b」(少なくとも0.85)を有する。指数「b」は、好ましくは少なくとも0.88、より好ましくは少なくとも0.90、最も好ましくは少なくとも0.92または少なくとも0.94である。
【0099】
好ましい態様では、本明細書に記載のα-Gal Aは、トリシアル酸化およびテトラシアル酸化構造などのより高度にシアル酸化された構造と比較して、中性、モノ、およびジシアル酸化グリカン構造(組み合わせ)が豊富である。例えば、好ましいα-Gal A調製物は、1つまたは複数の、(a)少なくとも約22%の中性グリカン(例えば、少なくとも約25%または30%の中性グリカン)、(b)少なくとも約15%、20%、または25%のモノシアル酸化グリカン、(c)少なくとも約35%、好ましくは少なくとも約40%、45%、または50%の中性およびモノシアル酸化グリカンの組み合わせ、(d)少なくとも約75%、76%、78%、またはそれ以上の中性、モノ、およびジシアル酸化グリカンの組み合わせ、および(e)約35%、好ましくは約25%、20%、18%未満、または約15%のトリおよびテトラシアル酸化グリカン構造の組み合わせを有する。
【0100】
好ましい態様では、本明細書に記載のα-Gal A調製物は、平均して、単量体あたり1つを超えるグリカン複合体、好ましくは単量体あたり少なくとも50%のグリカン複合体(例えば、単量体あたり2個またはそれ以上のグリカン複合体)を有する。
【0101】
好ましい態様では、本明細書に記載のα-Gal A調製物は、少なくとも5%、好ましくは少なくとも7%、10%、または15%の中性グリカンを有する。
【0102】
好ましい態様では、本明細書に記載のα-Gal A調製物は、45%未満のリン酸化グリカンを有する。例えば、調製物は、約35%、30%、25%、または20%未満のリン酸化グリカンを有する。
【0103】
好ましい態様では、本明細書に記載のα-Gal A調製物の総シアル酸化グリカン率は、約45%超(例えば、50%超または55%)である。
【0104】
好ましい態様では、α-Gal A調製物中のシアル酸とマンノース-6-リン酸の比(モル/モルに基づく)は、1.5:1超、好ましくは2:1超、より好ましくは3:1超、最も好ましくは3.5:1超またはそれ以上である。
【0105】
1つの態様では、シアル酸化グリカンとリン酸化グリカンとの比は1超、好ましくは1.5超、より好ましくは2超(例えば、約2.5または3超)である。
【0106】
PEG化
他の態様では、ヒトα-Gal A調製物の循環半減期を、α-Gal Aのポリエチレングリコール(PEG)での複合体化によって増強する。好ましい態様では、テシルモノメトキシPEG(TMPEG)を使用してα-Gal A調製物を複合体化し、PEG化α-Gal Aを形成する。次いで、PEG化α-Gal Aを精製して単離されたPEG化α-Gal A調製物を得る。α-Gal AのPEG化により、タンパク質の循環半減期、細胞取り込み、および/または組織分布が増加する。
【0107】
安定にトランスフェクトされた細胞の馴化培地からのα-Gal Aの精製
培養細胞株および/または酵素を産生させるために安定にトランスフェクトされた培養細胞株の馴化培地からα-Gal Aをほぼ均一に精製することができる。クロマトグラフィ段階を使用して、培地を含むα-Gal Aからα-Gal Aを単離することができる。例えば、1つまたは複数(例えば、2、3、4、5、またはそれ以上)のクロマトグラフィ段階を使用することができる。異なるクロマトグラフィ段階は、夾雑物質からα-Gal Aを分離するための酵素の異なる物理的性質を活用する種々の分離原理を使用する。例えば、段階には、ブチルSepharoseによる疎水性相互作用クロマトグラフィ、ハイドロキシアパタイトによるイオン相互作用、Q Sepharoseによる陰イオン交換クロマトグラフィ、およびSuperdex 200によるサイズ排除クロマトグラフィが含まれ得る。サイズ排除クロマトグラフィは、精製タンパク質を処方物適合緩衝液に交換するために有効な手段として役立ち得る。
【0108】
ある精製プロセスには、第1の精製段階としてブチルSepharose(登録商標)クロマトグラフィの使用が含まれる。Source Iso(Pharmacia)、Macro-Prep(登録商標)Methyl Support(Bio-Rad)、TSKブチル(Tosohaas)、またはPhenyl Sepharose(登録商標)(Pharmacia)などの他の疎水性相互作用樹脂を使用することもできる。カラムを、比較的高濃度の塩(例えば、1M硫酸アンモニウムまたは2M塩化ナトリウム(例えば、緩衝液(pH5.6)))で平衡化することができる。精製すべき試料を、平衡化緩衝液のpHおよび塩濃度への調整によって調製することができる。試料をカラムにアプライし、カラムを平衡化緩衝液で洗浄して非結合物質を除去する。より低いイオン強度の緩衝液、水、または有効溶媒を含む水(例えば、20%エタノールまたは50%プロピレングリコール)を使用してα-Gal Aをカラムから溶離する。または、より低濃度の塩を含む平衡緩衝液および試料の使用または異なるpHの使用によって、カラムにα-Gal Aを通過させることができる。他のタンパク質がカラムに結合し、カラムに結合しないα-Gal A含有試料を精製することができる。
【0109】
別の精製段階は、α-Gal Aを精製するために陽イオン交換樹脂(例えば、SP Sepharose(登録商標)6 Fast Flow(Pharmacia)、Source 30S(Pharmacia)、CM Sepharose(登録商標)Fast Flow(Pharmacia)、Macro-Prep(登録商標)CM Support(Bio-Rad)、またはMacro-Prep(登録商標)High S Support(Bio-Rad)を使用することができる。「第1のクロマトグラフィ段階」は、クロマトグラフィカラムへの試料の第1のアプライ(試料調製に関連する全段階を除く)である。α-Gal Aは、pH4.4でカラムに結合することができる。10mM酢酸ナトリウム(pH4.4)、10mMクエン酸ナトリウム(pH4.4)、または約pH4.4で適切な緩衝能力を有する他の緩衝液などの緩衝液を使用して、カラムを平衡化することができる。精製すべき試料を、平衡化緩衝液のpHおよびイオン強度に調整する。試料をカラムにアプライし、カラムをロード後に洗浄して結合していない物質を除去する。塩化ナトリウムまたは塩化カリウムなどの塩を使用して、カラムからα-Gal Aを溶離することができる。または、より高いpHまたはより高い塩濃度とより高いpHと組み合わせた緩衝液を使用して、α-Gal Aをカラムから溶離することができる。平衡化緩衝液および試料ロード中の塩濃度の増加、より高いpHでのカラムの運転、または塩の増加とより高いpHとの組み合わせによってローディング時にα-Gal Aをカラムに通過させることもできる。
【0110】
別の精製段階は、α-Gal Aの精製のためにQ Sepharose(登録商標)6Fast Flowを使用することができる。Q Sepharose(登録商標)6 Fast Flowは、比較的強力な陰イオン交換樹脂である。DEAE Sepharose(登録商標)Fast Flow(Pharmacia)またはMacro-Prep(登録商標)DEAB(Bio-Rad)などのより弱い陰イオン交換樹脂を使用して、α-Gal Aを精製することもできる。カラムを、緩衝液(例えば、10mMリン酸ナトリウム(pH6))で平衡化する。試料のpHをpH6に調整し、試料の希釈またはダイアフィルトレーションによってイオン強度を低くする。α-Gal Aが結合する条件下で試料をカラムにアプライする。カラムを平衡化緩衝液で洗浄して、結合しない物質を除去する。塩(例えば、塩化ナトリウムまたは塩化カリウム)のアプライ、より低いpHの緩衝液のアプライ、または塩の増加とより低いpHとの組み合わせによってα-Gal Aを溶離する。ロード中の塩濃度の増加、より低いpHでのカラムの運転、または塩の増加とより低いpHとの組み合わせによってローディング時にα-Gal Aをカラムに通過させることもできる。
【0111】
別の精製段階は、α-Gal Aの精製のためにSuperdex(登録商標)200(Pharmacia)サイズ排除クロマトグラフィを使用することができる。Sephacryl(登録商標)S-200 HRまたはBio-Gel(登録商標)A-1.5mなどの他のサイズ排除クロマトグラフィ樹脂を使用して、α-Gal Aを精製することもできる。サイズ排除クロマトグラフィのための好ましい緩衝液は、0.15M塩化ナトリウムを含む25mMリン酸ナトリウム(pH6.0)である。他の処方物に適合可能な緩衝液(例えば、10mMクエン酸ナトリウムまたはクエン酸カリウム)も使用することができる。緩衝液のpHは、pH5〜pH7の間であることができ、塩(例えば、塩化ナトリウムまたは塩化ナトリウムと塩化カリウムとの混合物)を含むべきである。
【0112】
別の精製段階は、α-Gal Aの精製のためにPolybuffer Exchanger PBE94(Pharmacia)などのクロマトフォーカシング樹脂を使用することができる。カラムを、比較的高いpH(例えば、pH7またはそれ以上)で平衡化し、精製すべき試料のpHを同一のpHに調整し、試料をカラムにアプライする。pH4に調整した緩衝系(例えば、Polybuffer74(Pharmacia))を使用して、pH4などのpHへの減少pH勾配を使用してタンパク質を溶離する。
【0113】
または、免疫親和性クロマトグラフィを使用して、α-Gal Aを精製することができる。α-Gal Aに対する適切なポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体(標準的な技術を使用してα-Gal Aまたはα-Gal A配列由来のペプチドでの免疫化によって作製)を、活性化カップリング樹脂(例えば、NHS活性化Sepharose(登録商標)4 Fast Flow(Pharmacia)またはCNBr活性化Sepharose(登録商標)4 Fast Flow(Pharmacia))に固定することができる。精製すべき試料を、約pH6またはpH7で固定化抗体カラムにアプライすることができる。カラムを洗浄して、結合していない物質を除去する。親和性カラム溶離のために使用される典型的な試薬(低pH(例えば、pH3)の変性剤(例えば、塩酸グアニジンまたはチオシアネート)または有機溶媒(例えば、50%プロピレングリコールを含むpH6の緩衝液)など)を使用して、カラムからα-Gal Aを溶離する。精製手順は、α-Gal Aを精製するために、金属キレート親和性樹脂(例えば、Chelating Sepharose(登録商標)Fast Flow(Pharmacia))を使用することもできる。カラムを、金属イオン(例えば、Cu2+、Zn2+、Ca2+、Mg2+、またはCd2+)で予め荷電する。精製すべき試料を、適切なpH(例えば、pH6〜7.5)でカラムにアプライし、カラムを洗浄して結合していないタンパク質を除去する。イミダゾールもしくはヒスチジンでの競合溶離、クエン酸ナトリウムもしくは酢酸ナトリウムを使用してpHを6未満のpHに低下させること、またはEDTAもしくはEGTAなどのキレート剤の導入によって結合したタンパク質を溶離する。
【0114】
α-Gal A調製物の投与のための投薬量
本明細書に記載のα-Gal A調製物は、例えば、毛細血管内皮細胞、腎糸球体上皮細胞(有足細胞)、糸球体間膜細胞、および/または心筋細胞に対して所望の循環半減期および組織分布を示す。このような調製物を、比較的低い投薬量で投与することができる。例えば、投与単位用量は、0.05〜2.0mg/kg体重(mg/kg)であり得る。例えば、単位用量は、0.05mg/kg〜1.0mg/kgの間、0.5mg/kg〜0.5mg/kgの間、または0.5mg/kg〜0.3mg/kgの間であり得る。0.05mg/kg〜0.29mg/kgの間の単位用量が好ましい(例えば、約0.05、0.1、0.15、0.2、0.25mg/kgの単位用量)。α-Gal A調製物の比活性を2×106U/mg〜4.5×106U/mgの間と仮定すれば、これらの値は、約0.1×106U/kg〜1.3×106U/kgに相当する。好ましい単位用量により、α-Gal Aの肝臓取り込みが飽和する。
【0115】
タンパク質の定期的な反復投与は、患者の生命として考えても、長期間(例えば、数ヶ月または1、2、3年もしくはそれ以上または一生)を必要とする。しかし、本明細書に記載のα-Gal A調製物の所望の循環半減期および組織分布により、比較的長く間隔をあけて患者に単位用量を投与可能である。例えば、単位用量を、7日毎、10日毎、14日毎、21日毎、4週間毎、6週間毎、8週間毎、10週間毎、または12週間毎に1回だけ投与することができる。好ましい投与頻度は、2週間、1ヶ月、または2ヶ月である。
【0116】
治療期間中、患者の疾患の状態を評価するために、患者を臨床的にモニターすることができる。例えば、腎臓または心臓の機能または患者の全体的な健康状態(例えば、痛み)の改善によって測定された臨床的改善および例えば尿、血漿、または組織のGb3レベルの減少によって測定された実験的改善を使用して、患者の健康状態を評価することができる。治療およびモニタリング後に臨床的改善が認められる事象では、α-Gal Aの投与頻度を減少させることができる。例えば、α-Gal A調製物を毎週注射している患者は2週間毎の投与に変更することができ、α-Gal A調製物を2週間毎に注射している患者は1ヶ月毎の投与に変更することができ、α-Gal A調製物を1ヶ月毎に注射している患者は2ヵ月毎の注射に変更することができる。このような投与頻度の変更後、ファブリー病に関連する臨床的および実験的測定を評価するために、患者を、さらなる期間(例えば、数年(例えば、3年間))モニターすべきである。好ましい態様では、投与頻度を変更した場合、投薬量は変化させない。これにより、一定の薬物動態学パラメーター(例えば、最大血漿濃度(Cmax))、最大血漿濃度に対する時間(tmax)、血漿、半減期(t1/2)、および曲線下面積(AUC)によって測定した曝露が確実に各投与後に比較的一定に維持される。これらの薬物動態学パラメーターの維持により、投与頻度変更による組織へのα-Gal Aの受容体媒介取り込みレベルが比較的一定になる。
【0117】
いくつかの態様では、次の投与のタイミングに関して評価する際に、用量と決定との間で患者を臨床的に評価することができる。
【0118】
皮下注射を使用して、薬物へのより長い曝露期間を維持することができる。筋肉内注射によって投与されるα-Gal A調製物の投薬量は、皮下注射の投薬量と同一であっても異なっていてもよい。好ましい態様では、筋肉内投与量はより少なく、投与頻度は低い。α-Gal A調製物を、静脈内注射することが好ましい(例えば、静脈内ボーラス注射、低速(slow push)静脈内注射、または連続的静脈内注射)。連続的IV注入(例えば、2〜6時間超)により、特定の血中レベルを維持可能である。
【0119】
ファブリー病の異常な変異型を有する患者(例えば、主に心血管異常または腎臓関連(involvement)を示す)を、本明細書に記載の同一の投薬計画で治療することができる。必要に応じて用量を調整する。例えば、α-Gal A酵素代替療法を使用して治療した心臓の変異表現型を有する患者は、治療後に心臓の組成が変化し、心機能が改善された。この変化を、ファブリー病患者の左心室厚の増加を検出することができる標準的な心エコー検査を使用して測定することができる(Goldmanら、JAm Coll Cardiol 7:1157-1161(1986))。治療中に左心室厚の連続的心エコー測定を行うことができ、左心室厚の減少は治療応答の指標である。α-Gal A酵素代替療法を受けた患者を、心臓の核磁気共鳴画像法(MRI)に供することもできる。MRIは、所与の組織の相対的組成を評価することができる。例えば、ファブリー病患者の心MRIは、対照患者と比較して心筋内に脂質が沈積されている(Matsuiら、Ani Heart J 117:472-474.(1989))。酵素代替療法を受けた患者の連続的心MRI評価により、患者の心臓内の脂質沈積の変化を明らかにすることができる。腎臓変異表現型を有する患者にもα-Gal A酵素代替療法から利益を得ることができる。
【0120】
治療効果を、標準的な腎機能試験(24時間尿タンパク質レベル、クレアチンクリアランス、および糸球体濾過速度など)によって測定することができる。
【0121】
薬学的組成物
本明細書に記載のα-Gal A調製物は、実質的に、非α-Gal Aタンパク質(アルブミンなど)、宿主細胞によって産生された非α-Gal Aタンパク質、または動物組織もしくは流動物から単離したタンパク質を含まない。調製物は、水性または生理学的に適合可能な懸濁液または溶液の一部を含むことが好ましい。患者への所望の調製物の送達に加えて、患者の電解質および/または体積のバランスに悪影響を与えないようにキャリアまたは賦形剤は生理学的に適合可能である。非経口投与に有用な溶液を、薬学分野において任意の周知の方法によって調製することができる(例えば、REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES Gennaro,A.,ed.,Mack Pub.,1990を参照のこと)。
【0122】
坐剤および経口処方物などの非経口処方物を使用することもできる。好ましくは、処方物は、賦形剤を含む。処方物に含めることができるα-Gal Aの薬学的に許容される賦形剤は、緩衝液(クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、重炭酸緩衝液など)、アミノ酸、尿素、アルコール、アスコルビン酸、リン脂質、タンパク質(血清アルブミン、コラーゲン、およびゼラチンなど)、塩(EDTAまたはEGTAおよび塩化ナトリウムなど)、リポソーム、ポリビニルピロリドン、糖(デキストラン、マンノース、ソルビトール、およびグリセロールなど)、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコール(PEG)、グリセロール、グリシンもしくは他のアミノ酸、および脂質である。好ましい賦形剤には、マンノース、ソルビトール、グリセロール、アミノ酸、脂質、EDTA、EGTA、塩化ナトリウム、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、デキストラン、またはこれらの任意の賦形剤の組み合わせが含まれる。
【0123】
別の態様では、処方物は、非イオン性界面活性剤をさらに含む。好ましい非イオン性界面活性剤には、Polysorbate 20、Polysorbate 80、Triton X-100(商標)、Triton X-114(商標)、Nonidet P-40(商標)、Octyl a-glucoside、Octylβ-グルコシド、Brij 35、Pluronic(商標)、Poloxamer 188(a.k.a.Poloxalkol)、およびTween 20(商標)が含まれる。好ましい態様では、非イオン性界面活性剤は、Polysorbate 20またはPolysorbate 80を含む。
【0124】
好ましい処方物は、リン酸緩衝化生理食塩水(例えば、pH6)をさらに含む。α-Gal A調製物用の緩衝系には、クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液、重炭酸緩衝液、およびリン酸緩衝液(全てSigmaから市販されている)が含まれる。リン酸緩衝液は、好ましい態様である。α-Gal A調製物の好ましいpH範囲は、pH4.5〜7.4である。
【0125】
α-Gal A調製物の凍結乾燥のために、タンパク質濃度は0.1〜10mg/Lであり得る。グリシン、マンノース、アルブミン、およびデキストランなどの充填剤を、凍結乾燥混合物に添加することができる。さらに、二糖類、アミノ酸、およびPEGなどの可能な凍結防止剤を凍結乾燥混合物に添加することができる。上記の任意の緩衝液、賦形剤、および界面活性剤を添加することもできる。
【0126】
投与処方物は、所望の位置に薬剤を保持するための高粘度のグリセロールおよび他の組成物を含み得る。生体適合性ポリマー、好ましくは生体吸収性生体適合性ポリマー(例えば、ヒアルロン酸、コラーゲン、ポリ酪酸、ラクチド、およびグリコリドポリマー、およびラクチド/グリコリドコポリマーが含まれる)は、インビボでの薬剤放出の調節に有用な賦形剤であり得る。非経口投与用処方物には、口内投与のためのグリココール酸、直腸投与のためのメトキシサリチル酸、または膣投与のためのクエン酸(cutric acid)が含まれ得る。直腸投与用の坐剤を、本発明のα-Gal A調製物と室温で固体であり体温で液体であるココアバターまたは他の組成物などの非刺激性賦形剤との混合によって調製することができる。
【0127】
吸入投与用処方物は、ラクトースまたは他の賦形剤を含み得るか、ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル、グリココール酸、またはデオキシコール酸を含み得る水溶液であり得る。好ましい吸入エアゾールは、質量密度が低くサイズが大きい粒子を有することを特徴とする。質量密度が0.4g/cm3未満であり、且つ平均直径が5μmを超える粒子は、全身循環に吸入治療薬を効率よく送達させる。このような粒子を肺に吸気し、吸入した粒子がその治療ペイロードを送達するまで肺の天然のクリアランス機構を回避する(Edwardsら、Science 276:1868-1872(1997))。本発明のα-Gal A調製物を、例えば、米国特許第5,654,007号、同第5,780,014号、および同第5,814,607号(それぞれ参照として本明細書に組み入れられる)に記載の調製方法および処方物の使用によってエアゾール形態で投与することができる。
【0128】
鼻腔内投与用処方物は、点鼻薬または鼻腔内投与用ゲルの形態で投与するための油性溶液を含み得る。
【0129】
皮膚表面への局所投与用処方物を、ローション、クリーム、軟膏、またはソープなどの皮膚科学的に許容されるキャリアへのα-Gal A調製物の分散によって調製することができる。適用を局在化して除去されないようにするための皮膚上にフィルムまたは層を形成することができるキャリアが特に有用である。内部組織表面への局所投与のために、α-Gal A調製物を、液体組織接着物質または組織表面への吸着を促進することが公知の他の物質中に分散させることができる。例えば、米国特許第4,740,365号、同第4,764,378号、および同第5,780,045号(それぞれ参照として本明細書に組み入れられる)などに経粘膜薬物送達のためのいくつかの粘膜接着剤および口腔錠が記載されている。
【0130】
ヒドロキシプロピルセルロースまたはフィブリノゲン/トロンビン溶液を組み込むこともできる。または、ペクチン含有処方物などの組織コーティング溶液を使用することができる。
【0131】
本発明の調製物を、滅菌状態での維持、適切な販売および保存時の有効成分の活性の保護、および患者への投与のための調製物の便利且つ有効な可触性(accessibility)に適切なコンテナ中で提供することができる。α-Gal A調製物の注射用処方物を、ニードルおよびシリンジを使用した内容物の取り出しに適切なストッパー付きバイアル中で供給することができる。バイアルは、単回使用または複数回使用のいずれかを意図する。調製物を、予め充填したシリンジとして供給することもできる。いくつかの例では、内容物は液体処方物で供給されるが、他の場合、場合によっては標準的な希釈剤または供給された希釈剤での液体状態の再構成が必要な乾燥または凍結乾燥状態で供給される。調製物を静脈内投与用の液体として供給する場合、静脈内投与ラインまたはカテーテルへの接続に適切な滅菌バッグまたはコンテナ中に提供することができる。好ましい態様では、本発明の調製物を、所定用量の調製物を都合よく投与するデバイス中の液体または粉末の処方物で供給し、このようなデバイスの例には、皮下または筋肉内注射のためのニードルレス注射器および定量エアゾール送達デバイスが含まれる。他の例では、調製物を、徐放に適切な形態(経皮投与のために皮膚に適用されるパッチもしくは包帯または経粘膜投与のための侵食され得るデバイスなど)で供給することができる。調製物を錠剤または丸薬形態で経口投与する場合、調製物を除去可能なカバーを有するボトルで供給することができる。コンテナに調製物の型、製造者もしくは販売者の名称、適応症、推奨用量、適切な保存についての説明、または投与のための説明などの情報を含むラベルを貼ることができる。
【0132】
α-Gal A調製物の投与方法
本明細書に記載のα-Gal A調製物を、α-Gal A調製物に適合可能な任意の経路で投与することができる。精製α-Gal A調製物を、α-Gal Aタンパク質の産生が不十分であるか欠損した個体またはα-Gal A療法から利益を得ることができる個体に投与することができる。本発明の治療調製物を、任意の適切な手段によって個体に直接(例えば、局所的、注射、移植、または組織軌跡(locus)への局所投与)または全身(例えば、経口または非経口)に提供することができる。
【0133】
好ましい投与経路は静脈内である。他の投与経路は、経口もしくは非経口(皮下、動脈内、腹腔内、眼内、筋肉内、口内、直腸内、膣内、眼窩内、大脳内、皮内、頭蓋内、髄腔内、脳室内、鞘内、槽内、包内、肺内、鼻腔内、経粘膜、経皮、または吸入が含まれる)であり得る。肺内送達法、装置、および薬物調製物は、例えば、米国特許第5,785,049号、同第5,780,019号、および同第5,775,320号(それぞれ参照として本明細書に組み入れられる)に記載されている。好ましい経皮送達法は、パッチによるイオン導入送達であり、このような送達の1つの例は、米国特許第5,843,015号(参照として本明細書に組み入れられる)に教示されている。
【0134】
特に有用な投与経路は、皮下注射である。本発明のα-Gal A調製物を、全必要用量を1mlまたは2mlの1回の注射で投与することができるように処方する。1mlまたは2mlの注射体積を可能にするために、本発明のα-Gal A調製物を、1mlまたは2mlの体積で好ましい用量が送達される濃度で処方することができるか、α-Gal A調製物を、投与前に水または適切な生理学的に適合可能な緩衝液で再構成される凍結乾燥形態で処方することができる。α-Gal A調製物の皮下注射は、患者に都合がよいという利点を有する(特に自己投与)一方で、例えば静脈内投与と比較して血漿半減期も長くなる。血漿半減期の延長により、より長期にわたって有効な血漿α-Gal Aレベルが維持され、その利点は、注射したα-Gal Aへの臨床的罹患組織の曝露が増大し、その結果、このような組織へのα-Gal Aの取り込みを増大させることができることである。これにより、患者により有利な効果が得られ、そして/または投与頻度を減少させることが可能である。さらに、本明細書に記載の本発明のα-Gal A調製物を含む再充填可能な注射ペンおよびニードルレス注射デバイスなどの患者に都合よくデザインされた種々のデバイスを使用することができる。
【0135】
調製物の定期的なボーラス注射によって投与するか、外部(例えば、IVバッグ)または内部(例えば、生体腐食性移植片、生体人工器官、または移植α-Gal A産生細胞集団)であるリザーバからの静脈内または腹腔内投与によって投与することができる。例えば、米国特許第4,407,957号および同第5,798,113号(それぞれ参照として本明細書に組み入れられる)を参照のこと。肺内送達法および装置は、例えば、米国特許第5,654,007号、同第5,780,014号、および同第5,814,607号(それぞれ参照として本明細書に組み入れられる)に記載されている。他の有用な非経口送達系には、エチレン-ビニルアセテートコポリマー粒子、浸透圧ポンプ、移植可能な注入系、ポンプ送達、カプセル化細胞送達、リポソーム送達、ニードル送達注射、ニードルレス注射、噴霧器、エアゾール散布器、エレクトロポレーション、および経皮パッチが含まれる。ニードルレス注射デバイスは、米国特許第5,879,327号、同第5,520,639号、同第5,846,233号、および同第5,704,911号(その明細書は参考として本明細書に組み入れられる)に記載されている。上記の任意のα-Gal A調製物を、これらの方法で投与することができる。
【0136】
投与経路およびタンパク質の送達量を、当業者の評価能力の範囲内である因子によって決定することができる。さらに、当業者は、投与経路および治療タンパク質の投薬量は、治療投薬レベルが得られるまで所与の患者によって変化し得ることを承知している。
【0137】
本明細書で引用された全ての特許および刊行物は、参照として本明細書に組み入れられる。
【実施例】
【0138】
実施例
実施例1:α-Gal Aを送達および発現するようにデザインされた構築物の調製および使用
1.1:遺伝子活性化α-Gal A(GA-GAL)の調製
本質的に米国特許第5,733,761号(参考として本明細書に組み入れられる)に記載のGAテクノロジーを使用したヒトα-Gal Aコード配列上流の調節配列および構造DNA配列の挿入によって遺伝子活性化α-Gal A(GA-GAL)を産生した。トランスフェクトしたDNAフラグメント上に存在するDNAとヒト細胞中のα-Gal A遺伝子座上流のゲノムDNA配列との間の相同組換えの結果として、遺伝子活性化配列が正確に挿入される。遺伝子活性化配列自体は、シグナルペプチド切断部位(限定されない)までのα-Gal Aコード配列を含む。活性化α-Gal A遺伝子座を含む細胞を単離し、薬物選択に供してGA-GAL産生が増大した細胞を単離した。
【0139】
適切な遺伝子活性化配列を含むターゲティングDNAフラグメントを、エレクトロポレーションによって宿主ヒト細胞系に移入する。1つのこのような細胞系は、HT-1080(ATCC(Manassas,VA)から利用可能な認定された細胞系)である。このようなDNAフラグメントを含む遺伝子活性化プラスミド(ターゲティング構築物)pGA213Cを、図3Aに示す。このプラスミドは、宿主細胞系中の内因性α-Gal A遺伝子座の一部を活性化するようにデザインされた配列を含み、シグナルペプチドをコードする配列を含むが、ヒトα-Gal Aを含まない。ターゲティング構築物はまた、細菌のneo遺伝子およびマウスのdhfr遺伝子の発現カセットを含む。これらにより、安定に組み込まれたターゲティングフラグメント(neo遺伝子を介する)を選択し、段階的メトトレキセート(MTX)選択を使用してdhfr遺伝子をその後に選択可能である。
【0140】
さらに、pGA213Cは、相同組換えによって内因性α-Gal A遺伝子座上流の染色体配列をターゲティングするようにデザインされた配列を含む。内因性α-Gal A遺伝子座と9.6kbのpGA213CのDNAフラグメントとの間の相同組換えを、図3Bに示す。
【0141】
X染色体α-Gal A遺伝子座を使用したpGA213Cフラグメントの相同組換え時にα-Gal Aのメチオニン開始コドンと比較して-1183位から-222位までに広がる962bpのゲノム配列を欠損するようにpGA213Cを構築する。α-Gal Aコード領域上流の外因性調節配列の正確なターゲティングによってα-Gal A遺伝子座の転写活性化が起こる。得られたGA-GAL遺伝子座により、CMVプロモーターから始まり、CMVエクソン1、アルドラーゼのイントロンおよび7つのエクソン、ならびにα-Gal Aコード配列の6つのイントロンに続くように転写される。巨大な前駆体mRNAのスプライシングにより、外因性CMVエクソン(ターゲティングによって挿入)がα-Gal A転写物の全ての内因性の第1のエクソンに連結する。GA-GAL mRNAの翻訳により、31個のアミノ酸のシグナルペプチドを有するプレGA-GALが得られる。宿主細胞からの分泌の際、シグナルペプチドが除去される。正確にターゲティングされた細胞系を、GA-GAL mRNAの存在についてのポリメラーゼ連鎖反応スクリーニングによって同定する。GA-GAL mRNAを産生するクローンもまた、培養培地に酵素活性α-Gal Aを分泌することが見出された。その後、制限酵素消化およびゲノムDNAのサザンブロットハイブリッド形成分析によってターゲティング事象を確認する。
【0142】
細胞を段階的メトトレキセート(「MTX」)選択に曝露した。0.05μM MTXでの選択後、細胞クローンを単離し、0.1μM MTX選択に供した。このプロセスから、0.1μM MTXに耐性を示す細胞プールを単離し(細胞系RAG001)、培地で拡大した。
【0143】
1.2:α-Gal Aを発現させるための他の構築物の調製
2つの他の発現プラスミドpXAG-16およびpXAG-28を構築した。これらのプラスミドは、α-Gal A酵素の398アミノ酸(α-Gal Aシグナルペプチドを含まない)をコードするヒトα-Gal A cDNA、hGH遺伝子の第1のイントロンによって妨害されるヒト成長ホルモン(hon-none)(hGH)シグナルペプチドゲノムDNA配列、およびポリアデニル化シグナルを含むhGH遺伝子の非翻訳配列(UTS)を含む。プラスミドpXAG-16は、ヒトサイトメガロウイルス最初期(CMV IE)プロモーターおよび第1のイントロン(非コードエクソン配列に隣接)を有し、pXAG-28はコラーゲンIα2プロモーターおよびエクソン1によって駆動し、β-アクチン遺伝子の第1のイントロンを含むβ-アクチン遺伝子の5’UTSも含む。
【0144】
線維芽細胞中でα-Gal Aを発現させるために、二次線維芽細胞を培養し、公開された手順にしたがってトランスフェクトした(Seldenら、WO93/09222)。プラスミドpXAG-13、pXAG-16、およびpXAG-28をエレクトロポレーションによってヒト包皮線維芽細胞にトランスフェクトして安定にトランスフェクトされたクローン細胞株を作製し、得られたα-Gal A発現レベルをモニターした。正常な包皮線維芽細胞によるα-Gal Aの選択範囲は、2〜10単位/106細胞/24時間である。対照的に、以下の表に示すように、トランスフェクトされた線維芽細胞は平均発現レベルを示した。
【0145】
平均α-Gal A発現レベル(±標準偏差)
【0146】
これらのデータは、3つ全ての発現構築物が非トランスフェクション線維芽細胞の何倍もα-Gal A発現を増加させることができることを示す。α-Gal Aシグナルペプチドに連結されたα-Gal AをコードするpXAG-13で安定にトランスフェクトした線維芽細胞による発現は、シグナルペプチドがhGHシグナルペプチドであり、そのコード配列がhGH遺伝子の第1のイントロンによって妨害されるという点のみが異なるpXAG-16でトランスフェクトした線維芽細胞による発現よりも実質的に低かった。
【0147】
遺伝子治療またはα-Gal Aの精製のための材料の作製に望ましい細胞株は、数世代にわたって安定な成長および発現を示すべきである。α-Gal A発現構築物で安定にトランスフェクトされた細胞株由来のデータは、α-Gal A発現は連続継代中に安定に維持されることを示した。
【0148】
実施例2:ヒト細胞中で産生されたα-Gal AとCHO中で産生されたものとの構造の比較
この実施例は、Replagal(商標)(ヒト細胞中で産生されたα-Gal A調製物)とFabrazyme(商標)(CHO細胞中で産生されたα-Gal A調製物)の構造を比較する。調製物を、等電点、分子量、ならびに炭水化物、リン酸化、およびシアル酸化プロフィールに関して比較した。
【0149】
等電点
Replagal(商標)およびFabrazyme(商標)を、変性等電点電気泳動(5%ゲル、pH範囲3〜7、6M尿素)およびその後のウェスタンブロッティングによって分析した。調製物を、未変性等電点電気泳動(Novex5%ゲル、pH範囲3〜7)およびその後のクーマシーブルー染色によっても分析した。2つの調製物の全pI範囲は類似しているが、結合パターンの相対強度は異なっていた。これは、各調製物に存在する糖形態の電荷分布が異なることを示し、Fabrazyme(商標)はReplagal(商標)よりもより低いpI(より高い負電荷)の糖形態の比率が高い。
【0150】
分子量
Replagal(商標)およびFabrazyme(商標)を、SDS-PAGE(8〜16%ポリアクリルアミドゲル、還元試料)およびその後のクーマシーブルー染色によって分析した。調製物の分子量は類似していた。しかし、Fabrazyme(商標)の低い方の分子(約45kD)糖形態バンドはReplagal(商標)のそれとより異なり、Replagal(商標)はより広いサイズ分布を示す。
【0151】
図6では、Replagal(商標)(上)およびFabrazyme(商標)(下)の分子量を、MALDI-TOF質量分析によって決定した。主要なより広いピークの最大値は、それぞれ50,755Daおよび50,705Daであり、グリコシル化単量体の推定分子量と一致する。約48,071Daおよび47,667Daにリーディングショルダーが存在し、それぞれReplagal(商標)およびFabrazyme(商標)の低い方の糖形態の分子量を示す。低い方の分子量の糖形態に相当するリーディングショルダーは、Fabrazyme(商標)のスペクトルがさらにより異なる。
【0152】
図8は、C4逆相カラム(Vydac)を使用した逆相HPLCによって分析したFabrazyme(商標)(上)およびReplagal(商標)(下)を示す。214nmで得たクロマトグラムを示す。低い方の分子量の糖形態に相当するリーディングショルダーは、Fabrazyme(商標)でさらにより明白である。
【0153】
細胞内在化
正常なヒト線維芽細胞を、Replagal(商標)またはFabrazyme(商標)の非存在下(対照、示さず)または存在下で6時間多ウェル培養プレートにてインキュベートした。この内在化は、マンノース-6-リン酸で阻害可能であり、内在化は主にマンノース-6-リン酸受容体を介することを示す。結果は、Replagal(商標)およびFabrazyme(商標)は線維芽細胞によって同等に内在化されないことを示す。Fabrazyme(商標)は、マンノース-6-リン酸受容体媒介内在化によってReplagal(商標)より容易に内在化される(図5を参照のこと)。
【0154】
グリカン組成物および特徴分析
図7は、Replagal(商標)(下)およびFabrazyme(商標)(上)から放出されたグリカンの負荷プロフィールを示す。グリカンを、蛍光プローブで誘導体化し、GlycoSep(商標)Cカラムでのイオン交換クロマトグラフィによって比較した。結果は、Replagal(商標)は中性および一負荷グリカンの比率が高く、Fabrazyme(商標)は三負荷グリカンの比率が高いことを示す。
【0155】
表1は、グリカンのピーク領域比較を示す。図4に示すように、Replagal(商標)およびFabrazyme(商標)から放出されたグリカンを、HPAE-PADを使用して分析した。ピークを積分して、種々のピーク群の比率を定量した。表にしたデータは、Fabrazyme(商標)でリン酸化グリカンの比率が高く、Replagal(商標)で中性グリカンおよびシアル酸化グリカンの比率が高いのを証明する。
【0156】
表2は、負荷プロフィールの結果を示す。図7に記載のようにReplagal(商標)およびFabrazyme(商標)から放出されたグリカンの負荷プロフィールを誘導および分離した。CK-022およびCK-006は2つの異なるReplagal(商標)調製物であり、CK-JL012502はFabrazyme(商標)の調製物である。各産物由来のグリカンを、二連でアッセイした。表に示すように、Replagal(商標)調製物は中性または一負荷のグリカンの比率が高く、Fabrazyme(商標)は二負荷または三負荷のグリカンの比率が高い。
【0157】
表3は、脱シアル酸化プロフィールの結果を示す。図7に記載のようにReplagal(商標)およびFabrazyme(商標)から放出されたグリカンの負荷プロフィールを脱シアル酸化し、その後誘導および分離した。CK-022およびCK-006は2つの異なるReplagal(商標)調製物であり、CK-JL012502はFabrazyme(商標)の調製物である。各産物由来のグリカンを、二連でアッセイした。表に示すように、Replagal(商標)調製物は脱シアル酸化後に残存する負荷グリカンの比率が低く、Fabrazyme(商標)はリン酸化(シアリダーゼ耐性)グリカンの比率が高いことを示す。
【0158】
実施例3:ヒト細胞で作製されたα-Gal A(Replagal(商標))の薬物動態学の種間スケーリング
本実施例の目的は、動物モデルとヒトの薬物動態学的結果由来の薬物動態学パラメーターを比較することであった。
【0159】
動物(マウス、ラット、イヌ、ウサギ、およびサル)に、Replagal(商標)を1回静脈内にボーラス注射した。24時間にわたって血液試料を採取し、血清に処理し、インビトロ蛍光アッセイを使用してα-Gal A酵素活性について分析した。2-コンパートメントモデルまたは非コンパートメントモデルのいずれかを使用して血清濃度プロフィールを分析し、薬物動態学パラメーターを評価した。
【0160】
Replagal(商標)の最初の40分間の注入を受けた男性ファブリー病患者から血液試料を採取した。血液試料を、血漿または血清に処理し、α-Gal A酵素活性について分析した。非コンパートメントモデルを使用して血清濃度プロフィールを分析し、薬物動態学パラメーターを評価した。
【0161】
投与から44時間後に第I相試験の男性ファブリー病患者から肝生検を採取した。以前に記載のように(Schiffman and Bradyら(2000)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:365-370)、組織試料を処理し、α-Gal Aの投与濃度について分析した。各患者の肝臓に回収された投与量を、各肝生検中のα-Gal A濃度および患者の評価した肝重量を使用して計算した。
【0162】
Replagal(商標)は、ラット、ウサギ、およびサルにおける単回IV投与後、二相性血清評価プロフィールを有していた(図9はカニクイザルのプロフィールを示す)。Cmaxは、これら3つの動物種の用量に比例していた(図10)。Replagal(商標)はまた、40分間の注入後にファブリー病患者の二相性血清評価プロフィールを有していた(図11)。Cmaxはまた、ヒトで用量が比例していた(図12)。全ての種において、投与から24時間後までにReplagal(商標)が消失していた。0.017×106U/kg〜3.2×106U/kgの投与範囲にわたる動物およびヒトへの投与につれてAUC(曲線下面積)は直線的に増加した(図13)。U/kgの用量範囲は、ヒトにおいて0.007mg/kg〜0.2mg/kgの範囲に相当し、動物において0.0625mg/kg〜1mg/kgに相当する。
【0163】
哺乳動物の生理学的パラメーターは、体重に基づく対比スケール式Y=a(BW)bに従う(表4)。スケール式中の指数は、ほぼ1.0(例えば、血液体積)であり得るが、薬物またはタンパク質クリアランスによって0.6〜0.8の間で変化する。
【0164】
Replagal(商標)(mL/分)の対比スケール式は、マウス、ラット、ウサギ、大および小カニクイザル、およびファブリー病患者における薬物動態研究に基づいた。血清クリアランスは、指数0.92の対比スケール式に従っていた(表5)。他の製剤またはタンパク質と比較したReplagal(商標)血清クリアランスについての指数の増加は、Replagal(商標)のM6P受容体クリアランスを支持する。
【0165】
患者の肝臓で見出された投与されたReplagal(商標)の比率は、mg/kgベースでの用量の増加に伴って減少した(表6)。2つの最も低い用量(0.007mg/kgおよび0.014mg/kg)では、投与から44時間後に肝臓に回収されたReplagal(商標)の比率は、約25%〜約30%であった。対照的に、0.11mg/kgでは、Replagal(商標)は肝臓中に14%しか見出されなかった。最大製剤濃度(Cmax)がM6P受容体のKd(2×10-9M)を超えた場合、Replagal(商標)の肝臓取り込みが飽和した。これらの結果に基づいて、肝臓に取り込まれた市販のReplagal(商標)の評価投与量(0.2mg/kg)は、75mgの患者について約2mgである(図14)。残りの用量(13mg)は、肝臓以外の組織への取り込みに利用可能である。
【0166】
したがって、動物モデルにおける単回用量薬物動態学により、ファブリー病患者のReplagal(商標)薬物動態学が良好に予測された。血液からのReplagal(商標)のクリアランス機構は、主に体内全体の組織で見出されるM6P受容体を介する。Replagal(商標)の血清または血漿クリアランスについての対比スケール式の指数(0.92)は、他の製剤またはタンパク質で認められた指数よりも高い。指数の増加は、Replagal(商標)のM6P受容体クリアランスを支持する。CmaxがM6P受容体のKd(0.056mg/kgおよびそれ以上の用量)を超えた場合、ヒト肝臓受容体の飽和が認められた。
【0167】
実施例4:男性および女性ファブリー病患者におけるReplagal(商標)の薬物動態学
本評価の主な目的は、男性および女性のファブリー病患者におけるReplagal(商標)の薬物動態学特性を比較することであった。第2の目的は、Replagal(商標)およびFabrazyme(商標)で治療された患者間の薬物動態学特性を比較することであった。
【0168】
TKT006(NIH)、TKT007(UK)、およびTKT014(GERMANY)由来のReplagalを最初40分間注入した男性および女性ファブリー病患者から血液試料を採取した。血液試料を血清(TKT007試料およびTKT014試料)または血漿(TKT006試料)に処理し、インビトロ蛍光アッセイを使用してTKTでのα-ガラクトシダーゼA酵素活性について分析した。非コンパートメンタルモデルを使用して血清/血漿濃度プロフィールを分析し、薬物動態学パラメーターを評価した。
【0169】
予備投与酵素活性は、平均して、男性で1.2U/mlであり、女性で6.5U/mlであり、女性患者のキャリア状態を反映した(表7)。
【0170】
Replagal(商標)は、男性および女性のファブリー病患者の両方において単回静脈内注入後に二相性血清消失プロフィールを有し、ほとんどの患者で投与から24時間後に消失した(図15)。予測されるように、Cmaxは、40分間の注入期間の終了と一致していた。
【0171】
平均薬物動態学パラメーターは、男性および女性患者の間で類似していた(表8)。投与について標準化したAUC(曲線下面積)は、女性で僅かに高かったが(比0.51)、男性の比と統計的に異なっていた(0.43)。Replagal(商標)の絶対血清クリアランスは女性の方が低いが(177mL/分と比較して140mL/分)、体重について標準化した場合、血清クリアランスは統計的に異ならなかった(2.52mg/分/kgに対して2.10mL/分/kg)。最終消失半減期の統計的に有意な相違(男性の112分に対して女性の89分)は、女性由来のReplagal(商標)の消失の相違に起因しなかった。代わりに、女性におけるより高いベースライン酵素活性が8時間以降の投与Replagal(商標)(Tlast)の検出を困難にしていた。
【0172】
ファブリー病患者の循環由来のReplagal(商標)のクリアランスは、各患者のGFRまたはそのクリアランス機構が一致するクレアチニンクリアランスよりも急速であった(表9)。Replagal(商標)は、主に、マンノース-6-リン酸(M6P)受容体を介した組織への取り込みによって循環からクリアランスされ、タンパク質分解および腎臓での消失の起因は最小である。
【0173】
腎機能の変化が循環血中からのReplagal(商標)のクリアランスに影響を与えないことを確認するための分析を行った(表10)。第1の用量薬物動態学分析を受けたファブリー病患者のほとんどは、第1のReplagal(商標)用量を投与された場合、正常範囲であるか(80mL/分クレアチンクリアランス超)、腎機能障害は「軽度」であった(50〜80mL/分クレアチンクリアランス)。5人の患者のみが中程度および重篤なカテゴリーに含まれたが、これらの患者のReplagal(ml/分/kg)の血清クリアランスは2つのより高い腎機能カテゴリーによって確立された範囲内であった。これらのデータにより、Replagal(商標)は腎臓によって排泄されないことが示唆される。本分析において、これらは男女間での相違はなかった。
【0174】
ファブリー病患者からのFabrazyme(商標)の血清クリアランスは、Replagal(商標)で見出されたものと比較して有意に迅速であった(表11)。男性患者とほぼ同一の用量(ReplagalおよびFabrazymeについてそれぞれ0.2および0.3mg/kg)で、Fabrazyme(商標)の血清クリアランスは、Replagal(商標)の2.5mL/分/kgと比較して4mL/分/kgであった。ほぼ等価な用量での血清クリアランスのこの相違は、Replagal(商標)のヒトグリコシル化パターンと比較したFabrazyme(商標)のグリコシル化パターン(CHO細胞で産生)の相違による。より高い用量のFabrazyme(商標)(1および3mg/kg)で、クリアランス機構がFabrazyme(商標)について飽和するにつれて、血清クリアランスは約2.7および1mL/分/kgに有意に減少した。
【0175】
したがって、薬物動態学パラメーターは、Replagal(商標)を投与した男性および女性患者で類似していた。Replagal(商標)の血清クリアランスは腎機能を有意に超え(mL/分)、体内の組織および細胞へのReplagal(商標)のM6P媒介取り込みと一致していた。予測するように、予備分析は、Replagalは腎臓によって排泄されないことを示した。クリアランス飽和レベル未満の用量では、Fabrazyme(商標)血清クリアランスはReplagal(商標)と比較して有意に迅速であり、2つの製剤間のグリコシル化パターンの相違を反映する。
【0176】
(表1)
【0177】
(表2)
【0178】
(表3)
【0179】
(表4) 生理学的パラメーターおよび解剖学パラメーターの対比スケーリング(体重(BW)の関数)
式:Y=a(BW)b
Chappell and Mordenti(1991)Extrapolation of Toxicological and Pharmacological Data from Animals to Humans.In B.Testa(ed.)Advances in Drug Research,Vol.20,pp.1-116
【0180】
(表5) 薬物動態学パラメーターの対比スケーリング-指数
*Mordentiら(1991)Interspecies Scaling of Clearance and Volume Distribution Data for Five Therapeutic Proteins.Pharmaceutical Research 8:1351-1359
【0181】
(表6) ヒト肝臓中のReplagalの投与用量の比率
M6P受容体のKdは2×10-9Mである(Kornfeld Ann Rev Biochem 61:307-330,1992)。
α-ガラクトシダーゼAの半減期:
ファブリー線維芽細胞で4日間(Mayesら、Am J Hum Genet 34:602-610,1982)
マウス肝臓で2日間(Ioannouら、Am J Hum Genet 68:14-25,2001)
【0182】
(表7) α-ガラクトシダーゼA酵素活性のベースライン値
*ベースライン値が約15U/mLの男性患者1人を除く
1単位(U)を、37℃で1時間あたりの1ナノモルの4-メチルウンベリフェリル-α-D-ガラクトピラノシド加水分解と定義する。
【0183】
(表8) 第1のReplagal投与後の男性および女性のファブリー病患者間の薬物動態学の比較
( )標準偏差
NA=適用せず
NS=有意でない
Tlast=最後の検出可能なReplagal酵素活性の時間
標準化AUCは(分*U/mL)/(U/kg)の単位を有する。
【0184】
(表9) 男性および女性患者からのReplagalの血清クリアランス
( )標準偏差
N=Replagalの第1の投与後の薬物動態学パラメーターについて評価した患者数
*GFR=Replagalの第1の投与の2〜3週間前に測定した糸球体濾過速度
†女性で測定したクレアチンクリアランス
【0185】
(表10) 腎機能とReplagal血清クリアランスの比較
*クレアチニンクリアランスの評価に基づくFDAカテゴリー
【0186】
(表11) ReplagalまたはFabrazymeを投与したファブリー病患者の血清クリアランス
*Engら(2001)A Phase I/II Clinical Trial of Enzyme Replacement in Fabry Disease.Am J Hum Genet 68:711-722
†飽和血清クリアランス
【0187】
等価物
当業者は、日常的な実験のみを使用して、本明細書に記載の本発明の特定の態様の多数の等価物を認識するか確認することができる。このような等価物は、以下の特許請求の範囲に含まれることが意図される。
【0188】
本明細書に開示の全ての引例は、その全体が参照として本明細書に組み入れられる。特許請求の範囲および配列表を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトαガラクトシダーゼA(α-Gal A)調製物を含む薬学的組成物であって、ヒト循環血中からの該α-Gal A調製物の血清クリアランスが、用量曲線に対するAUCの直線部上の4mL/分/kg未満である、薬学的組成物。
【請求項2】
ヒト循環血中からのα-Gal A調製物の血清クリアランスが、用量曲線に対するAUCの直線部上の3.5mL/分/kgまたはそれ未満である、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項3】
ヒト循環血中からのα-Gal A調製物の血清クリアランスが、用量曲線に対するAUCの直線部上の3.0mL/分/kgまたはそれ未満である、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項4】
ヒト循環血中からのα-Gal A調製物の血清クリアランスが、用量曲線に対するAUCの直線部上の2.5mL/分/kgまたはそれ未満である、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項5】
(a)ヒトα-Gal A糖タンパク質調製物と、(b)該調製物を必要とする患者に投与するための説明書とを含み、被験体の循環血中からの該α-Gal A調製物の血清クリアランスが、用量曲線に対するAUCの直線部上の4mL/分/kg未満である、α-Gal A欠損症の治療用キット。
【請求項6】
被験体の循環血中からのα-Gal A調製物の血清クリアランスが、用量曲線に対するAUCの直線部上の3.5mL/分/kgまたはそれ未満である、請求項5記載のキット。
【請求項7】
被験体の循環血中からのα-Gal A調製物の血清クリアランスが、用量曲線に対するAUCの直線部上の3.0mL/分/kgまたはそれ未満である、請求項5記載のキット。
【請求項8】
被験体の循環血中からのα-Gal A調製物の血清クリアランスが、用量曲線に対するAUCの直線部上の2.5mL/分/kgまたはそれ未満である、請求項5記載のキット。
【請求項9】
0.05mg/kg体重〜2.0mg/kg体重の間のα-Gal A調製物の単位用量を投与するための説明書をさらに含む、請求項5、6、7、または8記載のキット。
【請求項10】
α-Gal A調製物の単位用量が、0.05mg/kg体重〜1.0mg/kg体重の間である、請求項9記載のキット。
【請求項11】
α-Gal A調製物の単位用量が、0.05mg/kg体重〜0.5mg/kg体重の間である、請求項9記載のキット。
【請求項12】
α-Gal A調製物の単位用量が、0.05mg/kg体重〜0.3mg/kg体重未満の間である、請求項9記載のキット。
【請求項13】
単位用量を8週間毎に1回だけ投与するための説明書をさらに含む、請求項9記載のキット。
【請求項14】
単位用量を6週間毎に1回だけ投与するための説明書をさらに含む、請求項9記載のキット。
【請求項15】
単位用量を4週間毎に1回だけ投与するための説明書をさらに含む、請求項9記載のキット。
【請求項16】
単位用量を21日毎に1回だけ投与するための説明書をさらに含む、請求項9記載のキット。
【請求項17】
単位用量を14日毎に1回だけ投与するための説明書をさらに含む、請求項9記載のキット。
【請求項18】
単位用量を10日毎に1回だけ投与するための説明書をさらに含む、請求項9記載のキット。
【請求項19】
ヒトα-Gal A糖タンパク質調製物と、該調製物を必要とする被験体に1.0mg/kg被験体体重未満の単位用量で投与するための説明書とを含む、α-Gal A欠損症の治療用キット。
【請求項20】
単位用量が0.5mg/kg被験体体重未満である、請求項19記載のキット。
【請求項21】
単位用量が0.3mg/kg被験体体重未満である、請求項19記載のキット。
【請求項22】
単位用量を8週間毎に1回だけ投与するための説明書をさらに含む、請求項19、20、または21記載のキット。
【請求項23】
単位用量を6週間毎に1回だけ投与するための説明書を含む、請求項22記載のキット。
【請求項24】
単位用量を4週間毎に1回だけ投与するための説明書を含む、請求項22記載のキット。
【請求項25】
単位用量を21日毎に1回だけ投与するための説明書を含む、請求項22記載のキット。
【請求項26】
単位用量を14日毎に1回だけ投与するための説明書を含む、請求項22記載のキット。
【請求項27】
単位用量を10日毎に1回だけ投与するための説明書を含む、請求項22記載のキット。
【請求項28】
ヒトα-Gal A糖タンパク質調製物と、調製物を必要とする被験体に8週間毎に1回だけ投与するための説明書とを含む、α-Gal A欠損症の治療用キット。
【請求項29】
説明書が、調製物を必要とする被験体に6週間毎に1回だけ投与するための説明書を含む、請求項28記載のキット。
【請求項30】
説明書が、調製物を必要とする被験体に4週間毎に1回だけ投与するための説明書を含む、請求項28記載のキット。
【請求項31】
説明書が、調製物を必要とする被験体に21日毎に1回だけ投与するための説明書を含む、請求項28記載のキット。
【請求項32】
説明書が、調製物を必要とする被験体に14日毎に1回だけ投与するための説明書を含む、請求項28記載のキット。
【請求項33】
説明書が、調製物を必要とする被験体に10日毎に1回だけ投与するための説明書を含む、請求項28記載のキット。
【請求項34】
0.05mg/kg体重〜2.0mg/kg体重の間のα-Gal A調製物の単位用量を投与するための説明書をさらに含む、請求項28〜33のいずれか一項記載のキット。
【請求項35】
単位用量が0.05mg/kg体重〜1.0mg/kg体重の間である、請求項34記載のキット。
【請求項36】
単位用量が0.05mg/kg体重〜0.5mg/kg体重の間である、請求項34記載のキット。
【請求項37】
単位用量が0.05mg/kg体重〜3mg/kg体重未満の間である、請求項34記載のキット。
【請求項38】
α-Gal A欠損症を有する被験体の治療のためのα-Gal Aの単位用量範囲を選択する方法であって、該被験体の体重を得る段階と、0.05mg/kg被験体体重〜1mg/kg被験体体重の間のα-Gal Aの範囲を決定し、それにより単位用量範囲を選択する段階とを含む、方法。
【請求項39】
決定された範囲が、0.05mgのα-Gal A/kg被験体体重〜0.5mgのα-Gal A/kg被験体体重の間である、請求項38記載の方法。
【請求項40】
決定された範囲が、0.05mgのα-Gal A/kg被験体体重〜0.3mg未満のα-Gal A/kg被験体体重未満の間である、請求項38記載の方法。
【請求項41】
ヒトα-gal A糖タンパク質調製物を必要とする被験体に投与する段階を含む被験体の治療方法であって、該被験体の循環血中からの該α-Gal A調製物の血清クリアランスが、用量曲線に対するAUCの直線部上の4mL/分/kg未満である方法。
【請求項42】
被験体循環血中からのα-Gal A調製物の血清クリアランスが、用量曲線に対するAUCの直線部上の3.5mL/分/kgまたはそれ未満である、請求項41記載の方法。
【請求項43】
ヒト循環血中からのα-Gal A調製物の血清クリアランスが、用量曲線に対するAUCの直線部上の3.0mL/分/kgまたはそれ未満である、請求項41記載の方法。
【請求項44】
ヒト循環血中からのα-Gal A調製物の血清クリアランスが、用量曲線に対するAUCの直線部上の2.5mL/分/kgまたはそれ未満である、請求項1記載の方法。
【請求項45】
ヒトα-gal A糖タンパク質調製物を必要とする被験体に1.0mg/kg被験体体重未満の単位用量で投与する段階を含む、被験体の治療方法。
【請求項46】
単位用量が0.5mg/kg被験体体重未満である、請求項45記載の方法。
【請求項47】
単位用量が0.3mg/kg被験体体重未満である、請求項45記載の方法。
【請求項48】
単位用量が0.25mg/kg被験体体重未満である、請求項45記載の方法。
【請求項49】
単位用量が0.2mg/kg被験体体重未満である、請求項45記載の方法。
【請求項50】
単位用量を8週間毎に1回だけ投与する、請求項45〜49のいずれか一項記載の方法。
【請求項51】
単位用量を6週間毎に1回だけ投与する、請求項50記載の方法。
【請求項52】
単位用量を4週間毎に1回だけ投与する、請求項50記載の方法。
【請求項53】
単位用量を21日毎に1回だけ投与する、請求項50記載の方法。
【請求項54】
単位用量を14日毎に1回だけ投与する、請求項50記載の方法。
【請求項55】
調製物を少なくとも1年間投与する、請求項50記載の方法。
【請求項56】
調製物を少なくとも1年間投与する、請求項51記載の方法。
【請求項57】
調製物を少なくとも1年間投与する、請求項52記載の方法。
【請求項58】
調製物を少なくとも1年間投与する、請求項53記載の方法。
【請求項59】
ヒトα-gal A糖タンパク質調製物を必要とする被験体に少なくとも2回であるが14日毎に1回だけ投与する段階を含む、被験体の治療方法。
【請求項60】
調製物を4週間毎に1回だけ投与する、請求項59記載の方法。
【請求項61】
調製物を6週間毎に1回だけ投与する、請求項59記載の方法。
【請求項62】
調製物を8週間毎に1回だけ投与する、請求項59記載の方法。
【請求項63】
単位投与量が0.5mg/kg体重未満である、請求項59、60、61、または62記載の方法。
【請求項64】
単位投与量が0.3mg/kg体重未満である、請求項63記載の方法。
【請求項65】
単位用量によりα-Gal Aの肝臓取り込みが飽和する、請求項45、46、47、または48記載の方法。
【請求項66】
第1の試験α-Gal A調製物を得るもしくは提供する段階;
該第1の試験α-Gal A調製物が以下の特徴(1)〜(7)の1つまたは複数を有するかどうかを決定する段階:
(1)少なくとも約75%の中性、モノ、およびジシアル酸化グリカンの組み合わせを有する、
(2)約35%未満のトリおよびテトラシアル酸化グリカンの組み合わせを有する、
(3)50%を超えるグリカン複合体を有する、
(4)約45%未満のリン酸化グリカンを有する、
(5)約45%を超えるシアル酸化グリカンを有する、
(6)モル/モルに基づいたシアル酸とマンノース-6-リン酸との比が1.5:1を超える、および
(7)シアル酸化グリカンとリン酸化グリカンの比が1を超える;ならびに
それによりα-Gal A調製物を分析する段階を含む、α-Gal A調製物の分析方法。
【請求項67】
1つまたは複数の特徴(1)〜(7)を有する場合に試験α-Gal A調製物を選択する段階をさらに含む、請求項66記載の方法。
【請求項68】
決定段階が、試験α-Gal A調製物が少なくとも約75%の中性、モノ、およびジシアル酸化グリカンの組み合わせを有するかどうかを決定することを含む、請求項66記載の方法。
【請求項69】
決定段階が、試験α-Gal A調製物が約35%未満のトリおよびテトラシアル酸化グリカンの組み合わせを有するかどうかを決定することを含む、請求項66記載の方法。
【請求項70】
決定段階が、試験α-Gal A調製物が50%を超えるグリカン複合体を有するかどうかを決定することを含む、請求項66記載の方法。
【請求項71】
決定段階が、試験α-Gal A調製物が約45%未満のリン酸化グリカンを有するかどうかを決定することを含む、請求項66記載の方法。
【請求項72】
決定段階が、試験α-Gal A調製物が約45%を超えるシアル酸化グリカンを有するかどうかを決定することを含む、請求項66記載の方法。
【請求項73】
決定段階が、試験α-Gal A調製物のモル/モルに基づいたシアル酸とマンノース-6-リン酸との比が1.5:1を超えるかどうかを決定することを含む、請求項66記載の方法。
【請求項74】
決定段階が、試験α-Gal A調製物のシアル酸化グリカンとリン酸化グリカンの比率が1を超えるかどうかを決定することを含む、請求項66記載の方法。
【請求項75】
決定の結果を記録に記入する段階をさらに含む、請求項66記載の方法。
【請求項76】
試験α-Gal A調製物が2つまたはそれ以上の特徴(1)〜(7)を有するかどうかを決定する段階を含む、請求項66記載の方法。
【請求項77】
イオン交換クロマトグラフィ、高速陰イオン交換(HPAE)クロマトグラフィ、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)、質量分析からなる群より選択される1つまたは複数の方法によって決定を行う、請求項66記載の方法。
【請求項78】
α-Gal A試料を哺乳動物細胞から採取する、請求項66記載の方法。
【請求項79】
哺乳動物細胞がヒト細胞である、請求項78記載の方法。
【請求項80】
哺乳動物細胞が非ヒト細胞である、請求項78記載の方法。
【請求項81】
哺乳動物細胞がCHO細胞である、請求項78記載の方法。
【請求項82】
試験調製物の炭水化物特性が、決定段階を行う前に修飾されている、請求項66記載の方法。
【請求項83】
試験調製物の炭水化物特性が酵素での処理によって修飾されている、請求項82記載の方法。
【請求項84】
酵素が、グリコシダーゼ、グリコシルトランスフェラーゼ、ホスホリルトランスフェラーゼ、キナーゼ、またはシアリルトランスフェラーゼである、請求項83記載の方法。
【請求項85】
試験調製物の炭水化物特性が、ホスファターゼインヒビターでの処理によって修飾されている、請求項82記載の方法。
【請求項86】
試験調製物の炭水化物特性が糖操作によって修飾されている、請求項82記載の方法。
【請求項87】
試験調製物の炭水化物特性がグリコシル化インヒビターでの処理によって修飾されている、請求項82記載の方法。
【請求項88】
試験ヒトα-Gal A調製物を基準α-Gal A調製物と比較する段階をさらに含む、請求項66記載の方法。
【請求項89】
基準α-Gal A調製物がヒト細胞中で作製されたヒトα-Gal A調製物である、請求項88記載の方法。
【請求項90】
第2の試験α-Gal A調製物を得るもしくは提供する段階と、
該第2の調製物が1つまたは複数の特徴(1)〜(7)を有するかどうかを決定する段階と、
各決定の結果を記録に記入する段階とを含む、
該第1および第2の調製物が薬学的α-Gal A調製物の第1および第2のバッチである、請求項66記載の方法。
【請求項91】
試験α-Gal A調製物の薬物動態学的パラメーターまたは生物活性を予測する段階であって、該試験α-Gal A調製物が1つまたは複数の特徴(1)〜(7)を有する場合に該薬物動態学的パラメーターまたは生物活性が望ましいと予測される段階をさらに含む、請求項66記載の方法。
【請求項92】
試験α-Gal A調製物の薬物動態学的パラメーターまたは生物活性を評価する段階をさらに含む、請求項66記載の方法。
【請求項93】
薬物動態学的パラメーターまたは生物活性が、酵素活性、血清クリアランス、および組織取り込みからなる群より選択される、請求項91または92記載の方法。
【請求項94】
薬物動態学的パラメーターまたは生物活性が、肝臓取り込み、腎臓取り込み、および心血管取り込みからなる群より選択される、請求項91または92記載の方法。
【請求項95】
薬物動態学的パラメーターまたは生物活性が、肝臓内皮細胞、肝臓洞様毛細血管細胞、毛細血管/血管内皮細胞、腎糸球体上皮細胞(有足細胞)、糸球体間膜細胞、腎内皮細胞、肺細胞、腎細胞、神経細胞、または心筋細胞の少なくとも1つへの組織ターゲティングである、請求項91または92記載の方法。
【請求項96】
特定の患者またはファブリー病の特定の変異型のためにα-Gal A治療用調製物をデザインするための予測を使用する段階をさらに含む、請求項91記載の方法。
【請求項97】
ファブリー病の特定の変異型が腎変異ファブリー病または心変異ファブリー病である、請求項96記載の方法。
【請求項98】
試験α-Gal A調製物を得るもしくは提供する段階と、以下の(1)〜(3)の1つまたは複数を決定し、それによりα-GaA調製物を分析する段階とを含む、α-Gal A調製物の分析方法:
(1)ヒト循環血中からの血清クリアランスが用量曲線に対するAUCの直線部上の4mL/分/kg未満であるかどうか、(2)該調製物が被験体の毛細血管/血管内皮細胞、腎糸球体上皮細胞(有足細胞)、糸球体間膜細胞、腎内皮細胞、肺細胞、腎細胞、神経細胞、または心臓ミオサイテシンに優先的にターゲティングするかどうか、および(3)肝細胞によって取り込まれないこと。
【請求項99】
決定の結果を記録に記入する段階をさらに含む、請求項98記載の方法。
【請求項100】
a.細胞から採取したヒトα-Gal A調製物を提供する段階と、
b.該α-Gal A調製物の炭水化物特性を、1つまたは複数の以下のパラメーターに適合するように修飾し、それにより改良されたα-Gal A調製物が提供される段階とを含む、改良されたヒトα-Gal A調製物の生産方法:
(1)少なくとも約75%の中性、モノ、およびジシアル酸化グリカンの組み合わせを有する、
(2)約35%未満のトリおよびテトラシアル酸化グリカンの組み合わせを有する、
(3)50%を超えるグリカン複合体を有する、
(4)約45%未満のリン酸化グリカンを有する、
(5)約45%を超えるシアル酸化グリカンを有する、
(6)モル/モルに基づいたシアル酸とマンノース-6-リン酸との比が1.5:1を超える、および
(7)シアル酸化グリカンとリン酸化グリカンの比が1を超える。
【請求項101】
α-Gal A調製物の炭水化物特性を糖操作によって修飾する、請求項100記載の方法。
【請求項102】
α-Gal A調製物の炭水化物特性を、天然に存在しないグリコシル化部位を有するヒトα-Gal Aを産生するための細胞の遺伝子操作、およびグリコシダーゼ、グリコシルトランスフェラーゼ、ホスホリルトランスフェラーゼ、ホスファターゼ、もしくはシアリルトランスフェラーゼを産生するための細胞の遺伝子操作の1つまたは両方によって修飾する、請求項101記載の方法。
【請求項103】
α-Gal A調製物の炭水化物特性を、α-Gal A精製プロセス時の糖形態の選択的単離、炭水化物修飾酵素での細胞もしくは調製物の処理、およびグリコシル化インヒビターでの細胞もしくは調製物の処理の内の1つまたは複数によって修飾する、請求項100記載の方法。
【請求項104】
修飾後に該α-Gal A調製物の炭水化物特性を分析する段階をさらに含む、請求項100記載の方法。
【請求項105】
異なる炭水化物特性を有する2つまたはそれ以上のα-Gal A調製物のパネルを提供するもしくは得る段階と、
以下のパラメーター:
(1)少なくとも約75%の中性、モノ、およびジシアル酸化グリカンの組み合わせを有する、
(2)約35%未満のトリおよびテトラシアル酸化グリカンの組み合わせを有する、
(3)50%を超えるグリカン複合体を有する、
(4)約45%未満のリン酸化グリカンを有する、
(5)約45%を超えるシアル酸化グリカンを有する、
(6)モル/モルに基づいたシアル酸とマンノース-6-リン酸との比が1.5:1を超える、および
(7)シアル酸化グリカンとリン酸化グリカンの比が1を超える、の1つまたは複数に適合する炭水化物特性を有するα-Gal A調製物を選択する段階と、
1または複数用量の治療的有効量の選択された該調製物を被験体に投与する段階とを含む、被験体の治療方法。
【請求項106】
被験体中のα-Gal A調製物の組織分布または血清クリアランスを評価する段階をさらに含む、請求項105記載の方法。
【請求項107】
評価段階を長期間繰り返して行う、請求項106記載の方法。
【請求項108】
評価段階後にα-Gal A調製物の用量を調整する段階をさらに含む、請求項106記載の方法。
【請求項109】
α-Gal A調製物の投与に応答した被験体の状態をモニターする段階をさらに含む、請求項105記載の方法。
【請求項110】
バッチごとに炭水化物特性が異なるα-Gal Aの複数のバッチを提供する段階と、
該炭水化物特性における1つまたは複数の以下のパラメーター:
(1)少なくとも約75%の中性、モノ、およびジシアル酸化グリカンの組み合わせを有する、
(2)約35%未満のトリおよびテトラシアル酸化グリカンの組み合わせを有する、
(3)50%を超えるグリカン複合体を有する、
(4)約45%未満のリン酸化グリカンを有する、
(5)約45%を超えるシアル酸化グリカンを有する、
(6)モル/モルに基づいたシアル酸とマンノース-6-リン酸との比が1.5:1を超える、および
(7)シアル酸化グリカンとリン酸化グリカンの比が1を超える、
から予め選択された変動範囲未満のバッチを選択する段階とを含む、α-Gal A調製物のバッチを選択する方法。
【請求項111】
予め選択された変動が5%未満である、請求項110記載の方法。
【請求項112】
予め選択された変動が2.5%未満である、請求項110記載の方法。
【請求項1】
ヒトαガラクトシダーゼA(α-Gal A)調製物を含む薬学的組成物であって、ヒト循環血中からの該α-Gal A調製物の血清クリアランスが、用量曲線に対するAUCの直線部上の4mL/分/kg未満である、薬学的組成物。
【請求項2】
ヒト循環血中からのα-Gal A調製物の血清クリアランスが、用量曲線に対するAUCの直線部上の3.5mL/分/kgまたはそれ未満である、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項3】
ヒト循環血中からのα-Gal A調製物の血清クリアランスが、用量曲線に対するAUCの直線部上の3.0mL/分/kgまたはそれ未満である、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項4】
ヒト循環血中からのα-Gal A調製物の血清クリアランスが、用量曲線に対するAUCの直線部上の2.5mL/分/kgまたはそれ未満である、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項5】
(a)ヒトα-Gal A糖タンパク質調製物と、(b)該調製物を必要とする患者に投与するための説明書とを含み、被験体の循環血中からの該α-Gal A調製物の血清クリアランスが、用量曲線に対するAUCの直線部上の4mL/分/kg未満である、α-Gal A欠損症の治療用キット。
【請求項6】
被験体の循環血中からのα-Gal A調製物の血清クリアランスが、用量曲線に対するAUCの直線部上の3.5mL/分/kgまたはそれ未満である、請求項5記載のキット。
【請求項7】
被験体の循環血中からのα-Gal A調製物の血清クリアランスが、用量曲線に対するAUCの直線部上の3.0mL/分/kgまたはそれ未満である、請求項5記載のキット。
【請求項8】
被験体の循環血中からのα-Gal A調製物の血清クリアランスが、用量曲線に対するAUCの直線部上の2.5mL/分/kgまたはそれ未満である、請求項5記載のキット。
【請求項9】
0.05mg/kg体重〜2.0mg/kg体重の間のα-Gal A調製物の単位用量を投与するための説明書をさらに含む、請求項5、6、7、または8記載のキット。
【請求項10】
α-Gal A調製物の単位用量が、0.05mg/kg体重〜1.0mg/kg体重の間である、請求項9記載のキット。
【請求項11】
α-Gal A調製物の単位用量が、0.05mg/kg体重〜0.5mg/kg体重の間である、請求項9記載のキット。
【請求項12】
α-Gal A調製物の単位用量が、0.05mg/kg体重〜0.3mg/kg体重未満の間である、請求項9記載のキット。
【請求項13】
単位用量を8週間毎に1回だけ投与するための説明書をさらに含む、請求項9記載のキット。
【請求項14】
単位用量を6週間毎に1回だけ投与するための説明書をさらに含む、請求項9記載のキット。
【請求項15】
単位用量を4週間毎に1回だけ投与するための説明書をさらに含む、請求項9記載のキット。
【請求項16】
単位用量を21日毎に1回だけ投与するための説明書をさらに含む、請求項9記載のキット。
【請求項17】
単位用量を14日毎に1回だけ投与するための説明書をさらに含む、請求項9記載のキット。
【請求項18】
単位用量を10日毎に1回だけ投与するための説明書をさらに含む、請求項9記載のキット。
【請求項19】
ヒトα-Gal A糖タンパク質調製物と、該調製物を必要とする被験体に1.0mg/kg被験体体重未満の単位用量で投与するための説明書とを含む、α-Gal A欠損症の治療用キット。
【請求項20】
単位用量が0.5mg/kg被験体体重未満である、請求項19記載のキット。
【請求項21】
単位用量が0.3mg/kg被験体体重未満である、請求項19記載のキット。
【請求項22】
単位用量を8週間毎に1回だけ投与するための説明書をさらに含む、請求項19、20、または21記載のキット。
【請求項23】
単位用量を6週間毎に1回だけ投与するための説明書を含む、請求項22記載のキット。
【請求項24】
単位用量を4週間毎に1回だけ投与するための説明書を含む、請求項22記載のキット。
【請求項25】
単位用量を21日毎に1回だけ投与するための説明書を含む、請求項22記載のキット。
【請求項26】
単位用量を14日毎に1回だけ投与するための説明書を含む、請求項22記載のキット。
【請求項27】
単位用量を10日毎に1回だけ投与するための説明書を含む、請求項22記載のキット。
【請求項28】
ヒトα-Gal A糖タンパク質調製物と、調製物を必要とする被験体に8週間毎に1回だけ投与するための説明書とを含む、α-Gal A欠損症の治療用キット。
【請求項29】
説明書が、調製物を必要とする被験体に6週間毎に1回だけ投与するための説明書を含む、請求項28記載のキット。
【請求項30】
説明書が、調製物を必要とする被験体に4週間毎に1回だけ投与するための説明書を含む、請求項28記載のキット。
【請求項31】
説明書が、調製物を必要とする被験体に21日毎に1回だけ投与するための説明書を含む、請求項28記載のキット。
【請求項32】
説明書が、調製物を必要とする被験体に14日毎に1回だけ投与するための説明書を含む、請求項28記載のキット。
【請求項33】
説明書が、調製物を必要とする被験体に10日毎に1回だけ投与するための説明書を含む、請求項28記載のキット。
【請求項34】
0.05mg/kg体重〜2.0mg/kg体重の間のα-Gal A調製物の単位用量を投与するための説明書をさらに含む、請求項28〜33のいずれか一項記載のキット。
【請求項35】
単位用量が0.05mg/kg体重〜1.0mg/kg体重の間である、請求項34記載のキット。
【請求項36】
単位用量が0.05mg/kg体重〜0.5mg/kg体重の間である、請求項34記載のキット。
【請求項37】
単位用量が0.05mg/kg体重〜3mg/kg体重未満の間である、請求項34記載のキット。
【請求項38】
α-Gal A欠損症を有する被験体の治療のためのα-Gal Aの単位用量範囲を選択する方法であって、該被験体の体重を得る段階と、0.05mg/kg被験体体重〜1mg/kg被験体体重の間のα-Gal Aの範囲を決定し、それにより単位用量範囲を選択する段階とを含む、方法。
【請求項39】
決定された範囲が、0.05mgのα-Gal A/kg被験体体重〜0.5mgのα-Gal A/kg被験体体重の間である、請求項38記載の方法。
【請求項40】
決定された範囲が、0.05mgのα-Gal A/kg被験体体重〜0.3mg未満のα-Gal A/kg被験体体重未満の間である、請求項38記載の方法。
【請求項41】
ヒトα-gal A糖タンパク質調製物を必要とする被験体に投与する段階を含む被験体の治療方法であって、該被験体の循環血中からの該α-Gal A調製物の血清クリアランスが、用量曲線に対するAUCの直線部上の4mL/分/kg未満である方法。
【請求項42】
被験体循環血中からのα-Gal A調製物の血清クリアランスが、用量曲線に対するAUCの直線部上の3.5mL/分/kgまたはそれ未満である、請求項41記載の方法。
【請求項43】
ヒト循環血中からのα-Gal A調製物の血清クリアランスが、用量曲線に対するAUCの直線部上の3.0mL/分/kgまたはそれ未満である、請求項41記載の方法。
【請求項44】
ヒト循環血中からのα-Gal A調製物の血清クリアランスが、用量曲線に対するAUCの直線部上の2.5mL/分/kgまたはそれ未満である、請求項1記載の方法。
【請求項45】
ヒトα-gal A糖タンパク質調製物を必要とする被験体に1.0mg/kg被験体体重未満の単位用量で投与する段階を含む、被験体の治療方法。
【請求項46】
単位用量が0.5mg/kg被験体体重未満である、請求項45記載の方法。
【請求項47】
単位用量が0.3mg/kg被験体体重未満である、請求項45記載の方法。
【請求項48】
単位用量が0.25mg/kg被験体体重未満である、請求項45記載の方法。
【請求項49】
単位用量が0.2mg/kg被験体体重未満である、請求項45記載の方法。
【請求項50】
単位用量を8週間毎に1回だけ投与する、請求項45〜49のいずれか一項記載の方法。
【請求項51】
単位用量を6週間毎に1回だけ投与する、請求項50記載の方法。
【請求項52】
単位用量を4週間毎に1回だけ投与する、請求項50記載の方法。
【請求項53】
単位用量を21日毎に1回だけ投与する、請求項50記載の方法。
【請求項54】
単位用量を14日毎に1回だけ投与する、請求項50記載の方法。
【請求項55】
調製物を少なくとも1年間投与する、請求項50記載の方法。
【請求項56】
調製物を少なくとも1年間投与する、請求項51記載の方法。
【請求項57】
調製物を少なくとも1年間投与する、請求項52記載の方法。
【請求項58】
調製物を少なくとも1年間投与する、請求項53記載の方法。
【請求項59】
ヒトα-gal A糖タンパク質調製物を必要とする被験体に少なくとも2回であるが14日毎に1回だけ投与する段階を含む、被験体の治療方法。
【請求項60】
調製物を4週間毎に1回だけ投与する、請求項59記載の方法。
【請求項61】
調製物を6週間毎に1回だけ投与する、請求項59記載の方法。
【請求項62】
調製物を8週間毎に1回だけ投与する、請求項59記載の方法。
【請求項63】
単位投与量が0.5mg/kg体重未満である、請求項59、60、61、または62記載の方法。
【請求項64】
単位投与量が0.3mg/kg体重未満である、請求項63記載の方法。
【請求項65】
単位用量によりα-Gal Aの肝臓取り込みが飽和する、請求項45、46、47、または48記載の方法。
【請求項66】
第1の試験α-Gal A調製物を得るもしくは提供する段階;
該第1の試験α-Gal A調製物が以下の特徴(1)〜(7)の1つまたは複数を有するかどうかを決定する段階:
(1)少なくとも約75%の中性、モノ、およびジシアル酸化グリカンの組み合わせを有する、
(2)約35%未満のトリおよびテトラシアル酸化グリカンの組み合わせを有する、
(3)50%を超えるグリカン複合体を有する、
(4)約45%未満のリン酸化グリカンを有する、
(5)約45%を超えるシアル酸化グリカンを有する、
(6)モル/モルに基づいたシアル酸とマンノース-6-リン酸との比が1.5:1を超える、および
(7)シアル酸化グリカンとリン酸化グリカンの比が1を超える;ならびに
それによりα-Gal A調製物を分析する段階を含む、α-Gal A調製物の分析方法。
【請求項67】
1つまたは複数の特徴(1)〜(7)を有する場合に試験α-Gal A調製物を選択する段階をさらに含む、請求項66記載の方法。
【請求項68】
決定段階が、試験α-Gal A調製物が少なくとも約75%の中性、モノ、およびジシアル酸化グリカンの組み合わせを有するかどうかを決定することを含む、請求項66記載の方法。
【請求項69】
決定段階が、試験α-Gal A調製物が約35%未満のトリおよびテトラシアル酸化グリカンの組み合わせを有するかどうかを決定することを含む、請求項66記載の方法。
【請求項70】
決定段階が、試験α-Gal A調製物が50%を超えるグリカン複合体を有するかどうかを決定することを含む、請求項66記載の方法。
【請求項71】
決定段階が、試験α-Gal A調製物が約45%未満のリン酸化グリカンを有するかどうかを決定することを含む、請求項66記載の方法。
【請求項72】
決定段階が、試験α-Gal A調製物が約45%を超えるシアル酸化グリカンを有するかどうかを決定することを含む、請求項66記載の方法。
【請求項73】
決定段階が、試験α-Gal A調製物のモル/モルに基づいたシアル酸とマンノース-6-リン酸との比が1.5:1を超えるかどうかを決定することを含む、請求項66記載の方法。
【請求項74】
決定段階が、試験α-Gal A調製物のシアル酸化グリカンとリン酸化グリカンの比率が1を超えるかどうかを決定することを含む、請求項66記載の方法。
【請求項75】
決定の結果を記録に記入する段階をさらに含む、請求項66記載の方法。
【請求項76】
試験α-Gal A調製物が2つまたはそれ以上の特徴(1)〜(7)を有するかどうかを決定する段階を含む、請求項66記載の方法。
【請求項77】
イオン交換クロマトグラフィ、高速陰イオン交換(HPAE)クロマトグラフィ、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)、質量分析からなる群より選択される1つまたは複数の方法によって決定を行う、請求項66記載の方法。
【請求項78】
α-Gal A試料を哺乳動物細胞から採取する、請求項66記載の方法。
【請求項79】
哺乳動物細胞がヒト細胞である、請求項78記載の方法。
【請求項80】
哺乳動物細胞が非ヒト細胞である、請求項78記載の方法。
【請求項81】
哺乳動物細胞がCHO細胞である、請求項78記載の方法。
【請求項82】
試験調製物の炭水化物特性が、決定段階を行う前に修飾されている、請求項66記載の方法。
【請求項83】
試験調製物の炭水化物特性が酵素での処理によって修飾されている、請求項82記載の方法。
【請求項84】
酵素が、グリコシダーゼ、グリコシルトランスフェラーゼ、ホスホリルトランスフェラーゼ、キナーゼ、またはシアリルトランスフェラーゼである、請求項83記載の方法。
【請求項85】
試験調製物の炭水化物特性が、ホスファターゼインヒビターでの処理によって修飾されている、請求項82記載の方法。
【請求項86】
試験調製物の炭水化物特性が糖操作によって修飾されている、請求項82記載の方法。
【請求項87】
試験調製物の炭水化物特性がグリコシル化インヒビターでの処理によって修飾されている、請求項82記載の方法。
【請求項88】
試験ヒトα-Gal A調製物を基準α-Gal A調製物と比較する段階をさらに含む、請求項66記載の方法。
【請求項89】
基準α-Gal A調製物がヒト細胞中で作製されたヒトα-Gal A調製物である、請求項88記載の方法。
【請求項90】
第2の試験α-Gal A調製物を得るもしくは提供する段階と、
該第2の調製物が1つまたは複数の特徴(1)〜(7)を有するかどうかを決定する段階と、
各決定の結果を記録に記入する段階とを含む、
該第1および第2の調製物が薬学的α-Gal A調製物の第1および第2のバッチである、請求項66記載の方法。
【請求項91】
試験α-Gal A調製物の薬物動態学的パラメーターまたは生物活性を予測する段階であって、該試験α-Gal A調製物が1つまたは複数の特徴(1)〜(7)を有する場合に該薬物動態学的パラメーターまたは生物活性が望ましいと予測される段階をさらに含む、請求項66記載の方法。
【請求項92】
試験α-Gal A調製物の薬物動態学的パラメーターまたは生物活性を評価する段階をさらに含む、請求項66記載の方法。
【請求項93】
薬物動態学的パラメーターまたは生物活性が、酵素活性、血清クリアランス、および組織取り込みからなる群より選択される、請求項91または92記載の方法。
【請求項94】
薬物動態学的パラメーターまたは生物活性が、肝臓取り込み、腎臓取り込み、および心血管取り込みからなる群より選択される、請求項91または92記載の方法。
【請求項95】
薬物動態学的パラメーターまたは生物活性が、肝臓内皮細胞、肝臓洞様毛細血管細胞、毛細血管/血管内皮細胞、腎糸球体上皮細胞(有足細胞)、糸球体間膜細胞、腎内皮細胞、肺細胞、腎細胞、神経細胞、または心筋細胞の少なくとも1つへの組織ターゲティングである、請求項91または92記載の方法。
【請求項96】
特定の患者またはファブリー病の特定の変異型のためにα-Gal A治療用調製物をデザインするための予測を使用する段階をさらに含む、請求項91記載の方法。
【請求項97】
ファブリー病の特定の変異型が腎変異ファブリー病または心変異ファブリー病である、請求項96記載の方法。
【請求項98】
試験α-Gal A調製物を得るもしくは提供する段階と、以下の(1)〜(3)の1つまたは複数を決定し、それによりα-GaA調製物を分析する段階とを含む、α-Gal A調製物の分析方法:
(1)ヒト循環血中からの血清クリアランスが用量曲線に対するAUCの直線部上の4mL/分/kg未満であるかどうか、(2)該調製物が被験体の毛細血管/血管内皮細胞、腎糸球体上皮細胞(有足細胞)、糸球体間膜細胞、腎内皮細胞、肺細胞、腎細胞、神経細胞、または心臓ミオサイテシンに優先的にターゲティングするかどうか、および(3)肝細胞によって取り込まれないこと。
【請求項99】
決定の結果を記録に記入する段階をさらに含む、請求項98記載の方法。
【請求項100】
a.細胞から採取したヒトα-Gal A調製物を提供する段階と、
b.該α-Gal A調製物の炭水化物特性を、1つまたは複数の以下のパラメーターに適合するように修飾し、それにより改良されたα-Gal A調製物が提供される段階とを含む、改良されたヒトα-Gal A調製物の生産方法:
(1)少なくとも約75%の中性、モノ、およびジシアル酸化グリカンの組み合わせを有する、
(2)約35%未満のトリおよびテトラシアル酸化グリカンの組み合わせを有する、
(3)50%を超えるグリカン複合体を有する、
(4)約45%未満のリン酸化グリカンを有する、
(5)約45%を超えるシアル酸化グリカンを有する、
(6)モル/モルに基づいたシアル酸とマンノース-6-リン酸との比が1.5:1を超える、および
(7)シアル酸化グリカンとリン酸化グリカンの比が1を超える。
【請求項101】
α-Gal A調製物の炭水化物特性を糖操作によって修飾する、請求項100記載の方法。
【請求項102】
α-Gal A調製物の炭水化物特性を、天然に存在しないグリコシル化部位を有するヒトα-Gal Aを産生するための細胞の遺伝子操作、およびグリコシダーゼ、グリコシルトランスフェラーゼ、ホスホリルトランスフェラーゼ、ホスファターゼ、もしくはシアリルトランスフェラーゼを産生するための細胞の遺伝子操作の1つまたは両方によって修飾する、請求項101記載の方法。
【請求項103】
α-Gal A調製物の炭水化物特性を、α-Gal A精製プロセス時の糖形態の選択的単離、炭水化物修飾酵素での細胞もしくは調製物の処理、およびグリコシル化インヒビターでの細胞もしくは調製物の処理の内の1つまたは複数によって修飾する、請求項100記載の方法。
【請求項104】
修飾後に該α-Gal A調製物の炭水化物特性を分析する段階をさらに含む、請求項100記載の方法。
【請求項105】
異なる炭水化物特性を有する2つまたはそれ以上のα-Gal A調製物のパネルを提供するもしくは得る段階と、
以下のパラメーター:
(1)少なくとも約75%の中性、モノ、およびジシアル酸化グリカンの組み合わせを有する、
(2)約35%未満のトリおよびテトラシアル酸化グリカンの組み合わせを有する、
(3)50%を超えるグリカン複合体を有する、
(4)約45%未満のリン酸化グリカンを有する、
(5)約45%を超えるシアル酸化グリカンを有する、
(6)モル/モルに基づいたシアル酸とマンノース-6-リン酸との比が1.5:1を超える、および
(7)シアル酸化グリカンとリン酸化グリカンの比が1を超える、の1つまたは複数に適合する炭水化物特性を有するα-Gal A調製物を選択する段階と、
1または複数用量の治療的有効量の選択された該調製物を被験体に投与する段階とを含む、被験体の治療方法。
【請求項106】
被験体中のα-Gal A調製物の組織分布または血清クリアランスを評価する段階をさらに含む、請求項105記載の方法。
【請求項107】
評価段階を長期間繰り返して行う、請求項106記載の方法。
【請求項108】
評価段階後にα-Gal A調製物の用量を調整する段階をさらに含む、請求項106記載の方法。
【請求項109】
α-Gal A調製物の投与に応答した被験体の状態をモニターする段階をさらに含む、請求項105記載の方法。
【請求項110】
バッチごとに炭水化物特性が異なるα-Gal Aの複数のバッチを提供する段階と、
該炭水化物特性における1つまたは複数の以下のパラメーター:
(1)少なくとも約75%の中性、モノ、およびジシアル酸化グリカンの組み合わせを有する、
(2)約35%未満のトリおよびテトラシアル酸化グリカンの組み合わせを有する、
(3)50%を超えるグリカン複合体を有する、
(4)約45%未満のリン酸化グリカンを有する、
(5)約45%を超えるシアル酸化グリカンを有する、
(6)モル/モルに基づいたシアル酸とマンノース-6-リン酸との比が1.5:1を超える、および
(7)シアル酸化グリカンとリン酸化グリカンの比が1を超える、
から予め選択された変動範囲未満のバッチを選択する段階とを含む、α-Gal A調製物のバッチを選択する方法。
【請求項111】
予め選択された変動が5%未満である、請求項110記載の方法。
【請求項112】
予め選択された変動が2.5%未満である、請求項110記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−140431(P2012−140431A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−10796(P2012−10796)
【出願日】平成24年1月23日(2012.1.23)
【分割の表示】特願2003−587334(P2003−587334)の分割
【原出願日】平成15年4月25日(2003.4.25)
【出願人】(504396117)シャイアー ヒューマン ジェネティック セラピーズ インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年1月23日(2012.1.23)
【分割の表示】特願2003−587334(P2003−587334)の分割
【原出願日】平成15年4月25日(2003.4.25)
【出願人】(504396117)シャイアー ヒューマン ジェネティック セラピーズ インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]