説明

α−ケト酸及びそのエステルの製造方法

本発明はα−ケト酸及びそのエステルの製造方法、特に13−α−ケト酸及びそのエステル(即ち、C1原子(カルボキシル原子)の位置において13C−濃縮されたα−ケト酸及びそのエステル)の製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明はピルビン酸及びそのエステルの製造方法、特に13−ピルビン酸及びそのエステルの製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はα−ケト酸及びそのエステルの製造方法、特に13−α−ケト酸及びそのエステル(即ち、C1原子(カルボキシル原子)の位置で13C−濃縮されたα−ケト酸及びそのエステル)の製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明はピルビン酸及びそのエステルの製造方法、特に13−ピルビン酸及びそのエステルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
α−ケト酸及びその誘導体は、有機合成におけるだけでなく生物活性天然物においても重要な役割を果たす。ピルビン酸及びその誘導体(特にピルビン酸の塩、即ちピルビン酸塩)は、生体内での炭水化物代謝経路にみられる重要な中間体である。この代謝経路の知見を得るため、13C−同位体濃縮されたピルビン酸塩を用いると、生体内で生成した代謝産物を13C−NMRで検出することができる。
【0003】
さらに、過分極13C−ピルビン酸塩は、人体内における代謝過程のインビボMR研究のための磁気共鳴(MR)イメージング(MRI)剤として使用できる。「過分極」という用語は、ピルビン酸塩分子に存在する13C−核の核分極を増強させることを意味する。13C−核の核分極を増強させると、これらの核の励起核スピン状態と基底核スピン状態との母集団差が顕著に増加し、それによってMR信号強度が100倍以上に増幅される。過分極13C−ピルビン酸塩を使用した場合、13Cの天然存在度は無視できるほどに低いのでバックグラウンド信号からの干渉は本質的に存在せず、したがって画像コントラストは有利に高くなる。過分極13C−ピルビン酸塩は、例えば、国際公開第2006/011810号及び同第2006/011809号に詳述されているようなインビボ腫瘍イメージング並びに国際公開第2006/054903号に詳述されているようなMRイメージングで心筋組織の生存度を評価するためのMRイメージング剤として使用できる。過分極13C−ピルビン酸塩は、例えば、13C−ピルビン酸の動的核分極(DNP)を行ってから13C−ピルビン酸塩に転化させるか、或いはDNPプロセスにおいて13C−ピルビン酸塩を直接使用することによって製造される。過分極13C−ピルビン酸塩の製法は、国際公開第2006/011809号に詳述されている。
【0004】
体内では、ピルビン酸塩は様々な化合物に転化(代謝)される。即ち、そのアミノ基転移はアラニンを生じ、酸化的脱炭酸反応によってピルビン酸塩はアセチルCoA及び二酸化炭素(これはさらに重炭酸塩に転化される)に転化され、ピルビン酸塩の還元は乳酸塩を生じ、そのカルボキシル化はオキサロ酢酸塩を生じる。
【0005】
過分極13−ピルビン酸塩(即ち、C1原子(カルボキシル原子)の位置で同位体濃縮されたピルビン酸塩)は、ヒト全血中で長いT緩和(37℃で42秒)を有するため、その過分極13C−乳酸塩、過分極13C−重炭酸塩及び過分極13C−アラニンへの転化をMRによってリアルタイムに監視及び検出できるので、MRイメージング剤として使用するのに最も興味深い。
【0006】
ピルビン酸の製造方法は当技術分野で幾つか知られているが、これらは微生物又は酵素の使用を伴う方法及び化学合成に大別できる。
【0007】
ピルビン酸製造のための酵素に基づく方法の例は、例えば国際公開第95/00656号に記載されているような乳酸の酵素酸化である。酵素酸化時に過酸化水素が生成されるので、酵素酸化は副生物を生じることが多い。さらに、酵素プロセスを工業プロセスにアップスケールすることはしばしば問題が多く或いは不可能である。ピルビン酸の製造のために微生物の使用を伴う方法の例は、例えば欧州特許出願公開第0313850号に記載されている。これらの微生物学的製造方法の欠点は、複雑な反応混合物(例えば、複雑な発酵ブロス)からピルビン酸を分離、単離及び精製するのがしばしば困難でありかつ多くの時間を要することである。
【0008】
ピルビン酸を製造するための化学合成の例は、主として、プロピレングリコール(欧州特許出願公開第0337246号に記載)、ヒドロキシアセトン(米国特許第4247716号に記載)又は乳酸(例えば、特開平08−183753号参照)のような各種出発原料の酸化に基づいている。しかし、同位体濃縮された14C−又は13C−ピルビン酸の製造には、市販の同位体濃縮出発原料又は直接的な化学合成によって得られる同位体濃縮出発原料の使用が大いに好ましい。
【0009】
S.Anker,J.Biol.Chem.176,1948,133−1335には、14C−濃縮炭酸バリウムから1−14C−酢酸カリウムを合成し、1−14C−臭化アセチルに転化させ、次いでシアン化第一銅との反応で1−14C−シアン化アセチルにするによって得られる2−14C−濃縮ピルビン酸の合成法が記載されている。シアン化アセチルを反応させて2−14C−ピルブアミドにし、次いでこれを加水分解して2−14C−ピルビン酸にする。同位体濃縮シアン化第一銅及び臭化アセチルを使用すれば、C1原子の位置で同位体濃縮されたピルビン酸の合成が可能となる。しかし、有毒なシアン化物の使用はこの方法の適用をC1/C2−標識ピルビン酸の小規模合成に限定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2006/011810号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2006/011809号パンフレット
【特許文献3】国際公開第95/00656号パンフレット
【特許文献4】欧州特許出願公開第0313850号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第0337246号明細書
【特許文献6】米国特許第4247716号明細書
【特許文献7】特開平08−183753号公報
【特許文献8】国際公開第2006/038811号パンフレット
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】S. Anker, J. Biol. Chem. 176, 1948, 133-1335
【非特許文献2】J. E. Thirkettle et al., Chemical Communications-Chemcom, 1997, 1025-1026
【非特許文献3】U. Hollstein et al., Journal of Labelled Compounds and Radiopharmaceuticals, 1980, 259-296
【発明の概要】
【0012】
出願人は、今回、意外にも、ピルビン酸及びC1原子の位置で13C−濃縮されたピルビン酸を優れた純度及び高い収率で製造する方法を見出した。本方法は、一般にα−ケト酸及びそのエステルを製造するため、特にC1原子の位置で13C−濃縮されたα−ケト酸及びそのエステルを製造するために有用である。
【0013】
したがって本発明は、下記の式(I)のα−ケト酸又はそのエステルの製造方法であって、
a)下記の式(III)の化合物のカルボキシル化によって下記の式(II)の化合物を得る段階、
b)任意には式(II)の化合物をエステルに転化させる段階、
c)式(II)の化合物又はそのエステルを酸化して式(I)のα−ケト酸又はそのエステルを得る段階、及び
d)段階c)で式(I)のα−ケト酸のエステルが得られる場合には、任意には該エステルをα−ケト酸に転化させる段階
を含んでなる方法を提供する。
【0014】
【化1】

式中、Rは1以上のヒドロキシル基又はカルボキシル基で任意に置換された直鎖又は枝分れC〜C−アルキル基又はフェニル又はベンジルである。
【0015】
【化2】

式中、Rは上記に定義した通りであり、R′は同一又は異なるものであって、H或いは直鎖又は枝分れC〜C−アルキル基を表す。
【0016】
【化3】

式中、R及びR′は上記に定義した通りであり、XはCl、Br又はIである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、ピルビン酸又は13−ピルビン酸を遊離酸の形態又はそのナトリウム塩の形態で製造するための本発明の好ましい実施形態を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
「カルボキシル化」という用語は、基質にカルボン酸基を導入する化学反応を意味する。本発明の方法では、基質は式(III)の化合物である。
【0019】
式(I)のα−ケト酸は、本発明の方法によって遊離酸の形態又は塩の形態で得ることができる。例えば、本発明の方法はピルビン酸を製造するために使用でき、ピルビン酸は遊離酸の形態又は塩(即ち、ピルビン酸塩(例えばピルビン酸ナトリウム))の形態で得ることができる。どちらの形態が得られるかは、段階c)で得られた粗反応生成物の処理手順に依存し、処理手順は本明細書で後述する。以後、特記しない限り、「α−ケト酸」という用語は遊離α−ケト酸及びα−ケト酸の塩の両方を意味する。したがって、例えば「ピルビン酸」という用語はピルビン酸の遊離酸及び塩(即ち、ピルビン酸塩)を意味する。
【0020】
上述の方法では、R′は同一又は異なるものであって、H或いはメチル、エチル、n−プロピル又はイソプロピルを表す。「同一又は異なる」という用語は、式(II)及び式(III)中の2つのR′基の各々が異なる化学的実在物であるか、或いは式(II)及び式(III)中の2つのR′基が同一の化学的実在物であることを意味する。例えば、式(II)中のR′基の両方がメチルであれば、R′は同一のものである。式(II)中のR′基の1つがHであり、式(II)中のR′基の1つがメチルであれば、R′は異なるものである。
【0021】
好ましい実施形態では、R′は同一のものであってHを表す。別の好ましい実施形態では、R′は異なるものであってH及びメチルを表す。R′がメチル、エチル、n−プロピル又はイソプロピルである実施形態は、R′がHである実施形態に比べて段階c)の酸化を容易にすることができる。
【0022】
本発明の方法の好ましい実施形態では、Rはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル又はtert−ブチルである。さらに別の好ましい実施形態では、Rはフェニル又はベンジルである。本発明のさらに別の好ましい実施形態では、Rは1以上のヒドロキシル基又はカルボキシル基で置換されており、好ましくはCH−COOH、CH−CH−COOH、CH−(CH)−COOH、CH−(CH)−COOH又はCHOH−(CHOH)−CHOHである。最も好ましい実施形態では、Rはメチルである。
【0023】
さらに別の好ましい実施形態では、本発明の方法は13−α−ケト酸又はそのエステル(即ち、C1原子(カルボキシル原子)の位置で13C−濃縮されたα−ケト酸又はそのエステル)を製造するために使用される。本発明の方法で製造されるα−ケト酸又はそのエステルの13C−濃縮度は、好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上であり、90%を超える同位体濃縮度が最も好ましい。理想的には、濃縮度は100%である。
【0024】
本発明の方法に従って製造できる好ましいα−ケト酸又はそのエステル(13−濃縮又は非濃縮のいずれであれ)は、フェニルグリオキシル酸又はそのエステル、フェニルピルビン酸又はそのエステル、2−オキソプロパン酸(即ち、ピルビン酸)又はそのエステル、2−オキソブタン酸(即ち、α−ケト酪酸)又はそのエステル、2−オキソペンタン酸(即ち、α−ケト吉草酸)又はそのエステル、2−オキソ−3−メチルブタン酸(即ち、α−ケトイソ吉草酸)又はそのエステル、2−オキソヘキサン酸(即ち、α−ケトカプロン酸)又はそのエステル、2−オキソ−4−メチルペンタン酸(即ち、α−ケトイソカプロン酸)又はそのエステル、2−オキソブタン二酸(即ち、α−ケトコハク酸)又はそのエステル、2−オキソペンタン二酸(即ち、α−ケトグルタル酸)又はそのエステル、2−オキソヘキサン二酸(即ち、α−ケトアジピン酸)又はそのエステル、及び2−オキソヘプタン二酸(即ち、α−ケトピメリン酸)又はそのエステルである。本発明の方法に従って製造できる別の好ましいα−ケト酸又はそのエステルは、2−オキソ−3,4,5,6−テトラヒドロキシヘキサン酸(即ち、α−ケトグルコン酸)又はそのエステルである。
【0025】
最も好ましい実施形態では、本発明の方法はピルビン酸又はそのエステルを製造するために使用される。さらに好ましい実施形態では、本発明の方法は13−ピルビン酸又はそのエステルを製造するために使用される。
【0026】
本発明の方法によってα−ケト酸エステルが製造される場合、エステルは任意の種類の有機エステルであり得る。好ましいエステルはメチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル、tert−ブチルエステル及びベンゼンエステルであり、最も好ましいエステルはメチルエステルである。
【0027】
本発明の方法によって得られるα−ケト酸又はそのエステルは、さらに誘導体に変換することができ、例えば当技術分野で公知の方法によってα−ケトアミド又はα−ケト酸の塩に転化させることができる。好ましくは、本方法はピルビン酸、好ましくは13−ピルビン酸を製造するために使用され、得られた13−ピルビン酸は塩(即ち、13−ピルビン酸塩)に転化される。これは、好ましくは、本発明の方法の段階c)で塩(即ち、13−ピルビン酸塩)が得られる処理手順を使用することによって行われる。
【0028】
好ましい塩は、国際特許出願第PCT/NO07/00109号に詳述されているように、NH、K、Rb、Cs、Ca2+、Sr2+及びBa2+、好ましくはNH、K、Rb及びCs、さらに好ましくはK、Rb及びCs、最も好ましくはCsからなる群からの無機陽イオンを含む13−ピルビン酸塩である。かかる塩は、好ましくはDNP法による過分極13−ピルビン酸塩の製造のために使用される。上述の塩は、好ましくは、本発明の方法の段階c)でこれらの塩が得られる処理手順を使用することによって得られる。
【0029】
さらに他の好ましい塩は、国際特許出願第PCT/NO06/00481号に詳述されているように、有機アミン又はアミノ化合物の13−ピルビン酸塩、好ましくはTRIS−13−ピルベート又はメグルミン−13−ピルベートである。この場合にも、かかる塩は好ましくはDNP法による過分極13−ピルビン酸塩の製造のために使用される。上述の塩は、好ましくは、本発明の方法に従って13C−ピルビン酸を製造し、13C−ピルビン酸を上述の塩に転化させることで得られる。
【0030】
本発明の方法の段階a)では、下記の式(III)の化合物のカルボキシル化によって下記の式(II)の化合物が得られる。
【0031】
【化4】

式中、Rは1以上のヒドロキシル基又はカルボキシル基で任意に置換された直鎖又は枝分れC〜C−アルキル基又はフェニル又はベンジルであり、R′は同一又は異なるものであって、H或いは直鎖又は枝分れC〜C−アルキル基を表す。
【0032】
【化5】

式中、R及びR′は上記に定義した通りであり、XはCl、Br又はIである。
【0033】
段階a)においてRがヒドロキシル基又はカルボキシル基を含む式(III)の化合物を使用する場合、その基は好ましくは、例えば当技術分野で公知の適当な保護基によって保護される。例えば、ヒドロキシル基は、遊離ヒドロキシル基とtert−ブチルジメチルシリルクロリド又はトリメチルシリルクロリドのような化合物との反応から導かれるシリルエーテルとして保護できる。カルボキシル基はオキサゾリン又はオルトエステルとして保護できる。前者は、遊離カルボキシル基又はその酸塩化物を2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールと反応させ、次いで塩化チオニルと反応させることで製造できる。後者は、酸塩化物を3−メチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンと反応させ、次いで三フッ化ホウ素エチルエーテルと反応させることで合成できる。
【0034】
式(III)の化合物は市販の化合物であり、式(III)の化合物をカルボキシル化して式(II)の化合物を得るには、当技術分野で知られる幾つかの方法が使用できる。一実施形態では、COの接触挿入によって式(II)の化合物が得られる。COの接触挿入は以下のようにして実施できる。即ち、式(III)の化合物、好ましくはXがBr又はIである式(III)の化合物を適当な溶媒に溶解し、適当な溶媒中の水酸化ナトリウム及び触媒(例えば、シアン化ニッケル及びセチルトリメチルアンモニウムブロミド)の溶液にCO雰囲気下で少しずつ添加する。かかる方法は、例えば、H.Alper et al.,Tetrahedron Lett.Vol.30(20),1989,2615−2616に記載されている。粗反応生成物は、本発明に係る方法の段階b)又はc)前に精製してもよいし、或いは精製しなくてもよい。粗反応生成物を精製する場合、粗反応生成物を蒸留又は結晶化するのが好ましい。13−濃縮された式(II)の化合物(本発明の方法が13−濃縮α−ケト酸又はそのエステルを製造するために使用される場合、かかる式(II)の13−濃縮化合物が必要である。)を得るには、市販の化合物である13COを上述の手順で使用する。
【0035】
さらに好ましい実施形態では、式(III)の化合物をリチウム化し、次いでCOと反応させることでカルボキシル化が実施される。簡単に述べれば、式(III)の化合物、好ましくはXがBr又はIである式(III)の化合物をテトラヒドロフラン(THF)のような非プロトン性極性溶媒に溶解し、0℃未満の温度に冷却する。適当な溶媒中の有機リチウム試薬(例えば、t−BuLi)を添加し、混合物を撹拌して式(III)の化合物のリチオ誘導体(例えば、XがLiである式(III)の化合物)を生成する。かかる方法は、例えば、C.Wang et al.,J.Org.Chem.2005,70,5150−5156又はD.Jeffery et al.,Org.Lett.7(8),2005,1581−1584に記載されている。次いで、反応混合物をCOと反応させ、例えばジクロロメタンのような適当な有機溶媒での抽出又は蒸留によってカルボキシル官能基を解放すれば式(II)の化合物が得られる。粗反応生成物は、本発明に係る方法の段階b)又はc)前に精製してもよいし、或いは精製しなくてもよい。粗反応生成物を精製する場合、粗反応生成物を蒸留又は結晶化するのが好ましい。13−濃縮された式(II)の化合物を得るには、市販の化合物である13COを上述の手順で使用する。反応には任意の種類のCOが使用できる。反応を小規模で実施する場合、固体COを使用できる。しかし、大規模反応及び13COを使用する反応のには、気体CO又は超臨界COを使用するのが好ましい。これは、特に連続プロセスにおいて、使用されなかったCOを再循環させることが可能だからである。
【0036】
最も好ましい実施形態では、カルボキシル化はグリニャール反応によって実施される。簡単に述べれば、THFのような適当な溶媒中で式(III)の化合物(好ましくはXがBrである式(III)の化合物)及びマグネシウムからグリニャール試薬を生成し、次いでグリニャール試薬をCOと反応させる。先行する段階に記載したようにしてカルボキシル官能基を解放すれば、式(II)の化合物が得られる。同様の反応は、例えば、M.Mataresse et al.,Applied Radiation and Isotopes 57,2002,675−679に記載されている。粗反応生成物は、本発明に係る方法の段階b)又はc)前に精製してもよいし、或いは精製しなくてもよい。粗反応生成物を精製する場合、粗反応生成物を蒸留又は結晶化するのが好ましい。13−濃縮された式(II)の化合物を得るには、市販の化合物である13COを上述の手順で使用する。反応には任意の種類のCOが使用できる。反応を小規模で実施する場合、固体COを使用できる。しかし、大規模反応及び13COを使用する反応には、気体CO又は超臨界COを使用するのが好ましい。これは、特に連続プロセスにおいて、使用されなかったCOを再循環させることが可能だからである。
【0037】
前の段落に記載した反応の好ましい実施形態では、反応はマイクロ反応器、例えばマイクロチャネル反応系型のマイクロ反応器で実施される。かかるマイクロ反応器では、マイクロチャネルがグリニャール試薬の薄膜で被覆されているか、或いはグリニャール試薬を吸着するための適当な不活性材料を充填したカラム内にグリニャール試薬が固定化されている。好ましくは、マイクロ反応器をアルゴン又は窒素のような不活性ガスでフラッシュした後、二酸化炭素ガスでフラッシュする。この方法によれば、過剰の二酸化炭素を下流で回収して再使用することができ、これは13COを使用する場合に特に重要であることはもちろんである。例えば(有機溶媒添加又は不添加の)塩基性水溶液で反応器をフラッシュすることにより、カルボキシル官能基を解放し、式(II)の化合物をマイクロ反応器から回収することができる。別法として、反応器をアルコール(例えばエタノール)でフラッシュすることにより、式(II)の化合物のエステルを得ることができる。
【0038】
別の好ましい実施形態では、上述の反応が連続マイクロ反応器システム内で実施される。この場合には、連続マイクロ反応器システム内でグリニャール試薬の溶液をCOの流れと混合する。例えばプロセス・アナリティカル・ツール(PAT)のようなモニタリング技法及びツールを使用すれば、例えばCOの流れを調整して反応体の消費量を一致させ、かくして反応体の可能な限り効率的な使用を確実にすることにより、反応器の末端で定常状態を得ることができる。
【0039】
本発明の方法の段階b)では、段階a)から得られた式(II)の化合物を任意にはエステルに転化させる。カルボン酸からエステルへの転化(いわゆるエステル化)は、プロトンの存在下でカルボン酸をアルコールと反応させる、当技術分野で公知の方法である。粗反応生成物を段階c)で使用することができる。好ましい実施形態では、式(II)の化合物をメタノールと反応させることで式(II)の化合物のメチルエステルが製造される。
【0040】
本発明の方法の段階c)では、式(II)の化合物又はそのエステルを酸化することによって式(I)のα−ケト酸又はそのエステルが得られる。式(II)の化合物又はそのエステルの酸化には、当技術分野で知られる幾つかの方法が適している。
【0041】
好適には、エステルの形態の式(II)の化合物はクロム触媒の存在下で過酸化水素を用いて酸化することができる。簡単に述べれば、CrO、トリメチルアミン、過酸化水素、及びエステルの形態の式(II)の化合物をアセトニトリルに添加して加熱することによって、式(I)のα−ケト酸エステルが得られる。かかる方法は、例えば、M.Inoue et al.,Chemistry Letters 1989,99−100に記載されている。
【0042】
別法として、エステルの形態の式(II)の化合物は分子状酸素及びルテニウム触媒を用いて酸化することができる。簡単に述べれば、RuO、アセトン、ピロメリト酸及びアセトアルデヒドの混合物に酸素を吹き込み、エステルの形態の式(II)の化合物のアセトン溶液を添加する。混合物を酸素雰囲気下で撹拌し、炭酸ナトリウムで奪活することによって、式(I)のα−ケト酸が得られる。かかる方法は、K.Kaneda et al.,Chem.Commun.1990,1467−1468に記載されている。
【0043】
好ましい実施形態では、式(II)の化合物又はそのエステルはオゾン分解によって酸化される。簡単に述べれば、オゾン分解は適当な溶媒(例えば、ジクロロメタン又はメタノール)中で中温乃至低温で実施される。さらに好ましい実施形態では、式(II)の化合物がオゾン分解用の出発原料として使用される。オゾン分解は、例えば、Y.Hon et al.,Tetrahedron 60(2004),4837−4860、T.Chan et al.,J.Org.Chem.60,1995,4228−4232、又はS.G.van Ornum et al.,Chem.Rev.2006,2990−3001に記載されている。
【0044】
オゾン分解反応は、グリニャール反応に関して本願原文9頁に記載したようなマイクロ反応器システム/連続マイクロ反応器システムで実施できる。
【0045】
例えば段階c)の酸化に際してカルボキシル基を保護しなければならないために段階c)の反応生成物が式(I)のα−ケト酸のエステルであれば、当技術分野で公知の方法(例えば、酸触媒又は塩基触媒加水分解)によって式(I)の遊離α−ケト酸を得ることができる。
【0046】
式(I)中のRが以前の反応段階で保護されたヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を含む場合、これらの保護基は段階c)後又は任意の段階d)後に除去される。簡単に述べれば、シリルエーテルとして保護されたヒドロキシル基は、テトラブチルアンモニウムフルオリド又はフッ化水素のようなフッ化物試薬との反応で解放できる。オキサゾリン又はオルトエステルとして保護されたカルボキシル基は、塩化水素のような酸との反応で解放できる。
【0047】
好ましい実施形態では、本発明は、ピルビン酸又はそのエステルを製造するための方法であって、
a)下記の式(III)の化合物のカルボキシル化によって下記の式(II)の化合物を得る段階、
b)任意には式(II)の化合物をエステルに転化させる段階、
c)式(II)の化合物又はそのエステルを酸化してピルビン酸又はそのエステルを得る段階、及び
d)段階c)でピルビン酸のエステルが得られる場合、任意には該エステルをピルビン酸に転化させる段階
を含んでなる方法を提供する。
【0048】
【化6】

式中、R′は同一又は異なるものであって、H或いは直鎖又は枝分れC〜C−アルキル基を表す。
【0049】
【化7】

式中、R′は上記に定義した通りであり、XはCl、Br及びIから選択される。
【0050】
好ましい実施形態では、R′は同一のものであってHを表す。別の好ましい実施形態では、R′は異なるものであってH及びメチルを表す。
【0051】
さらに好ましい実施形態では、段階a)の式(II)の化合物は、有機リチウム試薬(好ましくはn−BuLi、t−BuLi又はsec−BuLi/TMEDAのような有機リチウム試薬)を用いて式(III)の化合物をリチウム化することによって得られる。リチウム化反応は、適当な溶媒(例えば、テトラヒドロフラン(THF)のような非プロトン性極性溶媒)中で低温(例えば、−40℃以下の温度)で実施される。次いで、リチウム化反応の生成物をCOと反応させ、例えばジクロロメタンのような適当な有機溶媒での抽出又は蒸留によってカルボキシル官能基を解放すれば式(II)の化合物が得られる。反応には任意の種類のCO(即ち、固体CO、気体CO又は超臨界CO)が使用できる。粗反応生成物は、本発明に係る方法の段階b)又はc)前に精製してもよいし、或いは精製しなくてもよい。粗反応生成物を精製する場合、粗反応生成物を蒸留するのが好ましい。
【0052】
かかる反応は下記の反応スキーム1に示される。
【0053】
【化8】

最も好ましい実施形態では、段階a)の式(II)の化合物は、式(III)の化合物(好ましくはXがBrである式(III)の化合物)をマグネシウムと反応させてグリニャール試薬を形成することによって得られる。かかる反応は、好適にはTHFのような極性非プロトン性溶媒中で室温以上の温度で実施される。次いでグリニャール試薬をCOと反応させ、例えばジクロロメタンのような適当な有機溶媒での抽出又は蒸留によってカルボキシル官能基を解放すれば、式(II)の化合物が得られる。この場合にも、反応には任意の種類のCOが使用できる。粗反応生成物は、本発明に係る方法の段階b)又はc)前に精製してもよいし、或いは精製しなくてもよい。粗反応生成物を精製する場合、粗反応生成物を蒸留するのが好ましい。
【0054】
かかる反応は下記の反応スキーム2に示される。
【0055】
【化9】

段階b)における式(II)の化合物からエステルへの転化は、段階c)のために選択される酸化方法に応じ、実施しても実施しなくてもよい。好ましい実施形態では、酸化方法はオゾン分解であり、ピルビン酸自体が所望の反応生成物であれば、段階b)における式(II)の化合物からエステルへの転化は実施しないことが好ましい。
【0056】
上述の方法がピルビン酸のエステルを製造するために使用される場合、段階b)における式(II)の化合物からエステルへの転化は、当技術分野で公知の方法によって実施するのが好都合である。好ましくは、メチルエステルは式(II)の化合物をメタノールと反応させることで製造され、粗エステルはそれ以上精製せずに上述の方法の段階c)で使用される。
【0057】
上記方法の好ましい実施形態では、式(II)の化合物又は(段階b)を実施した場合には)そのエステルをオゾン分解により酸化してピルビン酸又はそのエステルにする。好ましくは、オゾン分解は溶媒としてのジクロロメタン、メタノール又はこれらの混合物中で中温乃至低温(即ち、室温乃至約0℃以下の温度(例えば−78℃))で実施される。反応の完了は、過剰の遊離オゾンによって反応混合物が青色になることで示される。過剰オゾンは、反応混合物中に例えば窒素ガス又は酸素ガスの流れを通すことで除去できる。反応の経過中には(不安定な)オゾノイドが生成する。反応が中温で実施されれば、オゾノイドは反応して所望のピルビン酸又はそのエステルになる。低温では、オゾノイドを所望の反応生成物に転化させるために酸化剤又は還元剤が必要となる。酸化剤は当技術分野で公知であり、好適な酸化剤の例はペルオキシ酸、酸化銀、クロム酸、酸素、過マンガン酸塩又は過酸化水素である。還元剤は当技術分野で公知であり、好適な還元剤の例は亜鉛酢酸、亜硫酸イオン、重亜硫酸イオン、ヨウ化物、ジメチルスルフィド又はチオ尿素である。
【0058】
一実施形態では、溶媒を蒸発させ、粗反応生成物を好ましくは蒸留によって精製するのが好ましい。別の実施形態では、溶媒を蒸発させ、粗反応生成物を結晶化によって精製する。これを行うには、溶媒を蒸発させ、水及び塩基を添加してピルビン酸を塩(即ち、ピルビン酸塩)に転化させればよい。次いで、混合物を放置して結晶化する。好ましい実施形態では、塩基は無機ナトリウム塩基、好ましくはNaOHである。
【0059】
遊離ピルビン酸ではなく塩を得ることは、貯蔵寿命/安定性に関して有利である。ピルビン酸は非常に安定な化合物ではないが、ピルビン酸をその塩(例えば、ピルビン酸ナトリウム)の形態で貯蔵することでこの問題を解消できる。別法として、結晶化によって得られたピルビン酸塩を以後の段階で遊離ピルビン酸に転化させることができ、かかる転化の方法は当技術分野で公知である。
【0060】
オゾン分解反応は下記の反応スキーム3に示される。
【0061】
【化10】

段階c)でピルビン酸の塩が得られる場合、任意には当技術分野で公知の方法(例えば、酸触媒又は塩基触媒加水分解)によってエステルをピルビン酸に転化させることができる。
【0062】
さらに好ましい実施形態では、本発明は、13−ピルビン酸又はそのエステルを製造するための方法であって、
a)下記の式(III)の化合物のカルボキシル化によって下記の式(II)の化合物を得る段階、
b)任意には式(II)の化合物をエステルに転化させる段階、
c)式(II)の化合物又はそのエステルを酸化して13−ピルビン酸又はそのエステルを得る段階、及び
d)段階c)で13−ピルビン酸のエステルが得られる場合、任意には該エステルを13−ピルビン酸に転化させる段階
を含んでなる方法を提供する。
【0063】
【化11】

式中、R′は同一又は異なるものであって、H或いは直鎖又は枝分れC〜C−アルキル基を表す。
【0064】
【化12】

式中、R′は上記に定義した通りであり、XはCl、Br及びIから選択される。
【0065】
好ましい実施形態では、R′は同一のものであってHを表す。別の好ましい実施形態では、R′は異なるものであってH及びメチルを表す。
【0066】
13−ピルビン酸又はそのエステルを製造するための本発明の方法は、ピルビン酸又はそのエステルを製造するための本発明の方法に関して記載したようにして実施される。ただし、反応段階a)においてCOの代わりに13COが使用される。さらに、段階a)の粗反応生成物を蒸留によって精製しかつ段階c)又はd)の最終反応生成物を蒸留によって精製することが好ましい。別の実施形態では、段階c)又はd)の最終反応生成物は、ピルビン酸を塩(即ち、ピルビン酸塩)に転化させることにより、上述の結晶化で精製される。
【0067】
好ましい実施形態では、本発明の方法は13−ピルビン酸を製造するために使用される。即ち、段階d)は実施されず、段階c)の反応生成物が蒸留によって精製される。
【0068】
別の好ましい実施形態では、本発明は13−ピルビン酸塩、さらに好ましくは13−ピルビン酸ナトリウムを製造するために使用される。即ち、段階d)は実施されず、段階c)の反応生成物が上述の結晶化で精製される。
【0069】
本発明を実施例によってさらに例示する。
【実施例】
【0070】
実施例1a:2−ブロモプロペン(式(III)の化合物)から開始するグリニャール反応によるメタクリル酸(式(II)の化合物)の合成
テトラヒドロフラン(THF、100ml)に溶解した2−ブロモプロペン(24.20g、200mmol)を、THF(100ml)中の削り状マグネシウム(4.38g、180mmol)の撹拌懸濁液に窒素雰囲気下で滴下した。2−ブロモプロペンは、反応混合物を穏やかに沸騰させる速度で添加した。グリニャール試薬の完全な生成が達成された後、混合物を室温で30分間撹拌し、次いで−70℃に冷却した。反応混合物を激しい撹拌(渦動)下で二酸化炭素雰囲気(1バール)に暴露した。反応物を室温に達するまで放置し、次いで飽和塩化アンモニウム水溶液(100ml)の添加で停止させた。THF及び過剰の2−ブロモプロペンを真空中で30℃で除去し、水性相をHCl水溶液(3M、50ml)の添加で酸性化した後、ジクロロメタン(3×50ml)で抽出した。合わせた有機抽出液を硫酸マグネシウム上で乾燥し、蒸発させることで標記化合物を無色又はわずかに黄色の油として得た。収量:13.50g(87%)、純度:99%。
【0071】
実施例1b:2−ブロモプロペン(式(III)の化合物)から開始するCOの接触挿入によるメタクリル酸(式(II)の化合物)の合成
トルエン(20ml)中のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.29g、0.25mmol)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(0.36g、1.0mmol)及び2−ブロモプロペン(1.16g、10mmol)の混合物に、NaOH水溶液(5M、20ml、100mmol)を添加した。混合物を一酸化炭素雰囲気(1バール)に暴露し、95℃で2時間加熱した。相を分離し、有機相をNaOH水溶液(1M、2×20ml)で抽出した。水性相をジクロロメタン(50ml)で洗浄した。HCl水溶液(3M)を用いて水性相を酸性化し、ジクロロメタン(3×50ml)で抽出した。合わせた有機抽出液を硫酸マグネシウム上で乾燥し、真空中で30℃で蒸発させることで生成物を無色又はわずかに黄色の油として得た。収量:0.52g(60%)。
【0072】
実施例2:メタクリル酸(式(II)の化合物)のオゾン分解によるピルビン酸(式(I)の化合物)の合成
実施例1a又は実施例1bで得られたメタクリル酸(8.61g、100mmol)をジクロロメタン/メタノール(1:1 v/v、50ml)に溶解した溶液を−78℃に冷却した。オゾンの流れを溶液中に通し、溶液が青色に変わるまで行った。ジメチルスルフィド(12.41g、200mmol)を添加し、混合物を室温に達するまで放置した。反応混合物を真空中で蒸発させ、残留物を蒸留した。生成物を無色の油として単離した。収量:7.95g(90%)。
【0073】
実施例3:メタクリル酸(式(II)の化合物)のオゾン分解によるピルビン酸(式(I)の化合物)の合成
実施例1a又は実施例1bで得られたメタクリル酸(4.68g、54mmol)をジクロロメタン/メタノール(5%メタノール、50ml)に溶解した溶液を−78℃に冷却し、オゾンの流れをそれに通し、溶液が青色に変わるまで行った。ジメチルスルフィド(12.41g、200mmol)を添加し、混合物を室温に達するまで放置した。窒素の流れを反応混合物中に通すことで過剰のジメチルスルフィドを除去した。反応混合物を真空中で30℃で蒸発させ、残留物を蒸留した。生成物を無色の油として単離した。収量:4.40g(98%)。純度:97%。
【0074】
実施例4:メタクリル酸(式(II)の化合物)のオゾン分解によるピルビン酸塩(式(II)の化合物の塩)の合成
実施例1a又は実施例1bで得られたメタクリル酸(15.31g、178mmol)をジクロロメタン/メタノール(5%メタノール、50ml)に溶解した溶液を−78℃に冷却し、オゾンの流れをそれに通し、溶液が青色に変わるまで行った。ジメチルスルフィド(12.41g、200mmol)を添加し、混合物を室温に達するまで放置した。窒素の流れを反応混合物中に通すことで過剰のジメチルスルフィドを除去した。反応混合物を真空中で30℃で蒸発させた。残留物に水(100ml)を添加し、次いでNaOH水溶液(1M、178ml)をゆっくりと添加した。混合物を濃縮し、4℃で放置して結晶化させた。得られた白色の結晶性物質を濾過し、アセトン(3×100ml)で洗浄した。収量:14.50g(92%)。純度:95%。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(I)のα−ケト酸又はそのエステルの製造方法であって、
a)下記の式(III)の化合物のカルボキシル化によって下記の式(II)の化合物を得る段階、
b)任意には式(II)の化合物をエステルに転化させる段階、
c)式(II)の化合物又はそのエステルを酸化して式(I)のα−ケト酸又はそのエステルを得る段階、及び
d)段階c)で式(I)のα−ケト酸のエステルが得られる場合には、任意には該エステルをα−ケト酸に転化させる段階
を含んでなる方法。
【化1】

式中、Rは1以上のヒドロキシル基又はカルボキシル基で任意に置換された直鎖又は枝分れC〜C−アルキル基又はフェニル又はベンジルである。
【化2】

式中、Rは上記に定義した通りであり、R′は同一又は異なるものであって、H或いは直鎖又は枝分れC〜C−アルキル基を表す。
【化3】

式中、R及びR′は上記に定義した通りであり、XはCl、Br又はIである。
【請求項2】
R′が同一のものであってHを表すか、或いはR′が異なるものであってH及びメチルを表す、請求項1記載の方法。
【請求項3】
Rがメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、フェニル、ベンジル、CH−COOH、CH−CH−COOH、CH−(CH)−COOH、CH−(CH)−COOH又はCHOH−(CHOH)−CHOHである、請求項1又は請求項2記載の方法。
【請求項4】
段階a)のカルボキシル化が、有機リチウム試薬で式(III)の化合物をリチウム化し、次いでCOと反応させることで実施される、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
段階a)のカルボキシル化が、式(III)の化合物及びマグネシウムからグリニャール試薬を生成し、次いでグリニャール試薬をCOと反応させることで実施される、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
段階c)の酸化がオゾン分解で実施される、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
ピルビン酸又はそのエステルを製造するための請求項1記載の方法であって、
a)下記の式(III)の化合物のカルボキシル化によって下記の式(II)の化合物を得る段階、
b)任意には式(II)の化合物をエステルに転化させる段階、
c)式(II)の化合物又はそのエステルを酸化してピルビン酸又はそのエステルを得る段階、及び
d)段階c)でピルビン酸のエステルが得られる場合、任意には該エステルをピルビン酸に転化させる段階
を含んでなる方法。
【化4】

式中、R′は同一又は異なるものであって、H或いは直鎖又は枝分れC〜C−アルキル基を表す。
【化5】

式中、R′は上記に定義した通りであり、XはCl、Br及びIから選択される。
【請求項8】
段階a)のカルボキシル化が、有機リチウム試薬で式(III)の化合物をリチウム化し、次いでCOと反応させることで実施される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
段階a)のカルボキシル化が、式(III)の化合物及びマグネシウムからグリニャール試薬を生成し、次いでグリニャール試薬をCOと反応させることで実施される、請求項7記載の方法。
【請求項10】
段階c)の酸化がオゾン分解で実施される、請求項7乃至請求項9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
当該方法で製造される式(I)のα−ケト酸又はそのエステルが13−α−ケト酸又はそのエステルである、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
当該方法で製造されるピルビン酸又はそのエステルが13−ピルビン酸又はそのエステルである、請求項7乃至請求項10のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
段階a)のカルボキシル化が、有機リチウム試薬で式(III)の化合物をリチウム化し、次いで13COと反応させることで実施される、請求項10又は請求項11記載の方法。
【請求項14】
段階a)のカルボキシル化が、式(III)の化合物及びマグネシウムからグリニャール試薬を生成し、次いでグリニャール試薬を13COと反応させることで実施される、請求項10又は請求項11記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−506909(P2010−506909A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533268(P2009−533268)
【出願日】平成19年10月16日(2007.10.16)
【国際出願番号】PCT/NO2007/000360
【国際公開番号】WO2008/048106
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(396019387)ジーイー・ヘルスケア・アクスイェ・セルスカプ (82)
【Fターム(参考)】